説明

発光素子及び表示装置

【課題】
有機発光素子を白色光源とした表示装置では、色再現範囲が狭く特に緑色や赤色の波長域の色再現性が不十分であるという問題が生じる。
【解決手段】
本発明では、有機発光素子の白色光源を達成するために、有機発光素子の発光層から出射される発光により無機材料である蛍光体膜を光励起して、有機発光素子の発光スペクトルと無機蛍光体の蛍光スペクトルを混色することにより白色光スペクトルを得る手段を講じた。本発明の上記白色光源を用いて、カラーフィルタと組み合せることにより、各RGB画素を表示することが可能であり、有機発光ディスプレイ装置を構成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子及びこれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、自発光の薄膜ディスプレイ表示装置の画素や、液晶ディスプレイ表示装置のバックライト光源として機能させることができる。有機発光素子において、大面積の白色光を生成する手法として、発光層に青色ドーパントと赤色ドーパントを添加することにより、白色照明光源やバックライト光源とすることや、カラーフィルタと組み合わせて有機発光ディスプレイ装置とすることが試みられている。例えば、公知例として特許文献1においては、有機発光素子に有機蛍光材料を組み合わせることにより、フルカラー表示や白色光源として利用できことが述べられている。また他の公知例の特許文献2では、二つの二次画素を形成して、有機発光素子による発光とその光を吸収する有機蛍光媒体の蛍光により、多色の画像表示が可能である発光装置について述べている。これらの特許文献では、主に有機低分子材料による有機発光発光素子の短波長の発光と、光励起される有機蛍光材料の蛍光の混色により、白色光の色再現とディスプレイ装置について記述している。
【0003】
また従来の白色光源については、窒化物半導体材料を用いた発光ダイオード素子を利用した場合についても発明されている。特許文献3では、窒化ガリウム化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光顔料を含有してなる発光ダイオード素子について述べており、特許文献4では蛍光物質や波長変換材料を樹脂封止してカップに含有する効率向上を目的とした構成について述べている。さらに特許文献5には、青色又は青紫色発光ダイオードとその発光を吸収して可視光を発する蛍光体の組み合わせにより、白色発光素子を達成する手法について述べている。これらの特許文献では、無機半導体材料で形成される発光ダイオード素子とそれに励起される無機蛍光材料の組み合わせにより、白色光源を構成する内容について言及されている。
【0004】
他に、有機薄膜ディスプレイ表示装置を実現する上で、色変換素子とカラーフィルタの組み合わせにより実現することが試みられている。特許文献6では、青色有機発光素子とその上に設けた色変換フィルタとしての役目を果たす有機色素材料により、青色発光に励起された緑色と赤色の色変換を利用して白色光とする光源について述べている。
【0005】
【特許文献1】特公平3−152897号公報
【特許文献2】特開平5−258860号公報
【特許文献3】特開平5−152609号公報
【特許文献4】特開平7−99345号公報
【特許文献5】特開平10−163535号公報
【特許文献6】特開2000−182780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の素子では、有機発光素子と有機蛍光材料或いは有機色素材料の組み合わせにより、有機材料白色光源を実現し、照明装置や有機発光ディスプレイ装置に適用できることが既に示されている。しかしながら、有機蛍光材料や有機色素材料では未だ均一性のある高い輝度を達成することは難しく、また高効率の色変換については課題となっている。また高輝度高効率の白色色再現を達成するため、発光層に青色ドーパントと赤色ドーパントを導入して、白色光源とすることが試みられているが、緑色のスペクトルが不足して色再現範囲の点で不十分であり、カラーフィルタを通したときのスペクトルに問題がある状況であった。
【0007】
