説明

発光素子及び画像表示装置

【課題】 単一の有機ELパネルの前面側及び背面側を利用して所望の画像情報を表示する場合であっても、視野側から背景が透視されず(又は透視されにくく)、かつ、画像情報として放射される光量の減少を抑制して、表示品質を良好に維持することができる発光素子及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る画像表示装置に適用可能な有機EL素子OELは、相互に対向して配置された透明な絶縁性基板11及び透明な封止基板15の間に、透明電極材料からなるアノード電極12と、ホール輸送層13a及び電子輸送性発光層13bからなる有機EL層13と、反射特性を有する(不透明な)金属材料等からなるカソード電極14と、を順次積層した構成を有し、上記カソード電極14の略中央部に矩形状の開口部(スルーホール)HLaが形成された構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び画像表示装置に関し、特に、メインディスプレイ及びサブディスプレイを備えた携帯電話機等のように、複数の表示パネルを備える電子機器に適用して良好な発光素子及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や携帯情報端末(PDA)、デジタルカメラ、音楽プレーヤ等の携帯型の電子機器の普及が著しい。このような電子機器においては、静止画像や動画像、機器の動作状態等を表示するための表示パネル(ディスプレイ)を複数設けたものが知られている。
【0003】
図8は、従来技術における複数のディスプレイを備えた携帯型の電子機器(携帯電話機)の一例を示す概略構成図である。ここで、図8(a)は、電子機器の操作面(内面)側を示す図であり、図8(b)は、電子機器の背面(外面)側を示す図である。また、図9は、従来技術における電子機器の画像表示部の構成例を示す概略断面図である。
【0004】
図8(a)、(b)に示すように、従来技術における携帯電話機200は、操作ボタン230等が配置された基部筐体BASと、操作面側にメインディスプレイ210が、また、背面側にサブディスプレイ220が配置された表示部筐体DISと、がヒンジ部240を支点として折り畳み可能なように構成されている。
【0005】
ここで、表示部筐体DISに設けられたメインディスプレイ210及びサブディスプレイ220は、例えば、図9に示すように、各々、個別の液晶表示装置の背面側(視野側とは反対側)を相互に対向するように(背中合わせにして)配置した積層構造が適用されている。
【0006】
具体的には、図9に示すように、メインディスプレイ210は、表示部筐体DISの操作面側(図面上方)に視野が設定されるように、アクリル等の導光板216及び光源217からなるバックライトBLmと、該バックライトBLmによる照射光の放射方向(すなわち、上記視野側)に配置された主基板211、及び、該主基板211に対向するように配置された対向基板212、主基板211及び対向基板212間に設けられた液晶封入層213、主基板211上に搭載されたドライバ回路(ドライバICチップ)214、該ドライバ回路214に接続されたフレキシブルプリント配線215からなる画像表示部DSmと、を備えた構成を有している。
【0007】
また、サブディスプレイ220は、図9に示すように、表示部筐体DISの背面側(図面下方)に視野が設定されるように、導光板226及び光源227からなるバックライトBLsと、該バックライトBLsによる照射光の放射方向(上記視野側)に配置された主基板221、及び、該主基板221に対向するように配置された対向基板222、主基板221及び対向基板222間に設けられた液晶封入層223、主基板221上に搭載されたドライバ回路(ドライバICチップ)224、該ドライバ回路224に接続されたフレキシブルプリント配線225からなる画像表示部DSsと、を備えた構成を有している。
【0008】
このような構成を有するディスプレイにおいては、上述したように、個別の液晶表示装置の背面側を相互に対向させて積層した構成を有しているため、ディスプレイの厚みが増加して、電子機器の筐体の厚みが大きくなるという問題を有していた。また、個別の液晶表示装置を複数(2枚)備えた構成を有しているため、各々の液晶表示装置においてドライバ回路やバックライト等の周辺回路を必要とし、ディスプレイの装置規模が大きくなるとともに、消費電力が増加するという問題を有していた。
【0009】
このようなディスプレイの装置規模や消費電力の問題を解決する技術として、近年、液晶表示装置に続く次世代の表示デバイスとして注目されている、有機エレクトロルミネッセント素子(以下、「有機EL素子」と略記する)や無機エレクトロルミネッセント素子、発光ダイオード等の自己発光型の発光素子(光学要素)を2次元配列した表示パネルを備えた発光素子型のディスプレイを適用することが検討されている。
【0010】
ここで、自己発光型の発光素子として、近年研究開発が盛んに行われている有機EL素子について、簡単に説明する。
図10は、従来技術における有機EL素子の基本構成を示す概略構成図である。
有機EL素子は、概略、図10に示すように、ガラス基板等の透明な絶縁性基板311の一面側(図面下方側)に、ITO(Indium Thin Oxide)等の透明電極材料からなるアノード電極312、高分子系のホール輸送材料からなるホール輸送層(正孔注入層)313aと高分子系の電子輸送性発光材料からなる電子輸送性発光層(発光層)313bを積層して構成される有機EL層313、及び、金属材料からなる反射特性を有するカソード電極314を順次積層した断面構造を有している。なお、図中、315は有機EL素子を絶縁性基板311との間で封止するための封止基板である。
【0011】
このような構成を有する有機EL素子においては、図10に示すように、直流電圧源BATからアノード電極312に正電圧、カソード電極314に負電圧を印加することにより、ホール輸送層313aに注入されたホールと電子輸送性発光層313bに注入された電子が有機EL層313内で再結合する際のエネルギーに基づいて光hνが放射される。この光hνは、直接、あるいは、カソード電極314で反射して、透明なアノード電極312を透過して絶縁性基板311の他面側(視野側;図面上方側)に放出される。このとき、光hνの発光強度は、アノード電極312とカソード電極314間に流れる電流量に応じて制御される。
【0012】
このような有機EL素子を2次元配列した有機ELパネルを適用して、上述したような前面側及び背面側の双方に視野が設定されたディスプレイを構成する場合、例えば、図9に示した液晶表示装置を積層配置した構成と同様に、有機ELパネルの背面側(図10に示した封止基板315側)相互を対向させて積層配置する構造が考えられる。この場合、ディスプレイの厚みをある程度薄型化することはできるものの、各有機ELパネルごとに周辺回路(バックライトを除くドライバ回路等)が必要であるため、依然として、ディスプレイの装置規模が大きくなるとともに、消費電力の削減にも限界があるという問題を有していた。
【0013】
そこで、例えば、特許文献1等に記載されているように、図10に示した有機EL素子のカソード電極314を、透明又は半透明の金属超薄膜と透明電極とからなる積層構造により構成し、従来視野側とされていたアノード電極311側のみならず、カソード電極314側(封止基板315側)にも放射光を取り出すようにしたものが知られている。
【0014】
