説明

発光装置、電気光学装置、ならびに電子機器

【課題】発光素子を封止する場合、例えば応力による影響を考慮して複数の薄膜を重ねた構造を用いて封止することが一般的であるが、この場合、違う物質が重なるため、屈折率の異なる薄膜が重なることとなる。屈折率の異なる薄膜が重なると、薄膜界面で光反射が生じ、薄膜を通過する光の透過率が低下するという課題がある。
【解決手段】発光素子として例えば有機EL素子150を用い、有機EL素子150への水分や酸素の浸入を防ぐ第1層としてのバリア層137と、バリア層の応力を緩和するための第2層としての有機中間層139間との間に位置し、射出光の少なくとも一部の波長に対して、第3の層としての反射防止層138を挟んだ。反射防止層138は、第1層の屈折率と、第2層の屈折率と、の間の屈折率nを備え、発光素子波長をλとした場合λ/4nの厚さを備えることで、バリア層137と有機中間層139界面での反射損失低減を可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、電気光学装置、ならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光源としての発光装置や、電気光学装置や、液晶表示装置のバックライトとして応用すべく、有機EL素子やLED素子を用いた発光装置の開発が進められている。このような発光装置は、高輝度、低消費電力で高速応答が可能であるという特徴を備えている。しかし、有機EL素子やLED素子は水分に弱いため、有機EL素子やLED素子への水分の侵入を防ぐよう封止されていることが望ましい。特に、AlGaInP(緑や赤を発光する)系のLED素子は、Alが酸化し易いことから、水分の侵入を抑えることが必要となる。
【0003】
そこで、発光素子を封止すべく、電極を覆う複数の薄膜を積層する構造が開発されている。これらの技術の例として、特許文献1、特許文献2、特許文献3を挙げることができる。以下の例では、有機EL素子を用いた場合について説明しているが、発光素子として有機EL素子に代えてLED素子を用いることでLED素子に対しても同様に対応することができる。また、他の発光素子を用いた場合(例えば無機EL素子)でも同様に対応することができる。
【0004】
発光素子を封止する場合、例えば応力による影響を考慮して複数の薄膜を重ねた構造を用いて封止する場合がある。このように違う物質が重なった場合、屈折率の異なる薄膜が重なることとなる。屈折率の異なる薄膜が重なると、薄膜界面で光反射が生じ、薄膜を通過する光の透過率が低下する。図8は、異なる物質により形成された積層構造での反射損により光量が低下する事象を説明するための模式断面図である。なお、基本的には、光は発光層からガラスに向かってガラスの法線方向に向けて射出されるが、ここでは、反射損失を示すために、角度を付けた状態で図示している。
【0005】
そこで、透明電極に重ねて反射防止層を設けることで透明電極による反射を抑える技術が特許文献2に開示されている。
図9は、特許文献2における反射防止層の構成を示す断面図である。特許文献2では、透明電極を覆うように配置された反射防止層を備えている。
また、特許文献3では、上部電極層から透明基板と反対側へ順次積層された封止層の屈折率が単調に小さくなるように封止層を構成することで反射を抑える技術が開示されている。
【0006】
また、有機EL素子に対する封止性能を向上させるため保護層として、特許文献1では、例えばエポキシ樹脂層で有機EL素子を覆い、重ねてシリコン窒化酸化層で覆うことで、ダークスポットの発生を抑制する技術について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−25765号公報
【特許文献2】特開2003−303685号公報
【特許文献3】特開2005−317302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、光学的な特性については開示していない。そのため、屈折率が高いシリコン窒化酸化層と比べ、屈折率が低い例えばエポキシ樹脂層との界面で光の反射が生じ、光の透過率が低下するという課題がある。
【0009】
また、有機EL素子を、例えば、酸素や水分の透過率が低い無機層としてのSiON層を用いて封止することで有機EL素子の信頼性を向上させることができるが、無機層(SiON層)は内部応力が大きく、亀裂の発生を抑制するには、厚さに制限がある。そのため、図8に示すように、無機層(SiON層)よりも柔らかい、例えばエポキシ樹脂層を挟んで無機層(SiON層)を複数枚重ねることで有機EL素子の信頼性を向上させることができる。図8は、無機層(SiON層)を、エポキシ樹脂層を介して複数層(この場合には2層)重ねた場合の断面図である。一般的に無機層としてのSiON層はエポキシ樹脂よりも屈折率が高い。そのため、屈折率は単調には減衰しなくなる。即ち、特許文献3の技術から逸脱するという課題がある。
【0010】
また、特許文献2の技術では、上部電極層による反射は抑えられるものの、例えばシリコン窒化酸化層とエポキシ樹脂層との間の界面に起因する反射を抑えることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]本適用例にかかる発光装置は、 発光素子と、前記発光素子の射出光が通過する第1層と第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置し、前記発光素子からの前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、前記第1層の屈折率と、前記第2層の屈折率と、の間の屈折率を有する第3層を備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、第1層と第2層を直接重ねた場合と比べ、第1層の屈折率と、第2層の屈折率との間の屈折率を持つ第3層を挟むことで、第3層は反射防止層として機能する。そのため、発光素子からの射出光に対して反射損失を抑えた、明るい発光装置を提供することが可能となる。
【0014】
[適用例2]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第3層は、前記第1層と前記第2層と接するように挟まれていることを特徴とする。
【0015】
上記した適用例によれば、第1層と第2層との間に介在する層に起因する反射損失を抑えることが可能となり、より明るい発光装置を提供することが可能となる。
【0016】
