説明

発光素子及び光電変換素子、並びにこれらの製造方法

【課題】優れた特性を有する発光素子及び光電変換素子を提供する。
【解決手段】発光素子10は、陰極34と、陽極32と、該陰極34及び陽極32に挟持される発光層50と、該陰極34及び該発光層50の間に配置され、かつ該陰極34に接合される電子注入層44とを備えており、前記陰極34がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ前記電子注入層44がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子及び光電変換素子、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層の材料として有機化合物を含有する発光素子の発光効率を向上させるためには、陰極からの電子注入性を向上させる必要がある。
【0003】
陰極からの電子注入性を向上させることを目的として、(1)アルミニウム等の仕事関数が大きい金属の層に、仕事関数が小さい金属の層を更に蒸着法により蒸着して陰極を形成したり、(2)仕事関数が大きい金属と仕事関数が小さい金属とを用いてなる合金の層を蒸着法により蒸着して陰極を形成したり、(3)蒸着法により形成した金属の層からなる陰極に、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等を材料とする電子注入層を、蒸着法により陰極に積層して形成したりする方法が知られている。
【0004】
金属又は合金の層の形成に蒸着法を用いた場合には、真空系によるバッチ工程が必要となるため、製造工程の連続性が失われることにより歩留まりが低下することがあるという問題や、製造コストが高くなることがあるという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決することを目的として、塗工液を用いて塗布成膜する塗布法により電子注入層、陰極等を形成した発光素子が報告されている(特許文献1及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/009331号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Advanced Materials 2007, 19, 810
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の発光素子において、陰極からの電子注入性を向上させることを目的として、陰極の導電性をより高くしようとすると、陰極の厚さを厚くする必要があるため、陰極の透明性が低くなって出射光の透過性が低下することがあり、結果として発光素子の輝度が低下することがある。よって、陰極の厚さが厚くなる場合には、陰極寄りの側から発光するトップエミッション型の発光素子とするのは困難である。また、陰極の厚さを厚くすると、陰極の材料の使用量が増加して製造コストが高くなることがある。
【0009】
そこで、本発明は、陰極の厚さを薄く保ちつつ、電子注入性を向上させ、優れた発光輝度を得ることができる構成を有する発光素子等を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた特性を備える発光素子等をより簡便な工程で、かつ高い生産性で製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を進めたところ、本発明を完成するに至った。即ち本発明によれば、下記〔1〕〜〔21〕が提供される。
〔1〕 陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される発光層と、該陰極及び該発光層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備え、
前記陰極がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ前記電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む、発光素子。
〔2〕 前記発光層と陽極との間に配置された正孔注入層を更に備える、〔1〕に記載の発光素子。
〔3〕 前記陰極が光透過性を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の発光素子。
〔4〕 前記導電性材料が、金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる1種類以上の材料を含む、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔5〕 前記導電性材料が、銀ナノワイヤーを含む、〔4〕に記載の発光素子。
〔6〕 前記導電性材料が、カーボンナノチューブを含む、〔4〕に記載の発光素子。
〔7〕 前記イオン性基が、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、及び下記式(n−1)〜式(n−13)から選ばれる芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の発光素子。
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Mは金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。M’はアニオンを表す。)
〔8〕 前記極性基が、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び下記式(I)〜式(IX)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の発光素子。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【化2】

−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
(式(I)〜式(IX)中、R’は置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。R’’は水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。R’’’は置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。mは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリール基を表す。前記R’、前記R’’、及び前記R’’’の各々が複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。)
〔9〕 前記イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む有機化合物が、共役化合物である、〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔10〕 前記共役化合物が、下記式(X)で表される基、若しくは下記式(XI)で表される構造単位、又は前記基及び前記構造単位の両方を有する、〔9〕に記載の発光素子。
【化3】

(式(X)中、Ar1は(n1+1)価の芳香族基であり、R1は直接結合又は(m1+1)価の基であり、X1はイオン性基又は極性基を含む基である。m1及びn1は、同一又は異なる1以上の整数であって、R1が直接結合である場合、m1は1である。R1、X1及びm1の各々が複数個存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。)
【化4】

(式(XI)中、Ar2は(n2+2)価の芳香族基である。R2は直接結合又は(m2+1)価の基である。X2はイオン性基又は極性基を含む基である。m2及びn2は同一又は異なる1以上の整数であって、R2が直接結合である場合、m2は1である。R2、X2及びm2の各々が複数個存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。)
〔11〕 前記Ar1が下記式で表される芳香族化合物中の芳香環から(n1+1)個の水素原子を取り除いた基であり、該基は置換基を有していてもよく、前記Ar2が下記式で表される芳香族化合物中の芳香環から(n2+2)個の水素原子を取り除いた基であり、該基は置換基を有していてもよい基である、〔10〕に記載の発光素子。
【化5】

