発光装置及びその製造方法
【課題】発光装置から出射する光の出射方向による色調のばらつきを抑える。
【解決手段】発光素子(LEDチップ10)は、基板20に実装される。封止樹脂(第一封止樹脂40,第二封止樹脂50)は、蛍光体を含み、発光素子を覆う。第一の封止樹脂(第一封止樹脂40)は、発光素子に近接している。第二の封止樹脂(第二封止樹脂50)は、第一の封止樹脂の出光側に形成される。第二の封止樹脂は、凸形状を成し、発光素子の中心軸上の厚みが厚い。
【解決手段】発光素子(LEDチップ10)は、基板20に実装される。封止樹脂(第一封止樹脂40,第二封止樹脂50)は、蛍光体を含み、発光素子を覆う。第一の封止樹脂(第一封止樹脂40)は、発光素子に近接している。第二の封止樹脂(第二封止樹脂50)は、第一の封止樹脂の出光側に形成される。第二の封止樹脂は、凸形状を成し、発光素子の中心軸上の厚みが厚い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色LEDチップなどの発光素子と、発光素子が発した光を波長変換する黄色蛍光体などの蛍光体とを組み合わせることにより、白色光を発する発光装置がある。
蛍光体は、例えば封止樹脂に混入され、蛍光体が混入された封止樹脂で発光素子を覆うことにより、発光素子の周囲に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−87812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子が発した光が封止樹脂を通過する距離が出射方向により異なると、波長変換される光の割合が変化するため、発光装置から出射する光の色調が出射方向によりばらつく。
この発明は、例えば、発光装置から出射する光の出射方向による色調のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる発光装置は、
光を発する発光素子と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂とを有し、
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる発光装置によれば、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1における発光装置1の一例を示す断面図。
【図2】実施の形態1における発光装置1が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図。
【図3】実施の形態1における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図。
【図4】実施の形態1における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図。
【図5】実施の形態1における完成した発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図。
【図6】実施の形態1における完成した発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図。
【図7】実施の形態1における発光装置1及び比較例における発光装置が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図。
【図8】実施の形態2における発光装置200の一例を示す断面図。
【図9】実施の形態3における基板20の一例を示す正面図及びP−P断面図。
【図10】実施の形態3における製造途中の発光装置1aの一例を示す正面図及びP−P断面図。
【図11】実施の形態3における色調測定工程の一例を示す図。
【図12】実施の形態3における発光装置1の一例を示す正面図及びP−P断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
実施の形態1について、図1〜図7を用いて説明する。
【0009】
図1は、この実施の形態における発光装置1の一例を示す断面図である。
【0010】
発光装置1は、例えば、LEDチップ10と、基板20と、ワイヤー22と、第一封止樹脂40と、第二封止樹脂50とを有する。
【0011】
LEDチップ10(発光素子)は、例えば約450nmの青色光を発する。基板20は、平板状である。LEDチップ10は、基板20に半田付けされている。LEDチップ10の表面には、電極(図示せず)が形成されている。基板20には、回路パターン(図示せず)が形成されている。LEDチップ10の電極は、ワイヤー22により、基板20の回路パターンに電気接続されている。LEDチップ10には、ワイヤー22を介して電力が供給される。基板20の表面には、第一封止樹脂40が設けられている。第一封止樹脂40は、LEDチップ10およびワイヤー22を囲んでいる。第一封止樹脂40は、LEDチップ10の中心軸a上で高さが最大となる凸形状である。さらに、第一封止樹脂40を囲むように、第二封止樹脂50が設けられている。第二封止樹脂50は、LEDチップ10の中心軸a上で高さが最大となる凸形状である。
【0012】
第一封止樹脂40(第一の封止樹脂)は、例えば、黄色蛍光体と、微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、LEDチップ10からの青色光によって励起され、黄色光を放出する。黄色蛍光体の濃度は、例えば15wt%(重量パーセント)である。微粒子シリカは、例えばナノサイズであり、フィラーとして混入されている。微粒子シリカの濃度は、例えば1wt%である。
【0013】
第二封止樹脂50(第二の封止樹脂)は、第一封止樹脂40と同様、黄色蛍光体と、微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、第一封止樹脂40に混入されたものと同一であるが、濃度が第一封止樹脂40より低く、例えば5wt%である。なお、黄色蛍光体の濃度は、あらかじめ定めるのではなく、発光装置1の製造時に決定する。また、微粒子シリカの濃度は、第一封止樹脂40より高く、例えば3wt%である。
【0014】
第一封止樹脂40の径をw1、高さをh1、第二封止樹脂50の径をw2、高さをh2とする。第二封止樹脂50は、次の式で表わされる関係を満たす形状である。
【0015】
h2−h1>(w2−w1)/2
w1≦w2
【0016】
次に、発光装置1の製造方法について説明する。
【0017】
まず、基板20の上に、LEDチップ10をダイボンドし、ワイヤボンドして、実装する(光源実装工程)。
次に、LEDチップ10を覆うように、第一封止樹脂40をポッティングする(第一封止工程)。
次に、第一封止樹脂40を熱硬化する(第一硬化工程)。
その後、色度測定を行う(色調測定工程)。色度測定では、LEDチップ10を発光させて、第一封止樹脂40を介して出射した光の色度座標あるいは相関色温度あるいは三刺激値などを測定する。
色度測定の結果に基づいて、第二封止樹脂50の蛍光体濃度を決定する(濃度決定工程)。
決定した濃度の第二封止樹脂50を用いて、第一封止樹脂40を覆うように、第二封止樹脂50をポッティングする(第二封止工程)。
次に、第二封止樹脂50を、熱硬化する(第二硬化工程)。
【0018】
第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50は、フィラーを混入して粘度を高めているので、径に対する高さの比が高い凸形状をポッティングで形成した場合においても、熱硬化させるまでの形状安定性を高めることができる。特に、第二封止樹脂50のフィラー濃度が第一封止樹脂40よりも高いので、第二封止樹脂50の粘度が第一封止樹脂40に比べて高く、第二封止樹脂50を、上記の関係を満たし、LEDチップ10の中心軸a上の厚みが厚い形状に容易に形成することができる。
【0019】
その一方、粘度を高めるとノズルからの糸引き等の影響でポッティング量のばらつきが大きくなり、色ばらつきが生じやすくなる。第一封止樹脂40の粘度が第二封止樹脂50より低いので、第一封止樹脂40の樹脂量のばらつきは、第二封止樹脂50より少ない。第一封止樹脂40の蛍光体濃度が第二封止樹脂50より高いので、全体としての蛍光体の量のばらつきが小さくなり、色調のばらつきを抑制することができる。
【0020】
図2は、この実施の形態における発光装置1が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図である。
点Aは、LEDチップ10が放射する青色光の色度座標を表わす。
点Bは、黄色蛍光体が青色光を波長変換した黄色光の色度座標を表わす。
点Tは、発光装置1が放射する光の目標とする色度座標を表わす。点Tは、例えば、点Aと点Bとを結ぶ線分ABと、黒体軌跡(黒体輻射)との交点である。
点Iは、色調測定工程で測定した光の色度座標を表わす。点Iは、線分AB上の点であって、点Tよりも点Aに近い側に位置する。
【0021】
発光装置1が放射する光は、LEDチップ10の青色光と黄色蛍光体の黄色光との合成光なので、その色度座標を表わす点は、線分AB上にあり、波長変換される光の割合によって決まる。
【0022】
設計上、点Aと点Iとを結ぶ線分AIの長さが、点Aと点Tとを結ぶ線分ATの長さの50%以上の範囲となるように、第一封止樹脂40の封止量を設定する。例えば、線分AIの長さが、線分ATの長さの90%になるようにする。
【0023】
上述したように、第一封止樹脂40の充填量にはばらつきがあるため、点Iの座標には、ばらつきが生じる。そこで、色調測定工程で測定した点Iの座標に基づいて、第二封止樹脂50における黄色蛍光体の濃度を決定する。第二封止工程では、決定した濃度の黄色蛍光体を混入した第二封止樹脂50を製造して充填する。あるいは、あらかじめ黄色蛍光体の濃度が異なる複数種類の第二封止樹脂50を用意しておき、決定した濃度に一番近い濃度の第二封止樹脂50を選択して充填してもよい。
【0024】
上述したように、第二封止樹脂50の充填量にもばらつきがある。しかし、第二封止樹脂50の蛍光体濃度が第一封止樹脂40の蛍光体濃度に比べて低いため、第二封止樹脂50の充填量のばらつきが色調のばらつきに与える影響は、第一封止樹脂40に比べて小さい。これにより、第一封止樹脂40による色調のばらつきを修正して、目標とする色度に調整することが容易に可能となる。
【0025】
図3は、この実施の形態における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図である。
y軸は、基板20に対して垂直な方向を示す。x軸は、基板20に対して平行な方向を示す。
光LA1は、LEDチップ10からy軸方向(正面方向)に出射する光を表わす。
光LB1は、LEDチップ10からx軸方向(横方向)に出射する光を表わす。
【0026】
LEDチップ10が放射した青色光は、一部が第一封止樹脂40のなかの黄色蛍光体により波長変換されて黄色光になり、青色光と黄色光との合成光が出射される。LEDチップ10が青色光を放射する放射点から見て、y軸方向よりもx軸方向のほうが、第一封止樹脂40を光が通過する距離が長い。このため、光LA1よりも光LB1のほうが、黄色蛍光体に衝突して波長変換される確率が高くなるので、黄色光の割合が高くなり、相関色温度が低くなる。
【0027】
図4は、この実施の形態における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図である。
横軸は、発光装置1が放射する光の出射方向とy軸とがなす角度θを示す。縦軸は、発光装置1が放射する光の相関色温度Tcを示す。
