説明

発光装置、及び発光装置の作製方法

【課題】信頼性の高い発光装置を提供する。メタルマスクを用いずに形成可能な発光装置を提供する。また、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制された発光装置を提供する。
【解決手段】凹凸形状を有する導電性の接続電極層の上方からEL膜を成膜し、当該接続電極層表面を被覆しきれずに接続電極層表面が露出する領域を形成する。続いてその上方からEL素子の上部電極層となる導電膜を成膜し、当該接続電極層と接触する領域を形成する。さらに、対向基板上の上記接続電極層と重なる位置に構造物を設け、当該構造物が接続電極層上の上部電極層の上方から物理的に接触するように、基板同士を貼り合わせればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL素子が適用された発光装置、及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極層の間に発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0003】
有機EL素子は膜状に形成することが可能であるため大面積の素子を容易に形成することができ、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機EL素子を用いた照明器具が開示されている。
【0005】
また、有機EL素子には、有機EL素子が形成された基板において、有機EL素子の形成面側に光を取り出す上面発光型と、EL素子の形成面とは反対の面側に光を取り出す下面発光型、またはその両面から光を取り出す両面発光型とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−130132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機EL素子(以下、EL素子、又は発光素子とも呼ぶ。)を照明装置に適用する場合、発光部の面積が広くなると、EL素子の上部電極層若しくは下部電極層又はその両方の抵抗に起因する電圧降下が著しくなる傾向にある。当該電圧降下が著しい場合、輝度の勾配が視認されてしまう問題がある。このような問題を回避するため、上部電極層や下部電極層に抵抗率の低い材料で形成された補助としての補助電極(又は補助配線とも呼ぶ。)を設ける必要がある。
【0008】
特に、光取り出し側に透明電極として用いられる光透過性を有する材料は、比較的抵抗が高く、補助電極を設ける必要性が高い。しかしながら、特に基板の表面側から発光を得る上面発光型(両面発光型も含む)のEL素子の場合、EL素子を形成した後に補助電極層のパターンを形成する必要があるため、EL素子にダメージが加わる場合がある。例えば、補助電極層となる導電膜をスパッタリング法で形成する場合には、熱的、物理的なダメージが懸念される。また、当該導電膜をフォトリソグラフィ法などにより加工する際にも、光や熱によるダメージや、レジストの除去時に用いる有機溶媒などによるEL素子の溶解などの問題が挙げられる。
【0009】
ここで、EL素子を形成する場合、絶縁表面を有する基板上に形成した下部電極層上に、発光性の有機化合物を含む層と、上部電極層とを順次積層する方法としては、例えば真空蒸着法がある。真空蒸着法を用いて島状の層を形成する方法としては、金属板に開口部を設けたメタルマスク(シャドーマスクともいう)を用いる方法が知られている。基板に接して蒸着源との間にメタルマスクを設け、当該メタルマスクの開口部を介して基板に蒸着を行うと、開口部の形状に応じた形状のパターンを形成することができる。なお、メタルマスクと基板との距離が短いほど、開口部に応じた明瞭な形状で、言い換えると周辺部のボケの少ない形状で島状の層が形成できる。
【0010】
一方、メタルマスクを基板に接して使用すると不具合が生じる確率が高まる。例えば、メタルマスクの開口部にある開口端が基板表面を傷つけてしまう場合がある。具体的には、メタルマスクを基板に接触する際に、メタルマスクが基板表面を擦り、基板上に形成済みの他の層を破壊してしまう場合がある。特に発光領域に近い領域にメタルマスクの開口端が重なる場合には、EL素子がショートしてしまう恐れがある。また、メタルマスクに付着したゴミ(パーティクルと呼ばれる小さな異物を含む)をメタルマスクから基板に転写してしまう場合もある。
【0011】
さらに、メタルマスクを大型の基板に適用しようとすると、メタルマスクに用いる金属板のたわみなどによってパターンがずれてしまう問題がある。この問題を回避するため当該金属板を厚くすると、形成された島状のパターンの外周部にボケが生じてしまう問題や、メタルマスク自体の重量が非常に大きくなり取り扱いが困難になる問題がある。
【0012】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって本発明は、信頼性の高い発光装置を提供することを課題の一とする。また、メタルマスクを用いずに形成可能な発光装置を提供することを課題の一とする。また、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制された発光装置を提供することを課題の一とする。
【0013】
本発明は、上記課題の少なくとも一を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、成膜される膜の被覆性に着眼した。大きな凹凸形状を有する表面に対して膜を成膜すると、その表面を被覆しきれずにその一部が物理的に分断されてしまう場合がある。
【0015】
表面に凹凸形状を有する導電性の接続電極層を形成し、その上方からEL膜を成膜すると、当該接続電極層の表面を被覆しきれずにその表面の一部が露出する領域が形成される。続いて、その上方からEL素子の上部電極層となる導電膜を成膜すると、接続電極層の表面の露出部において、当該導電膜が接触する領域が形成される。
【0016】
さらに、対向基板上の上記接続電極層と重なる位置に構造物を設け、基板と対向基板とを貼り合わせる際に、当該構造物を接続電極層上の上部電極層の上方から押し付けるように接触させる。こうすることにより、上部電極層と接続電極層とを確実に接続することができ、これらの接触抵抗をより低減することができる。
【0017】
すなわち、本発明の一態様は、第1の電極層と、発光性の有機化合物を含む層と、第2の電極層とが積層された発光素子を備え、第2の電極層は、表面に凹凸形状を有する導電性の接続電極層と、構造物とに挟持され、且つ第2の電極層と接続電極層とが電気的に接続する、発光装置である。
【0018】
このような構成とすることにより、EL素子の上部電極層(第2の電極層)と、接続電極層との間にEL層が介在していたとしても、確実に上部電極層と電気的に接続する接続電極層を設けた発光装置とすることができる。したがって、メタルマスクを用いずに上部電極層及びEL層を積層させることができ、メタルマスクに起因する不具合を排除することができる。また、このような接続部の構成は、当該上部電極層が形成される領域内に配置することができる。
【0019】
また上記構成は、例えばEL素子の上部電極層の導電性を補助する補助電極に適用することができる。その場合は、EL素子を構成する下部電極層(第1の電極層)と凹凸形状を有する接続電極層とが電気的に絶縁するように設ける構成とすればよい。当該接続電極層と下部電極層とが絶縁されることにより、EL素子を構成する上部電極層(第2の電極層)が電気的に接続する当該接続電極層を、その補助電極層として用いることができる。したがって、メタルマスクを用いなくとも、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0020】
また、対向基板に設ける構造物に、水分を吸収する材料(乾燥剤ともいう)を含ませることもできる。当該構造物と重なる領域は非発光領域であるため、特に上面発光型のEL装置の場合では、発光面積をこれ以上犠牲にすることなく、乾燥剤を封止領域内に導入できるため、発光効率が高く、且つ信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0021】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置において、接続電極層は、第1の電極層上に絶縁層を介して設けられていることを特徴とする。
【0022】
