癌療法のための、樹状細胞を癌に対して感作させるための癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体ペプチド
本発明は、癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体タンパク質(OFA/iLRP)に対する樹状細胞をパルシングするために使用することができるペプチドまたはペプチド混合物を作製する方法に関する。より詳細には、免疫系が特異的抗原を攻撃するように方向付けできる様々な異なる供給源から樹状細胞を得ることができる。ex vivo、in vivoまたはin vitroのいずれかで感作させた後、樹状細胞は、個体の自己免疫系を補助して、あらゆる種類のOFA/iLRP関連癌に対して保護するまたはそれを処置する。また、ペプチドは、OFA/iLRP関連癌を検出、診断および監視、ならびに処置するためにも使用し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年3月26日に出願された米国仮出願第61/163,808号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)の出願日の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体タンパク質(OFA/iLRP)に関する。より詳細には、本発明は、樹状細胞を癌に対して感作させるために使用することができるペプチドを提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体タンパク質(OFA/iLRP)の初期の特徴づけは、癌胎児性抗原またはラミニン受容体を研究していた3つの独立のグループによって行われた[1〜3(非特許文献1〜3)]。OFA/iLRPとは、様々な異なる癌において過剰発現され、リボソームタンパク質p40としての二重機能を有する、高度に保存されたタンパク質である[4〜27]。OFA/iLRPタンパク質は295個のアミノ酸の単一のポリペプチド鎖からなり、約37〜44KDaの分子量を有する。OFA/iLRPの構造が最近2.15Åまで解明され、OFA/iLRPのアミノ酸112から140までの間の領域がラミニン受容体タンパク質(LRP)を形成するためのOFA/iLRPの二量体化[28]に関与していることを示す。[28]。ラミニン受容体の成熟型は、67kDaの分子量を有するアセチル化された未成熟LRPの二量体であると考えられる。成熟した67kDaの型は多くの正常細胞および腫瘍細胞上に存在するが、胎児および腫瘍細胞によるOFA/iLRPの優先的な発現が存在すると考えられる。したがって、発現パターンにより、OFA/iLRPが、癌および他の疾患を処置するために免疫系を感作させるための可能な候補タンパク質となる[6]。したがって、樹状細胞に基づく治療における特定のOFA/iLRPペプチドの使用が新規の応用である。
【0004】
樹状細胞(DC)とは、哺乳動物の免疫系の一部を形成する免疫細胞である。その主な機能は、抗原物質をプロセスし、それを免疫系の他の細胞の表面上に提示することである。したがって、これらは抗原提示細胞として機能する。樹状細胞は非リンパ組織と直接情報交換し、傷害シグナル(例えば、虚血、感染症、もしくは炎症)または腫瘍増殖について非リンパ組織を調査する。シグナル伝達された後、樹状細胞は、IL−1、TNFアルファ、ならびにリンパ球および骨髄性細胞を始動させる様々な他の炎症性サイトカインを放出することによって免疫応答を開始させる。例えば腫瘍に対する免疫不全など、様々な免疫不全が、樹状細胞の機能の損失の結果として生じると考えられている。樹状細胞は、MHC拘束性T細胞を感作させ、T細胞発生中の自己抗原および免疫中の外来抗原の両方の抗原をin situでT細胞に提示するための有効な経路を提供する高い能力を有する。したがって、樹状細胞をex vivoで腫瘍または感染性疾患のワクチンアジュバントとして使用することに関する関心が高まっている。樹状細胞は、免疫系が特異的抗原を攻撃するように方向付けできる様々な異なる供給源(骨髄およびリンパ系)に由来することができる。例えば、これらは以下の供給源に由来し得る:単球由来(CD14+)、造血幹細胞由来(CD34+もしくはCD133+もしくはCD117+)、形質細胞様(CD303+/CD304+)、骨髄由来(CD1c+もしくはCD141+もしくはCD209+)、またはランゲルハンス細胞。ex vivo、in vivoまたはin vitroのいずれかで感作させた後、樹状細胞は、あらゆる種類のOFA/iLRP関連の疾患または癌に対して保護するまたはそれを処置するために、個体の自己免疫系を補助する。感作、または樹状細胞のパルシングとは、標的となっている免疫応答を解明するために樹状細胞を標的タンパク質に曝露させるプロセスである。
【0005】
OFA/iLRP樹状細胞療法は、後期の癌腫を有する患者の生存率を最小限の副作用で増大させることが示されている[13、22]。以前の実験では、樹状細胞を感作させるために推定上のMHC(主要組織適合性複合体)結合配列を有するペプチドを使用していた。しかし、推定上のMHC結合部位は、ペプチド上のその位置が原因で、またはそれが複数のペプチドにまたがるために、免疫系に見逃される場合がある。Siegelらは、HLA−A*201を標的としたペプチドを使用したが、ペプチドの溶解度およびペプチドに関連する他の問題を考慮しなかった[22]。Rohrerらは、マウスに由来するOFA/iLRPの12量体ペプチドに重複したアミノ酸の増殖プロフィールを分析した[29]。この研究では比X/nの分析に焦点を当て、Xはアミノ酸中のタンパク質の長さであり、nはペプチドの長さである(図1)。しかし、この連続的なペプチド方法に基づいても、推定上のHLA(ヒト白血球抗原)部位は、それだけには限定されないが、ペプチド溶解度、ペプチド構造、2つのペプチド間に位置するHLA部位、HLA結合を制限するアミノ酸に隣接するHLA部位、および不適切な二次構造を含めた様々な理由が原因で、依然として免疫系によって見逃されるまたは認識されない場合がある。したがって、連続的なペプチドの使用は、情報価値がある一方で、完全長タンパク質を処理した場合に認識される可能性がある有用なタンパク質配列を見逃す高い確率を有する。実際、以前の研究では、公的に利用可能なHLA結合配列の予測プログラムと免疫応答を生じる可能性がより高い領域を発見するための統計的方法の使用を組み合わせることによって判明した、推定上のHLA結合配列のうちのいくつかを示すことができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lesot, H.ら、EMBO J(1983)2(6):p861〜865
【非特許文献2】Malinoff, H.L.ら、J Cell Biol(1983)96(5):p1475〜9
【非特許文献3】Rao, N.C.ら、Biochem Biophys Res Commun(1983)111(3):p804〜8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、以前のOFA/iLRP細胞に基づく療法では、細菌発現させたまたは小さなHLA特異的ペプチドを使用していた。[13、22]。細菌発現は時間がかかり、GMPに認定された様式で産生させることが困難である。したがって、樹状細胞および免疫系を刺激するために推定上のMHC結合部位の数が増加した領域を有するように具体的に設計されたペプチドを開発する必要性が存在する。また、ペプチドを用いた有効なOFA/iLRP樹状細胞療法を開発する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、樹状細胞を感作させることができる単離ペプチドまたはその混合物を提供する。ペプチドの例には、それだけには限定されないが、
【0009】
【化1】
およびその混合物が含まれる。
【0010】
さらなるアミノ酸をペプチドまたはペプチド混合物のN末端および/またはC末端のいずれかに付加させ得る。一実施形態では、本発明のペプチドには以下のペプチドが含まれる:
【0011】
【化2】
別の実施形態では、本発明のペプチドはOFA/iLRPの二量体化領域に由来する。ペプチドは樹状細胞を感作させることができる。
【0012】
本発明のペプチドは、ペプチドの免疫刺激、安定性、および/または溶解度を増大させる担体と結合体化させ得る。担体の例には、それだけには限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス(microelectro/electrofluidic device)、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、およびコロイド粒子が含まれる。
【0013】
また、本発明のペプチドは、アセチル化、脂肪酸性化(fatty acidification)、ミリスチン酸酸性化(myristic acidification)、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化(abidation)、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、AHX、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、または多抗原性ペプチド系(multiple antigenic peptide system)(MAP)が含まれるように修飾してもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドが含まれる組成物を提供する。組成物は医薬組成物またはワクチンであることができる。医薬組成物には、薬学的に許容される担体が含まれ得る。また、組成物は、本発明のペプチドによって感作させた樹状細胞であってもよい。
【0015】
また、本発明は、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法も提供する。該方法には、本発明のペプチドを、個々にまたは混合物として、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で被験体に投与するステップが含まれる。一実施形態では、ペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導する。
【0016】
別の実施形態では、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法は、(a)樹状細胞を本発明のペプチドで感作させるステップと、(b)感作させた樹状細胞を、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で、被験体に投与するステップとを含む。
【0017】
また、本発明のペプチドは、試料中の、OFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法で使用してもよい。該方法は、
(a)本発明のペプチドを、抗体がペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で試料と接触させるステップと、
(b)試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む。
【0018】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法で使用する。該方法は、(1)本発明のペプチドを、療法に対する被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明のペプチドは、被験体におけるOFA/iLRP関連癌の処置の進行をex vivoで監視する方法で使用する。処置は、T細胞関連応答またはB細胞関連応答のいずれか(抗体応答)を誘導し得る。該方法は、(1)処置を受ける被験体の生体液(biofluid)を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、ペプチドとT細胞もしくはB細胞またはT細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む。
【0020】
本発明の上述および他の特長ならびにこれらを獲得および使用する様式は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、より明らかとなり、かつ最も良好に理解されるであろう。図面は本発明の典型的な実施形態のみを示し、したがってその範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、OFA/iLRPおよびHLA結合モチーフのコンピュータ分析を示す図である。(A)は、予測の関数としてのアミノ酸の数を示すグラフである。(B)は、%OPTの関数としてのアミノ酸の数を示すグラフである。(C)は、5個のアミノ酸のビンの関数としての分布部位の数を示すグラフである。
【図2】図2は、樹状細胞の感作における選択したペプチドのウィスカープロットを示す図である。%OPTの関数としての、クラスター形成したHLA結合ペプチドを示すグラフである。中実の丸は、結果を歪める可能性があり、最も強い免疫原性の領域が見つかる場所の不当表示を可能にする、外れ値を示す。
【図3A】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図3B】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図3C】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4A】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4B】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4C】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4D】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図5】図5は、細胞接着に対するOFA/iLRPペプチドの効果を示す図である。(A)は、DU−145細胞接着を示すグラフである。(B)は、SK−MEL細胞接着を示すグラフである。
【図6】図6は、細胞生存度に対するOFA/iLRPペプチドの効果を示す図である。(A)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド1における細胞生存度を示すグラフである。(B)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド2における細胞生存度を示すグラフである。(C)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド3における細胞生存度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様は、樹状細胞をOFA/iLRPに対してパルシングするために使用できるペプチドまたはペプチド混合物を提供する。OFA/iLRPタンパク質の特異的領域を認識するように免疫系を方向付けるペプチドは、ホモ二量体形成領域、ラミニン結合領域、多剤耐性領域、リボソーム相互作用領域、および生物学的意義を有する他の部位などの、様々なユニークなタンパク質領域を中心に設計されている。ペプチドは、OFA/iLRP二量体形成、抗原性、MHC−1結合、MHC−2結合、プロテアソーム切断、溶媒接近性、およびタンパク質配列に特異的なペプチドを焦点として、完全長のタンパク質に基づいて設計されている。本発明では、コンピュータおよび統計的分析を用いて、OFA/iLRP関連の疾患の療法に対して使用し得る最適なペプチドを決定する。この方法はX−nペプチドのコンピュータ分析および複数のペプチド長さの迅速な分析の付加を可能にし、これにより、OFA/iLRPまたは同様の処置/療法で使用される任意の他の可能なタンパク質を用いた、樹状細胞またはワクチン接種療法のための最適なペプチドの発生の確率が増加する。
【0023】
様々なOFA/iLRPエピトープの分布を決定するために、OFA/iLRPタンパク質配列を、SYFPEITHIを用いてすべての公知のHLA結合モチーフについてマイニングした(Hans−Georg Rammensee、Jutta Bachmann、Niels Nikolaus Emmerich、Oskar Alexander Bachor、Stefan Stevanovic:SYFPEITHI: database for MHC ligands and peptide motifs。Immunogenetics(1999年)50巻:213〜219頁(www.syfpeithi.deからアクセス))。しかし、HLA結合モチーフを個々に分析する代わりに、データベース中のすべての公知のHLA結合モチーフの表を、配列、開始部位、および%最適結合(実験HLA結合データに対する%一致)を用いてExcelに保存した。HLA結合部位のデータが得られた後、Mac OS X用のPrism5.0(GraphPad Software,Inc.)を用いてこれらを分析した。HLA結合部位が増加した領域を探すために、いくつかの異なる分析を行った。まず、予測されたHLA結合部位の開始部位をプロットして、HLA結合の確率が増加している潜在的な領域を示した。その後、%最適(OPT)を検査し、アミノ酸開始部位に対してプロットした。最後に、HLA結合部位の数が増加した領域を探すために、部位の数をビニングした(5個のアミノ酸)。これらの分析を一緒にして、より大きなHLA結合部位の分布を有する特異的領域が存在していたことが示された。より多数のHLA結合部位を有する領域が同定された後、これらの領域中のExcelシートからのデータを抽出し、%OPTをすべての予測されたHLA結合領域に対してプロットした。有意な差異を有する領域を全タンパク質(すべてのHLA部位)に対して分析するために、選択したペプチド領域を一元配置ANOVAで分析し、続いてダネットの多重比較試験を行った。分析により、群間に有意な差異が存在することが示された(p=0.0068)。ダネットの事後分析により、132〜134および211〜217のペプチド群がすべてのMHCペプチドの対照群と有意に異なっていたことが示された(*=p<0.05)(図2)。
【0024】
本明細書中に記載の本発明のマイニング方法を用いて、免疫系を感作させるために使用できるペプチドを同定した。表1は、本発明のペプチド配列の例のリストを提供する。領域がMHCタンパク質と結合できると推定される回数を分析することで、ペプチド領域を選択および/または組み合わせて生物活性ペプチドを発生させることができる(図1)。分布分析を領域の平均%OPTスコアと共に用いることで、5個の領域が、免疫系の適切な構成成分と結合する確率がより高いことが見出された。これにより、OFA/iLRP関連の疾患を処置するために、様々な異なるex vivo、in vitroまたはin vivoの刺激を用いて患者を感作させることが可能となる。
【0025】
したがって、一実施形態では、本発明のペプチドには、それだけには限定されないが、
【0026】
【化3】
およびその混合物が含まれる。さらなるアミノ酸をペプチドまたはペプチド混合物のn末端および/またはc末端に付加させ得る。別の実施形態では、本発明のペプチドはOFA/iLRPの二量体化領域に由来する。
【0027】
本発明のペプチドは、免疫刺激、安定性、および/またはペプチド溶解度のために適切な担体と結合体化させ得る。結合体化の種類には、それだけには限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、デンドリマー(dendromer)、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、コロイド粒子、他のペプチド配列および様々なタンパク質で完成されるものが含まれる。結合体化のためのシステイン残基の位置は、必要に応じていずれかの末端または内部に存在することができる。結合体化の目的は、免疫系、処置としての抗癌性、またはOFA/iLRPペプチドに関連する任意の他の関連活性を増大させることである。
【0028】
本発明のペプチド配列は、より高い免疫系の反応性、増加した溶解度、および他の機能を可能にするためにわずかに変動してもよく、ペプチド配列のそのような変動は本発明のペプチドの一部であると見なされる。さらに、1つまたは複数の本発明の免疫反応性ペプチド配列を一緒に配置して新しい免疫反応性ペプチドを形成し得る。配列は、十分予測可能な免疫活性の領域またはいくつかの他の部位もしくはタンパク質に由来することができる。さらに、ペプチドは、免疫系に関連しない特定の機能を遮断または増強するために使用し得る。1つまたは複数の反復ペプチドの連結されたペプチドを作製して、長い生物活性ポリマーを形成し得る。製造中、ペプチドは、それだけには限定されないが、アセチル化、ホルミル化(formulation)、脂肪酸性化、ミリスチン酸酸性化、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、多抗原性ペプチド系(MAP)、ならびに/または、溶解度、安定性、免疫反応性、および/もしくは生物活性を増大させることを含めた、OFA/iLRPペプチド機能に影響を与える他のものを含めた、1つまたは複数の修飾を有し得る。