【特許文献1】特開2002−252089号公報 (図2、第2頁〜第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したような特許文献1等に記載された有機EL素子からなる有機ELパネルを適用した場合、単一の有機ELパネルで、前面側及び背面側の双方に放射光を取り出して画像情報を表示することができるので、ディスプレイの厚みを大幅に薄型化することができるとともに、周辺回路を半減してディスプレイの装置規模を小型化することができ、さらに、消費電力を削減することもできる。
【0016】
しかしながら、特許文献1等に記載された有機EL素子においては、その積層構造がいずれも透明又は半透明な薄膜材料により構成されているため、例えば、メインディスプレイ側(一面側)に投影(放射)された画像情報を見る場合に、ディスプレイを透過して背面側の風景や事物が視認(透視)されてしまい、本来の表示画像が見にくくなるという問題を有していた。
【0017】
また、有機EL素子から放射される光は、有機EL層を中心とした完全拡散光であるため、従来反射特性を有するカソード電極によりアノード電極側(ディスプレイの一面側)にのみ放射されていた光が、カソード電極側(ディスプレイの他面側)にも取り出されることになるため、画像情報としていずれか一方の視野側に放射される光量が減少(例えば、半減)することになり、画像表示が暗くなって表示品質が劣化するという問題を有していた。
【0018】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑み、単一の有機ELパネルの前面側及び背面側を利用して所望の画像情報を表示する場合であっても、視野側から背景が透視されず(又は透視されにくく)、かつ、画像情報として放射される光量の減少を抑制して、表示品質を良好に維持することができる発光素子及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1記載の発明は、透明な絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子において、前記第2の電極層の特定の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記発光層から放射された光が前記絶縁性基板の一面側と他面側に同時に出射されることを特徴とする。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光素子において、前記光透過部は、前記第1の電極層、前記発光層、前記第2の電極層により規定される、前記発光素子の前記一面方向への発光領域に比較して、小さい面積に設定されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発光素子において、前記光透過部は、前記発光層が露出するように前記第2の電極層に形成された開口部であることを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発光素子において、前記光透過部は、透明な導電性材料からなることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発光素子において、前記第1の電極層は、前記光透過部に対応する領域に、不透明な導電性材料からなる光遮断部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、透明な絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子において、前記発光素子の素子形成領域外の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記発光層から放射された光が前記絶縁性基板の一面側と他面側に同時に出射されることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発光素子において、前記光透過部は、前記素子形成領域外に設けられた隔壁に、少なくとも前記発光層の端部が露出するように形成された開口部であることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発光素子において、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセント素子であることを特徴とする。
【0024】
請求項9記載の発明は、透明な絶縁性基板上に複数の表示画素が2次元配列された表示パネルを備え、前記表示パネルの行ごとの前記表示画素を選択し、表示データに応じた階調信号を印加することにより、前記表示画素を所定の輝度階調で発光動作させて、前記表示パネルに所望の画像情報を表示させる画像表示装置において、前記表示画素の各々は、前記絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子を備えるとともに、前記第2の電極層の特定の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記各表示画素において前記発光層から放射された光を前記絶縁性基板の一面側と他面側に出射することにより、前記表示パネルの前面側と背面側に同時に前記画像情報を表示することを特徴とする。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の画像表示装置において、前記各表示画素において前記発光素子の前記発光層から放射され、前記光透過部を介して前記絶縁性基板の他面側に出射された光により規定される第1の発光領域は、前記発光素子の前記発光層から放射され、前記第1の電極層を介して前記絶縁性基板の一面側に出射された光により規定される第2の発光領域に比較して、小さい面積に設定されていることを特徴とする。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項9又は10記載の画像表示装置において、前記光透過部は、前記発光層が露出するように前記第2の電極層に形成された開口部であることを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項9又は10記載の画像表示装置において、前記光透過部は、透明な導電性材料からなり、前記第1の電極層には、前記光透過部に対応する領域に、不透明な導電性材料からなる光遮断部が設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項13記載の発明は、透明な絶縁性基板上に複数の表示画素が2次元配列された表示パネルを備え、前記表示パネルの行ごとの前記表示画素を選択し、表示データに応じた階調信号を印加することにより、前記表示画素を所定の輝度階調で発光動作させて、前記表示パネルに所望の画像情報を表示させる画像表示装置において、前記表示画素の各々は、前記絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子を備えるとともに、前記表示画素相互の境界領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記各表示画素において前記発光層から放射された光を前記絶縁性基板の一面側と他面側に出射することにより、前記表示パネルの前面側と背面側に同時に前記画像情報を表示することを特徴とする。
【0028】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の画像表示装置において、前記各表示画素において前記発光素子の前記発光層から放射され、前記光透過部を介して前記絶縁性基板の他面側に出射された光により規定される第1の発光領域は、前記発光素子の前記発光層から放射され、前記第1の電極層を介して前記絶縁性基板の一面側に出射された光により規定される第2の発光領域に対して、平面的に重ならないように設定されていることを特徴とする。
