説明

発光装置、表示装置、発光システム及び表示システム

【課題】信頼性の高い発光装置を提供する。また、露出した電極を有しない、安全性の高い照明装置、又は表示装置を提供する。また、レイアウトの自由度が高い照明装置又は表示装置を提供する。また、当該発光装置又は表示装置が適用可能な発光システム又は表示システムを提供する。
【解決手段】有機EL素子が適用された発光装置に受電用の電極と整流回路を設け、送電用の電極と対向するように配置することにより、発光装置に交流電力が供給される。当該交流電力を整流回路により直流電力に整流し発光装置内の有機EL素子を駆動させればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子が適用された発光装置に関する。また、有機EL素子が適用された表示装置に関する。また、当該発光装置が適用された発光システムに関する。また、当該表示装置が適用された表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の研究開発が盛んに行われている。有機EL素子の基本的な構成は、一対の電極の間に、発光性の有機化合物を含む層を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の有機化合物から発光を得ることができる。
【0003】
有機EL素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を容易に形成することができ、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機EL素子を用いた照明器具が開示されている。
【0005】
また、有機EL素子と薄膜トランジスタとを組み合わせた、表示装置の開発も盛んに行われている。有機EL素子を用いた表示装置は、液晶表示装置で必要であったバックライトを無くすことができ、薄型、高輝度、高コントラストの表示装置とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−130132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、有機EL素子が適用された照明装置などの発光装置において、電源から装置に電力を供給するためにはコネクタやソケットなどの露出した電極を備える接続部を、電源供給部に機械的に接続する必要があった。そのため、当該露出した電極へ接触した場合に感電事故が起こる、また露出した電極に水などが付着した場合に漏電事故が起こる危険性があった。
【0008】
また、当該発光装置を壁や天井などに設置する場合、あらかじめ壁や天井などに設けられた接続部位に当該発光装置を接続する必要があり、レイアウトの自由度が制限されてしまう。
【0009】
一方、有機EL素子が適用された表示装置においても同様に、少なくとも電力を供給するための露出した電極を有する配線を設ける必要があるため、配線への機械的ストレスによるショートや断線などの不具合や、感電や漏電といった事故が起こる危険性があった。さらに壁などに貼り付けて設置する場合、当該配線が引き出されているために自由にレイアウトすることができず利便性が損なわれてしまう。
【0010】
ここで、露出した電極を備える接続部を必要とせずに無線で送電する方法として、送電側と受電側にそれぞれ設けられた2つのコイルを用いた電磁誘導方式の送電方法が挙げられる。しかしながらその場合、対向して配置される送電側のコイルの面と受電側のコイルの面とが相対的にずれると、電力の転送効率が著しく低下する問題がある。したがって、このような電磁誘導方式の送電方法が適用されたデバイスは、送電装置と受電装置との相対位置が限定され、レイアウトの自由度が制限されてしまう。
【0011】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって本発明は、信頼性の高い発光装置を提供することを課題の一とする。また、露出した電極を有しない、安全性の高い照明装置、又は表示装置を提供することを課題の一とする。また、レイアウトの自由度が高い照明装置又は表示装置を提供することを課題の一とする。また、当該発光装置又は表示装置が適用可能な発光システム又は表示システムを提供することを課題の一とする。
【0012】
本発明は、上記課題の少なくとも一を解決するものである。
【0013】
なお、本明細書等において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられ、少なくとも発光性の有機化合物を含む層(発光層とも呼ぶ)、又は発光層を含む積層体のこという。
【0014】
また、本明細書等において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクタ、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、有機EL素子が適用された照明装置や表示装置などの発光装置に、電界結合を利用した送受電方法を適用する。有機EL素子が適用された発光装置に受電用の電極を設け、送電用の電極と対向するように配置することにより、当該発光装置に交流電力を供給できる。さらに、発光装置内に整流回路を設け、受電した交流電力を直流電力に変換し有機EL素子を駆動させればよい。
【0016】
すなわち、本発明の一態様は、整流回路と、当該整流回路と電気的に接続され、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子と、上記整流回路と電気的に接続され、電界結合により交流電力を受電可能な受電電極と、を有し、整流回路は、受電電極で受電した交流電力を整流し、発光素子を駆動させる直流電力を生成する、発光装置である。
【0017】
このような発光装置は、その受電電極によって電界結合を利用して駆動電力を受電することが可能となる。したがって電極が露出した受電用のコネクタやソケットを備える必要が無く、上述した感電や漏電といった危険性が排除されるため安全性に優れた、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0018】
また、送受電方法として電界結合を利用するため、例えば電磁誘導方式とは異なり、電力の転送効率は互いの電極の重なる面積に依存する。したがって互いの電極の大きさを調整することで、壁や天井に貼り付けて用いる際のレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0019】
また、電磁誘導を利用した場合に受電電極として用いられるコイルは、その両端から2つの端子を取り出す必要があるのに対し、電界結合を利用した場合における受電電極はただ1つの端子を取り出すのみでよく、回路構成を簡略化できる。
【0020】
また、本発明の一態様の発光装置において、上記整流回路は薄膜トランジスタを用いて構成されていることを特徴とする。
【0021】
発光装置の整流回路を、薄膜トランジスタを用いて構成することにより、発光装置のEL素子と同一基板上に整流回路を設けることができる。このように基板上に形成された薄膜トランジスタで回路を構成することにより、部品数を減らすことができるため、基板と当該部品との接続不良を低減でき、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、薄膜トランジスタからなる回路を封止領域内に配置することができるため、トランジスタの劣化が抑制され、信頼性の高い発光装置とすることができる。
【0022】
また、本発明の一態様の発光装置において、受電電極は軟磁性材料を含むことを特徴とする。
【0023】
特に、発光装置に設けられる受電電極に鉄などの軟磁性材料を含む材料を用いると、壁や天井などに磁力を利用して貼り付けることが可能となり、脱着が容易にできる発光装置とすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様は、整流回路と、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子と当該発光素子に接続されるトランジスタを有する複数の画素と、当該画素を駆動する駆動回路と、映像信号を受信する受信アンテナと、当該受信アンテナで受信した映像信号に応じて駆動回路を駆動する制御装置と、整流回路と電気的に接続され、電界結合により交流電力を受電可能な受電電極と、を有し、整流回路は、受電電極で受電した交流電力を整流し、駆動回路と制御装置を駆動させる直流電力を生成する、表示装置である。
【0025】
本発明の発光装置は、複数の画素を有する表示装置に適用することができる。このように映像信号を受信する受信アンテナと、受信信号にしたがってセルトランジスタとEL素子を含む画素を駆動する制御回路及び駆動回路備える表示装置は、受電用の配線に加え映像信号を入力するための配線も必要ないため、配線による煩雑さがなく、且つ安全性に優れた表示装置とすることができる。