〔12〕 前記陰極の厚さが、30μm以下である、〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔13〕 基板を更に備え、該基板に前記陽極が接合されており、前記陰極寄りの側から発光するトップエミッション型である、〔3〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔14〕 前記陽極寄りの側及び前記陰極寄りの側の両方から発光する両面発光型である、〔3〕〜〔13〕のいずれか1つに記載の発光素子。
〔15〕 光透過性を有する、〔14〕に記載の発光素子。
〔16〕 〔1〕〜〔15〕のいずれか1つに記載の発光素子を製造する製造方法であって、
アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して陰極を形成する工程を含む、発光素子の製造方法。
〔17〕 イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む塗工液を塗布成膜して電子注入層を形成する工程と、
前記電子注入層に接合させて、前記陰極を形成する工程と
を含む、〔16〕に記載の発光素子の製造方法。
〔18〕 陽極を形成する工程と、
残りのすべての層の各々を塗工液を塗布成膜して形成する工程と
を含む、〔16〕又は〔17〕に記載の発光素子の製造方法。
〔19〕 前記陽極を形成する工程が、塗工液を塗布成膜して形成する工程である、〔18〕に記載の発光素子の製造方法。
〔20〕 陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、該陰極及び該電荷分離層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備え、
前記陰極が、アスペクト比が1.5以上の導電材料を含み、かつ前記電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む、光電変換素子。
〔21〕 陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、該陰極及び該電荷分離層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備える光電変換素子の製造方法において、
イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む塗工液を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、
前記電子注入層に接合させて、アスペクト比が1.5以上の導電材料を含む塗工液を塗布成膜して前記陰極を形成する工程と
を含む光電変換素子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発光素子及び光電変換素子は、電子注入性に優れた材料を用いる電子注入層と、導電性を向上させつつ厚さをより薄くすることができる材料を用いる陰極とを備えている。よって、本発明の発光素子及び光電変換素子によれば、陰極の透明性が向上して光の透過性が向上し、更に電子注入層の電子注入性を向上させることができる。これにより発光素子の発光輝度、及び、光電変換素子の光電変換効率を向上させることができる。
また本発明の発光素子及び光電変換素子の製造方法によれば、電荷注入層の形成工程及び引き続いて行われる陰極の形成工程が、常圧(大気圧)で実施できる簡便な塗布法として実施される。よって、電子注入層の形成工程と陰極の形成工程とを常圧で連続的に実施できるため、簡便な工程で、かつ、高い生産性で、特性が優れた発光素子及び光電変換素子を製造することができる。更に、陰極の厚さを薄くできることから陰極の材料の使用量を減少させることができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図2−1】図2−1は、光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。
【図2−2】図2−2は、光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。本発明の素子は、必ずしも図示例の配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。なお以下の説明において特に基板の厚み方向の一方を上といい、厚み方向の他方を下ということがある。
【0014】
<発光素子の構成例>
図1を参照して、発光素子の構成の一例について説明する。
本発明の実施形態にかかる発光素子は、陰極と、陽極と、陰極及び陽極に挟持される発光層と、陰極及び発光層の間に配置され、かつ陰極に接合される電子注入層とを備え、陰極がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む。
【0015】
図1は、発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【0016】
図1に示されるように、発光素子10は、基本構成としての陽極32と、陰極34と、これら陽極32及び陰極34に挟持された積層構造体60を備えている。
【0017】
積層構造体60は複数の有機層が積層されて構成され、複数の有機層のうちの少なくとも1層は発光層50である。また積層構造体60は、複数の有機層のうちの少なくとも1層の有機層として電子注入層44を有する。この電子注入層44は、陰極34及び発光層50の間に配置される。
【0018】
なお積層構造体60は複数の有機層のみから構成されていてもよいが、無機材料からなる無機層、有機材料と無機材料とが混合された層等を更に備えていてもよい。
【0019】
本実施形態では、第1の基板22の厚み方向に対向する2つの主表面の一方に、陽極32が設けられている。正孔注入層42aは、陽極32に接合するように設けられている。
正孔輸送層42bは、正孔注入層42aに接合するように設けられている。発光層50は、正孔輸送層42bに接合するように設けられている。電子注入層44は、発光層50に接合するように設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合するように設けられている。第2の基板24は、陰極34に接合するように設けられている。
【0020】
陽極32上には積層体60が積層されている。積層構造体60は、第1の基板22、第2の基板24、陽極32及び陰極34を除く、この構成例では正孔注入層42a、正孔輸送層42b、発光層50及び電子注入層44から構成され、陽極32及び陰極34に挟持される複数の有機層から構成されている。
【0021】
発光素子10は、陰極34がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ電子注入層44がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む。
【0022】
以下、発光素子10の構成要素について具体的に説明する。
−基板−
発光素子10を構成する基板20(第1の基板22及び第2の基板24)は、陽極32及び陰極34のうちの一方が接合するように設けることができ、電子注入層、発光層等の他の層を形成する際に化学的に変化しない材料により構成されていればよく、この材料の例としては、ガラス、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック、シリコンが挙げられる。
【0023】
−陰極−
発光素子10において、陰極34の材料としては、塗工液を用いる塗布法により基板20上に塗布形成可能である材料が選択され、かつ陰極34の材料は、アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む。
導電性材料の例としては、金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる1種類以上を含むものが挙げられる。導電性材料の例としては、アルミニウム、金、白金、銀、銅等の金属及びそれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらを含む複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズアンチモン酸化物、NESA等の金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料が挙げられる。これらの導電性材料は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0024】
金属としては、金属としての安定性が良好であるので、遷移金属が好ましく、周期表第11族金属がより好ましく、銀が更に好ましい。これらの金属は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0025】
金属酸化物としては、ITO、IZOが好ましい。
【0026】
炭素材料としては、カーボンナノチューブ、グラファイトが好ましく、カーボンナノチューブがより好ましい。
【0027】
アスペクト比とは、棒状体、ワイヤー状体等において、最も長い径と最も短い径との比率(最も長い径/最も短い径)を意味し、このアスペクト比に分布がある場合には平均値である。ここでいう平均値とは、算術平均値である。導電性材料のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡による写真を用いて算出することができる。
【0028】
アスペクト比は、陰極の導電性が向上するので、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上であり、特に好ましくは50以上であり、とりわけ好ましくは100以上であり、殊更に好ましくは300以上である。
アスペクト比が1.5未満の場合、導電パスの形成が不十分となり導電性が低下するおそれがある。
アスペクト比の上限は、限定されない。アスペクト比は、分散性が良好となるので、好ましくは107以下であり、より好ましくは106以下であり、更に好ましくは105以下であり、特に好ましくは104以下であり、とりわけ好ましくは103以下である。
【0029】
アスペクト比が1.5以上の導電性材料は、ナノ構造体であることが好ましい。
ナノ構造体とは、ナノ単位の径を有する金属、金属酸化物若しくは炭素材料、又はこれらの2種以上の組み合わせである。ナノ構造体の最も短い径は、通常1000nm未満である。ナノ構造体の最も短い径は、導電性、分散性が良好となるので、好ましくは800nm以下であり、より好ましくは600nm以下であり、更に好ましくは300nm以下であり、特に好ましくは150nm以下であり、とりわけ好ましくは100nm以下である。
ナノ構造体の最も短い径の下限は通常1nmである。ナノ構造体の最も短い径は、導電性が良好となるので、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
【0030】
ナノ構造体の最も長い径は、導電性が良好となるので、通常1000nm以上であり、好ましくは1300nm以上であり、より好ましくは1600nm以上であり、更に好ましくは2000nm以上であり、特に好ましくは2500nm以上であり、とりわけ好ましくは3000nm以上である。ナノ構造体の最も長い径は、通常1cm以下であり、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは0.3mm以下であり、とりわけ好ましくは0.1mm以下である。
【0031】
ナノ構造体の例としては、形状の特徴から、異方性ナノ粒子、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノロッド、ナノシートが挙げられる。
ナノ構造体としては、合成が容易であり、かつ、十分なアスペクト比が確保できるので、ナノロッド、ナノチューブ、ナノワイヤーが好ましい。なおナノロッドのアスペクト比は、好ましくは1.5〜20であり、より好ましくは5〜15である。またナノワイヤーのアスペクト比は、好ましくは20〜105であり、より好ましくは100〜104である。
【0032】
陰極の導電性材料である銀の例としては、形状の特徴から、異方性銀ナノ粒子、銀ナノワイヤー、銀ナノチューブ、銀ナノロッド、銀ナノシートが挙げられるが、合成が容易であり、かつ、十分なアスペクト比が確保できるので、銀ナノロッド、銀ナノチューブ、銀ナノワイヤーが好ましく、銀ナノワイヤーがより好ましい。
【0033】
本発明におけるアスペクト比が1.5以上の導電性材料は、市場で入手可能であるか、又は従来公知の方法で製造することができる。アスペクト比が1.5以上の導電性材料の製造には、液相法、気相法等の製造方法を用いることができる。アスペクト比が1.5以上の導電性材料は、いかなる方法で製造したものであってもよい。
【0034】
ナノ構造体の製造方法としては、金ナノ構造体の製造方法が、特開2006−233252号公報に開示されている。銀ナノ構造体の製造方法が、Xia,Y. et al., Chem. Mater.(2002)、14、4736−4745及びXia,Y. et al., Nano Letters(2003)3、955−960、Xia,Y. et al., J. Mater. Chem.(2008)18、437−441に開示されている。銅ナノ構造体の製造方法が、特開2002−266007号公報に開示されている。コバルトナノ構造体の製造方法が、特開2004−149871号公報に開示されている。
【0035】
アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含有する塗工液を塗布成膜する、塗布法により陰極を形成する場合には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法等を採用して成膜することができる。
【0036】
塗工液に用いられる溶媒としては、陰極に用いる陰極材料を溶解できるか、又は均一に分散できるものが好ましい。溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
陰極は1層のみからなる単層構造、又は、2層以上の層からなる積層構造である。陰極が2層以上の層からなる積層構造である場合、例えば、塗布法により2層以上の層を順次に積層するか、キャスティング法等により別個に形成した2層以上の層をラミネート法により張り合わせることにより、該陰極を作製する。
【0038】
陰極材料は、陰極34の導電性と、特に光透過性を有する陰極34の場合は光透過性とを妨げないことを条件として、他のいかなる材料と混合して用いてもよく、混合して用いる場合、陰極34を形成する前に混合してもよいし、形成後に混合してもよい。
【0039】
発光素子の陰極34は、光透過性を有することが好ましい。光透過性を有する陰極を用いることにより、陰極寄りの側から光を取り出すことができる。陰極の光透過性が良好となるので、導電性材料のアスペクト比は、好ましくは10以上であり、より好ましくは50以上であり、更に好ましくは100以上であり、特に好ましくは300以上である。アスペクト比が1.5未満の場合、光透過性が低下することがある。
【0040】
光透過性は、全光線透過率を用いて評価できる。本発明において「陰極が光透過性を有する」とは、陰極の全光線透過率が40%以上であることを意味する。全光線透過率は、発光素子の特性が良好となるので、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0041】
陰極34の厚さは、電気伝導度と、特に光透過性を有する陰極の場合は光の透過性とを考慮して調整すればよい。陰極34の厚さは、通常、10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは50nm以上であり、更に好ましくは100nm以上である。また陰極34の厚さは、通常、30μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは500nm以下である。
【0042】
塗布法で形成した陰極の表面は、滑らかであって、凹凸が少ない方が好ましい。陰極の表面の凹凸は、高い部分と低い部分の高低差が1μm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0043】
陰極の表面の凹凸を少なくする方法の例としては、塗布形成された膜を導電性材料の融点以上の温度で加熱する方法、塗布形成された膜の表面に対して圧力を印加する方法、一旦仮の基板に塗布した塗工液の膜を所定の基板に転写する方法、他の材料を塗布形成された膜の凹部に充填する方法が挙げられる。
【0044】
−陽極−
発光素子10において、陽極32は陽極材料を用いて、基板上に形成可能である。またITO等の導電性材料を用いて形成された導電性の薄膜が予め設けられた基板を準備して、導電性の薄膜を所定のパターンにパターニングすることにより陽極を形成してもよい。
【0045】
陽極32を構成する陽極材料の例としては、導電性の金属酸化物、金属、炭素材料、導電性高分子材料が挙げられる。陽極32を構成する陽極材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらを含む複合体であるITO、AZO、IZO、NESA等の金属酸化物、金、白金、銀、銅等の金属、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、ポリアニリン、ポリチオフェン(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸)、ポリピロール等の導電性高分子及びこれらを含む重合体等の導電性高分子材料が好ましい。陽極は1層のみからなる単層構造、又は、2層以上の積層構造である。
【0046】
陽極32の厚さは、電気伝導度、耐久性等を考慮して調整すればよい。陽極の厚さは、通常、10nm以上であり、好ましくは20nm以上であり、より好ましくは50nm以上であり、更に好ましくは100nm以上である。また陽極32の厚さは、通常、10μm以下であり、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500nm以下である。
【0047】
陽極32の形成方法の例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、又は金属薄膜を熱圧着するラミネート法、塗布法が挙げられる。陽極の形成方法としては、塗布法が好ましい。また陽極32と電子注入層44との間に、導電性高分子材料からなる層、又は、金属酸化物、金属フッ化物、若しくは、有機絶縁材料からなる層を設けてもよい。
【0048】
陽極32の形成方法として、塗工液を塗布成膜する塗布法を用いる場合に、塗工液に用いられる溶媒の例は、既に説明した陰極を塗布法で形成する場合の塗工液の溶媒の例と同じである。
【0049】
陽極材料は、陽極32の導電性を著しく妨げないことを条件として、他のいかなる材料と混合して用いてもよく、陽極32を形成する前に混合してもよく、形成後に混合してもよい。
本発明において、陽極材料とその他の材料とを混合した組成物から形成される層であっても陽極としての機能を有する層は陽極である。
【0050】
陽極材料と混合してもよい材料としては、導電性高分子材料が好ましい。導電性高分子材料の例としては、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニルアミン及びその誘導体等が挙げられる。
【0051】
その他にも、陽極材料と混合してもよい材料としては、正孔注入材料が好ましく、陽極材料と正孔注入材料とを混合した組成物から形成される層は、正孔注入層及び陽極の両方の機能を有する層である。上記のとおり正孔注入材料と陽極材料とを混合した組成物から形成される層は、陽極であり、正孔注入材料を含む陽極ということがある。
【0052】
塗布法で形成された陽極32の表面は滑らかであって、凹凸が少ない方が好ましい。陽極の表面の凹凸は高い部分と低い部分との高低差が1μm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0053】
陽極32の表面の凹凸を少なくする方法の例として、塗布形成された膜を導電性材料の融点以上の温度で加熱する方法、塗布形成された膜の表面に圧力を印加する方法、一旦仮の基板に塗布した塗工液の膜を所定の基板へ転写する方法、他の材料を塗布形成された膜の凹部へ充填する方法が挙げられる。
【0054】
−電子注入層−
電子注入層44は、イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含有することが好ましく、イオン性基及び極性基を有する有機化合物を含有することがより好ましい。この有機化合物は共役化合物であることが好ましく、芳香族化合物であることがより好ましい。電子注入層44は1層のみからなる単層構造、又は2層以上からなる積層構造である。
【0055】
本明細書において、共役化合物とは、共役系を有する化合物を意味し、多重結合(二重結合、三重結合)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子が有する非共有電子対、ホウ素原子が有する空のp軌道又はケイ素原子が有するシグマ結合性のd軌道が1つの単結合を挟んで連なっている系を含む化合物が好ましい。この共役化合物は、電子輸送性が良好となる。よって、下記式を用いて計算される値(%)が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることがとりわけ好ましい。共役化合物が芳香族化合物であることが殊更に好ましい。
式:{(多重結合、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子が有する非共有電子対、ホウ素原子が有する空のp軌道、又はケイ素原子が有するシグマ結合性のd軌道が1つの単結合を挟んで連なっている領域に含まれる母骨格若しくは主鎖上の原子の数)/(母骨格若しくは主鎖上の全原子の個数)}×100
【0056】
電子注入層が含有するイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0057】
電子注入層が含有する有機化合物が有するイオン性基の例としては、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、及び、下記式(n−1)〜式(n−13)で表される芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団からなる基が挙げられる。
【0058】
【化6】