[適用例3]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第3層の屈折率は、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、前記第1層の屈折率と前記第2層の屈折率との積の平方根の値をとることを特徴とする。
【0017】
上記した適用例によれば、射出光の反射損失をより小さく抑えることが可能となる。
【0018】
[適用例4]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第3層の厚さは、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、波長をλとし、前記第3層の屈折率をnとし、mを0以上の整数とした場合、(2m+1)×(λ/4n)−λ/8n以上、(2m+1)×(λ/4n)+λ/8n以下の厚さを備えていることを特徴とする。
【0019】
上記した適用例によれば、第3層での反射光は、互いに干渉により反射を打ち消しあう関係となるため、反射防止層としての機能が得られる。また、mとして1以上の値を用いる場合、干渉により反射を打ち消しあう関係を満たすと共に、厚く設定された第3層により、発光素子としての有機EL素子やLED素子への水分の浸入を抑制することが可能となる。
【0020】
[適用例5]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第3層の厚さは、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、波長をλとし、前記第3層の屈折率をnとした場合、mを0以上の整数として(2m+1)×(λ/4n)の厚さを備えていることを特徴とする。
【0021】
上記した適用例によれば、反射防止層の両面で反射する光の位相が逆相になるため、互いに打ち消しあうことで反射損失を小さく抑えることが可能となる。特に、第1層の屈折率と第2層の屈折率との積の平方根の値を備える物質を第3層に用いた場合、理論的には、反射損失を零にすることが可能となる。また、mとして1以上の値を備える厚さを用いる場合、干渉により反射を打ち消しあう関係を満たすと共に、厚く設定された第3層により発光素子への水分の浸入を抑制することが可能となる。
【0022】
[適用例6]上記適用例にかかる発光装置であって、前記一部の波長範囲として、450nm以上485nm以下の範囲にある光を含むことを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、発光素子の発光効率が低い領域(450nm以上485nm以下:青)で反射損失を減らすことができるため、輝度バランスに優れた発光装置を提供することが可能となる。
【0024】
[適用例7]上記適用例にかかる発光装置であって、前記一部の波長範囲として、620nm以上750nm以下の範囲にある光を含むことを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、発光素子の発光効率が低い領域(620nm以上750nm以下:赤)で反射損失を減らすことができるため、輝度バランスに優れた発光装置を提供することが可能となる。また、第3層が複数層ある場合、発光素子の発光効率が低い領域として、第3層を赤用と青用に振り分けることで、輝度バランスを調整することが可能となる。そのため、さらに高い輝度バランスを備えた発光装置を提供することが可能となる。
【0026】
[適用例8]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第1層は無機層であり、前記第2層は樹脂層であることを特徴とする。
上記した適用例によれば、上記した樹脂(プラスチック)はJISにも定義されているように、必須の構成要素として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で、流れによって形を与え得る材料である。即ち、流動性を用いて材料を塗布し、硬化させることで表面形状を平坦化できるため、第1層を覆う第2層、または第3層にかかる応力が平均化され、発光装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0027】
[適用例9]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第2層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂のうちの少なくとも1つを含む樹脂であることを特徴とする。
【0028】
上記した適用例によれば、上記した樹脂(プラスチック)はJISにも定義されているように、必須の構成要素として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で、流れによって形を与え得る材料である。即ち、流動性を用いて材料を塗布し、硬化させることで表面形状を平坦化できるため、第2層を覆う第1層、または第3層にかかる応力が平均化され、発光装置の信頼性を向上させることが可能となる。加えて、上記した樹脂は柔らかく、印加された応力を吸収することで発光素子を保護することが可能となる。
【0029】
[適用例10]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第1層は、珪素窒化物(SiON(酸素0%を含む))、酸化タンタル、酸化チタンうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0030】
上記した適用例によれば、発光素子としての発光素子としての有機EL素子やLED素子内への外界からの水分の浸入を抑えることができる。また、機械的強度が強いため、機械的応力に対して信頼性が高い発光装置を提供することが可能となる。
【0031】
[適用例11]上記適用例にかかる発光装置であって、前記第1層は窒化酸化珪素(酸素0%を含む)であり、前記第2層はエポキシ樹脂であり、前記第3層は前記第1層よりも窒素比率が小さい(窒素0%を含む)窒化酸化珪素であることを特徴とする。
【0032】
上記した適用例によれば、発光素子としての有機EL素子やLED素子内への外界からの水分の浸入を窒化酸化珪素で防ぎ、柔らかいエポキシ樹脂層で応力を緩和することができる。
【0033】
[適用例12]
本適用例にかかる電気光学装置は、上記適用例にかかる発光装置と、表表示パネルと、を備え、前記発光装置は、射出面から光を射出し、前記表示パネルは、前記表示パネルの第1面から入射された光を前記第1面での平面視で強度変調して出力し、前記発光装置の前記射出面と、前記表示パネルの前記第1面とが互いに向い合うよう、前記表示パネルと前記発光装置とを重ねて配置したことを特徴とする。
