説明

発光装置、及び発光装置の製造方法

【課題】 隔壁により区画された開口領域に膜厚の均一化が図られた発光層を備えてなる、発光装置、及び発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 隔壁150によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口領域151に発光層を含む機能層が設けられてなる発光装置である。開口領域151には、長辺部と直交する方向の長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部が、長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置の画素を構成する薄膜パターンを形成する手法として、隔壁により区画された開口領域に液体吐出ヘッドから機能液を吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いる方法が知られている。
このようなインクジェット法を適用した一例として、有機EL装置における発光層を製造する技術がある(例えば特許文献1参照)。このとき、隔壁により区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状である長円形状(トラック形状)の画素形成領域に、発光層となる機能材料の配置をインクジェット法により行っている。
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような長円形状からなる画素形成領域(開口領域)に機能液を配置すると、画素形成領域の中央部の膜厚が厚くなり、前記画素形成領域の外周縁部の膜厚が薄くなり、画素形成領域に配置された機能液の膜厚に差が生じた状態となってしまう。また、画素形成領域は上述したように略矩形形状となっているので、特に長辺部の長さ方向に沿って生じた機能液の膜厚差は画素形成領域全体の膜厚に大きな影響を及ぼしてしまう。
このような状態のもとで、乾燥された機能液から構成された発光層は膜厚が不均一なものとなり、したがって有機EL装置の表示特性を低下させてしまう。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、隔壁により区画された開口領域に膜厚の均一化が図られた発光層を備えてなる、発光装置、及び発光装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発光装置は、隔壁によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口領域に発光層を含む機能層が設けられてなる発光装置において、前記開口領域には、前記長辺部と直交する方向の該長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部が、前記長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に、設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明の発光装置によれば、長辺部間の幅を狭め、前記長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部を備えた略矩形形状の開口領域を備えている。よって、例えば液滴吐出法を用いて前記開口領域に機能層を構成する機能液を吐出した際に、前記狭窄部の幅が、他の開口領域の幅に比べて狭められているので、機能液の表面張力によって狭窄部に保持される機能液量が減少し、結果として膜厚が薄くなる。また、開口領域の両端部は狭窄部に比べて幅が広くなっているので、開口領域の長辺部の長さ方向における両端部に保持される機能液量を増加させ、相対的に膜厚が厚くなる。すなわち、開口領域に配置された機能液全体の膜厚に影響する長辺部の長さ方向に沿った機能液の膜厚を、長辺部間の幅を狭める前記狭窄部を設けたことでより均一になるので、前記開口領域全体の膜厚の均一化を図ることができる。
よって、従来の狭窄部を有しない矩形形状の開口領域に機能液を配置した場合に比べ、本構成によれば、前記狭窄部に配置される機能液の膜厚を軽減し、開口領域の長辺部の長さ方向に沿った両端部に配置される機能液の膜厚を相対的に厚くすることで、開口領域に配置される機能液全体としての膜厚を均一にすることができる。したがって、このように均一な膜厚の機能液を乾燥して形成された機能層は、正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたものとなり、この機能層を備えた発光装置は信頼性の高いものとなる。
【0007】
また、上記発光装置においては、前記開口領域は、長辺部の長さが短辺部の長さの2倍以上となっているのが好ましい。
このような大きさの開口領域に機能液を配置する場合、より膜厚が不均一なものとなりやすくなっているので、狭窄部を備えたことによる上述した膜厚の均一化の効果がより高いものとなる。
【0008】
また、上記発光装置においては、前記長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部は、前記開口領域における最大幅の90%以下となっているのが好ましい。
このようにすれば、開口領域に狭窄部を備えることで生じる、上述した機能層の膜厚を均一にする効果をより高めることが可能となる。
【0009】
また、上記発光装置においては、前記開口領域の、前記狭窄部に接続する該狭窄部以外の領域は、これを区画する隔壁の内縁が曲線状になっているのが好ましい。
このようにすれば、例えば液滴吐出法を用いることで前記開口領域に機能層を形成する液滴材料を設ける際に、曲線に囲まれた領域を設けたことで隔壁上における液滴の塗り残しを防止して、開口領域内に液滴を安定して充填することができる。
【0010】
また、上記発光装置においては、前記開口領域は複数の前記狭窄部を備えてなり、該各狭窄部は前記短辺部の長さよりも短い間隔でそれぞれ配置されているのが好ましい。
このようにすれば、狭窄部を複数備えたことで機能層の膜厚を均一にする効果をより向上させることが可能となる。
【0011】
