説明

発光装置、照明装置

【課題】固体発光素子と大気の間に設けられ、大気に接する側の表面に凹凸構造を有する高屈折率部材が再利用可能な構成の発光装置を提供する。
【解決手段】屈折率が1.6以上であり透光性を有する基板と、基板の一方の面に、屈折率が1.6以上の発光領域を含む固体発光素子と、基板の他方の面に、屈折率が1.6以上であり透光性を有する部材と、を備え、部材は大気に接する表面に凹凸構造を有し、且つ屈折率が1.6以上であり透光性を有する液体を介して基板と接続する発光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固体発光素子を用いた発光装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気より高い屈折率を有する媒体の中で光を発する固体発光素子において、屈折率の高い領域から低い領域に臨界角を越えて入射する光は界面で全反射する。固体発光素子の光を効率よく取り出すための、種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、屈折率の高い領域と低い領域が凹凸構造を有する界面を介して互いに接する構成とすることで、屈折率の低い領域に臨界角を越えて入射する光が全反射を繰り返すことを防ぐ技術が知られている。
【0004】
非特許文献1では、固体発光素子の光取り出し効率を向上させる手段として、高屈折率ガラス基板と高屈折率レンズとを組み合わせた構成を採用している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「White organic light−emitting diodes with fluorescent tube efficiency」,Nature,14 May 2009,Vol.459,p.234−239
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体発光素子の光取り出し効率を高めるには、固体発光素子と大気の間に、大気に接する側の表面に凹凸構造を有する高屈折率部材を設ける構成が好ましい。このような構成とするには、凹凸構造を大気に接する界面に意図して形成する必要があり、発光装置の作製工程は煩雑になる。
【0007】
また、発光素子は電気エネルギーを光エネルギーに変換する機能を担い、使用に伴う発光効率の低下や、劣化現象は避け難い。一方、当該凹凸構造は光の反射を制御する機能を主に担い、発光素子と比較して劣化は起こり難い。すなわち、固体発光素子とその光の取り出し効率を高める凹凸構造とでは、発光装置を構成する部品としての寿命が異なると言える。
【0008】
従って、当該凹凸構造が発光素子と一体不可分に形成されていると、発光素子の性能が低下した際、又は発光素子が劣化もしくは故障した際に、当該凹凸構造は発光素子と共に廃棄されてしまうことになる。そして、当該凹凸構造を形成するために費やした時間及びエネルギー、並びに凹凸構造を構成する資源が無駄に消費されてしまうといった問題がある。
【0009】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、固体発光素子と大気の間に設けられ、大気に接する側の表面に凹凸構造を有する高屈折率部材が再利用可能な構成の発光装置を提供することを課題の一とする。
【0010】
また、該発光装置を適用した照明装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
少なくとも1つの上記目的を達成するために、本発明は、固体発光素子と、大気に接して設ける高屈折率の凹凸構造の接続方法に着眼した。そして、屈折率の高い液体により発光素子と凹凸構造を接続する方法に想到した。屈折率の高い液体を用いることで、互いを光学的に接続し、且つ物理的に分離可能な構造とすることができる。
【0012】
すなわち、本発明の一態様は、屈折率が1.6以上であり、可視光に対する透光性(以後、単に、透光性と記す)を有する基板と、基板の一方の面に屈折率が1.6以上の発光領域を含む固体発光素子と、基板の他方の面に屈折率が1.6以上であり、透光性を有する部材と、を備え、部材は大気に接する表面に凹凸構造を有し、且つ屈折率が1.6以上であり透光性を有する液体を介して基板と接続する発光装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、屈折率が1.6以上であり、透光性を有する基板と、基板の一方の面に屈折率が1.6以上の発光領域を含む固体発光素子と、基板の他方の面に屈折率が1.6以上であり、透光性を有する半球状の部材と、を備え、部材は屈折率が1.6以上であり透光性を有する液体を介して基板と接続する発光装置である。
【0014】
上記本発明の一態様によれば、屈折率の高い液体を用いることで、高屈折率基板と高屈折率部材との間に屈折率の低い層(例えば大気等)が生じることなく光学的に接続することができるため、高い光取り出し効率を実現することができる。また、流動性を有する液体を用いることで部材を基板から着脱可能な構成にすることができ、部材を再利用することができる。
【0015】
また、本発明の一態様は、固体発光素子が、基板上に形成された屈折率が1.6以上であり透光性を有する第1の電極と、第1の電極に重畳する第2の電極との間に挟持された発光領域を含み、該発光領域は、発光性の有機化合物を含む発光層を有する上記発光装置である。
【0016】
上記本発明の一態様によれば、透光性を有する第1の電極を介して、面状に広がる発光領域から高い効率で発光を取り出すことができる。また、流動性を有する液体を用いることで部材を基板から着脱可能な構成にすることができ、部材を再利用することができる。
【0017】
