説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】優れた発光特性および寿命特性を有する発光素子、この発光素子を備えた信頼性に優れた表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陽極3と、陰極8と、陽極3と陰極8との間に設けられ少なくとも1層の発光層を備える第1の発光ユニット9と、陰極8と第1の発光ユニット9との間に設けられ少なくとも1層の発光層を備える第2の発光ユニット10と、
第1の発光ユニット9と第2の発光ユニット10との間に設けられたキャリア発生層7とを有し、このキャリア発生層7は、アルカリ金属酸化物と電子輸送材料とを含有するn型電子輸送層7aと、芳香環を有する有機シアン化合物を含む電子引き抜き層7bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、発光層を備える発光ユニット(発光部)を少なくとも2つ有し、これらの発光ユニット同士の間に、キャリア(電子および正孔)を発生する機能を有するキャリア発生層が中間層として設けられたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる発光素子では、陽極と陰極との間に電界を印加すると、これに起因して、キャリア発生層から電子および正孔が発生するため、これらの電子および正孔がそれぞれ隣接する発光ユニットが備える発光層に供給される。その結果、陽極および陰極から供給された正孔および電子に加えて、キャリア発生層から供給された正孔および電子が、各発光ユニットが備える発光層の発光に用いられる。このため、このような発光素子に一定電流を流した場合、発光層が一層の発光素子と比較して、高輝度で発光することができ、発光効率に優れる。また、低い電流で用いても、比較的高輝度で発光することができるため、発光素子が劣化しにくく比較的発光寿命が長いものとなる。
【0004】
しかしながら、このような発光素子では、キャリア発生層(中間層)の構成材料として、V、ITO等の金属酸化物が用いられている。そのため、発光素子の駆動電圧が高くなってしまう。また、キャリア発生層に含まれる金属酸化物が、発光ユニット中に含まれる有機材料と反応してしまうことにより、発光素子の寿命が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−272860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた発光特性および寿命特性を有する発光素子、この発光素子を備えた信頼性に優れた表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより発光する少なくとも1層の発光層を備える第1の発光ユニットと、
前記陰極と前記第1の発光ユニットとの間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより発光する少なくとも1層の発光層を備える第2の発光ユニットと、
前記第1の発光ユニットと前記第2の発光ユニットとの間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより正孔および電子を発生させるキャリア発生層とを有し、
該キャリア発生層は、前記第1の発光ユニット側に設けられ、アルカリ金属酸化物と電子輸送性を有する電子輸送材料とを含有するn型電子輸送層と、前記第2の発光ユニット側に前記第1のキャリア発生層と接合して設けられ、芳香環を有する有機シアン化合物を含む電子引き抜き層とを有することを特徴とする。
これにより、発光素子は、優れた発光特性および寿命特性の双方を有するものとなる。
【0008】
本発明の発光素子では、前記アルカリ金属酸化物は、酸化リチウムであることが好ましい。
リチウムは、アルカリ金属の中でも特に仕事関数が低い材料であることから、かかる金属の酸化物は、電子引き抜き層で発生した電子をn型電子輸送層側にさらに効率よく引き抜く機能を発揮する。加えて、酸化物である酸化リチウムは、大気中で安定であり、成膜装置における材料交換が容易になる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記アルカリ金属酸化物は、電子引き抜き層側から陽極側に向かって、その含有率が低くなっていることが好ましい。
これにより、電子引き抜き層で発生した電子を、n型電子輸送層からさらに効率よく引き抜くとともに、発光層で生成した励起子の失活を抑制できるため、優れた発光特性を有することができる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記n型電子輸送層におけるアルカリ金属酸化物の含有率(体積比率)は、0.4%以上、14%以下であることが好ましい。
これにより、電子引き抜き層で発生した電子を、n型電子輸送層からさらに効率よく引き抜くとともに、この層中を輸送して、最終的には隣接する層にさらに効率よく注入させることができる。
本発明の発光素子では、前記n型電子輸送層は、その平均厚さが、5nm以上、60nm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の駆動電圧が高くなるのを防止しつつ、n型電子輸送層の機能を確実に発揮させることができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットは、それぞれ、前記陽極側に位置する正孔輸送層と、前記陰極側に位置する電子輸送層とを備えることが好ましい。
本発明の発光素子では、前記n型電子輸送層に含まれる電子輸送材料は、前記第1の発光ユニットが有する前記電子輸送層に含まれる前記電子輸送材料と同種または同一のものであることが好ましい。
これにより、n型電子輸送層から、隣接する層にさらに効率よく電子を注入することができる。
【0012】
本発明の発光素子では、前記有機シアン化合物は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
このような化合物は、芳香環含有有機シアン化合物としての機能すなわち電子吸引性に特に優れており、隣接する層からより確実に電子を引き抜くことができるとともに、より確実に引き抜いた電子をn型電子輸送層側に輸送することができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記電子引き抜き層は、その平均厚さが、5nm以上、40nm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の駆動電圧が高くなるのを防止しつつ、電子引き抜き層の機能を確実に発揮させることができる。
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い表示装置を得ることができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の発光素子の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
(発光素子)
図1は、本発明の発光素子の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光するものである。
【0016】
このような発光素子1は、陽極3と陰極8との間に、第1の発光ユニット9と、キャリア発生層7と、第2の発光ユニット10とがこの順に積層されてなるものである。
換言すれば、発光素子1は、第1の発光ユニット9と、キャリア発生層7と、第2の発光ユニット10とがこの順に積層された積層体11が2つの電極間に介挿されてなるものであると言える。
【0017】
また、第1の発光ユニット9は、本実施形態では、正孔輸送層4aと、赤色発光層5Rと、緑色発光層5Gと、電子輸送層6aとがこの順に積層されてなる積層体で構成され、第2の発光ユニット10は、正孔輸送層4bと、青色発光層5Bと、電子輸送層6bとがこの順に積層されてなる積層体で構成される。すなわち、各発光ユニット9、10は、それぞれ、少なくとも1層の発光層の他に、陽極3側に位置する正孔輸送層4a、4bと、陰極8側に位置する電子輸送層6a、6bとを有する積層体で構成される。