【0059】
前記式中、Rは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、Mは、金属カチオン、又は、置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表し、M’は、アニオンを表す。
【0060】
イオン性基全体の電荷が釣り合って0となるように、これらの基には前記M以外の別の金属カチオンが伴っていてもよく、またアニオンが伴っていてもよい。
【0061】
Rで表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、前記R3〜Rで表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基と同様の基である。
【0062】
Mで表される金属カチオンとしては、1価、2価又は3価のイオンが好ましく、Mで表される金属カチオンの例としては、Li、Na、K、Cs、Be、Mg、Ca、Ba、Ag、Al、Bi、Cu、Fe、Ga、Mn、Pb、Sn、Ti、V、W、Y、Yb、Zn、Zr等の金属のイオンが挙げられる。Mで表される金属カチオンとしては、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ag、Alのイオンが好ましく、Li、Na、K、Cs、Mg、Caのイオンがより好ましく、Li、Na、K、Csのイオンが更に好ましい。
【0063】
Mで表されるアンモニウムカチオンが有していてもよい置換基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数が1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0064】
M’で表されるアニオンの例としては、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、ClO-、ClO2-、ClO3-、ClO4-、SCN-、CN-、NO3-、SO42-、HSO4-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオン、8−キノリノラトアニオン、2−メチル−8−キノリノラトアニオン、2−フェニル−8−キノリノラトアニオンが挙げられる。M’で表されるアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンが好ましく、BF4-、PF6-、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンがより好ましく、CH3SO3-、CF3SO3-、[(CF3SO22N]-、テトラキス(イミダゾリル)ボレートアニオンが更に好ましい。
【0065】
イオン性基の好ましい例としては、式:−SMで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NR3M’で表される基、前記式(n−1)、式(n−5)〜式(n−8)、式(n−13)で表される基が挙げられ、より好ましい例としては、式:−CO2Mで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NR3M’で表される基、前記式(n−1)、式(n−5)、式(n−13)で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、式:−CO2Mで表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NR3M’で表される基、前記式(n−1)、式(n−5)で表される基が挙げられ、特に好ましい例としては、式:−CO2Mで表される基、式:−SO3Mで表される基で表される基が挙げられ、とりわけ好ましい例としては、式:−CO2Mで表される基が挙げられる。
【0066】
電子注入層が含有する有機化合物が有する極性基の例としては、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び下記式(I)〜式(IX)で表される基が挙げられる。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【0067】
【化7】

【0068】
−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
【0069】
式(I)〜式(IX)中、R’は置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。R’’は水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。R’’’は置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。mは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素原子数が1〜30のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数が6〜50のアリール基を表す。R’、R’’、及びR’’’の各々は複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0070】
ヒドロカルビルアミノ基とは、アミノ基を構成する水素原子のうちの1個が前記ヒドロカルビル基で置換されたアミノ基であり、ヒドロカルビルアミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、2−メチルフェニルアミノ基、3−メチルフェニルアミノ基、4−メチルフェニルアミノ基、4−エチルフェニルアミノ基、4−プロピルフェニルアミノ基、4−イソプロピルフェニルアミノ基、4−ブチルフェニルアミノ基、4−tert−ブチルフェニルアミノ基、4−ヘキシルフェニルアミノ基、4−シクロヘキシルフェニルアミノ基、4−アダマンチルフェニルアミノ基、4−フェニルフェニルアミノ基が挙げられる。
【0071】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物の複素環の例としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選ばれる2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環等が挙げられる。複素環としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0072】
前記式(I)〜式(IX)中、R’で表されるヒドロカルビレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,9−ノニレン基、1,12−ドデシレン基等の炭素原子数が1〜50の飽和ヒドロカルビレン基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数が2〜50の不飽和ヒドロカルビレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロノニレン基、シクロドデシレン基、ノルボニレン基、アダマンチレン基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルビレン基、エテニレン基、プロペニレン基、3−ブテニレン基、2−ブテニレン基、2−ペンテニレン基、2−ヘキセニレン基、2−ノネニレン基、2−ドデセニレン基等の炭素原子数が2〜50のアルケニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、ビフェニル−4,4’−ジイル基等の炭素原子数が6〜50のアリーレン基が挙げられる。
【0073】
R’は置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基としては、アミノ基、1価の複素環基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基が好ましく、アミノ基、ピリジル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基がより好ましい。置換基が複数個存在する場合には、複数個存在する置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0074】
前記式(I)〜式(IX)中、R’’で表されるヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基等の炭素原子数が1〜20のアルキル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基等の炭素原子数が6〜30のアリール基等が挙げられる。
R’’は、溶媒への溶解性が優れるので、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。R’’は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記R’が有していてもよい置換基と同じ置換基が挙げられる。置換基が複数個存在する場合には、複数個存在する置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0075】
前記式(I)〜式(IX)中、R’’’で表される置換基を有していてもよい3価の炭化水素基は、通常、炭素原子数が1〜50であり、好ましくは1〜30である。この置換基を有していてもよい3価の炭化水素基の例としては、メタントリイル基、エタントリイル基、1,2,3−プロパントリイル基、1,2,4−ブタントリイル基、1,2,5−ペンタントリイル基、1,3,5−ペンタントリイル基、1,2,6−ヘキサントリイル基、1,3,6−ヘキサントリイル基等の炭素原子数1〜20の非置換アルカントリイル基、及びこれらの基の中の少なくとも1個の水素原子が置換された置換アルカントリイル;1,2,3−ベンゼントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基等の炭素原子数6〜30の非置換の3価の芳香族環式基、及びこれらの基の中の少なくとも1個の水素原子が置換されたものが挙げられ、共役化合物の溶媒への溶解性が良好であるので、メタントリイル基、エタントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基が好ましい。
【0076】
前記式(I)〜式(IX)中、Rcは、溶媒への溶解性が優れるので、メチル基、エチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が好ましい。
【0077】
前記式(I)及び式(II)中、mは1以上の整数を表す。mは1〜20が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜15が更に好ましく、6〜10が特に好ましい。
前記式(III)〜式(IX)中、qは0以上の整数を表す。qは、前記式(III)においては、0〜30が好ましく、3〜20がより好ましく、3〜10が更に好ましく、6〜10が特に好ましい。qは、前記式(IV)〜式(VII)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜10が更に好ましく、0〜5が特に好ましい。
qは、前記式(VIII)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、3〜20が更に好ましく、3〜10が特に好ましい。qは、前記式(IX)においては、0〜30が好ましく、0〜20がより好ましく、0〜15が更に好ましく、0〜10が特に好ましい。
【0078】
極性基の好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基、前記式(I)で表される基、前記式(II)で表される基が挙げられ、より好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、更に好ましい例としては、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、特に好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、ピロリドニル基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、とりわけ好ましい例としては、カルボキシル基、メルカプト基、ピリジル基、前記式(I)で表される基が挙げられ、殊更に好ましい例としては前記式(I)で表される基が挙げられる。
【0079】
電子注入層44が含有する共役化合物は、例えば、下記式(X)で表される基、若しくは下記式(XI)で表される構造単位、又はこれらの両方を有することが好ましい。
【0080】
【化8】

【0081】
式(X)中、Ar1は(n1+1)価の芳香族基である。R1は直接結合又は(m1+1)価の基である。X1はイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む基である。m1及びn1は、同一又は異なり、1以上の整数であり、R1が直接結合である場合、m1は1である。R1、X1及びm1が複数個存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
【化9】

【0083】
式(XI)中、Ar2は(n2+2)価の芳香族基であり、R2は直接結合又は(m2+1)価の基であり、X2はイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む基である。m2及びn2は、同一又は異なり、1以上の整数であり、R2が直接結合である場合、m2は1である。R2、X2及びm2が複数個存在する場合には、それらは、各々、同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
式(X)中、Ar1で表される(n1+1)価の芳香族基は、芳香環を有する芳香族化合物中の芳香環から(n1+1)個の水素原子を取り除いた残りの原子団(残基)であって、置換基を有していてもよい基を意味する。
【0085】
式(XI)中、Ar2で表される(n2+2)価の芳香族基は、芳香族化合物中の芳香環から(n2+2)個の水素原子を取り除いた残りの原子団(残基)であって、置換基を有していてもよい基を意味する。
【0086】
上記の芳香族化合物の例としては、下記式(1)〜式(95)で表される有機化合物が挙げられる。上記の芳香族化合物としては、合成が容易であるので、下記式(1)〜式(12)、式(15)〜式(22)、式(24)〜式(31)、式(37)〜式(40)、式(43)〜式(46)、式(49)、式(50)、式(59)〜式(76)、式(92)〜式(95)で表される有機化合物が好ましく、式(1)〜式(3)、式(8)〜式(10)、式(15)〜式(21)、式(24)〜式(31)、式(37)、式(39)、式(43)〜式(45)、式(49)、式(50)、式(59)〜式(76)、式(92)〜式(95)で表される有機化合物がより好ましく、式(1)〜式(3)、式(8)、式(10)、式(15)、式(17)、式(21)、式(24)、式(30)、式(59)、式(60)、式(61)で表される有機化合物が更に好ましく、式(1)〜式(3)、式(8)、式(10)、式(59)で表される有機化合物が特に好ましく、式(1)、式(2)、式(8)、式(59)で表される有機化合物がとりわけ好ましい。
【0087】
【化10】

