説明

癌を治療するためのMIR34治療剤を含む組成物

ある態様において、本発明は、全般的に、癌の治療のための、miR−34及びmiR−34と機能的及び構造的に関連するsiRNAを含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、癌の治療のための、miR34及び、miR34に機能的及び構造的に関連するsiRNAを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下は、TP53及びRNAiに関連する従来技術の考察である。この考察は、続く本発明の様々な実施形態の理解のためにのみ提供される。本明細書中の詳説を通して引用される要約及び参考文献は、以下の内容の何れも、主張される発明に対する先行技術であることを承認するものではない。
【0003】
TP53腫瘍サプレッサーは、遺伝毒性ストレス後のタンパク質安定化により活性化される。この活性化は、紫外線又は電離放射線ならびに多くのDNA障害性化学療法剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン及びブレオマイシンなど)により誘導され得る。TP53の活性化により、S期に入る前の細胞周期停止及び/又はアポトーシスが起こる。TP53活性化によってまた、多くのDNA修復経路が開始される(Fei及びEl’Deiry、2003、Oncogene 22:5774−83)。TP53における突然変異(ヒト癌の約50%に存在する。(Hollsteinら、1991、Science 253:49−53))の結果、チェックポイント異常が起こるが、これは無制限の細胞増殖、ゲノム不安定性及び発癌性突然変異の蓄積の一因となり得る(Prives及びHall、1999、J.Pathol.186:112−26)。臨床において、TP53陽性腫瘍細胞及びTP53欠損腫瘍細胞の両方に効果的である化学療法剤を同定することに重点が置かれてきた(Loweら、1994、Science 266:807−810;Lacroixら、2006、Endocrine−Related Cancer 13:293−325;Levesque及びEastman、2007、Carcinogenesis 28:13−20)。従って、ヒト腫瘍におけるTP53経路の状態を予測することは、ある種の癌タイプに対する有効な癌療法を選択するための重要な要素となろう。
【0004】
TP53のDNA配列決定から不活性化する突然変異が明らかになり得るが、別の機構によりTP53経路を不活性化することができる。例えば、p19(ARF)(INK4a−ARF遺伝子座によりコードされる。)は、TP53を活性化することにより細胞増殖を阻害する(Sherrら、2005、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.70:129−37)。意義深いことに、多くのヒト癌は、INK4a−ARF遺伝子座の欠失、抑制(サイレンシング)又は突然変異を示す。その他の腫瘍は、TP53安定性及び転写活性の重要な調節因子であるMDM2の異常なスプライス型を過剰発現又は発現する(Levan−Cohenら、2005、Growth Factors 23:183−92)。TP53経路の不活性化は、ヒトパピローマウイルスE6タンパク質などのウイルス因子によっても引き起こされ得るが、これは、分解のために、TP53に結合し、TP53を標的化する。従って、TP53経路の完全性を予測することは、多くの患者の腫瘍において直接的ではない可能性がある。Millerら(2005、PNAS 38:13550−55)は、癌患者のTP53経路の状態を予測するための遺伝子発現特性を発展させたが、提示されるデータは、臨床での乳癌の挙動を予測することにおけるTP53経路状態の重要性を示す。
【0005】
発生の調節因子として機能することに加えて、miRNAが癌遺伝子及び腫瘍サプレッサーとして働き得(Akaoら、2006、Oncology Reports 16:845−50;Esquela−Kerscher及びSlack、2006、Nature Rev.、6:259−269;Heら、2005、Nature 435:828−33)、ある状況下で、ヒト癌を診断し、分類するために、miRNA発現プロファイルを使用することができる(Luら、2005、Nature 435:834−38;Voliniaら、2006、PNAS 103:2251−61;Yanaiharaら、2006、Cancer Cell 9:189−198)という認識が高まっている。癌におけるTP53の意義及びTP53の状態に対する臨床的バイオマーカーの発見の重要性を考えると、TP53経路の制御に関与する、miRNAを含むRNA転写産物を同定する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fei及びEl’Deiry、Oncogene 22、2003年、p.5774−83
【非特許文献2】Hollstein他、Science 253、1991年、p.49−53
【非特許文献3】Prives及びHall、J.Pathol.186、1999年、p.112−26
【非特許文献4】Lowe他、Science 266、1994年、p.807−810
【非特許文献5】Lacroix他、Endocrine−Related Cancer 13、2006年、p.293−325
【非特許文献6】Levesque及びEastman、Carcinogenesis 28、2007年、p.13−20
【非特許文献7】Sherr他、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.70、2005年、p.129−37
【非特許文献8】Levan−Cohen他、Growth Factors 23、2005年、p.183−92
【非特許文献9】Miller他、PNAS 38、2005年、p.13550−55
【非特許文献10】Akao他、Oncology Reports 16、2006年、p.845−50
【非特許文献11】Esquela−Kerscher及びSlack、Nature Rev.、6、2006年、p.259−269
【非特許文献12】He他、Nature 435、2005年、p.828−33
【非特許文献13】Lu他、Nature 435、2005年、p.834−38
【非特許文献14】Volinia他、PNAS 103、2006年、p.2251−61
【非特許文献15】Yanaihara他、Cancer Cell 9、2006年、p.189−198
【発明の概要】
【0007】
要約
ある態様において、単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物が提供されるが、この合成2本鎖マイクロRNA模倣物は、(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)と、(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相同であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違はパッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)と、を含む。
【0008】
別の態様において、単離核酸分子が提供され、この核酸分子は、18から25個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列を含み、前記ガイド鎖ヌクレオチド配列はシード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域が基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み、前記単離核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号29からなる群から選択されるヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1個のヌクレオチド配列の相違を有する。
【0009】
別の態様において、少なくとも1つの低分子干渉核酸(siNA)(前記siNAは、18から25個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列を含み、前記ガイド鎖ヌクレオチド配列はシード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択される配列内の6個の連続ヌクレオチドと同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)と、送達物質と、を含む組成物が提供される。
【0010】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの合成2本鎖マイクロRNA模倣物及び送達物質を含む組成物を提供し、この合成2本鎖マイクロRNA模倣物は、
(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)と、
(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違は、前記パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)、
を含む。
【0011】
本発明の単離核酸分子及び組成物は、哺乳動物対象における癌の治療のためなど、哺乳動物細胞の細胞分裂を阻害するために使用され得る。
本発明の先述の態様及び多くの付随する長所は、付随の図面と組み合わせられた場合に、次の詳細な説明を参照することによってより詳細に理解されるようになるように、より容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、対応する「シード領域」を含む、miR−34a、miR−34b、miR−34c及びmiR−449のRNA配列を示す。
【図2A】図2Aは、所定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、野生型p53を有する細胞のヒストグラムである。
【図2B】図2Bは、所定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、ドキソルビシンで処理した野生型p53を有する細胞のヒストグラムである。
【図2C】図2Cは、所定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、TP53 shRNAを遺伝子移入した野生型p53を有する細胞のヒストグラムである。
【図2D】図2Dは、所定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、TP53 shRNAを遺伝子移入し、ドキソルビシンで処理した野生型p53を有する細胞のヒストグラムであり、TP53の分解により、DNA損傷後、G0/G1チェックポイントが損なわれることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
このセクションは、本明細書中で開示される本発明を代表する多くの様々な態様及び実施形態の詳細な説明を与える。この説明は、、様々な詳細及び特異性の、いくつかの典型的説明のためのものである。これらの実施形態のその他の特性及び長所は、様々な実施例を含む、本明細書中で与えられるさらなる説明から明らかである。与えられる実施例は、本発明の様々な実施形態を実施することにおいて有用な様々な成分及び方法を説明する。この実施例は、主張される本発明を限定するものではない。本開示に基づき、当業者は、本発明を実施するために有用なその他の成分及び方法を識別し、使用することができる。
【0014】
本願は、参照により本明細書によって組み込まれる、米国仮出願第60/927,621号(2007年5月3日提出)からの優先権を主張する。
【0015】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者により一般に理解される意味を有する。実施者は、当技術分野の定義及び用語については、特に、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Plainsview、New York(1989)及びAusbelら、Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47)、John Wiley & Sons、New York(1999)を参照する。
【0016】
本発明との関連で「約」という用語の使用は、具体的な要素、特徴又はその他の特質の正確な測定に固有の問題を含蓄することであると考えられる。従って、「約」という用語は、主張される発明に関連して本明細書中で使用される場合、単純に、単一もしくは集団的な検定を考慮に入れる量又は大きさ及びその量又は大きさを決定することに一般に関連するその他の標準誤差を指す。例えば、Trisの「約」100mMの濃度は、5mMが、その濃度への到達における集合的エラーバーに相当する場合、100mM±0.5mMの量を包含し得る。このようにして、この出願において指定される何らかの大きさ又は量は、その大きさ又は量に、秤、ピペットマン、ピペット、メスシリンダーなどの検定又は測定機器に付随する誤差が出やすい場合、「約」という用語とともに使用され得る。
【0017】
「a」又は「an」という用語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語と組み合わせて使用される場合、「1」を意味し得るが、これは、「1以上、「少なくとも1」及び「1又は複数」の意味とも合致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明確に指示されない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるか又は代替物は相互排他的であるが、開示は、代替物のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」という用語(及び「comprise(含む)」及び「comprises(含む)」などの「含む」の何らかの形態)、「有する(having)」(及び「have」及び「has」などの「有する」の何らかの形態)、「含む(including)」(及び「includes」及び「include」などの「含む(including)」の何らかの形態)又は「含有する(containing)」(及び「contains」及び「contain」などの「含有する」の何らかの形態)は、包括的であるか又はオープンエンドであり、さらなる、列挙されない要素又は方法段階を除外しない。
【0019】
本明細書中で使用される場合、数に関して「およそ」又は「約」という用語は、一般に、別段の断りがない限り、又は内容から明らかとならない限り、その数の何れかの方向(それを超えるか又はそれ未満)での5%の範囲内に入る数を含むものと解釈される(このような数が可能な値の100%を超える場合を除く。)。範囲が指定される場合、エンドポイントは、別段の断りがないか又は内容から明らかとならない限り、範囲内に含まれる。
【0020】
本願で考察されるあらゆる実施形態が、本発明の何らかの方法、キット、試薬又は組成物に関して実行され得ると考えられる(又はその逆も成り立つ。)。さらに、本発明の方法を達成するために本発明の組成物を使用することができる。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子」という用語は、当技術分野で理解されるとおりのその意味を有する。しかし、当業者にとって当然のことながら、「遺伝子」という用語は、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)及び/又はイントロン配列を含み得る。さらに当然のことながら、遺伝子の定義は、タンパク質をコードしないがtRNAなどの機能的RNA分子をコードする核酸への言及を含む。明確にするために、「遺伝子」という用語は、一般に、タンパク質をコードする核酸の一部を指し;この用語は、場合によっては、調節配列を包含し得る。この定義は、非タンパク質コード発現単位に対する「遺伝子」という用語の使用を排除するが、殆どの場合、本明細書で使用される場合、この用語はタンパク質コード核酸を指すことを明確にしておく。場合によっては、遺伝子は、転写又はメッセージ産生又は組成に関与する調節配列を含む。その他の実施形態において、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする転写される配列を含む。本明細書中に記載の専門用語と一致して、「単離遺伝子」は、その他のこのような配列(その他の天然の遺伝子、調節配列、ポリペプチド又はペプチドコード配列など)から実質的に単離された、転写される核酸、調節配列、コード配列などを含み得る。この点において、「遺伝子」という用語は、転写されるヌクレオチド配列及びその相補体を含む核酸を指すために、簡素化の目的で使用される。
【0022】
特定の実施形態において、転写されるヌクレオチド配列は、少なくとも1つの機能的タンパク質、ポリペプチド及び/又はペプチドコード単位を含む。当業者により理解されるように、この機能的用語「遺伝子」は、ゲノム配列、RNAもしくはcDNA配列の両方又はより小さい改変核酸セグメント(以下に限定されないが、遺伝子の非転写プロモーター又はエンハンサー領域を含む、遺伝子の非転写部分の核酸セグメントを含む。)を含む。より小さい改変遺伝子核酸セグメントは、核酸操作技術を用いて、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、機能タンパク質、突然変異体及び/又はこのようなものを発現し得るか又は発現するように改造され得る。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA種」、「マイクロRNA」、「miRNA」又は「mi−R」という用語は、哺乳動物を含む多彩な真核生物において発現される低分子の非タンパク質コードRNA分子を指す。マイクロRNA分子は、通常、15から120個のヌクレオチドの範囲の長さを有し、大きさは、特異的マイクロRNA種及び細胞内プロセシングの程度に依存する。成熟した完全にプロセシングされたmiRNAは、約15から30、15から25又は20から30個のヌクレオチド長であり、約16から24、17から23、18から22、19から21又は21から24個の間のヌクレオチド長であることが多い。マイクロRNAは、プロセシングされた配列ならびに対応する長い一次転写産物(pri−miRNA)及びプロセシングされた前駆体(pre−miRNA)を含む。いくつかのマイクロRNA分子は、RNA干渉を介して遺伝子発現を制御するために生細胞において機能する。代表的な一連のマイクロRNA種は、一般に公開されている、World Wide Webでアクセス可能な、Griffith−Jonesら、Nucleic Acids Research 32:D109−D111(2004)及びGriffith−Jonesら、Nucleic Acids Research 34:D140−D144(2006)、Wellcome Trust Sanger Instituteウェブサイトにおいて記載のような、miR Base配列データベースに記載されている。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNAファミリー」という用語は、Brennecke、J.ら、PloS biol 3(3):pe85(2005)で記載のように、「シード領域」とも呼ばれる、マイクロRNA分子の5’末端のヌクレオチド位置1から12内の少なくとも6個の連続ヌクレオチドにわたり同一である一群のマイクロRNA種を指す。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNAファミリーメンバー」という用語は、マイクロRNAファミリーのメンバーであるマイクロRNA種を指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「RNA干渉」又は「RNAi」という用語は、抑制される遺伝子の配列と相補的であるiRNAガイド鎖においてシード領域配列を有するiRNA物質により開始される、動物及び植物における、配列特異的な、転写後遺伝子抑制のプロセスを介した、iRNA物質(例えば、siRNA、miRNA、shRNA)による遺伝子発現の抑制又は低下を指す。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「iNA物質」という用語(「干渉核酸物質」に対する略語)は、核酸物質、例えばRNA又は化学修飾されたRNAを指し、これは、標的遺伝子の発現を下方制御し得る。理論に縛られることを望まないが、iNA物質は、標的mRNAの転写後切断を含む多くの機構又は転写前もしくは翻訳前機構の1以上により作用し得る。iNA物質は、1本鎖(ss)を含み得るか又は複数鎖を含み得、例えばこれは2本鎖(ds)iNA物質であり得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「1本鎖iRNA物質」又は「ssRNA」という用語は、1つの分子からなるiRNA物質である。これは、鎖内対形成により形成される2本鎖形成領域を含み得、例えば、これは、ヘアピン又はパンハンドル構造であり得るか又はヘアピン又はパンハンドル構造を含み得る。本発明のssRNA物質は、2本鎖siRNAにプロセシングされる、shRNAなどのステムループ構造を導入する転写産物を含む。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「ds iNA物質」という用語は、共有結合しない2本の鎖を含むdsNA(2本鎖核酸(NA))物質であり、鎖間ハイブリッド形成により、2本鎖構造の領域が形成され得る。本発明のdsNA物質は、それらが哺乳動物細胞においてインターフェロン反応を誘引しないように十分に短いサイレンシングdsNA分子を含む。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「siRNA」という用語は、低分子干渉RNAを指す。siRNAは、約15−60、15−50、15−50又は15−40(二本鎖)ヌクレオチド長、より一般的には約15−30、15−25又は19−25(二本鎖)ヌクレオチド長及び好ましくは約20−24又は約21−22又は21−23(二本鎖)ヌクレオチド長の低分子干渉RNAを含む(例えば、2本鎖siRNAの各相補的配列は、15−60、15−50、15−50、15−40、15−30、15−25又は19−25ヌクレオチド長、好ましくは約20−24又は約21−22又は21−23ヌクレオチド長、好ましくは19−21ヌクレオチド長であり、2本鎖siRNAは、約15−60、15−50、15−50、15−40、15−30、15−25又は19−25塩基対長、好ましくは約20−24又は約21−22又は19−21又は21−23塩基対長である。)。siRNA2本鎖は、約1から約4ヌクレオチド、好ましくは約2から約3ヌクレオチドの3’突出部及び5’リン酸末端を含み得る。ある実施形態において、siRNAは、末端リン酸を欠く。
【0031】
本発明のsiRNA分子の非限定例は、自己相補的センス及びアンチセンス領域(アンチセンス領域は、標的核酸分子又はその一部におけるヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列(あるいは、分子が2本の別個の鎖を含有する場合、ガイド領域又はガイド鎖と呼ばれる。)を含む。)と、標的核酸配列又はその一部に対応するヌクレオチド配列を有するセンス領域(分子が2本の別個の鎖を含有する場合、パッセンジャー領域又はパッセンジャー鎖とも呼ばれる。)と、を含む、2本鎖ポリヌクレオチド分子を含み得る。siRNAは、2本の別個のオリゴヌクレオチドから編成され得、ここで一方の鎖はセンス鎖であり、他方の鎖はアンチセンス鎖であり、アンチセンス及びセンス鎖は自己相補的であり(即ち、各鎖は、他方の鎖のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含み;例えばアンチセンス鎖及びセンス鎖は2本鎖又は2本鎖構造を形成し、例えば2本鎖領域は、約18から約30、例えば約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30塩基対である。);アンチセンス鎖(ガイド鎖)は、標的核酸分子のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス鎖(パッセンジャー鎖)は、標的核酸配列に対応するヌクレオチド配列又はその一部を含む(例えば、siRNA分子の約15から約25ヌクレオチドは、標的核酸又はその一部と相補的である。)。通常、低分子干渉RNA(siRNA)は、約17から約29塩基対、好ましくは19から21塩基対長の2本鎖RNA分子を指し、この一方の鎖は標的mRNAと相補的であり、標的mRNAを有する細胞に添加される場合、又はインビボの細胞中で産生される場合、標的mRNAの分解を引き起こす。好ましくは、siRNAは、標的mRNAと完全に相補的である。しかし、これは、1又は2個のミスマッチ塩基対を有し得る。
【0032】