【0018】
さらに、キャリア発生層7は、n型電子輸送層7aと、電子引き抜き層7bとがこの順に積層されてなる積層体で構成される。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材12で封止されている。
このような発光素子1にあっては、赤色発光層5R、青色発光層5B、および緑色発光層5Gの各発光層に対し、陰極8側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出するため、赤色発光層5R、青色発光層5B、および緑色発光層5Gがそれぞれ赤色、青色、および緑色に発光する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
特に、本実施形態の発光素子1では、さらに、キャリア発生層7において、正孔および電子が発生し、これらのうち、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gには電子が注入され、青色発光層5Bには正孔が注入されるため、発光素子1をより高輝度で発光させることができるため、発光効率に優れた発光素子1を得ることができる。
【0019】
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0020】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0021】
この基板2上に、発光素子1が形成されている。以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
[陽極3]
陽極3は、後述する第1の発光ユニット9が備える正孔輸送層4aに正孔を注入する電極である。
この陽極3の構成材料としては、特に限定されないが、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料が好適に用いられる。
【0022】
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0023】
[第1の発光ユニット9]
第1の発光ユニット(第1の発光部)9は、前述したように、正孔輸送層4aと、赤色発光層5Rと、緑色発光層5Gと、電子輸送層6aとを有し、これらがこの順に陽極3から陰極8側に向かって積層される。
かかる構成の第1の発光ユニット9において、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gに対して、正孔輸送層4a側から正孔が電子輸送層6a側から電子が、それぞれ供給(注入)されると、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gでは、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出するため、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gがそれぞれ赤色および緑色に発光する。
【0024】
(正孔輸送層4a)
正孔輸送層(第1の正孔輸送層)4aは、陽極3から注入された正孔を赤色発光層5Rまで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層4aの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような正孔輸送層4aの平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0025】
(赤色発光層5R)
この赤色発光層5Rは、赤色に発光する赤色発光材料を含んで構成されている。
赤色発光材料は、正孔輸送層4a側から正孔が供給(注入)されるとともに、電子輸送層6a側から電子が供給(注入)されることにより、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を、赤色の光として放出するものである。 このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化学式(1)で表わされる化合物(ジインデノペリレン誘導体)等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
中でも、赤色発光材料としては、ジインデノペリレン誘導体を用いるのが好ましい。これにより、赤色発光層5Rをより高輝度で赤色発光させることができる。
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0029】
また、赤色発光層5R中には、前述した赤色発光材料の他に、赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれていてもよい。
ホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
【0030】
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、下記化学式(2)で表わされる化合物等のナフタセン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体のようなアセン誘導体(アセン系材料)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
【化2】

【0032】
中でも、赤色発光層5Rのホスト材料としては、アセン誘導体(特に、ナフタセン誘導体)を用いるのが好ましい。特に、赤色発光材料としてジインデノペリレン誘導体を用いる場合、赤色発光層5Rがナフタセン誘導体を含んで構成されていると、赤色発光層5Rをより高輝度かつ高効率で赤色発光させることができる。
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、ホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色発光層5R中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのよりに好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
なお、赤色発光層5Rには、発光材料として、赤色発光材料の他に黄色発光材料が含まれていてもよい。このような黄色発光材料が含まれることにより、赤色の色調に変化を持たせることができる。このような黄色発光材料としては、黄色の蛍光材料が挙げられ、具体的には、ルブレン系材料等のナフタセン骨格を有する化合物であって、ナフタセンにアリール基(好ましくはフェニル基)が任意の位置で任意の数(好ましくは2〜6)置換された化合物、モノインデノペリレン誘導体等が挙げられる。
【0034】
このような赤色発光層5Rの平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
また、前述したような赤色の発光材料は、バンドギャップが比較的小さく、正孔や電子を捕獲しやすく、発光しやすい。したがって、陽極3側に赤色発光層5Rを設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層5Bや緑色発光層5Gを陰極8側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0035】
(緑色発光層5G)
緑色発光層5Gは、緑色に発光する緑色発光材料を含んで構成されている。
緑色発光材料は、正孔輸送層4a側から正孔が供給(注入)されるとともに、電子輸送層6a側から電子が供給(注入)されることにより、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を、緑色の光として放出するものである。
