説明

癌性疾患修飾抗体

本発明は、スクリーニングの新規パラダイムを使用して、患者の癌性疾患修飾抗体を産生する方法に関する。本プロセスは、エンドポイントとして癌細胞への細胞傷害を使用して、抗癌抗体を分離することによって、治療目的および診断目的のための抗癌抗体の産生を可能にする。抗体は、癌の病期分類および診断の補助において使用でき、原発腫瘍および腫瘍転移を治療するために使用できる。抗癌抗体は、毒素、酵素、放射性化合物および造血細胞にコンジュゲートできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の単離および産生、ならびに任意で1つまたは複数の化学療法剤との組合せでの、治療および診断のプロセスにおけるこれらのCDMABの使用に関する。本発明は、さらに本発明のCDMABを利用する結合分析に関する。
【背景技術】
【0002】
癌におけるCD63:CD63には現在30のメンバーがあり、4つの膜貫通領域の存在によって特徴づけられるテトラスパニンファミリーのタイプIII膜タンパク質である。いくつかのグループが、活性化血小板、顆粒球およびメラノーマ細胞の全細胞調製品に対して作製された抗体を使用して、独立してCD63を同定した。それらの同族の糖タンパク質抗原のそれぞれのcDNAのクローニングにより、異なる抗原が同一の分子であったという認識が導かれた。白血球分類に関する第6回国際ワークショップ(The Sixth International Workshop on Leukocyte Typing)(1996)は、その後にCD63抗体としてこれらの抗体を分類した。1996年のワークショップ以前には、CD63は、複数の名称(メラノーマ1抗原、眼メラノーマ関連抗原、メラノーマ関連抗原ME491、リゾソーム関連膜糖タンパク質3、グラニュロフィジン(granulophysin)、メラノーマ関連抗原MLA1)により公知であり、時には部分的な特性評価および識別へ結びつく抗体に関連していた。したがって、CD63は、抗原ME491(MAb ME491)、神経分泌腺(neuroglandular)抗原(MAb LS59、MAb LS62、MAb LS76、MAb LS113、MAb LS140およびMAb LS152)、Pltgp40(MAb H5C6、MAb H4F8およびMAb H5D2)、ヒト骨髄間質細胞抗原(MAb 12F12)、骨前駆細胞特異的マーカー(MAb HOP−26)およびインテグリン関連タンパク質(MAb 6H1)とも呼ばれた。ヒトCD63と交差反応することが見出された他の抗体は、8−1H、8−2A(ME491との交差反応性)、NKI/C−3およびNKI/ブラック−13であった(Vennegoor et al. , Int J Cancer 35(3):287-95 (1985); Vennegoor and Rumke, Cancer Immunol Immunother. 23(2):93-100 (1986); Demetrick et al. , J Natl Cancer Inst 84(6):422-9 (1992); Wang et al. , Arch Ophthalmol. 110(3):399-404 (1992))。免疫親和性により精製されたNKI/C3抗原に対して作製されたウサギポリクローナル抗体RaC3による研究から、見かけ上の分子量が20kDa付近でありN結合型炭水化物によって高度に翻訳後修飾されたコアポリペプチドとして、標的タンパク質が明らかにされた(Gruters et al. , Cancer Res 49(2):459-65(1989))。
【0003】
CD63は、MAb ME491(SKMel23ヒト皮膚メラノーマ細胞株調製品に対して作製され、メラノーマ細胞への結合でスクリーニングされた多数の抗体の1つ)を使用して、メラノーマcDNAライブラリーから最初にクローニングされた。125I−ラクトペルオキシダーゼ標識メラノーマ細胞からの免疫沈降により、細胞表面に30〜60kDaタンパク質が存在することが示された。この抗体により認識される抗原は、翻訳後に非常に修飾されるタンパク質であることが示された。免疫組織化学によって、抗体は、正常に見える周囲の細胞ではなく腫瘍組織中のメラノーマ細胞を認識することが見出され、したがってこの抗体が腫瘍特異抗原決定基を認識する可能性を示唆した(Atkinson et al. , Hybridoma 4, 243-255 (1984))。この抗体は、87%のぶどう膜メラノーマ症例中のメラノーマ細胞、およびぶどう膜メラノーマが存在する86%の症例中の気球細胞もまた染色した。この研究において、正常な眼組織の染色は可変的であり、正常な症例の少数でのみ、および形態学的に正常なメラノサイトでまれに陽性であった(Folberg et al. , Arch Ophthalmol 103(2):275-9 (1985))。別の実験において、さらにSKMel23細胞株に対して作製されたモノクローナル抗体MAb6−F1、MAb8−1HおよびMAb8−2Aは、同一の抗原を認識し、MAb ME491により得られたものに非常に類似する免疫組織化学的染色パターンをあらわすことが示された。さらにこれらの抗体は、原発性脈絡膜メラノーマを有する患者において、肝臓転移性腫瘍組織を染色したが、正常な肝細胞を染色しなかった。ヒトメラノーマ生検の別の研究において、MAb ME491の反応性はメラノーマ進行と逆相関しているようであることが示された。ME491抗体の反応性は、正常なメラノサイトにおいて低く、メラノーマ進行の初期においてより高く(異形成母斑および水平増殖期(RGP)腫瘍)、ならびに垂直増殖期(VGP)のメラノーマ腫瘍などのさらに進行したメラノーマ腫瘍および転移性腫瘍において減少または存在しない。原発性ヒトぶどう膜メラノーマ細胞に対して作製された別のモノクローナル抗体(MAb 4A3)は、これらの細胞中に存在する抗原を特異的に認識することが見出され、健常人からのリンパ球への結合はバックグラウンドレベルのみであることが示された。この抗体によって検出される1つまたは複数の抗原は、メラノーマ組織のウェスタンイムノブロットにより、およその見かけ上の分子量が55kDaのダブレットであり、この抗体によって認識される抗原は、抗CD63としてクラスターに分けされた抗体によって認識された抗原と同一でなかったことを示唆する(Damato et al. , Invest Ophthalmol Vis Sci 27(9): 1362-7 (1986))。
【0004】
CD63は、トロンビン活性化血小板に対して作製されたモノクローナル抗体(MAb2.28、MAb2.19、MAb5.15およびMAb5d10)を使用して、ヒト血小板においても見出され、部分的に特性を評価された。トロンビン活性化に際しての結合部位数の増加(10倍以上)によって示されるように、これらの抗体は活性化依存性血小板膜53kDa糖タンパク質を検出した。競合分析において、これらの抗体は結合を互いにブロックし、それらが同一のまたは空間的に近い抗原決定基を認識することを示唆する。血小板凝集実験からの結果から、これらの抗体がそれ自体で血小板凝集を引き起こさないこと、またアデノシン二リン酸(ADP)、トロンビン、コラーゲン、リストセチンおよびエピネフリンによって誘導される凝集を妨害しないことが明らかにされた。電子顕微鏡データーは、これらの抗体が静止血小板においてリゾソーム膜に局在する抗原を認識することを示唆した。免疫組織化学データーは、これらの抗体が脾臓、リンパ節、胸腺の限定された領域中に、および内皮細胞に存在する抗原を認識することを示した。別の研究において、MAb 2.28は、さらに静止血小板中の、ならびに巨核球および内皮細胞中の内部顆粒を標識し、後者の2つでは、その標識はリソソームのコンパートメントの既知のマーカーである酵素カテプシンDの抗体と共局在した。抗体クラスタリングおよび発現クローニングによる続報研究から、この抗体によりCD63として認識される抗原の同定が導かれ、この抗原がリソソームのコンパートメント中に存在し、コンパートメント特異的マーカーLAMP−1およびLAMP−2と共局在することがさらに確認された。この分子のクローニングにより、この分子をCD63として同定し、テトラスパニンファミリー中に含めた。
【0005】
CD63の発現は様々な組織および細胞タイプで検出された。細胞レベルでは、細胞膜およびさらに細胞内後期エンドソーム小胞構造に結合することが見出された。細胞活性化は、特定の場合に、CD63の細胞内貯蔵の移動による表面発現の増加を導いた。CD63は、Bリンパ球中で(特にエンドソーム中で、表面へのMHCクラスII複合体の輸送に関わるエキソソーム中で、および分泌小胞中で)MHCクラスIIと共局在し、これと物理的に結合することもまた見出された。CD63は、Bリンパ球およびTリンパ球、好中球、乳癌およびメラノーマ細胞を含む、様々な細胞タイプにおいて、CD9、CD81、CD11(インテグリン鎖αM,L,X)、CD18(インテグリン鎖β)、CD49c(VLA−3またはインテグリン鎖α)、CD49d(インテグリン鎖α)、CD49f(VLA−6またはインテグリン鎖α)およびCD29(インテグリン鎖β)などのテトラスパニンファミリーの他のメンバーと相互作用することが見出された。
【0006】
癌におけるCD63の役割は明らかではなかった。CD63は、血小板および顆粒球活性化、MHCクラスII依存性抗原提示、インテグリン依存性細胞接着および運動性、ならびに特定のタイプの癌における腫瘍進行などの多様な事象に関与することがいくつかの独立したグループによって最初に見出されたが、その機能はさらに完全に解明されなければならない。たとえ現在ある証拠が様々な細胞生理学的事象におけるCD63の役割を支持しても、これらの機能が互いから独立しているかどうか、またはCD63が関与する内在する一般的な細胞メカニズムがあるかどうかは明らかではない。
【0007】
いくつかのグループは、CD63と特定のタイプの腫瘍(特にメラノーマ)の進行との間の関連を研究してきた。Mab ME491に加えて多数の他の抗CD63モノクローナル抗体が、様々な進行病期での腫瘍を有する患者から得られる癌サンプルの免疫組織化学(IHC)染色のために開発された。腫瘍の進行および転移特性と染色の低下(CD63の発現低下を反映する可能性が最も高いと著者によって解釈された)が関連することが観察された。より最近の研究により、CD63を含むテトラスパニンタンパク質ファミリーのうちのいくつかのメンバーの発現レベルの明らかな低下(mRNA定量化後)といくつかの乳癌由来細胞株のインビトロの浸潤性との間での有意な相関性についてもまた記述された。別の研究は、エストロゲン枯渇を行なった培養乳癌細胞において、ディファレンシャルディスプレイによりCD63を同定した。このことは、CD63発現がステロイドホルモンにより調節可能であり、CD63の存在量および/または機能の変化もまた乳房腫瘍の進行に関連するかもしれないことを示した。
【0008】
これとは対照的に、抗CD63モノクローナル抗体MAb FC−5.01による研究から、この抗体に反応するエピトープは異なる正常組織で可変的に発現されるこが明らかにされた。この抗体はCD63を認識するが、初期メラノーマと進行期メラノーマ(転移性メラノーマを含む)を区別しないことが見出され(MAb ME491とは異なり)、このことは、CD63抗原はより進行した腫瘍中に存在するが、そのエピトープのいくつかは異なる病期の腫瘍からの細胞中ではマスクされているかもしれないことを示唆した。これは、CD63コアポリペプチドの翻訳後修飾の変化、または他の分子とのCD63の相互作用のためであり、抗体の認識および結合のための特異的エピトープの利用可能性に影響するかもしれない。これらの結果は、原発性、水平増殖期、垂直増殖期および転移性のメラノーマなどの進行の異なる病期の組織切片の間での、抗CD63のMAb NKI−C3による染色がメラノーマを区別しなかったという、Si and Hersey, Int J Cancer 54(1):37-43 (1993)により記述された観察を支持した。他の研究(Adachi et al. , J Clin Oncol 16(4): 1397-406 (1998); Huang et al. , Am J Pathol 153(3):973-83 (1998))において、2つのテトラスパニンファミリーメンバー(CD9およびCD82)については、それらの発現レベルと腫瘍進行および患者予後との間に有意な相関性があることが、乳癌および非小細胞肺癌からの定量的PCRによるmRNA分析により明らかにされたが、CD63については、すべてのサンプルにおいてCD63の発現が同様であったのでそのような相関性は見出されなかった。これらの明らかに矛盾する結果を受けて、癌とCD63の関連を明確に示す強固で矛盾しないデーターが欠如している。
【0009】
現在までに、CD63と結果として生ずるこの分子の腫瘍抑制因子機能との間のつながりの立証を試みたインビボの研究は少数ない。これらの研究の1つにおいて、CD63を過剰発現するヒトH−rasにより形質転換されたNIH−3T3株細胞は、無胸腺マウスへ皮下注射および腹腔内注射され、CD63を過剰発現しない親細胞の挙動と比較した場合、生存期間の増加に加えて、腫瘍サイズおよび転移能力の低下によっても示されるように、悪性/腫瘍形成性表現型の低下を示した。このことから、形質転換細胞中のヒトCD63の存在が、それらの細胞の悪性挙動を抑制するかもしれないことが示唆された。最近では、ヒトCD63を発現し、CD63に対する耐性を誘導するように発生させたトランスジェニックマウスモデルによる研究から、ワクシニアウイルスに融合したヒトCD63による免疫に際して、注入されたヒトCD63−MHCクラスI(H−2K)を共トランスフェクションしたマウスメラノーマ細胞株の腫瘍増殖が阻害され、生存を増加させることができるかもしれないことが示された。動物がCD63のみでトランスフェクションされた細胞株ではなく、CD63−MHCクラスIで共トランスフェクションされた細胞を注射した場合でのみ、腫瘍増殖の阻害が起こったので、治療上の効果がTリンパ球依存性であり、内在性の抗CD63抗体がこの防護効果に関与するようではないことが、著者によって示唆された。この解釈は、精製ヒトCD63で前免疫され、抗ヒトCD63抗体が生じたことが示される野生型動物において、癌細胞増殖に対する防護効果がないという事実によって支持された。ヒトCD63によりトランスフェクションされたKM3細胞株(最初はヒト起源であると考えられたが、後にラット系列であると特徴づけられた)を使用する、Radford et al. , Int J Cancer 62(5):631-5 (1995)によって記述された研究から、このタンパク質の発現は、無胸腺マウスに皮内注射した場合、非トランスフェクションの親KM3細胞を使用して観察されたものと比較して、これらの細胞の増殖および転移の能力を低下させるが、様々なトランスフェクション細胞株と非トランスフェクション細胞株の間のインビトロ増殖率には有意差がないということが示唆された。これらの観察は、腫瘍細胞のインビボ増殖率およびインビトロ増殖率の両方に影響することが公知である他の癌抑制遺伝子の効果から、CD63の可能性のある効果を区別した。更に、抗CD63モノクローナル抗体ME491(インビトロの分析においてランダムな運動性を低下させることで、同じ細胞に対する機能的効果を有することが見出された(Radford et al. , J Immunol 158(7):3353-8 (1997)))の追加は、それらのインビトロ増殖率に影響を与えなかった。
【0010】
この研究は、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンおよびビトロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)に由来する化学誘引物質に反応してCD63が移動を促進し、インテグリンの抗体はこれらの効果をブロックすることができないが、この効果はβ−タイプのインテグリンの機能的関与によって仲介されるという観察についてもまた記述した。しかしながら、ビトロネクチン(インテグリンαβに対する既知のリガンド)を介したシグナリングの役割と、CD63をトランスフェクションした細胞上のフィブロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンなどの他のECM構成要素によって仲介されるシグナリングの役割との間に拮抗作用があると思われた。このことは、特異的な条件下で(ECM構成要素の存在下において)、CD63の発現は移動の低下を導き、これは接着と運動性との間の微細なバランスに依存するだろうことを示唆した。別の研究において、抗CD63モノクローナル抗体(MAb 710F)はPMA処理したHL−60細胞の接着および伸展を促進し、一方別の抗CD63モノクローナル抗体(MAb 2.28)は同様の効果を促進したが、これは細胞集団の非常に少量の画分に対してのみ、また非常に多量に加えられた場合でのみ起こった。これらの結果は、CD63に対する多くの抗体が開発されているがそれらの機能効果がかなり異なることを示した。
【0011】
