説明

発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明

【課題】発光ダイオードを光源とする照明において、発光ダイオードに由来する指向性および不均一性を解消し、効率に優れた照明を実現させる。
【解決手段】光源によって励起される蛍光体が、光源色の補色となるような組み合わせを利用し、目的とする照明色を実現させる。さらに、当該蛍光体を光源とは別に形成し、これらの距離を離しつつ、当該蛍光体自体にも光を散乱あるいは拡散させる構造をもたせることにより、効率および均一性に優れた照明を実現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードおよびそれによって励起され発光する性質を有する蛍光体を組み合わせて実現される照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代から発光ダイオードの製造技術は飛躍的に進歩を続け、青色発光ダイオードの実現や、それに伴った白色発光ダイオードも実現され、広く利用されるようになった。とくに近年はいわゆる「エコライフ」の一環として、低消費電力および長寿命という特徴を有する発光ダイオードを、照明に利用する動きが活発になっている。
【0003】
照明用としては最も一般的な白色照明が中心となっており、その白色を実現する方法としては、青色、緑色、赤色の三原色の発光ダイオードを組み合わせる方法と、青色発光ダイオードと青色の補色である黄色の蛍光体を組み合わせる方法が代表的なものである。前者は三原色の光源が揃っているため色の再現性に優れ、主にカラーディスプレイなどに利用されるのに対し、後者は発光ダイオードが単色で済み、非常に安価かつ単純な構造で実現できるため、主に照明用に利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明用として発光ダイオードを利用する場合、最も大きな課題となるのが光の指向性である。発光ダイオードの構造上、発光面から発せられた光は強い直進性を有し、とくに工夫を施さなければ、かなり限定された範囲の照明しかできないことになる。この性質は、広範囲を均一に照明したい室内照明用途などには適していない。上記のように、照明用の白色発光を実現させる方法としては、青色発光ダイオードと黄色の蛍光体を組み合わせる方法が有力であるが、白色発光ダイオードという部品として完成させることが通例であるため、光源と蛍光体が極めて狭い範囲内に一体化されており、指向性や不均一性の課題が解決されているとは言い難いのが現状である。
【0005】
また、市場として大きくエコの観点にも適した室内白色照明用途が現在のところ研究開発の中心ターゲットとなっているため、その他の有益な用途をターゲットとした研究開発は決して盛んであるとはいえず、この点に関しても解決すべき課題であるといえる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の課題である照明用としての指向性および不均一性の問題は、一般的には光拡散板を利用することで改善が図られている。すなわち図3に示すように、基板301上の発光ダイオード302(主に青色)の前面(照明対象側)に配置された補色蛍光体303(青色に対しては黄色)を組み合わせた光源により、白色光が放出されるのであるが、これは極めて狭い範囲に限定された点光源の性質を有しているため、さらにその前面(照明対象と光源の間)に光拡散板304を配置することで、照明の均一化を図るのである。しかしながらこの方法では、発行体である発光ダイオード302と照明対象305との間に、補色蛍光体303および光拡散板304という二つの障害物が存在することになるため、照明効率は決して高いとはいえず、エコの観点には最適であるとはいえない。
【0007】
そこで本発明では、これら二つの障害物を一体化させる方法を採用する。すなわち図1に示すように、基板101上の発光ダイオード102の前面(照明対象側)に蛍光拡散体103を配置するのである。蛍光拡散体103は、発光ダイオード102からの励起光を受けてその補色に発光する。例えば発光ダイオード102が青色であれば、黄色に発光する蛍光体となっている。その製作方法としては、蛍光拡散体103の材料(主に樹脂)に直接蛍光物質を混合させる他、蛍光拡散板103の内面(光源側)に蛍光物質を塗布する、蛍光物質を混合させたフィルムを蛍光拡散板103に貼り付ける、といった方法を選択することができる。蛍光物質としては、例えば青色光源により励起されて黄色光を発するものとしては、YAG系蛍光体等を挙げることができる。なお、最近では演色性の向上のため、黄色蛍光体ではなく緑色と赤色の蛍光体を青色の発光ダイオードで励起することにより、三原色から白色を構成する方法も普及しつつあり、本発明においてもこの構成を利用することはありうる。青色発光ダイオードにより励起される緑色蛍光体、赤色蛍光体としては、サイアロン蛍光体、SrとBaおよびSを含有する物質、アルカリケイ酸系化合物、MnおよびKを含有する物質(K2SiF6:Mn4+が一例)等を挙げることができる。
【0008】
蛍光物質から放出される光は発光ダイオードによって励起されて生じた光であるため、発光ダイオードの指向性とは関係がなく、照明用としての指向性の問題は補色成分に関しては解消されている。ただし、発光ダイオードからの光の一部を透過させて蛍光物質からの補色光と合わせて照明しなければ白色光にはならず、この透過光は指向性を有しているため、これを改善するための光拡散構造は必要である。例えば蛍光拡散体103の表面に細かい凹凸を設ける(シボ加工等)、拡散シートあるいはプリズムシートを貼り付ける、といった方法が考えられる。また、発光ダイオード102と蛍光拡散体103を一体化する必要がないため、これらの距離を離すことも効果的である。例えば発光ダイオード102と蛍光拡散体103の距離を5mm以上とする。あるいは、発光ダイオード102と蛍光拡散体103の距離が、蛍光拡散体103と照明対象物104との距離の10%以上であるようにする。なお、具体的にバランスのとれた白色光を実現させるためには、発光ダイオードからの光に対する蛍光拡散体103の光線透過率を15%以上60%以下、蛍光原料による波長変換効率を20%以上(発光ダイオードからの光の20%以上が補色に変換される)に設定することが好ましいが、この限りではない。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明を利用すれば、発光ダイオードからの光を非常に高い効率かつ均一性をもって照明に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明は、図1を用いて説明したように、青色発光ダイオードと黄色の蛍光拡散体を組み合わせることで、高効率かつ高均一な白色照明を実現することが第一の特徴となっているが、照明色や構造をさまざまに変えることにより、さらに多くの用途を生み出すことができる。