【0036】
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、例えば、各種緑色蛍光材料および緑色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化学式(3)に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウム等が挙げられる。
また、緑色発光層5G中には、前述した緑色発光材料の他に、緑色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層5Rで説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
【0039】
(電子輸送層6a)
電子輸送層(第1の電子輸送層)6aは、キャリア発生層7から注入された電子を緑色発光層5Gに輸送する機能を有するものである。
電子輸送層6aの構成材料(電子輸送材料)としては、特に限定されないが、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
電子輸送層6aの平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。これにより、キャリア発生層7から注入された電子を好適に緑色発光層5Gに輸送することができるとともに、緑色発光層5Gを通過した正孔を好適にブロックすることができる。
なお、かかる構成の第1の発光ユニット9には、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gにそれぞれ接触して設けられた正孔輸送層4aおよび電子輸送層6aの他に、任意の層が設けられていてもよく、例えば、正孔輸送層4aの陽極3側に正孔注入層が設けられていてもよいし、電子輸送層6bのキャリア発生層7側に電子注入層が設けられていてもよい。このような、正孔注入層および電子注入層は、それぞれ、例えば、以下に示すような構成のものが挙げられる。
【0041】
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極3から正孔輸送層4aの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニル−p−ジアミノベンゼンおよびその誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような正孔注入層の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0042】
(電子注入層)
電子注入層は、キャリア発生層7から電子輸送層6aの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0044】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0045】
[キャリア発生層7]
本発明では、キャリア発生層7は、前述した第1の発光ユニット9と後述する第2の発光ユニット10との間に互いに接触するように設けられている。
このキャリア発生層7は、第1の発光ユニット9側に設けられ、アルカリ金属酸化物と電子輸送性を有する電子輸送材料とを含有するn型電子輸送層(第1のキャリア発生層)と、第2の発光ユニット10側に前記第1のキャリア発生層と接合して設けられ、芳香環を有する有機シアン化合物を含む電子引き抜き層とを有するものである。
【0046】
このようなキャリア発生層7に、電圧を印加すると、キャリア(正孔および電子)が発生し、これらのうち電子が第1の発光ユニット9側に注入され、正孔が第2の発光ユニット10側に注入される。そのため、発光素子1をより高輝度で発光させることができることから、発光素子1は、より発光効率に優れたものとなる。
さらに、n型電子輸送層は、アルカリ金属酸化物と電子輸送材料との混合材料で構成され、電子引き抜き層は、有機シアン化合物で構成されているため、キャリア発生層が金属酸化物で構成される場合と比較して、発光の駆動電圧を低くすることができ、また、第1の発光ユニット9および第2の発光ユニット10が有する有機材料と接触してしまうのを的確に抑制または防止することができるので、発光素子1の長寿命化が確実に図られる。
【0047】
(電子引き抜き層7b)
本発明では、電子引き抜き層7bは、芳香環を有する有機シアン化合物(以下、「芳香環含有有機シアン化合物」ともいう。)を含有する。
この芳香環含有有機シアン化合物は、優れた電子吸引性を有している。そのため、芳香環含有有機シアン化合物は、接触する層(本実施形態では、正孔輸送層4b)中に含まれる正孔輸送材料から電子を引き抜くことができる。その結果、電子引き抜き層7bに電圧が印加されていなくても、電子引き抜き層7bと正孔輸送層4bとの界面付近において、電子引き抜き層7b側には電子が発生し、正孔輸送層4b側には正孔が発生する。このような状態で、陽極3と陰極8との間に駆動電圧を印加すると、すなわち電子引き抜き層7bに電圧を印加すると、電子引き抜き層7bと正孔輸送層4bとの界面付近で発生した正孔は、その駆動電圧により輸送されて、第2の発光ユニット10が有する青色発光層5Bの発光に寄与する。また、電子引き抜き層7bと正孔輸送層4bとの界面付近で発生した電子は、その駆動電圧により輸送されて、第1の発光ユニット9が有する赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gの発光に寄与する。
【0048】
そして、このような電子引き抜き層7bにおける正孔および電子の発生は、駆動電圧が印加されている最中には継続的に行われ、これらの正孔と電子とは、それそれ、青色発光層5Bと、および赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gの発光に寄与する。
さらに、芳香環含有有機シアン化合物は、有機材料であるため、キャリア発生層が金属酸化物で構成される場合と比較して、金属酸化物が正孔輸送層4bに含まれる正孔輸送材料(有機材料)と接触してしまうのを確実に防止することができるので、正孔輸送材料の変質・劣化が確実に防止される。
【0049】
また、芳香環含有有機シアン化合物は、比較的安定な化合物であるとともに、蒸着等の気相成膜法で容易に電子引き抜き層7bを形成できる化合物である。このため、好適に発光素子1の製造に用いることができ、製造される発光素子1の品質が安定しやすくなるとともに、発光素子1の歩留まりが高いものとなる。
このような芳香環含有有機シアン化合物としては、特に限定されないが、例えば、シアノ基が導入されたヘキサアザトリフェニレン誘導体が挙げられ、特に、下記化学式(4)で示すようなヘキサアザトリフェニレン誘導体を用いるのがより好ましい。
【0050】
【化4】

【0051】
上記化学式(4)中、R1〜R6は、それぞれ独立して、シアノ基(−CN)、スルホン基(−SOR’)、スルホキシド基(−SOR’)、スルホンアミド基(−SONR’)、スルホネート基(−SOR’)、ニトロ基(−NO)、またはトリフルオロメタン(−CF)基であり、R1〜R6のうち少なくとも一つの置換基がシアノ基である。また、R’は、アミン基、アミド基、エーテル基、もしくはエステル基で置換されているかまたは非置換である炭素数1〜60のアルキル基、アリール基、または複素環基である。
このような化合物は、芳香環含有有機シアン化合物としての機能すなわち電子吸引性に特に優れており、隣接する層(正孔輸送層4b)からより確実に電子を引き抜くことができるとともに、より確実に引き抜いた電子をn型電子輸送層7a(陽極3)側に輸送することができる。
【0052】
