説明

発光素子、照明装置および表示装置

【課題】発光層を複数積層した構造においても広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、複数の色の合成色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子は第1の電極11と第2の電極12との間に挟持された有機層13に可視光領域の単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層13aおよび第2の発光層13bを含む。第1の電極11側に第1の反射界面14を、第2の電極12側に第2の反射界面15を形成する。第1の反射界面14と第1の発光層13aの発光中心との間の光学距離L11、第1の反射界面14と第2の発光層13bの発光中心との間の光学距離L21、第1の発光層13aの発光中心と第2の反射界面15との間の光学距離L12、第2の発光層13bの発光中心と第2の反射界面15との間の光学距離L22を所定の値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光素子、照明装置および表示装置に関し、特に、有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)を利用した発光素子ならびにこの発光素子を用いた照明装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンスを利用した発光素子(以下「有機EL素子」という。)は低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目され、盛んに研究開発が行われている。この有機EL素子は、一般に数十〜数百nm程度の厚さの発光層を含む有機層が反射性電極と透光性電極との間に挟持された構造を有している。このような有機EL素子において、発光層で発光された光は、素子構造中で干渉し外部に取り出される。従来、このような干渉を利用して有機EL素子の発光効率を向上させようという試みがなされている。
【0003】
特許文献1においては、発光層から透光性電極の方向に発せられた光と、反射性電極の方向に発せられた光との干渉を利用し、発光位置から反射層までの距離を発光波長の光が共振するように設定することにより発光効率を高めることが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、透光性電極と基板との界面での光の反射も考慮し、発光位置から反射性電極までの距離と、発光位置から透光性電極と基板との界面までの距離との両方を規定している。
【0005】
特許文献3においては、光が透光性電極と反射性電極との間で多重反射することにより起こる干渉を利用し、透光性電極と反射性電極との間の層の厚さを望みの波長の光が共振するように設定することにより発光効率を高めている。
【0006】
特許文献4においては、共振器構造を用いて発光効率を高めた発光素子を組み合わせた表示装置において白色の色度点の視野角特性の向上を図る手法として、有機層の厚さを制御することにより赤(R)緑(G)青(B)3色の減衰のバランスを制御する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、上記の従来の技術においては、発光効率を高めるために発光された光の干渉を利用する有機EL素子では、取り出される光hの干渉フィルタの帯域幅が狭くなると、発光面を斜め方向から見た場合に光hの波長が大きくシフトし、発光強度が低下するなど、発光特性の視野角依存性が高くなる。
【0008】
これに対し、特許文献5においては、半値幅の狭い単色スペクトルを持つ有機EL素子について、反射層による発光の位相を、完全反射面側と射出側で中心波長に対して逆位相になるように設定し、視野角による色相変化を抑えることが提案されている。
【0009】
また、順次積層された白色発光層を有する有機発光素子でも、素子内部に上記のような干渉が存在するため、効率良く幅広い波長成分を有する白色発光を取り出すためには、発光位置を反射層に接近させ、特に80nm以下の距離に接近させることが好ましい。発光位置が反射層から離れ、その距離が大きくなると、干渉により、幅広いスペクトルを有する白色発光を得ることが困難となる。
【0010】
特許文献6においては、発光位置から反射層までの距離と、発光位置から透光性電極と外部層との界面までの距離を規定することにより、効率の良い白色の色度に優れた発光素子が得られることが開示されている。
【0011】
特許文献7においては、特許文献5と同様の逆位相の干渉を取り入れることによって良好な白色色度点が得られることが報告されている。しかしながら、位相の相殺を広い波長帯域で行うことができないため、特許文献5におけるように単色のような視野角による色相変化抑制については言及されていない。
【0012】
一方、発光効率を高めるとともに発光寿命の向上を図るために、複数の発光層を中間層を介して積層することにより、発光層が直列に接続された積層構造(いわゆるタンデム構造)を有するように有機層を構成する技術が知られている(例えば、特許文献8〜10参照。)。この種の有機層では、任意の数の発光層を積層させることが可能である。同じ波長のスペクトルを積層させて効率を上げるほか、違う波長のスペクトルを積層させることで色の調整をすることも可能である。例えば、青色光を発生させる青色発光層と、黄色光を発生させる黄色発光層とを積層させることにより、それらの合成光として白色光を発生させることができる。
【0013】
しかしながら、上述のようなタンデム構造を形成した場合、各発光位置から反射層までの距離を全て80nm以下に構成することは難しく、輝度および色相の視野角依存性が非常に高くなるため、照明装置としての配光特性または表示装置としての表示特性の著しい低下を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−289358号公報
【特許文献2】特開2000−243573号公報
【特許文献3】国際公開WO01/039554号パンフレット
【特許文献4】特許第3508741号明細書
