説明

発光素子及びそれを用いた画像表示装置

【課題】 高い光抽出効率を有する発光素子を提供する。
【解決手段】 発光層と、複数の第1の媒質と第1の媒質とは屈折率が異なる第2の媒質とを備え、発光層と対向配置され該発光層で生じた光を透光する構造体層とを有し、構造体層は、構造体層の面内方向において各々が第2の媒質に囲まれた複数の第1の媒質を有し、第1の媒質の形状が、発光層と対向する面と垂直な方向に長軸を有し、長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状であることを特徴とする発光素子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、及びそれを用いた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子には、発光層にて生成された光が、外部へ抽出される効率(光抽出効率)を高くすること、そして、大面積の発光素子を低コストに作製することが求められる。
【0003】
発光素子において、光抽出効率を高める為には、発光層にて生成された光が、外部に抽出される間の損失を低減することが重要である。例えば基板(前面板)上に発光層を設けた発光素子においては、損失の一つとして、発光層と前面板の界面等における全反射損失がある。高屈折率媒質(例えば、発光層や前面板)から低屈折率媒質(例えば、外部領域)に向けて光が伝播すると、臨界角よりも大きな角度で伝搬する光は全反射され、高屈折率媒質に閉じ込められる。このような光は、低屈折率媒質中に抽出されないため、光抽出効率が低減する。
【0004】
全反射損失を低減し、光抽出効率を増大させるため、屈折率が異なる媒質で形成された層と層の間(例えば、発光層と前面板の間)に、微細構造を設けることが知られている。発光層の内部で発生した光を微細構造により回折させることで、臨界角度以上の角度で伝播する光を低減させ、臨界角以内の角度で伝搬する光を増大させることにより、光抽出効率を高めている。
【0005】
特許文献1では、図7に示す構成を有する発光部800を複数配列した画像表示装置が提案されている。図7に示す発光部800は、一対の電極805及び803、発光層804、発光層より高い屈折率を有する媒質により構成された高屈折率層802、及び前面板806を有している。さらに前面板806と高屈折率層802の間に微細構造801が配置されている。微細構造801は、前面板と平行な面内に、微小球を配列した構造である。微細構造801は、発光層804の内部で生じた光809を回折させることにより、臨界角度以内の光810を増大させ、微細構造を配置しない時に比べて高い光抽出効率を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−230069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の構成では、光抽出効率の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、発光層と、複数の第1の媒質と該第1の媒質とは屈折率が異なる第2の媒質とを備え前記発光層と対向して配置され該発光層で生じた光を透光する構造体層とを有する発光素子であって、
前記構造体層は、該構造体層の面内方向において各々が前記第2の媒質に囲まれた複数の前記第1の媒質を有し、前記第1の媒質の形状が、前記発光層と対向する面と垂直な方向に長軸を有し、該長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発光素子によれば、高い光抽出効率を有する発光素子得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態の発光素子を示す断面図
【図2】実施の形態の構造体層の一部を示す図
【図3】実施の形態の発光素子の光放出効率と楕円率の関係を示す図
【図4】実施の形態の発光素子を複数備えた画像表示装置の部分断面図
【図5】実施の形態の発光素子の製造工程を示す図
【図6】実施例2の発光素子の製造工程を示す図
【図7】従来の発光素子の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本実施の形態の発光素子100の概略を示している。発光素子100は、発光層102と構造体層である微細構造105とからなり、好ましい形態においては、更に前面板101と図示しない励起手段を有する。図1に示す形態において微細構造105は、前面板101と発光層102との間に、発光層102と対向して配置されている。発光層102は、例えば、蛍光体材料を含む膜で構成され、可視波長域である波長350〜800nmのいずれかの波長を含む光を発生する。構造体層である微細構造105は、発光層102で生じた光を透光する構造体であり、異なる屈折率を有する2種類以上の媒質から構成され、構造体層の面内方向であるxy面内方向に屈折率分布を有する。構造体層である微細構造105の一例を、図2に示す。図2の(a)、(b)は、微細構造105のxy断面およびxz断面を示す図である。