【0029】
本発明のペプチドは、OFA/iLRP関連の疾患またはワクチンの処置中の非特異的な効果を減少させ得る、OFA/iLRPの特異的領域に向けることができる。ペプチドは、表1に示す1つのペプチド配列またはペプチド配列の組合せから作製する。どの領域が免疫系刺激の確率が増加しているかを決定するために、クラスター形成した推定上のHLA結合部位を設計し、平均%OPT(コンセンサスと比較した場合のペプチドのスコア)[53、54]を、OFA/iLRP全体にわたるすべての推定上のHLA部位と比較した(図2)。比較に使用した複数の推定上のHLA結合部位が含まれるように具体的に設計したペプチドの例を図2に記載する。
【0030】
個々の本発明のペプチドまたは組合せを用いて、免疫系を、提供したOFA/iLRP配列で感作させ得る。また、OFA/iLRPに対する免疫応答を誘導するように設計したペプチドを用いて、それだけには限定されないが、受容体結合、ラミニン機能の遮断および/または他のOFA/iLRPの細胞機能に影響を与えることを含めた、さらなる臨床応用も提供し得る。OFA/iLRPペプチドの免疫反応性を増大させるために最終産物を結合体化させ得る。結合体化は、マレジオアミドKLHタンパク質と反応させるためのシステインの付加を含めた、本明細書中に記載または当分野で公知の様々な方法によって形成させ得る[55、56]。これらのペプチドおよびその組合せは、癌に対するex vivo、in vivo、またはin vitroのワクチン接種として使用する前に結合体化または修飾し得る。
【0031】
本発明の実施形態によれば、コンピュータに基づく手法により、樹状細胞および免疫系の療法に使用し得るいくつかの可能なタンパク質配列を同定した。一実施形態では、平均%OPTを、アミノ酸132、117および54を中心に設計された3個のペプチドについて計算した(図2)。設計したペプチドを平均%OPTスコアと比較し、これらはすべて平均を超えており、132領域は有意に異なっていた(図2)。ペプチドはHLAプロトタイプ配列の一部ではない少なくとも3個のアミノ酸のフランキング配列を有しており、必要な場合は抗原プロセッシングおよびHLA結合を最適化するために修飾することができる。他の可能なペプチドはアミノ酸104および211付近から開始され、単独で、または他のペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明のペプチドは、ex vivoの樹状細胞の誘導および感作中に細菌発現させたOFA/iLRPを置き換えるために使用することができる。ヒトまたは獣医学的な応用に適している限りは、ペプチドを様々な巨大分子と結合体化させることができる。
【0033】
ペプチドは、化学合成またはEscherichia coliなどを用いた生化学的合成によって調製し得る。当業者に周知の方法を合成に使用し得る。
【0034】
本発明のペプチドが化学合成である場合、ペプチド合成の分野で周知の方法を使用し得る。例えば、アジド方法、酸塩化物方法、酸無水物方法、混合酸無水物方法、DCC方法、活性エステル方法、カルボジイミダゾール方法および酸化還元方法などの方法を列挙し得る。固相合成または液相合成のいずれかを使用し得る。また、市販のペプチド合成機(例えばShimadzu PSSM−8)も使用し得る。
【0035】
反応後、本発明のペプチドは、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーまたは再結晶化などの慣用の精製方法の組合せによって精製し得る。
【0036】
本発明の一態様によれば、ペプチドは、被験体に投与する組成物中に含め得る。組成物は医薬組成物またはワクチンであることができる。医薬組成物には、薬学的に許容される担体が含まれ得る。また、組成物は、本発明のペプチドによって感作させた樹状細胞であってもよい。
【0037】
本明細書中で使用する樹状細胞(DC)とは、抗原物質をプロセスし、それを表面上に免疫系の他の細胞に対して提示し、したがって抗原提示細胞として機能する、免疫細胞である。様々なプロセスを使用して、樹状細胞を抗原に対して感作させ得る。一実施形態では、これらのプロセスは、樹状細胞を抗原ペプチドと接触させるステップを含む(「ペプチドパルシング」)。この手法は、樹状細胞を、可変の時間(通常は約30分間〜約5時間)の間、1つまたは複数の抗原ペプチドと共に、すなわち、ペプチドを用いて処理が、感作させた樹状細胞とも呼ばれる抗原提示細胞をもたらすような、抗原に由来するペプチドと共にインキュベーションすることからなる。
【0038】
樹状細胞を癌に特異的な抗原で処理することは、ワクチン組成物またはペプチドを含む組成物を哺乳動物に投与した場合に宿主の免疫が刺激されるような、抗原を提示する樹状細胞をもたらす任意の方法によって、例えば、ワクチン組成物を哺乳動物に投与する前に樹状細胞を抗原の存在下でパルシングまたは培養することによって行うことができる。
【0039】
樹状細胞は、樹状細胞が適切な細胞に到達することを可能にする任意の方法によって哺乳動物に投与することができる。これらの方法には、例えば、注射、インフュージョン、堆積、移植、経口摂取、もしくは局所投与、またはその任意の組合せが含まれる。注射は、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下または腹腔内であることができる。当業者が必要以上の実験を行わずに決定できるように、癌に応じて単一または複数の用量を所定の期間にわたって投与することができる。注射は複数の位置で与えることができる。樹状細胞の投与は、単独または他の治療剤と組み合わせて行うことができる。
【0040】
本明細書中で使用する「ワクチン」とは、無害の形態の抗原を含有する生物または物質を意味する。ワクチンは免疫保護応答を始動するように設計されている。ワクチンは組換えまたは非組換えであり得る。非免疫宿主内に接種した際、ワクチンは生物または物質に対する活性免疫を誘発するが、疾患を引き起こさない。ワクチンは、例えば、解毒されているが、その主要な免疫原性決定要因を依然として保持している毒素、もしくは腸チフス、コレラおよび灰白髄炎などの死滅させた生物、もしくは生きているが非病原性の形態の病原体である、弱毒化した生物として定義される、トキソイドの形態を取り得るか、またはそのような生物によってコードされている抗原であり得るか、または生きた腫瘍細胞もしくは腫瘍細胞上に存在する抗原であり得る。
【0041】
ワクチン組成物の用量は抗原、種、ワクチン接種したまたはワクチン接種する宿主の体重などに依存するが、薬理学的に有効な量のワクチン組成物の用量は、通常、マウスモデルにおいて体重1キログラムあたり約50.mu.g〜約500.mu.g/用量の範囲である。
【0042】
原則として、本発明のワクチン組成物は経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内もしくは腹腔内)、頬内、鼻腔内、または経皮で好都合に投与する。本発明によって企図される投与経路は、抗原物質および共配合剤に依存する。
【0043】
ワクチン組成物の用量は、選択した抗原、投与経路、種、体重、および他の標準の要因に依存する。有効な免疫化量および投与方法を達成するために、当業者が容易かつ敏速にそれぞれの抗原について免疫原性応答に適切な用量を滴定できることが企図される。
【0044】
本発明の組成物は、その意図する投与経路に適合性があるように配合する。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸の投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下の施用に使用する液剤または懸濁液には、以下の構成成分、すなわち、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、アセテート、シトレートまたはホスフェートなどの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤を含めることができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入することができる。
【0045】
注射用の使用に適した組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)、または無菌的注射用の液剤もしくは分散液を即時調製するための分散液および滅菌散剤が含まれる。静脈内投与には、適切な担体には、生理食塩水、滅菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合で、組成物は無菌的でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体であるべきである。これは製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコールなど)、ならびに適切なその混合物を含有する、溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌および抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、マンニトール、ソルビトールなどの糖もしくはポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0046】
無菌的注射用液剤は、所要量の化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上記列挙した成分のうちの1つまたは組合せと共に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって調製することができる。一般に、分散液は、化合物を、基本分散媒および上記列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル内に取り込ませることによって調製する。滅菌散剤の場合、無菌的注射用液剤の調製には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、活性成分および以前に滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0047】
経口組成物には、一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。経口治療的投与の目的には、化合物を賦形剤と共に取り込ませ、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。また、経口組成物は、洗口液として使用するために流体担体を用いて調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または同様の性質の化合物のうちの任意のものを含有することができる:結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香味料。
【0048】
吸入による投与には、組成物は、エアロゾルスプレーの形態で、加圧容器または適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素などの気体を含有するディスペンサー、すなわち噴霧器から送達する。
【0049】
また、全身投与は経粘膜または経皮手段による場合もある。経粘膜または経皮の投与には、透過する障壁に適した浸透剤を配合物中で使用する。そのような浸透剤は当分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜投与には、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬を使用することによって達成することができる。経皮投与には、化合物は、当分野で一般に公知のように軟膏、膏薬、ゲル、またはクリーム内に配合する。
【0050】
また、本発明の組成物は、坐薬(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの慣用の坐薬基剤を用いる)または直腸送達用の保留浣腸の形態で調製することもできる。
【0051】
一実施形態では、組成物は、移植片および微小カプセル封入送達系を含めた徐放性配合物など、化合物を身体からの迅速な排除から保護する担体を用いて調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような配合物の調製方法は当業者に明らかであろう。また、材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから購入することもできる。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的化したリポソームが含まれる)も薬学的に許容される担体として使用することができる。
【0052】
投与の容易性および用量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で配合することが有利である。本明細書中で使用する「単位剤形」とは、処置する被験体の単位用量として適した物理的に別個の単位をいい、それぞれの単位は、必要な製薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された、事前に決定された量の活性化合物を含有する。
【0053】
本発明の組成物は、容器、パック、またはディスペンサー中に、投与の指示と一緒に含めて、梱包された製品を形成することができる。また、他の活性化合物も組成物内に取り込ませることができる。
【0054】
また、本発明は、本発明のペプチドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物も提供する。薬学的に許容される賦形剤は当分野で公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は形もしくは稠度を与えるか、または希釈剤として作用することができる。適切な賦形剤には、それだけには限定されないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、カプセル封入剤、緩衝液、ならびに皮膚浸透増強剤が含まれる。非経口および非経口でない薬物送達のための賦形剤および配合物は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000年)に記載されている。
【0055】
本発明は、OFA/iLRP関連癌を検出、診断および監視、ならびに処置するために本発明のペプチドを使用する方法を提供する。本発明の目的のために、OFA/iLRP関連癌とは、OFA/iLRPのエピトープ発現(正常な試料と比較して増加もしくは減少した、および/または不適切な発現、例えば、通常はエピトープ発現を欠く組織および/または細胞における発現の存在)に関連する任意の疾患、障害、または状態をいう。
【0056】
一実施形態では、本発明は、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法を提供する。該方法は、本発明のペプチドを、個々にまたは混合物として、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で、被験体に投与するステップを含む。ペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連の疾患の進行を低下させる免疫応答を誘導し得る。免疫応答には、T細胞またはB細胞関連の応答の両方が含まれ得る。また、ペプチドは、免疫応答に依存しない応答も誘導し得る。この応答の例は、それだけには限定されないが、生存度、接着、遊走、血管化、または免疫応答に依存しない可能性がある他の応答であり得る。
【0057】
別の実施形態では、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法は、(a)樹状細胞を本発明のペプチドで感作させるステップと、(b)感作させた樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で、被験体に投与するステップとを含む。樹状細胞の感作および投与は上述されており、ここでは繰り返さない。樹状細胞の例には、それだけには限定されないが、単球由来細胞(CD14+)、造血幹細胞由来細胞(CD34+もしくはCD133+もしくはCD117+)、形質細胞様(CD303+/CD304+)、骨髄由来細胞(CD1c+もしくはCD141+もしくはCD209+)、またはランゲルハンス細胞が含まれる。
【0058】
また、本発明のペプチドは、試料中のOFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法で使用してもよい。該方法は、
(a)本発明のペプチドを、抗体がペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で試料と接触させるステップと、
(b)試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む。
【0059】
慣用の方法を用いて、抗体との複合体の量を決定し得る。例には、それだけには限定されないが、ELISA、蛍光偏光、共鳴、FACS、または抗体を検出することができる任意の公知の方法が含まれる。
【0060】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法で使用する。該方法は、(1)本発明のペプチドを、療法に対する被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む。
【0061】
さらなる実施形態では、本発明のペプチドは、被験体におけるOFA/iLRP関連癌の処置の進行をex vivoで監視する方法で使用する。処置は、抗体応答などのT細胞関連の応答またはB細胞関連の応答を誘導することができる。該方法は、(1)処置を受ける被験体の生体液を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、ペプチドとT細胞もしくはB細胞またはT細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む。
【0062】
本発明の目的では、生体液とは、排泄される、分泌される、針を用いて得る、または病理過程の結果として発生する場合がある、任意の生物学的な流体または組織溶解液である。生体液の例には、それだけには限定されないが、血液、尿、組織溶解液、血清、血漿、胆汁、汗、唾液、嚢胞液、水疱液、膿瘍液、脳脊髄液などが含まれる。
【0063】
T細胞の産物には、それだけには限定されないが、IL−2、IFN−ガンマ、TNF−アルファ、IL−4、IL−6、IL−17A、IL−10、T細胞受容体、ケモカイン、ペロリン(perorin)、グランザイムb、IL−9、IL−1ベータ、GM−CSF、TGF−ベータ、CD4、CD8、インテグリン、MHCなどが含まれる。
【0064】
B細胞の産物には、それだけには限定されないが、免疫グロブリン、BLAME、BTC、HVEM/TNFRSF14、IFNGR2、IgG、IgM、IL−10、IL−13インテグリン、DLF、LAX、ロイコトリエン、Lyn、Lillrc1、NFAM1、NTB−a、OX40L、Pax5、PDCD6、WSX−1/IL−27R、TER−119、TRA、TREML2、TSLP、Vav−1、B細胞受容体、BAFF、CD79A、CD40リガンド、BCL−6、ADAM、IL−11、IL−4、CD27、STATなどが含まれる。
【0065】
本発明のペプチドは多くの応用を有する。応用の一部を以下に例として記載する。
【0066】
樹状細胞療法におけるペプチドの使用
本発明のペプチドは、樹状細胞療法またはex vivo免疫療法の一部として使用することができる。OFA/iLRPペプチドを、単独で、あるいはKLHまたは他の免疫系賦活剤、アジュバント(adjutant)もしくは他の分子と併せて使用して、ex vivoの免疫応答を誘発することができる。「パルシングした」樹状細胞をドナー内に注射して戻して、すべての形態のOFA/iLRP陽性癌の進行を低下させることができ得る抗癌免疫応答をもたらす。KLHと結合体化したペプチドの初期効果は、サイトカイン/ケモカイン発現を用いて細胞培養物中で測定することができる。
【0067】
