説明

発光装置

【課題】気密性の向上を図れ、有機EL素子の長寿命化を図れる発光装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子11および有機EL素子11の陽極12、陰極14それぞれに電気的に接続された配線層15,17が透明なプラスチックフィルム10の一表面側に形成された有機EL素子ユニット1を備えている。陽極12と陰極14とが厚み方向に離間した一対の電極を構成している。フリットガラスにより形成されてベース基板20とパッケージ用基板50との間に介在してベース基板20とパッケージ用基板30とを接合する枠状の接合部40と、第1の接合部40と有機EL素子ユニット1との間に配置されて有機EL素子ユニット1を内側に収めベース基板20とパッケージ用基板30との間の距離を規定距離に保つ額縁体60とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)を利用した発光装置が各所で研究開発されている。
【0003】
有機EL素子としては、例えば、透光性基板(透明基板)の一表面側に、陽極となる透明電極、ホール輸送層、発光層(有機発光層)、電子注入層、陰極となる電極の積層構造を備えたものが知られている。この種の有機EL素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加することによって発光層で発光した光が、透明電極および透光性基板を通して取り出される。
【0004】
有機EL素子は、自発光型の発光素子であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること、などの特徴を有するものであり、表示装置(例えば、フラットパネルディスプレイなどの発光体など)や、光源(例えば、液晶表示機器のバックライトや照明光源など)としての適用が期待されており、一部では既に実用化されている。
【0005】
しかし、これらの用途に有機EL素子を応用展開するために、より高効率・長寿命・高輝度の有機EL素子の開発が望まれている。
【0006】
ここにおいて、有機EL素子を用いた発光装置の長寿命化を図るために、図6に示すように、第1のガラス基板からなる透光性基板120と、透光性基板120の一表面側に形成された有機EL素子11と、透光性基板120の上記一表面側で有機EL素子11を被覆した光硬化性樹脂封止層107と、第2のガラス基板における透光性基板120との対向面に凹部131を設けることにより形成された封止キャップ130とを備えたものが提案されている(特許文献1)。ここで、図6に示した構成の発光装置は、封止キャップ130における凹部131の周部を透光性基板120の上記一表面側に熱硬化性樹脂接着層109を介して接着してある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された発光装置では、封止キャップ130を透光性基板120に対して熱硬化性樹脂接着層109により接着しているので、気密性が不十分であり、外部から侵入する水分や酸素の影響で寿命が短くなってしまう。図6に示した構成の発光装置において、封止キャップ130の凹部131の内底面に、水分を捕捉して除去する吸湿シートを積層したものも提案されているが、外部からの水分や酸素が有機EL素子へ到達するのをより確実に防止することが可能な発光装置の開発が望まれている。
【0008】
また、従来から、図7に示すように、有機EL素子11をガラスパッケージ200内に設けた有機ELディスプレイが提案されている(特許文献2)。このガラスパッケージ200は、一表面側に有機EL素子11が形成された第1のガラス基板220と、第1のガラス基板220の上記一表面側に対向配置された第2のガラス基板230との間に配置したフリット240aを溶融させることにより両ガラス基板220,230を接合する気密シール240を形成してある。ここで、特許文献2では、レーザ光や赤外線によりフリット240を溶融させるために、フリット240aとして、少なくとも1種類の遷移金属がドープされたガラスから製造されたものを用いるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−34142号公報
【特許文献2】特表2006−524419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示されたものでは、フリット240をレーザ光や赤外線で溶融させる際に、加熱された部分のみが液化するので、両ガラス基板220,230間の間隔を一定間隔で保つことが難しく、接合信頼性が低下して気密性が低下してしまう懸念がある。特に、特許文献2に開示されたガラスパッケージ200を、有機EL素子を用いた発光装置に適用し、発光装置の発光部の大面積化を図る場合、接合信頼性が低下してしまう。
【0011】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、気密性の向上を図れ、有機EL素子の長寿命化を図れる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発光装置は、厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された配線層が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子ユニットと、第1のガラス基板を用いて形成されて前記プラスチックフィルムの他表面側に対向配置され前記有機EL素子ユニットに対向する一面側の周部に前記各配線層それぞれに電気的に接続される複数の外部接続用の導体パターンを有するベース基板と、第2のガラス基板を用いて形成されて前記ベース基板の前記一面側で前記有機