また従来白色光源では、点光源である無機半導体による発光ダイオード素子と黄色無機蛍光体材料を組み合わせることにより、白色光スペクトルを実現しており、照明装置やバックライト光源に適用されているが、大面積で均一性がよく超薄型軽量の白色光源を実現することは困難であった。そこで、大面積の面発光光源であり超薄型軽量化が可能である有機発光素子を光源に用いることが考えられる。これまで検討されてきた白色の有機発光素子は、有機発光層に青色のドーパントと赤色のドーパントを導入し、青色波長域と赤色波長域の発光スペクトルを混合する形で白色スペクトルを得ることが通常であった。しかしながら、この白色有機発光素子では、緑色波長域のスペクトルが不十分であり、特に液晶バックライト光源として用いる場合には、色再現範囲が不足している状況である。またカラーフィルタとの組み合わせによる有機発光ディスプレイ装置に適用するためには、緑色波長域の色再現と画素を構成できない上に、色再現のバランスが悪い状況である。
【0008】
本発明では、上記課題を解決し、大面積で均一性のよい光源で超薄型軽量のバックライト光源とすることや、本発明の手段を用いて白色光源を達成しカラーフィルタとの組み合わせによりディスプレイ装置とすることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、上記課題を解決するために導入した手段について以下説明する。
【0010】
上記課題を解決するには、有機発光素子を励起光として、無機材料を用いた蛍光体膜を光励起することにより、有機発光素子の発光スペクトルと蛍光体膜の蛍光スペクトルを加えて色再現範囲を拡大していく手段を採用した。この際、青色発光の有機発光素子を用いて、緑色から赤色の広い波長域にわたり蛍光スペクトルを有する蛍光体膜を光励起することにより、青色と緑色から赤色の広い波長にわたってスペクトルをカバーして白色光とする構成を設定した。他には、従来検討されてきた、青色と赤色の発光を有する有機発光素子における青色発光により、緑色波長域の蛍光スペクトルを発する蛍光体膜を組み合わせることにより、色再現範囲を拡大した白色光源を構成することもできる。
【0011】
本発明における蛍光体膜については、粒子状の蛍光体材料からなり、粒子サイズと粒子密度、及び蛍光体膜の膜厚を適切に設定する必要がある。これは、蛍光体膜を通しても、励起光源である有機発光素子の発光輝度を極端に減巣させず、バランスのよい色再現を可能とする白色光を得るために、上記の条件が必要となるからである。本発明では、これらの要請される条件を適切に制御することにより、有機発光素子の発光を蛍光体膜に対する効率のよい励起光として適用し、かつ透過光の成分として色再現のバランスのよい白色光を得るためのスペクトル強度を達成することを可能とするものである。
【0012】
さらに本発明で用いる蛍光体膜は、粒成長を適切に制御した粒子サイズを所望の値に設定した粒子状の蛍光体としている。蛍光体の所望の粒子サイズとしては、粒成長を制御することにより、適切な範囲は0.2 ミクロンから20ミクロンの範囲であり、望ましくは0.4 ミクロンから8ミクロンの範囲を設定している。蛍光体膜を通過する際には、透過光を拡散光として扱うようにできる効果がある。即ち、この蛍光体膜によると、今まで透明基板において反射されていた角度の光を拡散光として上方向に取り出すことが可能となる。また正面輝度は若干低下するが、拡散光を利用して、視角依存性を改善し視角を大きくしても輝度の減衰が相対的に小さくなることを期待できる。つまり、適切なサイズの粒子状の蛍光体を用いると、色再現範囲を拡大する白色光スペクトルを達成しながら、同時に視角依存性を改善する拡散光として利用できることになる。これにより、液晶バックライト光源に適用すると、従来光源の上部に必要であった拡散フィルムの役目を同時に果たすことになる。このことは、蛍光体膜を適切な条件の下で導入することにより、液晶バックライトにおける拡散フィルムを除去する構成も可能となる。
【0013】
本発明の構成は、ディスプレイ装置の光源としても構成できる。本発明の有機発光素子と蛍光体膜による白色光源を各RGBに対応するように画素分割して、カラーフィルタと組み合わせることにより、有機発光ディスプレイ装置として機能させることが可能である。
【0014】
上記の内容に基づいて、本発明の構成により白色光源として照明や液晶バックライトに適用できる構成とすることができ、またカラーフィルタとの組み合わせにより有機発光ディスプレイ装置を構成することが実現可能となる。
【0015】
本発明の具体的な構成としては、以下がある。
