説明

発光表示パネルの製造システム及び発光表示パネルの製造方法

【課題】 可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得易くする発光表示パネルの製造システム及び発光表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】 発光領域と非発光領域とを有し、これら発光領域と非発光領域との組合せにより所定のパターンを表示する発光表示パネルの製造システムであって、片面に透明導電層が形成されている長尺の透明基材100a上に所定パターンの補助電極を形成する補助電極形成セクションS2と、前記透明導電層上に所定パターンの電気絶縁層を形成する絶縁層形成セクションS3と、前記発光領域に対応する領域の透明導電層を覆うようにして有機発光部を形成する有機発光部形成セクションS4と、前記長尺の透明基材を、少なくとも補助電極形成セクションS2から有機発光部形成セクションS4に亘って架け渡した状態で移送する移送手段TMとを有するようにして、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンを表示する発光表示パネルの製造システム、及び発光表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の1つとして知られる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)は、今日、可撓性の高いフラットパネルディスプレイの画素として、あるいはペーパーライクな面光源として、その実用化が進められている。また、例えば特許文献1に記載されているように、大面積の有機EL素子内に所定のパターンで電気絶縁層を形成し、この有機EL素子に通電したときに生じる発光領域と非発光領域との組合せによって、広告や宣伝のための文字、図形、記号等を表示するペーパーライクな発光表示パネルも開発されている。さらに、特許文献2に記載されているように、特許文献1に記載された発光表示パネルの外表面に絵柄等が印刷された印刷物を貼り合わせた構造の発光表示パネルも開発されている。
【0003】
有機EL素子は、透明電極、有機発光部、及び背面電極がこの順番で透明基材上に順次積層された構成を基本的な層構成とする発光素子であり、酸素や水分の侵入によって有機発光部が劣化してしまうのを防止するために、多くの場合、透明電極と透明基材との間、及び背面電極の外側にガスバリア層が設けられる。今日では、有機発光部を印刷法によって形成することを可能にする原材料が開発されており、例えば特許文献2には、上記の発光表示パネルにおける有機発光部の各層を印刷法により形成して、当該発光表示パネルの中間品を連続的に製造することができる製造ラインが記載されている。有機EL素子における有機発光部の各層を印刷法により形成すると、真空環境下で真空蒸着法やスパッタリング法等によって各層を形成する場合に比べて製造コストを抑えることができる。
【0004】
可撓性が高い有機EL素子を作製する場合には、通常、上記の透明基材として透明樹脂フィルム又は透明樹脂シートが用いられるが、透明樹脂フィルム又は透明樹脂シートからなる透明基材は通常その耐熱性が比較的低いことから、形成可能な透明電極の導電性も比較的低くなり、特に大面積の有機EL素子では、結果として透明電極への印加電圧が高くなる。そして、透明基材として透明樹脂フィルム又は透明樹脂シートを用いた有機EL素子の透明電極に高電圧を印加すると、通電に伴う発熱によって有機発光部が劣化したり、透明基材が変形したり、透明基材が燃え出したりするおそれがある。このような不具合を防止するために、例えば特許文献3に記載された発光素子では、透明電極上に複数の金属バスライン電極を所定の間隔で設けることにより発光時の発熱を抑えている。
【特許文献1】特開2004−111158号公報(特許請求の範囲、第0006〜0008段、図4、及び図5参照。)
【特許文献2】特開2004−185951号公報(特許請求の範囲、第0012段、及び図1参照。)
【特許文献3】特開2003−133080号公報(特許請求の範囲及び図2参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載されている発光素子のように、透明電極上に複数の金属バスライン電極を設けることは、有機EL素子の発光時の発熱を抑えるためには有用である。しかしながら、金属バスライン電極の光反射率は比較的高く、例えば発光領域内に金属バスライン電極を設けると、その金属バスライン電極で反射した外光が視認され易くなる。金属バスライン電極による外光の反射は、例えば特許文献1又は2に記載されている発光表示パネルのように、広告や宣伝等のための文字、図形、記号等を表示する発光表示パネルにおいては画質の低下、ひいては訴求効果の低下につながるため、できるだけ抑制することが望まれる。
【0006】
金属バスライン電極の線幅を狭くすれば、当該金属バスライン電極で反射した外光が視認されるのを抑制することが可能になるが、金属バスライン電極の線幅を狭くすればするほど当該金属バスライン電極の電気抵抗が高くなるので、有機EL素子の発光時の発熱を抑え難くなるという難点がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストで製造することができる発光表示パネルの製造システム、及び発光表示パネルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の発光表示パネルの製造システムは、発光領域と非発光領域とを有し、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘るようにして透明基材の片面上に透明電極が形成され、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に電気絶縁層が形成され、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に有機発光部が形成され、該有機発光部上に背面電極が形成されている発光表示パネルの製造システムであって、片面に透明導電層が形成されている長尺の透明基材に、前記透明導電層上に位置するようにして、かつ個々の発光表示パネルにおける前記非発光領域内に位置するようにして補助電極を形成することができる補助電極形成セクションと、前記透明導電層上に、該透明導電層のうちの前記発光領域に対応する領域は覆わず、かつ前記補助電極は覆うようにして電気絶縁層を形成することができる絶縁層形成セクションと、少なくとも前記発光領域に対応する領域の透明導電層を覆うようにして、印刷法により有機発光部を形成することができる有機発光部形成セクションと、少なくとも前記補助電極形成セクションから前記有機発光部形成セクションに亘って前記長尺の透明基材を架け渡した状態で、該長尺の透明基材を前記補助電極形成セクション側から前記有機発光部形成セクション側へ移送することができる移送手段と、を有していることを特徴とする(以下、この製造システムを「製造システムI」ということがある。)。
