説明

癌の治療のための、フルオロシチジン誘導体を含む改変放出組成物

本発明は、フルオロシチジン誘導体、好ましくはカペチタビンを含む複数粒子性改変放出組成物、及び、改変放出コーティング、改変放出マトリックス物質又はその両方を含む改変放出組成物に関する。経口送達に続いて、該組成物は、操作において、投与後約6〜約12時間で、拍動性の様式で、該フルオロシチジン誘導体を送達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療における使用に適した、カペチタビンのようなフルオロシチジン誘導体を含む、複数粒子性改変放出組成物に関する。特に、本発明は、カペチタビンのようなフルオロシチジン誘導体の制御された送達のための新規の剤形に関する。さらに、本発明は、患者の服薬率及び治療上の結果を増強するためにデザインされた投与量パッケージ(dosage package)に関する。
【背景技術】
【0002】
5-FU プロドラッグとも称される、5-フルオロウラシル(5-FU)の多くの前駆体が、抗腫瘍剤として有用であることが知られている。しかしながら、腸及び免疫抑制の毒性のために、5-FU前駆体の生物変換効率は、腫瘍を病んでいる患者を治療するためには不十分である。そのような5-FU前駆体の改変が、改善された生物変換効率と毒性を示すフルオロシチジン誘導体を発達させてきた。
【0003】
フルオロシチジン誘導体は、例えば、米国特許第 4,966,891号「フルオロシチジン誘導体」及び米国特許第5,472,949号「N4-(置換-オキシカルボニル)-5'-デオキシ-5-フルオロシチジン化合物、組成物及びその使用方法」(その開示はすべて、参照によって本明細書に完全に援用される)に開示されている。米国特許第4,966,891号は、5'デオキシ-5-フルオロシチジン誘導体、それらの製造方法、前記誘導体を含む抗腫瘍組成物及び被験者において腫瘍成長を阻害するためのその使用を開示している。米国特許第5,472,949号は、N4-(置換-オキシカルボニル)-5'-デオキシ-5-フルオロシチジン誘導体、それらの製造方法、前記誘導体を含む抗腫瘍組成物及び宿主中の腫瘍の治療におけるそれらの使用を開示している。
【0004】
カペチタビンは、化学名5'デオキシ-5-フルオロ-N-[(ペンチロキシ)カルボニル]-シチジンを有するフルオロシチジン誘導体である。カペチタビンは、359.35の分子量を持ち、以下の構造式を有する:
【化1】

【0005】
カペチタビンは、20℃で26 mg/mlの水溶解度を有する、白からオフホワイトの結晶性粉末である。
【0006】
カペチタビンは、インビボで5-FUに酵素的に転換される。カペチタビンは、消化管から容易に吸収される。肝臓において、60 kDaのカルボキシエステラーゼは、該化合物の多くを5'-デオキシ-5-フルオロシチジン(5'-DFCR)に加水分解する。引き続いて、腫瘍を含むほとんどの組織に見られる酵素であるシチジンデアミナーゼが、5'-DFCRを5'デオキシ-5-フルオロウリジン(5'-DFUR)に転換する。次いで、チミジンホスホリラーゼが、5'-DFURを活性薬物5'-FUに加水分解する。多くの組織がチミジンホスホリラーゼを発現する。しかしながら、ヒト癌腫は、この酵素を周辺の正常な組織よりも高濃度で発現する。
【0007】
正常な細胞と腫瘍細胞の両方が5-FUを5-フルオロ-2'-デオキシウリジン一リン酸(FdUMP)及び5-フルオロウリジン三リン酸(FUTP)に代謝する。それらの代謝産物は、二つの異なるメカニズムによって細胞傷害を引き起こす。第一に、FdUMP及び葉酸のコファクター、N5-10-メチレンテトラヒドロ葉酸は、チミジル酸シンターゼ(TS)と結合し、共有結合的に結合した三元複合体を形成する。この結合は、2'-デオキシウリジレートからのチミジレートの形成を阻害する。チミジレートは、DNA合成に必須であるチミジン三リン酸の必要な前駆体である。それ故、チミジレートの欠乏は、細胞分裂を阻害できる。第二に、核転写酵素はRNA合成の間に、ウリジン三リン酸(UTP)の代わりにFUTPを誤って組み入れることができる。この代謝的な誤りは、RNAプロセシング及びタンパク質合成を妨げることができ、最終的に細胞死をもたらす。
【0008】