感作に使用するOFA/iLRPペプチドは、末梢血から単離した単球、白血球除去細胞、またはバフィーコートのいずれかから開始して、単球から樹状細胞を作製して調製する[30、31]。単球の単離および培養は、完全RPMI−10(ウシ胎児血清、15mMのHEPESおよび1×抗生物質/抗糸状菌溶液または同等物を含むRPMI1640)[30〜35]を用いた標準のプロトコルに従う。単球の分化およびパルシング(抗原への曝露)は標準の方法に従って行う[13]。樹状細胞の感作および成熟の測度として、ガンマ−インターフェロン(γ−IFN)の産生を細胞培地中で測定することができる。刺激していない対照細胞よりも統計的に高い、細胞培地中のγ−IFNの増加が、OFA/iLRPペプチドによる陽性樹状細胞刺激と見なされる。以前の研究ではいくつかの異なるサイトカインの組合せを使用しており、複数のサイトカインまたはケモカインをアッセイして、完全なサイトカインの展望を提供し得る。細胞刺激の前、その間、およびその後の免疫細胞の部分組を決定するための、分化抗原群(CD)分子発現を用いたさらなる分析を行い得る。動物モデルを用いて、注射後の全体的なin vivoのサイトカインの展望に対する様々なペプチドの正確な効果を決定し得る。また、このことは、ヒト処置にスケーリングするための概念証明も提供する。いくつかのモデル系(すなわち、細胞培養物、健康なドナーの全血、および動物モデル)の組合せにより、OFA/iLRPペプチドモデルをヒト抗癌治療おいて開発するためのデータが提供される。
【0068】
ペプチドは、ヒト樹状細胞をパルシングするために以前に使用されていたが[23]、使用する領域は1つの例外を除いては異なる。以前の研究ではアミノ酸58から開始されたペプチドを使用した一方で[23]、ここでは非常に具体的な理由でアミノ酸54から開始される。まず、開始部位は、より良好な溶解度および3個の非極性の疎水性残基に関連する他の問題のために選択した[23]。次のアミノ酸は非極性の側鎖を有するため、スレオニンを最初のアミノ酸に選択した。さらに、荷電および配列の変化を欠くことが結合に影響を与えるために十分な場合があり、立ち代ってこれはMHC結合の潜在性に影響を与える場合がある[53、54、57]。
【0069】
樹状細胞患者免疫応答ツールとしてのペプチドの使用
本発明の別の態様によれば、本発明のペプチド、例えば表1に記載のペプチドを使用して、OFA/iLRPを用いた癌ワクチン接種療法の進行を監視することができる。一実施形態では、個々の断片を皮下または皮内に注射して、患者の免疫応答を監視することができる。注射後、部位を応答について監視し、反応の直径を測定する。複数のペプチドを感作に使用する場合、複数の注射部位が存在することができ、反応を比較することができる。ペプチドをKLHまたは同様の物質と結合体化させた場合、結合体単独を免疫応答の陽性対照として使用することができる。試験する感作ペプチド/試薬が2つまたは3つを超える場合は、ペプチドをMantoux/PPD試験に類似の改変した皮膚掻爬試験、皮膚皮刺試験、または皮膚貼付試験で使用することができる[36]。
【0070】
皮膚皮刺試験に使用するペプチドは、様々な希釈率で、かつOFA/iLRP、KLH(もしくは他の結合体)、または樹状細胞/癌ワクチン接種療法に使用される任意の他のタンパク質からの様々な異なるペプチドと共に調製し得る[13、27]。希釈率および/または様々なペプチドを使用して、個体の免疫応答をマッピングし、免疫系を感作させることができる。ペプチドの代わりにタンパク質を用いて患者を感作させる場合、改変した皮膚貼付/皮刺試験を使用して個体の免疫反応性エピトープを発見することができる。タンパク質の推定上のMHC−1または2をカバーするように合成したペプチド(6〜30個のアミノ酸)を使用して、患者を感作させ得る/ワクチン接種し得る。ペプチドは、OFA/iLRPペプチドの選択に類似の様式で選択することができる。あるいは、タンパク質配列をカバーするペプチドのライブラリを合成して、反応のエピトープおよび量を決定するために使用することができる。ペプチドおよび対照溶液に対する免疫応答は、利用可能な皮膚貼付試験キットのアプリケーターを用いて皮膚を掻爬/皮刺することによって、同時に決定することができる。あるいは、針に適切なペプチドまたは対照溶液を「載せる」ことができ、皮膚のパッチを試験することができる。免疫反応は早ければ20分間で現れ得る。しかし、反応は接種後1週間の期間にわたって生じる可能性が高く、ただし、最大の過敏反応は接種後の24〜72時間で現れる傾向にある。ペプチドの反応および最適な希釈率が決定された後、臨床家が標準化された試験を用いて樹状細胞またはワクチン接種療法の大きさまたはグレードを決定し得る。この試験は結核のツベルクリンまたはMantoux/PPD試験に類似している[36]。遅延型の過敏反応によって提供される情報により、樹状細胞またはワクチン接種が有効であったこと、および患者がどの程度まで標的エピトープに対する感受性を有するかが示される。
【0071】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、サイトカイン応答のex vivo定量によって、樹状細胞またはワクチン接種療法によって引き起こされる免疫反応性の程度を決定するために使用し得る。ex vivoサイトカイン応答の測定を行うために、患者の血液を採取し、メトリザミド勾配、Ficoll勾配、または赤血球の低張溶解によって白血球を単離する。生じる白血球を洗浄し、適切な成長培地中にプレートする。細胞を37℃で、5%のCO2を含有する湿環境でインキュベーションする。18〜24時間後、細胞を、OFA/iLRPまたは任意の他の樹状細胞もしくはワクチン接種療法からの様々な希釈率のペプチドを用いて「免疫誘発する」ことができる、個々のプレートまたは複数ウェルプレートのいずれかで成長させる。上記のように72時間までインキュベーションした後、細胞培地を単離し、標準のELISAまたは多重ELISA技術を用いてサイトカイン/ケモカイン発現を決定する。免疫活性を決定するために使用することができるサイトカイン発現の一部には、それだけには限定されないが、GM−CSF、IFN−γ、IL−4、IL−10、TGF−α、TNF−α、IL−6、IL−2、および/またはIL−12が含まれる。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]。
【0072】
ワクチンとしてのペプチドの使用
本発明のペプチド、例えば表1に記載のペプチドは、in vivoワクチンに、個々にまたは結合体化した状態で使用することができる。これらは、癌(診断前が含まれる)に対する保護を提供するため、または存在する癌の進行を遅らせることを援助するために、個体内に直接注射することができる。ペプチドは、適切なin vivoのワクチン接種応答を与えるために適切な基質と結合体化している。個体は、OFA/iLRPペプチドに、筋肉内、皮内、血管内、経口、または任意の他の一般的に使用される経路/機構を介して曝露される。注射した後、個体の免疫系は適切な免疫応答を開始させて、OFA/iLRP陽性癌および場合によっては他のOFA/iLRP関連の疾患に対して保護する。ワクチン接種は、(i)OFA/iLRP陽性癌を有する確率を低下させるため、(ii)局在化した形態のOFA/iLRP陽性癌について処置した後に再発率を低下させるため、(iii)現在の化学療法、放射性ヌクレオチド接種、または放射線に基づく癌療法の増大を支援するため、(iv)進行期の癌の進行を遅らせることを支援するため、(v)OFA/iLRPで感作させた樹状細胞療法を介して免疫を増強するために有用である。
【0073】
一連の感作、および/またはOFA/iLRPに対する最小限の力価の後にOFA/iLRPに対して感作させるために、ペプチドを動物内に注射することができる。非特異的な免疫系の影響の対照として、対照動物はキーホールリンペットヘモシアニンに対して感作させ得る。適切な一連の感作の後、OFA/iLRP陽性癌細胞を感作させた動物の尾部静脈内に注射することによって、動物を「免疫誘発する」ことができる。注入した癌細胞は動物の肺中でコロニー形成する。OFA/iLRPに対して感作させた動物は、未処置の動物よりも肺中により少ない数の癌コロニーを有するはずである。あるいは、他の動物モデル/測定基準を使用することができる。しかし、処置の性質が原因で、免疫無防備状態の動物を使用する系は作動しない場合がある。動物における癌モデルの大多数での問題は、これらが血液由来のSCID、または完全に機能的な免疫系を欠く他の系を使用することである。しかし、OFA/iLRP癌治療は、動物において以前にモデリングが成功している[6、9、11、18、23、41〜43]。この処置の免疫性質の理由から、機能的な免疫系が必要である。OFA/iLRP陽性癌に対するこれらのペプチドの治療的価値を決定するための代替方法が存在する。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]、その関連する内容が本明細書中に参考として組み込まれている。
【0074】
OFA/iLRP関連疾患の処置におけるペプチドの使用
本発明のペプチド、例えば表1に記載のものを、個々にまたは組み合わせて、結合体化したまたは結合体化していない形態で使用して、免疫系に依存しないまたは連動し得る作用を介して、OFA/iLRPに関与する疾患の進行を変更することができる。例えば、OFA/iLRPのペプチドG領域は、ラミニン受容体の安定化を介して転移に役割を果たすことが示されている[16、24、44]。その突然変異体および/または修飾体を含めた表1に記載のペプチドは、OFA/iLRP活性に影響を与えることによって薬理学的薬剤として使用し得る。
【0075】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物および非哺乳動物の細胞に対する成長速度の薬理学的効果を決定するための試験を提供する。試験には、様々な濃度の本発明のペプチドを用いてまたは用いずに細胞を成長させるステップと、アポトーシス、壊死、および細胞増殖に対する効果を測定するステップとが含まれる。OFA/iLRP陽性癌細胞は、in vitroで、様々な基底膜上に、様々な用量の本発明のペプチドを用いて成長させることができる。ペプチドの効果は、それだけには限定されないが、DNAラダー、細胞死検出ELISA、カスパーゼ測定、TUNELアッセイ、アネキシン−V膜変化、DNA染色、FAS、p53、細胞毒性アッセイ、細胞増殖、および細胞生存度を含めた様々な方法によって測定することができる。
【0076】
ペプチドは、OFA/iLRP陽性癌細胞の侵襲性を増加または減少させるために使用し得る。これは、OFA/iLRP陽性細胞を、様々な濃度で、ペプチドを用いておよび用いずに、他のタンパク質に関与するいくつかの研究と同様の改変ボイデンチャンバを用いて成長させることによって、測定することができる[45〜48]。また、ペプチドを、細胞接着に影響を与えるために使用してもよく、標準の方法を用いて測定することができる。例えば、接着培養したOFA/iLRP陽性癌細胞を、様々な細胞外基質タンパク質(ECM)の存在下で、ペプチドを用いて培養する。その後、細胞を標準の方法によってアッセイして、ペプチドの存在下における細胞系の相対的接着を決定する[49〜52]。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、細胞生存度、増殖、細胞死、およびアポトーシスに対するOFA/iLRPの影響を決定し得る[37〜40]。
【0077】
OFA/iLRP関連疾患の監視におけるペプチドの使用
本発明のペプチドを用いてOFA/iLRP関連の疾患に対するex vivoまたはin vitroの応答を監視することができる。例えば、表1に記載のペプチドを、個々にまたは組み合わせて、結合体化したまたは結合体化していない形態で使用して、疾患の処置に対する身体の応答の程度を決定し得る。表1に記載のペプチドを固体基質上にコーティングすることができ(単独で、または組み合わせて)、細胞応答、自己免疫抗体の存在、結合タンパク質の存在、および/または他の試験を使用して、樹状細胞療法に対する応答を決定することができる。
【0078】
エピトープの検出および免疫グロブリンの定量におけるペプチドの使用
ペプチドは、in vitroでエピトープを検出および免疫グロブリンを定量するための基質として使用することができる。表1に記載のOFA/iLRPのエピトープをラテックスビーズまたは粒子上にコーティングすることができ、これを用いて、凝集を使用して患者の血清をスクリーニングすることができる。手短に述べると、表1に記載のペプチドをラテックスまたはコロイドなどの粒子に付着させることができる。ペプチド/粒子の混合物を患者の血清と共にインキュベーションして、OFA/iLRPペプチドに対して反応する、存在する免疫グロブリンの相対量を測定することができる。1つのペプチド試薬のみを使用して樹状細胞を感作させた場合は、必要なのはそのペプチドのみである。完全長のタンパク質試薬を使用して樹状細胞を感作させた場合は、様々なペプチドが表1に記載のペプチドとして予測される場合がある。クラスタリングするペプチド領域の合計数を減らすために、上述のようにMHCペプチド予測を組み合わせることができる。これらのペプチドはラテックスビーズ、コロイド、または粒子に個々に結合体化しており、凝集研究に使用する。反応性を決定するために、希釈したまたは希釈していない状態の患者の血清を、直径約25mmのワックスサークルを有する血清ガラス皿または血清学インキュベーション鋳型として具体的に設計されたプラットフォームに移す。血清を適切な量のペプチド/粒子の混合物と共にインキュベーションすることができる。血清、ペプチド/粒子の混合物は、非特異的な凝集を防止するために水平プラットフォーム上で常に回転させるべきである。試験には、陽性血清および陰性対照試料が含まれ得る。15分間〜2時間、室温で回転しながらインキュベーションした後、凝集反応を読み取り、凝集の程度に基づいてグレードする。特定の場合では、非IgM分子の感度および検出率を増大させるために、さらなる抗ヒト抗体を加え得る。これは上述の凝集試験の拡張であり、「間接的な凝集」と呼ばれる。さらに、IgM(直接凝集)対IgG(受動凝集)の比は、患者のワクチン接種の状態に関する臨床的に意味のある情報を提供し得る。この技法は、特異的なエピトープに対する患者の免疫を、グレードスケールを参照して迅速に決定および解釈する必要がある場合に、任意の樹状細胞療法または癌ワクチンに適用し得る。凝集スコア付けの代替として、試験は、分光光度計、化学発光、放射性、電気、または蛍光定量を用い得る。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]。
【0079】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)におけるペプチドの使用
本発明のペプチドはELISAアッセイで使用し得る。ELISAアッセイは、可溶性の抗原または抗体を定量および/または検出するために使用することができる。さらに、様々なペプチドを使用して、様々なOFA/iLRPペプチドに対する特異的な個々の応答を生じさせる。第1の応用は、ペプチドを、OFA/iLRP療法を受けている患者の血清に対する抗原として作用するように使用することである。この方法は標準のプロトコルに従う[40]。第2の方法は、循環抗原を決定するための標準の直接競合的アッセイとしての、ペプチドの別の新規の応用である。この方法は標準の方法に従うが、本発明のペプチドを使用する[40]。
【0080】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図するが、限定することを意図しない。そのような実施例は使用し得るものの典型であるが、当業者に公知の他の手順を代わりに利用し得る。実際、当業者は、本明細書中の教示に基づいて、必要以上の実験を行わずに、さらなる実施形態を容易に想定および生じることができる。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
ペプチドの予測およびOFAで感作させた樹状細胞との結合
コンピュータに基づくクラスタリング方法を用いていくつかの領域を予測した(図2)。ペプチド修飾の効果をさらに実証するために使用できるため、アミノ酸129から開始される領域(Ac−CADHQPLTEASYVNLPT−アミド)を選択した。さらに、129は、以前の研究{Rohrer、2006年、#1}で、エピトープを含有せず、必要であると示されたYVNLPTIALエピトープの半分を欠くと示された領域中にある。129領域が抗原性であるかどうかを決定するために、樹状細胞を完全長の組換えヒトOFAでパルシングし、成熟させ、フルオレセイン(fluorscein)で標識したペプチドを用いて129エピトープについて分析した(図3AおよびC)。
【0082】
CD14+単球を、1000IU/mlのGM−CSFおよび1000IU/mlのIL−4(Cell Genix、イリノイ州Antioch)を含有する無血清樹状細胞培地中、1×106個の細胞/mlで成長させた。細胞を、100ng/mlのrHuOFAまたは
【0083】
【化4】
の等量のペプチド混合物(20ng/ml)で36時間パルシングした。パルシングした樹状細胞を、10ng/mlのIL−1ベータ、1000IU/mlのIL−6、5ng/mlのTNF−アルファおよび1μmのプロスタグランジンE2を含有する無血清樹状細胞培地を用いて成熟させ、2日間成熟させた。2日間の終わりに、細胞をプレートから掻爬し、フローサイトメトリー分析を用いて分析した(図3A〜B)。
【0084】
アミノ酸129から開始されるエピトープの蛍光標識は標準の手順に従って行い、例えば、標準のプロトコルに従って、最初にシステイン上で標識したペプチドを付加して、フルオレセイン(Fluorsceine)−5−マレイミド(maledimide)(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いた結合体化を可能にした。未結合のフルオレセインは標準の色素除去カラム(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いて除去した。
【0085】
成熟が成功したかどうかを決定するために、標準のプロトコル(prototocol)に従って、細胞をCD14、CD80/86、およびクラスII MHC(HLA−DR)で分析した(R&D systems、ミネソタ州Minneapolis)。手短に述べると、約5.0×105個の細胞/チューブを、2%のウシ胎児血清を含むリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させた。細胞を氷上に置き、25μlの適切な抗体、フルオレセインで標識したペプチドまたはアイソタイプ対照抗体を細胞と共に氷上で1時間インキュベーションした。1時間後、2%のFCSを含む4mlのPBSをそれぞれのチューブに加え、チューブを300×gで10分間遠心することによって細胞をペレット化した。細胞を、2%のFCSを含む400μlのPBSに再懸濁させ、分析した(図3B)。細胞をすぐに分析できない場合は、これらを0.5%のホルムアルデヒド/PBS中、4℃、暗所で固定した。細胞は、CD14陰性ならびにCD83、CD80/86およびクラスII MHC陽性である場合に、樹状細胞であると見なされた。
【0086】
図3は、OFA/iLRPのコンピュータHLA分析から誘導した、完全長の組換えヒトOFA/iLRP(図3A)または等量(重量で)のペプチド混合物(図3B)でパルシングした樹状細胞の代表的なFACS分析を示す。データは、rHuOFA/iLRPおよびペプチドがどちらも樹状細胞を有効にパルシングできることを示している。ヒトrHuOFA/iLRPで感作させた細胞は53.90±3.058 N=4によって認識された一方で、ペプチド混合物のパルシングは40.43±2.618 N=4を認識し、差異は13.48±4.025であった(図3C)。両側スチューデントt検定を使用して、OFA/iLRPの129領域を認識した成熟樹状細胞の百分率間に有意な差異が存在したかどうかを決定した。群間の差異は有意であることが判明し(p=0.0155)、平均+/−SEMおよび有意性(*)を図3Cに示す。
【0087】
データは、rHuOFA/iLRPでパルシングした樹状細胞の53.9%が129領域のエピトープを認識し(図3A)、以前に同定されていないエピトープの予測においてコンピュータ分析が正確であったことを示している。領域の強度のさらなる証拠として、パルシングした樹状細胞の大多数がこの領域を認識した。樹状細胞を刺激するペプチドの能力を図3Cに示し、細胞の40.43%が129領域を認識した。117個のペプチドが下線を引いた領域によって示す重複配列を有するため、樹状細胞の約40%が129領域を認識するはずであると予想される。このことは、OFA/iLRPペプチドを用いた樹状細胞のパルシングを使用して完全長のタンパク質の特異的領域に対する免疫応答を変調できることを示している。さらに、これらの実験は、ペプチドの蛍光体を感作剤および診断試薬のどちらとしても使用できることを示している。
【0088】
(実施例2)
129領域の樹状細胞結合に対するペプチド修飾の効果
コンピュータに基づくクラスタリング方法を用いていくつかの領域を予測した(図2)。ペプチド修飾の効果をさらに実証するために使用できるため、アミノ酸129から開始される領域(Ac−CADHQPLTEASYVNLPT−アミド)を選択した。129領域が、樹状細胞に対するその相対的結合を向上できるかどうかを決定するために、ペプチド配列を、カルボキシル末端に4個のさらなるアミノ酸が含まれるように、かつ結合障害を最小限にするためにアミノ末端にスペーサーとして6−アミノヘキサノイルが含まれるように、修飾した。これらの修飾は、標準の129ペプチドと比較した場合に蛍光強度メジアンを増大させるはずである。