テトラスパニンは細胞増殖にも関与する。Oren et al. Mol Cell Biol 10(8):4007-15 (1990)は、CD81(TAPA−1)を認識するマウスMAb 5A6のリンパ腫細胞株に対する抗増殖効果について記述した。別の研究において、Tリンパ球における抗体とのヒトCD37のライゲーションは、CD37誘導性増殖をブロックした。より最近では、CD37の発現が欠損した動物モデル(CD37ノックアウト)による研究から、この動物からのTリンパ球は、野生型動物からのTリンパ球と比較して、コンカナバリンA活性化およびCD3/T細胞受容体連結に反応して過剰増殖性であることが明らかにされた。したがって、細胞成長および増殖における機能的役割がテトラスパニンファミリーの一般的な特徴であることが提案された。肝芽腫および肝細胞癌の細胞による最近の研究から、抗CD81モノクローナル抗体とこれらの細胞の連結によりErk/MAPキナーゼ経路の活性化が導かれることが明らかにされた。このシグナル伝達経路は、細胞成長および増殖事象に関連することが示されている。平行研究において、ヒトCD81を過剰発現するトランスフェクション細胞株は、モックトランスフェクションされた対照細胞と比較して、増殖の増加を示した。したがって、利用可能な証拠から、細胞成長増殖および細胞接着/運動性に関連した事象における一般的なテトラスパニンの役割、および特にCD63の役割が指摘された。これらの2つのタイプの細胞の事象は、両方が腫瘍の進行および転移に中心的な役割を果たすので、現在これを標的として熱心に研究されている。
【0012】
アミノ酸配列の決定および分析からは、テトラスパニンと他のタンパク質ファミリーとの間の相同性、または以前に特性を評価された任意の機能モジュールとの相同性は示されず、また以前から既知の任意の酵素の活性は示唆されなかった。その結果、シグナル伝達経路の調節におけるこのタンパク質ファミリーの役割を調べることは非常に困難であった。しかしながら、細胞生理における変化を導き、シグナル伝達経路の調節に密接に依存する、テトラスパニン特異的試薬を使用して得られた証拠から、テトラスパニンがシグナル伝達特性を有することが示唆される。CD63は、それら自体が二次伝達シグナルの生成に関与する酵素であるか、またはそのような酵素と物理的および/または機能的に結合する多数の分子と、物理的および機能的の両方で結合することが示された。
【0013】
内皮細胞とヒト好中球の相互作用(それらは炎症反応の最初のステップの1つである)を制御するメカニズムを細かに調べるためにデザインされた実験から、いくつかの抗CD63モノクローナル抗体(AHN−16、AHN−16.1、AHN−16.2、AHN−16.3およびAHN−16−5)による好中球の前処理は、培養内皮細胞層への好中球の接着を促進することが明らかにされた。更に、この効果はカルシウムイオン(Ca2+)(多くの細胞内シグナル伝達経路の周知のモジュレーター)の存在に強く依存し、それは細胞が刺激抗体へ暴露される特定の期間に限定された。より長い抗体への暴露後には、内皮細胞への好中球の接着はCa2+の後の追加に対して非感受性となり、したがって動的かつ一時的に調節された(一過性)事象に関係する。さらに、CD63は、CD11/CD18タンパク質複合体と物理的に相互作用することが見出され、この複合体を特異的に標的とする試薬は修飾シグナルを仲介した。この研究において、CD63は、酵素チロシンキナーゼLckおよびHckを含む複合体と物理的に結合するか、またはその一部であることもまた見出された。これらの酵素は、特異的な表面受容体の活性化に際して細胞内調節シグナルの仲介において中心的な役割を果たすタンパク質クラスのメンバーであり、細胞特異的な生理学的変化をもたらすシグナル伝達経路のカスケードの一部である。別の研究は、モノクローナル抗体とテトラスパニン(CD63を含む)の共ライゲーションが、MDA−MB−231乳癌細胞のコラーゲン基質への接着により誘導される酵素である接着斑キナーゼ(FAK)のリン酸化または活性を促進することを示唆した。このことは、インテグリンを介したチロシンキナーゼシグナル伝達経路の調節において、CD63の(および他のテトラスパニンファミリーメンバーの)直接的な関与を示した。表面のCD63の存在および抗CD63モノクローナル抗体MAb 710Fによるライゲーションと機能的に交差する他のシグナル伝達経路は、酵素タンパク質キナーゼC(PKC)(細胞内シグナル伝達経路の別の周知のモジュレーター)によるリン酸化の調節に依存するものであると思われる。この情況において、PKCの一時的な関与は決定的に示されなかったが、MAb 710Fによる骨髄細胞株HL−60における接着促進および形態変化は、フォルボールミリステートアセテート(PMA)による細胞の前処理に依存した。しかしながら、独立したグループによる後の研究から、分子Ro31−8220(この酵素の特異的阻害剤)がPMAの効果をブロックしたので、PMAに誘導されたHL−60の分化がPKC活性依存性であることが実証された。
【0014】
シグナル伝達経路と、CD63および他のテトラスパニンファミリーメンバーの結合を支持するさらなる証拠は、チロシンホスファターゼ活性を備えたCD63(およびCD53も)分子の超分子複合体との間の直接的な物理的結合、またはその複合体の一部としての物理的結合のいずれかについて記述した研究から生じた。この研究において、抗CD63抗体により単離された免疫沈降複合体はチロシンホスファターゼ活性に関連することが示されたが、CD53(チロシンホスファターゼCD45と結合することが示された)と異なり、CD63結合ホスファターゼを同定することは可能でなかった。より最近では、テトラスパニンファミリーのいくつかのメンバーは、II型フォスファチジルイノシトール4−キナーゼ(II型PI4−K)とも結合することが見出された(Berditchevski et al. , J Biol Chem 272(5):2595-8 (1997))。この相互作用は、CD9、CD63、CD81、CD151およびA15/TALLAについてのみ同定され、CD37、CD52、CD82またはNAG−2で起こることは観察されなかったので、非常に特異的であると思われた。さらに、各PI−4キナーゼ含有複合体は単一のテトラスパニンファミリーメンバーに限定的だったので、テトラスパニンファミリーメンバーとPI−4Kとの間の結合は相互に排他的であった。特にCD63−PI−4キナーゼ複合体は、他のテトラスパニンメンバーにより形成された複合体とは異なり、脂質ラフト様ドメインの細胞内区画にほとんど完全に見出された。この観察は、PI−4キナーゼと相互作用することが見出されている、このCD63画分が、二次メッセンジャー分子としてのそれらの機能(Martin Annu. Rev. Cell. Dev Biol 14:231-64 (1998))に加えて、フォスフォイノシチド生合成経路(膜輸送(エンドサイトーシスおよびエキソサイトーシス)、および細胞骨格再構成の調節におけるそれらの関与については周知である)に関連または依存する特異的な細胞内事象(Claas et al. , J Biol Chem 276(11):7974-84 (2001))に関与することを示唆した。
【0015】
シグナル伝達経路の調節におけるすべての酵素(CD63が直接結合することが今までに見出された)の直接的で重要な関与は、これらの酵素活性から下流の調節因子としてまたはエフェクター分子としての、CD63とシグナル伝達経路の調節の関連性を支持するさらなる証拠を提供した。
【0016】
腫瘍進行を導くメカニズムの解明は、しばしば明らかに矛盾する観察により示される非常に困難で複雑な試みであり、その結果、それらの観察が効果的な治療法にうまく変換されることはまれである。腫瘍の進行および転移ならびにシグナル伝達メカニズムとCD63の関連について現在公知であることを考慮して、その機能が腫瘍細胞において変化することはありえる。
【0017】
認識抗原を発現する細胞を結合しそれ自体で腫瘍細胞に対する細胞傷害効果を備えた抗原特異的試薬、または他の分子を結合させた腫瘍細胞に対する細胞傷害効果を備えた抗原特異的試薬は、正常細胞集団に対する著しい有害効果なしに、癌細胞増殖および進行および転移を阻害するような細胞およびインビボの生理活性を有しており、これらの試薬の開発は可能な治療および/または診断ツールとして非常に有用だろう。
【0018】
最近では、新しいデーターから正常細胞生理の調節におけるCD63の重要な作用様式が示され、改変された場合には、癌を含む病的な条件下での細胞挙動に重要な効果を有することが示されている。
【0019】
乳癌細胞においてCD63の内部移行を引き起こすことが公知であるMAb抗体Fc−5.01を、ヒト樹状細胞(DC)におけるCD63の表面発現および内部移行のレベルを決定するために使用した(Mantezazza et al. , Blood 104(4):1183-90 (2004))。CD63は、エンドソームおよびリソソームのマーカーと一緒に共局在して、細胞表面および細胞内の両方に局在することが見出された。完全な形の抗体およびそのFabフラグメントは、CD63の内部移行を誘導することができた。同時に、Fc−5. 01により促進されるCD63の内部移行は、β3またはHLA−II分子の表面発現ではなく、いくつかのインテグリン分子、CD11b、CD18、CD29およびα5の表面発現低下をもたらした。走化性分析からの結果は、この抗体、およびタンパク質のテトラスパニンファミリーの他のメンバーを認識する他の抗体が、化学誘引物質に向かって膜バリアーを横切って移動した細胞数の増加を引き起こすことを明らかにした。これらの細胞(未成熟DC)において、酵母ファゴサイトーシス(それはβ1,3−グリカン受容体によって仲介される)には、テトラスパニンCD9、CD81およびCD82またHLA−II分子のレベルではなく、細胞表面CD63のレベルの減少が付随した。一方、デキストランFITCによって誘導される内部移行(それはマクロファージマンノース受容体(MMR)によって仲介される)は、CD63表面発現の低下またはCD9、CD81、CD82、HLA−IおよびHLA−II分子の発現低下をもたらさなかった。したがってβ1,3−グリカン受容体のデクチン−1の場合のように、CD63は特異的受容体に時には物理的に結合し、内部移行イベントに参加するように思われる。いくつかのインテグリン分子の表面発現がCD63の抗体誘導性内部移行に際して低下するという事実は、そのようなCD63依存性事象が細胞表面受容体構成に有意な影響を及ぼすことができ、したがってDC移動分析に対する効果によって示されるようなそのような細胞集団の生理に影響を及ぼすことができることもまた示唆する。
【0020】
別の研究において、膜結合型メタロプロテイナーゼ1(MT1−MMP)の内部移行はCD63によって影響されることが見出された。この研究において、FLAGタグ付加MT1−MMPは内部移行し、細胞表面レベルの減少が同時に起こる拡散した細胞質分布が得られた。クロルキン(chlorquine)(既知のリソソームプロテイアーゼ(proteiase)阻害剤)の追加は、細胞表面MT1−MMPのこの内部移行依存的消失を部分的に阻害し、同時に、MT1−MMPのCD63陽性内部顆粒型構造への結合を維持するような方法で内部移行依存性の細胞質分布を変化させた。MT1−MMPおよびCD63による細胞の共トランスフェクションはこのメタロプロテアーゼの細胞表面レベルの減少をもたらし、これらの分子の阻害剤(BB94)がこの減少に対していかなる効果を持たないが、クロルキンは持っていたので、この減少はMMP活性の全体的なレベルに依存しなかった。この観察は、CD63発現の増加がMT1−MMPのターンオーバー/内部移行/分解を促進できることを示唆した。MT1−MMPの内部移行/分解の増加は、MT1−MMPとCD63との間の直接的な相互作用に依存した。このタイプの機能は、CD63がアダプタータンパク質AP−2およびAP−3のμ2およびμ3のサブウンビッツ(subunbits)と直接それぞれ相互作用し、エンドソームおよびリゾソームへのタンパク質選別に関与するという以前の観察によってさらに支持された。MT1−MMPの細胞質尾部がこの分子の内部移行のために重要であり、この事象は浸潤促進活性の調節において重要な役割を果たすこともまた以前に示された。MT1−MMPは悪性腫瘍細胞の浸潤においてもまた重要な役割を果たすと考えられる。したがって、MT1−MMPの全体的なレベルの調節は、CD63との結合による相互作用および内部移行に依存しうる。
【0021】
別の最近の出版(Xu et ah, Embo J23(4):81 1-22 (2004))において、網膜変性に関与するショウジョウバエの眼に豊富な遺伝子についての遺伝学的スクリーニングにより、多数の遺伝子の中から「サングラス」(「sun」)と名付けられたテトラスパニン様分子が同定された。最も近縁の関連した哺乳類タンパク質はテトラスパニンCD63であった。そしてCD63への類似性で、免疫電子顕微鏡法により示唆されるように、「sun」はリゾソーム中に濃縮されることが見出された。この研究からの結果は、「sun」がRh1シグナリングの正常なダウンレギュレーションに関与し、他のGタンパク質共役型受容体に典型的なアレスチンが仲介するメカニズムから独立していることを示唆した。さらに、「sun」は活性化Rh1の通常のターンオーバーにおいて重要なだけではなく、およびこの事象に恐らく依存して、感桿分体の構造の維持において有意な効果もまた有しており、変異ハエにおける劇的なsun依存性網膜変性をもたらす。これらのデーターはともに、タンパク質の正常輸送依存性ターンオーバーに哺乳類CD63のこのホモログを密接に結び付け、その発現/機能における異常は生理学的異常をもたらす。
【0022】
受容体内部移行におけるCD63の役割についての別の出版は、両方の分子で共トランスフェクションされたCOS細胞中で、このテトラスパニンと胃イオンポンプH,K−ATPアーゼのβ−サブユニットの共局在することについて記述した。この研究において、H,K−ATPアーゼβ−サブユニットの内部移行およびリゾソーム様細胞質顆粒状構造への局在がCD63発現依存性促進を受けることもまた見出された。
【0023】
上で記述された研究からのすべてのデーターは、CD63もまた、それらの内部移行およびリソソーム依存の分解に参加すること、したがって正常細胞生理の制御に参加することによって、細胞表面分子の正常なターンオーバーに関与していることを示唆した。したがって、CD63のこの機能の操作が、癌などの病的状態において表面の発現または機能が改変または異常な細胞挙動に寄与する特異的分子または分子群の活性に依存する事象を制御する重要なツールとなることは可能である。
【0024】
最近まで、抗CD63の抗体、またはCD63発現細胞を特異的に標的とした他の試薬が、腫瘍細胞のインビトロおよびインビボの増殖特性に対して、およびさらに腫瘍増殖の動物モデルの生存に対して、同時効果を有することは報告されていない。公開された米国特許出願第10/810,751号は、ヒト癌細胞に対するインビトロおよびインビボの有効性を示す、2つのそのような抗CD63抗体を開示する。
【0025】
癌治療法としてのモノクローナル抗体:癌を持つ各個人は特有であり、その個人同一性と同様に、他の癌とは異なる癌に罹患している。にもかかわらず、現在の療法は、同じ病期の同じタイプの癌に罹患するすべての患者を、同じ方法で治療する。これらの患者の少なくとも30%は第一選択療法に失敗し、したがって治療のさらなる繰り返し、ならびに治療の失敗、転移および最終的には死の可能性の増加へ結びつくだろう。治療に対する優れたアプローチは、特定の個人のために治療法をカスタム化することであろう。カスタム化に適している唯一の現在の療法は手術である。化学療法および放射線処理は患者に対して特別あつらえにはできず、手術単独は、ほとんどの場合には、治癒をもたらすには不適切である。
【0026】
モノクローナル抗体の出現により、各抗体は単一のエピトープに向けることができるので、カスタム化療法のための方法の開発の可能性はより現実的になった。更に、特異的に特定の個人の腫瘍を定義するエピトープの立体配座に向けられる抗体の組合せを生ずることは可能である。
【0027】
癌細胞と正常細胞との間の有意差が、癌細胞が形質転換細胞に特異的な抗原を含むとことであると認識されており、科学界では、モノクローナル抗体はこれらの癌抗原に特異的に結合することによって形質転換細胞を特異的に標的とするようにデザインできると長年考えられ、したがって癌細胞を除去する「特効薬」としてモノクローナル抗体が貢献できるという確信を生ずる。しかしながら、単一のモノクローナル抗体は癌のすべての実例において役に立つことができず、モノクローナル抗体が、クラスとしての標的化された癌治療として展開させることができることは今や広く認識される。開示された本発明の教示に従って単離されたモノクローナル抗体は、例えば全身腫瘍組織量を減少させることによって、患者に対して有益な方法で癌性疾患プロセスを修飾することが示されており、本明細書において癌性疾患修飾抗体(CDMAB)または「抗癌」抗体と様々に呼ばれるだろう。
【0028】
現在では、癌患者は、通常少数の治療の選択肢しか持っていない。癌治療法に対する統制されたアプローチにより、生存率および罹患率の世界的な改善がもたらされた。しかしながら、特定の個人にとっては、これらの統計的な改善は必ずしも個人的状況の改善と相関しない。
【0029】
したがって、実施者が同じコホート中の他の患者から独立して各腫瘍を治療することを可能にする方法が提出されたならば、これは、ただその1人に対する治療法を特別あつらえにするユニークなアプローチを可能にするだろう。治療法のそのような過程は、理想的には、治癒率を増加させてよりよい転帰を生じ、その結果として長年にわたる必要性を満たす。
【0030】
歴史的には、ポリクローナル抗体の使用は、ヒト癌の治療の限定的な成功で使用されている。リンパ腫および白血病はヒト血漿により治療されたが、長期の寛解または奏効はほとんどなかった。更に、再現性は欠如しており、化学療法と比較して追加の利益はなかった。乳癌、メラノーマおよび腎細胞癌などの固形腫瘍もまた、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿およびウマ血清により治療され、同様に予測不能および効果がない結果であった。
