説明

発光装置

本発明は、発光ダイオードに代表される、基板上に複数の層を積層してなる発光装置に関するものである。上記複数の層には、互いに電気的に接続しているアノード接触部と、カソード接触部と、上記アノード接触部および上記カソード接触部の間に配置されている発光層群と、が含まれる。上記発光層群は、ポリマー材料からなるポリマー層と、真空中で気化することによって蒸着可能な有機物質の分子であって、真空蒸着された小さな分子を含む低分子層と、を備えている。上記低分子層における小さな分子は、上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元ペア)に対して最大約−1.5Vの酸化電位を有するドナー分子であり、上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元ペア)に対して少なくとも約−0.3Vの還元電位を有するアクセプター分子である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに代表される、基板上に複数の層を積層してなる発光装置に関するものである。上記複数の層は、アノード接触部と、カソード接触部と、上記アノード接触部および上記カソード接触部の間に配置されている発光層群と、を備えている。発光層群は、ポリマー材料からなるポリマー層と、有機物質の分子であって、真空蒸着された小さな分子を含む低分子層と、を備えている。
【0002】
〔発明の属する技術分野〕
有機発光ダイオードは、低作動電圧を実証されて以来、大画面ディスプレイ、および他の用途、例えば照明素子などへの適用を具現化するために好適である。それらは、有機物質からなる複数の薄い層が積層されている。また、複数の層は、真空中において分子の形状で蒸着されることが好ましい。低分子の複数の層はこのように形成される。真空中で気化することによって分離可能な分子からこのように形成された低分子の複数の層を土台とする有機発光ダイオードは、その簡潔な形状においてOLEDと称される。これに関しては、「小さな分子」の技術分野においても参照される。
【0003】
また、複数の物質からなる複数の層はポリマー材料から形成される。ポリマーの複数の層(有機)は、ポリマー材料を、溶液を用いたスピンコート、印刷、もしくは電圧印加すること、または他の適した方法によって形成される。このように形成されたポリマーの複数の層を土台とする有機発光ダイオードは、その簡潔な形状においてPLEDと称される。
【0004】
発光ダイオードでは、電極接触部に外部から電圧を印加した時に、電荷担体すなわち電子およびホールを、複数の電極接触部から複数の電極接触の間に配置された有機の複数の層に注入することにより、有機の複数の層内の活性発光域(放射域)における励起子が下記の形状(電子―ホール対)になり、励起子の発光再結合が起こることによって、光は装置から生成され放射される。PLED構造の有機発光ダイオードは、通常は以下の複数の層構造に基づいている。すなわち、(1)担体基板(例えばガラスから形成されており、透明)、(2)アノード接触部(通常はインジウムスズ酸化物(ITO)からなり、透明)、(3)ホール輸送層またはホール注入層(例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)あるいはPSS(ポリエチレンスルホン酸塩)またはPANI−PSSのような添加物を含むポリアニリンからなる)、(4)ポリマー材料から形成される、発光域となるポリマー層(例えばMEH−ポリフェニレンビレン、ポリフルオレン、他のポリフェニレンビレン、ポリスピロ、ポリチオフェン、またはポリパラフェニレンからなる)、および(5)カソード接触部(例えばバリウム、カルシウムといった低仕事関数を有する例えば金属からなる)。
【0005】
ポリマーの複数の層すなわちホール輸送層またはホール注入層、および発光域は、例えば水中または溶媒中において、溶液から形成される。電極接触部(アノード接触部およびカソード接触部)は、一般的には、真空プロセスによって形成される。例えばディスプレイに適用されるこのような有機発光ダイオードのこの構造の利点としては、ポリマーの複数の層を形成するプロセスの多様性がある。これには、PLEDを単純側面構造にできるプロセス、およびインクジェット印刷技術を可能にするプロセスも含まれる。このプロセスでは、異なるポリマー材料は、隣接領域が異なる発光色となるように予め処理された位置に印刷される。他の構造を作製する方法は、スクリーン印刷技術を含む。
【0006】
周知のPLED構造では、土台となる材料に対して影響を与えないようにポリマー材料の溶媒を選択する必要があるため、特に種類の異なるポリマー層が2つ以下である場合には、好適な方法により蒸着を行うことができないという不都合が生じる。これは、蒸着したポリマー材料が、電子輸送のために好適である必要があると共に、カソード接触部からの電子注入のために好適である必要がある。これは、ポリマー材料には、材料を選択するための制限および構造を最適化するための制限が大きく科されていることを意味する。なお、最近の実験においては、3層構造が実現できることが示されている。
【0007】
加えて、所定の材料系を用いた構造を作製する手順を変更することは多大な困難を伴う。それ故、上述したように、アノード接触部が開始点となる。
【0008】
これは、接触素子としてnチャネルトランジスタを備えたアクティブマトリックスディスプレイ基板にPLED構造を集積する際には特に不都合となる。透明の上部接触部を用いることもまた困難である。これは、上部接触部が、(i)電子注入にとって好ましくない仕事関数を有しているからであり(すなわち、仕事関数が大きすぎるからであり)、(ii)通常は、有機物質を破壊するスパッタリング処理を用いて製造されるからである。PLEDにおける上部層は発光層であるため、その結果として、有機発光ダイオードの光生成の効率は減少する。また、スパッタリングの損失に対しての耐性を向上させるために、小さな分子からなる低分子有機層を真空中で蒸着することが考えられる。しかしながら、この場合においても、カソード接触部からの電子注入が問題となる。
【0009】
従来のPLED構造のさらなる不都合としては、効率的な電子注入が、例えばバリウムまたはカルシウムといった非常に不安定な接触材料によってのみからしか得られないことである。しかしながら、これらの物質は酸素および水によって悪影響を受ける。さらに、3色のうちの1つにおいてかなりの性能損失が生じるため、基本的な3色の発光色(赤、緑、青)を放射する全ての発光材料にふさわしい1つの同一電極(陰極)を用いることは非常に困難である。すなわち、青色を放射するポリマー材料のために最適化されたカソード接触部は、赤色を放射するポリマー材料にとって不都合となるし、逆もまた同様である。
【0010】
「小さな分子」の技術分野に適用されるOLED構造の有機発光ダイオードは、真空蒸着される分子からなる複数の層(すなわち、有機構造)を有している。上記の分子は、1つまたは複数の有機物質からなる。もし、有機物質の分子が十分に小さい場合には、一般的には、熱処理を用いることなく分子を蒸着することができる。そのため、分子は真空中で気化される。
【0011】