微細構造105は、第1の媒質である媒質1で構成された楕円体形状の楕円球構造体104と、媒質1とは異なる屈折率を有し、媒質1の周囲を囲むように配置される第2の媒質である媒質2により構成された領域103とを備えている。そして、第1の媒質である媒質1で構成された楕円体形状の楕円球構造体104は、発光層102と対向する面と垂直な方向であるZ方向に長軸を有するように配置されている。また、媒質1で構成された楕円球構造体104は、xy面内にて、三角格子の格子点上に重心が位置するように配置されている。図2(a)に記載のベクトルa1及びa2は三角格子の基本ベクトルを表しており、a1=(0.5a,√3a/2,0)、a2=(0.5a,−√3a/2,0)のベクトルである。三角格子は基本ベクトルa1及びa2の和及び差によって表される位置に格子点を有する。ここで、格子周期106の長さをaと表した。
【0012】
図1の発光層102に、図示しない励起手段により電子が供給されることで、発光層102にて光が発生する。励起手段は、例えば、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層102の表面に電極を設けることで構成される。発生した光は、微細構造105及び前面板101を通過し、外部に抽出されることで+z方向に伝播する。本発明においては、発光層にて発生した光が射出する方向を光射出側と定義する。
【0013】
外部領域への光抽出効率を高めるためには、発光層102にて生じた光110を微細構造105により回折させ、臨界角度以内で伝播する光111を増大させ、臨界角度以上で伝播する光112を低減させることが必要となる。
【0014】
本実施の形態における発光素子100が、高い光抽出効率を得ることができる理由を次に述べる。
図1に示す発光層102にて生じた光110が微細構造105に入射すると、複数の回折光が生じる。この回折光の中で、0次の次数を有する回折光が、前面板と外部領域界面の臨界角度よりも大きい角度を有する時、0次の回折光は、前面板と外界の界面にて全反射され、損失となる。一方、構造体層である微細構造105にて回折された光のうち、0次以外の次数を有し、臨界角度以内の角度を有する回折光は、全反射されることなく外部へ抽出される。その為、外部への光抽出効率を高くするためには、微細構造105の0次以外の高次回折光強度を高くすることが望ましい。
【0015】
微細構造105に光を入射すると、楕円構造体104内を伝播した光と、領域103内を伝播した光との間で位相差が生じる。微細構造105により生じる回折光は、この位相差により発生し、その位相の変化が急峻なほど、高次の回折光強度が強くなる。そして、微細構造を構成する媒質1が、長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状を有する楕円球構造体で、その楕円率が大きいほど、急峻な構造変化を有しているために、位相変化も急峻となる。ここで楕円率とは、回転楕円体形状を有する楕円球構造体の長軸の長さを短軸の長さで除した値であり、換言するとz軸方向の直径(図2(b)符号108)を、x軸方向の直径(図2(b)符号107)で除した値である。我々の鋭意検討の結果、楕円率が大きくなるにつれ、高次回折光強度の割合が高くなることが判明した。本実施の形態の発光素子において、微細構造105に含まれる楕円球構造体の楕円率を大きくすることにより、外部への光抽出効率を高くすることができる。
【0016】
また、より高い光抽出効率を得るためには、微細構造105が、2次以上の高次回折光を有することが望ましい。2次以上の高次回折光は大きい回折角度を有するため、光110が大きい角度で微細構造105に入射する場合にも、臨界角度以内の角度で伝播する光に回折させることができる。
【0017】
微細構造に光が入射した時には、以下の式1を満たす回折次数の光が発生する。
【0018】
【数1】

【0019】
式1において、λは入射光の波長、Ninは入射側媒質の屈折率、Noutは反射回折光または透過回折光が伝播する領域の屈折率を表している。θinは入射光の入射方向とz軸とが成す角度、Λは構造体層である微細構造の、回転楕円体形状を有する媒質1からなる楕円球構造体の周期間隔、mは回折次数である。Λを1.0μm以上にすることで、可視域において高次の回折光が発生しにくい波長700nmにおいても、2次以上の回折光を発生させることができ、外部への光抽出効率を高くすることができる。発光層から微細構造105へ入射する光の入射角度が、前面板と外部領域界面の臨界角度よりも大きい時、0次の透過回折光は前面板と外部領域の界面で全反射される。外部への光抽出効率を高めるためには、0次の透過回折光よりも小さい角度で伝播する透過回折光を増大させ、逆に大きい角度で伝播する透過回折光を減少させる必要がある。Λを大きくすることにより、0次の透過回折光よりも大きい角度で伝播する透過回折次数が多く発生するようになり、前面板と外部領域界面の全反射損失が増大し、外部への光抽出効率が低下する。望ましくはΛを3.0μm以下にすることで、全反射損失を低くすることができ、外部への光抽出効率を高く保つことができる。すなわち、本発明の発光素子において、微細構造105の回転楕円体形状を有する媒質1からなる楕円球構造体の周期間隔である格子定数を、1μm以上且つ3μm以下にすることにより、2次以上の高次回折光を発生させ、且つ全反射損失を低減させることができ、外部への光抽出効率をより高くすることができる。