【0026】
また、本発明の一態様の表示装置において、受電電極は軟磁性材料を含むことを特徴とする。
【0027】
特に、受電電極に鉄などの軟磁性材料を含む材料を用いると、容易に脱着可能な表示装置とすることができる。
【0028】
また、本発明の一態様は、上記発光装置と、電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、当該送電装置は、発光装置の受電電極と対向するように設けられた送電電極を有する、発光システムである。
【0029】
このように、発光装置が設置される壁や天井に送電装置の送電電極を設け、当該送電電極と上記発光装置の受電電極とが対向し且つ重なるようにして、壁や天井に貼り付けて使用することが可能となり、レイアウトの自由度が極めて高い発光システムを構成することができる。
【0030】
また、本発明の一態様は、受電電極が軟磁性材料を含む上記発光装置と、電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、当該送電装置は、発光装置の受電電極と対向するように設けられた送電電極を有し、受電電極を引きつける磁性体が設けられた、発光システムである。
【0031】
上記発光システムにおいて、受電電極として軟磁性材料を用い、発光装置を貼り付ける磁性体を配置することにより、発光装置を容易に脱着可能な発光システムとすることができる。さらに、磁力によって送電電極と受電電極との距離を一定にして発光装置を貼り付けることができ、安定して電力供給を行える発光システムとすることができる。
【0032】
また、本発明の一態様は、上記表示装置と、電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、当該送電装置は、表示装置の受電電極と対向するように設けられた送電電極を有する、表示システムである。
【0033】
また、本発明の一態様は、受電電極が軟磁性材料を含む上記表示装置と、電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、送電装置は、表示装置の受電電極と対向するように設けられた送電電極を有し、受電電極を引きつける磁性体が設けられた、表示システムである。
【0034】
このように、本発明の一態様の表示装置も同様に壁面に貼り付けて用いることができるため、レイアウトの自由度が極めて高い表示システムを構成することができる。さらに、受電電極として軟磁性材料を用いることにより、磁力によって容易に脱着可能で、且つ安定して電力供給可能な表示システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、信頼性の高い発光装置を提供できる。特に、露出した電極を有しない、安全性の高い照明装置、又は表示装置を提供できる。また、レイアウトの自由度が高い照明装置又は表示装置を提供できる。また、当該発光装置又は表示装置が適用可能な発光システム又は表示システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図2】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図3】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図4】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図5】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図6】本発明の一態様の、発光装置を説明する図。
【図7】本発明の一態様の、発光システムを説明する図。
【図8】本発明の一態様の、表示装置を説明する図。
【図9】本発明の一態様の、発光装置及び表示装置の適用例を説明する図。
【図10】本発明の一態様の、EL層を説明する図。
【図11】本発明の一態様の、表示装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0038】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0039】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含む。
【0040】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0041】
また、本明細書等において、トランジスタのソース、又はドレインのどちらか一方のことを「第1電極」と呼び、ソース、又はドレインの他方を「第2電極」とも呼ぶことがある。なお、この際、ゲートについては「ゲート」又は「ゲート電極」とも呼ぶ。
【0042】
なお、本明細書等において、ダイオードの2つの電極をそれぞれ「第1の電極」、「第2の電極」や、「第1電極」「第2電極」、または「第1端子」「第2端子」などと呼ぶことがある。ここで、第1電極から第2電極に向かって電流が流れる向きをダイオードの順方向、その逆を逆方向とする。また、これらの電極の一つを単純に「端子」や「一端」、「一方」などと呼ぶこともある。
【0043】
また、本明細書等において、コイルの2つの端子をそれぞれ「第1端子」「第2端子」などと呼ぶことがある。また、これらの端子の一つを単純に「端子」や「一端」、「一方」などと呼ぶこともある。
【0044】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、コイル、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0045】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である電界結合を利用した送受電方法が適用された発光装置の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。
【0046】
図1に、本発明の一態様の発光装置100と、送電装置150の構成の一例を示す。発光装置100は、受電電極121と、整流回路123と、発光素子125を有する。
【0047】
また、送電装置150は、発光装置100に電界結合を利用して送電する。送電装置150は、送電電極151と、高周波電源153と、整合回路155を有する。
【0048】
図1に示すように、送電装置150の送電電極151と、発光装置100の受電電極121とを対向して配置する。高周波電源153から高周波電圧が出力されると、電界結合現象により受電電極121に高周波電圧が誘起される。このようにして発光装置100は電力を受電することができる。
【0049】
高周波電源153は、所定の高周波電圧(例えば、数kHz〜数100MHz程度)を出力することができる電源回路である。高周波電源153より出力される高周波電圧の周波数は特に限定されず、電界結合方式により受電電極121を介して発光装置100が受電できる周波数であれば良い。
【0050】
送電装置150内の整合回路155は、送電装置150と発光装置100との間のインピーダンスの整合をとるために設けられる。整合回路155は、コイル、容量素子、抵抗素子などの素子を適宜組み合わせて構成すればよい。例えば簡易な構成としては、整合用のコイルを直列に接続する構成などがある。なお、本実施の形態では、整合回路155を送電装置150に設ける構成としたが、これに限られず、送電装置150と発光装置100のいずれか一方、又は両方に設ける構成とすればよい。
【0051】
発光装置100内の整流回路123は、受電電極121により受電した交流電力を整流し、発光素子125を駆動するための直流電力を生成する。
【0052】
このように、本発明の一態様の発光装置100は、電界結合を利用して受電を行うため、その受電電極121はただ1つの端子を有していれば良い。したがって、例えば電磁誘導を利用した場合に受電電極として用いられるコイルは、その両端から2つの端子を取り出す必要があるため、回路構成が煩雑となるのに対し、このように電界結合を利用することでただ1つの端子を有する受電電極121を用いることができるため、回路構成を簡略化できる。
【0053】
本実施の形態で例示する発光素子125は一対の電極間に少なくとも発光性の有機化合物を含む層が挟まれた、有機EL素子である。発光素子125は、整流回路123によって生成された直流電圧が印加されることにより発光する。
【0054】
本実施の形態では、発光素子125として有機EL素子を用いるが、直流電圧を印加することにより発光する電界発光素子を適用することができる。このような電界発光素子としては、例えば無機EL素子やLED(Light Emitting Diode)などが挙げられる。
【0055】
