説明

癌に関与するタンパク質

【課題】癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は前記癌の治療の有効性をモニターする方法,および、それらの方法に使用する組成物を提供する。
【解決手段】以下の(a)〜(c)のいずれかのRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する捕捉試薬を含む、前記組成物:
(a) 配列番号1のアミノ酸配列を含む又は前記アミノ酸配列から成るもの;
(b) 配列番号1のアミノ酸配列に対し、1以上のアミノ酸の置換、欠失又は挿入を有する誘導体であって、RAIG1活性を保持するもの;又は、
(c) 配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つ少なくとも70%の相同性を有するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド(レチノイン酸誘導性遺伝子1;RAIG1、仮説的タンパク質FLJ10899又はレチノイン酸誘導性3としても知られている)の新規な使用、前記ポリペプチドを含む組成物(ワクチンを含む)、前記ポリペプチドに免疫特異的な抗体、及び前記ポリペプチドと相互作用するか又はその発現若しくは活性を調節する物質、又は前記ポリペプチドをコードする核酸の発現を調節する物質に関する。癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の診断、スクリーニング及び治療における前記ポリペプチドの使用もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
腫瘍特異的タンパク質が、例えば以下のような技術を用いて多数の癌タイプについて特定された:ディファレンシャルスクリーニング(R.S. Hubert et al. 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:14523-14528)及び腫瘍特異抗体によって認識される細胞表面タンパク質の精製(B. Catimel et al. 1996, J. Biol. Chem. 271:25664-25670)。さらに最近では、10,000もの発現配列エレメントを含むDNA“チップ”を用いて腫瘍細胞の遺伝子発現が特徴付けられた(S.M. Dhanasekaran et al. (2001) Nature 412:822-826)。しかしながら、多数且つ広範なこれまでの癌のトランスクリプトーム分析が、腫瘍関連蛋白質を全て、更にはほとんどさえも明らかにしていないことには、いくつかの理由がある。その理由には、次のものが挙げられる:
(i)転写産物と疾患関連蛋白質レベルとの間の相関性の欠如;特に膜蛋白質については、長い半減期を持つ場合が多く、そのために高度なmRNA代謝回転を有さないことが、よく知られている。従って、正常細胞と癌細胞との間の蛋白質レベルの差は一貫しているにもかかわらず、所定の膜蛋白質のmRNAの変化を、癌状態と関連づけることは難しい場合が多い;
(ii)転写産物、例えばerbB2/HER2-neuの単純な示差的レベルよりもむしろ、疾患状態における蛋白質の移行が、癌細胞において正常乳房細胞におけるよりもはるかに大きい形質膜局在を示し、並びに転写因子であるエストロゲン受容体及びSTAT3は、核へと移行し、それらの腫瘍原性作用を発揮する;並びに
(iii)新規/特徴付けられていない遺伝子は、1チップ当りの発現した配列エレメントの数並びにDNAクローンの知識及び利用可能性に関して制限があるcDNAアレイの「閉じたシステム」においては、高度には提示されない。
【0003】
したがって、癌診断のための更なるマーカー及び癌の治療的アプローチで用いることができる更なる標的を同定することが必要とされる。本発明は、癌、特に乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫とRAIG1との新規な関連性に基づいている。RAIG1のmRNA発現の分析によって、RAIG1のmRNA発現が、正常組織又は同一人のコントロール組織と比較したとき結腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、卵巣癌及び骨肉腫でアップレギュレートされることが明らかになった。
EP1074617は、タンパク質機能の研究に有用な完全長cDNA合成用プライマーセットに関し、そのようなプライマーセットの作製に有用な16,000配列の1つとしてRAIG1ヌクレオチド配列を開示している。
RAIG1は、染色体12上に位置するオーファン(orphan)G-タンパク質結合レセプター(GPCR)である(Chng & Lotan, 上掲書;H. Brauner-Osbourne, 2001, Biochim. Biophys. Acta 1518:237-248)。末梢及び中枢組織で広範囲に発現される関連レセプター(GPCR5B)とは異なり、RAIG1は、より限定的な発現パターンを示すと報告されている(H. Brauner-Osbourne & P. Krogsgaard-Larsen, 2000, Genomics, 65:121-128)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、対象者で癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫の治療の有効性をモニターする方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、
対象者における癌のスクリーニング用及び/又は診断用、及び/又は癌の治療の有効性のモニタリング用の組成物であって
以下の(a)〜(c)のいずれかのRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する捕捉試薬を含む、前記組成物である:
(a) 配列番号1のアミノ酸配列を含むもの、又は前記アミノ酸配列から成るもの;
(b) 配列番号1のアミノ酸配列に対し、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であって、RAIG1の活性を保持するもの;又は、
(c) 配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つ前記フラグメントの全長にわたって少なくとも70%の相同性を有するもの。
また、別の態様では、
対象者における癌のスクリーニング用及び/又は診断用、及び/又は癌の治療の有効性のモニタリング用の組成物であって、
以下の(d)〜(h)のいずれかのRAIG1核酸分子と相補的であり且つハイブリダイズすることができるハイブリダイズ核酸分子を含む、前記組成物である:
(d) 配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物を含むもの、又は前記DNA配列又はRNA等価物から成るもの;
(e) 前記(d)の配列と相補的な配列を有するもの;
(f) 請求項1で定義されるRAIG1ポリペプチドをコードする配列を有するもの;
(g) 前記(d)、(e)及び(f)の核酸分子のいずれかと実質的な同一性を示す配列を有するもの;又は
(h) 前記(d)、(e)、(f)又は(g)のフラグメントであって、長さが少なくとも10ヌクレオチドであるもの。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】RAIG1のタンパク質配列(RAIG1:AAC98506/O95357)(配列番号1)を示す。タンデム質量スペクトルペプチドは太字の下線付き書体で、MALDI質量スペクトルペプチドは太字書体で示す。
【図2】RAIG1の核酸配列(RAIG1:AF095448)(配列番号2)を示す。
【図3】それぞれの対応する患者の隣接正常組織(数字の後ろに文字Nが続く)及び乳房腫瘍組織(数字の後ろに文字Tが続く)でのRAIG1mRNAの分布を示す。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【図4】それぞれの対応する正常組織(数字の後ろに文字Nが続く)及び結腸腫瘍組織(数字の後ろに文字Tが続く)でのRAIG1mRNAの分布を示す。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【図5】3つの対応する正常組織サンプル(norm)及び8つの膵臓腫瘍組織サンプルでのRAIG1mRNAの分布を示す。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【図6】乳房腫瘍組織でのRAIG1mRNAの分布を示す。40の腫瘍サンプルをリンパ節転移のある患者(黒棒)又はリンパ節転移のない患者(白棒)から入手した。2つの正常な乳房組織サンプルもまた示されている(灰色棒)。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【図7】正常肺組織及び6つの肺癌サンプルでのRAIG1mRNAの分布を示す。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【図8】正常卵巣及び骨髄組織、卵巣及び骨肉腫細胞株、5つの卵巣しょう液性嚢胞腺癌サンプル、6つの卵巣腺癌サンプル、並びに3つの骨肉腫サンプルでのRAIG1mRNAの分布を示す。mRNAレベルはリアルタイムRT-PCRで定量し、1ngのcDNA当たりのコピー数として表されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明は、対象者で癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫の治療の有効性をモニターする方法が提供される。前記方法は、前記対象者から得た生物学的サンプルで以下を検出及び/又は定量する工程を含む:
(i)以下のRAIG1ポリペプチド
a)図1(配列番号1)に示すアミノ酸配列を含むか、又は前記アミノ酸配列から成るポリペプチド;
b)図1(配列番号1)に示すアミノ酸配列に対し、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であって、RAIG1の活性を保持するポリペプチド;又は
c)図1(配列番号1)に示す配列を有するポリペプチドのフラグメントであって、長さが少なくとも10アミノ酸であり、さらに前記フラグメントの全長にわたって少なくとも70%の相同性を有するもの。
【0008】
本発明では、RAIG1ポリペプチドは、任意の供給源、例えば乳房、膵臓、肺臓、肝臓、卵巣、結腸及び/又は骨髄組織(ただしこれらに限定されない)に由来する生物学的サンプルから入手することできる。ある実施態様ではRAIG1ポリペプチドレベルは参照値域(reference range)又はコントロールと比較される。
“癌(腫)(carcinoma)”という用語は、上皮から生じる悪性の新規増殖を含み、前記は皮膚、より一般的には身体器官、例えば乳房、前立腺、肺臓、腎像、膵臓、胃又は腸の基底層で見出される。癌は隣接組織に浸潤し、さらに離れた器官(例えば骨、肝臓、肺臓又は脳)に広がる(転移)傾向を有する。
上記a)~c)に記載されたポリペプチドを以下では“RAIG1ポリペプチド”と称する。“ポリペプチド”という用語は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは特に指定されない限り互換的に用いられる。RAIG1ポリペプチドは“成熟”タンパク質の形態であっても、又は大きなタンパク質(例えば融合タンパク質)の一部分であってもよい。分泌若しくはリーダー配列、プレ-、プロ-若しくはプレプロ-タンパク質配列、又は精製を促進する配列、例えばアフィニティータグ(例えば複数のヒスチジン残基、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグ(ただしこれらに限定されない))を含む付加的アミノ酸配列を含むことはしばしば有利である。組換えの生成時に安定性を提供することができる付加的配列もまた用いることができる。場合によってそのような配列は、付加配列又はその一部として切断可能な配列を取り込むことによって必要に応じて除去することができる。したがって、RAIG1ポリペプチドは他のポリペプチドを含む他の成分と融合させることができる。そのような付加配列及びアフィニティータグは当業界では周知である。
【0009】
アミノ酸置換は当業界で公知のような保存的なものでも半保存的なものでもよく、好ましくは本ポリペプチドの所望の活性に顕著には影響を与えない。置換は天然に生じてもよいが、また、例えば突然変異誘発によって導入されてもよい(例えばHutchinson et al. 1978, J. Biol. Chem. 253:6551)。したがって、アミノ酸のグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)はしばしば互いに置換することができる。これらの可能な置換のうちで、グリシンとアラニンを用いて互いに置換することが好ましく(それらは比較的短い側鎖を有するため)、バリン、ロイシン及びイソロイシンを用いて互いに置換することが好ましい(それらはより大きな疎水性脂肪族側鎖をもつため)。
しばしば互いに置換することができる他のアミノ酸には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):
−フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖をもつアミノ酸);
−リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖をもつアミノ酸);
−アスパルテート及びグルタメート(酸性側鎖をもつアミノ酸);
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖をもつアミノ酸);
−システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖をもつアミノ酸);及び
−アスパラギン酸及びグルタミン酸でそれぞれホスホセリン及びホスホスレオニンを置換することができる(酸性側鎖をもつアミノ酸)。
【0010】
本発明のさらに別の特徴、例えば癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療及び/又は予防では、ドミナントネガティブ又は構成的に活性を有するRAIG1ポリペプチドの使用が意図される。したがって、ある実施態様では、欠失、挿入、改変又は置換アミノ酸はペプチドにドミナントネガティブな活性を与える。別の実施態様では、欠失、挿入、改変又は置換アミノ酸は前記ポリペプチドに構成的活性を与える。
改変には、天然に生じる改変(例えば翻訳後改変が含まれるが、ただしこれに限定されない)及び天然に存在しない改変(例えば突然変異誘発によって導入できる)が含まれる。
