説明

発光素子搭載基板およびこの基板を用いた発光装置

【課題】光反射率が高く、かつ腐食による反射率の低下の少ない反射層を備え、光の取出し効率と熱放散性が向上された発光素子搭載用基板とその基板を用いた発光装置を提供する。
【解決手段】発光素子が搭載される搭載面を有する基板本体と、この基板本体の搭載面の一部に形成される銀を含む反射層と、この反射層上に形成されたガラスとセラミックスフィラーとで構成されるガラス質絶縁層とを有し、このガラス質絶縁層が300μmスパンにおいて5μm以下の表面うねりであることを特徴とする発光素子搭載用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子搭載用基板およびこれを用いた発光装置に係り、特に反射率の低下を防止できる発光素子搭載用基板およびこれを用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子(発光素子)の高輝度、白色化に伴い、照明、各種ディスプレイ、大型液晶テレビのバックライト等として発光素子を用いた発光装置が使用されている。発光素子を搭載する発光素子搭載用基板には、一般に素子から発せられる光を効率よく反射する高反射性が求められる。
【0003】
このため、従来より、発光素子から発光する光を可能な限り前方に反射させることを目的として、基板表面に反射層を施す試みがされている。このような反射層としては、高い反射率を有する銀反射層がある。
【0004】
しかし、銀は腐食しやすく、放置すると表面にAgSなど化合物が生成して光反射率が低下しやすい。その対策として銀の表面をシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂でコートする方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では樹脂中、あるいは銀反射層と樹脂の界面から水分や腐食性の気体が入り、経時的に銀反射層を腐食させてしまうため、長期信頼性を求められる製品への適用は困難であった。
【0005】
また、銀反射層の腐食を防止するため、銀の表面をガラス層でコートする方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この公報に記載されたガラス層は焼成時に結晶化するため、焼成時の基板の収縮とガラス層の収縮が大きく異なるため、焼成した基板に反りを生じ、製品に適用するには不充分であった。また、焼成時に銀反射層とガラス層が反応し、黄色から褐色に発色する、いわゆる銀発色の問題もあった。
【0006】
また、銀反射層を銀発色が小さいガラス膜でコートする方法が提案されている(特許文献3参照)。この場合、粉末ガラスをペースト状にし、基板上に形成された銀反射層上に塗布、乾燥し、基板と同時に焼成し、ガラス膜を得るが、良好な被覆性を得るには、焼成時に充分流動するガラスを使用することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−67116号公報
【特許文献2】特開2009−231440号公報
【特許文献3】WO2010/021367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、銀反射層の腐食を防止するために、ガラス層でコートすることが試みられている。しかし、発光素子の小型化や発光素子搭載基板の小型化に伴い、発光素子搭載基板に放熱対策が施されているにもかかわらず、放熱効率が低下する現象が確認されるようになった。
【0009】
この原因を検討したところ、発光素子搭載部近傍に素子接続端子が形成されたものが、特に放熱効果が低下していることが分かった。そして、素子接続端子が形成された発光素子搭載基板を分析したところ、銀反射層を保護するガラス層の端部が、他の部分よりも膜厚が厚くなっていた。すなわち、ガラス層表面にうねりが生じており、発光素子をガラス層上に載置したときに、発光素子とガラス層との間に隙間が生じ、この隙間を塞ぐように熱伝導率が小さい樹脂が充填され発光素子が固定されるため、熱伝導率が低下していることを突き止めた。
【0010】
上記した「ガラス層の端部」とは、ガラス層の外周の端部だけでなく、発光素子搭載面に形成されたガラス層の孔(素子接続端子等のために形成した孔)の周囲も含むものである。
【0011】
上記事情を考慮して、本発明は、発光素子搭載部の平坦性が高く、発光素子の熱放散性に優れる発光素子搭載用基板とその基板を用いた発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来、良好な被覆性を得るために焼成時でのガラスの流動性を改善することが追求されていた。しかし、流動性が改善されたことにより、ガラスの粘性抵抗よりも、表面張力の影響が大きくなり、ガラス層の被覆パターンの端部が、パターンの端部から内側の部分よりも膜厚が大きくなり、表面にうねりを生じることがわかった。
