説明

発光装置及び照明装置

【課題】補助配線を設けることによって均一な発光を可能とする発光装置を提供する。また、補助配線によって生じる段差に起因した、電極間もしくは電極と補助配線間での短絡が発生しにくい発光装置を提供する。さらに、短絡を防ぐことで信頼性の高い発光装置を提供する。
【解決手段】補助配線を有するEL発光装置において、補助配線によって生じる段差部分を絶縁物で覆うことで、補助配線によって生じる段差に起因した電極間、もしくは電極と補助配線間での短絡を防止し、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンスにより発光する発光装置又は照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物や無機化合物を発光物質として用いた発光素子の開発が盛んである。特に、エレクトロルミネセンス(EL:Electro Luminescence)素子と呼ばれる発光素子は、電極間に発光物質を含む発光層を設けた単純な構造であり、薄型軽量化でき、入力信号に高速に応答でき、直流低電圧駆動が可能である等の特性を有する。
【0003】
その応用としては、主としてディスプレイと照明が期待されている。照明への応用を考えた場合、従来の照明器具である白熱球は点光源であり、蛍光灯は線状の光源である。これに対し、発光素子は面状に発光を与えることができるため、例えばシート状の照明など、従来にない形状を持つ照明装置を作製することが可能と考えられる。また、面光源であることにより、より自然光に近い照明を簡便に得ることが可能となる。
【0004】
EL発光を利用した発光素子(以下、EL発光素子と記載する)には、発光層に含まれる物質に応じて、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)を利用するものと三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(燐光)を利用するものがある。EL発光素子内で生成する一重項励起状態の励起子生成確率は全励起子の25%に過ぎないため、投入電力を有効に活用するため、三重項励起状態を利用できる発光物質の検討が盛んに行われている。
【0005】
また、電力効率を向上させる方法のひとつとして、EL発光素子の駆動電圧を低電圧化することが検討されている。同じ電流量を投入した場合、低い電圧で投入されたほうが消費する電力量が少なくてすむ為である。しかし、低い電圧で駆動可能なEL発光素子は一般的に、わずかな駆動電圧の変化によって大きく輝度が変化する。
【0006】
照明として使用するために十分な量の光束をEL発光素子から得る為には、EL発光素子の発光面積を広くする方法が簡便であるが、発光面積を広くした場合、透明薄膜電極の電圧降下の影響によって発光面内で発生する輝度ムラが懸念される。特に、低い電圧で駆動可能なEL発光素子はその影響を強く受けるため対策が必要である。
【0007】
この対策としては、透明電極上に低抵抗な補助配線を形成した構造が報告されている(特許文献1参照)。この方法では、透明電極の上に低抵抗な補助配線を形成し、補助配線の上にのみ無機絶縁層を形成することによって発光素子面内での均一な発光と補助配線上の無効電力の削減を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−97183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に開示された発光装置は無機絶縁層を補助配線の上面にのみ作製し、補助配線上に無機絶縁層とEL層を介して陰極を有している。そのため、補助配線および無機絶縁層の側面において生じる段差によって、補助配線とEL発光素子の陰極との短絡が発生しやすいという問題があった。
【0010】
本発明は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、その目的は、均一な発光を得ることができる発光装置を提供することを課題とする。また、当該補助配線によって生じる段差に起因した電極間、もしくは電極と補助配線間の短絡が発生しにくい発光装置を提供することを課題とする。また、短絡を防ぐことで信頼性の高い発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、補助配線によって生じる段差に着眼し、絶縁性の材料で覆う構成に想到した。
【0012】
すなわち、本発明の一態様は、絶縁表面に形成された補助配線と、補助配線を覆って絶縁表面に形成された第1の電極と、第1の電極上に、補助配線によって生じる段差を覆うように選択的に形成された絶縁物と、第1の電極と絶縁物を覆うエレクトロルミネセンス層と、エレクトロルミネセンス層上に形成された第2の電極を有する発光装置である。
【0013】
上記本発明の一態様によれば、補助配線によって第1の電極上に形成された段差を絶縁物で覆うことで、短絡を防ぐことができる。これにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0014】
なお、絶縁物は補助配線によって生じる段差の上面と側面を覆ってもよい。上面と側面の両方を覆うことで、短絡を防ぐことができるほか、補助配線によって遮られてしまうため取り出すことができない、補助配線の上面と第2の電極の間のエレクトロルミネセンス層が発する発光に消費される電力を抑えた発光装置を提供することができる。
【0015】
また、上記構成において第1の電極は導電性高分子で形成されていてもよい。本発明の一態様によれば、補助配線を設けているため、第1の電極は高抵抗であっても使用可能である。これにより、生産性の高い発光装置を提供することができる。
【0016】