請求項15記載の発明は、請求項13又は14記載の画像表示装置において、前記光透過部は、前記境界領域に設けられた隔壁に、少なくとも前記発光層の端部が露出するように形成された開口部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明に係る発光素子及び画像表示装置は、有機EL素子のような、完全拡散型の放射特性を有する発光素子を備えた複数の表示画素を2次元配列した表示パネルを具備した画像表示装置において、各表示画素の発光素子を構成する透明な第1の電極層(アノード電極)と、発光層(有機EL層)と、反射特性を有する不透明な第2の電極層(カソード電極)のうち、第2の電極層の特定の領域(例えば、略中央部)に、開口部や透明な薄膜材料(例えば、導電性材料)からなる光透過部が設けられ、該光透過部を介して発光層から放射された光の一部を、絶縁性基板の他面側に出射するとともに、発光層から放射された光の大半を、第1の電極層を介して絶縁性基板の一面側に出射することにより、表示パネルの前面側と背面側に同時に所望の画像情報を表示するように構成されている。
【0030】
ここで、光透過部を介して絶縁性基板の他面側に出射される光により規定される第1の発光領域が、例えば、表示パネルの背面側に表示される画像情報が適度の明るさで視認されるように、光透過部の配置位置や大きさ、形状等が設定されるとともに、第1の電極層を介して絶縁性基板の一面側に出射される光により規定される第2の発光領域に比較して小さい面積になるように設定される。
【0031】
これによれば、透明な絶縁性基板上に、有機EL素子等の発光素子を備えた複数の表示画素を2次元配列した単一の表示パネルに配列された各表示画素(発光素子)において、発光層から放射された光を、絶縁性基板の一面側及び他面側に、各々所定の光量で同時に出射することができるので、該表示パネルの前面側及び背面側の双方に所望の画像情報を同時に表示することができ、画像表示装置を小型薄型化することができるとともに、消費電力を削減することができる。
【0032】
また、各表示画素の発光素子を構成する第2の電極層に設けられる光透過部(第1の発光領域)が、絶縁性基板の一面側に設定される第2の発光領域に比較して小さい面積を有するように構成されていることにより、絶縁性基板の一面側から他面側(又は、他面側から一面側)への光の透過を抑制することができるので、表示パネルの前面側又は背面側に表示された画像情報を目視する際に、表示パネルを介して背景が透視されにくくなり、所望の画像情報を良好に視認することができる。
【0033】
また、本発明に係る発光素子及び画像表示装置においては、光透過部として透明な導電性材料(電極材料)を適用し、第1の電極層の光透過部に対応する領域に、反射特性を有する不透明な導電性材料(電極材料)を適用した光遮断部を設けた構成を有しているものであってもよい。
【0034】
これによれば、透明な第1の電極層と反射特性を有する第2の電極層との間の発光層において放射された光は、直接、又は、第2の電極層で反射して、第1の電極層を介して絶縁性基板の一面側に出射され、一方、光透過部と反射特性を有する光遮断部との間の発光層においても光の放射が生じることにより、該発光層から放射された光は、直接、又は、光遮断部で反射して、光透過部を介して絶縁性基板の他面側に出射されるので、表示パネルの前面側へ放出される光量をほとんど減衰することなく、背面側に放出される光量を増加することができ、表示パネルの前面側及び背面側の双方において、鮮明かつ明るい表示画質の画像情報を表示することができる。
【0035】
また、表示パネルの背面側に出射される光量を増加させるために、光透過部と光遮断部を対向させ、同等の面積を有するようにした構成を有しているので、表示パネルの前面側又は背面側に表示された画像情報を目視する際に、表示パネルを介して背景が透視されることがなく、所望の画像情報のみを良好に視認することができる。
【0036】
さらに、第2の発明に係る発光素子及び画像表示装置は、表示画素相互の境界領域(より具体的には、発光素子の素子形成領域外の領域)に、開口部や透明な薄膜材料からなる光透過部が設けられ、該光透過部を介して発光層から放射された光の一部を、絶縁性基板の他面側に出射するとともに、発光層から放射された光のほぼ全部を、第1の電極層を介して絶縁性基板の一面側に出射することにより、表示パネルの前面側と背面側に同時に所望の画像情報を表示するように構成されている。
【0037】
これによれば、単一の表示パネルに配列された各表示画素(発光素子)の発光層から放射された光を、絶縁性基板の一面側及び他面側に、各々所定の光量で同時に出射することができるので、該表示パネルの前面側及び背面側の双方に所望の画像情報を同時に表示することができ、画像表示装置を小型薄型化することができるとともに、消費電力を削減することができる。
【0038】
この場合、絶縁性基板の他面側へ光を出射する光透過部(第1の発光領域)が、絶縁性基板の一面側に設定される第2の発光領域とは平面的に重ならない境界領域(隔壁)に設けられていることにより、絶縁性基板の一面側から他面側(又は、他面側から一面側)が透視されることなく、また、第2の発光領域及び第1の発光領域の全域を利用して、一面側及び他面側の双方に所望の光量の光を放出することができるので、画像情報を目視する際に、背景が透視されることがなく、表示パネルの前面側及び背面側の双方において、鮮明かつ明るい表示画質で所望の画像情報のみを良好に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に、本発明に係る発光素子及び画像表示装置の実施の形態について、詳しく説明する。
まず、本発明に係る画像表示装置の全体構成について簡単に説明する。
図1は、本発明に係る画像表示装置の全体構成の一例を示す概略ブロック図である。ここで、以下の説明においては、表示パネルを構成する各表示画素として、便宜的に、表示データに応じた階調信号電圧に基づいて、該表示データに応じた電流値を有する発光駆動電流を生成する電圧指定型の発光駆動回路と、該発光駆動電流に基づいて、所定の輝度階調で発光動作する電流制御型の発光素子である有機EL素子と、を備えた回路構成を有する場合について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置100は、概略、相互に直交するように配設された複数の走査ラインSL1、SL2、・・・(以下、総称して「走査ラインSL」と記す)と複数のデータラインDL1、DL2、・・・(以下、総称して「データラインDL」と記す)との各交点近傍に、少なくとも発光駆動回路DC及び有機EL素子(電流制御型の発光素子)OELを備えた複数の表示画素EMが配列された表示パネル110と、該表示パネル110の各走査ラインSLに接続され、所定のタイミングで各走査ラインSLに順次選択レベル(ハイレベル)の走査信号Vscan1、Vscan2、・・・(以下、総称して「走査信号Vscan」と記す)を印加することにより、行ごとの表示画素EMを選択状態に設定(走査)するゲートドライバ120と、表示パネル110の各データラインDLに接続され、表示データに基づく階調信号電圧Vdata1、Vdata2、・・・(以下、総称して「階調信号電圧Vdata」と記す)を生成して、各データラインDLに供給するデータドライバ(信号駆動回路)130と、少なくとも、ゲートドライバ120及びデータドライバ130の動作状態を制御するための走査制御信号及びデータ制御信号を生成して出力するシステムコントローラ140と、表示装置100の外部から供給される映像信号に基づいて、表示データ(表示信号)を生成して、データドライバ130に供給するとともに、該表示データを表示パネル110に画像表示するためのタイミング信号(システムクロック等)を抽出、又は、生成してシステムコントローラ140に供給する表示信号生成回路150と、を備えて構成されている。