【0031】
固形腫瘍のためのモノクローナル抗体について多くの臨床試験が行なわれた。1980年代には、特異的な抗原に対する抗体または組織選択性に基づく抗体を使用するヒト乳癌についての少なくとも4つの臨床試験が行なわれ、その臨床試験は少なくとも47人の患者からただ1人の奏効した患者を生じた。シスプラチンとの組合せでヒト化抗Her2/neu抗体(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))を使用する成功した臨床試験は1998年までなかった。この試験において、37人の患者の奏効について評価され、そのうちの約4分の1には部分奏効率があり別の4分の1にはわずかなまたは安定した疾患進行があった。奏効患者の中での進行までの期間の中央値は8.4か月であり、奏効持続期間の中央値は5.3か月であった。
【0032】
ハーセプチン(登録商標)はタキソール(登録商標)との組合せにおいて第一選択使用のために1998年に承認された。臨床試験結果から、タキソール(登録商標)単独(3.0か月)を投与された群と比較して、抗体療法プラスタキソール(登録商標)(6.9か月)を投与された患者についての疾患進行までの期間の中央値が増加することが示された。生存の中央値もまたわずかに増加し、ハーセプチン(登録商標)プラスタキソール(登録商標)治療群vsタキソール(登録商標)単独治療群については22か月vs18か月であった。さらに、抗体プラスタキソール(登録商標)組合せ群において、タキソール(登録商標)単独に比較して、完全に奏効した患者(8%vs2%)および部分的に奏効した患者(34%vs15%)の数は増加した。しかしながら、ハーセプチン(登録商標)とタキソール(登録商標)による治療は、タキソール(登録商標)治療単独と比較して、心臓毒性の発生率はより高かった(それぞれ13%vs1%)。さらに、ハーセプチン(登録商標)治療法は、ヒト表皮増殖因子受容体2(Her2/neu)(現在のところ既知の機能または生物学的に重要なリガンドがない受容体)を過剰発現する患者(免疫組織化学(IHC)分析によって決定された)、転移性乳癌を有する患者のおよそ25%にのみ効果的であった。したがって、乳癌患者についての満たされていないニーズがまだ多くある。ハーセプチン(登録商標)治療が役立つ患者でさえまだ化学療法を必要とし、従って少なくともある程度はこの種の治療の副作用にまだ取り組まなければならない。
【0033】
結腸直腸癌を研究する臨床試験は、糖タンパク質および糖脂質の標的の両方に対する抗体に関与している。17−1Aなどの抗体(それらは腺癌についてのある程度の特異性がある)は、60人以上の患者において第2相臨床試験を行ない、1人の患者に部分奏効があった。他の試験において、17−1Aの使用は、追加のシクロホスファミドを使用するプロトコールにおいて、52人の患者の間でただ1人の完全奏効および2人のわずかな奏効を生じた。現在までに、17−1Aの第III相臨床試験は、第III期結腸癌のためのアジュバント療法として改善された有効性を示していない。最初にイメージングのために承認されたヒト化マウスモノクローナル抗体の使用もまた腫瘍退縮をもたらさなかった。
【0034】
ごく最近になって、モノクローナル抗体の使用による結腸直腸癌の臨床試験から陽性の結果が得られた。2004年に、エルビタックス(ERBITUX)(登録商標)は、イリノテカンベースの化学療法に対して抵抗性のあるEGFR発現転移性結腸直腸癌に罹患する患者の第二選択治療のために承認された。2群第II相臨床試験および単群試験からの両方の結果は、イリノテカンによる組合せにおいてERBITUX(登録商標)は、それぞれ23%および15%の奏効率で、それぞれ4.1か月および6.5か月の疾患進行までの期間の中央値を示した。同じ2群第II相臨床試験および別の単群試験からの結果は、エルビタックス(登録商標)単独による治療は、それぞれ11%および9%の奏効率で、それぞれ1.5か月および4.2か月の疾患進行までの期間の中央値をもたらすことを示した。
【0035】
従ってスイスおよび米国の両方において、イリノテカンとの組合せにおけるエルビタックス(登録商標)治療、および米国においてエルビタックス(登録商標)単独治療が、第一選択イリノテカン療法の効果のなかった結腸癌患者の第二選択治療として承認された。したがって、ハーセプチン(登録商標)のように、スイスにおける治療は、モノクローナル抗体および化学療法の組合せとしてのみ承認される。さらに、スイスおよび米国の両方における治療は、第二選択治療法としての患者のためにのみ承認される。さらに2004年に、アバスチン(AVASTIN)(登録商標)は、転移性結腸直腸癌の第一選択治療として、静脈投与の5−フルオロウラシルベースの化学療法との組合せにおける使用のために承認された。第III相臨床試験の結果は、アバスチン(登録商標)プラス5−フルオロウラシルで治療された患者の生存の中央値は、5−フルオウロウラシル(fluourouracil)単独で処理された患者と比較して延長されることを示した。(それぞれ20か月vs16か月)。しかしながら、再びハーセプチン(登録商標)およびエルビタックス(登録商標)のように、治療はモノクローナル抗体および化学療法の組合せとしてのみ承認される。
【0036】
そこでは同様に、引き続き肺癌、脳腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌および胃癌については成績不良である。非小細胞肺癌のための最も有望な最近の結果は、化学療法剤タキソテール(TAXOTERE)(登録商標)との組合せで、細胞殺傷薬のドキソルビシンへコンジュゲートしたモノクローナル抗体(SGN−15;dox−BR96、抗シアリルルイスX)を含む治療の第II相臨床試験からのものである。タキソテール(登録商標)は、肺癌の第二選択治療のためにFDAに承認された唯一の化学療法である。初期のデーターから、タキソテール(登録商標)単独と比較して、全体的な生存の改善が示される。試験に組み入れられた62人の患者のうち、3分の2はタキソテール(登録商標)との組合せでSGN−15を投与されたが、残りの3分の1はタキソテール(登録商標)単独を投与された。タキソテール(登録商標)との組合せでSGN−15を投与される患者については全体的な生存の中央値は7.3か月であり、比較のタキソテール(登録商標)単独を投与された患者については5.9か月であった。全体的な生存が1年および18か月であるものは、SNG−15プラスタキソテール(登録商標)を投与された患者についてはそれぞれ29%および18%であり、比較してタキソテール(登録商標)単独を投与された患者についてはそれぞれ24%および8%であった。さらなる臨床試験が計画される。
【0037】
前臨床的にはメラノーマのためのモノクローナル抗体の使用はある程度の限定的な成功を収めた。これらの数少ない抗体は臨床試験に到達し、現在までにどの抗体も、承認されないか、または第III相臨床試験において好ましい結果を実証していない。
【0038】
疾患を治療する新薬の開発は、明確に疾患病因に寄与する30,000の既知の遺伝子の産物の中の関連する標的の同定が欠如することによって妨げられる。腫瘍学研究において、可能性のある薬物標的は、単にそれらが腫瘍細胞で過剰発現されるという事実に起因してしばしば選択されている。したがって次に同定された標的は、多くの化合物との相互作用についてスクリーニングされる。可能性のある抗体療法の場合では、これらの候補化合物は、通常Kohler and Milsteinによって規定された根本原理に従うモノクローナル抗体作製の従来の方法に由来する(1975, Nature, 256, 495-497, Kohler and Milstein)。脾臓細胞を、抗原(例えば全細胞、細胞画分、精製抗原)により免疫されたマウスから回収し、不死化ハイブリドーマパートナーと融合する。結果として生じるハイブリドーマをスクリーニングし、標的へ最も強く結合する抗体の分泌を選択する。ハーセプチン(登録商標)およびリツキシマブを含む、癌細胞に対して向けられる多くの治療用抗体および診断用抗体がこれらの方法を使用して作製され、それらの親和性に基づいて選択された。この戦略における欠点は2点ある。第1に、治療用抗体または診断用抗体結合のために切な標的の選択は、組織特異的発癌プロセスを取り巻く知識の不足、および過剰発現による選択などの結果的に単純化されたこれらの標的を同定する方法により限定的である。第2に、最大の親和性で受容体と結合する薬物分子が、通常シグナルの開始または阻害に対して最高の可能性を持つという仮定は、必ずしもそうだとは限らない。
【0039】
乳癌および結腸癌の治療のある程度の進歩にもかかわらず、単一薬剤または併用治療のいずれかとして有効な抗体療法の同定および開発は、すべてのタイプの癌について不十分であった。
【0040】
特許文献1は、患者の腫瘍からの細胞を、患者からの細胞または組織からクローニングされるMHC遺伝子によりトランスフェクションするプロセスを開示する。次にトランスフェクションされた細胞は患者をワクチン接種するために使用される。
【0041】
特許文献2は、外部成分へではなく哺乳類の新生細胞および正常細胞の内部細胞成分へ特異的なモノクローナル抗体を得る工程と、モノクローナル抗体を標識する工程と、新生細胞を殺傷する療法を受けた哺乳類の組織と標識抗体を接触させる工程と、変性新生細胞の内部細胞成分に対する標識抗体の結合の測定によって、治療法の実効性を決定する工程を含むプロセスを開示する。ヒト細胞内抗原に向けられる抗体の調製において、特許権所有者は、悪性細胞がそのような抗原の好都合な供給源であることを認識している。
【0042】
特許文献3は新規抗体およびその産生のための方法を提供する。具体的には、ヒト腫瘍(例えば結腸腫瘍および肺腫瘍)に関連したタンパク質抗原に強く結合するが、正常細胞に非常に少ない程度で結合する特性を有するモノクローナル抗体の形成を、この特許は教示する。
【0043】
特許文献4は、ヒト癌患者からの外科的に腫瘍組織を除去することと、腫瘍細胞を得るために腫瘍組織を処理することと、生存可能であるが非腫瘍形成性であるように腫瘍細胞を照射することと、原発腫瘍の再発を阻害し、同時に転移を阻害することができる患者用ワクチンを調製するためにこれらの細胞を使用することを含む癌治療法の方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。第4カラムの45行、以下参照に示すように、特許権所有者は、ヒト新生物におけるモノクローナル抗体発現活性特異的免疫療法の開発において自発性腫瘍細胞を利用する。
【0044】
特許文献5は、ヒト癌に特有であり起源の上皮組織に依存しない糖タンパク質抗原を教示する。
【0045】
特許文献6は、Her2発現細胞においてアポトーシスを誘導する抗Her2の抗体、抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、抗体を使用する癌を治療する方法および該抗体を含む医薬組成物を記述する。
【0046】
特許文献7は、腫瘍および非腫瘍組織源から精製されたムチン抗原に対するモノクローナル抗体の産生のための新しいハイブリドーマ細胞株について記述する。
【0047】
特許文献8は、所望される抗原に対して特異的な抗体を産生するヒトリンパ球を産生する方法、モノクローナル抗体を産生する方法に加えて、この方法により産生されたモノクローナル抗体を記述する。この特許は、癌の診断および治療のために有用な抗HDヒトモノクローナル抗体の産生を特に記述する。
【0048】
特許文献9は、ヒト癌細胞と反応性の抗体、抗体フラグメント、抗体複合体および一本鎖イムノトキシンに関する。これらの抗体が機能するメカニズムは、この分子がヒト癌の表面上に存在する細胞膜抗原と反応性である点、およびさらに抗体が癌細胞内に内部移行し、続いて結合する能力を持つ点、の2点であり、それらを抗体−薬物および抗体−毒素コンジュゲートの形成のために特に有用にする。それらの非修飾形態では、抗体は、同様に特定濃度での細胞傷害特性を示す。
【0049】
特許文献10は、腫瘍の治療および予防のための自己抗体の使用を開示する。しかしながら、この抗体は老齢哺乳類からの抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系で見出される自然抗体の1タイプであるといわれる。自己抗体が「老齢哺乳類」から生ずるので、自己抗体が治療されている患者から実際に生ずる必要はない。さらに、この特許は、老齢哺乳類からの天然およびモノクローナルの抗核自己抗体、ならびにモノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を開示する。
【0050】
特許文献11は、2つの抗CD63モノクローナル抗体の使用、およびヒト乳癌、前立腺癌、膵臓癌およびメラノーマ癌の細胞に対するそれらのインビトロおよびインビボの有効性を開示する。
【0051】
特許文献12は、内部移行する癌細胞表面抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を選択するための方法、ならびに細胞代謝に対する抗転写効果および/または抗複製効果を有するモノクローナル抗体の同定のための方法を教示する。一例として、ME491抗体は、W9、WM35およびWM983メラノーマ細胞ならびにSW948結腸直腸癌細胞において内部移行することが示された。さらに、ME491抗体はSW948細胞において、転写および細胞増殖を低下させることが示された。特許文献13(およびその関連出願:WO0175177A3、WO0175177A2、AU0153140A5)は、CD63抗原を含む群のうちから選択される卵巣腫瘍マーカー遺伝子によりコードされた卵巣腫瘍マーカーポリペプチドを結合する抗体で、卵巣腫瘍の増殖または転移を阻害する方法を記述する。卵巣癌を使用する遺伝子発現の連続分析が、卵巣腫瘍マーカー遺伝子を同定して候補としてCD63を同定するために行なわれた。特許文献14(およびその関連出願CN1364803A)は、新しいポリペプチド−ヒトCD63抗原56.87を記述する。特許文献15は、新しいポリペプチド−ヒトCD63抗原14.63を記述する。特許文献16は、新しいポリペプチド−ヒトCD63抗原15.07を記述する。特許文献17は、新しいポリペプチド−ヒトCD63抗原11.11を記述する。これらの特許および特許出願はCD63の抗原および抗体を同定するが、本発明の単離モノクローナル抗体、または本発明の単離モノクローナル抗体の有用性は開示しない。
【0052】
ME491ポリペプチド抗原をコードする遺伝子はクローニングされ、配列は1988年2月24日に出版のために受理され(非特許文献1);CD63をコードする遺伝子はクローニングされ、配列は1991年2月に出版され(非特許文献2)、その出版物は明確にCD63とME491の同一性を示した。
【0053】
特許文献18(配列番号:89、優先出願日:2004年6月29日)、特許文献19(配列番号:1、優先出願日:2003年2月13日(2003WO−EPOO1461);他の優先日:2002年2月14日(2002GB−00003480))、特許文献20(配列番号:40、優先出願日:2002年12月30日(2002WO−US041798);他の優先日:2002年1月02日(2002US−0345444P))のすべては、CD63に100%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0054】
特許文献21(配列番号:9787および12101、優先出願日:2002年8月14日(2002WO−US025765);他の優先日:2001年8月14日(2001US−0312147P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの237アミノ酸と100%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0055】
特許文献22(配列番号:27、優先出願日:2003年2月18日(2003WO−US004902);他の優先日:2002年2月20日(2002US−0358279P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの224アミノ酸と94%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0056】
特許文献23(配列番号:4168および4913、優先出願日:2000年2月21日(2000EP−00200610);他の優先日:1999年2月26日(99US−0122487P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの205アミノ酸および94のアミノ酸と100%の配列相同性を有するポリペプチドをそれぞれ記述する。
【0057】
特許文献24(赤痢菌ospG#26のためのヒト獲物タンパク質、優先出願日:2002年1月11日(2002WO−EP000777);他の優先日:2001年1月12日(2001US−0261130P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの130アミノ酸と100%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0058】
