説明

発光素子、発光装置、表示装置および電子機器

【課題】駆動電圧が比較的低く、発光効率に優れた発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い、発光装置、表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極9と、陽極3と、陰極9と陽極3との間に設けられ、それぞれ異なる色に発光する発光材料と前記発光材料とを担持するホスト材料とを含んだ第1の発光層61と第2の発光層62と第3の発光層63とで構成された発光部6とを有し、第1の発光層61と、第2の発光層62と、第3の発光層63とは、共通のホスト材料として、第1のホスト材料を含み、第1の発光層61は、第2の発光層62および第3の発光層63よりも長い波長の光を放出するものであり、かつ、ホスト材料として、さらに第1のホスト材料とは異なる第2のホスト材料を含み、第2のホスト材料は、第1のホスト材料よりも前記第1の発光層61の発光を促進する能力が高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、発光装置、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
【0003】
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に対応する3層の発光層を積層し、白色発光させるものが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。このような白色発光する発光素子は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が画素ごとに塗り分けられたカラーフィルタと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0004】
特許文献1にかかる発光素子では、発光層毎に含まれる各発光材料の発光に適した異なるホスト材料を用いている。この結果、その発光層間の境界付近において、キャリア(電子および正孔)の移動が制限されてしまい、駆動電圧が上昇しやすい。
また、非特許文献1にかかる発光素子では、発光層同士の間に中間層を設けることで、発光層間でのキャリア(電子および正孔)の移動を制限することができ、各発光層での正孔と電子との再結合の量を調整している。この結果、発光素子の発光効率、発光寿命等の性能を向上させている。しかしながら、このような発光素子は、中間層を有することによって、駆動電圧が上昇しやすい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−287691号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hitoshi Kuma, et.al,SID 07 DIGEST,P1504(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、駆動電圧が比較的低く、発光効率に優れた発光素子、かかる発光素子を備えた信頼性の高い発光装置、表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、それぞれ異なる色に発光する発光材料と前記発光材料とを担持するホスト材料とを含んだ第1の発光層と第2の発光層と第3の発光層とで構成された発光部とを有し、
前記第1の発光層と、前記第2の発光層と、前記第3の発光層とは、共通の前記ホスト材料として、第1のホスト材料を含み、
前記第1の発光層は、前記第2の発光層および前記第3の発光層よりも長い波長の光を放出するものであり、かつ、前記ホスト材料として、さらに前記第1のホスト材料とは異なる第2のホスト材料を含み、
前記第2のホスト材料は、前記第1のホスト材料よりも前記第1の発光層の発光を促進する能力が高いことを特徴とする。
これにより、駆動電圧が比較的低く、発光効率に優れた発光素子を提供することができる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記第2のホスト材料のエネルギーギャップは、前記第1のホスト材料のエネルギーギャップよりも小さく、前記第1の発光層に含まれる発光材料のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。
これにより、発光素子は、第1の発光層をより効率よく発光させることができ、発光効率に優れたものとなる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記第1の発光層における第2のホスト材料の含有率は、前記第1のホスト材料の含有率よりも小さいことが好ましい。
これにより、第1のホスト材料が第1の発光層中に十分に含まれることができ、隣接する発光層との間で電子および正孔の移動がより効率よく行われ、発光素子の駆動電圧がより低いものとなる。
本発明の発光素子では、前記第1の発光層における第2のホスト材料の含有率は、10〜49wt%であることが好ましい。
これにより、第2のホスト材料の効果を十分に発揮しつつ、第1のホスト材料を十分に第1の発光層中に含ませることができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記第1のホスト材料は、アントラセン系材料であることが好ましい。
このような化合物は、エネルギーギャップが比較的大きく、第2の発光層や第3の発光層に含まれる発光材料に対し、電子と正孔とが再結合して生じた励起子のエネルギーを十分に移行することができ、これらの発光層を効率よく発光させることができる。また、このような化合物は、正孔・電子両方の輸送性を有している。
【0012】
本発明の発光素子では、前記第1の色は赤色であることが好ましい。
他の発光層を好適に発光させるために、エネルギーギャップの大きい第1のホスト材料を用いた場合、第1のホスト材料が生成した励起子のエネルギーは、比較的エネルギーギャップの小さい赤色の発光材料へは移行しにくい。しかしながら、第1の発光層に第2のホスト材料を用いることにより、このような問題を解決することができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記第1の発光層に含まれる発光材料は、ジインデノペリレン系化合物であることが好ましい。
このような化合物は、第2のホスト材料より、または第2のホスト材料を介して第1のホスト材料より励起子のエネルギーを受け取ることにより、効率よく発光することができる。この結果、発光素子の発光効率がより優れたものとなる。
【0014】
本発明の発光素子では、前記第2のホスト材料は、ナフタセン誘導体であることが好ましい。
このような化合物を第2のホスト材料として用いることにより、第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第1の発光層に含まれる発光材料に効率よく移動させることができる。また、第1のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第2のホスト材料を用いて第1の発光層に含まれる発光材料に効率よく移動させることができ、以上の結果、第1の発光層に含まれる発光材料をより効率よく発光させることができ、発光素子の発光効率をより優れたものとすることができる。