また、本発明の一態様は、該発光装置を発光部に備える照明装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、固体発光素子と大気の間に設けられ、大気に接する側の表面に凹凸構造を有する高屈折率部材が再利用可能な構成の発光装置を提供することができる。または、該発光装置を適用した照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図2】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図3】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図4】本発明の一態様の固体発光素子を示す図。
【図5】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図6】本発明の一態様の発光装置を示す図。
【図7】本発明の一態様の照明装置を示す図。
【図8】実施例1の発光装置の電流密度−電力効率特性を示す図。
【図9】実施例1の発光装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について図1〜図3、図5、及び図6を用いて説明する。
【0022】
<発光装置の基本構成>
図1(A)は発光装置の断面図の一例であり、図1(B)は発光装置の平面図の一例である。
【0023】
本実施の形態の発光装置は、固体発光素子100と、高屈折率基板102と、高屈折率液体層104と、高屈折率部材103とを有する。固体発光素子100から発せられた光は、高屈折率部材103を通じて外部105(例えば、大気中)に取り出される。
【0024】
本実施の形態の発光装置は、高屈折率液体層104を有することで、高屈折率基板102と高屈折率部材103との間に屈折率の低い層(例えば大気等)が生じることなく光学的に接続することができるため、高い光取り出し効率を実現することができる。また、流動性を有する液体を用いることで部材を基板から着脱可能な構成にすることができ、部材を再利用することができる。
【0025】
高屈折率部材103は、着脱可能な方法で高屈折率基板102と固定されている。
【0026】
高屈折率部材103を通じることで、高屈折率の媒体から低屈折率の媒体に臨界角を超えて入射する光が全反射し、光取り出し効率が低下する現象を防止することができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0027】
固体発光素子100としては、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(エレクトロルミネッセンス、Electroluminescence)素子、無機EL素子など、屈折率が1.6以上の材料を用いることができる。固体発光素子100に有機ELを用いた例を実施の形態2で詳細に説明する。固体発光素子の平面形状は、特に限定されず、図1(B)に示す四角形のような多角形のほか、図2(B)のような円形であっても良い。
【0028】
高屈折率基板102としては、可視光に対する透光性(以下、単に透光性と記す)を有し、屈折率が1.6以上の材料、好ましくは1.7以上2.1以下の材料を用いることができる。ガラス中の不純物成分により屈折率を制御された高屈折率ガラス基板(例えば、ランタンを含むガラス基板等)を用いることができる。
【0029】
高屈折率液体層104としては、透光性を有し、屈折率が1.6以上の液体、好ましくは1.7以上2.1以下の液体を用いることができる。屈折率が1.6以上の液体としては、例えば、屈折率が1.75〜1.78である、硫黄とヨウ化メチレンを含む接触液(屈折液)や、屈折率が1.70である、1−ブロモナフタレンとヨウ化メチレンを含む接触液(屈折液)などが挙げられる。なお、高屈折率液体層104に用いる液体は、流動性を発現する温度が−20℃以上200℃以下の範囲に含まれる材料であればよい。例えば、室温で流動性を失っていても加熱することで流動性を発現して着脱可能となればよい。
【0030】
高屈折率部材103としては、透光性を有し、屈折率が1.6以上の材料、好ましくは1.7以上2.1以下の材料を用いることができる。図1(A)に示す発光装置は、半球状の高屈折率部材103を有しているが、形状に限定は無く、半球面より広い球面を有する球状の部材111を用いても良い(図2(A))。半球面より広い球面を有することで、光を取り出す部分の面積が増加するため、光取り出し効率を向上させることができる。また、マイクロレンズアレイなどを用いることで、複数の凹凸構造を有する部材112を形成しても良い(図3)。
【0031】
高屈折率部材103、111、112に用いることができる材料としては、ガラスや樹脂などが挙げられる。高屈折率の樹脂としては、臭素が含まれる樹脂、硫黄が含まれる樹脂などが挙げられ、例えば、含硫黄ポリイミド樹脂、エピスルフィド樹脂、チオウレタン樹脂、臭素化芳香族樹脂などを用いることができる。
【0032】
これらの材料は、エッチング、電子ビーム、レーザービーム、又は金型などにより半球状等に成形することができる。
【0033】
高屈折率基板及び高屈折率部材は、互いを固定できるような形状である(例えば、高屈折率基板に高屈折率部材を入れ込む、又はかぶせることができる)と、接着剤等を用いずに固定することができ、着脱容易のため好ましい。高屈折率基板と高屈折率部材とを固定することで、高屈折率液体層の液漏れや蒸発を防ぐことができる。高屈折率基板と高屈折率部材は、着脱可能であれば、周知のシール材、接着剤等を用いることで固定させても良い。
【0034】
<発光装置の作製方法>
図5は、本発明の一態様の発光装置の断面図の一例である。図5では、固体発光素子として、有機EL素子を用いる構成を例に挙げて説明する。
【0035】
まず、高屈折率基板102上に有機EL素子を作製する。有機EL素子は、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極405からなる。有機EL素子の詳細な作製方法は、実施の形態2で説明する。
【0036】
次に、高屈折率基板102の、有機EL素子が形成された面とは逆側の面に、高屈折率液体層104を形成し、半球状に成形された高屈折率部材103で封止を行う。
【0037】