あるいは、siRNAは1本のオリゴヌクレオチドから編成され、siRNAの自己相補的センス及びアンチセンス領域は、核酸に基づく又は核酸ではないリンカーにより連結される。siRNAは、自己相補的センス及びアンチセンス領域を有する、2本鎖、非対称2本鎖、ヘアピン又は非対称ヘアピン二次構造を伴うポリヌクレオチドであり得、アンチセンス領域は、別個の標的核酸分子のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域は、標的核酸配列に対応するヌクレオチド配列又はその一部を有する。siRNAは、2以上のループ構造及び、自己相補的センス及びアンチセンス領域を含むステムを有する環状1本鎖ポリヌクレオチドであり得、このアンチセンス領域は、標的核酸分子のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列又はその一部を含み、センス領域は、標的核酸配列に対応するヌクレオチド配列又はその一部を有し、この環状ポリヌクレオチドは、RNAiを媒介することができる活性のあるsiRNA分子を生成させるために、インビボ又はインビトロの何れかでプロセシングされ得る。siRNAはまた、標的核酸分子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列又はその一部を有する1本鎖ポリヌクレオチドも含み得(例えばこのようなsiRNA分子は、標的核酸配列に対応するヌクレオチド配列又はその一部がsiRNA分子内に存在する必要はない。)、この1本鎖ポリヌクレオチドは、5’−リン酸などの末端リン酸基(例えば、Martinezら、2002、Cell 110:563−574及びSchwarzら、2002、Molecular Cell、70:537−568を参照)又は5’,3’−二リン酸をさらに含み得る。ある実施形態において、本発明のsiRNA分子は、別個のセンス及びアンチセンス配列又は領域を含み、このセンス及びアンチセンス領域は、当技術分野で公知のように、ヌクレオチド又は非ヌクレオチドリンカー分子により共有結合されるか、又は、あるいはイオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用及び/又はスタッキング相互作用により非共有結合される。ある実施形態において、本発明のsiRNA分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態において、本発明のsiRNA分子は、標的遺伝子の発現の阻害を引き起こすように標的遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、siRNA分子は、RNAのみを含有する分子に限定される必要はないが、化学修飾されたヌクレオチド及び非ヌクレオチドをさらに包含し得る。WO2005/078097;WO2005/0020521及びWO2003/070918は、RNAi分子に対する様々な化学修飾を詳述しており、各参考文献の内容は、その全体において参照により本明細書によって組み込まれる。ある実施形態において、例えば、低分子干渉核酸分子は、2’−ヒドロキシ(2’−OH)含有ヌクレオチドを欠き得る。siRNAは、化学的に合成されるか又はプラスミドによりコードされ得る(例えば、ヘアピンループを伴う二本鎖へと自動的に折り畳まれる配列として転写される。)。siRNAはまた、E.コリRNaseIII又はDicerを用いて、より長いdsRNAの切断によっても生成させることができる(例えば、約25ヌクレオチド長より長いdsRNA)。これらの酵素は、dsRNAを生物学的に活性があるsiRNAへとプロセシングする(例えば、Yangら、2002 PNAS USA 99:9942−7;Calegariら、2002、PNAS USA 99:14236;Byromら、2003、Ambion TechNotes 10(1):4−6;Kawasakiら、2003、Nucleic Acids Res.37:981−7;Knight及びBass、2001、Science 293:2269−71;及びRobertsonら、1968、J.Biol.Chem.243:82参照)。長いdsRNAは、遺伝子転写産物全体又は部分的な遺伝子転写産物をコードし得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「%修飾」は、修飾されている、siRNAの各鎖における、又は集合的なdsRNAにおける、ヌクレオチド数を指す。従って、アンチセンス鎖の19%修飾は、21ヌクレオチド配列(21mer)中4ヌクレオチド/bp以下の修飾を指す。100%は、完全修飾dsRNAを指す。化学修飾の程度は、当業者にとって周知の様々な要素に依存する。例えば、標的mRNA、誤ったサイレンシング、エンドヌクレアーゼ分解の程度などである。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「shRNA」又は「短いヘアピンRNA」という用語は、生理的条件で、約17から約29塩基対長の2本鎖ステムを伴うステムループ構造を形成するRNA分子を指し、塩基対ステムの一方の鎖は、標的遺伝子のmRNAと相補的である。shRNAステムループ構造のループは、インビボで標的遺伝子を不活性化させる何らかの適切な長さであり得る。このループは3から30ヌクレオチド長であり得るが、通常、これは1−10ヌクレオチド長である。塩基対形成したステムは、完全に塩基対形成し得るか又は1もしくは2個のミスマッチ塩基対を有し得る。2本鎖部分は、通常はそうではないが、1以上の対形成しないヌクレオチドからなる1以上の突出部を含有する。shRNAは、塩基対形成ステムから伸びる非塩基対形成5’及び3’配列を有し得る。しかし、通常、5’伸長はない。GはポリメラーゼIIIにより転写される第一のヌクレオチドであるので、5’末端におけるshRNAの第一のヌクレオチドはGである。Gが標的配列の第一の塩基として存在しない場合、Gは特異的な標的配列の前に付加され得る。5’Gは通常、塩基対形成ステムの部分を形成する。通常、shRNAの3’末端は、転写終結シグナルであるポリUセグメントであり、塩基対形成構造を形成しない。本願に記載のように、及び当技術者にとって公知のように、shRNAは、保存されている細胞RNAi機構によりsiRNAへとプロセシングされる。従って、shRNAは、siRNAの前駆体であり、一般に、同様に標的mRNA転写産物の発現を阻害することができる。説明目的のために、ある実施形態において、本発明のshRNAコンストラクトは、miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449により標的とされる1以上のmRNAを標的とする。標的遺伝子転写産物に対するアンチセンスであるshRNAの鎖はまた「ガイド鎖」としても知られる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「マイクロRNA反応性標的部位」という用語は、マイクロRNA分子の少なくとも一部に相補的であるか又は基本的に相補的である、約5から約25ヌクレオチド(5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドなど)の範囲の大きさの核酸配列を指す。ある実施形態において、マイクロRNA反応性標的部位は、マイクロRNA分子のシード領域に対して相補的である、少なくとも6個の連続ヌクレオチド、少なくとも7個の連続ヌクレオチド、少なくとも8個の連続ヌクレオチド又は少なくとも9個のヌクレオチドを含む(即ち、「シード領域」と呼ばれる、マイクロRNA分子の5’末端のヌクレオチド位置1から12内)。
【0037】
「標的遺伝子の発現を阻害する」という句は、siRNAなどのRNAi物質が、標的遺伝子の発現を抑制するか、低下させるか又は阻害する能力を指す。「阻害する」、「下方制御する」又は「低下させる」に対して、別の言い方をすると、遺伝子の発現又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、RNAi物質の非存在下で観察されるもの以下に低下することを意味する。例えば、本発明の実施形態は、miR34a様siRNA分子を導入することにより、mi−34a様siRNA分子が導入されていない対照細胞でのTP53経路遺伝子に対して観察されるレベル以下に、1以上のTP53経路遺伝子の発現を阻害、下方制御又は低下させることを目論む。別の実施形態において、阻害、下方制御又は低下は、例えば、スクランブル配列又はミスマッチがあるsiRNA分子の存在下で観察されるレベル以下の標的mRNAの阻害を目論む。さらに別の実施形態において、本発明のsiRNA(例えば1以上のTP53経路遺伝子mRNAレベルを下方制御するsiRNA)の存在下での本発明のsiRNA分子による遺伝子発現の阻害、下方制御又は低下は、それが存在しない場合よりも大きい。ある実施形態において、遺伝子発現の阻害、下方制御又は低下は、RNAiが介在する標的核酸分子(例えばRNA)の切断又は翻訳の阻害などの転写後抑制と関連する。
【0038】
遺伝子抑制の程度を調べるために、標的遺伝子の発現を、抑制する、低下させる又は阻害するsiRNAと、試験試料(例えば、標的遺伝子を発現する関心のある生物由来の生体試料又は標的遺伝子を発現する培養物中の細胞試料)を接触させる。試験試料中の標的遺伝子の発現を、siRNAと接触させない対照試料(例えば、標的遺伝子を発現する関心のある生物由来の生体試料又は標的遺伝子を発現する培養物中の細胞試料)中の標的遺伝子の発現と比較する。対照試料(即ち標的遺伝子を発現する試料)を100%の値とする。対照試料に対する試験試料の値が約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%又は10%である場合、標的遺伝子の発現の、抑制、阻害又は低下が達成される。適切なアッセイには、例えば、ドットブロット、ノザンブロット、インシトゥハイブリッド形成、ELISA、マイクロアレイハイブリッド形成、免疫沈降、酵素機能などの当業者にとって公知の技術を用いたタンパク質又はmRNAレベルの試験ならびに当業者にとって公知の表現型アッセイが含まれる。
【0039】
siRNA又はRNAi物質の「有効量」又は「治療的有効量」は、所望の効果、例えばsiRNA又はRNAi物質の非存在下で検出される正常発現レベルに対して、標的配列の発現阻害を生じさせるのに十分な量である。siRNA又はRNAi物質による標的遺伝子又は標的配列の発現阻害は、標的遺伝子mRNA又はタンパク質の発現レベルが、対照試料の標的遺伝子mRNA又はタンパク質の発現レベルに対して、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%又は0%である場合に達成される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、単離核酸分子に関して「単離される」という用語は、人間の介在を通じて、天然の状態から改変又は除去されるものである。例えば、生きている動物において天然に存在するRNAは「単離され」ていない。部分的又は完全にその天然状態の共存物質から分離されている合成RNA又はdsRNA又はマイクロRNA分子は、「単離され」ている。このようにして、細胞に意図的に送達させられるか又は細胞において発現させられるmiRNA分子は、「単離」核酸分子とみなされる。
【0041】
「調節する」は、遺伝子の発現又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子又は同等のRNA分子のレベル又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が調節物質の非存在下で観察されるものより大きいか又は小さいように、遺伝子の発現又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子又は同等のRNA分子のレベル又は1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、上方制御されるか又は下方制御されることを意味する。例えば、「調節する」という用語は、「阻害する」を意味し得るが、「調節する」という用語の使用はこの定義に限定されない。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「RNA」は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を指す。「リボヌクレオチド」という用語は、β−D−リボフラノース部分の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、部分的に精製されたRNA、基本的に純粋なRNA、合成RNA、組み換え産生RNAならびに、1以上のヌクレオチドの、付加、欠失、置換及び/又は改変により天然のRNAとは異なる改変RNAなどの、2本鎖RNA、1本鎖RNA、単離RNAを含む。このような改変には、RNAi物質の末端又は内部などへの、例えばRNAの1以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加が含まれ得る。本発明のRNA分子におけるヌクレオチドはまた、非天然ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドなどの、標準的ではないヌクレオチドも含み得る。これらの改変RNAは、天然RNAの類似体と呼ばれ得る。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「相補的」という用語は、標準的ワトソンクリック相補体形成規則に従い塩基対形成することができる核酸配列を指す。即ち、より大きいプリンは、より小さいピリミジンと塩基対形成し、シトシンと対形成されるグアニン(G:C)及びチミンの何れかと対形成されるアデニン(A:T)(DNAの場合)又はウラシルと対形成されるアデニン(A:U)(RNAの場合)の組み合わせを形成する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、マイクロRNA標的配列に関して「基本的に相補的」という用語は、ヌクレオチド位置1から12のマイクロRNA分子の5’部分(「シード領域」とも呼ばれる。)の少なくとも8個の連続ヌクレオチドに対して相補的である(完全に一致する)8ヌクレオチドより長いマイクロRNA標的核酸配列を指し、天然のmiR−34ファミリーメンバーと比較した場合、マイクロRNA標的核酸配列の残りの部分にわたり、少なくとも65%相補的(少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも96%同一など)である。Karlin及びAltschul(1993、PNAS 90:5873−5877)におけるもののように改変された、Karlin及びAltschul(1990、PNAS 87:2264−2268)の数学的アルゴリズムを用いて、2種類の配列間の配列比較及び%同一性及び類似性の決定を行うことができる。このようなアルゴリズムは、Altschulら(1990、J.Mol.Biol.275:403−410)のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子」という用語は、当業者にとって公知の意味、即ち、RNA及び/又はポリペプチド又はその前駆体の産生に必要なコード配列ならびにコード配列の5’及び3’末端の周囲の非コード配列(非翻訳領域)を含む核酸(例えば、DNA又はRNA)配列を包含する。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA及びゲノム形態の両方を包含する。「遺伝子」という用語はまた、例えば、トランスファーRNA、リボソームRNAなどを含む、マイクロRNA及びその他の非タンパク質コード配列を含む核酸配列も包含する。機能的ポリペプチドは、ポリペプチドの所望の活性又は機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、抗原提示)が保持される限り、全長コード配列により又はコード配列の何れかの部分によりコードされ得る。コード領域の5’に位置し、mRNAに存在する配列は、5’非翻訳配列(「5’UTR」)と呼ばれる。コード領域の3’又は下流に位置し、mRNAに存在する配列は、3’非翻訳配列又は(「3’UTR」)と呼ばれる。
【0046】
「遺伝子発現」という用語は、本明細書中で使用される場合、RNA又はタンパク質のどちらであっても、遺伝子産物を生成させるための遺伝子の転写及び翻訳のプロセスを指す。従って、遺伝子発現の調節は、転写、転写後プロセシング、翻訳、翻訳後修飾などを含め、多くのレベルの何らか1以上で起こり得る。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「発現カセット」という用語は、その転写及び翻訳制御配列とともに発現されるべき少なくとも1つの核酸配列を含む核酸分子を指す。発現カセットは、通常、遺伝子送達ベクターにおいてカセットが容易に挿入、除去又は置換され得るように、5’及び3’末端に存在するように改変された制限部位を含む。カセットを変化させることにより、様々な配列の発現を支配するためにカセットが組み込まれる遺伝子送達ベクターが得られる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「表現型」という用語は、遺伝子発現分析又はタンパク質発現分析により測定される場合の1以上の遺伝子の発現の調節を含む、当業者にとって公知の意味を包含する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「増殖性疾患」又は「癌」という用語は、本明細書中で使用される場合、白血病、例えば急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)及び慢性リンパ性白血病;カポジ肉腫などのAIDS関連癌;乳癌;骨癌、例えば、骨肉種、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、巨細胞腫、アダマンチノーマ及び脊索腫など;脳腫瘍、例えば、髄膜腫、膠芽細胞腫、軽度星状細胞腫、乏突起膠細胞腫、下垂体部腫瘍、神経鞘腫及び転移性脳腫瘍など;マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫などの様々なリンパ腫を含む頭頸部の癌、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、胆嚢及び胆管癌、網膜芽細胞腫などの網膜の癌、食道癌、胃癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮癌、甲状腺癌、睾丸癌、子宮内膜癌、メラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌(非小細胞肺癌を含む。)、膵臓癌、肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、頭部及び頸部癌、皮膚癌、鼻咽腔癌、脂肪肉腫、上皮癌、腎細胞癌、胆嚢腺癌、耳下腺癌、子宮内膜肉腫、多剤耐性癌;及び増殖性疾患及び状態、例えば腫瘍血管形成に関連する血管新生、黄斑変性(例えば浸潤性/萎縮性AMD)、角膜血管新生、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、近視性変性及びその他の増殖性疾患及び状態など、例えば、再狭窄及び多発性嚢胞腎及び、単独でその他の治療薬と組み合わせて、細胞又は組織における疾患関連遺伝子発現の調節に反応し得る、何らかのその他の癌又は増殖性疾患、状態、形質、遺伝子型又は表現型を含む、当技術分野で公知のような、無秩序な細胞増殖又は複製を特徴とする、何らかの疾患、状態、形質、遺伝子型又は表現型を指す。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「生物学的知識のソース」という用語は、非常に多数の遺伝子の、(例えば、分子、細胞及び全身レベルでの)機能、構造、病理学的役割、毒性学的意義などを記載する情報を指す。データベース及び、Locuslink、Unigene、SwissTrEMBLなどの公開ソースから集められた情報を含め、本発明の方法に対して、生物学的知識の様々なソースが使用され、分子生物学のセントラルドグマの概念に従い関係データベースに整理することができる。ある実施形態において、Gene Ontology(GO)Consortium又は同様のシステムにより使用されるアノテーションシステムが使用される。GOは、全ての生物に適用され得る分子生物学に対する動的な統制語(dynamic controlled vocabulary)である。遺伝子機能の知識が蓄積し変化しているので、これは、Gene OntologyTM Consortium(Gene Ontology:tool for the unification of biology.The Gene Ontology Consortium(2000)、Nature Genet.25:25−29))により発展させられ、維持されている。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「哺乳動物細胞の増殖を阻害する」という句は、細胞を死滅させるか又は永久的もしくは一時的に細胞の成長を停止させることを意味する。インビトロ培養容器で又は対象においての何れかでこのような細胞の数が本発明の組成物の投与後に一定のままであるか又は減少する場合、哺乳動物細胞の阻害を推測することができる。このような細胞の絶対数が増加するが腫瘍増殖の割合が低下する場合も、腫瘍細胞増殖の阻害を推測することができる。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「発現レベルを測定する」、「発現レベルを獲得する」などの句は、マイクロRNA(miRNA)又は遺伝子によりコードされるタンパク質を含め、例えば遺伝子の転写産物の遺伝子発現レベルを定量する方法ならびに関心のある遺伝子がとにかく発現されるか否かを調べる方法を含む。このようにして、発現量の定量を必ずしも与えることなく、「Yes」又は「No」の結果を提供するアッセイは、この用語が本明細書中で使用される場合、「発現を測定する」アッセイである。あるいは、測定されるか又は得られる発現レベルは、何らかの定量的値、例えば、発現の倍率変化、増加又は減少(対照遺伝子に対して、又は別の試料中の同じ遺伝子に対して)、又は発現のlog比又はその何らかの視覚的表現、例えば、色強度が、検出される遺伝子発現の量の代表である「ヒートマップ」など、として表現され得る。遺伝子の発現のレベルを検出するための代表的な方法には、以下に限定されないが、ノーザンブロッティング、ドット又はスロットブロット、レポーター遺伝子マトリクス(例えばUS5,569,588参照)ヌクレアーゼ保護、RT−PCR、マイクロアレイプロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、2Dゲル電気泳動、SELDI−TOF、ICAT、酵素アッセイ、抗体アッセイなどが含まれる。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「miR−34ファミリー」は、miR−34a、miR−34b、miR−34c及びmiR−449を指す。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「miR−34」は、miR−34a、miR−34b及びmiR−34cの1以上を指す。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「miR−34a」は、配列番号1及びその前駆RNA配列(その例は配列番号2である。)を指す。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「miR−34aシード領域」は、配列番号3を指す。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「miR−34b」は配列番号4及びその前駆RNA配列(その例は配列番号5である。)を指す。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「miR−34bシード領域」は、配列番号6を指す。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「miR−34c」は配列番号7及びその前駆RNA配列(その例は配列番号8である。)を指す。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「miR−34cシード領域」は、配列番号9を指す。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「miR−449」は配列番号29及びその前駆RNA配列(その例は配列番号30である。)を指す。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「miR−449シード領域」は、配列番号31を指す。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「単離核酸」は、天然で見出されるものと同一配列の何らかの核酸分子と非同一である物理的形状で存在する核酸分子であり;「単離される」とは、そのように記載される核酸そのものがそのネイティブ環境から物理的に除去されていることを必要としないが、それを禁じない。例えば、核酸は、それが天然で見出されないヌクレオチド及び/又はヌクレオシド間結合を含む場合、「単離されている」と言われ得る。代わりにホスホジエステル結合における天然のヌクレオシドからなる場合、核酸は、それが天然で見出されない純度で存在するとき、「単離されている」と言われ得、この場合、純度は、その他の配列の核酸の存在に関して、タンパク質の存在に関して、脂質の存在に関して又は生物細胞の何らかのその他の成分の存在に関して、又は核酸が生物のゲノムにおいて他の同一である配列に隣接する配列を欠く場合、又は核酸が天然で完全に同じようには存在しない配列を保持する場合、判断される。そのように定義される場合、「単離核酸」には、非相同部位で宿主細胞染色体に組み込まれる核酸、非相同配列に対するネイティブ断片の組み換え融合物、エピソームとして存在するか又は宿主細胞染色体に組み込まれるように存在する組み換えベクターが含まれる。