上述したように、y軸方向(θ=0度)へ出射する光の相関色温度が最も高く、出射角度θが大きくなるほど相関色温度が低くなり、x軸方向(θ=90度)へ出射する光の相関色温度が最も低い。
【0028】
図5は、この実施の形態における完成した発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図である。
光LA2は、第二封止樹脂50を通過してy軸方向(正面方向)に出射する光を表わす。
光LB2は、第二封止樹脂50を通過してx軸方向(横方向)に出射する光を表わす。
【0029】
第一封止樹脂40から出射した光は、第二封止樹脂50を通過する際、一部が第二封止樹脂50のなかの黄色蛍光体により波長変換された黄色光になる。第二封止樹脂50は、上述したように、h2−h1>(w2−w1)/2、w1≦w2の関係を満たす形状である。このため、x軸方向よりもy軸方向のほうが、第二封止樹脂50を光が通過する距離が長い。このため、光LB2よりも光LA2のほうが、第二封止樹脂50のなかで黄色蛍光体に衝突して波長変換される確率が高くなる。
【0030】
図6は、この実施の形態における完成した発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図である。
【0031】
第一封止樹脂40から出射した時点において、y軸方向へ出射する光の相関色温度が最も高く、出射角度θが大きくなるほど、相関色温度が低くなる。第二封止樹脂50を通過する距離は、y軸方向へ出射する光が最も長く、出射角度θが大きくなるほど、短くなる。このため、黄色光が増える割合は、y軸方向へ出射する光が最も大きく、出射角度θが大きくなるほど、小さくなる。したがって、相関色温度の下げ幅は、y軸方向へ出射する光が最も大きく、出射角度θが大きくなるほど、小さくなる。これにより、第一封止樹脂40から出射した時点における相関色温度のばらつきを打ち消して、出射方向の違いによる相関色温度のばらつきを小さくすることができる。
【0032】
次に、第一封止樹脂40と第二封止樹脂50とで同一の蛍光体を用いることの効果について、第一封止樹脂と第二封止樹脂とで色調の異なる蛍光体を用いた場合と比較して、説明する。
【0033】
図7は、この実施の形態における発光装置1及び比較例における発光装置が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図である。
点Cは、第一封止樹脂40からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす。
点Dは、第一封止樹脂40からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす。
点Eは、第二封止樹脂50から出射する光の色度座標を表わす。
【0034】
上述したように、第一封止樹脂40からy軸方向へ出射する光よりも、第一封止樹脂40からx軸方向へ出射する光のほうが、黄色光に波長変換される確率が高いので、点Aと点Cとを結ぶ線分ACの長さよりも、点Aと点Dとを結ぶ線分ADの長さのほうが長い。
第二封止樹脂50からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Cと点Bとを結ぶ線分CB上に位置する。また、第二封止樹脂50からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Dと点Bとを結ぶ線分DB上に位置する。このため、第二封止樹脂50の形状を工夫することにより、第二封止樹脂50からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点と、第二封止樹脂50からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点とを一致させ、ともに点Eにすることができる。
【0035】
点Fは、比較例における発光装置のLEDチップが放射した青色光を第二封止樹脂に混入された蛍光体(緑色蛍光体)が波長変換した緑色光の色度座標を表わす。
なお、比較例における発光装置の第一封止樹脂に混入された蛍光体は、この実施の形態における発光装置1の第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に混入された黄色蛍光体と同一の蛍光体であるものとする。すなわち、比較例における発光装置のLEDチップが放射した青色光を第一封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換した光の色度座標は、点Bで表わされる。また、比較例における発光装置の第一封止樹脂から出射する光の色度座標は、この実施の形態における発光装置1の第一封止樹脂40から出射する光の色度座標と同じである。
【0036】
比較例における発光装置の第二封止樹脂からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Cと点Fとを結ぶ線分CF上に位置する。また、比較例における発光装置の第二封止樹脂からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Dと点Fとを結ぶ線分DF上に位置する。線分CFと線分DFとが重なっていないので、第二封止樹脂の形状をいかなる形状にしたとしても、第二封止樹脂からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点と、第二封止樹脂からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点とを一致させることは不可能である。
【0037】
このように、第一封止樹脂40に混入された蛍光体と第二封止樹脂50に混入された蛍光体とが同一であることにより、第二封止樹脂50から出射する光の色度座標を、出射方向にかかわらず同一にすることが可能になる。
【0038】
なお、この比較例のように、第一封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換する光と、第二封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換する光とが、まったく色調の異なる光である場合には、第二封止樹脂から出射する光の色度座標が、出射方向により大きく異なってしまう。
しかし、第一封止樹脂40に混入された蛍光体が波長変換する光と、第二封止樹脂50に混入された蛍光体が波長変換する光とが、ほぼ同一の色調の光であれば、第二封止樹脂から出射する光の色度座標を、出射方向にかかわらず一致させることはできないが、かなり近くすることは可能である。このため、第一封止樹脂40に混入する蛍光体と、第二封止樹脂50に混入する蛍光体とは、必ずしもまったく同一の蛍光体である必要はなく、ほぼ同一の色調の光を出す蛍光体であればよい。
なお、「ほぼ同一の色調」とは、xy色度座標でいえば、例えばxy色度座標の差がそれぞれ0.05以内であることをいう。また、主波長及び純度でいえば、例えば主波長の差が10nm(ナノメートル)以内であることをいう。この場合、純度の差は大きくてもかまわない。
【0039】
また、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に混入する蛍光体は、必ずしもそれぞれ1種類の蛍光体である必要はなく、少なくともいずれかが複数種類の蛍光体であってもよい。その場合、複数種類の蛍光体が出す光を混合した光の色調が、第一封止樹脂40と第二封止樹脂50とでほぼ同一の色調になるよう、蛍光体を選定し、混入比率を設定する。
【0040】
なお、第二封止樹脂50の厚さや含まれる蛍光体の含有量によっては、第一封止樹脂40から出射した光よりも第二封止樹脂50から出射した光のほうが、LEDチップ10が放射する光の色度座標に近い色度座標になる場合がある。この場合でも、第二封止樹脂50に第一封止樹脂40とほぼ同一の色調の蛍光体を用い、LEDチップ10の中心軸方向の厚みを厚くすることで、第一封止樹脂40で生じた色調変化を打ち消し、光の出射角度や出射位置によらず色調を安定させることができる。
【0041】
以上のように、封止樹脂を、LEDチップ10に近接する第一封止樹脂40と、第一封止樹脂40の出光側に形成される第二封止樹脂50との2層で構成する。第一封止樹脂40を充填したのち、出射光の色調を測定する。測定結果に合わせて、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度を選定する。このとき、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度は、第一封止樹脂40に比べて蛍光体濃度が低い範囲内で選定する。そして、選定した濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂50を充填する。このため、ばらつきの少ない色調調整が可能となる。
【0042】
また、第二封止樹脂50には、第一封止樹脂40と同一あるいは近い色調となる蛍光体を用いる。第二封止樹脂50は、h2−h1>(w2−w1)/2、w1≦w2の関係を満たす形状に形成する。LEDチップ10の中心軸方向の厚みが厚い形状に第二封止樹脂50を形成するので、光の出射角度や出射位置によらず色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0043】
また、第二封止樹脂50に第一封止樹脂40よりも粘度の高い樹脂を用いるので、製造工程において、第二封止樹脂50をLEDチップ10の中心軸方向の厚みが厚い形状に成形することが容易である。
【0044】
この実施の形態における発光装置(1)は、基板(20)と、基板に実装された発光素子(LEDチップ10)と、蛍光体を含み発光素子を覆うように設けられた封止樹脂(第一封止樹脂40、第二封止樹脂50)とで構成される。
封止樹脂は、発光素子に近接する第一封止樹脂(40)と、第一封止樹脂の出光側に形成される第二封止樹脂(50)とにより構成される。
前記第二封止樹脂は、凸形状を成し、前記発光素子の中心軸上の厚みが厚い。
【0045】
第二封止樹脂は、発光素子の中心軸上の厚みが厚い形状を実現しているため、第一封止樹脂で生じた色調の出射角度依存性を打ち消し、色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0046】
前記第二封止樹脂は、前記第一封止樹脂に比べ蛍光体濃度が低い。
【0047】
第一封止樹脂に比べ蛍光体濃度の低い第二封止樹脂を色度調整に用いることで、充填量のばらつきによる色調ばらつきが抑制でき、色調の揃った発光装置を得ることができる。
【0048】
この実施の形態における発光装置(1)の製造方法は、以下の工程を有する。
基板(20)上にLEDチップ(10)を実装する。
前記LEDチップを覆うように蛍光体を混入した第一封止樹脂(40)を形成し硬化する。
その後、前記第一封止樹脂より粘度が高い第二封止樹脂(50)を前記第一封止樹脂を覆うように形成し硬化させる。
【0049】
第一封止樹脂に比べ粘度の高い第二封止樹脂を用いることで、容易に発光素子の中心軸上の厚みが厚い第二封止樹脂を形成できる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態2について、図8を用いて説明する。
なお、実施の形態1と共通する部分および同一の作用をする部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図8は、この実施の形態における発光装置200の一例を示す断面図である。
【0052】
発光装置200は、例えば、LEDチップ10と、基板120と、ワイヤー22と、第一封止樹脂140と、第二封止樹脂150と、枠160とを有する。
