説明

癌細胞を標的とする遺伝子の伝達方法

本発明の目的は、抗−腫瘍遺伝子治療に有用な特異的に癌細胞を標的できるレトロウィルス遺伝子伝達システムを提供することである。Tag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体(ScFv)及びGaLV外被糖蛋白質の融合ポリペプチド形態である本発明のキメラリガンド蛋白質は癌細胞に対し高い形質導入効率を現し、標的細胞を特異的に感染させ、治療遺伝子を効果的に伝達する。従って、本発明のキメラリガンドは、腫瘍の成長及び転移を抑制するための遺伝子治療に有効に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍−関連糖蛋白質の表面抗原に特異的に結合できる単鎖抗体及びレトロウィルス外被糖蛋白質の融合ポリペプチド形態のキメラリガンド(chimeric ligand);前記キメラリガンドをコードする遺伝子を含む発現ベクター;前記発現ベクターが形質導入された組換レトロウィルス;及び前記キメラリガンドを有効成分とする薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は先天性代謝異常によって発病する疾病だけでなく癌・糖尿病・エイズ等を始めとする後天的疾病の治療を目的とする急激に注目されている分野である。現在遺伝子治療に使われている幾つかの遺伝子伝達ベクターシステムの中でもレトロウィルスベクターシステムはアデノウィルス、リポソーム、エレクトロポレーション(electroporation)法及び遺伝子銃(gene gun)などに比べ有利である。例えば、レトロウィルスベクターシステムは形質導入された細胞の安定的な発現を可能にする宿主細胞内へ永久的に統合できる。しかし、このようなシステムは特定標的細胞に遺伝子を伝達するには限界がある。
【0003】
レトロウィルスを利用して治療遺伝子を標的細胞に特異的に導入する様々な方法が開発されており、次のような例を挙げられる:糖分子を化学的な方法を用いてレトロウィルスの外被糖蛋白質に連結して糖連結(sugar couple)外被糖蛋白質を標的細胞のアシアロ糖蛋白質受容体(asialoglycoprotein receptor)に結合させる方法(Neda,H.et al.,J.Biol.Chem.266:14143−14146,1991);レトロウィルスの外被糖蛋白質と標的細胞の受容体或いは表面抗原 の両方に連結できる連結抗体を利用する方法(Goud B.et al.,Virology 163:251−254,1988;Roux,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:9079−9083,1989;Etienne−Julan,M.et al.,J.Gen.Virol.73:3251−3255,1992);単鎖抗体をレトロウィルスの外被糖蛋白質に遺伝工学的方法で結合させて標的細胞に感染させる方法(Russell,S.J.et al.,Nucleic Acids Res.21:1081−1085,1993;Somia,N.V.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7570−7574,1995;Ager,S.et al.,Hum.Gene Ther.7:2157−2164,1996;Marin,M.et al.,J.Virol.70:2957−2962,1996;Schnierle,B.S.et al.,Gene Ther.3:334−342,1996);及びペプチドリガンド(peptide ligand)をレトロウィルスの外被糖蛋白質に遺伝子工学的な方法で結合させて標的細胞に感染させる方法(Kasahara,N.et al.,Science 266:1373−1376,1994;Cosset,F.L.et al.,J.Virol.69:6314−6322,1995;Schnierle,B.S.,and Groner,B.,Gene Ther.3:1069−1073,1996)。しかし、これらの方法は形質導入(transduction)効率が非常に低いという問題がある。
【0004】
治療遺伝子を人間の標的細胞に導入するため鳥類やマウス(murine)レトロウィルスを利用する方法も開発されている(Chu,T−H.T.,and R.Dornburg.J.Virol.69:2659−2663,1995;Chu,T−H.T.et al.,Gene Ther.1:292−299,1994;Valsesia−Wittmann,S.et al.,J.Virol.68:4609−4619,1994;Cosset,F−L.et al.,J.Virol.69:6314−6322,1995;Han,X.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747−9751,1995;Kasahara,N.et al.,Science 266:1373−1376,1994;Somia,N.V.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7570−7574,1995;HAN,J.Y.,et al.,J.Virol.71,8103−8108,1997)。マウス(murine)レトロウィルスの構造及び機能に対しては多く研究されているが、特にMo−MuLVとFr−MuLVの外被糖蛋白質の3次構造がX−ray結晶によって最近明かされている。
【0005】
標的細胞の受容体(receptor)又は表面抗原が知られているか特異的である場合は、単鎖抗体(single−chain antibody:ScFv)をレトロウィルスの外被糖蛋白質に遺伝工学的な方法で結合させて標的細胞に感染させる方法が標的細胞の特異的感染に非常に有用である。
【0006】
単鎖抗体(ScFv)とは適切な合成アミノ酸リンカーによりVのカルボキシ末端(carboxy−terminal)とVのアミノ末端(amino−terminal)が繋がった形態である。前記抗体結合部位は重鎖と軽鎖の可変領域からなっている抗体分子のFv(fragment variable)領域に位置する(Poon et al.,Molecular Immunology 39:19−24,2002;Fujiwara et al.,Biochemistry 41:12729−12738,2002).