【0015】
本発明の発光素子では、前記第1の発光層は、電子を捕獲する機能を有し、前記第2の発光層および前記第3の発光層よりも陽極側に設けられることが好ましい。
このような場合、第1の発光層は電子が比較的少ない状態でも発光できるため、第1の発光層は、他の発光層よりも陽極側に配置されることにより、他の発光層に十分に電子が供給されて他の発光層が効率よく発光できるとともに、第1の発光層自身も効率よく発光することができ、発光素子の発光効率を十分に高いものとすることができる。
【0016】
本発明の発光素子は、陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、第1の色に発光する第1の発光材料と、前記第1の発光材料を担持する第1のホスト材料および第2のホスト材料とを含んで構成される第1の発光層と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、前記第1の色より波長の短い第2の色に発光する第2の発光材料と、前記第2の発光材料を担持する前記第1のホスト材料とを含んで構成される第2の発光層と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、前記第1の色より波長が短く、前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光材料と、前記第3の発光材料を担持する前記第1のホスト材料とを含んで構成される第3の発光層とを有し、
前記第1の発光層と、前記第2の発光層と、前記第3の発光層とは、互いに1以上の前記発光層と接触しており、
前記第2のホスト材料は、前記第1のホスト材料よりも前記第1の発光材料の発光を促進する能力が高いことを特徴とする。
これにより、駆動電圧が比較的低く、発光効率に優れた発光素子を提供することができる。
【0017】
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、発光効率に優れ、比較的低電圧で駆動することのできる発光装置を提供することができる。
本発明の表示装置は、本発明の発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、比較的低電圧で駆動でき、高品位な画像を表示することができる信頼性に優れた表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、比較的低電圧で駆動でき、高品位な画像を表示することができる信頼性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の発光素子の好適な実施形態を縦断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図6】実施例に係る発光素子の発光スペクトルである。
【図7】比較例に係る発光素子の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の発光素子、発光装置、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の発光素子の好適な実施形態を縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。すなわち、図1中、後述する発光素子1において、基板2側を下側、陰極9側を上側として説明する。
【0020】
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、有機発光材料を用いて、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光する有機発光素子である。
このような発光素子1は、陽極3と正孔注入層4と正孔輸送層5と複数の発光層からなる発光部6と電子輸送層7と電子注入層8と陰極9とがこの順に積層されてなるものである。また、発光部6は、陽極3側から陰極9側に、赤色発光層(第1の発光層)61と青色発光層(第2の発光層)62と緑色発光層(第3の発光層)63とが接触して積層された積層体である。
【0021】
言い換えすれば、発光素子1は、正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層61と青色発光層62と緑色発光層63と電子輸送層7と電子注入層8とがこの順に積層で積層された積層体15が2つの電極間(陽極3と陰極9との間)に介挿されて構成されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材10で封止されている。
【0022】
このような発光素子1にあっては、陽極3および陰極9に駆動電圧が印加されることにより、赤色発光層61、青色発光層62、および緑色発光層63からなる発光部6に対し、陰極9側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
【0023】
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0024】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0025】
以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
[陽極]
陽極3は、後述する正孔注入層4を介して正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0026】
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0027】
[陰極]
一方、陰極9は、後述する電子注入層8を介して電子輸送層7に電子を注入する電極である。この陰極9の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極9の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0028】
特に、陰極9の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極9の構成材料として用いることにより、陰極9の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極9の平均厚さは、特に限定されないが、50〜10000nm程度であるのが好ましく、100〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極9に、光透過性は、特に要求されない。
【0029】
[正孔注入層]
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層4の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、下記化1に示すN,N'−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N, N'−ジフェニル−ビフェニル−4−4'−ジアミン等が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層4は、省略することができる。
