説明

発光デバイス、光書込み装置、および光通信装置

【課題】LDやLEDなどをアレイ状にして用いるいわゆるアレイ光源では、発光時の発熱の問題や、狭ピッチ化困難などの問題で所望の用途に適さない。2次元フォトニック結晶の線欠陥導波路を利用したアレイ状の光源の提案があるが、光のON/OFF制御には触れられていない。また平行光束を用いて1次元フォトニック結晶を利用したアレイ状の光源は、光の伝播経路が長くなると光束が発散して、光の取り出し効率が低下する。
【解決手段】光束Lは導光体1に入射すると例えば凹面鏡からなる局部構造1aにより、1次元フォトニック結晶からなる多層膜2中に配置されたON/OFF制御のできる欠陥層3に向けて収束される。欠陥層3がOFF状態であれば光束は多層膜2で反射され、発散光束となって隣接の凹面鏡に入り更に反射されて隣接の欠陥層3に向けて収束される。欠陥層3がON状態であれば光束はそこから外部に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ用光書込み用アレイ光源、光通信装置用アレイ光源などに用いることのできる、フォトニック結晶を利用する発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図26は1次元フォトニック結晶の例を示す図である。
図27は1次元フォトニック結晶の透過光スペクトルを観察した結果を示す図である。
フォトニック結晶を用いて微小光回路を作製する考えは数多く提案されている。
フォトニック結晶とは屈折率の異なる材料を波長サイズ程度に周期的に配列した人工結晶であり、設計の自由度が大きく、特異な光学特性(フォトニックバンドギャップ、スーパーレンズ、スーパープリズムなど)を有する。
また、フォトニック結晶はその周期から1次元、2次元、3次元と分類される。このうち1次元フォトニック結晶はもっともシンプルな構造をもっている。図26は、1次元フォトニック結晶の例として非特許文献1に紹介されているものである。それによれば、同図(a)に示すように、TiO層とSiO層の多層膜がガラス基板上にその膜厚が600nm/4になるように交互に成膜されている。同図(b)に示すように、中央部に欠陥層として厚さが1.6倍の層を設けている。
この2つのデバイスに光を入射し、その透過光スペクトルを観察した結果を図25に示す。欠陥層を含まない場合は波長600nmを中心とした広い範囲で透過率が低い領域が存在するが、欠陥層がある場合は鋭い透過ピークが存在する。欠陥層を含まないときの透過率の低い領域が伝播方向を限定した場合のフォトニックバンドギャップに対応する。また、欠陥層がある場合、フォトニックバンドギャップ中に欠陥準位ができ、欠陥準位に相当する波長の光が透過することとなる。欠陥層に共鳴する光を入射すると1次元フォトニック結晶中で多重反射が生じ、光電場は欠陥層のまわりに局在化する。
【0003】
図28は全反射型1次元フォトニック結晶の作用を説明する図である。
同じ1次元フォトニック結晶の例として、非特許文献2に記載された全反射型1次元フォトニック結晶の例を同図に示した。これはプリズムの表面にTiOとSiOの多層膜を設け、欠陥層として色素ドープした有機膜が設けられている。このデバイスに光が入射すると共鳴する波長や入射角でなければ光は欠陥層表面での全反射により光を閉じ込めることができる。
この他に1次元フォトニック結晶の例としては、多層膜に垂直に光を入射する3角形プリズム形状の分光素子がある(例えば、特許文献1 参照。)。
さらに多層膜による変調器の例としては、電気光学効果により屈折率変化が生じてデバイスの反射率が変化を起こし、変調器として作用するものもある(例えば、特許文献2 参照。)。
また、2次元フォトニック結晶を利用した例を説明する。結晶の周期性から光の伝播が禁じられるフォトニックバンドギャップをもつフォトニック結晶に対して、線状の欠陥を導入することによりフォトニック結晶導波路を作成することができる。欠陥とは周期構造に対して屈折率の異なる材料あるいは周期構造を乱す配列(大きさ)を持ったものである。この線状の欠陥では光が伝播することができ、また周囲はフォトニックバンドギャップであるので光は線欠陥にほぼ閉じ込められて伝播するため、光導波路として機能する。
【0004】
ここで、線状欠陥をもつフォトニック結晶に対して、線状欠陥のそばに点欠陥を配置すると、点欠陥から光が放出されるという現象がある。この現象を利用して光の合波分波するデバイスが提案されている(例えば、特許文献3 参照。)。これは点欠陥が導波路を伝播する光のなかで或る特定の条件を満たす光だけを捕獲し放射するものである。また、外部から特定の条件を満たす光だけを取り入れて導波路を伝播させる働きをもつものである。
一方、アレイ光源の例としては、LDやLEDのアレイ光源が一般的で、その他の構成として、導波路を使ったものとして出射側のピッチを入射側よりも狭ピッチにしたアレイ光源がある(例えば、特許文献4 参照。)。さらに、ビームを複数の導波路に分岐し、電気光学素子でOn/Offするアレイ光源も提案 されている(例えば、特許文献5 参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−329823号公報
【特許文献2】特開2003−195238号公報
【特許文献3】特開2001−27255号公報
【特許文献4】特開2001−350231号公報
【特許文献5】特開平8−220464号公報
【非特許文献1】井上、他、”1次元フォトニック結晶における光電場増強と高速光応答”、光学、Vol.30、No.2,2001)
【非特許文献2】H. Inouye、他、 念ptical Properties of a Total-Reflection-Type One-Dimensional Photonic Crystal煤AIEEE J. Quantum Electron、Vol.38、No.7 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常のアレイ光源、たとえばLEDアレイやLDアレイでは発光時の熱の問題があり、任意のピッチ、特に狭ピッチ化が困難であり、かつ材料の制約により任意の波長の光源を準備するのは困難である。また、高い光源出力が欲しくても、デバイス構造上などから高い出力を得られないことがある。