さらに、芳香環含有有機シアン化合物としては、前述したような化学式(4)に示す化合物において、R1〜R6はすべてシアノ基であるのがより好ましい。すなわち、芳香環含有有機シアン化合物としては、下記化学式(5)に示すようなヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンを用いるのが好ましい。このように電子吸引性の高いシアノ基を複数有することにより、下記化学式(5)に示す化合物は、前述した機能をより顕著に発揮するものとなる。
【0053】
【化5】

【0054】
なお、芳香環含有有機シアン化合物は、電子引き抜き層7bにおいて、非晶質の状態で存在していることが好ましい。これにより、上述したような芳香環含有有機シアン化合物の効果をより顕著に得ることができる。なお、電子引き抜き層7bを、真空蒸着法等の気相成膜法により形成することで、芳香環含有有機シアン化合物を、非晶質の状態とすることができる。
また、電子引き抜き層7bの平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上、40nm以下程度であるのが好ましく、10以上、30nm以下程度であるのがより好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧が高くなるのを防止しつつ、電子引き抜き層7bの機能を確実に発揮させることができる。
【0055】
(n型電子輸送層7a)
本発明では、n型電子輸送層(第1のキャリア発生層)7aは、アルカリ金属酸化物と電子輸送性を有する電子輸送材料を含有する。
かかる構成のn型電子輸送層7aにおいて、アルカリ金属酸化物は、電子引き抜き層7bで発生した電子をn型電子輸送層7a側に効率よく引き抜く機能を有する。さらに、電子輸送層は、この電子引き抜き層7bから引き抜かれた電子を、n型電子輸送層7a中において効率よく輸送する機能を発揮するとともに、隣接する層(本実施形態では第1の発光ユニット9が有する電子輸送層6a)に注入する機能を有する。
【0056】
そのため、n型電子輸送層7aは、電子引き抜き層7bで発生した電子を、n型電子輸送層7aから効率よく引き抜くとともに、この層中を輸送して、最終的には隣接する層に効率よく注入する機能を発揮する。
さらに、かかる構成のn型電子輸送層7aは、アルカリ金属酸化物と電子輸送材料との混合材料すなわち金属酸化物と有機材料との混合材料で構成されるため、キャリア発生層が金属酸化物で構成される場合と比較して、金属酸化物が電子輸送層6aに含まれる電子輸送材料(有機材料)と接触してしまうのを的確に抑制することができるので、電子輸送材料の変質・劣化が的確に抑制される。
【0057】
アルカリ金属酸化物としては、特に限定されないが、酸化リチウム(LiO)、酸化ナトリウム(NaO)および酸化カリウム(KO)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、酸化リチウム(LiO)を用いるのが好ましい。Liは、アルカリ金属の中でも特に仕事関数が低い材料であることから、かかる金属の酸化物は、電子引き抜き層7bで発生した電子をn型電子輸送層7a側にさらに効率よく引き抜く機能を発揮する。加えて、酸化物である酸化リチウムは、大気中で安定であり、成膜装置における材料交換が容易になる。
【0058】
また、電子輸送材料としては、特に限定されないが、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
このような電子輸送材料は、前述した第1の発光ユニット9が有する電子輸送層6aに含まれる電子輸送材料と同種または同一であるのが好ましい。これにより、n型電子輸送層7aから、隣接する電子輸送層6aにさらに効率よく電子を注入することができる。
また、n型電子輸送層7aにおいて、アルカリ金属酸化物の含有率(体積比率)は、特に限定されないが、0.4%以上、14%以下程度であるのが好ましく、2%以上、5%以下程度であるのがより好ましい。これにより、電子引き抜き層7bで発生した電子を、n型電子輸送層7aからさらに効率よく引き抜くとともに、発光層5G、5Rで生成した励起子の失活を抑制できるため、優れた発光特性を有することができる。
【0060】
また、n型電子輸送層7aにおいて、アルカリ金属酸化物は、電子引き抜き層7b側に遍在しているのが好ましい。すなわち、アルカリ金属酸化物は、電子引き抜き層7b側から陽極3側に向かって、その含有率が低くなっているのが好ましい。これにより、電子引き抜き層7bで発生した電子を、n型電子輸送層7aからさらに効率よく引き抜くとともに、この層中を輸送して、最終的には隣接する層にさらに効率よく注入させることができる。
さらに、n型電子輸送層7aの平均厚さは、5nm以上、60nm以下程度であるのが好ましく、10以上、30nm以下程度であるのがより好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧が高くなるのを防止しつつ、n型電子輸送層7aの機能を確実に発揮させることができる。
【0061】
[第2の発光ユニット10]
第2の発光ユニット(第2の発光部)10は、前述したように、正孔輸送層4bと、青色発光層5Bと、電子輸送層6bとを有し、これらがこの順に陽極3から陰極8側に向かって積層される。
かかる構成の第2の発光ユニット10において、青色発光層5Bに対して、正孔輸送層4b側から正孔が電子輸送層6b側から電子が、それぞれ供給(注入)されると、青色発光層5Bでは、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出するため、青色発光層5Bが青色に発光する。
【0062】
(正孔輸送層4b)
正孔輸送層(第2の正孔輸送層)4bは、キャリア発生層7から注入された正孔を青色発光層5Bまで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層4bの構成材料としては、特に限定されないが、前述した、第1の発光ユニット9が備える正孔輸送層4aの構成材料で説明したのと同様のものを用いることができる。
このような正孔輸送層4bの平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであるのが好ましく、10〜100nmであるのがより好ましい。これにより、青色発光層5Bに正孔を好適に輸送することができる。
【0063】
(青色発光層5B)
青色発光層5Bは、青色に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
青色発光材料は、正孔輸送層4b側から正孔が供給(注入)されるとともに、電子輸送層6b側から電子が供給(注入)されることにより、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を、青色の光として放出するものである。
【0064】
このような青色発光材料としては、例えば、各種青色蛍光材料および青色燐光材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記化学式(6)で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0065】
【化6】

【0066】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
また、青色発光層5B中には、前述した青色発光材料の他に、青色発光材料をゲスト材料とするホスト材料が含まれていてもよい。
このようなホスト材料としては、前述した赤色発光層5Rで説明したホスト材料と同様のものを用いることができる。
【0067】
(電子輸送層6b)
電子輸送層(第2の電子輸送層)6bは、陰極8から注入された電子を青色発光層5Bに輸送する機能を有するものである。
この電子輸送層6bの構成材料としては、特に限定されないが、前述した、第1の発光ユニット9が備える電子輸送層6aの構成材料で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0068】