基板120には、バンプ121が埋め込まれている。バンプ121は、例えば銅製である。LEDチップ10は、バンプ121に半田付けされている。LEDチップ10の表面には、電極(図示せず)が形成されている。基板120には、回路パターン(図示せず)が設けられている。LEDチップ10の電極は、ワイヤー22により、基板120の回路パターンに接続されている。LEDチップ10には、ワイヤー22を介して、電力が供給される。
枠160は、例えば高反射樹脂製である。枠160は、基板120の表面に、LEDチップ10を囲むように固定されている。枠160のなかには、第一封止樹脂140と、第二封止樹脂150とが充填されている。
第一封止樹脂140は、例えば、黄色蛍光体が混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、LEDチップ10からの青色光によって励起され、黄色光を放出する。黄色蛍光体の濃度は、例えば10wt%である。第一封止樹脂140は、LEDチップ10の表面を覆う高さまで充填されている。なお、第一封止樹脂140は、表面を平らに形成すると、硬化時の収縮により、この図に示すような凹形状になる。しかし、第一封止樹脂140の表面の形状は、凹形状に限らず、他の形状であってもよい。
第二封止樹脂150は、例えば、黄色蛍光体と微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体の濃度は、第一封止樹脂140よりも低く、例えば5wt%である。微粒子シリカの濃度は、例えば2wt%である。第二封止樹脂150は、第一封止樹脂140の出光面側に、凸形状に充填されている。
【0053】
実施の形態1と同様、第一封止樹脂140を充填・硬化したのちに、第一封止樹脂140から出射される光の色調(色度座標)を測定し、測定結果に基づいて、第二封止樹脂150の蛍光体濃度を選定する。これにより、第一封止樹脂140の充填量や蛍光体の沈降状態などのばらつきによる色調のばらつきがあった場合でも、LEDチップ10ごとに色調を調整することができ、基板120内の色調のばらつきを容易に抑制することができる。
【0054】
光LA3は、発光装置200がLEDチップ10の上面に対して垂直な方向へ出射する光を表わす。光LB3は、発光装置200がLEDチップ10の上面に対して傾いた方向へ出射する光を表わす。
光LB3よりも光LA3のほうが、第一封止樹脂140を通過する距離が短い。このため、第一封止樹脂140のなかでは、光LB3よりも光LA3のほうが、蛍光体に衝突して波長変換される確率が小さい。したがって、第一封止樹脂140から出射する時点において、光LB3よりも光LA3のほうが、青みが強く、相関色温度が高い。
一方、第二封止樹脂150は、第一封止樹脂140の出光面側に凸形状に設けられている。このため、光LA3は、光LB3に比べて、第二封止樹脂150を通過する距離が長い。このため、第二封止樹脂150のなかでは、光LB3よりも光LA3のほうが、蛍光体に衝突して波長変換される確率が大きい。
よって、第二封止樹脂150を設けることにより、第一封止樹脂140を通過した時点で生じる相関色温度の出射角度依存性を打ち消すことができる。
【0055】
以上のように、封止樹脂を、LEDチップ10に近接する第一封止樹脂140と、第一封止樹脂140の出光側に形成される第二封止樹脂150との2層で構成する。第一封止樹脂140を充填したのち、出射光の色調を測定する。測定結果に合わせて、第二封止樹脂150の蛍光体の濃度を選定する。このとき、第二封止樹脂150の蛍光体の濃度は、第一封止樹脂140に比べて蛍光体濃度が低い範囲内で選定する。そして、選定した濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂150を充填する。このため、ばらつきの少ない色調調整が可能となる。
【0056】
また、第二封止樹脂150を第一封止樹脂140の出光面側に凸形状で設けるので、光の出射角度や出射位置によらず色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態3について、図9〜図12を用いて説明する。
なお、実施の形態1または実施の形態2と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図9は、この実施の形態における基板20の一例を示す正面図及びP−P断面図である。
【0059】
基板20は、2つの突起23,24を有する。
突起23は、円周状である。突起23は、第一封止樹脂40の横方向の広がりを抑制する。
突起24は、突起23とほぼ同じ中心を有する円周状である。突起23は、第二封止樹脂50の横方向の広がりを抑制する。突起24の外周の直径w2は、突起23の外周の直径w1より大きい。
突起23及び突起24の高さは、LEDチップ10の高さh0とほぼ等しい。
LEDチップ10は、2つの突起23,24の中心に、発光中心がほぼ一致する位置に実装される。
なお、突起23,24は、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50が、LEDチップ10の中心軸を中心とする回転対称な形状となり、底面の直径がそれぞれw1及びw2になるように設けられたものである。したがって、同様の効果を奏する構成であれば、他の構成に置き換えてもよい。
【0060】
図10は、この実施の形態における製造途中の発光装置1aの一例を示す正面図及びP−P断面図である。
この図は、基板20の表面にLEDチップ10を実装し、第一封止樹脂40をポッティングして硬化した状態を表わす。なお、ワイヤー22は、省略している。
【0061】
第一封止樹脂40の底面の直径は、突起23によって規制されるので、ポッティングされた樹脂の量にかかわらず、w1になる。これに対し、第一封止樹脂40の高さh1は、ポッティングされた樹脂の量によって変わる。
【0062】
ポッティングする第一封止樹脂40の蛍光体の濃度は、実施の形態1で説明した線分AD(図7参照)の長さが線分AT(図2参照)の長さを超えない範囲内で、できるだけ高い濃度に設定する。
LEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過すると、exp(−L/L0)倍に減衰する。ただし、Lは、LEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離である。L0は、第一封止樹脂40の透過率や蛍光体濃度によって定まる定数である。expは、ネイピア数eを底とする指数関数を表わす。
基板20の表面に対して平行な方向へ向けてLEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離はw1/2であるから、LEDチップ10が発した光は、exp(−w1/2L0)倍に減衰する。w1は一定であるから、L0が小さいほど減衰が大きくなり、線分ADの長さが長くなる。そこで、第一封止樹脂40の製造過程における製造誤差を考慮して、蛍光体の濃度が最も高く、したがってL0が最も小さい場合でも、線分ADの長さが線分ATの長さを超えないように、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体の濃度の設計値を設定する。
【0063】
ポッティングする第一封止樹脂40の量は、実施の形態1で説明した線分AC(図7参照)の長さが線分ATの長さを超えない範囲内で、できるだけ多い量に設定する。
基板20の表面に対して垂直な方向へ向けてLEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離はh1−h0であるから、LEDチップ10が発した光は、exp(−[h1−h0]/L0)倍に減衰する。h0は一定であるから、h1が大きいほど減衰が大きくなり、線分ACの長さが長くなる。また、L0が小さいほど減衰が大きくなり、線分ACの長さが長くなる。したがって、第一封止樹脂40のポッティング量の誤差を考慮して、h1が最も大きく、かつ、L0が最も小さい場合でも、線分ACの長さが線分ATの長さを超えないように、第一封止樹脂40のポッティング量の設計値を設定する。なお、L0が最も小さい場合でも、線分ADの長さが線分ATの長さを超えないように第一封止樹脂40の蛍光体濃度を設定しているので、h1が最も大きい場合でも、w1/2を超えないように第一封止樹脂40のポッティング量を設定すれば、線分ACの長さが線分ATの長さを超えることはない。
例えば、第一封止樹脂40の表面の形状が表面張力により球面状になると仮定して、底面の直径w1と、高さh1の最大値とから、第一封止樹脂40の体積の最大値を算出する。算出した最大値から、ポッティング量の最大誤差を差し引いた値を算出して、第一封止樹脂40のポッティング量の設計値とする。
【0064】
図11は、この実施の形態における色調測定工程の一例を示す図である。
【0065】
色調測定装置300c,300dは、製造途中の発光装置1aから出射する光の色調(色度座標・相関色温度・三刺激値など)を測定する。色調測定装置300cは、LEDチップ10の中心軸上に位置し、基板20に対してほぼ垂直な方向へ向けて発光装置1aから出射する光を測定する。色調測定装置300dは、LEDチップ10の発光中心を基準として、基板20に対してほぼ平行な方向に位置し、基板20に対してほぼ平行な方向へ向けて発光装置1aから出射する光を測定する。なお、LEDチップ10からの直接光を観測するため、色調測定装置300dは、LEDチップ10の発光中心よりもやや上を基準として、基板20に対してほぼ平行な方向に位置する構成であってもよい。また、2つの色調測定装置300c,300dを使って測定するのではなく、1つの色調測定装置を動かして、2つの位置で測定する構成であってもよい。また、測定する位置は、2箇所に限らず、3箇所以上であってもよい。
【0066】
例えば、LEDチップ10を発光させて発光装置1aから出射した光の三刺激値を、色調測定装置300c,300dが測定するものとする。色調測定装置300c,300dが測定する光は、LEDチップ10が発した光と、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光との合成光であるから、次の式が成り立つ。
【0067】
(XC,YC,ZC)=aC・(xA,yA,zA)+bC・(xB,yB,zB)
(XD,YD,ZD)=aD・(xA,yA,zA)+bD・(xB,yB,zB)
ただし、(XC,YC,ZC)は、色調測定装置300cが測定した光の三刺激値を表わす。(XD,YD,ZD)は、色調測定装置300dが測定した光の三刺激値を表わす。(xA,yA,zA)は、LEDチップ10が発する光の色度座標を表わし、xA+yA+zA=1である。(xB,yB,zB)は、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が発する光の色度座標を表わし、xB+yB+zB=1である。aC,bC,aD,bDは、0より大きい係数である。ベクトル(xA,yA,zA)とベクトル(xB,yB,zB)とが一次独立なので、aC,bC,aD,bDを計算により求めることができる。
【0068】
LEDチップ10が発する光の強さが、放射方向によらず一定である場合、aDに対するaCの比が、減衰量の比に等しいので、次の式を用いて、高さh1を計算により求めることができる。
【0069】
h1=h0+w1/2+L0[log(aC)−log(aD)]
ただし、logは、自然対数を表わす。
【0070】
図12は、この実施の形態における発光装置1の一例を示す正面図及びP−P断面図である。
この図は、図10に示した発光装置1aの第一封止樹脂40の上に、第二封止樹脂50をポッティングして硬化した状態を表わす。
