説明

発光装置

【課題】電界発光装置と組み合わせることによって光の放射または色度を変更するのに適した赤色蛍光体を提供すること。
【解決手段】発光ダイオード及び蛍光体を備える発光装置であって、蛍光体は、SrCa1−XS:Eu2+,Y(ここでXは0.3〜0.8の数、Yは1以上の原子状またはイオン状ハロゲンである)を含む硫化ストロンチウムカルシウム蛍光体である発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光励起発光型赤色蛍光体およびそれらの製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、電界発光装置と組み合わせた新規な赤色蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
青色発光LEDが発する放射線の波長範囲は約430〜約480ナノメーター(以後nmと記述)である。黄色蛍光体と組み合わせると約6000〜8000K且つ演色インデックス(CRI)が約77の白色光が得られる。
【0003】
白色光は、赤色、緑色および青色のLEDを組み合わせても得られるが、LEDの種類が異なれば、電気的および光学的特性、例えばルーメン対寿命のプロフィール、光の出力対入力電流曲線、および抵抗対温度曲線が変ってしまうので、こうした組み合わせは、色度および均質性が一貫した光を送り出すことができない。更にLEDが三つあれば電流制御器は三つ必要であり、その結果そのような装置では製造コストが嵩み、コンパクトな組み合わせにならない。
【0004】
青色LEDは蛍光体とも組み合わせられており、青色光の一部が赤色および緑色光に変換され、その結果白色光が得られる。この組み合わせに適切な蛍光体であるためには、約430〜480nmでの励起効率が高く、かつ色度ゾーンが広くなければならない。
【0005】
また、蛍光体は他の発光装置または電界発光装置、例えば電気エネルギーで励起されると光を発する有機層を利用するものと組み合わせられてきた。また蛍光体をLEDと組み合わせることにより、LEDまたは他の電界発光装置の色を別の発光波長に、例えば青色を赤色に変換することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、電界発光装置と組み合わせることによって光の放射または色度を変更するのに適した赤色蛍光体が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式:
SrCa1−XS:Eu2+,Y
(ここでXは約0.3〜約0.8の数、またYは1以上の原子状またはイオン状ハロゲンである)を有する硫化ストロンチウム−カルシウム赤色蛍光体およびそれらの製造方法に関する。これらの蛍光体の量子効率は高く、95%に及ぶ。それらは、電界発光装置の光を各種波長の別の発光に変更または変換するのに有用である。
【0008】
ホストの結晶SrCa1−XSは、固溶体であり、Sr:Caの比は任意に変更することができる。この物質のスペクトルにおいて、そのピークはストロンチウム対カルシウムの比が変化するのに応じて605および670nmの間をシフトする。
【0009】
本赤色蛍光体を緑色蛍光体および青色LEDと組み合わせることにより、フルカラーの白色光が得られる。
【0010】
これら赤色蛍光体は、
(a) ストロンチウムの硫酸塩およびカルシウムの硫酸塩の混合物を作成するステップ;
(b) この硫酸塩沈殿物に酸化ユウロピウムの溶液を加えるステップ;
(c) 成形ガス雰囲気でその固体を約900℃の温度に焼くステップ;
(d) 硫化水素雰囲気で約1000℃の温度に焼き、硫酸塩を対応する硫化物に変換するステップ;
(e) 適量のハロゲン化物活性化剤を加える;および
(f) ステップ(e)の混合物を窒素中で約1100℃に焼くステップ、
によって製造される。
【0011】
本蛍光体は、青色光LEDまたは他の電界発光装置の照射により効果的に励起されて赤色光を生ずることができ、また適切な蛍光体と組み合わせることにより、フルカラーの白色光が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この硫化カルシウム−ストロンチウム蛍光体は、所望量の硫酸カルシウムと硫酸ストロンチウムを組み合わせることにより製造することができる。
【0013】
硫酸カルシウムは、可溶性塩、例えば炭酸カルシウムの溶液を形成し、硫酸を用いて対応する硫酸塩を沈殿させ、液体をデカントし、該硫酸塩を濯いで過剰の酸を除去し、沈殿を乾燥することにより作成することができる。
