説明

発光表示パネルの駆動方法および駆動装置

【課題】走査ドライバの回路規模を小さくしつつ、逆バイアス電圧の印加も果たすことができるパッシブマトリクス型表示パネルの駆動方法および駆動装置を提供する。
【解決手段】各走査線K1〜Kmと各データ線A1〜Anとの間にそれぞれ発光素子が接続されたパッシブマトリクス型表示パネルの駆動装置において、走査対象となる走査線に対して走査選択電位を印加する走査ドライバ3と、発光駆動対象となるデータ線に対して発光駆動電流を供給するデータドライバ2が備えられる。前記走査ドライバ3における各走査スイッチSk1〜Skmは、それぞれ走査選択電位点(グランド電位)に対してONまたはOFFされるアナログスイッチにより構成されている。一方、前記各走査線のうち走査対象外の複数の走査線に対して、1つの抵抗素子R1を介してそれぞれ非走査選択電位(発光素子に対する逆バイアス電圧)VKHが供給されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の走査線およびデータ線との交差位置において、前記各走査線と各データ線との間にそれぞれ発光素子を接続してなるパッシブマトリクス型表示パネルの発光駆動方法および駆動装置に関し、特に前記各走査線を走査する走査ドライバの回路構成を簡素化させることができる発光表示パネルの駆動方法および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯型情報端末機(PDA)などの普及によって、高精細な画像表示機能を有し、薄型かつ低消費電力化を実現することができる表示パネルの需要が増大しており、従来より液晶表示パネルがその要求を満たす表示パネルとして多くの製品に採用されてきた。一方、昨今においては自発光型素子であるという特質を生かした有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素子が実用化され、これが従来の液晶表示パネルに代わる次世代の表示パネルとして注目されている。これは素子の発光層に、良好な発光特性を期待することができる有機化合物を使用することによって、実用に耐え得る高効率化および長寿命化が進んだことも背景にある。
【0003】
前記した有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板上に、例えばITOによる透明電極(陽極)と発光機能層、およびアルミ合金などによる金属電極(陰極)とが順次積層されることで構成されている。そして、前記発光機能層は有機化合物による単一の発光層、あるいは有機正孔輸送層と発光層による二層構造、または有機正孔輸送層と発光層および有機電子輸送層からなる三層構造、さらには前記透明電極と正孔輸送層との間に正孔注入層を、また前記金属電極と電子輸送層との間に電子注入層を挿入した多層構造になされる場合もある。そして、前記発光機能層において発生する光は、前記透明電極および透明基板を介して外部に導出される。
【0004】
前記した有機EL素子は、電気的にはダイオード特性を有する発光エレメントと、この発光エレメントに並列に結合する寄生容量成分とによる構成に置き換えることができ、有機EL素子は容量性の発光素子であるということが言える。この有機EL素子は、発光駆動電圧が印加されると、先ず当該素子の電気容量に相当する電荷が電極に変位電流として流れ込み蓄積される。続いて当該素子固有の一定の電圧(発光閾値電圧=Vth)を越えると、一方の電極(ダイオード成分のアノード側)から発光機能層に向かって電流が流れはじめ、この電流に比例した強度で発光すると考えることができる。
【0005】
一方、有機EL素子は電流・輝度特性が温度変化に対して安定しているのに対して、電圧・輝度特性が温度変化に対する依存性が高いこと、また、有機EL素子は過電流を受けた場合に劣化が激しく、発光寿命を短縮させるなどの理由により、一般的には定電流駆動がなされる。かかる有機EL素子を用いた表示パネルとして、素子をマトリクス状に配列したパッシブ駆動型表示パネルが、すでに一部において実用化されている。
【0006】
図1には従来のパッシブマトリクス型表示パネルと、その駆動回路の一例が示されており、これは陰極線走査・陽極線ドライブの形態を示している。すなわち、n本のデータ線(以下、これを陽極線とも言う。)A1〜Amが縦方向に配列され、m本の走査線(以下、これを陰極線とも言う。)K1〜Kmが横方向に配列され、各々の交差した部分(計n×m箇所)に、ダイオードのシンボルマークで示した有機EL素子E11〜Enmが配置されて、表示パネル1を構成している。