カペチタビンは、肝臓のカルボキシエステラーゼに対するその感受性、サルにおける経口生物学的利用能及びヒト癌異種移植片における有効性に基づいて、高い治療的価値を有するフルオロシチジン誘導体とみなされる。カペチタビンは経口的に与えられて、血漿又は正常な筋組織におけるよりも腫瘍内で5-FUの実質的に高い濃度をもたらす。腫瘍の5-FUレベルもまた、等毒性投与での5-FUの腹腔内投与によって達成されるものよりも非常に高い。この5-FUの腫瘍選択的送達は、他のフルオロピリミジンよりも大きな有効性とより有利な安全性プロフィールを保証する。24のヒト癌異種移植モデル研究において、カペチタビンは、5-FU、UFT又はその中間体代謝産物5'-DFURよりも広い投与量範囲でより有効であり、より広いスペクトルの抗腫瘍活性を有した。該異種移植片のカペチタビンに対する感受性は、腫瘍のdThdPアーゼレベルに相関した。さらにその上、腫瘍におけるdThdPアーゼによる5'-DFURの5-FUへの転換は、カペチタビンに抵抗性の異種移植片モデルにおいて不十分であった。加えて、カペチタビンの有効性は、dThdPアーゼ上方制御因子によって、例えばタキサン及びシクロホスファミドによって、及びX線照射によって、増強された。カペチタビンの有効性は、それ故、dThdPアーゼの状態に基づいて最も適切な患者集団を選択することによって、及び/又は、それをdThdPアーゼ上方制御因子と組合せることによって、最適化される。カペチタビンは、マウス腫瘍モデルにおける強力な抗転移性及び抗悪液性の作用のような、5-FUには見られないさらなる特徴を有する。それらのプロフィールに基づいて、カペチタビンは癌治療において実質的な可能性を有し得る。
【0009】
カペチタビンはHoffman-La Roche Inc.(Nutley, New Jersey)によって、登録商標XELODAの下に提供される。XELODA(登録商標)は、150 mg及び500 mgの用量でのカペチタビンの経口投与のための、両凸の楕円形のフィルムコーティング錠剤として供給されている。フィルムコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、タルク、二酸化チタン、及び合成の黄色及び赤色鉄酸化物を含有している。
【0010】
XELODA(登録商標)は、結腸直腸癌及び乳癌の治療に有効であることが証明されている。XELODA(登録商標)は、フルオロピリミジン療法単独での治療が好ましい場合に、転移性の結腸直腸癌の患者の最も重要な治療として示されている。XELODA(登録商標)単独又はドセタキセルのような他の抗癌剤との組合せにおけるXELODA(登録商標)の何れかは、他の化学療法措置に抵抗性である転移性の乳がんの治療において有効であることが証明されている。
【0011】
XELODA(登録商標)の推奨される用量は、1日2回(朝及び晩;合計の1日の投与量が2500 mg/ m2相当)経口的に投与される1250 mg/m2が2週間、続いて、1週間の間の休息期間の3週間サイクルである。XELODA(登録商標)錠剤は、食後30分以内に水と共に嚥下される。ドセタキセルとの組合せにおいて、XELODA(登録商標)の推奨される用量は、1日2回の1250 mg/m2を2週間、続いて1週間の休息期間、3週間毎の1時間の静脈内注入での75 mg/m2のドセタキセルとの組合せである。
【0012】
フルオロシチジン誘導体は、癌の治療について高い治療的価値を有する。カペチタビンのようなフルオロシチジン誘導体の投与は1日2回の経口投与を必要とし、厳密な患者の服薬率は、癌の治療におけるフルオロシチジン誘導体の有効性における重大な要因である。さらにその上、そのような頻度の投与は、多くの場合、健康管理ワーカーの注意が必要であり、カペチタビンのようなフルオロシチジン誘導体に関する治療に付随する高コストに寄与する。よって、当該分野においては、それらの問題及び癌の治療におけるそれらの使用に付随する他の問題を克服する、フルオロシチジン誘導体組成物が求められている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の一つの目的は、フルオロシチジン誘導体を含む複数粒子性(multiparticulate)改変放出(modified release)組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、操作において、単峰性様式(unimodal manner)でフルオロシチジン誘導体を送達する、複数粒子性改変放出組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、約6〜約12時間の初期遅延期間の後にその作用成分が迅速に放出される、フルオロシチジン誘導体を含む複数粒子性改変放出組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、侵食性(erodable)の、拡散制御された(diffusion controlled)か又は浸透性(osmotic)形態にある、複数粒子性改変放出組成物を提供することである。