【0013】
このメカニズムから、本発明者は、まず、ガラス被覆層表面のうねりの抑制には、ガラス被覆層を構成するガラスの軟化点を上げ、焼成時のガラス粘度を上げる手段が有効ではあると考えた。しかし、ガラスの軟化点を上げると、銀を含む反射層との同時焼成が困難になったり、焼成時に流動しにくくなり、焼結不足となったりするマイナス面も生じることが考えられた。
【0014】
そこで、ガラス中にセラミックスフィラーを混合させガラス質絶縁層とすることで、表面うねりの抑制を検討したところ、混合するセラミックスフィラーとして微粒子を用いることでうねりを抑制でき、熱放散性にも優れるものが得られることを見出した。
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、発光素子搭載用基板において、発光素子が搭載される搭載面を有する基板本体と、この基板本体の搭載面の一部に形成される銀を含む反射層と、この反射層上に形成された、ガラスとセラミックスフィラーとで構成されるガラス質絶縁層とを有し、このガラス質絶縁層の端部から測定した最大うねりが5μm以下のものである。また、上記セラミックスフィラーが平均粒径(D50)2.5μm以下であり、この微粒子セラミックスフィラーをガラス質絶縁層中に40体積%以下含有するものである。
【0016】
さらに、発光装置としては、上記発光素子搭載基板と前記基板本体の搭載面に搭載される発光素子とを備えるものとした。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発光素子搭載用基板では、以下の効果を期待できる。
【0018】
ガラス質絶縁層を構成するガラスに微粒子のセラミックスフィラーを含有させたことにより、ガラス質絶縁層の表面のうねりが抑制される。これにより、発光素子とガラス質絶縁層との間隙が小さくなり、ガラス質絶縁層を通して、直下の銀反射層に熱を放散する効果を高めることができる。また、セラミックスフィラーが微粒子なため、光の散乱が非常に小さい。このため、反射層からの光が散乱されず直進性を持って放射できる。
【0019】
本発明の発光装置では、上記した発光素子搭載用基板を用いることにより、反射層の反射率が低下しにくいので、長期間発光効率の維持を期待できるとともに、熱放散性が優れることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に用いられる基板の断面図の一例である。
【図2】本発明に用いられる基板に発光素子を配置した断面図の一例である。
【図3】本発明の発光装置の断面図の一例である。
【図4】本発明の発光装置の基板に発光素子を配置した上面図および断面図の一例である。
【図5】表1の例1および例3の発光素子搭載面の一部の表面状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発光素子搭載用基板は、発光素子が搭載される搭載面を有する基板本体と、この基板本体の搭載面の一部に形成される銀を含む反射層と、この反射層上に形成された、ガラスとセラミックスフィラーとで構成されるガラス質絶縁層とを有し、このガラス質絶縁層の端部から測定した最大うねりが5μm以下の平坦性を有していることを特徴とする。さらに、このガラス質絶縁層が900℃以下で焼結でき、平均粒径2.5μm以下の微粒子セラミックスフィラーを40体積%以下含有することを特徴とする。
【0022】
ここで、上記した「ガラス質絶縁層の端部」とは、「ガラス層の端部」と同じ意味で、ガラス質絶縁層の外周の端部だけでなく、発光素子搭載面に形成されたガラス質絶縁層の孔(素子接続端子等のために形成した孔)の周囲も含むものである。
【0023】
基板本体は図1に示すように全体が平板状の部材や、図2に示すように発光素子搭載面が一段下の位置となるように凹部が形成された部材である。基板を構成する材質は特に限定されないが、ガラス質絶縁層に用いるガラスを焼き付けなければならないため無機材料が好ましい。熱伝導率や放熱性、強度、コストの観点からアルミナセラミックス、低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramic)(以下、LTCCという。)、窒化アルミニウムなどが挙げられる。LTCCの場合には、基板と反射層とこの反射層を被覆するガラス質絶縁層とを同時焼成によって形成することが可能である。また、LTCCの場合には、基板内に内部配線の形成も容易にできる。
【0024】
反射層には反射率の高さから銀が主として用いられるが、銀パラジウム混合物や銀白金混合物等の金属も使用できる。
【0025】
ガラス質絶縁層は下層の反射層を腐食(特に、銀の酸化や硫化など)などから保護するための層である。充分な被覆性と表面の平坦性を両立するため、ガラスとセラミックスフィラーを含むものとすることが好ましい。ガラス質絶縁層に含まれるガラスは900℃以下で焼結できる。このガラスはガラス質絶縁層を緻密にするための成分である。
