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癌患者による上皮成長因子受容体阻害薬に対する臨床転帰の予測方法
説明

癌患者による上皮成長因子受容体阻害薬に対する臨床転帰の予測方法

【課題】上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬の治療的投与が有効であるか有効でないことが予測される癌患者を同定するための、生物マーカー、方法、およびアッセイキットを提供する。
【解決手段】本発明の生物マーカーには、EGFRおよびHER2の遺伝子の増幅および多染色体性、EGFRタンパク質の発現、EGFRの突然変異、リン酸化Aktタンパク質の発現、ならびにこれらの生物マーカーの様々な組合せ、ならびにこれらの生物マーカーの、EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異との組合せの検出が含まれる。EGFR遺伝子のコピー数の増加、HER2遺伝子のコピー数の増加、EGFRタンパク質の発現の増加、活性化AKTタンパク質の発現(リン酸化Akt)、およびEGFRの突然変異は全て、EGFR阻害薬で処置された癌患者の良好な結果と関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、EGFR阻害薬の治療が有効であることが予測される癌患者を同定するための、生物マーカー、方法、およびアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
新生組織形成、すなわち新しい異常な増殖をもたらす急速な細胞の増殖の過程は、重症で、時には生命を脅かすことのある多くの疾患に特有である。一般的に、細胞および組織の腫瘍性増殖は、扇動的な要因(例えば、発癌プロモーター、発癌物質、ウィルス)がすでに存在しなくなった後でも細胞が増殖し続けるという、正常を上回った細胞の増殖によって特徴付けられる。この細胞の増殖は、構造上の組織化の欠如および/または正常な組織との協調の欠如を示す傾向があり、通常、良性のことも悪性のこともある組織の塊(例えば腫瘍)を作り出す。悪性な細胞の増殖、すなわち悪性腫瘍(癌)は、世界中における主な死亡原因であり、腫瘍性疾患に対する効果的な治療の開発は、研究の主題の大部分となっている。癌の処置および予防のために様々な画期的な取組みが提唱されているが、癌の多くは高死亡率をもたらし続け、処置が困難なこともあり、または従来の治療法に対して比較的無反応のこともある。さらに、患者は、様々な癌の治療に対して異なって反応することがあり、このためいくつかの取組みは、ある患者には有用であり他の者には有用ではない。したがって、当技術分野では、さらなる癌の危険因子の同定、癌の初期の診断および治療のための方法、ならびに特定のタイプの治療が有効であることが予想される患者を同定するための方法が引き続き必要とされている。
【0003】
この点について説明すると、非小細胞肺癌(NSCLC)は、世界中で癌による死亡の主な原因である。化学療法は、進行期には中程度の生存の利点をもたらしているが、標準の2つの薬物の組合せはかなりの毒性を生成し、静脈投与を必要とする(非小細胞肺癌共同研究グループ(Non−small Cell Lung Cancer Collaborative Group)、1995年;シラーら(Schiller et al.)、2002年;ケリーら(Kelly et al.)2001年)。肺癌の生物学の分野における進歩は、増殖、アポトーシス、および血管形成に関与する標的タンパク質の小分子阻害物質の開発をもたらした。イマチニブ、およびトラスツズマブなどの目標とされる治療物質は、慢性骨髄性白血病(ドルカー(Druker)、2001年)、消化管間質腫瘍(GIST)(デメトリ(Demetri)、2002年)、および標的タンパク質を過剰発現する乳癌(スラモン(Slamon)、2001年)で一定の生存の利点を生み出している。4つの異なる受容体であるEGFR/erbB−1、HER2/erbB−2、HER3/erbB−3、およびHER4/erbB−4を含む上皮成長因子受容体(EGFR)スーパーファミリは、固形腫瘍における有力な治療上の目標として初期に同定された。これらの受容体はリガンドと結合した後、ホモ二量体化およびヘテロ二量体化し、チロシンキナーゼ領域が活性化され、細胞周期の進行、アポトーシス、血管形成、および転移に対する作用により癌の発生および進行に結びつけられている一連の事象を開始させる(サロモンら(Salomon et al.)、2001年;アーテアガ(Arteaga)、2002年);ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003年、Lung Cancer;シャルデロおよびトルトラ(Ciardello and Tortora)、2001年)。EGFRは、NSCLCを含むヒトの上皮の悪性腫瘍の多くで過剰に発現される(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003年、J.Clin.Oncol;サロモンら(Salomon et al.)、1995年)。
【0004】
癌腫におけるEGFR分子のネットワークが生物学的に重要であることを考慮して、EGFRのチロシンキナーゼ領域を阻害するためにいくつかの分子が合成されている(レビツキおよびガジット(Levitzki and Gazit)、1995年;レビットおよびコティ(Levitt and Koty)、1999年)。これらの新しい薬物で最も有望なものは、ゲフィチニブ(ZD 1839、Iressa(登録商標)、アストラゼネカ(AstraZeneca)、英国所在)、およびエルロチニブ(OSI 774、Tarceva(登録商標)、ジェネンテック(Genentech)、米国所在)である。両者とも経口で活性があり、EGFRを発現する様々なヒトの癌細胞系に対して抗腫瘍活性を示す選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR−TKI)である(シャルディエヨら(Ciardiello et al.)、2000年)。同様に、両者には、反応率が約10%であった化学療法抵抗性のNSCLC患者を含めた第I相の試験において、単一の物質として十分に立証された活性を有している(クリスら(Kris et al.)、2000年、Lung Cancer;バゼルガら(Baselga et al.)、2002年;ハープストら(Herbst et al.)、2002年;ランソンら(Ranson et al.)、2002年;ヒダルゴら(Hidalgo et al.)、2001年)。活性は大規模な第II相試験で確認され、以前に非処置の、進行したNSCLC患者で19〜26%の反応率を示し、以前の化学療法の1つまたは複数の組合せで失敗した患者で12〜18%の反応率を示した(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA;ペレス−ソラーら(Perez−Soler et al.)、2001年;ミラーら(Miller et al.)、2003年)。より最近では、エルロチニブを、第2のまたは第3の系統の治療としてプラセボと比較した第III相の試験(BR21)でEGFR阻害薬に対する生存の利点が報告された(危険率:0.73)(シェファードら(Shepherd et al.)、2004年)。重要なことに、この生存の利点は目的の反応者に制限されず、単一の性別または組織学にも制限されず、そのため臨床上の特徴および組織病理学的な特徴のみに基づいた選択は困難になっている。
【0005】
ゲフィチニブを用いた第II相の試験では、EGFRタンパク質発現と治療に対する反応との間には相関が検出されなかったが、この疑問に直接取り組む研究はほとんどなかった。扁平上皮癌を有する患者は、腺癌を有する患者に比べてEGFRの発現率が高いが、反応率は低い(シャルディエヨ(Ciardiello et al.)、2000年;フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA)。最近の報告では、EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における特定のミスセンスおよび欠失の突然変異(リンチら(Lynch et al.)、2004年;パエツら(Paez et al.)、2004年)が、ゲフィチニブの感受性に重大に関わることが示された。しかし、目的の反応が最高18%で報告され、非選択のゲフィチニブ処置のNSCLC患者の40%に症状の改善が報告されているが(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA)、非選択の米国の患者におけるこれらの突然変異の頻度は低い(パエツ(Paez et al.)、2004年)。目的の反応が、EGFR遺伝子の明らかに野生型の対立遺伝子を有する患者で検出できるという、これらの知見および所見(リンチら(Lynch et al.)、パオら(Pao et al.)、ハンら(Han et al.)(JCO、23巻:2493頁、2005年)、ミツドミら(Mitsudomi et al.)、JCO 23巻、2513頁、2005年、キムら(Kim et al.)、Clinical Cancer Res、11巻、2244頁、2005年)は、他の機序もゲフィチニブに対する反応に関与していることを示唆している。さらに、これらの活性化の突然変異は反応率の高い患者を同定するものであるが、ゲフィチニブで処置されたNSCLC患者の約30%に起こることが報告されている、安定した高い疾患率を説明することはできない(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group. BMJ 1995;311:899-909.
【非特許文献2】Schiller et al., NEngl JMed 2002;346:92-8.
【非特許文献3】Kelly et al., J Clin Oncol. 2001;19:3210-8.
【非特許文献4】Druker et al., N Engl J Med 2001;344:1031-7.
【非特許文献5】Demetri et al., N Engl J Med 2002;347:472-80.
【非特許文献6】Slamon et al., N Engl JMed 2001; 344:783-92.
【非特許文献7】Salomon et al., Signal 2001;2:4-11.
【非特許文献8】Arteaga, Sem Oncol 2002;29:3-9.
【非特許文献9】Hirsch et al., Lung Cancer 2003;41 Suppl 1: S29-42.
【非特許文献10】Ciardello and Tortora, Clin Cancer Res 2001;7:2958-70.
【非特許文献11】Hirsch et al., J Clin Oncol 2003;21:3798-807.
【非特許文献12】Salomon et al., Crit Rev Oncol Heniatol 1995;19:183-232.
【非特許文献13】Levitzki and Gazit, Science 1995;267:1782-8.
【非特許文献14】Levitt and Koty, Investig New Drugs 1999;7:213-26.
【非特許文献15】Ciardiello et al., ClinCancer Res 2000;6:2053-63.
【非特許文献16】Kris et al., Lung Cartcer 2000;Suppl 1;29:233 abstract.
【非特許文献17】Baselga et al., J Clin Oncol. 2002;20:4292-302.
【非特許文献18】Herbst et al., J Clin Oncol. 2002;20:3815-25.
【非特許文献19】Ranson et al., J Clin Oncol. 2002;20:2240-50.
【非特許文献20】Hidalgo et al., J Clin Oncol. 2001;19:3267-79.
【非特許文献21】Fukuoka et al., J Clin Oncol. 2003;21:2237-46.
【非特許文献22】Kris et al., JAMA 2003;290:2149-58.
【非特許文献23】Perez-Soler et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:310a 2001.
【非特許文献24】Miller et al., Proc Am Soc Clin Oncol 2003;22 (abstract 2491).
【非特許文献25】Shepherd et al., Proc Am SocClin Oncol 2004; 23 (abstract).
【非特許文献26】Ciardiello et al., ClinCancer Res 2000;6:2053-63.
【非特許文献27】Lynch et al., N Engl J Med 2004; 350:2129-39
【非特許文献28】Paez et al., Science 2004;304:1497-1500.
【非特許文献29】Pao et al., PNAS 2004;101:13306-11.
【非特許文献30】Han et al., JCO, 23:2493, 2005
【非特許文献31】Mitsudomi et al., JCO 23:2513, 2005
【非特許文献32】Kim et al., Clinical Cancer Res, 11:2244, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
要約すると、NSCLC患者を含めて、どの癌患者が、それだけには限定されないゲフィチニブにより例示されるEGFR阻害薬での処置が有効であるかを決定するための、信頼できる選択基準は存在しない。したがって、EGFR阻害薬が有効である患者、およびそのような治療が有効でないであろう患者の両者を同定すること、ならびに、EGFR阻害薬に抵抗性を有する癌細胞の反応性を改善することができる処置を同定すること、および反応を増強する補助療法を開発することは非常に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、EGFR阻害薬の治療的投与が有効である、または有効でないことが予測される癌患者を選択するための方法に関する。この方法は、(a)(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベルの生物マーカー、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルの生物マーカーからなる群から選択される生物マーカーのレベルを患者からの腫瘍細胞のサンプルで検出する工程と、(b)(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベルの生物マーカー、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルの生物マーカーからなる群から選択されるコントロールレベルの生物マーカーと、腫瘍細胞サンプルにおける生物マーカーのレベルを比較する工程と、(c)患者の腫瘍細胞における生物マーカーのレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関している生物マーカーのコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞における生物マーカーのレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関している生物マーカーのレベルを統計学的に超える場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして患者を選択する工程と、あるいは(d)患者の腫瘍細胞における生物マーカーのレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関している生物マーカーのコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞における生物マーカーのレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性に相関している生物マーカーのレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして患者を選択する工程とを含む。生物マーカーは、(i)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅のレベル、(ii)EGFR遺伝子の多染色体性のレベル、(iii)ヒトチロシンキナーゼ受容体型受容体(HER2)遺伝子の増幅のレベル、および(iv)HER2遺伝子の多染色体性のレベルから選択される。検出の工程は、生物マーカー(i)〜(iv)の任意の1、2、3、または4個全てを検出することを含むことができる。特に好ましい組合せには、それだけには限定されないが、(i)および(ii)を検出することが含まれ、一実施形態では、(iii)または(iv)を検出すること、(iii)および(iv)を検出することも含まれ、一実施形態では、(i)または(ii)を検出すること、ならびに(ii)および(iv)を検出することも含まれる。
【0009】
検出工程には、それだけには限定されないが、EGFR遺伝子もしくはHER2遺伝子にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いる工程、および/または第7染色体セントロメア配列もしくは第17染色体セントロメア配列にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いる工程が含まれ得る。一態様では、プローブはキメラプローブ(例えば、EGFR遺伝子および第7染色体セントロメア配列にハイブリダイズするもの、またはHER2遺伝子および第17染色体セントロメア配列にハイブリダイズするもの)である。一態様では、検出工程には、サンプルにおける1つまたは複数の腫瘍細胞における腫瘍細胞1個当たりのEGFR遺伝子もしくはHER2遺伝子のコピー数を検出する工程、および/またはサンプルにおける1つまたは複数の腫瘍細胞における腫瘍細胞1個当たりのEGFRもしくはHER2遺伝子の増幅を検出する工程が含まれ得る。好ましい一実施形態では、検出工程は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により行われる。
【0010】
この実施形態の一態様では、比較工程は、腫瘍細胞における生物マーカーのレベルをEGFR阻害薬に対して抵抗性を有する1つもしくは複数のコントロール細胞における、および/またはEGFR阻害薬に感受性である1つもしくは複数のコントロール細胞におけるコントロールレベルの生物マーカーと比較する工程を備える。一態様では、EGFR阻害薬に対する感受性、および/または抵抗性に相関している生物マーカーのコントロールレベルは予め決定されている。
【0011】
この実施形態の一態様では、約40%未満の細胞で3またはそれを超えるEGFR遺伝子のコピーがある腫瘍サンプルを有する患者は、EGFR阻害薬での処置に対して反応が低い者または無反応者であると予測される。別の一態様では約40%を超え、またはそれに等しい細胞に約4またはそれを超えるEGFR遺伝子のコピーがある腫瘍サンプルを有する患者は、EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される。別の一態様では、EGFR遺伝子クラスター、または(a)細胞1個当たり約2もしくはそれを超える第7染色体のコピーに対するEGFR遺伝子のコピーの割合、または(b)分析が行われた細胞の約10%を超え、もしくはそれに等しい細胞において細胞1個当たりのEGFR遺伝子のコピーが約15またはそれを超える平均を有する腫瘍サンプルを患者が有する場合に、患者はEGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される。別の一態様では、約40%未満の細胞に3またはそれを超えるコピーのHER2遺伝子を備える腫瘍サンプルを有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応が低い者または無反応者であると予測される。さらに別の一態様では、約40%を超え、またはそれに等しい細胞に約4またはそれを超えるHER2遺伝子のコピーがある腫瘍サンプルを有する患者は、EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される。別の一態様では、HER2遺伝子クラスター、または(a)細胞1個当たり約2もしくはそれを超える第17染色体のコピーに対するHER2遺伝子のコピーの割合、または(b)分析が行われた細胞の約10%を超え、もしくはそれに等しい細胞において細胞1個当たりのHER2遺伝子のコピーが約15もしくはそれを超える平均を有する腫瘍サンプルを患者が有する場合に、患者がEGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される。
【0012】
この実施形態の一態様では、患者がHER2遺伝子の増幅または多染色体性に基づくEGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるものとして選択される場合に、EGFR遺伝子の増幅または多染色体性に基づく工程(d)における患者の選択が反対になる。この実施形態の別の一態様では、EGFR遺伝子の増幅または多染色体性に基づく工程(c)における患者の選択、およびHER2遺伝子の増幅または多染色体性に基づく患者のポジティブ選択が、EGFR遺伝子の増幅または多染色体性のみに基づいた工程(c)における患者の選択に比べて、EGFR阻害薬での処置に患者が反応する見込みが増大する。
【0013】
この実施形態の別の一態様では、この方法は、(a)腫瘍細胞サンプルにおける上皮成長因子受容体(EGFR)タンパク質の発現のレベルを検出する工程と、(b)(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルと、腫瘍細胞サンプルにおけるEGFRタンパク質の発現のレベルを比較する工程と、(c)患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルが、EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または、患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現のレベルを統計学的に超える場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして患者を選択する工程と、あるいは(d)患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして患者を選択するさらなる工程とをさらに含む。好ましい実施形態では、EGFRタンパク質の発現のレベルは免疫組織化学(IHC)を用いて検出される。
【0014】
上記の方法のあらゆる実施形態の別の一態様では、この方法はまた、以下の工程:(a)腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを検出する工程と、(b)(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベル、および腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを比較する工程と、(c)患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを統計学的に超える場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測される患者を選択する工程と、あるいは(d)患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして患者を選択する工程とをさらに含む。好ましい一実施形態では、リン酸化Aktタンパク質の発現レベルは免疫組織化学(IHC)を用いて検出される。一態様では、この方法は、EGFRの多染色体性およびリン酸化Aktタンパク質の発現を検出する工程を備える検出工程を含む。
【0015】
上記に記載した、本発明のあらゆる実施形態は、EGFR遺伝子における突然変異を検出する工程をさらに含むことができ、EGFR遺伝子における1つまたは複数の突然変異を検出することにより、患者がEGFR阻害薬での処置が有効であることがさらに予測され得る。例えば、EGFR遺伝子のエキソン18、19、および21の任意の1つまたは複数における突然変異、またはEGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異を検出することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態は、EGFR阻害薬の治療的投与が有効である、または有効でないことが予測される癌患者を選択するための方法に関する。この方法は、(a)患者からの腫瘍細胞のサンプルにおいて上皮成長因子受容体(EGFR)タンパク質の発現のレベルを検出する工程と、(b)(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるコントロールレベルのEGFRタンパク質の発現、および腫瘍細胞サンプルにおけるEGFRタンパク質の発現のレベルを比較する工程と、(c)患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現のレベルを統計学的に超える場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして患者を選択する工程と、あるいは(d)患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして患者を選択する工程とを備える。好ましい一実施形態では、EGFRタンパク質の発現のレベルは免疫組織化学(IHC)を用いて検出される。
【0017】
この実施形態の一態様では、この方法は、EGFR遺伝子における突然変異を検出する工程をさらに含み、EGFR遺伝子における1つまたは複数の突然変異の検出により、患者がEGFR阻害薬での処置に対して反応することがさらに予測され得る。例えば、EGFR遺伝子のエキソン18、19、および21の任意の1つもしくは複数における突然変異、またはEGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異を検出することができる。
【0018】
この実施形態の別の態様では、この方法は、(a)腫瘍細胞サンプルにおいてリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを検出する工程と、(b)i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベル、ならびに腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを比較する工程と、(c)患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを統計学的に超える場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして患者を選択する工程と、あるいは(d)患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルがEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして患者を選択する工程をさらに含む。
【0019】
上記に記載された本発明のあらゆる実施形態における方法は、あらゆるタイプの癌を有する患者に用いられ得る。好ましい一実施形態では、患者は、それだけには限定されないが、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞性癌(BAC)、またはBACの特徴のある腺癌を含む肺癌を有する。
【0020】
上記に記載された本発明のあらゆる実施形態では、それだけには限定されないが、ゲフィチニブ、エロルチニブ、およびセツキシマブを含めた任意のEGFR阻害薬に対する感受性を評価することができる。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、EGFR阻害薬の治療的投与が有効である、または有効でないことが予測される癌患者を選択するためのアッセイキットに関する。アッセイキットは、(a)(i)上皮成長因子(EGFR)遺伝子の増幅のレベル、(ii)EGFR遺伝子の多染色体性のレベル、(iii)ヒトチロシンキナーゼ受容体型受容体(HER2)遺伝子の増幅のレベル、(iv)HER2遺伝子の多染色体性のレベル、(v)EGFRタンパク質の発現のレベル、および/または(vi)リン酸化Aktタンパク質の発現のレベルから選択される、生物マーカーのレベルまたは生物マーカーの組合せを、腫瘍細胞のサンプルで検出するための手段を含む。キットは、(b)(i)EGFR阻害薬に対する感受性を検出するためのコントロールサンプル、(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性を検出するためのコントロールサンプル、(iii)EGFR阻害薬に対する感受性と相関している生物マーカーの予め決定されたコントロールレベルを含む情報、および/または(iv)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関している生物マーカーの予め決定されたコントロールレベルを含む情報から選択されるコントロールも含む。一態様では、キットはEGFR遺伝子における少なくとも1つの突然変異を検出するための少なくとも1つの手段をさらに含むことができる。
【0022】
この実施形態の一態様では、任意の(a)(i)〜(a)(iv)で検出する手段は、それだけには限定されないが、ヒト第7染色体またはヒト第17染色体の一部分とハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、EGFR遺伝子の一部分およびEGFR遺伝子以外の第7染色体の一部分にハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、ならびにHER2遺伝子の一部分およびHER2遺伝子以外の第17染色体の一部分にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを含む、遺伝子の一部分をハイブリダイズするヌクレオチドプローブを備える。好ましい実施形態では、検出するための手段は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)において使用されるためのものである。この実施形態の別の態様では、(a)(v)または(a)(vi)における検出のための手段は、タンパク質に選択的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントを備える。好ましくは、あらゆる上記に記載された検出のための手段は検出可能な標識を備え、かつ/または基質上に固定化されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】実施例1における二染色体性、低三染色体性、高三染色体性、低多染色体性、高多染色体性および遺伝子増幅の6つのFISH範疇における疾病無進行期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図1B】実施例1における二染色体性、低三染色体性、高三染色体性、低多染色体性、高多染色体性および遺伝子増幅の6つのFISH範疇における生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図2A】実施例1におけるFISH群1および2における疾病無進行期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図2B】実施例1におけるFISH群1および2における生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3A】遺伝子コピー数に従って分析された疾病無進行期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3B】遺伝子コピー数に従って分析された生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3C】タンパク質発現のレベルに従って分析された疾病無進行期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3D】タンパク質発現のレベルに従って分析された生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3E】突然変異体の存在に従って分析された疾病無進行期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図3F】突然変異体の存在に従って分析された生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す図。
【図4A】EGFR FISH部分集団(N=81(患者数))と比較した全S 0126集団(N=136(患者数))の生存曲線を示す図。
【図4B】EGFR FISH陽性およびFISH陰性群についての無進行生存期間を示す図。
【図4C】EGFR FISH陽性およびFISH陰性群についての総合的生存曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第II相臨床試験の有望な結果をもとに、ゲフィチニブは2003年に、エルロチニブは2004年に、前処置されたNSCLC患者においてプラセボに比べて著しい生存の利点を実証した後、進行した化学療法抵抗性のNSCLCの処置に米国食品医薬品局によって認可された(シェファードら(Shepherd et al.)、2004年)。これらのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR−TKI)の臨床上の有効性は意義深いが、残念なことに患者のサブグループに限られている。カナダのBR−21試験(エルロチニブ対プラセボ)では、処置開始後3カ月以内に約30%の患者が死亡し、このことはこの患者のサブグループで臨床上の利点が達成されなかったことを指摘していた。臨床上、有効な患者は女性で腺癌の病歴があり、喫煙の経験がない傾向が強い(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA;ミラーら(Miller et al.)、2004年、J.Clin.Oncol)。しかし、臨床上の特徴だけで患者を選別するのは十分ではない。というのは、個々の特徴を欠く患者も依然として恩恵を受けることがあるからである。これらの所見には、NSCLC、およびEGFRの発現に関連する他の癌における患者の利点を予測することができる生物学的特徴を提供する必要性が残されていた。本発明は、この問題に取り組む強力な生物マーカーおよびプロトコールを提供するものである。
【0025】
本発明は概して、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬の治療的投与が有効であることが予測される癌患者の同定に関する。
本発明は概して、EGFR阻害薬抵抗性の癌細胞の処置に対する反応性を改善することができる処置を同定するための方法、およびEGFR阻害薬の反応を増強する補助療法の開発にも関する。
【0026】
したがって、本発明の一実施形態は、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬、その作用薬、または基準のEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効であることが予測される癌患者を選択するために使用するための方法および対応するアッセイキットに関する。この方法は概して、本発明者らがEGFR阻害薬感受性または抵抗性の腫瘍細胞の検出で非常に貴重であることを見出したEGFRに関する生物マーカーおよびその組合せを患者からの腫瘍細胞のサンプルで検出し、したがってEGFR阻害薬を用いた処置に対する患者の臨床上の利点を予測することを含む。本発明者らの発見に基づき、様々な試験および生物マーカーの検出の戦略の組合せが提唱されており、以下で詳しく論じられる。しかし、最初に、本発明は生物マーカーを検出するための以下の戦略:(1)の上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子(すなわち、EGFRをコードする遺伝子)の増幅のレベルの検出、(2)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の多染色体性のレベルの検出、(3)のHER2遺伝子の遺伝子の増幅のレベルの検出、(4)HER2遺伝子の多染色体性のレベルの検出、(5)EGFR遺伝子における突然変異の検出、(6)EGFRタンパク質の発現の検出、および(7)リン酸化Aktの発現の検出、の単独のまたは様々な組合せの使用を含む。本発明は、これらの検出のプロトコールの使用を、個々に、または様々な組合せで含み、本発明は、EGFR阻害薬に感受性および抵抗性を有する腫瘍を同定するための本方法の能力をさらに増強し、EGFR阻害薬に対する患者の臨床上の利点(例えば、反応および結果)を予測するための、様々な組合せの1つまたは複数の生物マーカーの検出技術の使用をさらに含む。
【0027】
本発明者らはまた、本明細書に記載される試験の組合せを用いて、EGFR阻害薬の臨床上が有効でないであろう、NSCLCを含む癌を有する患者(例えば、2つまたはそれを超える試験に陰性である腫瘍を有する患者)を選択することができることも見出した。
【0028】
本発明者らは、EGFR遺伝子の増幅、および/またはEGFR遺伝子に関する高多染色体性(本願では一般的に、EGFR遺伝子のコピー数の増加、もしくはEGFRコピー数の獲得と言う)、および/またはHER2遺伝子の増幅、および/またはHER2遺伝子に関する高多染色体性(本願では一般的に、HER2遺伝子のコピー数の増加、もしくはHER2コピー数の獲得と言う)を示す腫瘍細胞を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に特に反応性であり、したがってこの系統の治療の使用に対する最良の候補者であることを見出した。これとは対照的に、EGFRおよび/またはHER2遺伝子のコピー数にほとんどまたは全く獲得のない腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に対し結果が劣ることが予測される。
【0029】
興味深いことに、本発明者らは、EGFR陰性の(すなわち、EGFRの結果のみに基づいてEGFR阻害薬に反応することが予測されない)患者について、そのような患者の腫瘍にHER2遺伝子の増幅および/またはHER2遺伝子の多染色体性(例えば、高三染色体性、または低もしくは高多染色体性)がある場合、その患者の結果は、HER2遺伝子の増幅のない患者に比べて良好であることも見出した。さらに、EGFRの結果のみに基づいてEGFR阻害薬に反応することが予測される患者については、これらの患者の腫瘍におけるHER2遺伝子の増幅および/または高多染色体性は、HER2遺伝子の増幅の非存在におけるよりも、EGFR阻害薬処置に対してさらに感受性が高いことが予測される。
【0030】
本発明者らは、EGFRタンパク質の発現と治療に対する反応との相関を検出しなかった以前の研究とは対照的に、EGFR阻害薬で処置された患者の結果を予測するEGFRタンパク質の発現を用いることができることも見出している。特に本発明者らは、発現強度も、サンプルにおける発現陽性の細胞の分画も説明する評価基準を使用し、スコアプロトコールの上部の50%に腫瘍細胞を有する患者(すなわち、陽性/高EGFR発現者と表される)は、EGFR阻害薬で処置された場合に、発現のより低い群における者よりも格段に結果が良好である(例えば、反応期間が良好で、進行速度が遅く、生存期間が長い)ことを今や実証した。さらに、本発明者らは、EGFRタンパク質の発現の検出と、HER2もしくはEGFR遺伝子の増幅、または多染色体性との組合せは、マーカーを1つ検出し、または全く検出しないよりも、EGFR阻害薬の処置に対する患者の結果が大幅に予測できることを実証している。
【0031】
本発明者らは、EGFR遺伝子の獲得が低く/なく(例えば、「FISH陰性の」)、かつEGFRタンパク質の発現が低い/ない(例えば、「IHC陰性の」)癌患者のグループは全NSCLC集団の約30%を構成し、EGFR阻害薬が全く臨床上有効ではない(奏功率がない/大変低く、無進行期間が短く、生存期間が短い)様子であることも見出した。
【0032】
本発明者らは、2つの他の生物マーカー、すなわち突然変異したEGFR遺伝子またはリン酸化Aktの発現が、上記で論じたあらゆるこれらの生物マーカーおよびプロトコールと組み合わされ、EGFR阻害薬の処置に反応することが予測される患者を検出する能力を改善することができることも示した。例えば、本発明者らは、EGFR遺伝子における突然変異の検出と、EGFRタンパク質の発現、EGFR遺伝子の増幅、および/もしくは多染色体性、ならびに/またはHER2遺伝子の増幅、および/もしくは多染色体性との組合せを用いて、EGFR阻害薬の治療が臨床上有効である患者を選択することができることを本願において実証している。本発明者らは、リン酸化Akt(すなわち、活性化Akt)の検出と、EGFRタンパク質発現の検出、ならびに/またはEGFR遺伝子の増幅、および/もしくは多染色体性の検出との組合せを用いて、EGFR阻害薬の治療に臨床上有効である患者を選択することができることも本願で実証している。
【0033】
本発明者らは、本方法において、特定の検出技術、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、および免疫組織化学(IHC)を用いる能力も本願で実証しているが、本発明の方法は、これらの技術の使用に限定されない。
【0034】
最後に、本願に提供される多くの実施例はEGFR阻害薬であるゲフィチニブを指示するものであるが、本発明の方法は、この特定のEGFR阻害薬に反応し、または反応しない患者の予測に限定されるものではなく、むしろ小分子(薬物)、ペプチド、抗体、核酸、または他のタイプの阻害薬である阻害薬を含めたあらゆるEGFR阻害薬に対する患者の結果を予測するために用いられ得る。例えば、本発明者らは、EGFR阻害薬であり、EGFRに結合するとともに受容体に対する天然のリガンドの結合を防ぐモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Erbitux(登録商標))に対する腫瘍の抵抗性または感受性を予測するために本方法を使用することも実証した。
【0035】
より詳しく述べると、本発明者らは、IHCによるFISHおよびEGFRタンパク質の発現により検出されるEGFR遺伝子のコピー数(多染色体性および/または遺伝子の増幅により決定される)はゲフィチニブの活性と大幅に相関しており、EGFR遺伝子の増幅、および/もしくは多染色体性(特に高多染色体性)、ならびに/または高いEGFRタンパク質の発現を有するこれらの患者は、反応、無進行期間、および生存において大幅な改善があったことを実証した。本発明者らは、HER2遺伝子の増幅、および/または多染色体性(特に高多染色体性)も同様の効果をもたらすことも実証した。最も強力な利点は遺伝子の増幅を有する患者で観察され、EGFR遺伝子の増幅とHER2遺伝子との増幅の組合せが特に強力であった。多変量解析により、EGFR遺伝子の増幅および多染色体性(特に高多染色体性)、ならびにEGFRタンパク質の発現はゲフィチニブを投与されている患者で死の危険性が大幅に減少することが確認された。臨床上の特徴(性別、喫煙歴、一般状態、および組織学)の中では、モデルをEGFRの状態に調節した場合、組織学およびPSのみが死の危険性と著しく関係する結果となった。死の危険性は、腺癌または細気管支肺胞性癌を有する患者では著しく低く、一般状態2の患者では著しく高かった。