一方、1次元フォトニック結晶を利用した光源アレイの構成では、アレイ数が多くなると光は長い距離伝播する必要がある。たとえば、100μmピッチの発光アレイをアレイ数1000とすると、光源アレイデバイスの大きさは100mm以上の長さになる。導光路中両面を反射してジグザグに進むのであればデバイス長よりもさらに長い距離光が伝播することになる。この時、光が完全にコリメートされていれば伝播しても光が広がることはないが、完全にコリメートされていない場合は伝播中に徐々に光が広がり、光の取りだし効率が低下するとともに、光がピッチに合わずに伝播することになる。特に、1次元フォトニック結晶を利用したデバイスは、多層膜に入射する角度に依存した透過率となることから、常に一定の角度で入射できるようして光の利用効率を高くしておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、前記他方の面は入射した光束を前記欠陥層に収束させるための複数の局部構造を前記所定のピッチと同じピッチで設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とし互いに平行な複数の導光路を有する導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記複数の導光路は光束の入射位置が同一直線上に並んでおり、一方の端の導光路から他方の端の導光路へ向かって順次光路が長くなっており、それぞれの導光路の前記光束の入射位置とは反対の端を光束の出射端とし、該出射端は前記入射位置が並ぶ直線上とは異なる直線上に並んでおり、該出射端には、前記1次元フォトニック結晶多層膜に屈折率可変の欠陥層を設け、前記導光体の他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスであって、少なくとも一部の光路の前記他方の面には入射した光束を反射して前記一方の面に収束させるための局部構造を設け、各光路の出射端に光束を導くことを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は、前記各光路の長さに応じ複数設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の発光デバイスを複数個用い、前記出射端を互いに同一直線上に並べ、隣接する発光デバイス間の出射端が個別の発光デバイスの出射端間距離とほぼ等しい間隔に配置して一体化したことを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は反射性を有する凹面であることを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有する回折格子であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有するホログラムであることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はフレネルレンズであることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、前記一方の面と他方の面の中間部に、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とを同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設けたことを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とし互いに平行な複数の導光路を有する導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記複数の導光路は光束の入射位置が同一直線上に並んでおり、一方の端の導光路から他方の端の導光路へ向かって順次光路が長くなっており、それぞれの導光路の前記光束の入射位置とは反対の端を光束の出射端とし、該出射端は前記入射位置が並ぶ直線上とは異なる直線上に並んでおり、該出射端には、前記1次元フォトニック結晶多層膜に屈折率可変の欠陥層を設け、前記導光体の他方の面には全反射を持たせた発光デバイスであって、少なくとも一部の光路には、前記一方の面と他方の面の中間部に、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とを同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設け、各光路の出射端に光束を導くことを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の発光デバイスを複数個用い、前記出射端を互いに同一直線上に並べ、隣接する発光デバイス間の出射端が個別の発光デバイスの出射端間距離とほぼ等しい間隔に配置して一体化したことを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項9ないし11のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離と前記他方の面までの距離とが、等しくないことを特徴とする。
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離が前記他方の面までの距離より大きいことを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項9ないし13のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は前記導光体の屈折率より高い屈折率からなる凸レンズ形状の高屈折率領域によって構成されていることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載の発光デバイスにおいて、前記高屈折率領域は凸レンズ形状の空洞に充填された高屈折率の接着剤からなることを特徴とする。
請求項16に記載の発明では、請求項9ないし13のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は凹レンズ形状の低屈折率領域によって構成されていることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空気層を含む空洞からなることを特徴とする
請求項18に記載の発明では、請求項16に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空洞に充填された低屈折率の接着剤からなることを特徴とする。
請求項19に記載の発明では、請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は半導体作製プロセスを用いて形成したことを特徴とする。