【0014】
乾燥後、硫酸カルシウムと硫酸ストロンチウムの塩を活性化剤としての酸化ユウロピウムと組み合わせ、硝酸に溶解する。活性化剤を不溶性の硫酸塩とスラリーにし、このスラリーを約100℃で12〜24時間乾燥する。
【0015】
混合物を約990℃の温度で成形ガスの中で焼き、そのまま約6時間保持する。次にその固体を硫化水素雰囲気中で約1000℃の温度で焼き、硫酸塩から硫化物塩を形成する。所望量のハロゲン化物(例えばフッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素)を加え、窒素中で温度を約1100℃に上げる。蛍光体を冷却すると、粉末に粉砕することができる。
【実施例】
【0016】
本発明を以下の実施例で更に説明するが、本発明はここに説明する詳細に限定されることを意味しない。
【0017】
実施例1
A部.硫酸カルシウムの調製
炭酸カルシウム(300グラム)を水と攪拌し、硝酸を加えてカルシウム塩を溶解した。少し過剰の炭酸カルシウムを加えてpHが5以上の溶液とした。得られた硝酸カルシウム溶液の外観は乳白であった。
【0018】
1.5グラムのマグネシウム金属片を希硝酸で清浄にし、濯ぎ、硝酸カルシウム溶液に加えて金属不純物を除去した。この混合物を攪拌しながら約85℃に加熱し、放冷した。攪拌は一夜続行することができる。溶液を清澄になるまでろ過した。
【0019】
180mLの硫酸をこの硝酸塩溶液にゆっくり加え、硫酸カルシウム塩が析出する間攪拌した。混合液を約60℃の温度で2時間攪拌したが、時間は更に長くすることができる。
【0020】
液体をデカントし、固体を酸がなくなるまで水で濯いだ。最後にメタノールで洗浄すると固体の乾燥が容易になり、乾燥をオーブン中で100℃にて一夜行った。
【0021】
B部.硫化ストロンチウム−カルシウム蛍光体の調製
A部で調製した硫酸カルシウム、および硫酸ストロンチウムの等モル量(4.76モル)を、希硝酸に溶解した酸化ユウロピウムと組み合わせ、スラリーにした。得られた固体を粉砕し、一夜オーブン乾燥し、乳鉢と乳棒で粉砕した。
【0022】
組み合わせた塩を、温度を15℃/分の速度で約600℃まで上げながら、最初に石英ボートにてN/H(成形ガス)中で焼き、約3時間保持した。温度を同じ速度で900℃に上げ、約3時間保持した。次に固体を乳鉢と乳棒で粉砕した。
【0023】
硫化水素の雰囲気中で温度を約20℃/分の速度で1000℃に上げ、6時間保持した。次に固体を乳鉢と乳棒で粉砕した。
【0024】
ハロゲン化物のドーパント(例えば塩化アンモニウム)を加え、石英管の中で焼き、倒立石英管の中に入れ、窒素中、約1時間に温度を20℃/分の速度で1100℃に上げた。固体を乳鉢と乳棒で粉砕し、100メッシュのスクリーンで篩過し、乾燥条件下に保存した。
【0025】
得られた蛍光体は、オレンジ色であり、粉体密度は約4.3〜4.8g/mL、CIE色度の調整可能な座標位置はx=0.600±0.025およびy−0.350±0.025、調整可能な外部量子効率は>80%、調整可能な発光ピークは約635〜645(ブロードバンド)、半分の高さでのバンド幅は68nm、および励起ピークは475nmであった。
【0026】
図1は、この蛍光体の発光強度対波長のグラフである。「A」と標識した励起ピークを左側に示す。ストロンチウム:カルシウム比が約10から0.1に変化するに伴い、発光色は黄色から深い赤色に変る。励起スペクトルの最大値の位置は、カルシウム含有率の増加と共に長波長側に変る。
【0027】
図1の右側に示す発光スペクトルのピークは、カルシウム含有率の増加と共に618nmから655nmにシフトする。「1」と標識したピークはSr:Ca比が0.8:0.2の蛍光体である。
「2」と標識したピークはSr:Ca比が0.75:0.25の蛍光体である。
「3」と標識したピークはSr:Ca比が0.50:0.50の蛍光体である。
「4」と標識したピークはSr:Ca比が0.25:0.75の蛍光体である。
「5」と標識したピークはSr:Ca比が0.20:0.80の蛍光体である。
【0028】
実施例2
実施例1の手順に従って式Sr0.75Ca0.025:Eu0.075Clの蛍光体を作成した。
【0029】
塩化物含有率を変化させ、その効果を図2に示す。
【0030】
図2は、この蛍光体の発光強度対波長のグラフである。
「1」と標識したスペクトル曲線は、塩化物含有率が1.5%の蛍光体のものである。
「2」と標識したスペクトル曲線は、塩化物含有率が0.5%の蛍光体のものである。
「3」と標識したスペクトル曲線は、塩化物がない蛍光体のものである。