特許文献25(配列番号:756、優先出願日:2000年3月8日(2000WO−US005918);他の優先日:1999年3月12日(99US−0124270P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの127のアミノ酸と99%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0059】
特許文献26(配列番号:3203、優先出願日:2001年6月7日(WO−USO 2001年18569);他の優先日:2000年6月7日(2000US−0209467P))CD63を含む238アミノ酸のうちの132アミノ酸と97%の配列相同性があるポリペプチドを記述する。
【0060】
特許文献27(ヒトCD63タンパク質からの大きな細胞外ループ配列、優先出願日:1999年6月15日(99WO−US013480);他の優先日:1998年6月15日(98US−0089226P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの99アミノ酸と100%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0061】
特許文献28(配列番号:1207、優先出願日:2002年3月05日(2002WO−US005095);他の優先日:2001年3月05日(2001US−00799451))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの102アミノ酸と86%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0062】
特許文献29(配列番号:4169、2000年2月21日(2000EP−00200610);他の優先日:1999年2月26日(99US−0122487P))は、CD63を含む238アミノ酸のうちの74アミノ酸と100%の配列相同性を有するポリペプチドを記述する。
【0063】
これらの特許出願は、CD63抗原に対して相同性がある可変配列を有するポリペプチドを同定する。たいていの場合では、これらの出願は、同様に対応するポリペピド(polypepide)およびそれらのホモログに対する抗体および抗体誘導体を記述するが、本発明の単離モノクローナル抗体、またはヒト肺癌、前立腺癌および結腸癌もしくは他のヒト癌の治療のための本発明の単離モノクローナル抗体の有用性を開示しない。重要なことには、上記のすべての出願は、CD63をコードするポリヌクレオチドの配列の出版後に出願された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【特許文献11】米国特許出願第10/810,751号
【特許文献12】米国特許第5,296,348号
【特許文献13】特許出願US20030211498A1
【特許文献14】特許出願WO02055551A1
【特許文献15】特許出願CN1326962A
【特許文献16】特許出願CN1326951A
【特許文献17】特許出願CN1351054A
【特許文献18】WO2004041170.89
【特許文献19】WO2003068268−A2
【特許文献20】WO2003057160−A29
【特許文献21】WO2003016475−A2
【特許文献22】WO2003070902−A2
【特許文献23】EP1033401−A2
【特許文献24】WO200257303−A2
【特許文献25】WO200055180−A2
【特許文献26】WO200200677−A1
【特許文献27】WO9966027−A1
【特許文献28】WO200270539−A2
【特許文献29】EP1033401−A2
【非特許文献】
【0065】
【非特許文献1】Can Res 48:2955, 1988, June 1
【非特許文献2】JBC 266(5):3239-3245, 1991
【発明の概要】
【0066】
本願は、癌性疾患修飾モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離するための米国特許第6,180,357号で教示されるような患者特異的な抗癌抗体を産生する方法を利用する。これらの抗体は特異的に1つの腫瘍について作製され、したがって癌治療法のカスタム化を可能にできる。本願の文脈内で、細胞殺傷(細胞傷害性)特性または細胞増殖阻害(細胞静止)特性のいずれかを有する抗癌抗体は、今後細胞傷害性と呼ばれる。これらの抗体は癌の病期分類および診断の補助のために使用でき、腫瘍転移を治療するために使用できる。これらの抗体は、予防的治療として癌の予防のためにも使用できる。従来の創薬パラダイムに従って産生された抗体とは異なり、このように産生された抗体は、悪性組織の増殖および/または生存に必須であると以前に示されない分子および経路を標的とできる。更に、これらの抗体の結合親和性は、より強い親和性相互作用でない細胞傷害性事象の開始のための必要条件に適合する。同様に、本発明のCDMABと、標準の化学療法の形態(例えば放射性核種)をコンジュゲートすることは本発明の範囲内にあり、その結果として、該化学療法の使用を集中させる。CDMABは、毒素、細胞傷害性部分、酵素(例えばビオチン複合酵素)または造血性細胞にコンジュゲートすることもでき、それによって抗体コンジュゲートを形成する。
【0067】
個別化された抗癌治療の可能性は、患者の管理法に変化をもたらすだろう。起こり得る臨床シナリオは、腫瘍サンプルは提示される時に得られて保存されるということである。このサンプルから、腫瘍は、癌性疾患修飾抗体の既存のパネルから分類することができる。患者は慣例通りに病期分類されるが、利用可能な抗体は患者の病期分類においてさらに使用できる。患者は既存の抗体により直ちに治療することができ、腫瘍に特異的な抗体のパネルは、本明細書において概要を述べられた方法を使用して、または本明細書において開示されたスクリーニング方法を併用するファージディスプレーライブラリーの使用によって、のいずれかで作製できる。治療されている腫瘍と同じエピトープのいくつかを、他の腫瘍が持つ可能性があるので、すべての産生された抗体は抗癌抗体のライブラリーに追加されるだろう。この方法に従って産生された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する多数の患者において癌性疾患を治療するのに有用かもしれない。
【0068】
抗癌抗体に加えて、患者は、治療の多様なレジメンの一部として現在推奨される療法を受けることを選択できる。本方法を介する単離抗体が非癌性細胞に対して比較的毒性がないという事実は、単独または従来の治療法との併用のいずれかで、高用量で抗体を組合せる使用を可能にする。高い治療指数は、治療耐性細胞の出現の可能性を低下させように、短時間スケールの再治療もまた可能にするだろう。
【0069】
患者が治療法の初期の過程に対して抵抗性があるか、または転移が発生する場合、腫瘍に対して特異的な抗体を産生するプロセスは、再治療のために繰り返すことができる。更に、抗癌抗体はその患者から得られた赤血球にコンジュゲートすることができ、転移の治療のために再注入できる。転移癌に効果的な治療はほとんどなく、転移は通常悪い転帰の前兆となり、結果的に死をもたらす。しかしながら転移癌では通常かなり血管が発達しており、赤血球による抗癌抗体の送達は腫瘍の部位に抗体を集中させる効果を持ちうる。転移以前でさえも、大部分の癌細胞は生存のために宿主の血液供給に依存しており、赤血球にコンジュゲートした抗癌抗体はその場で腫瘍に対して同様に効果的でありえる。あるいは、抗体は、他の造血性細胞(例えばリンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞など)にコンジュゲートしてもよい。
【0070】
5つのクラスの抗体があり、各抗体は重鎖により付与される機能に関連している。一般に、そのままの抗体による癌細胞の殺傷は、抗体依存性細胞性細胞傷害または補体依存性細胞傷害のいずれかを介して仲介されると考えられる。例えば、マウスIgMおよびIgG2a抗体は補体系のC−1成分の結合によって、ヒト補体を活性化することができ、それによって腫瘍溶解をもたらすことができる補体活性化の古典経路を活性化する。ヒト抗体については、最も効果的な補体活性化抗体は一般にIgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3アイソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球および特定のリンパ球によって細胞殺傷をもたらすFc受容体を有する細胞傷害性細胞を動員する時に効果的である。IgG1およびIgG3アイソタイプの両方のヒト抗体はADCCを仲介する。
【0071】
抗体を仲介する癌殺傷の別の可能なメカニズムは、細胞膜およびそれに結合した糖タンパク質または糖脂質において様々な化学結合の加水分解を触媒するように機能する抗体(いわゆる触媒抗体)の使用によるものでありえる。
【0072】
抗体を介した癌細胞殺傷には、3つの付加的なメカニズムがある。第1は、癌細胞上に存在する推定上の抗原に対する免疫反応を生ずるように生体を誘導するワクチンとしての抗体の使用である。第2は、増殖受容体を標的としそれらの機能を妨害するか、またはその機能が効果的に失われるようにその受容体をダウンレギュレートする抗体の使用である。第3は、TRAIL R1またはTRAIL R2などの死受容体のライゲーションまたはαVβ3などのインテグリン分子および同種のもののような直接的な細胞死をもたらす細胞表面部分の直接的なライゲーションに対するそのような抗体の効果である。
【0073】
制癌剤の臨床的有用性は、患者に対する許容リスクプロフィール下の薬物の利益に基づく。癌治療法において、生存は一般に最も必要とされる利益だったが、生命の延長に加えて、多数の他のよく認識された利益がある。治療が生存に不利に影響しない場合、これらの他の利益は、病徴緩和、有害事象に対する防御、再発または無病生存までの期間の延長、および進行までの期間の延長を含んでいる。これらの基準は一般に容認され、アメリカ食品薬品局(F. D. A.)などの規制団体は、これらの利益を生ずる薬物を承認する(Hirschfeld et al. Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42: 137-143 2002)。これらの基準に加えて、利益のこれらのタイプを予測できる他のエンドポイントがあることはよく認識される。ひとつには、米国F. D. A.によって承諾された迅速承認プロセスは、患者利益を予測するようなサロゲートがあることを認める。2003年末の時点で、このプロセス下で承認された16の薬物があり、これらののうちの4つの薬物は完全承認へ進み、すなわち、フォローアップ試験はサロゲートエンドポイントによって予測されるような直接的な患者利益を実証した。固形腫瘍における薬物効果の決定ための重要な1つのエンドポイントは、治療に対する奏効の測定による全身腫瘍組織量の評価である(Therasse et al. Journal of the National Cancer Institute 92(3):205-216 2000)。そのような評価のための臨床基準(RECIST基準)は、固形腫瘍ワーキンググループにおける奏効評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Working Group)(癌の国際的専門家グループ)によって発布された。全身腫瘍組織量に対する実証された効果を有する薬物は、RECIST基準に従う客観的奏効によって示されるように、適切な対照群と比較して直接的な患者利益を最終的に生ずる傾向がある。前臨床設定において、全身腫瘍組織量は評価および立証することが一般により簡単である。前臨床試験を臨床設定へ移すことができるという点で、前臨床モデルにおいて生存延長を生ずる薬物は、最も高い期待される臨床的有用性を有する。臨床治療に対する陽性奏効を生ずることと類似して、前臨床設定において全身腫瘍組織量を減少させる薬物は、その疾患に有意な直接的な効果もまた有することができる。生存の延長は制癌剤治療からの最も必要とされる臨床転帰であるが、臨床的有用性を持つ他の利益が存在し、全身腫瘍組織量の減少(それは疾患進行の遅延、生存の延長または両方に相関する)が、直接的な利益をもたらし、臨床効果を有することもまた明らかである。(Eckhardt et al. 発展的治療:標的化化合物の臨床試験デザインの成功および失敗(Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds);ASCO教養書(Educational Book)、第39回年次会議、2003年、209〜219ページ)。
【0074】
本発明は、細胞傷害性分析、およびヒト癌の動物モデルにおける効果によって同定された、AR75A105.8の開発および使用について記述する。本発明は、特異的にCD63分子上に存在する1つまたは複数のエピトープに結合し、さらにそのままの抗体として正常細胞ではなく悪性腫瘍細胞に対するインビトロの細胞傷害特性を有し、それはさらにそのままの抗体として直接腫瘍増殖の阻害を仲介する試薬について記述する。さらなる進歩は、腫瘍増殖阻害を達成するために、同種抗原マーカーを発現する標的腫瘍および癌治療の他の陽性のエンドポイントへのこのような抗癌抗体の使用である。
【0075】
すべてにおいて、本発明は、投与した場合に、哺乳類において抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させることができる治療剤のための標的としてのAR75A105.8抗原の使用を教示する。本発明は、哺乳類において抗原を発現する癌の全身腫瘍組織量を減少させるために、それらの抗原を標的とする、CDMAB(AR75A105.8)、およびそれらの誘導体、およびその抗原結合フラグメント、および細胞性細胞傷害を誘導するそのリガンドの使用もまた教示する。更に、本発明は、診断、治療法の予測、およびこの抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳類の予後のために有用な癌細胞のAR75A105.8抗原の検出の使用もまた教示する。
【0076】
したがって、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞株ならびに該ハイブリドーマ細胞株がコードする対応する単離モノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントを単離するために、特定の個人に由来する癌細胞または1つまたは複数の特定の癌細胞株に対して作製された癌性疾患修飾抗体(CDMAB)(このCDMABは癌細胞について細胞傷害性であるが、同時に非癌細胞に対して比較的毒性がない)を産生するための方法を利用することである。
【0077】
本発明の追加の目的は、癌性疾患修飾抗体、リガンドおよびその抗原結合フラグメントを教示することである。
【0078】
本発明のさらなる目的は、細胞傷害が抗体依存性細胞毒性を介して仲介される癌性疾患修飾抗体を産生することである。
【0079】
さらに本発明の追加の目的は、細胞傷害が補体依存性細胞毒性を介して仲介される癌性疾患修飾抗体を産生することである。
【0080】
さらに本発明のさらなる目的は、細胞傷害が細胞の化学結合の加水分解を触媒する能力の機能である、癌性疾患修飾抗体を産生することである。
【0081】
本発明のさらにさらなる目的は、癌の診断、予後およびモニターのための結合分析のために有用な癌性疾患修飾抗体を産生することである。
【0082】
本発明の他の目的および利点は、実例および実施例として本発明の特定の実施形態が示される以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
特許または出願ファイルは、カラーで実施された少なくとも1つの図面を含む。1つまたは複数のカラー図面を備えたこの特許または特許出願公開のコピーは、必要な料金の請求および支払いと同時に官庁によって提供される。
【図1】細胞株のA549、NCI−H23、NCI−H460、MB−231およびHs888.Luに対するハイブリドーマ上清の細胞傷害のパーセンテージおよび結合レベルを比較した図である。
【図2】細胞傷害分析における、AR75A105.8vs陽性対照および陰性対照を比較した図である。
【図3】癌細胞株および正常細胞株に対するAR75A105.8および抗EGFRの対照の結合を表わした図である。データーは、アイソタイプ対照を上回って何倍増加したかとして平均蛍光強度を示すように作表される。
【図4】いくつかの癌細胞株および非癌細胞株に対して向けられたAR75A105.8抗体および抗EGFR抗体の代表的なFACSヒストグラムを含む図である。
【図5】予防的Lovo結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対するAR75A105.8の効果を実証した図である。垂直の破線は、抗体が投与された期間を示す。データーポイントは平均+/−標準誤差を表わす。
【図6】予防的Lovo結腸癌モデルにおいて、体重に対するAR75A105.8の効果を実証した図である。データーポイントは平均+/−標準誤差を表わす。
【図7】MDA−MB−231(レーン1)およびBxPC−3(レーン4)細胞株の全膜画分ならびにPC−3(レーン2)およびCCD−27sk(レーン3)細胞株の全細胞溶解物から得られたサンプルのウエスタンブロットを示した図である。ブロットは抗体AR75A105.8および1A245.6をプローブとした。