【0032】
[正孔輸送層]
正孔輸送層5は、陽極3から正孔注入層4を介して注入された正孔を赤色発光層61まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができ、例えば、下記化2に示されるN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等のテトラアリールベンジジン誘導体、テトラアリールジアミノフルオレン化合物またはその誘導体(アミン系化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
【化2】

【0034】
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層5は、省略することができる。
【0035】
[発光部]
上述したように、発光部6は、陽極側から、赤色発光層(第1の発光層)61と青色発光層(第2の発光層)62と緑色発光層(第3の発光層)63とが積層された積層体である。
また、発光部6の各発光層は、それぞれ、異なる色に発光する発光材料と、発光材料を担持するホスト材料を含んで構成されている。
また、ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、発光材料を励起する機能を有する。
【0036】
このような発光材料とホスト材料とは、例えば、ゲスト材料である発光材料をドーパントとして、ホスト材料にドープして用いることができる。
そして、本発明において、各発光層は、共通のホスト材料として第1のホスト材料を含んでいる。このように、発光部6の各発光層が共通のホスト材料を含むことにより、各発光層間でキャリア(正孔および電子)が移動する際に、キャリアの注入障壁が低減される。この結果、発光素子1の駆動電圧を比較的低いものとすることができる。
【0037】
しかしながら、各発光層のうち第1の発光層(赤色発光層61)から放出される光は、他の発光層から放出される光と比較して最も波長が長く、このため、第1の発光層61に含まれる発光材料(赤色発光材料)は、他の発光層に含まれる発光材料と比較して、小さいエネルギーギャップを有している。このため、第1のホスト材料としては、他の発光層(青色発光層62、緑色発光層63)が十分に発光するために、エネルギーギャップが十分に大きい材料を用いる必要があるが、第1の発光層61では、このような大きいエネルギーギャップを有するホスト材料が生成した励起子のエネルギーをエネルギーギャップの比較的小さい発光材料(後述する赤色発光材料)に、直接移行すると発光効率が低下する。
【0038】
そこで、本発明では、第1の発光層61のホスト材料として、第1のホスト材料に加え、第1のホスト材料よりも第1の発光層61に含まれる発光材料の発光を促進する能力の高い第2のホスト材料を含ませることとした。これにより、第1の発光層61において第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを発光材料に効率よく移動させることができる。また、第1の発光層61において第1のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第2のホスト材料を介して赤色発光材料に効率よく移動させることができ、以上の結果、赤色発光材料をより効率よく発光させることができる。そして、発光素子1全体としての発光効率を十分に高いものとすることができる。
【0039】
(赤色発光層)
この赤色発光層(第1の発光層)61は、赤色(第1の色)に発光する赤色発光材料(第1の発光材料)と、ホスト材料とを含んで構成されている。
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化3に示すテトラアリールジインデノペリレン誘導体等のジインデノペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0041】
【化3】

【0042】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0043】
上述した中でも、赤色発光材料として、ジインデノペリレン誘導体を用いることが好ましく、前記化3に示すテトラアリールジインデノペリレン誘導体を用いることがより好ましい。このような化合物は、第2のホスト材料より、または第2のホスト材料を介して第1のホスト材料より励起子のエネルギーを受け取ることにより、効率よく発光することができる。
【0044】
赤色発光層61中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、後述する青色発光層62や緑色発光層63の発光量とのバランスをとりつつ赤色発光層61を発光させることができる。
また、赤色発光層61は、構成材料として、ホスト材料として第1のホスト材料および第2のホスト材料を含んでいる。
【0045】
このような第1のホスト材料としては、用いる各発光層の発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、発光材料が蛍光材料を含む場合、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、下記化4に示すようなアントラセン系材料、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)等のアントラセン系材料、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、下記化5に示されるナフタセン誘導体等のナフタセンおよびナフタセン誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられる。
また、発光材料が燐光材料を含む場合、第1のホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられる。
【0046】
【化4】

【0047】
【化5】

【0048】
上述した中でも、第1のホスト材料としては、アントラセン系材料用いることが好ましく、前記化4で示されるアントラセン系材料を用いることがより好ましい。このような化合物は、エネルギーギャップが比較的大きく、後述する緑色発光材料や、青色発光材料に対し、電子と正孔とが再結合して生じた励起子のエネルギーを十分に移行することができ、青色発光層62および緑色発光層63を効率よく発光させることができる。また、このような化合物は、電子の輸送性および正孔の輸送性を有している。
【0049】
また、第1のホスト材料は、そのエネルギーギャップが2.7〜3.7eVであることが好ましく、3.1〜3.5eVであることがより好ましい。これにより、後述する緑色発光材料や、青色発光材料に対し、電子と正孔とが再結合して生じた励起子のエネルギーを十分に移行することができ、青色発光層62および緑色発光層63を効率よく発光させることができる。
また、赤色発光層中における第1のホスト材料の含有率は、41〜90wt%であることが好ましく、41〜90wt%であることがより好ましい。これにより、隣接する青色発光層との間でキャリア(電子および正孔)の移動が効率よく行われ、発光素子1の駆動電圧がより低いものとなる。