本発明の発光装置の製造方法は、隔壁によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口領域に発光層を含む機能層を設ける発光装置の製造方法において、長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に、前記長辺部に直交する方向の該長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部を有した開口領域を区画する隔壁を形成する工程と、前記開口領域に前記機能層を配置する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の発光装置の製造方法は、長辺部間の幅を狭め、前記長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部を備えた略矩形形状の開口領域を有している。よって、例えば液滴吐出法を用いて前記開口領域に機能層を構成する機能液を吐出した際に、前記狭窄部の幅が、他の開口領域の幅に比べて狭められているので、機能液の表面張力によって狭窄部に保持される機能液量が減少し、結果としてその膜厚が薄くなる。また、開口領域の両端部は狭窄部に比べて幅が広くなっているので、開口領域の長辺部の長さ方向における両端部に保持される機能液量を増加させ、相対的に膜厚が厚くなる。すなわち、開口領域に配置された機能液全体の膜厚に影響する長辺の長さ方向に沿った機能液の膜厚を、長辺部間の幅を狭める前記狭窄部を設けたことでより均一になるので、前記開口領域全体の膜厚の均一化を図ることができる。
よって、従来の狭窄部を有しない矩形形状の開口領域に機能液を配置した場合に比べ、本構成によれば、前記狭窄部に配置される機能液の膜厚が薄くなり、開口領域の両端部に配置される機能液の膜厚が厚くなることで、開口領域に配置される機能液全体としての膜厚をより均一なものとすることができる。したがって、このように均一な膜厚の機能液を乾燥して形成された機能層は、正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたものとなり、この機能層を備えた信頼性の高い発光装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術範囲は本実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(発光装置)
本実施形態では、本発明に係る発光装置及びその製造方法として、有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)を例示してその構成及び製造方法について説明する。
ここで、有機EL装置とは、有機EL素子を画素として基体上に配列してなるものであって、例えば電子機器等の表示手段として好適に採用されている。
【0015】
図1は、同有機EL装置70に備えられた各画素71の平面構造を示す図であって、図1(a)は画素71のうち、主にTFT等の画素駆動部分を示す図、図1(b)は画素間を区画するバンク(隔壁)等を示す図である。
【0016】
図1(a)に示すように、有機EL装置70の画素71の平面構造は、矩形状の画素電極141の四辺が、信号線132、電源線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた状態に構成されたものとなっている。そして、走査線131及び信号線132の各交点に対応して画素71が設けられている。そして、有機EL装置70は、バンク(隔壁)によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口部(開口領域)151を備えている。
【0017】
この開口部151を区画する隔壁は、図1(b)に示すように、有機バンク150を主体として構成されたものである。
そして、前記開口部151の内周に沿って、有機バンク150の下層側には無機材料からなる無機バンク149が形成されている。よって、図4に示すように、無機バンク149上に有機材料からなる前記有機バンク150が積層されることで、この有機EL装置70における隔壁部材を成している。
【0018】
本実施形態では、前記有機バンク150及び無機バンク149は相似形状となっていて、平面視した状態で略重なった状態となっている。そして、図4に示されるように、これら有機バンク150及び無機バンク149によって形成される開口部151内で前記有機機能層140と画素電極141とが接触し電気的に接続している。
【0019】
本実施形態では、図1(b)に示したように、画素電極141上には、前記有機バンク150により区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状である開口部(開口領域)151が設けられていて、具体的に該開口部151は丸みを帯びた四隅を有した角型形状となっている。そして、この開口部151には、前記長辺部に直交する方向の該長辺部間の幅を狭められてなる狭窄部152が設けられている。この狭窄部152は、前記長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に設けられていて、角型鉄アレイ形状となっている。
詳細については後述するように、前記開口部151には発光層を含む有機機能層(機能層)140が備えられてなるものである(図4参照)。なお、有機機能層140は、電荷輸送層としての正孔注入層140Aと、発光層140Bとが積層されて構成されたものである。
【0020】
図2は、前記開口部151の平面形状を示す図である。ここで、図2を参照して、開口部151の形状を定める、長辺部及び短辺部について説明する。なお、本発明における略矩形形状とは、直線で構成された開口部のみだけでなく、全体として細長い形状、すなわち矩形で示される形状を有していれば、湾曲部分を含む形状も含んでいることを意味している。
【0021】
前記開口部151の平面形状は上述したように角型鉄アレイ形状となっており、この開口部151の形状に外接する短辺及び長辺を有した矩形領域を図2中の2点鎖線で示す。このように、本発明における略矩形状の開口領域(開口部151)とは、その外形形状が矩形領域に含まれるものを意味している。