ここで、整流回路123に用いることのできる構成の一例を図2(A)及び図2(B)に示す。
【0056】
図2(A)に示す整流回路123aは、ダイオード131及び133、並びに容量135を有する。ダイオード131は、第1電極が受電電極121及びダイオード133の第2電極と接続し、第2電極が容量135の第1電極及び発光素子125の第1電極に接続されている。ダイオード133の第1電極及び容量135の第2電極は、発光素子125の第2電極と共に接地されている。
【0057】
整流回路123aは、交流電圧が入力されるとダイオード131の順方向の電圧成分のみが出力される、いわゆる半波整流回路を構成している。また容量135によって出力電圧が平滑化され、安定した直流電圧を出力することができる。なお、容量135は不要であれば設けなくても良い。
【0058】
図2(B)に示す整流回路123bは、トランス137、ブリッジ回路139、及び容量135を有する。トランス137は受電電極121に接続され、2つの出力端子がブリッジ回路139に接続されている。ブリッジ回路139の出力端子は、容量135の第1電極及び発光素子125の第1電極に接続される。
【0059】
トランス137は対向する2つのコイルから構成され、一方のコイルが受電電極121に接続され、他方のコイルの両端からそれぞれ位相が反転した交流電圧が出力される。また、ブリッジ回路139は4つのダイオードから構成され、トランス137から入力された交流電圧を正の電圧に整流して出力する。したがって整流回路123bは、交流電圧の正と負の両方の成分を共に正の電圧に変換する、いわゆる全波整流回路を構成している。なお、容量135は、上記と同様に出力電圧を平滑化し、安定した直流電圧を生成する目的で接続される。
【0060】
整流回路123に適用することのできる回路は上記に限られず、受電電極121で受電した交流電力を直流電力に変換する整流回路であればよい。また、整流回路123と発光素子125との間にDCDCコンバータなどの変換回路、レギュレータなどの定電圧回路や、発光素子125への電力供給を制御するトランジスタなどのスイッチを設けても良い。
【0061】
このようにして、発光装置100は電界結合を利用した無線送電によって受電し、発光装置100内の発光素子125を発光させることができる。したがって、電極が露出した受電用のコネクタやソケットを備える必要が無く、当該露出部での感電や漏電といった危険性が排除されるため、安全性に優れ、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、送電方法として電界結合を利用するため、例えば電磁誘導方式とは異なり、電力の転送効率は互いの電極の重なる面積に依存する。したがって互いの電極の大きさを調整することで、壁や天井に貼り付ける際のレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0062】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0063】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である電界結合を利用した送受電方法が適用された発光装置の具体的な構成例について、図3乃至図6を用いて説明する。
【0064】
<構成例1>
図3(A)に、本発明の一態様の発光装置200の上面概略図を、また図3(B)に図3(A)中の切断線A−A’における断面概略図を示す。発光装置200は、発光素子が設けられる基板201に対向する対向基板211側に光を射出する、上面射出型の発光装置である。
【0065】
発光装置200は、基板201上に絶縁層217及び絶縁層219を介して下部電極層103、EL層105及び上部電極層107が積層された発光素子を有する。ここで当該下部電極層103と上部電極層107との間に電圧を印加することにより、EL層105からの発光を得ることができる。
【0066】
また、絶縁層217上には配線209a、209b、及び209cが形成されている。
【0067】
また、発光装置200は、導電性を有し、表面が絶縁処理された基板201を有する。当該基板201は、実施の形態1で例示した受電電極121の機能を有し、実施の形態1で例示した送電装置150の送電電極151と当該基板201とが対向するように発光装置200を配置することにより、送電装置150から受電することができる。
【0068】
また、上述のように基板201には、導電性の材料の表面が絶縁処理された基板を用いる。したがって、導電性の表面が露出し、当該露出部での感電や漏電などの危険性が抑制され、安全性の高い発光装置200とすることができる。
【0069】
また、発光装置200は電界結合を利用して受電を行うため、その受電電極となる基板201は1つの配線(配線209a)を接続する構成とすればよく、例えば電磁誘導を利用した場合に受電電極として用いられる2つの端子を有するコイルを用いるときと比べて装置構成を極めて簡略化することができる。なお、配線209aと基板201との接続部は1つに限られず、配線209aと基板201との接触抵抗を低減することを目的として複数の接続部を形成しても良い。その場合であっても、電気的に同電位とみなせる当該複数の接続部は一つの端子としてみなすことができる。
【0070】
絶縁層217は基板201上に形成され、発光素子と基板201とを確実に電気的に絶縁するために設けられる。また、絶縁層217を、基板201の表面凹凸を被覆する平坦化膜として用いることもできる。なお、基板201の表面が極めて平坦であり、且つ基板201と発光素子とが十分に絶縁されている場合には、絶縁層217は設けなくても良い。
【0071】
また、発光装置200は、実施の形態1で例示した整流回路を少なくとも含むICチップ215を有する。ICチップ215の入力側の一方の端子は、基板201の絶縁表面の一部が開口された領域において基板201と電気的に接続する配線209aを介して、基板201と電気的に接続されている。また、ICチップ215の出力側の他方の端子は、配線209bを介して発光素子の下部電極層103と電気的に接続されている。また、上部電極層107は、接地配線となる配線209cと電気的に接続されている。
【0072】
ICチップ215は、少なくとも実施の形態1で例示した整流回路を有し、基板201が受電した交流電力を、発光素子を駆動するための直流電力に変換する。なお、ICチップ215には例えばDCDCコンバータ、レギュレータなどの定電圧回路や、発光素子への電力供給を制御するスイッチなどの機能を持たせてもよい。また、ICチップ215とは別に、上記機能を有するICチップや、発光素子の駆動を制御するスイッチを別途設けてもよい。
【0073】
また発光装置200において、対向基板211が、シール材213によって基板201と対向するように接着されている。
【0074】
なお、基板201、対向基板211及びシール材213によって囲まれた封止領域内は酸素や水などの不純物が極めて低減されていることが好ましい。例えば希ガスや窒素などの不活性ガスが封入されていても良いし、減圧状態となっていてもよい。また、酸素や水などの不純物が低減された封止材によって満たされていても良い。
【0075】
なお、発光装置200は対向基板211側に光を射出するため、上部電極層107及び対向基板211にはEL層105の発光に対して透光性を有する材料を用いる。また、発光素子上に封止材を導入する場合には、同様な透光性を有する材料を用いる。
【0076】
このような構成の発光装置200は、電界結合を利用した無線送電によって受電し、発光装置200内の発光素子を発光させることができる。したがって、電極が露出した受電用のコネクタやソケットを備える必要が無く、当該露出部での感電や漏電といった危険性が排除されるため、安全性に優れ、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、送電方法として電界結合を利用するため、例えば電磁誘導方式とは異なり、電力の転送効率は互いの電極の重なる面積に依存する。したがって互いの電極の大きさを調整することで、壁や天井に貼り付ける際の水平方向へのレイアウトの自由度を極めて高くすることができる。
【0077】
続いて、上記構成例とは異なる構成の発光装置について、以下で説明する。なお、構成例1と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0078】
<構成例2>
図4(A)に本構成例で例示する発光装置220の上面概略図を示す。また図4(B)に、図4(A)中の切断線B−B’における断面概略図を示す。発光装置220は、基板221側に光を射出する下面射出型の発光装置である。
【0079】
発光装置220は、受電電極となる導電性の基板を対向基板231に用いる点で、構成例1で例示した発光装置200と異なる構成となっている。また、対向基板231と電気的に接続するための導電層223が、配線209a上に設けられている。