好ましくは、b)の誘導体は、図1(配列番号1)に示されたアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有し、より好ましくは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の同一性を有する。パーセント同一性は当業界で周知の概念であり、例えばNCBIから入手可能なBLAST(登録商標)ソフトウェア(ただしこれに限定されない)を用いて計算することができる(S.F. Altschul et al. 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410; W. Gish & D.J. States, 1993, Nature Genet. 3:266-272; T.L. Madden et al. 1996, Meth. Enzymol. 266:131-141; S.F. Altschul et al. 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; J. Zhang & T.L. Madden, 1997, Genome Res. 7:649-656)。
上記c)に記載したRAIG1ポリペプチドのフラグメントは、長さが少なくとも10アミノ酸である。好ましくは、それらは長さが少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50又は少なくとも100アミノ酸である。フラグメントは、その全長にわたって図1(配列番号1)に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有し、より好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%の同一性を有する。
【0011】
本発明はまた、対象者で癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫の治療の有効性をモニターする方法を提供する。前記方法は、前記対象者から得た生物学的サンプルで核酸分子の量を検出及び/又は定量する工程を含み、前記核酸分子は以下のとおりである:
d)図2(配列番号2)に示すDNA配列又はそのRNA等価物を含むか、又は前記から成るもの;
e)前記d)の配列と相補的な配列を有するもの;
f)前記a)からc)に定義したポリペプチドをコードする配列を有するもの;
g)前記d)、e)及びf)のいずれかと実質的同一性を示す配列を有するもの;又は h)前記d)、e)、f)又はg)のフラグメントであって、長さが少なくとも30ヌクレオチドであるもの。
特に別に指示されないかぎり、RAIG1核酸には、上記d)〜h)に定義した核酸分子が含まれ、それらは1つ又は2つ以上の以下の特性を有することができる:
1)それらはDNAでもRNAでもよい;
2)それらは一本鎖でも二本鎖でもよい;
3)それらは実質的に純粋な形態であってもよく、したがってそれらは混入タンパク質及び/又は他の核酸を実質的に含まない形態で提供されるであろう;さらに、
4)それらはイントロンを含んでいても、又はイントロンを含んでいなくてもよい(例えばcDNA)。
上記h)に記載されたRAIG1核酸のフラグメントは、好ましくは長さが少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100又は少なくとも250ヌクレオチドである。
【0012】
本発明はまた、上記d)〜h)に記載されたRAIG1核酸と相補的であり、前記RAIG1核酸とハイブリダイズすることができる核酸の使用を提供する。そのような核酸分子は“ハイブリダイズ(する)”核酸分子と称される。例えば、ハイブリダイズ核酸分子はプローブ又はプライマー(ただしこれらに限定されない)として有用であろう。ハイブリダイズ核酸分子は、その全長にわたって上記d)〜h)の範囲の核酸分子と高度な配列同一性を有するであろう(例えば少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%配列同一性)。上記で考察した核酸分子のいずれかとハイブリダイズすることができるハイブリダイズ核酸分子の、例えばハイブリダイゼーションアッセイでの使用もまた本発明に包含される。
ハイブリダイゼーションアッセイは、対象者における癌、例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫の検出、予後、又は治療のモニタリングに用いることができる。したがって、そのようなハイブリダイゼーションアッセイは以下を含む: i)対象者から得た核酸含有生物学的サンプルをハイブリダイゼーションが生じる条件下でRAIG1核酸分子とハイブリダイズすることができる核酸プローブと接触させ;さらに ii)精製された一切のハイブリダイゼーションを検出又は測定する。
【0013】
好ましくは、そのようなハイブリダイズ分子は長さが少なくとも10ヌクレオチドであり、好ましくは長さが少なくとも25又は少なくとも50ヌクレオチドである。より好ましくは、前記ハイブリダイズ核酸分子は特に上記のd)、e)、f)、g)、又はh)の範囲内の核酸とハイブリダイズする。もっとも好ましくは、前記ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で生じる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、ハイブリダイゼーションが約35℃〜約65℃の温度で約0.9Mの塩溶液を用いて実施される条件である。しかしながら、当業者は、変数(variables)(例えばプローブの長さ、塩基組成、存在するイオンのタイプなど)を考慮して、前記条件を適切に変更することができる。
本発明はまた、RAIG1ポリペプチドをコードするRNAとハイブリダイズすることができる核酸プローブ、適切な試薬及び使用のための指示を含む診断キットを提供する。
【0014】
さらに別の実施態様では、適切な反応条件下でRAIG1核酸分子の少なくとも一部分の増幅を、例えばポリメラーゼ連鎖反応(例えば以下を参照のこと:Innis et al. 1990, PCR Protocols, Academic Press, Inc., San Diego, CA)、リガーゼ連鎖反応(EP320308号を参照されたい)、Qβレプリカーゼの使用、環状プローブ反応又は当業界で公知の他の方法によってプライミングすることができる一対のプライマーを、1つ又は2つ以上の容器の中に含む診断キットが提供される。典型的にはプライマーは少なくとも8ヌクレオチドの長さであり、好ましくは少なくとも10〜20ヌクレオチドの長さ、より好ましくは15〜25ヌクレオチドの長さであろう。いくつかの事例では、少なくとも30又は少なくとも35ヌクレオチドの長さのプライマーを用いることができる。
さらに別の特徴では、RAIG1ポリペプチドの存在を検出する方法は、直接又は間接的に標識された検出試薬を用いて捕捉されたポリペプチドを検出することを含む。
RAIG1ポリペプチドは当業界で公知の免疫アッセイ手段のいずれかによって検出できる。前記免疫アッセイには、例えばウェスタンブロット、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、“サンドイッチ”免疫アッセイ、免疫沈澱アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、放射能免疫測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ及びプロテインA免疫アッセイのような技術を用いる競合及び非競合アッセイ系が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0015】
本発明はまた、上記に定義したRAIG1ポリペプチドに対する捕捉試薬(例えば抗体)を含む診断キットを提供する。さらにまた、そのようなキットは場合によって下記の1つ又は2つ以上を含む:
(1)前記捕捉試薬を診断、予後、治療のモニタリング又は前記用途の任意の組合せに使用するための指示;
(2)前記捕捉試薬に対する標識された結合パートナー;
(3)前記捕捉試薬が固定される固相(例えば試薬片);及び
(4)診断、予後、治療的な使用又は前記の任意の組合せについての規制承認を示す標識又は挿入物。
前記捕捉試薬に対し無標識結合パートナーが提供される場合は、前記抗ポリペプチド捕捉試薬それ自体を検出可能なマーカー(例えば化学発光、酵素、蛍光又は放射能成分)で標識することができる。
本発明の診断方法は当業者に公知の多数の方法を用いて実施することができる。前記方法には、免疫沈澱に続くドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、競合及び非競合アッセイ系(例えばウェスタンブロット、放射性免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、“サンドイッチ”免疫アッセイ、免疫沈澱アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、放射能免疫測定アッセイ、蛍光免疫アッセイ及びプロテインA免疫アッセイのような技術を用いる)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0016】
RAIG1ポリペプチドは、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療のための適切な標的である。したがって、さらに別の特徴では、本発明は、RAIG1ポリペプチドと相互作用するか又は前記の発現若しくは活性を調節するか、又はRAIG1核酸分子の発現を調節することができる物質を特定する方法を提供する。本発明のスクリーニング方法により特定される物質は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療に使用される有望な治療薬である。
物質は多様な候補物質から選択することができる。候補物質の例には、核酸(例えばDNA及びRNA)、抗体、炭水化物、脂質、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド擬似物質、小分子及び他の薬剤が含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記物質は、当業界で公知の順列組合せライブラリー方法により多くのアプローチのいずれかを用いて入手できる。前記ライブラリーには生物学的ライブラリー、空間的配置を設定できるパラレル固相又は溶液相ライブラリー、デコンボルーション(deconvolution)を必要とする合成ライブラリー方法、“1ビーズ1化合物”ライブラリー方法及びアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法が含まれる。生物学的ライブラリーによるアプローチはペプチドライブラリーに適しているが、他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー又は小分子化合物ライブラリーにも応用できる(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145; US5,738,996; US5,807,683)。
【0017】
分子ライブラリー合成に適した方法の例は当技術分野で、例えば以下の文献で見出すことができる:DeWitt et al. 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909; Erb et al. 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422; Zuckermann et al. 1994, J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al. 1993, Science 261:1303; Carrell et al. 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al. 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061; Gallop et al. 1994, J. Med. Chem. 37:1233。
化合物ライブラリーは、例えば溶液(例えば、Houghten, 1992, Bio/Techniques 13:412-421)、又はビーズ(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌(US5,223,409)、胞子(US5,571,698;US5,403,484; US5,223,409)、プラスミド(Cull et al. 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869)又はファージ(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin, 1990, Science 249:404-406; Cwirla et al. 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382; Felici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)で存在することができる。
【0018】
ある実施態様では、RAIG1ポリペプチドと相互作用する(例えば結合する)物質は細胞をベースとしたアッセイで特定される。前記アッセイでは、RAIG1ポリペプチドを発現する細胞を候補物質と接触させ、前記候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力を決定する。好ましくは、RAIG1ポリペプチドと相互作用する候補物質の能力が、参照値域又はコントロールと比較される。別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドを発現する細胞の第一及び第二の集団を候補物質又はコントロール物質と接触させ、候補物質とコントロール物質との間の相互作用における相違を比較することによって、候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力を決定する。所望の場合は、このタイプのアッセイによりRAIG1ポリペプチドを発現する複数の細胞集団を用いて、複数の候補物質(例えばライブラリー)をスクリーニングすることができる。細胞は、例えば原核細胞由来でも(例えば大腸菌)、真核細胞由来でもよい(例えば酵母又は哺乳類)。さらに、前記細胞はRAIG1ポリペプチドを内因的に発現することができるが、また遺伝子操作によって前記ポリペプチドを発現してもよい。いくつかの実施態様では、RAIG1ポリペプチド又は候補物質は、例えば放射能標識(例えば32P、35S又は125I)又は蛍光標識(例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルアルデヒド又はフルオレスカミン)で標識され、ポリペプチドと候補物質との相互作用の検出を可能にする。