【0016】
本発明は、基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる蛍光体膜とを有し、前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極である発光素子の構成をとる。
【0017】
また、前記有機発光層は主として青色の波長域の光を出射し、かつ前記蛍光体膜は前記青色の波長域の光を入射し、主として緑色及び赤色の波長域の光を出射する構成をとる。ここで、青色の波長域は440nm〜480nm、緑色の波長域は490nm〜540
nm、赤色の波長域は590nm〜640nmの領域を示す。
【0018】
また、前記有機発光層は青色の波長域に発光のピークを有し、かつ前記無機材料は緑色及び赤色の波長域に蛍光のピークを有する構成をとる。また、前記有機発光層から出射する光は青色光であり、かつ前記蛍光体膜から出射する光は白色光である構成をとる。また、前記有機発光層は主として青色及び赤色の波長域の光を出射し、かつ前記蛍光体膜は前記青色及び赤色の波長域の光を入射し、主として緑色の波長域の光を出射する構成をとる。ここで、青色光,緑色光,赤色光はそれぞれ、青色,緑色,赤色の波長域に吸収帯を持つ光を示す。また、白色光は青色,緑色,赤色の波長域全般に吸収帯を持つ光を示す。
【0019】
また、前記有機発光層は青色の波長域及び赤色の波長域に発光のピークを有し、かつ前記無機材料は緑色の波長域に蛍光のピークを有する構成をとる。また、前記有機発光層から出射する光は青色光及び赤色光であり、かつ前記蛍光体膜から出射する光は白色光であることを特徴とする構成をとる。また、前記基板と、前記有機発光素子と、前記蛍光体膜はこの順に配置し、前記有機発光素子及び前記蛍光体膜から出射した光は前記基板と反対側から取り出される構成をとる。また、前記蛍光体膜は直径が0.2μm 以上20μm以下、又は直径が0.4μm以上8μm以下の蛍光体粒子による構成をとる。
【0020】
他の構成として、本発明は、基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる一対の蛍光体膜と、封止ガラス基板とを有し、前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極であり、前記一対の蛍光体膜は前記封止ガラス基板を介して対向して配置する発光素子の構成をとる。
【0021】
他の構成として、本発明は、基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる蛍光体膜とを有し、前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極である表示装置の構成をとる。また、カラーフィルタと、光源とを有し、該光源は、上記に記載の発光素子からなることを特徴とする表示装置の構成をとる。また、一対の液晶パネル用基板と、該一対の液晶パネル用基板の間に配置する液晶層及びカラーフィルタと、前記液晶層に光を供給する光源とを有し、該光源は、上記に記載の発光素子からなることを特徴とする液晶表示装置の構成をとる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、照明やバックライトの白色光源として有機発光素子とその透明封止基板に無機蛍光体材料を塗布した構成をとり、またディスプレイ装置として上記白色光源とカラーフィルタを組み合わせることにより各RGB画素を構成して色再現と画像を実現することができる。
【0023】
本発明の白色光源では、従来の白色無機発光ダイオード素子よりも、大面積でかつ薄型に構成できる有機発光素子を励起光源として、無機材料の粒子状蛍光体膜を光励起して発する蛍光スペクトルを加えることにより、白色光のスペクトルを得ることが可能である。例えば、青色有機発光素子の発光を励起光として、緑色から赤色の波長域に蛍光を発する無機蛍光体膜を通すことにより、色再現範囲の広い白色光スペクトルを達成できる。他には、青色と赤色の波長域に発光スペクトルを有する有機発光素子の青色発光を励起光として、緑色の波長域に蛍光を発する無機蛍光体膜を通すことにより、白色光を実現でき色再現範囲の広い白色光スペクトルを達成できる。これらの白色光源は、薄型軽量で大面積光源に適用でき、白色照明や白色バックライト光源に応用できる。
【0024】