【0080】
対向基板231は構成例1で例示した基板201と同様、表面が絶縁処理された導電性の基板を用いる。また、対向基板231の絶縁表面の一部が開口され、これと電気的に接続する導電層223が配線209a上に形成されている。したがって、導電層223及び配線209aを介して、ICチップ215の一方の端子が対向基板231と電気的に接続されている。
【0081】
導電層223としては、例えば導電性粒子が分散した有機樹脂を焼成して得られる導電物や、基板221と対向基板231との封止工程における熱圧着により、圧力のかかる方向、すなわち、基板221の被形成面と垂直な方向に異方性の導電性を示す材料を用いても良い。このような材料を用いることにより、配線209aと対向基板231とを電気的に接続することができる。
【0082】
なお、発光装置220は基板221側に光を射出するため、下部電極層103、絶縁層217、絶縁層219及び基板221にはEL層105の発光に対して透光性を有する材料を用いる。
【0083】
また、発光素子と対向基板231との間には、水などを吸着する乾燥剤を設けることもできる。乾燥剤を設けることにより、発光素子の劣化が抑制され信頼性の高い発光装置220とすることができる。
【0084】
このような構成とすることにより、電界結合を利用した無線送電が適用された、下面射出型の発光装置220とすることができる。
【0085】
ここで、上記構成例1及び構成例2では、整流回路としてICチップを用いる構成を示したが、薄膜トランジスタ技術を応用して、基板上に整流回路を形成することもできる。以下では、薄膜トランジスタを適用した発光装置の構成例について説明する。
【0086】
<構成例3>
図5(A)に本構成例で例示する発光装置240の上面概略図を、また図5(B)に図5(A)中に示す切断線C−C’における断面概略図を示す。発光装置240は導電性の基板201と透光性の対向基板211とを有する上面射出型の発光装置であり、さらに薄膜トランジスタ等で構成される回路部241を有する。
【0087】
図5(B)は、回路部241を構成する薄膜トランジスタ243と容量245を含む断面概略図である。薄膜トランジスタ243は、例えば図2(A)で例示した整流回路123aであれば、ダイオード131又は133に、容量245は容量135に適用できる。
【0088】
薄膜トランジスタ243は、チャネルが形成されるチャネル領域と、不純物が導入されたソース領域及びドレイン領域を有する半導体層と、当該半導体層上に絶縁層を介してゲート電極を有する。また、薄膜トランジスタ243は、ゲートと、ソース又はドレインの一方が配線249aによって電気的に接続されており、ダイオードとして機能する。
【0089】
なお、本構成例では、薄膜トランジスタを用いてダイオード素子を構成しているが、これに限られず、例えばPN接合ダイオード、PIN接合ダイオード、ショットキーバリアダイオードなどを用いて形成することもできる。
【0090】
薄膜トランジスタ243を構成する半導体層としては、公知の半導体材料を用いることができる。例えば、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)などの周期表第14族元素を主構成元素とする材料、炭化シリコン(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)若しくはガリウムヒ素(GaAs)などの化合物、酸化亜鉛(ZnO)若しくはインジウム(In)及びガリウム(Ga)を含む酸化亜鉛などの酸化物、又は半導体特性を示す有機化合物などの半導体材料を適用することができる。また、これらの半導体材料からなる層の積層構造を適用することもできる。
【0091】
また容量245は、不純物が導入された半導体層と、上記ゲート電極と同一材料からなる電極と、その間に挟持された絶縁層から構成されている。なお、容量245は、回路部241やEL素子を構成する絶縁性材料と導電性材料を適宜組み合わせて形成されていればよく、上記構成に限られない。
【0092】
さらに発光装置240は、薄膜トランジスタ243と容量245を覆う絶縁層247を有し、絶縁層247に形成された開口部を介して、回路部241を構成する配線が形成されている。また、絶縁層247、絶縁層217、及び基板201の絶縁表面の一部に形成された開口部を介して、配線249aが基板201と電気的に接続されている。したがって、配線249aを介して、基板201と回路部241内の薄膜トランジスタ243とが電気的に接続されている。
【0093】
また発光装置240は、回路部241を覆う絶縁層251を有し、絶縁層251上に下部電極層103、EL層105、及び上部電極層107が積層された発光素子が形成されている。
【0094】
また、構成例1と同様に、外周部に設けられたシール材213によって対向基板211が基板201と接着されている。
【0095】
このような構成の発光装置240は、基板201上に形成された薄膜トランジスタ等で回路を構成することにより、部品数を減らすことができるため、基板201と当該部品との接続不良を低減でき、信頼性の高い発光装置とすることができる。また、回路部241が発光素子よりも下側に配置されるが、上面射出型の発光装置とすれば回路部241によって光が遮断されることがないため、発光面積を大きくとることができる。また、回路部241をシール材213で囲まれた領域(封止領域)内に配置することができるため、回路部241の配線などが露出することがなく信頼性の高い発光装置することができる。さらに回路部241は薄膜トランジスタ技術を適用して形成することにより、回路部241を極めて薄く形成できるため、発光装置240全体を薄くすることができる。
【0096】
<構成例4>
最後に、構成例3で例示した薄膜トランジスタを含む回路部を有する発光装置240を、下面射出型の発光装置に適用した場合の一例について説明する。
【0097】
図6(A)に、本構成例で例示する発光装置260の上面概略図と、図6(B)に図6(A)中の切断線D−D’における断面概略図を示す。発光装置260は、透光性の基板221上に薄膜トランジスタを含む回路部241と、発光素子とを有し、さらに表面が絶縁処理された導電性の対向基板231と基板221とがシール材213によって接着された、下面射出型の発光装置である。
【0098】
発光装置260は、導電性の対向基板231と回路部241とが導電層223を介して接続されている。
【0099】
また回路部241と重なる領域にはEL層105及び上部電極層107を有していない。したがって、回路部241と重なる領域には、非発光領域が形成されている。
【0100】
なお、上記発光装置220と同様に、封止領域内に乾燥剤を導入しても良い。
【0101】
このような構成とすることにより、回路部241をシール材213で囲まれた領域(封止領域)内に配置することができるため、回路部241の配線などが露出することがなく信頼性の高い発光装置することができる。さらに、回路部241に薄膜トランジスタ技術を適用して形成することにより、回路部241を極めて薄く形成できるため、発光装置260全体を薄くすることができる。
【0102】
なお、本実施の形態で示した各構成例において、受電電極として表面が絶縁処理された導電性の基板を用いる構成について例示したが、受電電極の形態はこれに限られず、導電性を有し、送電装置の送電電極と対向して設けることが可能で、且つ電界結合により交流電力を受電できる電極の形態であればよい。例えば、絶縁性の基板の一表面に導電膜を形成して用いても良いし、導電性フィルムや導電性シートなどを用いても良い。また、受電電極を発光装置の封止領域の内部に設ける構成としてもよい。なお受電電極の表面は絶縁処理されていると、安全性が高まるためより好ましい。
【0103】
<材料及び形成方法について>
ここで、各構成に用いることのできる材料と、その形成方法について説明する。なお、材料については以下に限られず、同様の機能を有する材料であれば適宜用いることができる。
【0104】
[基板、対向基板]
光射出側に設けられる基板には、少なくとも発光素子からの発光に対して透光性を有する材料を用いる。透光性を有する材料としては、例えばガラス、石英、有機樹脂などを用いることができる。
【0105】
基板として有機樹脂を用いる場合、有機樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはポリ塩化ビニル樹脂などを用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜた基板を使用することもできる。
【0106】