【特許文献5】特開2006−244713号公報
【特許文献6】特開2004−79421号公報
【特許文献7】特開2006−244712号公報
【特許文献8】特開2006−173550号公報
【特許文献9】特表2008−511100号公報
【特許文献10】特表2008−518400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、発光層を複数積層した構造においても広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、複数の色の合成色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光素子を提供することである。
本開示が解決しようとする他の課題は、角度依存性が少なく、配光特性が良好な照明装置を提供することである。
本開示が解決しようとするさらに他の課題は、視野角依存性が少ない高画質の表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本開示は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子である。
2L11/λ11+φ1/2π=0 (1)
2L21/λ21+φ1/2π=n(ただし、n≧1) (2)
λ1<λ11<λ1+200 (3)
λ2−40<λ21<λ2+40 (4)
2L12/λ12+φ2/2π=m’ (5)
2L22/λ22+φ2/2π=n’+1/2 (6)
λ1−100<λ12<λ1 (7)
λ2−15<λ22<λ2+15 (8)
ただし、n、m’、n’:整数
λ1、λ2、λ11、λ21、λ12、λ22の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
【0017】
また、本開示は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、前記の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子を少なくとも一つ有する照明装置である。
【0018】
また、本開示は、
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、前記の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子を少なくとも一つ有する表示装置である。
【0019】
第1の発光層および第2の発光層の発光中心とは、それらの厚さ方向の発光強度分布のピークが位置する面を意味し、通常はその厚さを二等分する面である。第1の発光層または第2の発光層が2色以上の互いに異なる色の光を発光するものである場合、各色の光を発光する層の厚さが十分に小さいために発光中心が同一とみなせる場合、この発光中心は通常、その厚さを二等分する面である。
【0020】
式(1)は、第1の反射界面と第1の発光層の発光中心との間の光学距離を、第1の発光層の発光スペクトルの中心波長より長波長側の光が第1の反射界面と第1の発光層の発光中心との間における干渉によって強め合うように設定する式である。式(2)は、第1の反射界面と第2の発光層の発光中心との間の光学距離を、第2の発光層の発光スペクトルの中心波長付近の光が第1の反射界面と第2の発光層の発光中心との間における干渉によって強め合うように設定する式である。式(3)、(4)は、この場合の干渉波長の広帯域化のための条件である。式(5)は、第1の発光層からの光に対して、第2の反射界面による光の反射が、第1の発光層の発光スペクトルの中心波長より短波長側の光に対して強め合う条件である。式(6)は、第2の発光層からの光に対して、第2の反射界面による光の反射が、第2の発光層の発光スペクトルの中心波長付近の光に対して弱め合う条件である。式(1)、(2)、(5)、(6)のλ11、λ21、λ12、λ22は、式(3)、(4)、(7)、(8)によってλ1、λ2より求められる。
【0021】
n、m’、n’は必要に応じて選ばれる。発光素子から取り出すことができる光量を大きくするためにはn≦5とするのが好ましく、最も好ましくはn=1である。
【0022】
第1の発光層または第2の発光層は、典型的には、互いに波長が異なる可視光領域の光を発光するが、これに限定されるものではない。
【0023】
この発光素子によれば、干渉フィルタの分光透過率曲線のピークを可視光領域でほぼ平坦とすることができる。特に、上記の式(1)〜(8)を全て満足するように発光素子を構成することにより、視野角が45度のときの輝度の低下が視野角が0度のときの輝度に対して30%以下、色度ずれΔuv≦0.015とすることができる。
【0024】
この発光素子は上面発光型に構成してもよいし、下面発光型に構成してもよい。上面発光型の発光素子では、基板上に第1の電極、有機層および第2の電極が順次積層される。下面発光型の発光素子では、基板上に第2の電極、有機層および第1の電極が順次積層される。上面発光型の発光素子の基板は不透明であっても透明であってもよく、必要に応じて選ばれる。下面発光型の発光素子の基板は、第2の電極側から射出される光を外部に取り出すために透明とする。
【0025】
第1の発光層および第2の発光層のうちの、2色以上の互いに異なる色の光を発光する発光層の発光中心が同一とみなせない場合には、この発光素子は、必要に応じて、発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦性を維持するための反射層をさらに有する。
【0026】
必要に応じて、第1の反射界面および第2の反射界面に加えて一つまたは複数の反射界面を設けてもよい。また、必要に応じて、第1の反射界面、第2の反射界面および第3の反射界面の少なくとも一つを複数の反射界面に分割してもよい。こうすることで、第1の反射界面による光の反射および第2の反射界面による光の反射が強め合ったり、弱め合ったりする波長帯域を拡大させ、各発光領域に対する干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦部を広げることにより視野角特性の向上を図ることができる。