【0009】
この製造システムIを利用して製造される発光表示パネルでは、透明電極、補助電極、有機発光部、及び背面電極によって有機EL素子が構成される。上記長尺の透明基材として、長尺の透明フィルム又は透明シートを用いることにより、可撓性の高い発光表示パネルを得易くなる。そして、本発明の発光表示パネルの製造システムIを用いれば、上記の発光表示パネルを作製するために必要な構成部材のうちの透明電極、補助電極、電気絶縁層、及び有機発光部からなる積層物を多数、長尺の透明基材上に間欠的又は連続的に形成することが可能になるので、可撓性の高い発光表示パネルを高い生産性の下に得易くなる。
【0010】
また、透明電極上に補助電極が形成されるので、当該補助電極と透明電極とを併せた電極全体の導電性を高めることができ、結果として、発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを得ることができる。そして、この発光表示パネルでは発光領域内に補助電極が分布していないので、補助電極での外光の反射に起因する画質の低下を容易に抑制することができる。
【0011】
これらの理由から、本発明の発光表示パネルの製造システムIによれば、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得易くなる。
【0012】
本発明の発光表示パネルの製造システムIにおいては、(1)前記有機発光部形成セクションが、正孔輸送層の材料を印刷機により塗工して正孔輸送層を形成することができる正孔輸送層形成部を含み、該正孔輸送層形成部を構成している前記印刷機において前記正孔輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されている(以下、この製造システムを「製造システムII」ということがある。)こと、が好ましい。
【0013】
有機EL素子の発光効率を高めるためには、その層構成を、陽極と有機発光材料層との間に正孔輸送層が介在した構成とすることが望ましいが、印刷法によって正孔輸送層を形成するために使用される導電性高分子溶液の中には、強酸性のものもある。本発明の発光表示パネルの製造システムIIでは、有機発光部形成セクションが上記の正孔輸送層形成部を含み、かつ、この正孔輸送層形成部を構成している印刷機において正孔輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されているので、強酸性の導電性高分子溶液を用いて正孔輸送層を形成する場合でも、腐食に起因する有機発光部形成セクションの劣化を抑えることができる。したがって、本発明の発光表示パネルの製造システムIIによれば、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得ることが更に容易になる。
【0014】
本発明の発光表示パネルの製造システムI,IIのいずれにおいても、(2)前記有機発光部形成セクションが、電子輸送層の材料を印刷機により塗工して電子輸送層を形成することができる電子輸送層形成部を含み、該電子輸送層形成部を構成している前記印刷機において前記電子輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されている(以下、この製造システムを「製造システムIII」 ということがある。)こと、が好ましい。
【0015】
有機EL素子の発光効率を高めるためには、その層構成を、陰極と有機発光材料層との間に電子輸送層が介在した構成とすることが望ましいが、印刷法によって電子輸送層を形成するために使用される導電性高分子溶液の中には、強酸性のものもある。本発明の発光表示パネルの製造システムIII では、有機発光部形成セクションが上記の電子輸送層形成部を含み、かつ、この電子輸送層形成部を構成している印刷機において電子輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されているので、強酸性の導電性高分子溶液を用いて電子輸送層を形成する場合でも、腐食に起因する有機発光部形成セクションの劣化を抑えることができる。したがって、本発明の発光表示パネルの製造システムIII によれば、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得ることが更に容易になる。
【0016】
本発明の発光表示パネルの製造システムI〜III のいずれにおいても、(3)長尺の透明基材上に透明導電層を形成することができる導電層形成セクションを更に有し、該導電層形成セクションが、前記補助電極形成セクションよりも前記移送手段での上流側に配置されており、前記移送手段が、少なくとも前記導電層形成セクションから前記有機発光部形成セクションに亘って前記長尺の透明基材を架け渡した状態で、該長尺の透明基材を前記導電層形成セクション側から前記有機発光部形成セクション側へ移送することができる(以下、この製造システムを「製造システムIV」ということがある。)こと、とすることができる。
【0017】
今日では、透明樹脂のみからなる透明樹脂フィルム又は透明樹脂シート、片面に透明導電層が形成されている透明樹脂フィルム又は透明樹脂シート、片面にガスバリア層が形成されている透明樹脂フィルム又は透明樹脂シート、片面にガスバリア層を介して透明導電層が形成されている透明樹脂フィルム又は透明樹脂シート等、種々の形態の透明基材が開発されている。
【0018】