【0034】
これによれば、反射損失の少ない発光装置を用いて、表示パネルを使用して光を空間的に変調するため、反射損失を軽減していない発光装置を用いた場合と比べ、明るい表示を行うことが可能となる。
【0035】
[適用例13]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例にかかる発光装置を備えたことを特徴とする。
【0036】
これによれば、電力変換効率が高く、かつ高い輝度に対応可能な発光装置を備える電子機器を提供することが可能となる。
【0037】
[適用例14]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例にかかる電気光学装置を備えたことを特徴とする。
【0038】
これによれば、電力変換効率が高く、かつ高い輝度に対応可能な電気光学装置を備える電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】発光装置としての有機EL装置の斜視図。
【図2】(a)は、図1に示す発光装置としての有機EL装置の平面図、(b)は、(a)のB−B’線断面図。
【図3】(a)はPPV−R、(b)はPPV−G、(c)はPPV−Bの構造式。
【図4】反応性スパッタリング装置の模式断面図。
【図5】(a)は、反射防止層の厚さを1/4波長に合わせた場合の反射波の合成状況を示すグラフ、(b)は、反射防止層の厚さが1/4波長よりも若干ずれた場合の反射波の合成状況を示すグラフ。
【図6】電気光学装置の斜視図。
【図7】(a)〜(c)は、本実施形態にかかる電子機器の模式図。
【図8】背景技術を説明するための断面図。
【図9】背景技術を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0041】
(第1の実施形態:発光装置の構成)
図1は、本実施形態の構成を示す発光装置としての有機EL装置の斜視図である。なお、本明細書では、「上」とは基板130から保護ガラス145に向かう方向を示すものとして記載している。そして、「下」とは、「上」と反対の方向を示すものとして記載している。また、図1においては、斜視図が煩雑となるため、発光層135の記載は省略している。
そして、図2(a)は、図1に示す、発光装置としての有機EL装置の平面図、図2(b)は図2(a)のB−B’線における断面図である。なお、図2(b)に示す断面図では、光学的に寄与しない層間絶縁層132よりも下側にある領域は省略して記載している。
有機EL装置300は、基板130の上に、例えばTFT122、TFT123、TFT122とTFT123と光反射性陽極133とを電気的に分離する層間絶縁層132、金属とITOを重ねた光反射性陽極133、隔壁134、発光層135、光透過性陰極136、バリア層137、反射防止層138、有機中間層139、反射防止層140、バリア層141、反射防止層142、接着層143、カラーフィルター144、保護ガラス145を備えている。
そして、走査線101、信号線102、共通給電線103、TFT122、TFT123、保持容量capを備えている。
ここで、隔壁134により平面的に囲われ、光反射性陽極133と、発光層135と、光透過性陰極136を合わせた領域を発光素子としての有機EL素子150と呼ぶ。なお、図2(b)では、層間絶縁層132とバリア層137の一部が含まれるよう記載しているが、これは作図上、境界と枠線が重なることで視認性が低下するため、ずらして記載したもので、層間絶縁層132とバリア層137は、有機EL素子150には含まれてはいない。
【0042】
基板130の上には、複数のドット領域Aがマトリックス状に配列されている。それぞれのドット領域Aには光反射性陽極133が配置されており、その近傍には信号線102、共通給電線103、走査線101及び図示しない他の構成要素が配置されている。ドット領域Aの平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、角Rを有する長方形など任意の形状が適用可能である。また、ドット領域Aはマトリックス状の配列以外の配置構成を備えていても良く、例えばデルタ配列、モザイク配列を用いることが可能である。
【0043】
ドット領域Aには、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるTFT122と、TFT122を介して信号線102から供給される画像信号を保持する保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給されるTFT123を備える。そして、TFT123を介して共通給電線103に電気的に接続した場合に共通給電線103から駆動電流が流れ込む光反射性陽極133と、光反射性陽極133と光透過性陰極136との間に挟み込まれる発光層135とが設けられ、有機EL素子150が構成されている。
そして、有機EL素子150が備える発光層135は光反射性陽極133上に配置され、光反射性陽極133からは発光層135にホールが注入される。そして、光透過性陰極136からは発光層135に電子が注入される。このホールと電子により、発光層135は光透過性陰極136側(上側)に光を射出する。
【0044】
光反射性陽極133は、反射層としてAl層とITO層との積層構造を用いることができる。また、Al層とITO層との間に透明な絶縁層を挟んでいても良い。
【0045】
発光層135には、白色の蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の低分子材料を用いることができ、例えばアントラセンやピレン、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体を用いても良い。また、これら低分子材料に、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体をドープして用いることができる。
【0046】
また、高分子材料としては、赤色の画素群にはPPV−R、緑色の画素群にPPV−G、青色の画素群にはPPV−B、を用いることができる。なお、この名称は上記した高分子材料を示す仮称である。図3(a)はPPV−R、(b)はPPV−G、(c)はPPV−Bの構造式である。また、これらの層を重ねることでも白色光を射出することが可能となる。
【0047】
