説明

癌または前癌性症状およびその他の症状の治療のためのジヒドロピリジン誘導体

癌、前癌性症状およびその他の症状の治療における、式(I)のジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステル誘導体、そのプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩の使用が開示される:
【化1】


ここにおいて、それぞれのR−Rは、同一または異なっており、水素またはC−Cアルキルであり;XおよびXの一方はニトロ基であり、他方は水素であり;それぞれのYおよびYは、同一または異なってよく、塩素、フッ素またはアルコキシで置換されてよいフェニルであり;および、mおよびnは0−4の整数である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌は、世界中で深刻な健康に関する問題である。実際、アメリカにおいて、癌は第2の死の主要な原因である。癌の発見および治療は進歩しているものの、現在利用できる予防もしくは治療のためのワクチンまたは普遍的に成功する方法は存在しない。従来の癌治療は、化学療法および放射線照射のような細胞障害性の治療に集中している。しかしながら、細胞障害性の治療は、癌性の細胞および正常に分裂する細胞の両者に対して無差別的に有害であり、このため重篤な副作用をもたらし、または二次的な癌さえもたらす傾向がある。細胞障害性薬剤の最も共通した毒性の徴候の1つは、骨髄の抑制であり、これは免疫の抑制および造血の機能障害を引き起こし得る。さらに、細胞障害性の治療は、根絶することが次第に困難となる腫瘍を形成する薬剤耐性癌細胞を誘導する。その他の従来の癌治療は手術である。手術が直面する課題は、それが100%の効果を有する必要があるということである。それは、1つの癌細胞でも残っていると、腫瘍が再び作られる可能性があるためである。それゆえ、一般的に化学療法または手術と放射線照射との組み合わせに基づく現在の治療は、癌の治療に不適当であることがわかる。
【0002】
近年、細胞障害性の化学療法において有望な進展があった。癌細胞の特徴は、身体の解剖学的および生理学的完全性をそこない、究極的には患者の死をもたらす、自制のきかない調節不全の増殖である。細胞増殖抑制性の化学療法は、細胞の活性および癌細胞の増殖を遅らせることができる細胞増殖抑制性薬剤を使用して、癌の増殖速度を正常組織のそれにまで減少させることを目的とする。癌細胞の増殖を効果的に制御できれば、癌はもはや末期の病気ではなくなり、むしろその他の慢性的疾病の治療に類似することとなるだろう。さらに、細胞増殖抑制性の化学療法は、従来の細胞障害性薬剤によって引き起こされる正常組織に対する二次的な障害を最小化できる。
【0003】
細胞増殖抑制性薬剤の1種は、抗血管形成剤(別名、血管形成阻害剤)である。実験モデルにおいて、抗血管形成剤は、腫瘍の成長をはぐくみ且つ維持するために必須の血管の発達を阻害することで癌細胞を餓死させることがわかっている。しかしながら、抗血管形成治療は有望である一方、重大な制限がある。現在利用できる抗血管形成薬剤は、非常に高価であり、静脈注射によって投与しなければならず患者は定期的に病院を訪れなければならない。抗血管形成治療の別の欠点は、それが癌の基盤の1つの構成成分のみを標的にすることである。近年の臨床研究から、癌細胞はこの1つの妨害を回避するように進化することが示されている。それゆえ、癌治療のための新たな細胞増殖抑制性薬剤を開発する必要性が明白である。
【0004】
細胞の活性化および増殖は、細胞へのカルシウム流入によって調節されることが知られている。特定の細胞におけるカルシウムの流入は、細胞膜における電気的活性によって制御されており、これらの細胞は「電気的興奮性(electrically excitable)」と呼ばれている。電気的興奮性細胞の例は、神経細胞および筋細胞である。これらの細胞のカルシウムチャネルは「電圧ゲート制御(voltage gated)」と称される。これは、これらが、主として細胞膜を介した電圧の変化によって調節されるためである。リンパ球および上皮細胞を含むその他の全ての細胞は、電気的興奮性細胞においてみられる電気的活性を欠き、そのため、「電気的非興奮性」と呼ばれる。これらの種の細胞におけるカルシウムチャネルもまた、研究者からVGチャネルと呼ばれているが、これらの細胞におけるカルシウム流入は非電圧ゲート制御チャネルにより誘導されると従来信じられている。
【0005】
電気的興奮性細胞における電圧ゲート制御カルシウムチャネルについての知識は有益に活用されている。これらのチャネルの機能の薬理的調節は、医薬の慣例において非常に重要である;例えば、カルシウムチャネルブロッカーは、神経学的疾病(例えば癲癇)および循環器病(例えば高血圧症および狭心症)の治療に幅広く使用されている。
【0006】
大多数の癌は、電気的非興奮性と考えられる細胞種から生じている。細胞周期の特定の時期における細胞へのカルシウムイオンの流入は、癌細胞の増殖に必須であることが知られている。したがって、電気的非興奮性細胞のカルシウム流入の阻害剤は、細胞増殖抑制性薬剤として癌の治療に使用できる可能性がある。近年登録された米国特許第6,413,967号は、VG選択的阻害剤のスクリーニング方法および電気的非興奮性細胞へのカルシウム流入をブロックする新規のVG選択的阻害剤を開示している。それゆえ、電気的非興奮性細胞に選択的なカルシウム流入阻害剤の更なる研究には、癌治療における顕著な臨床的重要性がある。
【0007】