本発明の発光表示パネルの製造システムIVでは、この製造システムIVが上記の導電層形成セクションを備えているので、透明導電層を有してない長尺の透明基材を用いても、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得ることが容易になる。
【0019】
上記の目的を達成する本発明の発光表示パネルの製造方法は、発光領域と非発光領域とを有し、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘るようにして透明基材の片面上に透明電極が形成され、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に電気絶縁層が形成され、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に有機発光部が形成され、該有機発光部上に背面電極が形成されている発光表示パネルの製造方法であって、片面に透明導電層が形成されている長尺の透明基材に、前記透明導電層上に位置するようにして、かつ個々の発光表示パネルにおける前記非発光領域内に位置するようにして補助電極を形成する工程と、前記透明導電層上に、該透明導電層のうちの前記発光領域に対応する領域は覆わず、かつ前記補助電極は覆うようにして電気絶縁層を形成する工程と、少なくとも前記発光領域に対応する領域の透明導電層を覆うようにして、印刷法により有機発光部を形成する工程とを有し、少なくとも前記補助電極を形成する工程から前記有機発光部を形成する工程に亘って前記長尺の透明基材が連続して移送されることにより、前記補助電極、電気絶縁層及び有機発光部がインラインで形成されることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、少なくとも補助電極を形成する工程から有機発光部を形成する工程に亘って長尺の透明基材が連続して移送されることにより、補助電極、電気絶縁層及び有機発光部がインラインで形成されるので、発光表示パネルの生産性を高めることができると共に、巻き取り回数を減らすことができるので、可撓性基材上に積層された各層に対するダメージを小さくすることができるという利点がある。
【0021】
本発明の発光表示パネルの製造方法においては、前記有機発光部を形成する工程が、正孔輸送層を形成する工程と、有機発光材料層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程とをこの順に含むように構成することができる。この発明によれば、正孔輸送層、有機発光材料層及び電子輸送層を、インラインで順次形成することができるので、枚葉でオフラインで形成する場合よりも効率的に各層を積層できる。その結果、形成雰囲気の影響を緩和することも可能となる。
【0022】
本発明の発光表示パネルの製造方法においては、前記補助電極を形成する工程前に、透明基材上に透明導電層を形成する工程を有するように構成することができる。この発明によれば、透明導電層もインラインにより形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の発光表示パネルの製造システムによれば、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得易くなるので、訴求効果が高い宣伝用発光表示パネル、訴求効果が高い電飾用発光表示パネル、高品位の装飾用発光表示パネル等、種々の用途の発光表示パネルを提供し易くなる。
【0024】
また、本発明の発光表示パネルの製造方法によれば、少なくとも補助電極、電気絶縁層及び有機発光部がインラインで形成されるので、発光表示パネルの生産性を高めることができると共に、巻き取り回数を減らすことができる。その結果、可撓性基材上に積層された各層に対するダメージを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の発光表示パネルの製造システム及び発光表示パネルの製造方法について説明する。以下においては、発光表示パネルの製造システムの各セクションの機能を理解し易くするために、先ず、本発明の発光表示パネルの製造システムを利用して製造することができる発光表示パネルの構成について図1及び図2を参照して説明し、その後に、図1又は図2で用いた参照符号を適宜引用して本発明の発光表示パネルの製造システムの形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の発光表示パネルの製造システムを利用して製造することができる発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。例示した発光表示パネル20は、8つの発光領域R 〜R と6つの非発光領域NR 〜NR との組合せにより、「ABC」という文字列と「あいう」という文字列とを上下2段に分けて表示する。なお、図1においては、発光領域R 〜R と非発光領域NR 〜NR とを区別し易くするために、各非発光領域NR 〜NR にスマッジングを付してある。同図中の参照符号7a、7bは、後述する補助電極を示している。
【0027】
図2は、図1に示したII−II線断面の概略図である。同図に示すように、発光表示パネル20では、透明基材1の片面にガスバリア層3を介して透明電極5が形成されている。透明電極5上には、非発光領域NR (図1参照)内に位置するようにして補助電極7a、7bが形成され、透明電極5のうちの非発光領域NR 〜NR (図1参照)に対応する各領域上には、電気絶縁層が1つずつ形成されている。図2においては、3つの電気絶縁層9a、9c、9dが現れている。補助電極7a、7bは、電気絶縁層9aにより覆われている。以下、発光表示パネル20に設けられている電気絶縁層を総称する際には「電気絶縁層9」と表記する。
【0028】
電気絶縁層9上及び当該電気絶縁層9によって覆われずに露出している透明電極5上には有機発光部11が形成され、有機発光部11上には第1背面電極13aと第2背面電極13bとがこの順番で形成されて2層構造の背面電極13を構成している。さらに、背面電極13の露出面及び有機発光部11の露出面を覆うようにして、封止層15が形成されている。この封止層15は、可撓性を有する基材15a上にガスバリア層15bが設けられ、このガスバリア層15b上に接合剤層15cが設けられた積層構造を有しており、接合剤層15cを内側にして配置されている。