光射出とは反対側の基板には、受電電極として機能する導電性の材料からなる基板を用いる。また、当該導電性の基板の表面が絶縁処理されていることが好ましい。例えば陽極酸化法などにより基板表面を酸化させて絶縁化させてもよいし、基板表面に有機樹脂などをディップ法やスピンコート法などの塗布法により形成してもよい。また、導電性の基板表面にスパッタリング法やCVD法により無機絶縁膜を形成したものを用いても良い。
【0107】
また、当該導電性の基板には導電率の高い材料を用いることが好ましい。例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタンなどの金属材料を含む金属、又は合金を用いることができる。
【0108】
特に、上面発光型の発光装置の場合、EL素子が形成される基板には金属や合金などの熱伝導性の高い基板を用いることが好ましい。EL素子を用いた大型の照明装置の場合、EL素子からの発熱が問題となる場合があるため、このような熱伝導性の高い基板を用いると放熱性が高まる。例えば、ステンレス基板のほかに、アルミニウム酸化物、ジュラルミンなどを用いると、軽量且つ放熱性を高めることができる。また、アルミニウムとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとアルミニウム酸化物との積層、ジュラルミンとマグネシウム酸化物との積層などを用いると、基板表面を絶縁性とすることができるため好ましい。
【0109】
[発光素子]
光射出側の電極層に用いることができる透光性を有する材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、またはグラフェンなどを用いることができる。
【0110】
また、上記電極層として、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料や、これらの合金を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0111】
また、上記材料の積層膜を電極層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金と酸化インジウム酸化スズとの積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。
【0112】
光射出側の電極層の膜厚は、例えば50nm以上300nm以下であり、好ましくは80nm以上130nm以下、さらに好ましくは100nm以上110nm以下である。
【0113】
EL層は、少なくとも発光性の有機化合物を含む層を有する。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。
【0114】
なお、本発明の一態様では、上部電極層と下部電極層との間に、複数のEL層が設けられた発光素子(タンデム型発光素子)を適用することができる。好ましくは、2〜4層(特に3層)構造とする。また、これらのEL層の間に電子輸送性の高い材料や正孔輸送性の高い材料などを含む中間層を有していても良い。EL層の構成例は実施の形態6で詳細に説明する。
【0115】
光射出とは反対側に設けられる電極層は、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金、銀とマグネシウムの合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。また、電極層の材料としてアルミニウムを用いることもできるが、その場合には酸化インジウム酸化スズなどと直接接して設けると腐食する恐れがある。よって、電極層を積層構造とし、酸化インジウム酸化スズなどと接しない層にアルミニウムを用いればよい。
【0116】
なお、発光素子に用いられる導電膜は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの成膜方法により形成することができる。また、EL層は蒸着法などの成膜方法や、インクジェット法などの吐出法により形成できる。
【0117】
[絶縁層]
絶縁層に用いられる材料としては、例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、エポキシ等の有機樹脂や、無機絶縁材料を用いることができる。例えば感光性の有機樹脂をスピンコート法などにより塗布した後、選択的に露光、現像を行って形成することが好ましい。このほかの形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)などを用いればよい。基板と発光素子との間に窒化珪素膜などの水や酸素といった不純物に対するバリア性を有する無機絶縁膜を用いると、基板から発光素子への不純物の拡散を抑制できるため好ましい。
【0118】
[配線]
回路を構成する配線としては、導電膜をスパッタリング法やCVD法などの成膜方法で成膜した後に、選択的にエッチングして形成することができる。当該導電膜としては上記発光素子に用いられる導電性の材料を適宜用いることができる。また、配線をめっき法により形成してもよい。
【0119】
また、配線をスクリーン印刷などの印刷法で形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電性粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性ペーストを選択的に印刷する。導電性粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電層の形成にあたり、導電性のペーストを印刷した後に焼成することが好ましい。
【0120】
[シール材]
シール材としては公知の材料を用いることができる。例えば、熱硬化型の材料、紫外線硬化型の材料を用いても良い。また二液混合型のエポキシ樹脂などを用いることができる。またシール材はその接着部位によって、無機材料同士、有機材料同士、又は無機材料と有機材料とを接着することができる材料を用いる。またシール材に用いる材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。
【0121】
またシール材には乾燥剤が含まれていても良い。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることができる。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0122】
シール材は、スクリーン印刷などの印刷法、インクジェット法などの吐出法、ディスペンス法などの塗布法によって形成することができる。
【0123】
[封止材]
封止材としては、EL素子の発光に対して透光性を有する、無機材料、有機材料、又は無機材料と有機材料とを組み合わせた材料、又はこれらの積層を適宜用いることができる。また封止材は、上述のように発光に対する屈折率が調整されていることが好ましい。また封止材は上記シール材と同様、水分や酸素を透過しない材料であることが好ましい。また、封止材とシール材とに同じ材料を用いても良い。
【0124】
また封止材の形成方法としては、スパッタリング法、CVD法などの成膜方法や、シール材と同様の印刷法や吐出法、塗布法によって形成することができる。
【0125】
[導電層]
導電層には、銀や銅などの導電性粒子を含む導電性ペーストなどを用いることができる。当該導電性ペーストを焼成することにより、導電層として用いることができる。また、導電層には、熱硬化性の樹脂に導電性を有する金属粒子を混ぜ合わせたものを用いることもできる。金属粒子としては、例えばNi粒子をAuで皮膜したものなど、2種類以上の金属が層状となった粒子を用いることが好ましい。金属粒子の直径は100nm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下とする。また導電層に用いる材料は、ペースト状であっても良いし、シート状であっても良い。
【0126】
このような材料からなる導電層を電極間に挟み、熱をかけながら圧着することにより、上記金属粒子同士が圧力方向に接触することにより導電経路が形成される。一方で圧力方向に垂直な方向では、樹脂によって絶縁性が保たれる。このように結果として異方性の導電性を示す。導電層の形成方法としては、上記シール材と同様、印刷法や吐出法、塗布法によって形成することができる。また、導電層としてシート状の材料を用いる場合には、所望の位置に直接貼り付けて用いることができる。
【0127】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0128】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記で例示した発光装置と、電力を送電する送電装置とを組み合わせた発光システムの一例について、図7を用いて説明する。
【0129】
図7(A)は、天井面300よりも内部に設けられた送電装置311と、天井面300に固定された発光装置301とからなる発光システムの構成を示す概略図である。