【0020】
次に、本実施の形態における発光素子100に含まれる微細構造105の一例を示す。図2に示す、構造体層である微細構造105においては、楕円球構造体104は、z軸と平行な面内にてz軸方向に長軸を有する楕円形の断面形状を有し、さらにx軸及びy軸と平行な面内にて円形の断面形状を有する。つまり楕円球構造体104は、長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状を有している。そして媒質1で構成される楕円球構造体104の屈折率は2.2、周囲の領域103を構成する媒質2の屈折率は1.46、前面板101の屈折率は1.46、発光層102の屈折率は1.5である。また楕円球構造体104は、2.3μmの長さの格子周期106を有する三角格子の格子点上に重心が位置するように配列されている。そして、構造体層である微細構造105は発光層102に対向して配置されている。また発光層102の背面には図示しない励起手段が配置され、その背面の領域は真空となっている。
【0021】
図3は、このような構造体層である微細構造105を用いた発光素子100の、光抽出効率を示している。図3において、縦軸は、本実施の形態の楕円球構造体を有する微細構造体105を備える発光素子の光抽出効率を、球体(つまり楕円率=1)を有する微細構造体を備える発光素子の光抽出効率で規格化した光抽出効率を示している。また横軸は、微細構造体105の楕円球構造体の楕円率を示している。
【0022】
図3に示すように、微細構造105の楕円率が1よりも大きくなるよう、適切に設計することにより、発光素子100の光抽出効率を高めることができる。そして光効率向上において、楕円率は1.2以上が好ましい。さらに、微細構造105の回転楕円体形状を有する媒質1からなる楕円球構造体の周期間隔である格子周期を1.0μm以上3.0μm以下とすることにより、発光素子100の光抽出効率をより高めることができる。
【0023】
本発明に含まれる微細構造105を構成する媒質1と媒質2は、楕円球構造体104を伝播する光と領域103を伝播する光が、位相差を有する限りは、本実施形態で示した媒質とは異なる媒質であっても、本発明の効果は失われない。望ましくは、媒質1と媒質2の屈折率差を大きくすることにより、より急峻な位相変化を得ることができ、外部に抽出される光を増大させることができる。また本実施の形態における前面板101は、発光層102及び構造体層である微細構造105を保護することができ、且つ発光層にて生じた光を透光するものであれば良く、例えば、プラスチックで形成してもよい。また、励起手段は、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層102の表面に電極を配置することで構成してもよい。このような構成においては、電子放出素子に電界を加えると、発光層に向けて電子が放出され、発光層102に電子が供給され、発光層102の中で光が発生する。あるいは、励起手段を、発光層102と前面板101の間及び発光層102と裏面の間に陽極と陰極を配置して構成してもよい。このような構成においては、両電極間に電流を印加し、電子と正孔を注入することにより、発光層102の中で光が発生する。あるいは、励起手段を、基板上に配置した電極と、発光層102の前面あるいは背面に配置した電極とで構成するセル構造で形成してもよい。このような構成においては、セルに電流を流すことによってプラズマを発生し、紫外線を発生するガスが封入することで紫外線が発生し、蛍光体粒子に照射されることで、蛍光体粒子が励起される。構造体層である微細構造105は、図1及び図2に示した構成に制限されるものではなく、異なる構造パラメータを有する構造であってもよい。尚、本実施の形態に用いた三角格子構造は、構造の対称性がよく、微細構造に入射する光の方位角依存性が少ないため、発光素子100からの発光強度の方位角依存性を低減することができる。また、構造体層である微細構造105は、非周期的な配列を有する格子点上に、媒質1から構成され回転楕円体形状を有する楕円球構造体を配置しても良い。非周期的な格子点配列された楕円球構造体を有する微細構造を通過した光は、輪帯状の配向パターンを有する為、発光素子100からの発光強度の方位角依存性を低減することができる。また、微細構造105の楕円球構造体の配列は、三角格子状でなくてもよく、例えば、正方格子状や長方格子状であってもよい。発光層102は、本実施例で示した屈折率を有する媒質以外の媒質でもよい。本実施の形態においては、構造体層である微細構造105は、発光層102と前面板101との間に位置しているが、発光層102にて生じた光が微細構造105に入射する限りは、この配置に限定されない。例えば、微細構造105と前面板101との間に発光層102が位置する構成でもよい。また他の例では、構造体層である微細構造105を前面板101と外部領域の間に配置してもよい。いずれの配置においても、発光素子の光抽出効率を高めることができる。
【0024】