【0089】
CD14+単球を、1000IU/mlのGM−CSFおよび1000IU/mlのIL−4(Cell Genix、イリノイ州Antioch)を含有する無血清樹状細胞培地中、1×106個の細胞/mlで成長させた。細胞を100ng/mlのrHuOFAで36時間パルシングした。パルシングした樹状細胞を、10ng/mlのIL−1ベータ、1000IU/mlのIL−6、5ng/mlのTNF−アルファおよび1μmのプロスタグランジンE2を含有する無血清樹状細胞培地を用いて成熟させ、2日間成熟させた。2日間の終わりに、細胞をプレートから掻爬し、フローサイトメトリー分析を用いて分析した。
【0090】
ペプチド129および129−a(Ac−TDPRADHQPLTEASYVNLPT−Ahx−C−アミド)の蛍光標識は、標準の手順に従って行った。手短に述べると、システイン上で標識したペプチドには、標準のプロトコルに従ってフルオレセイン−5−マレイミド(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いた結合体化を可能にすることが含まれていた。未結合のフルオレセインは標準の色素除去カラム(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いて除去した。また、このシステインは、ペプチドを様々な異なる生成物と結合体化させるためにも使用することができる。
【0091】
成熟が成功したかどうかを決定するために、標準のプロトコルに従って、細胞をCD14、CD83、CD80/86、およびクラスII MHC(HLA−DR)で分析した (R&D systems、ミネソタ州Minneapolis)。手短に述べると、0.5×105個の細胞/チューブを、2%のウシ胎児血清を含む25μlのリン酸緩衝生理食塩水に懸濁させた。細胞を氷上に置き、25μlの適切な抗体、フルオレセインで標識したペプチドまたはアイソタイプ対照抗体を細胞と共に氷上で1時間インキュベーションした。1時間後、2%のFCSを含む4mlのPBSをそれぞれのチューブに加え、チューブを300×gで10分間遠心することによって細胞をペレット化した。細胞を、2%のFCSを含む400μlのPBSに再懸濁させ、分析した。細胞をすぐに分析できない場合は、これらを0.5%のホルムアルデヒド/PBS中、4℃、暗所で固定した。BD LSR II分析器を用いて少なくとも2,000個の事象を分析し、FACSDivaソフトウェアバージョン6.1.3を用いて表示させた(図4A〜B)。細胞は、CD14陰性ならびにCD83、CD80/86、およびHLA−DR陽性である場合に樹状細胞であると見なされた。
【0092】
図4Dは、組換えヒトOFA/iLRPでパルシングした樹状細胞が129エピトープに対して活性であり、より高い確率で修飾した129−aと結合することを示す。129ペプチドは11,390+/−500.6の平均蛍光強度(fluoresence intesity)(MFI)を有していた一方で、129−aペプチドは38,670+/−5067のMFI、すなわち蛍光強度の3.4倍の増加を示した。129および129−aのFITCで標識したペプチドの代表例をそれぞれ図4AおよびBに示し、129−aがt検定によって129とは異なる結合プロフィールを有するかどうかを決定し(p=0.0032)、リンカー残基(Ahx)またはさらなるペプチドのどちらかの使用によるペプチドへの修飾が、その蛍光強度を増加させたことが示された(図4D)。このMFIの増加は、結合能力の増加の指標である。
【0093】
このデータは、わずかな変化がペプチドの結合および蛍光強度に影響を与えることができることを実証している。ペプチドは、樹状細胞を感作させるため、および樹状細胞パルシングの効率を決定するために使用することができる。このデータは、OFA/iLRPタンパク質に対して設計されたペプチドの使用は、パルシング効率、結合活性、免疫刺激、および免疫細胞の定量を向上させるために、様々な異なる方法によってわずかに改変できることを示している。ペプチドは、単独でまたは混合物中で使用して、特異的なOFA抗原に対する免疫細胞/タンパク質の反応性の程度を決定することができる。
【0094】
(実施例3)
Innocyte96ウェル細胞接着アッセイ
この実験の目的は、OFA/iLRPに対して設計したペプチドが接着細胞系と細胞外基質の構成成分との細胞接着に何らかの影響を与えたかどうかを決定することであった。接着の減少は転移能を増大させるはずであることから、所望の応答は、接着に変化がないことである。
【0095】
すべての細胞を、L−グルタミン、100I.U.のペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640中、37℃、加湿チャンバ(Mediatech、Inc.、バージニア州Manassas)内で成長させた。DU−145およびSK−MEL−28細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から入手し、標準のプロトコルに従って培地中で成長させた。細胞を75〜85%の密度まで成長させ、標準のプロトコルに従って収集し、改変ノイバウエル輝線赤血球計を用いて計数し、400,000個の細胞/mlで懸濁させた。
【0096】
ペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはDMSOのどちらかに溶かし、その後、最大20%のDMSOまでPBSに溶かし、2×溶液を作製し、完全培地中に入れた。ペプチドを適切な濃度まで希釈した後、50μlを、ラミニンI、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIII、およびコラーゲンIVでコーティングされた2×8ウェルのストリップとして供給されるキット中に提供される96ウェルアッセイプレート(EMD、ニュージャージー州Gibbstown内に、50μlの細胞(20,000個の細胞/ウェル)と共に分注し、その後、細胞培養インキュベータ内で2時間、37℃でインキュベーションした。内容物を生物学的廃棄物容器内に振り出し、200μlのPBSをそれぞれのウェルに加えることによって穏やかに洗浄し、このステップで内容物を廃棄物容器内に振り出すことを合計2回洗浄するまで繰り返した。次に、100μlのカルセイン−AM作業溶液をそれぞれのウェルに加え、1時間、37℃、インキュベータ内でインキュベーションした。DTX880(Beckman Inc.)を使用して、標準の蛍光プロトコルに従って、485nmの励起および520nmの発光波長を用いて、それぞれのウェルの蛍光を測定した。
【0097】
図5は、ラミニンIおよびコラーゲンIのウェルからのデータを示す。生物活性濃度のペプチドの存在下において、これらの細胞の接着に有意な差異は見られない。データはすべての基質について同様である(示さず)。
【0098】
このデータは、設計したOFA/iLRPペプチドが細胞接着に影響を与えないことを示す。したがって、接着が影響を受けないため、これらは癌細胞の接着を減少させることによって転移負荷を増加させないはずである。このことは、ペプチドが、患者の転移負荷を増大させるはずのない、in vivoの臨床的/治療的使用を有することができることを意味する。
【0099】
(実施例4)
細胞生存度に対するOFA/iLRPペプチドの効果
この実験の目的は、OFA/iLRPに対して設計したペプチドが細胞生存度に対して何らかの影響を与えるかどうかを決定することであった。OFA/iLRPの性質が理由で、ペプチドは、OFA|OFAからLRへの変換を乱すまたは他のタンパク質|タンパク質の相互作用を阻害するように設計されていると予想された。
【0100】
すべての細胞を、L−グルタミン、100I.U.のペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640中、37℃、加湿チャンバ(Mediatech、Inc.、バージニア州Manassas)内で成長させた。DU145細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から入手し、標準のプロトコルに従って培地中で成長させた。DU145細胞を75〜85%の密度まで成長させ、標準のプロトコルに従って収集し、改変ノイバウエル輝線赤血球計を用いて計数し、400,000個の細胞/mlで懸濁させた。
【0101】
ペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはDMSOのどちらかに溶かし、その後、最大20%のDMSOまでPBSに溶かし、2×溶液を作製し、完全培地中に入れた。適切な濃度まで希釈した後、50μlを、ラミニン/エンタクチン複合体(50μg/ml)でコーティングした、または未処理(黒色で透明な底)(Corning Life Sciences、ニューヨーク州Corning)96ウェルアッセイプレート、50μlの細胞(20,000個の細胞/ウェル)内に分注し、終夜成長させた。その後、細胞に20μlのCellTiter−Blue((Promega、ウィスコンシン州Madison))を加え、さらに2時間、37℃でインキュベーションした。その後、細胞を、DTX−880(Beckman Inc.)上で、標準の蛍光プロトコルに従って、0.001秒間の積分時間を用いて読み取った。カスパーゼ活性が誘導されたかどうかを決定するために、ApoOne アッセイ(Promega、ウィスコンシン州Madison)を用いてカスパーゼ3/7活性を決定した。データをExcel、その後、Prism5.0(GraphPad Software,Inc)に出力し、ここでこれをプロットし、一元配置ANOVAを用いてバックグラウンド対照(ペプチドに使用した希釈剤)との統計的差異について分析した。
【0102】
すべてのDU145細胞は、コーティングしていないまたはラミニン/エンタクチンでコーティングした96ウェルプレートのどちらかで成長させた。ペプチド1またはペプチド3のどちらかの存在下では(表2)、コーティングしていない(ラミニンなし)またはコーティングした(ラミニン)群のどちらにおいても、対照と処置群との間に統計的差異は存在しなかった(図6AおよびC)。しかし、ラミニンの存在を必要とする、ペプチドによって引き起こされる何らかのすべての潜在的な効果の興味深い傾向が存在していた。ペプチド2(表2)は、2倍を超えて細胞生存度を減少させる能力を有する、最も顕著な生物学的効果を示し、これは対照とは有意に異なっていた(p<0.05)(図6B)。ApoOneカスパーゼ3/7アッセイではどの群でも有意な差異は見られなかった(データ示さず)。さらに、以前に記載したOFA/iLRPエピトープ(アミノ酸49〜60、DMSO/PBSで希釈)に対して作製したペプチドは、T細胞を増殖させることはできたが、細胞生存度に影響を与えるまたはアポトーシスを誘導することができなかった(データ示さず)。
【0103】
この実験の目的は、免疫原性を有すると予測されたOFA/iLRPペプチドのうちのいずれかが、細胞生存度に対して何らかの効果を有するかどうかを決定することであった。DU145細胞をペプチド2の存在下で成長させた場合、これは、ペプチド希釈剤対照(20%のDMSO/80%のPBS)と比較して、細胞生存度に対して有意な効果を有することが見られた。しかし、カスパーゼ3/7の活性化に依存しておらず、ApoOneアッセイの有意な変化は見られなかった(データ示さず)。さらに、以前に良好なエピトープであると示されたペプチド(Rohrer、2006年、#1)は細胞生存度に影響を与えなかった(アミノ酸49〜60、データ示さず)。このことはペプチドが治療的活性を有する可能性があり、それにより、これらを免疫または場合によっては細胞生存度の標的手法のいずれかとして使用することが可能となることを示す。
【0104】
本明細書中に上述した本発明の多くの改変および変形は、その精神および範囲から逸脱せずに行うことができ、したがって、課されるべき限定は、添付の特許請求の範囲によって示されるもののみである。
【0105】
本明細書中で引用したすべての特許および参考文献は、その全体で本明細書中に参考として組み込まれている。
【0106】
表1.樹状細胞療法のための推定上のOFA/iLRP配列の初期スクリーニング。列挙した配列は、免疫刺激もしくは樹状細胞療法または他の臨床応用のために、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0107】
【表1】
表2.個々の予測された部位を組み合わせて1つのペプチドを作製する例。上記5つの例は、免疫および/または細胞活性の確率が増加した領域をどのように一緒にグループ化することができるかを示す。いずれかの末端でのわずかな修飾およびシステインの付加が結合体化に必要であり得る。
【0108】
【表2】
参考文献
【0109】
【化5】
【0110】
【化6】
【0111】
【化7】
【0112】
【化8】
【0113】
【化9】
【0114】
【化10】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年3月26日に出願された米国仮出願第61/163,808号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)の出願日の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体タンパク質(OFA/iLRP)に関する。より詳細には、本発明は、樹状細胞を癌に対して感作させるために使用することができるペプチドを提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌胎児性抗原/未成熟ラミニン受容体タンパク質(OFA/iLRP)の初期の特徴づけは、癌胎児性抗原またはラミニン受容体を研究していた3つの独立のグループによって行われた[1〜3(非特許文献1〜3)]。OFA/iLRPとは、様々な異なる癌において過剰発現され、リボソームタンパク質p40としての二重機能を有する、高度に保存されたタンパク質である[4〜27]。OFA/iLRPタンパク質は295個のアミノ酸の単一のポリペプチド鎖からなり、約37〜44KDaの分子量を有する。OFA/iLRPの構造が最近2.15Åまで解明され、OFA/iLRPのアミノ酸112から140までの間の領域がラミニン受容体タンパク質(LRP)を形成するためのOFA/iLRPの二量体化[28]に関与していることを示す。[28]。ラミニン受容体の成熟型は、67kDaの分子量を有するアセチル化された未成熟LRPの二量体であると考えられる。成熟した67kDaの型は多くの正常細胞および腫瘍細胞上に存在するが、胎児および腫瘍細胞によるOFA/iLRPの優先的な発現が存在すると考えられる。したがって、発現パターンにより、OFA/iLRPが、癌および他の疾患を処置するために免疫系を感作させるための可能な候補タンパク質となる[6]。したがって、樹状細胞に基づく治療における特定のOFA/iLRPペプチドの使用が新規の応用である。
【0004】
樹状細胞(DC)とは、哺乳動物の免疫系の一部を形成する免疫細胞である。その主な機能は、抗原物質をプロセスし、それを免疫系の他の細胞の表面上に提示することである。したがって、これらは抗原提示細胞として機能する。樹状細胞は非リンパ組織と直接情報交換し、傷害シグナル(例えば、虚血、感染症、もしくは炎症)または腫瘍増殖について非リンパ組織を調査する。シグナル伝達された後、樹状細胞は、IL−1、TNFアルファ、ならびにリンパ球および骨髄性細胞を始動させる様々な他の炎症性サイトカインを放出することによって免疫応答を開始させる。例えば腫瘍に対する免疫不全など、様々な免疫不全が、樹状細胞の機能の損失の結果として生じると考えられている。樹状細胞は、MHC拘束性T細胞を感作させ、T細胞発生中の自己抗原および免疫中の外来抗原の両方の抗原をin situでT細胞に提示するための有効な経路を提供する高い能力を有する。したがって、樹状細胞をex vivoで腫瘍または感染性疾患のワクチンアジュバントとして使用することに関する関心が高まっている。樹状細胞は、免疫系が特異的抗原を攻撃するように方向付けできる様々な異なる供給源(骨髄およびリンパ系)に由来することができる。例えば、これらは以下の供給源に由来し得る:単球由来(CD14+)、造血幹細胞由来(CD34+もしくはCD133+もしくはCD117+)、形質細胞様(CD303+/CD304+)、骨髄由来(CD1c+もしくはCD141+もしくはCD209+)、またはランゲルハンス細胞。ex vivo、in vivoまたはin vitroのいずれかで感作させた後、樹状細胞は、あらゆる種類のOFA/iLRP関連の疾患または癌に対して保護するまたはそれを処置するために、個体の自己免疫系を補助する。感作、または樹状細胞のパルシングとは、標的となっている免疫応答を解明するために樹状細胞を標的タンパク質に曝露させるプロセスである。
【0005】
OFA/iLRP樹状細胞療法は、後期の癌腫を有する患者の生存率を最小限の副作用で増大させることが示されている[13、22]。以前の実験では、樹状細胞を感作させるために推定上のMHC(主要組織適合性複合体)結合配列を有するペプチドを使用していた。しかし、推定上のMHC結合部位は、ペプチド上のその位置が原因で、またはそれが複数のペプチドにまたがるために、免疫系に見逃される場合がある。Siegelらは、HLA−A*201を標的としたペプチドを使用したが、ペプチドの溶解度およびペプチドに関連する他の問題を考慮しなかった[22]。Rohrerらは、マウスに由来するOFA/iLRPの12量体ペプチドに重複したアミノ酸の増殖プロフィールを分析した[29]。この研究では比X/nの分析に焦点を当て、Xはアミノ酸中のタンパク質の長さであり、nはペプチドの長さである(図1)。しかし、この連続的なペプチド方法に基づいても、推定上のHLA(ヒト白血球抗原)部位は、それだけには限定されないが、ペプチド溶解度、ペプチド構造、2つのペプチド間に位置するHLA部位、HLA結合を制限するアミノ酸に隣接するHLA部位、および不適切な二次構造を含めた様々な理由が原因で、依然として免疫系によって見逃されるまたは認識されない場合がある。したがって、連続的なペプチドの使用は、情報価値がある一方で、完全長タンパク質を処理した場合に認識される可能性がある有用なタンパク質配列を見逃す高い確率を有する。実際、以前の研究では、公的に利用可能なHLA結合配列の予測プログラムと免疫応答を生じる可能性がより高い領域を発見するための統計的方法の使用を組み合わせることによって判明した、推定上のHLA結合配列のうちのいくつかを示すことができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lesot, H.ら、EMBO J(1983)2(6):p861〜865
【非特許文献2】Malinoff, H.L.ら、J Cell Biol(1983)96(5):p1475〜9
【非特許文献3】Rao, N.C.ら、Biochem Biophys Res Commun(1983)111(3):p804〜8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、以前のOFA/iLRP細胞に基づく療法では、細菌発現させたまたは小さなHLA特異的ペプチドを使用していた。[13、22]。細菌発現は時間がかかり、GMPに認定された様式で産生させることが困難である。したがって、樹状細胞および免疫系を刺激するために推定上のMHC結合部位の数が増加した領域を有するように具体的に設計されたペプチドを開発する必要性が存在する。また、ペプチドを用いた有効なOFA/iLRP樹状細胞療法を開発する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、樹状細胞を感作させることができる単離ペプチドまたはその混合物を提供する。ペプチドの例には、それだけには限定されないが、
【0009】
【化1】
およびその混合物が含まれる。
【0010】
さらなるアミノ酸をペプチドまたはペプチド混合物のN末端および/またはC末端のいずれかに付加させ得る。一実施形態では、本発明のペプチドには以下のペプチドが含まれる:
【0011】
【化2】
別の実施形態では、本発明のペプチドはOFA/iLRPの二量体化領域に由来する。ペプチドは樹状細胞を感作させることができる。
【0012】
本発明のペプチドは、ペプチドの免疫刺激、安定性、および/または溶解度を増大させる担体と結合体化させ得る。担体の例には、それだけには限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス(microelectro/electrofluidic device)、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、およびコロイド粒子が含まれる。
【0013】