【0071】
第二封止樹脂50の底面の直径は、突起24によって規制されるので、ポッティングされた樹脂の量にかかわらず、w2になる。これに対し、第二封止樹脂50の高さh2は、ポッティングされた樹脂の量によって変わる。
【0072】
ポッティングする第二封止樹脂50の蛍光体の濃度は、色調測定工程で測定した結果に基づいて算出した値に設定する。同様に、ポッティングする第二封止樹脂50の量も、色調測定工程で測定した結果に基づいて算出した値に設定する。
【0073】
発光装置1から出射する光は、LEDチップ10が発した光と、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光との合成光であるから、次の式が成り立つ。
【0074】
(XC’,YC’,ZC’)=aC’・(xA,yA,zA)+bC’・(xB,yB,zB)
(XD’,YD’,ZD’)=aD’・(xA,yA,zA)+bD’・(xB,yB,zB)
ただし、(XC’,YC’,ZC’)は、基板20の表面に対して垂直な方向へ向けて発光装置1から出射する光の三刺激値を表わす。(XD’,YD’,ZD’)は、基板20の表面に対して平行な方向へ向けて発光装置1から出射する光の三刺激値を表わす。aC’,bC’,aD’,bD’は、0より大きい係数である。なお、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が発する光の色度座標と、第二封止樹脂50に含まれる蛍光体が発する光の色度座標とは、同じであるものとする。
【0075】
LEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過すると、exp(−L’/L0’)倍に減衰する。ただし、L’は、LEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離である。L0’は、第二封止樹脂50の透過率や蛍光体濃度によって定まる定数である。
【0076】
基板20の表面に対して垂直な方向へ向けてLEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離はh2−h1であるから、次の式が成り立つ。
【0077】
aC’=aC・exp(−[h2−h1]/L0’)
【0078】
同様に、基板20の表面に対して平行な方向へ向けてLEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離は(w2−w1)/2であるから、次の式が成り立つ。
【0079】
aD’=aD・exp(−[w2−w1]/2L0’)
【0080】
aC,aD及びh1には、色調測定工程での測定結果に基づいて計算した値を用い、aC’及びaD’には、発光装置1から出射する光の色度座標が目標値に一致する値を用いて、L0’及びh2の設計値を算出する。算出したL0’の設計値に基づいて、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度の設計値を算出する。また、算出したh2の設計値に基づいて、第二封止樹脂50のポッティング量の設計値を算出する。
【0081】
このようにして算出した設計値の濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂50を、算出した設計値の量だけポッティングする。これにより、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度やポッティング量に誤差があったとしても、発光装置1から出射する光の色度座標を、光の出射方向にかかわらず、目標値にほぼ一致させることができる。
【0082】
以上、各実施の形態で説明した構成は、一例であり、他の構成であってもよい。例えば、異なる実施の形態で説明した構成を組み合わせた構成であってもよいし、本質的でない部分の構成を、他の構成で置き換えた構成であってもよい。
【0083】
例えば、第一封止樹脂および第二封止樹脂は、ポッティングにより充填してもよいし、印刷により塗布してもよいし、型を用いて成形してもよい。
【0084】
また、1つのLEDチップに対して、一組の第一封止樹脂、第二封止樹脂を設けるのではなく、一組の第一封止樹脂、第二封止樹脂のなかに、複数のLEDチップを実装する構成であってもよい。
【0085】
また、第二封止樹脂の蛍光体濃度を第一封止樹脂の蛍光体濃度に対して低くするのではなく、第二封止樹脂の蛍光体濃度を第一封止樹脂の蛍光体濃度よりも高くしてもよい。その場合、第二封止樹脂の充填量のばらつきによる色調のばらつきを抑えるため、例えば、第一封止樹脂よりも充填量のばらつきが小さい方法で、第二封止樹脂を充填する。
【0086】
また、第二封止樹脂の粘度を第一封止樹脂の粘度に対し高くするのではなく、第二封止樹脂の粘度を第一封止樹脂の粘度よりも低くしてもよい。その場合、第二封止樹脂を発光素子の中心軸上の厚みが厚い形状とするため、例えば、型を用いて第二封止樹脂を成形する。これにより、第一封止樹脂で生じた角度に依存した色調の変化を抑制することができる。
【0087】
また、第一封止樹脂を、発光素子の中心軸方向の厚みが厚く、中心軸方向と異なる方向の厚みが薄い形状に形成する構成であってもよい。その場合、第二封止樹脂は、発光素子の中心軸方向の厚みを薄くし、第一封止樹脂の厚みが薄い方向の厚みを厚くする。これにより、光の出射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0088】
以上説明した発光装置(1,200)は、
光を発する発光素子(LEDチップ10)と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂(第一封止樹脂40,140)と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂(第二封止樹脂50,150)とを有する。
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状である。
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状である。
【0089】
これにより、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0090】
上記発光装置(1,200)は、更に、略平板状の表面を備える基板(20,120)を有する。
上記発光素子(10)は、上記基板の表面に実装され、中心軸が上記基板の表面に対して略垂直である。
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記発光素子の中心軸方向において、上記第一の封止樹脂を覆う厚さが最も厚い形状である。
【0091】
基板上に発光素子を実装し、それを第一の封止樹脂で覆うと、発光素子の中心軸方向において、発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離が最も短くなる場合が多い。発光素子の中心軸方向において、第二の封止樹脂が第一の封止樹脂を覆う厚さを最も厚くすることにより、第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなり、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0092】
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記第一の封止樹脂(40,140)よりも、粘度が高い。
【0093】
これにより、第二の封止樹脂を所望の形状に形成することが容易になる。
【0094】
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記第一の封止樹脂(40,140)よりも、上記蛍光体の濃度が低い。
【0095】
これにより、第二の封止樹脂の充填量の誤差が、発光装置から出射する光の色調に与える影響を小さくすることができる。
【0096】
上記第二の封止樹脂(50,150)に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調は、上記第一の封止樹脂(40,140)に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調と、略同一である。
【0097】
これにより、第一の封止樹脂の充填量のばらつきや発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離の違いによる光の色調のばらつきを、第二の封止樹脂によって抑制することができる。
【0098】
以上説明した発光装置(1,200)を製造する製造方法は、以下の工程を有する。
上記第一の封止樹脂(40,140)で、上記発光素子(10)を覆う。
上記発光素子を発光させて、上記第一の封止樹脂を介して出射した光の色度座標及び相関色温度及び三刺激値のうち少なくともいずれかを測定する。
測定した結果に基づいて、上記第二の封止樹脂(50,150)に含まれる蛍光体の濃度を決定する。
決定した濃度の蛍光体を含む第二の封止樹脂で、上記第一の封止樹脂を覆う。
【0099】
これにより、第一の封止樹脂の充填量のばらつきや発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離の違いによる光の色調のばらつきを、第二の封止樹脂によって抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,200 発光装置、10 LEDチップ、20,120 基板、22 ワイヤー、23,24 突起、121 バンプ、40,140 第一封止樹脂、50,150 第二封止樹脂、160 枠、300 色調測定装置、LA1〜LA3,LB1〜LB3 光、a 中心軸。
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色LEDチップなどの発光素子と、発光素子が発した光を波長変換する黄色蛍光体などの蛍光体とを組み合わせることにより、白色光を発する発光装置がある。
蛍光体は、例えば封止樹脂に混入され、蛍光体が混入された封止樹脂で発光素子を覆うことにより、発光素子の周囲に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−87812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子が発した光が封止樹脂を通過する距離が出射方向により異なると、波長変換される光の割合が変化するため、発光装置から出射する光の色調が出射方向によりばらつく。
この発明は、例えば、発光装置から出射する光の出射方向による色調のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明にかかる発光装置は、
光を発する発光素子と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂とを有し、
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかる発光装置によれば、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1における発光装置1の一例を示す断面図。
【図2】実施の形態1における発光装置1が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図。