【0050】
一方、第2のホスト材料は、第1のホスト材料よりも第1の発光層61に含まれる発光材料の発光を促進する能力の高いものであれば特に限定されず、上述したような第1のホスト材料に用いることのできるホスト材料を用いることができる。
上述した中でも、第2のホスト材料としては、ナフタセン誘導体を用いることが好ましく、前記化5に示されるナフタセン誘導体を用いることがより好ましい。このような化合物を第2のホスト材料として用いることにより、第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを赤色発光材料に効率よく移動させることができる。また、第1のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第2のホスト材料を用いて赤色発光材料に効率よく移動させることができ、以上の結果、赤色発光材料をより効率よく発光させることができる。このような効果は、赤色発光材料として、前記化3で示されるテトラアリールジインデノペリレン誘導体を用い、第2のホスト材料として、前記化5に示されるナフタセン誘導体を用いた場合、顕著なものとなる。
【0051】
また、第2のホスト材料は、そのエネルギーギャップが2.1〜2.8eVであることが好ましく、2.2〜2.6eVであることがより好ましい。これにより、第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを赤色発光材料に効率よく移動させることができる。また、第1のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第2のホスト材料を用いて赤色発光材料に効率よく移動させることができる。
【0052】
第2のホスト材料のエネルギーギャップは、第1のホスト材料のエネルギーギャップよりも小さく、赤色発光材料(第1の発光材料)のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。これにより、第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを赤色発光材料に効率よく移動させることができる。また、第1のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを第2のホスト材料を用いて赤色発光材料に効率よく移動させることができる。
第2のホスト材料のエネルギーギャップと前記赤色発光材料のエネルギーギャップの差は、0.5eV以下であることが好ましく、0.4eV以下であることがより好ましい。これにより、これにより、第2のホスト材料で生成した励起子のエネルギーを赤色発光材料に効率よく移動させることができる。
【0053】
また、赤色発光層61中における第2のホスト材料の含有率は、第1のホスト材料の含有率よりも小さいことが好ましい。これにより、第1のホスト材料が赤色発光層61中に十分に含まれることができ、隣接する青色発光層62との間で電子および正孔の移動がより効率よく行われ、発光素子1の駆動電圧がより低いものとなる。
また、赤色発光層61中における第2のホスト材料の含有率は、10〜49wt%であることが好ましく、15〜45wt%であることがより好ましい。これにより、第2のホスト材料の効果を十分に発揮しつつ、第1のホスト材料を十分に赤色発光層中に含ませることができる。
また、赤色発光層61の平均厚さは、特に限定されないが、5〜50nm程度であるのが好ましく、10〜40nm程度であるのがより好ましい。
【0054】
また、赤色発光層61が電子を捕獲する機能を有する場合、赤色発光層61は電子が比較的少ない状態でも発光できるため、赤色発光層61は、他の発光層(青色発光層62および緑色発光層63)よりも陽極3側に配置されることにより、他の発光層に十分に電子が供給されて他の発光層が効率よく発光できるとともに、赤色発光層61自身も効率よく発光することができ、発光素子1の発光効率を十分に高いものとすることができる。また、電子が赤色発光層61よりも陽極3側に移動することを防止することができ、電子が赤色発光層61よりも陽極3側にある正孔輸送層5、正孔注入層4等が劣化することが防止される。赤色発光層61が電子を捕獲する機能を有する場合としては、赤色発光材料として、ペリレン誘導体(特に前記化3で示されるテトラアリールジインデノペリレン誘導体)を用いた場合が挙げられる。
【0055】
(青色発光層)
青色発光層(第2の発光層)62は、青色(第2の色)に発光する青色発光材料(第2の発光材料)と、ホスト材料としての第1のホスト材料とを含んで構成されている。
このような青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記化6で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0057】
【化6】

【0058】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0059】
青色発光層62中における青色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜20wt%であるのが好ましく、1〜15wt%であるのがより好ましい。青色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層61や後述する緑色発光層63の発光量とのバランスをとりつつ青色発光層62を発光させることができる。
また、第1のホスト材料としては、前述した赤色発光層61の第1のホスト材料と同一のホスト材料を用いる。
【0060】
また、青色発光層62は、第1のホスト材料を主として含むことが好ましい。より具体的には、青色発光層62中における第1のホスト材料の含有率は、70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがより好ましい。これにより、発光層間での電子および正孔の移動がより効率よく行われ、発光素子1の駆動電圧がより低いものとなる。
また、青色発光層62の平均厚さは、特に限定されないが、5〜50nm程度であるのが好ましく、10〜40nm程度であるのがより好ましい。
【0061】
(緑色発光層)
緑色発光層(第3の発光層)9は、緑色(第3の色)に発光する緑色発光材料(第3の発光材料)と、ホスト材料としての第1のホスト材料を含んで構成されている。
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化7に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0063】
【化7】

【0064】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられる。
【0065】
緑色発光層63中における緑色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜20wt%であるのが好ましく、0.1〜15wt%であるのがより好ましい。緑色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、赤色発光層61や青色発光層62の発光量とのバランスをとりつつ緑色発光層63を発光させることができる。