また、本発明のペプチドは、アセチル化、脂肪酸性化(fatty acidification)、ミリスチン酸酸性化(myristic acidification)、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化(abidation)、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、AHX、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、または多抗原性ペプチド系(multiple antigenic peptide system)(MAP)が含まれるように修飾してもよい。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明のペプチドが含まれる組成物を提供する。組成物は医薬組成物またはワクチンであることができる。医薬組成物には、薬学的に許容される担体が含まれ得る。また、組成物は、本発明のペプチドによって感作させた樹状細胞であってもよい。
【0015】
また、本発明は、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法も提供する。該方法には、本発明のペプチドを、個々にまたは混合物として、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で被験体に投与するステップが含まれる。一実施形態では、ペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導する。
【0016】
別の実施形態では、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法は、(a)樹状細胞を本発明のペプチドで感作させるステップと、(b)感作させた樹状細胞を、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で、被験体に投与するステップとを含む。
【0017】
また、本発明のペプチドは、試料中の、OFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法で使用してもよい。該方法は、
(a)本発明のペプチドを、抗体がペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で試料と接触させるステップと、
(b)試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む。
【0018】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法で使用する。該方法は、(1)本発明のペプチドを、療法に対する被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明のペプチドは、被験体におけるOFA/iLRP関連癌の処置の進行をex vivoで監視する方法で使用する。処置は、T細胞関連応答またはB細胞関連応答のいずれか(抗体応答)を誘導し得る。該方法は、(1)処置を受ける被験体の生体液(biofluid)を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、ペプチドとT細胞もしくはB細胞またはT細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む。
【0020】
本発明の上述および他の特長ならびにこれらを獲得および使用する様式は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって、より明らかとなり、かつ最も良好に理解されるであろう。図面は本発明の典型的な実施形態のみを示し、したがってその範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、OFA/iLRPおよびHLA結合モチーフのコンピュータ分析を示す図である。(A)は、予測の関数としてのアミノ酸の数を示すグラフである。(B)は、%OPTの関数としてのアミノ酸の数を示すグラフである。(C)は、5個のアミノ酸のビンの関数としての分布部位の数を示すグラフである。
【図2】図2は、樹状細胞の感作における選択したペプチドのウィスカープロットを示す図である。%OPTの関数としての、クラスター形成したHLA結合ペプチドを示すグラフである。中実の丸は、結果を歪める可能性があり、最も強い免疫原性の領域が見つかる場所の不当表示を可能にする、外れ値を示す。
【図3A】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図3B】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図3C】図3は、パルシングした樹状細胞の蛍光活性化細胞分取(FACS)分析を示す図である。(A)は、完全長の組換えヒトOFAでパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(B)は、ペプチド混合物でパルシングした樹状細胞のFACSを示す。(C)は、129ペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4A】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4B】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4C】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図4D】図4は、129領域の樹状細胞認識に対するペプチド修飾の効果を示すグラフである。(A)は、129ペプチドのFACSである。(B)は、129aペプチドのFACSである。(C)は、129および129a領域の蛍光強度メジアン(MFI)である。(D)は、129ペプチド対129aペプチドの樹状細胞認識に対するパルシング剤の効果を示すグラフである。
【図5】図5は、細胞接着に対するOFA/iLRPペプチドの効果を示す図である。(A)は、DU−145細胞接着を示すグラフである。(B)は、SK−MEL細胞接着を示すグラフである。
【図6】図6は、細胞生存度に対するOFA/iLRPペプチドの効果を示す図である。(A)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド1における細胞生存度を示すグラフである。(B)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド2における細胞生存度を示すグラフである。(C)は、ラミニンを用いたおよび用いない場合の、ペプチド3における細胞生存度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様は、樹状細胞をOFA/iLRPに対してパルシングするために使用できるペプチドまたはペプチド混合物を提供する。OFA/iLRPタンパク質の特異的領域を認識するように免疫系を方向付けるペプチドは、ホモ二量体形成領域、ラミニン結合領域、多剤耐性領域、リボソーム相互作用領域、および生物学的意義を有する他の部位などの、様々なユニークなタンパク質領域を中心に設計されている。ペプチドは、OFA/iLRP二量体形成、抗原性、MHC−1結合、MHC−2結合、プロテアソーム切断、溶媒接近性、およびタンパク質配列に特異的なペプチドを焦点として、完全長のタンパク質に基づいて設計されている。本発明では、コンピュータおよび統計的分析を用いて、OFA/iLRP関連の疾患の療法に対して使用し得る最適なペプチドを決定する。この方法はX−nペプチドのコンピュータ分析および複数のペプチド長さの迅速な分析の付加を可能にし、これにより、OFA/iLRPまたは同様の処置/療法で使用される任意の他の可能なタンパク質を用いた、樹状細胞またはワクチン接種療法のための最適なペプチドの発生の確率が増加する。
【0023】
様々なOFA/iLRPエピトープの分布を決定するために、OFA/iLRPタンパク質配列を、SYFPEITHIを用いてすべての公知のHLA結合モチーフについてマイニングした(Hans−Georg Rammensee、Jutta Bachmann、Niels Nikolaus Emmerich、Oskar Alexander Bachor、Stefan Stevanovic:SYFPEITHI: database for MHC ligands and peptide motifs。Immunogenetics(1999年)50巻:213〜219頁(www.syfpeithi.deからアクセス))。しかし、HLA結合モチーフを個々に分析する代わりに、データベース中のすべての公知のHLA結合モチーフの表を、配列、開始部位、および%最適結合(実験HLA結合データに対する%一致)を用いてExcelに保存した。HLA結合部位のデータが得られた後、Mac OS X用のPrism5.0(GraphPad Software,Inc.)を用いてこれらを分析した。HLA結合部位が増加した領域を探すために、いくつかの異なる分析を行った。まず、予測されたHLA結合部位の開始部位をプロットして、HLA結合の確率が増加している潜在的な領域を示した。その後、%最適(OPT)を検査し、アミノ酸開始部位に対してプロットした。最後に、HLA結合部位の数が増加した領域を探すために、部位の数をビニングした(5個のアミノ酸)。これらの分析を一緒にして、より大きなHLA結合部位の分布を有する特異的領域が存在していたことが示された。より多数のHLA結合部位を有する領域が同定された後、これらの領域中のExcelシートからのデータを抽出し、%OPTをすべての予測されたHLA結合領域に対してプロットした。有意な差異を有する領域を全タンパク質(すべてのHLA部位)に対して分析するために、選択したペプチド領域を一元配置ANOVAで分析し、続いてダネットの多重比較試験を行った。分析により、群間に有意な差異が存在することが示された(p=0.0068)。ダネットの事後分析により、132〜134および211〜217のペプチド群がすべてのMHCペプチドの対照群と有意に異なっていたことが示された(*=p<0.05)(図2)。
【0024】
本明細書中に記載の本発明のマイニング方法を用いて、免疫系を感作させるために使用できるペプチドを同定した。表1は、本発明のペプチド配列の例のリストを提供する。領域がMHCタンパク質と結合できると推定される回数を分析することで、ペプチド領域を選択および/または組み合わせて生物活性ペプチドを発生させることができる(図1)。分布分析を領域の平均%OPTスコアと共に用いることで、5個の領域が、免疫系の適切な構成成分と結合する確率がより高いことが見出された。これにより、OFA/iLRP関連の疾患を処置するために、様々な異なるex vivo、in vitroまたはin vivoの刺激を用いて患者を感作させることが可能となる。
【0025】
したがって、一実施形態では、本発明のペプチドには、それだけには限定されないが、
【0026】
【化3】
およびその混合物が含まれる。さらなるアミノ酸をペプチドまたはペプチド混合物のn末端および/またはc末端に付加させ得る。別の実施形態では、本発明のペプチドはOFA/iLRPの二量体化領域に由来する。
【0027】
本発明のペプチドは、免疫刺激、安定性、および/またはペプチド溶解度のために適切な担体と結合体化させ得る。結合体化の種類には、それだけには限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、デンドリマー(dendromer)、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、コロイド粒子、他のペプチド配列および様々なタンパク質で完成されるものが含まれる。結合体化のためのシステイン残基の位置は、必要に応じていずれかの末端または内部に存在することができる。結合体化の目的は、免疫系、処置としての抗癌性、またはOFA/iLRPペプチドに関連する任意の他の関連活性を増大させることである。
【0028】
本発明のペプチド配列は、より高い免疫系の反応性、増加した溶解度、および他の機能を可能にするためにわずかに変動してもよく、ペプチド配列のそのような変動は本発明のペプチドの一部であると見なされる。さらに、1つまたは複数の本発明の免疫反応性ペプチド配列を一緒に配置して新しい免疫反応性ペプチドを形成し得る。配列は、十分予測可能な免疫活性の領域またはいくつかの他の部位もしくはタンパク質に由来することができる。さらに、ペプチドは、免疫系に関連しない特定の機能を遮断または増強するために使用し得る。1つまたは複数の反復ペプチドの連結されたペプチドを作製して、長い生物活性ポリマーを形成し得る。製造中、ペプチドは、それだけには限定されないが、アセチル化、ホルミル化(formulation)、脂肪酸性化、ミリスチン酸酸性化、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、多抗原性ペプチド系(MAP)、ならびに/または、溶解度、安定性、免疫反応性、および/もしくは生物活性を増大させることを含めた、OFA/iLRPペプチド機能に影響を与える他のものを含めた、1つまたは複数の修飾を有し得る。
【0029】
本発明のペプチドは、OFA/iLRP関連の疾患またはワクチンの処置中の非特異的な効果を減少させ得る、OFA/iLRPの特異的領域に向けることができる。ペプチドは、表1に示す1つのペプチド配列またはペプチド配列の組合せから作製する。どの領域が免疫系刺激の確率が増加しているかを決定するために、クラスター形成した推定上のHLA結合部位を設計し、平均%OPT(コンセンサスと比較した場合のペプチドのスコア)[53、54]を、OFA/iLRP全体にわたるすべての推定上のHLA部位と比較した(図2)。比較に使用した複数の推定上のHLA結合部位が含まれるように具体的に設計したペプチドの例を図2に記載する。
【0030】
個々の本発明のペプチドまたは組合せを用いて、免疫系を、提供したOFA/iLRP配列で感作させ得る。また、OFA/iLRPに対する免疫応答を誘導するように設計したペプチドを用いて、それだけには限定されないが、受容体結合、ラミニン機能の遮断および/または他のOFA/iLRPの細胞機能に影響を与えることを含めた、さらなる臨床応用も提供し得る。OFA/iLRPペプチドの免疫反応性を増大させるために最終産物を結合体化させ得る。結合体化は、マレジオアミドKLHタンパク質と反応させるためのシステインの付加を含めた、本明細書中に記載または当分野で公知の様々な方法によって形成させ得る[55、56]。これらのペプチドおよびその組合せは、癌に対するex vivo、in vivo、またはin vitroのワクチン接種として使用する前に結合体化または修飾し得る。
【0031】
本発明の実施形態によれば、コンピュータに基づく手法により、樹状細胞および免疫系の療法に使用し得るいくつかの可能なタンパク質配列を同定した。一実施形態では、平均%OPTを、アミノ酸132、117および54を中心に設計された3個のペプチドについて計算した(図2)。設計したペプチドを平均%OPTスコアと比較し、これらはすべて平均を超えており、132領域は有意に異なっていた(図2)。ペプチドはHLAプロトタイプ配列の一部ではない少なくとも3個のアミノ酸のフランキング配列を有しており、必要な場合は抗原プロセッシングおよびHLA結合を最適化するために修飾することができる。他の可能なペプチドはアミノ酸104および211付近から開始され、単独で、または他のペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明のペプチドは、ex vivoの樹状細胞の誘導および感作中に細菌発現させたOFA/iLRPを置き換えるために使用することができる。ヒトまたは獣医学的な応用に適している限りは、ペプチドを様々な巨大分子と結合体化させることができる。
【0033】
ペプチドは、化学合成またはEscherichia coliなどを用いた生化学的合成によって調製し得る。当業者に周知の方法を合成に使用し得る。
【0034】
本発明のペプチドが化学合成である場合、ペプチド合成の分野で周知の方法を使用し得る。例えば、アジド方法、酸塩化物方法、酸無水物方法、混合酸無水物方法、DCC方法、活性エステル方法、カルボジイミダゾール方法および酸化還元方法などの方法を列挙し得る。固相合成または液相合成のいずれかを使用し得る。また、市販のペプチド合成機(例えばShimadzu PSSM−8)も使用し得る。
【0035】
反応後、本発明のペプチドは、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーまたは再結晶化などの慣用の精製方法の組合せによって精製し得る。
【0036】
本発明の一態様によれば、ペプチドは、被験体に投与する組成物中に含め得る。組成物は医薬組成物またはワクチンであることができる。医薬組成物には、薬学的に許容される担体が含まれ得る。また、組成物は、本発明のペプチドによって感作させた樹状細胞であってもよい。
【0037】
本明細書中で使用する樹状細胞(DC)とは、抗原物質をプロセスし、それを表面上に免疫系の他の細胞に対して提示し、したがって抗原提示細胞として機能する、免疫細胞である。様々なプロセスを使用して、樹状細胞を抗原に対して感作させ得る。一実施形態では、これらのプロセスは、樹状細胞を抗原ペプチドと接触させるステップを含む(「ペプチドパルシング」)。この手法は、樹状細胞を、可変の時間(通常は約30分間〜約5時間)の間、1つまたは複数の抗原ペプチドと共に、すなわち、ペプチドを用いて処理が、感作させた樹状細胞とも呼ばれる抗原提示細胞をもたらすような、抗原に由来するペプチドと共にインキュベーションすることからなる。
【0038】
樹状細胞を癌に特異的な抗原で処理することは、ワクチン組成物またはペプチドを含む組成物を哺乳動物に投与した場合に宿主の免疫が刺激されるような、抗原を提示する樹状細胞をもたらす任意の方法によって、例えば、ワクチン組成物を哺乳動物に投与する前に樹状細胞を抗原の存在下でパルシングまたは培養することによって行うことができる。
【0039】
樹状細胞は、樹状細胞が適切な細胞に到達することを可能にする任意の方法によって哺乳動物に投与することができる。これらの方法には、例えば、注射、インフュージョン、堆積、移植、経口摂取、もしくは局所投与、またはその任意の組合せが含まれる。注射は、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下または腹腔内であることができる。当業者が必要以上の実験を行わずに決定できるように、癌に応じて単一または複数の用量を所定の期間にわたって投与することができる。注射は複数の位置で与えることができる。樹状細胞の投与は、単独または他の治療剤と組み合わせて行うことができる。
【0040】
本明細書中で使用する「ワクチン」とは、無害の形態の抗原を含有する生物または物質を意味する。ワクチンは免疫保護応答を始動するように設計されている。ワクチンは組換えまたは非組換えであり得る。非免疫宿主内に接種した際、ワクチンは生物または物質に対する活性免疫を誘発するが、疾患を引き起こさない。ワクチンは、例えば、解毒されているが、その主要な免疫原性決定要因を依然として保持している毒素、もしくは腸チフス、コレラおよび灰白髄炎などの死滅させた生物、もしくは生きているが非病原性の形態の病原体である、弱毒化した生物として定義される、トキソイドの形態を取り得るか、またはそのような生物によってコードされている抗原であり得るか、または生きた腫瘍細胞もしくは腫瘍細胞上に存在する抗原であり得る。
【0041】
ワクチン組成物の用量は抗原、種、ワクチン接種したまたはワクチン接種する宿主の体重などに依存するが、薬理学的に有効な量のワクチン組成物の用量は、通常、マウスモデルにおいて体重1キログラムあたり約50.mu.g〜約500.mu.g/用量の範囲である。
【0042】
原則として、本発明のワクチン組成物は経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内もしくは腹腔内)、頬内、鼻腔内、または経皮で好都合に投与する。本発明によって企図される投与経路は、抗原物質および共配合剤に依存する。
【0043】
ワクチン組成物の用量は、選択した抗原、投与経路、種、体重、および他の標準の要因に依存する。有効な免疫化量および投与方法を達成するために、当業者が容易かつ敏速にそれぞれの抗原について免疫原性応答に適切な用量を滴定できることが企図される。
【0044】
本発明の組成物は、その意図する投与経路に適合性があるように配合する。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸の投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下の施用に使用する液剤または懸濁液には、以下の構成成分、すなわち、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、アセテート、シトレートまたはホスフェートなどの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤を含めることができる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または複数用量バイアル中に封入することができる。
【0045】