【0007】
そして、画素を構成する各EL素子E11〜Enmは、縦方向に沿う陽極線A1〜Anと横方向に沿う陰極線K1〜Kmとの各交点位置に対応して、一端(EL素子の等価ダイオードにおけるアノード端子)が陽極線に、他端(EL素子の等価ダイオードにおけるカソード端子)が陰極線に接続されている。さらに、各陽極線A1〜Anはデータドライバとしての陽極線ドライブ回路2に接続され、各陰極線K1〜Kmは走査ドライバとしての陰極線走査回路3に接続されてそれぞれ駆動される。
【0008】
前記陽極線ドライブ回路2には、駆動電圧源VHからの駆動電圧を利用して動作する定電流源I1〜In、およびドライブスイッチSa1〜Sanが備えられており、ドライブスイッチSa1〜Sanが、前記定電流源I1〜In側に接続されることにより、定電流源I1〜Inからの電流が、走査される陰極線に対応して配置された個々のEL素子E11〜Enmに対して発光駆動電流として供給されるように作用する。
【0009】
また、前記ドライブスイッチSa1〜Sanは、非発光電位(図1に示す形態においては回路の基準電位であるグランド電位GND)が、陰極線に対応して配置された個々のEL素子E11〜Enmに対して供給することができるように構成されている。
【0010】
一方、前記陰極線走査回路3には、各陰極線K1〜Kmに対応して走査スイッチSk1〜Skmが備えられ、非走査選択電位として機能する主にクロストーク発光を防止するために用いられる逆バイアス電圧源VKMからの逆バイアス電圧、もしくは走査選択電位(図1に示す形態においてはグランド電位GND)のうちのいずれか一方を、対応する陰極線に供給することができるように構成されている。
【0011】
そして、前記した陽極線ドライブ回路2および陰極線走査回路3には、図示せぬCPU等を含む発光制御回路よりコントロールバスを介してそれぞれに制御信号が供給され、表示すべき映像信号に基づいて、前記走査スイッチSk1〜SkmおよびドライブスイッチSa1〜Sanの切り換え操作がなされる。これにより、映像信号に基づいて陰極線を所定の周期でグランド電位に設定しながら所望の陽極線に対して定電流源I1〜Inが接続され、前記各EL素子E11〜Enmが選択的に発光されることで、表示パネル1上に前記映像信号に基づく画像が表示される。
【0012】
なお、図1に示す状態は、第2の陰極線K2がグランド電位に設定されて走査状態になされ、この時、非走査状態の各陰極線K1,K2〜Kmには、前記した逆バイアス電圧源VHMからの逆バイアス電圧が印加される。ここで、走査発光状態におけるEL素子の順方向電圧をVfとした時、〔(順方向電圧Vf)−(逆バイアス電圧VHM)〕<(発光閾値電圧Vth)の関係となるように各電位設定がなされており、したがってドライブされている陽極線と走査選択がなされていない陰極線との交点に接続された各EL素子がクロストーク発光するのを防止するように作用する。
【0013】
また、前記したようにEL素子の発光動作に伴う順方向電圧の印加、および陰極線の非走査状態において逆バイアス電圧源VHMよりEL素子に逆バイアス電圧を印加することで、EL素子の発光寿命を延ばす延命効果が得られることも知られている。図1に示した構成により発光駆動されるパッシブ駆動型表示装置、およびEL素子に逆バイアス電圧を適宜印加する発光駆動装置についてはすでに多数の出願がなされており、本件出願人において出願した次に示す特許文献1、特許文献2などにも開示されている。
【特許文献1】特開2004−302070号公報
【特許文献2】特開2005−062263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、前記した構成のパッシブ駆動型表示装置においては、その走査ドライバに着目した場合、それぞれの走査線に対して走査選択電位(例えばグランド電位)もしくは非走査選択電位(例えば逆バイアス電圧)を印加させる走査スイッチが各走査線に対応してそれぞれ具備される。前記走査スイッチは前記した2つの電位を択一的に選択する機能を持たせるために、それぞれに2つのアナログスイッチを具備した構成になされる。
【0015】
図2は、その走査スイッチの例を示したものであり、これは例えば図1に示す第1の走査スイッチSk1の例を示しているが、他の走査スイッチSk2〜Skmについてもその構成は同様である。図2に示されたように第1のアナログスイッチとしてp型MOSFET(Q1)が用いられ、このFET(Q1)のソースに対して前記した逆バイアス電圧VKHが供給される。またFET(Q1)のドレインは第1の走査線K1に接続されており、これによりON/OFF制御信号(a)がそのゲートに供給されることにより、第1の走査線K1に逆バイアス電圧VKHを選択的に供給することができる。