EL素子ユニットよりも離れて配置され前記ベース基板に対向するパッケージ用基板と、フリットガラスにより形成されて前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間に介在して前記ベース基板と前記パッケージ用基板とを接合する枠状の接合部と、前記接合部と前記有機EL素子ユニットとの間に配置されて前記有機EL素子ユニットを内側に収め前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間の距離を規定距離に保つ額縁体とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発光装置において、前記額縁体は、前記有機EL素子ユニットを囲む枠片と、前記枠片における前記ベース基板側の端部から前記枠片の外方に延設されベース基板の前記一面に当接するとともに一部が前記接合部と前記ベース基板との間に固定される固定片と、前記枠片における前記パッケージ用基板側の端部から前記枠片の内方に延設され前記パッケージ用基板に当接するとともに前記有機EL素子ユニットにおける前記プラスチックフィルムの周部を押える枠状の押え片と、前記押え片と前記枠片と前記固定片とに沿って設けられ前記配線層と前記導体パターンである第1の導体パターンとを電気的に接続する第2の導体パターンとを有することが好ましい。
【0014】
この発光装置において、前記額縁体は、前記固定片において前記接合部に重なる第1の部位よりも前記枠片側の第2の部位から立設されて前記固定片と前記パッケージ用基板との間に介在する枠状の立設片を有することが好ましい。
【0015】
この発光装置において、前記有機EL素子ユニットと前記パッケージ用基板と前記額縁体とで囲まれた空間に、不活性ガスに比べて熱伝導率の高い液体が封入されてなることが好ましい。
【0016】
この発光装置において、前記有機EL素子ユニットは、前記プラスチックフィルムの前記他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発光装置においては、気密性の向上を図れ、有機EL素子の長寿命化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1の発光装置を示し、(a)は概略断面図、(b)は概略分解斜視図である。
【図2】同上の発光装置の要部概略正面図である。
【図3】同上の発光装置に関し、(a),(b),(c)は額縁体の要部概略断面図である。
【図4】同上の発光装置の他の構成例の概略断面図である。
【図5】実施形態2の発光装置に関し、(a)は概略断面図、(b)は額縁体の一部破断した斜視図である。
【図6】従来例を示す発光装置の概略断面図である。
【図7】他の従来例の有機ELディスプレイを示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、本実施形態の発光装置について、図1を参照しながら説明する。
【0020】
発光装置は、有機EL素子11および有機EL素子11の陽極12、陰極14それぞれに電気的に接続された配線層15,17が透明なプラスチックフィルム10の一表面側に形成された有機EL素子ユニット1を備えている。なお、本実施形態では、陽極12と陰極14とが厚み方向に離間した一対の電極を構成している。
【0021】
また、発光装置は、第1のガラス基板を用いて形成されてプラスチックフィルム10の他表面側に対向配置され有機EL素子ユニット1に対向するベース基板20を備えている。このベース基板20は、有機EL素子ユニット1に対向する一面側の周部に、各配線層15,17それぞれに電気的に接続される複数の外部接続用の導体パターン(第1の導体パターン)22,24を有している。
【0022】
また、発光装置は、第2のガラス基板を用いて形成されてベース基板20の上記一面側で有機EL素子ユニット1よりも離れて配置されベース基板20に対向するパッケージ用基板30を備えている。
【0023】
また、発光装置は、フリットガラスにより形成されてベース基板20とパッケージ用基板30との間に介在してベース基板20とパッケージ用基板30とを接合する枠状の接合部(以下、第1の接合部と称する)40を備えている。ここにおいて、発光装置は、各第1の導体パターン22,24それぞれの一部が、第1の接合部40よりも外側にあり、台1の接合部40が、ベース基板20およびパッケージ用基板30それぞれに全周に亘って接合されている。なお、本実施形態では、第1の接合部40が有機EL素子ユニット1を囲む枠状に形成されており、ベース基板20とパッケージ用基板30と第1の接合部40とで、有機EL素子ユニット1が収納された気密なパッケージを構成している。
【0024】
また、発光装置は、第1の接合部40と有機EL素子ユニット1との間に配置されて有機EL素子ユニット1を内側に収めベース基板20とパッケージ用基板50との間の距離を規定距離に保つ額縁体60を備えている。
【0025】
ここにおいて、額縁体60には、有機EL素子ユニット1の各配線層15,17とベース基板20の第1の導体パターン22,24とを電気的に接続するための導体パターン162,164を設けてある。
【0026】
また、発光装置は、各配線層15,17と額縁体60に設けられた各導体パターン162,164とをそれぞれ電気的に接続する導電性ペーストからなる接続部42,44を備えている。
【0027】