本発明のさらなる目的は、フルオロシチジン誘導体を含む二以上の即時放出(immediate release)剤形の経時的に与えられる投与によって生じる、薬理学的な及び治療学的な効果を実質的に模倣する、即時放出形態のフルオロシチジン誘導体と同時投与される複数粒子性改変放出組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、本発明の複数粒子性改変放出組成物を含む経口剤形を提供することである。
本発明のさらなる目的は、治療的有効量の本発明の複数粒子性改変放出組成物を投与することによる癌の治療方法を提供することである。
【0014】
上記の目的は、本発明の組成物、剤形及び方法によって現実化される。本発明の一つの側面によれば、投与の約6〜約12時間後に活性成分の全てが放出されるように設計された、フルオロシチジン誘導体を含む複数粒子性改変放出組成物が提供される。フルオロシチジン誘導体を含む即時放出剤形との同時投与の場合、得られる血漿プロフィールは、1日2回のXELODA(登録商標)の投与によって得られる血漿プロフィールのような、経時的に与えられる二以上の即時放出剤形の投与によって生じる血漿プロフィールと実質的に同じである。
【0015】
本発明の組成物は、患者の便宜と服薬率を上昇させる、従来の形態のフルオロシチジン誘導体によるよりも少ない頻度での投与を可能にする改変放出の特徴を利用する。該改変放出は、例えば、侵食性製剤、拡散制御製剤又は浸透性制御製剤(osmotic controlled formulation)のような製剤の使用によって達成され得る。一つの態様において、本発明は、操作において、拍動性の様式(pulsatile manner)でフルオロシチジン誘導体を送達する、複数粒子性改変放出組成物に関する。フルオロシチジン誘導体を含む即時放出剤形と同時に晩に投与された場合、本発明の組成物は、その投与量が朝に投与されたかのような擬態血漿プロフィールが得られるように、投与後約6〜約12時間で活性成分を放出する。
【0016】
一つの態様において、該複数粒子性改変放出組成物は、フルオロシチジン誘導体を含み、好ましくはカペチタビン(capecitabine)を含む。該改変放出は、改変放出コーティング(modified release coating)、改変放出マトリックス物質(modified release matrix material)、又は両方の使用によって達成され得る。経口送達に続いて、操作において該組成物は、フルオロシチジン誘導体を単峰性の拍動性の様式で送達する。好ましい改変放出成分(modified release component)は、侵食性製剤、拡散制御製剤及び浸透性制御製剤(osmotic controlled formulations)を含む。好ましくは、該組成物はフルオロシチジン誘導体を約0.1 mg〜約1 gの量で含む。
【0017】
本発明の他の側面によれば、本発明の複数粒子性改変放出組成物を含む経口剤形が提供される。該剤形は、例えば、硬質又は軟質ゼラチンカプセルのような任意の適切な形態、又は錠剤として提供され得る。
【0018】
本発明のさらに他の側面によれば、フルオロシチジン誘導体を含む一以上の即時放出形態と共に充填(packaged)された本発明の一以上の剤形を含む投薬パッケージ(dosing package)が提供される。
【0019】
本発明はさらに、治療的有効量の本発明の組成物を、それらを必要とする癌患者に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0020】
本発明の利点は、従来の複数の即時放出投与措置に必要な投与頻度を減少し、一方で、拍動性の血漿プロフィールに由来する利点をなお維持することを含む。減少した頻度で投与され得る製剤は、患者の服薬率の面から有利である。本発明の利用によって可能にされる投与頻度の減少は、薬物の投与において健康管理ワーカーが費やす時間を減少することによって、健康管理コストを減少させるのに貢献する。
【0021】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明はいずれも代表的で説明的であり、本発明の請求の範囲のさらなる説明を提供するよう意図するものである。他の目的、利点及び新規の特徴は、以降の本発明の詳細な説明から当該分野の技術者には容易に明らかになるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0022】
本明細書及び請求の範囲において用いられる場合、「一つの(a、an)」及び「該(the)」は、他に明らかに指示しない限り、複数の指示物を含む。
