説明

発光装置の駆動方法

【課題】 カラー有機EL表示装置で、消費電力を最小にするために、各色の有機EL素子を発光効率が最大になる電流密度で発光させると、ホワイトバランスが取れない。
【解決手段】 異なる色の有機EL素子を含む発光装置の駆動方法であって、
白色光を出力する際に、
前記異なる色の有機EL素子のうち、発光効率を最大にする電流密度で発光させたときの輝度が他の有機EL素子よりも低い少なくとも1つの色の有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度より大きい電流密度の電流を、前記異なる色の有機EL素子のなかで最も高いデューティで供給し、
残る色の前記有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度の電流を、前記デューティより低いデューティで供給することを特徴とする発光装置の駆動方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型の表示装置や照明装置などの発光装置の駆動方法、詳しくは有機EL素子を用いた発光装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置は、有機EL素子を発光素子として用いる。有機EL素子は、有機化合物を含む薄膜が陽極と陰極に挟持された構造を有する。電流を流すと、陽極と陰極から正孔(ホール)および電子が注入され、有機化合物層内で結合して励起子が生成され、この励起子が基底状態に戻る際に光を放射する。有機EL表示装置は、コントラストが高く、薄型化が容易なことからフラットパネルディスプレイの有力候補として注目されている。また、液晶表示装置に対して応答速度が非常に速く、動画表示にも適している。画素を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の有機EL素子を副画素として構成することにより、カラー表示が可能である。
【0003】
有機EL表示装置は、自発光型であるため、個々の発光素子ごとに点灯または消灯させることができ、全面にバックライトが必要な液晶表示装置より消費電力を小さくできる可能性がある。個々の有機EL素子の発光効率を高めるとともに、表示装置全体としての消費電力を最小にすることが望まれている。
【0004】
特許文献1は、各色の有機EL素子をその最大発光効率を与える電流密度で動作させることにより、消費電力を軽減する発明を開示する。
【0005】
特許文献2には、燐光材料からなる青の有機EL素子が劣化しやすいので、RGBの各有機EL素子の電流密度を、青の発光効率が最大となる値に揃えることにより、劣化を最小に抑える発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−059651号公報
【特許文献2】特開2004−265755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、R(△)、G(◆),B(●)の有機EL素子の電流密度と発光効率の関係を示す図である。対数スケールの横軸は電流密度(A/m)、リニアスケールの縦軸は発光効率(cd/A)を表している。電流密度を増加させると、図1のように、電流密度が低いところでは、電流密度とともに発光効率が増加し、最大値に達した後、電流密度が増えるにつれて低下する。
【0008】
図1の有機EL素子の材料、構造、製造方法については、後で詳しく説明するが、Rは燐光材料の三重項励起子による発光を利用しており、GとBは蛍光材料の一重項励起子による発光を用いている。
【0009】
最大値より高い電流密度における発光効率の低下は、特に、燐光材料を用いた有機EL素子で著しい。この現象は、T−Tアニヒレーションと呼ばれる三重項励起子同士の衝突により、ホストから発光ドーパントへのエネルギー移動が起こりにくくなることが原因であるといわれている。本来、燐光材料を用いた有機EL素子は、三重項励起子からの発光を利用するので、発光効率が高いと期待されるが、この現象のために、比較的低い電流密度で発光効率がピークを示し、ピークでの発光効率も必ずしも高くない。
【0010】
燐光発光と蛍光発光の有機EL素子が異なる色で混在する表示装置では、それぞれの色を発光効率が最大となる電流密度で発光させると、燐光発光の有機EL素子の輝度が蛍光発光の有機EL素子の輝度より飛び離れて低くなってしまう。燐光発光と蛍光発光が混在する場合でなくとも、発光効率と電流密度の関係は、異なる色の有機EL素子の間で大きく異なるのが普通である。そのような有機EL素子で画素を構成し、白色光を出力するために各色を最大発光効率の電流密度で発光させると、各色の輝度が大きく異なることになる。