また、有機EL素子ユニット1は、プラスチックフィルム10の上記他表面側に設けられ有機EL素子11から放射された光の上記他表面での反射を抑制する凹凸構造部50を備えている。この有機EL素子ユニット1は、プラスチックフィルム10の上記他表面の周部を全周に亘ってベース基板20と接合してある。しかして、凹凸構造部50の表面とベース基板20との間には、空間70が存在している。ここにおいて、有機EL素子ユニット1とベース基板20とを接合する枠状の接合部(以下、第2の接合部と称する)29は、例えば、接着用フィルム、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)などにより構成すればよい。なお、有機EL素子ユニット1は、平面視において陽極12と有機EL層13と陰極14とが重複する領域が発光部となり、それ以外の領域が非発光部となる。なお、ベース基板20の上記一面側に空間70を確保するための凹部を設けてもよい。
【0028】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
有機EL素子11は、陽極12と陰極14との間に介在する有機EL層13が、陽極12側から順に、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。ここにおいて、有機EL素子11は、陽極12をプラスチックフィルム10の上記一表面側に積層してあり、陽極12におけるプラスチックフィルム10側とは反対側で、陰極14が陽極12に対向している。なお、陽極12と陰極14との位置関係は逆でもよい。
【0030】
本実施形態における有機EL素子ユニット1では、有機EL素子11の陽極12を透明電極により構成するとともに陰極14を発光層からの光を反射する電極により構成してあり、プラスチックフィルム10の上記他表面側から光を取り出すようになっている。
【0031】
上述の有機EL層13の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、陽極とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよく、例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、陽極12と陰極14とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層13を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層して電気的に直列接続したマルチユニット構造(つまり、1つの陽極12と1つの陰極14との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造)を採用してもよい。
【0032】
陽極12は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。陽極12の電極材料としては、例えば、ITO、酸化スズ、酸化亜鉛、IZO、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、陽極12は、プラスチックフィルム10の上記一表面側に、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0033】
なお、陽極12のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、陽極12の膜厚は、陽極12の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0034】
また、陰極14は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。陰極14の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウムなど、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属の導電材料、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。また、陰極14側から光を取り出す場合には、例えば、ITO、IZOなどを採用すればよい。
【0035】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0036】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、陽極12との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0037】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0038】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0039】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0040】
プラスチックフィルム10のプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)を採用しているが、PETに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)などを採用してもよく、所望の用途や、屈折率、耐熱温度などに応じて適宜選択すればよい。なお、PETは、非常に安価で安全性の高いプラスチック材料である。また、PENは、PETと比べて、屈折率が高く耐熱性も良好であるが、高価である。
【0041】
上述のプラスチックフィルム10は、無アルカリガラス基板やソーダライムガラス基板などの安価なガラス基板に比べて安価であり、且つ、当該ガラス基板よりも屈折率が大きく、有機EL素子11の発光層および陽極12との屈折率差を小さくすることができる。したがって、有機EL素子ユニット1の光取り出し効率を向上できる。
【0042】