用語「粒子性(particulate)」は、ここで用いられる場合、それらの大きさ、形状又は形態学にかかわりなく、分離した粒子、ペレット、ビーズ又は顆粒の存在によって特徴付けられる物質の状態を指す。用語「複数粒子性(multiparticulate)」はここで用いられる場合、それらの大きさ、形状又は形態学にかかわりなく、複数の分離した又は凝集した粒子、ペレット、顆粒又はそれらの混合物を意味する。
【0023】
用語「改変放出(modified release)」はここで用いられる場合、即時ではなく、制御された放出、持続性の放出及び遅延性の放出を包含するよう受取られる放出を意味する。
【0024】
用語「時間遅延(time delay)」はここで用いられる場合、組成物の投与とその活性成分のそれからの放出の間の持続時間を指す。
【0025】
ここで用いられる場合、用語「活性成分」は、一以上のフルオロシチジン誘導体、好ましくはカペチタビンを含む。該フルオロシチジン誘導体は、そのフルオロシチジン誘導体が、粒子に付着させられることによって、又は他の結合によって、封入されたか又はその中に閉じ込められた、微小粒子性薬物送達システムに含まれることができる。
【0026】
本発明の粒子は、改変放出コーティング、改変放出マトリックス物質、又はその両方を含み得る、改変放出成分を有する。本発明の該改変放出粒子は、米国特許第6,228,398号(Devane et al.)(本明細書において、その全てが参照によって援用される)に開示された形態で提供されることもできる。経口送達に続いて、本発明の該組成物は、単峰性様式でフルオロシチジン誘導体を送達する。
【0027】
該組成物からの該フルオロシチジン誘導体の改変放出は、コーティング、又はマトリックス物質、又はその両方の使用によって達成され得、投与とフルオロシチジン誘導体の放出の間の約6〜約12時間の時間遅延をもたらす。該時間遅延の間は、その組成及び/又は改変放出コーティングの量を変化させることによって、及び/又は、その組成及び/又は使用される改変放出マトリックス物質の量を変化させることによって変化され得る。時間遅延を変化させるために使用するのに適切な製剤は、侵食性製剤、拡散制御製剤及び浸透性制御製剤を含む。そのような製剤の使用によって、該時間遅延の間に所望の血漿プロフィールを生じるように設計できる。
【0028】
一つの態様において、該組成物は、粒子の構造上の完全性(integrity)が体内で時間の経過とともに変質する、侵食性製剤の形態であることができる。そのような一つの態様において、活性成分は、時間の経過と共にヒトの摂取の作用によって改変放出コーティング及び/又はマトリックス物質の崩壊によって放出される。
【0029】
他の態様において、該組成物は、粒子が液体媒体中で分散する拡散制御製剤の形態であることができる。そのような一つの態様は、米国特許第6,586,006号(Roser et al. )に開示されている(その全てが参照によって本明細書に援用される)。
【0030】
他の態様において、該組成物は、その組成物からの活性成分の放出が浸透によって制御される、浸透性制御製剤の形態であることができる。そのような一つの態様は、米国特許第6,110,498号(Rudnic et al.)に開示されており(その全てが参照によって本明細書に援用される)、それは、可溶性形態における制限された水溶解性を有する治療剤の放出を開示している。該送達系は、膨張するポリマー(swellable polymers)を含まないコアを含み、また、膨張しない(nonswelling)可溶化剤及び吸上剤を含む。該可溶性の治療剤は、錠剤の半透性のコーティングにおける通路を通って送達される。
【0031】
米国特許第5,814,979 B2号(Rudnic et al.)(その全てが参照によって本明細書に援用される)は、以下を含む浸透性の医薬送達システムを開示している:(a) 医薬送達の間、その完全性が維持され、また、少なくとも一つのそれを通る通路を有する、半透性壁; (b) 前記壁の内側の単一で均一な組成物、該組成物は本質的に以下から成る:(i)薬学的に活性な薬剤;(ii) 該薬学的に活性な薬剤の溶解性を増強する、少なくとも一つの非膨張性(non-swelling)可溶化剤;(iii) 少なくとも一つの非膨張性の浸透性薬剤;及び(iv) 入ってくる水溶性の液体と接触する該薬学的な薬剤の表面積を増強する、該組成物の全体に分散された非膨張性の吸上剤(wicking agent)。
【0032】
該組成物は、フルオロシチジン誘導体の生物学的利用能又は治療効果を改変するための、例えば、エンハンサー化合物又は感作化合物のようなさらなる成分をさらに含み得る。
【0033】