本発明の白色光源は、液晶ディスプレイ装置のバックライト光源に適する光源を提供できる。上記で説明したように、本発明で適用した無機蛍光体膜では、適切な大きさに粒成長させた粒子で構成された蛍光体膜により形成しており、励起光の透過率を適切に制御しながら励起効率を向上させ、励起光の大きな減衰がなく蛍光体の蛍光と混色させて白色光を得ることが可能である。垂直方向の輝度を評価することにより、有機発光素子の発光と無機蛍光体の蛍光を混色して白色光としても、光強度の低下は励起光の強度より多くとも20%以内であることが判明した。蛍光体の粒子サイズ,密度及び膜厚を適切に制御することにより、励起光の強度程度まで改善させることが可能である。
【0025】
本発明では、粒子状の蛍光体を適切なサイズに制御しているため、大幅な光学的減衰を抑制しながら、蛍光体を通した光を拡散させることが可能である。上記で述べたように、輝度の視角依存性を従来の有機発光素子に比べて改善でき、全ての角度において相対輝度を向上できている。低角度での相対輝度の向上は顕著である。また半減となる相対輝度の大きさは角度±75°まで確保できている。この光の拡散性向上は、液晶バックライト光源に用いたときに、通常光源の上部に設定する拡散フィルムが必要であるが、この拡散フィルムを除去しても十分な光拡散性を達成するように設定できる。このため、光学フィルムを簡略して薄型で低コストへの効果も期待できる。
【0026】
また本発明の白色有機発光素子をディスプレイ装置の画素サイズに適用すると、カラーフィルタとの組み合わせにより、有機発光ディスプレイ装置として機能させることが可能である。カラーフィルタを透過した後のスペクトルを評価すると、励起光である有機発光素子の青色光強度よりも、蛍光体膜の蛍光スペクトルがカバーする緑色波長域と赤色波長域のスペクトル強度が大きいスペクトルを得ることができる。このことは、励起甲である有機発光素子の発光強度や蛍光体膜の膜厚により、白色光の色度や色再現範囲を適切に設定できることを示す。白色光のスペクトルの制御や色度及び色再現範囲の調整を行うことにより、所望の白色光源や殻フィルタとの組み合わせによる有機発光ディスプレイ装置を構成することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0028】
本発明の一実施例を従来例と比較して以下に説明する。図1に示す従来技術の白色光源と図2に示す本実施例における白色光源の構成における違いを以下に述べる。
【0029】
従来技術による白色有機発光素子は、図1において、透明ガラス基板1の上に、LiF/AlNd電極2,電子輸送有機層3,赤色ドーパントを添加した有機発光層4,青色ドーパントを添加した有機発光層5,正孔輸送層6,正孔注入層7を形成し、インジウム亜鉛の酸化物であるIZO透明電極8を形成する。その後、封止シール剤9を用いて、封止ガラス板10により有機層を密閉して素子を形成する。
【0030】
本発明の白色有機発光素子は、図2において、透明ガラス基板1の上に、LiF/AlNd電極2,電子輸送有機層3,青色ドーパントを添加した有機発光層5,正孔輸送層6,正孔注入層7を形成し、インジウム亜鉛の酸化物であるIZO透明電極8を形成する。別に、有機発光素子の青色発光により光励起が可能であり、緑色から赤色のブロードな波長域の蛍光スペクトルを有する無機材料の蛍光体粒子を準備しておき、樹脂に分散した形で封止ガラス板10に塗布して焼成したものを用意しておく。この際構成する蛍光体粒子には、希土類イオンとしてCeイオンやEuイオンやYbイオン他にSmイオンなどを含有しており、母体材料としてはGdAlGaO酸化物やYGdAlGaO酸化物、その他窒化物材料などを用いることが挙げられる。その後、封止シール剤9を用いて、蛍光体膜11を塗布した封止ガラス板10をシールすることにより有機層を密閉して素子を形成する。この際、蛍光体膜11は透明電極8に接近して対向する形で設定されており、透明電極と接している形で設定されていてもよい。
【0031】