【0016】
一方、第2のアナログスイッチとしてn型MOSFET(Q2)が用いられ、このFET(Q2)のソースは前記した走査選択電位(例えばグランド電位)に接続されている。また、FET(Q2)のドレインは前記第1の走査線K1に接続されており、これによりON/OFF制御信号(b)がそのゲートに供給されることにより、第1の走査線K1を選択的に走査選択電位に設定することができる。
【0017】
前記した従来の構成によると、1つの走査スイッチを構成するにあたり、2つのアナログスイッチが必要であるために走査ドライバの規模が必然的に大きくなるという課題を抱えている。また各走査スイッチをそれぞれドライブするために、ON/OFF制御信号(a)および(b)が必要になる。
【0018】
この発明は、前記したようなパッシブマトリクス型表示装置における前記したような現実的な問題点に着目してなされたものであり、前記走査ドライバの回路規模を小さくしつつ、逆バイアス電圧の印加も果たすことができるパッシブマトリクス型表示パネルの駆動方法および駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる駆動方法の好ましい基本態様は、請求項1に記載のとおり、複数の走査線および複数のデータ線と、前記各走査線および各データ線の交差位置において前記各走査線と各データ線との間にそれぞれ接続された発光素子とを備えたパッシブマトリクス型表示パネルを発光駆動させる駆動方法であって、前記各走査線のうち走査対象となる走査線に対して走査選択電位を印加し、前記各データ線のうち発光駆動対象となるデータ線に対して発光駆動電流を供給すると共に、前記各走査線のうち走査対象外の複数の走査線に対しては、抵抗機能を果たす1つの素子を介してそれぞれ非走査選択電位を供給する点に特徴を有する。
【0020】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる駆動装置の好ましい基本形態は、請求項5に記載のとおり、複数の走査線および複数のデータ線と、前記各走査線および各データ線の交差位置において前記各走査線と各データ線との間にそれぞれ接続された発光素子とを備えたパッシブマトリクス型表示パネルを発光駆動させる駆動装置であって、前記各走査線のうち走査対象となる走査線に対して走査選択電位を印加する走査ドライバと、前記各データ線のうち発光駆動対象となるデータ線に対して発光駆動電流を供給するデータドライバが備えられ、前記各走査線のうち走査対象外の複数の走査線に対して、抵抗機能を果たす1つの素子を介してそれぞれ非走査選択電位を供給するように構成したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明にかかる発光表示パネルの駆動装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に説明するこの発明にかかる実施の形態においては、図1に示した各部と同一または相当する機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがって、その詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
図3は、その第1の実施の形態を示したものであり、この図3に示す実施の形態においては、走査ドライバとしての走査ドライバ3における各走査スイッチSk1〜Skmは、それぞれONまたはOFFされる機能を備えた1つのアナログスイッチ、すなわち図2に示したFET(Q2)のみで構成されている。したがって各走査線K1〜Kmは、前記各走査スイッチSk1〜Skmが択一的に順次ONされることにより、順次走査状態になされる。なお、図3は第2の走査スイッチSk2がオン状態になされ、第2の走査線K2が走査状態になされている場合を示している。
【0023】
一方、図3に示す実施の形態においては、前記走査ドライバ3が接続された各走査線K1〜Kmの他方の端部には、抵抗機能を果たす1つの素子(以下、抵抗素子とも称呼する。)R1を介して、非走査選択電位としてのEL素子への逆バイアス電圧VKHが印加されるように構成されている。なお、図3に示す実施の形態においては、1つの前記抵抗素子R1を介して表示パネル1に配列されたすべての前記走査線K1〜Kmに対して非走査選択電位としての逆バイアス電圧VKHが供給されるように、すなわち、抵抗素子R1によりすべての走査線K1〜Kmが、電圧VKH側にプルアップされるように構成されている。