【0019】
別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドと相互作用する(例えば結合する)物質は無細胞アッセイ系で特定される。この系では、RAIG1ポリペプチドを発現するサンプルを候補物質と接触させ、前記候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力を決定する。好ましくは、RAIG1ポリペプチドと相互作用する候補物質の能力が、参照値域又はコントロールと比較される。好ましい実施態様では、天然又は組換えRAIG1ポリペプチドを含む第一及び第二のサンプルを候補物質又はコントロール物質と接触させ、候補物質とコントロール物質との間の相互作用における相違を比較することによって、候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力を決定する。所望の場合は、このアッセイにより複数のRAIG1ポリペプチドサンプルを用いて、複数の候補物質(例えばライブラリー)をスクリーニングすることができる。好ましくは、例えば特異的に前記ポリペプチドを認識及び前記と結合する固定抗体と前記ポリペプチドを接触させることによって、又はタンパク質を結合するようにデザインした表面とポリペプチドの精製調製物を接触させることによって前記ポリペプチドを先ず固定する。前記ポリペプチドは部分的又は完全に精製されていても(例えば部分的又は完全に他のポリペプチドを含まない)、又は細胞溶解物の一部分であってもよい。さらにまた、前記ポリペプチドは、RAIG1ポリペプチド又はその生物学的に活性な部分及び例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼのようなドメインを含む融合タンパク質であってもよい。また別には、前記ポリペプチドは当業者に周知の技術を用いて(例えばビオチン付加キット、Pierce Chemicals; Rockford, IL)ビオチン付加することができる。前記候補物質が前記ポリペプチドと相互作用する能力は当業者に公知の方法によって複製することができる。
【0020】
ある実施態様では、RAIG1ポリペプチドを二重ハイブリッド(two-hybrid)アッセイ又は三重ハイブリッドアッセイで“おとり(bait)タンパク質”として用い、RAIG1ポリペプチドと結合又は相互作用する他のタンパク質を特定することができる(例えば以下を参照されたい:US5,283,317; Zervos et al. 1993, Cell 72:223-232; Madura et al. 1993, J. Biol. Chem. 268:12046-12054; Bartel et al. 1993, Bio/Techniques 14:920-924; Iwabuchi et al. 1993, Oncogene 8:1693-1696; WO94/10300)。当業者には理解されるところであるが、そのような結合タンパク質はまた、RAIG1ポリペプチドによるシグナル伝達で必要とされる可能性が高いであろう。例えば、それらはRAIG1ポリペプチドを必要とするシグナル伝達経路の上流又は下流エレメントであるかもしれない。また別には、RAIG1ポリペプチドと相互作用するポリペプチドは、RAIG1ポリペプチドを含むタンパク質複合体(すなわち1つ又は2つ以上の他のポリペプチドと直接又は間接的に相互作用するRAIG1ポリペプチド)を単離し、例えば質量分析又はウェスタンブロッティングのような当業界で公知の方法を用いて前記附随するタンパク質を特定することによって特定することができる(例えば以下を参照されたい:W. Blackstock & M. Weir, 1999, Trends in Biotechnology, 17:121-127; G. Rigaut, 1999, Nature Biotechnology, 17:1030-1032; H. Husi, 2000, Nature Neurosci. 3:661-669: Y. Ho et al., 2002, Nature, 415:180-183; A. Gavin et al., 2002, Nature, 415:141-147)。
全ての事例で、RAIG1ポリペプチドと直接又は間接的に相互作用する候補物質の能力は、当業者に公知の方法によって決定することができる。例えば、RAIG1ポリペプチドと候補物質との間の相互作用は、フローサイトメトリー、シンチレーションアッセイ、活性アッセイ、質量分析、顕微鏡観察、免疫沈澱又はウェスタンブロット分析によって決定することができる(ただしこれらに限定されない)。
【0021】
さらに別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用する(すなわち競合的に結合する)物質は競合結合アッセイで特定され、候補物質がRAIG1ポリペプチドと相互作用する能力が決定される。好ましくは、RAIG1ポリペプチドと相互作用する候補物質の能力が、参照値域又はコントロールと比較される。好ましい実施態様では、RAIG1ポリペプチド及び前記ポリペプチドと相互作用することが判明しているタンパク質の両方を発現している第一及び第二の細胞集団を候補物質又はコントロール物質と接触させる。続いて、第一及び第二の細胞集団における相互作用を比較することによって、候補物質がRAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用する能力を決定する。別の実施態様では、また別の第二の細胞集団又はさらに別の細胞集団をRAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用することが判明している物質と接触させることができる。また別には、RAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用する物質は、細胞を含まないアッセイ系で、RAIG1ポリペプチド及びRAIG1ポリペプチドと相互作用することが判明しているタンパク質を含む第一及び第二のサンプルを候補物質又はコントロール物質と接触させることによって特定される。続いて、候補物質がRAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用する能力は、前記第一及び第二のサンプルにおける相互作用を比較することによって決定される。別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドを含むまた別の第二のサンプル又はさらに別のサンプルを、RAIG1ポリペプチドと競合的に相互作用することが判明している物質と接触させることができる。いずれの事例でも、RAIG1ポリペプチド及び公知の相互作用するタンパク質は天然に発現されるか、又は遺伝子組換えによって発現させることができる。候補物質は外因的に添加してもよいし、又は天然若しくは遺伝子組換えによって発現させてもよい。
【0022】
別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドともう1つの物質(例えばタンパク質、ただしこれに限定されない)との相互作用を調節する物質は、公知の相互作用物質及び候補調節物質の存在下でRAIG1ポリペプチド発現細胞を接触させ、前記相互作用を調節する候補物質を選択することによって細胞をベースとするアッセイで特定することができる。また別には、RAIG1ポリペプチドともう1つの物質(例えばタンパク質、ただしこれに限定されない)との相互作用を調節する物質は、候補物質の存在下で、前記ポリペプチドをそれと相互作用することが判明している物質と接触させることによって、細胞を含まないアッセイ系で特定することができる。調節物質は、抗体、補助因子、インヒビター、アクチベーターとして機能するか、又はRAIG1ポリペプチドと公知の物質との相互作用にアンタゴニストとして若しくはアゴニストとしての作用を有することができる。上記で述べたように、前記公知の物質がRAIG1ポリペプチドと相互作用する能力は当業界で公知の方法によって決定することができる。これらのアッセイは細胞ベースであれ、無細胞系であれ、複数の候補物質(例えばライブラリー)をスクリーニングすることができる。
【0023】
別の実施態様では、細胞ベースのアッセイ系を用いて、RAIG1ポリペプチドの活性を調節(すなわち刺激又は阻害)することができる物質が特定される。したがって、RAIG1ポリペプチドの活性は、天然に又は組換えによってRAIG1ポリペプチドを発現する細胞集団で候補物質の存在下で測定される。好ましくは、RAIG1ポリペプチドの活性が、参照値域又はコントロールと比較される。好ましい実施態様では、RAIG1ポリペプチドの活性は、天然に又は組換えによってRAIG1ポリペプチドを発現する細胞の第一及び第二の集団で、候補物質の存在下又は非存在下で(例えばコントロール物質の存在下で)測定され、RAIG1ポリペプチド活性が比較される。この比較に基づいて続いて候補物質をRAIG1ポリペプチドの活性の調節物質と特定することができる。また別には、RAIG1ポリペプチドの活性は細胞を含まないアッセイ系で測定することができる。この系では、RAIG1ポリペプチドは天然物又は組換えのどちらかである。好ましくは、RAIG1ポリペプチドの活性が、参照値域又はコントロールと比較される。好ましい実施態様では、RAIG1ポリペプチドの活性は、第一及び第二のサンプルで、候補物質の存在下又は非存在下で測定され、RAIG1ポリペプチド活性が比較される。この比較に基づいて続いて候補物質をRAIG1ポリペプチドの活性の調節物質と特定することができる。
【0024】
RAIG1ポリペプチドの活性は、下流のエフェクター[例えば第2のメッセンジャー(例えばcAMP、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)のレベル又は活性(ただしこれらに限定されない)]に対するその作用を検出することによって、触媒活性若しくは酵素活性を検出することによって、レポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼ)の誘発を検出することによって、又は細胞反応(例えば増殖、分化又は形質転換)を検出することによって評価することができる(活性測定技術については例えばUS5,401,639を参照されたい)。続いて、前記候補物質の作用をコントロール物質と比較することによって、前記候補物質がRAIG1ポリペプチドの活性の調節物質であると同定することができる。適切なコントロール物質にはPBS又は通常の食塩水が含まれる。
別の実施態様では、物質(例えば酵素)又はその生物学的に活性な部分が特定される(前記物質はRAIG1ポリペプチド又は核酸の生成若しくは分解に必要であるか、又はRAIG1ポリペプチドの翻訳後改変に必要である)。一次スクリーニングでは、実質的に純粋な、天然の若しくは組換え発現されたRAIG1ポリペプチド、RAIG1核酸又は細胞抽出物、又は天然の若しくは組換え発現されたRAIG1ポリペプチド又は核酸を含む他のサンプルを、RAIG1ポリペプチド若しくは核酸のプロセッシングに必要である可能性がある複数の候補物質(例えばライブラリーとして存在する複数の物質、ただし前記に限定されない)と接触させて前記のような物質を特定する。RAIG1ポリペプチド又は核酸の生成、分解又は翻訳後改変を調節する前記候補物質の能力は、当業者に公知の方法によって決定することができる。前記方法にはフローサイトメトリー、放射能標識、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、免疫沈澱及びウェスタンブロット分析又はノーザンブロット分析が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0025】
さらに別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドを発現する細胞を複数の候補物質と接触させる。そのような物質のRAIG1ポリペプチド又は核酸の生成、分解又は翻訳後改変を調節する能力は、上記に記載したような当業者に公知の方法によって決定することができる。
ある実施態様では、RAIG1ポリペプチドの発現を調節(すなわちアップレギュレート又はダウンレギュレート)する物質が細胞をベースとするアッセイ系で特定される。したがって、RAIG1ポリペプチド又は核酸を発現する細胞集団を候補物質と接触させ、RAIG1ポリペプチド又は核酸の発現を変化させる前記候補物質の能力が参照値域又はコントロールとの比較によって決定される。別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドを発現する第一及び第二の細胞集団を候補物質又はコントロール物質と接触させ、RAIG1ポリペプチド又は核酸の発現を変化させる前記候補物質の能力は、第一及び第二の細胞集団間のRAIG1ポリペプチド又は核酸の発現レベルにおける相違を比較することによって決定される。さらに別の実施態様では、第一の集団におけるRAIG1ポリペプチド又は核酸の発現は、さらに参照値域又はコントロールと比較することができる。所望の場合は、このアッセイを用いて、複数の候補物質(ライブラリー)をスクリーニングすることができる。細胞は例えば原核細胞由来(例えば大腸菌)又は真核細胞由来(例えば酵母又は哺乳類)でもよい。さらにまた、前記細胞はRAIG1ポリペプチド又は核酸を内因的に、又は遺伝子工学により発現させることができる。前記候補物質のRAIG1ポリペプチド又は核酸の発現を変化させる能力は当業者に公知の方法によって決定することができる。前記方法には例えばフローサイトメトリー、放射能標識、シンチレーションアッセイ、免疫沈澱、ウェスタンブロット分析又はノーザンブロット分析が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0026】
別の実施態様では、RAIG1ポリペプチド又は核酸の発現を調節する物質は動物モデルで特定される。適切な動物の例にはマウス、ラット、ウサギ、サル、モルモット、イヌ及びネコが含まれるが、ただしこれらに限定されない。好ましくは、使用される動物は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)のモデルを提示している。したがって、第一及び第二の哺乳類の群に候補物質又はコントロール物質を投与し、第一及び第二の哺乳類群間の発現レベルの相違を比較することによって、RAIG1ポリペプチド又は核酸の発現を調節する前記候補物質の能力が決定される。所望の場合には、第一及び第二の哺乳類群におけるRAIG1ポリペプチド又は核酸の発現レベルは、コントロール哺乳類群におけるRAIG1ポリペプチド又は核酸のレベルと比較することができる。前記候補物質又はコントロール物質は、当業界で公知の手段によって投与することができる(例えば経口的に、直腸から、又は非経口的に(例えば腹腔内に又は静脈内に))。ポリペプチド又は核酸の発現の変化は上記で概略した方法によって評価することができる。特にある実施態様では、発症を遅らせるか、又は疾患の進行を遅らせるために治療的に有効な物質は、症状の軽減又は改善(例えば腫瘍サイズの減少が含まれるが、ただしこれに限定されない)をモニターすることによって特定することができる。癌を熟知する医師は公知の技術を用いて、候補物質が疾患に附随する症状の1つ又は2つ以上に変化を与えたか否かを決定することができる。