【0026】
セラミックスフィラーは、シリカフィラー、アルミナフィラー、ジルコニアフィラー、チタニアフィラーから選ばれる少なくとも1種が使用できる。そして、粒径としては平均粒径D50(以下、単にD50と記載することもある)で2.5μm以下のものが使用できる。特にD50が0.5μm以下のものが好ましい。なお、本明細書においてD50は、レーザ回折法で測定した値をいう。
【0027】
ガラス質絶縁層中のセラミックスフィラーの含有量は、粒径により決めることができる。
【0028】
50で1〜2.5μmのときには、その含有量を10〜40体積%である。上限としては、35体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましい。下限としては、13体積%以上が好ましく、17体積%以上がより好ましい。
【0029】
50で1μm未満のときには、その含有量は1〜20体積%である。上限としては、15体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。下限としては、2体積%以上が好ましい。
【0030】
双方の上限を超えてセラミックスフィラーを含有させると、ガラス質絶縁層の流動性が悪化して、焼結不足が生じやすくなる。また、双方の下限に満たない場合には、最大うねりの改善効果が得られにくくなるおそれがある。
【0031】
ガラス質絶縁層の表面平坦性は、その端部から測定した最大うねりが5μm以下であることが好ましい。最大うねりが5μmを超えると、発光素子を搭載するときに発光素子と搭載面との間の間隙が広くなる部分が生じ、放熱性が悪化するおそれがある。好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。
【0032】
また、この最大うねりは、端部からの一定距離間で測定することが好ましい。その距離としては、少なくとも200μmであり、好ましくは300μm以上である。200μmよりも測定距離が短い場合には、うねりの傾斜面のみを測定し最大うねりを測定できないおそれがあるためである。さらに、図5に示すように、端部から測定して最大高さから上記一定距離を測定するようにしてもよい。このように、最大高さから最大うねりを測定することにより、ガラス質絶縁層の端部に隣接する部材(例えば、側壁や素子接続端子等)の有無に関係なく所望とする最大うねりの値を測定できる。例えば、図4に示す素子接続端子の周囲にあるガラス質絶縁層の端部から最大うねりを測定した場合(端部に隣接する部材がない状態)、測定される最大うねりは、端部(例えば、発光素子搭載面)から最大高さまでの距離となる可能性がある。すなわち、この値にはガラス質絶縁層の厚みも含まれるので、所望とする値を得るためには、ガラス質絶縁層の厚みを除く必要が生じる。
【0033】
前記ガラスは反射層と同時に焼成できるものが好ましく、反射層と同時に焼成したときに銀と反応し、オープンポアなど、欠陥を生じないものがさらに好ましい。すなわち反射層と同時に焼成する場合、使用される基板本体の材料に合わせて、ガラス質絶縁層は焼成温度が500〜900℃の範囲から選ばれる温度で焼結して、緻密化できるものである。
【0034】
反射層を被覆する形でガラス質絶縁層を焼成したとき、ガラス質絶縁層を構成するガラス中には銀イオンが拡散する。そして、ガラス組成や、その他、発光素子搭載用基板を構成する基板材料や、銀を含む金属材料、焼成の雰囲気や温度条件などによって、ガラス中に拡散した銀イオンが、ガラス質絶縁層上に封止のために充填されるシリコーン樹脂と反応し、高温高湿下において、茶色い変色を引き起こす場合がある。この変色を抑制するには、ガラス質絶縁層を構成するセラミックスフィラーとしてアルミナを含有させないことが有効である場合がある。
【0035】
発光素子としてはLED素子があげられる。より具体的には、放射した光で蛍光体を励起して可視光を発光させるものがあり、青色発光タイプのLED素子や紫外発光タイプのLED素子が例示される。ただし、これらに限定されるものではなく、蛍光体を励起して可視光を発光させることが可能な発光素子であれば、発光装置の用途や目的とする発光色等に応じて種々の発光素子を使用できる。
【0036】
本発明の発光装置には、蛍光体層が設けられることが好ましい。蛍光体は、発光素子から放射された光や、反射層から反射する光により励起されて可視光を発光し、この可視光と発光素子から放射される光との混色によって、あるいは蛍光体から発光される可視光または可視光自体の混色によって、発光装置として所望の発光色を得るものである。蛍光体の種類は特に限定されるものではなく、目的とする発光色や発光素子から放射される光等に応じて適宜に選択される。
【0037】
蛍光体層は、蛍光体をシリコーン樹脂やエポキシ樹脂のような透明樹脂に混合・分散させた層として形成される。蛍光体層は、発光素子の外側を覆うように形成できる(図3参照)が、直接発光素子を覆うように形成された被覆層の上に、別に蛍光体層を設けることも可能である。すなわち、蛍光体層は発光装置の発光素子が形成された側の最上層に形成されることが好ましい。