【図8】7BD−33−11A(レーン1)、AR75A105.8(レーン2)、IgG1アイソタイプ対照(レーン3)との免疫沈降によって調製された、MDA−MB−231細胞株の全膜画分からの免疫複合体のウエスタンブロットを示した図である。重複したブロットは、抗体7BD−33−11A(左側パネル)、抗体AR75A105.8(中央パネル)およびIgG1アイソタイプ対照抗体(右側パネル)をプローブとした。
【図9】ヒト組換え融合コンストラクトGST−EC2(CD63)のウエスタンブロットを示した図である。ブロットの各々のレーンは、7BD−33−11A(レーン2)、H460−22−1(レーン3)、1A245.6(レーン4)、7BDI−58(レーン5)、7BDI−60(レーン6)、AR51A994.1(レーン7)、AR75A 105.8(レーン8)、ならびに陰性対照H460−16−2(抗CD44;レーン1)およびアイソタイプ対照抗体(レーン9、10)をプローブとした。
【発明を実施するための形態】
【0084】
一般に、以下の単語または語句は、要約、記述、実施例、請求項に使用された場合、示された定義を有する。
【0085】
用語「抗体」は最も広い意味に使用され、例えば、単一のモノクローナル抗体(アゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、および中和抗体、脱免疫化抗体、マウス抗体、キメラ化抗体またはヒト化抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を備えた抗体組成物、一本鎖抗体、免疫コンジュゲートおよび抗体のフラグメントを具体的には包含する(以下参照)。
【0086】
本明細書において使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、少量で存在できる天然に存在する可能な変異を除いて同一である。単一抗原部位に対して向けられるモノクローナル抗体は非常に特異的である。更に、ポリクローナル抗体調製品(それらは異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含む)とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定基に対して向けられるものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入せずに合成されるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に抗体の均質集団から得られるような抗体の性質を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすることとして解釈することができない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al. , Nature, 256:495 (1975)によって最初に記述された、ハイブリドーマ(マウスまたはヒト)法によって作製できるか、または組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照)によって作製できる。例えば、「モノクローナル抗体」は、Clackson et al. , Nature, 352:624-628 (1991) and Marks et al. , J. Mol. Biol, 222:581 -597 (1991)中に記載される技術を使用するファージ抗体ライブラリーからもまた単離できる。
【0087】
「抗体フラグメント」は、抗原結合またはその可変領域を好ましくは含む、完全な形の抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例は、全長抗体よりも小さい、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント;ダイアボディ;直線状抗体;一本鎖抗体分子;抗体フラグメントから形成された一本鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、組換えタンパク質および多重特異性抗体を含んでいる。
【0088】
「完全な形の」抗体は、軽鎖定常ドメイン(C)および重鎖定常ドメイン、C1、C およびC3に加えて抗原を結合する可変領域も含む1つである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型でありえる。好ましくは、完全な形の抗体は1つまたは複数のエフェクター機能を有する。
【0089】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、完全な形の抗体は異なる「クラス」に割り当てることができる。5つの主要なクラス(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)の完全な形の抗体があり、これらのうちのいくつかのものは、「サブクラス」(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgA2)の中へさらに分けることができる。異なるクラスの抗体に対応する、重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0090】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異型Fc領域)に起因するそれらの生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例は、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーション、などを含む。
【0091】
「抗体依存性細胞性細胞傷害」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞上の結合された抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞仲介性反応を指す。ADCCの仲介ための一次細胞(NK細胞)はFcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Aram. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464ページの表3中に要約される。対象となる分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号中に記載されるようなインビトロのADCC分析を実行できる。そのような分析のための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいまたはその上に、対象となる分子のADCC活性は、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)で開示されるような動物モデルにおいてインビボで評価さできる。
【0092】
「エフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、細胞は少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを仲介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞および好中球;好ましくはPBMCおよびNK細胞を含む。エフェクター細胞は、その天然源から(例えば本明細書において記述されるような血液またはPBMCから)単離できる。
【0093】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFe領域に結合する受容体についての記述に使用される。好ましいFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体を結合し(γ受容体)、これらの受容体の対立遺伝子変異型およびオルタナティブスプライスされた形態を含む、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIのサブクラスの受容体を含んでいるものである。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)を含む(総説M. In Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel et al, Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説される。今後同定されるものを含む他のFcRは、用語「FcR」により本明細書において包含される。この用語は、新生仔受容体(胎仔への母体のIgGの移行のための関与するFcRn)もまた含む(Guyer et al, J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al. , Eur. J. Immunol. 24:2429 (1994))。
【0094】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、分子が補体の存在下において標的を溶解する能力を指す。補体活性化経路は、同種抗原と共に複合体を形成した分子(例えば抗体)への補体系の第1の成分(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するために、CDC分析(例えばGazzano-Santoro et al, J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)中に記載されていたように)を実行できる。
【0095】
用語「可変」は、可変ドメインの特定の部分が抗体中の配列において広く異なり、特定の抗原について各々の特定の抗体の結合および特異性に使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインの全体にわたって均一に分布しない。それは、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方中の超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのうちのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々4つのFRを含み、このFRは、大部分がβ−シート立体配置をとり、接続ループを形成しある場合には>シート構造の一部を形成する3つの超可変領域によって結合される。各鎖中の超可変領域はFRによって隣接して保持され、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al、免疫学的に興味のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第5版、公衆衛生サービス、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド(1991)を参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することには直接関与しないが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
【0096】
本明細書において使用された場合、用語「超可変領域」は、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabat el al. 、免疫学的に興味のあるタンパク質の配列、第5版、公衆衛生局、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド(1991))、および/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基 (例えば軽鎖可変ドメイン中の残基2632(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901 -917 (1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書において定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。抗体のパパイン消化は、各々が一つの抗原結合部位を備えた「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および残りの「Fc」フラグメント(その名称は容易に結晶化する能力を反映する)を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しており、抗原をまだ架橋することができるF(ab’)フラグメントをもたらす。
【0097】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含んでいる最小の抗体フラグメントである。この領域は、緊密な非共有結合性会合で、1つの重鎖および1つの軽鎖の可変ドメインの二量体からなる。この立体配置において、V−V二量体の表面上の抗原結合部位を定義するように各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用する。まとめて、6つの超可変領域は抗体に抗原を結合する特異性を付与する。しかしながら、一つの可変ドメイン(または抗原について特異的な3つの超可変領域のみしか含まない、Fvの半分)でさえ、全体の結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。Fabフラグメントは、さらに軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含んでいる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数残基の追加によって、Fabフラグメントとは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも1つの遊離チオール基を持つFab’についての本明細書における名称である。F(ab’)抗体フラグメントは、それらの間にヒンジシステインを有するペアのFab’フラグメントとしてもともと産生された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングもまた公知である。
【0098】
任意の脊椎動物種からの抗体の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に別個のタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0099】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、抗体のVおよびVのドメインを含み、これらのドメインは一つのポリペプチド鎖で存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のために所望される構造の形成を可能にする、VドメインとVドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの総説については、モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)、113 巻、Rosenburg and Moore編、シュプリンガー・フェアラーク(Springer−Verlag)、ニューヨーク、269〜315ページ、1994年中のPluckthunを参照。
【0100】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を備えた低分子抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖(V−V)中に可変軽鎖ドメイン(V)に結合された可変重鎖ドメイン(V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合できないほど短いリンカー使用することによって、ドメインはもう一つの鎖の相補的なドメインと強制的にペアにさせられて、2つの抗原結合部位を生ずる。ダイアボディは、例えばEP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)中でより完全に記載されている。
【0101】
「単離」抗体とは、同定され、その天然環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然環境の混入成分は、抗体のための診断用使用または治療用使用を妨害し、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性の溶質を含みうる材料である。抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、単離抗体は組換え細胞内のその場の抗体を含んでいる。通常は、しかしながら、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されるだろう。
【0102】
対象となる抗原(例えばCD63抗原性部分)に「結合する」抗体とは、抗体が抗原を発現する細胞を標的とする治療用薬剤または診断用薬剤として有用であるように、その抗原に十分な親和性で結合できる抗体である。抗体がCD63抗原性部分を結合する抗体である場合、それは通常、他の受容体とは対照的にCD63抗原性部分を優先的に結合し、非特異的Fc接触などの偶発的な結合、または他の抗原に一般的な翻訳後修飾への結合を含んでおらず、他のタンパク質と有意に交差反応しない抗体でありうる。対象となる抗原を結合する抗体の検出のための方法は、当技術分野において周知であり、FACS、細胞ELISAおよびウエスタンブロットなどの分析を含むことができるが、これらに限定されない。