【0064】
「過剰発現」、「過剰発現する」、「過剰発現すること」などの句は、1以上の統計学的検定を用いて調べられる場合、同じ非改変対象又は類似の非改変対象でのその遺伝子の発現のレベルよりも、対象における1以上の遺伝子の発現が有意に高くなるように、対象を改変する状態を指す。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「精製(される)核酸」とは、試料又は検体に存在する総核酸の少なくとも10%に相当する。好ましい実施形態において、精製(される)核酸は、単離核酸試料又は検体中の総核酸の、少なくとも約50%、少なくとも約75%又は少なくとも約95%に相当する。「精製(される)核酸」への言及は、その核酸が何らかの精製を受けている必要はなく、例えば精製されていない化学合成核酸を含み得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「特異的結合」は、異種の(同種でない)試料中に同時に存在する2種類の分子種が、その試料中のその他の分子種に結合するよりも優先して互いに結合する能力を指す。通常、特異的結合相互作用は、少なくとも2倍、より一般的には少なくとも10倍、多くは少なくとも100倍、反応における偶然的な結合相互作用を上回り;検体を検出するために使用されるとき、異種の(同種でない)試料中の検体の存在が決定される場合、特異的結合は十分に差別的である。通常、特異的結合反応の親和性又は親和力は、少なくとも約1μMである。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「対象」とは、生物又は細胞試料、それら由来の組織試料又は臓器検体(例えば培養細胞株、生検、細胞を含有する体液試料の血液試料を含む。)を指す。例えば、生物は、以下に限定されないが、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ニワトリ、ネコ、犬などの動物を含む動物であり得、通常哺乳動物、例えばヒトなどである。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「TP53経路」は、例えばDNA損傷の認知、TP53活性の調節、細胞周期停止及びアポトーシスに関与するか又は必要であるタンパク質を含む、P53の上流及び下流の両方で機能するタンパク質及びそれらの対応する遺伝子を指す。TP53経路には、以下に限定されないが、表1で列挙される、遺伝子及びそれによりコードされるタンパク質が含まれる(Vogelsteinら、2000、Nature 408:307−310;Woods及びVousden、2001、Experimental Cell Research 264:56−66;El−Deiry、1998、Semin.Cancer Biology 8:345−357;及びPrives及びHall、1999、J.Pathol.1999 787:112−126も参照のこと。)。
【0069】
【表1】





















【0070】
II.本発明の態様及び実施形態
ある態様において、機能的TP53活性を有する哺乳動物細胞の細胞分裂を阻害するために使用され得る、治療用miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449、siRNA又はshRNA組成物が提供される。本明細書と同時に提出された同時係属出願PCT/US2008/62681に記載のように、miR−34の1以上のメンバーのベースラインレベルは、miR−34の得られるレベルがTP53の機能的活性又はTP53経路の機能的活性と統計学的に有意に関連する場合、TP53経路活性状態と相互関連がある。
【0071】
具体的な細胞株(この細胞株は機能的TP53活性又は欠陥TP53活性を有することが知られている。)を参照することにより、miR−34のベースラインレベルを確立することができる。機能的TP53を有する細胞株の例には、以下に限定されないが、HCT116(Vassilevら、2004、Science、303:844−8)、LOVO(Cottuら、1995、Cancer Res、13:2727−30)、LS123(Liu及びBodmer、2006、PNAS、103:976−81)、RKO(Vassilevら、2004、Science、303:844−8)及びRKO−AS45−1(Bamfordら、2004、Br.J.Cancer 97:355−58)が含まれる。欠陥TP53を有する細胞株の例には、以下に限定されないが、HT29(Rodriguesら、1990、PNAS、87:7555−9)、LS1034(Liu及びBodmer、2006、PNAS、103:976−81)、SW1417(Liu及びBodmer、2006、PNAS、103:976−81)、SW1116(Liu及びBodmer、2006、PNAS、103:976−81)及びSW620(Rodriguesら、1990、PNAS、87:7555−9)が含まれる。あるいは、本明細書中の実施例1に記載のものなど、機能的TP53を有するか又は持たない、適合する細胞株対に、遺伝子抑制のためにTP53を標的とするshRNAヘアピン分子をコードする核酸ベクターを遺伝子移入することができる。
【0072】
その他の実施形態において、複数の異なる細胞試料を一緒にプールし、miR−34のベースラインレベルを設定するために、得られたプールを使用することができるか、又はあるいは、当技術分野で公知の様々な異なる統計検定の何れかを用い、複数の異なる細胞試料からの個々のmiR−34測定を用いてベースラインレベルを得ることができる。さらにその他の実施形態において、対象の1以上の細胞又は組織試料又は対象の種において測定される1以上のmiR−34メンバーのレベルに基づき、miR−34のベースラインレベルを確立する。
【0073】
その他の実施形態において、癌に罹患している患者のための一連の治療を決定するために、腫瘍試料から得られる細胞試料のp53経路状態を使用する。例えば、1以上のDNA損傷剤を含む組成物の治療的有効量で、実質的に活性のあるTP53経路状態を有するとして分類される腫瘍を有する患者を治療する。1以上のDNA損傷剤には、トポイソメラーゼI阻害剤、例えばカンプトテシン;トポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン;DNA結合剤、例えばシスプラチン;代謝拮抗剤;又は電離放射線が含まれ得る。
【0074】
別の実施形態において、1以上のDNA損傷剤による細胞殺滅を促進することができるタンパク質又は遺伝子の阻害剤と組み合わせた1以上のDNA損傷剤を含む組成物の治療的に十分な量で、実質的に不活性であるTP53経路状態を有するとして分類される腫瘍を有する患者を治療する。その活性がDNA損傷剤に対するTP53経路不活性細胞の感受性に対して正又は負の何れかの影響を与える遺伝子及びタンパク質は、PCT公開WO2005/031002に記載されている。
【0075】
治療処置のある実施形態は、機能的TP53を含有するとして分類される腫瘍を処置するために、miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449 siRNA又はshRNAから選択されるmiR−34ファミリーメンバーを含む組成物の治療的に十分な量の使用を含む。このような治療は、1以上のDNA損傷剤と組み合わせられ得る。
【0076】
治療用miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449、siRNA又はshRNA組成物は少なくとも18ヌクレオチドのガイド鎖連続ヌクレオチド配列を含み、この場合、前記ガイド鎖はヌクレオチド位置1から12からなるシード領域を含み、位置1は、前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択される配列内の6個の連続ヌクレオチドと同一である少なくとも6個の連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0077】
ある実施形態において、治療用miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449、siRNA又はshRNA組成物は、18から25個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列を含み、前記ガイド鎖ヌクレオチド配列はシード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は基本的にガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は基本的にガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み、前記単離核酸分子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号29からなる群から選択されるヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1個のヌクレオチド配列の相違を有する。
【0078】
ある実施形態において、治療用miR−34a、miR−34b、miR−34c又はmiR−449、siRNA又はshRNA組成物は、(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列はシード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)と、(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖はガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、1個のヌクレオチドの相違は、パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)と、を含む、合成2本鎖マイクロRNA模倣物を含む。
【0079】
ある実施形態において、2本鎖の少なくとも一方は、1−4、好ましくは2ヌクレオチド、3’突出部をさらに含む。ヌクレオチド突出部は、チミン、ウラシル、アデニン、グアニンもしくはシトシン又はそれらの誘導体もしくは類似体の何らかの組み合わせを含み得る。ある一定の態様におけるヌクレオチド突出部は、2ヌクレオチド突出部であり、この場合両方のヌクレオチドがチミンである。重要なこととして、センス及びアンチセンス鎖を含むdsRNAが投与される場合、これは、標的特異的干渉を支配し、インターフェロン反応経路を迂回する。
【0080】
低分子干渉核酸の安定性を促進するために、3’突出部を分解に対して安定化することもできる。ある実施形態において、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことにより、3’突出部が安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば3’突出部における2’−デオキシチミジンでのウリジンヌクレオチドの置換は、耐容され、RNAi分解の効率には影響を与えない。特に、2’−デオキシチミジンにおいて2’ヒドロキシルがないと、組織培養液中での3’突出部のヌクレアーゼ耐性が顕著に促進される。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「3’突出部」は、siRNA配列の3’末端から伸びる少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。3’突出部は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチド又は修飾デオキシリボヌクレオチドを含み得る。3’突出部は、好ましくは1から約5ヌクレオチド長、より好ましくは1から約4ヌクレオチド長及び最も好ましくは約2から約4ヌクレオチド長である。3’突出部は、RNAiコンストラクトのセンス又はアンチセンス配列で又は両方の配列で生じ得る。突出部の長さは、2本鎖の各鎖に対して同じであっても異なっても良い。最も好ましくは、3’突出部は、2本鎖の両方の鎖に存在し、各鎖に対する突出部は2ヌクレオチド長である。例えば、2本鎖の各鎖は、ジチミジル酸(「tt」)又はジウリジル酸(「uu」)の3’突出部を含み得る。
【0082】
本発明の別の態様は、化学修飾されたsiRNAコンストラクトを提供する。例えば、siRNA物質は、非ヌクレオチド部分を含み得る。化学修飾又はその他の非ヌクレオチド部分は、核酸分解に対してセンス(ガイド鎖)及びアンチセンス(パッセンジャー鎖)配列を安定化させ得る。さらに、特定の細胞型に対してsiRNA物質の取り込みを増加させ標的化するために、結合物を使用することができる。このようにして、ある実施形態において、siRNA物質は、2本鎖分子の1以上の配列が化学的に修飾されている2本鎖分子を含む。このような化学修飾の非限定例には、ホスホロチオアートヌクレオチド間結合、2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、「非環式」ヌクレオチド、5’−C−メチルヌクレオチド及び末端グリセリル及び/又は逆デオキシ脱塩基残基組み込みが含まれる。これらの化学修飾は、siRNA物質において使用される場合、細胞におけるその物質のRNAi活性を保存することを促進することができ、siRNA物質の血清安定性を向上させることができる。
【0083】
ある実施形態において、アンチセンス及び/又はセンス配列の5’末端の、第一の及び場合によっては又は好ましくは第一の2つの、ヌクレオチド間結合は、好ましくはホスホロチオアートにより修飾される。別の実施形態において、センス及び/又はアンチセンス配列の3’末端の、第一の及びおそらくは第一の2つ、3つ又は4つのヌクレオチド間結合が、例えばホスホロチオアートにより修飾される。別の実施形態において、センス及びアンチセンス配列両方の5’末端及びセンス及びアンチセンス配列両方の3’末端は記載のように修飾される。
【0084】
本発明のある実施形態において、TP53経路状態は、細胞又は細胞の集団内でのTP53経路の活性又は不活性の程度を決定することに関連する。例えば、細胞が活性のあるTP53経路を有するか否かの1つの目安は、紫外線又は電離放射線又はその他のDNA損傷剤(化学療法剤など)によるTP53の活性化の結果、ある程度の細胞周期停止及び/又はアポトーシスが起こることである。機能不全又は不活性のTP53経路状態を有する細胞は、機能的又は活性のあるTP53経路を有する細胞と比較して、細胞ストレス後、細胞分裂を停止させるか又はアポトーシスを開始させることができない。TP53経路状態はまた、上記表1で示されるものなどのTP53経路のメンバーである1以上の遺伝子又はタンパク質の発現の障害又は変化を測定することによっても特徴付けられ得る。本発明のある実施形態において、TP53経路状態は、細胞試料中の1以上のmiR−34レベルの測定に基づき、例えば実質的に機能的(即ち、遺伝毒性ストレスの存在下でTP53介在性の細胞周期停止を誘発することができるか又はTP53反応性レポーター系を活性化することができる(例えばp53RE−bla;カタログ番号K1193(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)。)及び実質的に非機能的(例えば、遺伝毒性ストレスの存在下でTP53介在性の細胞周期停止を誘発することができないか又はTP53反応性レポーター系を活性化することができない。)など、2つの状態のカテゴリーに分類され得る。
【0085】
あるいは、TP53機能状態は、細胞で測定されるmiR−34のレベルに基づき、例えば高TP53経路活性、中程度のTP53経路活性又は低TP53経路活性など、3以上の機能カテゴリーに分類され得る。このような各TP53経路状態カテゴリーの閾値レベルは、TP53経路機能の機能的な生物測定に基づき、TP53経路機能が決定されているか又は評価されている複数の様々な細胞型又は細胞から、試料miR−34レベルの範囲を測定するか又は得ることにより設定することができる。
【0086】
本発明のこの態様のある実施形態において、測定されるか又は得られるmiR−34分子レベルは、miR−34a(配列番号1)、miR−34b(配列番号4)、miR−34c(配列番号7)及びその前駆RNA(それぞれ、配列番号2;配列番号5及び配列番号8)からなる群から選択される。
【0087】
本発明の別の態様は、低分子干渉核酸(siNA)の有効量を細胞に導入することを含む、哺乳動物細胞の細胞分裂を阻害する方法を提供するが、ここで、前記siNAは、少なくとも18ヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列のガイド鎖を含み、このガイド鎖は、ヌクレオチド位置1から12からなるシード領域を含み、位置1はこのガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択される配列内の6個の連続ヌクレオチドと同一である少なくとも6個の連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0088】
ある実施形態において、siNAは、遺伝子移入により前記細胞に導入される2本鎖RNA分子である。ある実施形態において、導入されるsiNAは、1以上の化学修飾されたヌクレオチドを含む。siNAの有効量は、miR−34ファミリーの1以上のメンバーにより制御される1以上の遺伝子転写産物の検出レベルの測定可能な変化を引き起こすのに十分な量である。ある実施形態において、miR−34ファミリーの1以上のメンバーにより制御される遺伝子転写産物は、表5から選択される。
【0089】
別の実施形態において、shRNA遺伝子を発現する核酸ベクター分子の導入により細胞分裂が阻害され、この場合、shRNA転写産物はRNAi物質として作用する。shRNA遺伝子は、例えば、配列番号2、配列番号5、配列番号8又は配列番号30などのマイクロRNA前駆RNAをコードし得る。あるいは、shRNA遺伝子は、内在性の細胞性RNAプロセシング酵素により活性siRNA配列へとプロセシングされやすい何らかのその他のRNA配列をコードし得、ここで、活性siRNA配列のシード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9又は配列番号31内の6個の連続ヌクレオチド配列と同一である、少なくとも6個の連続ヌクレオチド配列を含有する。shRNA遺伝子の発現に有用なベクター及び転写プロモーター配列の例は当技術分野で周知である(Paddisonら、2004、Nature 4:28−31;Silvaら、2005、Nat.Genet.37:1281−88;Bernardsら、2006、Nat.Methods 3:701−06)。shRNAの有効量は、miR−34ファミリーの1以上のメンバーにより制御される1以上の遺伝子転写産物の検出レベルの測定可能な変化を引き起こすのに十分な量である。ある実施形態において、miR−34ファミリーの1以上のメンバーにより制御される遺伝子転写産物は、表5から選択される。
【0090】
別の態様において、本発明は、18から25個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列を含むか又は基本的にそれらからなる単離核酸分子を提供し、このガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み、前記単離核酸分子は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1個のヌクレオチド配列の相違を有する。
【0091】
ある実施形態において、単離核酸分子は、基本的に19から23個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列からなり、前記ガイド鎖はヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から10からなり、前記非シード領域は、基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置11から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み、前記単離核酸分子は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1個のヌクレオチド配列の相違を有する。
【0092】
別の態様において、本発明は、単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物及び合成2本鎖マイクロRNA模倣物を作製する方法を提供する。本明細書中で記載されるうように、実施例5で示されるように、天然成熟miR−34a(配列番号1)に対応する配列を伴うガイド鎖と、配列の3’末端に位置する1個の塩基ミスマッチを除き、miR−34a天然成熟ガイド鎖と基本的に相補的である合成パッセンジャー鎖(配列番号12)(非対称パッセンジャー鎖)と、を含む合成2本鎖マイクロRNA模倣物は、天然のmiR−34aガイド鎖(配列番号1)及び天然のmiR−34aパッセンジャー鎖(配列番号35)からなる2本鎖よりも、細胞に遺伝子移入された場合に細胞周期表現型を誘導することにおいて有効であることが明らかにされた。理論に縛られることを望まないが、パッセンジャー鎖でのミスマッチの存在により、RICSへの移入が促進され得ると考えられる。
【0093】
前述の説明によると、ある実施形態において、本発明は、(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)と、
(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違は、パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)と、を含む、単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物を提供する。
【0094】
本発明のこの態様によると、合成2本鎖模倣物は、何らかの天然のマイクロRNAに対して生成され得る。コンピュータ及び分子クローニングを用いたアプローチにより、様々な生物において様々なレベルで発現される何百ものマイクロRNAが明らかになった。http://microrna.sanger.ac.uk/sequences/のWellcom Trust Sanger InstituteウェブサイトのWorld Wide Webにおいて一般公開され利用可能な「miRBase sequence database(配列データベース)」に記載のように、200を超える様々な哺乳動物マイクロRNAが同定されてきた。代表的なマイクロRNA種の一覧もまた次の参考文献に記載されている:Ambrosら、RNA 9:277−279(2003);Griffith−Jones、Nucleic Acid Res.32:D109−D111(2004);Griffith−Jones、Nucleic Acids Res.34:D140−D144(2006);Lagos−Quintanaら、Curr Biol.12(9):735−9(2002);Lim、L.P.ら、Science 299(5612):1540(2003)。何らかのある一定のマイクロRNAに対して、マイクロRNA反応性標的部位のレベルを調節するために、本発明のこの態様の合成2本鎖マイクロRNA模倣物を使用し得る。本発明のこの態様の合成2本鎖マイクロRNA模倣物は、本明細書中に記載のように、脂質ナノ粒子など送達物質とともに組成物に含まれ得る。
【0095】
本発明のこの態様のある実施形態において、ガイド鎖は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含むシード領域を含む。ある実施形態において、ガイド鎖配列は、配列番号1、配列番号4、配列番号7及び配列番号29からなる群から選択される。
【0096】
本発明の態様に従い、パッセンジャー鎖は、18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる核酸分子である。パッセンジャー鎖のヌクレオチド配列は、ガイド鎖と基本的に相補的であり、パッセンジャー鎖は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較した場合、1個のヌクレオチド配列の相違を有する。本明細書中で使用される場合、ガイド鎖に関して「基本的に相補的」という用語は、ガイド鎖シード配列(ガイド鎖の位置1から12)の正確な逆相補体との1個の塩基ミスマッチ(1個のヌクレオチド配列の相違)(これは、パッセンジャー鎖の3’末端に位置する(位置13から3’末端)。)がある、ガイド鎖の逆相補体であるパッセンジャー鎖を指す。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端の6個のヌクレオチド内に位置する。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端からの6個のヌクレオチドに位置する。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端からの5ヌクレオチドに位置する。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端からの4ヌクレオチドに位置する。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端からの3ヌクレオチドに位置する。ある実施形態において、1個のヌクレオチド配列の相違は、パッセンジャー鎖の3’末端からの2ヌクレオチドに位置する。