また、有機EL素子11をプラスチックフィルム10ではなく、ガラス基板に形成することも考えられるが、ガラス基板に有機EL素子11を形成する場合には、当該ガラス基板において有機EL素子11を形成する表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要があり、コストが高くなる。なお、プラスチックフィルム10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。ここにおいて、プラスチックフィルム10は、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができる。
【0043】
プラスチックフィルム10は、平面視形状が矩形状に形成されている。そして、有機EL素子ユニット1は、プラスチックフィルム10の上記一表面側において、陽極12に電気的に接続された配線層15(以下、第1の配線層15と称する)が、一方向において有機EL素子11を挟むように配置され、陰極14に電気的に接続された配線層17(以下、第2の配線層17と称する)が、上記一方向に交差する方向において有機EL素子11を挟むように配置されている。すなわち、第1の配線層15および第2の配線層17は、それぞれ2つずつ設けてある。なお、プラスチックフィルム10の平面視形状は、矩形状としてあるが、これに限らず、例えば、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。また、第1の配線層15および第2の配線層17それぞれの数は特に限定するものではない。
【0044】
有機EL素子ユニット1は、第1の配線層15の材料を陽極12と同じ材料とし、第1の配線層15を陽極12と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。また、第2の配線層17の材料を陰極14と同じ材料としてあり、第2の配線層17を陰極14と同時に形成してある。しかして、異種材料により別々に形成する場合に比べて、製造プロセスの簡略化、材料コストの低減などによる低コスト化を図れる。また、各配線層15,17は、単層構造に限らず、多層構造でもよい。
【0045】
ベース基板20は、第1のガラス基板として、例えば、無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、青ソーダガラス基板などを用いてもよい。
【0046】
また、ベース基板20は、陽極12に対応付けられた第1の導体パターン22と、陰極14に対応付けられた第1の導体パターン24が同一材料により同一厚さで形成されている。
【0047】
ベース基板20は、平面視形状を矩形状としてあるが、矩形状に限らず、これに限らず、例えば、有機EL素子ユニット1の平面形状に応じて適宜変更してもよく、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。
【0048】
ベース基板20の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きなサイズに設定してあり、各導体パターン22,24を、有機EL素子ユニット1の投影領域の外側に配置してある。ここで、各導体パターン22,24の形状は、プラスチックフィルム10の外周線に交差する方向を幅方向とし当該外周線に沿った方向を長手方向とする短冊状に形成されており、幅方向の一端部が第1の接合部40の内側に位置し、幅方向の他端部側が第1の接合部40よりも外側に位置している。各導体パターン22,24は、スパッタ法や蒸着法などのドライプロセスで成膜することが好ましい。なお、各導体パターン22,24の平面視形状は特に限定するものではない。
【0049】
第2の接合部29は、上述のように、接着用フィルム、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、接着剤(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂など)などにより構成すればよい。したがって、発光装置の製造時には、ベース基板20と有機EL素子ユニット1とを重ね合わせる前に、ベース基板20における第2の接合部29の配置予定領域に上述の接着用フィルムを配置したり、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、接着剤などの樹脂をディスペンサ(例えば、ディスペンサロボット)などにより塗布しておけばよい。第2の接合部29とベース基板20および有機ELユニット1との接合時には、部分加熱や紫外線照射が有効である。
【0050】
額縁体60は、有機EL素子ユニット1を囲む枠状の枠片61と、枠片61におけるベース基板20側の端部から枠片61の外方に延設されベース基板20の上記一面に当接するとともに一部が第1の接合部40とベース基板20との間に固定される固定片62と、枠片61におけるパッケージ用基板30側の端部から枠片61の内方に延設されパッケージ用基板30に当接するとともに有機EL素子ユニット1におけるプラスチックフィルム10の周部を押える枠状の押え片63とを有している。また、額縁体60は、押え片63と枠片61と固定片62とに沿って設けられ配線層15,17と第1の導体パターン22,24とを電気的に接続する第2の導体パターン162,164を有している。
【0051】
ここにおいて、額縁体60の枠片61と固定片62および押え片63は、セラミックス系材料(例えば、窒化シリコンなどのファインセラミックスなど)により一体に形成されている。また、第2の導体パターン162,164の材料としては、例えば、銅などを採用すればよく、第2の導体パターン162,164は、額縁体60の固定片62と枠片61と押え片63とに跨るように、スパッタ法などにより形成すればよい。