【0011】
標準的な白色光となるためには、ホワイトバランスの取れた、すなわち決められた輝度比の光になければならない。また、合計輝度も表示装置の規格として定められた値にする必要がある。最大発光効率を与える電流密度で各色の有機EL素子を駆動すると、ホワイトバランスの取れた所定の輝度の白色光を得ることができない。
【0012】
しかし、各色の輝度を調整するために電流密度を最大発光効率から外れた値にすると、消費電力の増加を招く。RGBの発光素子を並列配置して合成した白色光を得る照明装置についても、同様の課題がある。消費電力を低く抑えて、所定の明るさでホワイトバランスの取れた出力を得る方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、異なる色の有機EL素子を含む発光装置の駆動方法であって、
白色光を出力する際に、
前記異なる色の有機EL素子のうち、発光効率を最大にする電流密度で発光させたときの輝度が他の有機EL素子よりも低い少なくとも1つの色の有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度より大きい電流密度の電流を、前記異なる色の有機EL素子のなかで最も高いデューティで供給し、
残る色の前記有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度の電流を、前記デューティより低いデューティで供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、最大発光効率を与える電流密度で発光させたときに最も輝度の低い色の有機EL素子は、最大発光効率の電流密度より高い電流密度で、かつ他の色より高いデューティで、発光させる。その他の色の有機EL素子については、最大発光効率となる電流密度で発光させ、デューティを小さくしてホワイトバランスを調整する。この結果、最大発光効率の電流密度より高い電流密度で発光する有機EL素子の消費電力増加を小さく抑えることができ、表示装置全体として、輝度あたりの消費電力を最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有機EL素子の電流密度と発光効率の関係を示す図である。
【図2】本発明の有機EL素子の断面構造を示す模式図である。
【図3】本発明の有機EL素子を駆動するための駆動回路を示す図である。
【図4】本発明の有機EL素子を駆動するための別の駆動回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す各有機EL素子の最大発光効率とそのときの電流密度およびそれらの積である輝度を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
発光効率は、有機EL素子の発光面を横切って流れる電流あたりの、有機EL素子から外部に出て来る光の強度(光度)である。輝度は、単位面積あたりの強度であるから、発光効率と電流密度の積であらわされる。実際の表示装置の表示面における明るさは、輝度に開口率を乗じたものになる。そのほか、偏光板があるときはその吸収によって明るさがさらに減少する。
各有機EL素子の色度はCIExy座標において
R=(0.672,0.327)
G=(0.220,0.690)
B=(0.134,0.084)
であった。
【0019】
この有機EL素子を用いて、標準的な白色
D65=(0.313,0.329)
を得るためのRGBの輝度比lR:lG:lBは、周知の計算により、
lR:lG:lB=0.285:0.607:0.108
と定められる。
【0020】
一方、普通の室内で用いられるディスプレイに対しては一定の値以上の明るさが規格され、通常は、白色光を出力した画面の輝度が250cd/m以上であることが求められる。開口率がRGBそれぞれ18%、偏光板の透過率が45%とすると、発光面でのRGB合計の輝度は、
250/0.18/0.45=3090
すなわち3090cd/m以上が必要である。これを、上の標準白色にするための比率で配分すると、各色の輝度は、Rが879cd/m、Gが1870cd/m、Bが334cd/m以上でなければならない。
【0021】
表1に示すRGBの輝度は、まず、標準白色を得るための比率からかけ離れているだけでなく、最大発光効率条件下では最も輝度の低いRは、ディスプレイとして要求される明るさを満足するには輝度が絶対的に不足している。Gも、250cd/mの白色を得るには足りず、電流密度を上げるか、もしくは開口率を広げる必要がある。