また、上記構成において第1の電極の厚さが10nm以下としてもよい。本発明の一態様によれば、補助配線は第1の電極より先にパターン形成されており、第1の電極は補助配線のエッチング工程の影響をうけないため、厚さを10nm以下と非常に薄くすることができる。これにより、第1の電極による光の損失を低減することができるため、消費電力の低い発光装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、絶縁表面に形成された第1の電極と、第1の電極上に形成された補助配線と、補助配線によって生じる段差を覆うように選択的に形成された絶縁物と、補助電極と第1の電極と絶縁物を覆うエレクトロルミネセンス層と、エレクトロルミネセンス層上に形成された第2の電極を有する発光装置である。
【0018】
上記本発明の一態様によれば、補助配線によって生じる段差を絶縁物で覆うことができ、第2の電極と補助配線との短絡を防ぐことができる。これにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0019】
なお、絶縁物は補助配線によって生じる段差の上面と側面を覆ってもよい。上面と側面の両方を覆うことで、短絡を防ぐことができるほか、補助配線によって遮られてしまうため取り出すことができない補助配線の上面での発光分の電力消費を抑えた発光装置を提供することができる。
【0020】
また、絶縁物は樹脂を含むことが好適である。樹脂を含む材料を用いることで、簡便に上記構成の絶縁物を形成することが可能となる。
【0021】
また、本発明の一態様は、上記発光装置を含むことを特徴とする照明装置である。
【0022】
上記本発明の一態様によれば、大面積でも電圧降下が発生しにくく、信頼性の高い発光装置を提供できる。また、当該発光装置を安価に製造することができる。そのため、本発明を照明装置に用いることで、輝度ムラが発生しにくく、信頼性の高い照明装置を提供することができる。また、そのような照明装置を安価に提供することができる。
【0023】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0024】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0025】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置を含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible Pinted Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、均一な発光を得ることができる発光装置を提供できる。また、補助配線によって生じる段差に起因した電極間、もしくは電極と当該補助配線間での短絡を防止した発光装置を提供できる。また、短絡を防止することで、均一な発光を得ることが可能であり、且つ信頼性の高い発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】発光装置を説明する上面図および断面図。
【図2】発光装置を説明する上面図および断面図。
【図3】実施の形態1の発光装置の段差に関して説明する図。
【図4】EL層に関する説明をする図。
【図5】EL層に関する説明をする図。
【図6】実施の形態1の発光装置に関して説明する図。
【図7】実施の形態2の発光装置に関して説明する図。
【図8】実施の形態2の発光装置に関して説明する図。
【図9】実施の形態3の発光装置に関して説明する図。
【図10】照明装置に関して説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、補助配線が第1の電極の下にあり、補助配線によって第1の電極に生じる段差を絶縁物で覆った構成を適用した発光装置について図1(A)乃至(C)を用いて説明する。なお、本実施の形態では、絶縁表面を有する物の一態様として、絶縁表面を有する基板を用いた例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
本実施の形態で説明する発光装置は、基板100上に補助配線101を有し、基板100と補助配線101を覆う第1の電極102を有する。また、第1の電極102上で補助配線101によって生じる段差を覆う絶縁物103を有する。さらに、第1の電極102と絶縁物103を覆うEL層104を有し、EL層104上に第2の電極105を有する。なお、図1(A)は基板100、補助配線101、第1の電極102および絶縁物103を有する構成の発光装置の上面図、図1(B)は図1(A)のa−b間の断面図、図1(C)は基板100、補助配線101、第1の電極102、絶縁物103、EL層104および第2の電極105を有する構成の発光装置の断面図を示している。
【0031】
基板100としては、透光性を有する基板を用いる。具体的には、ガラス、石英、プラスチック、ポリエステル、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂のような透光性を有する材料を用いることができる。また、基板100は可撓性を有していてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォンからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニルなどからなる)、無機蒸着フィルムを用いることもできる。なお、支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。また、基板の形状は正方形、長方形、多角形、円形またはディスク形状(円盤形状)などを用いることができる。
【0032】
基板100上に補助配線101が形成される。補助配線101としては、抵抗率の低い材料を用いることが好ましく、具体的にはアルミニウム、銅、銀等の材料を用いることができる。また、アルミニウム合金(Al−Nd、Al−Ti等)や複数の金属の積層(Ti\Al\Ti、Al−Ti\Ti等)を用いると低抵抗と高温処理に対する耐性の両立が可能である。その他、用途によってはチタン、タングステン、タンタル、モリブデンなど比較的高抵抗な材料を補助配線として用いてもよい。補助配線の厚さ、幅、および設置間隔は第1の電極による電圧降下に起因する、EL発光輝度のばらつきを考慮して決定される。具体的には、電圧降下によるEL発光輝度のばらつきを10%以内に抑えるように設置することが望ましい。