【0041】
各表示画素EMは、例えば、図1に示すように、ゲート端子が走査ラインSLに、ソース端子及びドレイン端子がデータラインDL及び接点N11に各々接続されたnチャネル型の薄膜トランジスタTr11と、ゲート端子が接点N11に、ソース端子が電源ラインVLに接続されたpチャネル型の薄膜トランジスタTr12と、を備えた発光駆動回路DC、及び、アノード端子が該発光駆動回路DCの薄膜トランジスタTr12のドレイン端子に接続され、カソード端子が接地電位(Vgnd)に接続された有機EL素子OELを有して構成されている。なお、図1に示した発光駆動回路DCにおいて、Caは薄膜トランジスタTr12のゲート−ソース間に形成される寄生容量(保持容量)、又は、該ゲート−ソース間に付加された補助容量(保持容量)である。
【0042】
このような構成を有する画像表示装置においては、所定のタイミングでゲートドライバ120から走査ラインSLに印加される走査信号Vscanに基づいて、表示パネル110の任意の行の表示画素EMが選択状態に設定され、該選択状態に設定された表示画素EMに対して、データドライバ130からデータラインDLを介して階調信号電圧Vdataを印加することにより、発光駆動回路DCにおいて有機EL素子OELに供給される発光駆動電流の電流値が制御され、表示データに応じた所定の輝度階調で有機EL素子OELが発光動作する。
【0043】
なお、本発明に係る表示装置に適用可能な表示画素は、本実施形態に示した構成に限定されるものではなく、少なくとも、表示データに応じた電流値を有する発光駆動電流を発光素子に供給することができるものであれば、例えば、表示データに応じた階調信号電流に基づいて、発光駆動電流を生成する電流指定型の発光駆動回路を適用するものであってもよい。また、表示画素に適用される発光素子において、発光駆動回路から供給される電流駆動電流に基づいて発光、放射される光が完全拡散型の放射特性を有するものであれば、有機EL素子以外の他の発光素子を適用するものであってもよい。
【0044】
<表示画素の第1の構成例>
次に、上述した本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素部について、図面を参照して詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第1の構成例を示す概略図である。ここで、図2(b)は、有機EL素子の素子構造を示す概略断面図であり、図2(a)、(c)は、各々、図2(b)に示した有機EL素子の一面側(上面側)及び他面側(下面側)から見た概略平面図である。なお、図2(a)、(c)においては、発光領域における発光量の分布を、便宜的にハッチングで示した。
【0045】
本実施形態に係る画像表示装置に適用される有機EL素子(発光素子)OELは、概略、図2(b)に示すように、相互に対向して配置された透明な絶縁性基板11及び透明な封止基板15の間に、ITO等の透明電極材料からなるアノード電極(第1の電極層)12と、ホール輸送層(正孔注入層)13a及び電子輸送性発光層(発光層)13bからなる有機EL層(発光層)13と、反射特性を有する(不透明な)金属材料等からなるカソード電極(第2の電極層)14と、を順次積層した構成を有し、上記カソード電極14の任意の位置に、任意の形状の開口部(スルーホール;光透過部)HLaが形成されている。ここで、本構成例においては、図2(c)に示すように、カソード電極14の略中央部に矩形状の開口部HLaが形成された構成を有している。
【0046】
そして、本構成例に係る有機EL素子OELおいては、図2(b)に示すように、発光動作時に有機EL層13から放射される光の大半(光Hνx)が直接、又は、反射特性を有するカソード電極14により反射されて、透明なアノード電極12及び絶縁性基板11を介して、一面側(図面上方側)に出射されるとともに、カソード電極14に有機EL層13が露出するように開口部HLaが設けられていることにより、該有機EL層13からカソード電極14方向に放射される光の一部(光Hνa)が、上記開口部HLa及び透明な封止基板15を介して、他面側(図面下方側)に出射される。
【0047】
これにより、図2(a)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の前面側からは、有機EL素子OELを構成する各層(有機EL層13及びアノード電極12、カソード電極14)の平面的な広がりにより規定される発光領域(第2の発光領域)ARelの略全域で、有機EL層13から放射された光が視認される。ここで、上記カソード電極14に設けられた開口部HLaに対応する領域ARhlでは、有機EL層13において発光動作が行われないが、有機EL層13内での拡散やカソード電極14による反射により、開口部HLaの周辺において放射された光が当該領域ARhlにおいても出射されるので、当該開口部HLaの面積に応じた光量分だけ、減衰した光が視認される。
【0048】
一方、図2(c)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の背面側からは、カソード電極14に設けられた開口部HLaに対応する領域(第1の発光領域)ARhaにおいてのみ、有機EL層13から放射された光が視認される。ここで、上述したように、開口部HLaに対応する領域ARhaでは、有機EL層13において発光動作が行われないが、有機EL層13内での拡散やカソード電極14による反射により、開口部HLaの面積に応じた光量分の光が視認される。
【0049】
次いで、上述した素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素の具体構成例について、図1に示した表示画素EM(発光駆動回路DC)に対応させて、さらに詳しく説明する。
図3は、本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。ここで、図3(a)は、有機EL素子の他面側から見た要部平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示した有機EL素子の素子構造を示すA−A断面における概略断面図である。
【0050】
図1に示したような回路構成を有する表示画素EMは、レイアウト設計工程において、図3(a)に示すように、例えば、行方向に配設される走査ラインSLと、この走査ラインSLに直交して列方向に配設されるデータラインDLと、データラインDLに並行して配設される電源ラインVLと、により囲まれた矩形状領域に画素形成領域が規定される。
【0051】
そして、図1に示した発光駆動回路DCは、該画素形成領域の略外縁部(走査ラインSL、データラインDL及び電源ラインVLの形成領域)に沿って、薄膜トランジスタTr11、Tr12やコンデンサCa、薄膜トランジスタTr11、Tr12間を接続する素子間配線部Lbwを配置することにより構成される。なお、図3(a)において、EG1、ES1、ED1は、各々薄膜トランジスタTr11のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極であり、EG2、ES2、ED2は、各々薄膜トランジスタTr12のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極である。