電子輸送層6bの平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nmであるのが好ましく、1〜50nmであるのがより好ましい。これにより、青色発光層5Bに電子を好適に輸送することができる。
なお、かかる構成の第2の発光ユニット10には、青色発光層5Bに接触して設けられた正孔輸送層4bおよび電子輸送層6bの他に、任意の層が設けられていてもよく、例えば、正孔輸送層4bのキャリア発生層7側に正孔注入層が設けられていてもよいし、電子輸送層6bの陰極8側に電子注入層が設けられていてもよい。このような、正孔注入層および電子注入層は、それぞれ、例えば、第2の発光ユニット10で説明したのと同様のものが挙げられる。
【0069】
(陰極)
一方、陰極8は、電子輸送層6bに電子を注入する電極である。この陰極8の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極8の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0070】
特に、陰極8の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極8の構成材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極8に、光透過性は、特に要求されない。
【0071】
(封止部材)
封止部材12は、陽極3、積層体11、および陰極8を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材12を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材12の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材12の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材12と陽極3、積層体11、および陰極8との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0072】
また、封止部材12は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
このような発光素子1においては、赤色発光層5R、青色発光層5B、および緑色発光層5Gの各発光層に対し、陰極8側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出するため、赤色発光層5R、青色発光層5B、および緑色発光層5Gがそれぞれ赤色、青色、および緑色に発光する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
【0073】
特に、本実施形態の発光素子1では、さらに、キャリア発生層7において、正孔および電子が発生し、これらのうち、赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gには電子が注入され、青色発光層5Bには正孔が注入されるため、発光素子1をより高輝度で発光させることができるため、発光効率に優れた発光素子1を得ることができる。
さらに、n型電子輸送層は、アルカリ金属酸化物と電子輸送材料との混合材料で構成され、電子引き抜き層は、有機シアン化合物で構成されているため、キャリア発生層が金属酸化物で構成される場合と比較して、直接、第1の発光ユニット9および第2の発光ユニット10が有する有機材料と接触してしまうのを的確に抑制または防止することができるので、発光素子1の長寿命化が確実に図られる。
【0074】
なお、本実施形態では、第1の発光ユニット9が赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gを備え、第2の発光ユニット10が青色発光層5Bを備える場合について説明したが、かかる場合に限定されず、各発光ユニット9、10は少なくとも1層の発光層を備えていれば良く、例えば、第2の発光ユニット10が赤色発光層5Rおよび緑色発光層5Gを備え、第1の発光ユニット9が青色発光層5Bを備えていても良いし、第1の発光ユニット9および第2の発光ユニット10の双方が赤色発光層5R、青色発光層5Bおよび緑色発光層5Gを備えていても良い。さらに、例えば、発光素子1が赤色に発光する赤色発光素子である場合には、第1の発光ユニット9および第2の発光ユニット10は、その双方が赤色発光層5Rを備えるものであっても良い。
【0075】
(発光素子の製造方法)
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0076】
[2] 次に、陽極3上に正孔輸送層4aを形成する。
正孔輸送層4aは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送層4aは、例えば、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0077】
正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔輸送層4aを比較的容易に形成することができる。
正孔輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0078】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面を親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0079】
[3] 次に、正孔輸送層4a上に、赤色発光層5Rを形成する。
赤色発光層5Rは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[4] 次に、赤色発光層5R上に、緑色発光層5Gを形成する。
緑色発光層5Gは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0080】
[5] 次に、緑色発光層5G上に、電子輸送層6aを形成する。
電子輸送層6aは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層6aは、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層5G上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
以上のような工程[2]〜[5]を経て、陽極3上に第1の発光ユニット9が形成される。
【0081】
[6] 次に、電子輸送層6a上に、n型電子輸送層7aを形成する。
n型電子輸送層7aは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、n型電子輸送層7aは、例えば、その構成材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなるn型電子輸送層形成用材料を、電子輸送層6a上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0082】
[7] 次に、n型電子輸送層7a上に、電子引き抜き層7bを形成する。
電子引き抜き層7bは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子引き抜き層7bは、例えば、その構成材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子引き抜き層形成用材料を、n型電子輸送層7a上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
以上のような工程[6]、[7]を経て、第1の発光ユニット9上にキャリア発生層7が形成される。
【0083】
[8] 次に、n型電子輸送層7a上に、正孔輸送層4bを形成する。