【0052】
接続部42,44は、上述のように導電性ペーストにより形成してある。ここで、発光装置の製造時には、図2に示すように、額縁体60の押え片63において各配線層15,17および第2の導体パターン162,164に対応する部位に、導電性ペーストからなる接続部42,44をディスペンサ(例えば、ディスペンサロボット)などにより供給するととともに、押え片63において導電性ペースを供給する部位以外の部位に絶縁性ペーストからなる絶縁部46を供給し、その後、額縁体60の押え片63により有機EL素子ユニット1が押えられるように額縁体60を配置して接続部42,44を第2の導体パターン162,164および配線層15,17それぞれと接合して電気的に接続する。この接合時には、紫外線照射の他、レーザ光による局所加熱が有効である。また、この接合後には、パッケージ用基板30および第1の接合部40を配置する前に、常温で放置するか、加熱した状態で放置して、導電性ペーストからの出ガスを外部へ放出させればよい。導電性ペーストは、導電フィラーとバインダーとからなる。導電フィラーとしては、金粉、銀粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、メッキ粉、カーボン粉、グラファイト粉、半田粒子などを用いることができる。バインダーとしては、エポキシ樹脂、ウレタン、シリコーン、アクリル、ポリイミド、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの有機バインダーを用いることができる。ここにおいて、バインダーからの出ガスによる有機EL素子11の劣化を防ぐために、無溶剤型のバインダーを用いることが望ましい。
【0053】
上述の説明から分かるように、発光装置は、接続部42,44と絶縁部46とで構成される枠状部が、プラスチックフィルム基板10の上記一表面側において有機EL素子10を全周に亘って囲んでおり、有機EL素子ユニット1と枠状部と押え片63とパッケージ用基板30とで囲まれた空間に、不活性ガスに比べて熱伝導率の高い液体(例えば、シリコーンオイル、パラフィンオイルなど)90を封入することができる。ここで、本実施形態では、パッケージ用基板30とベース基板20とを第1の接合部40を介して接合する前に、液体90を注入することができるという利点がある。
【0054】
また、第2の導体パターン162,164は、導電板を折曲することにより形成されたものでもよく、この場合には、図3に示すように、第2の導体パターン162,164を額縁体60の固定片62と枠片61と押さえ片63とに跨って形成された保持溝60b,60cに導体パターン162,164を収納保持させておけばよい。この導体パターン162,164は、額縁体60にインサート成形するようにしてもよいし、保持溝60b,60cに嵌め込むようにしてもよい。
【0055】
また、第2の導体パターン162,164を上述のように導電板を用いて形成する場合、例えば、図4に示すように、第2の導体パターン164のうち押え片63に沿って配置する部位を押え片63から離れて配置されるようにし、当該部位を配線層17に導電性ペーストからなる接続部44に接続した後で、絶縁性ペーストからなる絶縁部46により覆うようにしてもよい。この場合、第2の導体パターン162についても同様である。
【0056】
パッケージ用基板30は、第2のガラス基板として、例えば、無アルカリガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、青ソーダガラス基板などを用いてもよい。ただし、パッケージ用基板30としては、ベース基板20と熱膨張係数が同じ材料により形成されたものが好ましい。
【0057】
パッケージ用基板30は、平面視形状を矩形状としてあるが、矩形状に限らず、これに限らず、例えば、有機EL素子ユニット1やベース基板1の平面形状に応じて適宜変更してもよく、円形状、三角形状、五角形状、六角形状などでもよい。なお、第1の接合部40は、パッケージ用基板30の外周縁に沿った枠状に形成することが好ましく、本実施形態では、矩形枠状に形成してある。なお、パッケージ用基板30と有機EL素子ユニット1との平面視形状が相違する場合には、いずれか一方の外周線に沿った形状としてもよい。
【0058】
パッケージ用基板30の平面サイズは、有機EL素子ユニット1の平面サイズよりも大きく且つベース基板20の平面サイズよりも小さなサイズに設定してある。したがって、ベース基板20の上記一面側から見てベース基板20の各導体パターン22,24の一部を視認できるようになっている。
【0059】
第1の接合部40は、フリットガラスを用いて形成してある。ここで、発光装置の製造時には、ベース基板20の上記一面側で一部が額縁体60の固定片62に重なるように第1の接合部40を配置し、ベース基板20とパッケージ用基板30とで第1の接合部40を挟みこんでから、第1の接合部40をレーザ光などにより加熱してベース基板20、固定片62およびパッケージ用基板30それぞれと接合すればよい。この場合、フリットガラスがレーザ光により加熱されやすいように適宜の不純物をフリットガラスに添加しておいてもよい。なお、加熱は、レーザ光に限らず、例えば、赤外線により行ってもよい。
【0060】
上述の説明から分かるように、本実施形態では、ベース基板20とパッケージ用基板30と第1の接合部40との線膨張係数を揃えてある。ここにおいて、熱膨張係数を揃えるとは、完全に一致させることに限らず、略同一であることを意味し、熱膨張係数差ができるだけ小さくなるように材料を選択することを趣旨としている。
【0061】