【0038】
本発明の発光装置は典型的には基板の表面に発光素子を電気的に接続する端子部を有し、当該端子部を除く領域がガラス質絶縁層で覆われているものである。この場合、発光素子の実装は、たとえば、発光素子を基板上にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂で接着(ダイボンド)するとともに、発光素子上面の電極を金線等のボンディングワイヤを介して基板のパッド部に接続する方法、あるいは、発光素子の裏面に設けられた半田バンプ、Auバンプ、Au−Sn共晶バンプ等のバンプ電極を、基板のリード端子やパッド部にフリップチップ接続する方法などにより行われる。
【0039】
前記基板本体は反射層とこれを保護するガラス質絶縁層を設けることができれば特に限定されないが、以下では基板本体がLTCC基板である場合について説明する。
【0040】
LTCC基板はガラス粉末とアルミナ粉末等の耐火物フィラーとの混合物を焼成して製造される基板であり、銀を含む反射層およびガラス質絶縁層と同時に焼成して製造することが可能な基板である。ここにおいて、「銀を含む反射層」とは、反射層が銀ペーストにより形成される場合、銀ペーストに含まれるペースト形成のための成分が、形成された反射層に残存して含まれても良いこと、あるいは銀の耐久性向上のための他の成分を含んでも良いことを意味する。銀を含む反射層とは、銀を90質量%以上含む反射層を意味し、銀合金を許容する。たとえば、パラジウムであれば10質量%まで、白金であれば3質量%まで含んでもよい。
【0041】
LTCC基板に使用するガラス粉末とアルミナ粉末等の耐火物フィラーは通常グリーンシート化して使用される。たとえば、まずガラス粉末とアルミナ粉末等をポリビニルブチラールやアクリル樹脂等の樹脂と、必要に応じてフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等の可塑剤等も添加して混合する。次に、トルエン、キシレン、ブタノール等の溶剤を添加してスラリーとし、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム上にドクターブレード法等によってこのスラリーをシート状に成形する。最後に、このシート状に成形されたものを乾燥して溶剤を除去しグリーンシートとする。これらグリーンシートには必要に応じて、銀ペーストを用いてスクリーン印刷等によって配線パターンやビアなどが形成される。
【0042】
LTCC基板を構成するガラス組成は、特に限定はされず、たとえばモル%表示で、SiOが60.4%、Bが15.6%、Alが6%、CaOが15%、KOが1%、NaOが2%である。
【0043】
LTCC基板の製造に用いられるガラス粉末は、溶融法によって得られたガラスを粉砕して製造される。粉砕の方法は本発明の目的を損なわないものであれば限定されず、乾式粉砕でもよいし湿式粉砕でもよい。湿式粉砕の場合には、溶媒として水を用いることが好ましい。また粉砕にはロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を適宜用いることができる。ガラスは粉砕後、必要に応じて乾燥され、分級される。
【0044】
アルミナ粉末の粒度や形状などは特に限定されないが、典型的には平均粒径D50が3〜5μm程度のものが用いられる。たとえば昭和電工社製のAL−45Hが挙げられる。ガラス粉末とアルミナ粉末の配合比率は典型的にはガラス粉末40質量%、アルミナ粉末60質量%である。
【0045】
前記グリーンシートは、焼成後必要に応じて所望の形状に加工されて基板とされる。この場合、被焼成体は1枚または複数枚のグリーンシートを重ねたものである。前記焼成は典型的には800〜900℃に20〜60分間保持して行われる。より典型的な焼成温度は850〜880℃である。
【0046】
次に、ガラス質絶縁層について説明する。
このガラス質絶縁層はガラスとセラミックスフィラーとを含む層であると好ましい。ここで使用するガラスの一例としては、酸化物基準のmol%表示で、SiOを20〜85%、Bを0〜40%、Alを0〜20%、MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を0〜50%、NaOおよびKOの少なくとも一方を0〜16%含有するものである。
【0047】
ガラス質絶縁層の厚みは典型的には5〜30μmである。5μm未満であると、被覆性が不充分になるおそれがあるため5μm以上であることが好ましい。30μm超では発光素子の放熱性を阻害し発光効率が低下してしまうおそれがある。
【0048】
ガラス質絶縁層は、たとえばガラスの粉末をペースト化してスクリーン印刷し、焼成して形成される。しかし、典型的には5〜30μmの厚みのものを平坦に形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0049】