【0007】
最近、安全性と形質導入効率を向上させるためにレトロウィルスの擬似型(pseudotype)が研究されている。例えば、様々な人体細胞株で両指向性(amphotropic)マウス(murine)レトロウィルスベクターよりもテナガザル白血病ウィルス(gibbon ape leukemia virus,GaLV)Env−偽型レトロウィルスベクターが5〜30倍程高い感染効率を現した(Kim et al.,Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.38:177,1997)。しかし、特異的標的作用に関しては依然として解決すべき限界がある。
ここに、本発明者らはより高いウィルス力価と形質導入効率を現すレトロウィルスを利用した遺伝子伝達システムの要求を満たすために鋭意研究し、GaLV外被糖蛋白質と腫瘍−関連糖蛋白質(tumor−associated glycoprotein)72(Tag−72)の表面抗原に特異的に結合できるモノクローナル抗体(monoclonal antibody)由来の単鎖抗体(Single chain antibody)の融合ポリペプチド形態でキメラリガンド(chimeric ligand)を開発することによって本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は抗−腫瘍遺伝子治療において有用な特異的に癌細胞を標的とするレトロウィルス遺伝子伝達システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、腫瘍−関連糖蛋白質72(Tag−72)の表面抗原に特異的に結合できる単鎖抗体とレトロウィルス外被糖蛋白質(Env GP)の融合ポリペプチド形態のキメラリガンドを提供する。
また、本発明は前記キメラリガンドをコードする遺伝子を含む組換発現ベクター及び前記発現ベクターが形質導入されて前記レトロウィルスを生産できるパッケージ細胞株を提供する。
【0010】
さらに、本発明は前記キメラリガンド又はパッケージ細胞株を有効成分として含む癌細胞標的性遺伝子治療用薬学組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上に述べたように、腫瘍−関連糖蛋白質Tag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体とGaLV外被糖蛋白質を融合させた本発明のキメラリガンドはTag−72を発現する腫瘍細胞に対し形質導入効率が非常に高く、標的細胞を特異的に感染する治療遺伝子を効果的に伝達できるため、癌の成長及び転移抑制のための遺伝子治療に有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は腫瘍−関連糖蛋白質72(Tag−72)の表面抗原に特異的な単鎖抗体とGaLV外被糖蛋白質の融合ポリペプチド形態であるキメラリガンドを提供する。
【0013】
レトロウィルス遺伝子伝達システムを開発するために、本発明者らは、結腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌等を含む様々な癌細胞で発現される腫瘍関連糖蛋白質72(Tag−72)の表面抗原に特異的に結合できる単鎖抗体の利用を鋭意研究した。また、治療遺伝子を人間の標的細胞に効率的に導入するために、MuLV(Murine Leukemia Virus)外被糖蛋白質よりも高い人体癌細胞への形質導入効率及び人間血液に対する安定性を現すGaLV外被糖蛋白質の利用も合わせて研究した。
【0014】
細胞表面の受容体に対するウィルス外被糖蛋白質上に分布された外被糖蛋白質間結合は標的細胞内へのレトロウィルス感染に必須であり、感染の特異性を決める重要な要因でもある。標的細胞への特異的な遺伝子伝達システムで、標的細胞の受容体に結合するよう細胞に特異性を与えるウィルス外被糖蛋白質を操作することにより標的細胞を特異的に感染可能なウィルスを製造することができる。よって、本発明者らはGaLV外被糖蛋白質の細胞特異性を決定して特異的細胞受容体と結合できる表面サブユニット(surface subunit,SU)領域へTag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体Tag−72pS1を融合させてキメラリガンドを製造した。単鎖抗体に融合された外被糖蛋白質を発現するレトロウィルスは標的細胞に特異的に結合して効果的に治療遺伝子を伝達することができる。
【0015】
GaLV外被糖蛋白質と類似した構造を持つMuLV外被糖蛋白質の場合、外被糖蛋白質に導入された点突然変異(point mutation)、挿入突然変異(insertion mutation)或いは欠失突然変異(deletion mutation)が構造的変化を引き起こす非正常的な機能を持つウィルス外被糖蛋白質を生産し、それによりウィルスの感染性が低下するようになると報告されたことがある(Russell,S.J.et al.,Nucleic Acids Res.21:1081−1085,1993;Somia,N.V.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:7570−7574,1995;Ager,S.et al.,Hum.Gene Ther.7:2157−2164,1996;Marin,M.et al.,J.Virol.70:2957−2962,1996;Schnierle,B.S.et al.,Gene Ther.3:334−342,1996;Chris A.Benedict.et al.,Human Gene Therapy 10:545−557,1999;Mariana Marin.et al.,Journal of Virology 70:2957−2962,1996;Te−Hua Tearina C.H.and Ralph Dornburg,Journal of Virology 71:720−725,1997)。つまり、外来ペプチドが外被糖蛋白質に挿入されたり或いは外被糖蛋白質の特定部分が欠失されたとき、感染性が顕著に低下したウィルスが生産される。従って、レトロウィルスの外被糖蛋白質にScFvのような外来リガンドが挿入される時、外被糖蛋白質の構造と機能の間の相関関係を細心に考慮しなければならない。本発明のキメラリガンドは細胞特異性と細胞表面に対する結合を決める外被糖蛋白質の種々なSU領域の中で選ばれた可変領域B(variable region B:VRB)内に単鎖抗体(ScFv)を挿入して標的細胞に特異的に感染するように設計された。
【0016】
好ましい実施例として、本発明者らはGaLV外被糖蛋白質の可変領域B部位であるATG開始コドンから翻訳された最初のメチオニンから199番目及び200番目アミノ酸残基の間にTag−72表面抗原に特異的結合する単鎖抗体Tag−72pS1を挿入して製造した融合キメラリガンド;及び前記キメラリガンドを含む発現ベクターを製造する方法を開発した。本発明に使われたGaLV外被糖蛋白質はR−ペプチドを持つSEATOタイプであり配列番号7に記載の塩基配列(NCBI Accession No.AAC96083)を有する。また、Tag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体Tag−72pS1は配列番号8に記載の塩基配列を有する。FvGEL199と命名された本発明のキメラリガンドは配列番号10に記載の塩基配列を有し、これは配列番号11に記載の融合ポリペプチドをコードし、単鎖抗体Tag−72pS1がGlySerの5つのアミノ酸で構成されたリンカーによりGaLV外被糖蛋白質に連結される。