OLED構造(最大構造)の有機発光ダイオードの一般的な構造は、次のとおりである。すなわち、(1)担体基板(例えばガラス)、(2)アノード接触部(ホール注入する。例えばインジウムスズ酸化物(ITO)からなり、好ましくは透明)、(3)ホール注入層(例えばCuPc(銅−フタロシアニン)またはスターバースト誘導体からなる)、(4)ホール輸送層(例えばTPD(トリフェニルジアミンおよび誘導体)からなる)、(5)ホール側ブロック層(例えばAlpha−NPBからなり、発光領域からの励起子の拡散を防ぐと共に、発光領域からの電荷担体の漏出を防ぐ)、(6)発光領域(例えば、発光混和剤(例えばイリジウムトリスフェニルピリジンイリジウム錯体染料)を含むCBP)、(7)電子側ブロック層(例えば、BCP(バトクプロイン)からなり、発光領域からの励起子の拡散を防ぐと共に、放射領域からの電荷担体の漏出を防ぐ)、(8)電子輸送層(例えばAlq3(アルミニウムトリスキノレート)からなる)、(9)電子注入層(例えば無機のフッ化リチウム(LiF)からなる)、および(10)カソード接触部(電子注入する。一般的には、例えばアルミニウムのような低仕事関数を有する金属からなる)。上述した構成は、可能な限り最大の数の層を備えている。他の構成では、いくつかの層が省かれても良い。また、ある層が複数の作用を有していてもよい。例えば、ホール注入層およびホール輸送層を組み合わせることができ、ホール輸送層およびホール側ブロック層を組み合わせることができ、ホール注入層、ホール輸送層およびホール側ブロック層を組み合わせることができる。さらには、電子輸送層中に電子注入層の材料を混合させる選択肢もある。
【0012】
OLED構造を有している場合、輸送層には、導電率を向上させるために、電気的なドーピングによりドープする選択肢も考えられる。それらの一般的および典型的な構造は以下のとおりである。すなわち、(1)担体基板(例えばガラス)、(2)アノード接触部(ホール注入する。例えばインジウムスズ酸化物(ITO)からなり、好ましくは透明。また他の反射接触部としては、銀および金から形成される)、(3)pドープされたホール注入層および輸送層(ドーパントは、F−TCNQによってドープされた例えばm−MTDATAからなる、マトリックス材料から電子を受け取り可能な受容型物質である。さらなる受容型ドーパントについては、US6,908,783B1に参照される)、(4)ホール側ブロック層(積層体が、それを取り囲む層の積層体と同一の材料からなるため、pドープされたホール注入層および輸送層におけるホールと、発光領域における電子との間の励起錯体の形成が防止される。例えばalpha−NPB)、(5)発光領域(例えば、発光混和剤(例えばイリジウムトリスフェニルピリジンイリジウム錯体染料)を含むTCTA)、(6)電子側ブロック層(一般的には下記の層より薄い。積層体がそれを取り囲む層の積層体と同一の材料からなるため、pドープされたホール注入層および輸送層におけるホールと、発光領域における電子との間の励起錯体の形成が防止される。例えばBCP)、(7)nドープされた電子注入層および輸送層(ドーパントは、マトリックス材料における付加的な電子を輸送できるドナーである。例えばバソフェナントロリン、すなわち有機ドーパントにおいてセシウムを備えたバトフェナントロリン、またはW(Xpp)分子(テトラキス(1,2,3,3a,4,5,6,6a,7,8-デカヒドロ-1,9,9b-トリアザフェナレニル)二タングステン(II)である。さらなるドーパントは、US2005/0040390A1、US2005/0061232A1、WO2005/036667A1、およびWO2005/086251A3に参照される)、および(8)カソード接触部(電子注入する。通常は、例えばアルミニウム、または銀、金といった低仕事関数を有する金属からなる)。
【0013】
ドープされた複数の層におけるドーパントは、気化プロセス中に他に適用された前駆体材料がドーパントを形成する限り、気化プロセスの開始時に、その最終形状にしておく必要は無い。気化プロセスは、例えば電子ビームを利用することによって変更される。混合された複数の層の形成は、一般的には、混合(共通)気化によって行われる。
【0014】
このようなOLED構造は、製品寿命の長さおよび構造の多様性だけでなく、より高い発光効率が得られることにおいても有利である。PLED構造を備えた装置と比較したとき、OLED構造を備えた装置におけるより長い製品寿命は、真空洗浄することにより得られる、使用有機物質の高い純度により説明することができる。さらなる利点としては、個々の層の特性を個別に最適化できること、および電極接触部に対して発光領域の間隔を調整しやすいことがある。pin−OLED構造のドープされた装置を備えることによって、電圧の低下および電極物質の多様性が生じる。これは例えば、文献US2004/0251816A1、およびZhou et al(Appl.Phys.Lett.81,922(2002))に記載されている。また、この構造であれば、反転することにより、簡単に頂上発光とすることができるし、完全に透明とすることもできる(US2006/0033115A1参照)。
【0015】
このような装置の不都合としては、様々な色のピクセルをディスプレイに形成するため、通常では、OLED構造の側方パターン化をシャドーマスクを介して行うことである。この処理は、得られるピクセルの最小値を約50オmより小さくすることに関する制限がある。製造プロセスにおけるシャドーマスクは、比較的複雑なプロセスである。ポリマー材料を蒸着するために使用されるインクジェット印刷は、低分子の有機物質が溶解しないため、低分子の層を形成する際に用いることができないか、低分子を限定した場合にのみ用いることができる。他のプロセスとしては、LITI(「レーザー励起サーマルイメージ」)があるが、処理に相性がよい材料の選択を限定する。
【0016】
また、ハイブリッド構造を備えた有機発光装置は公知であるため、ハイブリッド有機装置として設計されている。文献US2003/020073A1において、蒸着された低分子のブロック層およびポリマーホール輸送層における電子を輸送する複数の層を用いることが記載されている。しかしながら、この配置では、電荷担体の注入、すなわちカソード接触部から低分子電子輸送層に電子を注入することが困難となる。この結果、装置の作動電圧は上昇する。
【0017】
文献WO2005/086251には、ドーパントおよびリガンドだけでなく、有機半導体のマトリックス材料、有機半導体材料、および電子装置のために、nドープされた錯塩の使用が詳しく開示されている。
【0018】
文献EP1511094A2には、有機分子層およびポリマー層とみなされる発光装置が開示されている。
【0019】
多様な材料が有する特性は、PLED構造およびOLED構造における最低空分子軌道(LUMO)および最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギー準位によって、説明することができる。一般的には、関連するブロック材料を含むホール輸送の層は、真空中において、4.5〜5.5eVの範囲のHOMO、および1.5〜3eVの範囲のLUMOを有する。発光領域の材料では、HOMOは5〜6.5eVの範囲であり、LUMOは2〜3eVの範囲である。関連するブロック材料を含む電子輸送の層では、HOMOは5.5〜6.8eVの範囲であり、LUMOは2.3〜3.3eVの範囲である。アノード接触部に用いられる材料と共に、電荷担体を抽出するための仕事関数は、4〜5eVの範囲であり、カソード接触部に用いられる材料と共に、電荷担体を抽出するための仕事関数は、、3〜4.5eVの範囲である。
【0020】
〔発明の概要〕
本発明は、構成の柔軟性を向上すると共に、発光層群における電子接触部からの電荷担体の注入とを向上した発光装置を提供することを目的としている。また、本発明において、発光装置の優れた構造性能は維持されている。
【0021】
上記の目的は、本発明の独立請求項1に係る発光装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって開示されている。
【0022】
本発明では、発光ダイオードに代表される、基板上に複数の層を積層してなる発光装置について説明する。上記複数の層は、電気的に接触するアノード接触部およびカソード接触部、ならびに、上記アノード接触部と上記カソード接触部との間に配置されている発光層群を備えている。上記発光層群は、ポリマー材料からなるポリマー層と、有機物質の分子であって、真空蒸着された小さな分子を含む低分子層と、を備えている。上記有機物質は、真空中で気化することによって分離可能であり、上記低分子層に含まれる上記小さな分子は、