【0103】
本明細書において使用されるように、表現「細胞」、「細胞株」および「細胞培養」は、同じ意味で使用され、そのような名称はすべて子孫を含む。計画的または偶然の変異のために、すべての子孫のDNAも内容が正確に同一だとは限らないこともまた理解される。もともと形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異子孫が含まれている。別の名称が意図される場合には、それは文脈から明らかだろう。
【0104】
「治療」は、療法的治療および予防的または防止的な対策の両方を指し、その目的は、標的とされた病理症状または障害を防止または減速(減少)させることである。治療を必要とするものは、障害を有する傾向のあるものに加えて、既に障害のあるものまたは障害が防止されるべきものを含んでいる。従って、本明細書において治療される哺乳類は、障害を有していると診断されるか、または罹患しやすいか、または障害に感受性があるだろう。
【0105】
「癌」、「癌性」という用語は、無秩序な細胞増殖または死によって典型的には特徴づけられる、哺乳類における生理学的病態を指すか、または記述する。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性疾患を含むが、これらに限定されない。そのような癌のより多くの特定の例は、扁平上皮癌(例えば上皮性扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵臓癌、グリア芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌に加えて、頭頸部癌を含んでいる。
【0106】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学化合物である。化学療法剤の例は、チオテパおよびシクロスフォスファミド(cyclosphosphamide)(サイトキサン(CYTOXAN)(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa)などのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスファオルアミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチルオロメラミン(trimethyl olomelamine)を含むエチレンイミン類およびメチルアメラミン(methylamelamine)類;クロラムブチル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード類;カルマスティン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスウレア(nitrosureas)類;アクラシノマイシン(aclacinomysin)類、アクチノマイシン、authramycin、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジオリピン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質 ;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎性製剤;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸リプレニッシャー;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシッド(「アラ−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類(例えばパクリタキセル(タキソール(TAXOL)(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ・オンコロジー(Bristol−Myers Squibb Oncology)社、プリンストン、ニュージャージー)およびドセタセル(タキソテール(TAXOTERE)(登録商標)、アベンティス(Aventis)社、ローヌ・プーラン・ローラー(Rhone−Poulenc Rorer)社、アントニー、フランス));クロラムブチル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン;(DMFO)レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲンなどの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体もまたこの定義に含まれる。
【0107】
治療の目的のための「哺乳類」は、ヒト、マウス、SCIDマウスもしくはヌードマウスまたはマウスの系統、家庭動物および家畜、ならびにヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどのような動物園動物、競技動物またはペット動物を含む、哺乳類として分類される任意の動物を指す。好ましくは、本明細書における哺乳類はヒトである。
【0108】
「オリゴヌクレオチド」は、既知の方法(1988年5月4日に出版されたEP266,032に記載されるような固相技術を使用するホスホトリエステル化学、亜リン酸化学、またはホスホアミダイト化学など、またはFroehler et al. , Nucl. Acids Res. , 14:5399-5407, 1986. によって記述されるようなデオキシリボヌクレオシドHホスホナート中間体を介するもの)によって、化学的に合成される短い、一本鎖または二本鎖のポリデオキシリボヌクレオチドである。次に、それらはポリアクリルアミドゲル上で精製される。
【0109】
特別の指示のない限り、本明細書において使用される場合の用語「CD63抗原性部分」は、テトラスパニンファミリーのタイプIII膜タンパク質を指し、メラノーマ1抗原、眼メラノーマ関連抗原、メラノーマ関連抗原ME491、リゾソーム関連膜糖タンパク質3、グラニュロフィジン、メラノーマ関連抗原MLA1もまた指す。
【0110】
「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一であるかまたはこれらに相同であるが、鎖の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の中の対応する配列と同一であるかまたはこれらに相同である免疫グロブリンであり、それに加えて、それらが所望される生物学的活性を示す限りそのような抗体のフラグメントである(米国特許第4,816,567号およびMorrison et al, Proc. Natl. Acad. ScL USA, 81 :6851-6855 (1984))。
【0111】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab)または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である。大部分については、ヒト化抗体は、所望される特異性、親和性および受容能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によってレシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が置き換えされる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの実例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基によって置き換えされる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、移入されたCDRまたはFRの配列中にも見出されない残基を含むことができる。これらの修飾はさらに抗体性能を改良し最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、すべてまたは実質的にすべてのFR残基がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR残基である、実質的にすべての少なくとも1つの(典型的には2つの)可変ドメインを含むだろう。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンのFc)の少なくとも一部もまた含むだろう。
【0112】
「脱免疫化」抗体は、規定の種に対して、非免疫原性であるかまたは免疫原性が少ない免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体への構造的な変化によって達成することができる。当業者に公知である任意の脱免疫化技術を用いることができる。抗体の脱免疫化のために適切な1つの技術は、例えば2000年6月15日に出版されたWO00/34317中に記載されている。
【0113】
「相同性」は、配列をアライメントさせ、必要であるならば最大の%相同性を達成するためにギャップを導入した後に、同一である、アミノ酸配列変異型中の残基のパーセンテージとして定義される。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは、当技術分野において周知である。
【0114】
「アポトーシス」を誘導する抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化、および/または膜小胞の形成(アポトーシス小体と呼ばれる)によって確定されるようなプログラム細胞死を誘導するものである。
【0115】
本明細書の全体にわたって、ハイブリドーマ細胞株に加えて、それから産生される単離モノクローナル抗体は、あるいはそれらの内部名称(AR75A105.8)または寄託名称(IDAC280306−03)によって呼ばれる。
【0116】
本明細書において使用されるように、「抗体−リガンド」は、標的抗原についての結合特異性を示す部分を含み、それは、完全な形の抗体分子、抗体フラグメント、および少なくとも抗原結合領域またはその一部(すなわち抗体分子の可変部分)を有する任意の分子(例えば、Fv分子、Fab分子、Fab’分子、F(ab’)分子、二重特異性抗体、融合タンパク質)、またはIDAC280306−03と呼ばれるハイブリドーマ細胞株によって産生される単離モノクローナル抗体が結合する抗原(IDAC280306−03抗原)を特異的に認識および結合する、任意の遺伝子操作された分子である。
【0117】
本明細書において使用されるように、「癌性疾患修飾抗体」(CDMAB)は、例えば全身腫瘍組織量を減少させることまたは癌を持った個人の生存を延長することによって、患者に有益な方法で癌性疾患プロセスを修飾するモノクローナル抗体、およびその抗体−リガンドを指す。
【0118】
本明細書において使用されるように、「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する、分子の一部を意味する。
【0119】
本明細書において使用されるように、「競合的に阻害する」は、IDAC280306−03と呼ばれるハイブリドーマ細胞株によって産生されたモノクローナル抗体(IDAC280306−03抗体)が向けられる決定基を、従来のレシプロカル抗体競合分析を使用して、認識および結合できること意味する。(Belanger L. , Sylvestre C. and Dufour D. (1973)競合的なサンドイッチ手順によるαフェトプロテインのための酵素免疫測定法(Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures)。Clinica Chimica Acta 48, 15)。
【0120】
本明細書において使用されるように、「標的抗原」はIDAC280306−03抗原またはその一部である。
【0121】
本明細書において使用されるように、「免疫コンジュゲート」は、細胞毒素、放射性医薬品、酵素または毒素または抗腫瘍薬物または治療剤に対して、化学的にまたは生物学的に結合された、抗体などの任意の分子またはCDMABを意味する。抗体またはCDMABは、その標的を結合できる限り、分子に沿った任意の位置で、細胞毒素、放射性医薬品、抗腫瘍薬物または治療剤に結合できる。免疫コンジュゲートの例は、抗体毒素化学物質コンジュゲートおよび抗体−毒素融合タンパク質を含む。
【0122】
本明細書において使用されるように、「融合タンパク質」は、生物学的活性のある分子(例えば毒素、酵素、タンパク薬物)に抗原結合領域が結合される、任意のキメラタンパク質を意味する。
【0123】
本明細書において記述される本発明をより完全に理解するために、以下の記述が示される。
【0124】
本発明は、特異的にIDAC280306−03抗原を認識および結合するCDMAB(すなわちIDAC280306−03 CDMAB)を提供する。
【0125】
アクセッション番号280306−03としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生される単離モノクローナル抗体のCDMABは、それがハイブリドーマIDAC280306−03によって産生される単離モノクローナル抗体のその標的抗原への免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有する限り、任意の形態でありうる。したがって、IDAC280306−03抗体として同じ結合特異性を有する任意の組換えタンパク質(例えば、抗体が、リンホカインまたは腫瘍増殖阻害因子などの第2のタンパク質と組み合わされる融合タンパク質)は、本発明の範囲内である。
【0126】
本発明の1つの実施形態において、CDMABはIDAC280306−03抗体である。
【0127】
他の実施形態において、CDMABは、IDAC280306−03抗体の抗原結合領域を有するFv分子(一本鎖Fv分子などの)、Fab分子、Fab’分子、F(ab’)分子、融合タンパク質、二重特異性抗体、ヘテロ抗体または任意の組換え分子でありえる抗原結合フラグメントである。本発明のCDMABは、IDAC280306−03モノクローナル抗体が向けられるエピトープに対して向けられる。
【0128】
本発明のCDMABは、誘導体分子を産生するように、すなわち分子内のアミノ酸修飾によって修飾できる。化学的修飾もまた可能かもしれない。
【0129】
誘導体分子はポリペプチドの機能特性を保持する、すなわち、そのような置き換えがある分子は、IDAC280306−03抗原またはその一部へのポリペプチドの結合をまだ可能とするだろう。
【0130】
これらのアミノ酸置き換えは、「保存的なもの」として当技術分野において公知のアミノ酸置き換えを含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0131】
例えば、立体配座またはタンパク質の機能のいずれかを改変せずに、タンパク質において、「保存的なアミノ酸置換」とされる特定のアミノ酸置き換えがしばしば作製されることは、タンパク質化学のよく確立された原理である。
【0132】
そのような変更は、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のうちのいずれかをこれらの疎水性アミノ酸の任意の他のもので置換すること;グルタミン酸(E)でアスパラギン酸(D)を置換することおよびその逆;アスパラギン(N)でグルタミン(Q)を置換することおよびその逆;ならびにスレオニン(T)でセリン(S)を置換することおよびその逆、を含んでいる。他の置き換えも、特定のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造におけるその役割に依存して、保存的であると考えることができる。例えば、アラニン(A)およびバリン(V)がそうであるように、グリシン(G)およびアラニンはしばしば交換可能でありえる。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシン、および時にはバリンと交換できる。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴はその荷電であり、これらの2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要でない位置においてしばしば交換可能である。なお、他の変更は、特定の環境において「保存的である」と考えることができる。
【0133】
抗体を考慮して、当業者は競合的に阻害するCDMAB(例えば同じエピトープを認識する抗体である競合抗体)を産生することができる(Belanger et al.,1973)。1つの方法は、抗体によって認識される抗原を発現する免疫原による免疫を要する。サンプルは組織、単離タンパク質または細胞株を含むが、これらに限定されない。競合分析を使用して、生じるハイブリドーマをスクリーニングすることができ、それは、ELISA、FACSまたは免疫沈降などの試験抗体の結合を阻害する抗体を同定する分析である。別の方法では、前記抗原を認識する抗体のためのファージディスプレーライブラリーの使用および選別を行なうことが可能であった(Rubinstein et al.,2003)。いずれの場合においても、ハイブリドーマは、その標的抗原に対してもとの抗体が結合することを競合するそれらの能力に基づいて選択される。したがって、そのようなハイブリドーマは、もとの抗体と同じ抗原を認識する特性を持ち、より特異的に同じエピトープを認識するだろう。