【0024】
したがって、図3に示した構成によると、走査対象となる走査線K1〜Kmに対して走査選択電位(グランド電位)が順次印加され、前記各データ線A1〜Anのうち発光駆動対象となるデータ線に対して定電流源II〜1nより選択的に発光駆動電流が供給される。この結果、表示パネル1上に配列された前記各EL素子E11〜Enmは選択的に発光し、表示パネル1上に映像信号に基づく画像を表示させることができる。
【0025】
なお、前記した走査が実行される際に、前記1つの抵抗素子R1にそれぞれ接続される配線ラインを介して各走査線K1〜Kmが短絡されるように考えられるが、現実には各走査線に存在する配線抵抗により、前記した走査を達成することができる。
【0026】
そして、前記した走査が実行される時、非走査対象となる各走査線(図3に示す状態においては、K1,K3〜Km)には、前記抵抗素子R1を介してそれぞれ非走査選択電位としての逆バイアス電圧VKHが印加される。これにより非発光状態に制御されるEL素子には逆バイアス電圧が印加され、非発光状態に制御されるEL素子がクロストーク発光するのを防止できると共に、逆バイアス電圧の印加により、当該EL素子の発光寿命を延ばす延命効果を与えることができる。
【0027】
したがって、図3に示した実施の形態によると、走査ドライバ3における回路構成を簡素化させることができると共に、非発光状態に制御される各EL素子に対して逆バイアス電圧を印加させることができるので、前記したようにクロストーク発光の防止、およびEL素子に延命効果を与えることができる。
【0028】
図4は、この発明にかかる表示パネルの駆動装置における第2の実施の形態を示したものであり、この図4に示す実施の形態においては、前記した抵抗素子R1に代えて可変抵抗素子VR1が用いられている。そして、前記可変抵抗素子VR1は、各走査線毎のEL素子の点灯率もしくは表示パネルの発光輝度を設定するディマー値にしたがって、その抵抗値が可変されるように構成されている。なお、図4においては、EL素子の走査線毎の点灯率もしくはディマー値に基づいて前記可変抵抗素子VR1の抵抗値がその都度、制御データをVdaによって可変制御されるように構成されている。
【0029】
ここで、図4に示した構成の表示パネル1においては、走査点灯されるEL素子の点灯率に応じて、逆バイアス電圧VKHから抵抗素子VR1を介して点灯制御されるEL素子の寄生容量に対して充電される充電量が異なる現象が発生する。すなわち、走査対象にされる走査線におけるEL素子の点灯率が低い場合においては、走査対象外の走査線に接続されたEL素子の寄生容量を介して逆バイアス電圧VKHから点灯制御される個々のEL素子に充電される充電量は大きくなる。
【0030】
逆に走査対象にされる走査線におけるEL素子の点灯率が高い場合においては、走査対象外の走査線に接続されたEL素子の寄生容量を介して逆バイアス電圧VKHから点灯制御される個々のEL素子に充電される充電量は相対的に小さくなる。このような作用により各走査線毎のEL素子の点灯率に応じて輝度が変化する状態が発生し、これは横(水平)クロストークもしくはシャドウイングと呼ばれている。
【0031】
また、前記シャドウイングは、表示パネルの全体的な輝度を制御するディマー制御におけるディマー値の設定が低い(画面を暗く設定する)ほど、その発生度合いが顕著になることが知られている。これはディマー値を低く設定するほど、1走査期間におけるEL素子の発光時間が短く、もしくは駆動電流の値が小さく設定されるために、走査されていないEL素子の寄生容量を介して走査されるEL素子のデータ線を介して流れ込む電荷の寄与が相対的に高くなると考えられるためである。
【0032】
そこで、図4に示した実施の形態においては、例えば1走査毎の素子の点灯率に応じて、またこの時に設定されているディマー値に応じて、前記可変抵抗素子VR1の抵抗値が前記制御データVdaによって制御されるように動作する。これにより、前記したシャドウイングの発生度合いを低減させることが可能となる。
【0033】
なお、前記した1走査毎の素子の点灯率は、図には示していないが、表示すべき画像データを取り込む画像メモリより、1走査ライン毎に読み出して演算することで比較的容易に得ることができる。したがって、図4に示した実施の形態によると、図3に示した構成による前記した作用効果に加えて、シャドウイングの発生度合いも低減させることが可能となる。