【0097】
ある実施形態において、パッセンジャー鎖のヌクレオチド配列は、ガイド鎖の配列の逆相補体と基本的に相補的であり、パッセンジャー鎖の5’末端は、ガイド鎖の3’末端からの位置1から4の塩基に相補的であり、それにより、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖が一緒にアニーリングされる場合、2本鎖の片端に3’突出部が形成される。
【0098】
ある実施形態において、ヌクレオチド配列は、ガイド鎖の配列の逆相補体と基本的に相補的であり、パッセンジャー鎖の3’末端は、ガイド鎖の5’末端を越えて1から4塩基伸び、それにより、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖が一緒にアニーリングされる場合、2本鎖の片端に3’突出部が形成される。
【0099】
ある実施形態において、単離合成2本鎖は、ガイド鎖配列番号1及びパッセンジャー鎖配列番号12を含む。ある実施形態において、単離合成2本鎖は、ガイド鎖配列番号4及びパッセンジャー鎖配列番号17を含む。ある実施形態において、単離合成2本鎖は、ガイド鎖配列番号7及びパッセンジャー鎖配列番号22を含む。ある実施形態において、単離合成2本鎖は、ガイド鎖配列番号29及びパッセンジャー鎖配列番号32を含む。
【0100】
別の態様において、本発明は、合成2本鎖マイクロRNA模倣物を作製する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、合成2本鎖マイクロRNA模倣物を形成するために単離パッセンジャー鎖核酸分子と単離ガイド鎖核酸分子をアニーリングすることを含み、ここで、(i)単離ガイド鎖核酸分子は、18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなり、このガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、このシード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み;(ii)単離パッセンジャー鎖核酸分子は、18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなり、前記パッセンジャー鎖はガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違は、パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。
【0101】
III.核酸分子
本明細書中で使用される場合、「核酸塩基」は、例えば、少なくとも1つの天然核酸(即ちDNA及びRNA)で見出される天然の核酸塩基(即ち、A、T、G、C又はU)及びこのような核酸塩基の天然又は非天然の誘導体及び類似体などの複素環塩基を指す。核酸塩基は、通常、天然の核酸塩基対形成に対して置換し得るように、少なくとも1つの天然核酸塩基と1以上の水素結合を形成する(「アニーリング」又は「ハイブリッド形成」)(例えば、AとT、GとC及びAとUとの間の水素結合)。
【0102】
「プリン」及び/又は「ピリミジン」核酸塩基は、天然のプリン及び/又はピリミジン核酸塩基及びまた、以下に限定されないが、アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード)、チオール又はアルキルチオール部分の1以上により置換されるプリン又はピリミジンを含む、それらの誘導体及び類似体を包含する。好ましいアルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1、約2、約3、約4、約5から約6個の炭素原子からなる。プリン又はピリミジンのその他の非限定例は、デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、ブロモチミン、8−アミノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、アザグアニン、2−アミノプリン、5−エチルシトシン、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、5−エチルウラシル、5−ヨードウラシル、5−クロロウラシル、5−プロピルウラシル、チオウラシル、2−メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N−ジメチルアデニン、アザアデニン、8−ブロモアデニン、8−ヒドロキシアデニン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、4−(6−アミノヘキシル/シトシン)などを含む。核酸塩基は、本明細書中で記載されるか又は当業者にとって公知の何らかの化学合成又は天然合成法を用いて、ヌクレオシド又はヌクレオチドに含まれ得る。このような核酸塩基は、標識され得るか又は標識される分子の一部であり得、核酸塩基を含有する。
【0103】
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオシド」は、核酸塩基リンカー部分に共有結合される核酸塩基を含む個々の化学単位を指す。「核酸塩基リンカー部分」の非限定例は、以下に限定されないが、デオキシリボース、リボース、アラビノース又は5−炭糖の誘導体もしくは類似体を含む、5−炭素原子を含む糖(即ち「5−炭糖」)である。5−炭糖の誘導体又は類似体の非限定例は、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース又は炭素環式の糖(糖環において炭素で酸素原子が置換されている。)を含む。
【0104】
核酸塩基リンカー部分に対する核酸塩基の共有結合の様々なタイプは当技術分野で公知である。非限定例として、プリン(即ちA又はG)又は7−デアザプリン核酸塩基を含むヌクレオシドは、通常、プリン又は7−デアザプリンの9位を5−炭糖の1’位に共有結合する。別の非限定例において、ピリミジン核酸塩基(即ち、C、T又はU)を含むヌクレオシドは、通常、ピリミジンの1位を5−炭糖の1’−位に共有結合する(Kornberg及びBaker、1992、「DNA replication」、Freeman and Company、New York、NY)。
【0105】
本明細書中で使用される場合、「ヌクレオチド」は、「骨格部分」をさらに含むヌクレオシドを指す。骨格部分は通常、ヌクレオチドを含む別の分子に、又は別のヌクレオチドに、ヌクレオチドを共有結合し、核酸を形成する。天然のヌクレオチドの「骨格部分」は通常、リン部分を含み、これは、5−炭糖に共有結合される。骨格部分の結合は、通常、5−炭糖の3’−又は5’−位の何れかで生じる。結合のその他のタイプは、特にヌクレオチドが天然の5−炭糖の誘導体又は類似体又はリン部分を含む場合、当技術分野で公知である。
【0106】
核酸は、天然の核酸中に存在し得る、核酸塩基の誘導体又は類似体、核酸塩基リンカー部分及び/又は骨格部分を含み得るか又はこれらから完全に構成され得る。本明細書中で使用される場合、「誘導体」は、天然分子の化学修飾又は改変型を指し、一方、「模倣物」又は「類似体」という用語は、天然分子又は部分に構造的に類似していても類似しなくてもよいが、同様の機能を保持する分子を指す。本明細書中で使用される場合、「部分」は、通常、より大きい化学又は分子構造のより小さい化学又は分子成分を指す。核酸塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチド類似体又は誘導体は、当技術分野で周知であり、記載されている(例えば、Scheit、1980、「Nucleotide Analogs:Synthesis and Biological Function」、Wiley、N.Y.を参照のこと。)。
【0107】
5−炭糖及び/又は骨格部分誘導体又は類似体を含む、ヌクレオシド、ヌクレオチド又は核酸のさらなる非限定例には、米国特許第5,681,947号(これは、dsDNAと三重へリックスを形成し及び/又はdsDNAの発現を阻止するプリン誘導体を含むオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,652,099号及び同第5,763,167号(特に蛍光核酸プローブとしての使用のための、DNA又はRNAで見出されるヌクレオシドの蛍光類似体を組み込む核酸を記載する。);米国特許第5,614,617号(これは、高いヌクレアーゼ安定性を保持するピリミジン環において置換を有するオリゴヌクレオチド類似体を記載する。);米国特許第5,670,663号、同第5,872,232号及び同第5,859,221号(これは、核酸検出で使用される、修飾5−炭糖を有するオリゴヌクレオチド類似体を記載する(即ち、修飾2’−デオキシフラノシル部分)。);米国特許第5,446,137号(これは、ハイブリッド形成アッセイにおいて使用され得る水素以外の置換基により4’位で置換される少なくとも1個の5−炭糖部分を含むオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,886,165号(これは、3’−5’ヌクレオチド間結合を有するデオキシリボヌクレオチド及び2’−5’ヌクレオチド間結合を有するリボヌクレオチドの両方を有するオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,714,606号(これは、ヌクレオチド間結合の3’−位の酸素が炭素により置換され、核酸のヌクレアーゼ耐性が促進されている、修飾ヌクレオチド間結合を記載する。);米国特許第5,672,697号(これは、ヌクレアーゼ耐性を促進する1以上の5’メチレンホスホン酸ヌクレオチド間結合を含有するオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,466,786号及び同第5,792,847号(これは、置換基部分の結合を記載し、これは、ヌクレアーゼ安定性を促進し、薬物又は検出部分の送達能を与えるために、オリゴヌクレオチドの2’炭素に対して薬物又は標識を含有し得る。);米国特許第5,223,618号(これは、細胞取り込み向上、ヌクレアーゼに対する耐性及びRNAを標的化するためのハイブリッド形成に対して、隣接5−炭糖部分の4’位及び3’位を結合させる2又は3炭素骨格結合を伴うオリゴヌクレオチド類似体を記載する。);米国特許第5,470,967号(これは、核酸ハイブリッド形成プローブとして有用である少なくとも1つのスルファミン酸塩又はスルファミドヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,378,825号、同第5,777,092号、同第5,623,070号、同第5,610,289号及び同第5,602,240号(これらは、ヌクレアーゼ耐性向上、細胞取り込み及びRNA発現の制御のために使用されるホスホジエステル骨格部分を置換する3又は4個の原子リンカー部分を有するオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,858,988号(これは、それらの膜透過性及び安定性を促進するためにオリゴヌクレオチドの2’−O位に連結される疎水性担体物質を記載する。);米国特許第5,214,136号(これは、DNA又はRNAへのハイブリッド形成が促進されヌクレアーゼに対する、安定性が向上した、5’末端でアントラキノンに結合されるオリゴヌクレオチドを記載する。);米国特許第5,700,922号(これは、DNAが、ヌクレアーゼ耐性、結合親和性及びRNaseHを活性化する能力を向上させるための2’−デオキシ−エリスロ−ペントフラノシルヌクレオチドを含むPNA−DNA−PNAキメラを記載する。);及び米国特許第5,708,154号(これは、DNA−RNAハイブリッドを形成するためにDNAに連結されるRNAを記載する。);及び米国特許第5,728,525号(これは、ユニバーサル蛍光標識によるヌクレオシド類似体の標識を記載する。)におけるものが含まれる。
【0108】
ヌクレオシド類似体及び核酸類似体に対するさらなる教示は、米国特許第5,728,525号(これは、末端標識されるヌクレオシド類似体を記載する。);及び米国特許第5,637,683号、同第6,251,666号(L−ヌクレオチド置換)及び同第5,480,980号(7−デアザ−2’デオキシグアノシンヌクレオチド及びその核酸類似体)である。
【0109】
shRNA介在性抑制
あるいは、本発明のある一定の核酸分子は、真核プロモーターから細胞内で発現され得る(例えばIzant及びWeintraub、1985、Science、229:345;McGarry及びLindquist、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 83:399;Scanlonら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 88:10591−95;Kashani−Sabetら、1992、Antisense Res.Dev.、2:3−15;Dropulicら、1992、J.Virol、66:1432−41;Weerasingheら、1991、J.Virol.、65:5531−4;Ojwangら、1992、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 89:10802−06;Chenら、1992、Nucleic Acids Res.、20:4581 89;Sarverら、1990 Science、247:1222−25;Thompsonら、1995、Nucleic Acids Res.、23:2259;Goodら、1997、Gene Therapy、4:45)。当業者は、適切なDNA/RNAベクターから真核細胞において何らかの核酸が発現され得ることを認める。このような核酸の活性は、酵素的核酸による一次転写産物からのそれらの放出により増強され得る(Draperら、PCT WO93/23569及びSullivanら、PCT WO94/02595;Ohkawaら、1992、Nucleic Acids Symp.Ser.、27:15−6;Tairaら、1991、Nucleic Acids Res.、79:5125−30;Venturaら、1993、Nucleic Acids Res.、21:3249−55;Chowriraら、1994、J.Biol.Chem.、269:25856)。CNSに特異的な遺伝子治療アプローチは、Bleschら、2000、Drug News Perspect.、13:269−280;Petersonら、2000、Cent.Nerv.Syst.Dis.、485:508;Peel及びKlein、2000、J.Neursci.Methods、98:95−104;Hagiharaら、2000、Gene Ther.、7:759−763;及びHerrlingerら、2000、Methods Mol.Med.、35:287−312に記載されている。神経系の細胞への核酸のAAV−介在送達は、Kaplittら、米国特許第6,180,613号にさらに記載されている。
【0110】
本発明の別の態様において、本発明のRNA分子は、好ましくは、DNA又はRNAベクターに挿入される転写単位から発現される(例えばCoutureら、1996、TIG.、12:510)。組み換えベクターは、好ましくはDNAプラスミド又はウイルスベクターである。以下に限定されないが、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス又はアルファウイルスに基づき、リボザイム発現ウイルスベクターを構築することができる。好ましくは、核酸分子を発現することができる組み換えベクターは、上述のように送達され、標的細胞において持続する。あるいは、核酸分子の一時的発現をもたらすウイルスベクターを使用することができる。このようなベクターを必要に応じて繰り返し投与することができる。発現されると、核酸分子は標的mRNAに結合する。ベクターを発現する核酸分子の送達は、静脈内又は筋肉内投与によって、患者又は対象から外移植された標的細胞への投与とそれに続く患者又は対象への再導入によって、又は所望の標的細胞への導入を可能にする何らかのその他の手順によってなど、全身的であり得る(概説については、Coutureら、1996、TIG.、72:510参照)。
【0111】
ある態様において、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む発現ベクターを考慮する。本発明の核酸分子をコードする核酸配列は、その核酸分子の発現が可能になるように、操作可能に連結される。
【0112】
別の態様において、本発明は、a)転写開始領域(例えば、真核pol I、II又はIII開始領域)と;b)転写終結領域(例えば、真核pol I、II又はIII終結領域)と;c)本発明の核酸分子の少なくとも1つをコードする核酸配列と、を含み、前記配列が、前記核酸分子の発現及び/又は送達が可能になるように、前記開始領域及び前記終結領域に操作可能に連結される、発現ベクターを特色とする。ベクターは、本発明の核酸分子をコードする配列の5’側又は3’側で操作可能に連結されるタンパク質に対するオープンリーディングフレーム(ORF)及び/又はイントロン(介在配列)を場合によっては含み得る。
【0113】
核酸分子配列の転写は、真核RNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)又はRNAポリメラーゼIII(pol III)に対するプロモーターから支配される。pol II又はpol IIIプロモーターからの転写は全ての細胞において高レベルで発現され;ある種の細胞型におけるある種のpol IIプロモーターのレベルは、近くに存在する遺伝子制御配列(エンハンサー、サイレンサーなど)の性質に依存する。適切な細胞において原核RNAポリメラーゼ酵素が発現されるならば、原核RNAポリメラーゼプロモーターもまた使用される(Elroy−Stein及びMoss、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6743−7;Gao及びHuang、1993、Nucleic Acids Res.、21:2867−72;Lieberら、1993、Methods Enzymol、217:47−66;Zhouら、1990、Mol.Cell.Biol.、70:4529−37)。
【0114】
一部の研究者は、このようなプロモーターから発現されるshRNA又はマイクロRNAをコードする核酸分子が哺乳動物細胞において機能し得ることを示した(Brummelkampら、2002、Science 296:550−553;Paddisonら、2004、Nat.Methods 1:163−67;McIntyre及びFanning 2006 BMC Biotechnology(1月5日)6:1;Taxmanら、2006 BMC Biotechnology(1月24日)6:7)。上記shRNA又はマイクロRNA転写単位は、以下に限定されないが、プラスミドDNAベクター、ウイルスDNAベクター(アデノウイルス又はアデノ関連ウイルスベクターなど)又はウイルスRNAベクター(レトロウイルス又はアルファウイルスベクターなど)(概説として、Couture及びStinchcomb、1996前出を参照のこと。)を含む、哺乳動物細胞への導入のための様々なベクターに組み込むことができる。
【0115】
別の態様において、本発明は、その核酸分子の発現を可能にするように本発明の核酸分子の少なくとも1つをコードする核酸配列を含む発現ベクターを特色とする。発現ベクターは、ある実施形態において、a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)少なくとも1つの前記核酸分子をコードする核酸配列を含み;前記配列は、前記核酸分子の発現及び/又は送達を可能にするように前記開始領域及び前記終結領域に操作可能に連結される。
【0116】
別の実施形態において、発現ベクターは、a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)オープンリーディングフレーム;d)少なくとも1つの前記核酸分子をコードする核酸配列を含み、前記配列は、前記オープンリーディングフレームの3’−末端に操作可能に連結され;前記配列は、前記核酸分子の発現及び/又は送達が可能になるように、前記開始領域、前記オープンリーディングフレーム及び前記終結領域に操作可能に連結される。さらに別の実施形態において、発現ベクターは、a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)イントロン;d)少なくとも1つの前記核酸分子をコードする核酸配列を含み、前記配列は、前記核酸分子の発現及び/又は送達が可能になるように前記開始領域、前記イントロン及び前記終結領域に操作可能に連結される。
【0117】
別の実施形態において、発現ベクターは、a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)イントロン;d)オープンリーディングフレーム;e)少なくとも1つの前記核酸分子をコードする核酸配列を含み、前記配列は、前記オープンリーディングフレームの3’−末端に操作可能に連結され;前記配列は、前記核酸分子の発現及び/又は送達が可能になるように、前記開始領域、前記イントロン、前記オープンリーディングフレーム及び前記終結領域に操作可能に連結される。
【0118】
IV.修飾SINA分子
本明細書中に記載のsiNAコンストラクトの何れも下記のように評価及び修飾することができる。
【0119】
siNAコンストラクトは、例えばsiNAコンストラクトが対象の身体に導入される場合など、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼにより切断されやすいものであり得る。切断の部位(例えば、RNAiコンストラクトにおけるエンド及びエキソヌクレアーゼ核酸分解切断)を決定するために、及び切断機構を調べるために、方法を使用することができる。このような切断を阻害するために、siNAコンストラクトを修飾することができる。
【0120】
代表的な修飾には、本明細書中に記載の修飾を含む、エンドヌクレアーゼ核酸分解を阻害する修飾が含まれる。特に好ましい修飾には、2’修飾、例えば、2’−O−メチル化ヌクレオチド又は2’−デオキシヌクレオチド(例えば、2’デオキシ−シトジン)又は2’−フルオロ、ジフルオロトルイル、5−Me−2’−ピリミジン、5−アリアミノ−ピリミジン、2’−O−メトキシエチル、2’−ヒドロキシ又は2’−アラ−フルオロヌクレオチド又はロックド核酸(LNA)、伸長核酸(ENA)、ヘキソース核酸(HNA)又はシクロヘキセン核酸(CeNA)が含まれる。ある実施形態において、2’修飾は、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチド、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチド又は少なくとも1つの5’−ウリジン−シチジン−3’(5’−UC−3’)ジヌクレオチドのウリジンにおけるものであるか又は少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド、少なくとも1つの5’−シチジン−シチジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチド又は少なくとも1つの5’−シチジン−ウリジン−3’(5’−CU−3’)ジヌクレオチドのシチジンにおけるものである。2’修飾はまた、siNAコンストラクトにおいて全てのピリミジンにも適用され得る。ある好ましい実施形態において、2’修飾は、siNAコンストラクトのセンス鎖上の2’OMe修飾である。より好ましい実施形態において、2’修飾は、2’フルオロ修飾であり、2’フルオロは、センス(パッセンジャー)又はアンチセンス(ガイド)鎖又は両方の鎖上にある。
【0121】
例えば、リン酸骨格における、SでのOの置換による、骨格の修飾(例えばホスホロチオアート修飾の提供)は、エンドヌクレアーゼ活性を阻害するために使用することができる。ある実施形態において、siNAコンストラクトは、1以上のリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置換することによって修飾されている。好ましくは、隣接デオキシリボヌクレオチドはホスホロチオアート結合により連結され、siNAコンストラクトは、センス又はアンチセンス鎖上で4個を超える連続デオキシリボヌクレオチドを含まない。C5アミノリンカーでのUの置換;GでのAの置換(配列変化は、センス鎖上にあり、アンチセンス鎖上にはないことが好ましい。);又は2’、6’、7’又は8’位の糖の修飾もまた、siNAコンストラクトのエンドヌクレアーゼ切断を阻害し得る。好ましい実施形態は、これらの修飾の1以上がセンス鎖上に存在するが、アンチセンス鎖上に存在しないもの又はアンチセンス鎖がこのような修飾が少ない実施形態である。