上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−1.5Vの酸化電位を有しているドナー分子であり、
上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最小約−0.3Vの還元電位を有しているアクセプター分子である。
【0023】
ポリマー材料からなるポリマー層と、有機物質の分子であって、真空蒸着されている小さな分子を含む低分子層とを組み合わせることによって、発光装置における発光層群の構成の柔軟性をより高めることができる。また、当該発光装置では、ポリマー層を簡単に構造化することができるため、有機物質である小さな分子を基にして形成される発光有機装置において一般的に用いられるシャドーマスクを使用することなく、様々な色の光を放射するピクセル領域を作製することができる。
【0024】
また、電極接触部に用いる材料を自由に選択できるというさらなる利点もある。電荷担体の注入中に起こり得る損失は、最小限となるか、または完全に防がれる。これにより、寿命の長い安定した発光装置を製造することができる。また、従来のような有機物質の同時蒸着が必須ではない。
【0025】
本発明のさらなる改良によれば、発光層群は、真空中で気化することによって分離可能な、有機物質とは異なる有機物質の分子であって、真空蒸着されている小さな分子を含むさらなる低分子層を備えている。また、上記さらなる低分子層に含まれる上記小さな分子は、
上記さらなる低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置され、かつ上記低分子層が上記カソード接触部隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−1.5Vの酸化電位を有するアクセプター分子であり、
上記さらなる低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置され、かつ上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最小約−0.3Vの還元電位を有するドナー分子である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、上記ドナー分子がFc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−2.0V、好ましくは最大約−2.2Vの酸化電位を有する。
【0027】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記アクセプター分子がFc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最小約0V、好ましくは最小約0.24Vの還元電位を有する。
【0028】
本発明の有利な実施形態では、上記ドナー分子および/または上記アクセプター分子は、約100g/mol〜約200g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、上記ドナー分子は、少なくとも部分的にはW(Xpp)分子である。
【0030】
本発明のさらなる改良によれば、上記アクセプター分子は、少なくとも部分的にはClDCNQI分子である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子および/または上記さらなる低分子層は、約0.5nm〜約20nm、好ましくは約1nm〜約10nm、より好ましくは約1nm〜約5nmの層厚を有している。
【0032】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記ポリマー層は発光層および電荷担体輸送層である。
【0033】
本発明の有利な実施形態は、上記ポリマー層は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの層厚を有している。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、上記ポリマー層は、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリスピロ、ポリチオフェン、またはポリパラフェニレンの群から選択されたポリマー材料からなる。
【0035】
本発明のさらなる改良により、上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、上記アノード接触部および上記ポリマー層の間にポリマーホール注入層が配置されている。
【0036】
本発明の好ましい実施形態は、上記ポリマーホール注入層は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの間の層厚を有している。
【0037】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、上記低分子層と上記ポリマー層との間に低分子有機電子輸送層が配置されている。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、上記低分子有機電子輸送層は、低分子有機ドナー材料と電気的にドープされた有機マトリックス材料を備えている。
【0039】
本発明の好ましい実施形態は、低分子有機電子輸送層は、1:1000〜1:2、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:100〜1:10の範囲のドーピング濃度(ドナー材料分子:マトリックス材料分子)を有している。
【0040】
本発明のさらなる改良によれば、上記有機ドナー材料は、約100g/mol〜約2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している。
【0041】
本発明の好ましい実施形態は、上記低分子有機電子輸送層は、約10nm〜約500nm、好ましくは約20nm〜約200nm、より好ましくは約20nm〜約100nmの層厚を有している。
【0042】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記低分子有機ドナー材料はW(Xpp)である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、上記低分子層と上記ポリマー層との間に低分子有機ブロック層が配置されている。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子有機ブロック層は、約2nm〜約50nm、好ましくは約2nm〜約30nm、より好ましくは約5nm〜約20nmの層厚を有している。
【0045】
本発明のさらなる改良によれば、上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、上記カソード接触部と上記ポリマー層との間にポリマー電子注入層が配置されている。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、上記ポリマー電子注入層は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの層厚を有している。
【0047】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、上記低分子層と上記ポリマー層との間に低分子有機ホール輸送層が配置されている。
【0048】