【0130】
天井面300よりも内部には、天井面300と平行に配置された送電電極317と、当該送電電極と接続する電源部313とからなる送電装置311が配置されている。
【0131】
送電装置311は、実施の形態1で例示した送電装置の構成を適用することができ、電源部313の出力する高周波電圧を送電電極317に発振する。なお、電源部313には少なくとも高周波電源が含まれており、そのほかに整合回路などの回路が含まれていても良い。
【0132】
また、電源部313には、天井面300よりも外部に設置された制御部315が接続されている。制御部315は、少なくとも電源部313からの出力のオン、オフ制御機能を有する。また、制御部315の表面に赤外線などの受光部を設け、リモコン操作機などからの信号を受信して電源部313を制御してもよい。また、電源部313からの電力の大きさを変化させることにより、発光装置301が受電する電力を制御し、発光装置301からの発光の調光を制御する構成としてもよい。
【0133】
発光装置301は、受電電極303が送電電極317と対向するように天井面300に固定具305によって固定されている。なお、発光装置301には上記実施の形態で例示した発光装置を適用できる。
【0134】
発光装置301は、天井面300に接して固定されるため、天井面300と平行に配置された送電電極317と受電電極303との距離は常に一定となる。したがって、発光装置301は、その受電電極303が全て送電電極317と重なる位置であれば、天井面300のどの位置に固定されていても同じ電力を受電することができるため、このような発光装置301と送電装置311とを組み合わせることにより、レイアウトの自由度が極めて高い発光システムとすることができる。
【0135】
また、発光装置301の有する受電電極303として軟磁性材料を用いることにより、さらにレイアウトの自由度の高い発光システムを実現することができる。以下では、受電電極に軟磁性材料を用いた場合について説明する。
【0136】
図7(B)では、送電電極317に複数の開口部を設け、それぞれの開口部には磁性体319が配置されている。また、発光装置301の受電電極307は、軟磁性材料から構成されている。
【0137】
磁性体319は使用温度条件下で自発磁化を有する強磁性体であれば特に限定されないが、例えば鋳造アルニコ磁石、焼結アルニコ磁石、フェライト磁石、鉄−クロム−コバルト磁石、サマリウム−コバルト(Sm−Co)磁石等の希土類コバルト磁石、及びネオジム−鉄−ホウ素系磁石(ネオジム−鉄−ホウ素磁石を含む)等が挙げられる。
【0138】
また、受電電極307として用いることのできる軟磁性材料としては、鉄、コバルト、マンガン等を含む材料を用いることができ、例えば、フェライト系ステンレスSUS430、マルテンサイト系SUS420J2等を用いることができる。なお、使用中に意図せず脱離、又は落下しない程度に、磁性体319に受電電極307を有する発光装置301が引き寄せられるものであれば、磁性体319及び受電電極307に用いる材料は特に限定されない。
【0139】
このように、発光装置301の受電電極307として軟磁性材料を用い、天井面300の内部に設けられた磁性体319に引き寄せて固定させる構成とすることにより、発光装置301を容易に脱着することができ、レイアウトの自由度を極めて向上させることができる。
【0140】
なお、発光装置301の受電電極307として、軟磁性材料を用いることができない場合であっても、発光装置301の内部に軟磁性体、または磁石などの磁性体を設ける、または筐体に軟磁性材料を用いることにより、磁力を利用して発光装置301を天井面300に貼り付けて使用することができる。
【0141】
なお、図7(C)に示すように、上記のような軟磁性材料が適用された送電電極317に、磁性体319を接触させ、送電電極317自体を磁化させて用いても良い。このような構成とすることにより、磁性体319と発光装置301との相対位置によらず、送電電極317と受電電極307との引力を一定にすることができるため、発光装置301の設置位置の自由度を高めることができる。また、送電電極317に開口部を形成する必要が無いため、電極間の対向する面積を大きくでき、電力の転送効率を向上させることができる。
【0142】
なお、上記では天井面300に発光装置301を設置する構成について説明したが、これに限られること無く、平面を有する構造体、例えば建造物の壁面、天井面、床などにも適用することができる。また、机や棚などの家具の上面、側面、底面にも貼り付けて使用することができる。また、発光装置301が曲げて使用可能な場合、柱などの曲面を有する構造体に対しても同様に適用することができる。
【0143】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0144】
(実施の形態4)
上記実施の形態で例示した本発明の一態様の発光装置は、複数の画素を有する表示装置に適用することができる。以下では、本発明の一態様の表示装置の構成の一例について、図8及び図11を用いて説明する。
【0145】
図8に示す表示装置350は、基板351上に整流回路355、制御回路357、複数の画素367を有する表示部361、信号線駆動回路363及び走査線駆動回路365を有する、表示装置である。また、整流回路355と電気的に接続される受電電極353を有する。さらに、映像信号を受信するための受信アンテナ359が制御回路357に電気的に接続されている。
【0146】
整流回路355は、受電電極353と電気的に接続され、受電電極353によって受電した交流電力を整流し、表示装置350内の各回路を駆動させるための直流電力を生成する。整流回路355としては、実施の形態1で例示した整流回路を適用することができる。整流回路355は、制御回路357、信号線駆動回路363、走査線駆動回路365に電力を供給する。
【0147】
制御回路357は、受信アンテナ359によって受信した映像信号にしたがって、信号線駆動回路363及び走査線駆動回路365を駆動させ、表示部361に画像を表示させる。制御回路357は、例えば受信アンテナ359で受信した信号を復調する復調回路、タイミングコントローラなどから構成される。
【0148】
表示部361は、マトリクス状に配置された複数の画素367を有する。画素367は、少なくとも選択トランジスタ369と、発光素子371とが直列に接続された構成を有している。発光素子371は、上記実施の形態で例示した発光素子を適用することができる。また、選択トランジスタ369は、上記実施の形態で例示した薄膜トランジスタに代表される公知の薄膜トランジスタを適用すればよい。
【0149】
信号線駆動回路363及び走査線駆動回路365は、制御回路357からの信号にしたがって、表示部361の各画素367を駆動させて表示させる。信号線駆動回路363及び走査線駆動回路365は、スイッチ、マルチプレクサ、シフトレジスタ回路、デコーダ回路、インバータ回路、バッファ回路、レベルシフタ回路等から構成されている。これら信号線駆動回路363及び走査線駆動回路365は、薄膜トランジスタで構成されていることが好ましい。
【0150】
また、図11に示す表示装置380は、表示装置350に加えて、受電した電力を充電可能な蓄電装置381と、映像データを保存可能な記憶装置383を有する。
【0151】
蓄電装置381は整流回路355と接続され、整流回路355で整流された直流電力を充電し、必要に応じて各回路に電力供給を行う。
【0152】
蓄電装置381としては、二次電池やキャパシタなどを用いることができる。また、シート状に形成された電池を用いることが好ましく、例えばリチウム電池、好ましくはゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池や、リチウムイオン電池等を用いることにより小型化が可能となる。また蓄電装置381には、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池などの充放電可能な電池や、大容量のコンデンサなどを用いても良い。
【0153】
記憶装置383は制御回路357に接続され、必要に応じて受信アンテナ359で受信した映像信号から、制御回路357でデータとして変換された映像データを保持しておくことが出来る。また、制御回路357は、記憶装置383に保持された映像データを必要に応じて読み出して画像を表示することが出来る。
【0154】
記憶装置383は、不揮発性の記憶素子、揮発性の記憶素子などの記憶素子を有し、これらの素子にデータを書込み、読み出し動作を行うことができる。記憶素子としては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性の記憶素子や、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)などの不揮発性の記憶素子などを適用できる。また記憶装置383は小型の記憶媒体などを挿入できるスロットを有し、当該記憶媒体へのデータの書込み、読み出し動作が行える構成としてもよい。