本発明においてガラス質絶縁層中、体積%表示でガラスを60%以上含有することが好ましい。60%未満であると、焼成時の焼結が不充分となり、被覆性を損ねるおそれがある。焼結性を向上するために70%以上含有することがより好ましい。また、セラミックスフィラーを40%以下含有する。セラミックスフィラーの含有量は典型的には1%以上である。セラミックスフィラーを含有することにより、ガラス質絶縁層の表面うねりを低減することができ、放熱性を高くできる。
【0050】
前記セラミックスフィラーは焼成後のガラス質絶縁層の表面うねりを低減するため、微粒子であることが望ましく、D50が1.0μm以下、さらに望ましくは、0.5μm以下である。さらに0.1μm以下であると、セラミックスフィラーを僅かに含有するだけで、非常に平滑な表面を実現することができる。また、光の散乱が非常に小さいため、反射層からの光が散乱されず、直進性を持って放射されるという特徴を持たすこともできる。その材質は、反射率を損ねる吸収をもたらさないものであれば、限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を図4にて、説明する。なお本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
まず、発光素子搭載用基板の基板本体1を作製するためのグリーンシートを作製した。グリーンシートは、SiOが60.4mol%、Bが15.6mol%、Alが6mol%、CaOが15mol%、KOが1mol%、NaOが2mol%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕して基板本体用ガラス粉末を製造した。なお、粉砕時の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0053】
この基板本体用ガラス粉末が40質量%、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45H)が60質量%となるように配合し、混合することによりガラスセラミックス組成物を製造した。このガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)0.5gを配合し、混合してスラリーを調製した。
【0054】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させ、焼成後の厚さが0.15mmとなるグリーンシートを製造した。
【0055】
次に、反射層2は、銀ペーストを基板本体1上に塗布し、焼成することにより形成する。この銀ペーストは、銀粉末(大研化学工業社製、商品名:S400−2)、ビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比90:10の割合で配合し、固形分が87質量%となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにて3回分散を行って製造した。
【0056】
次に、ガラス質絶縁層3は、ガラス粉末とセラミックスフィラー粉末と混合したものをガラスペーストとし反射層2上に塗布し、焼成することにより形成する。このとき、基板本体1の発光素子搭載面側に形成した素子接続端子を完全に被覆しないように、ガラスペーストをパターン印刷した。このガラスペーストの調整に用いたガラス粉末は、以下のようにして製造した。まず、表1に記載のガラス組成のmol%になるように、原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分間溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより8〜60時間粉砕してガラス膜用ガラス粉末とした。このガラス粉末と表1に記載の割合でセラミックスフィラーを混合したものとを60質量%、樹脂成分(エチルセルロースとαテレピネオールとを質量比で85:15の割合で含有するもの)が40質量%となるように配合したものを、磁器乳鉢中で1時間混練し、さらに三本ロールにて3回分散を行うことによりガラスペーストを調製した。表1中の例1と例5は比較例であり例2〜4および6〜7は実施例である。
【0057】
そして、上記で得られたグリーンシートの表面に銀ペーストとガラスペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、反射面用グリーンシートを形成した。そして、両ペーストを塗布していないグリーンシートを反射面用グリーンシートのガラスペーストが上側、つまり最外層になるように重ね合わせた。そして、反射面用グリーンシートのガラスペースト側に側壁となる発光素子搭載面用の孔が形成されたグリーンシートをさらに重ね合わせて熱圧着することにより一体化して未焼成発光素子搭載用基板とした。その後、550℃で5時間保持して脱脂を行い、さらに870℃で30分間保持して焼成を行って発光素子搭載用基板を製造した。