本実施例では、トップエミッション型の有機発光素子に適用しており、従来例のように青色及び赤色ドーパントの両方を有機発光ホスト層に添加導入するのではなく、励起光源として、青色ドーパントをホスト層に添加導入した青色有機発光素子を作製するだけでよい。青色有機発光素子を励起源として、粒子サイズを制御して形成した蛍光体膜を通し、蛍光スペクトルを測定評価すると、図3の結果に示したようになる。蛍光体膜を塗布していない、励起源の青色有機発光素子の発光スペクトルに対して、塗布した蛍光体膜を通して測定されるスペクトルでは緑色から赤色の広い波長域をカバーする蛍光スペクトルを観測できている。観測結果では、励起光である青色有機発光素子の発光ピークよりも、2倍近くの強い強度の蛍光スペクトルを得ることができており、励起効率が高いことを示唆する結果となっている。これにより、有機発光素子の青色発光により、無機材料の蛍光体膜を効率よく光励起でき、励起源である有機発光素子の青色光と蛍光体膜の緑色から赤色の波長域をカバーする蛍光を加えることにより、白色光とする光源を実現できることが判明した。また正面方向からの輝度を測定比較すると、図4に示す結果を得た。蛍光体膜を塗布していない青色有機発光素子の輝度電流特性に比較すると、正面での輝度はある程度低下しているものの、蛍光体膜を塗布した白色光を出射するようにした有機発光素子でも
15%以内の輝度低下に抑制できていることが明らかとなった。正面方向の輝度低下は、蛍光体の光吸収と粒子の光散乱によるためであるが、正面方向以外へ光拡散が生じるため高視角方向への輝度が相対的に向上していることが示唆される。相対輝度の視角依存性を調べた結果を図5に示す。高視角方向で相対輝度を評価すると、励起源の青色有機発光素子では、視角依存性が顕著であるのに対して、光拡散のある蛍光体膜を通した白色有機発光素子では、低視角範囲で輝度の低下が格段に小さく角度50−60°までは相対輝度の変化が低い結果が得られた。白色有機発光素子では、相対輝度が半減する角度が75°以上であることが判明した。この評価結果により、形成した蛍光体膜が有効な光拡散膜とすることができ、正面方向の輝度は多少低下するものの、視角方向での輝度が向上した分布を構成できる効果がある。
【0032】
本発明では、上記の構成に基づいて、蛍光体膜を光励起することにより白色光源となる有機発光素子を提供できる上に、かつ励起源の有機発光素子と比較しても効率を極端に低下させずに視角特性を向上させることが期待できる。
【実施例2】
【0033】
図6を用いて本発明の他実施例を以下に説明する。
【0034】
本実施例で述べる素子は、実施例1と同様に、トップエミッション型の有機発光素子に適用した場合を示す。
【0035】
本発明の白色有機発光素子は、図1と同様にして、従来技術による白色有機発光素子の構成として、図6における透明ガラス基板1の上に、LiF/AlNd電極2,電子輸送有機層3,赤色ドーパントを添加した有機発光層4,青色ドーパントを添加した有機発光層5,正孔輸送層6,正孔注入層7を形成し、インジウム亜鉛の酸化物である透明電極8を形成する。この従来技術による有機発光素子の青色発光により光励起が可能であり、緑色の波長域の蛍光スペクトルを有する蛍光体粒子を準備しておき、樹脂に分散した形で封止ガラス板10に塗布して焼成したものを用意しておく。この際、蛍光体粒子には、希土類イオンとして、CeイオンやEuイオンやYbイオン他にSmイオンなどが導入されており、母体材料としてはGdAlGaO酸化物やYGdAlGaO酸化物、その他窒化物材料などを用いることが挙げられる。その後、封止シール剤9を用いて、蛍光体膜11を塗布した封止ガラス板10をシールすることにより有機層を密閉して素子を形成する。この際、蛍光体膜11は透明電極8に接近して対向する形で設定されており、透明電極と接している形で設定されていてもよい。
【0036】
本実施例では、実施例1と同様な効果がある上に、赤色の波長域の蛍光スペクトル強度を増大できる効果がある。照明装置やバックライト光源の要求仕様により、赤色の波長域を強調した白色光源や緑色と赤色のバランスを調整した白色光源を実現できる効果がある。目標とする特性や色再現範囲によって、調節することにより使い分けができるので有効である。
【実施例3】
【0037】
図7を用いて本発明の他実施例を以下に説明する。
【0038】