【0034】
図5は、この発明にかかる表示パネルの駆動装置における第3の実施の形態を示したものである。この図5に示す実施の形態においては、前記抵抗素子として2つの抵抗素子R1およびR2が備えられている。そして、第1の抵抗素子R1を介して表示パネル1の例えば上半分に配列された走査線に対して非走査選択電位としての逆バイアス電圧VKHを供給するように構成されると共に、第2の抵抗素子R2を介して表示パネル1の下半分に配列された走査線に対して非走査選択電位としての逆バイアス電圧VKHを供給するように構成されている。
【0035】
図5に示した構成においても、図3に示した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。また図5に示した例に限らず、さらに3つ以上の抵抗素子を備えて、複数本の走査線毎に各々の抵抗素子を介して非走査選択電位としての逆バイアス電圧VKHを供給するように構成しても同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
また、図5に示した第1および第2の抵抗素子R1,R2、さらに前記した3つ以上の抵抗素子を備える場合であっても、それぞれの抵抗素子を図4に例示したように可変抵抗素子に置き換えることができる。そして、1走査毎の素子の点灯率に応じて、またこの時に設定されているディマー値に応じて、前記各可変抵抗素子の抵抗値を変化させることにより、同様に前記したシャドウイングの発生度合いを低減させることができる。
【0037】
図6は、この発明にかかる表示パネルの駆動装置における第4の実施の形態を示したものである。この図6に示す実施の形態においては、前記表示パネル1には発光色が異なる発光素子が配列された例を示している。すなわちR(赤)、G(緑)、B(青)を発光するEL素子をそれぞれサブ画素として、これら3つを組にしてカラー画素を構成した例を示している。
【0038】
したがって、図6においては対応する各符号の末尾に、前記各色に応じた小文字のアルファベット(r,g,b)を付して示している。なお図6はR,G,Bに対応する第1の走査スイッチSk1r,Sk1g,Sk1bがそれぞれオン状態になされ、第1の各走査線K1r,K1g,K1bが走査状態になされている場合を示している。
【0039】
この図6に示した実施の形態においては、同一発光色のEL素子が接続された各走査線に対して、それぞれ共通の抵抗素子Rr,Rg,Rbが備えられ、これらの抵抗素子Rr,Rg,Rbを介して非走査選択電位としての前記逆バイアス電圧VKHがそれぞれに供給されるように構成されている。これによるとR、G、Bを発光する各EL素子の輝度特性(発光効率)が異なる場合であっても、前記各抵抗素子Rr,Rg,Rbの抵抗値を異なる値に調整することで、カラーバランスを整えることができる。
【0040】
なお、R、G、Bを発光する各EL素子の輝度特性(発光効率)からすると、抵抗素子Rr,Rbの抵抗値を同一にし、Rgの抵抗値は異なる値に設定することによっても、前記カラーバランスをある程度の範囲で整えることは可能である。
【0041】
図6に示したカラー表示対応の実施の形態によると、例えばR、G、Bに対応してそれぞれ必要になる走査スイッチの個々において、その回路構成を簡素化させることができるので、走査ドライバの全体においては、その構成を著しく簡素化させることに寄与できる。また、図6に示した構成において、各抵抗素子Rr,Rg,Rbを図4に基づいて説明したとおりそれぞれ可変抵抗素子に代えて、各可変抵抗素子を1走査毎の素子の点灯率に応じて、またこの時に設定されているディマー値に応じて、それぞれ変化させるように構成することで、前記したシャドウイング作用と同様の作用によるカラーバランスの悪化を低減させることが期待できる。
【0042】
以上説明した各実施の形態においては、表示パネルに配列される発光素子として有機EL素子を用いた例を示しているが、前記発光素子として他の発光素子を用いた場合においても同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】従来のパッシブマトリクス型表示パネルとその駆動回路の一例を示した回路構成図である。
【図2】図1に示す駆動回路において使用される走査スイッチの構成例を示した回路構成図である。
【図3】この発明にかかる駆動装置の第1の実施の形態を示した回路構成図である。
【図4】同じく第2の実施の形態を示した回路構成図である。