【0027】
物質、特にRAIG1ポリペプチドの活性を調節(例えば刺激又は阻害)する作用をもつ小分子を、構造を基にしてデザインする方法でもRAIG1ポリペプチドを用いることができることは当業者にはまた理解されよう。前記方法は以下の工程を含む:
1)前記ポリペプチドの三次元構造を決定する工程;
2)前記ポリペプチド内の蓋然性の高い反応性部位又は結合部位の三次元構造を推論する工程;
3)前記推論された反応性部位又は結合部位と、反応又は結合すると予想される候補物質を合成する工程;及び
4)前記候補物質が、前記ポリペプチドの活性を調節することができるか否かをテストする工程。
上記で述べた方法が反復プロセスであり得るということは、理解されよう。
【0028】
本発明はさらに、RAIG1ポリペプチド若しくは核酸と相互作用するか又は前記の発現若しくは活性を調節する本発明で有用な物質、RAIG1ポリペプチド、抗体及びRAIG1核酸、並びに本明細書に記載される治療のためのその使用を提供する。以下では、治療で有用な物質、RAIG1ポリペプチド及びRAIG1核酸は“活性物質”と称される。特定の活性物質又は活性物質の組合せを用いて疾患若しくは症状を治療又は予防する方法について言及するとき、そのような言及は、前記疾患若しくは症状の治療又は予防のための医薬品の製造において前記活性物質又は活性物質の組み合わせを使用することを含むことは理解されよう。
したがって、本発明は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の予防及び/又は治療の方法を提供し、前記方法は、前記対象者に少なくとも1つの本発明の活性物質の治療的に有効な量を投与することを含む。
本発明の活性物質を(ヒト又は家畜の)治療に使用するために、前記活性物質は通常は標準的な製薬慣行にしたがって、例えば活性物質と医薬的に許容できる担体とを混合することによって医薬組成物として製剤化されるであろう。したがって、本発明のさらに別の特徴にしたがえば、少なくとも1つの本発明の活性物質及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。前記医薬組成物は癌の予防又は治療に特に有用である。ある特徴では、前記医薬組成物はワクチンとして有用であり、したがって任意の付加的成分がワクチンとしての使用のために許容されるであろう。さらにまた、1つ又は2つ以上のアジュバントをそのようなワクチン調製物に添加することができることは当業者には理解されよう。
【0029】
本発明の活性物質は薬剤の投与に通常用いられる任意の経路によって投与することができる。例えばそれらは、非経口的に、経口的に、局所的に(頬側、舌下又は経皮を含む)又は吸入によって投与することができる。任意の事例におけるもっとも適切な投与経路は、個々の活性物質、関与する癌、対象者、並びに疾患の性質及び重篤度、並びに対象者の健康状態に左右される。
活性物質は、1つ又は2つ以上の他の治療的に活性を有する物質(例えば抗癌剤)と組み合わせて、例えば同時に、連続して、又は別々に投与することができる。
活性物質の投与されるべき用量は、個々の活性物質、関与する癌、対象者、疾患の性質及び重篤度、対象者の健康状態、並びに選択される投与経路にしたがって変動するであろう。適切な用量を当業者は容易に決定できるであろう。ヒト及び動物での癌の治療のためには、用量は0.01mg/kg〜750mg/kgの範囲であろう。ヒト及び動物での癌の予防のためには、用量は0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲であろう。
【0030】
組成物は、投与の方法に応じて0.1重量%から、好ましくは10〜60重量%の本発明の活性物質を含むことができる。
医薬組成物は、単位用量当たり予め定められた量の本発明の活性物質を含む単回投与剤形として都合よく提供することができる。そのような単位量(unit)は、治療される症状、投与経路並びに年齢、体重及び対象者の状態に応じて、例えば0.01mg/kg〜750mg/kg(ただしこの量に限られない)を含むことができる。好ましい組成物は、上記に記載したような一日用量若しくは副次用量(sub-dose)の活性物質、又はその適切な部分を含む組成物である。
本発明の活性物質の適切な量及び個々の投薬の間隔は、治療される症状の性質及び範囲、投与の形態、経路及び部位、治療される個々の対象者にしたがって決定され、そのような最適なものは通常の技術によって決定することができることは当業者には理解されよう。さらにまた、最適な治療過程(すなわち限定された日数について1日当たり与えられる本発明の活性物質の投与回数)は、通常の治療決定検査過程を用いて当業者が確認できることも当業者には理解されよう。
【0031】
投薬計画は最適な所望の反応を提供できるように調節される。例えば、1回だけのボーラス投与でもよいし、一定期間の間に数回に分割して投与してもよいし、また用量は治療状況の緊急性の指標に比例して減少若しくは増加させることができる。
本発明で使用される医薬的に許容できる担体は、例えば投与経路に応じて多様な形態をとることができる。
経口投与のための組成物は液体又は固体であろう。経口用液体調製物は、例えば水性又は油状の懸濁物、溶液、乳液、シロップ又はエリキシルの形であるか、又は水若しくは他の適切な賦形剤により使用前に再構成される乾燥生成物として提供することができる。経口用液体調製物は、懸濁剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルミニウムステアレートゲル又は水素添加食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアラビアゴム;水;非水性賦形剤(食用油を含むことができる)、例えばアーモンド油、油性エステル(例えばグリセリン、プロピレングリコール又はエチルアルコール);保存料、例えばメチル若しくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸;香料を含むことができ、着色剤なども用いることができる。
【0032】
経口用固体調製物(例えば散剤、カプセル及び錠剤)の場合には、担体、例えば澱粉、砂糖、微晶質セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを含むことができる。投与の容易さのゆえに、錠剤及びカプセルがもっとも有利な経口投与用単位剤形であり、その場合には固体の医薬用担体が一般的に用いられる。上記に説明した一般的な剤形の他に、本発明の活性物質はまた制御放出手段及び/又は送達装置によって投与することができる。錠剤及びカプセルは通常の担体又は賦形剤、例えば結合剤、例えばシロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、又はポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、砂糖、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトール又はグリシン;打錠滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール又はシリカ;崩壊剤、例えばジャガイモ澱粉;又は許容可能な湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムを含むことができる。錠剤は、通常の製薬慣行で周知の方法にしたがって標準的な水性又は非水性技術により被覆することができる。
【0033】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は別々の単位量(例えばカプセル、カシェ又は錠剤)として提供することができ、各々は予め定められた量の活性物質を、粉末若しくは顆粒として、又は溶液若しくは懸濁液(水性液、非水性液、水中油乳濁液又は油中水乳濁液中の懸濁液)として含む。そのような組成物は任意の調剤方法よって製造できるが、いずれの方法も、活性物質を担体(1つ又は2つ以上の必要な成分を構成する)と結合させる工程を含む。一般的には、前記組成物は、均質及び密に活性成分と液体担体又は微細分割固形担体と、又はその両者と混合し、続いて必要な場合には生成物を所望の形状に成形することによって製造することができる。例えば錠剤は、場合によって1つ又は2つ以上の付属成分と一緒に圧縮又は型成形することによって製造できる。
圧縮錠剤は、適切な機械で活性物質を自由に浮遊する形態(例えば粉末又は顆粒)として圧縮(場合によって結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、表面活性剤又は分散剤と混合)することによって製造できる。型成形錠剤は、不活性な液状希釈剤で湿らせた粉末化物質混合物を適切な機械で型成形することによって製造することができる。望ましくは、各錠剤は約1mg〜約500mgの活性物質を含み、各カシェ又はカプセルは約1〜500mgの活性物質を含む。
【0034】
本発明の活性物質を含む組成物はまた粉末形又は液体濃縮物として提供することができる。通常の水溶性賦形剤(例えばラクトース又はショ糖)を前記粉末に取り入れてその物理的特性を改善することができる。したがって、特に適切な本発明の散剤は50〜100%w/w、好ましくは60〜80%w/wの前記の組合せ、及び0〜50%w/w,好ましくは20〜40%w/wの通常の賦形剤を含む。獣医用として用いるときは、前記の散剤は動物の飼料に例えば中間プレミックスの手段によって添加するか、又は動物の飲み水に希釈することができる。
経口投与の場合の本発明の液体濃縮物は適切には水溶性物質の組合せを含み、場合によって獣医用として許容可能な水に混和性の溶媒、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールフォーマル又はそのような溶媒を含むことができる(前記溶媒は30%v/vまでのエタノールと混合される)。
非経口投与に適した医薬組成物は、界面活性剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース)と適切に混合した水との本発明の活性物質の溶液又は懸濁液として提供することができる。分散液もまたグリセロール、液状ポリエチレングリコール及びその油中混合物中で調製することができる。通常の貯蔵及び使用条件下では、微生物の増殖を防ぐためにこれらの調製物は保存料を含む。
【0035】
注射可能な用途に適した剤形には水性又は非水性無菌的注射溶液、及び水性又は非水性無菌的懸濁液が含まれる。前記注射溶液は抗酸化剤、緩衝液、制菌剤及び前記組成物を対象のレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができる。前記懸濁液は懸濁剤及び増粘剤(thickening agent)を含むことができる。即時注射溶液、分散液及び懸濁液を無菌的散剤、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
前記組成物は、単回投与又は複数回投与容器(例えば封入アンプル及びバイアル)で提供してもよい。さらに安定性を強化するために凍結乾燥状態で保存してもよい。前記は使用直前に無菌的な液状担体(例えば注射用の水)の添加を必要とするだけである。前記無菌的液状担体は別個のバイアル又はアンプルで提供することができ、溶媒又は分散媒体であって、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、前記の適切な混合物及び植物油を含む。有利には、局所麻酔、保存料及び緩衝剤のような物質を前記無菌的液状担体に含むことができる。
【0036】
ある実施態様では、本発明の活性物質はin vivoでの適切な分布を担保するために例えばリポソームとして製剤化することができる。リポソームの製造方法については例えばUS4,522,811、US5,374,548及びUS5,399,331を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は器官に選択的に輸送され、したがって薬物送達の標的への誘導を強化する1つ又は2つ以上の成分を含むことができる(例えば以下を参照されたい:V. Ranade, 1989, J. Clin. Pharmacol. 29:685)。
典型的な標的誘導成分には葉酸又はビオチン(例えばUS5,416,016);マンノシド(Umezawa et al., 1988, Biochem. Biophys. Res. Comm. 153:1038);及び抗体(P. Bloeman et al., 1995, FEBS Lett. 357:140; M. Qwais et al., 1995, Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);表面タンパク質Aレセプター(Briscoe et al., 1995, Am. J. Physiol. 1233:134)(別種のレセプターも本発明の活性成分と同様に本発明の成分を構成することができる);psi20(Schreier et al., 1994, J Biol. Chem. 269:9090)が含まれる(さらにまた以下も参照されたい:K, Keinanen & M. Laukkanen, 1994, FEBS Lett. 346:123; J. Killion & I. Fidler, 1994, Immunomethods 4:273)。本発明のある実施態様では、本発明の活性成分はリポソームとして製剤化され、より好ましい実施態様では、リポソームは標的誘導成分を含む。もっとも好ましい実施態様では、リポソーム中の治療活性成分はボーラス注射によって腫瘍近位部位に送達される。
【0037】
局所投与に適切な医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁物、粉末、溶液、ペースト、ゲル、薬剤含有包帯、スプレー、エアゾル若しくはオイル、経皮装置、ダスティング粉末などとして製剤化できる。これらの組成物は活性物質を収納する通常の方法により製造することができる。したがって前記組成物はまた、適合する通常の担体及び添加物、例えば保存料、薬剤の浸透を促進する溶媒、クリーム又は軟膏には皮膚軟化剤さらにローションにはエタノール又はオレイルアルコールを含むことができる。そのような担体は組成物の約1%〜約98%まで存在することができる。より一般的には、それらは組成物の約80%までを形成するであろう。単なる例示として言えば、クリーム又は軟膏は、約5〜10重量%の活性物質を含む、十分な量の親水性物質及び所望の粘稠性を有するために十分な量の水を混合することによって製造される。