実施例1
ハイブリドーマ産生−ハイブリドーマ細胞株AR75A105.8
【0134】
ハイブリドーマ細胞株AR75A105.8は、ブダペスト条約に従って、カナダ国際寄託当局(IDAC)、微生物学事務局、カナダ保健省、1015アーリントン街、ウイニペグ、マニトバ、カナダ、R3E 3R2に、2006年3月28日に、アクセッション番号280306−03の下で寄託された。37CFR 1.808に従って、寄託者は、特許の付与に際して、公衆に対する寄託材料の入手に関して課されたすべての制限が取消不能の形で削除されることを保証する。寄託場所が生存可能なサンプルを調合することができないならば、寄託は置き換えられるだろう。
【0135】
抗癌抗体AR75A105.8を産生するハイブリドーマを産生するために、凍結ヒト肺明細胞癌腫瘍組織(ゲノミクス・コラボレイティブ(Genomics Collaborative)社、ケンブリッジ、マサチューセッツ)の単離細胞懸濁物をPBS中に調製した。イムイージー(IMMUNEASY)(商標)(キアゲン(Qiagen)社、ヴェンロー、オランダ)アジュバントを、緩やかな混合によって使用のために調製した。5〜7週令のBALB/cマウスを、50マイクロリットルの抗原アジュバント中の200万細胞の皮下注射によって免疫した。免疫マウスの腹腔内ブーストのために、直近に調製した抗原アジュバントを50マイクロリットル中の200万細胞で、初回免疫の2週間後および5週間後に使用した。最後の免疫の3日後に、脾臓を融合のために使用した。NSO−Iミエローマパートナーと単離脾細胞を融合させることによって、ハイブリドーマを調製した。融合細胞の上清を、ハイブリドーマのサブクローンから検査した。
【0136】
ハイブリドーマ細胞によって分泌された抗体がIgGまたはIgMアイソタイプであるかを決定するために、ELISA分析を用いた。100マイクロリットル/ウェルのヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を、コーティングバッファー(0.1M炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH9.2〜9.6)中の2.4マイクログラム/mLの濃度で、一晩4℃でELISAプレートに加えた。プレートを、洗浄バッファー(PBS+0. 05%ツイーン)中で3度洗浄した。100マイクロリットル/ウェルのブロッキングバッファー(洗浄バッファー中の5%ミルク)を、室温で1時間プレートに加え、次に洗浄バッファー中で3度洗浄した。100マイクロリットル/ウェルのハイブリドーマ上清を室温で加え、プレートを1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファーにより3度洗浄し、ヤギ抗マウスIgGまたはIgMホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(1%のミルク含有PBS中で希釈)のいずれかの1/100,000の希釈を、100マイクロリットル/ウェルで加えた。室温で1時間プレートをインキュベート後に、プレートを洗浄バッファーにより3度洗浄した。100マイクロリットル/ウェルのTMB溶液を室温で1〜3分間インキュベートした。50マイクロリットル/ウェルの2MのHSOの追加により発色反応を終了させ、パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)社HTS7000プレートリーダーにより450nmでプレートを読み取った。図1中に示されるように、AR75A105.8ハイブリドーマは主としてIgGアイソタイプの抗体を分泌した。
【0137】
ハイブリドーマ細胞によって分泌された抗体のサブクラスを決定するために、アイソタイプ分類実験を、マウスモノクローナル抗体アイソタイプ分類キット(ハイカルト・バイオテクノロジー(HyCult Biotechnology)社、フロントストラート、オランダ)を使用して実行した。500マイクロリットルのバッファー溶液を、ラット抗マウスサブクラス特異的抗体含有試験ストリップに加えた。500マイクロリットルのハイブリドーマ上清を試験管に加え、緩やかな撹拌によって沈めた。捕捉されたマウス免疫グロブリンを、コロイド粒子に結合した二次ラットモノクローナル抗体によって直接検出した。これらの2つのタンパク質の組合せは、アイソタイプを分析するために使用される可視シグナルを生ずる。抗癌抗体AR75A105.8はIgG1、κアイソタイプである。
【0138】
1ラウンドの限界希釈後に、細胞ELISA分析で、ハイブリドーマ上清は標的細胞に対して結合した抗体について検査された。3つのヒト肺癌細胞株、1つのヒト乳癌細胞株および1つのヒト正常肺細胞株:それぞれ、A549、NCI−H23、NCI−H460−23、MDA−MB−231(MB−231)およびHs888. Luを検査した。プレーティングした細胞を使用の前に固定した。プレートを、MgClおよびCaClを含有するPBSにより室温で3度洗浄した。100マイクロリットルのPBS中で希釈された2%パラホルムアルデヒドを、室温で10分間各ウェルに加え、次に廃棄した。プレートを、MgClおよびCaClを含有するPBSにより室温で3回再び洗浄した。100マイクロリットル/ウェルの洗浄バッファー(PBS+0. 05%のツイーン)中の5%ミルクにより室温で1時間ブロッキングを行った。プレートを洗浄バッファーにより3度洗浄し、100マイクロリットル/ウェルのハイブリドーマ上清を室温で1時間加えた。プレートを洗浄バッファーにより3回洗浄し、1/25,000の希釈の100マイクロリットル/ウェルのホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体(1%ミルク含有PBS中で希釈)を加えた。室温での1時間のインキュベーション後に、プレートを洗浄バッファーにより3回洗浄し、100マイクロリットル/ウェルのTMB基質を室温で1〜3分間インキュベートした。50マイクロリットル/ウェルの2MのHSOにより反応を終了し、パーキン・エルマー社HTS7000プレートリーダーにより450nmでプレートを読み取った。図1中に作表されるような結果は、検査される細胞株に結合しないことが以前に示されている自家IgGアイソタイプ対照と比較して、バックグラウンドを上回った倍数として表現された。ハイブリドーマAR75A105.8からの抗体は、検査された細胞株のすべてに対して検出可能な結合を示した。
【0139】
抗体結合のための検査と併用して、ハイブリドーマ上清の細胞傷害効果を細胞株:A549、NCI−H23、NCI−H460−23、MDA−MB−231(MB−231)およびHs888.Luにおいて検査した。カルセインAMをモレキュラー・プローブス(Molecular Probes)社(ユージーン、オレゴン)から入手した。以下に概説された変更で製造者の使用説明書に従って、分析を実行した。分析の前に、細胞を所定の適切な密度でプレーティングした。2日後に、ハイブリドーママイクロタイタープレートからの100マイクロリットルの上清を細胞プレートに移し、5%COインキュベーター中で5日間インキュベートした。陽性対照として取り扱われるウェルを空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN)またはシクロヘキシミドを加えた。5日間の処理後に、次にプレートを逆さにすることによって空にし、水分を吸い取って乾燥させた。MgClおよびCaClを含有する室温のDPBS(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)を、マルチチャンネルスクイーズボトルから各ウェルの中へ分注し、3回タッピングし、逆さにすることによって空にし、次に水分を吸い取って乾燥させた。MgClおよびCaClを含有するDPBS中で希釈した50マイクロリットルの蛍光カルセイン色素を各ウェルに加え、5%COインキュベーター中で37℃30分間インキュベートした。プレートをパーキン・エルマー社HTS7000蛍光プレートリーダーで読み取り、データーをマイクロソフト(Microsoft)社エクセルで解析した。結果を図1中に示す。AR75A105.8ハイブリドーマからの上清は、A549細胞上で19%の特異的な細胞傷害を生じた。これは、陽性対照のアジ化ナトリウムおよびシクロヘキシミドにより得られた細胞傷害のそれぞれ63%および33%だった。11%の特異的な細胞傷害がNCI−H23細胞上でも観察された。これは、陽性対照のアジ化ナトリウムおよびシクロヘキシミドにより得られた細胞傷害のそれぞれ27%および55%だった。さらに、17%の特異的な細胞傷害がNCI−H460−23細胞上で観察された。これは、陽性対照のアジ化ナトリウムおよびシクロヘキシミドにより得られた細胞傷害のそれぞれ26%および106%だった。図1からの結果は、AR75A105.8の細胞傷害効果が癌細胞タイプに対する結合レベルに比例しないことを実証した。検査されたすべての細胞株に対する検出可能な結合、およびA549、NCI−H23およびNCI−H460−23細胞については細胞傷害があった。図1中に示されるように、AR75A105.8はHs888.Lu(正常なヒト肺細胞株)においては細胞傷害を生じなかった。公知の非特異的細胞傷害剤シクロヘキシミドおよびNaNは一般に予想されるような細胞傷害を生じた。
実施例2
インビトロの細胞傷害および結合
【0140】
AR75A105.8モノクローナル抗体は、回収および再播種を2回/週で行なって、CL−1000フラスコ(BDバイオサイエンス(Biosciences)社、オークヴィル、オンタリオ)中のハイブリドーマの培養によって産生された。プロテインGセファロース4ファースト・フロー(Fast Flow)(アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)社、ベ・デュルフェ、ケベック)による標準抗体精製手順は以下の通りである。脱免疫化モノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラ化モノクローナル抗体、またはマウスモノクローナル抗体を利用することは、本発明の範囲内である。
【0141】
AR75A105.8を、細胞毒性分析(図2)において、2つの陽性対照(抗EGFR抗体(C225、IgGl、κ、5マイクログラム/mL、セダレーン(Cedarlane)社、ホーンビー、オンタリオ)およびシクロヘキシミド(CHX、0.5マイクロモル、シグマ(Sigma)社、オークヴィル、オンタリオ))および1つの陰性アイソタイプ対照(1B7.11(抗TNP)、自家精製した)と比較した。前立腺癌(PC−3)および乳癌(MB−231)、ならびに皮膚(CCD−27sk)および肺(Hs888.Lu)からの非癌細胞株を検査した。細胞はすべてATCC、マナッサス、バージニアから入手した。カルセインAMはモレキュラー・プローブス社(ユージーン、オレゴン)から入手した。以下に概説された変更で製造者の使用説明書に従って、分析を実行した。分析の前に、細胞を所定の適切な密度でプレーティングした。2日後に、100マイクロリットルの精製抗体または対照を培地中で希釈し、次に細胞プレートに移し、5%COインキュベーター中で5日間インキュベートした。次にプレートを逆さにすることによって空にし、水分を吸い取って乾燥させた。MgClおよびCaClを含有する室温のDPBSを、マルチチャンネルスクイーズボトルから各ウェルの中へ分注し、3回タッピングし、逆さにすることよって空にし、次に水分を吸い取って乾燥させた。MgClおよびCaClを含有するDPBS中で希釈した50マイクロリットルの蛍光カルセイン色素を各ウェルに加え、5%COインキュベーター中で37℃30分間インキュベートした。プレートはパーキン・エルマー社HTS7000蛍光プレートリーダーで読み取り、データーをマイクロソフト社エクセルで解析し、結果を図2中に示した。各抗体については、三重で検査された4つの実験において観察された平均細胞傷害に基づいたスコアは5〜50の間であり、分析間で観察されたばらつきに基づいたスコアは25〜100の間のであった。これらの2つのスコア(細胞傷害スコア)の合計は図2中に示される。55以上の細胞傷害スコアは、検査された細胞株について陽性であると考えられた。アイソタイプ陰性対照およびバッファー陰性対照の両方と比較して、AR75A105.8抗体はPC−3前立腺癌細胞株において特異的な細胞傷害を生じた。AR75A105.8は、MB−231乳癌細胞タイプにおいては陽性の細胞傷害スコアを生じなかった。これはAR75A105.8クローンのハイブリドーマ上清からのデーターと合致し、それはさらにMB−231癌細胞株に対して特異的な細胞傷害を検出しなかった(実施例1を参照)。重要なことに、AR75A105.8は、陰性対照と比較して、CCD−27skまたはHs888.Luなどの非癌細胞株に対して有意な細胞傷害を生ぜず、抗体が癌細胞に向けて特異的な細胞傷害効果を有することを示唆する。1B7.11についての細胞傷害スコアは複数の実験からの平均であった。化学的細胞傷害剤は、複数の細胞株に対して期待される細胞傷害を誘導した。
【0142】
前立腺癌(PC−3)および乳癌(MB−231)、ならびに皮膚(CCD−27sk)および肺(Hs888.Lu)からの非癌細胞株へのAR75A105.8の結合を、フローサイトメトリー(FACS)によって評価した。細胞は、DPBS(Ca++およびMg++不含有)で最初に細胞単層を洗浄することによりFACSのために調製された。次に細胞培養プレートから細胞を解離するために、細胞解離バッファー(インビトロゲン(Invitrogen)社、バーリントン、オンタリオ)を37℃で使用した。遠心分離して回収した後に、細胞を、MgCl、CaClおよび2%のウシ胎仔血清を含有するDPBS(染色用培地)中に4℃で再懸濁してカウントし、適切な細胞密度に小分けし、遠心して細胞を沈殿させ、試験抗体(AR75A105.8)または対照抗体(アイソタイプ対照、抗EGFR)の存在下において染色培地中に4℃で再懸濁した。30分間氷上で、アイソタイプ対照および試験抗体は20マイクログラム/mLで評価したが、抗EGFRは5マイクログラム/mLで評価した。アレクサ(Alexa)蛍光546−コンジュゲート二次抗体の追加の前に、細胞を染色培地で一回洗浄した。次に染色培地中のアレクサ蛍光546−コンジュゲート抗体を4℃で30分間加えた。次に細胞を最終時として洗浄し、固定培地(1.5%パラホルムアルデヒド含有染色培地)中に再懸濁した。細胞のフローサイトメトリーによる捕捉は、FACSアレイ(FACSarray)(商標)システムソフトウェア(BDバイオサイエンス社、オークヴィル、オンタリオ)を使用するFACSアレイ(商標)上でサンプルを流すことにより評価された。細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)は、FSCおよびSSCの検出器に対する電圧利得および振幅利得の調整により設定された。蛍光(アレクサ−546)チャンネルのための検出器を、細胞がおよそ1〜5ユニットの蛍光強度中央値で均一のピークを有するように、無染色細胞を流すことによって調整した。各サンプルについては、およそ10,000のゲートイベント(染色固定細胞)が、分析のために捕捉され、結果は図3中に示される。
【0143】
図3は、アイソタイプ対照を上回って何倍増加したかを平均蛍光強度で示す。AR75A105.8抗体の代表的なヒストグラムを図4のために編集した。AR75A105. 8は、正常な皮膚細胞株CCD−27sk(2.2倍)に対して弱い結合を示した。AR75A105.8は、前立腺癌細胞株PC−3(15.5倍)、乳癌細胞株MB−231(9.9倍)に対しておよび正常肺細胞株Hs888.Lu(5.4倍)に対してより強い結合を示した。これらのデーターは、検査された癌細胞タイプに対して明らかな結合があったが、前立腺癌細胞株PC−3のみと細胞傷害が関連したという点で、AR75A105.8が機能的特異性を示したことを実証する。これは、結合するということが、その同種抗原の抗体ライゲーションの転帰を必ずしも予測するものではないというさらなる証拠でもあり、自明でない発見だった。これは、異なる細胞における抗体ライゲーションの情況が、単なる抗体結合単独よりもむしろ、細胞傷害を決定することを示唆した。
実施例3
インビボにおけるLovo細胞による腫瘍実験
【0144】
図5および6に関して、4〜6週令の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルの生理食塩水中の100万のヒト結腸癌細胞(Lovo)を首筋に皮下注射して移植した。マウスを、6匹の2つの治療群へ無作為に分けた。移植の翌日に、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaClおよび20mM NaHPOを含む希釈剤によるストック濃縮物からの希釈後に、20mg/kgのAR75A105.8試験抗体またはバッファー対照を、300マイクロリットルの体積で各コホートに対して腹腔内投与した。次に抗体および対照のサンプルを、同じ方式で、研究の期間1週あたり一回投与した。腫瘍増殖を約7日毎に測径器で測定した。抗体を8回注入した後に、研究を完了した。動物の体重は、研究の期間1週あたり一回記録した。研究の終了時に、すべての動物をCCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0145】