【0029】
<製造システム(第1形態)>
図3は、本発明の発光表示パネルの製造システムの一例を示す概略図である。同図に示す発光表示パネルの製造システム200は、導電層形成セクションS1と、補助電極形成セクションS2と、絶縁層形成セクションS3と、有機発光部形成セクションS4と、長尺の透明基材の移送手段TMとを有するものである。移送手段TMは、供給装置(図示せず。)、巻き取り装置(図示せず)、及び供給装置と巻き取り装置とを繋ぐ移送路とを有しており、ロールに成形された長尺の透明基材を供給装置に装着してその一端を巻き取り装置まで架け渡し、当該巻き取り装置により順次巻き取ることによって長尺の透明基材を移送する。導電層形成セクションS1と、補助電極形成セクションS2、絶縁層形成セクションS3、及び有機発光部形成セクションS4は、上記の供給装置側から巻き取り装置側にかけて、この順番で移送路中に配置されている。
【0030】
この製造システム200を利用して発光表示パネル20を量産しようとする場合には、ガスバリア層3(図2参照)の元となる大形のガスバリア層(図2に示したガスバリア層3と区別するために、以下、「ガスバリア層3a」と表記する。)が片面に形成された長尺の透明基材のロール100(以下、「ベースフィルムロール100」という。)を、移送手段TMの供給装置に装着する。そして、ベースフィルムロール100から長尺の透明基材(以下、「ベースフィルム100a」という。)の一端を引き出して巻き取り装置にまで架け渡し、巻き取り装置により当該ベースフィルム100aを順次巻き取ってロール170にすることにより、ベースフィルム100aを移送する。ベースフィルム100aを移送する過程で、当該ベースフィルム100a上に透明導電層、補助電極、電気絶縁層、及び有機発光部をこの順番で順次形成する。図3中の実線の矢印は、ベースフィルム100aの移送方向を示しており、破線の矢印は、ロール又は部材の回転方向を示している。
【0031】
上記のベースフィルム100aとしては、長尺のフィルム又はシートに成形された透明樹脂の片面にガスバリア層3aが設けられたものや、厚さが100μm程度以下の長尺の透明ガラスシートの片面にガスバリア層3aが設けられたものを用いることができる。上記の透明ガラスシートの片面には、当該透明ガラスシートを機械的に保護する保護プラスチック層が設けられていてもよい。
【0032】
長尺のフィルム又はシートに成形された透明樹脂の片面にガスバリア層3aが設けられたものを長尺の透明基材として用いる場合、上記の透明樹脂としては、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等を用いることができる。透明樹脂は、フィルム又はシートに成形した状態下でも耐溶媒性、耐熱性、耐光性、及びガスバリア性(水蒸気及び酸素に対するバリア性を意味する。)に優れているものが特に好ましい。
【0033】
ガスバリア層3aを除いたベースフィルム100aの膜厚が50μm程度未満では、発光表示パネル20の製造過程で中間製品に変形又は破損が生じ易くなる。ベースフィルム100aの膜厚の上限値は、得ようとする発光表示パネル20の用途や、当該発光表示パネル20に求められる可撓性等に応じて、適宜選定可能である。
【0034】
ガスバリア層3aは、前述のように発光表示パネル20でのガスバリア層3(図2参照)の元となるものであり、発光表示パネル20でのガスバリア層3は、酸素や水分が透明基材1を透過して有機発光部11に侵入するのを防止するための層である。このようなガスバリア層3の元となるガスバリア層3aは、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、及び酸化カリウム等の無機酸化物や、窒化ケイ素等の無機窒化物、あるいは酸窒化ケイ素等の酸窒化物により形成される。
【0035】
ベースフィルム100aにおけるガスバリア層3aは、1つの発光表示パネル20でのガスバリア層3の形状及び大きさに対応した形状及び大きさを有するものが間欠的に形成されていてもよいし、多数の発光表示パネル20に対応する大形のものが1つのみ形成されていてもよい。ガスバリア層3aの膜厚は、発光表示パネル20のガスバリア層3としたときに当該発光表示パネル20の可撓性を良好に保ちつつ有機発光部11への酸素や水分の侵入を防止するという観点から、0.01〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。このようなガスバリア層3aは、例えば物理的気相蒸着法(PVD)により形成することができる。
【0036】
以下、図3に示した導電層形成セクションS1、補助電極形成セクションS2、絶縁層形成セクションS3、及び有機発光部形成セクションS4それぞれについて、セクション毎に詳述する。
【0037】
(1)導電層形成セクション;
導電層形成セクションS1は、ベースフィルム100aの所定の面上、すなわちガスバリア層3a(図示せず。)が形成されている側の面上に、透明電極5(図2参照)となる透明導電層を順次形成するセクションである。図示の例では、版胴102aと、圧胴102bと、版胴102aにインキ壺104から導電性インキ又は導電性ペーストを供給するフィードロール106と、第1加熱装置108とを備えたグラビア印刷機110によって、導電層形成セクションS1が構成されている。版胴102aにより塗工された導電性インキ又は導電性ペーストが第1加熱装置108により加熱されて固化又は焼結し、透明導電層となる。
【0038】
この導電層形成セクションS1では、個々の発光表示パネル20での透明電極5の形状及び大きさに対応した形状及び大きさを有する透明導電層が間欠的に、又は、多数の発光表示パネル20に対応する大形の透明導電層がその端から順次、形成される。形成可能な透明導電層の具体例としては、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、金又はポリアニリン等の薄膜電極材料を挙げることができる。中でも、透明酸化物である酸化インジウム錫(ITO)と酸化インジウム亜鉛(IZO)が好ましく用いられる。透明導電層の膜厚は、その材質に応じて、0.005〜0.5μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