【図3】実施の形態1における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図。
【図4】実施の形態1における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図。
【図5】実施の形態1における完成した発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図。
【図6】実施の形態1における完成した発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図。
【図7】実施の形態1における発光装置1及び比較例における発光装置が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図。
【図8】実施の形態2における発光装置200の一例を示す断面図。
【図9】実施の形態3における基板20の一例を示す正面図及びP−P断面図。
【図10】実施の形態3における製造途中の発光装置1aの一例を示す正面図及びP−P断面図。
【図11】実施の形態3における色調測定工程の一例を示す図。
【図12】実施の形態3における発光装置1の一例を示す正面図及びP−P断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
実施の形態1について、図1〜図7を用いて説明する。
【0009】
図1は、この実施の形態における発光装置1の一例を示す断面図である。
【0010】
発光装置1は、例えば、LEDチップ10と、基板20と、ワイヤー22と、第一封止樹脂40と、第二封止樹脂50とを有する。
【0011】
LEDチップ10(発光素子)は、例えば約450nmの青色光を発する。基板20は、平板状である。LEDチップ10は、基板20に半田付けされている。LEDチップ10の表面には、電極(図示せず)が形成されている。基板20には、回路パターン(図示せず)が形成されている。LEDチップ10の電極は、ワイヤー22により、基板20の回路パターンに電気接続されている。LEDチップ10には、ワイヤー22を介して電力が供給される。基板20の表面には、第一封止樹脂40が設けられている。第一封止樹脂40は、LEDチップ10およびワイヤー22を囲んでいる。第一封止樹脂40は、LEDチップ10の中心軸a上で高さが最大となる凸形状である。さらに、第一封止樹脂40を囲むように、第二封止樹脂50が設けられている。第二封止樹脂50は、LEDチップ10の中心軸a上で高さが最大となる凸形状である。
【0012】
第一封止樹脂40(第一の封止樹脂)は、例えば、黄色蛍光体と、微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、LEDチップ10からの青色光によって励起され、黄色光を放出する。黄色蛍光体の濃度は、例えば15wt%(重量パーセント)である。微粒子シリカは、例えばナノサイズであり、フィラーとして混入されている。微粒子シリカの濃度は、例えば1wt%である。
【0013】
第二封止樹脂50(第二の封止樹脂)は、第一封止樹脂40と同様、黄色蛍光体と、微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、第一封止樹脂40に混入されたものと同一であるが、濃度が第一封止樹脂40より低く、例えば5wt%である。なお、黄色蛍光体の濃度は、あらかじめ定めるのではなく、発光装置1の製造時に決定する。また、微粒子シリカの濃度は、第一封止樹脂40より高く、例えば3wt%である。
【0014】
第一封止樹脂40の径をw1、高さをh1、第二封止樹脂50の径をw2、高さをh2とする。第二封止樹脂50は、次の式で表わされる関係を満たす形状である。
【0015】
h2−h1>(w2−w1)/2
w1≦w2
【0016】
次に、発光装置1の製造方法について説明する。
【0017】
まず、基板20の上に、LEDチップ10をダイボンドし、ワイヤボンドして、実装する(光源実装工程)。
次に、LEDチップ10を覆うように、第一封止樹脂40をポッティングする(第一封止工程)。
次に、第一封止樹脂40を熱硬化する(第一硬化工程)。
その後、色度測定を行う(色調測定工程)。色度測定では、LEDチップ10を発光させて、第一封止樹脂40を介して出射した光の色度座標あるいは相関色温度あるいは三刺激値などを測定する。
色度測定の結果に基づいて、第二封止樹脂50の蛍光体濃度を決定する(濃度決定工程)。
決定した濃度の第二封止樹脂50を用いて、第一封止樹脂40を覆うように、第二封止樹脂50をポッティングする(第二封止工程)。
次に、第二封止樹脂50を、熱硬化する(第二硬化工程)。
【0018】
第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50は、フィラーを混入して粘度を高めているので、径に対する高さの比が高い凸形状をポッティングで形成した場合においても、熱硬化させるまでの形状安定性を高めることができる。特に、第二封止樹脂50のフィラー濃度が第一封止樹脂40よりも高いので、第二封止樹脂50の粘度が第一封止樹脂40に比べて高く、第二封止樹脂50を、上記の関係を満たし、LEDチップ10の中心軸a上の厚みが厚い形状に容易に形成することができる。
【0019】
その一方、粘度を高めるとノズルからの糸引き等の影響でポッティング量のばらつきが大きくなり、色ばらつきが生じやすくなる。第一封止樹脂40の粘度が第二封止樹脂50より低いので、第一封止樹脂40の樹脂量のばらつきは、第二封止樹脂50より少ない。第一封止樹脂40の蛍光体濃度が第二封止樹脂50より高いので、全体としての蛍光体の量のばらつきが小さくなり、色調のばらつきを抑制することができる。
【0020】
図2は、この実施の形態における発光装置1が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図である。
点Aは、LEDチップ10が放射する青色光の色度座標を表わす。
点Bは、黄色蛍光体が青色光を波長変換した黄色光の色度座標を表わす。
点Tは、発光装置1が放射する光の目標とする色度座標を表わす。点Tは、例えば、点Aと点Bとを結ぶ線分ABと、黒体軌跡(黒体輻射)との交点である。
点Iは、色調測定工程で測定した光の色度座標を表わす。点Iは、線分AB上の点であって、点Tよりも点Aに近い側に位置する。
【0021】
発光装置1が放射する光は、LEDチップ10の青色光と黄色蛍光体の黄色光との合成光なので、その色度座標を表わす点は、線分AB上にあり、波長変換される光の割合によって決まる。
【0022】
設計上、点Aと点Iとを結ぶ線分AIの長さが、点Aと点Tとを結ぶ線分ATの長さの50%以上の範囲となるように、第一封止樹脂40の封止量を設定する。例えば、線分AIの長さが、線分ATの長さの90%になるようにする。
【0023】
上述したように、第一封止樹脂40の充填量にはばらつきがあるため、点Iの座標には、ばらつきが生じる。そこで、色調測定工程で測定した点Iの座標に基づいて、第二封止樹脂50における黄色蛍光体の濃度を決定する。第二封止工程では、決定した濃度の黄色蛍光体を混入した第二封止樹脂50を製造して充填する。あるいは、あらかじめ黄色蛍光体の濃度が異なる複数種類の第二封止樹脂50を用意しておき、決定した濃度に一番近い濃度の第二封止樹脂50を選択して充填してもよい。
【0024】
上述したように、第二封止樹脂50の充填量にもばらつきがある。しかし、第二封止樹脂50の蛍光体濃度が第一封止樹脂40の蛍光体濃度に比べて低いため、第二封止樹脂50の充填量のばらつきが色調のばらつきに与える影響は、第一封止樹脂40に比べて小さい。これにより、第一封止樹脂40による色調のばらつきを修正して、目標とする色度に調整することが容易に可能となる。
【0025】
図3は、この実施の形態における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図である。
y軸は、基板20に対して垂直な方向を示す。x軸は、基板20に対して平行な方向を示す。
光LA1は、LEDチップ10からy軸方向(正面方向)に出射する光を表わす。
光LB1は、LEDチップ10からx軸方向(横方向)に出射する光を表わす。
【0026】
LEDチップ10が放射した青色光は、一部が第一封止樹脂40のなかの黄色蛍光体により波長変換されて黄色光になり、青色光と黄色光との合成光が出射される。LEDチップ10が青色光を放射する放射点から見て、y軸方向よりもx軸方向のほうが、第一封止樹脂40を光が通過する距離が長い。このため、光LA1よりも光LB1のほうが、黄色蛍光体に衝突して波長変換される確率が高くなるので、黄色光の割合が高くなり、相関色温度が低くなる。
【0027】
図4は、この実施の形態における色調測定工程で測定する発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図である。
横軸は、発光装置1が放射する光の出射方向とy軸とがなす角度θを示す。縦軸は、発光装置1が放射する光の相関色温度Tcを示す。
上述したように、y軸方向(θ=0度)へ出射する光の相関色温度が最も高く、出射角度θが大きくなるほど相関色温度が低くなり、x軸方向(θ=90度)へ出射する光の相関色温度が最も低い。
【0028】
図5は、この実施の形態における完成した発光装置1が放射する光の色調のばらつきを説明するための図である。
光LA2は、第二封止樹脂50を通過してy軸方向(正面方向)に出射する光を表わす。
光LB2は、第二封止樹脂50を通過してx軸方向(横方向)に出射する光を表わす。
【0029】
第一封止樹脂40から出射した光は、第二封止樹脂50を通過する際、一部が第二封止樹脂50のなかの黄色蛍光体により波長変換された黄色光になる。第二封止樹脂50は、上述したように、h2−h1>(w2−w1)/2、w1≦w2の関係を満たす形状である。このため、x軸方向よりもy軸方向のほうが、第二封止樹脂50を光が通過する距離が長い。このため、光LB2よりも光LA2のほうが、第二封止樹脂50のなかで黄色蛍光体に衝突して波長変換される確率が高くなる。
【0030】
図6は、この実施の形態における完成した発光装置1が放射する光の出射方向と相関色温度との関係の一例を示す図である。
【0031】
第一封止樹脂40から出射した時点において、y軸方向へ出射する光の相関色温度が最も高く、出射角度θが大きくなるほど、相関色温度が低くなる。第二封止樹脂50を通過する距離は、y軸方向へ出射する光が最も長く、出射角度θが大きくなるほど、短くなる。このため、黄色光が増える割合は、y軸方向へ出射する光が最も大きく、出射角度θが大きくなるほど、小さくなる。したがって、相関色温度の下げ幅は、y軸方向へ出射する光が最も大きく、出射角度θが大きくなるほど、小さくなる。これにより、第一封止樹脂40から出射した時点における相関色温度のばらつきを打ち消して、出射方向の違いによる相関色温度のばらつきを小さくすることができる。
【0032】
次に、第一封止樹脂40と第二封止樹脂50とで同一の蛍光体を用いることの効果について、第一封止樹脂と第二封止樹脂とで色調の異なる蛍光体を用いた場合と比較して、説明する。
【0033】
図7は、この実施の形態における発光装置1及び比較例における発光装置が放射する光の色度座標の一例を示すxy色度図である。
点Cは、第一封止樹脂40からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす。
点Dは、第一封止樹脂40からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす。
点Eは、第二封止樹脂50から出射する光の色度座標を表わす。
【0034】