本実施の形態では、高屈折率基板102に凹部を設け、該凹部に高屈折率の液体を流し込んだ後、高屈折率部材103と高屈折率基板102を接着剤で接着することで、固定した。なお、高屈折率基板102に凹部を設ける代わりに、高屈折率部材103に凹部を設け、該凹部に高屈折率の液体を流し込むことで高屈折率液体層104を形成しても良い。
【0038】
以上のように、本実施の形態の発光装置を作製することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、高屈折率基板102に固体発光素子(ここでは、有機EL素子)を先に作製したが、高屈折率液体層104及び高屈折率部材103を高屈折率基板102に固定してから、固体発光素子を作製しても良い。このとき、高屈折率部材103に用いる材料を半球状等の凹凸構造に成形する工程は、固体発光素子を作製する前後どちらで行っても構わない。
【0040】
<発光装置のその他の構成>
本発明の一態様の発光装置のその他の構成について図6を用いて説明する。
【0041】
図6(A)は発光装置の断面図の一例であり、図6(B)は発光装置の平面図の一例である。
【0042】
図6の発光装置は、複数の固体発光素子601と、該固体発光素子601の各々と重なる位置に複数の凹部を有する高屈折率基板602と、該凹部に高屈折率液体層604と、固体発光素子601と重なる位置に複数の高屈折率部材603とを有している。すなわち、固体発光素子601と半球状の高屈折率部材603とが対になった素子を複数有している。
【0043】
図6(B)のように、当該複数の素子は、最密充填で配置されている。図6(B)では、素子が7個の場合を示したが、これに限定されず、素子を複数有していればよい。なお、高屈折率部材603は、複数の半球状の部材が一体となり一つの部材(一体型の部材ともいう)を構成していてもよい。一体型の部材では、半球状の部分を複数有していることになる。
【0044】
ここで、最密充填とは、複数の半球状の部材が隣り合う部分607において、極力隙間が生じないように設けることであり、設計上の微差により多少の隙間が生じた場合も含むものとする。
【0045】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0046】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置が備える固体発光素子について図4を用いて説明する。
【0047】
本実施の形態では、有機EL素子を例に挙げて説明する。
【0048】
図4(A)に示す発光素子は、第1の電極401と、第1の電極401上のEL層403と、EL層403上の第2の電極405とを有する。
【0049】
EL層403は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていれば良い。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。例えば、図4(A)において、EL層403は、第1の電極401側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。また、本実施の形態において、EL層403の屈折率は、1.7以上である。
【0050】
図4(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0051】
まず、第1の電極401を形成する。第1の電極401は、EL層403からの光は、第1の電極401を通して取り出されるため、透光性を有する材料を用いて形成する。
【0052】
透光性を有する材料としては、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITOともいう)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いることができる。
【0053】
また、第1の電極401として、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0054】
次に、第1の電極401上に、EL層403を形成する。図4(A)において、EL層403は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有する。
【0055】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0056】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0057】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0058】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、第1の電極401からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、第1の電極401からEL層403への正孔注入が容易となる。
【0059】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0060】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0061】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0062】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0063】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0064】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0065】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0066】
