発光装置
【課題】光の取り出し効率を向上させる。
【解決手段】実施形態に係る発光装置は、基板SUBと、前記基板SUBの上方に位置し、前面電極CTDと背面電極ANDとそれらの間に介在すると共に発光層EMTを含んだ有機物層ORGとを備えた有機EL素子OLEDと、前記有機EL素子OLEDを間に挟んで前記基板SUBと向き合い、格子の格子点に対応して配列した複数の光透過性部を含んだ格子層GLと、前記格子層GLを被覆して前記複数の光透過性部間の隙間を埋め込んだ光透過性層LHとを備えた回折格子DGTとを具備したことを特徴とする。
【解決手段】実施形態に係る発光装置は、基板SUBと、前記基板SUBの上方に位置し、前面電極CTDと背面電極ANDとそれらの間に介在すると共に発光層EMTを含んだ有機物層ORGとを備えた有機EL素子OLEDと、前記有機EL素子OLEDを間に挟んで前記基板SUBと向き合い、格子の格子点に対応して配列した複数の光透過性部を含んだ格子層GLと、前記格子層GLを被覆して前記複数の光透過性部間の隙間を埋め込んだ光透過性層LHとを備えた回折格子DGTとを具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に係り、特には有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を含んだ発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の輝度は、これに流す電流の大きさに応じて増加する。しかしながら、電流密度を高めると、消費電力が大きくなるのに加え、有機EL素子の寿命が著しく短くなる。したがって、高輝度、低消費電力、長寿命を同時に実現するには、発光層が放出する光を装置の外部へとより効率的に取り出すこと,すなわち光の取り出し効率を向上させること,が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光の取り出し効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、基板と、前記基板上に配置され、前面電極と背面電極とそれらの間に介在すると共に発光層を含んだ有機物層とを備えた有機EL素子と、前記基板と前記有機EL素子との間又は前記有機EL素子上に配置された回折格子とを具備したことを特徴とする発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様に係る発光装置を概略的に示す平面図。
【図2】図1の装置に採用可能な構造の第1例を概略的に示す断面図。
【図3】図1の装置に採用可能な構造の第2例を概略的に示す断面図。
【図4】図1の装置に採用可能な構造の第3例を概略的に示す断面図。
【図5】図1の装置に採用可能な構造の第4例を概略的に示す断面図。
【図6】図1の装置に採用可能な構造の第5例を概略的に示す断面図。
【図7】図1の装置に採用可能な構造の第6例を概略的に示す断面図。
【図8】図1の装置に採用可能な構造の第7例を概略的に示す断面図。
【図9】図1の装置に採用可能な構造の第8例を概略的に示す断面図。
【図10】図1の装置に採用可能な構造の第9例を概略的に示す断面図。
【図11】図1の装置に採用可能な構造の第10例を概略的に示す断面図。
【図12】図1の装置に採用可能な構造の第11例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一態様に係る発光装置を概略的に示す平面図である。なお、図1では、一例として、発光装置を表示装置に適用している。
【0010】
図1の表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した有機EL表示装置である。この表示装置は、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。
【0011】
表示パネルDPは、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。基板SUB上では、複数の画素PXがマトリクス状に配列している。
【0012】
基板SUB上には、走査信号線SL1及びSL2と、映像信号線DLとが配置されている。走査信号線SL1及びSL2は、画素PXの行に沿ったX方向に延びており、画素PXの列に沿ったY方向に交互に配列している。映像信号線DLは、Y方向に延びており、X方向に配列している。走査信号線SL1及びSL2は、走査信号線ドライバYDRに接続されている。映像信号線DLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。
【0013】
基板SUB上には、電源線PSLがさらに配置されている。電源線PSLは、例えば、走査信号線ドライバYDR又は映像信号線ドライバXDRに接続する。
【0014】
各画素PXは、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、出力制御スイッチSWaと、選択用スイッチSWbと、ダイオード接続スイッチSWcと、キャパシタCとを含んでいる。図1では、一例として、駆動トランジスタDR及びスイッチSWa乃至SWcにpチャネル薄膜トランジスタを使用している。