【0036】
本発明より以前には、EGFRタンパク質の発現、またはNSCLCにおける遺伝子の状態の予後の役割は文献に様々な報告があったので、良くても不明瞭であった。本発明者らは、EGFRタンパク質の発現および遺伝子のコピー数の予後の役割を研究し、EGFRタンパク質の発現は、遺伝子のコピー数の増加と相関し、細胞1個当たりの遺伝子コピー数が高いと予後が悪くなる傾向を示すことを見出した(ヒルシュら(Hirsh et al.)、2003年、JCO)。同様に、本発明者らは、283人のNSCLC患者におけるHER2遺伝子のコピー数およびタンパク質の発現を研究し、HER2タンパク質の発現が高いと生存が短くなる傾向を示すことを見出した(ヒルシュら(Hirsh et al.)、2002年、BJC)。しかし、免疫組織学的アッセイにより評価したEGFRタンパク質の発現のレベルが、前臨床(シロトナクら(Sirotnak et al.)、Clin Cancer Res、2000年、6巻、4885〜92頁)および臨床試験(クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA;ジャコンヌら(Giaccone et al.)、2004年)における治療に対する反応と相関することは以前には実証されていなかった。ゲフィチニブは、タンパク質レベルでその作用を行い、したがって、免疫組織学的研究との相関を欠くことを考慮すると、細胞1個当たりのEGFR遺伝子のコピー数は臨床上の反応を予測するものであり得るとは全く予想されなかった。
【0037】
実施例1に示される試験では、EGFR遺伝子の増幅または高多染色体性のある同齢集団において、より良好な結果が観察され、したがって、この患者群に薬物の正の影響があったことを確かにしている。さらに、FISH陽性の患者(下記実施例1における群2)における患者の1年生存は、本発明者らの試験では、以前のゲフィチニブでの第II相臨床試験で報告されたよりも明らかに高かった。
【0038】
ゲフィチニブの臨床試験に対する主な欠点は、EGFRタンパク質の発現のレベルと処置に対する反応との間の相関を欠くことであった。HER2、および乳癌におけるトラスツズマブに対する反応に焦点を当てた他の試験では、ゲノムの分析は、HerceptTestで2+とスコアしたタンパク質の発現よりも良好な反応と相関することが確認された(ボーゲルら(Vogel et al.)、2002年;バートレットら(Bartlett et al.)、2003年)。ゲフィチニブ感受性の患者における特定のEGFR遺伝子の突然変異の同定により、ゲノムレベルでの分析の妥当性が確認された(リンチら(Lynch et al.)、2004年;パエツら(Paez et al.)、2004年)。しかし、これらの試験は、本発明で提唱する技術とは完全に異なる分析技術を伴うものであった。
【0039】
本願に示される試験では、EGFRおよびHER2遺伝子のコピー数をFISHで試験した。というのは、この方法はいくつかの利点を示すからであるが、本発明の実施はこの技術に限定されるものではない。FISHはDNAをベースとするものであり、新鮮な、または保存のパラフィン包埋された腫瘍サンプルで首尾よく行うことができる。この技術は十分に確立されており、臨床的な細胞遺伝学および分子病理学の実験室で回転が速く、EGFR FISHプローブはすでに市販されている。さらに、疾患の進行した患者、特に標準的な治療後に進行している患者では、疾患の安定および症状の改善が重要なエンドポイントであり、ゲフィチニブは約40%の症例でこの目標に到達している(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA)。EGFR遺伝子の増幅および高多染色体性を有する患者では、反応だけではなく疾患の制御率にも著しい意義深い有利があったことを結果は実証していた。これらの知見は、アッセイの単純性および結果の再現性と結びついて、EGFR−FISH分析のルーチンの使用およびNSCLC患者のゲフィチニブ治療に対する選択のための関連技術を支持している。
【0040】
実施例1および3に記載された試験で評価された集団の臨床的特徴は、イタリアの臨床の実践で一般的に観察されることを反映しており、この同齢集団の結果はIDEAL1および2の試験と同じ範囲にある(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA)。EGFR遺伝子の状態は肺癌でわずかに試験されているにすぎない。現在の試験では、12.7%の腫瘍に遺伝子の増幅があり、19.7%に高レベルの多染色体性があった。遺伝子の増幅は、サザンブロット分析を用いて286検体中6.2%に報告されており(ライスマンら(Reissmann et al.)、1999年)、多染色体性および増幅は、腫瘍マイクロアレイで調査したNSCLC183人の、それぞれ13%および9%に観察された(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003年、JCO)。他の集団の試験により、この変異性がNSCLC患者における実際の不均一性を表しているか否かが検証されるであろう。
【0041】
EGFRのタンパク質発現のレベルは免疫組織学によっても評価され、以下の実施例で記載されるように、高レベルが、良好な反応、疾患の制御率、無進行期間、および生存と統計学的に有意に関連していた。本願に記載された試験では、ゲフィチニブの感受性はEGFRタンパク質の高発現に関連しており、EGFR発現のスコアの低い(<200)患者における結果は、遺伝子コピー数の低い患者、または突然変異を欠く患者と同程度に悪かった。以前の報告と比べて本発明からの結果に違いがあった理由は、複合的であることかもしれない。例えば、本発明者らは、以前の発明者らと異なるスコアシステムを使用し、EGFR発現細胞の分画(0〜100%)および発現強度(1〜4)の両者を考慮に入れ、このことにより、発現における違いを検出し分析する発明者らの能力を改善した可能性がある。しかし、本発明の適用は、このスコア基準に限定されるものではなく、本発明を実行する上では他の評価方法も有用であることがある。EGFRタンパク質の発現に対する免疫組織学的分析は、容易かる臨床的に適用可能なアッセイであり、本発明で用いられる抗体は市販の抗体をベースにしている(ザイムド(Zymed)、実施例を参照されたい)。しかし、本発明の適用は特定の抗体に限定されない。
【0042】
本願に記載される試験の別の重要な知見は、安定した疾患を有する患者にはEGFRの突然変異は実質的に存在しないということであった。EGFRの突然変異が評価された安定した疾患を有する21人の患者の中では、EGFRの突然変異があったのは1人の患者にすぎなかった。安定した疾患を有する患者で突然変異が少数であることは臨床的に関連性がある。というのは、ある臨床試験からのデータは、ゲフィチニブの生存の利点は反応性の患者に限定されないことを示しているからである(シェファードら(Shepherd et al.)、2004年)。ゲフィチニブで処置した患者で生存が改善したのは、全体的に、患者を選択するためのえり抜きの試験として突然変異の分析が確立された場合にチロシンキナーゼ阻害薬の処置から除外されるであろう、安定した疾患を有する者などの、中程度の処置が有効である患者の群が存在したことによる可能性がある。さらに、以前の研究では、大多数の反応性の患者にEGFR突然変異が存在することが示唆されていたが(リンチら(Lynch et al.)、2004年;パエツら(Paez et al.)、2004年;パオら(Pao et al.)、2004年)この試験では、本発明者らは、EGFRの突然変異のある患者の40%が進行性の疾患を有していたことを観察した。
【0043】
本願に示される研究では、本発明者らは、他者も記載して論じた関連であるAkt経路の活性化(例えば、リン酸化Aktの発現)とゲフィチニブ感受性との間の関連も見出した。(ソルデラら(Sordella et al.)、2004年;カプッツォら(Cappuzzo et al.)、2004年、J.Natl.Cancer Inst.)。EGFRおよびP−Aktの状態のコンビナトリアル分析は、EGFR評価の方法とは独立して、EGFRの状態が陽性の場合には、Aktのリン酸化の存在は、より良好な反応、疾患制御率、無進行期間、および生存に著しく関連していたことを指摘していた。重要なことに、EGFR+/P−Akt+の患者の部分群を、全ての結合した他の群と比べた場合だけではなく、この部分群をEGFR陽性であるがP−Akt陰性である患者と比べた場合にも、より良好な結果が観察された。これらの知見は、ゲフィチニブの標的が存在するが抗−アポトーシス経路が活性化しない場合には患者はゲフィチニブの阻害効果に感受性ではない、という仮説を支持するものである。予想通り、EGFR+/P−Akt+群はまた、EGFR陰性かつP−Akt陽性群に比べて結果は著しく良好であり、異常なEGFR依存性Akt活性化はゲフィチニブ抵抗性をもたらすことがあることを指摘する前臨床のデータを確かなものにしている(ビアンコら(Bianco et al.)、2003年;ジャンマートら(Janmaat et al.)、2003年)。これらのデータは、薬物に特に感受性である部分群の患者を同定するためには、EGFR陽性の患者ではP−Akt陽性の状態が関連することを指摘している。EGFR陰性の患者では、P−Akt陽性の状態で、ゲフィチニブ処置が有効である見込みのほとんどない患者の群を同定することができる。
【0044】
EGFRタンパク質の発現とAkt経路の活性化との関係に関する情報は、ゲフィチニブ感受性の機序についての理解を大きく進めるであろう。本発明者らは、患者のサブグループで、EGFRタンパク質とP−Akt発現とを比べ、一般に、本発明者らは、同じ細胞集団でEGFRおよびP−Aktタンパク質の発現を見出し(データは示さず)、観察されたP−AktはEGFR活性の結果であったことを示した。
【0045】
本発明が提供する方法および試験キットは、NSCLCなど、EGFR阻害薬で処置することができるあらゆる癌の患者に特に有用である。このような患者は、本願に提供される方法の結果として、副作用がなく、EGFR遺伝子座に影響を及ぼす遺伝子の獲得を持たずEGFRタンパク質の発現が低いまたはない場合に効果のない治療の財務コストがないことがある。第2に、その腫瘍の分子上の特徴に関する情報に基づいて特定の患者にこの特定の処置(すなわち、EGFR阻害薬治療)を推薦することができ、または推薦することができない医師にとって、これは有用である。第3に、入手可能、かつ未だ開発されていないEGFRプローブでのFISHアッセイに対する需要は高まるであろう。
【0046】
本発明のより詳しい実施形態を以下に記載する。一実施形態では、この方法は、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子(すなわち、EGFRをコードする遺伝子)のレベル増幅(以下に詳しく記載する)のレベルからの腫瘍細胞のサンプルにおける検出を含む。EGFR遺伝子の増幅を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがって、この系統の治療の使用の最良の候補者である。それとは対照的に、EGFR遺伝子の増幅の獲得がほとんどまたは全くない腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応が低い者、または無反応者であると予測され、したがって、このような患者には異なる治療的処置を用いることができる。別の関連する実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおいて、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の多染色体性(以下に詳しく述べる)のレベルの検出を含む。この実施形態では、EGFR遺伝子に関してより高多染色体性を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であり、したがって、この系統の治療法の使用の最良の候補者である。それとは対照的に、EGFR遺伝子に関してコピー数の少ない腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応が低い者、または無反応者であると予測される。一実施形態では、多染色体性を検出するこの方法を、腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子の増幅の検出と組み合わせることができる。まとめると、遺伝子の増幅および多染色体性は、EGFR遺伝子のコピー数における獲得、またはEGFR遺伝子のコピー数の増加と言及することができる。さらに、本発明者らは、FISHにより検出したEGFR遺伝子のコピー数の増加は、その根底を成す生物学的特徴によりEGFR経路の試験のモデルとして働くことができるNSCLCのサブセットである、進行期の細気管支肺胞性癌(BAC)またはBACの特徴を有する腺癌患者におけるゲフィチニブ治療後の生存の改善と関連することを本願で実証している。
【0047】
本発明の別の実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおける、HER2遺伝子(すなわちHER2をコードする遺伝子)の遺伝子増幅のレベルの検出を含む。HER2遺伝子の増幅を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがって、この系統の治療の使用の最良の候補者である。これとは対照的に、HER2遺伝子の増幅が低く、またはない腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に対して反応が低い者または無反応者であることが予測され、したがって、このような患者に異なる治療上の処置を用いることができる。別の実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおける、HER2遺伝子の多染色体性のレベルの検出を含む。この実施形態では、HER2遺伝子に関してより高多染色体性を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがって、この系統の治療の使用の最良の候補者である。これとは対照的に、HER2遺伝子に関してコピー数の少ない腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に対して反応が低い者または無反応者であることが予測される。一実施形態では、多染色体性を検出するこの方法を、腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増幅の検出と組み合わせてもよい。まとめると、遺伝子の増幅および多染色体性は、HER2遺伝子のコピー数における獲得、またはHER2遺伝子のコピー数の増加と言及することができる。これらの方法は、EGFR遺伝子の増幅および/またはEGFRの多染色体性の検出と組み合わされてもよい。EGFRのコピー数の増大とHER2遺伝子のコピー数だけの増大の両方を示す腫瘍のある患者は、EGFE遺伝子のコピー数の増大だけを示す腫瘍を有する患者よりも、EGFR阻害薬での処置に対する反応性についてさらに良好な候補者であることが予測される。さらに、獲得の低いまたはないEGFR遺伝子のコピー数を示す腫瘍を有するが、HER2遺伝子のコピー数の増大を有する患者は、低いまたは獲得のないHER2遺伝子のコピー数を有する腫瘍を有する患者よりもEGFRでの処置に対する反応が良好であることが予測される。
【0048】
本発明の別の実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおける、EGFRタンパク質の発現のレベルの検出(例えば、免疫組織化学技術を用いることによる)を含む。より高いレベルのEGFRタンパク質を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがって、この系統の治療の使用に対する最良の候補者である。特に、EGFRを発現するより高い分画の細胞、および細胞によるEGFRの発現の、より高い強度の両者のある腫瘍細胞を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測される。分画および強度のスコアに基づく0〜400のスコアシステムを用いる一実施形態では(以下に詳しく記載する)、200を超えるEGFRタンパク質の発現スコアを受ける腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置の結果が良好であることが予測される。さらなる実施形態では、この方法を、HER2遺伝子の増幅および/もしくは多染色体性の検出;EGFR遺伝子の増幅および/もしくは多染色体性;EGFRにおける突然変異の検出(以下に記載する)ならびに/またはリン酸化Aktタンパク質のレベルの検出(以下に記載する)と組み合わせることができる。HER2遺伝子の増幅および/もしくはHER2の多染色体性、EGFR遺伝子の増幅および/もしくはEGFRの多染色体性、EGFR遺伝子における突然変異、ならびに/またはリン酸化Aktの発現と組み合わせて、EGFRタンパク質の発現の高い腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測される。
【0049】
本発明の一実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおけるEGFR遺伝子における突然変異の検出を含む。EGFR遺伝子に突然変異を示す腫瘍細胞のある患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがって、この系統の治療の使用の最良の候補者である。突然変異の活性化は、受容体チロシンキナーゼのリガンド非依存性の活性を引き起こし、最近の報告では、EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における特異的なミスセンスおよび欠失の突然変異(リンチら(Lynch et al.)、2004年;パエツら(Paez et al.)、2004年;パオら(Pao et al.)、2004年)は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の感受性に、また女性に、腺癌の病歴に、および喫煙したことがないという状態に、チロシンキナーゼ阻害薬の感受性に関連することが知られている全ての臨床上の特徴に関連があることが示されている(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003年;クリスら(Kris et al.)、2003年、JAMA;ペレス−ソラーら(Perez−Soler et al.)、2001年;ミラーら(Miller et al.)、2003年、Proc.Am Soc Clin Oncol.;ミラーら(Miller et al.)、2004年、J.Clin.Oncol.)。これらのEGFRの突然変異は、チロシンキナーゼ阻害薬で得られた大多数の他覚的な反応を説明することができるが、これらの薬物で観察された臨床上の利点、および以前の臨床試験で同定された生存上の利点を突然変異の存在だけで説明することはできない。
【0050】
あらゆるEGFRの突然変異が検出され得る一方で、複数の突然変異がヒトで、特にエキソン18、19、および21上で起こることはすでに知られている。上記で論じたように、この方法は、EGFRタンパク質発現の検出と;EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と;HER2遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と;ならびに/あるいはリン酸化Aktタンパク質レベルの検出(以下に記載する)と組み合わされ得る。高EGFRタンパク質の発現、HER2遺伝子の増幅および/またはHER2の多染色体性、EGFR遺伝子の増幅および/またはEGFRの多染色体性、ならびに/あるいはリン酸化Aktの発現と組み合わされた、EGR遺伝子における1つまたは複数の突然変異のある腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測される。
【0051】
本発明の別の実施形態では、この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質のレベルの検出を含む。Aktタンパク質の活性化の状態は、前臨床および臨床試験において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬の感受性において重要な演者として強調されている(ソルデラら(Sordella et al.)、2004年;カプッツォら(Cappuzzo et al.)、2004年、J.Natl.Cancer Inst)。Aktは、EGFRの下流で、細胞の生存、増殖、および成長を含む多くの細胞の工程を調節するように働くセリン/スレオニンキナーゼであり、アミノ酸Thr308およびSer473でリン酸化により活性化される(ダタら(Datta et al.)。ソルデラら(Sordella et al.)は、ゲフィチニブ感作性のEGFRの突然変異が肺癌の細胞系でAktに伴う抗アポトーシスの経路を活性化することを示し、カプッツォら(Cappuzzo et al.)は、Aktの活性化状態が反応および無進行期間に関してNSCLC患者のゲフィチニブ感受性に関連するが、生存に関しては関連しないことを示した。生存との関連を欠くことは、非EGFR依存性の機序によるAkt活性化の結果としてゲフィチニブ治療に抵抗性である、リン酸化した(P)−Akt−陽性の患者のサブセットが存在することにより説明され得る。
【0052】
リン酸化Aktタンパク質を発現する腫瘍細胞を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測され、したがってこの系統の治療の使用の最良の候補者である。上述したように、この方法は、EGFR阻害薬の治療に反応することが予測される腫瘍を有する患者を同定する能力を増強するために、EGFRタンパク質の発現の検出、EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出;HER2遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出;ならびに/あるいはEGFR遺伝子における突然変異の検出のあらゆる1つまたは複数と組み合わされ得るとされている。EGFR遺伝子における1つまたは複数の突然変異、EGFRタンパク質の高発現、HER2遺伝子の増幅および/またはHER2の多染色体性、ならびに/あるいはいEGFR遺伝子の増幅および/またはEGFRの多染色体性と組み合わせてリン酸化Aktを発現する腫瘍を有する患者は、EGFR阻害薬での処置に反応性であることが予測される。
【0053】
本発明の一実施形態では、この方法には、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を用いたEGFRおよびHER2遺伝子の増幅、ならびに/または多染色体性の検出が含まれる。
【0054】
本発明の一実施形態では、この方法には、免疫組織化学(IHC)技術を用いたEGFRタンパク質またはリン酸化Aktタンパク質の検出が含まれる。
当業者であれば、本願における本発明の記載から明らかであろうが、上述した生物マーカーおよび検出プロトコールの様々な組合せにより、EGFR阻害薬での治療に反応性であることが予測される患者(および、反応が低い者であることが予測される患者)を同定する能力を増強し、または改善することができる。したがって、生物マーカー、検出プロトコール、および検出技術の使用のあらゆる組合せが本発明に包含される。さらに、同じ結果を達成するために他の技術を用いてもよいので、本発明は、本願に記載される検出技術(例えば、FISHおよびIHC)に限定されるものではない。例示として、本発明者らは、以下の特定の組合せがEGFR阻害薬の反応性を予測するのに特に有用であることを実証した:(1)FISHを用いたEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と、FISHを用いたHER2遺伝子の増幅および/または多染色体の検出との組合せ、(2)IHCを用いたEGFRタンパク質の発現の検出と、FISHを用いたHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出との組合せ、(3)FISHを用いた、EGFR遺伝子における突然変異の検出と、HER2遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出との組合せ、(4)FISHを用いたEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と、IHCを用いたEGFRタンパク質の発現の検出との組合せ、(5)IHCを用いたEGFRタンパク質の発現の検出と、EGFR遺伝子における突然変異の検出との組合せ、(6)IHCを用いた、EGFRタンパク質の発現の検出と、リン酸化Aktタンパク質の検出との組合せ、(7)EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と、EGFR遺伝子における突然変異の検出と、(8)EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と、IHCを用いたEGFRタンパク質の検出と、EGFR遺伝子における突然変異の検出と、ならびに(9)EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性の検出と、IHCを用いたEGFRタンパク質の発現の検出と、IHCを用いたリン酸化Aktタンパク質の発現の検出。
【0055】
本発明の方法を用いて、EGFR阻害薬での処置に対する患者の腫瘍の反応性および臨床上の結果を効果的に予測することができる。本願に提供されたデータのほとんどは、よく知られているEGFR阻害薬であるゲフィチニブ(ZD 1839、Iressa(登録商標)、アストラゼネカ(AstraZeneca)、英国所在)を投与されている患者で作成されたが、あらゆるタイプのあらゆるEGFR阻害薬に対する患者の腫瘍の反応性の評価が本発明に包含されることを理解されたい。
【0056】
本発明によると、EGFR阻害薬は、あらゆるEGFRを含む、上皮成長因子受容体(EGFR)の発現および/または生物学的活性を阻害する(阻止する、低下させる、拮抗する、減少させる、逆転させる)あらゆる物質である。したがって、阻害薬は、それだけには限定されないが、薬物/化合物/ペプチドの製品のデザインまたは選択、抗体またはその抗原結合性フラグメント、タンパク質、ペプチド、核酸(リボザイム、アンチセンス、RNAi、およびアプタマーを含む)、あるいは、EGFRの発現および/または生物学的活性を阻害するあらゆる他の製品を含むことができる。例えば、EGFRの周知の阻害薬には、薬物であるゲフィチニブ(ZD 1839、Iressa(登録商標)、アストラゼネカ(AstraZeneca)、英国所在)およびエルロチニブ(OSI 774、Tarceva(登録商標)、ジェネンテック(Genentech)、米国所在)、ならびにモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Imclone、ブリストルマイヤーズスクイブ(Bristol−Myers Squibb))が含まれる。しかし、本発明は、これらの特定の物質に限定されず、このような物質の作用薬(下記に記載する)、またはこれらの物質と実質的に同様の生物学的活性を有する物質を含むことができる。EGFRなどのタンパク質の生物学的活性または生物学的作用は、in vivo(すなわち、タンパク質の天然の生理学的環境)またはin vitro(すなわち、実験室の条件下)で測定または観察される、天然に存在する形態のタンパク質が表し、または実行するあらゆる機能を意味する。EGFRの生物学的活性には、それだけには限定されないが、EGFへの結合、受容体のホモ2量体化またはヘテロ2量体化、チロシンキナーゼ活性、ならびに細胞の恒常性および発生に関連する下流の活性が含まれる。
【0057】
本発明の様々な定義および態様を以下に記載するが、本発明は、説明の、または例示の目的で用いることがあるあらゆる特定の実施形態に限定されるものではない。ゲフィチニブが本願に記載される範囲では、ゲフィチニブは例示的なEGFR阻害薬であり、上記で論じたように、本発明の方法は、あらゆるEGFR阻害薬に対する患者の腫瘍の感受性または抵抗性の評価に適用可能である。
【0058】
本発明の方法は、試験すべき患者からの腫瘍細胞のサンプルにおける以下の生物マーカーの任意の1つもしくは2、3、4、5、6、または7つ全ての任意の組合せ、およびこのような生物マーカーのあらゆる検出タイプを検出することを含む:(1)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子(すなわちEGFRをコードする遺伝子)のレベル、(2)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の多染色体性のレベル、(3)HER2遺伝子の遺伝子増幅のレベル、(4)HER2遺伝子の多染色体性のレベル、(5)EGFR遺伝子における突然変異、(6)EGFRタンパク質の発現、および/または(7)リン酸化Akt発現。(1)と(2)との一緒の検出、および/または(3)と(4)との一緒の検出は一般的に、遺伝子コピー数における獲得または増加の検出と言及することができる。本発明によると、生物マーカーは検出、測定、または他の方法で評価されることができ、本発明ではEGFR阻害薬に対する患者の腫瘍の反応性(または無反応性)である特定の効果を同定、測定、または予測するために用いられるあらゆる遺伝子またはタンパク質またはその部分を含む。本発明に有用な生物マーカーには、EGFR遺伝子、EGFRタンパク質、HER2遺伝子、およびリン酸化Aktタンパク質が含まれる。本発明による生物マーカーの使用には、生物マーカーを検出または測定するための特定のプロトコールまたは技術の使用(検出のタイプ、例えば、FISHまたはIHC)、あるいは生物マーカーに付随する特別の特徴の同定(例えば、遺伝子の増幅、遺伝子の多染色体性、遺伝子またはタンパク質の発現レベル、突然変異の同定など)が含まれる。特に好ましい組合せには、以下の生物マーカーの組合せ、および上記に記載したその検出のタイプが含まれる:(1)および(2)、(3)および(4)、(1)および(2)および(3)および(4)、(2)および(4)、(1)および/または(2)および(6)、(1)および/または(2)および(7)、ならびに(6)および(7)。本発明はこれらの組合せに限定されない。
【0059】
患者のサンプルを得る適切な方法は当業者に知られている。患者のサンプルには、腫瘍細胞または腫瘍細胞のタンパク質を含んでいることがある患者からのあらゆる体液または組織が含まれ得る。より詳しくは、本発明による「試験サンプル」または「患者サンプル」は、それだけには限定されないが、単離された細胞のサンプル、組織サンプル、および/または体液サンプルを含めた、本発明の方法により評価される細胞から分泌された細胞または生成物を含むあらゆるタイプのサンプルを一般的に意味するために用いられ得る。本発明では、サンプルが組織サンプルであるのが最も典型的である。本発明によると、単離された細胞のサンプルは、典型的には、本発明の方法により評価されるための適切な数の細胞の収集物をもたらすあらゆる適切な方法により器官、組織、または液体から回収された、in vivoで組織内の細胞を結合していた可能性のある結合組織から分離された、懸濁液の細胞の検体である。細胞サンプル中の細胞は、必ずしも同じタイプである必要はないが、精製方法を用いて、評価するのが好ましいタイプの細胞に濃縮され得る。例えば、組織を摩擦し、組織サンプルを加工して個々の細胞を放出させ、または体液から単離することにより、細胞を得ることができる。
【0060】
組織サンプルは単離された細胞のサンプルと類似しているが、本願では、いくつかの細胞のタイプおよび/または細胞を結束する細胞骨格構造を通常含む、身体の器官または組織の切片と定義される。当業者であれば、「組織サンプル」は、ある場合には「細胞サンプル」と交換可能に用いられることができ、細胞サンプルよりもより複雑な構造を意味するのに用いられることが好ましいことを理解するであろう。生検により、例えば、切断、スライス、または穿孔されることにより組織サンプルを得ることができる。
【0061】
組織サンプルのような体液のサンプルは評価すべき細胞を含んでおり、サンプリングすべき特定の体液に適するあらゆる方法により得られる液体である。サンプリングに適する体液には、それだけには限定されないが、血液、粘液、精液、唾液、痰、気管支洗浄、母乳、胆汁、および尿が含まれる。
【0062】
一般的に、サンプルのタイプ(すなわち、細胞、組織、または体液)は、腫瘍細胞の成長を評価するための器官または組織の接触性および構造、および/または評価すべき癌のタイプが何であるかに基づいて選択される。例えば、評価すべき器官/組織が乳房である場合、サンプルは生検からの上皮細胞のサンプル(すなわち、細胞サンプル)、または生検からの乳房組織サンプル(組織サンプル)でもよい。本発明は、癌の患者、特に非小細胞肺癌を評価するのに特に有用であり、この場合、典型的なサンプルは患者からの肺の腫瘍の切片である。
【0063】
本発明による腫瘍細胞における遺伝子のコピー数は、例えば核でFISHアッセイにより測定されることができ、タンパク質の発現は、例えば腫瘍細胞の核、細胞質、および/または膜で免疫組織化学アッセイにより測定され得る。両方の試験、例えば、FISHおよび免疫組織化学、ならびに他の検出方法は、原発腫瘍、転移の腫瘍、局所再発性の腫瘍、痰、気管支洗浄、腹水、髄液、または他の腫瘍の設定で行われ得る。マーカーは、新鮮、凍結、固定、または他の方法で保存された腫瘍の検体で測定され得る。
【0064】
患者からサンプルを得たら、本願に記載された1つまたは複数の任意の生物マーカーの検出についてサンプルを評価する。本発明のいくつかの実施形態では、組織、細胞、またはそれらの一部分(例えば、組織の切片、核酸などの細胞の構成成分、など)を、1つまたは複数の核酸と接触させる。このようなプロトコールを用いて、例えば、遺伝子の発現、遺伝子の増幅、および/または遺伝子の多染色体性を検出する。このような方法には、細胞ベースのアッセイ、または非細胞ベースのアッセイが含まれ得る。標的の遺伝子を発現する組織または細胞をあらゆる適切な方法により、例えば適切な技術による標的の遺伝子の検出を可能にするやり方で、混合、ハイブリダイズ、または結合することにより、典型的には検出用物質(例えば、プローブ、プライマー、または他の検出可能なマーカー)と接触させる。
【0065】
患者のサンプルが、利用される検出技術に適するあらゆる方法により調製される。一実施形態では、患者のサンプルは、新鮮、凍結、固定、または他の方法で保存されて用いられ得る。例えば、患者の腫瘍細胞は、患者の組織を例えばパラフィン中に固定することにより調製され得る。固定化された組織から薄片が作成され、次いで標的遺伝子(例えば、EGFR、またはHER2)に対するプローブのハイブリダイゼーションの検出のためのプローブと接触され得る。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明による遺伝子の検出が、ハイブリダイゼーションアッセイを用いて実現される。核酸のハイブリダイゼーションは、プローブとその相補的な標的とが相補的な塩基対により安定なハイブリッドの2本鎖を形成することができる条件下で、プローブ(例えば、オリゴヌクレオチド、またはより大型のポリヌクレオチド)と標的の核酸とを接触させることを含むにすぎない。本願で用いられるハイブリダイゼーション条件は、そのもとで類似の核酸分子を同定するために核酸分子を用いる標準のハイブリダイゼーション条件を意味する。このような標準の条件は、例えば、サムブルックら(Sambrook et al.)、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」コールドスプリングハーバーラボラトリーズ出版(Cold Spring Harbor Labs Press)、1989年に開示されている。サムブルックら(Sambrook et al.)は、その全文を参照として本願に援用される(詳しくは、9.31〜9.62頁を参照されたい)。さらに、様々な程度のヌクレオチドのミスマッチを許すハイブリダイゼーションを実現する好適なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を計算するための式は、例えば、その全文を参照として本願に援用されるメインコスら(Meinkoth et al.)、1984年、Anal.Biochem.、138巻、267〜284頁;(Meinkoth et al.)に開示されている。ハイブリッドの2本鎖を形成しない核酸は、ハイブリダイズした核酸から洗い流され、次いで、典型的には、付着している検出可能の標識を検出することにより、ハイブリダイズした核酸を検出することができる。温度を上昇させ、または核酸を含むバッファーの塩濃度を低下させることにより、核酸を変性させることは一般的に認められている。厳密性の低い条件下(例えば、低温度、および/または高塩分)では、アニールした配列が完全に相補的ではない場合でも、ハイブリッドの2本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNA、またはRNA:DNA)が形成される。このように、ハイブリダイゼーションの特異性は、厳密性が低下すると低くなる。それとは反対に、厳密性が高くなる(例えば、高温度または低塩分)と、ハイブリダイゼーションが成功するには、ミスマッチがより少ないことが必要とされる。
【0067】
本願で言及される、厳密性の高いハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は、ハイブリダイゼーション反応でプローブするために用いられる核酸分子と少なくとも約90%の核酸配列の同一性を有する核酸分子を単離させる条件(すなわち、約10%またはそれ未満のヌクレオチドのミスマッチを許す条件)を意味する。当業者であれば、メインコスら(Meinkoth et al.)、1984年、Anal.Biochem.、138巻、267〜284頁(その全文を参照として本明細書に援用する)における処方を用いて、好適なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を計算して、これらの特定のレベルのヌクレオチドのミスマッチの実現することができる。このような条件は、DNA:RNAまたはDNA:DNAのハイブリッドのどちらが形成されるかに応じて変化する。DNA:DNAハイブリッドに対して計算された融解温度は、DNA:RNAハイブリッドに対する温度よりも10℃低い。特定の実施形態では、DNA:DNAハイブリッドに対する厳密なハイブリダイゼーション条件には、6×SSC(0.9MNa)のイオン強度で、約20℃と約35℃の間の温度での、より好ましくは約28℃と約40℃の間での、さらにより好ましくは約35℃と約45℃の間でのハイブリダイゼーションが含まれる。特定の実施形態では、DNA:RNAハイブリッドに対する厳密なハイブリダイゼーション条件には、6XSSC(0.9MNa)のイオン強度で、約30℃と約45℃の間での、より好ましくは約38℃と約50℃の間での、さらにより好ましくは約45℃と約55℃の間の温度でのハイブリダイゼーションが含まれる。これらの値は、約100ヌクレオチド、0%ホルムアミド、および約40%のG+C含量よりも大きい分子に対する融解温度の計算に基づくものである。あるいは、サムブルックら(Sambrook et al.)9.31〜9.62頁に述べてあるように、経験的にTを計算することができる。
【0068】
サンプルの核酸に付着している1つまたは複数の標識を検出することにより、ハイブリダイズされた核酸を検出する。標識を、当業者にはよく知られている、あらゆる数々の手段により組み込むことができる。本発明での使用に適する検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的な手段により検出可能なあらゆる組成物が含まれる。本発明における有用な標識には、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、Alexa fluors、Spectrum dye、など)、量子ドット、放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、および比色標識が含まれる。このような標識を検出する方法は当業者によく知られている。したがって、例えば、放射標識は写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出されることができ、蛍光マーカーは、放射された光を検出するための光検出器および蛍光顕微鏡を用いて検出されることができる。比色標識は、着色された標識を単に可視化することにより検出される。ハイブリダイズした核酸を蛍光標識により検出することが好ましく、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイのコンテキストで検出することが最も好ましい。FISHアッセイは当技術分野でよく知られており、例えば実施例の節で記載されている。
【0069】
本発明によると、単離されたポリヌクレオチド、または単離された核酸分子は、その天然の環境から除去されている(すなわち、ヒトの操作に曝されている)核酸分子であり、その天然の環境とは、核酸分子が自然界で見られるゲノムまたは染色体である。このように「単離された」とは、核酸分子が精製されている程度を必ずしも反映するものではないが、核酸分子が自然界で見られる全ゲノムまたは全染色体を分子が含んでいないことを示している。(例えば、遺伝子に対するハイブリダイゼーションにより)遺伝子を検出するために、本発明の方法で用いられるものなどのポリヌクレオチドは、典型的には、所与のサンプル(例えば、細胞サンプル)中で全長の遺伝子(またはその部分)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブ、またはPCRプライマーとして使用されるのに適する標的遺伝子の一部分である。単離された核酸分子には、遺伝子または遺伝子の一部分(例えば、調節領域、またはプロモーター)が含まれ得る。遺伝子を含む単離された核酸分子は、そのような遺伝子を含む染色体のフラグメントではなく、むしろ遺伝子に関連するコード領域および調節領域を含むが、同じ染色体上にさらなる遺伝子は天然には見られない。単離された核酸分子には、本来、特定された核酸配列に通常隣接しないさらなる核酸(すなわち、異種性の配列)が隣接する(すなわち、配列の5’および/または3’末端の)特定された核酸配列も含まれ得る。単離された核酸分子には、DNA、RNA(例えば、mRNA)、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体(例えば、cDNA)が含まれ得る。「核酸分子」は主に物理的な核酸分子を意味し、「核酸配列」は主に核酸分子上のヌクレオチドの配列を意味するが、特に、核酸分子、またはタンパク質をコードすることができる核酸配列に関して、2つの語句を交換可能に用いることができる。本発明の単離された核酸分子は、リコンビナントのDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニング)、または化学合成を用いて生成されることが好ましい。
【0070】
本発明によると、プローブ(オリゴヌクレオチドプローブ)は、典型的には長さ約50〜100ヌクレオチドから数百ヌクレオチドから数千ヌクレオチドのサイズの範囲の核酸分子である。したがって、プローブは、整数で増加して50から数千ヌクレオチドの範囲の任意の長さを含む、本願に記載されたアッセイで使用されるのに適するあらゆる長さでよい。このような分子は、厳密なハイブリダイゼーションの条件下でそのような標的の核酸配列とハイブリダイズすることにより、サンプル中の標的の核酸配列を同定するのに典型的に用いられる。ハイブリダイゼーション条件は上記に詳しく記載されている。