ジヒドロピリジン誘導体は、1980年代以来、心臓病、循環性障害および高血圧症の治療に使用されており(米国第4,535,073号)、様々なジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステルが合成されている(米国第4,885,284号)。例えば、疼痛の治療のための、Tチャネルブロッカーであるエフォニジピン(Efonidipine)が知られている。しかしながら、エフォニジピンは、癌、前癌性症状およびその他の特定の症状、例えば、癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症(age adjusted macular degeneration)、および瘢痕、やけどおよびケロイドの治療に使用さていない。
【0008】
本発明は、第1に、ジヒドロピリジン誘導体による癌または前癌性症状の治療方法を提供する。本発明は、さらに、癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドを治療する方法を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、哺乳類における癌または前癌性症状を治療する方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法を提供する:
【化1】

【0010】
ここにおいて、それぞれのR−Rは、同一または異なっており、水素またはC−Cアルキルであり;XおよびXの一方はニトロ基であり、他方は水素であり;それぞれのYおよびYは、同一または異なってよく、塩素、フッ素またはアルコキシで置換されてよいフェニルであり;および、mおよびnは0−4の整数である。
【0011】
本発明は、哺乳類における癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドを治療する方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の上記の通り定義される式(I)の化合物、そのプロドラッグまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法を提供する。
【0012】
別の側面において、本発明は、治療的有効量の式(I)の化合物、前記化合物のプロドラッグまたは前記化合物の医薬的に許容可能な塩;および、医薬的に許容可能な担体、ベヒクルまたは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
本発明は、さらに、哺乳類における癌または前癌性症状の治療のための方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物の医薬的に許容可能な塩を1以上の抗悪性腫瘍薬との組み合わせで投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物の医薬的に許容可能な塩;および1以上の抗悪性腫瘍薬の治療的有効量の組み合わせを含む医薬的併用組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明は、哺乳類における癌または前癌性症状を治療するための、並びに哺乳類における癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドを治療するための方法であって、前記哺乳類に治療的有効量のジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステル誘導体、そのプロドラッグまたは前記誘導体もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法を提供する。
【0016】
ジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステル誘導体は、好ましくは、式(I)の化合物である:
【化2】

【0017】
ここにおいて、それぞれのR−Rは、同一または異なっており、水素またはC−Cアルキルであり;XおよびXの一方はニトロ基であり、他方は水素であり;それぞれのYおよびYは、同一または異なってよく、塩素、フッ素またはアルコキシで置換されてよいフェニルであり;および、mおよびnは0−4の整数である。
【0018】
より好ましくは、本発明は、Xは水素であり、XはNOであり、mは2であり、nは1であり並びにYおよびYはフェニルである、式(I)のジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステル誘導体を意図する。
【0019】
更により好ましくは、本発明は、Xは水素であり、XはNOであり、mは2であり、nは1であり並びにYおよびYはフェニルであり、R、R、R、Rは水素であり並びにR、R、R、RはCHである、式(I)のジヒドロピリジン−5−ホスホン酸サイクリックプロピレンエステル誘導体を意図する。
【0020】
式(I)の化合物は、様々な癌または前癌性症状、特に、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、分泌細胞、結合性細胞、筋細胞または星状細胞から生じるそれらの治療に有用である。式(I)の化合物で治療することができる癌または前癌性症状は、結腸、乳房、卵巣、子宮、前立腺、肝臓、膵臓、中枢神経系、皮膚、腎臓、胃、食道、肺および気管支、リンパ系、造血系または筋骨格系で生じる癌または前癌性症状を含むが、これらに限定されない。
【0021】
式(I)の化合物は、さらに、癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドの治療に有用である。
【0022】