【0039】
透明導電層の材料として、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等の強酸性材料を用いる場合には、グラビア印刷機110において強酸性材料と接する面を、強酸に対する耐食性材料、例えば金、銀、白金等により形成することが好ましい。このとき、強酸性材料と接する部材全体を耐食性材料によって形成することも可能であるが、所定箇所に耐食性材料の被膜を形成した方が経済的である。
【0040】
(2)補助電極形成セクション;
補助電極形成セクションS2は、導電層形成セクションS1で形成した透明導電層上に、個々の発光表示パネル20での非発光領域NR (図1参照)内に位置するようにして補助電極7a、7bを形成するセクションである。図示の例では、スクリーン印刷機120と第2加熱装置125とによって補助電極形成セクションS2が構成されている。スクリーン印刷機120は、テーブル120aと、シリンダー状のスクリーン版120bと、スクリーン版120b内に配置されたスキージ120cとを備えており、このスクリーン印刷機120により塗工された導電性インキ又は導電性ペーストが第2加熱装置125により加熱されて固化又は焼結し、補助電極7a、7bとなる。
【0041】
補助電極形成セクションS2では、個々の発光表示パネル20に対応する補助電極7a、7bが順次形成される。形成しようとする補助電極の形状によっては、多数の発光表示パネル20に対応する大形の補助電極をその端から順次形成することも可能である。形成可能な補助電極の具体例としては、Cu、Al、Au、導電性ペースト(例えば銀ペースト)、Cr、Ag等のような低抵抗材料が挙げられる。
【0042】
補助電極7a、7bの膜厚及び線幅は、発光表示パネル20での補助電極7a、7bと透明電極5(図2参照)とを併せた体積抵抗率が1×10−6〜1×10−4Ω・cm程度の範囲内となるように、透明電極5の電気的特性、透明電極5の大きさ、並びに補助電極7a、7bの材料及び当該補助電極7a、7bの形状に応じて適宜選定することが好ましい。ただし、補助電極7a、7bの膜厚を選定するにあたっては、後述する電気絶縁層によって当該補助電極全体を覆うことができるように、電気絶縁層の膜厚も考慮する。
【0043】
(3)絶縁層形成セクション;
絶縁層形成セクションS3は、個々の発光表示パネル20に対応する透明導電層のうちの発光領域R 〜R (図1参照)に対応する領域は覆わずに露出させ、かつ補助電極形成セクションS2で形成した補助電極は覆うようにして、透明導電層上に電気絶縁層を形成するセクションである。図示の例では、ロールコータ130と、第1滞留装置133と、露光・現像装置135と、第2滞留装置137とによって、絶縁層形成セクションS3が構成されている。
【0044】
ロールコータ130は、1対のロール130a、130bと、ロール130aに光硬化性樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂組成物を含む。)又は電子線硬化性樹脂組成物を供給することができるフィードロール130cとを備えており、このロールコータ130により形成された上記の樹脂組成物の層が露光・現像装置135によりパターニングされて、所定パターンの電気絶縁層となる。露光・現像装置135は、フォトリソグラフィー法又は電子線リソグラフィー法により上記のパターニングを行い、更にポストベークを行う。発光表示パネル20の製造過程で当該発光表示パネル20に変形が生じるのを抑制するためには、ベースフィルム100aを構成している透明樹脂又は透明ガラスと電気絶縁層との熱膨張係数をできるだけ近似させることが好ましい。
【0045】
第1滞留装置133は、ロールコータ130と露光・現像装置135との処理速度の相違を吸収して製造システム200での生産速度調整に寄与し、第2滞留装置137は、露光・現像装置135と後述する有機発光部形成セクションS4との処理速度の相違を吸収して製造システム200での生産速度調整に寄与する。なお、第2滞留装置137は、有機発光部形成セクションS4の構成部材とすることもできるし、どのセクションにも属さない独立した構成要素とみなすこともできる。
【0046】
絶縁層形成セクションS3では、個々の発光表示パネル20での電気絶縁層9(図2参照。ただし、図2においては3つの電気絶縁層9a、9c、9dのみが現れている。)の形状及び大きさに対応した形状及び大きさを有する所定パターンの電気絶縁層を間欠的に形成することもできるし、多数の発光表示パネル20に対応する所定パターンの大形の電気絶縁層をその端から順次形成することもできる。電気絶縁層の膜厚は、発光表示パネル20において透明電極5と背面電極13とを局所的に絶縁し、かつ、補助電極7a、7bと背面電極13とを絶縁することができるように、電気絶縁層の材料、補助電極7a、7bの膜厚、発光表示パネル20の駆動電圧等に応じて0.5〜7.0μm程度の範囲内で適宜選定可能である。
【0047】
(4)有機発光部形成セクション;
有機発光部形成セクションS4は、少なくとも個々の発光表示パネル20に対応する透明導電層のうちの発光領域R 〜R (図1参照)に対応する領域を覆うようにして、正孔輸送層、有機発光材料層、及び電子輸送層からなる有機発光部を形成するセクションである。図示の例では、正孔輸送層を形成する正孔輸送層形成部145と、有機発光材料層を形成する有機発光材料層形成部155と、電子輸送層を形成する電子輸送層形成部165とによって有機発光部形成セクションS4が構成されている。
【0048】
正孔輸送層形成部145は、版胴140aと、圧胴140bと、版胴140aから余分なインキ(正孔輸送層の材料)を除去するドクターブレード140cと、第3加熱装置140dとを備えたグラビア印刷機140によって構成されている。版胴140aにより塗工された正孔輸送層の材料が第3加熱装置140cにより加熱されて固化ないし硬化して、正孔輸送層となる。
【0049】