接続電極層を、絶縁層を介して下部電極層上に形成することにより、絶縁層によって接続電極層と下部電極層とが電気的に絶縁されるため、当該接続電極層を上部電極層の導電性を補助するための補助電極として用いることができる。また、接続電極層を下部電極層上に設けることができるため、このような接続部による非発光部の面積を最小限にすることが可能となり、発光効率の高い発光装置とすることができる。
【0023】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置において、接続電極層は、配線上に接して設けられ、第2の電極層と配線とが電気的に接続することを特徴とする。
【0024】
また本発明の接続部の構成は、基板上に設けられた発光装置の配線(例えば封止領域外に電極を取り出すための配線や、発光装置間を接続する配線など)と、上部電極層との接続部にも適用することができる。その場合は、配線上に接して凹凸形状を有する接続電極層を設け、当該接続電極層上にEL層及び上部電極層が形成された構成とすればよい。
【0025】
また、絶縁表面上に形成された凹凸形状を有する電極層自体を、発光装置の配線として用いても良い。
【0026】
このような構成とすることにより、導電性を有する凹凸形状を有する接続電極層を介して発光装置の配線と、EL素子の上部電極層とを確実に電気的に接続させることができ、メタルマスクを用いなくとも、信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【0027】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置において、上記構造物は、導電性を有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置において、上記構造物は、絶縁性を有する層と、導電性を有する層とが積層されてなり、上記導電性を有する層が第2の電極層と電気的に接続されていることを特徴とする。
【0029】
なお、対向基板に設ける構造物は、絶縁性を有していても良いし、導電性の材料で形成してもよい。また、絶縁性材料と導電性材料とを積層しても良い。対向基板に設ける構造物に導電性を持たせた場合、当該構造物も電極として機能するため、接続部を低抵抗化できるほか、接続電極層を配線として用いる場合には、その導電性を補助することができる。当該構造物に導電性を有する材料を用いる場合は、基板上に形成する接続電極層と同様に、大きな凹凸形状を有する構造物とすると、上部電極層との接触面積を大きくすることができるため好ましい。
【0030】
このような構成とすることにより、メタルマスクを用いずにEL膜及び上部電極層となる導電膜を成膜しても、上部電極層と凹凸形状を有する接続電極層とを確実に電気的に接続することができる。
【0031】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置において、第1の電極層は、発光性の有機化合物を含む層からの発光を反射し、第2の電極層は、発光性の有機化合物を含む層からの発光を透過する。
【0032】
特に、上面発光型のEL素子に用いる上部電極層(第2の電極層)として透光性の材料を用いる場合には、当該透光性の材料の導電性は比較的抵抗値が高い傾向にあるため、本発明の一態様の接続電極層を補助電極や接続電極として用いることにより、確実に当該上部電極層の導電性を補助することができ好適である。
【0033】
また、本発明の一態様の発光装置の作製方法は、第1の基板の一表面上に第1の電極層を形成し、第1の電極層が形成された同一表面上に凹凸形状を有する導電性の接続電極層を形成し、第1の電極層及び接続電極層上に、接続電極層の表面の一部が露出するように発光性の有機化合物を含む層を形成し、発光性の有機化合物を含む層上に、接続電極層の表面の一部と接するように、第2の電極層を形成する工程と、第2の基板の一表面上に構造物を形成する工程と、接続電極層上の第2の電極層と、構造物とが対向して接するように、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有する。
【0034】
このような方法により、メタルマスクを用いずにEL素子を構成するEL層及び上部電極層を形成しても、導電性の接続電極層と当該上部電極層とを確実に電気的に接続することが出来る。
【0035】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置の作製方法において、第1の電極層を形成した後に、第1の電極層上に絶縁層を形成し、絶縁層上に接続電極層を形成することを特徴とする。
【0036】
このような方法により、EL素子の上部電極層の補助電極として、導電性の接続電極層を、EL素子が形成される第1の基板上に設けることができる。さらに当該接続電極層は、EL層及び上部電極層を設けるよりも前に形成することが可能であるため、補助電極層を形成する際のEL素子へのダメージを排除することができる。また、上記のような補助電極層の作製方法により、メタルマスクを用いることなくEL層及び上部電極層を形成することができるため、当該メタルマスクによる不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置の作製方法において、接続電極層を形成するより前に、第1の電極層を形成する同一表面上に配線を形成し、当該配線上に接して、接続電極層を形成することを特徴とする。
【0038】
このような作製方法により、基板上に設けられた発光装置の配線(例えば封止領域外に電極を取り出すための配線や、発光装置間を接続する配線など)と、上部電極層との接続部を、メタルマスクを用いずに形成することができる。
【0039】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置の作製方法において、上記構造物に、導電性の材料を用いることを特徴とする。
【0040】
また、本発明の他の一態様は、上記発光装置の作製方法において、上記構造物は、絶縁性を有する層と、導電性を有する層とを積層して形成する。
【0041】
特に、対向基板(第2の基板)側に設けられる構造物自体が導電性、若しくは絶縁性を有する層と導電性を有する層とが積層された構造物を用いると、当該接続部における抵抗を低減させることができるため好ましい。またこのように構造物に導電性を持たせることにより、当該構造物を配線として用いることもできる。
【0042】
なお、本明細書等において、メタルマスクとは1つの発光装置内に複数の島状のパターンを形成するための開口部を有するものである。したがって、発光装置の発光領域よりも十分に外側の領域(例えば封止領域と重なる領域など)に非成膜領域を設ける、又は隣接する発光装置間に非成膜領域を設けることを目的とする領域遮蔽マスクは、メタルマスクには含まれない。なお、基板上に複数の発光装置を形成する場合、その発光装置のレイアウトによっては、当該領域遮蔽マスクは配線と重なる開口端を有している場合もある。
【0043】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられ、少なくとも発光性の有機化合物を含む層(発光層とも呼ぶ)、又は発光層を含む積層体を示すものとする。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、信頼性の高い発光装置を提供できる。より具体的には、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制された発光装置を提供できる。さらに、メタルマスクを用いずに形成可能な発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一態様の、発光装置とその作製方法を説明する図。
【図2】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図3】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図8】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図9】本発明の一態様の、EL層を説明する図。
【図10】本発明の一態様の、照明装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0047】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
【0049】
<構成例>