また、前記開口部151は前記矩形領域の長辺と短辺とが交わる四隅が湾曲した状態で連続している。
【0022】
ここで、開口部151をなす辺のうち、矩形領域(2点鎖線)の短辺に沿って、矩形領域の長辺に連続する部分までの辺を前記開口部151の短辺部LSと呼ぶ。そして、前記矩形領域の長辺の長さ方向に沿って、開口部151の短辺部LS間を接続している辺を、該開口部151の長辺部LLと呼ぶ。
また、開口領域の短辺の長さ(長辺間の幅)を開口部151における幅Hとする。すなわち該幅Hは、前記開口部151の長辺部LLに直交する方向の該長辺部LL間の幅となる。
そして、前記長辺部LLの長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に開口部151の幅Hを狭める狭窄部152が設けられている。なお、前記短辺部LSは、前記長辺部LLの長さ方向における両端部に含まれるものとする。
【0023】
なお、前記開口部151の形状は上記形状に限定されることはなく、例えば図2に示す狭窄部152は、開口領域における長辺間の幅が両側から狭められた形状となっているが、少なくとも一方の長辺側の幅を狭める、矩形状の領域に対し凹状となる狭窄部を有した開口形状としてもよい。
【0024】
また、上述したように、前記開口部151には有機機能層140が配置されており、該有機機能層140は、後述する液滴吐出法(以下、インクジェット法とも呼ぶ)により配置された機能液を乾燥して形成されたものである。なお、機能液とは、例えば機能材料を溶剤中に溶解又は分散させた液状組成物等である。
【0025】
ところで、一般に、従来の狭窄部を有しない矩形形状(例えば、長円形状)の開口部にインクジェット法によって有機機能層を構成する機能液を配置した場合には、機能液の膜厚を均一にすることが難しかった。
図3は開口部に機能液を配置した際の、開口部の短辺の中央部における長辺の長さ方向断面での機能液の液面を示す図であり、図3(a)は従来の狭窄部を有しない開口部を示し、図3(b)は、本構成の狭窄部152を有した開口部151を示している。
【0026】
上述した機能液の膜厚を均一にできない理由として、従来は、図3(a)に示すように、開口部に吐出された機能液は、その膜厚が開口部の中央部で厚くなり、開口部の端縁部で膜厚が薄くなってしまっていた。
ここで、前記開口部は、上述したように矩形形状となっているので、特に、長辺の長さ方向に沿って機能液の膜厚にばらつきが生じると、開口部に配置される機能液の膜厚の平坦性を得ることが難しくなる。
このような、平坦性の低い機能液を乾燥処理することにより得られる有機機能層は、膜厚が不均一となってしまい、有機EL装置の表示特性を低下させてしまう。
【0027】
そこで、本実施形態における有機EL装置70では、前記開口部151の長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部152を設けている。
よって、従来の狭窄部を有しない矩形形状の開口領域に機能液を配置した場合に比べ、本構成によれば、前記狭窄部152が、開口部151の幅を狭めているので、機能液の表面張力によって狭窄部152に保持される機能液量が減少し、結果として膜厚が薄くなる。また、開口部151の長辺部の長さ方向における両端部は狭窄部152に比べて幅が広くなっているので、開口部151の両端部に保持される機能液量を増加させ、相対的に膜厚が厚くなり、図3(b)に示すように膜厚が均一なものとなる。このように、開口部151に配置された機能液全体の膜厚に特に影響する長辺部LLの長さ方向に沿った機能液の膜厚を、前記狭窄部152によって均一なものとしているので、開口部151全体としての膜厚を均一なものにできる。
【0028】
ここで、前記狭窄部152は前記長辺部の中心部に設けられていることがより好ましい。このようにすることで、膜厚が最も高くなりやすい部分の膜厚を押さえることができるので、開口部151に平坦性の高い状態で機能液を配置することが可能となる。
また、前記開口部151は、長辺部LLの長さが短辺部LSの長さの2倍以上となっているのが好ましい。このような大きさの開口部151に有機機能層140の液体材料を配置すると、膜厚が不均一なものとなり、本発明の狭窄部152を備えたことで生じる、上述した膜厚の均一化の効果がより顕著なものにできる。また、前記長辺部間の幅を狭める狭窄部152は、前記開口部151における最大となる幅Hの90%以下となっているのが好ましい。これにより、開口部151に狭窄部152を設けた際に生じる、上述した有機機能層140の膜厚を均一化する効果をより高めることが可能となる。
【0029】
また、図4に示すように画素71の断面構造は、基体P上に、駆動用TFT143が設けられており、駆動用TFT143を覆って形成された複数の絶縁膜を介した基体P上に、有機EL素子200が形成されている。
有機EL素子200は、画素電極141上に、有機機能層140と有機バンク150とを覆う共通電極154を形成することにより構成されている。また、前記有機機能層140を構成する正孔注入層140Aは、画素電極141を覆って形成されており、その周端部は、有機バンク150の下層側に設けられた無機バンク149のうち、有機バンク150から画素電極141中央側に突出して配置された部分も覆って形成されている。
【0030】
前記駆動用TFT143は、半導体膜210に形成されたソース領域143a、ドレイン領域143b、及びチャネル領域143cと、半導体層表面に形成されたゲート絶縁膜220を介してチャネル領域143cに対向するゲート電極143Aとを主体として構成されている。半導体膜210及びゲート絶縁膜220を覆う第1層間絶縁膜230が形成されており、この第1層間絶縁膜230を貫通して半導体膜210に達するコンタクトホール232,234内に、それぞれドレイン電極236、ソース電極238が埋設され、各々の電極はドレイン領域143b、ソース領域143aに導電接続されている。
【0031】
第1層間絶縁膜230には、第2層間絶縁膜240が形成されており、この第2層間絶縁膜240に貫設されたコンタクトホールに画素電極141の一部が埋設されている。そして画素電極141とドレイン電極236とが導電接続されることで、駆動用TFT143と画素電極141(有機EL素子200)とが電気的に接続されている。