【0022】
先に述べたように、所定の輝度の標準白色を得るために、各色の電流密度を最大発光効率の条件からはずしてそれぞれの輝度を調節すると、どの色も最大発光効率から離れた条件下で発光させることになり、消費電力が高くなってしまう。
【0023】
そこで、規格値として定められた明るさに対して輝度が不足する色については、電流密度を最大発光効率より高いところに設定して発光させる。その色の有機EL素子は、設定した電流密度とそのときの発光効率の積で決まる輝度で発光し、最大発光効率の電流密度における輝度より高くなる。その他の、最大発光効率の電流密度で十分な輝度が得られる色については、そのままの電流密度に設定し、単位時間内の電流供給時間の比率、すなわちデューティを調節する。有機EL素子は電流の供給開始とほぼ同時に発光し、電流の供給終了とほぼ同時に発光を停止するから、電流供給デューティは発光デューティと実質的に同じである。デューティが100%より小さくなると、時間的な平均を取った見かけの輝度はデューティ分だけ低くなる。輝度が不足する色の電流密度と、その他の色のデューティとは、合成したときに決められた明るさの標準白色が得られるように調節される。
【0024】
輝度が不足する色は、電流供給デューティを、他の色よりも高い、許容される最大のデューティに設定する。デューティを最大限に大きくすることにより、最大発光効率となる値からの電流密度の増加が最小限に抑えられる。その他の色は最大発光効率で発光させることにより、全体として、輝度あたりの消費電力を最小にすることができる。
【0025】
デューティの最大は通常は100%であるが、マトリクス表示装置においては、各画素にデータ信号を書き込むための時間が必要で、その期間は電流の供給が停止するため、デューティの上限が100%より小さいこともある。この場合は、電流密度を増大させる色についてもデューティが100%より小さくなり、その他の色も比例的にデューティが小さくなる。
【0026】
RGBすべての色が、最大発光効率の電流密度で十分な輝度を持っているときは、最大発光効率での電流密度で所定の輝度が維持できる限りその電流密度で発光させればよい。それによって、与えられた輝度のもとでの消費電力を最小にすることができる。しかし、そのような有機EL素子であっても、発光デューティの上限が定まっており、そのデューティ制限のもとでは一部の色の輝度が不足するという場合には、その色について電流密度を最大発光効率での電流密度より高くし、かつ最大のデューティに設定する。他の色については、最大発光効率の電流密度を維持し、デューティを最大値より小さくして輝度を調節する。
【0027】
発光効率が最大となる電流密度で発光させたときの輝度が一番低い色だけでなく、2番目に低い色についても輝度が不足するという場合は、それら2つの色について、発光効率の最大を与える電流密度より高い電流密度にする。
【0028】
以下、実施例で具体的に説明する。以下の実施例において、開口率はRGBで等しく、ともに18%であるとする。発光面から出た光が偏光板によって吸収されると仮定しているが、保護膜その他があるときはその吸収も含むと考えればよい。有機EL素子は図1と表1に示した特性をもつとして説明する。図1の有機EL素子は、Rが燐光発光材料、GとBが蛍光発光材料からなるが、本発明はこれに限定されない。
【実施例1】
【0029】
本実施例では、RとGの電流密度を最大発光効率を与える値より高いところに設定し、それぞれデューティ100%で電流を供給する。Bは最大発光効率の電流密度に設定し、デューティを調節することにより、ホワイトバランスをとる。
【0030】
先に述べたように、標準的な白色光を出力したときの表示画面上の明るさが250cd/mとなるためには、RとGの輝度は、それぞれ、LR=879cd/m、LG=1870cd/mでなければならない。一方、Bは最大発光効率の電流密度で駆動するので、表1に示した輝度LB=1620cd/mで発光している。BのデューティをTB%とすると、Bの見かけの輝度は、LB×TB/100である。上のR、Gと合わせてホワイトバランスをとるには、見かけの輝度が334cd/mでなければならないから、
LB×(TB/100)=334cd/m
より、
TB=21%
となる。
【0031】
Rの輝度が上の値(LR=879cd/m)になるときの電流密度と発光効率を図1のRの曲線上から求めると、電流密度は67A/m、そのときの発光効率は13.1cd/Aであった。最大の発光効率14.1cd/Aの93%に低下している。
【0032】