【0088】
【化11】

【0089】
【化12】

【0090】
【化13】

【0091】
これらの芳香環を有する有機化合物中の1個以上の水素原子は、置換基で置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、メルカプトカルボニル基、メルカプトチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、水酸基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、アミノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルアミノ基、ホスフィノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルホスフィノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルホスフィノ基、1価の複素環基、ホルミル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ニトロ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、カルバモイル基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルカルバモイル基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいジヒドロカルビルカルバモイル基、式:−C(=S)NR2で表される基、式:−B(OH)2で表される基、式:−BR2で表される基、ホウ酸エステル残基、式:−Si(OR)3で表される基、スルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニル基、スルフィノ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルフィノ基、式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基、式:−NRC(=S)NR2で表される基が挙げられる。
上記式で表される基中、Rは、水素原子、又は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。また複数個存在する置換基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0092】
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0093】
ヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数が1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数が3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数が2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数が6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数が7〜50のアリールアルキル基が挙げられる。ヒドロカルビル基としては、炭素原子数が1〜50のアルキル基、炭素原子数が6〜50のアリール基が好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が6〜18のアリール基がより好ましく、炭素原子数が6〜12のアルキル基、炭素原子数が6〜12のアリール基が更に好ましい。
【0094】
ヒドロカルビルチオ基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたチオ基である。
ヒドロカルビルチオカルボニル基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたチオカルボニル基である。
ヒドロカルビルジチオ基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたジチオ基である。
ヒドロカルビルオキシ基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたオキシ基である。
ヒドロカルビルカルボニル基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルボニル基である。
ヒドロカルビルオキシカルボニル基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたオキシカルボニル基である。
ヒドロカルビルカルボニルオキシ基とは、基を構成する1個〜3個の水素原子、とりわけ1個又は2個の水素原子の一部又は全部が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルボニルオキシ基である。
【0095】
ヒドロカルビルアミノ基、ジヒドロカルビルアミノ基とは、各基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたアミノ基である。
ヒドロカルビルホスフィノ基、ジヒドロカルビルホスフィノ基とは、各基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたホスフィノ基である。
【0096】
ヒドロカルビルカルバモイル基、ジヒドロカルビルカルバモイル基とは、各基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたカルバモイル基である。
【0097】
式:−BR2で表される基及び式:−Si(OR)3で表される基とは、Rが水素原子又は前記ヒドロカルビル基である基である。
【0098】
ホウ酸エステル残基の例としては、以下の式から選ばれる基が挙げられる。
【0099】
【化14】

【0100】
ヒドロカルビルスルホ基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたスルホ基である。ヒドロカルビルスルホニル基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたスルホニル基である。ヒドロカルビルスルフィノ基とは、基を構成する1個又は2個の水素原子が、前記ヒドロカルビル基で置換されたスルフィノ基である。
【0101】
式:−NRC(=O)ORで表される基、式:−NRC(=O)SRで表される基、式:−NRC(=S)ORで表される基、式:−NRC(=S)SRで表される基、式:−OC(=O)NR2で表される基、式:−SC(=O)NR2で表される基、式:−OC(=S)NR2で表される基、式:−SC(=S)NR2で表される基、式:−NRC(=O)NR2で表される基及び式:−NRC(=S)NR2で表される基は、前記Rが水素原子又は前記ヒドロカルビル基である基である。
【0102】
1価の複素環基は、置換基を有していてもよい複素環式化合物から水素原子を1個取り除いた残りの原子団である。複素環式化合物の複素環の例としては、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環等の単環式複素環;単環式芳香環から選んだ2個以上の環が縮合した縮合多環式複素環;2個の複素環、又は1個の複素環と1個の芳香環とを、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の基で橋かけした構造を有する有橋多環式芳香環が挙げられ、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環が好ましく、ピリジン環、1,3,5−トリアジン環がより好ましい。
【0103】
前記の置換基のうち好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルチオ基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルジチオ基、水酸基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル基、アミノ基、ヒドロカルビル基中の水素原子が置換基により置換されていてもよいヒドロカルビルアミノ基、置換基を有していてもよいジヒドロカルビルアミノ基、式:−OP(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環基が挙げられ、より好ましい例としては、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、水酸基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、アミノ基、式:−P(=O)(OH)2で表される基、スルホ基、1価の複素環基が挙げられ、更に好ましい例としては、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、メルカプト基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいピリジル基が挙げられ、とりわけ好ましい例としては置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基が挙げられる。
【0104】
式(X)中、X1で表されるイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む基としては、前記イオン性基及び前記極性基のうちの少なくとも一方を含む基であり、イオン性基の定義、極性基の定義、これらの具体例及びこれらの好ましい例は、前記の通りである。
【0105】
式(XI)中、Xで表されるイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む基としては、前記イオン性基及び前記極性基のうちの少なくとも一方を含む基であり、イオン性基の定義、極性基の定義、これらの具体例、これらの好ましい例は、前記の通りである。
【0106】
式(X)中、R1で表される(m1+1)価の基としては、前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は前記1価の複素環基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、式:−O−(R’O)−で表される基が挙げられ、これらの基同士は環を形成してもよい。R1で表される(m1+1)価の基は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは、炭素原子数が1〜6のアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアリール基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくは、へキシル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたフェニル基からm1個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0107】
式(XI)中、R2で表される(m2+1)価の基の例としては、前記置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、又は前記1価の複素環基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、式:−O−(R’O)−で表される基が挙げられる。これらの基同士は環を形成してもよい。(m2+1)価の基としては、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、置換基を有していてもよいアリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、1価の複素環基で置換されたアリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、より好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアルキル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたアリール基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団であり、更に好ましくはヘキシル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、フェニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、トリアジニル基で置換されたフェニル基からm2個の水素原子を取り除いた残りの原子団である。
【0108】
前記式中、R’及びmの定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0109】
本発明で電子注入材料として用いられる共役化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は1×103〜1×107であることが好ましく、1×103〜1×106であることがより好ましい。本発明においてポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、求めることができる。
【0110】
本発明における電子注入層44に使用可能な電子注入材料の具体例としては、以下の式(c−1)〜式(c−37)、式(d−1)〜式(d−47)、式(e−1)〜式(e−16)、式(f−1)〜式(f−35)、式(g−1)〜式(g−24)で表される構造単位を有する共役化合物が挙げられる。これらの式中、n3は2以上の整数を表し、2〜30の整数が好ましく、2〜20の整数がより好ましく、6〜10の整数が更に好ましい。n4は1以上の整数を表し、1〜10の整数が好ましく、2〜6の整数が更に好ましい。これらの式中、Rは水素原子、又は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Rとしては、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が更に好ましい。
【0111】
これらの電子注入材料の具体例において、構造単位中の1個以上の水素原子は置換基で置換されていてもよく、置換基の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0112】
【化15】

【0113】
【化16】

【0114】
【化17】

【0115】
【化18】

【0116】
【化19】

【0117】
【化20】

【0118】
共役化合物としては、電荷注入性がより優れるので、式(c−1)〜式(c−15)、式(c−17)、式(c−20)〜式(c−22)、式(c−24)〜式(c−27)、式(c−29)、式(c−30)〜式(c−37)、式(d−1)〜式(d−6)、式(d−9)、式(d−11)〜式(d−16)、式(d−22)、式(d−31)〜式(d−39)、式(d−41)〜式(d−47)、式(e−1)〜式(e−3)、式(e−5)〜式(e−16)、式(f−1)〜式(f−6)、式(f−9)、式(f−11)〜式(f−16)、式(f−22)、式(f−31)〜式(f−35)、式(g−1)〜式(g−13)、式(g−16)〜式(g−24)で表される構造単位を有する共役化合物が好ましく、式(c−1)〜式(c−15)、式(c−17)、式(c−20)〜式(c−22)、式(c−24)〜式(c−27)、式(c−29)〜式(c−32)、式(c−34)〜式(c−37)、式(d−1)〜式(d−6)、式(d−9)、式(d−11)、式(d−13)、式(d−15)、式(d−16)、式(d−22)、式(d−31)〜式(d−39)、式(d−41)、式(d−42)、式(d−47)、式(e−1)、式(e−5)〜式(e−8)、式(e−11)、式(e−12)、式(e−15)、式(e−16)、式(f−1)〜式(f−6)、式(f−9)、式(f−11)、式(f−13)、式(f−15)、式(f−16)、式(f−22)、式(f−31)、式(f−34)、式(f−35)、式(g−1)〜式(g−3)、式(g−6)〜式(g−13)、式(g−16)〜式(g−24)で表される構造単位を有する共役化合物がより好ましく、式(c−1)〜式(c−4)、式(c−13)〜式(c−15)、式(c−20)〜式(c−22)、式(c−25)〜式(c−27)、式(c−30)〜式(c−32)、式(d−1)、式(d−2)、式(d−5)、式(d−6)、式(d−9)、式(d−11)、式(d−13)、式(d−22)、式(d−31)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)、式(d−47)、式(e−1)、式(e−5)、式(e−7)、式(e−8)、式(e−11)、式(e−12)、式(e−15)、式(e−16)、式(f−1)、式(f−2)、式(f−5)、式(f−6)、式(f−9)、式(f−11)、式(f−13)、式(f−22)、式(f−31)、式(f−34)、式(f−35)、式(g−1)〜式(g−3)、式(g−6)、式(g−7)、式(g−9)〜式(g−13)、式(g−18)〜式(g−21)で表される構造単位を有する共役化合物が更に好ましく、式(c−1)〜式(c−4)、式(c−15)、式(c−22)、式(c−27)、式(d−6)、式(d−22)、式(d−34)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)、式(e−1)、式(e−5)、式(e−8)、式(e−12)、式(e−15)、式(f−6)、式(f−34)、式(g−2)、式(g−6)、式(g−7)、式(g−10)〜式(g−12)、式(g−18)〜式(g−21)で表される構造単位を有する共役化合物が特に好ましく、式(c−1)〜式(c−4)、式(d−6)、式(d−34)、式(d−36)〜式(d−38)、式(d−41)、式(d−42)、式(f−6)、式(f−34)、式(g−2)、式(g−10)〜式(g−12)で表される構造単位を有する共役化合物がとりわけ好ましく、式(c−1)〜式(c−4)、(d−38)、(d−41)、(d−42)で表される構造単位を有する共役化合物が殊更に好ましい。
【0119】
前記共役化合物は、前記式(X)で表される基、前記式(XI)で表される構造単位のいずれか、又はこれらの両方を有する化合物である。前記共役化合物は、前記式(XI)で表される構造単位とは別の構造単位を有していてもよい。
【0120】
前記共役化合物が有し得る、前記式(XI)で表される構造単位とは別の構造単位としては、前記式(1)〜式(95)で表される芳香族化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価のヒドロカルビル基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価の複素環基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられ、前記芳香族化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、前記1価のヒドロカルビル基から1個の水素原子を取り除いた残りの原子団が好ましく、前記式(1)〜式(95)で表される芳香族化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団がより好ましく、式(1)〜式(8)、式(17)、式(19)、式(59)、式(78)〜式(81)、式(92)〜式(95)で表される化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団が更に好ましく、式(1)、式(2)、式(8)、式(17)、式(59)で表される化合物から2個の水素原子を取り除いた残りの原子団が特に好ましく、式(3)、式(8)で表される化合物がとりわけ好ましい。これらの原子団はハロゲン原子等により置換されていてもよい。式(XI)で表される構造単位は、下記式(h−1)〜式(h−19)で表される基により結合していてもよい。下記式(h−1)〜式(h−19)で表される基としては、好ましくは式(h−1)、式(h−3)〜式(h−6)、式(h−9)、式(h−13)で表される基であり、より好ましくは式(h−9)、式(h−13)で表される基である。前記共役化合物が、前記式(XI)で表される構造単位とは別の構造単位を有する場合、当該別の構造単位は、共役化合物の共役を妨げない範囲で導入されることが好ましい。
【0121】
【化21】