図4に、本実施例の発光素子を前面板と平行な面内に複数配列した画像表示装置500を示す。図4は画像表示装置500のxz断面図である。画像表示装置500は、赤色、青色、緑色の各色を表示する画素510、520、530で構成されている。図4には、3つの画素510、520、530を示しており、このような画素を行列状に複数個配列することで、画像表示装置500が構成されている。
【0025】
画素510、520、530は、発光層512、522、532と微細構造505とで構成され、好ましい形態においては、更に励起手段506を有している。構造体層である微細構造505は、発光層512、522、523と前面板501との間に位置している。また各発光層512、522、523は、光吸収性を有する媒質で形成された隔壁503によって区切られている。また励起手段506は、前面板501、発光層512、522、532と対向して配置されている。前面板501は、可視光に対して透明な媒質で形成されており、例えば、ガラスで形成されている。各画素の発光層512、522、532には、赤色、緑色、青色の各波長の光を発生する蛍光体が含まれている。
【0026】
構造体層である微細構造505は、媒質1からなり、長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状を有する楕円球構造体と、媒質1とは屈折率が異なり、媒質1の周囲に配置される媒質2により構成されている。つまり、第1の媒質である楕円球構造体の各々は、構造体層である微細構造505の面内方向において第2の媒質である媒質2に囲まれている。さらに、微細構造505はxy平面内において周期的な屈折率分布を有し、第1の媒質である楕円球構造体の周期間隔である格子周期は、1.0μm以上3.0μm以下の長さを有している。各画素510、520、530には、同じ媒質および同じ構造を有する微細構造505が配置されている。
【0027】
励起源506は、発光層512,522,532に電子を注入する手段を含む層である。例えば、励起源506は、基板上に電子放出素子と電極を配置し、発光層の表面に透明電極506を設けることで構成される。このような構成において、電子放出素子に電界を加えると、発光層に向けて電子が放出され、発光層に512,522,532に電子が供給され、発光する。発生した光は、微細構造505および前面板501を透過し、外部に抽出されることで、表示光となる。
【0028】
本実施の形態の画像表示装置500では、格子周期を1.0μm以上3.0μm以下とする。そして、微細構造505を構成する媒質1及び媒質2の屈折率、微細構造505に含まれる楕円球構造体の充填率及び形状を適切に設計することにより、各画素における光抽出効率を高めることが可能となる。各画素の光抽出効率を高めることにより、画像表示装置500の表示光強度を高めることができ、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。
【0029】
尚、本実施形態の画像表示装置500においては、各画素510、520、530に同じ媒質および構造を有する微細構造505を用いても、各画素で表示輝度の変動が小さい画像表示装置を得ることが出来た。微細構造505のxy平面内における屈折率分布の周期は1.0μm以上の長さを有しており、様々な方向から微細構造505に入射した光は多数の回折光に分配される。各回折光の強度は小さく、また入射光の波長の変動による強度の変動も小さくなる。そのため、微細構造505に入射する光の波長が変動しても、表示光の輝度の変動は小さく、各画素において表示光の輝度の差が小さい特性を得ることができる。このため、画素によって異なる構造を作製しなくてもよく、画像表示装置の作製が容易となる。
【0030】
また、本実施の形態の画像表示装置500においては、各画素毎に微細構造505を異なる構造としてもよい。あるいは、赤色、緑色あるいは青色に相当する画素510、520、530の、いずれか一つの画素に設ける微細構造と、他の画素に設ける微細構造とが異なる構成であってもよい。これによって、同じ構造を有する微細構造を各画素に配置した場合と比べて、正反射光、拡散反射光の抑制効果および表示光の増大効果をより向上させ、高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。また、各画素に設ける微細構造は、互いにyz断面における厚さが異なっていてもよい。あるいは、微細構造の格子周期の長さや楕円球構造体の形状を、画素ごとに異なる構造としてもよい。発光層512、522、532は、蛍光体粒子を、蛍光体粒子と同じ屈折率を有する媒質の中に分散させて配置することで構成してもよい。このような構成にすることで、蛍光体粒子とその周囲との境界で、屈折率の差によって発生する光の散乱を低減することができ、外光の反射を低減することができる。尚、本実施形態のように、発光層と前面板との間に微細構造を配置することで、外部領域から画像表示装置に入射する外光を、複数の光に分散して反射することができ、観察者の瞳に入射する外光反射光の強度を低減することができる。外光反射光の強度を低減し、さらに各画素の表示輝度を高めることにより、周囲が明るい環境下でも高いコントラストを有する画像表示装置を得ることができる。