【0032】
基体Pとしては、いわゆるボトムエミッション型の有機EL装置の場合、基体P側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板が用いられる。一方、いわゆるトップエミッション型の有機EL装置の場合には、有機EL素子200が配設された側から光を取り出す構成であるので、ガラス等の透明基板のほか、不透明基板も用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0033】
画素電極141は、基体Pを介して光を取り出すボトムエミッション型の場合には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透光性導電材料により形成されるが、トップエミッション型の場合には透光性である必要はなく、金属材料等の適宜な導電材料によって形成できる。
【0034】
共通電極154は、発光層140Bと有機バンク150の上面、さらには有機バンク150の側面部を形成する壁面を覆った状態で基体P上に形成される。この共通電極154を形成するための材料としては、トップエミッション型の場合、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適であるが、他の透光性導電材料であっても構わない。ボトムエミッション型の場合には、透明導電材料のほか、アルミニウム等の不透明若しくは光反射性を有する導電材料を用いることができる。
【0035】
共通電極154の上層側には、陰極保護層を形成してもよい。係る陰極保護層を設けることで、製造プロセス時に共通電極154が腐食されるのを防止する効果が得られ、無機化合物、例えば、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン窒酸化物等のシリコン化合物により形成できる。共通電極154を無機化合物からなる陰極保護層で覆うことにより、無機酸化物からなる共通電極154への酸素等の侵入を良好に防止することができる。
なお、このような陰極保護層は、共通電極154の平面領域の外側の基体P上まで、10nmから300nm程度の厚みに形成される。
【0036】
なお、本実施形態の有機EL装置70は、画素電極141を陽極とし、共通電極154を陰極とした構造を採用したが、これとは逆に画素電極141を陰極とし、共通電極154を陽極とする構造を採用することも可能である。この場合、画素電極と発光層との間に必要に応じて電子注入層が形成されることとなる。
【0037】
続いて、前記有機EL装置70の等価回路について図を参照し説明する。図5は、有機EL装置70の回路構成を示す図である。なお、図5に示される回路図は、図1(a)に示した画素71に対応するものである。
図5に示すように、有機EL装置70は、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の電源線133とがそれぞれ配線接続されたものである。
【0038】
また、信号線132には、シフトレジスタ、レベルシフタ等を備えるデータ側駆動回路72が設けられている。一方、走査線131には、シフトレジスタ、レベルシフタ等を備える走査側駆動回路73が設けられている。また、画素71の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT(薄膜トランジスタ)142と、このスイッチング用TFT142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用TFT143とが設けられ、この駆動用TFT143を介して電源線133に電気的に接続した際に電源線133から駆動電流が画素電極141に流れ込むようになっている。
【0039】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されてスイッチング用TFT142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、この保持容量capの状態に応じて、駆動用TFT143のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT143のチャネルを介して電源線133から画素電極141に電流が流れ、さらに有機機能層140を通じて共通電極154に電流が流れることにより、この電流量に応じて前記有機機能層140が発光する。
【0040】
上記構成を備えた本実施形態の有機EL装置70では、長辺部LL間の幅を狭め、前記長辺部LLの長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部152を備えた略矩形形状の開口部151を備えている。よって、後述する製造方法における液滴吐出法によって、前記開口部151に有機機能層140を配置する際には、前記狭窄部152の幅が、他の開口部151の幅Hに比べて狭められているので、機能液の表面張力によって狭窄部152に保持される機能液量が減少し、結果として膜厚が薄くなる。また、開口部151の両端部は狭窄部152に比べて幅が広くなっているので、開口部151の長辺部LLの長さ方向における両端部に保持される機能液量を増加させ、相対的に膜厚が厚くなる。
よって、狭窄部152を有しない従来の矩形形状の開口部に機能液を配置した場合に比べ、本構成によれば、前記狭窄部152に配置される機能液の膜厚を軽減し、開口部151の長辺部LLの長さ方向に沿った両端部に配置される機能液の膜厚を相対的に厚くすることで、開口部151に配置される機能液全体としての膜厚が均一なものとなる。
したがって、このように均一な膜厚の機能液を乾燥して形成された前記有機機能層140は、正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたものとなり、この有機機能層140を備えた本発明の有機EL装置70は信頼性の高いものとなる。
【0041】
(開口部の変形例)
以上、図1及び図2に示した角型形状の開口部151を有した有機EL装置70について説明したが、本発明の有機EL装置は上記例に限定されない。
次いで、開口部の変形例について説明する。