【0122】
(式中、Rは、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0123】
共役化合物は、ドーパントをドープして使用することができる。このドーパントは、共役化合物100重量部に対して、1〜50重量部の割合で用いることが好ましい。
【0124】
ドーパントの例としては、ハロゲン、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、ニトリル化合物、有機金属化合物、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。ハロゲンの例としては、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
ハロゲン化合物の例としては、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。ルイス酸の例としては、五フッ化リン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素、無水硫酸が挙げられる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼フッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。
有機カルボン酸の例としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等のカルボニル基を有する酸、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸が挙げられる。
有機スルホン酸の例としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等のスルホ基を有する有機スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等の分子内に1つのスルホ基を有するスルホン酸化合物と、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等のスルホ基を複数個有するスルホン酸化合物とが挙げられる。
【0125】
また本発明に用いるドーパントとしての有機酸はポリマー酸であってもよい。ポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸が挙げられる。
【0126】
ニトリル化合物としては、共役結合に2つ以上のシアノ基を含む化合物が挙げられる。
この化合物の例としては、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレンが挙げられる。
【0127】
有機金属化合物の例としては、トリス(4−ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート、ビス(ジチオベンジル)ニッケル、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)亜鉛錯体、テトラブチルアンモニウムビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)ニッケル(III)錯体が挙げられる。
【0128】
アルカリ金属の例としては、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。アルカリ土類金属の例としては、Be、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。
【0129】
電子注入層44の形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。電子注入層44の形成方法は、塗布法が好ましい。塗布法の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0130】
本発明において「陰極34と電子注入層44とが隣接(接合)する」態様は、陰極34を形成後に電子注入層44を形成して積層する工程、電子注入層44を形成後に陰極34を形成して積層する工程又は電子注入材料と陰極材料とを混合した混合物を得た後に、その混合物を用いて混合層を形成する工程により実現する。上記の方法で形成した陰極及び電子注入層は、隣接した部位で区別し得ない程度に一部が複合化していてもよい。
【0131】
−発光層−
発光素子10の発光層50は、電界印加時に陽極又は正孔注入層から発光層へ正孔を注入されることができる機能、陰極又は電子注入層から電子を注入されることができる機能、注入された電荷を電界の力で移動させる機能、電子と正孔との再結合の場を提供し、発光につなげる機能を有する。発光層は1層のみからなる単層構成、又は、2層以上からなる積層構成である。発光材料の例としては、有機化合物を含む公知の低分子量の化合物、有機化合物を含む高分子量の化合物、有機化合物を含む三重項発光錯体が挙げられる。
【0132】
前記低分子量の化合物の例としては、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。前記低分子量の化合物としては、具体的には、特開昭57−51781号公報、特開昭59−194393号公報に記載されている化合物等、公知の化合物が使用できる。
【0133】
前記高分子量の化合物の例としては、フルオレンジイル基を構造単位とする重合体及び共重合体(以下、「(共)重合体」という。)、アリーレン基を構造単位とする(共)重合体、アリーレンビニレン基を構造単位とする(共)重合体、2価の芳香族アミン残基を構造単位とする(共)重合体が挙げられる。前記高分子量の化合物の例としては、具体的には、国際公開第97/09394号公報、国際公開第98/27136号公報、国際公開第99/54385号公報、国際公開第00/22027号公報、国際公開第01/19834号公報、英国特許公開第2340304号公報、英国特許第2348316号公報、米国特許第573636号公報、米国特許第5741921号公報、米国特許第5777070号公報、欧州特許第707020号公報、特開平9−111233号公報、特開平10−324870号公報、特開2000−80167号公報、特開2001−123156号公報、特開2004−168999号公報、特開2007−162009号公報、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に記載された化合物が挙げられる。
【0134】
前記三重項発光錯体の例としては、下記式で表されるイリジウム(Ir)を中心金属とするIr(ppy)、BtpIr(acac)、アメリカンダイソース社(American Dye Source, Inc)から市販されているADS066GE(商品名)等のイリジウム錯体;白金(Pt)を中心金属とするPtOEP等の白金錯体;ユーロピウム(Eu)を中心金属とするEu(TTA)phen等のユーロピウム錯体が挙げられる。
【0135】
【化22】