経皮投与に適切な医薬組成物は、個々の分離したパッチとして提供することができる。前記パッチは、レシピエントの表皮と長時間にわたって密接な接触を維持することが意図されてある。例えば、活性物質はイオン導入によってパッチから供給することができる。
【0038】
外部組織(例えば口及び皮膚)への適用のためには、前記組成物は好ましくは局所軟膏又はクリームとして用いられる。軟膏として製剤化されるときは、活性物質は、パラフィンに混和性又は水に混和性の軟膏基剤とともに用いることができる。また別には、活性物質は水中油クリーム基剤又は油中水基剤とともにクリームとして製剤化できる。
口内の局所投与に適切な医薬組成物にはロゼンジ、パスチル及び口内洗滌液が含まれる。
目の局所投与に適切な医薬組成物には点眼液が含まれ、この場合、活性物質は適切な担体(特に水性溶媒に溶解又は懸濁される。前記組成物にはまた上記のような局所軟膏又はクリームが含まれる。
担体が固体である直腸投与に適した医薬組成物は、もっとも好ましくは単位用量の座薬として提供される。適切な担体にはカカオ脂若しくは他のグリセリド又は当業界で一般的に用いられる物質が含まれ、座薬は、便利には軟化又は溶融担体とを組合せて混合し、続いて冷却しさらに型成形して生成することができる。それらはまた浣腸として投与することもできる。
膣投与に適切な医薬組成物はペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫又はスプレー組成物として提供することができる。前記は当業界で一般的に用いられる皮膚軟化剤又は基剤を含むことができる。
【0039】
さらに別の実施態様では、本発明は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用される医薬組成物の調製で少なくとも1つのRAIG1ポリペプチドの使用を提供する。好ましくは、組換えRAIG1ポリペプチドは、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療用医薬組成物の製造で使用される。特にある実施態様では、RAIG1ポリペプチドは別のポリペプチド(例えばHIV/Tatタンパク質のタンパク質形質導入ドメイン、前記は細胞内への融合タンパク質の進入を促進する(S. Asoh et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:17107-17112))と融合され、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療用医薬組成物の製造で使用するために提供される。
組換えRAIG1ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作を施された宿主細胞から当業界で周知の方法によって調製することができる。したがって、本発明はまた、RAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸を含む発現系、そのような発現系を用いて遺伝子操作を施された宿主細胞、及び組換え技術によるRAIG1ポリペプチドの製造にも関する。無細胞翻訳系もまた組換えポリペプチドの製造に用いることができる。前記無細胞翻訳系は、例えばウサギ網状赤血球溶解物、コムギ麦芽溶解物、SP6/T7 in vitro T&T及びRTS100大腸菌転写翻訳キット(Roche Diagnostics Ltd., Lewes, UK)、並びにTNT Quick組合せ転写/翻訳系(Promega UK, Southampton, UK)である。
【0040】
組換えRAIG1ポリペプチドの生成のためには、宿主細胞に遺伝子工学操作を施しRAIG1核酸の発現系又はその部分を取り込ませることができる。そのような取り込みは当業界で周知の、例えば以下の方法を用いて実施することができる:リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAD-デキストラン仲介トランスフェクション、トランスベクション、マイクロインジェクション、陽イオン性脂質仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、擦過ローディング、弾道導入又は感染(例えば以下を参照されたい:Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, 1986; Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, 1989)。
宿主細胞の代表例には、細菌細胞、例えば大腸菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、ストレプトミセス及び枯草菌細胞;真菌細胞、例えば酵母細胞及びアスペルギルス細胞;昆虫細胞、例えばドロソフィラS2及びスポドプテラSf9細胞;動物細胞、例えばCHO、COS、HeLa、C127、3T3、HEK293、BHK及びボウズメラノーマ細胞;並びに植物細胞が含まれる。
【0041】
多様な発現系を用いることができる。前記は、例えば染色体系、エピソーム系及びウイルス由来系、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、酵母エピソーム由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来、ウイルス(例えばバキュロウイルス、パポーバウイルス(例えばSV40)、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス及びレトロウイルス)に由来するベクター、並びに前記の組合せに由来するベクター、例えばプラスミドとバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するもの、例えばコスミド及びファージミドであるが、ただしこれらに限定されない。前記発現系は、発現を引き起こすとともに発現を調節する制御領域を含むことができる。一般的には、核酸を維持、増殖又は発現させ、宿主内でポリペプチドを生成することができる系又はベクターを用いることができる。適切な核酸配列は、周知の多様な日常的技術(例えば上掲書(Sambrook et al.)に記載されているようなもの)のいずれかによって発現系に挿入することができる。適切な分泌シグナルをRAIG1ポリペプチド内に取り込ませ、翻訳されたタンパク質を小胞内腔、細胞周辺腔又は細胞外環境に分泌させることができる。これらのシグナルはRAIG1ポリペプチドにとって内因性であってもよいが、またそれらは異種のシグナルであってもよい。
【0042】
ある実施態様では、RAIG1ポリペプチドは単離形で提供され、さらに少なくともある程度精製されたRAIG1ポリペプチドを含む。RAIG1ポリペプチドは組換え方法を用いて製造しても、合成により製造しても、又は前記の方法を組合せて製造してもよい。RAIG1ポリペプチドは実質的に純粋な形態、換言すれば他のタンパク質を実質的に含まない形態で提供することができる。したがって、RAIG1ポリペプチドは、前記が主要な成分として存在する(すなわち、溶媒又は担体を除いて重量/重量基準で測定したとき少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%のレベルで存在する)組成物として提供することができる。
RAIG1ポリペプチドを細胞によるスクリーニングアッセイで用いるために発現させる場合は、前記ポリペプチドを細胞表面で産生させるのが好ましい。この場合には、細胞はスクリーニングアッセイで使用する前に採集することができる。RAIG1ポリペプチドが培養液中に分泌される場合は、前記ポリペプチドを単離するために培養液を回収することができる。細胞内で産生される場合は、RAIG1ポリペプチドの回収前に、先ず細胞を溶解する必要がある。
【0043】
RAIG1ポリペプチドは、以下を含む周知の方法によって組換え細胞培養から回収及び精製することができる:硫安若しくはエタノール沈澱、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、遠心分離方法、電気泳動方法及びレシチンクロマトグラフィー。ある実施態様では前記方法の組合せが用いられる。別の実施態様では、高性能液体クロマトグラフィーが用いられる。さらに別の実施態様では、RAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて、RAIG1ポリペプチドを含むサンプルから前記サンプルを枯渇させるか、又は前記ポリペプチドを精製することができる。RAIG1ポリペプチドを単離及び精製中に変性させたときは、当業界で周知の技術を再折り畳みに用いて、RAIG1ポリペプチドの天然の構造又は活性をもつ構造を再生させることができる。
また別の実施態様では、本発明は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用される医薬組成物の調製において少なくとも1つのRAIG1核酸の使用を提供する。
【0044】
特別な実施態様では、ハイブリダイズRAIG1核酸分子をアンチセンス分子として用い、相補性RAIG1核酸と結合させることによってRAIG1ポリペプチドの発現を変化させ、さらに癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療又は予防で用いることができる。アンチセンス核酸は、RAIG1ポリペプチドをコードするRNA(好ましくはmRNA)の一部分と相補的ないくらかの配列によりハイブリダイズすることができるRAIG1核酸を含む。アンチセンス核酸は、前記のようなポリペプチドをコードするmRNAのコード及び/又は非コード領域と相補的であろう。もっとも好ましくは、RAIG1ポリペプチドの発現はアンチセンス核酸の使用によって阻害される。したがって、本発明は、RAIG1ポリペプチドをコードする遺伝子又はcDNAに対してアンチセンスである、少なくとも8つのヌクレオチドを含む核酸の治療的又は予防的使用を提供する。
【0045】
別の実施態様では、癌の症状は、周知の遺伝子“ノックアウト”リボザイム又は三重ヘリックス法を併用して本明細書で定義されたポリペプチドをコードする遺伝子配列を用い、前記ポリペプチドの遺伝子発現を低下させて、RAIG1ポリペプチドのレベル又は活性を低下させることにより緩和することができる。前記のアプローチでは、リボザイム又は三重ヘリックス分子を用いて、前記遺伝子の活性、発現又は合成を調節し、したがって癌の症状が緩和される。そのような分子は、変異又は非変異標的遺伝子の発現を低下又は阻害するようにデザインすることができる。そのような分子の生成及び使用のための技術は当業者には周知である。
内因性RAIG1ポリペプチド発現はまた、標的誘導相同組換えを用いて前記ポリペプチドをコードする遺伝子又はそのような遺伝子のプロモーターを不活化又は“ノックアウト”することによって低下させることができる(例えば以下を参照されたい:Smithies et al., 1985, Nature 317:230-234; Thomas & Capecchi, 1987, Cell 51:503-512; Thompson et al., 1989, Cell 5:313-321; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438)。例えば、内因性遺伝子(前記ポリペプチドをコードする遺伝子のコード領域又は調節領域のどちらか)と相同なDNAによってフランキングされている機能をもたないポリペプチドをコードする変異遺伝子(又は完全に無関係のDNA配列)を用いて(選択マーカー及び/又は負の選択マーカーと一緒に又はそれらを使用せずに)、標的遺伝子を発現する細胞にin vivoでトランスフェクトすることができる。標的誘導相同組換えによる前記DNA構築物の挿入は、標的遺伝子の不活化をもたらす。
【0046】
別の実施態様では、核酸は遺伝子治療により投与される(例えば以下を参照されたい:T. Hoshida et al., 2002, Pancreas 25:111-121; Y. Ikuno, 2002, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 43:2406-2411; C. Bollard, Blood 99:3179-3187; E. Lee, 2001, Mol. Med. 7:773-782)。遺伝子治療とは発現された核酸又は発現することができる核酸の対象者への投与を意味する。当業界で利用可能ないずれの遺伝子治療方法も本発明にしたがって用いることができる。ある特徴では、医薬組成物はRAIG1核酸を含み、前記核酸はRAIG1ポリペプチド又はそのキメラタンパク質を適切な宿主で発現する発現ベクターの一部分である。特にそのような核酸は、前記ポリペプチドのコード領域に機能できるように連結されたプロモーターを有し、前記プロモーターは誘発性又は構成性(及び場合によって組織特異的)である。特にまた別の実施態様では、そのコード配列及び所望される他の任意の配列がゲノムの所望の位置で相同組換えを促進する領域によってフランキングされ、したがって前記核酸の染色体の中での発現が提供される核酸分子が用いられる(Koller & Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438)。
患者の体内へのRAIG1核酸の送達は直接的であってもよい。この場合、患者は前記核酸又は核酸保持ベクターに直接暴露される。このアプローチはin vivo遺伝子治療として知られている。また別には、核酸の患者の体内への送達は間接的であってもよい。この場合細胞が先ずin vitroで前記核酸により形質転換され、続いて患者に移植される。このアプローチはex vivo遺伝子治療として知られている。
【0047】