【0027】
この発光素子においては、信頼性の向上や採用する構成などの関係で反射層がさらに形成され、それによって反射界面がさらに形成される場合がある。その場合には、光学動作に必要な第2の反射界面までを形成した後、その上に少なくとも厚さ1μm以上の層を形成することによって、以降の干渉の影響をほとんど無視することが可能となる。この際の第2の反射界面の外側の材質は、任意のものを使用することが可能で、発光素子の形態に応じて適宜選択される。具体的には、第2の反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層、空気層などのいずれか一つまたは二つ以上によって形成されるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本開示の照明装置および表示装置は従来公知の構成とすることができ、それらの用途や機能などに応じて適宜構成される。表示装置は、典型的な一つの例では、表示画素毎に対応した表示信号を発光素子に供給するための能動素子(薄膜トランジスタなど)が設けられた駆動基板と、この駆動基板と対向して設けられた封止基板とを有する。発光素子は駆動基板と封止基板との間に配置される。この表示装置は白色表示装置、白黒表示装置、カラー表示装置などのいずれのものであってもよい。カラー表示装置においては、典型的には、駆動基板および封止基板のうちの発光素子の第2の電極側の基板に第2の電極側から射出される光を透過するカラーフィルタが設けられる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、発光層を複数積層した構造においても広い波長帯域で良好に光を取り出すことができるとともに、複数の色の合成色の光に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる発光素子を実現することができる。
【0030】
また、本開示によれば、上記の発光素子を用いていることにより、角度依存性が少ない、配光特性が良好な照明装置および視野角依存性の少ない高画質の表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施の形態による有機EL素子を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面による干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図3】第1の実施の形態による有機EL素子における第2の反射界面による干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図4】第1の実施の形態による有機EL素子における第1の反射界面および第2の反射界面の合成干渉フィルタの分光透過率曲線を示す略線図である。
【図5】第1の実施の形態による有機EL素子の輝度の視野角特性を示す略線図である。
【図6】第1の実施の形態による有機EL素子の色度の視野角特性を示す略線図である。
【図7】第1の発光層から発光される黄色の光の規格化強度と光学距離L11との関係を示す略線図である。
【図8】第2の発光層から発光される青色の光の規格化強度と光学距離L21との関係を示す略線図である。
【図9】第1の発光層から発光される黄色の光の規格化強度と光学距離L12との関係を示す略線図である。
【図10】第2の発光層から発光される青色の光の規格化強度と光学距離L22との関係を示す略線図である。
【図11】第1の発光層から発光される黄色の光の規格化強度および第2の発光層から発光される青色の光の規格化強度と光学距離L22との関係を示す略線図である。
【図12】実施例1による上面発光型有機EL素子を示す断面図である。
【図13】実施例2による下面発光型有機EL素子を示す断面図である。
【図14】第3の実施の形態による有機EL照明装置を示す断面図である。
【図15】第4の実施の形態による有機EL表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(有機EL素子)
2.第2の実施の形態(有機EL素子)
3.第3の実施の形態(有機EL照明装置)
4.第4の実施の形態(有機EL表示装置)
【0033】
〈1.第1の実施の形態〉
[有機EL素子]
図1は第1の実施の形態による有機EL素子を示す。
図1に示すように、この有機EL素子においては、第1の電極11と第2の電極12との間に、第1の電極11から第2の電極12に向かう方向の互いに離れた位置に第1の発光層13aおよび第2の発光層13bを順次含む有機層13が挟持されている。第1の発光層13aの上下および第2の発光層13bの上下の部分の有機層13には、必要に応じて、従来公知の有機EL素子と同様に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などが設けられる。この場合、第2の電極12は、この有機EL素子から取り出そうとする光、典型的には可視光を透過する透明電極であり、この第2の電極12側から光が射出される。第1の発光層13aおよび第2の発光層13bは、可視光領域の単色または波長の差が例えば120nm以内の2色以上の互いに異なる色の光を発光するものである。第1の発光層13aおよび第2の発光層13bの発光波長はこの有機EL素子から発光させようとする光の色に応じて適宜選ばれる。一般的には、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bの発光波長は第1の電極11から第2の電極12に向かう方向に順次短くなるのが好ましいが、これに限定されるものではない。ここでは、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bともに単色光を発光するものとする。例えば、この有機EL素子を白色発光素子として使用する場合には、第1の発光層13aから黄色の光を発光させ、第2の発光層13bから青色の光を発光させる。第1の電極11、第2の電極12、有機層13、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bは従来公知の材料により構成することができ、必要に応じて選択される。