このように製造された単鎖抗体GaLV外被糖蛋白質(ScFv−GaLV Env GP)キメラリガンドをその発現転写が促進されるHCMVプロモーターを有する骨格ベクターpHYKEF1(Kim et al.,J.Biotechnol,93:183,2002)に挿入して発現ベクターpHEFvGEL199を製造した。前記発現ベクターは単鎖抗体Tag−72pS1がGaLV外被糖蛋白質SU部分の199番目及び200番目アミノ酸残基の間に挿入されて形成された956個のアミノ酸で構成された融合ポリペプチドを発現する。
【0017】
本発明の好ましい実施例により、結腸菌DH5αを発現ベクターpHEFvGEL199で形質転換したベクターをDH5α/pHEFvGEL199と命名した結腸菌形質転換体を得て、これを特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づき、寄託番号KCCM−10596で韓国生命工学院(KRIBB)遺伝子銀行(KCTC)(アドレス:韓国生命工学研究院,#52,オ・ウンドン、ユ・ソング、大田広域市、305−333,韓国)に2004年2月13日付で寄託した。
【0018】
本発明はまた前記キメラリガンドをコードする遺伝子を含む組換レトロウィルスベクターが形質導入されてレトロウィルスを生産するパッケージ細胞株を提供する。
【0019】
本発明で使用できるパッケージ細胞株としては、Gag−Pol蛋白質は発現するが動物細胞株へのウィルス感染を媒介できる如何なるウィルス外被糖蛋白質も含まないパッケージ細胞株、例えばGP293細胞株(Clontech)であるのが好ましい。好ましくは、レトロウィルス形質導入方法は、カルシウム燐酸塩共沈殿法(calcium phosphate coprecipitation;Sambrook et al.,Molecular Cloning,2nd ed.,1989)及びリポフェクトアミン方法(Invitrogen社、米国)のように当分野で公知の通常的な方法を使うことができる。形質導入された細胞株はG418のような抗生剤を含む適切な選択培地で培養してコロニー選別することができる。本発明の好ましい実施例では、組換レトロウィルスベクターpHEFvGEL199をパッケージ細胞株GP293細胞に形質導入し、形質導入された細胞から高い力価で組換レトロウィルスを生産できるパッケージ細胞株GP293HFvGEL199を選別した。
【0020】
このように選別されたパッケージ細胞株は、標的細胞に特異的な方式で人間癌細胞内に効果的に導入されて前記キメラリガンドを効率的に発現させることができるため、癌の成長と転移を効果的に抑制することができる。
【0021】
従って、さらに本発明は、有効量の本発明によるパッケージ細胞株又はキメラリガンド及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学組成物を提供する。
【0022】
本発明の薬学組成物は通常的な方法を用いて製剤化することができる。剤型の製造において、この有効成分は担体と混合または希釈するのが好ましい。好ましい担体・賦形剤又は希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアガム、アルギン塩酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微細結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアリン酸及び鉱油を含む。前記剤型は追加的に充填剤、抗凝集剤、光沢剤、湿潤剤、芳香剤、乳化剤、保存剤及びその他を含む。本発明の組成物は患者に投与された後に活性成の迅速的且つ持続的な、または遅延された放出を提供するための当分野で公知の方法を用いて剤型化することができる。
【0023】
本発明の薬学剤型は筋肉内注射で投与することができる。好ましくは、本発明の組成物は等張液又は懸濁液である。
【0024】
人間(患者)を治療するために、有効成分として本発明のパッケージ細胞株の通常的投与量は10〜10細胞数/kg体重、好ましくは10〜10細胞数/kg体重の範囲で1日1回〜数回投与することができる。しかし、活性成分の実際投与量は治療条件・投与経路・患者の年齢・性別及び体重、癌の種類及び重症度などの様々な関連因子に照らし合わせて決定するべきと理解しなければならず、よって前記投与量は如何なる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
実施例1:ScFv−GaLV外被糖蛋白質キメラリガンドを発現する組換レトロウィルスベクターの製造
<1−1> GaLV外被糖蛋白質の構造及び機能分析
Tag−72表面抗原に対し特異的な単鎖抗体Tag−72pS1とGaLV外被糖蛋白質(Env GP)の融合ポリペプチド形態のキメラリガンドを次のように製造した。
【0026】
MuLV又はHIVのようなレトロウィルスの外被糖蛋白質やインフルエンザAウィルス(influenza A virus)の血球凝集素(haemagglutinin,HA)などとは異なり、GaLV外被糖蛋白質の3次構造及び機能に対しては殆ど知られていない。従って、単鎖抗体が挿入されるGaLV外被糖蛋白質の適切な部位を選別するためにGaLV外被糖蛋白質とその他レトロウィルス外被糖蛋白質の間の構造的且つ機能的相互関係分析を行った。本発明者らはGaLV外被糖蛋白質とその他レトロウィルス外被糖蛋白質を対象にPfarm分析(Protein Families Database of Alignments and HMMs)を利用して相同性(homology)を行った。その結果、これらのレトロウィルスの外被糖蛋白質中幾つかが膜貫通(transmembrane,TM)カルボキシル末端ドメイン(C−末端)に位置するR−ペプチドだけでなく可変領域A(VRA)、可変領域B(VRB)、可変領域C(VRC)及びプロリンリッチ領域(PRR)を含むGaLV外被糖蛋白質において特徴的な表面サブユニット(SU)構造を有することが明らかになった。また、哺乳動物タイプ−CレトロウィルスFr−MuLV、γレトロウィルスGaLV、FLV及びMuLVの外被糖蛋白質の間の配列相同性を様々なコンピュータプログラムを利用して分析した。その結果、特異的受容体結合部位として知られていた受容体結合ドメイン(RBD)、機能が知られていないプロリンリッチ領域(PRR)及びC−末端部位以外の部位が非常に高い配列の相同性と同一性(identity)を現すことが確認された(表1及び図1)。
【表1】

【0027】
このような相同性分析結果に基づいてFr−MuLV外被糖蛋白質の公知の3次構造(NCBI PDB 登載番号:1AOL)に関するGaLV外被糖蛋白質の2次構造分析を通じてTag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体を挿入するためのGaLV外被糖蛋白質の適切な位置を調査した。アミノ酸配列で保存された部位は進化的観点から見て構造的及び機能的に重要な部位と見なされるため、挿入位置の最初の考慮対象は突然変異、自然選択、適応又は進化の過程で柔軟性を有する高度の可変領域である。従って、種々なGaLV外被糖蛋白の部分型と多様な哺乳動物タイプ−Cレトロウィルス外被糖蛋白質のアミノ酸整列(alignment)分析に基づいてGaLV外被糖蛋白質の高度可変領域を決定した(図2)。次に、前記外被糖蛋白質の構造的及び機能的変化を最少化できる位置を決めるために、親水性(hydropathy)、表面可能性(surface probability)、抗原指数(antigenic index)、α−フェリックス、β−シート、コイル構造、変換プロット(turn plot)、変換頻度及び柔軟性(flexibility)の観点からGaLV Env糖蛋白質の2次構造分析を行った。また、GaLV Env糖蛋白質の2次構造をFr−MuLV外被糖蛋白質の公知の3次構造の対応部分としてGaLV Env糖蛋白質の仮想的3次構造の適切な挿入位置を予測するためにFr−MuLV糖蛋白質の2次構造と比較した。その結果、標的細胞受容体に対するGaLV外被糖蛋白質の特異的認識と結合に関与する受容体結合ドメイン(receptor binding domain;RBD)である可変領域B(VRB)がTag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体の挿入するための適切な部位として選ばれた。