図1(A)は、下部電極層103、EL層105、及び上部電極層107が順に積層されたEL素子と、EL素子の上部電極層の導電性を補助するための補助電極とが設けられた基板101の断面概略図である。図1(B)は一表面上に構造物123が設けられた対向基板121の断面概略図である。図1(C)は、図1(A)に示す基板101と図1(B)に示す対向基板121とを組み合わせて形成された発光装置100の断面概略図である。
【0050】
まず、図1(A)に示す構成について説明する。基板101上には、下部電極層103、EL層105及び上部電極層107が積層された発光領域(発光領域110a及び110b)が形成されている。また、下部電極層103上には絶縁層109と補助電極層111とが積層して形成されている。
【0051】
絶縁層109は、補助電極層111と下部電極層103とを電気的に絶縁するために設けられる。また絶縁層109の形状は、その端部に近づくにしたがって膜厚が小さくなるような、いわゆるテーパ形状を有していることが好ましい。特に絶縁層109の端部では、その段差によってEL層105が分断、若しくは薄膜化すると、上部電極層107と下部電極層103とがショートしてしまう恐れがあるため、緩やかな段差形状をなしていることが好ましい。
【0052】
補助電極層111は導電性を有し、その表面が凹凸形状をなしている。凹凸形状の起伏の大きさは、形成されるEL層105の膜厚と同等かそれ以上をなしていることが好ましい。ここで表面の凹凸形状の起伏の大きさとは、表面の隣接する凸部と凹部において、最もせり出した高さから最も窪んだ高さを引いた値のうち、表面全体にわたって最も大きい値のことを言う。このような大きな起伏を有することにより、EL層105が物理的に分断された領域が形成されやすくなる。当該凹凸形状の起伏の大きさは、EL層105の発光領域における膜厚の1倍以上50倍以下、好ましくは3倍以上50倍以下、より好ましくは5倍以上50倍以下とする。
【0053】
なお図面には明瞭化のため、補助電極層111の表面の凹凸形状の起伏の大きさに対して、EL層105の厚さを誇張して明示している。以降の図面においても同様である。
【0054】
例えば上記のような大きな起伏を持った凹凸形状を有する補助電極層111は、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成することができる。印刷法に用いられる導電性ペーストは、導電性粒子と有機樹脂、及び有機溶媒を含み、焼成等の熱処理を行うことにより有機溶媒を蒸発させると共に、有機樹脂の一部が分解され、導電性粒子同士が融着して導電性の構造物を形成することができる。有機樹脂の材料や導電性粒子の粒径によっては、形成される構造物はポーラス状(多孔質状)となり、その表面に凹凸形状が形成される。導電性粒子の粒径は、好ましくは5nm以上50μm以下、より好ましくは100nm以上10μm以下とする。
【0055】
その他の作製方法としては、スパッタリング法や蒸着法などの成膜方法によって導電膜を形成した後、不要な部分の膜をエッチングして、絶縁層109上に補助電極層のパターンを形成する。その後、当該補助電極層の表面にスリット状、格子状、若しくはドット状にレジストを形成して導電膜を消失しない程度にハーフエッチングすることにより、凹凸形状を形成してもよい。また、表面に対してプラズマ処理や逆スパッタリング処理を施すことにより凹凸形状を形成してもよい。
【0056】
このような凹凸形状を表面に有する補助電極層111上にEL層105を形成すると、EL層105が物理的に分断され、補助電極層111表面の一部が露出する。続いて上部電極層107を形成すると、当該補助電極層111の露出した部分と上部電極層107とが物理的に接触する領域が形成される。
【0057】
次に、図1(B)に示す構成について説明する。対向基板121には、基板101と対向基板121とを貼り合わせたときに補助電極層111と重なる位置に構造物123が設けられる。
【0058】
図1(B)において、構造物123は、絶縁性を有する材料から構成されている突起である。また、基板101と対向基板121とを貼り合わせ、基板101側に設けられた補助電極層111上の上部電極層107と接触したときに、貼り合わせ工程における外力によって変形する程度の柔軟性を有していることが好ましい。例えば、有機樹脂などで形成すればよい。貼り合わせの際に補助電極層111の表面凹凸形状に応じて構造物123が変形することにより、上部電極層107と密着する面積が増大し、上部電極層107と補助電極層111とをより効率的に物理的に圧着させることができる。
【0059】
さらに、構造物123には、水分を吸収する乾燥剤が含まれていることが好ましい。特に、上面発光型の発光装置の場合にはその非発光領域と当該構造物123とが重なるため、発光領域の面積を犠牲にすることなく乾燥剤を封止領域内に導入することが可能となり、発光効率が高く、且つ信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0060】
また、対向基板121の表面を加工して凸状形状を形成し、構造物123として用いることもできる。対向基板121の表面を加工する方法としては、フォトリソグラフィ法や、インクジェット法などの吐出法、スクリーン印刷法などの印刷法により対向基板121の表面の凸状形状を形成する領域上にレジストを形成し、対向基板121が消失しない程度に表面をハーフエッチングすることにより形成することができる。対向基板121を加工して形成すると、対向基板121の表面に構造物123を設けた場合に比べて、当該構造物123の厚さの分だけ発光装置100の厚さを薄くすることができる。
【0061】
図1(C)には、基板101と対向基板121とを貼り合わせて形成した発光装置100を示している。
【0062】
接続部120において、基板101に設けられた絶縁層109と対向基板121に設けられた構造物123との間に、補助電極層111、EL層105及び上部電極層107の積層が挟持される。さらに、貼り合わせの際の外力によって、上部電極層107の上方から押し付けられ、上部電極層107と補助電極層111とがより確実に電気的に接続される。
【0063】
したがって、補助電極層111は、上部電極層107の導電性を補助するための補助電極として機能する。本構成では、補助電極層111をEL層105及び上部電極層107を形成するよりも前に基板101上に形成できるため、EL素子上に補助電極を形成する場合におけるEL素子へのダメージを排除することができ、信頼性の高いEL素子とすることができる。
【0064】
また、接続部120において、補助電極層111と下部電極層103とは絶縁層109を介して絶縁されているため、上部電極層107と下部電極層103とを確実に絶縁することができる。
【0065】
なお、補助電極層111を上部電極層107の導電性を補助するための補助電極として用いるには、補助電極層111と下部電極層103とが電気的に絶縁されていればよい。したがって、補助電極層111は必ずしも下部電極層103上に設けられている必要は無く、例えば下部電極層103の一部の領域に開口部を設け、当該開口部に補助電極層111を形成する構成としてもよいし、下部電極層103の外周部に補助電極層111を設ける構成としてもよい。
【0066】
このような構成の補助電極を発光装置に適用することにより、EL層と上部電極層とで異なるパターンを形成するためのメタルマスクを用いることなく、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制された信頼性の高い発光装置を作製することができる。
【0067】
ここで、EL素子の上部電極層と表面凹凸形状を有する補助電極層とが接続される接続部において、上記とは異なる構成の接続部について説明する。
【0068】
<変形例>
図2(A)に上記とは異なる構成の接続部130を有する発光装置の断面概略図を示す。
【0069】
接続部130は上記接続部120に対して、対向基板121上に設けられた構造物123上に、導電性を有する接続電極層131を有する点で異なる。
【0070】
接続電極層131は、補助電極層111と同様に、表面に凹凸形状を有することが好ましい。なお接続電極層131は、補助電極層111と同様の材料、方法により形成すればよい。このような構成とすることにより、上部電極層107との接触面積を大きくすることができるため、上部電極層107と接続電極層131との接触抵抗を低減できる。なお、接続電極層131の一部は、補助電極層111と接触していてもよい。
【0071】