本実施例で述べる素子は、実施例1及び2と同様に、トップエミッション型の有機発光素子に適用した場合を示す。図7に示すように、透明ガラス基板1の上に、LiF/AlNd電極2,電子輸送有機層3,青色ドーパントを添加した有機発光層5,正孔輸送層6,正孔注入層7を形成し、インジウム亜鉛の酸化物である透明電極8を形成する。別に、有機発光素子の青色発光により光励起が可能であり、緑色から赤色のブロードな波長域の蛍光スペクトルを有する蛍光体粒子を準備しておき、樹脂に分散した形で封止ガラス板10の上下両面に塗布して焼成したものを用意しておく。この際、蛍光体粒子には、希土類イオンとして、CeイオンやEuイオンやYbイオン他にSmイオンなどが導入されており、母体材料としてはGdAlGaO酸化物やYGdAlGaO酸化物、その他窒化物材料などを用いることが挙げられる。その後、封止シール剤9を用いて、蛍光体膜11を両面に塗布した封止ガラス板10をシールすることにより有機層を密閉して素子を形成する。この際、蛍光体膜11は透明電極8に接近して対向する形で設定されており、透明電極と接している形で設定されていてもよい。
【0039】
本実施例では、実施例1と同様な効果がある上に、膜厚を調節した蛍光体膜を封止ガラス基板の両面に形成しているので、蛍光体膜の励起効率を大きく低下させずに、封止基板から光が出射する際の光拡散の効果を増大させることができる。このため、液晶ディスプレイ装置におけるバックライト光源の構成に必要な拡散板や拡散フィルムを簡略化したり或いは除去することも可能となり、拡散板を用いたときと同程度の拡散効果を維持するために有効となる。蛍光体膜の粒子密度や膜厚を設計することにより、目標とするバックライト光源の光拡散性を調節するための有効な対策とすることが可能である。
【実施例4】
【0040】
図8を用いて本発明の他実施例を以下に説明する。
【0041】
本実施例で述べる素子は、実施例3と同様に、トップエミッション型の有機発光素子に適用した場合を示す。図8に示すように、透明ガラス基板1の上に、LiF/AlNd電極2,電子輸送有機層3,青色ドーパントを添加した有機発光層5,正孔輸送層6,正孔注入層7を形成し、インジウム亜鉛の酸化物である透明電極8を形成する。別に、有機発光素子の青色発光により光励起が可能であり、緑色から赤色のブロードな波長域の蛍光スペクトルを有する蛍光体粒子を準備しておき、樹脂に分散した形で封止ガラス板10の下面に塗布して焼成し、かつ上面に低屈折率の誘電体材料で低反射膜を塗布して焼成したものを形成する。この際、蛍光体粒子には、希土類イオンとして、CeイオンやEuイオンやYbイオン他にSmイオンなどが導入されており、母体材料としてはGdAlGaO酸化物やYGdAlGaO酸化物、その他窒化物材料などを用いることが挙げられる。その後、封止シール剤9を用いて、蛍光体膜11を下面に塗布し低反射膜12を上面に塗布した封止ガラス板10をシールすることにより有機層を密閉して素子を形成する。この際、蛍光体膜11は透明電極8に接近して対向する形で設定されており、透明電極と接している形で設定されていてもよい。
【0042】
本実施例では、実施例1と同様な効果がある上に、光を取り出す封止基板の上面を低反射膜で構成するので、上部からの反射光を有効活用することが可能である。液晶ディスプレイ装置におけるバックライト光源とその上部に設ける光学シートの構成において、プリズムシートから反射して光源側へ戻ってくる光を繰り返し蛍光体膜の励起光として役立てることができる。この際に、封止基板の上面に低反射膜を構成してあると、プリズムシートからの反射戻り光の強度を極端に減衰させずに、励起光として利用できるため有効となる。これにより、蛍光体膜の励起効率を改善でき、励起光源である有機発光素子の動作電力を低減することや、目標とするバックライト光源の色再現範囲などの調整に対する対策にすることも期待できる。
【実施例5】
【0043】
図9と図10を用いて本発明の他実施例を以下に説明する。
【0044】
本実施例では、小型液晶ディスプレイパネルのバックライト光源を構成する白色有機発光素子を提供する。
【0045】
まず、従来のバックライト光源の構成について、図9に一例を示す。このバックライト光源では、導光板13に対して、配線付き接着フィルム14上に白色発光ダイオード素子15を固定した構成である。白色発光ダイオード素子15から出射されたLED素子の発光線16は導光板13を通って、斜め方向に進行して、拡散フィルム17を通して拡散光とした後、正プリズムシート18へ導入されて、上方向の光強度を増大しながら、拡散フィルム17を通した後、偏光板19を両側に有し液晶層20からなる液晶パネルへと導かれる。
【0046】