【0033】
続いて、基板100および補助配線101上に第1の電極102が形成される。このとき、第1の電極102は隣り合う補助配線間で分断されることなく連続して形成されている。第1の電極102はEL層からの光を透過することが可能な材料、厚さで形成する。
【0034】
なお、本発明では、補助配線101を設けているため、第1の電極102が高抵抗であっても使用可能である。つまり、高抵抗な部類に属する導電性高分子を第1の電極102として用いることができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えばπ電子共役系導電性高分子として、ポリアニリン及びまたはその誘導体、ポリピロール及びまたはその誘導体、ポリチオフェン及びまたはその誘導体、またはアニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上からなる共重合体またはその誘導体などがあげられる。第1の電極102に導電性高分子を用いることで、スピンコートなど湿式法により簡便に第1の電極102を形成することができ、且つEL層の正孔注入層が不要となることから、生産性の高い発光装置を提供することができる。
【0035】
また、本実施の形態の発光装置は、補助配線のパターン形成工程が第1の電極形成の前に行われるため、第1の電極は補助配線のエッチング工程の影響を受けない。そのため、第1の電極102を導電性高分子で形成しても、補助配線のパターン形成工程により導電性高分子がダメージを受けなくて済む。また、第1の電極102を非常に薄くすることができる。具体的には第1の電極102の膜厚を10nm以下にすることができる。第1の電極102を非常に薄くする場合は、あらかじめ補助配線の端部を図3に示すようなテーパー形状にしておくことが望ましい。例えば70度から85度の傾斜を有するテーパー形状にすることで、第1の電極の断線を防止することができる。第1の電極102を薄くすることによって第1の電極による光の損失を低減することができるため、消費電力の低い発光装置を提供することができる。
【0036】
次に、第1の電極102上に、補助配線101によって生じる段差を覆うように絶縁物103が形成される。絶縁物103としては、無機材料(酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン等)、感光性又は非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン)、シロキサン及びそれらの積層構造を用いることができる。有機材料として、ポジ型感光性有機樹脂又はネガ型感光性有機樹脂を用いることができる。
【0037】
絶縁物103の作製方法は、スパッタリング法、プラズマCVD法、真空蒸着法など乾式の成膜方法とスピンコート法、インクジェット法、スプレー塗布法、スクリーン印刷法などの湿式の成膜法があり、材料に応じて作製方法を選択できる。
【0038】
なお、絶縁物103は補助配線101によって生じる段差の上面と側面を覆ってもよい。補助配線によって生じる段差の上面と側面を絶縁物で覆った例を図2(A)乃至図2(C)に示す。
【0039】
図2(A)は基板100、補助配線101、第1の電極102および絶縁物103を有する構成の上面図、図2(B)は図2(A)のa−b間の断面図、図2(C)は基板100、補助配線101、第1の電極102、絶縁物103、EL層104および第2の電極105を有する構成の断面図を示している。
【0040】
このように補助配線101によって生じる段差の上面と側面の両方を絶縁物103により覆うことで、短絡を防ぐことができるほか、補助配線によって遮られてしまうため取り出すことができない、補助配線の上面と第2の電極の間のEL層が発する発光に消費される電力を抑えた発光装置を提供することができる。
【0041】
第1の電極102と絶縁物103上にはEL層104が形成され、EL層104の上に第2の電極105が形成される。ここで、第1の電極とEL層と第2の電極からなるEL素子構造について、図4及び図5を用いて詳細に説明する。
【0042】
第1の電極102が陽極である場合は、酸化インジウム(In)や酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO;ITO)などをスパッタ法や真空蒸着法などを用いて形成して用いることができる。酸化インジウム酸化亜鉛合金(InO3―ZnO)を用いても良い。また、酸化亜鉛(ZnO)も適した材料であり、さらに可視光の透過率や導電率を高めるためにガリウム(Ga)を添加した酸化亜鉛(ZnO:Ga)などを用いることができる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。なお、金属材料を用いる場合、必要に応じて光を透過可能な程度に薄くすることができる。第1の電極102を陰極とする場合には、アルミニウムなど仕事関数の低い材料の極薄膜を用いるか、そのような物質の薄膜と透明導電膜との積層構造を用いることによって作製することができる。
【0043】
EL層104の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質を含む層または正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質を含む層等を適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成することができる。本実施の形態では、EL層104は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有する構成について説明する(図4参照)。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
【0044】