また、接続電極層131は、補助電極層111と同様に、上部電極層107の導電性を補助する補助電極として機能する。したがってこのように、上部電極層107を補助電極層111と接続電極層131で挟み込むような構成とすることにより、より効果的に上部電極層107の抵抗に起因する電圧降下が抑制された、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0072】
また、図2(B)に示す接続部140のように、対向基板121に構造物123を設けずに、接続電極層141のみを直接設ける構成としても良い。このような構成とすることにより、構造物123を設ける工程を削減できるため好ましい。
【0073】
<材料及び形成方法について>
ここで、各構成に用いることのできる材料と、その形成方法について説明する。なお、材料については以下に限られず、同様の機能を有する材料であれば適宜用いることができる。
【0074】
[基板]
光射出側に設けられる基板の材料としては、ガラス、石英、有機樹脂などの透光性を有する材料を用いることができる。また光射出とは反対側に設けられる基板の場合は、透光性を有していなくともよく、上記の材料に加え金属、半導体、セラミック、有色の有機樹脂などの材料を用いることができる。導電性の基板を用いる場合、その表面を酸化させる、若しくは表面に絶縁膜を形成することにより絶縁を持たせることが好ましい。
【0075】
金属や合金などの導電性の基板の表面を絶縁処理する方法としては、陽極酸化法や電着法などがある。例えば基板としてアルミニウム基板を用いた場合、陽極酸化法により表面に形成される酸化アルミニウムは絶縁性が高いため、薄く形成できるため好ましい。また、電着法ではポリアミドイミド樹脂やエポキシ樹脂などの有機樹脂を基板表面に形成することができる。このような有機樹脂は絶縁性が高く、可撓性を有しているため、基板を曲げて使用した場合であっても表面にクラックが発生しにくいため好ましい。また、耐熱性の高い材料を選択して用いると、発光装置を駆動させたときに発生する熱で基板表面が変形してしまうことを抑制できる。
【0076】
基板として有機樹脂を用いる場合、有機樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜた基板を使用することもできる。
【0077】
特に、上面発光型の発光装置の場合、EL素子が形成される光射出とは反対側の基板には金属基板などの熱伝導性の高い基板を用いることが好ましい。EL素子を用いた大型の照明装置の場合、EL素子からの発熱が問題となる場合があるため、このような熱伝導性の高い基板を用いると放熱性が高まる。例えば、ステンレス基板のほかに、アルミニウム酸化物、ジュラルミンなどを用いると、軽量且つ放熱性を高めることができる。また、アルミニウムとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとマグネシウム酸化物との積層などを用いると、基板表面を絶縁性とすることができるため好ましい。
【0078】
[発光素子]
光射出側の電極層に用いることができる透光性を有する材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることができる。
【0079】
また、上記電極層として、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料や、これらの合金を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0080】
また、上記材料の積層膜を電極層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金と酸化インジウム酸化スズとの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。
【0081】
光射出側の電極層の膜厚は、例えば50nm以上300nm以下であり、好ましくは80nm以上130nm以下、さらに好ましくは100nm以上110nm以下である。
【0082】
EL層は、少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有する。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。
【0083】
なお、本発明の一態様では、上部電極層と下部電極層との間に、複数のEL層が設けられた発光素子(タンデム型発光素子)を適用することができる。好ましくは、2〜4層(特に3層)構造とする。また、これらのEL層の間に電子輸送性の高い材料や正孔輸送性の高い材料などを含む中間層を有していても良い。EL層の構成例は実施の形態4で詳細に説明する。
【0084】
光射出とは反対側に設けられる電極層は、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、ランタン、又はパラジウム等の金属又は当該金属材料の少なくとも1つを含む合金を用いることができる。例えば、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金、銀とマグネシウムの合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。また、電極層の材料としてアルミニウムを用いることもできるが、その場合には酸化インジウム酸化スズなどと直接接して設けると腐食する恐れがある。よって、電極層を積層構造とし、酸化インジウム酸化スズなどと接しない層にアルミニウムを用いればよい。
【0085】
なお、発光素子に用いられる導電膜は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの成膜方法により形成することができる。また、EL層は蒸着法などの成膜方法や、インクジェット法などの吐出法により形成できる。
【0086】
[絶縁層、構造物]
基板側に設けられる絶縁層や、対向基板側に設けられる構造物に用いられる材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂や、無機絶縁材料を用いることができる。また形成方法は特に限定されないが、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)などを用いればよい。
【0087】
また構造物には乾燥剤が含まれていても良い。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることができる。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0088】
[補助電極層、接続電極層]
補助電極層や接続電極層をスクリーン印刷などの印刷法で形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電性粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性ペーストを選択的に印刷する。導電性粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電膜の形成にあたり、導電性のペーストを印刷した後に焼成することが好ましい。
【0089】
また、導電膜をスパッタリング法やCVD法などの成膜方法で成膜した後に、選択的にエッチングして形成する場合では、導電膜としては上記発光素子に用いられる導電性の材料を適宜用いることができる。
【0090】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0091】
(実施の形態2)
メタルマスクを用いずに発光装置を作製する場合、基板上に設けられた配線上にEL層と上部電極層とを積層することになるが、そのままでは当該配線と上部電極層との間にはEL層が挟持されているため電気的に導通させることが困難である。しかし、実施の形態1で例示した補助電極層を接続電極として用いることにより、メタルマスクを用いずとも上部電極層と配線とを電気的に接続することが可能となる。
【0092】
そこで本実施の形態では、基板上に設けられた配線と、上部電極層との接続部の構成について、図3を用いて説明する。図3は、基板101と対向基板121とが貼り合わされて形成された発光装置において、配線と上部電極層との接続部150を含む領域の断面概略図である。
【0093】
基板101には、EL素子の上部電極層107と接続するための配線153が設けられている。また配線153の端部は隔壁155で覆われている。また配線153上に接して、接続電極層151が設けられている。さらに、隔壁155、配線153、及び接続電極層151を覆うEL層105及び上部電極層107が形成されている。