上述したように、第一封止樹脂40からy軸方向へ出射する光よりも、第一封止樹脂40からx軸方向へ出射する光のほうが、黄色光に波長変換される確率が高いので、点Aと点Cとを結ぶ線分ACの長さよりも、点Aと点Dとを結ぶ線分ADの長さのほうが長い。
第二封止樹脂50からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Cと点Bとを結ぶ線分CB上に位置する。また、第二封止樹脂50からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Dと点Bとを結ぶ線分DB上に位置する。このため、第二封止樹脂50の形状を工夫することにより、第二封止樹脂50からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点と、第二封止樹脂50からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点とを一致させ、ともに点Eにすることができる。
【0035】
点Fは、比較例における発光装置のLEDチップが放射した青色光を第二封止樹脂に混入された蛍光体(緑色蛍光体)が波長変換した緑色光の色度座標を表わす。
なお、比較例における発光装置の第一封止樹脂に混入された蛍光体は、この実施の形態における発光装置1の第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に混入された黄色蛍光体と同一の蛍光体であるものとする。すなわち、比較例における発光装置のLEDチップが放射した青色光を第一封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換した光の色度座標は、点Bで表わされる。また、比較例における発光装置の第一封止樹脂から出射する光の色度座標は、この実施の形態における発光装置1の第一封止樹脂40から出射する光の色度座標と同じである。
【0036】
比較例における発光装置の第二封止樹脂からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Cと点Fとを結ぶ線分CF上に位置する。また、比較例における発光装置の第二封止樹脂からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点は、点Dと点Fとを結ぶ線分DF上に位置する。線分CFと線分DFとが重なっていないので、第二封止樹脂の形状をいかなる形状にしたとしても、第二封止樹脂からy軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点と、第二封止樹脂からx軸方向へ出射する光の色度座標を表わす点とを一致させることは不可能である。
【0037】
このように、第一封止樹脂40に混入された蛍光体と第二封止樹脂50に混入された蛍光体とが同一であることにより、第二封止樹脂50から出射する光の色度座標を、出射方向にかかわらず同一にすることが可能になる。
【0038】
なお、この比較例のように、第一封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換する光と、第二封止樹脂に混入された蛍光体が波長変換する光とが、まったく色調の異なる光である場合には、第二封止樹脂から出射する光の色度座標が、出射方向により大きく異なってしまう。
しかし、第一封止樹脂40に混入された蛍光体が波長変換する光と、第二封止樹脂50に混入された蛍光体が波長変換する光とが、ほぼ同一の色調の光であれば、第二封止樹脂から出射する光の色度座標を、出射方向にかかわらず一致させることはできないが、かなり近くすることは可能である。このため、第一封止樹脂40に混入する蛍光体と、第二封止樹脂50に混入する蛍光体とは、必ずしもまったく同一の蛍光体である必要はなく、ほぼ同一の色調の光を出す蛍光体であればよい。
なお、「ほぼ同一の色調」とは、xy色度座標でいえば、例えばxy色度座標の差がそれぞれ0.05以内であることをいう。また、主波長及び純度でいえば、例えば主波長の差が10nm(ナノメートル)以内であることをいう。この場合、純度の差は大きくてもかまわない。
【0039】
また、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に混入する蛍光体は、必ずしもそれぞれ1種類の蛍光体である必要はなく、少なくともいずれかが複数種類の蛍光体であってもよい。その場合、複数種類の蛍光体が出す光を混合した光の色調が、第一封止樹脂40と第二封止樹脂50とでほぼ同一の色調になるよう、蛍光体を選定し、混入比率を設定する。
【0040】
なお、第二封止樹脂50の厚さや含まれる蛍光体の含有量によっては、第一封止樹脂40から出射した光よりも第二封止樹脂50から出射した光のほうが、LEDチップ10が放射する光の色度座標に近い色度座標になる場合がある。この場合でも、第二封止樹脂50に第一封止樹脂40とほぼ同一の色調の蛍光体を用い、LEDチップ10の中心軸方向の厚みを厚くすることで、第一封止樹脂40で生じた色調変化を打ち消し、光の出射角度や出射位置によらず色調を安定させることができる。
【0041】
以上のように、封止樹脂を、LEDチップ10に近接する第一封止樹脂40と、第一封止樹脂40の出光側に形成される第二封止樹脂50との2層で構成する。第一封止樹脂40を充填したのち、出射光の色調を測定する。測定結果に合わせて、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度を選定する。このとき、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度は、第一封止樹脂40に比べて蛍光体濃度が低い範囲内で選定する。そして、選定した濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂50を充填する。このため、ばらつきの少ない色調調整が可能となる。
【0042】
また、第二封止樹脂50には、第一封止樹脂40と同一あるいは近い色調となる蛍光体を用いる。第二封止樹脂50は、h2−h1>(w2−w1)/2、w1≦w2の関係を満たす形状に形成する。LEDチップ10の中心軸方向の厚みが厚い形状に第二封止樹脂50を形成するので、光の出射角度や出射位置によらず色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0043】
また、第二封止樹脂50に第一封止樹脂40よりも粘度の高い樹脂を用いるので、製造工程において、第二封止樹脂50をLEDチップ10の中心軸方向の厚みが厚い形状に成形することが容易である。
【0044】
この実施の形態における発光装置(1)は、基板(20)と、基板に実装された発光素子(LEDチップ10)と、蛍光体を含み発光素子を覆うように設けられた封止樹脂(第一封止樹脂40、第二封止樹脂50)とで構成される。
封止樹脂は、発光素子に近接する第一封止樹脂(40)と、第一封止樹脂の出光側に形成される第二封止樹脂(50)とにより構成される。
前記第二封止樹脂は、凸形状を成し、前記発光素子の中心軸上の厚みが厚い。
【0045】
第二封止樹脂は、発光素子の中心軸上の厚みが厚い形状を実現しているため、第一封止樹脂で生じた色調の出射角度依存性を打ち消し、色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0046】
前記第二封止樹脂は、前記第一封止樹脂に比べ蛍光体濃度が低い。
【0047】
第一封止樹脂に比べ蛍光体濃度の低い第二封止樹脂を色度調整に用いることで、充填量のばらつきによる色調ばらつきが抑制でき、色調の揃った発光装置を得ることができる。
【0048】
この実施の形態における発光装置(1)の製造方法は、以下の工程を有する。
基板(20)上にLEDチップ(10)を実装する。
前記LEDチップを覆うように蛍光体を混入した第一封止樹脂(40)を形成し硬化する。
その後、前記第一封止樹脂より粘度が高い第二封止樹脂(50)を前記第一封止樹脂を覆うように形成し硬化させる。
【0049】
第一封止樹脂に比べ粘度の高い第二封止樹脂を用いることで、容易に発光素子の中心軸上の厚みが厚い第二封止樹脂を形成できる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態2について、図8を用いて説明する。
なお、実施の形態1と共通する部分および同一の作用をする部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図8は、この実施の形態における発光装置200の一例を示す断面図である。
【0052】
発光装置200は、例えば、LEDチップ10と、基板120と、ワイヤー22と、第一封止樹脂140と、第二封止樹脂150と、枠160とを有する。
基板120には、バンプ121が埋め込まれている。バンプ121は、例えば銅製である。LEDチップ10は、バンプ121に半田付けされている。LEDチップ10の表面には、電極(図示せず)が形成されている。基板120には、回路パターン(図示せず)が設けられている。LEDチップ10の電極は、ワイヤー22により、基板120の回路パターンに接続されている。LEDチップ10には、ワイヤー22を介して、電力が供給される。
枠160は、例えば高反射樹脂製である。枠160は、基板120の表面に、LEDチップ10を囲むように固定されている。枠160のなかには、第一封止樹脂140と、第二封止樹脂150とが充填されている。
第一封止樹脂140は、例えば、黄色蛍光体が混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体は、LEDチップ10からの青色光によって励起され、黄色光を放出する。黄色蛍光体の濃度は、例えば10wt%である。第一封止樹脂140は、LEDチップ10の表面を覆う高さまで充填されている。なお、第一封止樹脂140は、表面を平らに形成すると、硬化時の収縮により、この図に示すような凹形状になる。しかし、第一封止樹脂140の表面の形状は、凹形状に限らず、他の形状であってもよい。
第二封止樹脂150は、例えば、黄色蛍光体と微粒子シリカとが混入されたシリコーン樹脂である。黄色蛍光体の濃度は、第一封止樹脂140よりも低く、例えば5wt%である。微粒子シリカの濃度は、例えば2wt%である。第二封止樹脂150は、第一封止樹脂140の出光面側に、凸形状に充填されている。
【0053】
実施の形態1と同様、第一封止樹脂140を充填・硬化したのちに、第一封止樹脂140から出射される光の色調(色度座標)を測定し、測定結果に基づいて、第二封止樹脂150の蛍光体濃度を選定する。これにより、第一封止樹脂140の充填量や蛍光体の沈降状態などのばらつきによる色調のばらつきがあった場合でも、LEDチップ10ごとに色調を調整することができ、基板120内の色調のばらつきを容易に抑制することができる。
【0054】
光LA3は、発光装置200がLEDチップ10の上面に対して垂直な方向へ出射する光を表わす。光LB3は、発光装置200がLEDチップ10の上面に対して傾いた方向へ出射する光を表わす。
光LB3よりも光LA3のほうが、第一封止樹脂140を通過する距離が短い。このため、第一封止樹脂140のなかでは、光LB3よりも光LA3のほうが、蛍光体に衝突して波長変換される確率が小さい。したがって、第一封止樹脂140から出射する時点において、光LB3よりも光LA3のほうが、青みが強く、相関色温度が高い。
一方、第二封止樹脂150は、第一封止樹脂140の出光面側に凸形状に設けられている。このため、光LA3は、光LB3に比べて、第二封止樹脂150を通過する距離が長い。このため、第二封止樹脂150のなかでは、光LB3よりも光LA3のほうが、蛍光体に衝突して波長変換される確率が大きい。