【0028】
図3はレトロウィルス外被糖蛋白質の2次構造を示し、GaLV外被糖蛋白質内への単鎖抗体糖蛋白質の挿入位置は可変領域B内199番目及び200番目アミノ酸残基の間は赤色実線で、アミノ酸配列上の位置は数字で示しており、数字で示されたアミノ酸配列は最初のアミノ酸でメチオニンを持つシグナルペプチドを含む。

<1−2>単鎖抗体及びレトロウィルス外被糖蛋白質の融合キメラリガンドの製造
GaLV外被糖蛋白質とTag−72表面抗原に特異的な単鎖抗体Tag−72pS1の融合ポリペプチド形態であるキメラリガンドをヒュースタンなど(Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879−5883,1988)の方法を用いてAKA人間化抗体(韓国特許第318761号)の重鎖及び軽鎖可変領域から製造した。このように製造された単鎖抗体をpCANTAB5Eベクターの制限酵素SfiI/NotI部位に挿入してベクターpCANTAB−3E8ScFvPreS1を製作した。野生型GaLV外被糖蛋白質遺伝子(SEATO)(NCBI登載番号AAC96083)をベクターpHYKEF−1(Kim et al.,J.Biotechnol,93:183,2002)にクローニングしてベクターpHEGELを製作した。このように製作されたpCANTAB−3E8ScFvPreS1及びpHEGELベクターをPCRで増幅してキメラリガンドを製造した。
【0029】
ベクターpHEGEL内にクローニングされたGaLV外被糖蛋白質遺伝子はR−ペプチドを持つSEATOタイプ(NCBI 登載番号AAC96083)であり配列番号:7に記載される塩基配列を有する。Tag−72表面抗体に特異的な単鎖抗体Tag−72pS1をコードする遺伝子は配列番号8に記載される塩基配列を有するが、前記単鎖抗体Tag−72pS1は重鎖と軽鎖の可変領域であるVとVで構成されたFv(fragment variable)が(GlySer)のアミノ酸15つを含むリンカーにより軽鎖可変領域Vのアミノ末端(amino−termnal)によって連結された重鎖可変領域Vのカルボキシ末端(carboxy−terminal)を含む単鎖の形態として発現される。配列番号:9に記載されるPreS1エピトープは単鎖抗体のC−末端部位に標識された。最初のメチオニンから199番目・200番目アミノ酸残基の間に単鎖抗体Tag−72pS1を挿入させてなるキメラリガンドを製造するために、次のようなポリメラーゼ酵素連鎖反応を実施した。
【0030】
ベクターpHEGELを鋳型として配列番号:1のEnv Fプライマーと配列番号:2の597LNプライマーを利用してPCRを行い、680bpのPCR産物を増幅させた。ベクターpHEGELを鋳型として配列番号3のLC597プライマーと配列番号:4のSpike R2プライマーを利用してPCRを行い、1,500bpのPCR産物を増幅させた。ベクターpCANTAB−3E8ScFvPreS1を鋳型として配列番号:5のLnkNScFvプライマー配列番号6のScFvLnkCプライマーを利用してPCRを行い、820bpのPCR産物を増幅させた。このように増幅された3つのPCR産物を全て混合してから、これを鋳型として配列番号1のEnv Fプライマーと配列番号:4のSpike R2プライマーを利用してPCRを行い、2,930bpのPCR産物を増幅させた。PCR反応溶液は鋳型DNA 200ng、ポリメラーゼ5単位、PCR緩衝溶液10μl,dNTP 0.2mM及び各プライマー50pmolずつ混合してから最終体積を100μlにした。前記PCR緩衝溶液は200mM Tris−HCl、100mM KCl、100mM(NHSO、20mM MgSO、1%トリトンX−100及び1 mg/mlアセチル化BSA(pH8.8)を含む。前記PCR反応に使用したポリメラーゼはPfu DNAポリメラーゼ(Bioneer社、韓国)又はTakara Ex Taq重合酵素(TaKaRa社、日本)を使用した。該PCR反応条件は94℃で4分間前変性させてから94℃で1分(変性)、55℃で1分(アニーリング)及び72℃で3分(延長)の増幅反応を30回繰り返した後、72℃で10分間最終増幅した。
【0031】
前記方法で増幅されたScFv−GaLV外被糖蛋白質キメラリガンド遺伝子をコードする2,930 bpのPCR切片を制限酵素BamHIとXbaIで切断した。前記切片を高効率遺伝子発現ベクターであるpHYKEF1の同該制限酵素部位に挿入してScFv−GaLV外被糖蛋白質キメラリガンド遺伝子を発現する組換ベクターpHEFvGEL199を製造したが、ベクターpHYKEF1で外来遺伝子の発現はHCMVプロモーターにより調節され、その転写はEF1αイントロンによって活性化する(Kim et al.,J.Biotechnol,93:183,2002)。対照群として野生型GaLV(SEATO)外被糖蛋白質遺伝子を前記骨格ベクターに挿入して発現ベクターpHEGELを製造した。塩基配列分析によって本発明のキメラリガンドが発現ベクターpHEFvGEL199に挿入されたことを確認した。前記ScFv−GaLV外被糖蛋白質キメラリガンドをFvGEL199と命名した。
【0032】
前記で製造された本発明のキメラリガンドは配列番号11に記載されるペプチドをコードする配列番号10に記載される塩基配列を有する。図4はScFv−GaLV外被糖蛋白質融合キメラリガンドFvGEL199の模式図を現したものである。レトロウィルスベクターpHEGELは685個のアミノ酸で構成された野生型GaLV外被糖蛋白質を発現する。また、組換レトロウィルスベクターpHEFvGEL199/pMEFvGEL199はGaLV外被糖蛋白質のSU地域内199番目及び200番目アミノ酸残基の間に単鎖抗体Tag−72pS1を挿入させて製造したアミノ酸956個で構成された融合ポリペプチドを発現する。本発明の融合キメラリガンドで単鎖抗体Tag−72pS1はGlySerの5個のアミノ酸を含むリンカーによりGaLVの外被糖蛋白質に連結されている。
【0033】
<1−3> ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドの発現
本発明のScFv−GaLV Env糖蛋白質キメラリガンドを発現するレトロウィルスを生産するためには、これを前記宿主細胞内でキメラリガンドの形態で発現させ;発現されたキメラリガンドがゴルジ装置内で転写後変形(posttranslational modification)、三量化(trimerization)及びSU/TM切断され;細胞表面に移動してからウィルスパッケージングの間にウィルス外被膜に分布しなければならない。それから、前記ウィルス外被上に分布したキメラリガンドが認識されて細胞内に侵入するためにはウィルスパッケージが標的細胞の特定受容体に結合し、それから前記ウィルス粒子が膜間(inter−membrane)融合を通じて細胞質に流入する。従って、前記実施例<1−2>で製造された組換レトロウィルスベクターpHEFvGEL199がScFv−GaLV Env糖蛋白質キメラリガンドを発現するか否かを下記のように調査した。
【0034】