【0071】
PCRプライマーは、典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応に用いられる、かなり長さの短い(例えば、8〜30ヌクレオチド)のオリゴヌクレオチドであるが、PCRプライマーは核酸配列でもある。当業者であれば、標的の配列からの配列情報を用いて、PCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを容易に開発して生成することができる(例えば、サムブルックら(Sambrook et al.)、またはグリックら(Glick et al.)を参照されたい)。
【0072】
ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子のヌクレオチド配列は当技術分野で知られており、例えば、GenBank受諾番号AY588246(本願に参照として援用される)のもとに見ることができる。ヒトチロシンキナーゼ受容体型受容体(HER2)遺伝子のヌクレオチド配列も当技術分野で知られており、例えば、GenBank受諾番号M16789、M16790、M16791、M16792、およびM11730(全て本願に参照として援用される)のもとに見ることができる。ヌクレオチドプローブも当技術分野で知られており、EGFR遺伝子またはHER2遺伝子を検出するためのようなプローブとして用いるために入手可能である。例えば、EGFRおよび第7染色体セントロメア配列の両方を検出するためのプローブは入手可能である(例えば、LSI EGFR Spectrum Orange/CEP 7 Spectrum Greenプローブ(バイシス(Vysis)、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)社製)。
【0073】
本発明の方法では、腫瘍細胞サンプルにおけるEGFR遺伝子の増幅のレベルおよび/または多染色体性を:(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルから選択されるコントロールレベルのEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性と比較する。患者の腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルが、EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルを統計学的に超えている場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効であることが予測されるとして選択される。患者の腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子の増幅および多染色体性のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合、または患者の腫瘍細胞におけるEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効でないことが予測されるとして選択される。
【0074】
同様に、HER2遺伝子の増幅および/または多染色体性を評価する場合には、腫瘍細胞サンプルにおけるHER2遺伝子の増殖および/または多染色体性のレベルを、(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルから選択されるコントロールレベルのHER2遺伝子の増殖および/または多染色体性と比較する。患者の腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルを統計学的に超える場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効であることが予測されるとして選択される。患者の腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のコントロールレベルより統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効でないことが予測されるとして選択される。
【0075】
より詳しく述べると、本発明によると、「コントロールレベル」は、EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているレベル、またはEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているレベルを含むことができる遺伝子増幅および/または多染色体性の、あるコントロールレベルである。したがって、遺伝子の増幅および/または多染色体性のコントロールレベルまたはベースラインレベルと比較して、患者のサンプルがEGFR阻害薬の治療に対して、より感受性の傾向があるか、それともより抵抗性の傾向があるか(例えば、反応の良好な者または反応者(治療が有効であるであろう者)であるか、それとも反応が低い者または無反応者(治療が有効でない者またはほとんど有効でないであろう者)を決定することができる。
【0076】
遺伝子のコピー数を評価する(すなわち、遺伝子の増幅、および/または遺伝子の多染色体性により)本発明の一実施形態では、細胞1個当たりのコピー数の増加で患者を6つのカテゴリーに分類する:(1)2染色体(>90%の細胞で両標的の≦2コピー)、(2)低い3染色体性(≧40%の細胞で遺伝子の≦2コピー、および10〜40%の細胞で3コピー)、(3)高い3染色体性(≧40%の細胞で遺伝子の≦2コピー、および≧40%の細胞で3コピー)、(4)低い多染色体性(10〜40%の細胞で遺伝子の≧4コピー)、(5)高多染色体性(≧40%の細胞で遺伝子の≧4コピー)、および(6)密接なEGFR遺伝子クラスターが存在し、細胞1個当たりの遺伝子/染色体比が≧2であり、または分析した細胞≧10%で細胞1個当たりのEGFRのコピーの平均が≧15であることにより定義される遺伝子増幅(GA)。本発明者らは、EGFRおよび/またはHER2の遺伝子のコピー数またはコピー数における獲得が高い(例えば、遺伝子の増幅、および/または、高い3染色体性、低い多染色体性、もしくは高多染色体性を含む多染色体性)患者は、EGFR阻害薬治療に対する反応率が高くなり、進行性の疾患の割合が低くなり、進行により時間がかかるようになり、長期生存率が高くなる傾向が強くなることを見出している。多染色体性または遺伝子コピー数の全体の獲得が大きくなるほど良好な結果が予測される。本発明者らは、患者の腫瘍細胞にHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性が存在すると、EGFR陽性の患者(例えば、EGFR遺伝子コピー数における獲得を示す患者)に対してより感受性の表現型を与え、EGFR陰性の患者(例えば、EGFR遺伝子コピー数における獲得が全くない、または低い患者)に対してより良好な結果を与えることを見出した。
【0077】
コントロールレベルの遺伝子の増幅または多染色体性を確立するための方法は、サンプルのタイプ、サンプルが得られる組織または器官、および評価すべき患者の状態に基づいて選択される。この方法は、患者におけるサンプルを評価するために用いられるのと同じ方法であることが好ましい。好ましい実施形態では、コントロールレベルは、評価すべき細胞と同じ細胞のタイプを用いて確立される。好ましい実施形態では、ゲフィチニブに対して抵抗性または感受性であることが知られている患者または細胞系からのコントロールサンプルからコントロールレベル確立される。一態様では、適合された個体の集団からコントロールサンプルが得られた。本発明によると、「適合された個体」は、評価すべき細胞のタイプまたは腫瘍の成長に適する1つまたは複数の特徴に基づいたコントロールの個体の適合を意味する。例えば、コントロールの個体は、性別、年齢、人種、またはコントロールの個体および患者のベースラインに影響を及ぼすことがあるあらゆる関連性のある生物学的または社会学的要因(例えば、既存の条件、特別な物質の消費、他の生物学的もしくは生理学的要因のレベル)に基づいて評価すべき患者と適合され得る。コントロールレベルを確立するために、数々の適合させた個体からのサンプルを試験サンプルに関するのと同じやり方で入手されて評価される。適切なコントロールレベル(例えば、集団)を確立するためにその個体からコントロールサンプルを得なければならない適合された個体の数は、当業者であれば決定することができるが、評価すべき患者(すなわち、試験患者)との比較に適するベースラインを確立するのに統計学的に好適でなければならない。コントロールのサンプルから得られた値は、そのような値を確立するための当技術分野では標準の方法を用いて適切なベースラインのレベルを確立するためのあらゆる適切な統計学的分析の方法を用いて統計学的に処理される。実施例の節で、このような統計学的方法を記載する。
【0078】
アッセイが行われるときにコントロールレベルが各アッセイで確立される必要はないが、ベースラインまたはコントロールは、上記に記載されたあらゆる方法により確立されたコントロールレベルなど、感受性の患者および抵抗性の患者(反応者および無反応者)に対して以前に決定されたコントロールレベルに関するある形態の蓄えられた情報を参照することにより確立されることが当業者によって認識されるだろう。このようなある形態の蓄えられた情報には、例えば、それだけには限定されないが、参照図、感受性および抵抗性の腫瘍/患者に関する集団もしくは個体のデータの一覧表もしくは電子ファイル、または、評価すべき患者に有用な、コントロールレベルの遺伝子増幅もしくは多染色体性に関する他のデータの供給源が含まれ得る。例えば、所与の患者のサンプルを評価するためにEGFR阻害薬に対する反応性とすでに相関している、上記で確立され、多染色体性を確立して遺伝子の増幅を検出するための実施例でさらに記載されるガイドラインが使用され得る。
【0079】
本発明の一実施形態では、この方法は、EGFRまたはリン酸化Aktを含むタンパク質の発現を検出する工程を含む。タンパク質の発現は、生検で得られた腫瘍組織および細胞材料などの適切な組織で検出することができる。例えば、固定化され得る患者の腫瘍の生検サンプルを、検出すべきタンパク質と選択的に結合する抗体、抗体フラグメント、またはアプタマーと接触させることができ、抗体、そのフラグメント、またはアプタマーがタンパク質に結合したか否かを検出する。タンパク質の発現を、それだけには限定されないが、ウェスタンブロット、免疫ブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、りん光、免疫組織化学分析、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化法飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析計、マイクロサイトメトリー(microcytometry)、マイクロアレイ、顕微鏡、蛍光標示式細胞分取(FACS)、およびフローサイトメトリーを含む、当技術分野では標準の様々な方法を用いて測定することができる。好ましい実施形態では、タンパク質の発現を検出するために免疫組織化学(IHC)分析が用いられる。IHC法、およびタンパク質の発現を検出するための好ましい評価基準は、例えば、ヒルシュら(Hirsch et al.)、J.Clin.Oncol、2003年、21巻、3798〜3807頁に詳しく記載されており、実施例にも記載されている。
【0080】
タンパク質の発現を評価するための好ましいが非限定的な方法では、免疫組織化学の結果の評価として、以下のプロトコールが用いられる。本発明の一態様では、強度および陽性の細胞の分画に基づいてP−Aktの発現およびEGFRの発現をスコアすることができるが、本願に提供されるガイドラインを考慮すれば、当業者には他のスコアシステムは明らかであろう。強度のスコアを以下のように定義する:0=腫瘍細胞にはっきりと感知できる染色がない、1=細胞質および/または核に、間質の成分に比べてわずかに検出可能な染色、2=腫瘍細胞の細胞質および/または核をはっきり目立たせる容易に認識できる褐色の染色、3=腫瘍細胞に細胞質および/または核を不明瞭にする暗褐色の染色、あるいは4=核および/または細胞質に非常に濃い染色。スコアは陽性細胞の分画をもとになっている(0%〜100%)。全スコアは、強度のスコアと分画のスコアとを掛け合わせて、全範囲を0から400とすることにより計算される。統計学的な分析では、0〜200のスコアは陰性/低発現とみなされ、201〜400のスコアは陽性/高発現とみなされる。このカットオフレベルは、本発明者らからの以前の研究に基づくもので、この研究ではEGFRタンパク質の発現の増大と遺伝子コピー数の増加との間の相関が見出された(ヒルシュら(Hirsch et al.)、J.Clin.Oncol.、2003年、21巻、3798〜3807頁)。これらのカットオフのレベルは、アッセイを行うのに都合の良いレベルであるが絶対的なレベルではない。例えば、5、10、15、20、25、30、35、またはそれを超えるポイントによってカットオフスコアを低くまたは高くすることなどにより、このスコアシステムは修正または操作され得る。
【0081】
本発明の方法では、腫瘍細胞サンプルにおけるEGFRタンパク質の発現、および/またはリン酸化Aktの発現のレベルは、(i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルから選択されるコントロールレベルのEGFRタンパク質の発現、および/またはリン酸化Aktの発現と比較される。患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現および/またはリン酸化Aktの発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現および/またはリン酸化Aktの発現のコントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現および/またはリン酸化Aktの発現のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現および/またはリン酸化Aktの発現のレベルを統計学的に超える場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効であることが予測されるとして選択される。患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現および/もしくはリン酸化Aktの発現のレベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現および/もしくはリン酸化Aktの発現のコントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現および/もしくはリン酸化Aktの発現のレベルが、EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現および/もしくはリン酸化Aktの発現のレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、患者は、EGFR阻害薬、その作用薬、またはEGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物の治療的投与が有効でないことが予測されるとして選択される。
【0082】
遺伝子の増幅および多染色体性の検出に関して好適なコントロールを上記で論じたが、このような考察を、タンパク質の発現に対するコントロールに容易に当てはめて推定することができる。上記で論じたように、比較のためのコントロールレベルは、ある形態の情報として提供される予め確立されたコントロールを含めた、あらゆるタイプのコントロールでもよい。例えば、EGFRタンパク質の発現に関して、上記に記載されたEGFRの発現に対するスコアシステムを用いて、約200を超える(201〜400)スコアを高発現(EGFR発現に対し陽性)の患者であるとみなされ、約0〜200のスコアを低発現(EGFR発現に対し陰性)の患者であるとみなされる。コントロールとの比較に基づいて他のスコアシステムを考案することができ、カットオフ付近にあたる患者を、診断を確認するために、他の基準、生物マーカー、または技術により評価することができる。また、カットオフは、患者の集団に従って、臨床医または研究者の望み通りに変化させてもよい。上記に記載したカットオフレベルはアッセイを行うのに都合の良いレベルであり、現在のデータを考慮して本発明者らが最適化したものであり、絶対的なレベルではない。例えば、5、10、15、20、25、30、35、またはそれを超えたポイントによってカットオフスコアを低くまたは高くするなどにより、このスコアシステムを修正または操作してもよいことが企図される。リン酸化Aktに関して同様の方法論が用いられた。
【0083】
本発明の一実施形態では、この方法は、EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異を検出するさらなる工程を含む。特に、EGFR遺伝子のエキソン18、19、および21は、現在までに報告されているNSCLSにおける56のEGFR突然変異の約98%を含むので、これらのエキソンは突然変異を評価するための良い目標である。リンチら(Lynch et al.)、またはパエツら(Paez et al.)(26、27)は、反応のない患者にはなかったことと比べて、ゲフィチニブに反応性の肺癌患者の大多数に、EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域において体細胞突然変異を同定した(P<0.001)。突然変異は、チロシンキナーゼ領域のATP結合性ポケットの周辺に密集した小さいインフレームの欠失またはアミノ酸置換のいずれかであった。同様の突然変異を、ゲフィチニブに曝されていなかった原発性の非小細胞肺癌の患者の8%からの腫瘍で検出した。突然変異は全てヘテロ接合性であり、複数の患者で同一の突然変異が観察され、付加的で特異的な機能の獲得を示唆していた。in vitroでは、EGFRの突然変異体は、上皮成長因子に反応してチロシンキナーゼ活性の増強、およびゲフィチニブによる阻害に対する感受性の増大を実証していた。したがって、本発明は、EGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性のためのスクリーニング、ならびに/あるいはHER2遺伝子の増幅のためのスクリーニング、と組み合わせて使用するための、あるいはその後の第2のスクリーニングとして使用するための、腫瘍細胞サンプルにおけるこのような突然変異の検出を企図するものである。EGFR遺伝子において1つまたは複数の突然変異を検出することは、患者がEGFR阻害薬治療に反応し、またはそが有効である傾向が強いという予測となる。突然変異を検出しないことは、患者がEGFR阻害薬治療に反応し、またはそが有効である傾向があまりないという予測となる。遺伝子の突然変異をスクリーニングするための方法は当技術分野ではよく知られており、リンチら(Lunch et al.)、およびパエツら(Paez et al.)に記載されており、それだけには限定されないが、ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応、ポリアクリルアミドゲル分析、クロマトグラフィー、または分光法が含まれ、遺伝子がコードするタンパク質生成物の変更に対するスクリーニング(例えば、免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、蛍光標示式細胞分取(FACS)、および免疫蛍光顕微鏡による)をさらに含むことができる。
【0084】
本願で用いられる「に対して選択的に結合する」は、あるタンパク質の、別のタンパク質(例えば、抗体、そのフラグメント、またはタンパク質に対する結合パートナー)に対する特異的な結合を意味し、結合のレベルは、あらゆる標準のアッセイ(例えば、免疫アッセイ)で測定されるとアッセイに対するバックグラウンドのコントロールよりも統計学的に有意に高い。例えば、免疫アッセイが行われる場合に、コントロールは、典型的には抗体または抗原結合性フラグメントのみを含む(すなわち、抗原の非存在で)反応ウェル/チューブを含み、抗原の非存在下での抗体またはその抗原結合性フラグメントによる反応性の量(例えば、ウェルに対する非特異的な結合)をバックグラウンドとみなす。
【0085】
本発明による生物マーカーの検出の工程を、本願に記載する多くの様々な組合せで組み合わせてもよく、この工程を任意の順番で、または実質上同時に行うことができる。コントロールと患者のサンプルとの間の差を決定するための統計学的な分析を、それだけには限定されないが、定性的変数を求めるピアソンのカイ二乗検定のフィッシャーの正確確率検定、および連続変数を求めるスチューデントのt検定または分散分析を用いたものを含めた当技術分野では周知のあらゆる方法を用いて実行することができる。統計学的有意性は、典型的にはp<0.05と定義される。統計学的な方法は、実施例でより詳しく記載される。
【0086】
本発明の方法は、EGFR阻害薬、その作用薬、または、EGFR阻害薬と実質的に同様の生物学的活性を有する薬物を用いた治療に反応する(例えば、治療的利点をもって)傾向が最も強い患者を決定し、または予測するのに、また、EGFR阻害薬を用いた治療に反応しない傾向が最も強い患者を決定し、または予測するのに有用である。本願で用いられる作用薬は、天然に存在する、または基準タンパク質もしくは化合物の生物学的活性をアゴナイズ(agonize)する(例えば、刺激し、誘発し、増大させ、増強し、または模倣する)能力を特徴とする化合物である。より詳しくは、作用薬は、それだけには限定されないが、天然または基準化合物の活性を模倣し、または増強する化合物、タンパク質、ペプチド、抗体、または核酸を含むことができ、あらゆるホモログ、ミメティック、または天然に存在し、または基準化合物の生物学的活性をアゴナイズする(例えば、刺激し、誘発し、増大させ、増強する)能力を特徴とする薬物/化合物/ペプチドのデザインもしくはセレクションのあらゆる適切な生成物を含む。それとは対照的に、拮抗薬は、上記に記載した天然に存在する化合物、または基準化合物の効果を阻害する(例えば、拮抗し、低下させ、減少させ、阻止し、逆転させ、または変更する)あらゆる化合物を意味する。より詳しくは、拮抗薬は、基準化合物の活性に関連するやり方で作用することができ、その結果、天然の化合物、または基準化合物の生物学的活性が、基準化合物の天然の作用に拮抗的な(例えば、逆らって、逆に、または反対して)やり方で低下する。このような拮抗薬には、それだけには限定されないが、あらゆる化合物、タンパク質、ペプチド、または核酸(リボザイムおよびアンチセンスを含む)、または拮抗的な作用をもたらす薬物/化合物/ペプチドのデザインもしくはセレクションの生成物が含まれ得る。
【0087】
薬物デザインの生成物である作用薬および拮抗薬を当技術分野では周知の様々な方法を用いて生成することができる。本発明に有用なミメティックまたは他の化合物をデザインするのに有用な薬物デザインの様々な方法は、モーリクら(Maulik et al.)、1997年、「分子生物工学:治療的応用と戦略(Molecular Biotechnology:Therapeutic Applications and Strategies)」、ワイリーリス社(Wiley−Liss Inc.)に発表されており、その全文を参照として本願に援用する。作用薬または拮抗薬は、例えば、分子多様性の戦略(広範な、化学的に多様な分子ライブラリーの迅速な構築を可能にする関連する戦略の組合せ)から、天然のまたは合成の化合物のライブラリーから、特に化学的またはコンビナトリアルのライブラリー(すなわち、配列またはサイズが異なるが、同様の構成単位を有する化合物のライブラリー)から、または合理的な、定方向もしくはランダムな薬物デザインにより得ることができる。例えば、モーリクら(Maulik et al.)を参照されたい。
【0088】
分子多様性の戦略では、広範な化合物ライブラリーが、例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチド、天然もしくは合成のステロイド化合物、炭水化物、および/または天然もしくは合成の有機の非ステロイド分子から、生物学的な、酵素的な、および/または化学的な取組みを用いて合成される。分子多様性の戦略を開発する決定的なパラメータには、サブユニットの多様性、分子サイズ、およびライブラリーの多様性が含まれる。このようなライブラリーをスクリーニングする一般的な目標は、コンビナトリアルのセレクションの逐次適用を利用して、望ましい標的に対する高親和性のリガンドを得た後、ランダムまたは定方向のデザイン戦略のいずれかにより主要な分子を最適化することである。分子多様性の方法は、モーリクら(Maulik et al.)に詳しく記載されている。
【0089】
ゲフィチニブと実質的に同様の生物学的活性を有する薬物は、in vivo(すなわち、生理学的条件下で)またはin vitroで(すなわち、実験室条件下で)測定され、または観察された基準化合物とされている基準化合物で表され、または行われた実質的にあらゆる機能を有する薬物を意味する。
【0090】
他のタイプのEGFR阻害薬には、それだけには限定されないが、アプタマー、RNAi、およびリボザイムが含まれ得る。アプタマーは、予め決定された特定の標的分子に高い親和性および特異性で結合するその能力によって、ランダム化したコンビナトリアルの核酸ライブラリーから選択された短鎖の合成の核酸(通常RNAであるが、DNAもある)である。アプタマーは、規定された3次元構造を想定し、構造上の相違が非常に小さい化合物間の識別をすることができる。RNA干渉(RNAi)は、二重鎖のRNA、哺乳類の系統では短い干渉RNA(siRNA)を用いて相補的な遺伝子の発現を阻害し、またはサイレンシングする工程である。標的の細胞ではsiRNAはほどけており、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と関連し、RISCは、次いでsiRNAに相補的であるmRNA配列に導かれ、そこでRISCがmRNAを切断する。リボザイムは、生物学的触媒作用を実行することができる(例えば、共有結合を切断し、または形成することにより)RNAセグメントである。より詳しく述べると、リボザイムは、標的のRNA部分に結合することにより機能し、特定の切断部位でホスホジエステルのバックボーンを切断することによりそれを不活性化するアンチセンスのRNA分子である。
【0091】
別のタイプのEGFR阻害薬には、抗体、その抗原結合性フラグメント、または抗原結合性ペプチドすなわち「結合パートナー」が含まれ得る。抗体は免疫グロブリン領域からなり、それ自体はタンパク質の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを特徴とする。抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、2価抗体および1価抗体、双特異性抗体または多特異性抗体、このような抗体を含む血清、様々な程度に精製されている抗体、ならびに抗体全体のあらゆる機能上の同等物が含まれ得る。EGFR阻害薬として有用な単離された抗体には、このような抗体を含む血清、または様々な程度に精製されている抗体が含まれ得る。本発明の抗体全体は、ポリクローナルでもよいしモノクローナルでもよい。あるいは、1つまたは複数の抗体領域が切断され、または存在しない(例えば、Fv、Fab、Fab’、またはF(ab)フラグメント)抗原結合性フラグメントなどの抗体全体の機能上の同等物、および1つを超えるエピトープ(例えば、双特異性抗体)に結合することができる単鎖抗体もしくは抗体、または1つもしくは複数の異なる抗原に結合することができる抗体(例えば、双特異性抗体もしくは多特異性抗体)を含めた、遺伝子操作された抗体またはその抗原結合性フラグメントも、EGFR阻害薬として使用され得る。EGFRに特異的に結合するようにデザインされ、EGFRを阻害する結合パートナーも評価され得る。処方されたリガンドの特異性を所有するこのようなポリペプチドのデザインの例は、ベステら(Beste et al.)(Proc.Natl.Acad.Sci.、96巻、1898〜1903頁、1999年)に挙げられている。
【0092】
本発明の別の実施形態には、本発明のあらゆる方法を行うためのアッセイキットが含まれる。アッセイキットには、任意の1つまたは複数の以下の構成要素が含まれ得る:(a)腫瘍細胞のサンプルで、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅のレベルおよび/または上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の多染色体性のレベルを検出するための手段、(b)腫瘍細胞のサンプルでHER2遺伝子の増幅のレベルを検出するための手段、(c)腫瘍細胞のサンプルでEGFRタンパク質の発現を検出するための手段、(d)腫瘍細胞のサンプルで、リン酸化Aktタンパク質の発現を検出するための手段、および/または(e)腫瘍細胞のサンプルで、EGFR遺伝子における少なくとも1つの(しかし、1つを超えて含むことができる)突然変異を検出するための手段。アッセイキットは、1つまたは複数のコントロールも含むことが好ましい。コントロールには、(i)患者で使用するために評価されているEGFR阻害薬に対する感受性を検出するためのコントロールのサンプル、(ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性を検出するためのコントロールサンプル、(iii)EGFR阻害薬の感受性または抵抗性に関して測定すべき、特別な生物マーカーの予め決定したコントロールレベルを含む情報(例えば、EGFR阻害薬に対する感受性またはEGFR阻害薬に対する抵抗性と相関している、予め決定したコントロールレベルのEGFR遺伝子の増幅および/または多染色体性)が含まれ得る。
【0093】
一実施形態では、EGFRまたはHER2遺伝子の増幅および/または多染色体性を検出するための手段は概して、本発明の方法で用いられ得るあらゆるタイプの試薬でよい。検出のためのこのような手段には、それだけには限定されないが、厳密なハイブリダイゼーション条件下でEGFR遺伝子、またはHER2遺伝子、または第7染色体(その上にEGFRが位置する染色体)もしくは第17染色体(その上にHER2が位置する染色体)の一部分にハイブリダイズするプローブまたはプライマーが含まれる。EGFRおよびHER2の遺伝子に対する核酸配列は当技術分野で知られており、検出のためのこのような試薬を生成するために用いられ得る。検出のためにこのような手段を用いてアッセイを行うのに有用なさらなる試薬には、また、in situハイブリダイゼーションを行うための試薬、蛍光マーカーを検出するための試薬、ポリメラーゼ連鎖反応を行うための試薬などが含まれ得る。
【0094】
別の実施形態では、EGFRまたはリン酸化Aktタンパク質の発現を検出するための手段は概して、本発明の方法で用いられ得るあらゆるタイプの試薬でよい。検出のためのこのような手段には、それだけには限定されないが、抗体およびその抗原結合性フラグメント、ペプチド、結合性パートナー、アプタマー、酵素、および小分子が含まれる。検出のためのこのような手段を用いてアッセイを行うのに有用なさらなる試薬には、免疫組織化学または別の結合性アッセイを行うための試薬なども含まれ得る。
【0095】
本発明のアッセイキットの検出のための手段を、検出可能なタグまたは検出可能な標識と組み合わせることができる。このようなタグは、重要な遺伝子またはタンパク質を検出するために用いられる試薬の検出を可能にするあらゆる適切なタグであってよく、それだけには限定されないが、分光学的な、光化学的な、電気的な、肉眼的な、または化学的な手段により検出可能なあらゆる構成物または標識であってよい。本発明で有用な標識には、標識されたストレプトアビジン複合体で染色するためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質、など)、放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ホースラディッシュのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで通常用いられるその他のもの)、金コロイド、または着色ガラスもしくはプラスチックの(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、などの)ビーズなどの比色標識が含まれる。
【0096】
さらに、本発明のアッセイキットを検出するための手段を基質上に固定化してもよい。このような基質には、先に記載したあらゆる検出の方法で用いるものなど、検出試薬を固定化するのに適するあらゆる基質が含まれ得る。手短に述べると、検出のための手段の固定化に適する基質には、あらゆる固体の有機の、2元重合体、または無機の支持体など、望ましい標的分子を検出するための検出手段の活性および/または能力に著しく影響を与えずに、検出するための手段と結合を形成することができるあらゆる固体の支持体が含まれる。例示的な有機の固体支持体には、ポリスチレン、ナイロン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびアクリル共重合体(例えば、ポリアクリルアミド)などのポリマーが含まれる。キットには、試薬を検出するのに、かつ/または陽性もしくは陰性のコントロールを標識するのに適する試薬、洗浄溶液、希釈バッファーなども含むことができる。キットには、該キットを使用して結果を解釈するための書面の指示書のセットも含まれ得る。
【0097】
キットは、本願で先に記載した生物マーカーの存在を検出するための方法などにより、サンプルにおける既知のマーカーの存在を検出する方法(核酸またはタンパク質のレベルで)で使用することができる、一般的にあらゆるタイプの試薬であることができるサンプリングされる細胞タイプの特性を示しているコントロールのマーカーを検出するための手段も含むことができる。特に、その方法は、それが細胞のタイプを確実に同定する、分析される細胞タイプの特定のマーカーを同定することを特徴としている。例えば、肺腫瘍のアッセイでは、肺の上皮細胞を、生物マーカーの発現のレベルおよび/または生物学的活性についてスクリーニングすることが望ましい。したがって、コントロールのマーカーを検出するための手段は、細胞を結合組織または炎症細胞などの他の細胞型から区別するために、上皮細胞、および好ましくは肺の上皮細胞に特徴的なマーカーを同定するものである。このような手段は、本発明のアッセイの正確さおよび特異性を増大させる。コントロールのマーカーを検出するためのこのような手段には、それだけには限定されないが、厳密なハイブリダイゼーションの条件下でタンパク質のマーカーをコードする核酸分子とハイブリダイズするプローブ、このような核酸分子を増幅するPCRプライマー、標的分子の高次構造上特徴的な部位に特異的に結合するアプタマー、および/または、抗体、その抗原結合フラグメント、もしくはサンプルにおけるコントロールマーカーに選択的に結合する抗原結合性ペプチドが含まれる。多くの細胞マーカーに対する核酸配列およびアミノ酸配列は当技術分野で知られており、検出のためのそのような試薬を生成するために使用され得る。
【0098】
本発明のアッセイキットおよび方法は、特別なEGFR阻害薬に反応性であることが予測される患者を同定するためだけに用いるのではなく、EGFR阻害薬に対して抵抗性である癌細胞の反応性を改善することができる処置を同定し、EGFR阻害薬の反応を増強する補助療法を開発するためにも用いられ得る。
【0099】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態、およびその様々な使用を説明するものである。これらは、説明の目的で述べるにすぎず、本発明を限定するものとして理解すべきではない。
【実施例】
【0100】
実施例1
以下の実施例では、(イタリア調査団の調査に基づいて)EGFR阻害剤に対するNSCLC腫瘍の治療結果を予測するためにEGFR遺伝子増幅および多染色体性の検出を用いることを実証する。
【0101】
方法
患者の選択および調査設計
ベラリア・ホスピタル(Bellaria Hospital)(Bologna)、サイエンティフィック・インスティチュート・ユニバーシティ・ホスピタル・サン・ラッファエル(Scientific Institute University Hospital San Raffaele(Milano)、およびポリクリニコ・モンテルーセ(Policlinico Monteluce)(Perugia)の3つのイタリアの施設に調査対象患者を集めた。参加資格は、測定可能な局所的進行性または転移性疾病を有する組織学的に確認されたNSCLC患者を含み、高齢であるために化学療法に適さない患者は、低い機能状態、または同時罹患状態を有していた。試験的封入に先立って、喫煙状況を評価し、患者を未喫煙者、元喫煙者(試験的封入前の禁煙期間が6カ月を上回る患者)または現行喫煙者(試験的封入前の禁煙期間が6カ月未満、または喫煙中)に分類した。調査は、適切な論理検討委員会によって承認され、通知同意書を試験参加前の各患者から得た。
【0102】
2001年5月から2004年1月までに、108人の患者が、疾病進行、許容不可能な毒性または拒絶が発生するまで、250mgの毎日経口投与にてゲフィチニブを投与された。何人かの患者についての効果結果は既に報告されている(28、29)。RECIST基準に従って患者を評価した(30)。2カ月毎にコンピュータ・トモグラフィ走査によって腫瘍応答を評価し、最初の応答の確認後少なくとも4週間目に応答患者において確認評価を繰り返した。ゲフィチニブ治療の開始日から進行疾病または最終接触の検出日までの無進行期間(TTP)を計算した。治療開始の日から死亡または最終接触日までの全生存期間(OS)を計算した。
【0103】
組織調製およびFISH分析
癌治療前の診断時に腫瘍献体を得た。患者毎に、代表的な悪性腫瘍細胞を含むパラフィン埋込みブロックから一連の5μm厚の組織断片を薄く切り取った。世界保健機構(WHO)基準に基づいて、ヘマトキシリン・エオシン(HE)着色断片に関する組織学的分類を実施した(31)。他の個所に記載されたプロトコールに従って、LSI EGFRスペクトルオレンジ/CEP7スペクトルグリーン/プローブ(ビシス(Vysis)、アボット・ラボラトリーズ(Abbot Laboratories)を使用してデュアル・ターゲット、デュアル・カラーFISH検定を行った(10)。支配的な腫瘍病巣が識別された近隣断片の対照HE着色スライドを使用して、そのままの形態の少なくとも100の非重複核において、EGFR遺伝子および第7染色体プローブのコピー数を独立的に評価して記録した。分析は、厳密な採点指針に従って、患者の臨床特性を知らされていない2人の観察者(FC、MVG)によって独立的に実施された。2人の観察者によって識別されたFISHパターンの間に高い相関性(r=0.96、p<0.01)があり、採点に対する選択された基準は再現性があることを示唆していた。非調和FISHパターンを再評価し、2人の検査者によるコンセンサスが得られた。
【0104】
特定のコピー数のEGFR遺伝子および第7染色体中心体を有する腫瘍細胞の頻度に従って、細胞毎コピー数の小さい順に、患者を6つのFISH範疇、すなわち(1)二染色体性(90%を上回る細胞における両方の目標のコピー数が2以上)、(2)低三染色体性(40%以上の細胞における遺伝子のコピー数が2以上で、10〜40%の細胞におけるコピー数が3以上)、(3)高三染色体性(40%以上の細胞における遺伝子のコピー数が2以上で、40%以上の細胞におけるコピー数が3以上)、(4)低多染色体性(10〜40%の細胞における遺伝子のコピー数が4以上)、(5)高多染色体性(40%以上の細胞における遺伝子のコピー数が4以上)、および(6)緻密なEGFR集団が存在すること、および細胞毎の遺伝子/染色体の比率が2以上であること、または10%以上の分析細胞における細胞毎にEGFRのコピー数の平均が15以上であることによって定義づけられる遺伝子増幅に分類した。
【0105】
RNA抽出および定量的RT−PCR
RNAを単離してcDNAを転写し、先述したように定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を実施した(ロセルら(Rosell et al.)Clin Cancer
Res 2004;10:1318−25)。マニュアル、または製造元のガイドラインに従い、PALM機器(P.A.L.M.マイクロレーザ・テクノロジーズAGコーポレイティッド社(P.A.L.M.Microlaser Technologies AG Inc.)[ドイツベルンリート(Bernried)所在])を使用するレーザ捕捉技術によって腫瘍細胞の顕微解剖を行った。プライマーおよびプローブは、フォワードEGFRプライマー:5’−TCCGTCTCTCTTGCCGGGAAT−3’(SEQ ID NO:1)、リバースEGFRプライマー:5’−GGCTCACCCTCCAGAACCTT−3’(SEQ ID NO:2)、EGFRタクマン・プローブ:5’−ACGCATTCCCTGCCTCGGCTG−3’とした(Gen Bank受託番号:NM_005228)。
【0106】
統計分析
定性変数に対するフィッシャーの正確確率検定またはχ検定、および連続変数に対するスチューデントのt検定またはANOVAによってFISH群間の差を比較した。コルモゴロフ−スミルノフ検定によって分布の正規性を評価した。対数ランク検定によりFISHグループを比較するカプラン−マイヤー法(32)によって、無進行期間(TTP)、全生存期間(OS)および95%信頼区間を評価した。ステップ・ダウン手順によるコックスの比例ハザード回帰モデル(33)を用いて、生存に伴うリスク要因を評価した。一変数分析における有意な結果を伴うそれらの変数のみを多変数分析に含めた。変数除去に対する基準は、推定された最大部分尤度に基づく尤度比統計とした(モデルからの除去に対してデフォルトp値=0.10)。
【0107】
結果
臨床特性
合計108人の患者が試験に参加し、102人が完全に分析された。3人の患者が引き続きの試験から離脱し、3つの検体では腫瘍壊死または組織保存不良によりFISH結果が得られなかった。9人(8.8%)の患者が、第一線の治療としてゲフィチニブを受けた(そのうちの1人が80歳を超えており、1人が化学療法に対する拒絶を示し、7人の患者が化学療法を禁忌する同時罹患を示していた)。残りの患者は、ゲフィチニブに先だって化学療法を受け、これらのうちの78.4%が白金剤を受けた。ゲフィチニブ治療期間中央値は、2.8カ月(0.6〜20カ月の範囲)であった。試験的封入時は、大半の患者が現行喫煙者(52.9%)または元喫煙者(32.4%)であった。
【0108】
1つの完全寛解(CR:1%)、13の部分寛解(PR:12.7%)および26の安定(SD:25.5%)が観察され、奏功率(OR=CR+PR)が13.7%、全疾病抑制率(DCR:CR+PR+SD)が39.2%であった。最後の患者が参加してから少なくとも3カ月経過した2004年4月にTTPおよびOSに対する最終分析を行った。7.0カ月の中央値追跡によると、全患者に対するTTP中央値は2.9カ月(標準偏差:5.1カ月)であり、OS中央値は7.0カ月(標準偏差7.2カ月)であり、1年間生存期間は45.1%であった。
【0109】
表1は、患者特性と応答の関係、無進行期間および生存期間を示す。女性は、男性と比較して、より高い奏功率(28.6%対6.0%、p=0.004)、より長いTTP(中央値4.5対2.7カ月、p=0.02)、およびわずかに良好な生存期間(中央値9.0対6.9カ月、p=0.059)を有していた。また、元喫煙者および現行喫煙者と比較して、非喫煙者ではより良好な奏功率が確認されたが(40.0%対20.8%、p=0.006)、TTPおよび生存期間の差はなかった。腺癌および細気管支肺胞癌の患者では、他の組織状態を有する患者と比べて、奏功率およびTTPの差は大きくなかったが、中央値生存期間はより高かった(p=0.02)。PS 0および1(p=0.01)の患者では、PS 2の患者と比べてより良好な生存期間が確認された。年齢および疾病段階は、ゲフィチニブ活性と相関性がなかった。
【0110】
【表1】