【0042】
図6(a)〜(c)は、開口部の変形例を示す図であり、具体的には有機バンクにより区画される開口部の平面形状、狭窄部の位置、及び狭窄部の数が前記開口部151と異なる以外の基本構成は、上述した有機EL装置70と同一の構成を有している。また、図6中においては、図示を簡略化するために無機バンクの図示を省略しているが、上記開口部151と同様に無機バンクと有機バンクとは相似形状となっている。また、図6中に示す開口部は、前記開口部151と同様に、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状からなるものであって、長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部を有している。
【0043】
ここで、図6(a)〜(c)に示される開口部151a,151b,151cそれぞれは、図2を参照して説明した開口部151における長辺部LL及び短辺部LSの定義に基づいて定められる。具体的には、図6中、破線で示される辺が開口部(151a〜c)の短辺部を示し、実線で示される辺が開口部(151a〜c)の長辺部を示している。
【0044】
図6(a)は開口部の第1の変形例を示す図である。
図6(a)に示すように、第1の変形例としての開口部151aは、図1、及び図2に示した狭窄部152以外の開口部を区画する有機バンク150の内縁を円形状としている。具体的には、角型鉄アレイ形状の開口部151を円形鉄アレイ形状の開口部151aとしている。
このような開口部151aにすれば、液滴吐出法によって開口部151aに機能液を設ける際に、開口部151の幅広部を円形(円弧)状にしたことで、該幅広部によって機能液の塗り残しを防止することができる。また、円形状の幅広部を備えたことで、同一の曲率の曲線で囲まれた領域が広がるため、機能液が均一に濡れ拡がって配置された機能液の膜厚の均一性をより向上できる。
【0045】
また、図6(b)は開口部の第2の変形例を示す図である。
図6(b)に示すように、第2の変形例としての開口部151bは、図6(a)に示した開口部151aにおける狭窄部152に接続する該狭窄部152以外の領域を区画する有機バンク150の内縁を曲線状としたものとなっている。
すなわち、開口部151bは、角部が無く全体が曲線により囲まれた繭型形状となっている。よって、液滴吐出法により、該開口部151bに有機機能層140の機能液を配置する際に、開口部151bが曲線のみによって囲まれた領域となっているので、開口部151b内に機能液が良好に濡れ広がり、有機バンク上における機能液の塗り残しを防止し、開口部151内に機能液を安定して充填できる。
【0046】
また、図6(c)は開口部の第3の変形例を示す図である。
図6(c)に示すように、第3の変形例としての開口部151cは、連続した3つの円形形状が組み合わされて構成されたもので、それぞれの円形が重なった2箇所を狭窄部152として備えたものである。このとき、前記各狭窄部152は前記開口部151cの短辺部の長さよりも短い間隔で配置されていることが好ましい。このようにすれば、開口部151cに狭窄部152を設けたことによる有機機能層140の膜厚の均一にする効果をより高めることができる。
この第3の変形例の開口部151cによれば、円弧状形状を3つ組み合わせた形状から構成されているので、曲率の同じ曲線によって囲まれた領域が大きくなり、これにより機能液を配置した際の膜厚の均一性をより向上させることができる。また、上述した開口部151,151a、151bに比べ、狭窄部152が設けられた領域を小さくしているので、画素71の開口率を高めることができる。
【0047】
(有機EL装置の製造方法)
次に、本発明の有機EL装置の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、有機バンク150によって区画された開口部151に液滴吐出法(インクジェット法)を用いて機能液を配置することにより、有機機能層140を形成する工程を含む、有機EL装置70を製造する方法について説明する。なお、以下に示す手順や液体材料の材料構成は一例であってこれに限定されるものではない。また、液滴吐出装置については前述のものを用いることができる。
【0048】
以下、有機EL装置70が備える有機EL素子200の製造方法について図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8には、説明を簡略化するために単一の画素71のみが図示されている。
【0049】
まず、図7(a)に示すように、基体P上に、駆動用TFT143(図示は簡略化している。)を形成するとともに、第1層間絶縁膜230上に、走査線131、信号線132を形成する。その後、第1層間絶縁膜230及び各配線等を覆うように第2層間絶縁膜240を形成する。基体Pは、ガラスや石英等の透光性基板や樹脂基板である。また、第2層間絶縁膜240の形成により、走査線131や信号線132による凹凸形状が平坦化される。なお、画素電極141は、ボトムエミッション型の場合には、ITO等の透光性導電材料により形成される。トップエミッション型の場合には、透光性導電材料のほかアルミニウム、銀、金、プラチナ等の不透明又は光反射性を有する導電材料によって形成される。また、ITO/Alの積層膜としてもよい。
【0050】
次に、図7(b)に示すように、画素電極141の周縁部と一部平面的に重なるように、酸化シリコン等の無機絶縁材料からなる無機バンク149を形成する。具体的には、画素電極141及び平坦化絶縁膜240を覆うように酸化シリコン膜を形成した後、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて酸化シリコン膜をパターニングし、画素電極141の表面を部分的に開口させることで形成できる。なお、本実施形態では、無機バンク149により区画される開口部149bは、後述するように有機バンク150によって区画される開口部と相似形状をなしている。
【0051】