また、Gが上の値(1870cd/m)の輝度になるときの電流密度と発光効率を図1のGの曲線上から求めると、88A/m、21.1cd/Aとなった。Gの電流密度も最大発光効率のところから増えるが、ピーク近くのため、発光効率は最大値とほとんど変わらない。
【0033】
RとGはデューティ100%、Bはデューティ21%で電流を流すので、時間平均を取った合計電流密度は、
67+88+396×0.21=235A/m
である。消費電力は、これに駆動電圧をかけたものである。駆動電圧が7.5Vのとき、消費電力は、単位面積あたり1760W/mとなる。白色表示の画面輝度250cd/mで割った輝度あたりの消費電力は7.04W/cdである。
【0034】
白色より低い、白と黒の中間の輝度は、有機EL素子に流す電流の大きさを変調することにより得られる。Rは電流密度を0から67A/mの間で変調し、Gは0から88A/mの間で、Rは0から396A/mの間でそれぞれ変調することにより0%から100%までの階調表示が得られる。しかし、この方式では、Bは、最大輝度の表示以外は最大発光効率の電流密度より低い電流密度で駆動することになり、輝度あたりの消費電力は大きくなってしまう。
【0035】
電流の大きさを一定にし、発光時間を変調することによって。中間の輝度を出力することも可能である。その場合は、RとGは、デューティ0%から100%まで変調し、Bのデューティを0%から21%の間でそれぞれ変調する。この場合は、どの階調レベルにおいても電流密度が一定なので、輝度あたりの消費電力は白色光出力時と同じく最適に維持される。本発明の駆動方法では、階調表示方式としては、発光効率が最大になる電流密度に電流を固定し、デューティを変調する方式がのぞましいといえる。
【実施例2】
【0036】
本実施例では、求められる白色光の輝度が、Rでのみ絶対的に不足し、GとBではそれを上回っている場合についての例である。Rの電流密度を最大発光効率を与える値より大きいところに設定し、デューティ100%で発光させ、GとBは最大発光効率の電流密度に設定し、デューティを調節することにより、ホワイトバランスをとる。
【0037】
標準白色を出力するときの輝度が150cd/mである場合、図1と表1に示す特性の有機EL素子に要求される輝度は、LRが527cd/m、LGが1124cd/m、LBが201cd/mである。ただし、開口率および偏光板透過率は実施例1と同じであるとする。
【0038】
最大発光効率の条件でそれぞれを発行させたときに、輝度が絶対的に不足するのはRである。そこで、Rは、最大発光効率の電流密度より高い電流密度で発光させ、デューティは100%にする。GとBは、最大発光効率の電流密度で発光させ、デューティを100%より小さくする。
LR=527cd/mを得るための電流密度と発光効率を、図1のRの曲線上から探すと、電流密度は39A/m、発光効率は13.5cd/Aとなる。
GとBは、それぞれ、発光効率が最大となる電流密度の電流を流して発光させるので、表1の輝度LG=1340cd/m、LB=1620cd/mになる。G、BそれぞれのデューティをTG%、TB%とすると、見かけの輝度がLR=527cd/mとホワイトバランスをとるには、
LG×TG/100=1124cd/m
LB×TB/100=201cd/m
でなければならない。これから、
TG=84%
TB=12%
となる。
【0039】
時間平均をとった合計電流密度は、
39+63×0.84+396×0.12=139A/m
駆動電圧7.5Vのときの1mあたりの消費電力は、1040W/m
輝度150cd/mで規格化した消費電力は、6.93W/cd
となる。
【0040】
Rが最大発光効率から外れるが、GとBを最大発光効率の電流密度で発光させることができるため、輝度あたりの消費電力は、実施例1よりもさらに小さくなる。
【0041】
(比較例)
比較のために、実施例1において、R、GのみならずBのデューティも100%にした場合について説明する。
【0042】
Bは、デューティ100%で輝度334cd/mを出力するので、最大発光効率のところから外れて、電流密度85A/m、発光効率3.9cd/Aで発光させることになる。発光効率は最大値の95%に低下する。また、合計電流密度は
67+88+85=240A/m
駆動電圧7.5Vのときの消費電力は1mあたり1800Wである。輝度あたりの消費電力は7.2W/cdとなり、実施例1、2よりも増加する。
【0043】
また、RGBのデューティをすべて50%にすると、合計輝度250cd/mの白色を表示するための輝度は上の2倍になり、その輝度を得るための電流密度とそのときの発光効率は
Rは、電流密度146A/m、発光効率10.9cd/A
Gは、電流密度177A/m、発光効率20.8cd/A
Bは、電流密度201A/m、発光効率4.0cd/A