FISHおよび定量的RT−PCR
63の検体における定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によってEGFR遺伝子発現の評価も行った。相対遺伝子発現は、低EGFR遺伝子コピー数(二染色体性から低多染色体性まで)を有する40の検体では2.90(範囲=0.17から28.0)、高EGFR遺伝子コピー数(高多染色体性および遺伝子増幅)を有する23の検体では7.15(範囲=0.19から28.3)であり、遺伝子増幅を有する9つの腫瘍の間では特に高かった(平均=8.46、範囲=1.7から21.5)。相対的発現と遺伝子コピー数との間には有意な性の相関性(ピアソンr=0.33、P=0.007)があり、それは、コピー数が増加した検体は遺伝子発現がより高いことを示唆するものであった。
【0111】
FISHおよび臨床変数
二染色体性は35.3%の症例に存在し、低三染色体性は16.7%の症例に存在し、高三染色体性は2%の症例に存在し、低多染色体性は13.7%の症例に存在し、高多染色体性は19.6%の症例に存在し、遺伝子増幅は12.7%の症例に存在した。
【0112】
FISH結果と、ゲフィチニブに対する応答と、ゲフィチニブ後の疾病無進行期間と、ゲフィチニブ後の生存期間との関係を表2に示す。二染色体性範疇では反答者は存在せず、75%が進行し、TTP中央値および1年生存率は低かった(図1)。同様に、反答者が存在せず、71%および86%が進行性疾病を有し、無進行期間が短く、長期間生存者がほとんどいない低三染色体性および低多染色体性の群では劣った結果が示された。対照的に、高三染色体性および高多染色体性の患者では、反答者が確認され、進行性疾病を有する患者はほとんど存在せず、無進行期間がより長く、生存期間がより長かった。遺伝子増幅を有する患者は、奏功率が高く(53.8%)、進行性疾病の割合が低く(23.1%)、無進行期間が長く、長期間生存者の割合が高かった(表2、図1)。
【0113】
表2に示されるように、遺伝子増幅または高多染色体性によりEGFR遺伝子のコピー数が多い患者を統合し(群2)、2または3の遺伝子コピーを有する統合FISH範疇(群1)と比較した。奏功を有する患者のうち、85.7%(12/14)が群2に含まれていた。安定性を有する患者のうち、38.5%(10/26)が群2に含まれていた。OR率は、高染色体範疇では25%、増幅範疇では54%、統合群2では36%であり、群1(2.9%、p<0.001)に比較して有意に高かった。疾病抑制率も群1に比較して群2の方が有意に高かった(66.7%対26.1%、p<0.001)。高三染色体性の群は、いずれも良好な結果を有する2人の患者しか含んでいなかったことに留意されたい。これらの患者を群2の患者と統合すると、それらの差はより顕著になるであろう。しかし、分子的な観点からとらえると、EGFR遺伝子コピーがより少ないこれらの患者は、二染色体性および低三染色体性患者とより近い関係にあるように思われた。
【0114】
【表2】