次に、図7(c)に示すように、無機バンク149上に、アクリル、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機バンク150を形成する。具体的には、無機バンク149と同様に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて上記有機絶縁材料をパターニングし、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口部151を区画する有機バンク150を形成する。この有機バンク150は、図1(b)に示した平面形状の開口部151を有したものとなっている。すなわち、この開口部151は、長辺部LLの長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に、前記長辺部LLに直交する方向の該長辺部LL間の幅が狭められてなる狭窄部152を有した形状にパターニングされた有機バンク150により区画されている。
【0052】
この有機バンク150は、基体P上で有機EL素子200を区画する部材として機能するものである。なお、有機バンク150の開口部151と無機バンク149の開口部149bとは互いに連通し、画素電極141はこれらの開口部内において露出した状態となっている。
【0053】
本実施形態では、有機バンク150を形成する際に、有機バンク150の開口部151の壁面を、無機バンク149の開口部149bから若干外側へ後退させた相似形状としている。このように有機バンク150の開口部151内に無機バンク149を一部露出させておくことで、有機バンク150内での液体材料の濡れ広がりを良好なものとすることができる。
【0054】
また、有機バンク150の厚さは、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度が好ましく、その理由としては以下の通りである。
すなわち、厚さが0.1μm未満となると、後述する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機バンク150が薄くなり、発光層が開口部151から溢れるおそれが生じるためである。また、厚さが3.5μmを越えると、開口部151による段差が大きくなり、開口部151における共通電極154のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機バンク150の厚さを2μm以上とすれば、共通電極154と駆動用の薄膜トランジスタ143との絶縁を高めることができる点で好ましい。
【0055】
このようにして、有機バンク150を形成した後、図7(d)に示すように、有機バンク150及び画素電極141を含む基体上の領域に対して表面処理を施す。
具体的には、基体を親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(Oプラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CFプラズマ処理)を行うことで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0056】
なお、このCFプラズマ処理においては、画素電極141の電極面及び無機バンク149についても多少の影響を受けるが、画素電極141の材料であるITOおよび無機バンク149の構成材料であるSiO、TiOなどはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれることとなる。
【0057】
次に、図8(a)に示すように、基体Pの上面を上に向けた状態で正孔注入層形成材料を含む液体材料114aを液滴吐出ヘッド1により有機バンク150に囲まれた塗布位置に選択的に塗布する。なお、正孔注入層を形成するための液体材料(機能液)114aは、正孔注入層形成材料(電荷輸送層形成材料)及び溶媒を含むものである。
【0058】
正孔注入層形成材料としては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルフォン酸、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸との混合物(PEDOT/PSS)等を例示することができる。また、溶媒としては、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリノン等の極性溶媒を例示することができる。
【0059】
上述した正孔注入層形成材料を含む液体材料114aが液滴吐出ヘッド1より基体P上に設けられた有機バンク150により区画された開口部151に滴下されると、該液体材料114aは流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで有機バンク150が形成されているので、液体材料114aは有機バンク150を越えてその外側に広がることが防止される。また、上述した表面処理(親液化)工程によって、画素電極141や無機バンク149の表面は良好な親液性を保った状態であるので、吐出された液体材料114aは画素電極等の表面全体に塗れ広がり、均一な塗膜を形成する。
【0060】
このとき、有機バンク150によって区画された開口部151は、上述したように、長辺部LL間の幅を狭め、前記長辺部LLの長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部152が設けられている。よって、液滴吐出ヘッド1により、前記開口部151に正孔注入層形成材料を含む液体材料(機能液)114aを吐出した際、狭窄部152の幅が、他の開口部151の長辺部LL間の幅に比べて狭まっているので、前記液体材料114aの表面張力によって狭窄部152に保持される液体材料114aの量が減少し、結果としてその膜厚が薄くなる。
【0061】
また、開口部151の長辺部の長さ方向に沿った両端部は狭窄部152に比べて幅が広くなっているので、該両端部に保持される液体材料114aの量が増加し、相対的に膜厚が厚くなる。このとき、上述したように、特に、開口部151に設けられる膜厚全体の均一性に特に影響を与える長辺部LLの長さ方向に沿う液面を、上述した狭窄部152を設けたことで、図3(b)に示したように均一にできる。よって、前記開口部151に均一な膜厚の液体材料114aを配置できる。
【0062】