請求項20に記載の発明では、請求項1ないし19のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記導光路デバイスの前記光の入射面は、前記光の出射面と対向する面に設けられていることを特徴とする。
請求項21に記載の発明では、請求項1ないし20のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気的制御により、屈折率変化を生ずる特性を有することを特徴とする。
請求項22に記載の発明では、請求項21に記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気光学効果を有する材質もしくは液晶で構成されることを特徴とする。
請求項23に記載の発明では、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いた光書込み装置を特徴とする。
請求項24に記載の発明では、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いた光通信装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、1次元フォトニック結晶を利用した任意のピッチのアレイ光源において、アレイ数が多くなり伝播距離が長くなった時でもビームサイズが変わらない構成を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1、2は本発明の第1の実施形態を説明するための図である。図1は光路を説明するための断面図、図2は発光デバイスの斜視図である。
両図において符号1は導光体、2、2’は1次元フォトニック結晶としての誘電体多層膜、3は欠陥層、4は反射防止膜、10は導光路デバイス、11は光源、12はコリメートレンズ、13はプリズム、14は基板、20は発光デバイス、Lは光束をそれぞれ示す。
図1において、光束Lが伝播する導光体1の両面に誘電体多層膜層2、2’が成膜されている。導光体1は利用する光に対して透過率の高いガラスを使用している。また、誘電体多層膜2、2’として具体的には、TiOとSiOの2種の膜が交互に積層されている。ただし、煩わしさを避けるため、同図では層の境界線は示していない。
同図の上側に示した多層膜2の、層の中間の一部に欠陥層3が成膜されている。この欠陥層3は、屈折率の変化する層で構成されている。屈折率の変化する層としては、電気光学効果などを利用した非線形材料や液晶などがある。欠陥層3の両側(同図における上下方向)の多層膜はそれぞれ反射性の機能を有しており、一方の(同図では下側の)多層膜から入って欠陥層3を往復透過する際の欠陥層3の光路長によって、同じ多層膜に再入射する位相が異なる。通常は欠陥層3の屈折率は、上記位相が同じになるような屈折率であって、多層膜として他の部分と変わらない全反射特性を示すが、欠陥層の両面から所定の電界をかけると屈折率が変化し、上記位相が反転して局部的に透過性を示すようになる。
なお、屈折率可変の欠陥層に電界をかける構造および手法は公知であるため、図面の煩雑さを避けて図では簡略表示としている。
【0013】
基板の下面には、基板に対して球面状の凸形状1aを形成し、その上に多層膜を成膜した凹面鏡として機能する複数の局部構造(以下単に凹面鏡1aと称す)を配置している。
なお、光が入射する端面は入射時に発生する反射光を極力抑えるために反射防止膜4を用いている。また、導光体1の下の面にも誘電体多層膜2’を形成しているが、金属などの反射膜でもかまわない。要するに全反射機能を有していればよい。これは、以下の各実施形態においても同様である。
上記説明した誘電体多層膜2、2’が成膜された導光路デバイス10を使った発光デバイス20を図2に示した。発光デバイス20は、光源11と、光源11から出た光束Lをコリメートするためのコリメートレンズ12と、導光路デバイス10の導光体1に光を入射するためのプリズム13と、両面に誘電体多層膜2が成膜され一部欠陥層3を有する導光路デバイス10で構成される。光源11としては、半導体レーザーや固体レーザーやSHGレーザーなどがある。また、コリメートレンズ12は同図に示したように、半導体レーザーのそばに置くため、マイクロレンズなどが用いられる。さらにプリズム13は、導光路デバイス10へ設定した角度で入射できるような角度をもったプリズムとなっている。コリメートレンズ12とプリズム13を纏めて結合光学素子と称する。
【0014】
この発光デバイス20の動作について説明する。
光源から出た光束Lはコリメートレンズ12でコリメート光となって、プリズム13に入射する。そこで光束Lが導光路デバイス10へ設定した角度で入射できるように屈折されて導光体1へ入射する。すると、光束Lは誘電体多層膜2’で全反射される。そのとき凹面鏡1aの作用により、光束Lは集光状態となり上側に位置している欠陥層3のある位置に集光される。このとき、欠陥層にかかる電界がOFF状態つまり屈折率が全反射の状態の場合は、入射した光は全反射されて、下側の多層膜に到達する。ここで再度凹面鏡1aで反射されて、次の欠陥層のある位置に光が進む。次の欠陥層でON状態つまり屈折率が全反射の状態からずれた場合は、欠陥層に光が局在化し欠陥層から発光する。
この実施形態では、この発光する場合の欠陥層を含む多層膜の透過率が100%に近いため、ほとんどの光が透過して図の上側に出射される。もし、この欠陥層がOFFの状態であれば、図の点線で示したように光が反射してまたジグザグに進んでいく。
【0015】
このようにして任意の位置から光束が出射する発光デバイス20が構成される。欠陥層3が1本の線上に例えば等間隔で配列してあると、発光点はあたかも発光素子アレイの光源のような作用が期待できる。欠陥層を複数列に配列することももちろん容易である。このように、欠陥層の配置の仕方で、任意の位置から発光させることができるようになる。また、誘電体多層膜の構成を選ぶことで反射する光束の波長を異ならせることができるので、欠陥層によって取り出す光の波長を選ぶことができる。
ここで欠陥層3から出射されず反射された光束は導光路デバイス10の導光体1の端縁(終端と呼ぶ)からそのまま抜けていくことになる。
上記説明では、凹面鏡1aがすべて同一形状であるように説明したが、実際は、本実施形態の場合、入射光束が最初に入る凹面鏡(最初の凹面鏡という)だけ若干形状が異ならせてある。それは、最初の凹面鏡に入射する光束だけは平行光束だからである。それ以外の凹面鏡に入る光束は、一旦上側の多層膜に収束してから反射されて発散光束になる。
【0016】
図3ないし図5は第1の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