正孔輸送層の材料として、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリフィリン、オキサジアゾール、トリフェニルアミン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等、正孔輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。また、正孔輸送層形成用組成物として市販されている、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等の強酸性材料を用いる場合には、グラビア印刷機140において強酸性材料と接する面を、強酸に対する耐食性材料、例えば金、銀、白金等により形成することが好ましい。このとき、強酸性材料と接する部材全体を耐食性材料によって形成することも可能であるが、所定箇所に耐食性材料の被膜を形成した方が経済的である。
【0050】
有機発光材料層形成部155は、版胴150aと、ブランケット胴150bと、圧胴150cと、版胴150aから余分なインキ(有機発光材料)を除去するドクターブレード150dと、第4加熱装置150eとを備えたグラビアオフセット印刷機150によって構成されている。版胴150aからブランケット胴150bを介して正孔輸送層上に塗工された有機発光材料が第4加熱装置150eにより加熱されて固化ないし硬化し、有機発光材料層となる。
【0051】
有機発光材料としては、有機EL素子に用いられる種々のものを使用することが可能であるが、発光特性及び素子寿命がそれぞれ良好な有機EL素子を形成するためには、低分子系の有機発光材料よりも高分子系の有機発光材料を用いることが好ましい。
【0052】
電子輸送層形成部165は、版胴160aと、圧胴160bと、版胴160aから余分なインキ(電子輸送層の材料)を除去するドクターブレード160cと、第5加熱装置160dとを備えたグラビア印刷機160によって構成されている。版胴160aにより有機発光材料層上に塗工された電子輸送層の材料が第5加熱装置160dにより加熱されて固化ないし硬化し、電子輸送層となる。
【0053】
電子輸送層の材料として、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電子輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。強酸性材料を用いる場合には、グラビア印刷機160において強酸性材料と接する面を、強酸に対する耐食性材料、例えば金、銀、白金等により形成することが好ましい。このとき、強酸性材料と接する部材全体を耐食性材料によって形成することも可能であるが、所定箇所に耐食性材料の被膜を形成した方が経済的である。
【0054】
有機発光部形成セクションS4では、個々の発光表示パネル20での有機発光部11(図2参照)の形状及び大きさに対応した形状及び大きさを有する所定パターンの有機発光部を間欠的に形成することもできるし、多数の発光表示パネル20に対応する所定パターンの大形の有機発光部をその端から順次形成することもできる。有機発光部11(正孔輸送層、有機発光材料層及び電子輸送層で構成される)の厚さは、0.1〜2.5μm程度の範囲内で適宜選定可能である。なお、図3中の参照符号180a、180bは、それぞれ、移送手段TMにおいて移送路を構成するガイドロールを示している。
【0055】
以上説明した発光表示パネルの製造システム200によれば、個々の発光表示パネル20(図1又は図2参照)での透明電極5、補助電極7a、7b、電気絶縁層9、及び有機発光部11に対応する積層構造を備えた積層体がベースフィルム100a上に間欠的に、又は連続的に形成された長尺物をロール170の状態で得ることができる。そして、ロール170を得た後、個々の発光表示パネル20に対応する積層体上に背面電極13を形成し、さらに、背面電極13の露出面及び有機発光部11の露出面を覆うようにして封止層15を形成することによって、発光表示パネル20を量産することができる。背面電極13の形成前、背面電極13の形成後(封止層15の形成前)、又は封止層15の形成後に、所望の大きさに断裁する。勿論、ロール170を得ることなく、有機発光部形成セクションS4の下流側において連続処理により、あるいは枚葉処理により背面電極13、及び封止層15を形成することによっても発光表示パネル20を量産することが可能である。
【0056】
製造システム200を利用して製造される発光表示パネル20では、透明電極5、補助電極7a、7b、有機発光部11、及び背面電極13によって有機EL素子が構成される。発光表示パネル20ではフィルム状又はシート状の透明基材1上に上記構成の有機EL素子が形成されるので、その可撓性を高め易い。そして、製造システム200を用いれば、発光表示パネル20を作製するために必要な構成部材のうちの透明電極5、補助電極7a、7b、電気絶縁層9、及び有機発光部11からなる積層体を多数、長尺の透明基材(ベースフィルム100a)上に間欠的又は連続的に形成することが可能であるので、発光表示パネル20を高い生産性の下に得易い。
【0057】
また、発光表示パネル20では透明電極5上に補助電極7a、7bが形成されるので、当該透明電極5と補助電極7a、7bとを併せた電極全体の導電性を高めることができ、結果として、発光時の発熱を抑えることができる。そして、この発光表示パネル20では発光領域R 〜R 内に補助電極7a、7bが分布していないので、補助電極7a、7bでの外光の反射に起因する画質の低下を容易に抑制することができる。
【0058】
これらの理由から、製造システム200によれば、可撓性及び画質が共に高く、かつ発光時の発熱が比較的少ない発光表示パネルを低コストの下に得易くなる。製造過程での有機発光部、特に有機発光材料層の劣化を抑制するためには、製造システム200全体、又は有機発光部形成セクションS4を(1)窒素ガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気中で稼働させる、(2)水の露点が−10℃以下の雰囲気中で稼働させる、又は、(3)緑色波長域及びそれより短波長域の光量を抑えた環境下で稼働させる、ことが好ましい。
【0059】
<製造システム(変形例)>
本発明の発光表示パネルの製造システムは上述した第1形態の発光表示パネルの製造システム200に限定されるものではない。最終的に得ようとする発光表示パネルの形態、用途、グレード等に応じて、種々の変更、修飾、組合せ等が可能である。