このように、本製造工程によれば、従来の狭窄部を有しない矩形形状の開口領域に液体材料114aを配置した場合に比べ、前記狭窄部152に配置される液体材料114aの膜厚を軽減し、開口部151の長辺部の長さ方向に沿った両端部に配置される液体材料114aの膜厚を相対的に厚くすることで、開口部151に配置される液体材料114a全体としての膜厚を均一にすることができる。
【0063】
続いて、加熱あるいは光照射により液体材料114aの溶媒を蒸発させて画素電極141上に固形の正孔注入層140Aを形成する。または、大気環境下又は窒素ガス雰囲気下において所定温度及び時間(一例として200℃、10分)焼成するようにしてもよい。
あるいは大気圧より低い圧力環境下(減圧環境下)に配置することで溶媒を除去するようにしてもよい。
したがって、このように均一な膜厚からなる前記液体材料114aを乾燥して形成された正孔注入層140Aは、正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたものとなり、この正孔注入層140Aを備えた有機EL装置70は信頼性の高いものとなる。
【0064】
続いて、前記正孔注入層140A上に発光層を形成する工程を行う。
まず、図8(b)に示すように、前記正孔注入層140Aを形成した工程と同様に、基体Pの上面を上に向けた状態で液滴吐出ヘッド1より発光層形成材料と溶媒とを含む液体材料(機能液)114bを有機バンク150内の正孔注入層140A上に選択的に塗布する。
【0065】
この発光層形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料である、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン(PDAF)、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール(PFBT)、ポリアルキルチオフェン(PAT)や、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系などを好適に用いることができる。また、これらの発光材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0066】
前記発光層形成材料については、極性溶媒に溶解または分散させて液体材料とし、この液体材料を液滴吐出ヘッド1から吐出するのが好ましい。極性溶媒は、前記発光材料等を容易に溶解または均一に分散させることができるため、液滴吐出ヘッド1のノズル孔での発光層形成材料中の固型分が付着したり目詰りを起こすのを防止することができる。
【0067】
このような極性溶媒として具体的には、水、メタノール、エタノール等の水と相溶性のあるアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン等の有機溶媒または無機溶媒が挙げられ、これらの溶媒を2種以上適宜混合したものであってもよい。
【0068】
上記、液体材料114bによる発光層の形成工程は、赤色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、緑色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料、青色の発色光を発光する発光層形成材料を含む液体材料114bを、それぞれ対応する画素71(開口部151)に配置する。
【0069】
このようにして各色の発光層形成材料を含む液体材料114bを吐出し塗布した後、液体材料114b中の溶媒を蒸発させる。この工程により、図8(c)に示すように正孔注入層140A上に固形の発光層140Bが形成され、これにより正孔注入層140Aと発光層140Bとからなる有機機能層140が得られる。ここで、発光層形成材料を含む液体材料114b中の溶媒の蒸発については、必要に応じて加熱あるいは減圧等の処理を行うが、発光層形成材料は通常乾燥性が良好で速乾性であることから、特にこのような処理を行うことなく、したがって各色の発光層形成材料を順次吐出塗布することにより、その塗布順に各色の発光層140Bを形成することができる。
【0070】
ここで、前記開口部151内に形成された正孔注入層140Aは、上述したように良好に平坦化されたものとなっている。よって、前記狭窄部152を備えた開口部151内であって、さらに平坦な正孔注入層140A上に配置される液体材料114bの膜厚は均一なものとなる。したがって、この液体材料114bを乾燥して得られる発光層140Bは均一かつ良好な発光特性、及び信頼性を備えたものとなる。
【0071】
その後、図8(c)に示すように、基体Pの表面全体に、あるいはストライプ状に、ITO等からなる共通電極154を形成することで、有機EL素子200が形成される。このようにして、発光装置としての有機EL装置70を製造できる。
【0072】
このような有機EL装置70の製造方法によれば、長辺部LL間の幅を狭め、前記長辺部LLの長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に狭窄部152を備えた略矩形形状の開口部151を有している。よって、上述したように、液滴吐出法を用いて前記開口部151に発光層140B及び正孔注入層140Aを構成する液体材料114a,bを吐出した際に、前記狭窄部152の幅が、他の開口部151の幅に比べて狭められているので、液体材料114a,bの表面張力によって狭窄部152に保持される液体材料の量が減少し、結果としてその膜厚が薄くなる。また、開口部151の両端部は狭窄部152に比べて幅が広くなっているので、開口部151の長辺部LLの長さ方向における両端部に保持される液体材料の量を増加させ、相対的に膜厚が厚くなる。
【0073】
よって、従来の狭窄部152を有しない矩形形状の開口部に上記の液体材料を配置した場合に比べ、本構成によれば、前記狭窄部152に配置される液体材料114a,bの膜厚が薄くなり、開口部151の両端部に配置される液体材料の膜厚が厚くなることで、開口部151に配置される液体材料全体としての膜厚をより均一なものとすることができる。