【0094】
また、対向基板121には、実施の形態1と同様に構造物123が設けられている。
【0095】
配線153は、実施の形態1で例示した下部電極層103と同一の層から形成することができる。下部電極層103と同一の層から形成すると、工程を簡略化できるため好ましい。なお、下部電極層103よりも低抵抗な異なる材料で構成されていても良い。
【0096】
隔壁155は、配線153の端部の段差によって、その上方から成膜されるEL層105及び上部電極層107などを構成する膜が断線しないために設けられる。なお、隔壁155は必要でないなら設けなくても良い。
【0097】
隔壁155の材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂、または無機絶縁材料を用いることができる。特に感光性の樹脂材料を用いて開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。具体的には、隔壁の断面が描いている曲線の曲率半径が、0.2〜2μm程度であることが望ましい。隔壁の形成方法は、特に限定されないが、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)などを用いればよい。
【0098】
接続電極層151は、配線153上に実施の形態1で例示した補助電極層111と同様の材料、方法により形成することができる。
【0099】
接続電極層151は、配線153上に接して形成され、これらは電気的に接続している。したがって、基板101と対向基板121とを貼り合わせ、構造物123が上部電極層107の上方から接触すると、上部電極層107は接続電極層151を介して配線153と確実に電気的に接続される。
【0100】
このような構成とすることにより、メタルマスクを用いずにEL層及び上部電極層を形成した場合においても、基板上に形成された配線と上部電極層とを確実に電気的に接続することができる。このような接続部150を有する発光装置は、メタルマスクに起因する不具合が排除され、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0101】
なお、実施の形態1で例示したように、対向基板121に設ける構造物123上に、凹凸形状を有する接続電極層を形成してもよいし、構造物123を設けずに、接続電極層のみが形成された構成としてもよい。対向基板側にも接続電極層を設けることにより接続部を低抵抗化させることができるため好ましい。
【0102】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0103】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で例示した補助電極層及び接続電極層が適用された発光装置の具体的な構成について図4乃至図8を用いて説明する。
【0104】
<構成例1>
図4は本発明の一態様の発光装置200の上面概略図であり、図5は、図4中の切断線A−A’における断面概略図である。なお、明瞭化のため図4には後に説明する基板、各種配線、下部電極層、補助電極層、接続電極層等の構成要素のみを明示するに留める。
【0105】
発光装置200は、基板101上に下部電極層103、EL層105、及び上部電極層107が順に積層されたEL素子を有する。
【0106】
下部電極層103の一部は、対向基板121が設けられる領域よりも外側の領域に延長されて形成され、その一部がEL素子に電力を供給するための配線213aを構成している。また、上部電極層107と接続電極層221を介して電気的に接続される配線213bも同様に、対向基板121よりも外側の領域に延長されて形成されている。
【0107】
EL層105、及び上部電極層107は、図4中に破線で示す成膜領域215よりも内側に、メタルマスクを用いずに形成される。したがって、当該成膜領域215よりも内側には、EL層105と上部電極層107とが積層されて形成される。
【0108】
対向基板121は、上記成膜領域215よりも外側の領域で、シール材217及び絶縁層209を介して基板101と接着されている。
【0109】
下部電極層103上には、絶縁層209と補助電極層211とが積層されて形成されている。ここで絶縁層209と補助電極層211とは、それぞれ実施の形態1で例示した絶縁層、及び補助電極層を適用することができる。したがって、補助電極層211上に成膜して形成されたEL層105は、当該補助電極層211の表面の凹凸形状により物理的に分断されて一部が露出し、さらにその上方に成膜して形成された上部電極層107と補助電極層211とが一部の領域で接触し、電気的に接続されている。
【0110】
さらに、補助電極層211と対向するように、対向基板121に設けられた構造物223が上方から物理的に接触することにより、上部電極層107と補助電極層211とが確実に電気的に接続された接続部220を構成している。ここで、接続部220は実施の形態1で例示した接続部の構成を適用することができる。
【0111】
また、配線213b上には、これと接して接続電極層221が設けられている。接続電極層221上にはEL層105と、EL層105を介して成膜して形成された上部電極層107と、上部電極層107と対向して接するように対向基板121に設けられた構造物223が設けられ、これらが接続部230を構成している。ここで接続部230は、実施の形態2で例示した接続部の構成を適用できる。したがって、配線213bは接続電極層221を介して上部電極層107と確実に電気的に接続されている。
【0112】
なお、下部電極層103並びに配線213a及び213bのそれぞれの端部は、隔壁225に覆われているため、当該端部の段差による上部電極層107とのショートが抑制される。また、配線213a及び配線213bの、対向基板121よりも外側の領域には、これらの表面が露出するように、隔壁225に開口部が形成されている。
【0113】
本実施の形態では、隔壁225と絶縁層209とは同一の材料、工程により形成されている。これらを同一工程で同時に形成すると、簡略化できるため好ましい。なお、例えば隔壁225と絶縁層209とを異なる厚さとする必要がある場合には、それぞれ別の工程で形成すればよい。
【0114】
シール材217は対向基板121の外周部に設けられ、基板101と対向基板121とを接着する。シール材217を形成する方法としては、スクリーン印刷などの印刷法、インクジェット法などの吐出法、ディスペンス法などの塗布法などが挙げられる。
【0115】
シール材217としては公知の材料を用いることができる。例えば、熱硬化型の材料、紫外線硬化型の材料を用いても良い。また二液混合型のエポキシ樹脂などを用いることができる。またシール材217はその接着部位によって、無機材料同士、有機材料同士、又は無機材料と有機材料とを接着することができる材料を用いる。またシール材217に用いる材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。またシール材217には乾燥剤が含まれていても良い。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることができる。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0116】
本実施の形態では、シール材217が設けられる下層に絶縁層209を有する構成としたが、シール材217と基板101及び対向基板121とが直接接触する構成としてもよい。
【0117】
ここで、EL素子を有する発光装置に接続する外部電源として、家庭用電源などの交流電源を用いる場合、外部電源と発光装置との間にAC−DCコンバータなどの電力変換装置を接続することが好ましい。例えばAC−DCコンバータは家庭用電源などの交流電源から出力される交流電圧を、発光装置を駆動させるための最適な電圧値の直流電圧に変換する。ここで、AC−DCコンバータを発光装置が設けられる基板上に設けることにより、従来の蛍光灯や電球などが接続される設備に容易に導入できる。以下、発光装置が設けられた基板上に、コンバータを搭載する場合の構成例について説明する。
【0118】