凹面鏡を作製する導光体は透明なガラス基板Kとする。この基板材料に凹面鏡となる凸形状を以下の手順で形成する。
図3において、まず基板K上に感光性材料PRを塗布する。塗布する感光性材料PRの厚さは基板Kに形成する凸形状の高さと、後にこの感光性材料をレジストしてエッチングを行う基板材料のエッチング速度とレジストのエッチング速度の比(選択比)により設定する。例えば両者のエッチング速度が等しい選択比1の場合には、レジストの高さは形成する凸形状の高さとほぼ等しくする。また基板材料のエッチング速度がレジストのエッチング速度より2倍大きい選択比2の場合には、レジストの高さは凸形状の高さの1/2でよい。基板K上に塗布する感光性材料PRとしては通常の半導体製造で用いられるフォトレジストあるいは感光性ドライフィルムを使用することができる。具体的には、ポジ型レジストならOFPR−800、ネガ型レジストならOMR−85などを用いる。ポジ型あるいはネガ型の選択によりレジストに形状を転写する工程(フォトリソ工程)に用いるフォトマスクの形状が変化するが、基本的な形成手順は変わらない。本実施形態では選択比1の樹脂製のポジ型レジストを用いる場合について説明する。基板K上に形成したレジスト上に凸形状と同等形状をレジスト上に形成できるように透過率分布を設定したマスクを介して光を照射し、樹脂を感光させる。
【0017】
光照射後現像すると、図4に示すように、基板K上に凸形状と同等形状の樹脂が残る。このときのマスクは凸形状に合わせた透過率分布をもったマスクを用意する。このマスクとしては濃度分布をもったマスクでもよいし、微細なドットが所望の透過率分布をもつようなレイアウトをしたマスクでもよい。このようなマスクを用いることにより、任意の形状を作成することが可能となり本発明のような形状の凹面鏡となる凸形状を基板上に配置することができる。
このようにして形成した凸形状の感光性材料をマスクとして基板ガラスを基板Kに垂直な方向にエッチング(異方性エッチング)する。エッチングの手段としては半導体プロセスで通常用いられるドライエッチングが可能である。具体的には反応性イオンエッチング法(RIE)、電子サイクロトロン共鳴エッチング法(ECR)等である。ドライエッチングに用いるガスは基板材料により選択でき、例えば基板材料がガラスの場合はCF、CHF等を用いることができる。また、エッチング速度、選択性の調整のために前記のエッチングガスにN、O、Ar等のガスを混入する事もできる。このようにして、基板上に図5に示すような凸形状を形成し、導光体1が完成する。
続いて、導光体1の両面に多層膜2、2’を作成する。これはTiOとSiOを真空蒸着あるいはスパッタすることで形成する。この場合は、それぞれが設定した膜厚になるように制御する。なお、光の入射損失を少なくするため反射防止膜4を光束の入射位置に形成する。
このようにして導光路デバイス10が完成する。
【0018】
図6、7は本発明の第2の実施形態を説明するための図である。図6は光路を説明するための断面図、図7は発光デバイスの斜視図である。
両図において符号15はリレーレンズを示す。
図6において、導光体1は上下両面に、第1の実施形態と同様、多層膜2、2’が形成されている。多層膜2、2’の中間に凸レンズ状の高屈折率領域1b(以下単にレンズ1bと称す)からなる局部構造が等間隔で複数形成されている。多層膜2には欠陥層3が形成され、光の入射領域には反射防止膜4が形成されている点、およびその他の構成は第1の実施形態に示した構成と同様である。
図7に示す光源11から導かれた光束はリレーレンズ15によって、入射面に焦点を結び、屈折等を考慮して、丁度光束が図6における左端のレンズ1bに入射するように配置されている。この構成の場合、レンズ1bは最初のレンズもその他のレンズも同一の構成でよい。なぜなら各レンズに入射する光束の条件が互いに同等になるからである。第1の実施形態においても、本実施形態と同様リレーレンズを用いれば、すべての凹面鏡の構成を同一にすることができる。ここでは、コリメートレンズ12とプリズム13の他にリレーレンズ15も結像光学素子に含めて考える。
【0019】
レンズ1bは凸レンズの役割をし、各凸レンズの焦点位置は、一方が多層膜2の位置に、他方が多層膜2’の位置に一致させてある。そして、角度を以て入射した光束は、多層膜2’で反射して、多層膜2の欠陥層3の位置に到達するように構成されている。光束はレンズ1bを通過すると多層膜上に焦点を結び、反射後は発散するが、再度隣接のレンズ1bを通過することによって、反対側の多層膜上に焦点を結ぶ。欠陥層3に対して電界がかけられていないで(同図にOFFと表示)光束が欠陥層で反射された場合は、再度、多層膜2’で反射された後、多層膜2の、隣接する欠陥層3の位置に到達する。以後も同様な繰り返しを行う。したがって、レンズ1bは、欠陥層3のピッチの2分の1のピッチで配置されることになる。
欠陥層3に所定の電界がかけられると(同図にONと表示)、欠陥層のある部分は局部的に光透過性を示し、欠陥層領域から光が外へ出ていく。この構成における光の透過率は非常に高いのでほとんどの光が外部へ出射し、図7に示すように明るい光点が得られる。
【0020】
図8ないし11は第2の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
上記デバイスの作製方法を説明する。透明なガラス基板Kを2枚(K1、K2とする)用意し、それぞれについて以下の手順で作業を行う。
図8において、初めに樹脂材料からなる感光性材料PRを基板Kの片面に塗布する。
塗布する感光性材料PRの厚さは基板に形成する凹面の高さ(凸レンズの片方)と、後にこの感光性材料PRをレジストとしてエッチングを行う基板材料のエッチング速度とレジストのエッチング速度の比(選択比)により設定する。例えば両者のエッチング速度が等しい場合(選択比1)にはレジストの高さは形成する凹面の高さとほぼ等しくする。また基板材料のエッチング速度がレジストのエッチング速度より2倍大きい場合(選択比2)にはレジストの高さは凹面の高さの1/2でよい。基板K上に塗布する感光性材料PRとしては通常の半導体製造で用いられるフォトレジストあるいは感光性ドライフィルムを使用することができる。具体的には、OFPR−800(ポジ型レジスト)、OMR−85(ネガ型レジスト)などである。ポジ型あるいはネガ型の選択によりレジストに形状を転写する工程(フォトリソ工程)に用いるフォトマスクの形状が変化するが、基本的な形成手順は変わらない。
【0021】