【実施例1】
【0011】
最近の発光ダイオードの普及により、自動車のテイルランプやブレーキランプも発光ダイオード化が進行している。しかしながら現在のところ、白色発光ダイオードに赤色の樹脂カバーを被せることで赤色を実現しており、赤色変換効率が低いだけでなく指向性が解消されないため、後方のドライバーにとってはまぶしいという問題がある。本発明では、光源として青色発光ダイオードを利用し、前述したような青色光励起により赤色に発光する蛍光物質を混合させるか、内面に塗布するか、当該蛍光物質を含むフィルムを内面に貼り付けた材料によって、テイルランプおよび/またはブレーキランプを形成させることにより、赤色変換効率が高く、指向性も有さない安全な自動車用ランプを実現させることができる。なお、この場合は発光ダイオードからの青色成分は不要であるため、青色成分を吸収する物質を材料に混合させるか、内面に塗布するか、貼り付けるフィルムに含ませることが好ましい。このように、白色照明用途に限らず、目的に応じて本発明を利用することができるのである。
【実施例2】
【0012】
現在、液晶ディスプレイのバックライトとして、導光板が多用されている。導光板は発光面と垂直をなす端面から白色光を導入し、これを内部で散乱あるいは反射させて発光面方向に光を放出させることで、面発光を実現させるものである。ここでも白色光源として発光ダイオードを利用する場合、指向性および不均一性が問題となる。本発明の概念をこの導光板に応用すれば、光源として青色発光ダイオードを用い、青色光で励起されて黄色光を放出する蛍光物質を導光板を形成する材料に混合させるか、あるいは、当該蛍光物質を導光板の端面に塗布することにより、均一性に優れたバックライト照明を実現させることができる。
【実施例3】
【0013】
また、発光ダイオードの普及かつ高出力化により、植物育成用に発光ダイオードを応用する研究開発も盛んに行われている。植物が生育するために必要な光は青色と赤色であると言われており、一般的には青色と赤色の発光ダイオードを組み合わせて植物を照明する手法がとられているが、植物の吸収波長域は比較的ブロードであり、発光ダイオードのように発光波長域が非常に限定された光源は必ずしも適しているとはいえない。そこで本発明では、光源として青色発光ダイオードを利用し、前述したような青色光励起により赤色に発光する蛍光物質を混合させるか、内面に塗布するか、当該蛍光物質を含むフィルムを内面に貼り付けた材料によって形成された蛍光体と組み合わせて植物を照明する。この構成は実施例1の自動車用ランプの構成と同様であるが、植物育成用としては赤色成分を中心に青色成分も必要であることから、赤色光(波長600nm〜800nm)の積分エネルギーに対し、青色光(波長450nm〜500nm)の積分エネルギーが少なくとも5%以上含まれるものとする。さらに、育成光線と呼ばれる波長5μm〜30μmの成分が照明に含まれていることが好ましい。具体的には、熱を吸収して育成光線を放出する性質を有するセラミック等を利用すればよい。このような構成の一例を図2に示す。基板201上の青色発光ダイオード202から放出された青色光は、その一部は赤色蛍光体203によって波長変換を受け赤色となり、また一部は赤色蛍光体203を透過して植物に到達する。さらに、このような光源ユニットの周囲に、熱を育成光線に変換するセラミック等を内面に塗布した育成光線源204を配置し、発光ダイオード202の発熱(基板201から伝導される熱および光エネルギーを吸収することにより生じる熱)が育成光線に変換されて植物205に照射されるような構造となっている。育成光線源204の内面は放物面となっており、植物205へ効率的に育成光線を供給できるようにしておく。以上のような構成により、植物育成に必要な光を、発光ダイオードの波長域の狭さという課題を解消しつつ、植物に照射することができるのである。なお、植物育成には光源のパワーが大きい方が好ましいので、発光ダイオード202は複数配置されていてもよく、全体で50W以上程度のパワーを有するものが一例となる。
【0014】
なお、本明細書において、青色発光ダイオードとその補色である黄色の蛍光体を組み合わせて白色とする例を繰り返し記載しているが、光源として緑色発光ダイオードを利用する場合には、その補色である赤色の蛍光体を組み合わせて白色を実現させてもよい。また、光源として紫外域の発光ダイオードを利用し、青色と黄色、あるいは緑色と赤色等、補色関係にある組み合わせの蛍光体を利用して白色を実現させてもよい。最終的に必要とする波長の光を、光源と蛍光体の組み合わせにより実現することが本質であり、これらを別体化することで指向性および均一性の課題を解決することが本発明の特徴である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明は、屋内照明、自動車等のテイルランプおよびブレーキランプ、植物育成等、さまざまな用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明の一例を示す図
【図2】本発明の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明の一例を示す図