人間腎臓上皮細胞(human kidney epithelial cells)である293或いは293T細胞を形質感染一日前に6−ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの濃度で分株し、リポフェクトアミン・プラス(Invitrogen社、米国)を利用して製造社の指針通り組換発現ベクターpHEFvGEL199を形質感染させた。その際キメラリガンドを発現させないpHEGELベクターに形質導入された細胞を対照群として使用した。前記形質導入細胞を10% ウシ胎児血清(FBS,HyClone)、100 U/mlのペニシリンG及び0.1 mg/ml ストレプトマイシンが添加されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium,Gibco BRL)培地に接種してから37℃で3〜6時間間培養した。前記細胞を新鮮な培地に移してさらに2日間培養した後、培養された細胞を回収し遠心分離して細胞ペレットを分離した。前記細胞ペレットを100μlの燐酸塩緩衝溶液(PBS)に懸濁し、同量のSDS−PAGE 試料緩衝溶液(4%SDS,20%グリシン、10%β−メルカプトエタノール、0.05%ブロモフェノールブルー、125mM Tris−HCl,pH6.8)を前記懸濁液に添加した。この試料を電気泳動させてからウェスタンブロット分析を行って融合キメラリガンドの発現を確認した。
【0035】
SDS−PAGEはLaemmli(Laemmli,U.K.,Nature 277:680−685,1970)方法で行った。電気泳動されたゲル上に展開された融合キメラリガンドを伝達緩衝溶液(Transfer buffer,10 mM グリシン,20% エタノール、0.1% SDS,100 mM Tris−HCl)を用いて80 Vで3時間電流を流し、PVDF膜に移し、ウェスタンブロット分析をトービン(Towbin,H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:4350−4354,1979)方法で行った。ブロット膜をTBST緩衝溶液(150mM NaCl,0.1% ツイン20,20mM Tris−HCl,pH7.4)で5分間洗浄してから5%(w/v)脱脂乳粉末(non−fat milk powder)が添加されたTBST緩衝溶液(TTM−5%)に4℃で一晩放置した。ScFv−GaLV Env糖蛋白質融合キメラリガンドFvGEL199の発現を確認するために、ScFVのC−末端部位に標識された配列番号9のPreS1に対するマウスモノクローナル抗体(mouse monoclonal antibody raised against PreS1 epitope;Aprogen)を1次抗体として使用した。前記1次抗体をTTM−5%緩衝溶液に1:1,000〜1:4,000の割合で希釈し、これをPVDF膜と常温で3時間間反応させた。前記膜をTTM−0.5%緩衝溶液を利用して10分間隔で3回洗浄してから、TTM−5%緩衝溶液で1:1,000〜1:2,000でHRP−接合塩素抗体抗マウスIgG(HRP−conjugated goat antibody anti mouse IgG)を希釈して製造した2次抗体を前記膜と常温で3時間間反応させた。反応が終わると、再度膜をTTM−0.5%緩衝溶液で10分間隔で5回洗浄してからTBS緩衝溶液(150mM NaCl,20mM Tris−HCl,pH7.4)で5分間洗浄し、化学発光システム(chemiluminescence system,SantaCruz)とKodakバイオマックスMRフィルム(Kodak Biomax MR film)を用いて製造社の指針通り免疫ブロット分析(immunoblot analysis)を行った。蛋白質の分子量は前もって染色された蛋白質マーカー(prestained protein marker,Bio−Rad)を電気泳動時に使用して測定した。
【0036】
その結果、本発明の融合キメラリガンドFvGEL199はシグナルペプチドとTM部位が切断された後に718個のアミノ酸を含むペプチドの分子量に相応する位置から検出される免疫反応により引き起こされる帯域を示したが(図5のLane2)、pHEGELベクターに対しては如何なる帯域も検出されなかった(図5のLane1)。これにより、本発明の組換発現ベクターpHEFvGEL199で形質導入された細胞が融合キメラリガンドScFv−GaLV Env糖蛋白質を発現することが分かる。
【0037】
実施例2:ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現するレトロウィルスの形質導入
<2−1> ScFv−GaLV Env GPキメラリガンド発現レトロウィルスの製造
モロニーマウス白血病ウィルス(Moloney murine leukemia virus;Mo−MuLV)のGag−Pol蛋白質を発現するGP293細胞(Clontech社、米国)をレトロウィルスの生産のために使用した。GP293細胞を10% FBS(HyClone)、100U/mlのペニシリン G及び0.1mg/mlストレプトマイシンが添加されたDMEM培地に接種し、37℃、5%CO 培養機で培養した。培養されたGP293細胞に、本発明の融合キメラリガンドを発現する組換レトロウィルスベクターpHEFvGEL199と、パッケージシグナル(packaging signal)を含み、LTRプロモーターによってβ−ガラクトシダーゼ(β−galactosidase)遺伝子を発現する組換レトロウィルスベクターpMFG/LacZ/puro(Oh et al.,Mol.Cells 11:192−197,2001)とをリポフェクトアミン方法(Invitrogen 社、米国)を用いて形質導入した。4時間後、前記細胞を2% FBSが添加された新鮮なDMEM培地に移してから37℃でさらに2日間培養して細胞及びウィルスを含む培養液を得た。前記培養液を0.45μmフィルターに通して細胞滓を除去することによって無細胞ウィルス培養液を得た。この無細胞ウィルス培養液を12時間8,000rpm、4℃の条件で遠心分離(Beckman sw55 rotor)して上澄み液を除去してから残余ウィルスペレットを回収した。このウィルスペレットをSDS−PAGE 試料緩衝溶液に懸濁してから電気泳動とウェスタンブロット分析を行ってキメラリガンドの発現を確認した(図6)。SDS−PAGE及びウェスタンブロット分析は前記実施例<1−3>と同じ方法で行った。この際、1次抗体としてはマウスモノクローナル抗体anti−PreS1を使用し、2次抗体としては塩素IgG anti−マウスIgGを使用した。
その結果、本発明の融合キメラリガンドFvGEL199はシグナルペプチドとTM部位が欠失されたアミノ酸718個の分子量を持つペプチドに相応する位置での抗原−抗体免疫反応により引き起こされる帯域を示した(図6のLane 2)。この結果、本発明のScFv−GaLV Env GP 融合キメラリガンドを含む組換レトロウィルスの生産が確認された。
【0038】
実施例3:ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現するレトロウィルスの標的細胞特異的感染
<3−1> Tag−72表面抗原 発現癌細胞株の確認
Tag−72表面抗原関連細胞株を利用したマウス転移モデルを構築するため、多様な人間癌細胞株を対象にTag−72表面抗原の発現をFACS分析(fluorescence-activated cell sorting analysis)及び免疫組織化学分析(immunohistochemical analysis)で調査した。
【0039】