無進行期間に関しても、群2の患者は群1より良好であった。12カ月で群2の患者の61%が進行したのに比べて、群1の患者の91%が進行した。対数ランク検定によるTTPの差は有意であった(p<0.001)(図2A)。生存期間についても、群2の患者は群1と比較して良好であった(図2B)。1年および2年生存率は、群1の36.2%および17%と比較して、群2では63.6%および40%であった。対数ランク検定によるこれらの群の差は統計的に有意であった(p=0.03)。
【0115】
表3は、EGFR遺伝子状態と患者特性の関係を示している。EGFR遺伝子増幅および高多染色体性を有する患者は、女性(p=0.037)および非喫煙者(p=0.001)である可能性が高いが、組織病理との関連性は有意なものではなかった。死亡のリスクは、群2の患者(HR:0.40、95%CI:0.21〜0.76、p=0.005)および腺癌または細気管支肺胞癌の患者(HR:0.58、95%CI:0.35〜0.97、p=0.03)の患者の方が有意に低いことが多変数分析によって示された。逆に、能力状態の劣った(PS2)患者の方が死亡のリスクが有意に高かった(HR:3.86、95%CI:1.76〜8.46、p=0.001)。
【0116】
【表3】

要約すると、これらの調査により、化学療法を受けて進行または再発し、毎日250mgのゲフィチニブの経口投与で治療された102人のNSCLC患者における得CFR遺伝子の細胞毎コピー数とNSCLCにおけるゲフィチニブとの相関性を調べた。これらの患者の大半(67%)は、ECOG能力状態が0/1(88%)の男性であり、年齢中央値は62歳(範囲は25〜83最)であった。腺癌(52%)が主な組織病理で、次に扁平上皮癌(26%)、非分化癌(11%)、そして細気管支肺胞癌(9%)がそれに続いた。患者の大半が現行喫煙者(53%)および元喫煙者(32%)であった。発明人は、14%の奏功率(OR=CR+PR)および39%の疾病抑制率(DCR=CR+PR+SD)に対して1つの完全寛解(CR)、13の部分寛解(PR)、および26の安定(SD)を確認した。全患者について、中央値無進行期間(TTP)は2.9カ月であり、中央値生存期間は7.0カ月であった。癌治療前の疾病診断時に集められた組織検体を蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)による細胞毎EGFR遺伝子のコピー数の測定に使用した。LSI EGFRスペクトルオレンジ/CEF7スペクトルグリーン・デュアル・カラー・プローブ(ビシス/アボット(Vysis/Abbott)を使用し、検体当たり約100の腫瘍細胞を採点した。EGFR遺伝子および第7染色体中心体の細胞毎コピー数に従って、患者を2つの大きな群に分類した。群1は、遺伝子増加がないか、または非常に小さい(二染色体性、三染色体性および低多染色体性の)69人(68%)の患者を含んでいた。群2は、高多染色体性および遺伝子増幅を有する33人(32%)の患者を含んでいた。群2の患者の方が、群1(OR=2.9%、DCR=26.1%;両方の比較についてp<0.001)より有意に良好な奏功率(OR)および病勢コントロール率(DCR)(OR=36.4%、DCR=66.7%)を有していた。遺伝子増幅を有する患者では、53.8%に奏功が見られ、76%に病勢コントロールが見られた。中央値無進行期間および全生存期間は、群2(6.3および9.0カ月)の方が群1(2.5および6.5カ月;それぞれp<0.001および0.03)より有意に長かった。多変数分析において、群2の方が、死亡のリスクが有意に低かった(危険の割合:0.44、95%CI=0.23から0.82)。結論として、FISHにより確認された遺伝子増幅および高多染色体性は、進行性NSCLCにおけるゲフィチニブ活性に対する極めて効果的な分子的予知手段である。
【0117】
本願に記載されている調査の結果は、ゲフィチニブは、EGFR遺伝子増幅または高レベルの多染色体性を有する進行性NSCLC患者において高い活性を有し、チロシンキナーゼ阻害剤治療についてNSCLC患者を選択するためのEGFR−FISHの利用を支えることを実証している。ゲフィチニブに対する応答とFISHによって検出されたEGFR遺伝子増加との間の強い相関性は、この薬物に対する患者適格性を規定するための強力な要因になることが期待される。臨床結果と染色体性多染色体性との間の正の相関性は、第7染色体中心体配列を評価することが応答予測のための一団の複数の検定に貢献できることも示唆する。ゲノムの増加がないか、または小さい患者の間に相関性がないことは、治療はこの特定患者の集合体には有効でないことを示すものであるため、この治療手法の恐らくは臨床的および確実に経済的負担を最小限にする。
【0118】
本発明人らは、EGFR遺伝子をリアルタイムPCRの如き他の分子技術によって識別することができ、その結果は、有意なポジティブなパターンにおいてFISHの結果と相関することも実証した。
【0119】
EGFRコピー数の増加は、治療とは無関係に、予後に対してポジティブな影響をもたらすかどうかという疑問が生じうる。本発明人らは、EGFR遺伝子コピー数の高い切除腫瘍を有するNSCLC患者は生存期間が短い傾向にあることをすでに報告している(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003、J.Clin.Oncol.)。したがって、HER2およびトラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(登録商標)、ゲネンテック/ロッシュ(Genentech/Roche)に対する乳癌における知見と同様に、NSCLCは、予後特徴が劣るがEGFR阻害剤に対する感度についての良好な予知手段になるものと思われる。
【0120】
実施例2
以下の実施例は、(SWOG集団に基づいて)EGFR阻害剤に対するBAC腫瘍患者の治療結果を予測するためにEGFR遺伝子増幅および多染色体性の検出を用いることを実証するものである。
【0121】
NSCLCの細気管支肺胞癌(BAC)サブタイプは、固有の組織病理的、X線撮影および臨床的特徴によって特徴づけられ(トラビスら(Travis et al.)、1999)、特に若年の女性の非喫煙者において発生が増えつつあるように思われる(バルスキーら(Barsky et al.)、1994;フラクら(Furak et al.)、2003)。BACおよびBACの特徴を有する腺癌は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対して特に敏感で、奏功率は25〜30%であり(ミラーら(Miller et al.)、2003)、患者の部分集合体において生存期間が長いことが報告されている。本発明人および共同研究者は、南西部腫瘍臨床試験グループ(Southwest Oncology Group)(S0126)の有望な臨床試験で治療された進行段階のBAC患者の大集団におけるゲフィチニブの効果をすでに報告している。保存腫瘍組織を登録された大人数の患者から収集したため、S0126試験はEGFR経路の調査に対する独自の組織病理学的資源になる。NSCLC患者をゲフィチニブで治療した本発明人等の先の経験に基づき、FISHにより検出されたEGFRおよび/またはHER2遺伝子コピー数の増加は、BAC、またはBACの特徴を有する腺癌を有するNSCLC患者の部分集合体におけるゲフィチニブの効果の向上に対応づけられるであろうという仮説を立てた。本実施例は、臨床結果と相関づけられるS0126調査の患者腫瘍組織の分析の結果を報告するものである。
【0122】
材料および方法
登録されたすべての患者は、IIIB段階(胸水による)またはIV BAC、もしくはBACの特徴を有するBACであることが組織学的に証明されている必要があった。組織学的資格はBACの制度上の定義に基づいたものであったが、後に世界保健分類を用いて集中的審査が実施された(トラビスら(Travis et al.)、1999)。この報告における組織病理学的サブタイプは、この集中的な組織学的審議に基づいている。細胞懸対はBAC診断では受け入れられず、細胞診断のみの患者はS0126の参加資格が与えられなかった。
【0123】
患者は、0〜2のSWOG能力状態を有している必要があった。調査前評価には、履歴および身体検査、差分および血小板、アルカリ性リン酸塩の血清化学現象、SGOTまたはSGPT、LDHおよびアルブミンによる全血液検査、胸部X線写真、ならびに胸部、肝臓および副腎のCTが含まれていた。骨スキャンおよび/または脳CTまたはMRIは、症状および医師の判断に基づいて臨床的に指示された場合にのみ必要とされた。脳転移の履歴を有する患者は本調査への参加資格が与えられなかった。妊娠中または育児中の女性は資格がなく、生殖能力を有する女性および男性は、有効な避妊法を用いることに同意しなければ参加することができなかった。資格のある患者は、十分に治療された基底細胞または扁平細胞皮膚癌、in situ子宮頸癌、患者が完全にそれらから鎮静されている、十分に治療された段階IまたはIIの癌、患者が少なくとも5年間にわたって発病していない任意の他の癌を除いて他の先行腫瘍を有さないものとした。
【0124】
すべての患者はこの調査の調査的性質を知らされ、地域的な制度審査委員会および連邦指針に従って通知同意書に署名した。すべての患者は測定可能または評価可能な疾病を有していた。
【0125】
調査は、化学療法が初めての患者(N=101)とすでに化学療法を経験している患者(N=36)との2つの集団に分けられた137人の適格患者で構成された。治療開始前に1人の患者が死亡した。患者は、進行または禁止的毒性が認められるまで500mg/日のゲフィチニブを毎日経口投与することによって治療された。患者特性は、年齢中央値が68歳(範囲は34〜88歳)、男性/女性分布が45%/51%、能力状態が0〜1/2、89%/11%、および段階IIIB/IVが11%/89%であった。
【0126】
WHO基準を用いて、著者のうちの2人(WAFおよびFRH)による一致した示度により、ヘマトキシリン−エオシン着色断片に対してBACの診断およびサブタイプ分類を行った(トラビスら(Travis et al.)、1999)。患者毎に、代表的な悪性腫瘍細胞を含む連続的な4μmパラフィン埋込み組織を薄く切り取った。他の個所に記載されているプロトコールに従って、LSI EGFR スペクトルオレンジ/CEP7スペクトルグリーン・プローブを使用して、細胞コピー数をFISHにより調べた(Hirschら(Hirsch et al.)、2003、J.Clin.Oncol;ヒルシュら(Hirsch et al.)、2002、Br.J.Cancer)。支配的な腫瘍病巣が識別された近隣断片の対照HE着色スライドを使用して、そのままの形態の少なくとも100の非重複核において、EGFRおよびHER2遺伝子ならびに第7染色体および17プローブのコピー数を独立的に評価して記録した。FISH分析は、患者の臨床特性を知らされていない2人の観察者(MVG、ACX)によって独立的に実施された。特定のコピー数のEGFR遺伝子および第7染色体中心体を有する腫瘍細胞の頻度に従って、患者を2つの層、すなわち遺伝子増加がない、または低い(40%を上回る細胞における遺伝子のコピー数が4以下)FISH陰性と、緻密な遺伝子集合の存在、および細胞毎遺伝子/染色体比が2以上、または分析された細胞のうちの10%以上の細胞における細胞毎遺伝子のコピー数が15以上であることによって定められる、高レベルの多染色体性(40%以上の細胞における遺伝子のコピー数が4以上)または遺伝子増幅を有するFISH陽性とに分類した。
【0127】
統計的方法
結果の定義
応答評価を標準的な基準によって実施した(RECIST)(セラセら(Therasse et al.)、2000)。測定可能な疾病を有する患者のみを応答評価に含め、生存分析にはすべての患者を含めた。患者がゲフィチニブ治療を開始した日から死亡するまでの生存データを分析した。全生存期間(OS)を、S0126への登録から何らかの原因による死亡または最後の接触までの時間として計算した。進行のない生存期間(PFS)を、S0126への登録から疾病の進行、あるいは何らかの原因による死亡または最後の接触までの時間として計算した。
【0128】
分析方法
生存曲線をプロダクト・リミット法(カプランおよびメイヤー(Kaplan and Meier)、1958)によって推定し、対数ランク検定(マンテル(Mantel)、1966)を用いて比較した。コクス比例危険回帰を用いて、生存結果に対するEGFR FISHおよび標準的な予後要因の影響を評価するとともに、危険率を推定した(コクス(Cox)、1972)。逆方向段階的回帰法を用いて多変数モデルを構成した。すべての一変数的に有意な共変数を段階的選択に含めた。
【0129】
結果
プロトコールS0126には145人の患者が登録されたが、そのうちの8人が不適格で、1人がプロトコール治療を受けなかったため、分析に適格な患者は136人であった。そのうち、81人の患者がFISH分析によるEGFR遺伝子分析に利用可能な腫瘍組織を有し(表4)、56人がFISHによるHER2遺伝子分析に利用可能な組織を有していた。
【0130】
【表4】