【0136】
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率とが適度な値となるように選択すればよい。発光層の厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、更に好ましくは50nm〜150nmである。
【0137】
発光層50の形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。発光層50の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0138】
−正孔注入層−
本発明の発光素子10において、正孔注入層42aは正孔注入材料を用いて形成可能である。本発明の発光素子は、発光層と陽極との間に正孔注入層を有することができる。正孔注入層は1層のみからなる単層構成、又は、2層以上からなる積層構成である。
【0139】
正孔注入材料の例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体;酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子材料及びオリゴマー;ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれらを含む重合体;アモルファスカーボン;2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等のテトラシアノキノジメタン誘導体、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物;オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が好適に使用できる。
【0140】
正孔注入材料は単一の成分で用いても複数の成分からなる組成物として用いてもよい。また前記正孔注入層42aは、単一の前記正孔注入材料のみからなる単層構造、或いは、同一組成又は異種組成の正孔注入材料により構成される複数層からなる多層構造である。
【0141】
正孔注入層42aの厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率とが適度な値となるように選択すればよい。正孔注入層42aの厚さは、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmであり、更に好ましくは5nm〜100nmである。
【0142】
正孔注入層42aの形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられる。正孔注入層の形成方法としては、塗布法が好ましい。塗布法の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0143】
−その他の層−
本発明の発光素子は、基板、正孔輸送層、電子輸送層、インターレイヤー層、電子注入層、正孔防止層、電子防止層、電荷発生層等を更に有していてもよい。
【0144】
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層を意味する。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層を意味する。インターレイヤー層は、発光層と陽極との間で発光層に隣接して存在し、発光層と陽極、又は発光層と正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ層のことである。正孔防止層とは、主に陽極から注入された正孔を障壁する機能を有し、更に必要に応じて陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能のいずれかを有する層をいう。電子防止層とは、主に陰極から注入された電子を障壁する機能を有し、更に必要に応じて陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能のいずれかを有する層をいう。電荷発生層は、隣接する陰極寄りの層に正孔を注入し、隣接する陽極寄りの層に電子を注入する層を意味する。
【0145】
なお電子輸送層と正孔輸送層とを総称して電荷輸送層という。また電子注入層と正孔注入層とを総称して電荷注入層という。正孔輸送層、電子輸送層、インターレイヤー層、電子注入層、正孔防止層、電子防止層及び電荷発生層は、各々、1層のみからなる構造でも2層以上からなる構造でもよい。これら各層の形成方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法の定義、具体例、好ましい例は、前記の通りである。
【0146】
−発光素子の製造方法−
本発明の実施形態にかかる発光素子の製造方法は、アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して陰極を形成する工程を含む。
【0147】
発光素子は、例えば、前記各層を順次に積層することにより製造することができる。各層の形成方法は前記の通りである。
【0148】
本発明の発光素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布法により形成する工程を含む。発光素子の製造方法の一実施形態は、好ましくは、陰極を塗布法により形成する工程に加えて、更に陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程を含む。言い換えれば、発光素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布法により形成する工程と、陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程とを含む。発光素子の製造方法の一実施形態は、より好ましくは、更に陽極を塗布法により形成する工程を含む。
言い換えれば、発光素子の製造方法の一実施形態は、陽極及び陰極の各々を塗布法により形成する工程、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程(即ちすべての層の各々を塗布法により形成する工程)を含む。
【0149】
本発明の発光素子の一実施形態において、発光素子は、陰極が塗布法により形成される。発光素子の一実施形態は、好ましくは、陰極に加え、更に陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布法により形成され、言い換えれば、陰極、及び陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布法により形成され(即ち陽極以外のすべての層の各々が塗布法により形成される)。発光素子の一実施形態は、より好ましくは、更に陽極が塗布法により形成され、言い換えれば、陽極及び陰極の各々が塗布法により形成され、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々が塗布法により形成される(即ちすべての層の各々が塗布法により形成される)。
【0150】
−発光素子の構造−
発光素子の構造には、順積層構造と逆積層構造とがある。順積層構造は、陽極から陰極へ向かって電極及び有機層を順次に積層していく製造方法により製造された構造であって、例えば、基板上に陽極、発光層、電子注入層、陰極がこの順に積層された構造である。
逆積層構造は陰極から陽極に向かって電極及び有機層を順次に積層していく製造方法により製造された構造であって、例えば、基板上に陰極、電子注入層、発光層、陽極がこの順に積層された構造である。
【0151】
本発明の発光素子の構造の例としては、以下の式a)〜式d)の構造が挙げられる。逆積層構造の例としては式a)及び式b)の構造が挙げられ、順積層構造の例としては式c)及び式d)の構造が挙げられ、式c)の構造及び式d)の構造が好ましい。
a)陰極/電子注入層/発光層/陽極
b)陰極/電子注入層/(電子輸送層/)(正孔防止層/)発光層/(インターレイヤー層/)(電子防止層/)(正孔輸送層/)(正孔注入層/)(電荷発生層/)(電子注入層/)(電子輸送層/)(発光層/)(インターレイヤー層/)(電子防止層/)(正孔輸送層/)(正孔注入層/)陽極
c)陽極/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/(正孔注入層/)(正孔輸送層/)(電子防止層/)(インターレイヤー層/)発光層/(正孔防止層/)(電子輸送層/)(電子注入層/)(電荷発生層/)(正孔注入層/)(正孔輸送層/)(電子防止層/)(インターレイヤー層/)(発光層/)(正孔防止層)(電子輸送層/)電子注入層/陰極
ここで、記号「/」は記号「/」を挟む各層が隣接して接合されていることを示す。小括弧内の層は、それぞれ独立に、設けられていなくてもよい。但し、陰極と電子注入層とは必ず隣接して接合されるものとする。
【0152】
前記各層は、複数の機能を有する層、即ちその他の層の機能を併せ持つ層としてもよい。
【0153】
陽極及び陰極のうちの少なくとも一方は、通常光透過性を有しており、陰極が光透過性を有することが好ましい。
【0154】
発光素子は、基板の厚み方向について基板とは反対側の露出面から発光するトップエミッション型、基板側の露出面から発光するボトムエミッション型のいずれの構造としてもよい。
【0155】
発光素子は、基板を更に備え、この基板に陽極が接合されており、基板の厚み方向について基板とは反対側の前記陰極寄りの側から発光するトップエミッション型の構造とするのが好ましい。
【0156】
また発光素子を逆積層構造とする場合には、基板として光透過性を有する透明な基板を用い、この透明な基板に陰極が接合されており、陰極寄りの側(基板側)から発光するボトムエミッション型の構造としてもよい。
【0157】
本発明の発光素子の更に別の実施形態では、陰極及び陽極の両方に光透過性の材料を用いることで、陽極、陰極ともに光透過性を有しており、陽極寄りの側及び陰極寄りの側の両方から発光する両面発光型の素子を作製することができる。
両面発光型の発光素子は、素子中の陰極及び陽極以外の層(電子注入層、発光層等)を不透明な層としてもよく、透明な層としてもよい。陰極及び陽極以外の層が透明な場合には、両面発光型の素子は、非発光時には光透過性を有するが、発光時には素子の発光により光の透過が妨げられるため非透過性となる。
【0158】
−発光素子の応用−
本発明の発光素子を用いてディスプレイ装置や照明装置を製造することができる。ディスプレイ装置は、発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列は、テレビ等のディスプレイ装置で通常採用される配列とすることができ、多数の画素が1枚の基板上に配列された態様とすることができる。ディスプレイ装置において、基板上に配列される画素は、バンクで規定される画素領域内に形成してもよい。
【0159】
<光電変換素子>
図2−1及び図2−2を参照して、光電変換素子の構成例について説明する。
図2−1は、光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。図2−2は、光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【0160】
本発明の実施形態の光電変換素子は、陰極と、陽極と、陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、陰極及び電荷分離層の間に配置され、かつ陰極に接合される電子注入層とを備え、陰極がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む。
【0161】
陰極及び陽極のうち、少なくとも光が入射する側の電極、即ち少なくとも一方の電極は、入射光を透過させる透明又は半透明の電極とされる。
【0162】
構成例(1)
図2−1に示すように、構成例(1)の光電変換素子10は、陽極32及び陰極34からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された電荷分離層70とを備えている。即ち構成例(1)の光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション型の光電変換素子である。
【0163】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。即ち光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。
【0164】
基板20が不透明である場合には、陽極32と対向する、基板側とは反対側に設けられる陰極34(即ち基板20から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0165】
電荷分離層70は、陽極32と陰極34とに接して挟持されている。電荷分離層70は、電子受容性化合物と電子供与性化合物とを含有する有機層であって、光電変換機能にとって本質的な機能を有する層である。
【0166】
基板20の主面上には、陽極32が設けられている。電荷分離層70は、陽極32を覆って設けられている。電子注入層44は、電荷分離層70に接合させて設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合させて設けられている。
【0167】
構成例(1)の光電変換素子10は、電荷分離層70が電子受容性化合物と電子供与性化合物とを単一の層に含有する構成を備えているため、ヘテロ接合界面をより多く含み、光電変換効率がより向上するので好ましい。
【0168】
構成例(2)
図2−2に示すように、構成例(2)の光電変換素子は、陽極32及び陰極34からなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟持される電荷分離層70であって、電子受容性化合物を含む電子受容性層74と、この電子受容性層74に接合され、電子供与性化合物を含む電子供与性層72とからなる前記電荷分離層70を備えている。即ち構成例(2)の光電変換素子10は、ヘテロジャンクション型の光電変換素子である。
【0169】
光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。基板20の主面上には陽極32が設けられている。
【0170】
電荷分離層70は、陽極32と電子注入層44とに接して挟持されている。構成例2の電荷分離層70は、電子受容性化合物を含有する電子受容性層74と、電子供与性化合物を含有する電子供与性層72とが接合された積層構造とされている。
【0171】
電子供与性層72は、陽極32に接合されて設けられている。電子受容性層74は、電子供与性層72に接合されて設けられている。電子注入層44は電子受容性層74に接合されて設けられている。陰極34は、電子注入層44に接合されて設けられている。
【0172】
−電荷分離層−
電荷分離層70は、電子供与性化合物、電子受容性化合物の各々を1種単独で含んでいても2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。なお、電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0173】
電子供与性化合物の例としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、共役高分子化合物が挙げられる。共役高分子化合物の例としては、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0174】
電子受容性化合物の例としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60フラーレン等のフラーレン類及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブが挙げられる。電子受容性化合物としては、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン類、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン類、フラーレン誘導体である。
【0175】
電荷分離層の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、更に好ましくは20nm〜200nmである。
【0176】
電荷分離層は如何なる製造方法で製造してもよく、電荷分離層の製造方法の例としては、真空蒸着法、塗布法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法については上記の説明の通りである。
【0177】
−電荷分離層以外の層−
光電変換素子10には、陽極32及び陰極34のうちの少なくとも一方の電極と電荷分離層との間に、例えば電荷(電子及び正孔)の注入性(輸送性)をより高める等の機能を有する付加的な層を設けてもよい。
付加的な層の例としては、電子注入層及び正孔注入層(電荷注入層)、正孔輸送層及び電子輸送層(電荷輸送層)、並びにインターレイヤー層が挙げられる。
電荷分離層以外の層、陰極、陽極、基板、電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及びインターレイヤー層等の構成については、既に説明した発光素子と同様の構成とすることができるため、詳細な説明を省略する。
【0178】
−光電変換素子の製造方法−
本発明の実施形態にかかる光電変換素子の製造方法は、陰極と、陽極と、陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、陰極及び電荷分離層の間に配置され、かつ陰極に接合される電子注入層とを備える光電変換素子の製造方法において、イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む塗工液を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、電子注入層に接合させて、アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して陰極を形成する工程とを含む。
【0179】
光電変換素子は、例えば、基板上に上述の各層を順次に積層することにより製造することができる。電荷分離層以外の前記の各層の形成方法については、既に説明した発光素子と同様に実施することができるため、詳細な説明を省略する。
【0180】
本発明の光電変換素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布法により形成する工程を含む。光電変換素子の製造方法の一実施形態は、好ましくは、陰極を塗布法により形成する工程に加えて、更に陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程を含む。言い換えれば、光電変換素子の製造方法の一実施形態は、陰極を塗布法により形成する工程と、陽極以外の残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程とを含む。
光電変換素子の製造方法の一実施形態は、より好ましくは、更に陽極を塗布法により形成する工程を含む。言い換えれば、光電変換素子の製造方法の一実施形態は、陽極及び陰極の各々を塗布法により形成する工程、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々を塗布法により形成する工程(即ちすべての層の各々を塗布法により形成する工程)を含む。
【0181】
本発明の光電変換素子の一実施形態において、光電変換素子は、陰極が塗布法により形成される。光電変換素子の一実施形態は、好ましくは、陰極に加え、更に陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布法により形成され、言い換えれば、陰極、及び陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布法により形成される(即ち陽極以外の残りのすべての層の各々が塗布法により形成される)。光電変換素子の一実施形態は、より好ましくは、更に陽極が塗布法により形成され、言い換えれば、陽極及び陰極の各々が塗布法により形成され、又は、陰極及び陽極に加え、その他残りのすべての層の各々が塗布法により形成される(即ちすべての層の各々が塗布法により形成される)。
【実施例】
【0182】
以下、実施例及び比較例を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0183】
<分析方法>
共役化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。検出波長を254nmに設定した。
【0184】
共役化合物の構造分析は300MHzNMRスペクトロメーター(Varian社製)を用いた、1H−NMR解析によって行った。また、1H−NMR解析は、20mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0185】
<合成例1>(銀ナノ構造体Aの合成)
5mLのエチレングリコールを入れた容量50mLのフラスコを150℃のオイルバスに浸漬し、エチレングリコールを60分間空気でバブリングしながら、予備加熱を行った。予備加熱後に、空気から窒素ガスに切り替えてフラスコ内の雰囲気を窒素ガスで置換し、バブリングを止めた。次いで、そこに、0.1Mの硝酸銀−エチレングリコール溶液を1.5mLと、0.15mol/Lのポリビニルピロリドン(以下、「PVP」ということがある。シグマ−アルドリッチ製、カタログ記載の重量平均分子量:5.5×10)−エチレングリコール溶液を1.5mLと、4mmol/Lの塩化銅2水和物−エチレングリコール溶液を40μLとを入れ、120分間攪拌したところ、銀ナノ構造体の分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、遠心分離して、沈殿物を取得した。取得した沈殿物を乾燥して、銀ナノ構造体(以下、「銀ナノ構造体A」という。)を得た。
【0186】
得られた銀ナノ構造体Aを走査型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名:JSM-5500)(以下、「SEM」という。)による写真を用いて目視で確認したところ、形状はワイヤー状であり、最も短い径の平均値は約30nmであり、最も長い径の平均値は約15μmであった。前記方法により確認した少なくとも10個の銀ナノ構造体Aのアスペクト比の平均値は約500であった。
【0187】
<合成例2>(共役化合物P−3の合成)
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン52.5g(0.16mol)、サリチル酸エチル154.8g(0.93mol)、及びメルカプト酢酸1.4g(0.016mol)を容量3000mLのフラスコに入れ、内部の気体を窒素ガスで置換した該フラスコに、メタンスルホン酸(630mL)を添加し、混合物を75℃で終夜撹拌した。混合物を放冷し、氷水に添加して1時間撹拌した。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄された固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させて、ろ別した。得られた固体(62.7g)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ−p−トルエンスルホネート86.3g(0.27mmol)、炭酸カリウム62.6g(0.45mmol)、及び18−クラウン−6 7.2g(0.027mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(670mL)に溶解させ、溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。得られた混合物を室温まで放冷し、フラスコに氷水を加え、1時間撹拌した。反応液にクロロホルムを加えて分液抽出を行い、溶液を濃縮することで、下記式で表される2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物B)(51.2g)を得た。収率は31%であった。
【0188】
【化23】