本実施形態ではポジ型レジストを用いる場合について説明する。基板上に形成したレジスト上に凹面と同等形状(選択比1の場合)をレジスト上に形成できるように透過率分布を設定したマスクを介して光を照射し、樹脂を感光させる。光照射後現像すると図9に示すように、基板上に凹面と同等形状(選択比1の場合)の樹脂が残る。このときのマスクは凹面形状に合わせた透過率分布をもったマスクを用意する。このマスクとしては濃度分布をもったマスクでもよいし、微細なドットが所望の透過率分布をもつようなレイアウトをしたマスクでもよい。このようなマスクを用いることにより、任意の形状を作成することが可能となり凹面を基板上に配置することができる。
以下、第1の実施形態において図3ないし5を用いて説明したのと同様な工程を経て図10に示すような凹面形状1b’が形成される。
【0022】
できあがった2枚の基板(K1、K2)の凹面部1b’を互いに対向させて貼り合わせる。両者の凹面部1b’を精度良く対向させるため、予めエッチング用のパターンにアライメントマークを形成しておくと良い。接着に用いる接着剤は、基板Kの材質よりも屈折率が大きく、利用する光の波長に対して吸収が少ない材料を用いる。そして、2枚の基板K1、K2の向き合った凹面部1b’、1b’によって形成される空洞部に、接着剤を充満させてから所定の方法、例えば紫外線照射、で硬化させる。このようにしてできた図11(a)に示す導光体1の内部の高屈折率領域1bは凸レンズの役割をする。
なお、接着剤としては熱硬化型なども使用可能であるが、いずれにしても、硬化に伴って体積の変化のなるべく少ないものを用いるのがよい。体積変化が避けられない場合は、空洞部から外部へ通ずる浅い溝(図示せず)を設けて、接着剤の体積変化を吸収させてやれば残留歪みが大きく出なくなってよい。
以後、導光体1の両面には、第1の実施形態と同様、欠陥層3を含む多層膜2と反射機能のみの多層膜2’、および反射防止膜4を形成する。
【0023】
本実施形態では、導光体1を形成する過程で、基板K1とK2は同形のものを用いた説明をしたが、これは絶対的な条件ではない。図6において、下側の反射面(多層膜2’)と上側の反射面(多層膜2)の位置関係が、レンズ1bにとって共役関係にあればよい。
多層膜に入射させる光束はなるべく同じ角度(理想は平行光束)であることが望ましい。本実施形態のように、光束の発散を封じるため、レンズによって収束させる場合でもその収束角度はあまり急角度にならないようにしたい。そのため、レンズ1bと上側の反射面との距離は大きい方がよい。しかしながら下側の反射面までの距離も同様に大きくすると、導光体1の厚さが大きくなり過ぎる。そこで、レンズ1bより下側の反射面までの距離は、上側に比べて短く構成する。そして、レンズ1bの下側の焦点距離が下側の反射面までの距離に一致するようにし、上側の焦点距離が上側の反射面までの距離に一致するように構成する。そのためには基板K1側の凹面部1b’は浅く、基板K2側の凹面部1bは深く形成する。図11(b)はそのように構成した導光体1を示す図である。ただし、図の凹面部1b’、1b”は誇張して示してある。レンズの中心を通る光線は反射後もレンズの中心を通るため、レンズから収束点までの距離が上下で異なる場合は、レンズを等間隔に並べることができなくなる。間隔は上下の距離の比で決まるが、光束が下側から上側に向かって通過するレンズ同士だけでみると、等間隔であり、且つ、欠陥層のピッチに等しくなる。同様に光束が上側から下側に向かって通過するレンズ同士だけで見るとやはり、等間隔で且つ欠陥層のピッチに等しくなる。
下側の反射面までの距離が小さい場合は、収束角度が急角度になるので、反射面としては多層膜より通常の全反射膜の方が良い。
【0024】
図12は本発明の第3の実施形態を説明するための図である。同図(a)は入射光束を密接させた例、同図(b)は出射光束を密接させた例をそれぞれ示す図である。
同図は導光体1の光の入出射面側から見たリレーレンズを含む正面図である。
図6、7に示した構成では、直線状に並んだ欠陥層3のいずれか1つが「ON」状態になってそこから光束が出射すると、そこから先にある欠陥層3への光束の伝播はもはやなくなる。したがって、欠陥層が複数並んでいても、いずれか1つの欠陥層から光が出てしまえば、それ以降に並んでいる欠陥層から光を出すことができない。すなわち、上記実施形態では、複数の欠陥層のうち1つだけから光を取り出すデバイスが得られる。ただし、すべての欠陥層のON、OFF制御を高速で走査することができれば、1次元の光走査装置として光書き込み装置に使用できる。
本実施形態は上記の問題を解消し、すべての欠陥層から全く任意に、同時に光を取り出すことができるデバイスを得るものである。
【0025】
図12において、複数の欠陥層3−1、3−2、・・3−nは見かけ上1列に並んでいる。しかし、導光体1の内部における光束の伝播経路(導光路)は、上記欠陥層3の配列方向ではなく、配列方向に対して所定の角度傾斜している。この所定の角度とは、同図に破線で示したように、それぞれの欠陥層に到る光束が互いに重複しない独立した光路を確保できる角度とする。各導光路は互いに平行で、欠陥層とは反対側の端にあるそれぞれの光の入射位置は、欠陥層3の配列方向とは異なる方向の直線上に並んでいる。したがって、一方の端の導光路から他方の端の導光路へ向かって順次光路が長くなっている。各導光路において、光の入射する位置を入射端、欠陥層のある位置を出射端と呼ぶ。
1つ1つの欠陥層3とそこに到る光束の経路を単独に見ると図6に示した断面図が当てはまる。ただし、一つの断面においては欠陥層3は一つしかなく、欠陥層を超えた先にはレンズ1bは用意してない。本実施形態では、欠陥層3−1は多層膜2’による1回反射のみが到達する。欠陥層3−2は、多層膜2’による1回反射のあと、多層膜2と2’による各1回反射の光束が到達する。同様にして、出射端が右にあるものほど多層膜2と2’による繰り返し反射が多くなって各光路の出射端に光束を導く。
【0026】
光束の入射位置は、すべての伝播経路に光束を導入するため、例えばほぼ長方形に形成し反射防止膜4を形成しておく。長方形の長辺は同図に示すように、導光路に対して直交させておくのがよい。
それぞれの導光路に対応させてリレーレンズ15も、欠陥層3の個数と同じ数用意する。光源11からの光束はコリメートレンズ12でビーム整形して、すべてのリレーレンズ15を包括できる平行光にする。各リレーレンズは導光体1内のそれぞれの最初のレンズ1bに向け、光の入射位置に収束させる。任意の欠陥層3−k(kは1ないしnとする)が「ON」状態か、「OFF」状態かによって、光束はその欠陥層の位置から外部に出射するかしないかが決まる。すべての欠陥層に到る光束の経路が独立であるため、1つの欠陥層による光束の出射の選択は、他の欠陥層における光束の出射の選択に何ら影響を与えない。したがって、本実施形態によれば、任意の複数の出射端から同時に光束を出射させることができる。