全S0126集団と、EGFR FISH分析を受けた81人の患者の小集団との間には、性別、喫煙状態、能力状態および組織状態に統計的な差が存在しなかった(表4)。同様に、全S0126集団とEGFR FISH小集団との間には生存結果の統計的な差が存在しなかった(図4A)。したがって、EGFR FISH小集団は全S0126集団を代表するものと思われた。
【0131】
各EGFR FISH範疇における患者の数を表5に示す。全部で26/81の患者(32%)がEGFR FISHに対して陽性であり、EGFR FISH陽性群と陰性群の間には、性別、組織状態、喫煙状態または能力状態に関する差が存在しなかった(表4)。応答分析では、81人のEGFR FISH患者のうちの55人が測定可能な疾病を有していた。FISH陽性群では、19人の患者のうちの5人(26%)が奏功を示し、12人(63%)が疾病抑制(奏功または安定)を示したのに対して、FISH陰性群では、36人の患者のうちの4人(11%)が奏功を示し(p=0.14)、14人(39%)が疾病抑制を示した(p=0.087)(表5)。
【0132】
【表5】

EGFR FISH分析に対する評価可能な腫瘍組織を有する適格患者を生存分析に含めた。FISH陽性および陰性の腫瘍を有する患者についての無進行生存および全生存曲線をそれぞれ図4Bおよび4Cに示す。FISH陰性患者に対する無進行生存期間中央値は4カ月(95%CI.:2、5)であったのに対して、危険率が1.67のFISH陽性患者に対しては9カ月(95%CI.:3、20)であった(p=0.072)(95%CI:0.96、2.91、p=0.072)(図4B)。FISH陰性患者に対する中央値生存期間は8カ月であった(95% C.I.:6、15)。FISH陰性患者に対する中央値生存期間はまだ到達されていないが、18カ月に近づいており、危険率は2.02である(95%CI:1.03、3.99、p=0.042)(図4C)。
【0133】
組織学的サブタイプに関しても奏功率および生存期間を分析した。8人の腺癌患者のうち、反答者は確認されなかったが2人の患者が安定を示した(DCR 2/8=25%)。しかし、BAC特徴を有する27人の腺癌患者のうち、5人(19%)が応答を達成し、12人の患者(44%)が安定を達成した(DCR 17/27=63%)。BAC非粘液性群では、20人の患者のうちの6人(30%)が応答を示し、8人の患者(40%)が安定を示した(DCR 14/20=70%)のに対して、BAC粘液性群では、11人の患者のうち応答または安定を示した患者は存在しなかった(χ平方 p=0.0004)。
【0134】
多変数コックス回帰モデル(表6)を用いて、FISHによるEGFRコピー数の生存に対する影響を他の予後要因によって説明できる可能性を評価した。FISHによるFGFRコピー数は、喫煙状態、性別、組織状態および能力状態を考慮した後も、全生存期間(p=0.0261)および無進行生存期間(p=0.034)の双方に対して依然として有意な予後要因であった。
【0135】
【表6】

考察
この調査は、FISHによって検出されたEGFR遺伝子コピー数の増加は、進行段階のBAC、およびBAC特徴を有する腺癌を有する患者、すなわちその基礎的な生物学的特性によりEGFR経路の調査のためのモデルとして機能することができるNSCLCの部分集合体におけるゲフィチニブ治療の後の生存期間の向上に対応づけられることを証明するものである(ガンダラら(Gandara et al.)、2004)。現行の調査において、患者の約3分の1のEGFR遺伝子コピー数が増加し、これらの患者はゲフィチニブ治療の後に奏功率が高くなり、無進行期間が長くなる傾向を有していた。拡散性肺湿潤を測定することができないため、BACを有する患者では、一般的にはRECIST応答評価は適用可能ではないが、理論に制約されることなく、本発明人らは、EGFR FISH溶性腫瘍と陰性腫瘍の間の生存期間の有意な差は、遺伝子コピー数の増加がゲフィチニブの効果の向上と関係するという仮説を強く裏づけるものであると考える。進行BACを有する患者に対する生存に関する文献の情報は極めて少ない。ブレスナシュら(Breathnach et al.)による調査(ブレスナシュら(Breathnach et al.)、1999)では、化学療法または放射線治療が施された進行BACの28人の患者の分析が行われた。最初の治療の開始からの中央値生存期間は11.7カ月であった(95CI 8.7〜16.7)。進行BACにおけるパクリタキセルを評価する先のSWOG試験(S9714)では、中央値生存期間は12カ月であった(ウェストら(West et al.)、2005)。現行の調査では、FISH陽性群についての中央値生存期間は、まだ到達されていないが18カ月に近づいているのに対して、FISH陰性群については8カ月であった。本発明人らおよび共同研究者は、EGFR遺伝子コピーの増加は、外科切開されたNSCLCの患者における劣った予後に対応づけられることをすでに報告している(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003、J.Clin.Oncol.)。この調査において、本発明人らは、EGFR遺伝子コピー数の増加は、ゲフィチニブ治療の影響による生存期間の向上に対するポジティブな予測マーカーであることを確認する。これらの所見は、予後が劣っているが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))が有効である可能性がより高いHER2遺伝子増幅を有する乳癌患者について報告されたデータに類似している(スラモンら(Slamon et al.)、2001)。
【0136】
EGFR FISH陽性分集団と全調査集団との間で個体群統計および生存データを比較したところ、性別、喫煙状態、能力状態または組織状態の如き知られている予後要因に関する差は確認されなかった。加えて、全集団とFISH試験集団との間に全生存期間の差は存在しなかった。
【0137】
本実施例の焦点は、進行段階のBACを有する患者における生存期間に対するEGFR FISHの予測値である。EGFRタンパク質レベルの如きEGFRおよび関連するシグナル伝達経路の生物学的存在度の評価、EGFR変異分析、ならびにAKTおよびMAPKのような下流マーカーの測定についての他の方法との相関性は本願の他の個所で論述されており、進行BACに関してさらに説明することが可能である。免疫組織化学(IHC)により評価されるMAPKレベルは、BAC腫瘍におけるゲフィチニブに対する感度を予測するものであり(ガンダラら(Gandara et al.)、2004)、本願の方法におけるさらなる生物マーカーとして含めることができる。
【0138】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR TKIs)による治療についての患者選択に関して、これらの知見の臨床的意味は大きい。BACは、発生が増えつつあると思われる病気である(バルスキーら(Barsky et al.)、1994;フラクら(Furak et al.)、2003)。予備調査では、BACおよびその組織学的サブタイプを有する患者におけるEGFR阻害剤に対する奏功率は比較的高いことが実証された(ウェストら(West et al.)、2005;パテルら(Patel et al.)、2003;ミラーら(Miller et al.)、2004)が、この患者集団においてこれらの薬剤の生存に関する利点を実証した調査はまだ存在しない。現行の調査は、EGFR FISH陽性患者における有意な生存に関する利点を実証し、FISHによって検出されるEGFR遺伝子コピー数の増加をEGFR TKIで治療される患者の生存潜在性を評価するのに利用できることを示した。分析が通常のパラフィン埋込み材料上で行われるため、FISH技術は臨床用途に適用可能である。
【0139】
実施例3
以下の実施例では、NSCLC患者におけるEGFR阻害剤に対する結果(イタリア調査団)を予測するためにEGFRタンパク質発現、リン酸化AKT発現、ならびにこれらのマーカーとEGFR遺伝子コピー数およびEGFR変異との組合せを用いることを実証する。
【0140】
方法
患者の選択および調査設計
この調査に含められる患者は、ベラリア・ホスピタル(Bellaria Hospital)(Bologna)、サイエンティフィック・インスティチュート・ユニバーシティ・ホスピタル・サン・ラッファエル(Scientific Institute University Hospital San Raffaele(Milano)、およびポリクリニコ・モンテルーセ(Policlinico Monteluce)(Perugia)で実施されたゲフィチニブの予測調査(カップゾら(Cappuzzo et al.)、2004、J.Natl.Cancer Inst.)およびゲフィチニブのアクセス拡張調査から集められた。総合的な臨床情報および組織ブロックは、Akt臨床試験(カップゾら(Cappuzzo et al.)、ibid.)に登録された106人の患者のうちの80人、およびAkt調査の最後に続いて治療が施され、Akt試験の患者と同様に追跡されたアクセス拡張調査のさらなる22人の患者から入手可能であった。これらの調査はベラリア・ホスピタル制度倫理審議委員会によって承認され、登録前に各患者から通知同意書を得た。ゲフィチニブのアクセス拡張調査に参加する患者の部分群において、臨床実施基準(Good Clinical Practice)に従って制度審議委員会の承認を得るとともに、各患者から具体的な通知同意書(アクセス拡張調査同意書式、イタリア版)を得た。
【0141】
両調査に対する参加資格は、化学療法後に進行または再発する測定可能な局所的進行性または転移性疾病、あるいは化学療法に対する医学的禁忌を有する組織学的に確認されたNSCLCを含むものであった。患者は0級から2級までの範囲の能力状態を有していた。能力状態は、東部共同腫瘍臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group (オーケンら(Oken et al.)、1982)に従って定められ、患者が十分に社会活動をすることができ、制限を受けることなく疾病前のあらゆる能力を発揮できる場合は0級とみなされ、患者が肉体的に激しい活動は制限されるが歩行可能であり、軽労働または坐業を行うことができる場合は1級とみなされ、患者が歩行可能であり、あらゆるセルフケアが可能であるが作業活動を行うことができない場合は2級とみなされた。
【0142】
患者はゲフィチニブ(250mg毎日)を受け、固体腫瘍における応答評価基準(セラセら(Therasse et al.)、2000)に従って応答について評価された。2カ月後にコンピュータ断層撮影走査法により腫瘍応答を評価し、応答を最初に確認してから少なくとも4週間後に、反答者および安定した疾病の患者において確認評価を繰り返した。疾病無進行期間は、ゲフィチニブ治療の開始日から進行性疾病の検出日、または最終接触日までの期間として計算された。生存期間は、治療開始日から死亡日、または最終接触日までの期間として計算された。
【0143】
組織の調製およびタンパク質分析
腫瘍検体を癌治療の前に入手してパラフィンに埋めた。代表的な悪性腫瘍細胞を含む連続的な断片(4μm)をヘマトキシリン・エオシンで着色し、世界保健機構基準(トラビスら(Travis et al.)、1999)に従って分類した。
【0144】
マウス抗ヒトEGFR、クローン31G7モノクローナル抗体(ザイメド・ラボラトリーズ・インコーポレイティッド社(Zymed Laboratories,Inc.)[カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco)所在]により、他の個所に記載されている方法および評価基準(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003、J.Clin.Oncol.)を用いた免疫組織化学によってEGFRタンパク質発現を評価した。また、製造元のプロトコールに従って、ウサギ抗マウスP−Akt(Ser473)ポリクローナル抗体(セル・シグナリング・テクノロジー社(Cell Signaling Technology[米国マサチューセッツ州ベバリー(Beverly)所在]を使用する免疫組織化学によってP−Aktを検出した。P−Akt発現およびEGFR発現を陽性細胞の強度および割合に基づいて採点した。強度採点は、0=腫瘍細胞に着色が認められない、1=間質要素と比較して細胞質および/または核にわずかに着色が検出される、2=腫瘍細胞の細胞質および/または核を明瞭に印す褐色の着色が容易に認められる、3=細胞質および/または核をぼかす腫瘍細胞における暗褐色の着色、または4=核および/または細胞質の極めて強い着色として定められた。得点は、陽性細胞の比率(0%〜100%)に基づくものであった。合計得点は、強度得点と比率得点を掛け合わせて、0から400の合計範囲を求めることによって計算された。統計分析では、0〜200の得点を陰性/低発現とし、201〜400の得点を陽性/高発現とした。この境界レベルは、EGFRタンパク質発現の増加と遺伝子コピー数との間に相関性が認められた我々のグループによる先の調査との一貫性に基づくものであった(ヒルシュら(Hirsch et al.)、2003、ibid.)。免疫組織化学検定は、臨床のFISHおよびEGFR変異結果を知らされていない2人の検査者によって共同で採点され、相違が生じた場合は、スライドについての議論の後に、調和した得点がつけられた。
【0145】
統計分析
定性変数に対するフィッシャーの正確確率検定またはピアルソンのχ二乗検定を用い、また連続変数に対するスチューデントのt検定または変動分析を用いて群間の差を比較した。コルモゴロフ−スミルノフ検定によって分布の正規性を評価した(クリエルら(Curiel et al.)、1990)。カプラン−マイヤー法によって、無進行期間、全生存期間および95%信頼区間を評価した(ドンら(Don et al.)、1991)。対数ランク検定を用いて異なる群を比較した。ステップ・ダウン手順によるコックスの比例ハザード回帰モデルを用いて生存リスク要因と生存との関連を評価した(アーミテージおよびベリー(Armitage and Berry)、1994)。一変数分析における有意な結果を伴うそれらの変数のみを多変数分析に含めた。変数除去に対する基準は、推定された最大部分尤度に基づく尤度比統計とした(モデルからの除去に対してデフォルトp値=0.10)。調査設計は観察の独立性を保証するものである。比例ハザード予測を対数生存関数分析によって試験し、有効であることを確認した。すべての統計的試験を両側から実施し、統計的有意をP<0.05と定めた。すべての分析は、統計的パッケージSPSSバージョン11.5(SPSSイタリアsrl.[イタリアボログナ(Bologna)所在]を用いて行われた。
【0146】
結果
臨床的特徴
その大半が先の出版(カップゾら(Cappuzzo et al.)、JNCI、2004)において報告された性別、段階、組織状態、能力状態および喫煙状態に基づく臨床結果を表1に示す(実施例1参照)。群全体では奏功率は14%であり、進行率は60%であり、中央値無進行期間は2.9カ月であり、中央値生存期間は9.4カ月であり、1年生存率は40.7%であった。女性(平均差22.6%、95%CI:6.6から38.6、P=0.004)および非喫煙状態(平均差30.8%、95%CI:5.3から56.3、P=0.006)は、統計的に有意により良好な応答に対応づけられ、女性(平均差3.0カ月、95%CI:4.5から10.5カ月、P=0.03)、腺癌および細器官支肺胞癌組織状態(平均差5.0カ月、95%CI:2.8から7.2カ月、P=0.03)および能力状態0〜1(平均差7.4カ月、95%CI:5.6から9.1カ月、P=0.004)は、統計的に有意により長い生存期間に対応づけられた。
【0147】
疾病無進行期間は、ゲフィチニブ治療の開始日から進行疾病の検出日、または最終接触日までの期間として計算された。生存期間は、治療開始日から死亡日、または最終接触日までの期間として計算された。群間の統計的有意差を対数ランク検定によって評価した。
【0148】
EGFRタンパク質発現および臨床結果
98人の患者におけるEGFRタンパク質発現を免疫組織化学によって評価し(データは示されず)、タンパク質得点による患者の結果を表7aおよび図3A〜3Bに示す。最低得点(0〜99)の患者は応答を示さず、1人だけが安定を示した。これらの患者は、無進行期間が短く(中央値2.1カ月)、中央値生存期間が短く(4.5カ月)、27%が1年の生存を示した。100〜199の得点の患者も結果が劣っており、進行疾病率は65%で無進行期間が短く(中央値2.3カ月)、生存期間も劣っていた(1年間生存したのは患者のわずか35%であった)。彼らの結果も同様に劣っていたため、100未満の得点の患者と100〜199の得点の患者の40人の患者(41%)を一緒にした(EGFR IHC−)。EGFR免疫組織化学得点が200〜299および300〜399の患者は、EGFR IHC−群の患者よりはるかに良好な結果を示し、彼らは類似した奏功率、無進行期間および生存期間を有するため、彼らも一緒にした(EGFR IHC+)。EGFR IHC+患者は、IHC−患者と比較して、有意に高い奏功率(21%対5%、P=0.03)、低い進行率(44.8%対80%)、P<0.001)、長い無進行期間(5.2対2.3カ月、P=0.001)および長い生存期間(11.5対5.0カ月、P=0.01)を有していた。タンパク質状態は、臨床的特徴に対応づけられなかったが(表8)、遺伝子コピー数と統計的に有意に関連づけられた(ピアソンr=0.28、P=0.006)。
【0149】
【表7】

EGFR変異および臨床結果
合計89例の患者(60の顕微切開検体および29の非顕微切開検体)においてEGFRエキソン18、19および21に対する変異分析を行った。15人の患者にEGFR変異が認められ(EGFR変異陽性=17%)、そのうち12が顕微切開検体で、3が被顕微切開検体であり(P=0.30)、エキソン21におけるミスセンス変異(n=8)またはエキソン19におけるコドン746〜753での小インフレーム欠失(n=7)からなっていた(表7bおよび9)。これらの変異は、進行疾病を経験した男性患者に生じたエキソン21におけるミスセンス変異(バリン851からイソロイシン、V851I)を除いて、いずれもすでに記載されている(11〜13)。EGFR変異の存在は非喫煙履歴に対応づけられた(P=0.007)。性別および組織状態との関連は統計的に有意ではないが(双方に対してP=0.10)、変異は女性および腺癌の患者の方が頻度が高かった(表8)。
【0150】
【表8】

【0151】
【表9】

【0152】
【表10】

本発明人らは、また、EGFR変異状態と、FISH状態と、各腫瘍におけるタンパク質発現のレベルとの間の関連性を患者の結果と比較した。EGFR変異は統計的に有意にFISH+状態に対応づけられたが(P=0.01)、高いタンパク質発現に対応づけられなかった(P=0.10)。遺伝子変異は、統計的に有意により良好な応答(54%対5%、平均差47.9%、95%CI:22.2から73.7、P<0.001)およびより長い無進行期間(9.9対2.6カ月、平均差7.3カ月、95%CI:2.1から16.7カ月、P=0.02)に対応づけられた(表7)。EGFR変異を有する患者は、生存期間がより良好であったが、それは統計的に有意なものではなかった(中央値20.8対8.4カ月、平均差12.4カ月、95%CI:1.7から26.4カ月、P=0.09)。しかし、変異を有する15人の患者のうちの6人の患者であって、そのうちの5人(患者1、2、3、16および10;表9および10)がエキソン21における点変異を有し、そのうちの1人(患者41、表9および10)がエキソン19欠失を有していた患者では疾病が進行していた。治療に応答したEGFR変異を有する8人の患者のうち、7人がFISH+であったのに対して、変異を有する6人の進行患者のうちの4人は、FISH−であった(二染色体性、表10)。さらに、疾病が安定している21人の患者のうち、EGFR変異を示したのは1人だけであった。
【0153】
【表11】

EGFR多変数分析
どの変数が生存期間に対する予測変数になるかを定めるために、一変数分析おいて有意である要因(性別、組織状態、能力状態、FISHおよびタンパク質状態)を多変数モデルに含めた。変異および喫煙状態は、一変数分析において生存期間に対応づけられなかったため(それぞれP=0.09およびP=0.020)含められなかった。劣った能力状態(PS2)は、死亡リスクの上昇(危険率[HR]=3.27、95%CI=1.49から7.17、P=0.003)に対応づけられていたのに対して、腺癌/細気管支肺胞癌組織状態(HR=0.58、95%CI=0.35から0.96、P=0.035)およびFISH状態(HR=0.44、95%CI=0.23から0.28、P=0.01)は、統計的に有意により良好な生存期間に対応づけられた。タンパク質状態(HR=0.60、95%CI=0.36から1.01、P=0.056)および性別(HR=1.43、95%CI=0.79から2.6、P=0.20)は、生存期間に統計的に有意に対応づけられなかった。
【0154】
EGFRとP−Aktの関連性
P−Aktタンパク質の評価は98人の患者において順調であった。P−Akt陽性状態は、より良好な奏功率(21%対0%、平均差20.6%、95%CI:11.0から30.2、P=0.004)、疾病抑制率(50%対22%、平均差28.1%、95%CI:9.5から46.7、P=0.008)、およびより長い無進行期間(4.2対2.1カ月、平均差2.1カ月、95%CI:0.7から3.4カ月、P=0.01)に有意に対応づけられたが、生存期間(11.4対9.4カ月、平均差2.0カ月、95%CI:1.3から5.3カ月、P=0.20)に有意に対応づけられなかった。P−Akt陽性状態もEGFR遺伝子増加(FISH+ピアソンr=0.30、P=0.01)および高レベルのタンパク質発現(EGFR IHC+ピアソンr=0.27、P=0.01)に有意に対応づけられたが、EGFR変異(P=0.08)に有意に対応づけられなかった。
【0155】
FISHデータとP−Aktデータ(表11)を合わせて、本発明人らは、二重陽性患者(EGFR FISH+/P−Akt+)はEGFR FISH−患者および/またはP−Akt患者と比較して有意に高い奏功率(41%対3%、平均差38.5%、95%CI:20.1から56.8、P<0.001)および疾病抑制率(72%対28%、平均差44.9%、95%CI:26.6から65.3、P<0.001)、長い無進行期間(9.0対2.5カ月、平均差6.5カ月、95%CI:3.3から9.8カ月、P<0.001)および生存期間(18.7対9.4カ月、平均差9.3カ月、95%CI:4.7から13.9カ月、P=0.04)を有することを確認した。EGFR免疫組織化学および変異データをP−Aktデータと合わせても同様の結果が確認された。EGFR IHC+/P−Akt+患者は、EGFR−および/またはP−Akt−患者と比較すると有意に良好な奏功率(29%対4%、平均差25.8%、95%CI:10.9から40.4、P<0.001)、疾病抑制率(66%対23%、平均差43.1%、95%CI:23.9から60.6、P<0.001)、長い無進行期間(6.2対2.3カ月、平均差3.9カ月、95%CI:1.5から6.3カ月、P=0.001)および長い生存期間(14.9対8.3カ月、平均差6.6カ月、95%CI:4.0から9.2カ月、P=0.03)を有していた。EGFR変異+/P−Akt+患者は、EGFR変異−および/またはP−Akt−患者より統計的に有意に良好な奏功率(67%対6%、平均差61.2%、95%CI:34.0から88.4、P<0.001)、疾病抑制率(75%対32%、平均差43.5%、95%CI:16.8から70.2、P<0.008)、長い無進行期間(11.2対2.6カ月、平均差8.6カ月、95%CI:3.3から14.0カ月、P=0.004)および長い生存期間(20.8対9.3カ月、平均差11.5カ月、95%CI:1.1から24.2カ月、P=0.044)を有していた。
【0156】
【表12】