これと比較して、本発明の有機発光素子の白色光源を用いると、図10に示すような構成となる。即ち、上記実施例に示したような本発明の白色光源21を用いると、光源から出射した有機発光素子の発光線22は主に垂直方向に進行し、直接正プリズムシート18へ導入されて、上方向の光強度を増大しながら、拡散フィルム17と通した後、偏光板
19を両側に有し液晶層20からなる液晶パネルへと導かれる。
【0047】
本実施例では、蛍光体膜から生成する拡散光を十分活用できるので、白色光源の上部に設ける拡散シートを除くことが可能となる。白色光源に有機発光素子を用いることにより、発光ダイオード素子よりも薄型軽量にできる上に、光学シートの拡散フィルムを簡略化できるので、液晶ディスプレイ装置の薄型化と低コスト化に貢献できる効果がある。
【実施例6】
【0048】
図11から図13を用いて本発明の他実施例を以下に説明する。
【0049】
本発明の有機発光素子による白色光源を用いて各画素を形成し、カラーフィルタと組み合わせることにより、有機発光ディスプレイ装置を構成できる。上記実施例の有機発光素子の白色光スペクトルをカラーフィルタに通すと、図11に示すようなスペクトルが得られる。青色の波長領域を比較的よく通す透過特性を有するカラーフィルタにおいて、青色波長域のピークより、緑色と赤色の波長域におけるピークの強度を大きくできる白色スペクトルが得られていることが判明した。本発明で適用した白色光源では、蛍光体膜の粒子密度や膜厚を制御することにより、各RGB色のバランスを調整することができる。
【0050】
またカラーフィルタとディスプレイ表示用のRGB画素に相当する領域を形成することにより、本発明の白色光源をベースに有機発光ディスプレイ装置が実現できる。図11に示すように、透明ガラス基板1の上に、薄膜トランジスタと回路24を形成し、LiF/AlNd電極2上に、バンク層25を設けて、青色画素に相当する有機発光素子26,緑色画素に相当する有機発光素子27,赤色画素に相当する有機発光素子28を形成した後に、封止シール剤9を用いて、蛍光体膜11を下面に塗布し低反射膜12を上面に塗布した封止ガラス板10をシールすることにより有機層を密閉して素子を形成する。この白色光源とカラーフィルタを組み合わせることにより、有機発光ディスプレイ装置を構成することができる。図13には、有機発光ディスプレイパネル29と回路配線30及び駆動電源31を示す。本発明の有機発光素子白色光源を適用すると、励起光源の有機発光素子の低消費電力を図り、白色光の色バランスをよく調節したディスプレイ装置を達成できる効果がある。
【0051】
本実施例により、携帯電話や情報端末機器及びディジタルカメラや大型テレビなどの表示装置に適用可能な有機発光ディスプレイパネルを提供することが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、照明及び液晶バックライトの白色光源装置や、有機発光素子や有機発光ディスプレイ表示装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来技術による白色有機発光素子の断面図。
【図2】本発明における青色有機発光素子と無機蛍光体塗布膜の構成断面図。
【図3】青色有機発光素子の発光により光励起した無機蛍光体塗布膜の蛍光スペクトルを測定した結果を示す図。
【図4】青色有機発光素子と無機蛍光体塗布膜を通して測定した輝度電流特性を比較した結果を示す図。
【図5】無機蛍光体塗布膜の有無により相対輝度の視角依存性を測定した結果を示す図。
【図6】本発明における青色,赤色有機発光素子と無機蛍光体塗布膜の構成断面図。
【図7】本発明における他実施例を示す図。
【図8】本発明における他実施例を示す図。
【図9】従来技術による無機LED発光ダイオード素子白色光源を用いた小型液晶ディスプレイ装置の断面を示す図。
【図10】本発明の有機発光素子及び無機蛍光体塗布膜による白色光源を用いた小型液晶ディスプレイ装置の断面を示す図。
【図11】本発明の有機発光素子及び無機蛍光体塗布膜による白色光源をカラーフィルタに通した後のスペクトルを示す図。
【図12】本発明の有機発光素子白色光源を用いたディスプレイ用画素の断面を示す図。
【図13】本発明の有機発光素子白色光源を用いた有機発光ディスプレイ表示装置。
【符号の説明】
【0054】