1から6(1および6を含む)の炭素原子のアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル並びにそれらの全ての異性体および直鎖および分枝鎖である。
【0023】
用語「アルコキシ」は、−OR’ラジカルと定義され、ここで、R’は、1−6炭素原子のアルキルラジカルである。
【0024】
「哺乳類」とは、例えば、ヒトおよびサル(monkeys)といった霊長類を含む全ての哺乳類を指す。これに含まれるその他の哺乳類の例は、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジおよびウマである。好ましくは、哺乳類は女性または男性のヒトである。
【0025】
ここにおいて使用される用語「治療すること」、「治療する」または「治療」とは、予防的(preventative)(例えば予防的(prophylactic))および待期的治療を含む。
【0026】
用語「治療的有効量」とは、特定の疾病または症状を寛解させる、減弱させる若しくは除去する、または、特定の疾病または症状の発症を予防する若しくは遅らせる、本発明の化合物の量を意味する。
【0027】
「本発明の化合物」または「式(I)の化合物」といった文言は、常に、そのような化合物の全ての活性型形態(例えば、その遊離型形態、例えば遊離酸または塩基の形態を含む)を含むと理解され、さらに、特別に規定されない限り、全てのプロドラッグ、多形、水和物、溶媒和化合物、互変異性体等、および、全ての医薬的に許容可能な塩を含むと理解される。また、そのような化合物の適した活性代謝産物は本発明の範囲内であることが理解されるだろう。
【0028】
「医薬的に許容可能」とは、担体、ベヒクル、希釈剤、賦形剤および/または塩が製剤のその他の成分に適合しており、その受け取り側にとって有害であってはならないことを意味する。
【0029】
「プロドラッグ」という表現は、投与後、特定の化学的または生理的プロセスによって(例えば、プロドラッグを生理的pHに置くことによって、または酵素の作用によって)所望の薬剤形態に変換されてインビボで薬剤を放出する薬剤前駆体である化合物を意味する。
【0030】
「前癌性症状」という表現は、悪性ではないものの治療しないと悪性と成る可能性がある増殖を意味する。「前癌性症状」とは、当業者には「前悪性症状(pre−malignant condition)」としても知られる。
【0031】
「症状」という表現は、癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドといった、傷害、疾患または疾病を意味する。
【0032】
本発明の化合物は、市販されるものを容易に利用でき、または、米国特許4,885,284号に記載されるような当業者に周知の方法によって日常的に製造することができ、そのため、経済的に手頃である。本発明の化合物、プロドラッグおよび医薬的に許容可能な塩の医薬的活性は、米国特許4,885,284号に記載されるまたは当業者に既知のその他のプロトコールによる1以上のアッセイにて実証される。生物学的研究により、本発明の化合物が、インビトロで、並びに、前立腺癌、乳癌および大腸癌の様々な実験動物モデルにおいて、癌細胞の増殖を阻害することが示される。付加的な研究により、肺、卵巣、膵臓およびその他の癌性組織に対する本発明の化合物の細胞増殖抑制性効果が実証される。本発明の化合物により治療される癌細胞はこれらの化合物に対する耐性を獲得しないことも観察される。
【0033】
本発明のいずれかの化合物およびプロドラッグは、様々な組成物への取り込みのための医薬的に許容可能な塩として合成することができる。ここで使用される、医薬的に許容可能な塩とは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、スルホン酸、クエン酸、樟脳酸、マレイン酸、酢酸、乳酸、ニコチン酸、硝酸、コハク酸、リン酸、マロン酸、リンゴ酸、サリシクリック酸(salicyclic)、フェニル酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ピリジン、アンモニウム、ピペラジン、ジエチルアミン、ニコチンアミド、ギ酸、フマル酸、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、ケイ皮酸、メチルアミノ、メタンスルホン酸、ピクリン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、酒石酸、トリエチルアミノ、ジメチルアミノ、および、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの塩を含むが、これらに限定されない。さらなる医薬的に許容可能な塩は当業者にとって明らかである。塩基性成分が2以上存在する場合、当該表現は複数の塩(例えば、ジ塩(di−salt))を含む。
【0034】
また、本発明の化合物、並びにいずれかのプロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩は、エノール形態、イミン形態およびそれらの混合物を含む幾つかの互変異性の形態で存在する。そのような全ての互変異性の形態は、本発明の範囲に含まれる。
【0035】
別の実施態様において、本発明は、また、治療的有効量の式(I)の化合物、前記化合物のプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩;および医薬的に許容可能な担体、ベヒクルまたは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0036】