AR75A105.8は、ヒト結腸癌の高侵攻性のLovoのインビボの予防的モデルにおいて腫瘍増殖を減少させた。移植56日後に(最後の治療投与6日後に)、AR75A105.8治療群における平均腫瘍容積は、バッファー対照で治療された群における腫瘍容積よりも45%低かった(図5)。この効果は、各群内の動物が少数であるために統計的に有意ではなかった。48日目に(7回の抗体投与後で、動物はまだ治療期間中である)、AR75A105.8による治療は、62%(p=0.0239)の有意な腫瘍増殖阻害をもたらした。
【0146】
研究の全体にわたって毒性についての臨床的症状はなかった。毎週の間隔で測定された体重を、健康および成長障害を代わりに示すものとした。対照群の平均体重は、研究の期間にわたって有意に変化しなかった(図6)。しかしながら、AR75A105. 8治療群の平均体重は、研究の終了時に対照群よりも有意に高かった(56日目;p=0. 024)。この観察は、AR75A105.8治療群において観察される腫瘍容積の低下に関連しているかもしれない。
【0147】
要約すると、AR75A105.8は耐容性が良好であり、このヒト結腸癌異種移植片モデルにおいて全身腫瘍組織量を低下させた。
実施例4
AR75A105.8と抗CD63抗体7BD−33−11Aの間の交差反応性の決定
【0148】
全膜画分のおよび全細胞溶解物のウエスタンブロットからの結果により、モノクローナル抗体AR75A105.8をプローブとした場合、別の抗CD63モノクローナル抗体1A245.6で得られた結果との強い類似性が明らかになった(図7)。前者の抗体がCD63と交差反応するかどうかを決定するために、それを、7BD−33−11A抗CD63抗体またはAR75A105.8のいずれかによりヒト乳癌細胞(MBD−MB−231)の全膜画分から得られる免疫沈降複合体のウエスタンブロットに対するプローブとして使用した。
【0149】
簡潔には、各々が300マイクログラムのMDA−MB−231全膜画分を含む3つの重複したサンプル(600マイクロリットルの1×RIPAバッファー中で0.5mg/mLの最終タンパク質濃度)を、15マイクロリットルの7BD−33−11A、AR75A105.8またはIgG1アイソタイプ対照をコンジュゲートしたプロテインGセファロースビーズと共に4℃で2時間インキュベートした。洗浄後、ビーズを1×の非還元SDS−PAGEサンプルバッファー中で煮沸し、サンプルを10%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動によって解析した。PVDF膜の上への電気的な転写後にブロットは、標準ウエスタンブロット手順に従って、抗体7BD−33−11A、AR75A105.8および1B7.11(IgG1アイソタイプ対照)をプローブとして調べられた。一次抗体はすべて5マイクログラム/mLの濃度で使用された。結果のブロットの画像(図8)から、7BD−33−11AおよびAR75A105.8の両方はそれらのいずれかによって免疫沈降させた抗原と交差反応することが示された。したがって、抗体AR75A105.8は、既知の抗CD63抗体によって免疫沈降させたCD63と交差反応した。
【0150】
AR75A105.8とヒトCD63の間の交差反応性をさらに確認するために、大腸菌(E.coli)で発現されたヒトCD63の最大の細胞外ループの組換えGST融合コンストラクト(GST−EC2)のウエスタンブロット上で、抗体をプローブとして使用した。簡潔には、5マイクログラムの精製組換えGST融合タンパク質を、10%分取SDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動によって解析した。転写後にブロットは、標準ウエスタンブロット手順に従って、AR75A105.8、ならびに抗CD63抗体の7BDI−58、7BD1−60、AR51A994.1、7BD−33−11A、1A245.6およびH460−22−1ならびに抗CD44抗体(クローンH460−16−2)ならびにIgG1およびIgG2aアイソタイプ対照抗体をプローブとして調べられた。一次抗体はすべて5マイクログラム/mLの濃度で使用された。この実験からの結果(図9)は、特異的にヒトCD63の最大の細胞外ループの組換えGST融合コンストラクトとすべての抗体(抗CD44の抗体およびアイソタイプ対照を例外として)が交差反応することを明らかにし、したがってすべての抗体(抗CD44の抗体およびアイソタイプ対照を除いて)がヒトCD63と交差反応することを確証した。
【0151】
証拠の優越性から、CD63の上に存在する1つまたは複数のエピトープのライゲーションを介してAR75A105.8がその癌予防効果を仲介することが示される。AR75A105. 8抗体は、MDA−MB−231細胞などの発現細胞から同種抗原を免疫沈降させるのに使用できることが、実施例4において示された。さらに、AR75A105.8抗体は、FACSまたは細胞ELISAによって示される技術(しかしこれらに限定されない)を利用して、特異的にそれに結合するCD63抗原性部分を発現する細胞および/または組織の検出において使用できることを示すことができた。
【0152】
したがって、他の抗CD63抗体は、CD63抗原の他の形態を免疫沈降させて単離するのに使用でき、抗原もまた同じタイプの分析を使用して抗原を発現する細胞または組織に対するそれらの抗体の結合を阻害することに使用できる。
【0153】
本明細書中で言及された特許および出版物はすべて、本発明が属する当業者のレベルを表す。各々の個別の出版物を参照することによって組み入れられることが特別に個別に示されるように、すべての特許および出版物は、参照することによって本明細書に同程度まで組み入れられる。
【0154】
本発明の特定の形態が示されているが、それが本明細書において記述および示された部分の具体的な形態または構成に限定的でないことが理解されるべきである。様々な変更が本発明の範囲から逸脱せずに行なえることは当業者に明らかであり、本発明が、明細書中に示されたことおよび記載されたことに限定的であると判断することはできない。
【0155】
目的を実行し、述べられた結果および利点に加えて、その中に固有のものを得るのに、本発明がよく適合していることを、当業者は容易に認識するだろう。本明細書において記述された任意のオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生体関連化合物、方法、手順および技術は、現時点での好ましい実施形態の典型であり、例示的であるように意図され、範囲の限定としては意図されない。その中の変更および他の使用は本発明の趣旨内に包含され、添付の請求項の範囲によって定義されることは、当業者には考えつくだろう。本発明は具体的な好ましい実施形態に関連して記述されたが、請求された本発明がそのような具体的な実施形態に過度に限定的であるべきでないことが理解されるに違いない。実際は、当業者にとって明らかな本発明の実行のために記述された形態の様々な修飾は、以下の請求項の範囲内であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセッション番号280306−03としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生された、単離モノクローナル抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体から産生されたヒト化抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体から産生されたキメラ抗体。
【請求項4】
アクセッション番号280306−03としてIDACに寄託された単離ハイブリドーマ細胞株。
【請求項5】
ヒト腫瘍から選択される組織サンプルにおける癌細胞の抗体誘導性細胞性細胞傷害を開始する方法であって、
該ヒト腫瘍からの組織サンプルを提供することと;
アクセッション番号280306−03としてIDACに寄託されたハイブリドーマによって産生される単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを提供し、CDMABがその標的抗原に対する該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害する能力によって特徴づけられることと;
該組織サンプルと、該単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを接触させることと、
を含み;
該組織サンプルと該単離モノクローナル抗体またはそのCDMABの結合が細胞性細胞傷害を誘導する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体のCDMAB。
【請求項7】
請求項2に記載のヒト化抗体のCDMAB。
【請求項8】
請求項3に記載のキメラ抗体のCDMAB。
【請求項9】
細胞傷害性部分、酵素ならびに放射性化合物、および造血性細胞からなる群から選択されたメンバーにコンジュゲートされる、請求項1、2、3、6、7または8のいずれか一項に記載の単離抗体またはそのCDMAB。
【請求項10】
哺乳類においてヒト腫瘍を治療する方法であって、該ヒト腫瘍がアクセッション番号280306−03としてIDACに寄託されたクローンによってコードされた単離モノクローナル抗体またはそのCDMABに対して特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、CDMABはその標的抗原に対する該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害する能力によって特徴づけられ、該哺乳類の全身腫瘍組織量の減少をもたらすのに効果的な量で該モノクローナル抗体またはそのCDMABを該哺乳類に対して投与することを含む方法。
【請求項11】
前記単離モノクローナル抗体が細胞傷害性部分にコンジュゲートされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞傷害性部分が放射性同位元素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記単離モノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記単離モノクローナル抗体またはそのCDMABが抗体依存性細胞性細胞傷害を仲介する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記単離モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記単離モノクローナル抗体がキメラ化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
哺乳類において抗体誘導性細胞性細胞傷害に対して感受性のあるヒト腫瘍を治療する方法であって、該ヒト腫瘍がアクセッション番号280306−03としてIDACに寄託されたクローンによってコードされた単離モノクローナル抗体またはそのCDMABに対して特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現し、CDMABはその標的抗原に対する該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害する能力によって特徴づけられ、該哺乳類の全身腫瘍組織量の減少をもたらすのに効果的な量で該モノクローナル抗体またはその該CDMABを該哺乳類に対して投与することを含む方法。
【請求項18】
前記単離モノクローナル抗体が細胞傷害性部分に対してコンジュゲートされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞傷害性部分が放射性同位体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記単離モノクローナル抗体またはそのCDMABが補体を活性化する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記単離モノクローナル抗体またはそのCDMABが抗体依存性細胞性細胞傷害を仲介する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記単離モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記単離モノクローナル抗体がキメラ化されている、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ヒトCD63に対して特異的結合が可能である単離モノクローナル抗体またはそのCDMABであって、単離モノクローナル抗体またはそのCDMABはIDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105.8によって産生される単離モノクローナル抗体と同様に同じヒトCD63の1つまたは複数のエピトープに反応し、その標的ヒトCD63抗原に対する該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害する能力によって特徴づけられる、該単離モノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項25】
IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105. 8によって産生される単離モノクローナル抗体によって認識されるエピトープと同じ1つまたは複数のエピトープを認識する、単離モノクローナル抗体またはそのCDMABであって、その標的エピトープまたはエピトープに対する該単離モノクローナル抗体の結合を競合的に阻害する能力によって特徴づけられる、該モノクローナル抗体またはそのCDMAB。
【請求項26】
IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105.8によって産生される単離モノクローナル抗体によって特異的に結合されるヒトCD63抗原の少なくとも1つのエピトープを発現するヒト癌性腫瘍を治療するプロセスであって、
該ヒト癌に罹患する個体に対して、IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105.8によって産生される単離モノクローナル抗体によって認識されたエピトープと同じ1つまたは複数のエピトープを認識する少なくとも1つの単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを投与することを含み、
該1つまたは複数のエピトープの結合が全身腫瘍組織量の減少をもたらすプロセス。
【請求項27】
IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105.8によって産生される単離モノクローナル抗体によって特異的に結合されるヒトCD63抗原の少なくとも1つのエピトープを発現するヒト癌性腫瘍を治療するプロセスであって、
該ヒト癌に罹患する個体に対して、IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105.8によって産生される単離モノクローナル抗体によって認識されるエピトープと同じ1つまたは複数のエピトープを認識する少なくとも1つの単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを、少なくとも1つの化学療法剤と併用して投与することを含み、
該投与が全身腫瘍組織量の減少をもたらすプロセス。
【請求項28】
ヒト腫瘍から選択される組織サンプルにおいてCD63の1つまたは複数のエピトープを発現し、IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105. 8によって産生される単離モノクローナル抗体によって特異的に結合される癌細胞の存在を決定する結合分析であって、
該ヒト腫瘍から組織サンプルを提供することと;
IDACアクセッション番号280306−03を有するハイブリドーマ細胞株AR75A105. 8によって産生される単離モノクローナル抗体によって認識されるエピトープと同じ1つまたは複数のエピトープを認識する少なくとも1つの単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを提供することと;
該組織サンプルと少なくとも1つの該単離モノクローナル抗体またはそのCDMABを接触させることと;
該組織サンプルと少なくとも1つの該単離モノクローナル抗体またはそのCDMABの結合を決定することと、
を含み、
それによって該組織サンプルにおける該癌細胞の存在が示される結合分析。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−545528(P2009−545528A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521074(P2009−521074)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001318
【国際公開番号】WO2008/011711
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(509018384)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (5)
【Fターム(参考)】