発光装置200とコンバータとを同一基板上に設けた構成の例を図6(A)に示す。基板101上には発光装置200と、コンバータ243と、接続電極245a及び245bとが設けられている。コンバータ243の入力側の端子は、家庭用電源などの電源に接続するための接続電極245a及び245bに電気的に接続されている。またコンバータ243の出力側の2つの端子のうち一方は配線247aを介して発光装置200の配線213aと電気的に接続されており、他方の端子は、配線247bを介して配線213bと電気的に接続している。なお、配線247aと配線213a、及び配線247bと配線213bとは隔壁225に設けられた開口部を介して電気的に接続されている。
【0119】
コンバータ243としては、例えば家庭用電源などの電源から供給される交流電圧を、発光装置200を駆動するための最適な直流電圧に変換するAC−DCコンバータを用いることができる。コンバータ243は発光装置200の配線213a及び213bと電気的に接続され、変換後の直流電圧を発光装置200に供給することにより、発光装置200を駆動させる。
【0120】
また、図6(B)に示すように、基板101上に一対の発光装置200を設け、これらを外部に設けた配線(配線247c、247d、247e)を用いて直列接続になるように接続し、ひとつのコンバータ243で駆動させる構成としても良い。発光装置200を直列接続させることにより、実効的に装置全体の駆動電圧を高めることができるため、発光装置単体に比べてコンバータ243の電力変換効率を高めることができる。なお、ここでは2つの発光装置を直列接続させる構成としたが、3以上の複数の発光装置を直列に接続しても良いし、並列に接続させる構成としてもよい。また、直列接続と並列接続を組み合わせて接続しても良い。複数の発光装置を接続することにより、発光装置1つに対するコンバータ243の数を減らせるため好ましい。
【0121】
以上が、発光装置200の構成についての説明である。
【0122】
続いて、上記とは異なる態様の発光装置について例示する。
【0123】
<構成例2>
多くの場合、家庭用の交流電圧から発光装置を駆動させるための直流電圧に変換するAC−DCコンバータは、その変換後の電圧値が低いほど、その変換効率が悪化する傾向がある。そこで、複数のEL発光装置を直列に接続して装置全体としての実効的な駆動電圧を高めることにより、AC−DCコンバータの変換効率を向上させることが可能となる。以下では、複数のEL素子が直列に接続された発光装置の態様について説明する。
【0124】
なお、ここでは発光装置200と共通する箇所については説明を省略する。
【0125】
図7及び図8に示す発光装置250は、3つのEL素子がそれぞれ直列に接続された発光装置である。図7に発光装置250の上面概略図を、また図8に図7中の切断線B−B’における断面概略図を示す。なお、明瞭化のため図7には基板、各種配線、下部電極層、補助電極層、接続電極層、分離層等の構成要素のみを明示するに留める。
【0126】
第1の下部電極層103aの一部は、対向基板121が設けられる領域よりも外側に延長された領域において外部電源等と接続する配線213cを構成している。また、配線213dはその一部が対向基板121の内側の領域に形成され、当該領域で接続電極層221cを介して第3の上部電極層107c(図示しない)と電気的に接続されている。
【0127】
第1の下部電極層103a上には第1のEL層105a及び第1の上部電極層107aが形成され、第1のEL素子を構成している。同様にして第2の下部電極層103b上には第2のEL層105b及び第2の上部電極層107bが形成されて第2のEL素子が構成され、第3の下部電極層103c上には第3のEL層105c(図示しない)及び第3の上部電極層107cが形成されて第3のEL素子が構成されている。
【0128】
ここで、第1の下部電極層103a上には絶縁層209、及び補助電極層211aが形成されている。さらに、対向基板121の補助電極層211aと重なる領域に構造物223が形成され、接続部220aを構成している。当該接続部220aにおいて、第1の上部電極層107aと補助電極層211aとが確実に電気的に接続されることにより、補助電極層211aによって第1の上部電極層107aの導電性を補助することができる。
【0129】
同様に、第2の下部電極層103b上には補助電極層211bを有する接続部220b(図示しない)が形成され、第3の下部電極層103c上には補助電極層211cを有する接続部220c(図示しない)が形成されている。
【0130】
第2の下部電極層103b上には、絶縁層209を介して分離層227aが形成されている。分離層227aは、その上方から成膜される膜を物理的に分断する。
【0131】
分離層227aとしては、絶縁性を有し、且つその側面が逆テーパ形状をなしている構造物を用いることができる。また、その形状がT字形状であってもよい。このような形状を有する分離層227aの上方から膜を成膜すると、その側面が被形成面と平行な方向にせり出した領域に覆われた領域に膜が成膜されないため、当該分離層227aを境に成膜された膜を物理的に分断することができる。
【0132】
分離層227aを形成する方法としては、例えばネガ型の感光性を有する有機樹脂を用い、露光、現像処理を施すことにより形成することができる。この際、露光量が基板101に近いほど小さくなるように露光条件を調整することにより、逆テーパ形状の分離層227aを形成することができる。また、露光範囲と露光条件を調整して複数回露光しT字形状の分離層227aを形成してもよい。また、複数の材料からなる膜を積層しフォトリソグラフィ法を用いて加工して形成してもよい。その場合、エッチング速度の違いを利用して下層の側面が後退するようにエッチングしてT字形状の分離層227aを形成してもよい。
【0133】
このように、第2の下部電極層103b上に設けられた分離層227aによって、当該分離層227aの上方から成膜して形成されたEL層は、EL層105aとEL層105bとに物理的に分断される。また同様に上部電極層107aと上部電極層107bとは物理的、電気的に分断される。
【0134】
また、分離層227aと第1のEL素子との間の領域には、接続部230aが設けられている。接続部230aにおいて、第2の下部電極層103b上に接続電極層221aが電気的に接続するように形成されている。さらに、対向基板121上には、接続電極層221aと対向する構造物223が形成されている。したがって、接続部230aにおいて上部電極層107aと下部電極層103bとが接続電極層221aを介して電気的に接続される。
【0135】
このように、第2の下部電極層103b上に接続部230aと分離層227aを設けることにより、第1のEL層と第2のEL層とが直列に接続されている。
【0136】
同様に、第3の下部電極層103c上には接続電極層221bを有する接続部230b(図示しない)と、分離層227b(図示しない)とが設けられ、第2のEL素子と第3のEL素子とが直列に接続されている。
【0137】
また、配線213d上には接続電極層221cを有する接続部230c(図示しない)が設けられており、当該接続部230cにおいて第3のEL素子の上部電極層107cと配線213dとが確実に電気的に接続されている。
【0138】
このようにして、配線213c、第1のEL素子、第2のEL素子、第3のEL素子、及び配線213dは全て直列に接続されている。したがって、配線213cと213dとの間に電圧を印加することにより、3つのEL素子が直列接続された発光装置250を駆動することができる。
【0139】
ここで、EL層及び上部電極層となる膜を成膜する際、図7中に破線で示す成膜領域215よりも内側に、メタルマスクを用いずに形成すると、当該成膜領域215よりも内側には、EL層と上部電極層とが積層されて形成される。しかし、上述のように接続部に本発明の一態様の補助電極層や接続電極層を設けることにより、これらと上部電極層との間にEL層が介在していても確実に電気的に接続することができる。したがって、メタルマスクを用いずにEL層及び上部電極層を形成することができるため、当該メタルマスクに起因する不具合が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0140】
このような構成の発光装置250は、複数のEL素子が直列に接続されているため、実効的な駆動電圧が高められている。したがってこれに接続されるAC−DCコンバータの変換効率の低下が抑制され、結果的に省電力な発光装置とすることができる。また、それぞれのEL素子の上部電極層と確実に電気的に接続される補助電極によって、EL素子の上部電極層の導電性が補助され、当該上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制された発光装置とすることができる。