【0052】
また、有機EL素子OELは、図3(a)、(b)に示すように、上記画素形成領域のうち、発光駆動回路DC(薄膜トランジスタTr11、Tr12や素子間配線部Lbw等)の形成領域を除く領域(表示画素EMの発光領域ARelとなる領域)の絶縁性基板111上に、絶縁膜(薄膜トランジスタTr12のゲート絶縁膜)を介して、薄膜トランジスタTr12のドレイン電極ED2に接続されたITO等の透明なアノード電極112と、ホール輸送層113a及び電子輸送性発光層113bからなる有機EL層113と、金属材料からなる反射特性を有するカソード電極114を順次積層して構成されている。ここで、カソード電極114の略中央部には、矩形の開口部HLaが設けられている。
【0053】
また、隣接して配列された表示画素EMの有機EL素子OELの形成領域(すなわち、発光領域ARel)相互の境界領域には、例えば、双方の有機EL素子OELの形成領域を隔離する絶縁性材料からなる隔壁116が設けられ、該隔壁116が形成される領域の絶縁性基板111上には、上記発光駆動回路DCを構成する薄膜トランジスタTr11、Tr12や素子間配線部Lbw等が形成されている。さらに、上記有機EL素子OEL及び隔壁116が形成された絶縁性基板111上の全領域は、透過性を有する封止層117及び封止基板115により封止されている。
【0054】
なお、図3(a)においては、図示を簡明にするために、絶縁性基板111上にレイアウト形成された走査ラインSL、データラインDL、電源ラインVLと、薄膜トランジスタTr11、Tr12、アノード電極112、素子間配線部Lbwのみを示し、また、図3(b)においては、有機EL素子OEL、薄膜トランジスタTr12、隔壁116、封止層117及び封止基板115のみを示した。
【0055】
さらに、本構成例においては、表示画素EM(有機EL素子OEL)相互の境界領域に絶縁性材料からなる隔壁116を設けた構成を示したが、このような隔壁により表示画素相互を絶縁する構成のほかに、例えば、当該境界領域となる空間に、封止樹脂(上述した封止層117に相当する)や不活性ガスを充填した構成を適用するものであってもよい。
【0056】
このような素子構造を有する表示画素を適用した画像表示装置(表示パネル)によれば、対向する透明な基板(絶縁性基板111及び封止基板115)間に、各々単一の有機EL素子(完全核酸型の放射特性を有する発光素子)を備えた複数の表示画素を2次元配列するとともに、各表示画素を構成する有機EL素子の積層構造の一面側(絶縁性基板側)に、有機EL層から放射された光のほとんどを放出し、他面側(封止基板側)に、有機EL層から放射された光の一部を放出することができるので、単一の表示パネルで前面側及び背面側の双方に画像情報を表示することができる。
【0057】
この場合、従来技術(図9参照)に示した液晶表示装置を適用した構成のように、バックライトを備える必要がなく、また、単一の表示パネルのみで前面側及び背面側の双方に画像情報を表示することができるので、画像表示装置を小型薄型化することができるとともに、消費電力を削減することができる。
【0058】
また、各表示画素の有機EL素子を構成するアノード電極及びカソード電極のうち、他面側に設けられ、反射特性を有するカソード電極に、発光領域に比較して小面積を有する開口部を設けることにより、一面側から他面側(又は、他面側から一面側)への光の透過を抑制することができるので、一面側及び他面側に表示された画像情報を目視する際に、背景が透視されにくくなり、所望の画像情報を良好に視認することができる。
【0059】
ここで、各表示画素(有機EL素子)において、一面側には発光領域の略全域で有機EL層から放射された光の出射が行われるため、充分な明るさで画像情報が表示されるが、他面側では開口部の大きさに応じた光量の光しか放射されないため、画像情報が暗くなることが考えられる。そこで、他面側に表示される画像情報が適度の明るさで視認されるように、開口部の配置位置や大きさ、形状等を設定するようにする。これにより、表示パネルの前面側と背面側の双方において、表示画質を適度に確保することができるとともに、表示パネルを介して背景が透視される現象を極力抑制することができる。
【0060】
なお、本構成例においては、有機EL層から放射された光を封止基板側に出射するための光透過部として、カソード電極に開口部を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該開口部に透明な絶縁性材料を充填した構成を有するものであってもよい。また、当該開口部に対応する領域のアノード電極(有機EL層側)に反射特性を有する薄膜を形成することにより、封止基板側へ出射される光量を増加させるとともに、絶縁性基板側から封止基板側、又は、側封止基板側から絶縁性基板への光の透過を遮断して、透視できないようにしてもよい。
【0061】
<表示画素の第2の構成例>
次に、本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素部の第2の構成例について、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第2の構成例を示す概略図である。ここで、図4(b)は、有機EL素子の素子構造を示す概略断面図であり、図4(a)、(c)は、各々、図4(b)に示した有機EL素子の一面側(上面側)及び他面側(下面側)から見た概略平面図である。また、図4(a)、(c)においては、発光領域における発光量の分布を、便宜的にハッチングで示した。なお、以下の説明において、上述した第1の構成例に示した表示画素部と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0062】
本実施形態に係る画像表示装置に適用される有機EL素子OELの第2の構成例は、概略、図4(b)に示すように、相互に対向して配置された透明な絶縁性基板11及び封止基板15の間に、透明なアノード電極12と、有機EL層13(ホール輸送層13a及び電子輸送性発光層13b)と、反射特性を有する(不透明な)カソード電極14と、を順次積層した構成を有し、隣接する表示画素の有機EL素子OELとの間の境界領域(素子形成領域外)に設けられた隔壁16の一部に、少なくとも有機EL層が露出するように、任意の形状の開口部(スルーホール;光透過部)HLbが形成されている。ここで、本構成例においては、図4(c)に示すように、隔壁16に矩形状の平面パターンを有する開口部HLbが形成された構成を有している。
【0063】
そして、本構成例に係る有機EL素子OELおいては、図4(b)に示すように、発光動作時に有機EL層13から放射される光の大半(光Hνx)が直接、又は、反射特性を有するカソード電極14により反射されて、透明なアノード電極12及び絶縁性基板11を介して、一面側(図面上方側)に出射されるとともに、隔壁16に有機EL層13が露出するように開口部HLbが設けられていることにより、該有機EL層13から側方端面方向(図面右方向)に放射される光の一部(光Hνb)が、上記開口部HLb及び透明な封止基板15を介して、他面側(図面下方側)に出射される。
【0064】