RAIG1核酸は、標準的なクローニング及びスクリーニング技術によりヒト細胞のmRNAに由来するcDNAライブラリーから発現された配列のタグ(EST)分析を用いて入手できる(M. Adams et al., 1991, Science 252:1651-1656; M. Adams et al., 1992, Nature 355:632-634; M. Adams et al., 1995, Nature 377:Suppl:3-174)。RAIG1核酸はまた天然の供給源(例えばゲノムDNAライブラリー)から得ることもでき、また周知で市場でも入手できる技術を用いて合成することもできる。上記に述べたRAIG1ポリペプチドのコード配列を含むRAIG1核酸を前記ポリペプチドの組換えの製造に用いることができる。RAIG1核酸は、単独で成熟ポリペプチドのコード配列を含むことができるが、また読み枠内に他のコード配列(リーダー配列若しくは分泌配列をコードするもの、プレ-、プロ-又はプレプロ-タンパク質配列、切断可能配列又は他の融合ペプチド部分(例えばアフィニティータグ)、又は前記ポリペプチドの生成時に安定性を付与する付加配列)とともにコード配列を含んでいてもよい。好ましいアフィニティータグには、複数のヒスチジン残基(例えば以下を参照されたい:Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824)、FLAGタグ、HAタグ又はmycタグが含まれる。RAIG1核酸はまた非コード5’及び3’配列(例えば転写、非翻訳配列、スプライシング及びポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、及びmRNA安定化配列)を含むことができる。
上記のパートb)で言及されているRAIG1ポリペプチド誘導体は1つ又は2つ以上のヌクレオチド置換、付加又は欠失をRAIG1核酸のヌクレオチド配列に導入し、それによって1つ又は2つ以上のアミノ酸置換、付加又は欠失をコードされるタンパク質に導入することによって作製することができる。当業者に公知の標準的技術(例えば位置特異的変異誘発及びPCR仲介変異誘発)を用いて変異を導入することができる。好ましくは、保存的アミノ酸置換が1つ又は2つ以上の予想される非必須アミノ酸残基で実施される。
【0048】
RAIG1ポリペプチド(ヒト以外の種に由来する同族体及びオルソローグを含む)をコードするRAIG1核酸は、以下の工程を含む方法によって入手できる:上記d)−h)に記載したようなRAIG1核酸の配列を有する標識プローブを用いて適切なライブラリーをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でスクリーニングし、前記核酸配列を含む完全長cDNA及びゲノムクローンを単離する。そのようなハイブリダイゼーション技術は当業界で周知である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、実施されるハイブリダイゼーションが約35℃〜約65℃の温度で約0.9Mの塩溶液を用いて達成される場合である。しかしながら、当業者は、変動因子(例えばプローブの長さ、塩基組成、存在イオンのタイプなど)を考慮するために適切にそのような条件を変動させることができよう。高い選択度のためには、比較的ストリンジェントな条件(例えば低塩条件又は高温条件)を用いて二重鎖を形成する。高度にストリンジェントな条件は、0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTA中で65℃でフィルター結合DNAとのハイブリダイゼーション、及び0.1倍のSSC/0.1%のSDS中で68℃での洗滌を含む(F.M. Ausubel et al., eds, 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc., and John Wiley & Sons, Inc., New York, p.2.10.3)。いくつかの応用については、より低いストリンジェンシー条件が二重鎖形成に必要である。中程度にストリンジェントな条件は42℃で0.2倍のSSC/0.1%のSDSでの洗滌を含む(Ausubel et al.上掲書)。ハイブリダイゼーション条件はまた、ホルムアミドを増量させハイブリッド二重鎖を不安定にさせることによってよりストリンジェントにすることができる。したがって、個々のハイブリダイゼーション条件は容易に操作することが可能で、一般的には適切なように選択することができるであろう。一般的には、50%のホルムアミドの存在下で都合のよいハイブリダイゼーション温度は以下のとおりである:本明細書で定義したポリペプチドをコードする遺伝子フラグメントと95〜100%同一であるプローブについては42℃;90〜95%同一性については37℃;及び70〜90%同一については32℃。
【0049】
多くの事例で、単離されたcDNA配列は不完全であり、その場合ポリペプチドをコードする領域はcDNAの5’末端に達しないで切断されていることは当業者には理解されよう。これは、固有の低い連続移動性(processivity)(ポリメリゼーション反応の間に鋳型に結合し続ける酵素能力の測定値)を有する逆転写酵素が、第一鎖のcDNA合成中にmRNA鋳型のDNAコピーを完成させることに失敗した結果である。
完全長のcDNAを得るか又は短いcDNAを伸長させる方法は当業界では周知である。前記は例えば、RACE(Rapid amplification of cDNA ends(cDNA末端の迅速増幅):Frohman et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8998-9002)。前記技術の最近の改変(マラソン(Marathon, 登録商標)技術(Clontech Laboratories Inc.)によって具体化された)によってより長いcDNAの検索は顕著に簡略化された。この技術では選択した組織から抽出したmRNAから抽出したcDNAが用いられ、続いてアダプター配列が各末端に連結される。続いて、遺伝子特異的及びアダプター特異的オリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用い、PCRを実施して失われたcDNAの5’末端の増幅が実施される。続いて入れ子(nested)プライマーを用いてPCR反応を繰り返す。前記プライマーは増幅産物とアニールするようにデザインされており、典型的にはアダプター配列のさらに先の3’配列とアニールするアダプター特異的プライマー及び公知の遺伝子配列のさらに先の5’配列とアニールする遺伝子特異的プライマーである。続いてこの反応の生成物をDNA配列決定で分析し、前記生成物を現存のcDNAに直接結合させて完全な配列を与えるか、又は5’プライマーのデザインのために新しい配列情報を用いて別個の完全長PCRを実施することによって完全長のcDNAを構築することができる。
【0050】
本発明のさらに別の特徴は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用されるワクチン組成物に関する。上記で述べたRAIG1ポリペプチド又は核酸を、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療用ワクチンの製造で用いることができる。そのような物質は抗原性及び/又は免疫原性を有するであろう。抗原性物質は、抗体を生じるために用いることができるか、又は実際に対象者で抗体反応を誘導することができるタンパク質又は核酸を含む。免疫原性物質は、対象者で免疫反応を誘導することができるタンパク質又は核酸を含む。したがって、後者の事例では、前記タンパク質又は核酸は抗体反応を惹起するだけでなく、さらに抗体によらない免疫反応、すなわち細胞性又は液正反応を惹起することができる。前記ポリペプチドの抗原性又は免疫原性に必要な抗原性又は免疫原性ポリペプチドの領域(すなわちエピトープ)を特定することが可能であることは当技術分野では周知である。当業者に周知のアミノ酸及びペプチドの特性を用いて、RAIG1ポリペプチドの抗原性指標(ある領域が抗原性を有する蓋然性の高さ)を予測することができる。例えば、“ペプチド構造”プログラム(Jameson & Wolf, 1988, CABIOS, 4(1):181)及び“スレッディング”(Thresding)(Y. Altuvia et al., 1995, J. Mol. Biol. 249:244)と称される技術を用いることができるが、ただしこれらに限定されない。したがって、RAIG1ポリペプチドは、1つ又は2つ以上のそのようなエピトープを含むか、又はそれらの抗原性/免疫原性特性を維持するためにそのような領域と十分に類似しているであろう。
【0051】
ポリペプチド又は核酸は胃で分解されるのであろうから、ワクチン組成物は好ましくは非経口的に投与される(例えば皮下、静脈内又は皮内注射)。
したがってさらに別の実施態様では本発明は以下を提供する:
a)対象者での免疫反応誘導に際して前記のようなワクチンの使用;
b)対象者で癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する方法、又は癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)に対して対象者にワクチン接種する方法であって、前記方法は、有効量のRAIG1ポリペプチド又は核酸を好ましくはワクチンとして投与する工程を含む。
さらに別の特徴では、本発明は、対象者で癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する方法を提供し、前記方法は、前記対象者にRAIG1ポリペプチドと結合する治療的に有効な量の少なくとも1つの抗体を投与することを含む。もっとも好ましくは、抗体はRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する。ある実施態様では、RAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて前記ポリペプチドの活性を阻害することができる。
したがって、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用される医薬組成物の製造で使用することを目的として、特異的にRAIG1ポリペプチドを認識する抗体の使用が提供される。
【0052】
抗体(場合によって治療成分と結合されてある)は、単独投与又は細胞毒性因子及び/又はサイトカインと併用投与される治療組成物として用いることができる。特に、本発明の抗体は、治療物質又は薬剤成分と結合させて、本来の生物学的反応を改変することができる。前記治療物質又は薬剤成分は古典的化学的治療物質に限られると解されるべきではない。例えば前記薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。そのような成分には例えば以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):毒素、例えばアブリン、リシンA、シュウドモナス外毒素、又はジフテリア毒素;タンパク質、例えば腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、血栓因子又は抗脈管形成因子(例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン);又は生物学的反応調節物質、例えばリンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経増殖因子(NGF)又は他の増殖因子。他の治療成分には放射性核種(例えば111In及び90Y);抗生物質(例えばカリケアミシン);又は薬剤(例えばアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミン)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0053】
そのような治療成分を抗体に結合させる技術は当業界では周知である(例えば以下を参照されたい:Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeld et al. eds., 1985 pp.243-56, Alan R. Liss, Inc; Hellstrom et al.,“Antibodies for Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery, 2nd Ed., Robinson et al., 1987, pp.623-53, Marcel Dekker, Inc.; Thorpe,“Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies’84: Biological and Clinical Applications; Pinchera et al., 1985, eds., pp.475-506;“Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabelled Antibody in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy, Baldwin et al.(eds.), pp.303-16, Academic Press; Thorpe et al., 1982 “The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62:119-58 and Dubowchik et al., 1999, Pharmacology and Therapeutics, 83:67-123)。
また別には、抗体は第二の抗体を結合させて抗体ヘテロ結合物を形成させることができる(米国特許4,676,980を参照されたい)。
【0054】
他の実施態様では、本発明は抗体(又はその機能的に活性なフラグメント)の融合タンパク質を提供する。例えば(ただしこれに限定されないが)この場合、前記抗体又はそのフラグメントは共有結合(例えばペプチド結合)を介して(場合によってN-末端又はC-末端で)別のタンパク質(又はその部分;好ましくはそのタンパク質の少なくとも10、20又は50アミノ酸部分)のアミノ酸配列と融合される。好ましくは、抗体又はそのフラグメントは他のタンパク質と前記抗体の定常領域のN-末端で結合される。上記に述べたように、そのような融合タンパク質は、本明細書に記載したポリペプチドの枯渇又は精製を促進し、in vivoでの半減期を延長し、さらに上皮バリヤーを貫通する抗原の免疫系への送達を強化することができる。
RAIG1ポリペプチド又はそれらを発現する細胞を用いて、例えば前記RAIG1ポリペプチドを特異的に認識する抗体を生成することができる。特異的に認識又は特異的に結合とは、前記抗体がRAIG1ポリペプチドに対し他のポリペプチドよりも強い親和性を有することを意味する。RAIG1ポリペプチドに対して生成された抗体は、動物(好ましくはヒト以外の動物)に周知で日常的なプロトコルを用いてポリペプチドを投与することによって入手することができる。
【0055】
さらに別の実施態様では、本発明は、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を対象者でスクリーニング及び/又は診断するため、又は抗癌治療(例えば抗乳癌、抗膵臓癌、抗肺癌、抗肝癌、抗卵巣癌、抗結腸癌及び/又は抗骨肉腫治療)の有効性をモニターするために、少なくとも1つのRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体の使用を提供する。