先ず、人間結腸癌細胞株LS174T(ATCC No.CL−1880)及びWiDr(ATCC No.CCL−218)、人間乳癌細胞株MCF7(KCLB No.30022)、MDA−MB231(ATCC HTB−26)及びMDA−MB435(ATCC HTB−129)を対象にFACS分析を行った。多様な人間癌細胞株からTag−72表面抗原の発現を確認するため、抗Tag−72モノクローナル抗体CC49を1次抗体として使った(Lee et al., Mol. Immunol., 36: 61-71, 1999)。各癌細胞株(10細胞/ml)を抗Tag−72 1次抗体と4℃で30分間反応させた。冷却PBA溶液で前記細胞を3回洗浄してからFITCが結合された抗−マウスIgG2次抗体(Jackson Immuno Research社、米国)と4℃で30分間反応させた。得られた細胞を冷却PBA溶液で3回洗浄してからFacscanで分析した(図7のA)。その結果、人間結腸癌細胞株LS174T及び人間乳癌細胞株MCF7はTag−72表面抗原に対して陽性反応を示した反面、人間結腸癌細胞株WiDr、人間乳癌細胞株MDA−MB231及びMDA−MB435はTag−72表面抗原に対して陰性反応を示した。
【0040】
また、免疫組織化学分析を利用してTag−72表面抗原の発現を確認した。免疫組織化学分析はDAKO LSAB2及びアルカリホスファターゼ(alkaine phosphatase,#K674)を利用して行った。PBSで1:1,000比率に希釈された抗Tag−72抗体であるAKA(韓国特許第318761号)を1次抗体として使用した。前記抗Tag−72抗体はTag−72表面抗原に対する人間化マウスモノクローナル抗体を安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO;韓国特許公開第2003−13633号)細胞の培養上澄み液をハイトラップ蛋白質Aコラム(Hytrap Protein A column, Amersham)を利用して精製して用意した。人間IgG H&Lに対するbiotin−ヤギポリクローナル抗体(ab6857−1,Aabcam)をPBSで1:1,000比率希釈し、これを2次抗体として使用した。また、背景染色防止のためにラヴァミソル(lavamisole, endogeous alkaline phosphatase inhibitor, ×3021)溶液を使用した。
【0041】
その結果、乳癌細胞株MCF−7では10〜20%の細胞が染色された反面、結腸癌細胞株LS174Tでは80〜90% 以上の細胞が染色された。これはTag−72表面抗原が細胞表面に分布されていることを意味する。このような結果から、結腸癌細胞株LS174T及び乳癌細胞株MCF−7はTag−72 陽性細胞株であり結腸癌細胞株WiDr及び乳癌細胞株MDA−MB435とMDA−MB231はTag−72 陰性細胞株であることが分かる(図7のB)。
【0042】
<3−2> 標的細胞特異的感染の確認
前記実施例<3−1>で確認されたTag−72表面抗原陽性或いは陰性の人間癌細胞株をScFv−GaLV EnV GPキメラリガンド及びLacZを発現する組換レトロウィルスに感染させた。二日後、前記組換レトロウィルスの標的細胞特異的感染を確認するためにLacZ遺伝子の発現を調査した。
【0043】
具体的にパッケージ細胞株GP293細胞を6−ウェルプレートに3×10細胞/ウェルの濃度で形質導入一日前に分株した。0.5μgずつ発現ベクターpHEGEL(野生型GaLV Env GP)とpHEFvGEL199(ScFv−GaLV EnvGPキメラリガンド)をそれぞれpMFG/LacZ/puro 0.5μgと混合し、リポフェクトアミンプラス(Invitrogen社、米国)を利用して前記プレートに分株した細胞に形質導入させた。前記ウェルプレートを二日間37℃、5%CO動物細胞培養機で培養してレトロウィルスを含む培養上澄み液を得た。12−ウェルプレートに293、LS174T、MCF−7、MDA−MB231、MKN−75及び標的細胞を5×10細胞/ウェル濃度で分株し、24時間放置した。前記標的細胞を先程製造した各ウィルス上澄み液で8 μg/ml/ウェル濃度でポリブレン(polybrene,Sigma)を利用して感染させた。感染させてから4時間経過後に感染された細胞を新しい培地に移し、37℃、5%CO 培養機で48時間追加培養した。培養が終わってから培養液を除去し、細胞ペレットを細胞固定液(1%ホルムアルデヒド、0.2%グルタルアルデヒド)で固定して常温で10分間放置した。これをPBS溶液で3回洗浄し、X−gal(PBS,0.2 M フェロシアン化カリウム[potassium ferrocyanide],0.2 M フェロシアン化カリウム[potassium ferricyanide],2.0M MgCl,40mg/ml X−gal)を用いて37℃で一晩間染色してLacZ遺伝子の発現を調査した。
【表2】

【0044】
前記表2及び図8に示したように、野生型GaLV Env GP 発現ベクターpHEGELを利用したLacZ遺伝子の形質導入の結果は、293細胞株の形質導入効率は2×10;癌細胞株であるMDA−MB435、MDA−MB231及びMCF−7の形質導入効率は0.5〜1.5×10の範囲;およびLS174T細胞株の形質導入効率は6×10であったことを示した。ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する組換レトロウィルスベクターpHEFvGEL199を利用したLacZ遺伝子の形質導入の結果、LacZ遺伝子は、293細胞株と共にTag−72陽性細胞株であるMCF−7及びLS174T細胞株から発現された反面、Tag−72陰性細胞株であるMDA−MB435及びMDA−MB231細胞株はLacZ遺伝子を発現しなかった。特に、293細胞株がTag−72陽性であると確認されたことはないが、本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドで感染された293細胞株がLacZを発現することは他の細胞株に比べ非常に高い感染効率による非特異的感染であるからである。前記結果から、本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する組換ベクターpHEFvGEL199はTag−72抗原を発現する細胞に特異的に結合して標的細胞にLacZ遺伝子(β−ガラクトシダーゼ)を効果的に伝達することを確認した。
【0045】
MLVを含む他のレトロウィルスベクターの場合、キメラリガンドが野生型Envよりも低いウィルス力価を示すと報告されている。例えば、同種指向性外被(ecotropic Env)や両指向性外被(amphotropic Env)は、標的細胞によって10〜10 範囲のウィルス力価を見せる反面、大部分のScFv−Env GPキメラリガンドは、標的細胞受容体によって多少の差はあるが、10以下のウィルス力価を示し、これはScFv−Env GPキメラリガンドのウィルス力価が野生型Envよりも10〜10倍ほど低かった(Chris A.Benedict.et al.,Human Gene Therapy 10:545−557,1999;Mariana Marin.et al.,Journal of Virology 70:2957−2962,1996;Te−Hua Tearina C.H.and Ralph Dornburg,Journal of Virology 71:720−725,1997)。このような現象は外被糖蛋白質に挿入された外来リガンドによりレトロウィルスの元の構造が変形され、ウィルスの感染性低下を引き起こしたためである。一般的に、外被糖蛋白質の表面サブユニット(SU)が特異的受容体を認識し結合する時、融合機能を持つ膜貫通(TM)部位の構造的な変化(conformational change)が誘導されて標的細胞がウィルスによって感染される。その際、外来リガンドの挿入は元の構造の変形を引き起こし、SUからTMへの信号伝達を破壊して、構造的な変化を誘導することができなくなる。その結果、ウィルスが宿主細胞に結合して細胞内部に流入されても膜融合が発生せずウィルス粒子が細胞質内に導入されなくなり、これは結合後遮断(postbinding block)の結果であって、染性低下の主な原因である。前記結果から本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドFvGEL199が今まで報告された他のレトロウィルスベクターよりも高い形質導入効率で標的細胞を特異的に感染させることができ、よって標的細胞に治療遺伝子を効果的に伝達できることが分かる。