これにより、図4(a)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の前面側からは、発光領域(第2の発光領域)ARelの全域で、有機EL層13から放射された光が視認される。ここで、上記有機EL層13から放射された光の一部は、後述するように、発光領域ARel以外の領域(すなわち、境界領域の隔壁16)に設けられた開口部HLbを介して、背面側に放射されるものの、前面側からは発光領域ARelの全域が視認されるので、前面側からは、有機EL層13から放射された光がほとんど光量が減衰することなく視認される。
【0065】
一方、図4(c)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の背面側からは、各表示画素EMの発光領域ARel間の境界領域であって、上記隔壁16に設けられた開口部HLbに対応する領域(第1の発光領域)ARhbにおいてのみ、有機EL層13から放射された光のうち、開口部HLbを介して出射された光が視認される。ここで、上述したように、開口部HLbに対応する領域ARhbでは、有機EL層13から放射された光の一部が、開口部HLbを介して背面側に放射されるので、開口部HLbの面積(実質的には、開口部HLb内に露出する有機EL層113の面積)に応じた光量分の光が視認される。
【0066】
次いで、上述した素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素の具体構成例について、図1に示した表示画素EM(発光駆動回路DC)に対応させて、さらに詳しく説明する。
図5は、本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。ここで、図5(a)は、有機EL素子の他面側から見た要部平面図であり、図5(b)は、図5(a)に示した有機EL素子の素子構造を示すB−B断面における概略断面図である。また、上述した第1の構成例に示した表示画素部の具体構成例と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0067】
第2の構成例に係る有機EL素子を適用した表示画素の具体構成例は、図5(a)、(b)に示すように、走査ラインSL、データラインDL及び電源ラインVLにより囲まれた画素形成領域において、隔壁116により規定された各表示画素の発光領域ARelに、有機EL素子OELが構成され、該有機EL素子OELの有機EL層113の縁辺部(側方端面を含むものであってもよい)の一部領域から、上記隔壁116が形成された領域の一部にかけて、カソード電極114及び隔壁116がエッチング除去されて、有機EL層113の縁辺部から隔壁116の下層に形成された薄膜トランジスタTr12にかけての領域が露出する開口部HLbが形成された構成を有している。
【0068】
このような素子構造を有する表示画素を適用した画像表示装置(表示パネル)によれば、表示パネル110の前面側では、有機EL層113から放射された光が発光領域ARelの全域から放出されて所望の画像情報(例えば、正転画像)が表示、視認され、背面側では、各表示画素EMの有機EL素子OEL間に形成された隔壁部116(境界領域)に開口部HLbを設けることにより、有機EL層113から放射された光の一部(有機EL層113の側面方向に放射された光)が、該開口部HLbを介して放出されるので、表示画素EM(有機EL素子OEL)間の境界領域においてのみ光が放出されて所望の画像情報(例えば、反転画像)が表示、視認される。
【0069】
したがって、背面側への光を放射する開口部が、発光領域とは平面的に重ならない境界領域(隔壁)に設けられていることにより、一面側から他面側(又は、他面側から一面側)が透視されることなく、一面側及び他面側の双方に所望の光量の光を放出することができるので、画像情報を目視する際に、背面側の風景や事物が透過して視認されることがなく、表示パネルの前面側及び背面側の双方において、鮮明かつ明るい表示画質で所望の画像情報のみを良好に視認することができる。
【0070】
なお、本構成例においては、有機EL層から放射された光を封止基板側に出射するための光透過部として、隔壁に開口部を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、当該開口部に透明な絶縁性材料を充填した構成を有するものであってもよい。また、当該開口部を、有機EL層の一側方端面が露出するように形成した場合について説明したが、複数の側方端面が露出するように、開口部の形状や個数を設定して、封止基板側へ出射される光量を増加させるようにしてもよい。
【0071】
<表示画素の第3の構成例>
次に、本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素部の第3の構成例について、図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第3の構成例を示す概略図である。ここで、図6(b)は、有機EL素子の素子構造を示す概略断面図であり、図6(a)、(c)は、各々、図6(b)に示した有機EL素子の一面側(上面側)及び他面側(下面側)から見た概略平面図である。また、図6(a)、(c)においては、発光領域における発光量の分布を、便宜的にハッチングで示した。なお、以下の説明において、上述した第1の構成例に示した表示画素部と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0072】
本実施形態に係る画像表示装置に適用される有機EL素子OELの第3の構成例は、図6(b)に示すように、相互に対向して配置された透明な絶縁性基板11及び透明な封止基板15の間に、上述した第1の構成例と同様の構成を有する有機EL素子OELが形成され、少なくともカソード電極14の任意の位置に、任意の形状で形成された開口部HLc内に透明な電極材料(導電性材料)を埋め込んでカソード電極の一部(以下、便宜的に「透明カソード電極部」と記す;光透過部)14Hとした構成を有している。ここで、本構成例においては、図6(c)に示すように、カソード電極14の略中央部に矩形状の開口部HLcが形成され、該開口部HLc内にITO等の透明電極材料を充填形成して透明カソード電極部14Hを設けた構成を有している。
【0073】
さらに、望ましい形態として、図6(b)に示すように、アノード電極12の上記透明カソード電極部14Hに対向する(又は、対応する)領域を、反射特性を有する不透明な電極になるように形成する。具体的には、透明カソード電極部14Hに対向する領域のアノード電極12に開口部を設け、該開口部に反射特性を有する不透明な電極材料(導電性材料)を埋め込んでアノード電極の一部(以下、便宜的に「反射アノード電極部」と記す;光遮断部)12Hとする構成や、透明カソード電極部14Hに対向する領域のアノード電極12の表面(有機EL層13側)に反射特性を有する導電性の薄膜を形成した構成等を良好に適用することができる。
【0074】
そして、本構成例に係る有機EL素子OELおいては、図6(b)に示すように、発光動作時に有機EL層13から放射される光の大半(光Hνx)が直接、又は、反射特性を有するカソード電極14により反射されて、透明なアノード電極12(反射アノード電極部12Hを除く)及び絶縁性基板11を介して、一面側(図面上方側)に出射されるとともに、カソード電極14に有機EL層13からの放射光が透過するように透明カソード電極部14Hが設けられ、また、アノード電極12の透明カソード電極部14Hに対応する領域に、有機EL層13からの放射光を反射するように反射アノード電極部12Hが設けられていることにより、該有機EL層13からカソード電極14方向に放射される光の一部(光Hνc)が、上記透明カソード電極部14H及び透明な封止基板15を介して、他面側(図面下方側)に出射される。