また、正孔輸送層702には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0067】
また、正孔輸送層702には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0068】
発光層703は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0069】
発光層703に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0070】
また、発光層703に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0071】
なお、発光層703としては、上述した発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0072】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0073】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0074】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0075】
また、発光層703として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0076】
また、複数の発光層を設け、それぞれの発光層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光層を有する発光素子において、第1の発光層の発光色と第2の発光層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つ以上の発光層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0077】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0078】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0079】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0080】
EL層は、図4(B)に示すように、第1の電極401と第2の電極405との間に複数積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0081】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0082】
EL層403は、図4(C)に示すように、第1の電極401と第2の電極405との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び第2の電極405と接する複合材料層708を有していても良い。
【0083】
第2の電極405と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて第2の電極405を形成する際に、EL層403が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0084】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0085】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0086】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0087】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0088】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0089】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0090】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0091】
電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、CuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)のいずれかを用いることが好ましい。
【0092】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0093】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。
【0094】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0095】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0096】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0097】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0098】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0099】
その他にも、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)等を用いることができる。
【0100】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。
【0101】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すれば良い。
【0102】
そして、EL層403上に、第2の電極405を形成する。
【0103】
第2の電極405は、光の取り出し方向と反対側に設けられ、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。上述の材料は、地殻における存在量が多く安価であるため、発光素子の作製コストを低減することができ、好ましい。
【0104】
以上により、本実施の形態の固体発光素子を作製することができる。
【0105】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0106】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置を備える照明装置の一例について図7(A)(B)を用いて説明する。
【0107】
図7(A)は照明装置(卓上照明装置)であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503、支柱7504、台7505、電源スイッチ7506を含む。なお、照明装置は、本発明の一態様により形成される発光装置を照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明装置には、図7(A)に示す卓上照明装置の他、天井固定型の照明装置(天井固定型照明装置)または壁掛け型の照明装置(壁掛け型照明装置)なども含まれる。
【0108】
なお、本発明の一態様を適用して形成される発光装置を照明装置(卓上照明装置)の照明部7501に用いることで、電力効率が高く、面内で均一に発光し、光取り出し効率の高い照明装置(卓上照明装置)を提供することができる。
【0109】
図7(B)は、本発明の一態様を適用して形成される発光装置を、室内照明装置として用いた例である。本発明の一態様の発光装置は大面積化に有利であるため、天井固定型照明装置3001に示すように大面積の照明装置として用いることができる。その他、壁掛け型照明装置3002として用いることもできる。なお、本発明の一態様を適用して形成される発光装置を用いることで、電力効率が高く、面内で均一に発光し、光取り出し効率の高い照明装置を提供することができる。なお、図7(B)に示すように、室内照明装置を備えた部屋で、図7(A)で説明した卓上照明装置3000を併用してもよい。
【実施例1】
【0110】
本実施例では、本発明の一態様の発光装置について、図9を用いて説明する。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0111】
【化1】

【0112】
以下に、本実施例の発光装置の作製方法を示す。
【0113】
まず、高屈折率基板1100の一方の面上に、発光素子を作製した。高屈折率基板1100としては、屈折率1.806のガラス(株式会社オハラ製:S−LAH53)を用いた。
【0114】
酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、陽極として機能する第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0115】
当該基板1100上に発光素子を形成するための前処理としては、基板表面を水で洗浄した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0116】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板1100を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、150℃で1時間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0117】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、第1の正孔注入層1111aを形成した。その膜厚は100nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸着源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0118】
次に、第1の正孔注入層1111a上に、PCzPAを30nmの膜厚となるように成膜し、第1の正孔輸送層1112aを形成した。
【0119】
さらに、第1の正孔輸送層1112a上に、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)とN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)を共蒸着することで、第1の発光層1113aを形成した。その膜厚は30nmとし、CzPAと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=CzPA:1,6FLPAPrn)となるように調節した。
【0120】
次に、第1の発光層1113a上に、CzPAを膜厚5nm、バソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0121】
そして、第1の電子輸送層1114a上に、Liを0.1nmの膜厚で蒸着し、第1の電子注入層1115aを形成した。
【0122】
その後、第1の電子注入層1115a上に、銅フタロシアニン(略称:CuPc)を膜厚2nmで蒸着し、第1の中間層1116aを形成した。
【0123】
次に、第1の中間層1116a上に、PCzPAと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、第2の正孔注入層1111bを形成した。その膜厚は20nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、本実施例の第2の正孔注入層1111bは、先の実施の形態で説明した電荷発生層として機能する。
【0124】
次に、第2の正孔注入層1111b上に、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の正孔輸送層1112bを形成した。