【0058】
ガラス質絶縁層3表面は、触針式の表面粗さ・輪郭形状測定装置(東京精密製サーフコム)にて、表面形状を測定した。表1に記載した例1および例3の最大うねりを測定したものを図5に示す。(a)が例1の測定結果を示す図であり、(b)が例3の測定結果を示す図である。この最大うねりは、図4の平面図で示された右側の素子接続端子の発光素子側端部から発光素子に向かって測定されたものであり、測定距離は最大高さから300μmまでの長さである。
【0059】
上記で作製した試験用の発光素子搭載用基板に2個の2ワイヤタイプの発光ダイオード素子を、絶縁性保護層の搭載面上の一対の素子接続端子の間に搭載して発光装置を作製した。具体的には、発光ダイオード素子(昭和電工社製、商品名:GQ2CR460Z)をダイボンド材(信越化学工業社製、商品名:KER−3000−M2)により上記の位置に固定し、2個の発光素子が有する一対の電極のうちの外側の一方と、各発光素子の外側に位置する素子接続端子とをそれぞれボンディングワイヤを介して電気的に接続した。さらに、2個の発光素子が有する一対の電極のうちの内側の一方どうしをボンディングワイヤを介して電気的に接続した。
【0060】
さらに封止剤(信越化学工業社製、商品名:SCR−1016A)を用いて図に示す封止層を構成するように封止した。封止剤には蛍光体(化成オプトニクス社製、商品名P46−Y3)を封止剤に対して20質量%含有したものを用いた。
【0061】
<評価>
表1に示した例1〜7で得られた発光装置について以下の方法で熱抵抗を測定した。
【0062】
[熱抵抗]
発光装置における発光素子搭載用基板の熱抵抗を、熱抵抗測定器(嶺光音電機社製、商品名:TH−2167)を用いて測定した。なお、印加電流は35mAとし、電圧降下が飽和する時間まで通電し、降下した電圧と発光素子の温度−電圧降下特性から導かれる温度係数によって飽和温度を算出し、熱抵抗を求めた。
【0063】
結果を表1に示す。なお、結果はセラミックスフィラーが含まれていないガラス層を形成した従来の発光装置における熱抵抗を100%としたときの百分率で示した。数値が小さい場合、熱放散性が良好であり、数値の大きな場合、熱放散性が悪いことを意味する。
【0064】
作成した発光装置に所定の電流を給電し、定常になった時点での発光素子部の温度を測定することにより、熱放散性を評価した。その結果を表1に記載する。最大うねりが5μm以下の平坦性であるものは、熱抵抗が約80%以下であり、熱放散性が高いことを確認した。
【0065】
さらに、得られる発光装置の全光束については、長期間使用しても銀発色による低下は見られない。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
携帯電話や液晶TV等のバックライトに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1:LTCC基板
2:導体層(反射層)
3:ガラス質絶縁層
4:ビア導体
5:封止樹脂(蛍光体層)
6:発光素子
7:ボンディングワイヤ
8:金メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が搭載される搭載面を有する基板本体と、この基板本体の搭載面の一部に形成される銀を含む反射層と、この反射層上に形成されたガラスとセラミックスフィラーとで構成されるガラス質絶縁層とを有し、このガラス質絶縁層の端部から測定した最大うねりが5μm以下であることを特徴とする発光素子搭載用基板。
【請求項2】
前記最大うねりが、前記ガラス質絶縁層の端部から300μmまでの距離でのものであることを特徴とする請求項1記載の発光素子搭載用基板。
【請求項3】
前記ガラス質絶縁層が、平均粒径2.5μm以下のセラミックスフィラーを40体積%以下含有する請求項1または2記載の発光素子搭載用基板。
【請求項4】
前記基板本体上に前記発光素子用の端子部が形成され、この端子部を除く領域に前記ガラス質絶縁層が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項5】
前記搭載面が前記基板本体に形成された凹部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子搭載用基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光素子搭載用基板の前記ガラス質絶縁層上に発光素子が搭載され、前記発光素子を覆うように形成される蛍光体層を有する発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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