さらに、高分子材料としては、例えば、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、(ポリ)フェニレン誘導体(PP)、(ポリ)パラフェニレン誘導体(PPP)、(ポリ)ビニルカルバゾール(PVK)、(ポリ)チオフェン誘導体、(ポリ)メチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系を含む物質が好適に使用することができる。また、これらの高分子材料に、例えば、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドンを含む低分子材料をドープして使用することができるが、これに限られる物ではない。
【0048】
また、発光層135は多層構造を備えていても良く、例えば、正孔を注入・輸送するポリスチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸の混合物を用いた薄膜を備えることも好適である。
【0049】
また、正孔注入・輸送層の形成材料としては、例えば、(ポリ)スチレンジオキシチオフェンの(ポリ)チオフェン誘導体と、(ポリ)スチレンスルホン酸の混合物を用いることができる。この場合正孔を発光層に注入する機能を有するとともに、正孔を輸送する機能を有する。
【0050】
また、電子注入層として、透明材料であるBCP(bathocuproine)にアルカリ金属を含有させた薄膜を備えることも好適である。
【0051】
光透過性陰極136は、その他の例として、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)を含む材料を含んでいても良い。一例として、MgAg(MgとAgを重量比でMg:Ag=10:1に混合した材料)を含む薄層の透光性電極が、電子注入障壁が低く、かつ耐腐蝕性を持つことから好適に用いられ、この場合には光透過性陰極136は電極と電子注入層を兼ねたものとなる。光透過性陰極136としてMgAgを用いる場合、厚さとしては、例えば10nmが電気抵抗、光透過率のバランスを考慮した場合、好ましい。この他にも、例えばMgAgAl、LiAl、LiFAl、Ca単体を用いても同様の効果をもって光透過性陰極136を形成することが可能となる。また、これらの金属薄層と例えばITOや酸化錫、酸化亜鉛の透明導電材料を積層した層を光透過性陰極136として用いても良い。
【0052】
ドット領域Aでは、走査線101が駆動されてTFT122がオンなると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、この保持容量capの状態に応じて、TFT123の導通状態が決まる。また、TFT123のチャネルを介して共通給電線103から光反射性陽極133に電流が流れ、さらに発光層135を通じて光透過性陰極136に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて、発光層135が発光する。
【0053】
カラーフィルター144は、例えば光の3原色、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色を備えており、カラー表示を行わせている。なお、カラーフィルター144は、ドット領域AがRGB各色に対応して作り分けられており、かつ発光層135から射出される光の色純度が高い場合には省略可能である。ドット領域AをRGB各色に対応して作り分ける方法としては、蒸着用マスクを用い、RGB各色に対応する領域毎に分離して形成する方法や、例えば溶媒中に材料を分散させた後、インクジェット法で吐出描画し、塗り分けて形成する方法を例示することができる。
【0054】
光透過性陰極136とカラーフィルター144の間には、大気からの水分や酸素の浸入を防ぐことで、有機EL素子150の信頼性を確保すべく、封止層151が配置されている。
封止層151は、第1層としてのバリア層137、第3層としての反射防止層138、第2層としての、樹脂を用いた有機中間層139、第3層としての反射防止層140、第1層としてのバリア層141、第3層としての反射防止層142、第2層としての接着層143を備える。そして、封止層151の上には、カラーフィルター144、保護ガラス145をさらに備えている。
【0055】
バリア層137、バリア層141としては、水分や酸素に対するバリア性を有する無機質のシリコン窒化酸化層(SiON:酸素0%を含む)を用いることができる。バリア層137、バリア層141として典型的には、屈折率1.8のSiONを用い、厚さは0.1μm以上0.5μm以下の範囲で構成することで、内部応力を抑えて膜質を良好に保ち、かつ水分や酸素に対するバリア性を確保することが可能となる。屈折率1.8のSiONは、SiO2に比べて硬く(脆い)ため、膜厚が厚い場合、内部応力により例えば亀裂が生じる場合がある。そこで、有機中間層139を介して応力緩和を行うことが好適となる。
【0056】
また、有機中間層139として広く用いられているエポキシ樹脂により表面を平坦化することができ、応力緩和を効果的に行うことが可能となる。しかしながら、エポキシ樹脂は、水分によりエポキシ樹脂そのものが劣化する場合があり、水蒸気耐性や水蒸気阻止性は屈折率1.8のSiONと比べ低い。そこで、バリア層137、バリア層141の構成材としてこのSiONを用い、第2層としての有機中間層139、接着層143を用いることが好適となる。
【0057】
ここで、バリア性をさらに向上させるために、より屈折率が高い(窒素比率が高い)SiONを用いることも可能である。この場合には後述する、反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142の屈折率も高い値にすることで、より精密に界面での反射損失を低減することが可能となる。
【0058】
また、バリア層137、バリア層141を構成する物質としては、SiON(酸素0%を含む)に限定されることなく、例えば酸化タンタルや、酸化チタンを含んでいても良く、水分の浸入を効果的に防止することができる。
【0059】
有機中間層139としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができ、隔壁134により生ずる段差を埋めてその上に形成されるバリア層141に欠陥(例えば亀裂)を生じさせないよう、上部の形状を平坦化している。有機中間層139は、例えば5μmの厚みを備えている。
【0060】
また、接着層143としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができ、カラーフィルター144と、保護ガラス145とを固定する機能を備えている。