本発明の医薬組成物または化合物(プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩を含む)は、一般に、一日当り約100mgから約10g、より好ましくは約500mgから約3gの、そのような化合物、プロドラッグまたはその塩の有効量で、用量単位の形態(たとえば、錠剤、カプセル等)で毎日投与されるだろう。当業者に理解されるとおり、患者に投与される本発明による医薬組成物の特定の量は多数の要因に依存してよく、限定を意味することなく、期待される活性、患者の状態(例えば、体重、病気の重症度等)および化合物に対する耐性を含む要因に依存してよい。
【0037】
医薬的に許容可能な担体、ベヒクルまたは希釈剤は、米国食品医薬品局によって安全性が一般に認められたいずれかの賦形剤を含むが、これに限定されない。
【0038】
本発明の医薬組成物または化合物(プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩を含む)は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、坐薬、経皮的、局所的または経口の経路を含む様々な経路によって投与することができる。本発明の医薬組成物および化合物の経口投与が最も好ましい。
【0039】
経口投与のために、医薬組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル剤、散剤等の形態をとることができる。クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムといった様々な賦形剤を含む錠剤は、様々な崩壊剤、例えばデンプンおよび好ましくはジャガイモまたはタピオカデンプンおよび特定の複合ケイ酸塩(complex silicates)とともに、結合剤、例えばポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチンおよびアラビアゴムとともに使用される。そのうえ、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクといった潤滑剤は、錠剤化の目的にしばしば非常に有用である。同様の種の固体の組成物が、さらに、ソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル剤において、充填剤として使用される;これに関して好ましい材料は、ラクトースまたは乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシル剤が経口投与のために望ましい場合、本発明の化合物、異性体、プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な担体は、様々な甘味料、調味料、着色剤、乳化剤および/または懸濁剤、ならびに、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびそれらの様々な組み合わせと組み合わせることができる。
【0040】
投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤は本発明の医薬組成物のための最も有利な経口投与形態である。
【0041】
非経口投与の目的のために、ゴマ油もしくは落花生油中のまたは水性プロピレングリコール中の溶液を使用することができ、並びに、対応する水溶性塩の無菌水溶液を使用することができる。そのような水溶液は適切に緩衝してよく、必要であれば、液体希釈剤は最初に十分な塩類またはグルコースにより等張性が付与される。これらの水溶液は、特に、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の注射の目的に適している。これに関して、使用される無菌水性媒質は、当業者に周知の標準的技術によって全て容易に取得することができる。
【0042】
経皮(例えば局所)投与の目的のために、希釈され、無菌の、水性のまたは部分的に水性の溶液(通常、約0.1%から5%濃度)であって、その他は上述した非経口用溶液と同様の溶液が作製される。
【0043】
局所投与のために、本発明の化合物、プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩は、軟膏またはクリームといった刺激性の低い加湿ベースを使用して製造してよい。適した軟膏ベースの例は、ペトロラタム、ペトロラタムに揮発性シリコンを加えたもの、ラノリンおよび油中水エマルジョンである。
【0044】
一定量の本発明の化合物、プロドラッグまたはその塩を有する様々な医薬組成物を製造する方法は、当業者に既知であるか、または本願の開示に基づいて自明であるだろう。医薬組成物の製造方法の例として、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easter, Pa., 19th Edition (1995)が参照される。
【0045】
本発明の医薬組成物および化合物(プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩を含む)は、分割した用量で連続的にまたは1日あたり1回の用量で投与できる。好ましくは、本発明の医薬組成物および化合物は、分割された一日量(divided daily dose)で投与される。
【0046】