【0034】
有機層13の屈折率は第1の電極11の屈折率と異なり、これらの屈折率の差により第1の電極11と有機層13との間に第1の反射界面14が形成されている。この第1の反射界面14は、必要に応じて第1の電極11から離れた位置に設けてもよい。この第1の反射界面14は、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bから発光された光を反射させ、第2の電極12側から射出させる役割を有する。有機層13の屈折率は第2の電極12の屈折率と異なり、これらの屈折率の差により有機層13と第2の電極12との間に第2の反射界面15が形成されている。
【0035】
図1には、光学距離L11、L21、L12およびL22を該当個所に記入した。この有機EL素子においては、上記の式(1)〜(8)を全て満足するように、L11、L21、L12およびL22が設定されている。
【0036】
この有機EL素子が白色発光素子である場合を例に取ってより具体的に説明する。
この白色発光の有機EL素子においては、第1の発光層13aが黄色の光を発光し、第2の発光層13bが青色の光を発光し、これらの色の合成色として白色光を取り出す。第1の発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1は例えば560nm、第2の発光層13bの発光スペクトルの中心波長λ2は例えば450nmである。
【0037】
第1の反射界面14と第1の発光層13aの発光中心との間の光学距離L11および第1の反射界面14と第2の発光層13bの発光中心との間の光学距離L21は式(1)〜(4)を満足するように設定される。L11は、第1の発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1より長波長側の光が、第1の反射界面14と第1の発光層13aの発光中心との間における干渉によって強め合うように設定される。L21は、第2の発光層13bの発光スペクトルの中心波長λ2付近の光が第1の反射界面15と第2の発光層13bの発光中心との間における干渉によって強め合うように設定される。
【0038】
各波長の光が第1の反射界面14で反射される際の位相変化φ1は次のようにして計算される。すなわち、φ1は、第1の電極11の複素屈折率N=n−jk(n:屈折率、k:消衰係数)のn、kと、この第1の電極11と接している有機層13の屈折率n0 とを用いて
φ1=tan-1{(2n0 k/(n2 +k2 −n0 2 ))}
なる式で計算することができる(例えば、Principles of Optics, Max Born and Emil Wolf,1974(PERGAMON PRESS) などを参照)。有機層13の屈折率は分光エリプソメトリー測定装置を用いて測定することが可能である。
【0039】
φ1の計算の具体例を以下に示す。第1の電極11が例えばアルミニウム(Al)合金からなるとすると、波長460nm(第2の発光層13bの発光スペクトルの中心波長λ2に対応する)の光に対してn=0.570、k=4.725、波長550nm(第1の発光層13aの発光スペクトルの中心波長λ1に対応する)の光に対してn=0.908、k=5.927である。有機層13の屈折率n0 =1.75とし、−2π<φ1≦0であることを考慮すると、波長460nmの光に対してφ1=−2.511ラジアン、波長550nmの光に対してφ1=−2.618ラジアンと求めることができる。なお、各波長の光が第2の反射界面15で反射される際の位相変化φ2も同様にして求めることができる。
【0040】
次に、例えば、L11=154nm、L21=305nmとおき、式(1)、(2)からλ11、λ21を求めると、次のようになる。
2L11/λ11+φ1/2π=0 (1)’
2L21/λ21+φ1/2π=1 (2)’
ただし、
λ1=560<λ11=739<λ1+200=760nm (3)’
λ2−40=410<λ21=435<λ2+40=490nm (4)’
(λ11、λ21の単位はnm)
これらは式(1)〜(4)を満たしている。
【0041】
このときの第1の発光層13aおよび第2の発光層13bに対する第1の反射界面15による干渉フィルタの状態は強め合う条件にあるため、分光透過率曲線は、図2に示すようにピーク部分を持ち、光取り出しに波長選択性が生じる。その結果、内部発光と異なる発光スペクトルが観察される。この場合、波長550nm付近では透過率が低下しているため、白色の光をバランスよく取り出すことができない。さらに、分光透過率曲線に平坦な部分が得られていないため、視野角特性は輝度および色相とも著しい変化を示す。そこで、第2の反射界面15が必要となる。
【0042】
次に、第2の反射界面15を屈折率n0 =1.75の有機層13とこの有機層13と異なる屈折率(例えば、屈折率1.6)の第2の電極12との間に形成する。屈折率1.6の第2の電極12の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide: ITO)を用いることができる。
【0043】
第1の発光層13aの発光中心と第2の反射界面15との間の光学距離L12および第2の発光層13bの発光中心と第2の反射界面15との間の光学距離L22は式(5)〜(8)を満たすように設定される。第2の反射界面15による光の反射は、第1の発光層13aからの光に対しては中心波長λ1より短波長側で強め合う条件、第2の発光層13bからの光に対しては中心波長λ2付近で弱め合う条件となっている。例えば、L12=483nm、L22=333nmと置くと、第2の反射界面15ではこの場合、φ2=0であるから、
2L12/λ12=2 (5)’
2L22/λ22=1+1/2 (6)’
λ1−100=460nm<λ12=483nm<λ1−50=510nm(7)’
λ2−15=435nm<λ22=444nm<λ2+15=465nm (8)’
(λ12、λ22の単位はnm)
となり、式(5)〜(8)の条件を全て満たす。
以上により、式(1)〜(8)の条件が全て満足される。
【0044】