本発明の有利な実施形態では、上記低分子有機ホール輸送層は、低分子受容型有機物質によって電気的にドープされた有機マトリックス材料を備えている。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子有機ホール輸送層は、1:1000〜1:2、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:100〜1:10の範囲のドーピング濃度(受容体材料分子:マトリックス材料分子)を有している。
【0050】
本発明のさらなる改良によれば、上記受容型有機物質は、約100g/mol〜約2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子有機ホール輸送層は、約10nm〜約500nm、好ましくは約20nm〜約200nm、より好ましくは約20nm〜約100nmの層厚を有している。
【0052】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記低分子受容型有機物質はClDCNQIである。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、上記低分子層および上記ポリマー層の間にさらなる低分子有機ブロック層が配置されている。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、上記さらなる低分子有機ブロック層は、約2nm〜約50nm、好ましくは約2nm〜約30nm、より好ましくは約5nm〜約20nmの層厚を有している。
【0055】
本発明のさらなる改良では、上記複数の層は、上記発光層群において発生した光が上記基板とは逆方向に放射される頂上放射を引き起こす反転構造、および、上記発光層群において発生した光が上記基板を貫通して放射される下部放射を引き起こす非反転構造のいずれかの構造を有している。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、複数の層を積層する基板は透明である。
【0057】
本発明の好ましいさらなる改良によれば、上記アノード接触部または上記カソード接触部を用いて形成されている下部接触部および上部接触部は、1種類以上の金属、金属の化合物および縮退半導体材料もしくは金属合金からなる。
【0058】
1つまたは複数のポリマー材料から形成されたポリマー層の形成には、精度の高い簡単な手段を用いることが効果的である。このような方法を用いて構造化を実現することにより、集中的な作業を要する製造ステップまたは製造方法を不要にする目的も果たすことができる。好ましい実施形態では、ポリマー層は、インクジェット印刷技術を用いて形成される。
【0059】
1つまたは複数の有機物質からなる低分子層を含むことにより、本来であれば互いに混和しない2つの溶媒の存在に起因してポリマー層の変更に制限が生じることを回避することができる。また、これにより、装置における層構造についての選択肢の幅を広げることができる。発光装置の製造中、(複数の)低分子層のドナー分子および/またはアクセプター分子は、当初は、前駆体として働く有機基本材料を気化することにより、真空中で前駆体から製造することができる。この有機基本材料は、気化プロセス中に、ドナー/アクセプター分子を形成する。
【0060】
本発明に係る発光装置は、多方面において適用することができる。適用することができる選択肢としては、特に、全ての種類のディスプレイ、読み出し表示装置、および照明器具において使用される発光装置が含まれる。一実施形態では、装置は、特に赤、緑、および青といった様々な色の光を放射するピクセル領域を備えたものとして作製される。多色の装置はこのように作製される。
【0061】
〔発明の実施形態〕
本発明は、図を参照にした実施形態において以下に詳細に記載される。図1は、非反転構造の層配置である発光装置の断面図であり、図2は、反転構造の層配置であるさらなる発光装置の断面図である。
【0062】
図1は、非反転構造の層配置である発光装置100の断面図である。発光装置100の基板1にはアノード接触部2が形成されている。発光装置100は、発光層群10によって発生し、基板1を貫通した光を放射する。なぜなら、基板1およびアノード接触部2は発生した光に対して透明であるからである。また、基板1は適した層厚を有している。アノード接触部2は、10nm〜約500nmの間の層厚を有している。他の構成においては、アノード接触部2の層厚は、約20nm〜約200nmの間であってもよい。アノード接触部2の材料としては、金属縮退有機半導体材料を用いることができる。具体的には、インジウムスズ酸化物(ITO)または層厚の薄い金属であり、かつ、半透明の金属を用いることができる。
【0063】
図1に示すように、アノード接触部2上には、ポリマー材料からなるポリマーホール注入層3が配置されている。上記ポリマーホール注入層は、約20nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成においては、ポリマーホール注入層3の層厚は、約40nm〜約150nmであってもよく、約50nm〜約100nmであることが好ましい。
【0064】
図1に示すように、ポリマーホール注入層3上には、ポリマー材料からなるポリマー層4が配置されている。図1に示す実施形態においては、ポリマーエミッション層4はホール輸送層として形成されている。つまり、ポリマーエミッション層4は、ホール状態の電荷担体を輸送する。ポリマーエミッション層4は、約20nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成では、ポリマーエミッション層4の層厚は、約40nm〜約150nmであってもよく、約50nm〜約100nmであることが好ましい。ポリマーエミッション層4は、ポリマー材料、すなわちポリプロレン、ピロリン酸塩、ポリチフレン、およびポリパラプチレンのうちの少なくとも1つの材料を用いて形成されている。
【0065】
図1に示すように、ポリマーエミッション層4上には、1つまたは複数の有機物質の小さな分子を含む低分子電子側ブロック層5が配置されている。低分子電子側ブロック層5は、ホール状態の電荷担体がポリマーエミッション層4から外部に出ることを防止する。また、低分子電子側ブロック層5は、励起子、すなわち電荷担体対がポリマーエミッション層4から外部に出ることを防止する役目を果たす。また、低分子電子側ブロック層5によって、低分子電子輸送層6における高密度の電子状態の電荷担体と、ポリマーエミッション層4における高密度のホール状態の電荷担体とを互いに隔てることができる。これにより、発光装置100の性能を低下させるエキシプレックスの形成は防止される。また、電子側ブロック層5は、約2nm〜約50nmの層厚を有している。他の構成においては、電子側ブロック層5の層厚は、約5nm〜約30nmであってもよく、約5nm〜約20nmであることが好ましい。
【0066】
図1に示すように、電子側ブロック層5上には、1つまたは複数の有機物質の小さな分子を含む低分子電子輸送層6が配置されている。好ましい実施形態では、低分子電子輸送層6は、有機マトリックス材料にドープする強力な低分子供与型有機物質によって電気的にドープされる。低分子供与型有機物質は、電子を有機マトリックス材料に放出する。低分子供与型有機物質は、約100g/mol〜約2000g/molのモル質量を有している。他の構成におけるモル質量は、約200g/mol〜約1000g/molである。ドナー分子と、マトリックス材料分子とのモルドーピング濃度の比率は、1:1000〜1:2であり、他の構成においては1:100〜1:5、または1:100〜1:10である。低分子電子輸送層6は、約10nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成においては、低分子電子輸送層6の層厚は、約20nm〜約200nm、または約20nm〜約100nmであることが好ましい。