EGFR評価の方法とは無関係に、EGFR陽性およびA−Akt陰性である患者はゲフィチニブ治療に応答しなかった(表11)。EGFR IHC+/P−Akt−の患者の群は、奏功率(0%対29%、平均差29.3%、95%CI:15.3から43.2、P=0.012)、疾病抑制率(29%対66%、平均差36.5%、95%CI:10.4から62.5、P=0.011)に関して、両タンパク質に対して陽性の群より有意に劣る結果を示し、有意性のない短い無進行期間(1.8対6.2カ月、平均差4.4カ月、95%CI:2.3から6.4カ月、P=0.08)および生存期間(9.4対14.9カ月、平均差5.5カ月、95%CI:1.6から9.3カ月、P=0.21)に向かう傾向を有していた。EGFR FISHおよびEGFR変異との比較は、EGFRに対して陽性で、P−Aktに対して陰性の群の患者の数が少ないため(すなわち、それぞれ4人および2人であるため)行われなかった。
【0157】
EGFRに対して陰性であるが、P−Aktに対して陽性である群においても好ましくない結果が確認された(表11)。EGFR FISH−/P−Akt+の群は、二重陽性群と比較して統計的に有意に劣った奏功率(5%対41%、平均差36.1%、95%CI:16.8から55.4、P<0.011)、疾病抑制率(32%対72%、平均差40.8%、95%CI:18.9から62.8、P=0.011)および無進行期間(2.6対9.0カ月、平均差6.4カ月、95%CI:3.7から9.1カ月、P=0.001)、および統計的に有意性のない短い生存期間(8.4対18.7カ月、平均差10.3カ月、95%CI:7.2から13.4カ月、P=0.083)を有していた。EGFRを免疫組織化学により、または変異について評価した場合も同様の結果が確認された。いずれの場合も、EGFR−/P−Akt+の群は、二重陽性群と比較して統計的に有意に劣った奏功率(タンパク質および変異に対してそれぞれP=0.034およびP<0.001)、疾病抑制率(P=0.002およびP<0.025)および無進行期間(P=0.010およびP=0.009)を有し、統計的に有意性のない劣った生存期間(P=0.080およびP=0.070)を有していた。
【0158】
考察
この調査において、本発明人らは、EGFRタンパク質発現は奏功率の向上、ならびに無進行期間および生存期間の統計的に有意な延びに対応づけられたことを示した。IHC得点の低い(<200)患者は、遺伝子コピー数が小さい患者または変異が欠如した患者と同じくらい劣った結果を有していた。加えて、陽性のEGFR状態を有する患者においては、いずれの場合も、Aktリン酸化の存在は、より良好な応答、疾病抑制率、無進行期間および生存期間に有意に関連づけられた。それらの結果は、高いEGFRタンパク質発現は、進行NSCLCの患者において、ゲフィチニブ感度に対する有効な分子的予測マーカーであることを示している。
【0159】
EGFR遺伝子変異の存在は良好なゲフィチニブに対する応答および無進行期間にも関連づけられたが、生存期間の差は統計的な有意性に達しなかった。興味深い結果は、EGFRと遺伝子コピー数の増加との間の関連性、すなわちヒト肺癌細胞系H3255において最近記述され(トレーシーら(Tracy et al.)、Cancer Res、2004;64:7241−44)、おそらくはゲフィチニブ感度に関連する現象であった。実際、ゲフィチニブ治療に応答したEGFR変異を有する8人の患者のうち7人はFISH+であり、EGFR変異を有する6人の非応答患者のうち4人が二染色体性パターンを示した。この観察結果は、遺伝子増加の影響はゲフィチニブ感度を予測するためのEGFR変異に対して極めて重要であることを示唆している。
【0160】
これらの調査の他の重要な結果は、安定の患者にはEGFR変異が実質的に存在しないことであった。EGFR変異について評価された安定の21人の患者のうち、EGFR変異を有していたのは1人だけであった。安定とは、ここでは、4週間以上の間隔をおいて連続的に2回観察することによって確認した場合に、部分寛解に即するほど十分に縮小せず、また疾病の進行に即するほど十分に拡大しないものとして定義づけられた。BR21(シェファードら(Shepherd et al.)、2004)のデータにより、ゲフィチニブの生存に関する利点は応答患者に限定されないことが示されているため、安定の患者では変異が少ないことは重要な臨床的意義を有する。ゲフィチニブ治療患者における生存期間の向上は全体的に、変異分析が患者選択の格好の試験として確率されればチロシンキナーゼ阻害剤治療から除外されることになる安定の患者の如き、治療が中間的に有効であった患者の群の存在によるものである可能性がある。さらに、以前の調査はEGFR変異が応答患者の大多数に存在することを示唆していたが(リンチら(Lynch et al.)、2004;パイツら(Paiez et al.)、2004;パオら(Pao et al.)、2004)、この調査において、本発明人らは、EGFR変異を有する患者の40%が進行疾病を有していることを確認した。これらの結果は、これは臨床結果がゲフィチニブによる大規模な臨床試験で得られた結果と類似しているゲフィチニブ治療患者の大規模かつ未選択の集団において実施された最初の調査であるという事実によって説明することが可能であった(フクオカら(Fukuoka et al.)、2003;クリスら(Kris et al.)、2003、JAMA)。
【0161】
この調査では、ゲフィチニブ感度は、高いEGFRタンパク質発現に対応づけられ、低いEGFR発現得点(<200)を有する患者における結果は、遺伝子コピー数が小さい、または変異が欠如した患者における結果と同じくらい劣っていたが、それは、以前の調査で確認されたこと(カップゾら(Cappuzo et al.)、2003、J.Clin.Oncol.;バイレイら(Bailey et al.)、2003;パラら(Parra et al.)、2004)と異なっている。着色手順およびEGFR評価の解釈のためのガイドラインの相違が、調査間の結果の矛盾の主な原因でありうる。サンプリング・サイズ、および免疫組織化学的着色のための組織材料の選択も調査間の結果の相違に寄与しうる。例えば、わずか43人および50人の患者が、それぞれカップゾら(Cappuzzo et al.)、2003、J.Clin.Oncol.)(カップゾら(Cappuzo et al.)、2003、J.Clin.Oncol.)およびパラら(Parra et al.)(パラら(Parra et al.)、2004)によって評価された。IDEAL試験による腫瘍組織の回想的な免疫組織化学分析では、全患者集団のうちの40%未満が調査されたのに対して(バイレイら(Bailey et al.)、本調査では、90%を上回る患者が免疫組織化学的着色に利用可能な組織を有していた。
【0162】
この調査において、本発明人らは、他の研究者(ソルデラら(Sordella et al.)、2004;カップゾら(Cappuzzo et al.)、2004、J.Natl.Cancer Inst)によっても記載及び論述された関連性である、活性化されたAkt経路(例えばリン酸化Aktの発現)とゲフィチニブ感度との関連性をも見いだした。EGFRおよびP−Akt状態の組合せ分析により、EGFR評価の方法とは無関係に、EGFR状態が陽性である場合は、Aktリン酸化の存在は、より良好な応答、疾病抑制率、無進行期間および生存期間に有意に関連づけられることが示された。重要なことは、EGFR+/P−Akt+患者の部分集合体を統合した他のすべての群と比較した場合のみならず、この集合体を、EGFR陽性であるがP−Akt陰性である患者と比較した場合にもより良好な結果が確認されたことである。これらの結果は、ゲフィチニブ目標が存在するが抗アポプトーシス経路が活性化されない場合には、すでに示唆されているように(カップゾら(Cappuzzo et al.)、2004、J.Natl.Cancer Inst)、また臨床前モデルで実証されているように(オノら(Ono et al.)、2004;ビアンコら(Bianco et al.)、2003)、患者は、ゲフィチニブの阻害効果に敏感ではないという仮説を裏づけるものである。期待されたように、EGFR+/P−Akt+群もEGFR陰性およびP−Akt陽性群と比較して有意に良好な結果を有しており、異常EGFR依存性Akt活性はゲフィチニブ抵抗性をもたらしうることを示す臨床前データ(ビアンコら(Bianco et al。)、2003;ジャンマートら(Janmaat et al.)、2003)を裏づけるものである。これらのデータは、P−Akt陽性状態は、EGFR陽性患者において薬物に対して特に敏感な患者の部分群を識別するために重要である。EGFR陰性患者において、P−Akt陽性状態は、ゲフィチニブ治療が有効であるチャンスが極めて低い患者の群を識別することができる。
【0163】
EGFRタンパク質発現とAkt経路活性の関係に関する情報は、ゲフィチニブ感度のメカニズムの理解を著しく深めることになる。本発明人らは、患者の部分群におけるEGFRタンパク質発現とP−Akt発現を比較し、概して、EGFRおよびP−Aktタンパク質の発現は同じ細胞集団に見いだされ(データは示されず)、確認されたP−AktはEGFR活性の結果であることが示された。しかし、場合によっては、生物学的原因または技術的原因によるものでありうる差異が発現に見いだされた(すなわち、ある細胞はEGFRを発現し、P−Aktを発現せず、逆もまた同じであった)。
【0164】
結論として、この調査の結果は、ゲフィチニブは抗EGFRタンパク質発現およびEGFRタンパク質/変異、EGFRタンパク質/FISHの組合せを有する進行NSCLC患者に有効であることを実証している。IHCは、ゲフィチニブ治療の候補となるNSCLC患者を選択するのに理想的な試験である。高いEGFR発現またはP−Aktを有する患者は、より良好な応答、疾病抑制率、無進行期間および生存期間を有していたため、Aktタンパク質の活性化状態の分析も適正な患者選択に関係するものと考えられる。
【0165】
実施例4
以下の実施例では、NSCLC患者におけるEGFR阻害剤に対する結果(イタリア調査団)を予測するためにHER2遺伝子増幅およびHER2多染色体性を使用することを実証する調査の結果を要約する。
【0166】
これらの実験では、ゲフィチニブで治療された102人の進行段階NSCLC患者の集団において、FISHにより細胞毎のHER2遺伝子コピー数を測定し、免疫組織化学によりHER2タンパク質レベルを測定し、HER2エキソン20における変異を評価した。
【0167】
結果および結論
HER2 FISH分析を102人の患者で実施した。HER2の高いコピー数(高多染色体性および遺伝子増幅:HER2 FISH+)を有する患者は、症例の22.8%を占め、遺伝子増加がないか、または低い患者(HER2 FISH−)と比較して有意に良好な奏功率(OR:34.8%対6.4%、p=0.001)、疾病抑制率(DCR:56.5%対33.3%、p=0.04)および無進行期間(TTP:9.05対2.7カ月、p=0.02)、およびより長い生存期間に向かう傾向(OS:20.8対8.4カ月、p=0.056)を有していた。
【0168】
72人の患者においてHER2タンパク質発現を調べたところ、5人(7%)の患者が高レベルのHER2発現に対して陽性であった。この集団では応答または生存との有意な関連性は検出されなかったが、チロシンキナーゼ阻害剤に関連するHER2タンパク質発現の究極的な臨床的役割をより大きい調査集団で調べる必要がある。
【0169】
89人の患者においてHER2遺伝子のエキソン20を配列したところ、すべての患者が変異に対して陰性であった。したがって、HER2遺伝子のチロシンキナーゼ領域における変異は頻度が低く、臨床的に意味がないように思われる。
【0170】
結論として、この調査は、HER2 FISH+ NSCLCを有する患者は、より高い奏功率および疾病抑制率、およびより長い無進行期間によって示されるTKIゲフィチニブ治療が臨床上有効であることを示した。
【0171】
実施例5
以下の実施例では、NSCLC患者(イタリア調査団)におけるEGFR阻害剤に対する結果を予測するために、EGFR遺伝子増幅および多染色体性とともにHER2遺伝子増幅および多染色体性を使用することを実証する調査の結果を要約する。
【0172】
この調査では、本明細書において先述した手法を用いて、HER2 FISHパターン分析をEGFR FISHパターン分析と組み合わせた。
結果は、HER2 FISH+/EGFR FISH+腫瘍を有する患者は両受容体に対して陰性の患者より有意に良好なORおよびDCRを有することを示した。高いコピー数の両遺伝子(HER2 FISH+/EGFR FISH+)を有する患者は、最も高いOR(53.8%)およびDCR(76.9%)を有しており、これらの結果は、HER2 FISH−および/またはEGFR FISH−腫瘍を有する患者(OR:6.8% 、p<0.001;DCR:33.0%、p=0.002)において確認された結果より有意に良好であった。HER2 FISH+/EGFR FISH−患者は、二重陽性患者よりORが低かったが、その差は統計的に有意なものではなかった(OR:21.0%。p=0.07)。HER2 FISH+/EGFR FISH+患者と二重陰性HER2 FISH−/EGFR FISH−患者の間に応答差は確認されなかったが(OR:10.0%対1.6%、p=0.27;DCR:30.0%対25.4%、p=0.71)、HER2 FISH+および/またはEGFR FISH+と比較した場合に後者の群の方が有意に劣った結果を示した(OR:1.6%対28.6%、p<0.001;DCR:25.4対57.1%、p=0.001)。
【0173】
HER2 FISH+/EGFR FISH+腫瘍を有する患者は、両受容体に対して陰性の患者より有意に長い無進行期間および全生存期間を有していた。二重陽性HER2 FISH+/EGFR FISH+患者では、TTP中央値およびOSは、それぞれ9.8および20.8カ月で、HER2 FISH−および/またはEGFR FISH−群において確認された期間(TTP:2.6カ月、p=0.007;OS:8.3カ月、p=0.04)より有意に長く、HER2 FISH−/EGFR FISH+患者(TTP:5.3カ月、p=0.20;OS:9.3カ月、p=0.13)と比較した場合に有意な傾向は示されなかった。HER2 FISH+/EGFR FISH−腫瘍を有する患者は、二重陰性群と同様の劣った結果を示した(TTP:2.3対2.6カ月、p=0.4、OS:6.0対7.3カ月、p=0.4)。
【0174】
実施例6
以下の実施例では、NSCLC腫瘍を有する患者におけるEGFR阻害剤に対する結果を予測するために、EGFRタンパク質レベルの検出とともにHER2遺伝子増幅およびHER2多染色体性を使用することを実証する調査の結果を要約する。
【0175】
これらの調査では、本明細書において先述した手法を用いて、HER2 FISHパターンを免疫組織化学(IHC)によって測定されたEGFRタンパク質発現と組み合わせた。
【0176】
HER2 FISH+/EGFR IHC+腫瘍を有する患者は、両受容体に対して陰性の患者より有意に良好なORおよびDCRを有していた。二重陽性HER2 FISH+/EGFR IHC+患者では、他のすべての患者の群と比較した場合にORおよびDCRが有意に良好であった(OR:53.8%対7.1%、p<0.001;DCR:76.9対34.5、p=0.004)。二重陽性患者とHER2 FISH−/EGFR IHC+患者との間にはORに有意な差が確認された(OR:11.1%、p=0.003)。HER2 FISH+/EGFR IHC−と、ORおよびDCRが他の3つの群を合わせたものより有意に劣っていた二重陰性HER2 FISH−/EGFR IHC−との間に差が見られなかった(OR:0%対19.1%、p=0.009;DCR;13.7%対51.5%、p=0.001)。
【0177】
HER2 FISH+/EGFR IHC+腫瘍を有する患者は、また、両受容体に対して陰性の患者より有意に長い無進行期間および全生存期間を有していた。二重陽性患者(HER FISH+/EGFR IHC+)では、他の3つの患者群と合わせたものと比較した場合にTTPおよび生存期間が有意に長く(HER2 FISH−および/またはEGFR IHC−;TTP:12.3対2.6カ月、p=0.006;OS:20.8対8.4カ月、p=0.030)、HER2 FISH−/EGFR IHC+腫瘍を有する患者(TTP:4.2カ月、p=0.046;OS:11.3、p=0.12)と比較した場合に、TTPが有意に長く、より良好な生存期間へ向かう傾向があった。HER2 FISH+/EGFR IHC−腫瘍を有する患者は二重陰性群より同様の劣った結果を示した(TTP:2.3対2.1カ月、p=0.06;OS:3.3対5.0カ月、p=0.39)。
【0178】
実施例7
以下の実施例では、NSCLC腫瘍を有するEGFR阻害剤に対する結果を予測するために、EGFR遺伝子における変異の検出とともにHER2遺伝子増幅およびHER2多染色体性を使用することを実証する調査の結果を要約する。
【0179】
本実施例では、本明細書において先述した手法を用いて、HER2 FISHパターンをDNA配列により決定したEGFR遺伝子における変異の存在と組み合わせた。
HER2 FISH+/EGFR変異+腫瘍を有する患者は、HER2 FISH−および/またはEGFR変異−の患者(OR:5.0%、p<0.001;DCR:31.3%、p=0.003)より有意に高い最良のORおよびDCR(ともに87.5%)を有していた。7人のHER2 FISH−/EGFR変異+患者のうち1人の患者が応答し(OR:14.2%)、1人の患者が安定性を有していた(DCR:28.5%)。HER2 FISH+/EGFR変異−群では誰も応答せず、DCRは27.2%であった。これらの結果は、ORが他の群を合わせたもの(OR:30.8%、p=0.002)より有意に劣っていた二重陰性HER2 FISH−/EGFR変異−患者(OR:4.8%、p=1.0;DCR:32.2%、p=1.0)において確認された結果と差がなかった。
【0180】
HER2 FISH+/EGFR変異+腫瘍を有する患者は、他の患者を合わせたもの(TTP:15.5対2.6カ月、p=0.003;OS:未到達対8.3、p=0.001)と比較した場合も、HER2 FISH−/EGFR変異+の患者(TTP:2.8カ月、p=0.004;OS:5.7、p=0.030)と比較した場合も有意に長いTTPおよびOSを有していた。EGFR変異−/HER2 FISH+の患者の群は、TTP(2.3カ月)およびOS(6.5カ月)に関して、結果が最も劣っていた。
【0181】
実施例8
イタリア調査団と南西部腫瘍臨床試験グループ調査0126を組み合わせた調査に基づいて、個別試験ならびに試験の組合せの予測的役割に対するさらなる裏付けを行う。
【0182】
(1)NSCLC患者におけるEGFR阻害剤の臨床効果に対する予測マーカーとしてのEGFR遺伝子コピー数の増加の裏付け
コロラド大学癌センターは2つの臨床試験の実験室的分析を行った。本発明人らは、より実質的な統計分析および裏付けを行うために、全部で204人のNSCLC患者を含む統合データ集合を分析した。1つは、少なくとも1つの先行化学療法が失敗した後に、進行非小細胞肺癌(NSCLC)の患者を毎日250mgのゲフィチニブで治療したイタリアの試験(患者数102人)である。他の臨床試験は、細気管支肺胞癌(BAC)またはBACの特徴を有する腺癌の136人の患者において、南西部腫瘍臨床試験グループ(SWOG)が行ったものである。表12および13は、統合的な患者およびEGFR IHC、EGFR FISH、EGFR変異、リン酸化AktおよびKPas状態を示す。
【0183】
【表13】

【0184】
【表14】

表14(以下参照)に示されるように、調査では183人の患者がFISH分析を施され、52人(32%)の患者がEGFR「FISH陽性」であった(高多染色体性または遺伝子増幅を有していた)、「全奏功」率は、FISH陽性群では33%であったのに対して、FISH陰性(二染色体性、三染色体性および低多染色体性)群では6%であった(p<0.001)。「病勢コントロール」率(奏功+安定)は、FISH陽性群では65%であったのに対して、FISH陰性群では30%であった(p<0.001)。無進行期間(TTP)は、FISH陽性群では9カ月(95%CI:5〜10)であったのに対して、FISH陰性群では3カ月(95%CI:2〜3)であった(p<0.001)。中央値生存期間は、FISH陽性群では18カ月(95%CI:14〜21)であったのに対して、FISH陰性群では8カ月(95%CI:6〜11)であり(p=0.002)、1年生存率は、FISH陽性群では68%(95%CI:56〜80%)であったのに対して、FISH陰性群では37%(95%CI:29〜46%)であった。
【0185】
結論として、この統合データ分析により、EGFR遺伝子コピー数が増加した患者(「FISH−陽性」では、FISH陰性患者と比較して、応答、疾病抑制率、無進行期間および生存期間が統計的に有意に良好であることが実証された。現在183人の患者を含むこれらの分析は、イタリア調査団(カップゾら(Cappuzzo et al.)、2005 JNCI)および南西部腫瘍臨床試験グループ調査(ヒルシュら(Hirsch et al.)、JCO in press 2005)による個々の結果を裏づけるものである。
【0186】
(2)NSCLC患者におけるEGFR阻害剤の臨床効果に対する予測マーカーとしての、免疫組織化学によって検出されたEGFRタンパク質発現の裏付け
表14に示されるように、免疫組織化学により、203人の患者におけるEGFRタンパク質発現を測定した。121人(61%)の患者においてEGFRタンパク質が陽性とみなされた。EGFR陽性患者における全奏功は22%であったのに対して、EGFR陰性群では5%であり(p=0.002)、疾病抑制率は前者が56%であったのに対して後者は27%であった(p<0.001)。EGFR陽性患者では無進行期間が5カ月(95%CI:3〜7)であったのに対して、EGFR陰性患者では3カ月であり(p=0.006)、前者では中央値生存期間が14カ月(95%CI:11〜21)であったのに対して、後者では7カ月(5〜10)であった(p=0.003)。1年生存率は、EGFR陽性群では56%(95%CI:47〜65%)であったのに対して、EGFR陰性群では37%(26〜48%)であった。
【0187】
結論として、免疫組織化学によって測定されたEGFRタンパク質発現は、EGFR陰性患者群と比較して、EGFR阻害剤による治療後における有意に良好な応答、疾病抑制率、中央値生存期間および1年生存率をもたらした。
【0188】
【表15】