ここで用いられる場合、用語「エンハンサー」は、ヒトのような動物の胃腸管を渡っての正味の(net)輸送を促進することによって、活性成分の吸収及び/又は生物学的利用能を増強できる化合物を指す。適切なエンハンサーには、単独で又は組合せての何れかで、
中程度の鎖の脂肪酸並びに塩、エステル、エーテル及びグリセリド及びトリグリセリドを含むそれらの他の誘導体;エチレンオキシドを、脂肪酸、脂肪アルコール、アルキルフェノール又はソルビタン又はグリセロールの脂肪酸エステルと反応させて調製できるもののような、イオン性及び非イオン性界面活性剤;チトクロムP450阻害剤;胆汁酸塩及び胆汁酸:ミセルキレート剤;P-糖タンパク質阻害剤などが含まれる。
【0034】
該組成物の投与に付随する血漿プロフィールは、活性成分の血漿濃度の一以上のピークが観察される、「拍動性のプロフィール」として記述することができる。一つのピークを含む拍動性のプロフィールは「単峰性(unimodal)」と記載することでき、低濃度のくぼみによって分離された二つのピークを含む拍動性のプロフィールは、「二峰性(bimodal)」として記載することができ、及びそれぞれの隣接する対が低濃度のくぼみによって分離された三以上のピークを含む拍動性のプロフィールは、「多峰性(multimodal)」として記載することができる。
【0035】
即時放出(IR)剤形が周期的な間隔で投与される従来の頻度の投薬量措置は、典型的には、拍動性の血漿プロフィールを生じる。血漿中の薬物濃度のピークは、連続した投与時点の間に発達するくぼみを有してIR投与量のそれぞれの投与後に観察される。即時放出組成物と同時の改変放出組成物の同時投与によって生じる該血漿プロフィールは、経時的に与えられる二以上の即時放出剤形の投与によって生じる血漿プロフィールに実質的に類似する。
【0036】
一つの態様において、該活性フルオロシチジン誘導体はカペチタビンであり、及び該組成物は、操作において、単峰性様式でカペチタビンを送達する。他の態様において、該活性フルオロシチジン誘導体はカペチタビンであり、該改変放出組成物は、即時放出形態のカペチタビンと晩に同時投与され、例えば、典型的な抗癌薬物治療措置において二つの即時放出投与量の連続的な投与によって得られる血漿プロフィールを実質的に模倣する血漿プロフィールを生じる。
【0037】
該組成物の放出特性は、例えば、該組成物に用いられるコーティング及び/又はマトリックス物質の量及び/又は種類を変更することによって変化され得る。上記したように、該放出プロフィールは、侵食性製剤、拡散制御製剤又は浸透性制御製剤の選択的な使用によってさらに制御され得る。同様に、組成物の投与によって生じたその血漿濃度曲線は、例えば、該組成物に用いられるコーティング及び/又はマトリックス物質の量及び/又はの種類を変更することによって変化され得る。改変放出組成物の時間遅延の期間に依存して、改変放出及び即時放出形態の同時の投与によって生じた血漿プロフィールにおけるパルスは、よく分離し、明瞭に規定され得るか(例えば、該改変放出組成物の時間遅延が長い場合)、或いは該パルスは、ある程度は上書きされ得る(例えば、該改変放出組成物の時間遅延が短い場合)。
【0038】
一つの態様において、本発明の改変放出組成物は、その改変放出が改変放出コーティング、改変放出マトリックス物質、又はその両方の使用によって現実化される単一の改変放出成分を有する。操作において、そのような改変放出組成物の即時放出形態との同時投与は、即時放出形態に付随する血漿プロフィールにおける第一のピーク及び改変放出成分に付随する血漿プロフィールにおける第二のピークによって特徴付けられる拍動性の血漿プロフィールをもたらす。二以上の改変放出成分が存在する本発明の態様は、血漿プロフィールにおいてさらなるピークを示す。
【0039】
活性成分の二つ(又はそれ以上)のパルスを送達することが望ましい場合に、即時放出形態及び少なくとも一つの改変放出形態の投与は、二つ(又はそれ以上)の投与量単位の経時的な投与の必要がなく有利である。さらに、癌治療の場合、そのような二峰性又は多峰性の血漿プロフィールを生じるために特に有用である。例えば、カペチタビンを用いる典型的な治療措置は、約6〜約12時間離れて与えられる、即時放出投与量製剤の二投与量の投与から成る。この種の措置は、治療的に有効であることが分かっており、広く用いられている。
【0040】