【0060】
例えば、片面に透明導電層が形成されている長尺の透明樹脂フィルム又は透明樹脂シート、あるいは、片面に透明導電層が形成されている長尺の透明ガラスシートを長尺の透明基材として用いる場合には、導電層形成セクションS1を省略することができる。長尺の透明基材としては、ガスバリア層が予め形成されているものが好ましいが、当該長尺の透明基材を構成する透明樹脂又は透明ガラスの種類や、得ようとする発光表示パネルの用途あるいはグレード等によっては、ガスバリア層を省略することも可能である。ガスバリア層が予め形成されている透明基材を用いる場合、透明導電層はガスバリア層上に形成することが好ましいが、ガスバリア層が形成されている面とは反対側の面に透明導電層を形成することも可能である。
【0061】
本発明の発光表示パネルの製造システムを利用して作製される発光表示パネルでの補助電極の平面視上の形状は、図1に示した補助電極7a、7bのような矩形枠状に限定されるものではない。補助電極の平面視上の形状は、発光表示パネルによって表示しようとする文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンの形状や、当該パターンを構成するパーツの配置等に応じて、矩形枠状以外の種々の閉じた形状、直線状、曲線状、面状等、適宜選定される。また、補助電極の形成方法は印刷法に限定されるものではなく、所定形状の蒸着マスクを利用した物理的気相蒸着法(PVD)を適用することもできる。補助電極形成セクションの構成は、補助電極の形成方法等に応じて適宜選定可能である。
【0062】
また、本発明の発光表示パネルの製造システムを利用して作製される発光表示パネルは、発光領域と非発光領域との組合せにより文字、図形、記号、模様、静止画等のパターンを表示することができるものであればよく、表示しようとするパターン自体が光る構成とする他に、表示しようとするパターンは光らずにその周囲が光る構成とすることもできる。絶縁層形成セクションで形成する電気絶縁層の形状は、得ようとする発光表示パネルでの発光領域の分布形態に応じて適宜選定される。
【0063】
有機発光部形成セクションの構成は、形成しようとする有機発光部の層構成に応じて適宜変更することができる。有機発光部は、例えば、有機発光材料層のみからなる単層構造とすることもできるし、有機発光材料層と正孔輸送層もしくは電子輸送層とを有する2層構造とすることもできるし、有機発光材料層と正孔輸送層と電子輸送層とを有する3層構造とすることもできる。さらには、有機発光材料層としての機能と正孔輸送層としての機能もしくは電子輸送層としての機能とを兼ね備えた層を単独で用いて、又は、正孔輸送層もしくは電子輸送層と組合わせ有機発光部を構成することもできる。有機発光部形成セクションでは、形成しようとする有機発光部の層数に応じた台数の印刷機又はコータを使用することが望ましい。
【0064】
また、有機発光部形成セクションの構成は、得ようとする発光表示パネルがモノカラー表示、マルチカラー表示、及びフルカラー表示のいずれであるかに応じても、適宜変更することができる。例えば、マルチカラー表示又はフルカラー表示の発光表示パネルを得ようとする場合には、発光色が互いに異なる複数種の有機発光材料を用意して、発光色が互いに異なる複数の有機発光材料層又は有機発光部をそれぞれ所定箇所に形成することが必要となるので、それに見合った台数の印刷機又はコータを用いて有機発光部形成セクションを構成することが望ましい。このとき、異なる有機発光材料層又は有機発光部同士の間には、樹脂材料を用いて透明電極上に予め隔壁を設けておくことが好ましい。隔壁は、例えば厚膜印刷、フォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー等の方法によって形成することができるので、当該隔壁を形成するための機器も用いて有機発光部形成セクションを構成することが望まれる。なお、得ようとする発光表示パネルがモノカラー表示、マルチカラー表示、及びフルカラー表示のいずれであっても、透明電極と背面電極との短絡を防止しつつ輝度の高い有機EL素子を形成するという観点から、有機発光部の膜厚は0.1〜2.5μm程度の範囲内で適宜選定することが好ましい。
【0065】
印刷法を利用して透明導電層、補助電極、電気絶縁膜、又は有機発光部を形成する場合、使用する印刷機又はコータは、形成しようとする部材の形状やその材料に応じて、グラビア印刷機、グラビアオフセット印刷機、スクリーン印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機、ロールコータ、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等、適宜選定可能である。いずれの印刷機又はコータを使用する場合でも、強酸性の材料を塗工しようとするときには、印刷機又はコータにおいて当該強酸性の材料と接する面を、強酸に対する耐食性材料、例えば金、銀、白金等により形成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の発光表示パネルの製造システムを利用して製造することができる発光表示パネルの一例を示す概略図であり、表示面を正面視したときの概略図である。
【図2】図1に示したII−II線断面の概略図である。
【図3】本発明の発光表示パネルの製造システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
1 透明基材
3 ガスバリア層
5 透明電極
7a、7b 補助電極
9a、9c、9d 電気絶縁層
11 有機発光部
13 背面電極
13a 第1背面電極
13b 第2背面電極
15 封止層
15a 可撓性を有する基材
15b ガスバリア層
15c 接合剤層
20 発光表示パネル
100 ベースフィルムロール
100a 長尺の透明基材(ベースフィルム)
102a 版胴
102b 圧胴
104 インキ壺
106 フィードロール
108 第1加熱装置
110 グラビア印刷機
120 スクリーン印刷機
120a テーブル
120b スクリーン版
120c スキージ
125 第2加熱装置
130 ロールコータ
130a,130b ロール