1…透明ガラス基板、2…LiF/AlNd電極、3…電子輸送有機層、4…赤色ドーパント添加有機発光層、5…青色ドーパント添加有機発光層、6…正孔輸送層、7…正孔注入層、8…透明電極、9…封止シール剤、10…封止ガラス板、11…蛍光体膜、12…低反射膜、13…導光板、14…配線付き接着フィルム、15…白色発光ダイオード素子、16…LED素子の発光線、17…拡散フィルム、18…正プリズムシート、19…偏光板、20…液晶層、21…白色光源、22…有機発光素子の発光線、23…上向き正プリズムシート、24…薄膜トランジスタ素子及び回路、25…バンク層、26…青色画素に相当する有機発光素子、27…緑色画素に相当する有機発光素子、28…赤色画素に相当する有機発光素子、29…有機発光ディスプレイパネル、30…回路配線、31…駆動電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる蛍光体膜とを有し、
前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極である発光素子。
【請求項2】
前記有機発光層は主として青色の波長域の光を出射し、
かつ前記蛍光体膜は前記青色の波長域の光を入射し、主として緑色及び赤色の波長域の光を出射することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記有機発光層は青色の波長域に発光のピークを有し、
かつ前記無機材料は緑色及び赤色の波長域に蛍光のピークを有することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記有機発光層から出射する光は青色光であり、
かつ前記蛍光体膜から出射する光は白色光であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記有機発光層は主として青色及び赤色の波長域の光を出射し、
かつ前記蛍光体膜は前記青色及び赤色の波長域の光を入射し、主として緑色の波長域の光を出射することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記有機発光層は青色の波長域及び赤色の波長域に発光のピークを有し、
かつ前記無機材料は緑色の波長域に蛍光のピークを有することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記有機発光層から出射する光は青色光及び赤色光であり、
かつ前記蛍光体膜から出射する光は白色光であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる一対の蛍光体膜と、封止ガラス基板とを有し、前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極であり、
前記一対の蛍光体膜は前記封止ガラス基板を介して対向して配置する発光素子。
【請求項9】
前記基板と、前記有機発光素子と、前記蛍光体膜はこの順に配置し、
前記有機発光素子及び前記蛍光体膜から出射した光は前記基板と反対側から取り出されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項10】
前記蛍光体膜は直径が0.2μm 以上20μm以下の蛍光体粒子により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記蛍光体膜は直径が0.4μm 以上8μm以下の蛍光体粒子により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項12】
基板と、該基板上に形成される有機発光素子と、無機材料からなる蛍光体膜とを有し、
前記有機発光素子は、第一の電極と、電子輸送層と、有機発光層と、正孔輸送層と、第二の電極とを有し、前記第一の電極及び前記第二の電極のうち、前記蛍光体膜に近い電極は透明電極である表示装置。
【請求項13】
カラーフィルタと、光源とを有し、
該光源は、請求項1に記載の発光素子からなることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
一対の液晶パネル用基板と、該一対の液晶パネル用基板の間に配置する液晶層及びカラーフィルタと、前記液晶層に光を供給する光源とを有し、
該光源は、請求項1に記載の発光素子からなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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