【0155】
なお、表示装置にはそのほかにスピーカなどを設けて、音声を出力できるような構成としても良い。
【0156】
本実施の形態で例示した表示装置は、実施の形態3で例示したように、送電装置が埋め込まれた壁や天井に自由に設置して用いることができる。また、基板や対向基板として可撓性を有する材料を用いることにより、柱状構造物などの曲面を有する構造物の側面に設置して使用することができるため、レイアウトの自由度やデザイン性が極めて高い表示装置とすることができる。さらに、受電電極として軟磁性材料を用いることにより、磁力を用いて自由に貼り付け可能な表示装置にすることもできる。
【0157】
このような構成の表示装置は、電界結合を利用した送受電方法により受電することができ、さらに映像信号も受信用アンテナを介して受信することができる。したがって、当該表示装置は受電用や映像信号入力用の配線やコネクタが必要ないため、漏電や感電の危険性が抑制され、安全性に優れた表示装置とすることができる。さらに、当該配線を必要としないため、レイアウトの自由度やデザイン性が極めて高い表示装置とすることができる。
【0158】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0159】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で例示した発光装置が適用された照明装置や、表示装置の応用例について、図9を用いて説明する。
【0160】
本実施の一態様では、発光部が曲面を有する照明装置を実現することができる。また、自動車の照明にも適用することができ、例えばダッシュボードや天井等に照明や表示装置を設置することができる。
【0161】
図9(A)では、商用の照明やディスプレイに本発明の一態様の発光装置を適用した例を示す。表示装置401は通路の壁面に設置され、広告などの映像を表示する表示装置である。また、円柱状の柱405の側面には、可撓性を有する表示装置403が設置されており、同様に広告などの映像を表示することができる。また、床面には照明装置407がタイル状に複数設置されており、面状の発光を得ることができる。
【0162】
図9(B)では、室内に本発明の一態様の発光装置を適用した例を示す。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、厚みが薄いため、壁に取り付けて使用することができる。照明装置411は室内の天井に設置されている。また、表示装置413は、室内の壁面に設置され、送信器415から送信される映像信号を受信して映像を表示することができる。
【0163】
上記照明装置及び表示装置には、本発明の一態様の発光装置が適用されている。また、照明装置又は表示装置が設置される面の内部には、送電装置が設置されている。したがって、配線やコネクタを用いずに電力を供給できるためレイアウトの自由度が高く、且つ安全性に優れた照明装置、及び表示装置とすることができる。
【0164】
このように、本発明の一態様では、曲面を有する照明装置や表示装置、又はフレキシブルに曲がる照明部や発光部を有する照明装置や表示装置を実現することができる。このように、フレキシブルな発光装置を照明装置及び表示装置として用いることで、デザインの自由度が向上するのみでなく、曲面を有する構造物に適用することができる。
【0165】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に適用できるEL層の一例について、図10を用いて説明する。
【0166】
図10(A)に示すEL層105は、下部電極層103と上部電極層107の間に設けられている。下部電極層103及び上部電極層107は、上記実施の形態で例示した下部電極層または上部電極層と同様の構成を適用することができる。
【0167】
本実施の形態で例示するEL層105を有する発光素子は、上記実施の形態で例示した発光装置に適用可能である。
【0168】
EL層105は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていればよい。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、EL層105は、下部電極層103側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。なお、これらを反転させた積層構造としてもよい。
【0169】
図10(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0170】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0171】
また、低分子の有機化合物である芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0172】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。また、酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0173】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、下部電極層103からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、下部電極層103からEL層105への正孔注入が容易となる。
【0174】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。
【0175】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、芳香族アミン化合物や、カルバゾール誘導体、そのほか正孔移動度の高い芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0176】
また、電子受容体としては、有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0177】
なお、高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0178】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、芳香族アミン化合物を用いることができる。これらは主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0179】
また、正孔輸送層702には、カルバゾール誘導体や、アントラセン誘導体や、そのほか正孔輸送性の高い高分子化合物を用いてもよい。
【0180】
発光性の有機化合物を含む層703は、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0181】
なお、発光性の有機化合物を含む層703としては、発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0182】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するために結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うために、さらに異なる物質を添加してもよい。
【0183】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光性の有機化合物を含む層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0184】
また、発光性の有機化合物を含む層703として高分子化合物を用いることができる。
【0185】
また、発光性の有機化合物を含む層を複数設け、それぞれの層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、発光性の有機化合物を含む層を2つ有する発光素子において、第1の発光性の有機化合物を含む層の発光色と第2の発光性の有機化合物を含む層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、発光性の有機化合物を含む層を3つ以上有する発光素子の場合でも同様である。