【0061】
ここで、有機中間層139や接着層143は、エポキシ樹脂に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を含んでいても良く、応力の緩和を効果的に行うことが可能となる。また、上記した樹脂の屈折率はエポキシ樹脂と同じく約1.5であるため、反射防止層138や、反射防止層140、反射防止層142の厚みや屈折率を変えずに切り替えて用いることが可能である。
【0062】
そして、封止層151の上には、カラーフィルター144、保護ガラス145が配置されており、水分の浸入防止と、カラー表示が行えるよう構成されている。ここで、カラーフィルター144は典型的にはアクリル樹脂が用いられ、その屈折率は保護ガラス145と同様に、約1.5である。
【0063】
そして、バリア層137と有機中間層139との間には反射防止層138が、有機中間層139とバリア層141との間には反射防止層140が、バリア層141と接着層143との間には反射防止層142が、配置されている。有機中間層139や、接着層143として用いられるエポキシ樹脂の屈折率は約1.5である。そして、保護ガラス145、カラーフィルター144の屈折率も上述したように約1.5である。
【0064】
上記した構成を用いた場合、屈折率が大きく異なる界面は、バリア層137と有機中間層139との間、有機中間層139とバリア層141との間、バリア層141と接着層143との間であり、主に、これらの界面で反射が生じる。そして、上記した界面は、屈折率が約1.8と、約1.5の物質が接しており、屈折率が約0.3異なっている。そして、このような界面が複数(本実施形態では3つ)存在している。
【0065】
そこで、バリア層137と有機中間層139との間に反射防止層138、有機中間層139とバリア層141との間に反射防止層140、バリア層141と接着層143との間に反射防止層142を挟むことによって、反射を抑制することが可能となる。この場合、反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142の屈折率としては、1.5と1.8の間の値を取ることが好ましい。そのような物質としては、例えば、バリア層137やバリア層141を構成するSiONよりも酸素リッチ(窒素0%を含む)なSiONを用いることができる。また、バリア層137の窒素含有比を増やした場合には、SiONに代えて、酸化アルミニウムを用いることも好適である。
【0066】
これら反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142は、例えば反応性スパッタリング法で成膜するSiONを用いることができる。反応性スパッタリング法は、例えばCVD法のように基板を高温にすることなく成膜できるため、この場合好適な製造方法となる。
そして、以下に示す反応性スパッタリング装置を用いて、雰囲気ガスやターゲットを代えることで、バリア層137、バリア層141に好適な酸化タンタルや、酸化チタンも積層することが可能となる。
【0067】
図4は、反応性スパッタリング装置の模式断面図である。以下、図4を用いて反応性スパッタリング装置200の構成について説明する。反応性スパッタリング装置200は、プラズマ生成室201、排気系202、磁場発生コイル203、マイクロ波導入窓204、プラズマ発生ガス供給部205、成長室206、珪素ターゲット207、RF−DC電源208、反応ガス供給部210、を含む。以下、反応性スパッタリング装置200を用いた層形成方法について説明する。
【0068】
プラズマ生成室201内には、マイクロ波導入窓204からマイクロ波が導入される。そして、プラズマ発生ガス供給部205からは例えばアルゴンのプラズマ発生ガスが供給される。そしてプラズマ発生ガスは、マイクロ波からエネルギーを受け、磁場発生コイル203が発生する磁場と共鳴することでプラズマ化する。
【0069】
発生したプラズマは、RF−DC電源208から珪素ターゲット207に与えられたバイアスや磁場発生コイル203が発生する磁場強度勾配により、成長室206にドリフトして流れ込む。そして、珪素ターゲット207と接触することで珪素がスパッタされ、同時にプラズマからエネルギーを受けてイオン化、ラジカル化する。このプラズマは、光透過性陰極136が形成された基板130(図1参照)側にドリフトしていく。そして、プラズマが基板130に届く前に、反応ガス供給部210から、窒素や酸素が供給される。供給された窒素や酸素は、イオン化、ラジカル化し、珪素イオン、珪素ラジカルと反応して窒化酸化珪素(酸素または窒素の片方が0%の場合を含む)となる。そして、基板130上に位置する構造体の露出した面上に窒化酸化珪素(酸素または窒素の片方が0%の場合を含む)が形成される。窒化酸化珪素(酸素または窒素の片方が0%の場合を含む)を形成した後、プラズマはエネルギーを失いガス化する。そして、排気系202により成長室206から排気される。
【0070】
ここで、成膜を行う際に供給される窒素流量を下げることで酸素リッチな層を得ることができ、屈折率を1.65程度に制御することができる。これは、バリア層137、バリア層141に用いられたSiONの屈折率1.8と、有機中間層139や、接着層143として用いられたエポキシ樹脂の屈折率1.5の積の平方根の値である。本実施形態では、有機EL素子150の発光強度が低い波長として、青に対応する波長(450nm以上485nm以下:例えば470nm)で1/4波長となる71nmに設定しているが、これは、赤に対応する波長(620nm以上750nm以下:例えば680nm)で1/4波長となる103nmに合わせるよう構成しても良い。また、青と赤の双方に対応すべく、例えば、第3層としての反射防止層138の厚みを青に対応する波長に合わせ、第3層としての反射防止層140の厚みを赤に対応する波長に合わせるように構成しても良い。
【0071】
また、スパッタ用マスクを用いて複数回の反応性スパッタリング法を用いることで、各色に対応した波長に対して厚みを制御しても良い。また、例えば3板式のプロジェクターへ適用する場合には、各色に合わせて1/4波長となるよう設定しても良い。
【0072】
第3層としての反射防止層138、第3層としての反射防止層140、第3層としての反射防止層142の膜厚の最適値は、屈折率をn(例えば1.65)、mを0以上の整数、λを波長とした場合、(2m+1)×(λ/4n)で表せる。
また、屈折率1.65換算で1/2波長(光路長にして1波長)の自然数倍分の厚みを加えても良く(m≧1に対応する)、厚い層を用いることで反射防止層に水分の浸入を抑える機能を持たせることが可能となる。