図3に、第2の反射界面15による干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。図3に示すように、この場合、青色領域では、発光中心付近で弱め合う条件になっている。また、黄色領域では、発光中心付近を境に短波長領域で強め合い、長波長領域で弱め合う条件になっている。
【0045】
図4に、第1の反射界面14に加えて第2の反射界面15の効果を入れた干渉フィルタの分光透過率曲線を示す。図4より、分光透過率曲線の青色領域および黄色領域ともほぼ平坦な干渉フィルタが形成されていることが分かる。また、この状態での輝度および色度の視野角特性を図5および図6に示す。図5および図6から明らかなように、45度の視野角において0度の視野角における輝度の85%以上を維持しており、色度ずれもΔuv≦0.015が実現されている。
【0046】
ここで、光学距離L11、L21、L12およびL22の決定方法について改めて説明する。
まず、L11、L21の決定方法について説明する。
一例として、第1の発光層13aが黄色の光(中心波長λ1=560nm)を発光し、第2の発光層13bが青色の光(中心波長λ2=460nm)を発光し、有機EL素子が白色発光素子である場合について説明する。
【0047】
第1の発光層13aおよび第2の発光層13bのそれぞれから第2の反射界面15に向かう光は、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bのそれぞれから直接、第2の反射界面15に向かう光と、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bのそれぞれから第1の反射界面14に向かい、この第1の反射界面14で反射されて第2の反射界面15に向かう光とを重ね合わせたものとなる。
【0048】
第1の反射界面14および第2の反射界面15での位相ずれを考慮すると、重ね合わせられた光の強度は、次の式(a)、(b)に比例し、光学距離L11、L21の関数となる。
{1+cos(4 π×L11/λ1+φ1)}2 + {sin(4 π×L11/λ1+φ1)}2 (a)
{1+cos(4 π×L21/λ2+φ1)}2 + {sin(4 π×L21/λ1+φ1)}2 (b)
ここで、各波長の光が第1の反射界面14で反射される際の位相シフトφ1の求め方はすでに述べた通りであり、上記の例では460nmでφ1=−2.511ラジアン、560nmで−2.618ラジアンと求めることができる。
【0049】
第1の発光層13aについて、式(a)を用いて計算した、波長560nmでの光強度(規格化強度)と光学距離L11との関係を図7に示す。また、第2の発光層13bについて、式(b)を用いて計算した、波長460nmでの光強度(規格化強度)と光学距離L21との関係を図8に示す。
【0050】
第1の発光層13aおよび第2の発光層13bを設ける位置については、次の条件を満たす位置に選ばれる。
(i)第1の発光層13aを設ける位置、したがってL11は規格化強度が0.8より大きく、かつ規格化光強度が左上がりになっている位置に設ける。
(ii)第2の発光層13bを設ける位置、したがってL21は規格化強度が0.8より大きい位置に設ける。
【0051】
(i)の条件は、L11については、λ1で強め合い、かつλ1近傍の長波長側で更に強めあう条件を表す。(ii)の条件は、L21については、λ2で強め合う条件を表す。
【0052】
計算に当てはめると、
116<L11<158、288<L21<355
となる。これを式(1)(2)を用いてλ11、λ21の不等式の形に書き換えると、
λ1<λ11<λ1+203nm、λ2−48nm<λ21<λ2+48nm
となる。これにより、L11、L21を決定することができる。
【0053】
次に、L12、L22の決定方法について説明する。
式(1)〜(4)よりL11、L21は求まっているので、例えば、L11=130nm、L21=320nmとおく。
【0054】
このとき、第2の反射界面15による干渉は、上述のように、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bのそれぞれから直接、第2の反射界面15に向かう光と、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bのそれぞれから第1の反射界面14に向かい、この第1の反射界面14で反射されて第2の反射界面15に向かう光との重ね合わせにより表される。第1の反射界面14および第2の反射界面15における位相ずれを考慮すると、重ね合わせられた光の強度は、次の式(c)、(d)に比例し、光学距離L12、L22の関数となる。
{1+cos(4 π×L12/λ1+φ2)}2 + {sin(4 π×L12/λ1+φ2)}2 (c)
{1+cos(4 π×L22/λ2+φ2)}2 + {sin(4 π×L22/λ1+φ2)}2 (d)
ここで、各波長の光が第2の反射界面15で反射される際の位相シフトφ2の算出が必要となる。
【0055】
第2の反射界面15を例えば有機層13と透明電極材料からなる第2の電極12との界面として形成し、可視光領域で透明電極材料のn0 =1.6、k=0とすると、φ2=0となる。
【0056】
第1の発光層13aについて、式(c)を用いて計算した、波長560nmでの光強度(規格化強度)と光学距離L12との関係を図9に示す。また、第2の発光層13bについて、式(d)を用いて計算した、波長460nmでの光強度(規格化強度)と光学距離L22との関係を図10に示す。
【0057】
第1の発光層13aおよび第2の発光層13bを設ける位置については、次の条件を満たす位置に選ばれる。
(iii)第1の発光層13aを設ける位置、したがってL12は規格化強度が右上がりになっている位置に設ける。
(iv)第2の発光層13bを設ける位置、したがってL22は規格化強度が0.1より小さい位置に設ける。
【0058】
(iii)の条件は、L12については、λ1での規格化強度と比較し、λ1近傍の短波長側では強め合い、λ1近傍の長波長側では弱め合う条件を表す。(iv)の条件は、L22については、λ2で弱め合う条件を表す。
【0059】