【0189】
アルゴンガスで内部の気体を置換した容量1000mLのフラスコに、化合物B(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)、及び、ジオキサン(400mL)を入れて混合し、110℃に加熱して、10時間加熱して還流させた。放冷後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。反応混合物をメタノールで3回洗浄した。沈殿物をトルエンに溶解させ、溶液に活性炭を加えて攪拌した。
その後、ろ過を行い、ろ液を減圧濃縮することで、下記式で表される2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物D)(11.7g)を得た。
【0190】
【化24】

【0191】
アルゴンガスで内部の気体を置換した容量100mLのフラスコに、化合物B(0.55g)、化合物D(0.61g)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.01g)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(0.20g)、及びトルエン(10mL)を混合し、105℃に加熱した。反応液に2M炭酸ナトリウム水溶液(6mL)を滴下し、8時間還流させた。反応液に4−tert−ブチルフェニルボロン酸(0.01g)を加え、6時間還流させた。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(10mL、濃度:0.05g/mL)を加え、2時間撹拌した。混合溶液をメタノール300mL中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥させ、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。得られた溶液をメタノール120mL、3重量%酢酸水溶液50mLの混合溶媒中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過し、テトラヒドロフラン20mLに溶解させた。こうして得られた溶液をメタノール200mLに滴下して30分攪拌した後、析出した沈殿をろ過して固体を得た。得られた固体をテトラヒドロフランに溶解させ、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。カラムから回収したテトラヒドロフラン溶液を濃縮した後、メタノールに滴下し、析出した固体をろ過して、乾燥することにより、共役化合物(以下、「共役化合物P−3」という。)を520mg得た。
【0192】
NMRの測定結果から共役化合物P−3は、下記式で表される構造単位を有する。
【0193】
【化25】

【0194】
共役化合物P−3のポリスチレン換算の数平均分子量は5.2×104であった。
【0195】
<合成例3>(共役化合物P−4の合成)
共役化合物P−3(200mg)を容量100mLのフラスコに入れ、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した。テトラヒドロフラン(20mL)、及びエタノール(20mL)を添加し、混合物を55℃に昇温した。そこに、水酸化セシウム(200mg)を水(2mL)に溶解させた水溶液を添加し、55℃で6時間撹拌した。混合物を室温まで冷却した後、反応溶媒を減圧留去した。生じた固体を水で洗浄し、減圧乾燥させることで下記式:
【0196】
【化26】

【0197】
で表される構造単位を有する共役化合物(以下、「共役化合物P−4」という。)を150mg得た。NMRスペクトルにより、共役化合物P−3内のエチルエステル部位のエチル基由来のシグナルが完全に消失していることを確認した。
【0198】
<合成例4>(正孔輸送材料Aの合成)
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラーを装備した容量1Lの3つ口丸底フラスコに、2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(3.863g、7.283mmol)、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミン(3.177g、6.919mmol)及びジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(156.3mg、0.364mmol)を添加した。次いで、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(2.29g)、トルエン50mLを順番に添加した。PdCl2(PPh32触媒(4.9mg)を添加した後、得られた混合物を、105℃の油浴中で15分間撹拌した。そこに、炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)を添加し、反応物を105℃の油浴中で、16.5時間撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応物を7時間撹拌した。
水層を除去し、有機層を水で洗浄した。有機層を反応フラスコに戻し、そこに、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを0.75gと50mLの水とを添加した。反応液を85℃の油浴中で、16時間撹拌した。反応液から、水層を除去し、有機層を水で3回洗浄した後、シリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通した。こうして得られたトルエン溶液をメタノールに沈殿させる操作を2回繰り返し、得られた沈殿物を60℃で真空乾燥させることにより、正孔輸送材料Aである高分子化合物4.2gを得た。正孔輸送材料Aのポリスチレン換算の数平均分子量は4.4×104であった。
【0199】
<合成例5>(正孔輸送材料Bの合成)
不活性ガス雰囲気下、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g、2.5mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g、10.0mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N'−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g、6mmol)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g、1.5mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g、2.3mmol)、酢酸パラジウム(4.5mg、0.02mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g、0.08mmol)、トルエン(100mL)を混合し、混合物を100℃で2時間加熱しながら攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.06g、0.5mmol)を添加し、得られた混合物を10時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した後、水層を除去して、有機層を水で洗浄し、更に3重量%酢酸水溶液で洗浄した。有機層をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を濾取し、再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液した。この沈殿物を含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を濾取後、50℃で真空乾燥させることにより、正孔輸送材料である高分子化合物(12.1g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた正孔輸送材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は3.1であった。
【0200】
正孔輸送材料Bは、下記式:
【0201】
【化27】

で表される構造単位と、下記式:
【0202】
【化28】

で表される構造単位と、下記式:
【0203】
【化29】

で表される構造単位とを、62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)で有する共重合体である。
【0204】
<合成例6>(発光材料Bの合成)
不活性ガス雰囲気下、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g、16.4mmol)、N,N’-ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチル-2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.3g、1.8mmol)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g、18.0mmol)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g、58.3mmol)、酢酸パラジウム(8mg、0.04mmol)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g、0.1mmol)、トルエン(200mL)を混合し、混合物を90℃で8時間加熱しながら攪拌した。次いで、フェニルボロン酸(0.22g、1.8mmol)を添加し、得られた混合物を14時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し撹拌した後、水層を除去して、有機層を水で洗浄し、更に3重量%酢酸水で洗浄した。有機層をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を濾取し、再度トルエンに溶解させ、シリカゲルカラム及びアルミナカラムに通液したところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を含む溶出トルエン溶液を回収し、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いだところ、沈殿物が生じた。この沈殿物を50℃で真空乾燥させることにより、発光材料である高分子化合物(12.5g)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた発光材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×105であり、分子量分布指数(Mw/Mn)は2.9であった。
【0205】
発光材料Bは、下記式:
【0206】
【化30】