【0073】
また、屈折率1.65換算で1/4波長から多少ずれた厚さであっても差し支えはなく、例えば、ずれが1/8波長以下であれば、干渉により反射を打ち消しあう関係となるため、反射防止層としての十分な機能が得られる。また、反射防止層を入れることで、反射損失が減る場合には、上記した範囲を逸脱した厚みを用いても良い。
【0074】
また、屈折率1.65換算で1/2波長の、自然数倍分の厚み(m≧1に対応する)を加えても良く、厚い層を用いることで反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142に水分の浸入を抑える機能を持たせることが可能となる。この場合、第3層としての反射防止層138、第3層としての反射防止層140、第3層としての反射防止層142の膜厚の好適値は、上記したλとn,mを用いて、以下の範囲で示される。
(2m+1)×(λ/4n)−λ/8n以上、(2m+1)×(λ/4n)+λ/8n以下が好適値となる。
図5(a)は、反射防止層(例えば反射防止層138)の厚さを1/4波長に合わせた場合の反射波の合成状況を示すグラフである。この場合、光の反射を物理的には0に抑えることができる(例えば光吸収により、若干の反射光は生じる)。
そして、図5(b)は、反射防止層(例えば反射防止層138)の厚さが1/4波長よりも若干ずれた場合(この場合では、約1/16波長分ずれた場合)の反射波の合成状況を示すグラフである。この場合においても、干渉による反射光の打ち消しが行われるため、反射光強度を減少させることが可能となる。
【0075】
また、例えば反射防止層138は、バリア層137と、有機中間層139と直接接触していなくとも良く、例えばバッファー層を介して反射防止層138を介在させても良い。
【0076】
また、可撓性を備える発光装置としては、バリア層として3層のSiONを用いることも好適である。可撓性を確保するためには有機EL装置300全体の厚さを抑える必要があり、基板130 保護ガラス145による水分や酸素に対してのバリア性が低下する。そのため、低い透湿性を備えた3層バリアを用いることが好適となっている。
【0077】
ここでは、発光装置として有機EL装置300を用いた表示装置について説明したが、これは、例えば、無機EL装置を用いて表示装置を構成しても良い。無機EL装置に用いる無機EL素子としては、例えば赤色の発光を、蛍光顔料を用いて増強することで、白色(RGB混合型)発光を行うものが知られている。ここで、カラーフィルターを併用することで、カラー表示に対応可能である。また、無機EL素子として、基本的な骨格にペロブスカイト型酸化物を用い、各色に対応した不純物を添加することでRGBに対応した光源としても良い。
また、RGBに対応したLEDをマトリックス状に用いることで、カラー表示を行う(この場合には、LEDを実装する都合上)大型の表示装置に対応させることも可能である。この場合、R(赤)にはGaAlAs(660nm)、G(緑)にはInGaNやAlGaInP(520nm)、B(青)にはInGaN(460nm:G用とは組成比が異なる)を用いたLED素子を用いることが好適となる。
また、発光装置としての応用として、一般の照明器具として、例えば電球や蛍光灯に代えて上記した発光装置を適用しても良い。特に、有機EL装置300や、無機EL装置は、面で発光するため、ぎらつきを抑えた照明器具を得ることが可能となる。そして、上記したように封止することで、耐湿性が向上するため、例えば浴室や屋外のように、湿度が高い状態での照明として使用することが可能となる。ここで、発光装置としての有機EL装置300を用いる場合、隔壁134は必須ではなく省略可能であり、この場合有機EL装置300は均一性高く発光するため、ぎらつきを抑えた照明装置が得られる。
【0078】
そして、上記した発光装置は、例えば、反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142を備えている。そのため、発光素子としての有機EL素子150や、発光素子としての無機EL素子、LED素子からの射出光は、封止層151内の界面で生じる反射損失が抑制される。そのため、高い効率で発光させることが可能となる。
【0079】
(第2の実施形態:電気光学装置)
第1の実施形態では、直接画像情報を直接表示する発光装置について説明したが、これは別の分野に対しても応用可能である。図6は、表示パネルとしての液晶装置と、発光装置としての有機EL装置を備えた電気光学装置の斜視図である。ここでは、有機EL装置300を基板221に搭載し、液晶装置230のバックライト222として用いた電気光学装置240について説明を続ける。なお、本実施形態の説明の主眼とは外れている構成(例えばカラーフィルター)については図示、説明を省略する。
【0080】
ここでは、発光装置としての有機EL装置300を基板221と重ねてタイル状に貼り合わせたものを例示しているが、これは有機EL装置300を大型化し、貼り合わせで生じる継ぎ目が無い状態で液晶装置230のバックライト222として用いることも好適である。また、有機EL装置300が占める面積を小さくし、例えば拡散板を用いて発光装置を構成しても良い。本実施形態では、タイル状の有機EL装置300を基板221に貼り付けた場合について説明を続ける。この場合、一つの有機EL装置300は、複数の液晶画素224に光を射出することとなる。
【0081】
基板221に貼り付けられた有機EL装置300や、無機EL装置をバックライトに用いる場合、CCFL(冷陰極蛍光ランプ)と比べ、薄型化が可能となる。そのため、厚みに対する仕様が厳しい携帯電話や、モバイルパソコンに好適に用いることができる。また、発光装置としてのLED装置は、有機EL装置300と同様に、分光特性が急峻であり単色性に優れることから、カラーフィルター(図示せず)によるロスが少なく、高い効率を持つ光源として用いることが可能となる。
また、例えばマイクロミラー型表示装置や、反射型液晶装置に対しても、同様に対応することができる。この場合、光は有機EL装置300の光を射出する領域から射出された光が、また有機EL装置300側に帰ってくることとなる。
【0082】
また、本実施形態で用いた電気光学装置が備える発光装置は、例えば、反射防止層138、反射防止層140、反射防止層142を備えている(図2(b)参照)。そのため、発光素子としての有機EL素子150や、発光素子としての無機EL素子、LED素子からの射出光は、積層構造(封止層151内)での界面での反射が抑制されることとなる。そのため、高い効率で発光させることができ、より明るい電気光学装置を得ることが可能となる。