【0141】
本実施の形態で例示した発光装置は、補助電極層が上部電極層の導電性を補助する補助電極として機能するため、発光装置の発光部の面積が大きい場合であっても、上部電極層の抵抗に起因する電圧降下が抑制され、発光輝度の分布が改善された、信頼性の高い発光装置とすることができる。さらに、上部電極層と電気的に接続する配線上に接続電極層を形成することにより、メタルマスクを用いることなくEL層及び上部電極層を形成することが可能となり、メタルマスクを用いた場合における不具合が抑制され、より信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0142】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0143】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に適用できるEL層の一例について、図9を用いて説明する。
【0144】
図9(A)に示すEL層105は、第1の電極層713と第2の電極層717の間に設けられている。第1の電極層713及び第2の電極層717は、上記実施の形態で例示した下部電極層または上部電極層と同様の構成を適用することができる。
【0145】
本実施の形態で例示するEL層105を有する発光素子は、上記実施の形態で例示した発光装置に適用可能である。
【0146】
EL層105は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていればよい。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、EL層105は、第1の電極層713側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。なお、これらを反転させた積層構造としてもよい。
【0147】
図9(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0148】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0149】
また、低分子の有機化合物である芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0150】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。また、酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0151】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、第1の電極層713からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、第1の電極層713からEL層105への正孔注入が容易となる。
【0152】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0153】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、芳香族アミン化合物や、カルバゾール誘導体、そのほか正孔移動度の高い芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0154】
また、電子受容体としては、有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0155】
なお、高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0156】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、芳香族アミン化合物を用いることができる。これらは主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0157】
また、正孔輸送層702には、カルバゾール誘導体や、アントラセン誘導体や、そのほか正孔輸送性の高い高分子化合物を用いてもよい。
【0158】
発光性の有機化合物を含む層703は、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0159】
なお、発光性の有機化合物を含む層703としては、発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0160】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するために結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うために、さらに異なる物質を添加してもよい。
【0161】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光性の有機化合物を含む層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0162】
また、発光性の有機化合物を含む層703として高分子化合物を用いることができる。
【0163】
また、発光性の有機化合物を含む層を複数設け、それぞれの層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、発光性の有機化合物を含む層を2つ有する発光素子において、第1の発光性の有機化合物を含む層の発光色と第2の発光性の有機化合物を含む層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、発光性の有機化合物を含む層を3つ以上有する発光素子の場合でも同様である。
【0164】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0165】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0166】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0167】
EL層は、図9(B)に示すように、第1の電極層713と第2の電極層717との間に複数積層されていてもよい。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0168】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0169】
EL層105は、図9(C)に示すように、第1の電極層713と第2の電極層717との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び第2の電極層717と接する複合材料層708を有していてもよい。
【0170】
第2の電極層717と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて第2の電極層717を形成する際に、EL層105が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0171】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0172】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0173】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0174】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0175】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。
【0176】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0177】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0178】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0179】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。特に、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高い材料を用いることが好ましい。