【0027】
本実施形態では入射端と出射端の配列方向が互いに平行でないため、このまま出射端の数を増やすと入射端の配列長さが大きくなり、光源の確保が難しくなる。そこで図12に示したような、光源の大きさから見て許せる或る大きさの発光デバイスを一つののユニットとして、発光点の数が所望の数になるよう複数のユニットを、出射端を1列に並べて配置して長尺な一つの発光デバイスとすることもできる。この場合は、隣接するユニット間の出射端がその他の部分と同じ等間隔になるよう、導光体1の構成を適宜変える必要がある。同図(a)の構成にすれば、光の入射端がコンパクトに形成でき、同図(b)の構成にすれば、高密度な点状光源のアレイが得られる。なお、図示はしないが両者の中間的な構成として、入射端の配列と、出射端の配列とを平行にしてそれぞれの端部を結ぶ伝播経路を配列方向に直交させることもできる。この場合、すべての伝播経路の長さが等しくなるので、発光点による光量損失の違いが生じない。
本実施形態は、第2の実施形態を基本に説明したが、第1の実施形態を基本にしてもそっくり同じ原理の構成が可能である。当然、以下に述べるその他の実施形態においても同様である。
【0028】
図13は本発明の第4の実施形態を説明するための図である。
本実施形態は、原理的に第2の実施形態と同じ構成になっている。したがって、発光デバイスの構成は図7と同じになるので図示は省略する。異なる点は、導光体1の中に形成されている局部構造としての凸レンズが、第2の実施形態では、基板Kの凹面1b’に充填された高屈折率の接着剤によって形成されていたが、本実施形態では、基板Kの窪みに形成された凸面1c’と空気層もしくは窪みに充填された低屈折率層によって形成されている点である。本実施形態の凸レンズ1cは、見かけ上周囲より低屈折率の凹レンズが挿入された形になって凸レンズの役割をしている。
本実施形態も、基板K1と基板K2の厚さを異ならせて、図11(b)に示した考え方と同様な構成にすることができる。
【0029】
図14ないし17は第4の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
透明なガラス基板Kを2枚(K1、K2とする)用意し、感光性材料PRを基板Kの片面に塗布し(図14)、所定の透過率分布を設定したマスクを介して光を照射し、現像し(図15)、エッチングして窪みと凸面からなる所望の形状を得(図16)、2枚の基板K1、K2を窪み部を対向させて貼り合わせて導光体1を完成させる(図17)。凸面の頂点は窪み以外の部分より低くなるように設定する。以上、ほとんどの工程は第2の実施形態で説明した工程と同様である。
接着は基本的には窪み部以外の部分のみで行う。そうすることによって、完成品は窪み部に空気層ができ、基板材質と空気との屈折率の差が大きいことによってレンズ作用が出しやすくなる。しかしながら、接着に際して、接着剤の窪み部への流れ込みが防ぎきれないようであれば、使用する光の波長に対して透明で、基板材質より十分屈折率の低い接着剤を窪み部に充填する方法も可能である。
【0030】
図18は本発明の第5の実施形態を説明するための図である。
本実施形態は第1の実施形態における下側の多層膜2’側の凹面鏡の代わりに局部構造としてレンズ作用を有する回折格子を配置したものである。この回折格子レンズの焦点位置は第1の実施形態と同様に多層膜2の位置になるように構成されている。
一般にレンズ作用を有する回折格子は、不等間隔で同心もしくは偏心の、円状もしくは楕円状の回折格子を作ることで達成できる。斜めに入射する断面が円形の光束を効率よく収束させるためには、回折格子の面にできる光束の断面に合わせた楕円状の回折格子が適している。入射窓から入った光束が回折格子に入射すると、1次回折光が収束性を以て欠陥層3の位置に到るように構成されている。欠陥層3が「OFF」状態のときは多層膜2によって反射され、発散しながら隣接する回折格子に到る。以下同様なことを繰り返す。
同図に示すように導光体1への入射光束が平行光束の場合、最初の回折格子と、隣接(およびそれ以降の)回折格子とが同じ構成にならないのは図1において説明したのと同じ理由による。したがって、リレーレンズを用いて導光体1の入射面に光束を収束させるようにすればすべての回折格子を同一形状にすることができる。
【0031】
図19ないし23は第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
回折格子は石英基板K上に形成する。まず、基板K上に感光性材料PRを塗布し(図19)、回折格子のパターンをフォトリソグラフィでパターニングする(図20)。この後、エッチングする際のマスクとして働く金属をスパッタで成膜する(図21)。金属は、Ni、Al、Tiなどを使用する。成膜後、感光性材料PRを取り除く。すると、感光性材料上に成膜されていた金属膜は感光性材料とともに脱落して、基板上に成膜されていた金属膜だけ残る(図22)。この状態でドライエッチングを行ない、回折格子パターンを基板Kに作成する(図23)。エッチングのガスはCF、CHF等を用いることができる。また、エッチング速度、選択性の調整のために前記のエッチングガスにN、O、Ar等のガスを混入する事もできる。そのとき、金属膜もエッチングされてほとんどなくなってしまう。その後、反射膜をスパッタあるいは真空蒸着で成膜する。さきのエッチングマスクとしての金属膜は多少残っていても反射膜の下地になるだけなので、除去する必要はない。
続いて、基板の両面に多層膜を作成する。これはTiOとSiOを真空蒸着あるいはスパッタすることで形成する。この場合は、それぞれが設定した膜厚になるように制御する。なお、光の入射損失を少なくするため反射防止膜をデバイスの入射位置に形成する。
【0032】
第1の実施形態と第5の実施形態は局部構造の見かけの構成こそ異なっているが、機能的には同等のものである。すなわち、両実施形態とも、それぞれの局部構造は、下側の多層膜2’に到った光束を上側の多層膜2のうち欠陥層3に向けて収束させる機能を有している。この機能を欠陥層への収束機能と呼ぶことにする。
欠陥層への収束機能という見方でみれば、本実施形態における局部構造である回折格子の部分をホログラムで置換することもできる。ここでいうホログラムとは、導光体1へ入射し、平行光束もしくは発散光束として回折格子のあった領域に入射する光束を参照光とし、その領域を透過して欠陥層3に到る収束光束を物体光として構成されたホログラムを、回折格子の位置に配置する。実際にはその機能を有するホログラムをコンピュータで計算し、一般に使用される手法で基板上に描画することでホログラムを得ることができる。