【0083】
(第3の実施形態:電子機器)
以下、本実施形態で説明した発光装置や、電気光学装置を備える電子機器について説明する。図7(a)〜(c)は、本実施形態にかかる電子機器の模式図である。以下、図7を参照して、上述した発光装置を含む電子機器について説明する。
【0084】
図7(a)に、発光装置としての有機EL装置300を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機260は、複数の操作ボタン261及びスクロールボタン262、ならびに有機EL装置300を含む。スクロールボタン262を操作することによって、発光装置としての有機EL装置300に表示される画面がスクロールされる。
携帯電話機260は、その性質上、消費電力が重視される。この有機EL装置300は、封止層151(図2参照)内の界面で生じる反射損失が抑制されているため、高い効率で発光させることが可能となる。そのため、携帯電話機の通話時間を延ばす(バッテリーの消耗が抑えられる)ことが可能となる。
【0085】
そして、図7(b)に、電気光学装置を含むモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を示す。パーソナルコンピューター270は、表示用の電気光学装置220を備えている。そして、電気光学装置220は、有機EL装置300をバックライトとした液晶装置310を備えている。そして、電源スイッチ271及びキーボード272が設けられた本体部273を備える。
モバイル型のパーソナルコンピューター270は、その性質上、バッテリー駆動される場合が多い。そのため、消費電力の低減が大きな課題となる。この電気光学装置220は、封止層151(図2参照)内の界面で生じる反射損失が抑制されているため、高い効率で発光させることが可能となる。そのため、バッテリー駆動が行える時間を延ばすことが可能となる。
【0086】
そして、図7(c)に、有機EL装置を照明装置に用いた場合の構成を示す。照明装置280は、電源スイッチ281、台部282、脚部283、有機EL装置300を備えている。電源スイッチ281は有機EL装置300への電力供給/遮断を切り替える機能を備えている。そして、台部282、脚部283は有機EL装置300を支えている。有機EL装置300は、面発光型デバイスであるため、ぎらつきを抑えた照明装置280を提供することが可能となる。また、照明装置280に用いられている有機EL装置300は、封止層151(図2参照)内の界面で生じる反射損失が抑制されているため、高い効率で発光させることが可能となる。そのため、消費電力を抑えることが可能となる。加えて、面発光型でかつ消費電力を抑えられることから、ジュール熱の総量が下がると共に、熱が広い領域に渡って発生するため効率的に放熱することが可能となる。加えて、有機EL装置300の局部的な温度上昇が抑えられることから、有機EL装置300の寿命を延ばすことが可能となる。
【0087】
以下に、本発明の効果についてまとめる。ここでは、主に、バリア層137、有機中間層139、反射防止層138を用いて説明しているが、これは一例を示しているものであり、他の多層構造を用いている場合、例えば別のバリア層や、別の有機中間層139(必ずしも有機物に限られることは無く、別のバリア層の応力緩和を行うものや、光学的に密着させる機能を備える物質を用いることも好適である)を用いた場合にも対応可能である。
【0088】
バリア層137、バリア層141(図2(b)参照)を構成する物質として、SiON(酸素0%を含む)酸化タンタルや、酸化チタンを用いることで、水分の浸入を効果的に防止することができる。
【0089】
有機中間層139や接着層143(図2(b)参照)に、エポキシ樹脂やアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることで、応力の緩和を効果的に行える。また、上記した樹脂の屈折率は約1.5であるため、反射防止層138や、反射防止層140、反射防止層142の厚みや屈折率を変えずに切り替えて用いることができる。
【0090】
バリア層137、バリア層141(図2(b)参照)のように、バリア層が複数ある場合には、屈折率が大きく異なる界面が複数(この場合には3層)発生し、反射損失が大きくなるが、バリア層137と例えば有機中間層139との間に反射防止層138を設けることで反射損失を低減することが可能となる。特に、反射防止層138の屈折率を、バリア層137の屈折率と有機中間層139の屈折率の両者の屈折率の積の平方根とし、反射防止層138の厚さを光路長として波長の1/4にすることで、理論的には反射損失を0に抑えることが可能となる。
【0091】
反応性スパッタリング法を用いてSiON層を形成することで、例えばCVD法のように基板を高温にすることなく成膜できるため、有機EL素子150(図2(b)参照:無機ELやLEDを含む)に熱ストレスを掛けずに製造することが可能となる。
【0092】
例えば反射防止層138(図2(b)参照)の厚みを、反射防止層138の屈折率を考慮して青に対応する波長(450nm以上485nm以下:例えば470nm)で1/4波長となる71nmや、赤に対応する波長(620nm以上750nm以下:例えば680nm)で1/4波長となる103nmに合わせることで、相対的に輝度が低い波長域での反射損失が抑えられるため、色バランスに優れた状態とすることが可能となる。
【0093】
色毎に光を分光して扱う、プロジェクターへ適用する場合には、例えば、反射防止層138の屈折率を考慮して、各色に対して1/4波長となるよう設定することで、より反射損失を低減することが可能となる。
【0094】
発光装置への応用として、例えば電球や蛍光灯に代えて上記した発光装置を適用しても良い。特に、有機EL装置300(図2(b)参照)や、無機EL装置は、面で発光するため、ぎらつきを抑えた照明器具を得ることが可能となる。そして、上記したように封止することで、耐湿性が向上するため、例えば浴室や屋外のように、湿度が高い状態での照明としても高い発光効率を備える発光装置としての有機EL装置300や、無機EL装置、LED装置を使用することが可能となる。そして、発光装置としての有機EL装置300を用いる場合、隔壁134は必須ではなく省略可能であり、この場合有機EL装置300は平面的に均一性高く発光するため、ぎらつきを抑えた照明装置が得られる。
【0095】