となる。それぞれの発光効率は最大値に対し、77%:98.1%:97.5%に低下する。
【0044】
合計電流密度は
(146+177+201)×0.5=262A/m
である。駆動電圧7.5Vのときの消費電力は1mあたり1970Wとなり、デューティをすべて100%にしたときよりもさらに増加する。
【0045】
<駆動回路>
異なる色の有機EL素子間で発光デューティを変えるためには、発光時間を制御できる駆動回路を使用しなければならない。図2はそのための回路の1例であり、有機EL表示装置の一部を拡大した回路図である。行方向には、RGBの有機EL素子OLED、OLED、OLEDが周期的に配置されている。列方向には同色の有機EL素子が配置されている。
【0046】
各有機EL素子OLEDは、トランジスタ20−23とキャパシタCを含む駆動回路に接続されて駆動される。各行に、走査ラインSCANRi、SCANGi、SCANBiと、消去走査ラインSWITCH_SCANRi、SWITCH_SCANGi、SWITCH_SCANBiが配置されている。iは行番号を示す添え字である。
【0047】
図3に図2の回路の駆動タイミングチャートを示す。図3は、1フレーム期間t0〜tFにおける1つの行の走査ラインSCANと消去ラインSWITCH_SCANの各信号と、有機EL素子OLEDの発光のタイミングR,G,Bを示す。
【0048】
t0からt1の期間はデータの書き込みが行われる。RGBの走査ラインSCANと消去ラインSWITCH_SCANがともにHIGHになる(以下、色を表す添え字と行番号を表す添え字は省略する)。トランジスタ20とトランジスタ21が導通して、その行のトランジスタ23のゲートがDATAラインに接続され、駆動トランジスタ23のソース−ドレイン間に電流が流れて、その電流がOLEDに供給され、OLEDが発光する。
【0049】
その後t1で走査ラインSCANと消去走査ラインSWITCH_SCANがともにLOWになるが、トランジスタ23のゲート電圧が保持容量Cに保持され、発光が継続する。
【0050】
tR,tG,tBからΔTの期間は、それぞれ、R、G、Bのデータを消去して消灯する期間である。データ消去の際には、SWITCH_SCANラインがLOWのまま、走査ラインSCANがHIGHになり、トランジスタ23のゲートがVddラインに接続され、トランジスタ23がオフになり発光が終了する。同時に保持容量Cの放電が行なわれるので、その後は消灯のままとなる。
【0051】
データ消去のタイミングtR,tG,tBを調節することにより、RGBの発光時間を制御することが可能である。
【0052】
<製造方法>
実施例1の有機EL素子の製造方法を説明する。
【0053】
図4は、実施例1の有機EL素子の断面構造を示す図である。画素は、RGBの3色からなるトップエミッション型の有機EL素子から構成される。陽極が基板側、陰極が光取り出し側に位置する。
【0054】
TFTが形成された基板1上に、コンタクトホールを有する平坦化膜を形成した(TFT、平坦化膜、コンタクトホールは図示しない)。次に、スパッタ法によって、Ag合金膜を100nm形成した上に、酸化インジウム錫(ITO)膜を10nm積層し、これらをパターニングすることにより陽極2とした(図2には、Ag合金膜とITO膜を合わせて陽極2と記載する)。陽極2はコンタクトホールを介してTFTに接続している。Ag合金膜は陽極であるとともに、反射面の役割を果たす。次に陽極2上に形成した絶縁層に対してリソグラフィ技術を用いて素子分離膜を作製した(図示しない)。素子分離膜は、画素および副画素を分離し、TFTによって独立に駆動させるために設けられる。
【0055】
次に基板の前処理について説明する。基板を、真空中で100℃5分間ベイク、乾燥空気中でUVによるオゾン洗浄、真空中で100℃10分間再ベイクを実施した。
【0056】
前処理が終了したのち、金属マスクを基板にアライメントして、必要な膜厚を塗り分け、有機層を形成した。
【0057】
正孔注入層3、RG画素の電子ブロック層5は形成しない場合もある。
正孔輸送層としては、ジアミン化合物を、R画素が230nm、G画素が160nm、B画素が90nmとなるように形成した。
【0058】
次に、B画素に対してのみ、電子ブロック層5として、モノアミンを10nm蒸着した。
【0059】
下記有機材料を40nm共蒸着して、Gの発光層7を形成した。下記構造式(G)で示す緑色発光ドーパントGD12が10vol%とアシストドーパントGD9が含まれる。
【0060】
【化1】

【0061】