正孔注入層701は、陽極に接して設けられ、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(略称:CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス[4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層701を形成することができる。
【0045】
また、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極102として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料を用いることができる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0046】
複合材料に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0047】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス[4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0048】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0049】
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0050】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0051】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0052】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0053】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0054】
また、正孔輸送層702として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0055】
発光層703は、発光性の物質を含む層である。発光層703の種類としては、発光中心物質を主成分とするいわゆる単膜の発光層であっても、ホスト材料中に発光中心材料を分散するいわゆるホスト−ゲスト型の発光層であってもどちらでも構わない。
【0056】
用いられる発光中心材料に制限は無く、公知の蛍光又は燐光を発する材料を用いることができる。蛍光発光性材料としては、例えばN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、等の他、発光波長が450nm以上の4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。燐光発光性材料としては、例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、の他、発光波長が470nm〜500nmの範囲にある、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、発光波長が500nm(緑色発光)以上のトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等が挙げられる。以上のような材料又は他の公知の材料の中から、各々の発光素子における発光色を考慮し選択すれば良い。
【0057】
ホスト材料を用いる場合は、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、NPB(またはα−NPD)、TPD、BSPBなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N,9−ジフェニル−N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることができる。これら及び公知の物質の中から、各々が分散する発光中心物質のエネルギーギャップ(燐光発光の場合は三重項エネルギー)より大きなエネルギーギャップ(三重項エネルギー)を有する物質を有し、且つ各々の層が有すべき輸送性に合致した輸送性を示す物質を選択すればよい。
【0058】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層704として用いても構わない。
【0059】
また、電子輸送層704は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0060】
また、電子輸送層704と発光層703との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層703を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0061】
電子注入層705としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いることができる。なお、電子注入層705として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いた構成は、第2の電極105からの電子注入が効率良く行われるため、より好ましい構成である。
【0062】
第2の電極105を形成する物質としては、第2の電極105を陰極として用いる場合には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極と電子輸送層704との間に、電子注入層705を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法や真空蒸着法等を用いて成膜することが可能である。
【0063】
また、第2の電極105を陽極として用いる場合には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。また、上述の複合材料を陽極に接して設けることによって、仕事関数の高低にかかわらず電極の材料を選択することができる。
【0064】