注射用の使用に適した組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)、または無菌的注射用の液剤もしくは分散液を即時調製するための分散液および滅菌散剤が含まれる。静脈内投与には、適切な担体には、生理食塩水、滅菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州Parsippany)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合で、組成物は無菌的でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体であるべきである。これは製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコールなど)、ならびに適切なその混合物を含有する、溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散液の場合は所要の粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌および抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、マンニトール、ソルビトールなどの糖もしくはポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0046】
無菌的注射用液剤は、所要量の化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上記列挙した成分のうちの1つまたは組合せと共に取り込ませ、続いて滅菌濾過することによって調製することができる。一般に、分散液は、化合物を、基本分散媒および上記列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル内に取り込ませることによって調製する。滅菌散剤の場合、無菌的注射用液剤の調製には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、活性成分および以前に滅菌濾過したその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0047】
経口組成物には、一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。経口治療的投与の目的には、化合物を賦形剤と共に取り込ませ、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。また、経口組成物は、洗口液として使用するために流体担体を用いて調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント物質を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または同様の性質の化合物のうちの任意のものを含有することができる:結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香味料。
【0048】
吸入による投与には、組成物は、エアロゾルスプレーの形態で、加圧容器または適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素などの気体を含有するディスペンサー、すなわち噴霧器から送達する。
【0049】
また、全身投与は経粘膜または経皮手段による場合もある。経粘膜または経皮の投与には、透過する障壁に適した浸透剤を配合物中で使用する。そのような浸透剤は当分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜投与には、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐薬を使用することによって達成することができる。経皮投与には、化合物は、当分野で一般に公知のように軟膏、膏薬、ゲル、またはクリーム内に配合する。
【0050】
また、本発明の組成物は、坐薬(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの慣用の坐薬基剤を用いる)または直腸送達用の保留浣腸の形態で調製することもできる。
【0051】
一実施形態では、組成物は、移植片および微小カプセル封入送達系を含めた徐放性配合物など、化合物を身体からの迅速な排除から保護する担体を用いて調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような配合物の調製方法は当業者に明らかであろう。また、材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから購入することもできる。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的化したリポソームが含まれる)も薬学的に許容される担体として使用することができる。
【0052】
投与の容易性および用量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で配合することが有利である。本明細書中で使用する「単位剤形」とは、処置する被験体の単位用量として適した物理的に別個の単位をいい、それぞれの単位は、必要な製薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された、事前に決定された量の活性化合物を含有する。
【0053】
本発明の組成物は、容器、パック、またはディスペンサー中に、投与の指示と一緒に含めて、梱包された製品を形成することができる。また、他の活性化合物も組成物内に取り込ませることができる。
【0054】
また、本発明は、本発明のペプチドおよび薬学的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物も提供する。薬学的に許容される賦形剤は当分野で公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は形もしくは稠度を与えるか、または希釈剤として作用することができる。適切な賦形剤には、それだけには限定されないが、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、カプセル封入剤、緩衝液、ならびに皮膚浸透増強剤が含まれる。非経口および非経口でない薬物送達のための賦形剤および配合物は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Mack Publishing(2000年)に記載されている。
【0055】
本発明は、OFA/iLRP関連癌を検出、診断および監視、ならびに処置するために本発明のペプチドを使用する方法を提供する。本発明の目的のために、OFA/iLRP関連癌とは、OFA/iLRPのエピトープ発現(正常な試料と比較して増加もしくは減少した、および/または不適切な発現、例えば、通常はエピトープ発現を欠く組織および/または細胞における発現の存在)に関連する任意の疾患、障害、または状態をいう。
【0056】
一実施形態では、本発明は、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法を提供する。該方法は、本発明のペプチドを、個々にまたは混合物として、OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で、被験体に投与するステップを含む。ペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連の疾患の進行を低下させる免疫応答を誘導し得る。免疫応答には、T細胞またはB細胞関連の応答の両方が含まれ得る。また、ペプチドは、免疫応答に依存しない応答も誘導し得る。この応答の例は、それだけには限定されないが、生存度、接着、遊走、血管化、または免疫応答に依存しない可能性がある他の応答であり得る。
【0057】
別の実施形態では、OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法は、(a)樹状細胞を本発明のペプチドで感作させるステップと、(b)感作させた樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で、被験体に投与するステップとを含む。樹状細胞の感作および投与は上述されており、ここでは繰り返さない。樹状細胞の例には、それだけには限定されないが、単球由来細胞(CD14+)、造血幹細胞由来細胞(CD34+もしくはCD133+もしくはCD117+)、形質細胞様(CD303+/CD304+)、骨髄由来細胞(CD1c+もしくはCD141+もしくはCD209+)、またはランゲルハンス細胞が含まれる。
【0058】
また、本発明のペプチドは、試料中のOFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法で使用してもよい。該方法は、
(a)本発明のペプチドを、抗体がペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で試料と接触させるステップと、
(b)試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む。
【0059】
慣用の方法を用いて、抗体との複合体の量を決定し得る。例には、それだけには限定されないが、ELISA、蛍光偏光、共鳴、FACS、または抗体を検出することができる任意の公知の方法が含まれる。
【0060】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法で使用する。該方法は、(1)本発明のペプチドを、療法に対する被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む。
【0061】
さらなる実施形態では、本発明のペプチドは、被験体におけるOFA/iLRP関連癌の処置の進行をex vivoで監視する方法で使用する。処置は、抗体応答などのT細胞関連の応答またはB細胞関連の応答を誘導することができる。該方法は、(1)処置を受ける被験体の生体液を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、ペプチドとT細胞もしくはB細胞またはT細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む。
【0062】
本発明の目的では、生体液とは、排泄される、分泌される、針を用いて得る、または病理過程の結果として発生する場合がある、任意の生物学的な流体または組織溶解液である。生体液の例には、それだけには限定されないが、血液、尿、組織溶解液、血清、血漿、胆汁、汗、唾液、嚢胞液、水疱液、膿瘍液、脳脊髄液などが含まれる。
【0063】
T細胞の産物には、それだけには限定されないが、IL−2、IFN−ガンマ、TNF−アルファ、IL−4、IL−6、IL−17A、IL−10、T細胞受容体、ケモカイン、ペロリン(perorin)、グランザイムb、IL−9、IL−1ベータ、GM−CSF、TGF−ベータ、CD4、CD8、インテグリン、MHCなどが含まれる。
【0064】
B細胞の産物には、それだけには限定されないが、免疫グロブリン、BLAME、BTC、HVEM/TNFRSF14、IFNGR2、IgG、IgM、IL−10、IL−13インテグリン、DLF、LAX、ロイコトリエン、Lyn、Lillrc1、NFAM1、NTB−a、OX40L、Pax5、PDCD6、WSX−1/IL−27R、TER−119、TRA、TREML2、TSLP、Vav−1、B細胞受容体、BAFF、CD79A、CD40リガンド、BCL−6、ADAM、IL−11、IL−4、CD27、STATなどが含まれる。
【0065】
本発明のペプチドは多くの応用を有する。応用の一部を以下に例として記載する。
【0066】
樹状細胞療法におけるペプチドの使用
本発明のペプチドは、樹状細胞療法またはex vivo免疫療法の一部として使用することができる。OFA/iLRPペプチドを、単独で、あるいはKLHまたは他の免疫系賦活剤、アジュバント(adjutant)もしくは他の分子と併せて使用して、ex vivoの免疫応答を誘発することができる。「パルシングした」樹状細胞をドナー内に注射して戻して、すべての形態のOFA/iLRP陽性癌の進行を低下させることができ得る抗癌免疫応答をもたらす。KLHと結合体化したペプチドの初期効果は、サイトカイン/ケモカイン発現を用いて細胞培養物中で測定することができる。
【0067】
感作に使用するOFA/iLRPペプチドは、末梢血から単離した単球、白血球除去細胞、またはバフィーコートのいずれかから開始して、単球から樹状細胞を作製して調製する[30、31]。単球の単離および培養は、完全RPMI−10(ウシ胎児血清、15mMのHEPESおよび1×抗生物質/抗糸状菌溶液または同等物を含むRPMI1640)[30〜35]を用いた標準のプロトコルに従う。単球の分化およびパルシング(抗原への曝露)は標準の方法に従って行う[13]。樹状細胞の感作および成熟の測度として、ガンマ−インターフェロン(γ−IFN)の産生を細胞培地中で測定することができる。刺激していない対照細胞よりも統計的に高い、細胞培地中のγ−IFNの増加が、OFA/iLRPペプチドによる陽性樹状細胞刺激と見なされる。以前の研究ではいくつかの異なるサイトカインの組合せを使用しており、複数のサイトカインまたはケモカインをアッセイして、完全なサイトカインの展望を提供し得る。細胞刺激の前、その間、およびその後の免疫細胞の部分組を決定するための、分化抗原群(CD)分子発現を用いたさらなる分析を行い得る。動物モデルを用いて、注射後の全体的なin vivoのサイトカインの展望に対する様々なペプチドの正確な効果を決定し得る。また、このことは、ヒト処置にスケーリングするための概念証明も提供する。いくつかのモデル系(すなわち、細胞培養物、健康なドナーの全血、および動物モデル)の組合せにより、OFA/iLRPペプチドモデルをヒト抗癌治療おいて開発するためのデータが提供される。
【0068】
ペプチドは、ヒト樹状細胞をパルシングするために以前に使用されていたが[23]、使用する領域は1つの例外を除いては異なる。以前の研究ではアミノ酸58から開始されたペプチドを使用した一方で[23]、ここでは非常に具体的な理由でアミノ酸54から開始される。まず、開始部位は、より良好な溶解度および3個の非極性の疎水性残基に関連する他の問題のために選択した[23]。次のアミノ酸は非極性の側鎖を有するため、スレオニンを最初のアミノ酸に選択した。さらに、荷電および配列の変化を欠くことが結合に影響を与えるために十分な場合があり、立ち代ってこれはMHC結合の潜在性に影響を与える場合がある[53、54、57]。
【0069】
樹状細胞患者免疫応答ツールとしてのペプチドの使用
本発明の別の態様によれば、本発明のペプチド、例えば表1に記載のペプチドを使用して、OFA/iLRPを用いた癌ワクチン接種療法の進行を監視することができる。一実施形態では、個々の断片を皮下または皮内に注射して、患者の免疫応答を監視することができる。注射後、部位を応答について監視し、反応の直径を測定する。複数のペプチドを感作に使用する場合、複数の注射部位が存在することができ、反応を比較することができる。ペプチドをKLHまたは同様の物質と結合体化させた場合、結合体単独を免疫応答の陽性対照として使用することができる。試験する感作ペプチド/試薬が2つまたは3つを超える場合は、ペプチドをMantoux/PPD試験に類似の改変した皮膚掻爬試験、皮膚皮刺試験、または皮膚貼付試験で使用することができる[36]。
【0070】
皮膚皮刺試験に使用するペプチドは、様々な希釈率で、かつOFA/iLRP、KLH(もしくは他の結合体)、または樹状細胞/癌ワクチン接種療法に使用される任意の他のタンパク質からの様々な異なるペプチドと共に調製し得る[13、27]。希釈率および/または様々なペプチドを使用して、個体の免疫応答をマッピングし、免疫系を感作させることができる。ペプチドの代わりにタンパク質を用いて患者を感作させる場合、改変した皮膚貼付/皮刺試験を使用して個体の免疫反応性エピトープを発見することができる。タンパク質の推定上のMHC−1または2をカバーするように合成したペプチド(6〜30個のアミノ酸)を使用して、患者を感作させ得る/ワクチン接種し得る。ペプチドは、OFA/iLRPペプチドの選択に類似の様式で選択することができる。あるいは、タンパク質配列をカバーするペプチドのライブラリを合成して、反応のエピトープおよび量を決定するために使用することができる。ペプチドおよび対照溶液に対する免疫応答は、利用可能な皮膚貼付試験キットのアプリケーターを用いて皮膚を掻爬/皮刺することによって、同時に決定することができる。あるいは、針に適切なペプチドまたは対照溶液を「載せる」ことができ、皮膚のパッチを試験することができる。免疫反応は早ければ20分間で現れ得る。しかし、反応は接種後1週間の期間にわたって生じる可能性が高く、ただし、最大の過敏反応は接種後の24〜72時間で現れる傾向にある。ペプチドの反応および最適な希釈率が決定された後、臨床家が標準化された試験を用いて樹状細胞またはワクチン接種療法の大きさまたはグレードを決定し得る。この試験は結核のツベルクリンまたはMantoux/PPD試験に類似している[36]。遅延型の過敏反応によって提供される情報により、樹状細胞またはワクチン接種が有効であったこと、および患者がどの程度まで標的エピトープに対する感受性を有するかが示される。
【0071】
別の実施形態では、本発明のペプチドは、サイトカイン応答のex vivo定量によって、樹状細胞またはワクチン接種療法によって引き起こされる免疫反応性の程度を決定するために使用し得る。ex vivoサイトカイン応答の測定を行うために、患者の血液を採取し、メトリザミド勾配、Ficoll勾配、または赤血球の低張溶解によって白血球を単離する。生じる白血球を洗浄し、適切な成長培地中にプレートする。細胞を37℃で、5%のCO2を含有する湿環境でインキュベーションする。18〜24時間後、細胞を、OFA/iLRPまたは任意の他の樹状細胞もしくはワクチン接種療法からの様々な希釈率のペプチドを用いて「免疫誘発する」ことができる、個々のプレートまたは複数ウェルプレートのいずれかで成長させる。上記のように72時間までインキュベーションした後、細胞培地を単離し、標準のELISAまたは多重ELISA技術を用いてサイトカイン/ケモカイン発現を決定する。免疫活性を決定するために使用することができるサイトカイン発現の一部には、それだけには限定されないが、GM−CSF、IFN−γ、IL−4、IL−10、TGF−α、TNF−α、IL−6、IL−2、および/またはIL−12が含まれる。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]。
【0072】
ワクチンとしてのペプチドの使用
本発明のペプチド、例えば表1に記載のペプチドは、in vivoワクチンに、個々にまたは結合体化した状態で使用することができる。これらは、癌(診断前が含まれる)に対する保護を提供するため、または存在する癌の進行を遅らせることを援助するために、個体内に直接注射することができる。ペプチドは、適切なin vivoのワクチン接種応答を与えるために適切な基質と結合体化している。個体は、OFA/iLRPペプチドに、筋肉内、皮内、血管内、経口、または任意の他の一般的に使用される経路/機構を介して曝露される。注射した後、個体の免疫系は適切な免疫応答を開始させて、OFA/iLRP陽性癌および場合によっては他のOFA/iLRP関連の疾患に対して保護する。ワクチン接種は、(i)OFA/iLRP陽性癌を有する確率を低下させるため、(ii)局在化した形態のOFA/iLRP陽性癌について処置した後に再発率を低下させるため、(iii)現在の化学療法、放射性ヌクレオチド接種、または放射線に基づく癌療法の増大を支援するため、(iv)進行期の癌の進行を遅らせることを支援するため、(v)OFA/iLRPで感作させた樹状細胞療法を介して免疫を増強するために有用である。
【0073】
一連の感作、および/またはOFA/iLRPに対する最小限の力価の後にOFA/iLRPに対して感作させるために、ペプチドを動物内に注射することができる。非特異的な免疫系の影響の対照として、対照動物はキーホールリンペットヘモシアニンに対して感作させ得る。適切な一連の感作の後、OFA/iLRP陽性癌細胞を感作させた動物の尾部静脈内に注射することによって、動物を「免疫誘発する」ことができる。注入した癌細胞は動物の肺中でコロニー形成する。OFA/iLRPに対して感作させた動物は、未処置の動物よりも肺中により少ない数の癌コロニーを有するはずである。あるいは、他の動物モデル/測定基準を使用することができる。しかし、処置の性質が原因で、免疫無防備状態の動物を使用する系は作動しない場合がある。動物における癌モデルの大多数での問題は、これらが血液由来のSCID、または完全に機能的な免疫系を欠く他の系を使用することである。しかし、OFA/iLRP癌治療は、動物において以前にモデリングが成功している[6、9、11、18、23、41〜43]。この処置の免疫性質の理由から、機能的な免疫系が必要である。OFA/iLRP陽性癌に対するこれらのペプチドの治療的価値を決定するための代替方法が存在する。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]、その関連する内容が本明細書中に参考として組み込まれている。