【0075】
これにより、図6(a)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の前面側からは、発光領域(第2の発光領域)ARelの略全域で、有機EL層13から放射された光が視認される。ここで、上記アノード電極12に設けられた反射アノード電極部12Hに対応する領域(すなわち、カソード電極14に設けられた透明カソード電極部14Hに対応する領域)ARhlでは、有機EL層13からの放射光が透過しないため、当該反射アノード電極部12Hの面積に応じた光量分だけ、減衰した光が視認される。
【0076】
一方、図6(c)に示すように、画像表示装置100(表示パネル110)の背面側からは、カソード電極14に設けられた透明カソード電極部14Hに対応する領域(第1の発光領域)ARhcにおいてのみ、有機EL層13から放射された光が視認される。ここで、上述したように、透明カソード電極部14Hに対応する領域ARhcでは、反射アノード電極12H及び透明カソード電極部14H間の有機EL層13から放射された光が直接、又は、反射アノード電極12Hにより反射されて、透明カソード電極部14H及び封止基板15を介して出射されるので、第1の構成例に係る有機EL素子に比較して大光量の光が、透明カソード電極部14Hの面積に応じて取り出され、視認される。
【0077】
次いで、上述した素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素の具体構成例について、図1に示した表示画素EM(発光駆動回路DC)に対応させてさらに詳しく説明する。
図7は、本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。ここで、図7(a)は、有機EL素子の他面側から見た要部平面図であり、図7(b)は、図7(a)に示した有機EL素子の素子構造を示すC−C断面における概略断面図である。また、上述した第1の構成例に示した表示画素部の具体構成例と同等の構成については、同一の符号を付してその説明を簡略化又は省略する。
【0078】
第3の構成例に係る有機EL素子を適用した表示画素の具体構成例は、図7(a)、(b)に示すように、走査ラインSL、データラインDL及び電源ラインVLにより囲まれた画素形成領域において、各表示画素の発光領域ARelに、有機EL素子OELが構成され、該有機EL素子OELを構成する各層のうち、カソード電極114の略中央部には、透明カソード電極部114Hが設けられ、アノード電極112の略中央部には、反射アノード電極部112Hが設けられている。
【0079】
このような素子構造を有する表示画素を適用した画像表示装置(表示パネル)によれば、表示パネル110の前面側では、有機EL層113から放射された光が発光領域ARelの略全域から放出されて所望の画像情報(例えば、正転画像)が表示、視認され、背面側では、反射アノード電極部112Hと透明カソード電極部114Hを対向して設けることにより、当該電極部間の有機EL層113から放射された光が、該開口部HLbを介して放出されて、所望の画像情報(例えば、反転画像)が表示、視認される。
【0080】
したがって、反射アノード電極部と透明カソード電極部間の有機EL層から放射された光が背面側に良好に放出されるので、第1の構成例に係る有機EL素子に比較して、前面側へ放出される光量をほとんど減衰することなく、背面側に放出される光量を増加することができ、画像表示装置(表示パネル)の前面側及び背面側の双方において、鮮明かつ明るい表示画質の画像情報を表示することができる。
【0081】
また、表示パネルの背面側に光を放射するために(光量を増加させるために)、不透明な反射アノード電極部と透明カソード電極部とを対向させ、同等の面積を有するようにした構成を適用しているので、一面側から他面側(又は、他面側から一面側)が透視されることなく、一面側及び他面側の双方に所望の光量の光を放出することができ、画像情報を目視する際に、背面側の風景や事物が透過して視認されることがなく、所望の画像情報のみを良好な表示画質で視認することができる。
【0082】
なお、本構成例においては、反射特性を有するカソード電極に透明カソード電極部を形成し、透明なアノード電極に反射特性を有する反射アノード電極部を形成した構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カソード電極に透明カソード電極部のみを形成し、対応する領域のアノード電極をそのままにした(反射アノード電極部を形成しない)構成を有するものであってもよい。
【0083】
また、上述した各構成例に示した表示画素を適用した画像表示装置においては、前面側に設定される発光領域に比較して、背面側に設定される発光領域の面積が小さくなるように、光透過部が形成された構成(すなわち、前面側に取り出される光量に対して、背面側に取り出される光量が小さくなるようにした構成)について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特に、第2及び第3の構成例において、例えば、前面側及び背面側に取り出される光量が、各々同等になるように構成するものであってもよい。
【0084】
ここで、前面側に取り出される光量に対して、背面側に取り出される光量が小さくなるように構成した場合にあっては、例えば、近年の携帯電話機等において、メインディスプレイに比較して、サブディスプレイでは、時刻表示や着信表示等の、比較的簡易な文字情報や画像を表示する使用方法が多用されており、表示画質(明るさ)がある程度低い場合であっても支障を生じることがないので、既存の電子機器(携帯電話機等)に良好に適用することができる。一方、前面側及び背面側に取り出される光量が、各々同等になるように構成した場合にあっては、メインディスプレイとサブディスプレイとで、同等の表示画質の画像情報が表示され、かつ、当該ディスプレイを介して背景が透視されない電子機器(携帯電話機等)を実現することができる。
【0085】
さらに、本発明に係る画像表示装置においては、表示パネルの前面側と背面側で、互いに反転した画像情報(すなわち、正転画像と反転画像)が表示されることになるが、例えば、図8に示したような携帯電話機200に、本発明に係る画像表示装置を適用した場合、通常、メインディスプレイ210の画像情報を目視する状態では、サブディスプレイ220に表示された画像情報を利用する(目視する)ことはほとんどないので、仮にメインディスプレイ210とサブディスプレイ220とで反転する画像情報が表示されていても、当該画像表示装置を搭載した電子機器の使用上、重大な支障が生じる可能性はきわめて低い。
【0086】
したがって、図8に示したような携帯電話機200において、例えば、表示部筐体DISを開いてメインディスプレイ210を目視する状態では、画像情報を正転状態で表示し(このとき、サブディスプレイ220には反転画像が表示されている)、表示部筐体DISを閉じてサブディスプレイ220を目視する状態では、画像情報を反転状態で表示するように、画像情報の表示状態を駆動制御することにより、使い勝手を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る画像表示装置の全体構成の一例を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第1の構成例を示す概略図である。
【図3】本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。