【0066】
また、第1のホスト材料としては、前述した赤色発光層61の第1のホスト材料と同一のホスト材料を用いる。
また、緑色発光層63は、第1のホスト材料を主として含むことが好ましい。より具体的には、緑色発光層63中における第1のホスト材料の含有率は、70wt%以上であることが好ましく、80wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることがより好ましい。これにより、発光層間での電子および正孔の移動がより効率よく行われ、発光素子1の駆動電圧がより低いものとなる。
また、緑色発光層63の平均厚さは、特に限定されないが、5〜50nm程度であるのが好ましく、10〜40nm程度であるのがより好ましい。
【0067】
(電子輸送層)
電子輸送層7は、陰極9から電子注入層8を介して注入された電子を緑色発光層63に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層7の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、下記化8に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
【化8】

【0069】
電子輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0070】
(電子注入層)
電子注入層8は、陰極9からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層8の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層8を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
【0071】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0072】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0073】
(封止部材)
封止部材10は、陽極3、積層体15、および陰極9を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材10を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材10の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材10の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材10と陽極3、積層体15、および陰極9との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材10は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0074】
以上のように構成された発光素子1によれば、赤色発光層61と青色発光層62と緑色発光層63とが共通の第1のホスト材料を含むことにより、各発光層間での電子および正孔の移動が効率よく行われ、発光素子1の駆動電圧が低いものとなる。また、赤色発光層61にホスト材料として、第1のホスト材料に加えて第2のホスト材料を用いることにより、赤色発光材料を効率よく発光させることができ、発光素子1の発光効率を高いものとすることができる。また、低電圧で効率よく発光させることができることから、発光素子1の発光寿命も長いものとなる。
【0075】
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0076】
[2] 次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔注入層4は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0077】
正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0078】
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面を親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0079】
[3] 次に、正孔注入層4上に正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0080】
[4] 次に、正孔輸送層5上に、赤色発光層61を形成する。
赤色発光層61は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[5] 次に、赤色発光層61上に、青色発光層62を形成する。
青色発光層62は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0081】
[6] 次に、青色発光層62上に、緑色発光層63を形成する。
緑色発光層63は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[7] 次に、緑色発光層63上に電子輸送層7を形成する。
電子輸送層7は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層7は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層63上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0082】
[8] 次に、電子輸送層7上に、電子注入層8を形成する。
電子注入層8の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層8は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[9] 次に、電子注入層8上に、陰極9を形成する。
陰極9は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材10を被せ、基板2に接合する。
【0083】
上述したような発光素子1は、例えば、発光装置(本発明の発光装置)に用いることができる。
このような発光装置は、前述したような発光素子1を備えるため、比較的低電圧で駆動し、高い発光効率を有しており、信頼性の高いものとなっている。
また、このような発光装置は、例えば照明等に用いる光源等として使用することができる。
また、発光装置中の複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置に用いる発光装置を構成することができる。
【0084】
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図2は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置100は、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bを備える発光装置101と、カラーフィルタ19R、19G、19Bとを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0085】