ヒトの組織及び/又はそのサブフラクション(例えば膜、サイトゾル又は核サブフラクション(ただしこれらに限定されない))でのRAIG1発現を検出することにより、とりわけ癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の診断のためにRAIG1抗体を用いることができる。
RAIG1抗体には、機能的に活性なフラグメント、誘導体又はアナログが含まれ、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二特異的抗体、ヒト化若しくはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント及びF(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる。ヒト化抗体は、ヒト以外の種に由来する1つ又は2つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒトの免疫グロブリン分子に由来する枠組み領域をもつヒト以外の種に由来する抗体分子である。抗体には免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)又はサブクラスに属する。
【0056】
モノクローナル抗体は、当業界で公知の任意の方法、例えばハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB-細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp77-96, Alan R. Liss, Inc., 1985)によって製造できる。
キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントで構成されるように遺伝子工学処理を施された免疫グロブリン遺伝子によってコードされた抗体である。これらのキメラ抗体はおそらく抗原性が低いであろう。二重特異性抗体は当業界で公知の方法によって作製できる(Milstein et al., 1983, Nature 305:537-539; WO93/08829, Traunecker et al., 1991, EMBO J. 10:3655-3659)。
本発明で使用される抗体はまた当業界で公知の種々のファージディスプレー方法を用いて作製することができる。前記には以下の文献で開示されたものが含まれる:Brinkman et al., 1995, J. Immunol. Methods, 182:41-50; Ames et al., 1995, J. immunol. Methods 184:177-186; Kettleborough et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persic et al., 1997, Gene 187:9-18; Burton et al., 1994, Advances in Immunology 57:191-280; WO90/02809; WO91/10737; WO92/01047; WO92/18619; WO93/11236; WO95/15982; WO95/20401; US5,698,426; US5,223,409; US5,403,484; US5,580,717; US5,427,908; US5,750,753; US5,821,047; US5,571,698; 5,427,908; US5,516,637; US5,780,225; US5,658,727; US5,733,743; US5,969,108。一本鎖抗体(例えばUS4,946,778で記載されたようなもの)の製造技術もまた応用してNKCC1ポリペプチドに対する一本鎖抗体を作製することができる。さらにまた、トランスジェニックマウス又は他の生物(他の哺乳類を含む)を用いてヒト化抗体を発現させてもよい。
【0057】
抗体と抗原との相互作用の検出は、検出可能な物質、例えば酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、補欠分子族(例えばストレプトアビジン、アビジン、ビオチン)、蛍光物質(例えばウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン)、化学発光物質(例えばルミノール)、生物発光物質(例えばルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン)、放射性各種(例えば125I、131I、111In、99Tc)、陽電子放出金属又は非放射性常磁性金属イオン(US4,741,900参照)(ただしこれらに限定されない)に抗体を結合させることによって促進することができる。
本発明の抗体には、例えば任意のタイプの分子の共融結合によって改変されたアナログ及び誘導体が含まれる(ただしこのような改変に限定されない)。好ましくは、前記結合は免疫特異的結合を損なわない。
【0058】
要約すれば、本発明はさらに以下を提供する:
(i)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する医薬の製造におけるRAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸の使用;
(ii)対象者に治療的に有効な量のRAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸を投与することを含む、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を対象者で治療する方法;
(iii)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用されるRAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸;
(iv)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する医薬の製造における、RAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体の使用;
(v)RAIG1ポリペプチドに特異的な抗体の治療的に有効な量を対象者に投与することを含む、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を対象者で治療する方法;
(vi)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用されるRAIG1ポリペプチドに特異的な抗体;
(vii)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する医薬の製造における、RAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸と相互作用するか、又はそれらの発現若しくは活性を調節する物質の使用;
(viii)RAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸と相互作用するか、又はそれらの発現若しくは活性を調節する物質の治療的に有効な量を対象者に投与することを含む、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)を治療する方法;
(ix)癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の治療で使用される、RAIG1ポリペプチド又はRAIG1核酸と相互作用するか、又はそれらの発現若しくは活性を調節する物質。
本発明の各実施態様の好ましい特徴は他の実施態様の各々と同様でそれぞれ必要な変更が加えられる。本明細書で引用した全ての刊行物(特許及び特許出願を含むが、ただしこれらに限定されない)は参照により本明細書にその全体が含まれる。
本発明を以下の実施例を参照しながらこれから説明するが、これら実施例は単に例示であり、本発明の範囲をいかなる態様においても制限するものと解してはならない。
【実施例1】
【0059】
(実施例1:乳房、腎臓、膵臓及び肝臓細胞株からのRAIG1タンパク質の単離)
乳癌、腎臓癌、膵臓癌及び肝臓癌細胞株の膜のタンパク質をSDS-PAGEで分離して、分析した。
(細胞株の粗分画)
[1a−細胞培養]
膵臓腫瘍細胞株HPAFIIをEMEM+2mMのGlut+1mMのNaPyr+1%NEAA+10%FBS+1.5g/Lの重炭酸ナトリウムで培養した。膵臓腫瘍細胞株キャパン(Capan)2はマッコイ培養液(McCoy’s)+2mMのグルタミン+10%FBS+1.5g/Lの重炭酸ナトリウム(キャパン2)で培養した。
乳癌細胞株T47D及びMCF7プールは、10%のウシ胎児血清、2mMのグルタミン及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMF12培養液で培養した。
肝癌細胞株SK3B2.1-7及びSKHep1プールはEMEM+2mMのGul+1mMのNaPyr+1%のNEAA+10%FBSで培養した。
使用した腎臓癌細胞株はCAK12+A498+SW839+CAKI2プールであった。CAKI2はマッコイ培養液+2mMのGlu+10%FBSで、A498及びSW839細胞はDMEM+2mMのGlu+10%FBSで培養した。全ての細胞は95%の空気及び5%の二酸化炭素の湿潤雰囲気下で37℃にて増殖させた。
【0060】
[1b−細胞分画及び細胞質膜の作製]
細胞株から精製膜調製物を単離した。粘着細胞(2x108)をPBSで3回洗滌し、プラスチックの細胞リフターで掻きとった。細胞を1000xgで5分4℃で遠心し、細胞ペレットをホモジェナイズ緩衝液(250mMショ糖、10mMHEPES、1mMのEDTA、1mMのバンデート及び0.02%のアザイド、プロテアーゼインヒビター)に再懸濁した。約95%の細胞が破壊されるまでボールベアリングホモジナイザーを用いて細胞を破砕した。文献(C. Pasquali et al., 1999, J. Chromatography 722:89-102)に記載された方法を用いて膜を分画した。前記分画した細胞を3000xgで10分4℃で遠心し、除核(postnuclear)上清を60%のショ糖緩衝剤(cushion)上に重層し、100,000xgで45分遠心した。パスツールピペットを用いて膜を採集し、予め作製した15〜60%のショ糖勾配上に重層し、100,000xgで17時間遠心した。分別ショ糖勾配から得られたタンパク質を4−20%の1D-ゲル(Novex)で泳動し、ウェスタンブロット分析に付した。アルカリホスファターゼ及びトランスフェリン免疫反応性を有するが、オキシドレダクターゼII又はカルネキシン免疫反応性をもたない画分をプールし、細胞質膜画分とした。
【0061】
[1c−1D-ゲル分析のための細胞質膜画分の調製]
トランスフェリン免疫反応性を有するがオキシドレダクターゼII又はカルネキシン免疫反応性をもたない細胞質膜画分を同定した。これらのショ糖画分をプールし、10mMのHEPES、1mMのEDTA、1mMのバナジン酸塩、0.02%のアザイドを用いて少なくとも4倍に希釈した。前記希釈ショ糖分画をSW40又はSW60の遠心管に加え、100,000xgで45分、ゆっくりと加速及び減速しながら遠心した。上清を膜ペレットから取り除き、ペレットをPBS-CMで3回洗滌した。前記膜ペレットを63mMのトリス塩酸(pH7.4)中の2%SDSに溶解させた。タンパク質アッセイを実施し、続いてメルカプトエタノール(最終2%)、グリセロール(10%)及びブロモフェノールブルー(最終0.0025%)を添加した。1μg/μLの最終濃度のタンパク質を1D-ゲル装荷に用いた。
【0062】
[1d−1D-ゲル技術]
タンパク質又は膜ペレットを1D-サンプル緩衝液に溶解し(約1mg/mL)、前記混合物を95℃で5分加熱した。
サンプルは、プレキャスト8−16%泳動グラジエントゲル(Bio-Rad(Bio-Rad Laboratories, Hemel Hempstead, UK)より購入)で1D-ゲル電気泳動を用いて分離させた。界面活性剤(detergent)抽出で得られたタンパク質混合物の30−50 μgを含むサンプルを、マイクロピペットを用いてスタッキングゲルのウェルに装荷した。画像化の後で分離ゲルの外挿による計算のために分子量マーカー(10、15、25、37、50、75、100、150及び250kDa)を含むウェルを加えた。タンパク質の分離は30mAの電流を、約5時間又はブロモフェノールブルーマーカー染料がゲルの底に達するまで、流して行った。
電気泳動の後で前記ゲルプレートをこじ開けて、ゲルを固定液(10%酢酸、40%エタノール、50%の水)に入れ、一晩振盪した。続いてゲルをプライマー溶液(ミリ-Q水中の7.5%酢酸、0.05%SDS)中で振盪して30分プライムし、続いて振盪しながら蛍光染料とともに3時間インキュベートした。好ましい蛍光染料はUS6,335,446に開示されている。シプロレッド(Sypro Red, Molecular Probes, Inc., Eugene, Oregon)がこの目的に適切な選択染料である。
染色ゲルのデジタル画像は、青色蛍光モードでストームスキャナー(Storm Scanner, Molecular Dynamics Inc., USA)でスキャンすることによって得られた。前記捕捉画像を用いてゲル内タンパク質分解のために切り出すべきゲル領域を決定した。
【0063】
[1e−選択タンパク質の回収及び分析]
77kDaに対応するゲルの垂直レーンをステンレススチールの外科用メスの替刃又はPEEKゲルカッター(OGS)のどちらかを用いて切り出した(前記カッターによって、特定のタンパク質バンドを採集することなくゲルの全長が連続的に切り出される)。