【0125】
そして、第2の正孔輸送層1112b上に、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)と4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)と(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))を共蒸着することで、第2の発光層1113bの1層目を形成した。その膜厚は、15nmとし、2mDBTPDBq−II、PCBA1BP、及びIr(mppr−Me)(acac)の比率は、重量比で1:0.33:0.1(=2mDBTPDBq−II:PCBA1BP:Ir(mppr−Me)(acac))となるように調節した。そして、1層目上に、2mDBTPDBq−IIとIr(mppr−Me)(acac)を共蒸着することで、2層目を形成した。その膜厚は、15nmとし、2mDBTPDBq−II及びIr(mppr−Me)(acac)の比率は、重量比で1:0.06(=2mDBTPDBq−II:Ir(mppr−Me)(acac))となるように調節した。
【0126】
次に、第2の発光層1113b上に、2mDBTPDBq−IIを膜厚25nm、BPhenを膜厚15nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0127】
そして、第2の電子輸送層1114b上に、Liを0.1nmの膜厚で蒸着し、第2の電子注入層1115bを形成した。
【0128】
その後、第2の電子注入層1115b上に、CuPcを膜厚2nmで蒸着し、第2の中間層1116bを形成した。
【0129】
次に、第2の中間層1116b上に、PCzPAと酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、第3の正孔注入層1111cを形成した。その膜厚は140nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、本実施例の第3の正孔注入層1111cは、先の実施の形態で説明した電荷発生層として機能する。
【0130】
次に、第3の正孔注入層1111c上に、BPAFLPを膜厚20nmとなるように成膜し、第3の正孔輸送層1112cを形成した。
【0131】
そして、第3の正孔輸送層1112c上に、第3の発光層1113c、及び第3の電子輸送層1114cを順に形成した。第3の発光層1113c、及び第3の電子輸送層1114cは、それぞれ、第2の発光層1113b、及び第2の電子輸送層1114bと同様の構成で形成した。
【0132】
次に、第3の電子輸送層1114c上に、フッ化リチウム(LiF)を0.1nmの膜厚で蒸着し、第3の電子注入層1115cを形成した。
【0133】
最後に、第3の電子注入層1115c上に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子を作製した。当該発光素子が発する光は、第1の電極1101と高屈折率基板1100を介して大気中に取り出すことができる。
【0134】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0135】
以上により作製した発光素子の素子構造を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、基板1100の発光素子が形成されていない側であって、発光素子の発光領域と重なる位置に、透光性を有する高屈折率部材1200を設けて発光装置を構成した。なお、高屈折率部材1200は屈折率2.003のガラス(エドモンドオプティクスジャパン株式会社製:S−LAH79)からなり、直径1cmの半球状の形状を有する。また、半球の断面は、硫黄とヨウ化メチレンを含む屈折率1.78の接触液(屈折液)(株式会社島津デバイス製造製)を介して高屈折率基板1100に接する(図9の高屈折率液体層1201参照)。
【0138】
以上で得られた発光装置の電力効率を、積分球を用いて測定した。5.2mA/cmの電流密度(電流は0.2mA)を当該固体発光素子に供給すると、88.4 lm/W(ルーメン/ワット)の電力効率で発光した。
【0139】
また、図8に示す当該発光装置の電流密度−電力効率特性から、当該発光装置は0.93mA/cmの電流密度で電流を供給することで101 lm/Wの電力効率が得られることが示された。図8において、縦軸は、電力効率(lm/W)を示し、横軸は、電流密度(mA/cm)を示す。
【0140】
なお、当該発光装置の電流密度(mA/cm)−電力効率(lm/W)特性は、電流密度(mA/cm)−電流効率(cd/A)特性から以下の方法に従って算出した。
【0141】
固体発光素子の2mm×2mm角の大きさの発光領域が発する発光を、半球状の構造体を介することなく、高屈折率基板を介して高屈折率基板に鉛直な方向から観測し、駆動電圧と共に電流密度(mA/cm)−電流効率(cd/A)特性を測定した。
【0142】
ここで、固体発光素子の電流密度は、固体発光素子の発光強度を支配するが、固体発光素子が発する光の空間的な分布には影響しないと仮定した。さらに、電流効率(cd/A)を駆動電圧(V)で割った値を定義すると、電力効率(lm/W)は電流効率(cd/A)を駆動電圧(V)で割った値に比例することになる。依って、電流効率(cd/A)を駆動電圧(V)で割った値に比例定数を乗ずれば、電流密度(mA/cm)−電力効率(lm/W)特性を求めることができる。
【0143】
なお、比例定数は以下の方法で求めることができる。第1のステップで特定の駆動電圧E(V)における固体発光素子の電流密度と輝度を測定して、電流効率Φ(cd/A)を算出し、電流効率Φ(cd/A)を駆動電圧E(V)で割った値Φ/Eを求める。第2のステップで、同一の固体発光素子の発光領域と重なる位置に緩衝液を介して、高屈折率基板上に半球状の構造体を設けて発光装置を構成する。第3のステップで、当該発光装置に駆動電圧E(V)を印加し、積分球を用いて電力効率P(lm/W)を測定する。第4のステップでPを(Φ/E)で割って比例定数Cを求める。本実施例では、比例定数は8.39(=88.4(lm/W)÷{96.9(cd/A)÷9.2(V)})であった。