【0186】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0187】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0188】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0189】
EL層は、図10(B)に示すように、下部電極層103と上部電極層107との間に複数積層されていてもよい。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0190】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つ以上のEL層を有する発光素子の場合でも同様である。
【0191】
EL層105は、図10(C)に示すように、下部電極層103と上部電極層107との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び上部電極層107と接する複合材料層708を有していてもよい。
【0192】
上部電極層107と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて上部電極層107を形成する際に、EL層105が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0193】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0194】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0195】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0196】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0197】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。
【0198】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0199】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0200】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0201】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。特に、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高い材料を用いることが好ましい。
【0202】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0203】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいてもよい。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0204】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0205】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すればよい。
【0206】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光性の有機化合物を含む層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すればよい。
【0207】
以上により、本実施の形態のEL層105を作製することができる。
【0208】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0209】
100 発光装置
103 下部電極層
105 EL層
107 上部電極層
121 受電電極
123 整流回路
123a 整流回路
123b 整流回路
125 発光素子
131 ダイオード
133 ダイオード
135 容量
137 トランス
139 ブリッジ回路
150 送電装置
151 送電電極
153 高周波電源
155 整合回路
200 発光装置
201 基板
209a 配線
209b 配線
209c 配線
211 対向基板
213 シール材
215 ICチップ
217 絶縁層
219 絶縁層
220 発光装置
221 基板
223 導電層
231 対向基板
240 発光装置
241 回路部
243 薄膜トランジスタ
245 容量
247 絶縁層
249a 配線
249b 配線
249c 配線
251 絶縁層
260 発光装置
300 天井面
301 発光装置
303 受電電極
305 固定具
307 受電電極
311 送電装置
313 電源部
315 制御部
317 送電電極
319 磁性体
350 表示装置
351 基板
353 受電電極
355 整流回路
357 制御回路
359 受信アンテナ
361 表示部
363 信号線駆動回路
365 走査線駆動回路
367 画素
369 選択トランジスタ
371 発光素子
380 表示装置
381 蓄電装置
383 記憶装置
401 表示装置
403 表示装置
405 柱
407 照明装置
411 照明装置
413 表示装置
415 送信器
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光性の有機化合物を含む層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流回路と、
前記整流回路と電気的に接続され、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子と、
前記整流回路と電気的に接続され、電界結合により交流電力を受電可能な受電電極と、を有し、
前記整流回路は、前記受電電極で受電した交流電力を整流し、前記発光素子を駆動させる直流電力を生成する、発光装置。
【請求項2】
前記整流回路は薄膜トランジスタを用いて構成された、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記受電電極は軟磁性材料を含む、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
整流回路と、
一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層が挟持された発光素子と、前記発光素子に接続されるトランジスタを有する、複数の画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
映像信号を受信する受信アンテナと、当該受信アンテナで受信した映像信号に応じて前記駆動回路を駆動する制御装置と、
前記整流回路と電気的に接続され、電界結合により交流電力を受電可能な受電電極と、を有し、
前記整流回路は、前記受電電極で受電した交流電力を整流し、前記駆動回路と前記制御装置を駆動させる直流電力を生成する、表示装置。
【請求項5】
前記受電電極は、軟磁性材料を含む、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の発光装置と、
電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、
前記送電装置は、前記発光装置の前記受電電極と対向するように設けられた送電電極を有する、発光システム。
【請求項7】
請求項3に記載の発光装置と、
電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、
前記送電装置は、前記発光装置の前記受電電極と対向するように設けられた送電電極を有し、
前記受電電極を引きつける磁性体が設けられた、発光システム。
【請求項8】
請求項4に記載の表示装置と、
電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、
前記送電装置は、前記表示装置の前記受電電極と対向するように設けられた送電電極を有する、表示システム。
【請求項9】
請求項5に記載の表示装置と、
電界結合により電力を送電する送電装置と、を備え、
前記送電装置は、前記表示装置の前記受電電極と対向するように設けられた送電電極を有し、
前記受電電極を引きつける磁性体が設けられた、表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−231661(P2012−231661A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90238(P2012−90238)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】