【0031】
尚、本実施形態の画像表示装置500においては、構造体層である微細構造505を発光層512、522、532と前面板501との間に配置したが、発光層にて生じた光が微細構造505に入射する限り、上記配置に限定されない。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明における実施例について説明する。本実施例においては、図1に示す発光素子を作成した。
発光素子100は、前面板101上に微小球を配列した後、配列した微小球を楕円球化する工程を実施して構造体層である微細構造105を形成し、その後発光体層102を積層形成することによって作製している。以下では、発光素子100の作製手法を、図5を用いて説明する。尚、図5においては構造体層である微細構造105の作成工程を示しており、図5の(a)〜(e)は、前面板および微細構造をxz面内の断面図で示している。また、図5の(f)は、図5の(c)をxy面内の上面図で示している。
【0033】
(微小球配列工程)
図5の(a)に示すように、基板601上に粒子径が1.0μm〜3.0μmの範囲のいずれかの値を有し、媒質1により構成された微小球602を配列する。本実施例において、粒子径は微小球の直径を示している。粒子径を調整することにより、隣接する楕円球構造体104同士の間隔を適切に設定することができる。微小球の配列方法は公知の方法を採用することができる。例えば、液体分散媒中に固体分散媒としての微小球602が分散した粒子分散液を、図示しない固着層を塗布した基板601上に塗布し、固着処理を施した後に、液体分散媒及び余分な微小球602を除去する方法を用いることができる。
【0034】
微粒子を構成する媒質1は特に限定されないが、望ましくは発光層102にて生じる光に対して透明な媒質であることが好ましい。例えば、SiO2やTiO2等の金属酸化物や、SiNなどの金属窒化物により構成される微粒子を用いることができる。
【0035】
(楕円体化工程)
微小球を配列した後に、図5の(b)に示すように、等方性エッチングにより微小球602を縮小させ、さらに媒質1とは異なる媒質による薄膜603を微小球602上に堆積させる。薄膜603を堆積させる手段としては、スパッタリング法や蒸着法等の公知の手段を用いることができる。微小球602を縮小させた後のサイズによって、楕円球構造体104の長径を制御することができる。
【0036】
図5の(c)に示すように、エッチング処理により薄膜603の一部を除去し、微小球601上にキャップ構造613を形成する。エッチング手法としては、微小球602の一部のみを露出できるエッチング手法であればよい。
【0037】
次に、図5の(d)に示すように、キャップ構造613をマスクにして、再度エッチング処理を施すことにより微小球602を楕円球化し、楕円体612を形成する。エッチング手法としては、図5の(f)に示す上面図において、微小球602が露出する部分を加工できれば良く、例えば、異方性エッチングを用いることができる。キャップ構造613のサイズ及び、その後のエッチング条件を適切に制御することにより、楕円球構造体104の短径を制御することができる。これにより、第1の媒質を回転楕円体形状に加工した。尚、本実施例においては、図5の(c)及び図5の(d)を別の工程として記載した。しかしこれに限らず薄膜603の膜厚及び薄膜603を構成する媒質と微小球603のエッチングレート比を適切に設定し、等方性エッチングを用いることにより、図5の(c)及び図5の(d)を一工程にまとめて実施することもできる。
【0038】
微小球602を楕円体化した後に、楕円体612の周囲を媒質1とは屈折率が異なる媒質2により充填し、層604を形成する。層604の形成には、スピンコーティング法、バーコート法、スパッタリング法などの公知の方法を用いることができる。層604を構成する媒質2は、媒質1とは屈折率が異なる限りは、特に限定されず、望ましくは発光層102にて生じる光に対して透明な媒質であることが望ましい。例えば、SiO2やTiO2等の酸化物、SiN等の窒化物や、スピンオングラス材料等を用いることができる。
その後、発光層を形成することにより発光素子100を形成した。
【0039】
本実施例では、微小球を配列させた後に、楕円体化工程により楕円球構造体を形成している。微小球配列工程を用いることにより、低コストに大面積に渡って均一な微小球配列を得ている。さらに、楕円体化工程により、高い光抽出効率を有する発光素子を作製している。以上から、本実施例の作製手法においては、高い光抽出効率を有し、かつ大面積の発光素子を作製している。
【0040】
構造体層である微細構造105の全回折光強度に含まれる高次回折光強度の割合は、楕円球構造体のxy面内断面積が最も大きくなる断面において、媒質1が占める領域の充填率が0.5にて最大となる。本実施例の作製手法も合わせて考慮すると、高い光抽出効率を有する発光素子を得るためには、楕円率(長径を短径で除した値)を1.43よりも小さい値に設計することが望ましい。
【実施例2】
【0041】