トリプシン(改変トリプシン、Promega, Wisconsin, USA)によるゲル内消化を用いてタンパク質を処理し、トリプシン消化ペプチドを得た。回収したサンプルを2つに分割した。MALDI分析の前に、サンプルを脱塩し、C18ジップチップス(Zip Tips(登録商標)、Millipore, Bedford, MA)を用いて濃縮した。タンデム質量分析用サンプルは、C18SPE材を組込んだナノLCシステム(LC Packings, Amsterdam, The Netherlamds)を用いて精製した。回収したペプチドプールは、MALDI-TOF-質量分析(Voyager STR, Applied Biosystems, Framingham, MA)により、放出について337nmの波長のレーザー及びリフレクトロン分析モードを用いて分析した。プールはまたマイクロマス四重極時間飛行(Micromass Quadrupole Time-of-Flight、Q-TOF)質量分析計(Micromass, Altrincham, UK)を用いてナノLCタンデム質量分析(LC/MS/MS)により分析した。部分的アミノ酸配列決定並びに肝及び肺癌細胞膜タンパク質の同定のために、トリプシン消化ペプチドの未解釈(uninterpreted)タンデム質量スペクトルを、NCBI(National Center for Biotechnology Information)で維持されている非重複的データベースの登録タンパク質で構築された公開ドメインタンパク質データベースに対して、SEQUEST検索プログラム(Eng et al., 1994, J. Am. Soc. Mass Spectrom. 5:976-989)ヴァージョンv.C.1を用いて検索した(NCBIは以下でアクセスできる:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。データベースの特定のための基準には、以下が含まれるトリプシンの切断特異性、及びデータベースから返されたペプチドの一組のa、b及びyイオンの検出。SEQUESTプログラムを用いたスペクトル−スペクトル相関性によるタンパク質の同定に続いて、MALDI-TOF質量スペクトルで検出された質量を特定されたタンパク質内のトリプシン消化ペプチドに割り当てた。SEQUESTプログラムを用いたトリプシン消化ペプチドの未解釈MS/MSスペクトルによる検索を通してアミノ酸配列を同定できなかった場合は、当業界で公知の方法を用いて、ペプチドのタンデム質量スペクトルを手動で解釈した(ペプチドイオンの低エネルギー断片化質量スペクトルの解釈の場合は、以下を参照されたい:Gaskell et al., 1992, Rapid Commun. Mass Spectrom. 6:658-662)。
2つのタンデムスペクトル(図1で太字及び下線で表示)及び1つの質量マッチング(mass match)(図1で太字で表示)が、GenBankアクセッション番号(AF095448及びAAC98506、並びにSwissProt O95357)とマッチすることが見出された。
【実施例2】
【0064】
(実施例2:定量的RT-PCR(Taqman)分析を用いたRAIG1の正常組織分布及び異常組織でのアップレギュレーション)
リアルタイムRT-PCRを用いて一連の腫瘍組織及び対応するコントロールにおけるRAIG1の発現を定量的に測定した。正常及び乳癌組織サンプルについての倫理的承認は外科手術時に得られた(University of Oxford, UK)。結腸、肺、卵巣しょう液性嚢胞腺癌、卵巣腺癌サンプル、転移性骨肉腫及び膵臓腫瘍サンプルは以下から入手した:Ardais Corp., Peterborough Tissue Bank, Human Research Tissue Bank, Peterborough District Hospital, UK及びClinomics Biosciences Inc., MD。PCRに用いたプライマーは以下のとおりであった:
センス:5’-ctcgtgaagaagagctatggtc-3’(配列番号3)
アンチセンス:5’-cactcttcaggacagagttagc-3’(配列番号4)
【0065】
5ngのcDNA、SYBRグリーン配列検出試薬(PE Biosystems)並びにセンス及びアンチセンスプライマーを含む反応物をABI7700配列検出系(PE Biosystems)でアッセイした。PCR条件は、50℃2分を1サイクル;95℃10分を1サイクル;95℃15秒、65℃1分を40サイクルであった。PCR生成物の蓄積は、SYBRグリーン蛍光の増加としてリアルタイムで測定し、データはシークェンスディテクタープログラムv1.6.3(PE Biosystems)を用いて分析した。最初の鋳型コピー数と蛍光及び増幅サイクルとの関係を示す標準曲線を、増幅PCR生成物を鋳型として用いて作製し、各サンプルにおけるRAIG1コピー数の計算に用いた。
比較的低いRAIG1発現レベルが正常組織で認められた(図3−8;それぞれの図でスケールは異なっていることに注意されたい)。
対照的に、RAIG1発現レベルは、乳癌サンプルでそれらの対応するコントロールと比較して増加し、7腫瘍サンプルのうち5つは1ngのcDNA当たりの発現レベルの強い増加を示した(図3)。
【0066】
RAIG1の発現を13の結腸癌サンプルで調べ、10サンプルで正常結腸のコントロールサンプルと比較して発現の増加が観察され、2つのサンプルではほとんど変化は示されず、1つの腫瘍サンプルは小さな減少を示した(図4)。膵臓腫瘍サンプルでは、コントロール膵臓組織に対してRAIG1mRNA発現の増加が8つの腫瘍サンプルのうち6つで認められた(図5)。肺腫瘍サンプルでは、コントロール肺組織サンプルに対してRAIG1発現増加は4/6サンプルで示された(図6)。
さらにまた、RAIG1の発現は、リンパ節転移がある20人の患者及びリンパ節転移がない20人の患者の乳房組織で調べた。2つのグループで顕著な相違は観察されなかったが、正常乳房組織サンプルとの比較によって、RAIG1は、一部の患者でコントロールと比較したときリンパ節転移の有無にかかわりなくアップレギュレートされることが示された(図7)。
RAIG1mRNAの発現を5つの卵巣しょう液性嚢胞腺癌サンプル、6つの卵巣腺癌サンプル、3つの転移性骨肉腫サンプル及びコントロール組織並びに細胞株で調べた。RAIG1mRNA発現レベルの増加が、卵巣腺癌サンプルの2/6で、転移性骨肉腫サンプルの2/3で認められたが、卵巣しょう液性液性嚢胞腺癌サンプルでは増加は認められなかった(図8)。
【0067】
このデータは、RAIG1は多数の腫瘍原性細胞株(乳房、肝臓及び膵臓細胞株を含む)で発現され、さらに選ばれた癌(乳癌、結腸癌、卵巣腺癌、骨肉腫、肺癌及び膵臓癌を含む)で増加することを示し、RAIG1はおそらく癌の標的として有用であることを示唆している。前記の発見はこれまでに報告されたRAIG1mRNAの発現レベルについての発見からは予想されなかった。RAIG1は最初、胎児及び成人の肺組織で高レベルのmRNA発現を示す新規な遺伝子のcDNAとしてディファレンシャルディスプレーを用いて同定された(Y. Cheng & R. Lotan, 1998, J. Biol. Chem. 273:35008-35015)。その発現はオールトランス型レチノイン酸(ATRA)によって誘導されると報告された。5つの頭部及び頚部癌のうち3つ及び4つの肺癌細胞株(低いRAIG1mRNAレベルを示す)がATRAの処理でmRNAの増加を示したが(Ceng & Lotan, 上掲書)、前記の著者らが示したRAIG1の発現レベルはきわめて変動的であった(検出不能レベルから高レベル発現まで)。別のグループは、RAIG1は限定的な発現パターンを示し、肺組織で最高であることを報告した(H. Braunaer-Osbourne & P. Krogsgaard-Larsen, 2000, Genomics 65:121-128)。しかしながら対照的に、我々は、特に腫瘍サンプルによって示されるレベルと比較した場合、正常な肺組織では、RAIG1mRNAの高い発現は認められなかった(確かにコントロール組織サンプルで低レベルの発現を観察はしたが)。したがって、多様な癌タイプではRAIG1mRNAの発現の増加が明瞭に示され、癌(例えば乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫)の診断、治療及び/又は予防におけるRAIG1の有用性が示唆された。これらのことは、文献からは明白ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における癌をスクリーニング及び/又は診断する方法、及び/又は癌治療の有効性をモニターする方法であって、
該対象者から得た生物学的サンプルにおいて、以下の(i)又は(ii)を検出及び/又は定量する工程を含む、前記方法:
(i)以下のa)〜c)のいずれかのRAIG1ポリペプチド:
a)配列番号1のアミノ酸配列を含むもの、又は前記アミノ酸配列から成るもの;
b)配列番号1のアミノ酸配列に対し、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する誘導体であって、RAIG1の活性を保持するもの;又は、
c)配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであって、長さが少なくとも10アミノ酸であり且つ前記フラグメントの全長にわたって少なくとも70%の相同性を有するもの;又は
(ii)以下のd)〜h)のいずれかの核酸分子:
d)配列番号2のDNA配列若しくはそのRNA等価物を含むもの、又は前記DNA配列又はRNA等価物から成るもの;
e)前記d)の配列と相補的な配列を有するもの;
f)前記a)〜c)のいずれかで定義されたポリペプチドをコードする配列を有するもの;
g)前記d)、e)及びf)の核酸分子のいずれかと実質的な同一性を示す配列を有するもの;又は
h)前記d)、e)、f)又はg)のフラグメントであって、長さが少なくとも10ヌクレオチドであるもの。
【請求項2】
ポリペプチド又は核酸のレベルが、先に決定される参照値域又はコントロールと比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出工程が、
(a)請求項1の(i)で定義されたポリペプチドに特異的な捕捉試薬と、前記サンプルを接触させること;及び
(b)捕捉試薬とサンプル中の前記ポリペプチドとの間で結合が生じるか否かを検出すること;
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が、直接的又は間接的に標識された検出試薬を用いて捕捉ポリペプチドを検出することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
捕捉試薬が固相に固定されている、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1の(i)で定義された1つ又は2つ以上のRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体、その機能的に活性なフラグメント、誘導体又はアナログ。
【請求項7】
ポリペプチドが、請求項1の(i)で定義された1つ又は2つ以上のRAIG1ポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いて、検出及び/又は定量される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
抗体が、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化若しくは二重特異性抗体であるか、又は治療成分、検出可能な標識、二次抗体若しくはそのフラグメント、細胞毒性物質又はサイトカインに結合されている、請求項6に記載の抗体又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1の(i)で定義されたRAIG1ポリペプチドに特異的な捕捉試薬、試薬及び使用説明書を含む、診断キット。
【請求項10】
癌の治療用医薬品の製造における、以下の(i)〜(iii)のいずれかの使用:
(i)請求項1の(i)で定義される、少なくとも1つのRAIG1ポリペプチド;
(ii)請求項1の(ii)で定義される、核酸分子;又は
(iii)ドミナントネガティブ変異体であって、配列番号1のアミノ酸配列に対し、1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、改変、欠失又は挿入を有する、請求項1の(i)で定義されたポリペプチドの誘導体。
【請求項11】
癌の治療用医薬品の製造における、請求項6又は8に定義された抗体の使用。
【請求項12】
医薬組成物がワクチンである、請求項10の(i)又は(ii)に記載の使用。
【請求項13】
請求項1の(i)で定義されたポリペプチドと相互作用する抗癌剤をスクリーニングする方法であって、
(a)前記ポリペプチドを候補物質と接触させる工程;及び
(b)前記候補物質が前記ポリペプチドと相互作用するか否かを決定する工程;
を含む前記方法。
【請求項14】
候補物質とRAIG1ポリペプチドとの間の相互作用の決定が、前記候補物質及び前記ポリペプチドの結合を定量的に検出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(a)請求項1の(i)で定義されるRAIG1ポリペプチドの発現又は活性;又は
(b)請求項1の(ii)で定義された核酸分子の発現;
を調節する抗癌剤をスクリーニングする方法であって、
(i)候補物質の存在下での前記ポリペプチドの発現若しくは活性又は前記核酸分子の発現を、候補物質の非存在下又はコントロール物質の存在下での前記ポリペプチドの発現若しくは活性又は前記核酸分子の発現と比較する工程;及び
(ii)前記候補物質が、前記ポリペプチドの発現若しくは活性又は前記核酸分子の発現を変化させるか否かを決定する工程;
を含む前記方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドの発現若しくは活性のレベル又は前記核酸分子の発現レベルが、予め決定された参照値域と比較される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
パート(ii)が、更なる試験又は抗癌剤としての治療的若しくは予防的使用のために、前記ポリペプチドの発現若しくは活性又は前記核酸分子の発現を調節する物質を選択することを更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
該ポリペプチドと相互作用するか、又は該ポリペプチドの発現若しくは活性又は該核酸分子の発現を変化させる、請求項13〜15のいずれかに記載の方法によって同定される物質。
【請求項19】
請求項1に定義されるRAIG1ポリペプチドと相互作用する物質、又はRAIG1ポリペプチドの発現若しくは活性又は請求項1に定義されるRAIG1核酸分子の発現を変化させる物質の、癌の治療用医薬品の製造における使用。
【請求項20】
前記癌が乳癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、結腸癌及び/又は骨肉腫である、請求項1〜5、7及び13〜17のいずれか1項に記載の方法又は請求項19記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−117358(P2010−117358A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284846(P2009−284846)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2003−584724(P2003−584724)の分割
【原出願日】平成15年4月10日(2003.4.10)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】