【0122】
代表的な修飾にはまた、エキソヌクレアーゼにより分解を阻害するものも含まれる。ある実施形態において、siNAコンストラクトには、siNAコンストラクトの末端ヌクレオチドの1以上の間の、ホスホロチオアート結合又はその結合におけるP−アルキル修飾が含まれる。別の実施形態において、siNAコンストラクトの1以上の末端ヌクレオチドには、糖修飾、例えば、2’又は3’糖修飾が含まれる。代表的な糖修飾には、例えば、2’−O−メチル化ヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチド(例えば、デオキシ−シトジン)、2’−デオキシ−2’−フルオロ(2’−F)ヌクレオチド、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2−O−−N−メチルアセトアミド(2’−O−−NMA)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−DMAEOE)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−AP)、2’−ヒドロキシヌクレオチド又は2’−アラ−フルオロヌクレオチド又はロックド核酸(LNA)、伸長核酸(ENA)、ヘキソース核酸(HNA)又はシクロヘキセン核酸(CeNA)が含まれる。2’修飾は、好ましくは2’OMe、より好ましくは2’フルオロである。
【0123】
エキソヌクレアーゼによる切断を阻害するために記載される修飾は、単一のsiNAコンストラクト上に組み合わせることができる。例えば、ある実施形態において、siNAコンストラクトの少なくとも1個の末端ヌクレオチドは、ホスホロチオアート結合及び2’糖修飾、例えば、2’F又は2’OMe修飾を有する。別の実施形態において、siNAコンストラクトの少なくとも1個の末端ヌクレオチドは、5’Me−ピリミジン及び2’糖修飾、例えば2’F又は2’OMe修飾を有する。
【0124】
エキソヌクレアーゼ切断を阻害するために、siNAコンストラクトは、陽イオン性修飾など(例えば3’−脱塩基陽イオン性修飾など)、核酸塩基修飾を含み得る。陽イオン性修飾は、例えば、siNAコンストラクトの末端ヌクレオチドの1以上における、アルキルアミノ−dT(例えば、C6アミノ−dT)、アリルアミノ結合物、ピロリジン結合物、フタルアミド又はヒドロキシプロリノール結合物であり得る。ある実施形態において、アルキルアミノ−dT結合物は、RNAiコンストラクトのセンス又はアンチセンス鎖の3’末端に連結される。別の実施形態において、ピロリジンリンカーは、センス鎖の3’もしくは5’末端又はアンチセンス鎖の3’末端に連結される。ある実施形態において、アリルアミンウリジンは、センス鎖の3’又は5’末端上にあり、アンチセンス鎖の5’末端上にない。
【0125】
ある実施形態において、siNAコンストラクトは、siNAコンストラクトの末端ヌクレオチドの1以上において結合物を含む。結合物は、例えば、脂溶性物質、テルペン、タンパク質結合物質、ビタミン、炭水化物、レチノイド又はペプチドであり得る。例えば、結合物は、ナプロキセン、ニトロインドール(又はスタッキング相互作用に関与する別の結合物)、葉酸、イブプロフェン、コレステロール、レチノイド、PEG又はC5ピリミジンリンカーであり得る。その他の実施形態において、結合物は、グリセリド脂質結合物(例えばジアルキルグリセリド誘導体)、ビタミンE結合物又はチオコレステロールである。ある実施形態において、結合物は、アンチセンス鎖の3’末端上又はセンス鎖の5’又は3’末端上にあり、結合物は、アンチセンス鎖の3’末端及びセンス鎖の3’末端上にない。
【0126】
ある実施形態において、結合物はナプロキセンであり、結合物は、センス又はアンチセンス鎖の5’又は3’末端上にある。ある実施形態において、結合物はコレステロールであり、結合物は、センス鎖の5’又は3’末端上にあり、アンチセンス鎖には存在しない。ある実施形態において、コレステロールは、ピロリジンリンカー又はセリノールリンカー、アミノオキシ又はヒドロキシプロリノールリンカーによりsiNAコンストラクトに結合されている。その他の実施形態において、結合物は、dU−コレステロールであるか又はコレステロールがジスルフィド結合によりsiNAコンストラクトに結合されている。別の実施形態において、結合物は、コラン酸であり、コラン酸は、センス鎖の5’もしくは3’末端又はアンチセンス鎖の3’末端に結合されている。ある実施形態において、コラン酸は、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端に連結される。別の実施形態において、結合物は、PEG5、PEG20、ナプロキセン又はレチノールである。
【0127】
別の実施形態において、1以上の末端ヌクレオチドは、2’−5’結合を有する。ある実施形態において、2’−5’結合は、センス鎖、例えばセンス鎖の5’末端に存在する。
【0128】
ある実施形態において、siNAコンストラクトは、L−糖を好ましくはセンス鎖の5’又は3’末端に含む。
【0129】
ある実施形態において、siNAコンストラクトは、1以上の末端ヌクレオチドで、エキソヌクレアーゼ耐性を促進するために、例えばコンストラクトのセンス又はアンチセンス鎖の3’末端で、メチルホスホン酸塩を含む。
【0130】
ある実施形態において、siRNAコンストラクトは、デオキシリボヌクレオチドで1以上のリボヌクレオチドを置換することにより、修飾されている。別の実施形態において、隣接デオキシリボヌクレオチドは、ホスホロチオアート結合により連結される。ある実施形態において、siNAコンストラクトは、センス又はアンチセンス鎖において4個を超える連続デオキシリボヌクレオチドを含まない。別の実施形態において、リボヌクレオチドは全て、リボヌクレオチドではない修飾ヌクレオチドで置換されている。
【0131】
ある実施形態において、細胞及び生体試料中での安定性が向上しているsiNAコンストラクトは、ジフルオロトルイル(DFT)修飾、例えば、イノシン置換に対する2,4−ジフルオロトルイルウラシル又はグアニジンを含む。
【0132】
本方法は、候補siNA、例えば候補siRNAコンストラクト(これは、修飾されていないか又は修飾、例えば分解を阻害するか、dsRNA分子を標的化するか又はハイブリッド形成を調節する修飾を含む。)を評価するために使用することができる。このような修飾は本明細書中に記載されている。切断アッセイは、標的転写産物を抑制する修飾又は非修飾候補の能力を調べるためのアッセイと組み合わせることができる。例えば、標的(又は間違った標的配列)を抑制するその能力を評価するために、候補を(場合によっては)試験し、その切断されやすさを評価し、修飾された候補物質を産生させるためにそれを修飾し(例えば、分解を阻害するためになど、本明細書中に記載のように)、抑制能及び分解耐性能の一方又は両方について修飾された候補物質を試験し得る。この手順を反復し得る。1回につき1つ又はまとめて修飾を導入することができる。標的RNAを抑制する能力を監視するために細胞を用いた方法を使用することが好都合であることが多い。この後、活性を確認するために、異なる方法、例えば、動物全体を用いる方法を行い得る。
【0133】
修飾(塩基、糖及び/又はリン酸)を有する化学合成核酸分子は、血清リボヌクレアーゼによるそれらの分解を阻止し、それらの有効性を向上させることができる(例えば、Ecksteinら、国際公開番号WO92/07065;Perraultら、1990、Nature 344:565;Piekenら、1991、Science 253:314;Usman及びCedergren、1992、Trends in Biochem.Sci.17:334;Burginら、1996、Biochemistry、35:14090;Usmanら、国際公開番号WO93/15187;及びRossiら、国際公開番号WO91/03162;Sproat、米国特許第5,334,711号;Goldら、米国特許第6,300,074号;及びVargeeseら、US2006/021733を参照。)。上記参考文献の全ては、本明細書中に記載の核酸分子の、塩基、リン酸及び/又は糖部分に対してなされ得る様々な化学修飾を記載する。細胞におけるそれらの有効性及びオリゴヌクレオチド合成時間を短縮するための核酸分子からの塩基の除去を促進し、化学的必要条件を減少させる修飾が所望される。
【0134】
1以上のmiR−34ファミリーメンバーにより下方制御される2以上の遺伝子の発現を調節又は減弱させることにおける使用のための化学修飾siNA分子もまた、本発明の範囲内である。本明細書中に記載されているのは、単離siNA物質、例えば、RNAiが、1以上のmiR−34ファミリーメンバーにより下方制御される2以上の遺伝子の発現を阻害するのに介在するRNA分子(化学修飾されているか又はされていない2本鎖又は1本鎖)である。
【0135】
本明細書中で考察されるsiNA物質には、他に、非修飾RNAならびに、例えば有効性を向上させるために化学修飾されているRNA、及びヌクレオシド代用物のポリマーが含まれる。非修飾RNAは、核酸の成分、即ち糖、塩基及びリン酸部分が、天然で生じるものと同じであるか又は基本的に同じである、好ましくはヒト身体で天然に生じるものと同じである分子を指す。この技術は、稀であるか又は通常のものではないが天然の、修飾RNAとしてのRNAを指している(例えば、Limbachら、1994、Nucleic Acids Res.22:2183−2196参照)。修飾RNAと呼ばれることが多い、このような稀であるか又は通常とは異なるRNAは、(明らかに、これらは通常、翻訳後修飾の結果であるので)、本明細書中で使用される場合、非修飾RNAという用語の範囲内である。
【0136】
修飾RNAは、本明細書中で使用される場合、核酸の成分(即ち、RNAi2本鎖の成分である、糖、塩基及びリン酸部分)の1以上が天然で生じるものとは異なる、好ましくはヒト身体で生じるものとは異なる分子を指す。これらが「修飾RNA」と呼ばれる一方、これらは、当然のことながら、修飾ゆえに、RNAではない分子を含む。ヌクレオシド代用物は、リボホスフェート骨格により見られるものとハイブリッド形成が実質的に同様であるように正しい空間的関係で塩基が与えられることを可能にする非リボホスフェートコンストラクトでリボホスフェート骨格が置換される分子である(例えば、リボホスフェート骨格の非荷電模倣物)。上記の全てのものの例は、本明細書中で考察される。
【0137】
本明細書中に記載の修飾は、本明細書中に記載の何らかの2本鎖RNA及びRNA様分子(例えばsiNAコンストラクト)に組み込むことができる。これは、siNAコンストラクトのアンチセンス及びセンス鎖の一方又は両方を修飾するために望ましいものであり得る。核酸がサブユニットのポリマー又はモノマーである場合、下記の修飾の多くは、核酸内で反復される位置、例えば塩基の修飾、又はリン酸部分又はリン酸部分の非連結Oで起こる。場合によっては、核酸中の対象位置全てで修飾が生じるが、多くの場合、実際は殆どの場合、そのようにならない。
【0138】
例として、修飾は3’又は5’末端位置で起こり得、末端領域で、例えば末端ヌクレオチドの位置で又は鎖の最後の2、3、4、5又は10ヌクレオチドにおいて、起こり得る。2本鎖領域、1本鎖領域又は両方で修飾が起こり得る。例えば、非連結O位置のホスホロチオアート修飾は、一方又は両末端でのみで起こり得、末端領域(例えば末端ヌクレオチドの位置で又は鎖の最後の2、3、4、5又は10ヌクレオチドにおいて)でのみ起こり得るか、又は2本鎖及び1本鎖領域で、特に末端で起こり得る。同様に、センス鎖、アンチセンス鎖又は両方において修飾が起こり得る。場合によっては、隣接残基を除く内部残基で修飾が起こり得る。ある場合では、センス及びアンチセンス鎖は、同じ修飾又は同じクラスの修飾を有するが、その他の場合では、センス及びアンチセンス鎖は異なる修飾を有し、例えば、ある場合には、一方の鎖のみ、例えばセンス鎖を修飾することが望ましいものであり得る。ある場合には、RISC複合体への抗センス鎖の挿入を促進するために、センス鎖が修飾、例えばキャップ付加され得る。
【0139】
siNAコンストラクトの、糖、塩基又は骨格に対してなされ得るその他の適切な修飾は、US2006/0217331、US2005/0020521、WO2003/70918、WO2005/019453、PCR出願番号PCT/US2004/01193に記載されている。siNAコンストラクトは、上述の参考文献の何れか1つに記載の塩基など、非天然の塩基を含み得る。PCT出願PCT/US2004/011822も参照のこと。siNAコンストラクトはまた、非炭化水素環状担体分子など、非天然の糖も含み得る。siNA物質での使用のための非天然の糖の代表的な特性は、PCT出願PCT/US2004/11829に記載されている。
【0140】
本発明のsiNAコンストラクトへの修飾の導入に対する2つの主要な目的は、生体環境における分解に対するそれらの安定化及び薬理学的特性、例えば薬物動態特性の向上である。当技術分野において、それらのヌクレアーゼ安定性及び有効性を顕著に促進しながら核酸分子に導入することができる、糖、塩基及びリン酸修飾を記載するいくつかの例がある。例えば、オリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性基(例えば、2’−アミノ、2’−C−アリル、2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−アリル、2’−H、ヌクレオチド塩基修飾)での修飾により、安定性を促進するため及び/又は生物学的活性を促進するために修飾される(概説としては、Usman及びCedergren、1992、TIBS 17:34;Usmanら、1994、Nucleic Acids Symp.Ser.31:163;Burginら、1996、Biochemistry、35:14090を参照のこと。)。核酸分子の糖修飾は、当技術分野で詳細に記載されている(Ecksteinら、国際公開WO92/07065;Perraultら、1990、Nature、344:565−568;Piekenら、1991、Science 253:314−317;Usman及びCedergren、1992、Trends in Biochem.Sci.17:334−339;Usmanら、国際公開WO93/15187;Sproat、米国特許第5,334,711号及びBeigelmanら、1995、J.Biol.Chem.、270:25702;Beigelmanら、国際PCT公開WO97/26270;Beigelmanら、米国特許第5,716,824号;Usmanら、米国特許第5,627,053号;Woolfら、国際PCT公開WO98/13526;Thompsonら、米国特許出願シリアル番号60/082,404(1998年4月20日出願);Karpeiskyら、1998、Tetrahedron Lett.、39:1131;Earnshaw及びGait、1998、Biopolymers(Nucleic Acid Sciences)、48:39−55;Verma及びEckstein、1998、Annu.Rev.Biochem.、67:99−134;及びBurlinaら、1997、Bioorg.Med.Chem.、5:1999−2010参照)。このような刊行物は、触媒作用を変化させることなく、糖、塩基及び/又はリン酸修飾などの核酸分子への組み込みの位置を決定するための一般的な方法及びストラテジーを記載する。このような教示を考慮して、細胞でのRNAiを促進するsiNAの能力が顕著に阻害されない限り、本発明のsiNA分子を変化させるために、同様の修飾を本明細書中に記載のように使用することができる。
【0141】
修飾は、糖−リン酸骨格の修飾であり得る。修飾はまた、ヌクレオシド部分が修飾され得る。場合によっては、センス鎖は、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%修飾ヌクレオチドを含むRNA又はRNA鎖である。ある実施形態において、センスポリヌクレオチドは、複数の修飾リボヌクレオチドを含むRNA鎖である。同様に、その他の実施形態において、RNAアンチセンス鎖は1以上の修飾を含む。例えば、RNAアンチセンス鎖は、5%、10%、20%、30%、40%、50%又は75%以下の修飾ヌクレオチドを含み得る。1以上の修飾は、生理的条件において、同じ指定配列を有する非修飾2本鎖核酸に対して、2本鎖核酸の疎水性を向上させるように選択され得る。
【0142】
ある実施形態において、1以上の修飾を含むsiNAコンストラクトは、その他の同一の非修飾siRNAコンストラクトのlogP値未満の少なくとも0.5 logP単位のlogP値を有する。別の実施形態において、1以上の修飾を含むsiNAコンストラクトは、その他の同一の非修飾siRNAコンストラクトのlogP値未満の、少なくとも1、2、3又はさらに4のlogP単位を有する。1以上の修飾は、生理的条件において、同じ指定配列を有する非修飾2本鎖核酸に対して、2本鎖核酸の正電荷を増加させる(又は負電荷を増加させる)ように選択され得る。ある実施形態において、1以上の修飾を含むsiNAコンストラクトは、他の同一の非修飾siRNAコンストラクトよりも少なくとも0.25単位高い等電点pH(pI)を有する。別の実施形態において、センスポリヌクレオチドは、ホスホロチオアート部分、ホスホロアミダート部分、ホスホジチオアート部分、PNA部分、LNA部分、2’−O−メチル部分及び2’−デオキシ−2’フッ化物部分からなる群から選択されるリン酸−糖骨格に対する修飾を含む。
【0143】
ある実施形態において、RNAiコンストラクトは、細胞内部でsiRNAにプロセシングされるヘアピン核酸である。場合によっては、2本鎖核酸の各鎖は、19−100塩基対長及び好ましくは19−50又は19−30塩基対長であり得る。
【0144】
siNAiコンストラクトは、ヌクレアーゼ耐性を向上させるのに有用であるヌクレオチド間結合(例えばキラルホスホロチオアート結合)を含み得る。さらに、又はあるいは、siNAコンストラクトは、ヌクレアーゼ耐性を向上させるためにリボース模倣物を含み得る。ヌクレアーゼ耐性を向上させるための代表的なヌクレオチド間結合及びリボース模倣物は、PCT出願PCT/US2004/07070に記載されている。
【0145】
siRNAiコンストラクトはまた、オリゴヌクレオチド合成のための、リガンド結合モノマーサブユニット及びモノマーも含み得る。代表的なモノマーは、例えば米国出願第10/916,185号に記載されている。
【0146】
siNAコンストラクトは、共有PCT出願PCT/US2004/07070に記載のような、ZXY構造を有し得る。同様に、siNAコンストラクトは、両親媒性部分と複合体形成され得る。siNA物質との使用のための代表的な両親媒性部分は、PCT出願PCT/US2004/07070に記載されている。
【0147】
siNAiコンストラクトのセンス及びアンチセンス配列は、パリンドロームであり得る。パリンドロームsiNA物質の代表的な特性は、PCT出願PCT/US2004/07070に記載されている。
【0148】
別の実施形態において、本発明のsiNAコンストラクトは、モジュラー複合体を特色とする送達物質と複合体形成され得る。この複合体は、次のものの1以上(好ましくは2以上、より好ましくは3つ全て)と連結される担体物質を含み得る:(a)縮合剤(例えばイオン性又は静電相互作用を通じて、例えば、核酸を求引、例えば核酸に結合することができる物質);(b)融合誘導因子(例えば、細胞膜を通じて融合することができる及び/又は輸送され得る。);及び(c)標的基、例えば、細胞又は組織標的物質、例えば、特異的な細胞型に結合する、レクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質(例えば抗体)。送達物質と複合体化されたiRNA物質は、PCT出願PCT/US2004/07070に記載されている。
【0149】
本発明のsiNAコンストラクトは、iRNA2本鎖のセンスとアンチセンス配列との間などの、非標準的な対形成を有し得る。非標準的iRNA物質の代表的な特性は、PCT出願PCT/US2004/07070に記載されている。
【0150】
ある実施形態において、本発明の核酸分子は、1以上の(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)G−クランプヌクレオチドを含む。G−クランプヌクレオチドは、修飾シトシン類似体(この修飾は、2本鎖内で相補的グアニンのワトソン−クリック及びフーグスティーンフェイスの両方を水素結合する能力をもたらす。)である。例えば、Lin及びMatteucci、1998、J.Am.Chem.Soc.、120:8531−8532参照。オリゴヌクレオチド内の1個のG−クランプ類似体置換の結果、相補的オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成させられる場合、ヘリックスの熱安定性及びミスマッチ識別が実質的に促進され得る。本発明の核酸分子にこのようなヌクレオチドが含まれる結果、核酸標的、相補的配列又は鋳型鎖に対する親和性及び特異性の両方が向上する。別の実施形態において、本発明の核酸分子は、2’,4’−Cメチレンビシクロヌクレオチドなどの、1以上(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)のLNA「ロックド核酸」ヌクレオチドを含む(例えば、Wengelら、国際PCT公開WO00/66604及びWO99/14226参照)。
【0151】
本発明のsiNA物質は、ヌクレアーゼに対する耐性を向上させるために修飾され得る。代表的な方法は、切断部位を同定し、切断を阻害するためにこのような部位を修飾することを目論む。PCT/US2005/018931で開示されるような代表的ジヌクレオチド5’−UA−3’、5’−UG−3’、5’−CA−3’、5’−UU−3’又は5’−CC−3’は、切断部位となり得る。
【0152】
ヌクレアーゼ耐性及び/又は標的に対する結合親和性の向上のために、siRNA物質(例えばiRNA物質のセンス及び/又はアンチセンス鎖)は、例えば、2’−修飾リボース単位及び/又はホスホロチオアート結合を含み得る。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、多くの異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾又は置換され得る。
【0153】
「オキシ」−2’ヒドロキシル基修飾の例には、アルコキシ又はアリールオキシ(OR、例えば、R.dbd.H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHOR;例えばメチレン架橋により、同じリボース糖の4’炭素に、2’ヒドロキシルが連結される、「ロックド」核酸(LNA);O−アミン(アミン=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)及びアミノアルコキシ、O(CHアミン、(例えば、アミン=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)、(OCHCHOCH、PEG誘導体)のみを含有するオリゴヌクレオチドが強固なホスホロチオアート修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは注目に値する。
【0154】
「デオキシ」修飾には、水素(即ち、デオキシリボース糖、これは、部分的dsRNAの突出部分に特に関連がある。);ハロ(例えばフルオロ);アミノ(例えば、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ又はアミノ酸);NH(CHCHNH)CHCH−アミン(アミン=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ)、−−NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖)、シアノ;メルカプト;アルキル−チオ−アルキル;チオアルコキシ;及びアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルが含まれ、これらは、例えば、アミノ官能基で場合によっては置換され得る。ある実施形態において、置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH3、2’−O−アリル、2’−C−アリル及び2’−フルオロである。
【0155】
別の実施形態において、ヌクレアーゼ耐性を最大化するために、2’修飾は、1以上のリン酸リンカー修飾(例えばホスホロチオアート)と組み合わせて使用され得る。いわゆる「キメラ」オリゴヌクレオチドは、2以上の異なる修飾を含有するものである。
【0156】