計算に当てはめると、
420<L12<560、320<L22<370
となる。これを式(5)、(6)を用いてλ12、λ22の不等式の形に書き換えると、λ1−140nm<λ12<λ1、λ2−33nm<λ22<λ2+33nm
となる。
【0060】
これらの式を同時に満たすL12、L22が求める値となる。ここで、L12とL22との間には次の関係がある。
L22=L12+L11−L21 (e)
【0061】
いま、L11=130nm、L21=320nmとおいているので、L22=L12+130−320=L12−190nmの関係が成り立つ。
【0062】
そこで、式(e)を用いてL22の関数として各規格化強度を表すと図11に示すようになる。
各条件を同時に満たすL22を求めればよい。例えば、L22=340nmとすることができる。
以上の計算手続きにより、L11、L21、L12およびL22の全ての数値を決定することができる。
【0063】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、式(1)〜(8)の全てを満たすように有機EL素子が構成されている。この結果、この有機EL素子は干渉フィルタの透過率が広い波長帯域で高く、広い波長帯域で良好に光を取り出すことができる。このため、この有機EL素子によれば、良好な色相を持つ白色発光素子を実現することができる。また、この有機EL素子は、単色または2色以上の互いに異なる色の合成色に対する輝度および色相の視野角依存性の大幅な低減を図ることができる。また、この有機EL素子は、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bの設計により発光色を選択することができる。また、この有機EL素子は干渉フィルタの透過率が高いので、低消費電力である。
【0064】
〈2.第2の実施の形態〉
[有機EL素子]
第2の実施の形態による有機EL素子においては、第1の実施の形態による有機EL素子における第2の反射界面15をそれぞれ前後二つの反射界面に分けることによって、式(6)で示される逆位相の干渉条件の波長帯域を広げる。つまり、式(6)については、第2の反射界面15を前後にそれぞれΔだけ離れた二つの反射界面に分けると、L22がL22+Δ、L22−Δとなるため、式(6)が成立するλ12の帯域が広がる。
【0065】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、式(6)で示される逆位相の干渉条件の波長帯域を広げることができるので、有機EL素子の視野角特性のより一層の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
【0066】
〈実施例1〉
実施例1は第1の実施の形態に対応する実施例である。
図12は実施例1による有機EL素子を示す。この有機EL素子は上面発光型の有機EL素子である。図12に示すように、この有機EL素子においては、基板20上に下層から順に第1の電極11、有機層13および第2の電極12が順次積層され、第2の電極12上にパッシベーション膜21が設けられている。
【0067】
基板20は、例えば、透明ガラス基板や半導体基板(例えば、シリコン基板)などで構成され、フレキシブルなものであってもよい。第1の電極11は、反射層を兼ねたアノード電極として用いられるもので、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、白金(Pt)、金(Au)、クロム(Cr)、タングステン(W)などの光反射材料で構成されている。この第1の電極11は、厚さが100〜300nmの範囲に設定されていることが好ましい。第1の電極12は透明電極としてもよく、この場合は、基板20との間に第1の反射界面14を形成する目的で、例えばPt、Au、Cr、Wなどの光反射材料からなる反射層を設けるのが好ましい。
【0068】
有機層13は、正孔注入層13c、正孔輸送層13d、第1の発光層13a、電子輸送層13e、電子注入層13f、接続層13g、正孔輸送層13h、第2の発光層13b、電子輸送層13iおよび電子注入層13jが下層から順次積層された構造を有する。正孔注入層13cは、例えばヘキサアザトリフェニレン(HAT)などで構成される。正孔輸送層13dは、例えばα−NPD〔N,N'-di(1-naphthyl)-N,N'-diphenyl-〔1,1'-biphenyl 〕- 4,4'-diamine〕で構成される。第1の発光層13aは、黄色の発光色を有する発光材料で構成される。黄色の発光色を有する発光材料としては、ホスト材料としてのルブレンにピロメテンホウ素錯体をドーピングしたものを用いることができる。電子輸送層13eは、例えばBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)などで構成される。電子注入層13fは、例えばフッ化リチウム(LiF)などで構成される。接続層13gは、例えば、Mgを5%ドープしたAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)、ヘキサアザトリフェニレン(HAT)などで構成される。正孔注入層を兼用する正孔輸送層13hは、例えばα−NPDで構成される。第2の発光層13bは、青の発光色を有する発光材料で構成される。具体的には、ホスト材料としてADN(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)を蒸着し、膜厚20nmの膜を形成する。その際、ADNにジアミノクリセン誘導体をドーパント材料として相対膜厚比で5%ドーピングすることによりこの膜を青色発光層として用いることができる。電子輸送層13iは例えばBCPで構成される。電子注入層13jは例えばLiFで構成される。
【0069】
有機層13を構成する各層の厚さは、正孔注入層13cが1〜20nm、正孔輸送層13dが15〜100nm、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bがそれぞれ5〜50nm、電子注入層13f、13jおよび電子輸送層13e、13iは15〜200nmの範囲に設定されることが好ましい。有機層13およびこれを構成する各層の厚さは、その光学的膜厚が前記の動作を可能とするような値に設定される。