【0074】
OFA/iLRP関連疾患の処置におけるペプチドの使用
本発明のペプチド、例えば表1に記載のものを、個々にまたは組み合わせて、結合体化したまたは結合体化していない形態で使用して、免疫系に依存しないまたは連動し得る作用を介して、OFA/iLRPに関与する疾患の進行を変更することができる。例えば、OFA/iLRPのペプチドG領域は、ラミニン受容体の安定化を介して転移に役割を果たすことが示されている[16、24、44]。その突然変異体および/または修飾体を含めた表1に記載のペプチドは、OFA/iLRP活性に影響を与えることによって薬理学的薬剤として使用し得る。
【0075】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物および非哺乳動物の細胞に対する成長速度の薬理学的効果を決定するための試験を提供する。試験には、様々な濃度の本発明のペプチドを用いてまたは用いずに細胞を成長させるステップと、アポトーシス、壊死、および細胞増殖に対する効果を測定するステップとが含まれる。OFA/iLRP陽性癌細胞は、in vitroで、様々な基底膜上に、様々な用量の本発明のペプチドを用いて成長させることができる。ペプチドの効果は、それだけには限定されないが、DNAラダー、細胞死検出ELISA、カスパーゼ測定、TUNELアッセイ、アネキシン−V膜変化、DNA染色、FAS、p53、細胞毒性アッセイ、細胞増殖、および細胞生存度を含めた様々な方法によって測定することができる。
【0076】
ペプチドは、OFA/iLRP陽性癌細胞の侵襲性を増加または減少させるために使用し得る。これは、OFA/iLRP陽性細胞を、様々な濃度で、ペプチドを用いておよび用いずに、他のタンパク質に関与するいくつかの研究と同様の改変ボイデンチャンバを用いて成長させることによって、測定することができる[45〜48]。また、ペプチドを、細胞接着に影響を与えるために使用してもよく、標準の方法を用いて測定することができる。例えば、接着培養したOFA/iLRP陽性癌細胞を、様々な細胞外基質タンパク質(ECM)の存在下で、ペプチドを用いて培養する。その後、細胞を標準の方法によってアッセイして、ペプチドの存在下における細胞系の相対的接着を決定する[49〜52]。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、細胞生存度、増殖、細胞死、およびアポトーシスに対するOFA/iLRPの影響を決定し得る[37〜40]。
【0077】
OFA/iLRP関連疾患の監視におけるペプチドの使用
本発明のペプチドを用いてOFA/iLRP関連の疾患に対するex vivoまたはin vitroの応答を監視することができる。例えば、表1に記載のペプチドを、個々にまたは組み合わせて、結合体化したまたは結合体化していない形態で使用して、疾患の処置に対する身体の応答の程度を決定し得る。表1に記載のペプチドを固体基質上にコーティングすることができ(単独で、または組み合わせて)、細胞応答、自己免疫抗体の存在、結合タンパク質の存在、および/または他の試験を使用して、樹状細胞療法に対する応答を決定することができる。
【0078】
エピトープの検出および免疫グロブリンの定量におけるペプチドの使用
ペプチドは、in vitroでエピトープを検出および免疫グロブリンを定量するための基質として使用することができる。表1に記載のOFA/iLRPのエピトープをラテックスビーズまたは粒子上にコーティングすることができ、これを用いて、凝集を使用して患者の血清をスクリーニングすることができる。手短に述べると、表1に記載のペプチドをラテックスまたはコロイドなどの粒子に付着させることができる。ペプチド/粒子の混合物を患者の血清と共にインキュベーションして、OFA/iLRPペプチドに対して反応する、存在する免疫グロブリンの相対量を測定することができる。1つのペプチド試薬のみを使用して樹状細胞を感作させた場合は、必要なのはそのペプチドのみである。完全長のタンパク質試薬を使用して樹状細胞を感作させた場合は、様々なペプチドが表1に記載のペプチドとして予測される場合がある。クラスタリングするペプチド領域の合計数を減らすために、上述のようにMHCペプチド予測を組み合わせることができる。これらのペプチドはラテックスビーズ、コロイド、または粒子に個々に結合体化しており、凝集研究に使用する。反応性を決定するために、希釈したまたは希釈していない状態の患者の血清を、直径約25mmのワックスサークルを有する血清ガラス皿または血清学インキュベーション鋳型として具体的に設計されたプラットフォームに移す。血清を適切な量のペプチド/粒子の混合物と共にインキュベーションすることができる。血清、ペプチド/粒子の混合物は、非特異的な凝集を防止するために水平プラットフォーム上で常に回転させるべきである。試験には、陽性血清および陰性対照試料が含まれ得る。15分間〜2時間、室温で回転しながらインキュベーションした後、凝集反応を読み取り、凝集の程度に基づいてグレードする。特定の場合では、非IgM分子の感度および検出率を増大させるために、さらなる抗ヒト抗体を加え得る。これは上述の凝集試験の拡張であり、「間接的な凝集」と呼ばれる。さらに、IgM(直接凝集)対IgG(受動凝集)の比は、患者のワクチン接種の状態に関する臨床的に意味のある情報を提供し得る。この技法は、特異的なエピトープに対する患者の免疫を、グレードスケールを参照して迅速に決定および解釈する必要がある場合に、任意の樹状細胞療法または癌ワクチンに適用し得る。凝集スコア付けの代替として、試験は、分光光度計、化学発光、放射性、電気、または蛍光定量を用い得る。いくつかの他の一般的に使用されている技法を適用して、OFA/iLRPおよびOFA/iLRPペプチド療法の免疫学的応答を決定し得る[37〜40]。
【0079】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)におけるペプチドの使用
本発明のペプチドはELISAアッセイで使用し得る。ELISAアッセイは、可溶性の抗原または抗体を定量および/または検出するために使用することができる。さらに、様々なペプチドを使用して、様々なOFA/iLRPペプチドに対する特異的な個々の応答を生じさせる。第1の応用は、ペプチドを、OFA/iLRP療法を受けている患者の血清に対する抗原として作用するように使用することである。この方法は標準のプロトコルに従う[40]。第2の方法は、循環抗原を決定するための標準の直接競合的アッセイとしての、ペプチドの別の新規の応用である。この方法は標準の方法に従うが、本発明のペプチドを使用する[40]。
【0080】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示することを意図するが、限定することを意図しない。そのような実施例は使用し得るものの典型であるが、当業者に公知の他の手順を代わりに利用し得る。実際、当業者は、本明細書中の教示に基づいて、必要以上の実験を行わずに、さらなる実施形態を容易に想定および生じることができる。
【実施例】
【0081】
(実施例1)
ペプチドの予測およびOFAで感作させた樹状細胞との結合
コンピュータに基づくクラスタリング方法を用いていくつかの領域を予測した(図2)。ペプチド修飾の効果をさらに実証するために使用できるため、アミノ酸129から開始される領域(Ac−CADHQPLTEASYVNLPT−アミド)を選択した。さらに、129は、以前の研究{Rohrer、2006年、#1}で、エピトープを含有せず、必要であると示されたYVNLPTIALエピトープの半分を欠くと示された領域中にある。129領域が抗原性であるかどうかを決定するために、樹状細胞を完全長の組換えヒトOFAでパルシングし、成熟させ、フルオレセイン(fluorscein)で標識したペプチドを用いて129エピトープについて分析した(図3AおよびC)。
【0082】
CD14+単球を、1000IU/mlのGM−CSFおよび1000IU/mlのIL−4(Cell Genix、イリノイ州Antioch)を含有する無血清樹状細胞培地中、1×106個の細胞/mlで成長させた。細胞を、100ng/mlのrHuOFAまたは
【0083】
【化4】
の等量のペプチド混合物(20ng/ml)で36時間パルシングした。パルシングした樹状細胞を、10ng/mlのIL−1ベータ、1000IU/mlのIL−6、5ng/mlのTNF−アルファおよび1μmのプロスタグランジンE2を含有する無血清樹状細胞培地を用いて成熟させ、2日間成熟させた。2日間の終わりに、細胞をプレートから掻爬し、フローサイトメトリー分析を用いて分析した(図3A〜B)。
【0084】
アミノ酸129から開始されるエピトープの蛍光標識は標準の手順に従って行い、例えば、標準のプロトコルに従って、最初にシステイン上で標識したペプチドを付加して、フルオレセイン(Fluorsceine)−5−マレイミド(maledimide)(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いた結合体化を可能にした。未結合のフルオレセインは標準の色素除去カラム(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いて除去した。
【0085】
成熟が成功したかどうかを決定するために、標準のプロトコル(prototocol)に従って、細胞をCD14、CD80/86、およびクラスII MHC(HLA−DR)で分析した(R&D systems、ミネソタ州Minneapolis)。手短に述べると、約5.0×105個の細胞/チューブを、2%のウシ胎児血清を含むリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁させた。細胞を氷上に置き、25μlの適切な抗体、フルオレセインで標識したペプチドまたはアイソタイプ対照抗体を細胞と共に氷上で1時間インキュベーションした。1時間後、2%のFCSを含む4mlのPBSをそれぞれのチューブに加え、チューブを300×gで10分間遠心することによって細胞をペレット化した。細胞を、2%のFCSを含む400μlのPBSに再懸濁させ、分析した(図3B)。細胞をすぐに分析できない場合は、これらを0.5%のホルムアルデヒド/PBS中、4℃、暗所で固定した。細胞は、CD14陰性ならびにCD83、CD80/86およびクラスII MHC陽性である場合に、樹状細胞であると見なされた。
【0086】
図3は、OFA/iLRPのコンピュータHLA分析から誘導した、完全長の組換えヒトOFA/iLRP(図3A)または等量(重量で)のペプチド混合物(図3B)でパルシングした樹状細胞の代表的なFACS分析を示す。データは、rHuOFA/iLRPおよびペプチドがどちらも樹状細胞を有効にパルシングできることを示している。ヒトrHuOFA/iLRPで感作させた細胞は53.90±3.058 N=4によって認識された一方で、ペプチド混合物のパルシングは40.43±2.618 N=4を認識し、差異は13.48±4.025であった(図3C)。両側スチューデントt検定を使用して、OFA/iLRPの129領域を認識した成熟樹状細胞の百分率間に有意な差異が存在したかどうかを決定した。群間の差異は有意であることが判明し(p=0.0155)、平均+/−SEMおよび有意性(*)を図3Cに示す。
【0087】
データは、rHuOFA/iLRPでパルシングした樹状細胞の53.9%が129領域のエピトープを認識し(図3A)、以前に同定されていないエピトープの予測においてコンピュータ分析が正確であったことを示している。領域の強度のさらなる証拠として、パルシングした樹状細胞の大多数がこの領域を認識した。樹状細胞を刺激するペプチドの能力を図3Cに示し、細胞の40.43%が129領域を認識した。117個のペプチドが下線を引いた領域によって示す重複配列を有するため、樹状細胞の約40%が129領域を認識するはずであると予想される。このことは、OFA/iLRPペプチドを用いた樹状細胞のパルシングを使用して完全長のタンパク質の特異的領域に対する免疫応答を変調できることを示している。さらに、これらの実験は、ペプチドの蛍光体を感作剤および診断試薬のどちらとしても使用できることを示している。
【0088】
(実施例2)
129領域の樹状細胞結合に対するペプチド修飾の効果
コンピュータに基づくクラスタリング方法を用いていくつかの領域を予測した(図2)。ペプチド修飾の効果をさらに実証するために使用できるため、アミノ酸129から開始される領域(Ac−CADHQPLTEASYVNLPT−アミド)を選択した。129領域が、樹状細胞に対するその相対的結合を向上できるかどうかを決定するために、ペプチド配列を、カルボキシル末端に4個のさらなるアミノ酸が含まれるように、かつ結合障害を最小限にするためにアミノ末端にスペーサーとして6−アミノヘキサノイルが含まれるように、修飾した。これらの修飾は、標準の129ペプチドと比較した場合に蛍光強度メジアンを増大させるはずである。
【0089】
CD14+単球を、1000IU/mlのGM−CSFおよび1000IU/mlのIL−4(Cell Genix、イリノイ州Antioch)を含有する無血清樹状細胞培地中、1×106個の細胞/mlで成長させた。細胞を100ng/mlのrHuOFAで36時間パルシングした。パルシングした樹状細胞を、10ng/mlのIL−1ベータ、1000IU/mlのIL−6、5ng/mlのTNF−アルファおよび1μmのプロスタグランジンE2を含有する無血清樹状細胞培地を用いて成熟させ、2日間成熟させた。2日間の終わりに、細胞をプレートから掻爬し、フローサイトメトリー分析を用いて分析した。
【0090】
ペプチド129および129−a(Ac−TDPRADHQPLTEASYVNLPT−Ahx−C−アミド)の蛍光標識は、標準の手順に従って行った。手短に述べると、システイン上で標識したペプチドには、標準のプロトコルに従ってフルオレセイン−5−マレイミド(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いた結合体化を可能にすることが含まれていた。未結合のフルオレセインは標準の色素除去カラム(Pierce/Thermo、イリノイ州Rockford)を用いて除去した。また、このシステインは、ペプチドを様々な異なる生成物と結合体化させるためにも使用することができる。
【0091】
成熟が成功したかどうかを決定するために、標準のプロトコルに従って、細胞をCD14、CD83、CD80/86、およびクラスII MHC(HLA−DR)で分析した (R&D systems、ミネソタ州Minneapolis)。手短に述べると、0.5×105個の細胞/チューブを、2%のウシ胎児血清を含む25μlのリン酸緩衝生理食塩水に懸濁させた。細胞を氷上に置き、25μlの適切な抗体、フルオレセインで標識したペプチドまたはアイソタイプ対照抗体を細胞と共に氷上で1時間インキュベーションした。1時間後、2%のFCSを含む4mlのPBSをそれぞれのチューブに加え、チューブを300×gで10分間遠心することによって細胞をペレット化した。細胞を、2%のFCSを含む400μlのPBSに再懸濁させ、分析した。細胞をすぐに分析できない場合は、これらを0.5%のホルムアルデヒド/PBS中、4℃、暗所で固定した。BD LSR II分析器を用いて少なくとも2,000個の事象を分析し、FACSDivaソフトウェアバージョン6.1.3を用いて表示させた(図4A〜B)。細胞は、CD14陰性ならびにCD83、CD80/86、およびHLA−DR陽性である場合に樹状細胞であると見なされた。
【0092】
図4Dは、組換えヒトOFA/iLRPでパルシングした樹状細胞が129エピトープに対して活性であり、より高い確率で修飾した129−aと結合することを示す。129ペプチドは11,390+/−500.6の平均蛍光強度(fluoresence intesity)(MFI)を有していた一方で、129−aペプチドは38,670+/−5067のMFI、すなわち蛍光強度の3.4倍の増加を示した。129および129−aのFITCで標識したペプチドの代表例をそれぞれ図4AおよびBに示し、129−aがt検定によって129とは異なる結合プロフィールを有するかどうかを決定し(p=0.0032)、リンカー残基(Ahx)またはさらなるペプチドのどちらかの使用によるペプチドへの修飾が、その蛍光強度を増加させたことが示された(図4D)。このMFIの増加は、結合能力の増加の指標である。
【0093】
このデータは、わずかな変化がペプチドの結合および蛍光強度に影響を与えることができることを実証している。ペプチドは、樹状細胞を感作させるため、および樹状細胞パルシングの効率を決定するために使用することができる。このデータは、OFA/iLRPタンパク質に対して設計されたペプチドの使用は、パルシング効率、結合活性、免疫刺激、および免疫細胞の定量を向上させるために、様々な異なる方法によってわずかに改変できることを示している。ペプチドは、単独でまたは混合物中で使用して、特異的なOFA抗原に対する免疫細胞/タンパク質の反応性の程度を決定することができる。
【0094】
(実施例3)
Innocyte96ウェル細胞接着アッセイ
この実験の目的は、OFA/iLRPに対して設計したペプチドが接着細胞系と細胞外基質の構成成分との細胞接着に何らかの影響を与えたかどうかを決定することであった。接着の減少は転移能を増大させるはずであることから、所望の応答は、接着に変化がないことである。
【0095】
すべての細胞を、L−グルタミン、100I.U.のペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640中、37℃、加湿チャンバ(Mediatech、Inc.、バージニア州Manassas)内で成長させた。DU−145およびSK−MEL−28細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から入手し、標準のプロトコルに従って培地中で成長させた。細胞を75〜85%の密度まで成長させ、標準のプロトコルに従って収集し、改変ノイバウエル輝線赤血球計を用いて計数し、400,000個の細胞/mlで懸濁させた。
【0096】
ペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはDMSOのどちらかに溶かし、その後、最大20%のDMSOまでPBSに溶かし、2×溶液を作製し、完全培地中に入れた。ペプチドを適切な濃度まで希釈した後、50μlを、ラミニンI、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンI、コラーゲンIII、およびコラーゲンIVでコーティングされた2×8ウェルのストリップとして供給されるキット中に提供される96ウェルアッセイプレート(EMD、ニュージャージー州Gibbstown内に、50μlの細胞(20,000個の細胞/ウェル)と共に分注し、その後、細胞培養インキュベータ内で2時間、37℃でインキュベーションした。内容物を生物学的廃棄物容器内に振り出し、200μlのPBSをそれぞれのウェルに加えることによって穏やかに洗浄し、このステップで内容物を廃棄物容器内に振り出すことを合計2回洗浄するまで繰り返した。次に、100μlのカルセイン−AM作業溶液をそれぞれのウェルに加え、1時間、37℃、インキュベータ内でインキュベーションした。DTX880(Beckman Inc.)を使用して、標準の蛍光プロトコルに従って、485nmの励起および520nmの発光波長を用いて、それぞれのウェルの蛍光を測定した。
【0097】
図5は、ラミニンIおよびコラーゲンIのウェルからのデータを示す。生物活性濃度のペプチドの存在下において、これらの細胞の接着に有意な差異は見られない。データはすべての基質について同様である(示さず)。
【0098】
このデータは、設計したOFA/iLRPペプチドが細胞接着に影響を与えないことを示す。したがって、接着が影響を受けないため、これらは癌細胞の接着を減少させることによって転移負荷を増加させないはずである。このことは、ペプチドが、患者の転移負荷を増大させるはずのない、in vivoの臨床的/治療的使用を有することができることを意味する。
【0099】
(実施例4)
細胞生存度に対するOFA/iLRPペプチドの効果
この実験の目的は、OFA/iLRPに対して設計したペプチドが細胞生存度に対して何らかの影響を与えるかどうかを決定することであった。OFA/iLRPの性質が理由で、ペプチドは、OFA|OFAからLRへの変換を乱すまたは他のタンパク質|タンパク質の相互作用を阻害するように設計されていると予想された。
【0100】
すべての細胞を、L−グルタミン、100I.U.のペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640中、37℃、加湿チャンバ(Mediatech、Inc.、バージニア州Manassas)内で成長させた。DU145細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から入手し、標準のプロトコルに従って培地中で成長させた。DU145細胞を75〜85%の密度まで成長させ、標準のプロトコルに従って収集し、改変ノイバウエル輝線赤血球計を用いて計数し、400,000個の細胞/mlで懸濁させた。