所望の様式でフルオロシチジン誘導体の放出を改変する任意のコーティング物質を用いることができる。特に、本発明の実施において使用するのに適したコーティング物質には、酢酸セルロースフタレート、酢酸セルローストリマレテート(trimaletate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(酢酸ビニル)フタレート、商標ユードラジット(Eudragit)(R)RS及びRLの下に販売されるもののようなアンモニオメタクリル酸コポリマー、商標ユードラジット(R)S及びLの下に販売されるもののようなポリ(アクリル酸)及びポリアクリレート及びメタクリル酸コポリマー、ポリ(ビニルアセタールジエチルアミノ)アセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート、シェラック(shellac)、ヒドロゲル及びゲル形成物質、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルメロース、カルシウムカルメロース、ナトリウムカルボキシメチルスターチ、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、スターチ、及び、水の吸着及びポリマーマトリックスの膨張を促進するようにその架橋結合度が低い、セルロースに基づく架橋結合ポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋スターチ、微結晶性セルロース、キチン、アミノアクリル-メタクリル酸コポリマー(ユードラジット(R) RS-PM、Rohm & Haas)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、アガー、アラビアゴム(gum arabic)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、膨張性親水性ポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキル メタクリレート)(m. wt. 〜5 k-5,000 k)、ポリビニルピロリドン(m. wt. 〜10 k-360 k)、アガー及びカルボキシメチルセルロースの膨張性混合物、無水マレイン酸及びスチレン、エチレン、プロピレン又はイソブチレンのコポリマー、アカシア、カラヤ、トラガカント、アルギン及びグアル(guar)のようなポリサッカリド、ポリアクリルアミド、ポリオックス(R)ポリエチレンオキシド(m. wt. 〜100 k-5,000 k)、アクアキープ(AquaKeep)(R)アクリレートポリマー、ポリグルカンのジエステル、架橋ポリビニルアルコール及びポリN-ビニル-2-ピロリドン、ナトリウムスターチグルコレート(例えば、Explotab(R)、Edward Mandell C. Ltd.)、親水性ポリマー、例えば、ポリサッカリド、メチルセルロース、ナトリウム又はカルシウムカルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ポリエチレンオキシド(例えばポリオクス(Polyox)(R)、Union Carbide)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースプロピオナート、ゼラチン、コラーゲン、スターチ、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸のコポリマー又はメタクリル酸(例えばユードラジット(R)、Rohm and Haas)、他のアクリル酸誘導体、ソルビタンエステル、天然ゴム、レシチン、ペクチン、アルギナート、アンモニアアルギナート、ナトリウムアルギナート、カルシウムアルギナート、カリウムアルギナート、プロピレングリコールアルギナート、アガー、及び、アラビアゴム、カラヤゴム、イナゴマメゴム、トラガカントゴム、カラゲーンゴム、ガーゴム、キサンタンガム、硬化性ゴム及びそれらの混合物及びブレンドのようなゴム、のようなポリマーコーティング物質が含まれる。当該分野の技術者には明らかであるように、可塑剤、潤滑剤、溶媒などのような賦形剤も該コーティングに加えられて良い。適切な可塑剤には、例えば、アセチル化モノグリセリド;ブチルフタリルブチルグリコレート;ジブチルタルトレート;ジエチルフタレート;ジメチルフタレート;エチルフタリルエチルグリコレート;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチン;シトレート;トリプロピオイン;ジアセチン;ジブチルフタレート;アセチルモノグリセリド;ポリエチレングリコール;ヒマシ油;トリエチルシトレート;多価アルコール、グリセロール、アセテートエステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼラート、エポキシジセドタレート、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジ-i-オクチルフタレート、ジ-i-デシルフタレート、ジ-n-ウンデシルフタレート、ジ-n-トリデシルフタレート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルアゼラート、ジブチルセバケートが含まれる。