【0070】
第2の反射界面15は、有機層13とその上の第2の電極12との屈折率差を利用して形成する。この第2の電極12は、一般的に透明電極材料として用いられているITOやインジウムと亜鉛の酸化物などで構成され、カソード電極として用いられる。この第2の電極12の厚さは例えば30〜3000nmの範囲とする。
【0071】
パッシベーション膜21は透明誘電体で構成される。この透明誘電体は、必ずしも第2の電極12を構成する材料と同程度の屈折率とする必要はない。この第2の電極12とパッシベーション膜21との界面をそれらの屈折率差を用いて第2の反射界面15として機能させることも可能である。このような透明誘電体としては、例えば二酸化シリコン(SiO2 )、窒化シリコン(SiN)などを用いることができる。パッシベーション膜21の厚さは例えば500〜10000nmである。
【0072】
必要に応じて、有機層13と第2の電極12との間に半透明反射層を設けてもよい。この半透明反射層は、例えば、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)あるいはそれらの合金などの金属層で構成され、厚さが5nm以下、好ましくは3〜4nm以下に設定されていることが好ましい。
【0073】
〈実施例2〉
実施例2は第1の実施の形態に対応する実施例である。
図13は実施例2による有機EL素子を示す。この有機EL素子は下面発光型の有機EL素子である。図13に示すように、この有機EL素子においては、透明な基板20上に下層から順にパッシベーション膜21、第2の電極12、有機層13および第1の電極11が順次積層されている。この場合、第2の電極12側から射出される光は基板20を透過して外部に取り出される。その他のことは実施例1と同様である。
【0074】
〈3.第3の実施の形態〉
[有機EL照明装置]
図14は第3の実施の形態による有機EL照明装置を示す。
図14に示すように、この有機EL照明装置においては、透明な基板30上に第1または第2の実施の形態のいずれかによる有機EL素子31が搭載されている。この場合、この有機EL素子31は第2の電極12側を下にして基板30上に搭載されている。このため、第2の電極12側から射出される光は基板30を透過して外部に取り出される。この有機EL素子31を間に挟んで基板30と対向するように封止基板32が設けられており、この封止基板32および基板30の外周部が封止材33により封止されている。この有機EL照明装置の平面形状は必要に応じて選択されるが、例えば正方形または長方形である。図14においては、一つの有機EL素子31だけが示されているが、必要に応じて、複数の有機EL素子31を基板30上に所望の配置で搭載してもよい。この有機EL照明装置の有機EL素子31以外の構成の詳細および上記以外の構成は従来公知の有機EL照明装置と同様である。
【0075】
この第3の実施の形態によれば、第1または第2の実施の形態のいずれかによる有機EL素子31を用いていることにより、角度依存性が少ない、言い換えれば照明方向による強度や色の変化が極めて少ない、良好な配光特性を有する面光源となる有機EL照明装置を実現することができる。また、第1の発光層13aおよび第2の発光層13bの設計により有機EL素子31の発光色を選択することにより、白色発光のほか、種々の発光色を得ることができ、演色性に優れた有機EL照明装置を実現することができる。
【0076】
〈4.第4の実施の形態〉
[有機EL表示装置]
図15は第4の実施の形態による有機EL表示装置を示す。この有機EL表示装置はアクティブマトリクス型である。
【0077】
図15に示すように、この有機EL表示装置においては、駆動基板40と封止基板41とが互いに対向して設けられ、これらの駆動基板40および封止基板41の外周部が封止材42により封止されている。駆動基板40においては、例えば透明ガラス基板上に第1または第2の実施の形態のいずれかによる有機EL素子43からなる画素が二次元アレイ状に形成されている。駆動基板40上には、各画素毎に画素駆動用の能動素子としての薄膜トランジスタが形成されている。駆動基板40上にはさらに、各画素の薄膜トランジスタを駆動するための走査線、電流供給線およびデータ線が縦横に形成されている。各画素の薄膜トランジスタには表示画素毎に対応した表示信号が供給され、この表示信号に応じて画素が駆動され、画像が表示される。この有機EL表示装置の有機EL素子43以外の構成の詳細および上記以外の構成は従来公知の有機EL表示装置と同様である。
【0078】
この有機EL表示装置は、白黒の表示装置だけでなく、カラー表示装置としても用いることができる。この有機EL表示装置をカラー表示装置として用いる場合には、駆動基板40側、具体的には例えば有機EL素子43の第2の電極12と駆動基板40との間にRGBのカラーフィルタが設けられる。
【0079】
この第4の実施の形態によれば、第1または第2の実施の形態のいずれかによる有機EL素子31を用いていることにより、輝度および色相の視野角による変動が極めて少ない高画質の有機EL表示装置を実現することができる。
【0080】
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本技術、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0081】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
11…第1の電極、12…第2の電極、13…有機層、13a…第1の発光層、13b…第2の発光層、14…第1の反射界面、15…第2の反射界面、20…基板、21…パッシベーション膜、30…基板、31…有機EL素子、32…封止基板、33…封止材、40…駆動基板、41…封止基板、42…封止材、43…有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子。
2L11/λ11+φ1/2π=0 (1)
2L21/λ21+φ1/2π=n(ただし、n≧1) (2)