この正孔輸送層4bの形成は、前記工程[2]で説明した正孔輸送層4aの形成方法と同様の方法を用いて行うことができる。
[9] 次に、正孔輸送層4b上に、青色発光層5Bを形成する。
青色発光層5Bは、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0084】
[10] 次に、青色発光層5B上に、電子輸送層6bを形成する。
この電子輸送層6bの形成は、前記工程[5]で説明した電子輸送層6aの形成方法と同様の方法を用いて行うことができる。
以上のような工程[8]〜[10]を経て、キャリア発生層7上に第2の発光ユニット10が形成される。
【0085】
[11] 次に、電子輸送層6b上に、陰極8を形成する。
陰極8は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材12を被せ、基板2に接合する。
【0086】
以上説明したような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の表示装置)を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0087】
(表示装置)
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図2は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置100は、基板21と、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bおよびカラーフィルタ19R、19G、10Bと、各発光素子1R、1G、1Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスタ24とを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。
【0088】
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0089】
平坦化層上には、各駆動用トランジスタ24に対応して発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
発光素子1Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)11、陰極8、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1R、1G、1Bの陰極8は、共通電極とされている。
【0090】
なお、発光素子1G、1Bの構成は、発光素子1Rの構成と同様である。また、図2では、図1と同様の構成に関しては、同一符号を付してある。また、反射膜32の構成(特性)は、光の波長に応じて、発光素子1R、1G、1B間で異なっていてもよい。
隣接する発光素子1R、1G、1B同士の間には、隔壁31が設けられている。また、これらの発光素子1R、1G、1B上には、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
【0091】
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、前述したエポキシ層35上に、発光素子1R、1G、1Bに対応して設けられている。
カラーフィルタ19Rは、発光素子1Rからの白色光Wを赤色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Gは、発光素子1Gからの白色光Wを緑色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Bは、発光素子1Bからの白色光Wを青色に変換するものである。このようなカラーフィルタ19R、19G、19Bを発光素子1R、1G、1Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0092】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
そして、カラーフィルタ19R、19G、19Bおよび遮光層36上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
以上説明したようなディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1R、1G、1Bに用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
【0093】
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図3は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0094】
図4は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0095】
図5は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0096】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0097】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0098】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0099】
なお、本発明の電子機器は、図3のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図4の携帯電話機、図5のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0100】
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、キャリア発生層は、各発光ユニット同士の間に設けられていればよく、これとは別に、発光ユニットとが2層以上の発光層を備える場合には、さらにこれら発光層同士の間にキャリア発生層が設けられていても良い。
【実施例】
【0101】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.黄色発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0102】
<2> 次に、ITO電極上に、真空蒸着法を用いて、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)で構成される平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
<3> 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す黄色発光層の構成材料で構成される平均厚さ30nmの黄色発光層を形成した。
ここで、黄色発光層の構成材料としては、黄色発光材料(ゲスト材料)としてルブレンを用い、ホスト材料としてN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)を用いた。また、発光層中の黄色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、5.0wt%とした。
【0103】
<4> 次に、黄色発光層上に、真空蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)で構成される平均厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
<5> 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示すn型電子輸送層の構成材料で構成される平均厚さ15nmのn型電子輸送層を形成した。