【図3】一般的な発光ダイオード照明の構成を示す図
【符号の説明】
【0017】
101 基板
102 発光ダイオード
103 蛍光拡散体
104 照明対象物
201 基板
202 青色発光ダイオード
203 赤色蛍光体
204 育成光線源
205 植物
301 基板
302 発光ダイオード
303 補色蛍光体
304 光拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として発光ダイオードを利用し、当該光源によって励起され蛍光を放出する蛍光体とを組み合わせる照明において、当該光源と蛍光体とが別体化されていることを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項2】
前記蛍光体は、前記光源によって励起され蛍光を放出する蛍光物質を混合した材料によって形成されるか、当該蛍光物質が塗布されるか、当該蛍光物質を含有するフィルムを貼り付けられるか、いずれか一つの方法によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項3】
前記蛍光体の蛍光色は光源色の補色であることにより、白色光を生じることを特徴とする請求項1〜2記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項4】
前記光源色は青色であり、前記蛍光体の蛍光色は黄色であることを特徴とする請求項1〜3記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項5】
前記蛍光体は、少なくとも前記光源からの光の一部を散乱または拡散させる表面構造を有している請求項1〜4記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項6】
前記黄色の蛍光体は、YAG系蛍光体を含有することを特徴とする請求項4〜5記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項7】
前記光源と前記蛍光体との距離が5mm以上、または、当該蛍光体と照明対象物との距離の10パーセント以上であることを特徴とする請求項1〜6記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項8】
前記蛍光体の光源に対する光線透過率が15%以上60%以下であることを特徴とする請求項1〜7記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項9】
光源として青色発光ダイオードを利用し、当該光源の光を赤色に変換する蛍光体によって自動車用のテイルランプおよび/またはブレーキランプを形成することを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項10】
前記蛍光体は、前記光源によって励起され蛍光を放出する蛍光物質を混合した材料によって形成されるか、当該蛍光物質が塗布されるか、当該蛍光物質を含有するフィルムを貼り付けられるか、いずれか一つの方法によって形成されていることを特徴とする請求項9記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項11】
前記蛍光物質はサイアロン蛍光体またはアルカリケイ酸系化合物またはK2SiF6:Mn4+のいずれかを含むものである請求項10記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項12】
前記蛍光体は、前記光源からの光を吸収する物質を含有することを特徴とする請求項9〜11記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項13】
前記蛍光体は、少なくとも光源からの光を散乱あるいは拡散させる表面構造を有する請求項9〜12記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項14】
発光面と垂直をなす端面から光を導入する導光板において、光源として青色発光ダイオードを利用し、青色光によって励起され黄色の蛍光を放出する蛍光物質を導光板形成材料に混合させるか、または、当該蛍光物質を導光板端面に塗布することにより、白色の発光面をなすことを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項15】
光源として青色発光ダイオードを利用し、青色光によって励起され赤色の蛍光を放出する蛍光物質を組み合わせることで植物育成光を生成することを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項16】
前記植物育成光は、波長450nm〜500nmの成分の積分エネルギーが、波長600nm〜800nmの成分の積分エネルギーの少なくとも5パーセント以上を有していることを特徴とする発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項17】
前記光源の熱エネルギーを波長5μm〜30μmの光成分に変換し、植物に照射する構造を有する請求項15〜16記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。
【請求項18】
前記熱エネルギーを波長5μm〜30μmの光成分に変換する構造は、当該変換を行う性質を有するセラミックが塗布された放物面状の内面を有する請求項17記載の発光ダイオードと蛍光体の組み合わせ照明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−204406(P2011−204406A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69004(P2010−69004)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(710002129)株式会社キャラベル (1)
【Fターム(参考)】