【図5】同じく第3の実施の形態を示した回路構成図である。
【図6】同じく第4の実施の形態を示した回路構成図である。
【符号の説明】
【0044】
1 発光表示パネル
2 データドライバ
3 走査ドライバ
A1〜An データ線(陽極線)
E11〜Enm 発光素子(有機EL素子)
I1〜In 定電流源
K1〜Km 走査線(陰極線)
R1,R2 抵抗素子
Sa1〜San ドライブスイッチ
Sk1〜Skm 走査スイッチ
VH 駆動電圧源
VKM 逆バイアス電圧源(非走査選択電源)
VR1 可変抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線および複数のデータ線と、前記各走査線および各データ線の交差位置において前記各走査線と各データ線との間にそれぞれ接続された発光素子とを備えたパッシブマトリクス型表示パネルを発光駆動させる駆動方法であって、
前記各走査線のうち走査対象となる走査線に対して走査選択電位を印加し、前記各データ線のうち発光駆動対象となるデータ線に対して発光駆動電流を供給すると共に、
前記各走査線のうち走査対象外の複数の走査線に対しては、抵抗機能を果たす1つの素子を介してそれぞれ非走査選択電位を供給することを特徴とする発光表示パネルの駆動方法。
【請求項2】
前記抵抗機能を果たす素子の抵抗値は、各走査線毎の発光素子の点灯率もしくは表示パネルの発光輝度を設定するディマー値にしたがって可変されることを特徴とする請求項1に記載された発光表示パネルの駆動方法。
【請求項3】
前記抵抗機能を果たす1つの素子を介して、表示パネルに配列されたすべての前記走査線に対して非走査選択電位を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された発光表示パネルの駆動方法。
【請求項4】
前記表示パネルには発光色が異なる発光素子が配列され、同一発光色の発光素子が接続された複数の走査線に対して、抵抗機能を果たす素子を介して非走査選択電位をそれぞれ供給すると共に、前記抵抗機能を果たす少なくとも1つの素子は、他の素子の抵抗値と異なる値に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された発光表示パネルの駆動方法。
【請求項5】
複数の走査線および複数のデータ線と、前記各走査線および各データ線の交差位置において前記各走査線と各データ線との間にそれぞれ接続された発光素子とを備えたパッシブマトリクス型表示パネルを発光駆動させる駆動装置であって、
前記各走査線のうち走査対象となる走査線に対して走査選択電位を印加する走査ドライバと、前記各データ線のうち発光駆動対象となるデータ線に対して発光駆動電流を供給するデータドライバが備えられ、
前記各走査線のうち走査対象外の複数の走査線に対して、抵抗機能を果たす1つの素子を介してそれぞれ非走査選択電位を供給するように構成したことを特徴とする発光表示パネルの駆動装置。
【請求項6】
前記抵抗機能を果たす素子は、各走査線毎の発光素子の点灯率もしくは表示パネルの発光輝度を設定するディマー値にしたがって、その抵抗値が可変される可変抵抗素子により構成されていることを特徴とする請求項5に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項7】
前記抵抗機能を果たす1つの素子を介して、表示パネルに配列されたすべての前記走査線に対して非走査選択電位を供給するように構成したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載された発光表示パネルの駆動装置。
【請求項8】
前記表示パネルには発光色が異なる発光素子が配列され、同一発光色の発光素子が接続された複数の走査線に対して、抵抗機能を果たす素子を介して非走査選択電位をそれぞれ供給するように構成されると共に、前記抵抗機能を果たす少なくとも1つの素子は、他の素子の抵抗値と異なる値に設定されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載された発光表示パネルの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−337547(P2006−337547A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159805(P2005−159805)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】