ここで、n型電子輸送層の構成材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と酸化リチウム(LiO)との混合材料を用いた。また、混合材料中における酸化リチウム(LiO)の含有量は2%(体積比率)とした。
【0104】
<6> 次に、電子引き抜き層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す電子引き抜き層の構成材料で構成される平均厚さ15nmの電子引き抜き層を形成した。
ここで、電子引き抜き層の構成材料としては、LG101(LGケミカル社製)を用いた。
<7> 次に、電子引き抜き層上に、真空蒸着法を用いて、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)で構成される平均厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0105】
<8> 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す黄色発光層の構成材料で構成される平均厚さ30nmの黄色発光層を形成した。
ここで、黄色発光層の構成材料としては、黄色発光材料(ゲスト材料)としてルブレンを用い、ホスト材料としてN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)を用いた。また、発光層中の黄色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、5.0wt%とした。
【0106】
<9> 次に、黄色発光層上に、真空蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)で構成される平均厚さ50nmの電子輸送層を形成した。
<10> 次に、第1の電子輸送層上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
<11> 次に、電子注入層上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極を形成した。
<12> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
【0107】
(実施例2)
前記工程<5>において、n型電子輸送層の構成材料として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と酸化リチウム(LiO)との混合材料を用い、この混合材料中における酸化リチウム(LiO)の含有量を0.5%(体積比率)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0108】
(実施例3)
前記工程<5>において、n型電子輸送層の構成材料として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と酸化リチウム(LiO)との混合材料を用い、この混合材料中における酸化リチウム(LiO)の含有量を15%(体積比率)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0109】
(実施例4)
前記工程<5>において、n型電子輸送層の構成材料として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と酸化リチウム(LiO)との混合材料を用い、この混合材料中における酸化リチウム(LiO)の含有量が電子輸送層側の界面では0.5%(体積比率)に、電子引き抜き層側の界面では2.0%(体積比率)となるように、電子輸送層側から電子引き抜き層側に向かって漸増するようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0110】
(比較例1)
前記工程<5>において、真空蒸着法を用いて、電子輸送層側にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)で構成される層(14nm)を形成し、電子輸送層側にリチウムで構成される層(1nm)を形成し、かかる2層で構成されるn型電子輸送層を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
(比較例2)
前記工程<5>において、真空蒸着法を用いて、電子輸送層側にリチウムで構成される層に代えて、酸化リチウム(LiO)で構成される層を形成したこと以外は、前記比較例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0111】
(比較例3)
前記工程<5>において、n型電子輸送層の構成材料として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)とリチウムとの混合材料を用い、この混合材料中におけるリチウムの含有量を2.0%(体積比率)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0112】
(比較例4)
前記工程<5>において、n型電子輸送層の構成材料として、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と炭酸リチウムとの混合材料を用い、この混合材料中における炭酸リチウムの含有量を2.0%(体積比率)としたこと以外は、前記実施例1と同様にして、発光素子を製造した。
【0113】
2.評価
各実施例および各比較例の発光素子に対して、それぞれ、陽極と陰極との間に直流電源により電流密度10mA/cmの電流を流し、発光素子にかかる電圧、発光素子から放出された光の電流効率を測定した。
さらに、各実施例および各比較例の発光素子について、それぞれ、輝度が10,000cd/mとなるように発光素子に定電流を流し、初期の輝度の80%となるまでの時間(LT80)を測定し、比較例1で測定された時間を基準として規格した値を求めた。
これらの結果を表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1から明らかなように、各実施例の発光素子は、キャリア発生層が備えるn型電子輸送層を、アルカリ金属酸化物と電子輸送材料とを含有する構成とすることにより、得られる発光素子の長寿命化を図ることができた。なお、この際、キャリア発生層を、かかる構成とした影響を受けることなく、各実施例の発光素子は、優れた発光効率を発揮するものであった。
なお、このような傾向は、n型電子輸送層中においてアルカリ金属酸化物が遍在する実施例4においてより顕著に認められた。
これに対し、各比較例の発光素子は、各実施例の発光素子と比較して、耐久性(寿命特性)が低いものとなった。
【0116】
1.白色発光素子の製造
(実施例5)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0117】
<2> 次に、ITO電極上に、真空蒸着法を用いて、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)で構成される平均厚さ50nmの正孔輸送層を形成した。
<3> 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す赤色発光層の構成材料で構成される平均厚さ10nmの赤色発光層を形成した。
ここで、赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として、Ir金属錯体である下記化学式(7)で表わされるIr(piq)3を用い、ホスト材料として下記化学式(8)で表わされるCBPを用いた。また、発光層中の赤色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、10wt%とした。
【0118】
【化7】

【0119】
【化8】

【0120】