本実施例においては、発光素子100の構造体層である微細構造105を、大面積を一括に、かつ低コストで作製する。尚、本実施例においても、発光素子100は、微小球配列工程を実施した後に、配列した微小球を楕円体化する工程を実施し、その後発光体層102を積層形成することにより、図1及び図2に記載の発光素子100を作製している。
【0042】
以下では、発光素子100の作製手法を、図6を用いて説明する。尚、図6においては構造体層である微細構造105の作成工程を示しており、図6の(a)〜(d)は、前面板および微細構造をxz面内の断面図で示している。
【0043】
(微小球配列工程)
図6の(a)に示すように、基板701上に、媒質1からなる微小球702を配列する。微小球の配列方法として、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いることができる。
【0044】
(楕円球化工程)
微小球を配列した後に、等方性エッチングにより微小球702を縮小させ、図6の(b)に示すように、図示しない固着層を塗布した基板703を微小球702に接着する。
【0045】
次に、図6の(c)に示す引き出し工程にて、基板703を基板701との間隔を大きくする方向に引き、微小球702を楕円体形状に変形させ、その後基板703を除去することにより微小球702を楕円体化する。微小球702を楕円体化した後、微小球702の周囲を媒質1とは屈折率が異なる媒質2により充填し、領域704を形成する。領域704を構成する媒質2は、媒質1とは屈折率が異なる限りは、特に限定されず、望ましくは発光層102にて生じる光に対して透明な媒質であることが望ましい。例えば、SiO2はTiO2等の金属酸化物、SiN等の金属窒化物や、スピンオングラス材料等を用いることができる。引き出し工程による微小球の収縮率を考慮し、微小球702のサイズを適切に制御することで、楕円球構造体104の短径を制御することができる。
この後、基板上に発光層を形成することにより発光素子100を形成する。
【0046】
本実施例では、微小球を配列させた後に、楕円体化工程により楕円球構造体を形成している。微小球配列工程を用いることにより、低コストで大面積に渡って均一な微小球配列を実現している。さらに、楕円体化工程により、高い光抽出効率を有する発光素子を作製している。本実施例の楕円体化工程を用いることにより、高い楕円率を有する楕円球構造体を形成することができる。そして楕円率の高い楕円球構造体を用いることにより、微細構造705を通過した光の位相変化を急峻にすることができ、より高い光抽出効率を有する発光素子を構成可能となる。
【0047】
以上から、本実施例の作製手法においては、高い光抽出効率を有し、かつ大面積の発光素子を低コストに作製している。
【符号の説明】
【0048】
100 発光素子
101 前面板
102 発光層
105 微細構造
110、111、112 発光層にて生じた光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と、複数の第1の媒質と該第1の媒質とは屈折率が異なる第2の媒質とを備え前記発光層と対向して配置され該発光層で生じた光を透光する構造体層とを有する発光素子であって、
前記構造体層は、該構造体層の面内方向において各々が前記第2の媒質に囲まれた複数の前記第1の媒質を有し、前記第1の媒質の形状が、前記発光層と対向する面と垂直な方向に長軸を有し、該長軸を回転軸として回転させた回転楕円体形状であることを特徴とする発光素子
【請求項2】
前記複数の第1の媒質は、前記面内において三角格子状に配列されており、前記三角格子の格子定数が1μm以上且つ3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子
【請求項3】
前記複数の第1の媒質の各々は、前記三角格子の格子点上に重心が位置するように配列されていることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記複数の第1の媒質の各々は、前記面内において非周期的に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子
【請求項5】
前記回転楕円体形状の楕円率が1.43よりも小さいことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の発光素子
【請求項6】
前記発光層で生じた光を透光する前面板を更に備え、前記構造体層は、前記発光層と前記前面板との間に位置していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
行列状に配列された複数の発光素子を備える画像表示装置であって、前記発光素子が請求項1〜6のいずれかに記載の発光素子であることを特徴とする画像表示装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69277(P2012−69277A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210904(P2010−210904)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】