【0046】
実施例4:ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する癌細胞標的性パッケージ細胞株の製造
本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する組換発現ベクターpHEFvGEL199をGag−Pol蛋白質を発現するパッケージ細胞株GP293細胞にリポフェクトアミンプラス(Invitrogen 社、米国)を使用して形質感染させた。形質感染された細胞を400 μg/mlのG418(neomycine)で14日間処理してコロニー(colony)を10個選別してから各コロニーを適切な培地で増殖させた。選別されたコロニーにLacZ レポーター遺伝子(β−ガラクトシダーゼ)を発現するレトロウィルス転移ベクターpMFG/LacZ/puro(Oh et al.,Mol.Cells 11:192−197,2001)1 μgを形質導入させ、それから48時間後に各ウィルスを収穫した。Tag−72 陽性細胞株であるMCF−7(KCLB 30022)を各ウィルスに感染させた後、ウィルス形質導入効率をLacZ遺伝子の発現を調査して確認した。その中で最も形質導入効率が高く現れたウィルスを生産するコロニーを選別し、それを本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを持続的に発現するパッケージ細胞株GP293HEFvGEL199と命名した。また、野生型GaLV Envを発現するpHEGELベクターもまた前記に記述された方法と同様に標的細胞に形質導入させ、それからクローンを選別して野生型GaLV Envを発現するパッケージ細胞株GP293HEGELを得た。図9は前記方法で製作されたGP293HEFvGEL199又はGP293HEGELパッケージ細胞株をLacZ 発現レトロウィルス転移ベクターと共に形質導入して得たウィルスで各標的細胞を感染させた結果である。
【0047】
実施例5:ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現するレトロウィルス生産細胞株の製造
本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する組換発現ベクターpHEFvGEL199をレトロウィルス転移ベクターpMFG/LacZ/puro(0.5 μg)と共にパッケージ細胞株GP293細胞(3×10細胞/6−ウェル)にリポフェクトアミン(Invitrogen,USA)を使用して形質導入させた。形質導入された細胞を400 μg/mlの G418(neomycine)と0.5 μg/mlのピュロマイシン(puromicin)で連続2週間処理し、それからコロニーを8個選別した。選別されたコロニーを適切な培地で増殖させてウィルス含有培養液を得てからMCF−7細胞をこの培養液で感染させた。その結果、最高のウィルス力価を現すコロニーを選別培養して本発明のScFv−GaLV Envキメラリガンドがその外膜に分布されたLacZ遺伝子発現レトロウィルスを持続的に生産できるウィルス生産細胞株GP293HEFvGEL199/lacZを構築した。野生型GaLV Envを発現するpHEGELベクターも前記と同様な方法で標的細胞に形質導入させ、ここから形質導入されたコロニーを選別して野生型GaLV Envを持つ LacZ遺伝子発現レトロウィルスを持続的に生産できるウィルス生産細胞株GP293HEGEL/lacZを得た。図10は前記で製作したGP293HEFvGEL199/lacZ及びGP293HEGEL/lacZウィルス生産細胞株を培養して得られたウィルスで各標的細胞を感染させた結果である。
【0048】
実施例6:Tag−72抗原関連細胞株を利用したマウス転移モデルの構築
前記実施例<3−1>で多様な人間癌細胞株を対象としてTag−72表面抗原の発現をFACSと免疫組織化学分析で調査した結果、人間乳癌細胞株MCF−7及び結腸癌細胞株LS174TはTag−72 陽性であり、人間乳癌細胞株MDA−MB231・MDA−MB435と結腸癌細胞株WIDRはTag−72 陰性であると確認された。MDA−MB435細胞株がTag−72 陰性細胞株の中でMDA−MB231細胞株よりも相対的に高い肺転移能力を見せたため(Lee & Welch,Cancer Research 57:2384,1997)、MDA−MB435細胞株を癌転移モデルの構築に使用した。また、MCF−7乳癌細胞株(Tag−72 陽性)は肺への転移を殆ど起こさないので生体内実験に使うことはできないが、LS174T結腸癌細胞株では腎臓注射(intrasplenic injection)による肝転移及び静脈注射(intravenous injection)による肺転移が可能である。従って、LS174T細胞株をMDA−MB435細胞株と共に癌転移動物モデルの構築に使用した。
【0049】
<6−1> 静脈注射を利用した結腸癌転移モデルの確立
Tag−72陽性であるLS174T結腸癌細胞株とTag−72 陰性であるMDA−MB435乳癌細胞株を培養してから前記細胞をトリプシン−EDTAで処理し、遠心分離で収穫して無血清培地で2回洗浄した。その細胞を再度PBSで2回洗浄しPBS内1×10細胞/100 μlの濃度で6週齢の雌Balb/cヌードマウスの尻尾静脈に注射した。6週間マウスの状態を観察し、マウスから肺を摘出して4% ホルマリン溶液で固定してから肺に形成された転移塊の数を調査した。静脈注射を通じた肺転移能を調査した結果、LS174T結腸癌細胞株においては平均7.6個の転移塊が形成され、MDA−MB435乳癌細胞株においては平均12.2個の転移塊が形成されたことが確認できた(図11a及び11b)。従って、人間結腸癌細胞株LS174Tの肺転移モデルをTag−72抗原特異的癌細胞的中遺伝子治療剤の効果を調査するための動物テストモデルとして用いた。
【0050】
<6−2> ScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現する組換レトロウィルスベクターを利用した生体内形質導入効率の検証
パッケージ細胞株であるGP293細胞を6−ウェルプレートに1ウェル当たり3×10細胞に分株し、このウェルプレートを24時間放置した後、前記細胞をリポフェクトアミンプラスを利用してScFv−GaLV Env GPキメラリガンドを発現するレトロウィルスベクターpHEFvGEL199とβ−ガラクトシダーゼを発現するレトロウィルス転移ベクターpMFG/LacZ/puroで形質導入させた。前記ウェルプレートを2日間37℃、5%CO動物細胞培養機で培養してウィルス生産細胞株を得た。培養されたLS174T細胞(1×10細胞/50μl in PBS)とMDA−MB435細胞(1×10細胞/50μl in PBS)を6週齢の雌Balb/cヌードマウスの尻尾静脈(tail vein)に注射した後、直ちに前記で得られたウィルス生産細胞株(1×10細胞/50μl in PBS)を前記と同様な方法で注射した。それから3日間隔でウィルス生産細胞株(1×10細胞in 100μlのPBS)を6週間各マウスに静脈注射した。6週経過後マウスを犠牲して肺を摘出してから固定液に浸けて組織を固定し、X−gal染色を行って生体内での形質導入効率を調査した。