なお、上述のEL層104は図5のように第1の電極102と第2の電極105との間に複数積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層800と第2のEL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0065】
特に図5の構成は白色の発光を得る場合に好ましく、図4の構成と組み合わせることによって高品位の照明装置を作製することができる。
【0066】
本実施の形態を用いると、補助配線によって生じる段差を絶縁物で覆うことができ、EL層での短絡を防止できることを図6(A)乃至図6(C)を用いて説明する。
【0067】
図6(A)は基板100上に補助配線101および第1の電極102を形成した構造を示している。第1の電極102は補助配線101の側面部において薄くなる。
【0068】
さらに絶縁物を形成することなくEL層104および第2の電極105を形成した構造を図6(B)に示す。EL層104は第1の電極102の側面部において薄くなるため第1の電極102と第2の電極105との間で短絡しやすくなることがわかる。
【0069】
続いて、第1の電極102を形成後、絶縁物103を形成し、第1の電極102と絶縁物103の上にEL層104を形成し、さらにEL層104の上に第2の電極105を形成した構造を図6(C)に示す。第1の電極102において、補助配線101によって生じた段差は絶縁物103で覆われているため、補助配線によって生じた段差部分では導通はない。これにより、段差の側面部における第1の電極102と第2の電極105間の短絡は防止できる。
【0070】
本実施の形態に記載の発光装置では、補助配線によって生じる段差に起因した電極間の短絡を防止することができ、補助配線を設けることによって均一な発光を得ることができるので、信頼性の高い発光装置を提供することができる。また、補助配線を用いることで第1の電極の抵抗が比較的大きいことに起因する電圧降下を抑制することができるため、EL発光輝度のばらつきの少ない発光装置を安価に提供することができる。
【0071】
本実施の形態では、基板上に補助配線を形成し、補助配線の上に第1の電極を形成した構造を示している。この構造では、補助配線の下は基板であるため、補助配線をエッチングする際、下地への影響は考慮せずとも良い。また、補助配線のエッチング後に第1の電極を形成するため、補助配線をエッチングすることによる第1の電極への影響は無い。一方、基板上に第1の電極を形成し、第1の電極の上に補助配線を形成した構造では、第1の電極が非常に薄い場合には、補助配線のエッチング工程によって第1の電極が消失してしまう可能性がある。つまり、本発明の構造を用いることで、補助配線エッチング時のばらつきの影響を低減することができ、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0072】
本実施の形態の発光装置では、高抵抗な透明導電膜を使用することができるため、第1の電極を導電性高分子で形成することができる。これにより、生産性の高い発光装置を提供することができる。
【0073】
また、本実施の形態に記載の発光装置では、補助配線のエッチングによる第1の電極への影響が無いため、第1の電極を非常に薄く、例えば10nm以下とすることができる。これにより、第1の電極での光損失の少ない高品位な発光装置を提供することができる。
【0074】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0075】
(実施の形態2)
本実施の形態では、補助配線が第1の電極の上にあり、補助配線によって生じる段差を絶縁物で覆った構成を適用した発光装置について図7を用いて説明する。
【0076】
本実施の形態で説明する発光装置は、基板100の上に第1の電極102を有し、第1の電極102の上に補助配線101を有する。また、補助配線101によって生じる段差を覆う絶縁物103を有する。さらに、補助配線101と第1の電極102と絶縁物103を覆うEL層104を有し、EL層104の上に第2の電極105を有する。
【0077】
本実施の形態で示す構造物には、実施の形態1の内容を適用できるため、各構造物に関する詳細説明においては繰り返しとなる内容を省略する。
【0078】
本実施の形態を用いた構造では、補助配線101によって生じる段差は絶縁物103によって覆われるため、補助配線によって生じる段差部分での第2の電極との導通はない。これにより、補助配線の側面における第2の電極と補助配線間での短絡は防止できる。
【0079】
なお、絶縁物103は図8に示すように、補助配線101によって生じる段差の上面と側面を覆ってもよい。このように補助配線によって生じる段差の上面と側面の両方を覆うことで、補助配線の上面で発生する無効電力を抑えた発光装置を提供することができる。
【0080】
本発明を用いることで、補助配線によって生じる段差に起因した電極と補助配線間での短絡を防止することができ、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0081】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0082】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および2の絶縁物を湿式法で作製した発光装置について図9(A)または図9(B)を用いて説明する。
【0083】
図9(A)は実施の形態1に示した発光装置であり、基板100上に補助配線101を形成し、基板100と補助配線101を覆う第1の電極102を形成し、第1の電極102上に補助配線101によって生じた段差を覆う絶縁物103を形成した構造を示す。特に図9(A)は、補助配線101の端部が基板に対して垂直である。図9(B)は実施の形態2に示した発光装置であり、基板100上に第1の電極102を形成し、第1の電極102上に補助配線101を形成し、補助配線101の上面と側面を覆って絶縁物103を形成した構造を示す。特に図9(B)は、補助配線101の端部が逆テーパー型になっている。
【0084】