よって、第二封止樹脂150を設けることにより、第一封止樹脂140を通過した時点で生じる相関色温度の出射角度依存性を打ち消すことができる。
【0055】
以上のように、封止樹脂を、LEDチップ10に近接する第一封止樹脂140と、第一封止樹脂140の出光側に形成される第二封止樹脂150との2層で構成する。第一封止樹脂140を充填したのち、出射光の色調を測定する。測定結果に合わせて、第二封止樹脂150の蛍光体の濃度を選定する。このとき、第二封止樹脂150の蛍光体の濃度は、第一封止樹脂140に比べて蛍光体濃度が低い範囲内で選定する。そして、選定した濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂150を充填する。このため、ばらつきの少ない色調調整が可能となる。
【0056】
また、第二封止樹脂150を第一封止樹脂140の出光面側に凸形状で設けるので、光の出射角度や出射位置によらず色調が安定した発光装置を得ることができる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態3について、図9〜図12を用いて説明する。
なお、実施の形態1または実施の形態2と共通する部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図9は、この実施の形態における基板20の一例を示す正面図及びP−P断面図である。
【0059】
基板20は、2つの突起23,24を有する。
突起23は、円周状である。突起23は、第一封止樹脂40の横方向の広がりを抑制する。
突起24は、突起23とほぼ同じ中心を有する円周状である。突起23は、第二封止樹脂50の横方向の広がりを抑制する。突起24の外周の直径w2は、突起23の外周の直径w1より大きい。
突起23及び突起24の高さは、LEDチップ10の高さh0とほぼ等しい。
LEDチップ10は、2つの突起23,24の中心に、発光中心がほぼ一致する位置に実装される。
なお、突起23,24は、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50が、LEDチップ10の中心軸を中心とする回転対称な形状となり、底面の直径がそれぞれw1及びw2になるように設けられたものである。したがって、同様の効果を奏する構成であれば、他の構成に置き換えてもよい。
【0060】
図10は、この実施の形態における製造途中の発光装置1aの一例を示す正面図及びP−P断面図である。
この図は、基板20の表面にLEDチップ10を実装し、第一封止樹脂40をポッティングして硬化した状態を表わす。なお、ワイヤー22は、省略している。
【0061】
第一封止樹脂40の底面の直径は、突起23によって規制されるので、ポッティングされた樹脂の量にかかわらず、w1になる。これに対し、第一封止樹脂40の高さh1は、ポッティングされた樹脂の量によって変わる。
【0062】
ポッティングする第一封止樹脂40の蛍光体の濃度は、実施の形態1で説明した線分AD(図7参照)の長さが線分AT(図2参照)の長さを超えない範囲内で、できるだけ高い濃度に設定する。
LEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過すると、exp(−L/L0)倍に減衰する。ただし、Lは、LEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離である。L0は、第一封止樹脂40の透過率や蛍光体濃度によって定まる定数である。expは、ネイピア数eを底とする指数関数を表わす。
基板20の表面に対して平行な方向へ向けてLEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離はw1/2であるから、LEDチップ10が発した光は、exp(−w1/2L0)倍に減衰する。w1は一定であるから、L0が小さいほど減衰が大きくなり、線分ADの長さが長くなる。そこで、第一封止樹脂40の製造過程における製造誤差を考慮して、蛍光体の濃度が最も高く、したがってL0が最も小さい場合でも、線分ADの長さが線分ATの長さを超えないように、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体の濃度の設計値を設定する。
【0063】
ポッティングする第一封止樹脂40の量は、実施の形態1で説明した線分AC(図7参照)の長さが線分ATの長さを超えない範囲内で、できるだけ多い量に設定する。
基板20の表面に対して垂直な方向へ向けてLEDチップ10が発した光が第一封止樹脂40のなかを透過する距離はh1−h0であるから、LEDチップ10が発した光は、exp(−[h1−h0]/L0)倍に減衰する。h0は一定であるから、h1が大きいほど減衰が大きくなり、線分ACの長さが長くなる。また、L0が小さいほど減衰が大きくなり、線分ACの長さが長くなる。したがって、第一封止樹脂40のポッティング量の誤差を考慮して、h1が最も大きく、かつ、L0が最も小さい場合でも、線分ACの長さが線分ATの長さを超えないように、第一封止樹脂40のポッティング量の設計値を設定する。なお、L0が最も小さい場合でも、線分ADの長さが線分ATの長さを超えないように第一封止樹脂40の蛍光体濃度を設定しているので、h1が最も大きい場合でも、w1/2を超えないように第一封止樹脂40のポッティング量を設定すれば、線分ACの長さが線分ATの長さを超えることはない。
例えば、第一封止樹脂40の表面の形状が表面張力により球面状になると仮定して、底面の直径w1と、高さh1の最大値とから、第一封止樹脂40の体積の最大値を算出する。算出した最大値から、ポッティング量の最大誤差を差し引いた値を算出して、第一封止樹脂40のポッティング量の設計値とする。
【0064】
図11は、この実施の形態における色調測定工程の一例を示す図である。
【0065】
色調測定装置300c,300dは、製造途中の発光装置1aから出射する光の色調(色度座標・相関色温度・三刺激値など)を測定する。色調測定装置300cは、LEDチップ10の中心軸上に位置し、基板20に対してほぼ垂直な方向へ向けて発光装置1aから出射する光を測定する。色調測定装置300dは、LEDチップ10の発光中心を基準として、基板20に対してほぼ平行な方向に位置し、基板20に対してほぼ平行な方向へ向けて発光装置1aから出射する光を測定する。なお、LEDチップ10からの直接光を観測するため、色調測定装置300dは、LEDチップ10の発光中心よりもやや上を基準として、基板20に対してほぼ平行な方向に位置する構成であってもよい。また、2つの色調測定装置300c,300dを使って測定するのではなく、1つの色調測定装置を動かして、2つの位置で測定する構成であってもよい。また、測定する位置は、2箇所に限らず、3箇所以上であってもよい。
【0066】
例えば、LEDチップ10を発光させて発光装置1aから出射した光の三刺激値を、色調測定装置300c,300dが測定するものとする。色調測定装置300c,300dが測定する光は、LEDチップ10が発した光と、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光との合成光であるから、次の式が成り立つ。
【0067】
(XC,YC,ZC)=aC・(xA,yA,zA)+bC・(xB,yB,zB)
(XD,YD,ZD)=aD・(xA,yA,zA)+bD・(xB,yB,zB)
ただし、(XC,YC,ZC)は、色調測定装置300cが測定した光の三刺激値を表わす。(XD,YD,ZD)は、色調測定装置300dが測定した光の三刺激値を表わす。(xA,yA,zA)は、LEDチップ10が発する光の色度座標を表わし、xA+yA+zA=1である。(xB,yB,zB)は、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が発する光の色度座標を表わし、xB+yB+zB=1である。aC,bC,aD,bDは、0より大きい係数である。ベクトル(xA,yA,zA)とベクトル(xB,yB,zB)とが一次独立なので、aC,bC,aD,bDを計算により求めることができる。
【0068】
LEDチップ10が発する光の強さが、放射方向によらず一定である場合、aDに対するaCの比が、減衰量の比に等しいので、次の式を用いて、高さh1を計算により求めることができる。
【0069】
h1=h0+w1/2+L0[log(aC)−log(aD)]
ただし、logは、自然対数を表わす。
【0070】
図12は、この実施の形態における発光装置1の一例を示す正面図及びP−P断面図である。
この図は、図10に示した発光装置1aの第一封止樹脂40の上に、第二封止樹脂50をポッティングして硬化した状態を表わす。
【0071】
第二封止樹脂50の底面の直径は、突起24によって規制されるので、ポッティングされた樹脂の量にかかわらず、w2になる。これに対し、第二封止樹脂50の高さh2は、ポッティングされた樹脂の量によって変わる。
【0072】
ポッティングする第二封止樹脂50の蛍光体の濃度は、色調測定工程で測定した結果に基づいて算出した値に設定する。同様に、ポッティングする第二封止樹脂50の量も、色調測定工程で測定した結果に基づいて算出した値に設定する。
【0073】
発光装置1から出射する光は、LEDチップ10が発した光と、第一封止樹脂40及び第二封止樹脂50に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光との合成光であるから、次の式が成り立つ。
【0074】
(XC’,YC’,ZC’)=aC’・(xA,yA,zA)+bC’・(xB,yB,zB)
(XD’,YD’,ZD’)=aD’・(xA,yA,zA)+bD’・(xB,yB,zB)
ただし、(XC’,YC’,ZC’)は、基板20の表面に対して垂直な方向へ向けて発光装置1から出射する光の三刺激値を表わす。(XD’,YD’,ZD’)は、基板20の表面に対して平行な方向へ向けて発光装置1から出射する光の三刺激値を表わす。aC’,bC’,aD’,bD’は、0より大きい係数である。なお、第一封止樹脂40に含まれる蛍光体が発する光の色度座標と、第二封止樹脂50に含まれる蛍光体が発する光の色度座標とは、同じであるものとする。
【0075】
LEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過すると、exp(−L’/L0’)倍に減衰する。ただし、L’は、LEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離である。L0’は、第二封止樹脂50の透過率や蛍光体濃度によって定まる定数である。
【0076】
基板20の表面に対して垂直な方向へ向けてLEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離はh2−h1であるから、次の式が成り立つ。
【0077】
aC’=aC・exp(−[h2−h1]/L0’)
【0078】
同様に、基板20の表面に対して平行な方向へ向けてLEDチップ10が放射して第一封止樹脂40を透過した光が第二封止樹脂50のなかを透過する距離は(w2−w1)/2であるから、次の式が成り立つ。
【0079】
aD’=aD・exp(−[w2−w1]/2L0’)
【0080】
aC,aD及びh1には、色調測定工程での測定結果に基づいて計算した値を用い、aC’及びaD’には、発光装置1から出射する光の色度座標が目標値に一致する値を用いて、L0’及びh2の設計値を算出する。算出したL0’の設計値に基づいて、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度の設計値を算出する。また、算出したh2の設計値に基づいて、第二封止樹脂50のポッティング量の設計値を算出する。