発光装置101は、基板21と発光素子1R、1G、1Bと、駆動用トランジスタ24とを有している。
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0086】
平坦化層22上には、各駆動用トランジスタ24に対応して発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
発光素子1Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)15、陰極9、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1R、1G、1Bの陰極9は、共通電極とされている。
【0087】
なお、発光素子1G、1Bの構成は、発光素子1Rの構成と同様である。また、図2では、図1と同様の構成に関しては、同一符号を付してある。また、反射膜32の構成(特性)は、光の波長に応じて、発光素子1R、1G、1B間で異なっていてもよい。
隣接する発光素子1R、1G、1B同士の間には、隔壁31が設けられている。
また、このように構成された発光装置101上には、これを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
【0088】
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、前述したエポキシ層35上に、発光素子1R、1G、1Bに対応して設けられている。
カラーフィルタ19Rは、発光素子1Rからの白色光Wを赤色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Gは、発光素子1Gからの白色光Wを緑色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Bは、発光素子1Bからの白色光Wを青色に変換するものである。このようなカラーフィルタ19R、19G、19Bを発光素子1R、1G、1Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0089】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
そして、カラーフィルタ19R、19G、19Bおよび遮光層36上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
【0090】
以上説明したようなディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1R、1G、1Bに用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、前述したような発光装置を用いるため、比較的低電圧で駆動し、発光効率に優れたものである。そのため、少ない消費電力で高品位な画像を表示することができる。
【0091】
図3は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0092】
図4は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0093】
図5は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0094】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0095】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0096】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0097】
なお、本発明の電子機器は、図3のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図4の携帯電話機、図5のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0098】
以上、本発明の発光素子、発光装置、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、前述した実施形態では、発光素子が3層の発光層を有するものについて説明したが、発光層が4層以上であってもよい。このような場合であっても、各発光層に共通のホスト材料を含ませることにより、上述したような効果が得られる。また、発光層の発光色としては、前述した実施形態のR、G、Bに限定されない。
【実施例】
【0099】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0100】
<2> 次に、ITO電極上に、前記化1に示すN,N'−ビス−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)−N, N'−ジフェニル−ビフェニル−4−4'−ジアミンを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ40nmの正孔注入層を形成した。
<3> 次に、正孔注入層上に、前記化2に表わされるN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの正孔輸送層を形成した。
【0101】
<4> 次に、正孔輸送層上に、赤色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの赤色発光層(第1の発光層)を形成した。赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として前記化3で表わされるテトラアリールジインデノペリレン誘導体を用い、第1のホスト材料として前記化4に示すアントラセン系材料を用い、第2のホスト材料として前記化5で表わされるナフタセン誘導体を用いた。また、赤色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を1.0wt%とし、前記化5で表わされるナフタセン誘導体の含有量を29wt%とし、前記化4に示すアントラセン系材料の含有量を70wt%とした。なお、前記化4に示すアントラセン系材料のエネルギーギャップは、3.0eVであり、前記化5で表わされるナフタセン誘導体のエネルギーギャップは、2.4eVであり、前記化3で表わされるテトラアリールジインデノペリレン誘導体のエネルギーギャップは、2.1eVである。
【0102】
<5> 次に、赤色発光層上に、青色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ30nmの青色発光層(第2の発光層)を形成した。青色発光層の構成材料としては、青色発光材料として前記化6で示されるジスチリルジアミン系化合物を用い、ホスト材料として前記化4に示すアントラセン系材料を用いた。また、青色発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、6.0wt%とした。