湿式法は、液体状の材料を基板表面に塗布する方法であり、塗布液と基板表面の濡れ性によって、基板表面の構造物の上面および側面に成膜可能である。つまり、湿式法を用いることで、切り立った斜面や逆テーパー型になった斜面を良好に覆うことができる。湿式法としては、スピンコート法、ロールコート法、スプレー法、キャスト法、ディップ法、液滴吐出(噴出)法、(インクジェット法)、ディスペンサ法、各種印刷法(スクリーン(孔版)印刷、オフセット(平版)印刷、凸版印刷やグラビア(凹版)印刷など所望のパターンを形成する方法)などを用いることができる。
【0085】
なお、湿式法で形成する絶縁物の材料としては樹脂を含んでいることが望ましい。樹脂を含む絶縁物の材料としては、感光性又は非感光性の有機材料( ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン)、シロキサン樹脂等を用いることができる。特に、ポジ型感光性有機樹脂を用いることで、簡便に補助配線によってできる段差を覆うことができる。
【0086】
本実施の形態に記載の構成を用いることで、補助配線を設けることによって均一な発光を得ることができる発光装置において、補助配線によって生じる段差を良好に覆うことができ、短絡を防止することができるため、信頼性の高い発光装置を提供することができる。また、絶縁物として有機物を含む材料を用いることで、補助配線によってできる段差を簡便に覆うことができるため、生産性の高い発光装置を提供することができる。
【0087】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様により形成された発光装置を用いた照明装置について図10(A)及び図10(B)を用いて説明する。
【0088】
図10(A)は照明装置(卓上照明装置)であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503、支柱7504、台7505、電源スイッチ7506を含む。なお、照明装置は、本発明の一態様により形成される発光装置を照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明装置には、図10(A)に示す卓上照明装置の他、天井固定型の照明装置(天井固定型照明装置)または壁掛け型の照明装置(壁掛け型照明装置)なども含まれる。
【0089】
なお、本発明の一態様を適用して形成される発光装置は、補助配線由来の段差による不良の発生が低減されているため、照明装置(卓上照明装置)の照明部7501に用いることで、信頼性の高い照明装置(卓上照明装置)を提供することができる。また、歩留まり良く照明装置を作製することができるため、安価に照明装置を提供することができる。
【0090】
図10(B)は、本発明の一態様を適用して形成される発光装置を、室内照明装置として用いた例である。本発明の一態様の発光装置は大面積化に有利であるため、天井固定型照明装置3001に示すように大面積の照明装置として用いることができる。その他、壁掛け型照明装置3002として用いることもできる。なお、本発明の一態様を適用して形成される発光装置は、補助配線由来の段差による不良の発生が低減されているため、信頼性の高い照明装置を提供することができる。また、歩留まり良く照明装置を作製することができるため、安価に当該照明装置を提供することができる。なお、図10(B)に示すように、室内照明装置を備えた部屋で、図10(A)で説明した卓上照明装置3000を併用してもよい。
【符号の説明】
【0091】
100 基板
101 補助配線
102 第1の電極
103 絶縁物
104 EL層
105 第2の電極
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光層
704 電子輸送層
705 電子注入層
800 第1のEL層
801 第2のEL層
803 電荷発生層
3000 卓上照明装置
3001 天井固定型照明装置
3002 壁掛け型照明装置
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面に形成された補助配線と、
前記補助配線を覆って前記絶縁表面に形成された第1の電極と、
前記第1の電極上に形成され前記補助配線によって生じる段差部を覆うように選択的に形成された絶縁物と、
前記第1の電極と前記絶縁物を覆うエレクトロルミネセンス層と、前記エレクトロルミネセンス層上に形成された第2の電極を有する発光装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の電極は導電性高分子からなることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1において、前記第1の電極の厚さが10nm以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
絶縁表面に形成された第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された補助配線と、
前記補助配線によって生じる段差を覆うように選択的に形成された絶縁物と、
前記補助配線と前記第1の電極と前記絶縁物を覆うエレクトロルミネセンス層と、
前記エレクトロルミネセンス層上に形成された第2の電極を有する発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4において、前記絶縁物は、前記補助配線によって生じる段差の上面と側面を覆っていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5において、前記絶縁物は樹脂を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−9420(P2012−9420A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109633(P2011−109633)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】