【0067】
図1に示すように、低分子電子輸送層6上には、真空蒸着された小さな有機ドナー分子を備えた低分子層7が配置されている。ドナー分子は、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して−1.5Vの酸化電位を有している。他の実施形態では、酸化電位は、最大約−2.0Vまたは最大−2.2Vを有している。この酸化電位は、約3.3eV、約2.8eV、および2.6eVより小さいドナー分子の最高被占分子軌道(HOMO)に対応する。ドナー分子のHOMOは、酸化電位のシクロボルタンメトリー測定によって決定される。意図的な実施形態において、もし、有機ドナー分子が低分子層7の形成中に前駆体から生成されるのであれば、HOMOについての詳細は、この方法において最終的に生成されるドナー分子に起因する。ドナー分子の所定の性質に基づけば、ドナー分子(正電荷)は、カソード接触部8(図1参照)における反応および/または隣接する低分子電子輸送層6の有機分子の反応に起因してイオン化される。この方法により形成された空間電荷は、カソード接触部8から低分子電子輸送層6に電荷担体を注入することをサポートする。
【0068】
図1に示すように、ドナー分子を備えた低分子層7上には、カソード接触部8が配置されている。カソード接触部8は、少なくとも10nmの層厚を有している。カソード接触部8の材料としては、例えばアルミニウム、銀、金、カルシウム、およびバリウムなどの金属、金属合金、金属化合物、並びに例えばITOのような縮退半導体材料を好適に用いることができる。
【0069】
発光装置100の他の実施形態(不図示)において、例えばポリマーホール注入層3、低分子電子側ブロック層5、および/または低分子電子輸送層6といった発光層群10における1つまたはいくつかの層は省かれてもよい。発光装置100は、発光層群10において生じさせた特別な光を、別の方法を用いて基板1から放射することもできる。この場合、アノード接触部2では発生させた光を反射し、カソード接触部8は透明である。さらなる実施形態では、カソード接触部8だけでなくアノード接触部2も透明であるため、(半)透明の発光装置が形成される。
【0070】
発光装置100のさらなる実施形態(不図示)では、1つまたはいくつかの有機物質のアクセプター分子を含む低分子有機層は、アノード接触部2に隣接して形成されている。また、低分子有機層は、ホール状態の電荷担体をアノード接触部2から発光層群10に注入する注入層として機能する。アクセプター分子を含む発光層は、図2に従った実施形態において以下に詳細に説明されるものと、同じ性質を有していることが好ましい。
【0071】
以下に、図1を参照して発光装置の先の実施形態の例を詳細に説明する。
【0072】
〔実施例1〕
実施例1に係る発光装置は、分子供与型有機物質からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有する:
1.1.透明基板(ガラス)
1.2.アノード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
1.3.層厚80nmの(水分を用いたスピンコートにより形成した)ポリマーホール注入層(PEDOT:PSS(Baytron−P of H.C. Starck, Germany)
1.4.ポリマーホール輸送エミッション層(層厚70nmのMEH−ポリフェニレンビレン(トルエン溶液を用いたスピンコートにより形成した))
1.7.低分子ドナー分子層(層厚2nmのW(Xpp)
1.8.カソード接触部(光を反射する;アルミニウムからなる)。
【0073】
〔実施例2〕
実施例2に係る発光装置は、分子供与型有機物質からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有する:
2.1.透明基板(ガラス)
2.2.アノード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
2.3.層厚80nmの(水分を用いたスピンコートにより形成した)ポリマーホール注入層(PEDOT:PSS(Baytron−P of H.C. Starck, Germany))
2.4.ポリマーホール輸送エミッション層(層厚60nmのMEH−ポリフェニレンビレン(トルエン溶液を用いたスピンコートにより形成した))
2.6.nドープされた低分子電子輸送層(W(Xpp)によってドープされたAlq3からなる。大部分のドーピング濃度は20%(約10%のモルドーピング濃度に対応)であり、層厚20nm)
2.7.低分子ドナー分子層(層厚2nmのW(Xpp)
2.8.カソード接触部(光を反射する;アルミニウムからなる)
nドープされた電子輸送層2.6を挿入することによって、ハイブリッド装置の光学キャビティーは、電子光学特性データ作動電圧および発光効率に関する損失を招くことなく適用される。nドープされた電子輸送層2.6は、2つの互いに独立して制御される気化源(マトリックス材料およびドナー分子)からの混合気化によって、真空中において形成される。層2.6および層2.7におけるドナーは、異なる有機物質の分子となる。
【0074】
〔実施例3〕
実施例3に係る発光装置は、分子供与型有機物質からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有する:
3.1.透明基板(ガラス)
3.2.アノード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
3.3.層厚80nmの(水分を用いたスピンコートにより形成した)ポリマーホール注入層(PEDOT:PSS(Baytron−P of H.C. Starck, Germany))
3.4.ポリマーホール輸送エミッション層(層厚60nmのMEH−ポリフェニレンビレン(トルエン溶液を用いたスピンコートにより形成した))
3.6.低分子電子輸送層(Alq3から形成されており、層厚20nm)
3.7.低分子ドナー分子層(層厚2nmのW(Xpp)
3.8.カソード接触部(光を反射する;アルミニウムからなる)
実施例2とは異なり、本装置はnドープされた低分子電子輸送層を有している。このため、測定される作動電圧についてわずかな損失しか生じない。また、混合気化プロセスを必要としない。
【0075】
〔実施例4〕
実施例4に係る発光装置は、分子供与型有機物質からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有する:
4.1.透明基板(ガラス)
4.2.アノード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
4.3.層厚80nmの(水分を用いたスピンコートにより形成した)ポリマーホール注入層(PEDOT:PSS(Baytron−P of H.C. Starck, Germany))
4.4.ポリマーホール輸送エミッション層(層厚60nmのMEH−ポリフェニレンビレン(トルエン溶液を用いたスピンコートにより形成した))
4.5.電子側ブロック層(層厚5nmのBPhen(バソフェナントロリン))
4.6.nドープされた低分子電子輸送層(W(Xpp)によってドープされたAlq3からなる。大部分のドーピング濃度は20%(約10%のモルドーピング濃度に対応)層厚は15nmである)
4.7.低分子ドナー分子層(層厚2nmのW(Xpp)
4.8.カソード接触部(光を反射する;アルミニウムからなる)
nドープされた電子輸送層4.6を挿入することによって、発光装置の光学キャビティーは、電子光学特性データ作動電圧および発光効率についての損失を招くことなく適用される。nドープされた電子輸送層4.6は、2つの互いに独立して制御される気化源(マトリックス材料およびドーパント)の混合気化によって、真空中において形成される。層4.6および層4.7におけるドナー分子は、異なる有機物質の分子となる。