130c フィールドロール
133 第1滞留装置
135 露光・現像装置
137 第2滞留装置
140 正孔輸送層形成部を構成している印刷機
140a 版胴
140b 圧胴
140c ドクターブレード
140d 第3加熱装置
145 正孔輸送層形成部
150 有機発光材料層形成部を構成している印刷機
150a 版胴
150b ブランケット胴
150c 圧胴
150d ドクターブレード
150e 第4加熱装置
155 有機発光材料層形成部
160 電子輸送層形成部を構成している印刷機
160a 版胴
160b 圧胴
160c ドクターブレード
160d 第5加熱装置
165 電子輸送層形成部
170 ロール
180a,180b ガイドロール
200 製造システム
〜R 発光領域
NR 〜NR 非発光領域
S1 導電層形成セクション
S2 補助電極形成セクション
S3 絶縁層形成セクション
S4 有機発光部形成セクション
TM 移送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光領域と非発光領域とを有し、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘るようにして透明基材の片面上に透明電極が形成され、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に電気絶縁層が形成され、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に有機発光部が形成され、該有機発光部上に背面電極が形成されている発光表示パネルの製造システムであって、
片面に透明導電層が形成されている長尺の透明基材に、前記透明導電層上に位置するようにして、かつ個々の発光表示パネルにおける前記非発光領域内に位置するようにして補助電極を形成することができる補助電極形成セクションと、
前記透明導電層上に、該透明導電層のうちの前記発光領域に対応する領域は覆わず、かつ前記補助電極は覆うようにして電気絶縁層を形成することができる絶縁層形成セクションと、
少なくとも前記発光領域に対応する領域の透明導電層を覆うようにして、印刷法により有機発光部を形成することができる有機発光部形成セクションと、
少なくとも前記補助電極形成セクションから前記有機発光部形成セクションに亘って前記長尺の透明基材を架け渡した状態で、該長尺の透明基材を前記補助電極形成セクション側から前記有機発光部形成セクション側へ移送することができる移送手段と、を有していることを特徴とする発光表示パネルの製造システム。
【請求項2】
前記有機発光部形成セクションが、正孔輸送層の材料を印刷機により塗工して正孔輸送層を形成することができる正孔輸送層形成部を含み、該正孔輸送層形成部を構成している前記印刷機において前記正孔輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光表示パネルの製造システム。
【請求項3】
前記有機発光部形成セクションが、電子輸送層の材料を印刷機により塗工して電子輸送層を形成することができる電子輸送層形成部を含み、該電子輸送層形成部を構成している前記印刷機において前記電子輸送層の材料と接する面が、強酸に対する耐食性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光表示パネルの製造システム。
【請求項4】
長尺の透明基材上に透明導電層を形成することができる導電層形成セクションを更に有し、該導電層形成セクションが、前記補助電極形成セクションよりも前記移送手段での上流側に配置されており、
前記移送手段が、少なくとも前記導電層形成セクションから前記有機発光部形成セクションに亘って前記長尺の透明基材を架け渡した状態で、該長尺の透明基材を前記導電層形成セクション側から前記有機発光部形成セクション側へ移送することができることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光表示パネルの製造システム。
【請求項5】
発光領域と非発光領域とを有し、前記発光領域及び前記非発光領域の両方に亘るようにして透明基材の片面上に透明電極が形成され、該透明電極のうちの前記非発光領域に対応する領域上に電気絶縁層が形成され、少なくとも前記透明電極のうちの前記発光領域に対応する領域上に有機発光部が形成され、該有機発光部上に背面電極が形成されている発光表示パネルの製造方法であって、
片面に透明導電層が形成されている長尺の透明基材に、前記透明導電層上に位置するようにして、かつ個々の発光表示パネルにおける前記非発光領域内に位置するようにして補助電極を形成する工程と、
前記透明導電層上に、該透明導電層のうちの前記発光領域に対応する領域は覆わず、かつ前記補助電極は覆うようにして電気絶縁層を形成する工程と、
少なくとも前記発光領域に対応する領域の透明導電層を覆うようにして、印刷法により有機発光部を形成する工程とを有し、
少なくとも前記補助電極を形成する工程から前記有機発光部を形成する工程に亘って前記長尺の透明基材が連続して移送されることにより、前記補助電極、電気絶縁層及び有機発光部がインラインで形成されることを特徴とする発光表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記有機発光部を形成する工程が、正孔輸送層を形成する工程と、有機発光材料層を形成する工程と、電子輸送層を形成する工程とをこの順に含むことを特徴とする請求項5に記載の発光表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記補助電極を形成する工程前に、透明基材上に透明導電層を形成する工程を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の発光表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−302694(P2006−302694A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123558(P2005−123558)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】