その結果、Tag−72 陽性細胞株であるLS174Tの静脈注射により肺に転移塊が形成された場合、本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドにより媒介されたレポーター遺伝子LacZの形質導入は効率37.8%程度で非常に効果的であり、Tag−72 特異的であることを確認した。反面、Tag−72 陰性細胞株であるMDA−MB435細胞株の静脈注射により形成された転移塊は9.77%のみ染色された。その結果から、本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンド発現ベクターを利用した癌細胞標的遺伝子伝達システムがTag−72表面抗原に非常に特異的に且つ標的細胞へ効率的に形質導入されることが確認された。図12aは本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドFvGEL199発現レトロウィルスベクターを利用したLacZ(β−ガラクトシダーゼ)レポーター遺伝子の導入及び発現により染色された肺転移塊を解剖顕微鏡で撮影した写真である。また、下記表3は各マウスから摘出した肺で発見された転移塊の数と染色された転移塊数を示したものであり、図12bは表3の結果をパーセンテージ(%)に換算して示したグラフである。
【表3】

【0051】
本発明を上記の具体的な実施例に関し記述したが、添付された特許請求範囲において定義された本発明の範囲内当分野の熟練者が本発明を多様に変形及び変化させられることを理解しなければならない。
【0052】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1はGaLV外被糖蛋白質(GaLV Env GP)と類似した哺乳動物タイプ−Cレトロウィルスの外被糖蛋白質構造を示す図である。a:シグナルペプチダーゼ切断部位、 b:SU/TM切断部位、c:R−ペプチド切断部位、 SP:シグナルペプチド、VRA:可変領域A、 VRB;可変領域B、VRC:可変領域C、 RBD:受容体結合ドメイン、PRR:プロリンリッチ領域、 CT:SUのC−末端地域、SU:表面サブユニット、 FP:融合蛋白質、Anc:固定地域(anchorage region)、 RP:R−ペプチド、TM:膜貫通ドメイン、
【0054】
【図2】図2は幾つかのレトロウィルス外被糖蛋白質のアミノ酸整列(alignment)の結果を示す図である。VRA:可変領域A、 VRB:可変領域B、VRC:可変領域C、 PRR:プロリンリッチ領域、SU:表面ドメイン、 TM:膜貫通ドメイン
【0055】
【図3】図3はGaLV外被糖蛋白質の2次構造分析結果を示す図である。VRA:可変領域A、 VRB:可変領域BSU:表面ドメイン、 TM:膜貫通ドメイン
【0056】
【図4】図4は本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドFvGEL199及び野生型GaLV外被糖蛋白質それぞれを発現させるベクターの概略構造を示す図である。
【0057】
【図5】図5はパッケージ細胞株のキメラリガンドFvGEL199発現を調査したウェスタンブロット分析結果を現した写真であって、HCMVプロモーターにより調節されるベクター内で発現されたFvGEL199を示す図である。Lane 1:pHEGELを含むGP293細胞抽出液、Lane 2:pHEFvGEL199を含むGP293細胞抽出液、
【0058】
【図6】図6はScFv−GaLV Env GPキメラリガンドFvGEL199を含む組換レトロウィルスの生産を調査したウェスタンブロット分析の結果を示す写真である。Lane 1:pHEGELを含むGP293細胞培養液から得たウィルス沈殿物、Lane 2:pHEFvGEL199を含むGP293細胞培養液から得たウィルス沈殿物
【0059】
【図7】図7a及び図7bは多様な人間癌細胞株からTag−72表面抗原の発現を調査したFACS及び免疫組織化学染色方法の結果を示す写真である。
【0060】
【図8】図8はpHEFvGEL199を含む組換発現ベクターが形質導入された細胞の写真である。
【0061】
【図9】図9は本発明のパッケージ細胞株GP293HEFvGEL199及びGP293HEGELにLacZ 発現レトロウィルスベクターを形質導入して獲得したlacZ 発現組換ウィルスで形質導入された細胞の写真である。
【0062】
【図10】図10は安定的に構築された本発明のウィルス生産細胞株GP293HEFvGEL199/lacZ及びGP293HEGEL/lacZそれぞれから得たlacZ 発現組換レトロウィルスに形質導入された細胞の写真である。
【0063】
【図11】図11aはTag−72陽性又は陰性細胞株が各静脈に注射された時に観察した解剖顕微鏡(×10)写真である。図11bは図11aで観察された転移塊数を示すグラフである。
【0064】
【図12】図12aは本発明のScFv−GaLV Env GPキメラリガンドFvGEL199 発現レトロウィルスによるLacZ遺伝子の生体内形質導入を示す解剖顕微鏡写真である。図12bは図12aで観察されたLacZ遺伝子の相対的生体内形質導入効率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連糖蛋白質Tag−72の表面抗原に特異的な単鎖抗体(ScFv)とテナガザル白血病ウィルス(GaLV)外被糖蛋白質の融合ポリペプチド形態であるキメラリガンド蛋白質。
【請求項2】
前記ScFvがGaLV外被糖蛋白質の表面サブユニットの199番目及び200番目アミノ酸残基の間に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のキメラリガンド蛋白質。
【請求項3】
配列番号9のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のキメラリガンド蛋白質。
【請求項4】
請求項1に記載のキメラリガンド蛋白質をコードする遺伝子。
【請求項5】
配列番号8の塩基配列を有することを特徴とする請求項4に記載の遺伝子。
【請求項6】
請求項4に記載の遺伝子を含む組換発現ベクター。
【請求項7】
pHEFvGEL199(寄託番号:KCTC−10596BP)であることを特徴とする請求項6に記載の組換発現ベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の組換発現ベクターに形質導入されたパッケージ細胞株。
【請求項9】
請求項8に記載のパッケージ細胞株によって生産され、キメラリガンドが外膜上に分布されている組換レトロウィルス。
【請求項10】
請求項1に記載のキメラリガンド蛋白質を有効成分として薬剤学的に許容できる担体を含む抗癌剤組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【公表番号】特表2008−500018(P2008−500018A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539363(P2006−539363)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000545
【国際公開番号】WO2005/047338
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(506158902)インジェ・ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】INJE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】