更に別の構成として、局部構造として凸レンズ作用を有するフレネルレンズを用いることもできる。フレネルレンズは、球面レンズを多数の同心の円筒に分割し、曲面だった部分を1つの平面に揃うように置き換えたものであり、基本的なレンズ作用は基になった球面レンズの作用とほぼ同等である。フレネルレンズの作成方法は図3ないし5で示した凸面部の作成方法において感光性材料に対するエッチング用のパターンを変えるのみで基本的には同じである。フレネルレンズも必要に応じて楕円状に形成することができる。同様な考え方で、第1の実施形態の凹面鏡をフレネルレンズ同様平面かすることもできる。すなわち凸レンズ作用を有するフレネルレンズを裏返しにした構造にして曲面に相当する部分を鏡面とすればよい。作成方法も上記と類似の方法で良い。
【0033】
図24、25は本発明の第6の実施形態を説明するための図である。
本実施形態は第2の実施形態を基本形として用いて説明するが、第1ないし第5の実施形態すべてについて同じ原理が適用できる。
本実施形態が第2の実施形態と異なるところは、導光路デバイスの光の入射面が光の出射面と同じ面ではなく、逆側になっている点である。すなわち、第2の実施形態では光の入射面は多層膜2を施した面に設定していたが、本実施形態では多層膜2’の面に設定している。したがって、第2の実施形態では、入射光束は最初に単レンズ1bを経由して多層膜2’側にある反射面に達していたが、本実施形態では、入射光束は単レンズ1bを経て直接多層膜2の中の欠陥層3に向かう。その後の光束の挙動は第2の実施形態の場合と同じである。
本実施形態の構成の利点は、図25で明らかなように、光の入射面と反射面が同じ側にないため、光の出射面側が単純な平面構成となり、光の出射面の配置の自由度が増すことである。
前述のように、本構成は第1ないし第5のすべての実施形態に適用できる。ただし、入射光束を平行光束にするか、リレーレンズを用いて収束光束にするかは、必要に応じて選択すればよい。導光体1の局部構造の構成も当然それに応じた構成にする。
また、本実施形態を図12に示した第3の実施形態に適用する場合、一番光路の短い導光路においては、入射光束は局部構造を経ずに出射端に到る構成にすることも可能である。
【0034】
以上に説明した発光デバイスを光書込み装置の光源として用いれば、高密度の光源が得られ、高解像度の画像形成装置が得られる。本発明の発光デバイスは、誘電体多層膜と欠陥層の構成を変えることで、出射する光の波長を任意に選ぶことができるので、光源との組み合わせを選ぶことで、カラー画像に必要な3原色を構成することもできる。したがって、そのような3色の発光デバイスを組み合わせればカラー画像形成装置も構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を説明するための図である。
【図3】第1の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図4】第1の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
【図8】第2の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図10】第2の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図11】第2の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図12】本発明の第3の実施形態を説明するための図である。
【図13】本発明の第4の実施形態を説明するための図である。
【図14】第4の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図15】第4の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図16】第4の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図17】第4の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図18】本発明の第5の実施形態を説明するための図である。
【図19】第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図20】第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図21】第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図22】第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図23】第5の実施形態に示す導光体の作製方法を説明するための図である。
【図24】本発明の第6の実施形態を説明するための図である。
【図25】本発明の第6の実施形態を説明するための図である。
【図26】1次元フォトニック結晶の例を示す図である。
【図27】1次元フォトニック結晶の透過光スペクトルを観察した結果を示す図である。
【図28】全反射型1次元フォトニック結晶の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0036】
1 導光体
2 誘電体多層膜
3 欠陥層
4 反射防止膜
10 導光路デバイス
11 光源
12 コリメートレンズ
13 プリズム
15 リレーレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、前記他方の面は入射した光束を前記欠陥層に収束させるための複数の局部構造を前記所定のピッチと同じピッチで設けたことを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とし互いに平行な複数の導光路を有する導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記複数の導光路は光束の入射位置が同一直線上に並んでおり、一方の端の導光路から他方の端の導光路へ向かって順次光路が長くなっており、それぞれの導光路の前記光束の入射位置とは反対の端を光束の出射端とし、該出射端は前記入射位置が並ぶ直線上とは異なる直線上に並んでおり、該出射端には、前記1次元フォトニック結晶多層膜に屈折率可変の欠陥層を設け、前記導光体の他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスであって、少なくとも一部の光路の前記他方の面には入射した光束を反射して前記一方の面に収束させるための局部構造を設け、各光路の出射端に光束を導くことを特徴とする発光デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は、前記各光路の長さに応じ複数設けたことを特徴とする発光デバイス。