で表される構造単位と、下記式:
【0207】
【化31】

で表される構造単位と、下記式:
【0208】
【化32】

で表される構造単位とを50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)で有する共重合体である。
【0209】
<実施例1>(発光素子k−1の作製)
陽極としてITO膜が成膜されたガラス基板のITO膜上に、正孔注入材料溶液であるポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083)0.5mLを塗布し、スピンコート法によって、厚さが70nmになるように成膜した。こうして得られたガラス基板を空気中で、200℃で10分間加熱した後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔注入層が形成されたガラス基板Aを得た。
【0210】
前記正孔輸送材料Aを5.2mgと1mLのキシレンとを混合し、正孔輸送材料Aを0.6重量%含有する正孔輸送層用組成物を調製した。
【0211】
正孔輸送層用組成物をスピンコート法により、正孔注入層が形成されたガラス基板A上に塗布し、厚さ25nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成したガラス基板を窒素雰囲気下、200℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Bを得た。
【0212】
発光材料A(サメイション(株)製、商品名:BP361)(11.3mg)と1mLのキシレンとを混合して、発光材料を1.3重量%含有する発光層用組成物を調製した。
【0213】
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板B上に塗布し、厚さ80nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Cを得た。
【0214】
共役化合物P−4(2.0mg)と1mLのメタノールとを混合し、0.2重量%の電子注入層用組成物を調製した。
【0215】
この電子注入層用組成物をスピンコート法により、発光層が形成されたガラス基板C上に塗布し、厚さ10nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下で、130℃で10分間加熱して、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、電子注入層が形成されたガラス基板Dを得た。
【0216】
銀ナノ構造体A(10.0mg)に、1.3mLのメタノールを混合して、1時間攪拌を行うことで陰極用組成物を調製した。
【0217】
この陰極用組成物をキャスティング法により、電子注入層が形成されたガラス基板D上に塗布し、厚さが約200nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下で、130℃で10分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、陰極が形成されたガラス基板Eを得た。
【0218】
最後に、この陰極が形成されたガラス基板Eを、窒素雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)を用いて封止することにより、発光素子(以下、「発光素子k−1」という。)を作製した。
【0219】
発光素子k−1に14Vの順方向電圧を印加し、ガラス基板の厚み方向について陽極寄りの側からの出射光の発光輝度を測定した結果、発光輝度は113cd/mであった。
発光素子k−1は、両面発光素子であるため、陰極寄りの側からも光が出射する。陽極寄りの側と陰極寄りの側との発光輝度をあわせた発光素子k−1全体の発光輝度は、前記数値のおよそ2倍となる。
【0220】
<実施例2>(発光素子k−2作製)
前記正孔輸送材料Bを5.2mgと1mLのキシレンとを混合し、正孔輸送材料Bを0.6重量%含有する正孔輸送層用組成物を調製した。
【0221】
正孔輸送層用組成物をスピンコート法により、前記正孔注入層が形成されたガラス基板A上に塗布し、厚さ33nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成したガラス基板を窒素雰囲気下、200℃で20分間加熱し、塗膜を不溶化させた後、室温まで自然に冷却させることにより、正孔輸送層が形成されたガラス基板Fを得た。
【0222】
前記発光材料B(11.3mg)と1mLのキシレンとを混合して、発光材料Bを1.3重量%含有する発光層用組成物を調製した。
【0223】
この発光層用組成物をスピンコート法により、正孔輸送層が形成されたガラス基板F上に塗布し、厚さ99nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下、130℃で15分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然に冷却させることにより、発光層が形成されたガラス基板Gを得た。
【0224】
共役化合物P−4(2.0mg)と1mLのメタノールとを混合し、0.2重量%の電子注入層用組成物を調製した。
【0225】
この電子注入層用組成物をスピンコート法により、発光層が形成されたガラス基板G上に塗布し、厚さ10nmの塗膜を形成させた。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下で、130℃で10分間加熱して、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、電子注入層が形成されたガラス基板Hを得た。
【0226】
銀ナノ構造体A(10.0mg)に、1.3mLの水を混合して、1時間攪拌を行うことで陰極用組成物を調製した。
【0227】
この陰極用組成物をキャスティング法により、電子注入層が形成されたガラス基板H上に塗布し、厚さ約200nmの塗膜を形成した。この塗膜を形成した基板を窒素雰囲気下で、130℃で10分間加熱し、溶媒を蒸発させた後、室温まで自然冷却させることにより、陰極が形成されたガラス基板Iを得た。
【0228】
最後に、この陰極が形成されたガラス基板Iを、窒素雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂(Robnor resins社製、商品名:PX681C/NC)を用いて封止することにより、発光素子(以下、「発光素子k−2」という。)を作製した。
【0229】
発光素子k−2に14Vの順方向電圧を印加し、ガラス基板の厚み方向について陽極寄りの側からの出射光の発光輝度を測定した結果、発光輝度は1.8cd/mであった。
発光素子k−2は、両面発光素子であるため、陰極寄りの側からも光が出射する。陽極寄りの側と陰極寄りの側との発光輝度をあわせた発光素子k−2全体の発光輝度は、前記数値のおよそ2倍となる。
【0230】
<比較例1>(発光素子k−4の作製)
実施例2において、電子注入層を形成しなかった以外は、実施例2と同様にして、発光素子(以下、「発光素子k−4」という。)を作製した。発光素子k−4に14Vの順方向電圧を印加したが、発光しなかった。
【0231】
これらの結果から、本発明の発光素子は、厚さが薄くても導電性が高く透明性が高い陰極を備えるため、光の透過性が向上し、加えて電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含むため、発光素子の発光輝度等の特性を向上させることができるものであると認められる。
また、光電変換素子においても同様に、透明性が高い陰極を備えるため、光の透過性を向上させることができ、加えて電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含むため、光電変換効率等の特性を向上させることができるものと認められる。
本発明の製造方法によれば、電子注入層の形成工程及び引き続き行われる陰極の形成工程を、大気雰囲気中で実施できる簡便な塗布法により形成する。これらの工程は連続的に実施可能であるため、製造方法をより簡便にすることができ、より高い生産性で、特性がより優れた発光素子及び光電変換素子を製造することができる。
このように本発明は、発光素子及び光電変換素子、並びにこれらの製造方法において、極めて重大な寄与をするものである。
【符号の説明】
【0232】
10 発光素子、光電変換素子
20 基板
22 第1の基板
24 第2の基板
32 陽極
34 陰極
42a 正孔注入層
42b 正孔輸送層
44 電子注入層
50 発光層
60 積層構造体
70 電荷分離層
72 電子供与性層
74 電子受容性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される発光層と、該陰極及び該発光層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備え、
前記陰極がアスペクト比が1.5以上である導電性材料を含み、かつ前記電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む、発光素子。
【請求項2】
前記発光層と陽極との間に配置された正孔注入層を更に備える、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記陰極が光透過性を有する、請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記導電性材料が、金属、金属酸化物及び炭素材料からなる群から選ばれる1種類以上の材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記導電性材料が、銀ナノワイヤーを含む、請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記導電性材料が、カーボンナノチューブを含む、請求項4に記載の発光素子。
【請求項7】
前記イオン性基が、式:−SMで表される基、式:−C(=O)SMで表される基、式:−CS2Mで表される基、式:−OMで表される基、式:−CO2Mで表される基、式:−NM2で表される基、式:−NRMで表される基、式:−PO3Mで表される基、式:−OP(=O)(OM)2で表される基、式:−P(=O)(OM)2で表される基、式:−C(=O)NM2で表される基、式:−C(=O)NRMで表される基、式:−C(=S)NRMで表される基、式:−C(=S)NM2で表される基、式:−B(OM)2で表される基、式:−BR3Mで表される基、式:−B(OR)3Mで表される基、式:−SO3Mで表される基、式:−SO2Mで表される基、式:−NRC(=O)OMで表される基、式:−NRC(=O)SMで表される基、式:−NRC(=S)OMで表される基、式:−NRC(=S)SMで表される基、式:−OC(=O)NM2で表される基、式:−OC(=O)NRMで表される基、式:−OC(=S)NM2で表される基、式:−OC(=S)NRMで表される基、式:−SC(=O)NM2で表される基、式:−SC(=O)NRMで表される基、式:−SC(=S)NM2で表される基、式:−SC(=S)NRMで表される基、式:−NRC(=O)NM2で表される基、式:−NRC(=O)NRMで表される基、式:−NRC(=S)NM2で表される基、式:−NRC(=S)NRMで表される基、式:−NR3M’で表される基、式:−PR3M’で表される基、式:−OR2M’で表される基、式:−SR2M’で表される基、式:−IRM’で表される基、及び下記式(n−1)〜式(n−13)から選ばれる芳香族化合物中の芳香環から1個の水素原子を取り除いた基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光素子。
【化1】

(式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表す。Mは金属カチオン又は置換基を有していてもよいアンモニウムカチオンを表す。M’はアニオンを表す。)
【請求項8】
前記極性基が、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロカルビルアミノ基、シアノ基、ピロリドニル基、1価の複素環基及び下記式(I)〜式(IX)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光素子。
−O−(R’O)−R’’ (I)
【化2】

−S−(R’S)−R’’ (III)
−C(=O)−(R’−C(=O))−R’’ (IV)
−C(=S)−(R’−C(=S))−R’’ (V)
−N{(R’)R’’}2 (VI)
−C(=O)O−(R’−C(=O)O)−R’’ (VII)
−C(=O)−O−(R’O)−R’’ (VIII)
−NHC(=O)−(R’NHC(=O))−R’’ (IX)
(式(I)〜式(IX)中、R’は置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を表す。R’’は水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、カルボキシル基、スルホ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、−NRc2で表される基、シアノ基又は−C(=O)NRc2で表される基を表す。R’’’は置換基を有していてもよい3価の炭化水素基を表す。mは1以上の整数を表す。qは0以上の整数を表す。Rcは置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6〜50のアリール基を表す。前記R’、前記R’’、及び前記R’’’の各々が複数個存在する場合、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を含む有機化合物が、共役化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記共役化合物が、下記式(X)で表される基、若しくは下記式(XI)で表される構造単位、又は前記基及び前記構造単位の両方を有する、請求項9に記載の発光素子。
【化3】

(式(X)中、Ar1は(n1+1)価の芳香族基であり、R1は直接結合又は(m1+1)価の基であり、X1はイオン性基又は極性基を含む基である。m1及びn1は、同一又は異なる1以上の整数であって、R1が直接結合である場合、m1は1である。R1、X1及びm1の各々が複数個存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。)
【化4】

(式(XI)中、Ar2は(n2+2)価の芳香族基である。R2は直接結合又は(m2+1)価の基である。X2はイオン性基又は極性基を含む基である。m2及びn2は同一又は異なる1以上の整数であって、R2が直接結合である場合、m2は1である。R2、X2及びm2の各々が複数個存在する場合、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項11】
前記Ar1が下記式で表される芳香族化合物中の芳香環から(n1+1)個の水素原子を取り除いた基であり、該基は置換基を有していてもよく、前記Ar2が下記式で表される芳香族化合物中の芳香環から(n2+2)個の水素原子を取り除いた基であり、該基は置換基を有していてもよい基である、請求項10に記載の発光素子。
【化5】

【請求項12】
前記陰極の厚さが、30μm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項13】
基板を更に備え、該基板に前記陽極が接合されており、前記陰極寄りの側から発光するトップエミッション型である、請求項3〜12のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項14】
前記陽極寄りの側及び前記陰極寄りの側の両方から発光する両面発光型である、請求項3〜13のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項15】
光透過性を有する、請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の発光素子を製造する発光素子の製造方法であって、
アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して陰極を形成する工程を含む、発光素子の製造方法。
【請求項17】
イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む塗工液を塗布成膜して電子注入層を形成する工程と、
前記電子注入層に接合させて、前記陰極を形成する工程と
を含む、請求項16に記載の発光素子の製造方法。
【請求項18】
陽極を形成する工程と、
残りのすべての層の各々を塗工液を塗布成膜して形成する工程と
を含む、請求項16又は17に記載の発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記陽極を形成する工程が、塗工液を塗布成膜して形成する工程である、請求項18に記載の発光素子の製造方法。
【請求項20】
陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、該陰極及び該電荷分離層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備え、
前記陰極が、アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含み、かつ前記電子注入層がイオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む、光電変換素子。
【請求項21】
陰極と、陽極と、該陰極及び陽極に挟持される電荷分離層と、該陰極及び該電荷分離層の間に配置され、かつ該陰極に接合される電子注入層とを備える光電変換素子の製造方法において、
イオン性基及び極性基のうちの少なくとも一方を有する有機化合物を含む塗工液を塗布成膜して前記電子注入層を形成する工程と、
前記電子注入層に接合させて、アスペクト比が1.5以上の導電性材料を含む塗工液を塗布成膜して前記陰極を形成する工程と
を含む光電変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【公開番号】特開2012−216489(P2012−216489A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217752(P2011−217752)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】