【0076】
上記実施例1〜4に係る発光装置の全てにおいて、良質でない低品質の金属がカソード接触部に適用された場合であっても、小さな作動電圧が測定された。4Vより小さい作動電圧における全ての場合において100cd/mの値が得られた。放射された光の色は黄色であった。MEH−ポリフェニレンビレンのLUMOは、−2.8から−2.9eVの範囲にある。MEH−ポリフェニレンビレンを備えた電流効率は、一般的にとても小さく、0.5cd/Aの値が測定された。
【0077】
図2は、反転構造の層配置である発光装置200の断面図である。発光装置200の基板21上には発光層群20が積層されている。発光装置200は、発光層群20によって発生し、基板21を貫通した光を放射する。なぜなら、基板21は発生した光に対して透明であるからである。
【0078】
図2に示すように、基板21上にはカソード接触部22が配置されている。カソード接触部22は、約10nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成においては、カソード接触部22の層厚は、約20nm〜約200nmであってもよい。透明なカソード接触部22を形成する場合の材料としては、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)のような縮退半導体材料、または例えばカルシウム、バリウム、金、銀、もしくはアルミニウムなどの金属を用いることができる。また、金属合金を用いて設計することも考えられる。
【0079】
図2に示すように、カソード接触部22上には、ポリマー材料からなるポリマー電子注入層23が配置されている。ポリマー電子注入層23は、約20nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成においては、ポリマー電子注入層23の層厚は約40nm〜約150nmの間であってもよく、約50nm〜約100nmであることが好ましい。
【0080】
図2に示すように、ポリマー電子注入層23上には、ポリマー材料からなるポリマーエミッション層24が配置されている。ポリマーエミッション層24は、電子状態の電荷担体を輸送する。これにより、ポリマー注入層23から注入された電子が輸送される。ポリマーエミッション層24は、約20nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成においては、ポリマーエミッション層24の層厚は、約40nm〜約150nm、または約50nm〜約100nmであることが好ましい。ポリマー材料としては、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリスピロ、ポリチオフェン、およびポリパラフェニレンといった材料が使用される。
【0081】
図2に示すように、ポリマーエミッション層24上には、1つまたはいくつかの有機物質からなる低分子ホール側ブロック層25が配置されている。ホール側ブロック層25は、ポリマーエミッション層24からの電子状態の電荷担体の進入を付加的に防止する。さらに、ポリマーエミッション層24からの励起子の侵入も防止する。また、ホール側ブロック層25は、低分子ホール輸送層26におけるホール状態の高密度の電荷担体と、ポリマーエミッション層24における電子状態の高密度の電荷担体とを隔てる役目を果たす。これにより、発光装置200の性能を減少させるエキシプレックスの形成が防止される。ホール側ブロック層25は、約2nm〜約50nmの層厚を有している。他の構成では、ホール側ブロック層25の層厚は約5nm〜約30nmであることが好ましい。
【0082】
図2に示すように、ホール側ブロック層25上には、1つまたはいくつかの有機物質からなる低分子ホール輸送層26が配置されている。低分子ホール輸送層26は、約10nm〜約500nmの層厚を有している。他の構成では、低分子ホール輸送層26の層厚は約20nm〜約200nmであり、約20nm〜約100nmであることが好ましい。低分子ホール輸送層26は、有機物質の低分子アクセプター分子からなる強力な受容体材料によって電気的にドーピングされる。アクセプター分子は、有機マトリックス材料に組み込まれる。アクセプター分子は、約100g/mol〜2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜000g/molのモル質量を有している。アクセプター分子と、有機マトリックス材料の分子との比率は、1:1000〜1:2であり、1:100〜1:5であることが好ましく、1:100〜1:10であることがより好ましい。
【0083】
図2に示すように、低分子ホール輸送層26上には、有機物質のアクセプター分子からなる低分子有機層27が配置されている。アクセプター分子は、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して、少なくとも約−0.3Vの還元電位を有している。他の実施形態においては、還元電位は、少なくとも約0Vであり、少なくとも約0.3Vであることが好ましい。この分子特性は、少なくとも4.5eV、好ましくは少なくとも約4.8eV、およびより好ましくは少なくとも5.1eVのアクセプター分子の最低空分子軌道(LUMO)に対応する。アクセプター分子のモル質量は、約100g/mol〜約2000g/molであり、約200g/mol〜約1000g/molの間であることが好ましい。
【0084】
図2に示すように、アクセプター分子からなる低分子有機層27上には、アノード接触部28が配置されている。アノード接触部28は、発光層群20において発生した光を反射し、少なくとも約10nmの厚さを有する。アノード接触部28の材料としては、例えば金または銀などの金属、金属化合物、および例えばITOのような縮退半導体材料、または金属合金が用いられる。
【0085】
発光装置200の他の実施形態において(不図示)、例えばポリマー電子注入層23、低分子ホール側ブロック層25、および/または低分子ホール輸送層26といった、1つまたはいくつかの層は省かれてもよい。
【0086】
図2に示す実施形態の発光装置は、発光層群20において発生させた光を基板21から放射するようにも構成される。この実施形態では、カソード接触部22において光を反射し、アノード接触部28は例えば縮退半導体材料を使用することにより透明とする。また、アノード接触部28だけでなく、カソード接触部22も透明としてもよい。
【0087】
以下に、図2を参照にした多種の実例が詳細に説明する。
【0088】
〔実施例5〕
実施例5に係る発光装置は、有機物質のアクセプター分子からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有している:
5.1.透明基板(ガラス)
5.2.カソード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
5.4.ポリマー電子輸送エミッション層(C8−ポリフルオレン(青色放射))
5.7.低分子アクセプター分子層(層厚2nmのClDCNQI(N.N'-ディシアノ-2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-キノンジイミン))
5.8.アノード接触部(光を反射する;銀からなる)
測定された作動電圧は約4Vであった。しかしながら、得られたポリマー電子輸送物質による良好な電子注入および良好な電子輸送は達成されなかった。このため、低分子アクセプター分子層の電位を完全に利用することはできなかった。
【0089】
〔実施例6〕