本実施形態の発光装置の製造にあたっては、ベース基板20と有機EL素子ユニット1とを第2の接合部29を介して対向配置する前に、ベース基板20の上記一面側に大2の接合部29を形成し、続いて、所定雰囲気(例えば、ドライ窒素雰囲気のような不活性ガス雰囲気など)中においてベース基板20と有機EL素子ユニット1とで第2の接合部29を挟みこんでから、第2の接合部29をベース基板20および有機EL素子ユニット1それぞれと接合させる。続いて、接続部42,44および絶縁部46を額縁体60に設けてから、額縁体60をベース基板20の上記一面側に配置して、接続部42,44を有機EL素子ユニット1の配線層15,17それぞれと接合させることで電気的に接続し、その後、接続部42,44および絶縁部46からの出ガスを外部へ放出させる。その後、有機EL素子ユニット1と、接続部42,44と絶縁部46とで構成される枠状部と押え片63と有機EL素子ユニット1とで囲まれる空間に液体90を注入してから、ベース基板20の上記一面側に第1の接合部40を配置し、続いて、所定雰囲気(例えば、ドライ窒素雰囲気のような不活性ガス雰囲気など)中においてベース基板20とパッケージ用基板30とで接合部40を挟み込み、パッケージ用基板30側からレーザ光を照射して接合部40を加熱することでフリットガラスを溶融させ接合部40をベース基板20、額縁体60の固定片62およびパッケージ用基板30それぞれと接合させる。なお、レーザ光の光源としては、例えば、YAGレーザなどを用いればよい。
【0062】
以上説明した本実施形態の発光装置においては、フリットガラスにより形成されてベース基板20とパッケージ用基板50との間に介在してベース基板20とパッケージ用基板30とを接合する枠状の接合部40と、第1の接合部40と有機EL素子ユニット1との間に配置されて有機EL素子ユニット1を内側に収めベース基板20とパッケージ用基板30との間の距離を規定距離に保つ額縁体60とを備えているので、製造時に、第1の接合部40のフリットガラスが溶融した時もベース基板20とパッケージ用基板30との間隔を安定して保つことができて気密封止することができるから、ベース基板20とパッケージ用基板30と接合部40とで構成されるパッケージの気密性を高めることができ、有機EL素子11の発光部の大面積化を図りながらも有機EL素子11の長寿命化を図れる。また、本実施形態の発光装置では、有機EL素子11で発生した熱を、液体90を介して効率よく放熱させることが可能となるから、有機EL素子11の温度上昇を抑制することができて長寿命化を図れ、しかも、有機EL素子11へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。なお、本実施形態の発光装置では、有機EL素子11で発生した熱が液体90を通る経路だけでなく額縁体60を通る経路で放熱されるので、高輝度化および長寿命化を図ることも可能となる。
【0063】
また、本実施形態の発光装置は、上述のように、有機EL素子ユニット1が凹凸構造部50を備え、凹凸構造部50とベース基板20との間に空間70が存在している。しかして、有機EL素子11から放射されベース基板20まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0064】
ここにおいて、有機EL素子11の発光層およびプラスチックフィルム10それぞれの屈折率は、光が取り出される外部雰囲気である空気や不活性ガスの屈折率に比べて大きい。したがって、上述の凹凸構造部50が設けられずにプラスチックフィルム10とベース基板20との間の空間が空気雰囲気や不活性ガス雰囲気となっている場合には、プラスチックフィルム10からなる第1の媒質と空気もしくは不活性ガスからなる第2の媒質との界面で全反射が生じ、全反射角以上の角度で当該界面に入射する光は反射される。そして、第1の媒質と第2の媒質との界面で反射された光が有機EL層13またはプラスチックフィルム10内部において多重反射し、外部に取り出されずに減衰するので、光取出し効率が低下する。また、第1の媒質と第2の媒質との界面に全反射角未満の角度で入射した光についても、フレネル反射が発生するため、さらに光取り出し効率が低下する。
【0065】
これに対して、本実施形態では、プラスチックフィルム10の上記他表面側に凹凸構造部50を設けてあるので、有機EL素子ユニット1の外部への光取り出し効率を向上させることができる。
【0066】
凹凸構造部50は、多数の突起51がプラスチックフィルム10の上記一表面に平行な2次元面内で周期的に配列された2次元周期構造を有している。図1に示した例では、突起51を四角錐状の形状としてあるが、突起51の形状は、四角錐状以外の錐状(例えば、三角錐状、六角錐状、円錐状など)でもよいし、半球状でもよいし、これら以外の形状でもよい。
【0067】
ここで、当該2次元周期構造の周期Pは、発光層で発光する光の波長が300〜800nmの範囲内にある場合、媒質内の波長をλ(真空中の波長を媒質の屈折率で除した値)とすれば、波長λの1/4〜10倍の範囲で適宜設定することが望ましい。
【0068】
周期Pを例えば5λ〜10λの範囲で設定した場合には、幾何光学的な効果、つまり、入射角が全反射角未満となる表面の広面積化により、光取り出し効率が向上する。また、周期Pを例えばλ〜5λの範囲で設定した場合には、回折光による全反射角以上の光を取り出す作用により、光の取り出し効率が向上する。また、周期Pをλ/4〜λの範囲で設定した場合には、凹凸構造部50付近の有効屈折率がプラスチックフィルム10の上記一表面からの距離が大きくなるにつれて徐々に低下することとなり、プラスチックフィルム10と空間70との間に、凹凸構造部50の媒質の屈折率と空間70の媒質の屈折率との中間の屈折率を有する薄膜層を介在させるのと同等となり、フレネル反射を低減させることが可能となる。要するに、周期Pをλ/4〜10λの範囲で設定すれば、反射(全反射あるいはフレネル反射)を抑制することができ、有機EL素子ユニット1の光取り出し効率が向上する。ただし、幾何光学的な効果による光取り出し効率の向上を図る際の周期Pの上限としては、1000λまで適用可能である。また、凹凸構造部50は、必ずしも2次元周期構造などの周期構造を有している必要はなく、凹凸のサイズがランダムな凹凸構造や周期性のない凹凸構造でも光取り出し効率の向上を図れる。なお、異なるサイズの凹凸構造が混在する場合(例えば、周期Pが1λの凹凸構造と5λ以上の凹凸構造とが混在する場合)には、その中で凹凸構造部50における占有率の最も大きい凹凸構造の光取り出し効果が支配的になる。