【0041】
該改変放出成分が改変放出マトリックス物質を含む場合、任意の適切な改変放出マトリックス物質又は適切な改変放出マトリックス物質の組合せが用いられ得る。用語「改変放出マトリックス物質」はここで用いられる場合、それらの中に分散した該フルオロシチジン誘導体の放出を改変できる、親水性ポリマー、疎水性ポリマー及びそれらの混合物を含む。本発明の実行のために適切な改変放出マトリックス物質には、これらに限定されないが、微結晶性セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース及びエチルセルロースのようなアルキルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリビニルアセテート及びそれらの混合物が含まれる。
【0042】
本発明の改変放出組成物は、拍動性の様式で該活性成分の放出を促進する、任意の適切な剤形中に取り込まれてよい。一つの態様において、該剤形は、硬質又は軟質ゼラチンカプセルのような適切なカプセル中に充填されたフルオロシチジン誘導体含有粒子を含む。或いは、該フルオロシチジン誘導体含有粒子は、引き続いてカプセル中に充填され得る小型錠剤に圧縮されてよい(任意にさらなる賦形剤とともに)。他の適切な剤形は、錠剤である。本発明の組成物を作るフルオロシチジン誘導体含有粒子は、さらに、発泡性(effervescent)の剤形又は高速融解(fast-melt)剤形のような、急速溶解(rapidly dissolving)剤形に含まれることもできる。
【0043】
該剤形中に存在するフルオロシチジン誘導体の量は、他の事柄、治療される癌の具体的な種類、患者の感受性、並びに当業者に知られる他の要因に従って変化する治療的有効量である。一つの態様において、該剤形中に存在するフルオロシチジン誘導体の量は、約0.1 mg〜約1 gであり、好ましくは約150 mg〜約500 mgである。
【0044】
本発明はさらに、本発明の組成物の治療的有効量を投与する工程を含む癌の治療方法を提供する。一つのそのような態様において、該組成物は、拍動性の様式で送達されるカペチタビンを含む。
【0045】
[実施例1]
カペチタビンを含有する複数粒子性改変放出組成物
本発明の複数粒子性改変放出組成物は、次のように調製される。
【0046】
(a)カペチタビン含有粒子の調製
カペチタビンの溶液(50:50 ラセミ混合物)は、表1に示される何れかの処方に従って調製される。次いで、該カペチタビン溶液は、例えば、Glatt GPCG3 (Glatt, Protech Ltd., Leicester, UK)流動床コーティング装置を用いて、約16.9% 固体重量増加のレベルまでノンパレイル種(nonpareil seeds)をコーティングし、カペチタビン含有粒子を形成する。
【表1】

【0047】
(b) 改変放出カペチタビン含有粒子の調製
上記の実施例1(a)に従って調製されたカペチタビン含有粒子を、表2に詳述した改変放出コーティング溶液でコーティングすることによって、カペチタビン含有改変放出粒子が調製される。該カペチタビン含有粒子は、例えば流動床コーティング装置を用いて、約30%の重量増加まで変化するレベルにコーティングされる。
【表2】

【0048】
(c)改変放出粒子の封入
上記の実施例1(a)及び(b)に従って調製された改変放出粒子は、全体的な150 mg投与量強度に、Bosch GKLF 4000S 封入装置(encapsulation apparatus)を用いて、サイズ2の硬質ゼラチンカプセルに封入される。本発明の精神又は範囲を離れることなく、本発明の方法及び組成物において種々の改変及び変化が行われ得ることは、当業者には明らかである。よって、本発明は、請求の範囲及びその等価物の範囲内で提供される本発明の改変及び変更を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロシチジン誘導体及び改変放出コーティング又は、代わりに又は付加的に、該組成物が被験者への経口送達に続いて前記フルオロシチジン誘導体を拍動性の様式で送達するような改変放出マトリックス物質を含む、複数粒子性改変放出組成物。
【請求項2】