【図4】本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第2の構成例を示す概略図である。
【図5】本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。
【図6】本実施形態に係る画像表示装置に適用される表示画素に設けられる有機EL素子の素子構造の第3の構成例を示す概略図である。
【図7】本構成例に係る素子構造を有する有機EL素子を適用した表示画素部の具体構成例(回路レイアウト及び断面構造)を示す構成図である。
【図8】従来技術における複数のディスプレイを備えた携帯型の電子機器(携帯電話機)の一例を示す概略構成図である。
【図9】従来技術における電子機器の画像表示部の構成例を示す概略断面図である。
【図10】従来技術における有機EL素子の基本構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0088】
11 絶縁性基板
15 封止基板
12 アノード電極
12H 反射アノード電極部
13 有機EL層
14 カソード電極
14H 透明カソード電極部
100 画像表示装置
110 表示パネル
HLa、HLb、HLc 開口部
DC 発光駆動回路
OEL 有機EL素子
ARel 発光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子において、
前記第2の電極層の特定の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記発光層から放射された光が前記絶縁性基板の一面側と他面側に同時に出射されることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記光透過部は、前記第1の電極層、前記発光層、前記第2の電極層により規定される、前記発光素子の前記一面方向への発光領域に比較して、小さい面積に設定されていることを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
前記光透過部は、前記発光層が露出するように前記第2の電極層に形成された開口部であることを特徴とする請求項1又は2記載の発光素子。
【請求項4】
前記光透過部は、透明な導電性材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1の電極層は、前記光透過部に対応する領域に、不透明な導電性材料からなる光遮断部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の発光素子。
【請求項6】
透明な絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子において、
前記発光素子の素子形成領域外の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、前記発光層から放射された光が前記絶縁性基板の一面側と他面側に同時に出射されることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
前記光透過部は、前記素子形成領域外に設けられた隔壁に、少なくとも前記発光層の端部が露出するように形成された開口部であることを特徴とする請求項6記載の発光素子。
【請求項8】
前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセント素子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
透明な絶縁性基板上に複数の表示画素が2次元配列された表示パネルを備え、前記表示パネルの行ごとの前記表示画素を選択し、表示データに応じた階調信号を印加することにより、前記表示画素を所定の輝度階調で発光動作させて、前記表示パネルに所望の画像情報を表示させる画像表示装置において、
前記表示画素の各々は、前記絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子を備えるとともに、前記第2の電極層の特定の領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、
前記各表示画素において前記発光層から放射された光を前記絶縁性基板の一面側と他面側に出射することにより、前記表示パネルの前面側と背面側に同時に前記画像情報を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
前記各表示画素において前記発光素子の前記発光層から放射され、前記光透過部を介して前記絶縁性基板の他面側に出射された光により規定される第1の発光領域は、前記発光素子の前記発光層から放射され、前記第1の電極層を介して前記絶縁性基板の一面側に出射された光により規定される第2の発光領域に比較して、小さい面積に設定されていることを特徴とする請求項9記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記光透過部は、前記発光層が露出するように前記第2の電極層に形成された開口部であることを特徴とする請求項9又は10記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記光透過部は、透明な導電性材料からなり、前記第1の電極層には、前記光透過部に対応する領域に、不透明な導電性材料からなる光遮断部が設けられていることを特徴とする請求項9又は10記載の画像表示装置。
【請求項13】
透明な絶縁性基板上に複数の表示画素が2次元配列された表示パネルを備え、前記表示パネルの行ごとの前記表示画素を選択し、表示データに応じた階調信号を印加することにより、前記表示画素を所定の輝度階調で発光動作させて、前記表示パネルに所望の画像情報を表示させる画像表示装置において、
前記表示画素の各々は、前記絶縁性基板の他面側に、少なくとも透明な第1の電極層と、発光層と、不透明な第2の電極層と、を順次積層した素子構造を有し、完全拡散型の放射特性を有する発光素子を備えるとともに、前記表示画素相互の境界領域に、前記発光層から放射された光の一部を透過する光透過部が設けられ、
前記各表示画素において前記発光層から放射された光を前記絶縁性基板の一面側と他面側に出射することにより、前記表示パネルの前面側と背面側に同時に前記画像情報を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
前記各表示画素において前記発光素子の前記発光層から放射され、前記光透過部を介して前記絶縁性基板の他面側に出射された光により規定される第1の発光領域は、前記発光素子の前記発光層から放射され、前記第1の電極層を介して前記絶縁性基板の一面側に出射された光により規定される第2の発光領域に対して、平面的に重ならないように設定されていることを特徴とする請求項13記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記光透過部は、前記境界領域に設けられた隔壁に、少なくとも前記発光層の端部が露出するように形成された開口部であることを特徴とする請求項13又は14記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−19142(P2006−19142A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195936(P2004−195936)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】