λ1<λ11<λ1+200 (3)
λ2−40<λ21<λ2+40 (4)
2L12/λ12+φ2/2π=m’ (5)
2L22/λ22+φ2/2π=n’+1/2 (6)
λ1−100<λ12<λ1 (7)
λ2−15<λ22<λ2+15 (8)
ただし、n、m’、n’:整数
λ1、λ2、λ11、λ21、λ12、λ22の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項2】
前記発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークがほぼ平坦である請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
視野角が45度のときの輝度の低下が視野角が0度のときの輝度に対して30%以下、色度ずれΔuv≦0.015である請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
n=1である請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
基板上に前記第1の電極、前記有機層および前記第2の電極が順次積層されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第2の反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層または空気層によって形成されている請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
基板上に前記第2の電極、前記有機層および前記第1の電極が順次積層されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2の反射界面の外側が厚さ1μm以上の透明電極層、透明絶縁層、樹脂層、ガラス層または空気層によって形成されている請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の反射界面および前記第2の反射界面の少なくとも一つが複数の反射界面に分割されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1の発光層および前記第2の発光層のうちの、2色以上の互いに異なる色の光を発光する発光層の発光中心が同一とみなせない場合に、前記発光素子の干渉フィルタの分光透過率曲線のピークの平坦性を維持するための反射層をさらに有する請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子を少なくとも一つ有する照明装置。
2L11/λ11+φ1/2π=0 (1)
2L21/λ21+φ1/2π=n(ただし、n≧1) (2)
λ1<λ11<λ1+200 (3)
λ2−40<λ21<λ2+40 (4)
2L12/λ12+φ2/2π=m’ (5)
2L22/λ22+φ2/2π=n’+1/2 (6)
λ1−100<λ12<λ1 (7)
λ2−15<λ22<λ2+15 (8)
ただし、n、m’、n’:整数
λ1、λ2、λ11、λ21、λ12、λ22の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項12】
第1の電極と第2の電極との間に挟持された、単色または2色以上の互いに異なる色の光を発光する第1の発光層および第2の発光層を前記第1の電極から前記第2の電極に向かう方向の互いに離れた位置に順次含む有機層と、
前記第1の発光層および前記第2の発光層から発光された光を反射させ、前記第2の電極側から射出させるための、前記第1の電極側に設けられた第1の反射界面と、
前記第2の電極側に設けられた第2の反射界面とを有し、
前記第1の反射界面と前記第1の発光層の発光中心との間の光学距離をL11、前記第1の反射界面と前記第2の発光層の発光中心との間の光学距離をL21、前記第1の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL12、前記第2の発光層の発光中心と前記第2の反射界面との間の光学距離をL22、前記第1の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ1、前記第2の発光層の発光スペクトルの中心波長をλ2としたとき、L11、L21、L12およびL22が、以下の式(1)〜(8)を全て満足する発光素子を少なくとも一つ有する表示装置。
2L11/λ11+φ1/2π=0 (1)
2L21/λ21+φ1/2π=n(ただし、n≧1) (2)
λ1<λ11<λ1+200 (3)
λ2−40<λ21<λ2+40 (4)
2L12/λ12+φ2/2π=m’ (5)
2L22/λ22+φ2/2π=n’+1/2 (6)
λ1−100<λ12<λ1 (7)
λ2−15<λ22<λ2+15 (8)
ただし、n、m’、n’:整数
λ1、λ2、λ11、λ21、λ12、λ22の単位はnm
φ1:各波長の光が第1の反射界面で反射される際の位相変化
φ2:各波長の光が第2の反射界面で反射される際の位相変化
【請求項13】
表示画素毎に対応した表示信号を前記発光素子に供給するための能動素子が設けられた駆動基板と、この駆動基板と対向して設けられた封止基板とを有し、前記発光素子が前記駆動基板と前記封止基板との間に配置されている請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記駆動基板および前記封止基板のうちの前記発光素子の前記第2の電極側の基板に前記第2の電極側から射出される光を透過するカラーフィルタが設けられている請求項13に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−204256(P2012−204256A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69585(P2011−69585)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】