【請求項4】
請求項2または3に記載の発光デバイスを複数個用い、前記出射端を互いに同一直線上に並べ、隣接する発光デバイス間の出射端が個別の発光デバイスの出射端間距離とほぼ等しい間隔に配置して一体化したことを特徴とする発光デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は反射性を有する凹面であることを特徴とする発光デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有する回折格子であることを特徴とする発光デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はレンズ作用を有するホログラムであることを特徴とする発光デバイス。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造はフレネルレンズであることを特徴とする発光デバイス。
【請求項9】
光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とした導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記1次元フォトニック結晶多層膜に或る所定のピッチで複数の屈折率可変の欠陥層を設け、他方の面には全反射機能を持たせた発光デバイスにおいて、前記一方の面と他方の面の中間部に、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とを同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設けたことを特徴とする発光デバイス。
【請求項10】
光源と、導光体の対向する2つの面の一方に1次元フォトニック結晶多層膜を設け光の出射面とし互いに平行な複数の導光路を有する導光路デバイスと、前記光源からの光束を前記導光路デバイスの光の入射面に入射させる結合光学素子とで構成され、前記複数の導光路は光束の入射位置が同一直線上に並んでおり、一方の端の導光路から他方の端の導光路へ向かって順次光路が長くなっており、それぞれの導光路の前記光束の入射位置とは反対の端を光束の出射端とし、該出射端は前記入射位置が並ぶ直線上とは異なる直線上に並んでおり、該出射端には、前記1次元フォトニック結晶多層膜に屈折率可変の欠陥層を設け、前記導光体の他方の面には全反射を持たせた発光デバイスであって、少なくとも一部の光路には、前記一方の面と他方の面の中間部に、光束を前記他方の面に収束させる局部構造と、前記他方の面から反射されてきた光束を前記欠陥層に収束させるための局部構造とを同一面にそれぞれが等間隔になるよう交互に並べて設け、各光路の出射端に光束を導くことを特徴とする発光デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の発光デバイスを複数個用い、前記出射端を互いに同一直線上に並べ、隣接する発光デバイス間の出射端が個別の発光デバイスの出射端間距離とほぼ等しい間隔に配置して一体化したことを特徴とする発光デバイス。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離と前記他方の面までの距離とが、等しくないことを特徴とする発光デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造を設けた面から、前記一方の面までの距離が前記他方の面までの距離より大きいことを特徴とする発光デバイス。
【請求項14】
請求項9ないし13のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は前記導光体の屈折率より高い屈折率からなる凸レンズ形状の高屈折率領域によって構成されていることを特徴とする発光デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の発光デバイスにおいて、前記高屈折率領域は凸レンズ形状の空洞に充填された高屈折率の接着剤からなることを特徴とする発光デバイス。
【請求項16】
請求項9ないし13のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は凹レンズ形状の低屈折率領域によって構成されていることを特徴とする発光デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空気層を含む空洞からなることを特徴とする発光デバイス。
【請求項18】
請求項16に記載の発光デバイスにおいて、前記低屈折率領域は凹レンズ形状の空洞に充填された低屈折率の接着剤からなることを特徴とする発光デバイス。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記局部構造は半導体作製プロセスを用いて形成したことを特徴とする発光デバイス。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記導光路デバイスの前記光の入射面は、前記光の出射面と対向する面に設けられていることを特徴とする発光デバイス。
【請求項21】
請求項1ないし20のいずれか1つに記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気的制御により、屈折率変化を生ずる特性を有することを特徴とする発光デバイス。
【請求項22】
請求項21に記載の発光デバイスにおいて、前記欠陥層は電気光学効果を有する材質もしくは液晶で構成されることを特徴とする発光デバイス。
【請求項23】
請求項1ないし22のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いたことを特徴とする光書込み装置。
【請求項24】
請求項1ないし22のいずれか1つに記載の発光デバイスを用いたことを特徴とする光通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−65108(P2006−65108A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249042(P2004−249042)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】