【0081】
このようにして算出した設計値の濃度の蛍光体を含む第二封止樹脂50を、算出した設計値の量だけポッティングする。これにより、第二封止樹脂50の蛍光体の濃度やポッティング量に誤差があったとしても、発光装置1から出射する光の色度座標を、光の出射方向にかかわらず、目標値にほぼ一致させることができる。
【0082】
以上、各実施の形態で説明した構成は、一例であり、他の構成であってもよい。例えば、異なる実施の形態で説明した構成を組み合わせた構成であってもよいし、本質的でない部分の構成を、他の構成で置き換えた構成であってもよい。
【0083】
例えば、第一封止樹脂および第二封止樹脂は、ポッティングにより充填してもよいし、印刷により塗布してもよいし、型を用いて成形してもよい。
【0084】
また、1つのLEDチップに対して、一組の第一封止樹脂、第二封止樹脂を設けるのではなく、一組の第一封止樹脂、第二封止樹脂のなかに、複数のLEDチップを実装する構成であってもよい。
【0085】
また、第二封止樹脂の蛍光体濃度を第一封止樹脂の蛍光体濃度に対して低くするのではなく、第二封止樹脂の蛍光体濃度を第一封止樹脂の蛍光体濃度よりも高くしてもよい。その場合、第二封止樹脂の充填量のばらつきによる色調のばらつきを抑えるため、例えば、第一封止樹脂よりも充填量のばらつきが小さい方法で、第二封止樹脂を充填する。
【0086】
また、第二封止樹脂の粘度を第一封止樹脂の粘度に対し高くするのではなく、第二封止樹脂の粘度を第一封止樹脂の粘度よりも低くしてもよい。その場合、第二封止樹脂を発光素子の中心軸上の厚みが厚い形状とするため、例えば、型を用いて第二封止樹脂を成形する。これにより、第一封止樹脂で生じた角度に依存した色調の変化を抑制することができる。
【0087】
また、第一封止樹脂を、発光素子の中心軸方向の厚みが厚く、中心軸方向と異なる方向の厚みが薄い形状に形成する構成であってもよい。その場合、第二封止樹脂は、発光素子の中心軸方向の厚みを薄くし、第一封止樹脂の厚みが薄い方向の厚みを厚くする。これにより、光の出射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0088】
以上説明した発光装置(1,200)は、
光を発する発光素子(LEDチップ10)と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂(第一封止樹脂40,140)と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂(第二封止樹脂50,150)とを有する。
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状である。
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状である。
【0089】
これにより、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0090】
上記発光装置(1,200)は、更に、略平板状の表面を備える基板(20,120)を有する。
上記発光素子(10)は、上記基板の表面に実装され、中心軸が上記基板の表面に対して略垂直である。
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記発光素子の中心軸方向において、上記第一の封止樹脂を覆う厚さが最も厚い形状である。
【0091】
基板上に発光素子を実装し、それを第一の封止樹脂で覆うと、発光素子の中心軸方向において、発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離が最も短くなる場合が多い。発光素子の中心軸方向において、第二の封止樹脂が第一の封止樹脂を覆う厚さを最も厚くすることにより、第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなり、光の放射方向による色調のばらつきを抑えることができる。
【0092】
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記第一の封止樹脂(40,140)よりも、粘度が高い。
【0093】
これにより、第二の封止樹脂を所望の形状に形成することが容易になる。
【0094】
上記第二の封止樹脂(50,150)は、上記第一の封止樹脂(40,140)よりも、上記蛍光体の濃度が低い。
【0095】
これにより、第二の封止樹脂の充填量の誤差が、発光装置から出射する光の色調に与える影響を小さくすることができる。
【0096】
上記第二の封止樹脂(50,150)に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調は、上記第一の封止樹脂(40,140)に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調と、略同一である。
【0097】
これにより、第一の封止樹脂の充填量のばらつきや発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離の違いによる光の色調のばらつきを、第二の封止樹脂によって抑制することができる。
【0098】
以上説明した発光装置(1,200)を製造する製造方法は、以下の工程を有する。
上記第一の封止樹脂(40,140)で、上記発光素子(10)を覆う。
上記発光素子を発光させて、上記第一の封止樹脂を介して出射した光の色度座標及び相関色温度及び三刺激値のうち少なくともいずれかを測定する。
測定した結果に基づいて、上記第二の封止樹脂(50,150)に含まれる蛍光体の濃度を決定する。
決定した濃度の蛍光体を含む第二の封止樹脂で、上記第一の封止樹脂を覆う。
【0099】
これにより、第一の封止樹脂の充填量のばらつきや発光素子が発した光が第一の封止樹脂を透過する距離の違いによる光の色調のばらつきを、第二の封止樹脂によって抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,200 発光装置、10 LEDチップ、20,120 基板、22 ワイヤー、23,24 突起、121 バンプ、40,140 第一封止樹脂、50,150 第二封止樹脂、160 枠、300 色調測定装置、LA1〜LA3,LB1〜LB3 光、a 中心軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する発光素子と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂とを有し、
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
上記発光装置は、更に、略平板状の表面を備える基板を有し、
上記発光素子は、上記基板の表面に実装され、中心軸が上記基板の表面に対して略垂直であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子の中心軸方向において、上記第一の封止樹脂を覆う厚さが最も厚い形状であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
上記第二の封止樹脂は、上記第一の封止樹脂よりも、粘度が高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
上記第二の封止樹脂は、上記第一の封止樹脂よりも、上記蛍光体の濃度が低いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
上記第二の封止樹脂に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調は、上記第一の封止樹脂に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調と、略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発光装置を製造する製造方法において、
上記第一の封止樹脂で、上記発光素子を覆い、
上記発光素子を発光させて、上記第一の封止樹脂を介して出射した光の色度座標及び相関色温度及び三刺激値のうち少なくともいずれかを測定し、
測定した結果に基づいて、上記第二の封止樹脂に含まれる蛍光体の濃度を決定し、
決定した濃度の蛍光体を含む第二の封止樹脂で、上記第一の封止樹脂を覆うことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項1】
光を発する発光素子と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記発光素子を覆う第一の封止樹脂と、
上記発光素子が発した光を波長変換する蛍光体を含み、光を透過し、上記第一の封止樹脂を覆う第二の封止樹脂とを有し、
上記第一の封止樹脂は、上記発光素子が発した光の放射方向によって、上記発光素子が発した光が透過する距離が異なる形状であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子が発した光が上記第一の封止樹脂を透過する距離が最も短い方向において、上記第一の封止樹脂を透過した光が上記第二の封止樹脂を透過する距離が最も長くなる形状であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
上記発光装置は、更に、略平板状の表面を備える基板を有し、
上記発光素子は、上記基板の表面に実装され、中心軸が上記基板の表面に対して略垂直であり、
上記第二の封止樹脂は、上記発光素子の中心軸方向において、上記第一の封止樹脂を覆う厚さが最も厚い形状であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
上記第二の封止樹脂は、上記第一の封止樹脂よりも、粘度が高いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
上記第二の封止樹脂は、上記第一の封止樹脂よりも、上記蛍光体の濃度が低いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
上記第二の封止樹脂に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調は、上記第一の封止樹脂に含まれる蛍光体が波長変換した変換後の光の色調と、略同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の発光装置を製造する製造方法において、
上記第一の封止樹脂で、上記発光素子を覆い、
上記発光素子を発光させて、上記第一の封止樹脂を介して出射した光の色度座標及び相関色温度及び三刺激値のうち少なくともいずれかを測定し、
測定した結果に基づいて、上記第二の封止樹脂に含まれる蛍光体の濃度を決定し、
決定した濃度の蛍光体を含む第二の封止樹脂で、上記第一の封止樹脂を覆うことを特徴とする発光装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−89837(P2013−89837A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230455(P2011−230455)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】
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