【0180】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0181】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいてもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0182】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0183】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すればよい。
【0184】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すればよい。
【0185】
以上により、本実施の形態のEL層105を作製することができる。
【0186】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0187】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を用いて完成させた照明装置の一例について、図10を用いて説明する。
【0188】
本発明の一態様では、発光部が曲面を有する照明装置を実現することができる。
【0189】
本発明の一態様の発光装置は、自動車の照明にも適用することができ、例えば、ダッシュボードや、天井等に照明を設置することもできる。
【0190】
図10(A)では、本発明の一態様の発光装置を適用した、室内の照明装置901、卓上照明器具903、及び面状照明装置904を示す。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、厚みが薄いため、壁に取り付けて使用することができる。その他、ロール型の照明装置902として用いることもできる。
【0191】
図10(B)に別の照明装置の例を示す。図10(B)に示す卓上照明装置は、照明部9501、支柱9503、支持台9505等を含む。照明部9501は、本発明の一態様の発光装置を含む。このように、本発明の一態様では、曲面を有する照明装置、又はフレキシブルに曲がる照明部を有する照明装置を実現することができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置として用いることで、照明装置のデザインの自由度が向上するのみでなく、例えば、自動車の天井、ダッシュボード等の曲面を有する場所にも照明装置を設置することが可能となる。
【0192】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0193】
100 発光装置
101 基板
103 下部電極層
103a 下部電極層
103b 下部電極層
103c 下部電極層
105 EL層
105a EL層
105b EL層
105c EL層
107 上部電極層
107a 上部電極層
107b 上部電極層
107c 上部電極層
109 絶縁層
111 補助電極層
120 接続部
121 対向基板
123 構造物
130 接続部
131 接続電極層
140 接続部
141 接続電極層
150 接続部
151 接続電極層
153 配線
155 隔壁
200 発光装置
209 絶縁層
211 補助電極層
211a 補助電極層
211b 補助電極層
211c 補助電極層
213a 配線
213b 配線
213c 配線
213d 配線
215 成膜領域
217 シール材
220 接続部
220a 接続部
220b 接続部
220c 接続部
221 接続電極層
221a 接続電極層
221b 接続電極層
221c 接続電極層
223 構造物
225 隔壁
227a 分離層
227b 分離層
230 接続部
230a 接続部
230b 接続部
230c 接続部
243 コンバータ
247a 配線
247b 配線
247c 配線
247d 配線
247e 配線
250 発光装置
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光性の有機化合物を含む層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
713 第1の電極層
717 第2の電極層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層
901 照明装置
902 照明装置
903 卓上照明器具
904 面状照明装置
9501 照明部
9503 支柱
9505 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と、発光性の有機化合物を含む層と、第2の電極層とが積層された発光素子を備え、
前記第2の電極層は、表面に凹凸形状を有する導電性の接続電極層と、構造物とに挟持され、且つ前記第2の電極層と前記接続電極層とが電気的に接続する、発光装置。
【請求項2】
前記接続電極層は、前記第1の電極層上に絶縁層を介して設けられた、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記接続電極層は、配線上に接して設けられ、
前記第2の電極層と前記配線とが電気的に接続する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記構造物は、導電性を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項5】
前記構造物は、絶縁性を有する層と、導電性を有する層とが積層されてなり、
前記導電性を有する層が前記第2の電極層と電気的に接続された、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の電極層は、前記発光性の有機化合物を含む層からの発光を反射し、
前記第2の電極層は、前記発光性の有機化合物を含む層からの発光を透過する、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の発光装置。
【請求項7】
第1の基板の一表面上に第1の電極層を形成し、
前記第1の電極層が形成された同一表面上に凹凸形状を有する導電性の接続電極層を形成し、
前記第1の電極層及び前記接続電極層上に、前記接続電極層の表面の一部が露出するように発光性の有機化合物を含む層を形成し、
前記発光性の有機化合物を含む層上に、前記接続電極層の表面の一部と接するように、第2の電極層を形成する工程と、
第2の基板の一表面上に構造物を形成する工程と、
前記接続電極層上の前記第2の電極層と、前記構造物とが対向して接するように、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる工程と、を有する、発光装置の作製方法。
【請求項8】
請求項7に記載の発光装置の作製方法において、
前記第1の電極層を形成した後に、前記第1の電極層上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層上に前記接続電極層を形成する、発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の発光装置の作製方法において、
前記接続電極層を形成するより前に、前記第1の電極層を形成する同一表面上に配線を形成し、
前記配線上に接して、前記接続電極層を形成する、発光装置の作製方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一に記載の発光装置の作製方法において、
前記構造物に、導電性の材料を用いる、発光装置の作製方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項9のいずれか一に記載の発光装置の作製方法において、
前記構造物は、絶縁性を有する層と、導電性を有する層とを積層して形成する、発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−216522(P2012−216522A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68766(P2012−68766)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】