実施例6に係る発光装置は、有機物質のアクセプター分子からなる低分子有機注入層、およびドナー分子からなる低分子有機注入層を備えた、以下の構成を有している:
6.1.透明基板(ガラス)
6.2.アノード接触部(厚さ90nmのインジウムスズ酸化物)
6.3.低分子アクセプター分子層(層厚2nmのClDCNQI(N.N'-ディシアノ-2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-キノンジイミン))
6.4.層厚80nmの(水分を用いたスピンコートにより形成した)ポリマーホール注入層(PEDOT:PSS(Baytron−P of H.C. Starck, Germany))
6.5.ポリマーホール輸送エミッション層(層厚70nmのMEH−ポリフェニレンビレン(トルエン溶液を用いたスピンコートにより形成した))
6.6.低分子ドナー分子層(層厚2nmのW(Xpp)
6.7.カソード接触部(光を反射する;アルミニウムからなる)
実施例6において、アクセプター分子を含む注入層は、ポリマーホール注入層に付加的に選択される層として形成される。
【0090】
記載した実施形態の利点としては、均一の上部電圧接触部に全ての発光ポリマー材料を用いることができることが挙げられる。発光ポリマー材料としては、例えば、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリスピロ、ポリチオフェン、およびポリパラフェニレンがあり、それ故全ての発光色に適用できる。また、基板から放射する装置、および透明の装置を効率良く製造することができる。
【0091】
上述した説明、特許請求の範囲および図面において開示した発明の特徴は、その様々な実施形態における発明の実現における任意の組み合わせと同様に1つ1つ重要である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】非反転構造の層配置である発光装置の断面図である。
【図2】反転構造の層配置であるさらなる発光装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードに代表される、基板(1;21)上に複数の層を積層してなる発光装置であって、
上記複数の層は、互いが電気的に接続しているアノード接触部(2;28)およびカソード接触部(22;8)、ならびに、上記アノード接触部(2;28)と上記カソード接触部(22;8)との間に配置されている発光層群(10;20)を備えており、
上記発光層群(10;20)は、ポリマー材料からなるポリマー層(4;24)と、真空中で気化することによって蒸着可能な有機物質の分子であって、真空蒸着された小さな分子を含む低分子層(7;27)と、を備えており、
上記低分子層(7;27)に含まれる上記小さな分子は、
上記低分子層(7)が上記カソード接触部(8)に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−1.5Vの酸化電位を有するドナー分子であり、
上記低分子層(27)が上記アノード接触部(28)に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最小約−0.3Vの還元電位を有するアクセプター分子である、発光装置。
【請求項2】
上記発光層群は、上記有機物質と異なる、真空中で気化することによって分離可能な有機物質の分子であって、真空蒸着された小さな分子を含むさらなる低分子層を備えており、
上記さらなる低分子層に含まれる上記小さな分子は、
上記さらなる低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置され、上記低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−1.5Vの上記酸化電位を有する上記アクセプター分子であり、
上記さらなる低分子層が上記カソード接触部に隣接して配置され、上記低分子層が上記アノード接触部に隣接して配置されている場合には、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−0.3Vの上記還元電位を有する上記ドナー分子である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
上記ドナー分子は、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最大約−2.0V、好ましくは最大約−2.2Vの酸化電位を有している、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
上記アクセプター分子は、Fc/Fc+(フェロセン/フェロセニウム酸化還元カップル)に対して最小約0V、好ましくは最小約0.24Vの還元電位を有している、
ことを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
上記ドナー分子および/または上記アクセプター分子は、約100g/mol〜約2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している、
ことを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
上記ドナー分子の少なくとも一部は、W(Xpp)分子(テトラキス(1,2,3,3a,4,5,6,6a,7,8-デカヒドロ-1,9,9b-トリアザフェナレニル)二タングステン(II)である、
ことを特徴とする、請求項1から5までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
上記アクセプター分子の少なくとも一部は、ClDCNQI分子(N.N'-ディシアノ-2,3,5,6-テトラクロロ-1,4-キノンジイミン)である、
ことを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
上記低分子層および/または上記さらなる低分子層は、約0.5nm〜約20nm、好ましくは約1nm〜約10nm、より好ましくは約1nm〜約5nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項1から7までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
上記ポリマー層(4;24)は、発光層および電荷担体輸送層である、
ことを特徴とする、請求項1から8までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
上記ポリマー層(4;24)は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項1から9までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
上記ポリマー層(4;24)は、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリスピロ、ポリチオフェン、およびポリパラフェニレンからなる群より選択されたポリマー材料からなる、
ことを特徴とする、請求項1から10までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
上記低分子層(7)が上記カソード接触部(8)に隣接して配置されている場合には、上記アノード接触部(2)および上記ポリマー層(4)の間にポリマーホール注入層(3)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から11までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