【0144】
(参考例)
上記実施例で用いた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)の合成方法について説明する。
【0145】
【化2】

【0146】
2mDBTPDBq−IIの合成スキームを(A−1)に示す。
【0147】
【化3】

【0148】
2L三口フラスコに2−クロロジベンゾ[f,h]キノキサリン5.3g(20mmol)、3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニルボロン酸6.1g(20mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)460mg(0.4mmol)、トルエン300mL、エタノール20mL、2Mの炭酸カリウム水溶液20mLを加えた。この混合物を、減圧下で攪拌することで脱気し、フラスコ内を窒素置換した。この混合物を窒素気流下、100℃で7.5時間攪拌した。室温まで冷ました後、得られた混合物を濾過して白色の濾物を得た。得られた濾物を水、エタノールの順で洗浄した後、乾燥させた。得られた固体を約600mLの熱トルエンに溶かし、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540−00135)を通して吸引濾過し、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。クロマトグラフィーは、熱トルエンを展開溶媒に用いて行った。ここで得られた固体にアセトンとエタノールを加えて超音波を照射した後、生じた懸濁物を濾取して乾燥させたところ、白色粉末を収量7.85g、収率80%で得た。
【0149】
得られた白色粉末4.0gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力5.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、白色粉末を300℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量3.5g、収率88%で得た。
【0150】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)であることを確認した。
【0151】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.45−7.52(m,2H),7.59−7.65(m,2H),7.71−7.91(m,7H),8.20−8.25(m,2H),8.41(d,J=7.8Hz,1H),8.65(d,J=7.5Hz,2H),8.77−8.78(m,1H),9.23(dd,J=7.2Hz,1.5Hz,1H),9.42(dd,J=7.8Hz,1.5Hz,1H),9.48(s,1H)。
【符号の説明】
【0152】
100 固体発光素子
102 高屈折率基板
103 高屈折率部材
104 高屈折率液体層
105 外部
111 部材
112 部材
401 第1の電極
403 EL層
405 第2の電極
601 固体発光素子
602 高屈折率基板
603 高屈折率部材
604 高屈折率液体層
607 部分
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層
1100 基板
1101 第1の電極
1103 第2の電極
1111a 第1の正孔注入層
1111b 第2の正孔注入層
1111c 第3の正孔注入層
1112a 第1の正孔輸送層
1112b 第2の正孔輸送層
1112c 第3の正孔輸送層
1113a 第1の発光層
1113b 第2の発光層
1113c 第3の発光層
1114a 第1の電子輸送層
1114b 第2の電子輸送層
1114c 第3の電子輸送層
1115a 第1の電子注入層
1115b 第2の電子注入層
1115c 第3の電子注入層
1116a 第1の中間層
1116b 第2の中間層
1200 高屈折率部材
1201 高屈折率液体層
3000 卓上照明装置
3001 天井固定型照明装置
3002 照明装置
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が1.6以上であり、透光性を有する基板と、
前記基板の一方の面に屈折率が1.6以上の発光領域を含む固体発光素子と、
前記基板の他方の面に屈折率が1.6以上であり、透光性を有する部材と、を備え、
前記部材は大気に接する表面に凹凸構造を有し、且つ屈折率が1.6以上であり透光性を有する液体を介して前記基板と接続する発光装置。
【請求項2】
屈折率が1.6以上であり、透光性を有する基板と、
前記基板の一方の面に屈折率が1.6以上の発光領域を含む固体発光素子と、
前記基板の他方の面に屈折率が1.6以上であり、透光性を有する半球状の部材と、を備え、
前記部材は、屈折率が1.6以上であり透光性を有する液体を介して前記基板と接続する発光装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記固体発光素子は、前記基板上に形成された屈折率が1.6以上であり透光性を有する第1の電極と、前記第1の電極に重畳する第2の電極との間に挟持された前記発光領域を含み、
前記発光領域は、発光性の有機化合物を含む発光層を有する発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発光装置を発光部に備える照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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