【0103】
<6> 次に、青色発光層上に、緑色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの緑色発光層(第3の発光層)を形成した。緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)として前記化7に示すキナクリドン誘導体を用い、ホスト材料としてホスト材料として前記化4に示すアントラセン系材料を用いた。また、緑色発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、1.0wt%とした。
【0104】
<7> 次に、緑色発光層上に、前記化8に示すトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
<8> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
【0105】
<9> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ100nmの陰極を形成した。
<10> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、白色発光する図1に示すような発光素子を製造した。
【0106】
(比較例)
赤色発光層の構成材料を変更した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として前記化3で表わされるテトラアリールジインデノペリレン誘導体(RD−1)を用い、ホスト材料として前記化4に示すアントラセン系材料を用いた。また、赤色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を1.0wt%とし、前記化4に示すアントラセン系材料の含有量を99wt%とした。なお、赤色発光層の構成材料として前記化5で表わされるナフタセン誘導体(RB)は用いなかった。
【0107】
2.評価
2−1.発光効率(電流効率)および駆動電圧の評価
実施例および比較例の発光素子について、直流電源を用いて発光素子に10mA/cmの定電流を流し、輝度計を用いて輝度を測定した。測定された輝度から、電流効率(cd/A、電流あたりの輝度)を求めた。また、このときの駆動電圧(V)を測定した。
また、上記の評価と同時に、各発光素子から放出される光のスペクトル(発光スペクトル)および色度(x,y)を測定した。図6に実施例に係る発光素子の発光スペクトルを、図7に比較例に係る発光スペクトルを示す。なお、色度については、発した光が白色に近いと、光の色度(x,y)は、(0.33,0.33)に近いものとなる。
【0108】
2−2.発光寿命の評価
実施例および比較例について、直流電源を用いて発光素子に初期輝度を一定として発光させ、輝度計を用いて輝度を測定し、その輝度が初期の輝度の80%となるまでの時間(LT80)を測定した。
表1に、上記の評価結果を示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1から明らかなように、実施例の発光素子は、比較例の発光素子と比較して駆動電圧が低く、電流効率が高いものであった。また、実施例の発光素子は、比較例の発光素子と比較して発光寿命が長く、白色に近い光を放出していた。
また、図6、図7に示すように、実施例の発光素子に比して、比較例の発光素子は、長波長側の放射輝度が小さいものであった。これは、比較例の発光素子において、赤色発光層が第2のホスト材料としての前記化5で表わされるナフタセン誘導体を用いないため、赤色発光材料が十分に発光しなかったものと考えられる。
【符号の説明】
【0111】
1、1B、1G、1R……発光素子 2……基板 3……陽極 4……正孔注入層 5……正孔輸送層 6……発光部 61……赤色発光層(第1の発光層) 62……青色発光層(第2の発光層) 63……緑色発光層(第3の発光層) 7……電子輸送層 8……電子注入層 9……陰極 10……封止部材 15……積層体 19B、19G、19R……カラーフィルタ 100……ディスプレイ装置 101……発光装置 100R、100G、100B……サブ画素 20……封止基板 21……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 27……配線 31……隔壁 32……反射膜 33……腐食防止膜 34……陰極カバー 35……エポキシ層 36……遮光層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、それぞれ異なる色に発光する発光材料と前記発光材料とを担持するホスト材料とを含んだ第1の発光層と第2の発光層と第3の発光層とで構成された発光部とを有し、
前記第1の発光層と、前記第2の発光層と、前記第3の発光層とは、共通の前記ホスト材料として、第1のホスト材料を含み、
前記第1の発光層は、前記第2の発光層および前記第3の発光層よりも長い波長の光を放出するものであり、かつ、前記ホスト材料として、さらに前記第1のホスト材料とは異なる第2のホスト材料を含み、
前記第2のホスト材料は、前記第1のホスト材料よりも前記第1の発光層の発光を促進する能力が高いことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2のホスト材料のエネルギーギャップは、前記第1のホスト材料のエネルギーギャップよりも小さく、前記第1の発光層に含まれる発光材料のエネルギーギャップよりも大きい請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1の発光層における第2のホスト材料の含有率は、前記第1のホスト材料の含有率よりも小さい請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1の発光層における第2のホスト材料の含有率は、10〜49wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1のホスト材料は、アントラセン系材料である請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の色は赤色である請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1の発光層に含まれる発光材料は、ジインデノペリレン系化合物である請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2のホスト材料は、ナフタセン誘導体である請求項6または7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の発光層は、電子を捕獲する機能を有し、前記第2の発光層および前記第3の発光層よりも陽極側に設けられる請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−225382(P2010−225382A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70434(P2009−70434)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】