上記ポリマーホール注入層(3)は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの間の層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
上記低分子層(7)が上記カソード接触部(8)に隣接して配置されている場合には、上記低分子層(7)および上記ポリマー層(4)の間に低分子有機電子輸送層(6)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から13までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
上記低分子有機電子輸送層(6)は、低分子供与型有機物質によって電気的にドープされた有機マトリックス材料を備えている、
ことを特徴とする、請求項14に記載の発光装置。
【請求項16】
上記低分子有機電子輸送層(6)は、1:1000〜1:2、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:100〜1:10の範囲のドーピング濃度(ドナー材料分子:マトリックス材料分子)を有している、
ことを特徴とする、請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
上記低分子供与型有機物質は、約100g/mol〜約2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している、
ことを特徴とする、請求項15または16に記載の発光装置。
【請求項18】
上記低分子有機電子輸送層(6)は、約10nm〜約500nm、好ましくは約20nm〜約200nm、より好ましくは約20nm〜約100nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項14から17までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項19】
上記低分子供与型有機物質はW(Xpp)である、
ことを特徴とする、請求項15から18までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項20】
上記低分子層(7)が上記カソード接触部(8)に隣接して配置されている場合には、上記低分子層(7)および上記ポリマー層(4)の間に低分子有機ブロック層(5)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から19までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項21】
上記低分子有機ブロック層(5)は、約2nm〜約50nm、好ましくは約2nm〜約30nm、より好ましくは約5nm〜約20nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項20に記載の発光装置。
【請求項22】
上記低分子層(27)が上記アノード接触部(28)に隣接して配置されている場合には、上記カソード接触部(22)および上記ポリマー層(24)の間にポリマー電子注入層(23)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から21までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項23】
上記ポリマー電子注入層(23)は、約20nm〜約500nm、好ましくは約40nm〜約150nm、より好ましくは約50nm〜約100nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項22に記載の発光装置。
【請求項24】
上記低分子層(27)が上記アノード接触部(28)に隣接して配置されている場合には、上記低分子層(27)および上記ポリマー層(24)の間に低分子有機ホール輸送層(26)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から23までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項25】
上記低分子有機ホール輸送層(26)は、低分子受容型有機物質によって電気的にドープされた有機マトリックス材料を備えている、
ことを特徴とする、請求項24に記載の発光装置。
【請求項26】
上記低分子有機ホール輸送層(26)は、1:1000〜1:2、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:100〜1:10の範囲のドーピング濃度(受容体材料分子:マトリックス材料分子)を有している、
ことを特徴とする、請求項25に記載の発光装置。
【請求項27】
上記低分子受容型有機物質は、約100g/mol〜約2000g/mol、好ましくは約200g/mol〜約1000g/molのモル質量を有している、
ことを特徴とする、請求項25または26に記載の発光装置。
【請求項28】
上記低分子有機ホール輸送層(26)は、約10nm〜約500nm、好ましくは約20nm〜約200nm、より好ましくは約20nm〜約100nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項24から27までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項29】
上記低分子受容型有機物質はClDCNQIである、
ことを特徴とする、請求項25から28までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項30】
上記低分子層(27)が上記アノード接触部(28)に隣接して配置されている場合には、上記低分子層(27)および上記ポリマー層(24)の間にさらなる低分子有機ブロック層(25)が配置されている、
ことを特徴とする、請求項1から29までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項31】
上記さらなる低分子有機ブロック層(25)は、約2nm〜約50nm、好ましくは約2nm〜約30nm、より好ましくは約5nm〜約20nmの層厚を有している、
ことを特徴とする、請求項30に記載の発光装置。
【請求項32】
上記複数の層は、上記発光層群において発生した光が上記基板とは逆方向に放射される頂上放射を引き起こす反転構造、および、上記発光層群において発生した光が上記基板を貫通して放射される下部放射を引き起こす非反転構造のいずれかの構造を有している、
ことを特徴とする、請求項1から31までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項33】
上記複数の層を積層する上記基板(1;21)は透明である、
ことを特徴とする、請求項1から32までの何れか1項に記載の発光装置。
【請求項34】
上記アノード接触部(2;28)または上記カソード接触部(22;8)を用いて形成されている下部接触部および上部接触部は、1種類以上の金属、金属化合物および縮退半導体材料もしくは金属合金からなる、
ことを特徴とする、請求項1から33までの何れか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−534816(P2009−534816A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505758(P2009−505758)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003311
【国際公開番号】WO2007/121877
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】