【0069】
凹凸構造部50は、プリズムシート(例えば、株式会社きもと製のライトアップ(登録商標)GM3のような光拡散フィルムなど)により構成してあるが、これに限るものではない。例えば、プラスチックフィルム10の上記他表面に凹凸構造部50をインプリント法(ナノインプリント法)により形成してもよい。なお、インプリント法は、熱インプリント法(熱ナノインプリント法)に限らず、光インプリント法(光ナノインプリント法)を採用してもよい。
【0070】
凹凸構造部50については、表面に傷が付くのを防止するためのハードコートを施すか、あるいは、硬度が十分に高いプリズムシートを用いるか、あるいは、硬化後の硬度が十分に高い透明材料を用いることが望ましい。ハードコートを施すためのハードコート剤としては、例えば、東洋インキ製のTYZシリーズ(〔平成21年12月22日検索〕、インターネット<URL:http://www.toyoink.co.jp/products/lioduras/index.html>)などの高屈折率タイプ(屈折率が1.63〜1.74程度)のハードコート剤を採用することができる。なお、TYZシリーズは、エポキシ樹脂などにフィラーとしてジルコニアを混入させた紫外線硬化型のハードコート剤である。
【0071】
本実施形態の発光装置は、凹凸構造部50の表面とベース基板20との間に空間70が存在することが重要である。仮に、凹凸構造部50の表面が、当該凹凸構造部50とベース基板20との界面であるとすると、ベース基板20と外部の空気との屈折率界面が存在するため、当該屈折率界面で再び全反射が生じる。これに対して、本実施形態では、有機EL素子11の光を一旦、空間70へ取り出すことができるので、空間70の不活性ガスとベース基板20との界面、ベース基板20と外部の空気との界面で全反射ロスが生じなくなる。
【0072】
要するに、本実施形態の発光装置においては、有機EL素子ユニット1が、凹凸構造部50を備え、凹凸構造部50の表面とベース基板20との間に空間70が存在しているので、有機EL素子11の発光層から放射されベース基板20まで到達した光の反射ロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0073】
ところで、本実施形態の発光装置では、ベース基板20を光が透過する際にフレネル反射による損失(フレネルロス)が生じる。したがって、本実施形態の発光装置では、ベース基板20を透過する際のフレネルロスを低減することが望ましい。フレネルロスを抑制する手段としては、例えば、ベース基板20の厚み方向の少なくとも一面に、単層もしくは多層の誘電体膜からなるアンチリフレクションコート(anti-reflection coat:以下、AR膜と略称する)を設けることが考えられる。ここにおいて、AR膜を例えば屈折率nが1.38のフッ化マグネシウム膜(MgF膜)により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.38)=99.6nmとすればよい。同様に、AR膜を例えば屈折率nが1.58の酸化アルミニウム膜(Al膜)により構成する場合には、設計波長λを550nmとすれば、AR膜の厚さをλ/4n=550/(4×1.58)=87.0nmとすればよい。また、AR膜は、厚さが99.6nmのフッ化マグネシウム膜と厚さが87.0nmの酸化アルミニウム膜との積層膜(2層AR膜)としてもよい。なお、誘電体膜の材料は、フッ化マグネシウムや酸化アルミニウム以外の材料を採用してもよい。
【0074】
本実施形態の発光装置では、ベース基板20の厚み方向の少なくとも一面、好ましくは両面にAR膜を設けることにより、フレネルロスを低減でき、光取り出し効率の向上を図れる。
【0075】
また、フレネルロスを抑制する他の手段としては、ベース基板20の厚み方向の少なくとも一面側にモスアイ(蛾の目)構造を設けることが考えられる。モスアイ構造は、先細り状の微細突起が2次元アレイ状に配列されて2次元周期構造を有しており、多数の微細突起と隣り合う微細突起間に入り込んだ媒質(例えば、空気)とで反射防止部が構成されることとなる。ここにおいて、ベース基板20をナノインプリント法により加工してモスアイ構造を形成した場合には、微細突起の屈折率がベース基板20の屈折率と同じとなる。この場合、反射防止部の有効屈折率は、当該反射防止部の厚さ方向においてベース基板20の屈折率(=1.51)と媒質の屈折率(=1)との間で連続的に変化し、フレネルロスの原因となる屈折率界面がなくなった状態が擬似的に得られる。したがって、モスアイ構造では、AR膜に比べて、波長や入射角に対する依存性を小さくでき、かつ、反射率も小さくすることができる。
【0076】
モスアイ構造における微細突起の高さおよび微細突起の周期は、例えば、それぞれ200nm、100nmに設定すればよいが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0077】