ある実施形態において、siNA物質の全てのピリミジンは2’−修飾を担い、従って、この分子は、エンドヌクレアーゼに対する耐性が向上している。高ヌクレアーゼ耐性はまた、5’−ヌクレオチドを修飾することによっても達成され得、その結果、例えば少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド(ここで、ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである。)、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである。);少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−シチジンは2’−修飾ヌクレオチドである。);少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである。);又は少なくとも1つの5’−シチジン−シチジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−シチジンは2’−修飾ヌクレオチドである。)が得られる。siNA物質は、このようなジヌクレオチドの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5個を含み得る。ある実施形態において、配列モチーフ5’−UA−3’、5’−CA−3’、5’−UU−3’及び5’−UG−3’の全ての出現における5’−末端(most)ピリミジンは2’−修飾ヌクレオチドである。その他の実施形態において、センス鎖における全てのピリミジンは、配列モチーフ5’−UA−3’及び5’−CA−3’の全出現において、2’−修飾ヌクレオチド及び5’−末端(most)ピリミジンである。ある実施形態において、センス鎖中の全ピリミジンが、2’−修飾ヌクレオチドであり、配列モチーフ5’−UA−3’、5’−CA−3’、5’−UU−3’及び5’−UG−3’の全出現における5’−末端(most)ピリミジンが、アンチセンス鎖において2’−修飾ヌクレオチドである。修飾の後者のパターンは、ヌクレアーゼ分解に対する分子全体の安定化に対するヌクレオチド修飾の関与を最大化し、一方で所望の安定性を達成することが必要とされる修飾の総数を最小化することが示されている。PCT/US2005/018931参照。ヌクレアーゼに対する耐性を向上させるためのさらなる修飾は、US2005/0020521、WO2003/70918及びWO2005/019453で見出され得る。
【0157】
オリゴヌクレオチド骨格においてフラノース糖を含むことによっても、エンドヌクレアーゼ性切断を減少させることができる。このようにして、ある実施形態において、本発明のsiNAは、3’陽イオン基を含むことにより、又は3’−3’連結により3’−末端でヌクレオシドを逆転することにより、修飾することができる。別の代替法において、3’−末端は、アミノアルキル基で、例えば、3’C5−アミノアルキルdTで遮断することができる。その他の3’結合物は、3’−5’エキソヌクレアーゼ性切断を阻害することができる。理論に縛られないが、ナプロキセン又はイブプロフェンなどの3’結合物は、オリゴヌクレオチドの3’−末端への結合からエキソクレアーゼを立体的に遮断することにより、エキソヌクレアーゼ性切断を阻害し得る。低分子の、アルキル鎖、アリール基、複素環結合物又は修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)でさえも、3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0158】
同様に、5’結合物は、5’−3’エキソヌクレアーゼ性切断を阻害し得る。理論に縛られないが、ナプロキセン又はイブプロフェンなどの5’結合物は、オリゴヌクレオチドの5’−末端への結合からエキソヌクレアーゼを立体的に遮断することによって、エキソヌクレアーゼ性切断を阻害し得る。低分子の、アルキル鎖、アリール基、複素環結合物又は修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)でさえも、3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0159】
siNA分子によるヌクレアーゼへの耐性を向上させることに対する代替的アプローチは、2本鎖siNAの少なくとも一方又は両鎖に対して突出部を含むことを目論む。ある実施形態において、ヌクレオチド突出部は、1から4、好ましくは2から3の不対ヌクレオチドを含む。別の実施形態において、末端ヌクレオチド対に直接隣接する1本鎖突出部の不対ヌクレオチドは、プリン塩基を含有し、末端ヌクレオチド対はG−C対であるか、又は最後の4つの相補的ヌクレオチド対のうち少なくとも2つがG−C対である。その他の実施形態において、ヌクレオチド突出部は、1又は2つの不対ヌクレオチドを有し得、代表的な実施形態において、ヌクレオチド突出部は、5’−GC−3’であり得る。別の実施形態において、ヌクレオチド突出部は、アンチセンス鎖の3’−末端にある。
【0160】
このようにして、siNA分子は、本文の主要部で見出される、例えばヌクレアーゼ、例えばエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる分解を阻害するように修飾されているモノマーを含み得る。これらのモノマーは、本明細書中でNRM又はヌクレアーゼ耐性促進モノマー又は修飾と呼ばれる。場合によっては、これらの修飾は、同様にsiNA物質のその他の特性、例えばタンパク質(例えば輸送タンパク質、例えば血清アルブミン)又はRISCのメンバーと相互作用する能力、又は第一及び第二の配列が互いに2本鎖を形成するか又は別の配列(例えば標的分子)と2本鎖を形成する能力を調節する。
【0161】
理論に縛られることを望まないが、siNA物質中の糖、塩基及び/又はリン酸骨格の修飾は、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ耐性を促進し、輸送体タンパク質及びRISC複合体の機能的成分の1以上との相互作用を促進することができると考えられる。ある実施形態において、修飾は、エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼ耐性を向上させ得、従って、RISC複合体との相互作用前のsiNA物質の半減期を延長させるが、同時に標的mRNA切断を支配する物質としてのその意図される活性に対してsiNA物質を不活性化しない。再び、理論に縛られることを望まないが、アンチセンス鎖の3’及び/又は5’末端において又はその近くに修飾を配置する結果、siNA物質は上記で説明される好ましいヌクレアーゼ耐性基準に合致するようになり得ると考えられる。
【0162】
上記で説明されるヌクレアーゼ耐性基準を示すsiNA物質を産生させるために有用であり得る修飾は、糖、塩基、及び/又はリン酸骨格の次の化学及び/又は立体化学的修飾の1以上を含み得、この技術は、同様に同じ結果を達成し得るその他の方法も開示すると理解されたい:
(i)キラル(Sp)チオアート。NRMは、非架橋位置にヘテロ原子(例えば位置X(これは、一般には酸素が占める位置である。)にSp又はRp)を含有する修飾リン酸基の特定のキラル型が豊富であるか純粋な特定のキラル型であるヌクレオチド二量体を含み得る。Xでの原子はまたS、Se、Nr又はBrでもあり得る。XがSである場合、Sp連結が豊富であるかキラル的に純粋であるSp連結が好ましい。豊富である、とは、好ましい型が少なくとも70、80、90、95又は99%であることを意味する。
【0163】
(ii)リン酸又は修飾リン酸骨格部分の、糖、塩基及び/又はリン原子への1以上の陽イオン基の連結。ある実施形態において、これらは、陽イオン基において誘導体化された末端位置にモノマーを含み得る。アンチセンス配列の5’−末端は、末端−−OH又はリン酸基を有するはずであるので、このNRMは好ましくはアンチセンス配列の5’−末端で使用されない。この基は、好ましくは、例えば、他方の鎖の相補的塩基と相互作用する面から離れた(例えば、ピリミジンの5’位又はプリンの7位で)、H結合形成及びハイブリッド形成への干渉を最小限にする塩基の位置に連結されるはずである。
【0164】
(iii)末端での非リン酸結合。ある実施形態において、NRMは、非リン酸結合、例えば、リン酸結合よりも切断に対する耐性を大きくする4原子の連結、を含む。例としては、3’CH2−NCH−−O−−CH−5’及び3’CH−−NH−−(O.dbd.)−−CH−5’が挙げられる。
【0165】
(iv)3’−架橋チオホスフェート及び5’−架橋チオホスフェート。ある実施形態において、NRMはこれらの構造の間に含まれ得る。
【0166】
(v)L−RNA、2’−5’結合、逆位結合(inverted linkage)及びa−ヌクレオシド。ある実施形態において、NRMは、Lヌクレオシド及びL−ヌクレオシド由来の二量体ヌクレオチド;2’−5’リン酸、非リン酸及び修飾リン酸結合(例えば、チオホスフェート、ホスホールアミダート及びボロノホスフェート);逆位結合(inverted linkage)(例えば3’−3’又は5’−5’連結)を有する二量体;糖の1’部位にα結合があるモノマー、例えば、α結合を有する本明細書中に記載の構造を含む。
【0167】
(vi)結合基。ある実施形態において、NRMは、例えば、糖、塩基又は骨格を通じて、例えば、モノマーと結合される本明細書中に記載の標的部分又は結合リガンドを含み得る;
(vi)脱塩基結合。ある実施形態において、NRMは、脱塩基モノマー、例えば本明細書中に記載のような脱塩基モノマー(例えば、核酸塩基のないモノマー);本明細書中に記載のような芳香族又は複素環又はポリ複素環芳香族モノマーを含み得る;
(vii)5’−ホスホネート及び5’−リン酸プロドラッグ。ある実施形態において、NRMは、好ましくは末端位置、例えば5’位に、モノマーを含み、ここで、リン酸基の1以上の原子が保護基で誘導体化され、この保護基は、対象の身体中の成分(例えばカルボキシエステラーゼ又は対象の身体中に存在する酵素)の作用の結果として除去される。例えば、カルボキシエステラーゼが保護される分子を切断し、その結果、リン酸塩のOに隣接する炭素を攻撃するチオアート陰イオンが生成され、その結果非保護リン酸塩が生成されるリン酸プロドラッグである。
【0168】
「リガンド」とは、本明細書中で使用される場合、抗原−抗体相互作用以外の機構を通じて、第二の分子(通常は、ポリペプチド又はその一部、例えば炭水化物部分など)に特異的に結合する分子を意味する。この用語は、例えば、その構造が人間により発明された分子を含む、天然又は合成の何れかの、ポリペプチド、ペプチド及び小分子を包含する。この用語は、それらが相互作用し、通常はそれらの活性を調節する受容体及び分子(例えばアゴニスト又はアンタゴニスト)に関して頻繁に使用されるが、この用語は、本明細書中で使用される場合、より全般的に適用される。
【0169】
1以上の様々なNRM修飾は、siNA物質に又はsiRNA物質の配列に導入され得る。NRM修飾は、配列において又はsiRNA物質において複数回使用され得る。ある一部のNRMはハイブリッド形成を妨害するので、組み込まれる総数は、siNA物質2本鎖形成の受容可能なレベルが維持されるようなものであるべきである。
【0170】
ある実施形態において、NRM修飾は、末端切断部位に又は、対象において所望の配列もしくは遺伝子を標的としない配列(センス鎖又は配列)の切断領域に、導入される。
【0171】
殆どの場合、ヌクレアーゼ耐性促進修飾は、その配列が対象における配列を標的とするか(アンチセンス配列と呼ばれる。)、又は対象において配列を標的としないか(センス配列と呼ばれることが多い。)に依存して様々に分布する。配列が対象における配列を標的とするべき場合、RISC介在切断に曝される領域、例えば切断部位又は切断領域において、エンドヌクレアーゼ切断を妨害するか又は阻害する修飾を挿入すべきではない(Elbashirら、2001、Genes and Dev.15:188に記載のとおり)。
【0172】
標的の切断は、20又は21ntガイドRNAのおよそ中ほど又はガイド配列に相補的である第一のヌクレオチドの約10もしくは11ヌクレオチド上流で起こる。本明細書中で使用される場合、「切断部位」は、切断部位の何れかの側における、標的における、又はそれに対してハイブリッド形成するiRNA物質鎖における、ヌクレオチドを指す。切断領域は、何れかの方向の、切断部位の1、2又は3ヌクレオチド内のヌクレオチドを意味する。
【0173】
このような修飾は、末端領域に、例えば、標的する配列又は対象において配列を標的しない配列の、末端部位又は末端の位置2、3、4又は5内に導入することができる。
【0174】
V.治療での使用
不全TP53経路状態を有する腫瘍は、成長過程においていくつかの腫瘍学化合物に対してより反応性があると仮定される(PLK1、AURA、WEE1、CHEK1)(WO2005031002)。従って、TP53機能状態を予測する転写の同定は、これらの化合物の臨床試験のための適切な患者集団の選択に有用であり得る。先行研究は、TP53機能に対する転写マーカーを同定するために、ゲノムスケールのアプローチを使用してきた。TP53転写因子結合部位のゲノムスケール分析に対してクロマチン免疫沈降(ChIP)が使用された(Wieら、(2006)Cell 124:201−219)。Millerらは、配列決定されたTP53を用いて乳癌を分析し、TP53−突然変異及び野生型腫瘍を区別する発現痕跡を同定し、治療反応を予測した(Millerら、(2005)PNAS 102:13550−13555)。
【0175】
ある実施形態において、癌に罹患している哺乳動物対象を治療するための方法が提供されるが、この方法は、(a)活性TP53経路又は不活性TP53経路を有するものとして対象からの癌細胞試料を分類し;(b)低分子干渉核酸(siNA)を含む組成物を用いて活性TP53経路を有する哺乳動物対象を治療することを含み、ここで、前記siNAは、少なくとも18ヌクレオチドのガイド鎖連続ヌクレオチド配列を含み、前記ガイド鎖は、ヌクレオチド位置1から12からなるシード領域を含み、位置1はこのガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択される配列内の6個の連続ヌクレオチドと同一である少なくとも6個の連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0176】
本発明の組成物を用いて治療することができる癌の例には、以下に限定されないが、胆道癌;膀胱癌;膠芽細胞腫及び髄芽腫を含む脳腫瘍;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;急性リンパ性及び骨髄性白血病を含む血液学的腫瘍;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓癌;肺癌;ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;メラノーマ、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌を含む皮膚癌;セミノーマ、非セミノーマ、奇形腫、絨毛癌などの胚細胞腫瘍を含む睾丸癌;間質性腫瘍及び生殖細胞腫瘍;甲状腺癌(thyroid adenocarcinoma)及び髄様癌を含む甲状腺癌;及び腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎臓癌が含まれる。
【0177】
ある実施形態において、低分子干渉核酸(siNA)を含む本発明の組成物は、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、直腸結腸癌及び脳腫瘍などの一般的に遭遇する癌に罹患した哺乳動物対象を治療するために使用される。ある実施形態において、低分子干渉核酸(siNA)を含む本発明の組成物は、c−MET依存性である癌細胞の増殖を阻害するために使用される。ある実施形態において、本発明の組成物は、c−MET依存性である非小細胞肺癌に罹患した哺乳動物対象を治療するために使用される。
【0178】
一般に、癌に罹患する哺乳動物対象を治療するための本発明の1以上の組成物の有効量は、インシトゥで哺乳動物癌細胞増殖を阻害するために必要な量である。当業者は、抗癌剤の有効量を評価する技術に対して熟練している。
【0179】
場合によっては、上述の治療法は、既知の癌治療法と組み合わせ得る。「癌治療」という用語には、本明細書中で使用される場合、以下に限定されないが、化学療法、放射線療法、アジュバント療法、外科手術又はこれらの何らかの組み合わせ及び/又はその他の方法を含み得る。癌治療の特定の形態は、例えば、治療される対象によって変化し得る。例としては、以下に限定されないが、投与量、投与のタイミング、治療期間などが挙げられる。医学分野の通常の技術者は、対象に対する適切な癌治療を決定することができる。
【0180】
本発明の分子は、医薬品として使用することができる。医薬品は、対象における病態の発症を予防するか、阻害するか又は対象における病態を治療(ある程度まで、好ましくは全ての症状を緩和)する。
【0181】
医薬組成物を形成するために安定化剤、緩衝剤などとともに又はこれらなしで、何らかの標準的手段により、本発明の負に荷電したポリヌクレオチドを投与し(例えば、RNA、DNA又はそれらのタンパク質複合体)、対象に導入することができる。リポソーム送達機構を使用することが所望される場合、リポソームの形成のための標準的プロトコールに従い得る。本発明の組成物はまた、経口投与用の、錠剤、カプセル又はエリキシル;直腸投与用の座薬;滅菌溶液;注射物質投与のための懸濁液;及び当技術分野で公知のその他の組成物として処方され使用され得る。
【0182】
ある実施形態において、本発明の組成物は、局所注射を介して、腫瘍など、対象の局所領域に局所投与される。
【0183】
本発明はまた、記載される化合物の医薬的に許容可能な製剤も含む。これらの製剤は、上記化合物の塩、例えば酸付加塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩及びベンゼンスルホン酸塩を含む。
【0184】
医薬組成物又は製剤とは、細胞又は対象(好ましくはヒト)への投与(例えば全身投与)に適切な形態の組成物又は製剤を指す。適切な形態は、一部分、使用又は移入経路(例えば経口、経皮又は注射による)に依存する。このような形態は、組成物又は製剤が標的細胞(即ち、負に荷電したポリマーが送達されることが所望される細胞)に到達するのを妨げてはならない。例えば、血流に注入される医薬組成物は可溶性であるべきである。その他の因子は当技術分野で公知であり、これには、組成物又は製剤がその効果を発揮するのを妨げる毒性及び形態などが考慮に含まれる。
【0185】
「全身投与」とは、血流における薬物のインビボの全身吸収又は蓄積と続く身体中への分布を意味する。全身的吸収を導く投与経路には、以下に限定されないが、静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内及び筋肉内が含まれる。これらの投与経路のそれぞれは、所望の負荷電ポリマー、例えば核酸を、接近可能な疾患組織に曝露させる。循環への薬物移入率は、分子量又は大きさの関数であることが示されている。本発明の化合物を含むリポソーム又はその他の薬物担体の使用は、例えば、細網内皮系(RES)の組織など、ある種の組織型において薬物を局在化させることができる可能性がある。リンパ球及びマクロファージなどの細胞の表面と薬物の会合を促進することができるリポソーム製剤もまた有用である。このアプローチは、癌細胞などの異常細胞のマクロファージ及びリンパ球免疫認識の特異性の長所を利用することにより、標的細胞への薬物の送達を促進することができる。
【0186】
「医薬的に許容可能な製剤」とは、それらの所望の活性に最も適切な物理的位置において本発明の核酸分子の有効な分布を可能にする組成物又は製剤を意味する。本発明の核酸分子を伴う製剤に適切な物質の非限定例には、PEG結合核酸、リン脂質結合核酸、脂溶性部分を含有する核酸、ホスホロチオアート、様々な組織への薬物の移入を促進することができるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など)、例えばCNS(Jolliet−Riant及びTillement、1999、Fundam.Clin.Pharmacol.、13:16−26);生体分解性のポリマー、例えば移植後の持続放出送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)ミクロスフェア(Emerich、D.F.ら、1999、Cell Transplant、8:47−58)Alkermes、Inc.Cambridge、Mass.;及び充填ナノ粒子、例えばポリブチルシアノアクリレート製のものなど(これは、血液脳関門を横断して薬物を送達することができ、神経取り込み機構を変化させることができる(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry、23:941−949、1999)。)が含まれる。脂質鎖で修飾された表面官能基を有するリジン含有ナノ粒子などの脂質(脂質ナノ粒子)で官能化されるナノ粒子も、本発明の核酸分子の送達のために使用され得る。このような脂質ナノ粒子は、参照により本明細書中に組み込まれる、Baigude H.ら、ACS Chemical Biology Vol.2(4):237−241(2007)に記載のように作製され得る。本発明の核酸分子のCNS送達を含む、送達ストラテジーのその他の非限定例には、Boadoら、1998、J.Pharm.Sci.、87:1308−1315;Tylerら、1999、FEBS Lett.、421:280−284;Pardridgeら、1995、PNAS USA.、92:5592−5596;Boado、1995、Adv.Drug Delivery Rev.、15:73−107;Aldrian−Herradaら、1998、Nucleic Acids Res.、26:4910−4916;及びTylerら、1999、PNAS USA.、96:7053−7058に記載の物質が含まれる。全てのこれらの参考文献は、参照により本明細書よって本明細書中に組み込まれる。
【0187】
本発明はまた、ポリ(エチレングリコール)脂質(PEG−修飾又は長期循環リポソーム又はステルスリポソーム)を含有する表面−修飾リポソームを含む組成物の使用を特徴とする。本発明の核酸分子はまた、様々な分子量の共有結合PEG分子も含み得る。これらの製剤は、標的組織での薬物の蓄積を増加させるための方法を与える。薬物担体のこのクラスは、オプソニン化及び単核食細胞系(MPS又はRES)による除去に耐性があり、それにより血流循環時間を延長させ、カプセル化薬物に対する組織曝露を促進することができる(Lasicら、1995、Chem.Rev.95:2601−2627;Ishiwataら、1995、Chem.Pharm.Bull.43:1005−1011)。このようなリポソームは、おそらく、血管新生が起こった標的組織における溢血及び補捉により、腫瘍において選択的に蓄積することが示されている(Lasicら、1995、Science 267:1275−1276;Okuら、1995、Biochim.Biophys.Acta、1238:86−90)。長期循環リポソームは、特に、MPSの組織で蓄積することが知られる従来の陽イオン性リポソームと比較して、DNA及びRNAの薬物動態及び薬力学を促進する(Liuら、1995、J.Biol.Chem.42:24864−24870;Choiら、国際PCT公開WO96/10391;Ansellら、国際PCT公開WO96/10390;Hollandら、国際PCT公開WO96/10392;これらは全て、本明細書中で参照により組み込まれる。)。長期循環リポソームはまた、肝臓及び脾臓などの代謝的に活動的なMPS組織での蓄積を回避するその能力に基づき、陽イオン性リポソームと比較して、ヌクレアーゼ分解から薬物をよく保護すると思われる。これらの参考文献は全て、本明細書中で参照により組み込まれる。本発明はまた、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤中に所望の化合物の医薬的有効量を含む保管又は投与のために調製される組成物も含む。治療での使用のための許容可能な担体又は希釈剤は、医薬分野で周知であり、例えば、本明細書中で参照により本明細書によって組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編、1985)に記載されている。例えば、保存料、安定化剤、染料及び香味剤が提供され得る。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤を使用することができる。
【0188】
医薬的に有効な用量は、病態の出現を予防するか、阻害するか又は病態を治療(ある程度まで症状を緩和、好ましくは症状全てを緩和)するために必要とされる用量である。医薬的に有効な用量は、疾患のタイプ、使用される組成物、投与経路、治療されている哺乳動物のタイプ、考慮される具体的哺乳動物の生理特性、併用投与及び医学分野での当業者が認識するその他の因子に依存する。一般に、負荷電ポリマーの有効性に依存して、活性成分0.1mg/kgから100mg/kg体重/日の間の量が投与される。
【0189】
本発明の核酸分子及びその製剤は、従来の無毒性の医薬的に許容可能な担体、アジュバント及びビヒクルを含有する投与単位製剤において、経口で、局所的に、非経口で、吸入もしくは噴霧により、又は直腸に、投与され得る。非経口という用語は、本明細書中で使用される場合、経皮、皮下、血管内(例えば静脈内)、筋肉内又は髄腔内注射又は点滴技術などを含む。さらに、本発明の核酸分子及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬製剤が提供される。1以上の無毒性の医薬的に許容可能な担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント及び必要に応じてその他の活性成分と会合して、本発明の1以上の核酸分子が存在し得る。本発明の核酸分子を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、薬用キャンディー、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、乳剤、硬もしくは軟カプセル又はシロップもしくはエリキシルのような経口での使用に適切な形態であり得る。