モバイル型のパーソナルコンピューター270(図7(b)参照)は、その性質上、バッテリー駆動される場合が多い。そのため、消費電力の低減が大きな課題となる。この電気光学装置220は、封止層151(図2参照)内の界面で生じる反射損失が抑制されているため、高い効率で発光させることが可能となる。そのため、バッテリー駆動が行える時間を延ばすことが可能となる。
【0096】
以下、本発明にかかる技術的な思想について説明する。
上記適用例にかかる発光装置であって、前記第3層を複数備え、前記一部の波長範囲は、前記第3層の一層以上の層に対して450nm以上485nm以下であり、前記第3層の、別の一層以上の層に対しての波長範囲は、620nm以上750nm以下であることを特徴とする発光装置。
上記した適用例によれば、第3層が複数層ある場合、発光素子の発光効率が低い領域として、第3層を赤用と青用に振り分けることで、輝度バランスを調整することが可能となる。そのため、さらに高い輝度バランスを備えた発光装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0097】
101…走査線、102…信号線、103…共通給電線、122…TFT、123…TFT、130…基板、132…層間絶縁層、133…光反射性陽極、134…隔壁、135…発光層、136…光透過性陰極、137…バリア層、138…反射防止層、139…有機中間層、140…反射防止層、141…バリア層、142…反射防止層、143…接着層、144…カラーフィルター、145…保護ガラス、150…有機EL素子、151…封止層、200…反応性スパッタリング装置、201…プラズマ生成室、202…排気系、203…磁場発生コイル、204…マイクロ波導入窓、205…プラズマ発生ガス供給部、206…成長室、207…珪素ターゲット、208…RF−DC電源、210…反応ガス供給部、220…電気光学装置、221…基板、222…バックライト、224…複数の液晶画素、230…液晶装置、240…電気光学装置、260…携帯電話機、261…複数の操作ボタン、262…スクロールボタン、270…パーソナルコンピューター、271…電源スイッチ、272…キーボード、273…本体部、280…照明装置、281…電源スイッチ、282…台部、283…脚部、300…有機EL装置、310…液晶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の射出光が通過する第1層と第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に位置し、
前記発光素子からの前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、
前記第1層の屈折率と、
前記第2層の屈折率と、
の間の屈折率を有する第3層を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記第3層は、前記第1層と前記第2層と接するように挟まれていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光装置であって、前記第3層の屈折率は、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、前記第1層の屈折率と前記第2層の屈折率との積の平方根の値をとることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記第3層の厚さは、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、波長をλとし、前記第3層の屈折率をnとし、mを0以上の整数とした場合、(2m+1)×(λ/4n)−λ/8n以上、(2m+1)×(λ/4n)+λ/8n以下の厚さを備えていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置であって、前記第3層の厚さは、前記射出光の少なくとも一部の波長に対して、波長をλとし、前記第3層の屈折率をnとした場合、mを0以上の整数として(2m+1)×(λ/4n)の厚さを備えていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記一部の波長範囲として、450nm以上485nm以下の範囲にある光を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記一部の波長範囲として、620nm以上750nm以下の範囲にある光を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記第1層は無機層であり、前記第2層は樹脂層であることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記第2層は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂のうち少のなくとも1つを含む樹脂であることを特徴とする発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記第1層は、珪素窒化物(SiON(酸素0%を含む))、酸化タンタル、酸化チタンのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする発光装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光装置であって、前記第1層は窒化酸化珪素(酸素0%を含む)であり、前記第2層はエポキシ樹脂であり、前記第3層は前記第1層よりも窒素比率が小さい(窒素0%を含む)窒化酸化珪素であることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の発光装置と、
表示パネルと、を備え、
前記発光装置は、射出面から光を射出し、
前記表示パネルは、前記表示パネルの第1面から入射された光を前記第1面での平面視で強度変調して出力し、
前記発光装置の前記射出面と、前記表示パネルの前記第1面とが互いに向い合うよう、前記表示パネルと前記発光装置とを重ねて配置したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項12に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4063(P2012−4063A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140239(P2010−140239)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】