【0031】
塩化物含有率が減少すると発光強度が低下するのが判る。
【0032】
実施例3
実施例1の手順に従って式SrCa1−XS:Eu2+,Brの蛍光体を作成し、同様な結果が得られた。
【0033】
本蛍光体は青色LEDと共に使用することができ、あるいは紫外線光源で活性化することができる。出力光の色温度および演色評価数は、赤色、緑色および青色の蛍光体の比率を変えることにより調節することができる。また本蛍光体は陰極線管スクリーン用の赤色蛍光体としても有用である。
【0034】
本発明蛍光体は、接着剤と組み合わせてLEDの表面板に直接堆積させることによって、LEDの青色光を赤色光に変換することができる。
【0035】
本蛍光体は、接着剤と共にスラリーとして堆積させ、このスラリーをLED上に定着させ、次に焼いて接着剤を硬化または重合化することによって、蛍光体層をLED上に接着させることができる。白色光が所望であれば、既知のごとく、緑色を発する蛍光体を青色LEDに加える。
【0036】
あるいは、本発明蛍光体を、結合剤、例えばエポキシと混合し、加熱してエポキシを硬化させることによってLED上に成形することもできる。
【0037】
青色LEDの配列体は、青色LED、本発明赤色蛍光体で被覆した青色LED、および緑色蛍光体で被覆した青色LEDを組み合わせて、カラーディスプレイに使用することができる。
【0038】
また、本発明蛍光体は、有機層を発光体として使用することにより電界発光装置の中に使用することができる。そのような場合には、本蛍光体は色変換材として使用される。
【0039】
上記のLED/蛍光体装置は、冷光が必要な場合、例えば、手術台および歯科椅子用の照明、頭上照明、または自動車内のドーム照明、マーカス照明、衣装の装飾モチーフ、液晶ディスプレイ用背景照明、その他、明るいが冷光照明が適切な場合に使用できる。
【0040】
本発明を特別な実施態様によって説明したが、本発明はこれらによって限定されることを意味しない。本発明を限定するのは添付する特許請求の範囲のみである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明Sr−Ca蛍光体の発光強度対発光波長の図であり、励起スペクトルの変化も示してある。
【図2】本発明蛍光体の発光強度対発光波長の図であり、カルシウム含量の変化による変位を表わしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード及び蛍光体を備える発光装置であって、
前記蛍光体は、SrCa1−XS:Eu2+,Y(ここでXは0.3〜0.8の数、Yは1以上の原子状またはイオン状ハロゲンである)を含む硫化ストロンチウムカルシウム蛍光体である発光装置。
【請求項2】
YがClである請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
YがBrである請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記蛍光体は接着剤と組み合わされている、請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記蛍光体は結合剤と混合されている、請求項1記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光ダイオードは青色光を発する、請求項1記載の発光装置。
【請求項7】
緑色を発する蛍光体をさらに含む、請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体は、前記発光ダイオードの表面板に付着している、請求項6記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光体は前記発光ダイオード上に成形されている、請求項5記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−55052(P2009−55052A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260800(P2008−260800)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願2003−544147(P2003−544147)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(599134012)サーノフ コーポレーション (59)
【Fターム(参考)】