本発明の医薬組成物および化合物(プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩を含む)は、アジュバントの、ネオアジュバントのまたは予防的な意図で投与することができる。本発明の化合物は、癌細胞の成長を停止させ、癌細胞を直接殺すわけではないため、癌細胞の増殖が初期段階にある場合における本発明の化合物の使用が特に有利である。したがって、癌の治療のための本発明の医薬組成物および化合物は、好ましくは予防的またはアジュバントの役割で使用される。
【0047】
本発明は、さらに、哺乳類における癌または前癌性症状の治療のための方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩を1以上の抗悪性腫瘍薬との組み合わせで投与することを含む方法を提供する。
【0048】
本発明は、さらに、式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩;および1以上の抗悪性腫瘍薬の治療的有効量の組み合わせを含む医薬的併用組成物を提供する。
【0049】
化合物、プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩(これらの化合物、プロドラッグおよび塩を含む医薬組成物および製剤を含む)は、上述した癌および前癌性症状を治療するための様々な組み合わせにおいて使用することができる。したがって、本発明の化合物、プロドラッグおよびその医薬的に許容可能な塩は、本願で記載される癌および前癌性症状の治療のためのその他の抗悪性腫瘍薬と組み合わせて使用することができる。
【0050】
いずれかの既知の市販される抗悪性腫瘍薬または抗癌剤を、本発明との組み合わせの側面で、その他の抗悪性腫瘍薬として使用してよい。その他の適した抗悪性腫瘍薬は、細胞障害性薬剤(たとえば、アルキル化剤、代謝拮抗剤および細胞障害性抗生物質)および細胞増殖抑制性薬剤(たとえば、抗血管形成剤)を含むが、これらに限定されない。
【0051】
併用療法治療において、本発明の化合物およびその他の抗悪性腫瘍薬の両方は、上述した方法によって哺乳類(たとえば、オスまたはメス)に投与される。当業者に理解されるとおり、併用療法治療において患者に投与される本発明の化合物およびその他の抗悪性腫瘍薬の治療的有効量は、望ましい生物学的活性、患者の状態および化合物に対する耐性を含むがこれらに限定されない多数の要因に依存するだろう。さらに、併用療法における本発明の化合物およびその他の抗悪性腫瘍薬は、同一のまたは異なる剤形(たとえば、経口および非経口)で、同時に、別々にまたは連続的に投与してよい。併用療法における本発明の化合物およびその他の抗悪性腫瘍薬は、さらに、同一または異なる用量間隔で、または組み合わせの個々の構成成分の滴定が処方医師に望まれる場合に、投与してよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における癌、前癌性症状またはその他の症状を治療する方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することを含む方法:
【化1】

ここにおいて、それぞれのR−Rは、同一または異なっており、水素またはC−Cアルキルであり;XおよびXの一方はニトロ基であり、他方は水素であり;それぞれのYおよびYは、同一または異なってよく、塩素、フッ素またはアルコキシで置換されてよいフェニルであり;および、mおよびnは0−4の整数である。
【請求項2】
は水素であり、XはNOであり、mは2であり、nは1であり並びにYおよびYはフェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
、R、R、Rは水素であり、R、R、R、RはCHである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記その他の症状が、癲癇、自閉症、糖尿病性腎障害、糖尿病性神経障害、年齢調節性黄斑変性症、および瘢痕、やけどおよびケロイドから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
哺乳類における癌または前癌性症状の治療のための方法であって、前記哺乳類に治療的有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩を1以上の抗悪性腫瘍薬との組み合わせで投与することを含む方法。
【請求項6】
治療的有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物、前記化合物のプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩;および、医薬的に許容可能な担体、ベヒクルまたは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の式(I)の化合物、そのプロドラッグまたは前記化合物もしくはプロドラッグの医薬的に許容可能な塩;および1以上の抗悪性腫瘍薬の治療的有効量の組み合わせを含む医薬的併用組成物。

【公表番号】特表2010−526073(P2010−526073A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506336(P2010−506336)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/005731
【国際公開番号】WO2008/137107
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509303589)ティーエーユー・セラピューティクス・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】