<4> 次に、赤色発光層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す緑色発光層の構成材料で構成される平均厚さ30nmの緑色発光層を形成した。
ここで、緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)として、Ir金属錯体である下記化学式(9)で表わされるIr(ppy)3を用い、ホスト材料として前記化学式(8)で表わされるCBPを用いた。また、発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、10wt%とした。
【0121】
【化9】

【0122】
<5> 次に、緑色発光層上に、真空蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)で構成される平均厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
<6> 次に、電子輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示すn型電子輸送層の構成材料で構成される平均厚さ15nmのn型電子輸送層を形成した。
ここで、n型電子輸送層の構成材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)と酸化リチウム(LiO)との混合材料を用いた。また、混合材料中における酸化リチウム(LiO)の含有量は2%(体積比率)とした。
【0123】
<7> 次に、電子引き抜き層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す電子引き抜き層の構成材料で構成される平均厚さ15nmの電子引き抜き層を形成した。
ここで、電子引き抜き層の構成材料としては、LG101(LGケミカル社製)を用いた。
<8> 次に、電子引き抜き層上に、真空蒸着法を用いて、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)で構成される平均厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
【0124】
<9> 次に、正孔輸送層上に、真空蒸着法を用いて以下に示す色発光層の構成材料で構成される平均厚さ30nmの青色発光層を形成した。
ここで、青色発光層の構成材料としては、青色発光材料(ゲスト材料)として、前述した化学式(6)で表わされる化合物を用い、ホスト材料として下記化学式(10)で表わされるTBADNを用いた。また発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は5.0wt%とした。
【0125】
【化10】

【0126】
<10> 次に、青色発光層上に、真空蒸着法を用いて、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)で構成される平均厚さ50nmの電子輸送層を形成した。
<11> 次に、第1の電子輸送層上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
<12> 次に、電子注入層上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極を形成した。
<13> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
【0127】
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
この実施例5の発光素子に対しても、前記実施例1〜4の発光素子と同様に、発光素子にかかる電圧、発光素子から放出された光の電流効率および、LT80を測定した。その結果、実施例5の発光素子は、前記実施例1〜4の発光素子と同様に、優れた発光特性および寿命特性を有するものであった。
【符号の説明】
【0128】
1、1B、1G、1R……発光素子 2……基板 3……陽極 4a、4b……正孔輸送層 5R……赤色発光層 5G……緑色発光層 5B……青色発光層 6a、6b……電子輸送層 7……キャリア発生層 7a……n型電子輸送層 7b……電子引き抜き層 8……陰極 9……第1の発光ユニット 10……第2の発光ユニット 11……積層体 12……封止部材 19B、19G、19R……カラーフィルタ 100……ディスプレイ装置 100B、100G、100R……サブ画素 20……封止基板 21……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 27……配線 31……隔壁 32……反射膜 33……腐食防止膜 34……陰極カバー 35……エポキシ層 36……遮光層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより発光する少なくとも1層の発光層を備える第1の発光ユニットと、
前記陰極と前記第1の発光ユニットとの間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより発光する少なくとも1層の発光層を備える第2の発光ユニットと、
前記第1の発光ユニットと前記第2の発光ユニットとの間に設けられ、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより正孔および電子を発生させるキャリア発生層とを有し、
該キャリア発生層は、前記第1の発光ユニット側に設けられ、アルカリ金属酸化物と電子輸送性を有する電子輸送材料とを含有するn型電子輸送層と、前記第2の発光ユニット側に前記第1のキャリア発生層と接合して設けられ、芳香環を有する有機シアン化合物を含む電子引き抜き層とを有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記アルカリ金属酸化物は、酸化リチウムである請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記アルカリ金属酸化物は、電子引き抜き層側から陽極側に向かって、その含有率が低くなっている請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記n型電子輸送層におけるアルカリ金属酸化物の含有率(体積比率)は、0.4%以上、14%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記n型電子輸送層は、その平均厚さが、5nm以上、60nm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の発光ユニットおよび前記第2の発光ユニットは、それぞれ、前記陽極側に位置する正孔輸送層と、前記陰極側に位置する電子輸送層とを備える請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
前記n型電子輸送層に含まれる電子輸送材料は、前記第1の発光ユニットが有する前記電子輸送層に含まれる前記電子輸送材料と同種または同一のものである請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記有機シアン化合物は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体である請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記電子引き抜き層は、その平均厚さが、5nm以上、40nm以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−113888(P2011−113888A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270767(P2009−270767)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】