【0190】
医薬組成物の製造に対する技術分野で公知の何らかの方法に従い、経口使用を対象とした組成物を調製することができ、このような組成物は、医薬的に洗練され口当たりがよい調製物を提供するために、1以上のこのような甘味料、香味剤、着色料又は保存料を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適切である無毒性の医薬的に許容可能な賦形剤と混合して活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなど;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸など;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア及び平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤は被覆されていないか、又はこれらは公知の技術により被覆され得る。場合によっては、このようなコーティングは、消化管での崩壊及び吸収を遅延させ、それにより長時間にわたる持続的作用を与えるために、公知の技術により調製され得る。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質が使用され得る。
【0191】
経口使用のための製剤はまた、活性成分が、不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルとして、又は活性成分が水又は油媒体(例えばピーナツ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセルとしても、与えられ得る。
【0192】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な賦形剤と混合して、活性物質を含有する。このような賦形剤には、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピル−メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴムなど;分散剤又は湿潤剤、例えば天然ホスファチドなど、例えばレクチン、又は脂肪酸とのアルキレンオキシドの縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又は長鎖脂肪アルコールとのエチレンオキシドの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又は脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物(ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなど)又は脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとのエチレンオキシドの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレエート)が含まれ得る。水性懸濁液はまた、1以上の保存料、例えばエチル又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾアート、1以上の着色料、1以上の香味剤及び1以上の甘味料、例えばスクロース又はサッカリンなども含有する。
【0193】
油性懸濁液は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はココナツ油中で、又は流動パラフィンなどの鉱物油中で、活性成分を懸濁することにより処方することができる。油性懸濁液は、濃厚剤、例えば蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。口当たりが良い経口製剤を提供するために、甘味料及び香味剤を添加することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存することができる。
【0194】
水の添加による水性懸濁液の調製に適切な分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1以上の保存料と組み合わせて、活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤又は懸濁化剤は、既に上述したものにより例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味料、香味剤及び着色料も存在し得る。
【0195】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型乳剤の形態でもあり得る。油相は、植物油又は鉱物油又はこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアラビアゴム又はトラガカントゴム;天然のホスファチド、例えばダイズ、レシチン及び脂肪酸及びヘキシトール由来のエステル又は部分エステル;無水物、例えばソルビタンモノオレエート;及びエチレンオキシドとの前記部分エステルの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。乳剤はまた、甘味料及び香味剤も含有し得る。
【0196】
シロップ及びエリキシルは、甘味料、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース又はスクロースとともに処方され得る。このような製剤はまた、鎮痛薬、保存料及び香味剤及び着色料も含有し得る。医薬組成物は、滅菌注射水又は油性懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、上述の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、既知の技術に従い処方することができる。滅菌注射製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒性の非経口で許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射溶液又は懸濁液でもあり得る。使用することができる許容可能なビヒクル及び溶媒の中でも、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁化剤として使用される。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含め、何らかの無刺激性の固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射物質の調製における使用法がある。
【0197】
本発明の核酸分子はまた、例えば薬物の直腸投与のための座薬の形態で投与することもできる。これらの組成物は、通常温度で固体であるが、直腸温度で液体となり、従って直腸において溶解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって調製することができる。このような物質には、ココアバター及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0198】
本発明の核酸分子は、滅菌液中で非経口投与することができる。使用されるビヒクル及び濃度によって、薬物は、ビヒクル中で懸濁され得るか又は溶解され得る。好都合なことに、局部麻酔薬、保存料及び緩衝剤などのアジュバントをビヒクル中で溶解することができる。
【0199】
1日あたり約0.1mgから約140mg/kg体重のオーダーでの投与量レベルは、上述の状態の治療において有用である(1日あたり約0.5mgから約7g/患者又は対象)。単回投与形態を生成させるために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される受容者及び投与の特定形式によって変化する。投与単位形態は、一般に、活性成分約1mgから約500mgを含有する。
【0200】
何らかの特定の患者又は対象に対する具体的な用量レベルが、使用される具体的化合物の活性、年齢、体重、一般的健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせ及び治療が行われる特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存することを理解されたい。
【0201】
非ヒト動物に対する投与のために、動物の餌又は飲用水にも本組成物を添加することができる。動物がその餌とともに本組成物の治療的に適切な量を摂取するように動物の餌及び飲用水組成物を処方することは好都合であり得る。餌又は飲用水への添加のための予混合物として組成物を与えることもまた好都合であり得る。
【0202】
本発明の核酸分子はまた、全体的な治療効果を向上させるためにその他の治療組成物と組み合わせて対象に投与することもできる。適応症を治療するための複数の化合物の使用によって、副作用の出現度を低下させながら、有益な効果を向上させることができる。
【0203】
本発明の様々な特性及び長所をさらに説明するために実施例を以下で提供する。実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法も説明する。これらの実施例は、主張される発明を限定しない。
【実施例1】
【0204】
この実施例は、TP53のshRNA介在抑制が、miR−34a遺伝子座を含有するESTクラスター(コンティグ6654)の発現を下方制御することを示す。
【0205】
原理:
野生型TP53を有する細胞は、DNA損傷後、細胞周期が進行する前に、DNA修復を行わせるために、G1チェックポイントを停止させる。shRNAが介在するTP53の失調により、このG1停止がなくなる(Brummelkampら、(2002)Science 296:550−553)。TB53経路の完全性を確認するために、ドキソルビシン処理後、G1停止に対して一連の腫瘍細胞株を試験した。この試験で、正常なTP53活性を有するものとして報告されている8種類の腫瘍株を使用した:A549(肺癌、O’Connorら、Cancer Res.57:4285−300)、TOV21G(卵巣癌、Samouelianら、2004、Cancer Chemother.Pharmacol 54:497−504)、MCF7(乳癌、Concinら、2003 Breast Cancer Res.Treat.79:31−46)、HEPG2(肝臓癌、Bamfordら、2004、Br.J.Cancer 91:355−58)、OAW42(卵巣癌、Bamfordら、2004、Br.J.Cancer 91:355−58);A2780(卵巣癌、Bamfordら、2004、Br.J.Cancer 91:355−58);U2OS(骨肉腫、Zhuら、1993 Gene & Dev.7:1111−25);及びNCI−H460(肺癌、O’Connorら、1997 Cancer Res.57:4285−300)。
【0206】
方法:機能的TP53あり又は無しの一連の対応する細胞株ペアを作製した。
【0207】
何らかの単一の細胞株に特定である特有の効果を回避するために、複数の細胞株を作った。空のレンチウイルスベクター又はTP53を標的とするshRNAをコードするレンチウイルスベクターを安定細胞株に形質導入した。使用したベクターは、TP53を標的とするshRNAのヒトH1プロモーター上流又は5個のチミジン、BamHI部位及び次に別の5個のチミジンのストレッチからなる終結配列を含有するGateway(Invitrogen)−適合性発現カセットが遺伝子移入されたpLenti6/BLOCK−iT−DEST目標ベクター(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)であった。
【0208】
これらの実験において使用されたTP53 shRNAは、19−ヌクレオチドのコア配列5’GACUCCAGUGGUAAUCUAC3’[配列番号10]を有した。レンチウイルスベクターにクローニングされた全長ヘアピン配列は、5’GACUCCAGUGGUAAUCUACUUCAAGAGAGUAGAUUACCACUGGAGUCUUUUU3’[配列番号11]であった。
【0209】
空のベクターを形質導入した細胞と比較した場合、TP53shRNAを発現する細胞株において〜80−95%、TP53mRNAレベルが低下した(データは示さない。)。空のレンチウイルスベクター(LVベクター)又はTP53を標的とするshRNAヘアピン(TP53shRNA)をコードするベクターを、A549細胞(肺癌)に形質導入し、安定細胞株を単離した。簡潔に述べると、10%FBS及び6μg/mLポリブレンを含有するDMEM中細胞1個あたり10形質導入単位(TU/細胞)の感染多重度(MOI)で50%から70%コンフルエンシーの細胞にウイルスを接種した。24時間後、ウイルスを除去し、新鮮なDMEM+10%FBSを培養物に補充した。5μg/mLブラストサイジンを用い、形質導入細胞を薬物選択し、形質導入から4−5日後、これを培養物に添加した。安定細胞をドキソルビシン(+ドキソルビシン)で24時間処理するか又はドキソルビシンで処理せずに(−ドキソルビシン)、次いでフローサイトメトリーによる細胞周期分析に供した。
【0210】
図2A−2Dで示されるように、TP53shRNAを発現する全ての細胞は、DNA損傷を誘導するためのドキソルビシンでの処理後、G1停止が減少したことが分かった。図2Aは、ある一定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、野生型p53を有する細胞のヒストグラムである。図2Bは、ある一定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、ドキソルビシンで処理した野生型p53を有する細胞のヒストグラムである。図2Cは、ある一定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、TP53 shRNAを遺伝子移入した野生型p53を有する細胞のヒストグラムであり、図2Dは、ある一定のDNA含量(蛍光強度により測定、X軸)とともに細胞数(Y軸)を示す、TP53 shRNAを遺伝子移入し、ドキソルビシンで処理した野生型p53を有する細胞のヒストグラムであり、DNA損傷後、TP53の障害によってG0/G1チェックポイントが損なわれることを示す。図2A−2Dで示されるように、TP53の抑制により、G0/G1チェックポイントが損なわれる。
【0211】
各株からメッセンジャーRNA(mRNA)を単離し、TP53 shRNAをコードするレンチウイルスベクターで形質導入した細胞に対して、空のレンチウイルスベクターで形質導入した細胞を比較して、DNAマイクロアレイ分析に供した。実験ノイズを排除するために、5以上の細胞株において、>1.5倍、P<0.01で遺伝子が調節される場合、TP53により調節されるものとして、遺伝子を同定した。これらの基準に基づき、TP53機能のTP53 shRNA障害により影響を受けた転写産物として、コンティグ6654を同定した。
【0212】
表2は、TP53 shRNAで形質導入したA549細胞と比較した、空のベクターで形質導入した細胞中の選択遺伝子に対する、ハイブリッド形成強度のlog10比での倍率変化を提供する。表2で示される結果は、対照ベクターを有するA549細胞に対してshRNAを標的とするTP53を発現するA549細胞を比較する、競合的ハイブリッド形成マイクロアレイ実験からのものである。TP53は、空のベクターを発現する細胞に対して、TP53を標的とするshRNAを発現する細胞において約5倍下方制御された。
【0213】
【表2】

【0214】
各細胞株対は、重要性が低い制御を主に含む、異なるが重複する遺伝子発現特性を与えた。表2で示されるように、TP53は、全ての場合において強く下方制御されたが、その他のレポーターの殆どは、異なる細胞株間で異なったより弱い制御を示した。
【0215】
コンティグ6654_RCは、あまり特徴が分からないESTクラスターである。遺伝的雑種及び放射線ハイブリッドマップにおけるSTSマーカーの比較を含むカリフォルニア大学サンタクルス校(UCSC)により公開されているゲノムブラウザーソフトウェア及びデータベースパッケージ、Wellcome Trust Sanger InstituteウェブサイトのWorld Wide Webでアクセス可能な、Griffith−Jonesら、Nucleic Acids Research 32:D109−D111(2004)及びGriffith−Jonesら、Nucleic Acids Research 34:D140−D144(2006)に記載のような、公開されているmiRBase配列データベースに記載のようなUniProt、RefSeq及びGenBank mRNA及びマイクロRNA種に基づく既知の遺伝子を用いて、ヒトゲノムに対するこのコンティグのマッピングを行った。UCSCゲノムブラウザーにおける上述の情報の検討から、コンティグ6654がマイクロRNA遺伝子座、miR−34aと重複するESTクラスターに属することが明らかとなり、TP53機能の障害がmiR−34aのmiRNA前駆体を下方制御するという仮説が導かれた。
【実施例2】
【0216】
この実施例は、ヒト細胞への合成miR−34の導入が、TP53 G1チェックポイントの活性化により誘導されるものと同様の表現型を誘導することを示す。
【0217】
原理:細胞周期のG1/S期移行の遅延は、TP53活性化の結果であることが知られている。この実施例において、miR−34 siRNA2本鎖は、「非対称パッセンジャー鎖」と呼ばれる、配列の3’末端から4塩基の、1個の塩基ミスマッチを除き、天然の成熟miRNAと相補的であるパッセンジャー鎖を用いて設計された。代表的な非対称パッセンジャー鎖は、miR−34a(配列番号12)に対して;miR−34b(配列番号17)に対して及びmiR−34c(配列番号22)に対して、ミスマッチに下線を付して、表3で提供される。表3で示されるように、これらの合成設計非対称パッセンジャー鎖は、miR−34a(配列番号35)、miR−34b(配列番号36)及びmiR−34c(配列番号37)に対する対応する天然パッセンジャー鎖とは異なる。
【0218】
実施例5に記載のように、配列番号1及び非対称パッセンジャー鎖配列番号12のアニールされた鎖を含有するsiRNA2本鎖miR−34模倣物配列が、アニールされた天然miR−34ガイド鎖(配列番号1)及び天然miR−34パッセンジャー鎖(配列番号35)よりも細胞死表現型を誘導することにおいて効果的であることが分かった。理論に縛られることを望まないが、パッセンジャー鎖中にミスマッチが存在することにより、その領域において2本鎖が不安定化され、それにより鎖模倣成熟miR−34のRISCへの移入が促進されると考えられる。非対称パッセンジャー鎖及び天然ガイド鎖との2本鎖miR−34模倣物配列がプロセシングされ、その結果、成熟野生型miR−34ガイド鎖が形成される。
【0219】
この実施例で与えられるデータは、TP53の活性化と類似の方式で、細胞へのこのような2本鎖miR−34模倣物の導入によって、G1チェックポイントでの細胞周期停止が導かれることを示す。
【0220】
方法:
合成miR−34a、b及びc合成RNA2本鎖ならびにそれぞれの突然変異対照物をA549細胞に遺伝子移入した。遺伝子移入から24時間後、ノコダゾール(100ng/mL)で16−20時間細胞を処理した。ヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリーを用いて細胞周期のG1期で停止した細胞のパーセンテージを測定した。Sigma−Proligo(St.Louis、MO)から全ての合成オリゴヌクレオチド(表3)を得た。
【0221】
【表3】


【0222】
【表4】

【0223】
表4は、1個のヌクレオチドミスマッチがあるガイド鎖[配列番号1]及びパッセンジャー鎖[配列番号12]を含む正常な合成miR−34aRNA2本鎖(野生型成熟)を遺伝子移入した;ガイド鎖[配列番号15]及びパッセンジャー鎖[配列番号16]を含む非シード領域二重変異体合成miR−34a(18、19)RNA2本鎖を遺伝子移入した;又はガイド鎖[配列番号13]及びパッセンジャー鎖[配列番号14]を含むシード領域二重変異体合成miR−34a(2、3)RNA2本鎖の何れかを遺伝子移入した、TP53機能の正常レベル(野生型p53)を有するA549細胞を示す。
【0224】
表4は、1個のヌクレオチドミスマッチがあるガイド鎖[配列番号4]及びパッセンジャー鎖[配列番号17]を含む正常な合成miR−34bRNA2本鎖(野生型成熟)を遺伝子移入した;ガイド鎖[配列番号20]及びパッセンジャー鎖[配列番号21]を含む非シード領域二重変異合成miR−34b(18、19)RNA2本鎖を遺伝子移入した;又はガイド鎖[配列番号18]及びパッセンジャー鎖[配列番号19]を含むシード領域二重変異合成miR−34b(2、3)RNA2本鎖を遺伝子移入した、TP53機能の正常レベル(野生型p53)を有するA549細胞をさらに示す。
【0225】
表4は、1個のヌクレオチドミスマッチがあるガイド鎖[配列番号7]及びパッセンジャー鎖[配列番号22]を含む正常な合成miR−34cRNA2本鎖(野生型成熟)を遺伝子移入した;ガイド鎖[配列番号25]及びパッセンジャー鎖[配列番号26]を含む非シード領域二重変異合成miR−34b(18、19)RNA2本鎖を遺伝子移入した;又はガイド鎖[配列番号23]及びパッセンジャー鎖[配列番号24]を含むシード領域二重変異合成miR−34c(2、3)RNA2本鎖を遺伝子移入した、TP53機能の正常レベル(野生型p53)を有するA549細胞をさらに示す。
【0226】
表4で提供されるデータは、合成miR−34a、miR−34b及びmiR−34c RNA2本鎖(野生型成熟)ならびに二重変異RNA2本鎖miR−34a(18,19)、miR−34b(18,19)及びmiR−34c(18,19)(シード領域の外側に突然変異を有する。)の導入により、TP53機能の正常レベルを有する細胞においてG1細胞周期停止が誘導されることを示す。RNA2本鎖miR−34a(2,3)、miR−34b(2,3)及びmiR−34c(2,3)(シード領域中に二重変異を有する。)は、このような細胞周期停止を誘導しない。このようにして、対応するインタクトなシード領域を有する合成miR−34a、miR−34b及びmiR−34c siRNAコンストラクトのそれぞれは、TP53が介在するDNA損傷チェックポイントの反映である表現型を導くことができる。
【0227】
miR−34aもしくはmiR−34a(18−19)、miR−34bもしくはmiR−34b(18−19)又はmiR−34cもしくはmiR−34c(18−19)の導入により誘導される細胞周期停止表現型は、TP53機能に依存することも観察された。対照A549細胞におけるレベルの約5%にTP53を抑制するTP53 shRNAコンストラクトを安定的に発現するA549細胞への、miR−34a合成siRNAコンストラクト(表3)の同じセットの送達の結果、細胞周期停止表現型は得られなかった(データは示さない。)。
【実施例3】
【0228】
この実施例は、miR−34により制御される転写産物がTP53経路遺伝子と重複することを示す。
【0229】
方法:
miR−34ファミリーの機能をより詳細に理解するために、遺伝子発現プロファイリング実験を行った。A549、HCT116Dicerex5、TOV21G、DLD−1 Dicerex5細胞に、miR−34a、miR−34b、miR−34c又は対照標的ルシフェラーゼ(Luc)に対応するRNA2本鎖を遺伝子移入した。これらの実験で使用されるルシフェラーゼsiRNAのガイド鎖は、5’CGUACGCGGAAUACUUCGAdTdT3’[配列番号27]であり、ルシフェラーゼsiRNAのパッセンジャー鎖は、5’UCGAAGUAUUCCGUACGdTdT3’[配列番号28](Sigma−Proligoから購入)であった。これらの実験で使用されるmiR−34a、miR−34b及びmiR−34c siRNA2本鎖は、実施例2の表3で示す。
【0230】
リポフェクタミン2000(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用することにより、6−ウェルプレートでHCT116細胞に対して遺伝子移入を行った。SilentFect(Bio−Rad、Hercules、CA)を用いてDLD−1、TOV21G及びA549細胞に対して遺伝子移入を行った。全ての細胞株に対して100nMの最終濃度で2本鎖を使用した。遺伝子移入から24時間後、トータルRNAを単離し、Jacksonら(2003 Nat.Biotechnol.21:635−37)により記載されるようにマイクロアレイ発現分析に供した。miR−34マイクロRNAの直接の標的ならびにそれらの下流の影響を同定するために、miR−34a、b及びc様siRNA配列を遺伝子移入した細胞のマイクロアレイプロファイリングを使用した。
【0231】