下記有機材料を30nm共蒸着して、Rの発光層6を形成した。下記の式(R)に構造式で示す赤色発光ドーパントRD9が2vol%、アシストドーパントRD12が15vol%含まれる。RD9とRD12は燐光材料である。
【0062】
【化2】

【0063】
下記有機材料を35nm共蒸着して、Bの発光層8を形成した。Bの有機EL材料には、下記式(B)で示される青色発光ドーパントBD12が2vol%含まれる。
【0064】
【化3】

【0065】
以下の層については、RGB共通である。
【0066】
正孔ブロック層9は、フルオレン化合物を10nmの膜厚で成膜した。次に、電子輸送層10として、フェナントロリン化合物を10nmの膜厚で成膜した。
【0067】
電子輸送層10を形成後、前記フェナントロリン化合物と炭酸セシウムを、セシウムの濃度が23wt%となるように蒸着レートを調整して、共蒸着膜の厚さが60nmになるまで成膜し、電子注入層11とした。
【0068】
陰極12は、インジウム亜鉛酸化物(IZO)を、60nmスパッタし形成した。IZOの上部界面は屈折率段差を利用した反射面となり、陽極側の反射膜とともに、マイクロキャビティ構成を形成する。
【0069】
最後に、N2雰囲気下で基板1周縁部に紫外線硬化樹脂を塗布し、ガラス基板を貼り合わせて紫外線を照射し封止する。この際、画素部に紫外線が当たらないようにマスクする。
【0070】
本発明は、図4に示す構成の有機EL素子に限らず、電流密度に対する発光効率が最大ピークを持つ有機EL表示装置に適用できる。本発明で使用される有機EL材料は、蛍光材料・燐光材料のいずれであっても良い。少なくとも1色の有機EL素子が燐光材料を含有し、その発光効率が最大となる電流密度が、他の蛍光材料を含有する有機EL素子のそれより小さいときに、本発明は好ましく適用される。
【0071】
また、トップエミッション型の有機EL素子だけでなく、ボトムエミッション型や両面発光型などの有機EL表示素子を用いた表示装置にも本発明は適用できる。陰極よりも陽極の方が基板に近く、駆動TFT(図示しない)を陽極に接続する有機EL素子であっても、その逆の配置であってもよい。
【0072】
1つの画素がRGBから構成される有機EL表示装置に限らず、RGBBなど、1画素につき同色の副画素が2つ以上含まれる有機EL表示装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
OLED 有機EL素子
SCAN 走査ライン
SWITCH_SCAN 消去ライン
DATA データライン
VDD 電源ライン
20−23 トランジスタ
C 保持容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色の有機EL素子を含む発光装置の駆動方法であって、
白色光を出力する際に、
前記異なる色の有機EL素子のうち、発光効率を最大にする電流密度で発光させたときの輝度が他の有機EL素子よりも低い少なくとも1つの色の有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度より大きい電流密度の電流を、前記異なる色の有機EL素子のなかで最も高いデューティで供給し、
残る色の前記有機EL素子に、前記発光効率を最大にする電流密度の電流を、前記デューティより低いデューティで供給することを特徴とする発光装置の駆動方法。
【請求項2】
前記最も高いデューティが100%より低いデューティであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置の駆動方法。
【請求項3】
前記異なる色の有機EL素子の各々に、前記白色光を出力する際の電流と等しい電流を、前記白色光を出力する際のデューティより低いデューティで供給することにより、前記白色光より低い輝度の光を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置の駆動方法。
【請求項4】
前記発光効率を最大にする電流密度で発光させたときの輝度が最も小さい有機EL素子は、発光層に燐光材料が含有されている有機EL素子であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の発光装置の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−32453(P2012−32453A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169701(P2010−169701)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】