(3)免疫組織化学によるEGFRタンパク質評価とFISHによるEGFR遺伝子コピー数とを組み合わせると、EGFR阻害剤治療後に良好な結果が得られることが確実に予測され、EGFRタンパク質とFISHによる遺伝子コピー数との双方に対して「陰性」結果を有する患者を利用して、NSCLC患者の中でEGFR阻害剤が臨床的に有効でない肺癌患者を選択することが可能である。
【0189】
統合データ分析から2つの明確な結果が得られた。
表15に示されるように、「EGFR FISH陽性」かつ「EGFR IHC陽性」である42人の患者では、奏功率は41%と高く、76%が疾病抑制を示した。「二重陽性」患者群の無進行期間は9カ月(95%CI:6〜17カ月)、中央値生存期間は21カ月(95%CI:15〜21)、1年生存率は77%(95%CI:63〜90)であった。対照的に、「二重陰性」患者群(「EGFR FISH陰性」かつ「EGFR IHC陰性」の患者)の対応値は、奏功率が2%、疾病抑制率が17%であり、無進行期間が2カ月であり、中央値生存期間が6カ月であり、1年生存率が30%であった。すべてのパラメータにおいて統計的有意差(p<0.001)が存在した。
【0190】
【表16】

結論として、腫瘍が(免疫化学により検出される)EGFRタンパク質と(FISHにより検出される)高いEGFR遺伝子コピー数を強く発現する肺癌患者は、「二重陰性」査定の患者と比較して、EGFR阻害剤治療後に、高い奏功率および疾病抑制率、有意に長い生存期間を有する。
【0191】
「二重陰性」(EGFRタンパク質過剰発現がないか低い、かつEGFR遺伝子の増加がないか低い)と判断されたNSCLCの患者は、EGFR阻害剤治療が有効である可能性は極めて低く、この治療を受けるべきではない。
【0192】
したがって、EGFR FISH−とIHC検定の組合せを用いて、EGFR治療が有効であるNSCLC患者と期待される臨床的恩恵を受けない患者とを選別する必要がある。
【0193】
(4)EGFR変異とEGFRタンパク質発現の組合せ
表16に示されるように、EGFR変異とEGFRタンパク質発現の双方に対して陽性判定を受けた28人の患者では、二重陽性判定を受けた患者の奏功率は50%であり、疾病抑制率は60%であり、無進行期間は10カ月であり、中央値生存期間は21カ月であり、1年生存率は63%であった。二重陰性判定を受けた患者の対応値は、12%、25%、2カ月、7カ月および37%であった。
【0194】
【表17】

結論として、EGFR変異とEGFRタンパク質発現との組合せを用いて、EGFR阻害剤治療が有効である可能性が極めて低い肺癌患者から、そが有効である患者を選別することが可能である。
【0195】
(5)NSCLC患者におけるEGFR阻害剤に対する結果に対する予測手段としてのEGFRタンパク質発現と活性(リン酸化)AKTタンパク質発現との組合せ
表17に示されるように、182人の患者が、(IHCにより検出される)EGFRタンパク質発現および(IHCにより検出される)リン酸化AKT発現に対する陽性判定を受けた。78人の患者に要請判定が認められ、彼らは、30%の奏功率、64%の疾病抑制率、6カ月の無進行期間、16カ月の中央値生存期間、および63%の1年生存率を有していた。
【0196】
【表18】

対照的に、二重陽性判定を受けた23人の患者では、誰も奏功を示さず、21%が疾病抑制を示し、無進行期間は2カ月であり、中央値生存期間は6カ月であり、1年生存率は30%であった。言及したすべての臨床結果パラメータにおいて、二重陽性群と二重陰性群の間に統計的な差(p<0.05)が存在した。
【0197】
結論として、IHCにより検出されるEGFRとIHCにより検出されるリン酸化AKTとの組合せを用いて、EGFR阻害剤治療が臨床上有効である可能性が極めて高い肺癌患者と、当該治療が臨床上有効である可能性が極めて低い患者とを選別することが可能である。
【0198】
(6)NSCLC患者におけるEGFR阻害剤に対する結果に対する予測手段としての、FISHにより検出される遺伝子コピー数の増加とEGFR変異との組合せ
表18に示されるように、EGFR遺伝子コピー数およびEGFR変異の双方について、合計143人の患者を調査した。
【0199】
【表19】

二重陽性判定を受けた17人の患者では、奏功率は69%であり、疾病抑制率は69%であり、無進行期間は16カ月であり、中央値生存期間はまだ到達されていないが、20カ月を超え、1年生存率は67%であった。これらのすべてのパラメータは、二重陰性判定を受けた患者の結果より統計的に有意に良好であった。二重陰性患者は、奏功率が3%であり、疾病抑制率が29%であり、無進行期間が3カ月であり、中央値生存期間が10カ月であり、1年生存率が42%であった。
【0200】
結論として、FISHにより検出される遺伝子コピー数の増加とEGFR変異との組合せを用いて、EGFR阻害剤治療が臨床上有効である患者を選択することが可能である。
(7)EGFR遺伝子コピー数の増加と、EGFRタンパク質発現とEGFR変異との組合せは、NSCLC患者におけるEGFR阻害剤治療に対する優れた結果をもたらす。
【0201】
表19に示されるように、イタリア調査団および南西部腫瘍臨床試験グループによる統合データ分析により、三重陽性判定を受けた12人の患者では、78%の極めて高い奏功率、78%の疾病抑制率、20カ月の無進行期間、まだ到達されていないが、20カ月を超える中央値生存期間、および100%の1年生存率を示すことが実証された。
【0202】
【表20】

結論として、FISHにより検出されるEGFR遺伝子コピー数の増加と、IHCにより検出されるEGFRタンパク質発現と、EGFR変異との組合せを用いて、EGFR阻害剤治療後に良好な臨床結果を有する患者を選択することが可能である。
【0203】
(8)EGFR遺伝子コピー数と、EGFRタンパク質発現と、リン酸化AKT発現との組合せは、NSCLC患者に対するEGFR阻害剤治療後の優れた臨床結果をもたらす。
【0204】
表20に示されるように、イタリア調査団および南西部腫瘍臨床試験グループ調査による統合データ分析において、我々は、三重陽性判定を受けた患者は、43%の高い奏功率、80%の疾病抑制率、12カ月の無進行期間、まだ到達されていないが、20カ月を超える中央値生存期間、および84%の1年生存率を有することを実証した。
【0205】
【表21】

(9)多変数分析により、EGFR遺伝子コピー数の増加とEGFRタンパク質発現の増加の双方は、ともに、EGFR阻害剤で治療されたNSCLC患者における生存に関する結果に対する独立した予後予測因子であることが実証される。
【0206】
イタリア調査団および南西部腫瘍臨床試験グループ臨床試験0126によるデータを含む多変数分析により、FISHによって検出されるEGFR遺伝子コピー数の増加と、IHCによって検出されるEGFRタンパク質発現の増加は、ともに、生存についての独立した予後/予測因子になることが実証された(表21)。多変数分析は、後方段階的回帰法を用いることによる臨床および生物マーカーを含む最初の一変数分析に基づく。すべての一変数的に有意な共変数を段階的選択に含めた。
【0207】
【表22】

結論として、FISHにより検出されるEGFR遺伝子コピー数、IHCにより検出されるEGFRタンパク質発現、および活性(リン酸化)AKTのマーカーの各々を、EGFR阻害剤治療後に良好な臨床結果を有する肺癌患者の選択に用いることが可能である。2つの調査に基づいて実施された統合データ分析により、試験の組合せは、どの患者がEGFR阻害剤が有効であり、どの患者がそうでないかについての極めて高度な予測を与えることが示された。FISHによるEGFR遺伝子コピー数と、IHCによるEGFRタンパク質発現との分析の組合せは、未選択患者の結果と比較して、高い応答、長い無進行期間および有意に長い生存期間(中央値21カ月)に対する極めて確実な予測を実証した。それらのデータにより、EGFR遺伝子コピー数がゼロまたは小さい患者(FISH陰性)およびEGFRタンパク質発現がない、または低い患者は、反答者が存在せず、安定疾患を有するものとして分類されたのは1人しかいなかったため、EGFR阻害剤治療が有効でないことも示された。しかし、無進行期間は非常に短く、この群における中央値生存期間は6カ月であった。「二重陰性」の判定を受けた患者の群は、少なくとも1つの先の化学療法においてすでに失敗した類似群の進行NSCLC患者に偽薬またはエルロチニブが無作為に割り当てられたカナダの調査における偽薬治療患者と類似の結果を有していた(タオら(Tsao et al.)、JCO 23:16S:622S #7007)。したがって、2つの確立された臨床適用可能試験(FISHおよびIHC)の組合せは、本発明人らの調査において、EGFR阻害剤に対する癌患者の選択のための有意な値を有することが実証された。
【0208】
実施例9
以下の実施例では、FISHにより検出されるEGFRおよびHER2遺伝子コピー数は、NSCLC細胞系におけるセツキシマブ(Cetuximab)(C225、Erbitux(商標)BMS/Imclone)に対する感度に対応づけられることを実証する。
【0209】
25のNSCLC細胞系において実施された調査により、5つの細胞系はセツキシマブに対して感度を有し(IC50<1μM)、20の細胞系は抵抗を有する(IC50>1μM)ことが示された。感度を有する5つのすべての細胞系、すなわちH827、H3255、H358、H2279およびCalu3は、FISHによるEGFRおよび/またはHER2遺伝子増幅を示した。逆に、セツキシマブに対して抵抗を有する20のNSCLC細胞系のうち、EGFRまたはHER2遺伝子増幅を有するものはなく、6つの細胞系のみが、EGFRおよび/またはHER2に対する高多染色体性を有していた。高レベルの遺伝子増加およびゼロ/低レベルの遺伝子増加を示すNSCLC細胞系の分布は、セツキシマブ敏感細胞系とセツキシマブ抵抗性細胞系とで有意に異なっていた(χ平方10.84、<0.001)。これらの結果は、EGFRおよびHER2遺伝子のコピー数状態が抗体治療に対する感度の予測手段になるという結論を裏づけるものである。
【0210】
本願に引用されている各参考文献の全体を参照により援用する。2004年5月27日に出願された米国仮特許出願第60/575,789号の全体を参照により本願に具体的に援用する。
【0211】
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West et al., Advanced bronchioloalveolar carcinoma: a phase II trial of paclitaxel by 96-h infusion (SWOG 9714) : a Southwest Oncology Group study. Ann Oncol, in press
本発明の様々な実施形態を詳細に説明したが、それらの実施形態の変更および改造が行われることは当業者にとって明らかである。しかし、当該変更および改造は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に含まれることがはっきりと理解される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)i)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅のレベル、
ii)EGFR遺伝子の多染色体性のレベル、
iii)チロシンキナーゼ受容体型受容体(HER2)遺伝子の増幅のレベル、および
iv)HER2遺伝子の多染色体性のレベルからなる群から選択される生物マーカーのレベルを患者からの腫瘍細胞のサンプルで検出する工程と、
b)i)EGFR阻害薬に対する感受性に相関しているコントロールレベルの該生物マーカー、および
ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルの該生物マーカーからなる群から選択されるコントロールレベルの該生物マーカーに対する、該腫瘍細胞サンプルにおける該生物マーカーのレベルを比較する工程と、
c)該患者の腫瘍細胞における該生物マーカーのレベルが、該EGFR阻害薬に対する感受性と相関している該生物マーカーの該コントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または該患者の腫瘍細胞における該生物マーカーのレベルが、該EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関している該生物マーカーのレベルを統計学的に超える場合に、該EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして該患者を選択する工程と、あるいは
d)該患者の腫瘍細胞における該生物マーカーのレベルが該EGFR阻害薬に対する感受性と相関している生物マーカーの該コントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または該患者の腫瘍細胞における該生物マーカーのレベルが、該EGFR阻害薬に対する抵抗性に相関している該生物マーカーのレベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、該EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして該患者を選択する工程とを備える、EGFR阻害薬の治療的投与が有効である、または有効でないことが予測される癌患者を選択する方法。
【請求項2】
(a)(i)、または(a)(ii)における前記検出工程が前記EGFR遺伝子にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いて行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)(iii)、または(a)(iv)における前記検出工程が前記HER2遺伝子にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いて行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出工程が、第7染色体セントロメア配列とハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いる工程をさらに備える請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出工程が、第17染色体セントロメア配列とハイブリダイズするヌクレオチドプローブを用いる工程をさらに備える請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記検出工程が、前記EGFR遺伝子および第7染色体セントロメア配列とハイブリダイズするキメラヌクレオチドプローブを用いる工程を備える請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記検出工程が、前記HER2遺伝子および第17染色体セントロメア配列とハイブリダイズするキメラヌクレオチドプローブを用いる工程を備える請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記検出工程が、前記サンプルにおける1つまたは複数の腫瘍細胞における腫瘍細胞1個当たりの前記EGFR遺伝子またはHER2遺伝子のコピー数を検出する工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(a)(i)における前記検出工程が、前記サンプルにおける1つまたは複数の腫瘍細胞における腫瘍細胞1個当たりのEGFR遺伝子の増幅を検出する工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)(iii)における前記検出工程が、前記サンプルにおける1つまたは複数の腫瘍細胞における腫瘍細胞1個当たりのHER2遺伝子の増幅を検出する工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記検出工程が、(a)(i)、(a)(ii)、(a)(iii)、および(a)(iv)の任意の2つの工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記検出工程が、(a)(i)、(a)(ii)、(a)(iii)、および(a)(iv)の任意の3つの工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記検出工程が、(a)(i)、(a)(ii)、(a)(iii)、および(a)(iv)の4つ全ての工程を備える請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記検出工程が工程(a)(i)、および工程(a)(ii)の両方を備える請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記検出工程が工程(a)(iii)をさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記検出工程が工程(a)(iv)をさらに備える請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記検出工程が工程(a)(iii)、および工程(a)(iv)の両方を備える請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記検出工程が工程(a)(i)をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記検出工程が工程(a)(ii)をさらに備える請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記検出工程が工程(a)(ii)、および工程(a)(iv)の両方を備える請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記検出工程が蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により行われる請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記比較工程が、前記腫瘍細胞における前記生物マーカーレベルと、前記EGFR阻害薬に対して抵抗性である1つまたは複数のコントロール細胞におけるコントロールレベルの前記生物マーカーとを比較する工程を備える請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記比較工程が、前記腫瘍細胞における前記生物マーカーレベルと、前記EGFR阻害薬に対して感受性である1つまたは複数のコントロール細胞におけるコントロールレベルの前記生物マーカーとを比較する工程を備える請求項1から請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記EGFR阻害薬に対する感受性および/または抵抗性と相関している、前記コントロールレベルの前記生物マーカーが予め決定されている請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
細胞の約40%未満に3またはそれを超える前記EGFR遺伝子のコピーがある腫瘍サンプルを有する患者は、前記EGFR阻害薬での処置に対して反応が低い者または無反応者であると予測される請求項1に記載の方法。
【請求項26】
約40%を超え、またはそれに等しい細胞に約4またはそれを超える前記EGFR遺伝子のコピーがある腫瘍サンプルを有する患者は、前記EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される請求項1に記載の方法。
【請求項27】
EGFR遺伝子クラスター、または
a)細胞1個当たり約2もしくはそれを超える第7染色体のコピーに対するEGFR遺伝子のコピーの割合、または
b)分析が行われた細胞の約10%を超え、もしくはそれに等しい細胞において、細胞1個当たりの前記EGFR遺伝子のコピーが約15またはそれを超える平均を有する腫瘍サンプルを患者が有する場合に、前記患者は前記EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される請求項1に記載の方法。
【請求項28】
約40%未満の細胞に3またはそれを超える前記HER2遺伝子のコピーがある腫瘍細胞を有する患者は、前記EGFR阻害薬での処置に反応が低い者または無反応者であると予測される請求項1に記載の方法。
【請求項29】
約40%を超えまたはそれに等しい細胞に約4またはそれを超える前記HER2遺伝子のコピーがある腫瘍細胞を有する患者は前記EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される請求項1に記載の方法。
【請求項30】
HER2遺伝子クラスター、または
a)細胞1個当たり約2もしくはそれを超える第17染色体のコピーに対するHER2遺伝子のコピーの割合、または
b)分析が行われた細胞の約10%を超え、もしくはそれに等しい細胞において、細胞1個当たりの前記HER2遺伝子のコピーが約15またはそれを超える平均を有する腫瘍サンプルを患者が有する場合に、前記患者は前記EGFR阻害薬での処置が有効であることが予測される請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記患者がHER2遺伝子の増幅または多染色体性に基づく前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるものとして選択される場合に、EGFR遺伝子の増幅または多染色体性に基づく工程(d)における前記患者の選択が反対になる請求項1に記載の方法。
【請求項32】
EGFR遺伝子の増幅または多染色体性に基づく工程(c)における前記患者の選択、およびHER2遺伝子の増幅または多染色体性に基づく前記患者のポジティブ選択が、EGFR遺伝子の増幅または多染色体性のみに基づく工程(c)における前記患者の選択に比べて前記EGFR阻害薬での処置に患者が反応する見込みを増大させる請求項1に記載の方法。
【請求項33】
a)前記腫瘍細胞サンプルにおいて、上皮成長因子受容体(EGFR)タンパク質の発現のレベルを検出する工程と、
b)i)前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および
ii)前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルと、前記腫瘍細胞サンプルにおけるEGFRタンパク質の発現の該レベルとを比較する工程と、
c)前記患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現の前記コントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または、前記患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該レベルを統計学的に超える場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして前記患者を選択する工程と、または
d)前記患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該コントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または前記患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該レベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして前記患者を選択する工程とをさらに備える請求項1から請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
EGFRタンパク質の発現の前記レベルが免疫組織化学(IHC)を用いて検出される請求項33に記載の方法。
【請求項35】
a)前記腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを検出する工程と、
b)i)前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および
ii)前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルと、前記腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルとを比較する工程と、
c)前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該コントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルを統計学的に超える場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして前記患者を選択する工程と、または
d)前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該コントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして前記患者を選択する工程とをさらに備える請求項1から請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記リン酸化Aktタンパク質の発現のレベルが免疫組織化学(IHC)を用いて検出される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記検出工程が、EGFR多染色体性およびリン酸化Aktタンパク質の発現を検出する工程を備える請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記EGFR遺伝子における突然変異を検出する工程をさらに備え、前記EGFR遺伝子における1つまたは複数の突然変異の検出により前記患者が前記EGFR阻害薬での処置が有効であることがさらに予測される請求項1から請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記EGFR遺伝子のエキソン18、19、および21の任意の1つまたは複数における突然変異を検出する工程を備える請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異を検出する工程を備える請求項38に記載の方法。
【請求項41】
a)患者からの腫瘍細胞のサンプルにおいて上皮成長因子受容体(EGFR)タンパク質の発現のレベルを検出する工程と、
b)i)EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および
ii)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるEGFRタンパク質の発現のコントロールレベルと、該腫瘍細胞サンプルにおけるEGFRタンパク質の発現の該レベルとを比較する工程と、
c)該患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、該EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該コントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または、該患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現のレベルが、該EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該レベルを統計学的に超える場合に、該EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして該患者を選択する工程と、あるいは
d)該患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが該EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該コントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または該患者の腫瘍細胞におけるEGFRタンパク質の発現の該レベルが、該EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているEGFRタンパク質の発現の該レベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、該EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして該患者を選択する工程とを備える、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であるか有効でないことが予測される癌患者を選択する方法。
【請求項42】
前記EGFRタンパク質の発現のレベルが免疫組織化学(IHC)を用いて検出される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記EGFR遺伝子における突然変異を検出する工程をさらに備え、前記EGFR遺伝子における1つまたは複数の突然変異の検出により前記患者が前記EGFR阻害薬での処置に反応することがさらに予測される請求項41または請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記EGFR遺伝子のエキソン18、19、および21の任意の1つまたは複数における突然変異を検出する工程を備える請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記EGFR遺伝子のチロシンキナーゼ領域における突然変異を検出する工程を備える請求項43に記載の方法。
【請求項46】
a)前記腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現のレベルを検出する工程と、
b)i)前記EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているコントロールレベル、および
ii)前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているコントロールレベルからなる群から選択されるリン酸化Aktタンパク質の発現のコントロールレベルと、前記腫瘍細胞サンプルにおけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルとを比較する工程と
c)前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、該EGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該コントロールレベルと統計学的に類似し、もしくはそれを超える場合に、または、前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルを統計学的に超える場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効であることが予測されるとして前記患者を選択する工程と、または
d)前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルがEGFR阻害薬に対する感受性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該コントロールレベルよりも統計学的に低い場合に、または前記患者の腫瘍細胞におけるリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルが、前記EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関しているリン酸化Aktタンパク質の発現の該レベルと統計学的に類似し、もしくはそれより低い場合に、前記EGFR阻害薬の治療的投与が有効でないことが予測されるとして前記患者を選択する工程とをさらに備える請求項41から請求項45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が肺癌を有する請求項1から請求項46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が非小細胞肺癌(NSCLC)を有する請求項1から請求項46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、細気管支肺胞性癌(BAC)またはBACの特徴のある腺癌を有する請求項1から請求項46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記EGFR阻害薬がゲフィチニブである請求項1から請求項49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記EGFR阻害薬がエロルチニブ(eroltinib)である請求項1から請求項49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記EGFR阻害薬がセツキシマブである請求項1から請求項49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
a)i)上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の増幅のレベル、
ii)EGFR遺伝子の多染色体性のレベル、
iii)ヒトチロシンキナーゼ受容体型受容体(HER2)遺伝子の増幅のレベル、
iv)HER2遺伝子の多染色体性のレベル、
v)EGFRタンパク質の発現のレベル、および
vi)リン酸化Aktタンパク質の発現のレベルからなる群から選択される、生物マーカーのレベル、または生物マーカーの組合せを腫瘍細胞のサンプルで検出するための手段と、
b)i)EGFR阻害薬に対する感受性を検出するためのコントロールサンプル、
ii)該EGFR阻害薬に対する抵抗性を検出するためのコントロールサンプル、
iii)該EGFR阻害薬に対する感受性と相関している該生物マーカーの予め決定されたコントロールレベルを含む情報、および
iv)EGFR阻害薬に対する抵抗性と相関している該生物マーカーの予め決定されたコントロールレベルを含む情報からなる群から選択されるコントロールとを備える、EGFR阻害薬の治療的投与が有効であるか有効でないことが予測される癌患者を選択するためのアッセイキット。
【請求項54】
前記EGFR遺伝子における少なくとも1つの突然変異を検出するための少なくとも1つの手段をさらに備える請求項53に記載のアッセイキット。
【請求項55】
(a)(i)〜(a)(iv)のいずれかの検出手段が前記遺伝子の一部分をハイブリダイズするヌクレオチドプローブを備える請求項53に記載のアッセイキット。
【請求項56】
前記ヌクレオチドプローブが、ヒト第7染色体またはヒト第17染色体の一部分とハイブリダイズする請求項55に記載のアッセイキット。
【請求項57】
(a)(i)または(a)(ii)の検出手段が、EGFR遺伝子の一部分、および該EGFR遺伝子以外の前記第7染色体の一部分にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを備える請求項53に記載のアッセイキット。
【請求項58】
(a)(iii)または(a)(iv)の検出手段が、HER2遺伝子の一部分、および該HER2遺伝子以外の前記第17染色体の一部分にハイブリダイズするヌクレオチドプローブを備える請求項53に記載のアッセイキット。
【請求項59】
前記検出手段が、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)において使用されるものである請求項53から請求項58のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項60】
(a)(v)または(a)(vi)の検出手段が、前記タンパク質に選択的に結合する、抗体またはその抗原結合性フラグメントを備える請求項53に記載のアッセイキット。
【請求項61】
前記検出手段が検出可能な標識を備える請求項53から請求項60のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項62】
前記検出手段が基質上に固定化されている請求項53から請求項60のいずれか一項に記載のアッセイキット。

【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2013−5800(P2013−5800A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164125(P2012−164125)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【分割の表示】特願2007−515430(P2007−515430)の分割
【原出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(308032460)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト (25)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
【Fターム(参考)】