結果:マイクロアレイ遺伝子発現プロファイルの分析(データは示さない。)から、下記表5で示されるように、遺伝子移入から24時間後に特異的に下方制御された遺伝子のクラスターが同定された。miR−34により下方制御される遺伝子は、miR−34シード領域六量体に相補的な3’UTRを含有する転写産物が非常に豊富であった。P−値カットオフ(P<0.01)を用いたマイクロアレイ遺伝子発現特性において、マイクロRNA制御転写産物を同定した。試験した株全てにおいて、下方制御された転写産物の共通部分により、miRNA下方制御された転写産物を同定した。超幾何分布を用いて、背景設定に対する濃縮について、下方制御された転写産物を試験した。アノテートされた3’UTRを有する転写産物において、miRNA6量体シード列(seed strings)(miRNAシード領域ヌクレオチド位置1−6、2−7又は3−8に相補的な6連続塩基のストレッチ)を含有する転写産物の濃縮により、miRNA標的制御を測定した。
【0232】
【表5】

















【0233】
実施例2に記載の細胞周期表現型と一致して、表5で列挙される遺伝子は、細胞周期と関連する遺伝子が豊富であることが分かった(表6参照)。さらに、TP53経路と関連する遺伝子がこれらのmiR−34反応遺伝子特性の何れかにおいて豊富であるか否かを決定するために、マイクロアレイデータの下方制御又は上方制御される遺伝子特性を調べた。これを行うために、データを調べて、miR−34シグネチャー遺伝子及びGene Ontology Databases(Camonら、2004、Nucleic Acids Res.32:D262−6;Camonら、2003、Genome Res.13:662−72)においてそのようなものとして同定されるTP53経路遺伝子の間の重複の程度、TP53DNA損傷反応遺伝子セット、本明細書中で報告されるRNAi実験で下方制御されているものとして同定される遺伝子及びTP53転写因子結合部位のゲノムスケールのクロマチン免疫沈降(ChIP)分析により同定される一連の直接的TP53標的を決定した(Weiら、2006、Cell 124:201−19)。
【0234】
表6は、DNA損傷及び細胞周期に関与する一連の遺伝子を用いてmiR−34遺伝子移入により上方制御又は下方制御される遺伝子の重複を提供する。The Gene Ontology Consortium、Gene Ontology:tool for the unification of biology.Nature Genetics(2000)25:25−29に記載のように、Gene Ontology Biological Process Functional categories(機能カテゴリー)(http://www.geneontology.org/)からの転写産物の濃縮により、生物学的機能を分類した。同定される遺伝子セットの遺伝子の数又はそのセットの重複の数を角括弧及び斜字体で示す。超幾何分布により、P−値として表される各結果の可能性を計算し(Leeら、BMC Bioinformatics 2005 6:189)、表6で示す。背景設定として、マイクロアレイにおいて示される全ての遺伝子を使用した。
【0235】
【表6】

【0236】
miR−34で制御される遺伝子とDNA損傷において発現が変化するものとの間の重要な重複(表6)を観察した。この場合において、重要な重複は、miR−34遺伝子移入に対する反応において増加する(p<7e−65)遺伝子及びmiR−34活性化において抑制される(p<1.8e−73)遺伝子の両方に対して見られた。しかし、miR−34シード領域に対して相補的な配列を有する遺伝子の強力な濃縮が下方制御される重複セットで見られた一方、上方制御される遺伝子セットでは見られず、このことから、発現における遺伝子の上方制御がmiR−34の二次的影響により引き起こされ得ることが示唆される。
【0237】
表6で示されるように、重要な重複は、miR−34aにより制御される遺伝子と一般的なTP53介在事象との間で見られ、このことから、miR−34遺伝子移入がTP53経路の少なくとも一部を誘導し得ることが示唆される。
【実施例4】
【0238】
この実施例は、合成miR449、miR−34ファミリーのメンバーの細胞株HCT116への導入により、TP53 G1チェックポイントの活性化により誘導されるものと同様の表現型が誘導されることを示す。
【0239】
原理:
細胞周期のG1/S期移行の遅延はTP53活性化の結果であることが知られている。この実施例において、miR−449 siRNA2本鎖は、「非対称パッセンジャー鎖」と呼ばれる、配列の3’末端からの4塩基での1個の塩基ミスマッチを除き、天然の成熟miRNAと相補的であるパッセンジャー鎖を考慮して設計した。代表的な非対称パッセンジャー鎖は、miR−449(配列番号32)に対して、ミスマッチに下線を付して表7で提供される。表7で示されるように、miR−449に対する合成的に設計された非対称パッセンジャー鎖(配列番号32)は、miR−449に対する天然のパッセンジャー鎖(配列番号38)とは異なる。この実施例で提供されるデータは、TP53の活性化と類似する方式において、非対照miR−449パッセンジャー鎖(配列番号32)にアニーリングされる天然のmiR449ガイド鎖(配列番号29)を含む2本鎖miR−449模倣物の細胞への導入により、G1チェックポイントでの細胞周期停止が導かれることをを示す。
【0240】
方法:
表7に記載のDNAオリゴヌクレオチドを用いて、miR−16、miR−34a、miR−34a−mm2,3、miR−449及びmiR−449−mm2,3又はルシフェラーゼ対照を、細胞株HCT116#2、p53陽性細胞株に遺伝子移入した。遺伝子移入前に、12.5x104の細胞を播種し、リポフェクタミンRNAi Maxを用い、合成オリゴヌクレオチドの10nM 最終濃度を用いて、遺伝子移入した。遺伝子移入から30時間後、100ng/mLの最終濃度でノコダゾールを添加した。ノコダゾールを添加してから18時間後、細胞を回収した。
【0241】
【表7】

【0242】
表8で示されるように、miR−449(WT成熟)及びmiR−34a(WT成熟)の遺伝子移入の結果、実施例2で示されるように、miR−34a(WT成熟)、miR−34b(WT成熟)及びmiR−34c(WT成熟)をA549細胞に遺伝子移入した場合に観察される結果と同様に、HCT116細胞のG1停止が起こる。表8でさらに示されるように、miR−16(WT成熟)の遺伝子移入の結果また、Linsley P.S.ら、Mol Cell Biol 27:2240−2252(2007)に記載の結果と一致して、HCT116細胞のG1停止も起こる。
【0243】
【表8】

【0244】
考察:miR−34は、いくつかの脊椎動物種で単一の認識できるオルソログがある、進化的に保存されたmiRNAファミリーに属する。Heら、Nature 447:1130−1134(2007)参照。図1で示されるように、miR−449のシード領域(配列番号31)は、miR−34a(配列番号3)、miR−34b(配列番号6)及びmiR−34c(配列番号9)のシード領域内の6個の連続ヌクレオチドと同一である少なくとも6個の連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0245】
要約すれば、A549細胞においてmiR−34a、miR−34b及びmiR−34cの過剰発現に対して実施例2において示される結果と一致して、p53野生型細胞におけるmiR−449の過剰発現の影響により、TP53 G1チェックポイントの活性化により誘導されるものと同様の表現型が誘発されると思われる。
【実施例5】
【0246】
この実施例は、HCT116 DicerEx5及びその他の細胞株において、miR−34の導入により、細胞死が起こることを示す。
【0247】
方法:
アニーリングされた天然miR−34aガイド鎖(配列番号1)及び天然miR−34aパッセンジャー鎖(配列番号35)の天然2本鎖又はアニーリングされた天然miR−34aガイド鎖(配列番号1)及び配列の3’末端から4塩基の1個の塩基ミスマッチを除き天然成熟miR−34aに相補的である合成非対称パッセンジャー鎖(配列番号12)の合成2本鎖を、HCT116 Dicer Ex5細胞に遺伝子移入した(表3で示される。)。細胞に対してまた、模擬遺伝子移入(mock transfection)するか又はsiRNA2本鎖標的ルシフェラーゼ(配列番号27/配列番号28)を遺伝子移入した。遺伝子移入から48時間後、細胞をノコダゾール(100ng/mL)で16時間処理した。ヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリーを用いて、サブ−G1の細胞(死細胞)のパーセンテージを調べた。
【0248】
結果:
【0249】
【表9】

【0250】
表9で示されるように、遺伝子移入細胞のフローサイトメトリーにより測定される場合のサブ−G1の細胞のパーセンテージにより調べた場合、miR−34a模倣2本鎖は天然miR−34a2本鎖よりも細胞死を誘導することにおいて効果的であった。
【0251】
理論に縛られることを望まないが、非対称パッセンジャー鎖中のミスマッチの存在により、その領域において2本鎖が脱安定化され、それにより鎖模倣成熟miR−34のRISCへの移入が促進されると考えられる。非対称パッセンジャー鎖及び天然ガイド鎖との2本鎖miR−34模倣物配列がプロセシングされ、その結果、成熟野生型miR−34ガイド鎖が形成される。
【0252】
要約:この実施例はまた、その配列の3’末端から4塩基の1個の塩基ミスマッチを除いて天然成熟miR−34aと相補的な合成パッセンジャー鎖(「非対称パッセンジャー鎖」と呼ばれる。)にアニーリングされる天然ガイド鎖を含有するmiR−34のsiRNA2本鎖模倣配列が、予想外に、細胞に遺伝子移入した場合、天然miR−34 2本鎖よりも、細胞死を誘導することにおいて効果的であることが分かったことも示す。
【実施例6】
【0253】
この実施例は、miR−34の標的としての肝細胞増殖因子受容体c−METの検証及びc−MET依存性細胞株EBC−1の増殖を阻害するための合成miR−34 2本鎖の使用を述べる。
【0254】
方法:
c−METの活性化は、非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌及び多くの肺癌株(EBC−1を含む。)を含む多くの癌において、成長、浸潤及び増殖に関与しており、成長及び生存のためにc−METに依存する(Lutterbachら、2007、Cancer Res 1 67(5):2081−8)。
【0255】
表5で示されるように、HCT116 Dicer Ex5細胞への合成miR−34a、b又はcの遺伝子移入後、肝細胞増殖因子受容体(c−MET)を含む一連の遺伝子が下方制御された。ウエスタンブロッティングによりこの観察を検証した(データは示さない。)。この観察と一致して、ヒトc−MET転写産物は、その’3UTRにおいて2箇所のmiR−34標的部位を含有する。
【0256】
生存に関してc−METに依存する肺癌細胞へ合成miR−34を導入する効果を調べるために、EBC−1細胞(非小細胞肺癌)に、天然ガイド鎖[配列番号1]及び非対称パッセンジャー鎖[配列番号12]を含む正常な合成miR−34aRNA2本鎖(WT成熟)又はガイド鎖[配列番号13]及びパッセンジャー鎖[配列番号14]を含むシード領域二重変異合成miR−34a(2、3)RNA2本鎖を遺伝子移入した。遺伝子移入から48時間後、フローサイトメトリー及びウエスタンブロット分析による細胞周期分析のために細胞を回収した。
【0257】
結果:正常な合成miR−34aを遺伝子移入したEBC−1細胞は、シード領域突然変異合成miR−34a又はルシフェラーゼ対照を遺伝子移入した細胞と比較した場合、サブ−G1集団の実質的な増加を示した。c−MET及び切断PARP1(アポトーシスの指標)に対する抗体を用いて、ウエスタンブロットにより、タンパク質溶解液を分析した。正常な合成miR−34aを遺伝子移入した細胞は、シード領域突然変異合成miR−34a又はルシフェラーゼ対照を遺伝子移入した細胞と比較して、c−METタンパク質の減少及び切断PARP1の増加を示した。これらの結果は、miR−34aが、生存のためにc−METに依存するEBC−1細胞においてc−METを抑制し、アポトーシスを誘導する能力と一致する。
【0258】
同時に、これらの結果は、c−MET依存性腫瘍の、成長及び増殖を阻害する及び/又はアポトーシスを促進するために、miR−34a治療剤が使用され得ることを示す。miR−a2本鎖の使用は、マウス腫瘍モデル及び異種移植片又はc−MET依存性である自然発生腫瘍において、容易に試験することができる。
【0259】
実例となる実施形態を説明し、述べてきたが、当然のことながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明において様々な変更を為し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)、及び
(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違はパッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)
を含む、単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項2】
ガイド鎖が、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含むシード領域を含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項3】
前記ガイド鎖配列が、miR34a(配列番号1)、miR34b(配列番号4)、miR34c(配列番号7)及びmiR449(配列番号29)からなる群から選択される、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項4】
パッセンジャー鎖におけるヌクレオチドの相違がその3’末端の6個のヌクレオチド内に位置する、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項5】
合成2本鎖が、1つの3’突出部をさらに含み、前記3’突出部が1から4個のヌクレオチドを含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項6】
第二の3’突出部をさらに含み、前記第二の3’突出部が1から4個のヌクレオチドを含む、請求項5の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項7】
非ヌクレオチド部分をさらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項8】
ガイド鎖及びパッセンジャー鎖が核酸分解に対して安定化されている、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項9】
ガイド鎖の5’末端及び/又は3’末端において及びパッセンジャー鎖の3’末端において、少なくとも1個の化学修飾されたヌクレオチド又は非ヌクレオチドをさらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項10】
パッセンジャー鎖及びガイド鎖の3’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートをさらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項11】
パッセンジャー鎖及びガイド鎖の3’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートをさらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項12】
ガイド鎖及びパッセンジャー鎖の5’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートを、及びガイド鎖及びパッセンジャー鎖の3’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートを、さらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項13】
2’−修飾ヌクレオチドをさらに含む、請求項1の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項14】
2’−修飾ヌクレオチドが、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)からなる群から選択される修飾を含む、請求項13の単離合成2本鎖マイクロRNA模倣物。
【請求項15】
合成2本鎖マイクロRNA模倣物を形成させるために単離パッセンジャー鎖核酸分子と単離ガイド鎖核酸分子をアニーリングさせることを含む、合成2本鎖マイクロRNA模倣物を作製する方法であって、
(i)単離ガイド鎖核酸分子は、18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなり、前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は、前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域配列と同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み;ならびに
(ii)単離パッセンジャー鎖核酸分子は、18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなり、前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、この1個のヌクレオチドの相違は、パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する
方法。
【請求項16】
ガイド鎖が、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含むシード領域を含む、請求項15の方法。
【請求項17】
前記ガイド鎖配列が、miR34a(配列番号1)、miR34b(配列番号4)、miR34c(配列番号7)及びmiR449(配列番号29)からなる群から選択される、請求項15の方法。
【請求項18】
パッセンジャー鎖におけるヌクレオチドの相違が、その3’末端の6個のヌクレオチド内に位置する、請求項15の方法。
【請求項19】
2本鎖が1つの3’突出部をさらに含み、前記3’突出部が1から4個のヌクレオチドを含む、請求項15の方法。
【請求項20】
第二の3’突出部をさらに含み、前記第二の3’突出部が1から4個のヌクレオチドを含む、請求項19の方法。
【請求項21】
18から25個のヌクレオチドのガイド鎖ヌクレオチド配列を含み、前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は基本的に前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択されるヌクレオチド配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含み;ならびに
配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択されるヌクレオチド配列と比較して、少なくとも1個のヌクレオチド配列の相違を有する、単離核酸分子。
【請求項22】
細胞株A549の第一の試料への単離核酸分子の導入の結果、前記単離核酸分子に曝露されない細胞株A549細胞の第二の試料中の少なくとも2つの遺伝子の測定レベルと比較して、前記少なくとも2つの遺伝子の測定レベルが検出可能に低下し、前記少なくとも2つの遺伝子は、配列番号1、配列番号4又は配列番号7を含むsiNAが前記A549細胞に導入される場合にA549細胞において下方制御される一連の遺伝子から選択される、請求項21の単離核酸分子。
【請求項23】
前記2以上の遺伝子が、表5から選択される、請求項22の単離核酸分子。
【請求項24】
前記ガイド鎖配列が、miR34a−mml8,19(配列番号15)、miR34b−mml8,19(配列番号20)及びmiR34c−mml8,19(配列番号25)からなる群から選択される、請求項21の単離核酸分子。
【請求項25】
前記ガイド鎖の相補体であるパッセンジャー鎖をさらに含む、請求項21の単離核酸分子。
【請求項26】
非ヌクレオチド部分をさらに含む、請求項21の単離核酸分子。
【請求項27】
ガイド鎖及びパッセンジャー鎖が核酸分解に対して安定化されている、請求項25の単離核酸分子。
【請求項28】
ガイド鎖の5’末端及び/又は3’末端及びパッセンジャー鎖の3’末端において少なくとも1個の化学修飾されたヌクレオチド又は非ヌクレオチドをさらに含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項29】
1つの3’−突出部をさらに含み、前記3’−突出部が1から4個のヌクレオチドを含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項30】
1つの2ヌクレオチド3’−突出部をさらに含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項31】
第二の3’−突出部をさらに含み、前記第二の3’−突出部が、1から4個のヌクレオチドを含む、請求項30の単離核酸分子。
【請求項32】
パッセンジャー鎖及びガイド鎖の5’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートをさらに含む、請求項26の単離核酸分子。
【請求項33】
パッセンジャー鎖及びガイド鎖の3’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートをさらに含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項34】
ガイド鎖及びパッセンジャー鎖の5’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートを、及び、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖の3’末端の第一のヌクレオチド間結合においてホスホロチオアートを、さらに含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項35】
2’−修飾ヌクレオチドをさらに含む、請求項25の単離核酸分子。
【請求項36】
2’−修飾ヌクレオチドが、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)からなる群から選択される修飾を含む、請求項35の単離核酸分子。
【請求項37】
少なくとも1つの合成2本鎖マイクロRNA模倣物及び送達物質を含む組成物であって、
合成2本鎖マイクロRNA模倣物は、
(i)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなるガイド鎖核酸分子(前記ガイド鎖ヌクレオチド配列は、シード領域ヌクレオチド配列及び非シード領域ヌクレオチド配列を含み、前記シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置1から12からなり、前記非シード領域は、前記ガイド鎖のヌクレオチド位置13から3’末端からなり、前記ガイド鎖の位置1は前記ガイド鎖の5’末端に相当し、前記シード領域は、天然のマイクロRNAのシード領域と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列をさらに含む。)、及び
(ii)18から25個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含むパッセンジャー鎖核酸分子(前記パッセンジャー鎖は、ガイド鎖と基本的に相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記パッセンジャー鎖核酸分子は、ガイド鎖のシード領域の正確な逆相補体配列と比較して、1個のヌクレオチド配列の相違を有し、1個のヌクレオチドの相違は、前記パッセンジャー鎖のヌクレオチド位置13から3’末端内に位置する。)
を含む、組成物。
【請求項38】
ガイド鎖が、配列番号3、配列番号6、配列番号9及び配列番号31からなる群から選択される配列と配列が同一である少なくとも6個のヌクレオチドの連続ヌクレオチド配列を含むシード領域を含む、請求項37の組成物。
【請求項39】
前記ガイド鎖配列が、miR34a(配列番号1)、miR34b(配列番号4)、miR34c(配列番号7)及びmiR449(配列番号29)からなる群から選択される、請求項37の組成物。
【請求項40】
パッセンジャー鎖におけるヌクレオチドの相違が、その3’末端の6個のヌクレオチド内に位置する、請求項37の組成物。
【請求項41】
送達物質が脂質ナノ粒子を含む、請求項37の組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公表番号】特表2010−525826(P2010−525826A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506716(P2010−506716)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/062689
【国際公開番号】WO2008/137867
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505441904)ロゼッタ インファーマティックス エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】