【0101】
ペプチドをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはDMSOのどちらかに溶かし、その後、最大20%のDMSOまでPBSに溶かし、2×溶液を作製し、完全培地中に入れた。適切な濃度まで希釈した後、50μlを、ラミニン/エンタクチン複合体(50μg/ml)でコーティングした、または未処理(黒色で透明な底)(Corning Life Sciences、ニューヨーク州Corning)96ウェルアッセイプレート、50μlの細胞(20,000個の細胞/ウェル)内に分注し、終夜成長させた。その後、細胞に20μlのCellTiter−Blue((Promega、ウィスコンシン州Madison))を加え、さらに2時間、37℃でインキュベーションした。その後、細胞を、DTX−880(Beckman Inc.)上で、標準の蛍光プロトコルに従って、0.001秒間の積分時間を用いて読み取った。カスパーゼ活性が誘導されたかどうかを決定するために、ApoOne アッセイ(Promega、ウィスコンシン州Madison)を用いてカスパーゼ3/7活性を決定した。データをExcel、その後、Prism5.0(GraphPad Software,Inc)に出力し、ここでこれをプロットし、一元配置ANOVAを用いてバックグラウンド対照(ペプチドに使用した希釈剤)との統計的差異について分析した。
【0102】
すべてのDU145細胞は、コーティングしていないまたはラミニン/エンタクチンでコーティングした96ウェルプレートのどちらかで成長させた。ペプチド1またはペプチド3のどちらかの存在下では(表2)、コーティングしていない(ラミニンなし)またはコーティングした(ラミニン)群のどちらにおいても、対照と処置群との間に統計的差異は存在しなかった(図6AおよびC)。しかし、ラミニンの存在を必要とする、ペプチドによって引き起こされる何らかのすべての潜在的な効果の興味深い傾向が存在していた。ペプチド2(表2)は、2倍を超えて細胞生存度を減少させる能力を有する、最も顕著な生物学的効果を示し、これは対照とは有意に異なっていた(p<0.05)(図6B)。ApoOneカスパーゼ3/7アッセイではどの群でも有意な差異は見られなかった(データ示さず)。さらに、以前に記載したOFA/iLRPエピトープ(アミノ酸49〜60、DMSO/PBSで希釈)に対して作製したペプチドは、T細胞を増殖させることはできたが、細胞生存度に影響を与えるまたはアポトーシスを誘導することができなかった(データ示さず)。
【0103】
この実験の目的は、免疫原性を有すると予測されたOFA/iLRPペプチドのうちのいずれかが、細胞生存度に対して何らかの効果を有するかどうかを決定することであった。DU145細胞をペプチド2の存在下で成長させた場合、これは、ペプチド希釈剤対照(20%のDMSO/80%のPBS)と比較して、細胞生存度に対して有意な効果を有することが見られた。しかし、カスパーゼ3/7の活性化に依存しておらず、ApoOneアッセイの有意な変化は見られなかった(データ示さず)。さらに、以前に良好なエピトープであると示されたペプチド(Rohrer、2006年、#1)は細胞生存度に影響を与えなかった(アミノ酸49〜60、データ示さず)。このことはペプチドが治療的活性を有する可能性があり、それにより、これらを免疫または場合によっては細胞生存度の標的手法のいずれかとして使用することが可能となることを示す。
【0104】
本明細書中に上述した本発明の多くの改変および変形は、その精神および範囲から逸脱せずに行うことができ、したがって、課されるべき限定は、添付の特許請求の範囲によって示されるもののみである。
【0105】
本明細書中で引用したすべての特許および参考文献は、その全体で本明細書中に参考として組み込まれている。
【0106】
表1.樹状細胞療法のための推定上のOFA/iLRP配列の初期スクリーニング。列挙した配列は、免疫刺激もしくは樹状細胞療法または他の臨床応用のために、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0107】
【表1】
表2.個々の予測された部位を組み合わせて1つのペプチドを作製する例。上記5つの例は、免疫および/または細胞活性の確率が増加した領域をどのように一緒にグループ化することができるかを示す。いずれかの末端でのわずかな修飾およびシステインの付加が結合体化に必要であり得る。
【0108】
【表2】
参考文献
【0109】
【化5】
【0110】
【化6】
【0111】
【化7】
【0112】
【化8】
【0113】
【化9】
【0114】
【化10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化11】
およびその混合物からなる群より選択される単離ペプチドであって、前記ペプチドは、樹状細胞を感作させることができる、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、3個までのさらなるアミノ酸を、それぞれ、そのN末端、C末端またはそれらの両方に含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが、
【化12】
である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
担体との結合体化を可能にするシステインまたは他の官能基を含有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
担体との結合体化を可能にするシステインまたは他の官能基を含有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドの免疫刺激、安定性、および/または溶解度を増大させる担体と結合体化している、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記担体が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、デンドリマー、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、およびコロイド粒子からなる群より選択される、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
アセチル化、脂肪酸性化、ミリスチン酸酸性化、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、AHX、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、または多抗原性ペプチド系(MAP)が含まれるように修飾されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
OFA/iLRPの二量体化領域に由来する単離ペプチドであって、樹状細胞を感作させることができるペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項3に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項12】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のペプチドまたはその混合物によって感作させた樹状細胞。
【請求項14】
請求項3に記載のペプチドまたはその混合物によって感作させた樹状細胞。
【請求項15】
請求項1に記載の単離ペプチドを含むワクチン。
【請求項16】
請求項3に記載の単離ペプチドを含むワクチン。
【請求項17】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)樹状細胞を請求項1に記載のペプチドまたはその混合物で感作させるステップと、(b)感作させた前記樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項18】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)樹状細胞を請求項3に記載のペプチドまたはその混合物で感作させるステップと、(b)感作させた前記樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項19】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、前記被験体において、前記OFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
OFA/iLRP陽性癌を有する被験体を処置する方法であって、請求項3に記載のペプチドまたはその混合物を、前記OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させるために十分な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項22】
試料中のOFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法であって、
(a)請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記抗体が前記ペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で前記試料と接触させるステップと、
(b)前記試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
試料中の、OFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法であって、
(a)請求項3に記載のペプチドを、前記抗体が前記ペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で前記試料と接触させるステップと、
(b)前記試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項24】
被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法であって、(1)請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記療法に対する前記被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、前記被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)前記投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む、方法。
【請求項25】
被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法であって、(1)請求項3に記載のペプチドまたはその混合物を、前記療法に対する前記被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、前記被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)前記投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む、方法。
【請求項26】
被験体におけるOFA/iLRP関連処置の進行をex vivoで監視する方法であって、ここで、前記処置は、T細胞関連応答、B細胞関連応答、またはそれらの両方の応答を誘導し、前記方法は、(1)前記処置を受ける前記被験体の生体液を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、前記ペプチドと前記T細胞、前記B細胞または前記T細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で前記生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、ELISpot、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む、方法。
【請求項1】
以下:
【化11】
およびその混合物からなる群より選択される単離ペプチドであって、前記ペプチドは、樹状細胞を感作させることができる、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、3個までのさらなるアミノ酸を、それぞれ、そのN末端、C末端またはそれらの両方に含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが、
【化12】
である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
担体との結合体化を可能にするシステインまたは他の官能基を含有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
担体との結合体化を可能にするシステインまたは他の官能基を含有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドの免疫刺激、安定性、および/または溶解度を増大させる担体と結合体化している、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記担体が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、生物学的ポリマー、抗体、化学療法、カーボンナノチューブ、微小電気/電気流体デバイス、分子機械、アミノ酸MAPポリマー、デンドリマー、生物学的に活性な脂質、生物学的に活性な糖分子/ポリマー、およびコロイド粒子からなる群より選択される、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
アセチル化、脂肪酸性化、ミリスチン酸酸性化、パルミトイル化、ベンジルオキシカルボニル化、アミド化、p−ニトロアニリド、AMC、スクシニル化、NHS、CMK/FMK、D−アミノ酸、ジニトロベンゾイル化、メチル化、リン酸化、AHX、SO3H2、オクタン酸、ビオチン、FITC、GAM、ダンシル、MCA、HYNIC、DTPA、環形成、または多抗原性ペプチド系(MAP)が含まれるように修飾されている、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
OFA/iLRPの二量体化領域に由来する単離ペプチドであって、樹状細胞を感作させることができるペプチド。
【請求項10】
請求項1に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項3に記載のペプチドを含む医薬組成物。
【請求項12】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のペプチドまたはその混合物によって感作させた樹状細胞。
【請求項14】
請求項3に記載のペプチドまたはその混合物によって感作させた樹状細胞。
【請求項15】
請求項1に記載の単離ペプチドを含むワクチン。
【請求項16】
請求項3に記載の単離ペプチドを含むワクチン。
【請求項17】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)樹状細胞を請求項1に記載のペプチドまたはその混合物で感作させるステップと、(b)感作させた前記樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項18】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、(a)樹状細胞を請求項3に記載のペプチドまたはその混合物で感作させるステップと、(b)感作させた前記樹状細胞を、OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させる免疫応答を誘導するために十分な量で前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項19】
OFA/iLRP関連癌を有する被験体を処置する方法であって、請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記OFA/iLRP関連癌の進行を低下させるために十分な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項20】
前記ペプチドが、前記被験体において、前記OFA/iLRP関連癌の進行を低下させる免疫応答を誘導する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
OFA/iLRP陽性癌を有する被験体を処置する方法であって、請求項3に記載のペプチドまたはその混合物を、前記OFA/iLRP陽性癌の進行を低下させるために十分な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
【請求項22】
試料中のOFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法であって、
(a)請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記抗体が前記ペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で前記試料と接触させるステップと、
(b)前記試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
試料中の、OFA/iLRPに対する抗体の量を決定する方法であって、
(a)請求項3に記載のペプチドを、前記抗体が前記ペプチドと結合して複合体を形成することを可能にする条件下で前記試料と接触させるステップと、
(b)前記試料中で形成された複合体の量を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項24】
被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法であって、(1)請求項1に記載のペプチドまたはその混合物を、前記療法に対する前記被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、前記被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)前記投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む、方法。
【請求項25】
被験体においてOFA/iLRP関連癌ワクチン接種療法の進行を監視する方法であって、(1)請求項3に記載のペプチドまたはその混合物を、前記療法に対する前記被験体の免疫応答を検出するのに十分な量で、前記被験体の部位に皮下または皮内で投与するステップと、(2)前記投与部位での反応の直径を監視するステップとを含む、方法。
【請求項26】
被験体におけるOFA/iLRP関連処置の進行をex vivoで監視する方法であって、ここで、前記処置は、T細胞関連応答、B細胞関連応答、またはそれらの両方の応答を誘導し、前記方法は、(1)前記処置を受ける前記被験体の生体液を提供するステップと、(2)本発明のペプチドを、前記ペプチドと前記T細胞、前記B細胞または前記T細胞もしくはB細胞によって生じた産物との相互作用が可能となる条件下で前記生体液と接触させるステップと、(3)相互作用の量をELISA、ELISpot、蛍光偏光、共鳴、またはFACS方法によって決定するステップとを含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2012−522016(P2012−522016A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502312(P2012−502312)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028945
【国際公開番号】WO2010/111669
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511232488)クアンタム イミュノロジクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028945
【国際公開番号】WO2010/111669
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511232488)クアンタム イミュノロジクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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