したがって、このように均一な膜厚の液体材料114a,bを乾燥して形成された有機機能層140としての発光層140B及び正孔注入層140Aは、正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたものとなり、このような有機機能層140を備えた信頼性の高い有機EL装置70を製造することができる。
【0074】
(有機EL装置の他の実施形態)
次に、有機EL装置の他の実施形態について説明する。上述した実施形態における有機EL装置70は、有機バンク150及び無機バンク149が互いに相似形状となっているが、本実施形態の有機EL装置では、図9に示すように、無機バンクにより区画される領域と有機バンクにより区画される領域とが互いに異なった形状となっている。それ以外の構成は、先の実施形態の有機EL装置70の構成と同一であるので、同一符号を付して説明を簡略化する。
【0075】
ところで、基体Pに設けられた画素電極141間のピッチが小さく、開口部151を大きく形成することが難しい場合には、上述した実施形態のように無機バンク149及び有機バンク150によって区画される領域をそれぞれ相似形状としていた。
【0076】
一方、本実施形態に有機EL装置は、基体Pに設けられた画素電極141間のピッチが大きいため、有機バンク150´によって区画される開口部151´を大きく取ることが可能となっている。
したがって、図9に示すように、無機バンク149´によって区画される開口部149b´に対して、有機バンク150´により区画される開口部151´が大きくなっている。この開口部151´は狭窄部152を備えているので、上述した実施形態と同様にして、この開口部151´内に均一な膜厚からなる発光層を含んだ有機機能層を形成することができる(図示せず)。
【0077】
すなわち、本発明の有機EL装置は、開口部が上述した狭窄部152を備えていれば、無機バンク149によって区画される開口部149b´の形状によらず、均一な膜厚を有した有機機能層を備えたものとすることができる。なお、本実施形態の有機EL装置は、前記有機バンク150´及び無機バンク149´のパターニング形状が異なる以外同一の製造方法によって形成することができるため、その説明を省略することとする。
【0078】
以上、有機バンク150,150´によって区画された開口部151,151´に形成された有機EL装置の発光層を含んだ有機機能層について説明したが、前記開口部をカラーフィルタ形成領域として利用してもよい。
ここで、カラーフィルタを形成する材料としては、顔料或いは染料と、アクリル等の透明の樹脂を溶媒中に溶解又は分散させた液状の組成物等が挙げられる。
このようにすれば、上述したように、バンクによって区画された開口部に正確な平面形状及び均一な膜厚を備えたカラーフィルタを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】有機EL装置に備えられた各画素の平面構造を示す図である。
【図2】有機EL装置に備えられた各画素の平面構造を示す図である。
【図3】開口部の長辺の長さ方向の断面での機能液の液面を示す図である。
【図4】図1(a)における有機EL装置のA−A線矢視による側断面図である。
【図5】有機EL装置の回路構成図である。
【図6】(a)〜(c)は、開口部の変形例を示す図である。
【図7】有機EL装置を製造する工程を説明する図である。
【図8】図7に続く有機EL装置を製造する工程を説明する図である。
【図9】他の実施形態に係る有機EL装置の開口部の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
70…有機EL装置(発光装置)、114a,114b…液体材料(機能液)、140…有機機能層、140A…正孔注入層(電荷輸送層)、140B…発光層、141…画素電極、149…無機バンク、149b…無機バンクの開口部、150…有機バンク、151…有機バンクの開口部(有機バンクによって区画された領域)、B…バンク(有機バンク等)、F…膜パターン、L…機能液、P…基体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口領域に発光層を含む機能層が設けられてなる発光装置において、
前記開口領域には、前記長辺部と直交する方向の該長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部が、前記長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に、設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記開口領域は、長辺部の長さが短辺部の長さの2倍以上となっていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部は、前記開口領域における最大幅の90%以下となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記開口領域の、前記狭窄部に接続する該狭窄部以外の領域は、これを区画する隔壁の内縁が曲線状になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記開口領域は複数の前記狭窄部を備えてなり、該各狭窄部は前記短辺部の長さよりも短い間隔でそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
隔壁によって区画された、長辺部と短辺部とを有した略矩形形状の開口領域に発光層を含む機能層を設ける発光装置の製造方法において、
長辺部の長さ方向における両端部間に挟まれた中央部に、前記長辺部に直交する方向の該長辺部間の幅が狭められてなる狭窄部を有した開口領域を区画する隔壁を形成する工程と、
前記開口領域に前記機能層を配置する工程と、を備えたことを特徴とする発光装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−103032(P2007−103032A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287656(P2005−287656)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】