上述のモスアイ構造は、例えば、ナノインプリント法により形成することができるが、ナノプリント法以外の方法(例えば、レーザ加工技術)で形成してもよい。また、モスアイ構造は、例えば、三菱レイヨン株式会社製のモスアイ型無反射フィルムにより構成してもよい。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態の発光装置の基本構成は実施形態1と略同じであり、図5に示すように、額縁体60が、固定片62において第2の接合部40に重なる第1の部位よりも枠片61側の第2の部位から立設されて固定片62とパッケージ用基板30との間に介在する枠状の立設片64を有している点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
額縁体60の立設片64は、固定片62に一体に形成されている。要するに、立設片64は、固定片62と同様に、セラミックス系材料(例えば、窒化シリコンなどのファインセラミックスなど)により形成されており、製造時に、第2の接合部40で発生した熱を放熱させる放熱経路として機能させることができる。
【0080】
しかして、本実施形態の発光装置では、額縁体60が立設片64を備えていることにより、製造時において、第2の接合部40のフリットガラスを溶融させる際に第2の接合部40から有機EL素子11へ伝わる熱量を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態の発光装置では、立設片64が枠状に形成されているので、液体90が枠片61の外側に漏れた場合でも、立設片64と固定片62と枠片61とで囲まれた空間に、漏れた液体90を溜めることができ、信頼性を高めることができる。ただし、立設片64と固定片62と枠片61とで囲まれた空間に、液体90を注入してもよく、この場合には、有機EL素子11で発生した熱を、より効率的に放熱させることが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 有機EL素子ユニット
10 プラスチックフィルム
11 有機EL素子
12 陽極(電極)
13 有機EL層
14 陰極(電極)
15 配線層
17 配線層
20 ベース基板
22 導体パターン(第1の導体パターン)
24 導体パターン(第1の導体パターン)
30 パッケージ用基板
40 接合部
50 凹凸構造部
60 額縁体
61 枠片
62 固定片
63 押え片
64 立設片
70 空間
90 液体
162 第2の導体パターン
164 第2の導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に離間した一対の電極間に発光層を有する有機EL素子および前記有機EL素子の前記各電極それぞれに電気的に接続された配線層が透明なプラスチックフィルムの一表面側に形成された有機EL素子ユニットと、第1のガラス基板を用いて形成されて前記プラスチックフィルムの他表面側に対向配置され前記有機EL素子ユニットに対向する一面側の周部に前記各配線層それぞれに電気的に接続される複数の外部接続用の導体パターンを有するベース基板と、第2のガラス基板を用いて形成されて前記ベース基板の前記一面側で前記有機EL素子ユニットよりも離れて配置され前記ベース基板に対向するパッケージ用基板と、フリットガラスにより形成されて前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間に介在して前記ベース基板と前記パッケージ用基板とを接合する枠状の接合部と、前記接合部と前記有機EL素子ユニットとの間に配置されて前記有機EL素子ユニットを内側に収め前記ベース基板と前記パッケージ用基板との間の距離を規定距離に保つ額縁体とを備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記額縁体は、前記有機EL素子ユニットを囲む枠片と、前記枠片における前記ベース基板側の端部から前記枠片の外方に延設されベース基板の前記一面に当接するとともに一部が前記接合部と前記ベース基板との間に固定される固定片と、前記枠片における前記パッケージ用基板側の端部から前記枠片の内方に延設され前記パッケージ用基板に当接するとともに前記有機EL素子ユニットにおける前記プラスチックフィルムの周部を押える枠状の押え片と、前記押え片と前記枠片と前記固定片とに沿って設けられ前記配線層と前記導体パターンである第1の導体パターンとを電気的に接続する第2の導体パターンとを有することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記額縁体は、前記固定片において前記接合部に重なる第1の部位よりも前記枠片側の第2の部位から立設されて前記固定片と前記パッケージ用基板との間に介在する枠状の立設片を有することを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記有機EL素子ユニットと前記パッケージ用基板と前記額縁体とで囲まれた空間に、不活性ガスに比べて熱伝導率の高い液体が封入されてなることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
前記有機EL素子ユニットは、前記プラスチックフィルムの前記他表面側に設けられ前記有機EL素子から放射された光の前記他表面での反射を抑制する凹凸構造部を備え、前記凹凸構造部の表面と前記パッケージ用基板との間に空間が存在することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216353(P2011−216353A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83861(P2010−83861)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】