前記フルオロシチジン誘導体がカペチタビンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記改変放出成分が、侵食性製剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記改変放出成分が拡散制御製剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記改変放出成分が浸透性制御製剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記改変放出成分が改変放出コーティングを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記改変放出成分が改変放出マトリックス物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロシチジン誘導体の量が約0.1 mg〜約1 gである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記フルオロシチジン誘導体の量が約150 mg又は約500 mgである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
実質的に全てのフルオロシチジン誘導体が、患者に投与後約6〜約12時間で放出される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記改変放出成分が、患者に投与後約6〜約12時間の時間遅延に続いて、フルオロシチジン誘導体のパルスを放出することができるpH-依存性ポリマーコーティングを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーコーティングが、メタクリル酸コポリマーを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーコーティングが、メタクリル酸及びアンモニオメタクリル酸コポリマーの混合物を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記メタクリル酸のアンモニオメタクリル酸コポリマーに対する割合が約1:1である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含む剤形。
【請求項16】
請求項2に記載の組成物を含む剤形。
【請求項17】
前記組成物が硬質又は軟質ゼラチンカプセル中に提供される、請求項15に記載の剤形。
【請求項18】
前記組成物が小型錠剤の形態である、請求項17に記載の剤形。
【請求項19】
前記組成物が錠剤の形態に圧縮される、請求項15に記載の剤形。
【請求項20】
前記組成物が急速溶解剤形中に提供される、請求項15に記載の剤形。
【請求項21】
前記組成物が高速融解錠剤として提供される、請求項20に記載の剤形。
【請求項22】
治療的有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項23】
治療的有効量の請求項2に記載の組成物を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項24】
実質的に全てのカペチタビンが、前記組成物の投与後約6〜約12時間で放出される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
治療的有効量のカペチタビンの即時放出組成物を同時投与する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が1日1回投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記組成物が晩に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
カペチタビンの即時放出剤形及び請求項16に記載の剤形を含み、該剤形が共に充填(packaged)されることを特徴とする、組合せ投与量パッケージ(combination dosage package)。

【公表番号】特表2008−535920(P2008−535920A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506628(P2008−506628)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013629
【国際公開番号】WO2006/110800
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507250508)エラン・ファルマ・インターナショナル・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】