【0015】
駆動トランジスタDRとスイッチSWaと有機EL素子OLEDとは、電源線PSL上の第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。スイッチSWaのゲートは、走査信号線SL1に接続されている。なお、図1の例では、電源端子ND1は、電源端子ND2と比較してより高い電位に設定する。
【0016】
スイッチSWbは、駆動トランジスタDRのドレインと映像信号線DLとの間に接続されている。スイッチSWcは、駆動トランジスタDRのドレインとゲートとの間に接続されている。スイッチSWb及びSWcのゲートは、走査信号線SL2に接続されている。
【0017】
キャパシタCは、駆動トランジスタDRのゲートと定電位端子との間に接続されている。図1では、一例として、この定電位端子として電源端子ND1を利用している。
【0018】
図2は、図1の装置に採用可能な構造の第1例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0019】
図2では、有機EL素子OLEDは、陽極ANDと、陰極CTDと、それらの間に介在した有機物層ORGとを含んでいる。
【0020】
陽極ANDは、光透過性の背面電極である。陽極ANDの材料としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などの透明導電性酸化物を使用することができる。陽極ANDは、図1に示すスイッチSWaのドレインに接続される。
【0021】
陰極CTDは、光透過性の前面電極である。図2では、一例として、陰極CTDは第1層L1及び第2層L2を含んでいる。第1層L1の材料としては、例えば、マグネシウムと銀との合金などの金属材料を使用することができる。第2層L2の材料としては、例えば、ITOなどの透明導電性酸化物を使用することができる。陰極CTDは、図1に示す電源端子ND2に接続される
有機物層ORGは、発光層EMTを含んでいる。図2では、一例として、有機物層ORGは正孔輸送層HT及び電子輸送層ETをさらに含んでいる。発光層EMTは、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。正孔注入層HTは、発光層EMTと陽極ANDとの間に介在している。電子輸送層ETは、発光層EMTと陰極CTDとの間に介在している。
【0022】
発光層EMTと正孔輸送層HTとの間には、電子ブロッキング層を挿入してもよい。発光層EMTと電子輸送層ETとの間には、正孔ブロッキング層を挿入してもよい。
【0023】
また、正孔輸送層HTと陽極ANDとの間には、正孔注入層として、例えば銅フタロシアニン(CuPc)層又はアモルファスカーボン(α−C)層を挿入してもよい。電子輸送層ETと陰極CTDとの間には、電子注入層として、例えば弗化リチウム(LiF)層又は弗化セシウム(CsF)層と弗化リチウム層との積層体を挿入してもよい。
【0024】
有機EL素子OLEDと基板SUBとの間には、反射型回折格子DGRが介在している。反射型回折格子DGRは、反射層REFと、高屈折率格子層GHと、低屈折率層LLとを含んでいる。
【0025】
反射層REFは、基板SUB上に形成されている。反射層REFとしては、例えば、アルミニウム層及び銀層などの金属材料層を使用することができる。反射層REFとして、屈折率が異なる誘電体膜を重ねてなる多層膜を使用してもよい。
【0026】
高屈折率格子層GHは、パターニングされた光透過性層である。例えば、高屈折率格子層GHは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の光透過性部からなる。高屈折率格子層GHの屈折率は、典型的には、発光層EMTの屈折率と等しいか又はそれよりも大きい。高屈折率格子層GHの材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化チタン(TiO2)、ITO、IZO(indium zinc oxide)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などを使用することができる。
【0027】
高屈折率格子層GHは、例えば、反射層REF上に光透過性層を連続膜として形成し、これをパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、連続膜としての光透過性層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して光透過性層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0028】
低屈折率層LLは、反射層REFと高屈折率格子層GHとを被覆している。低屈折率層LLは、連続膜としての光透過性層である。低屈折率層LLは、高屈折率格子層GHと比較して屈折率がより小さい。典型的には、低屈折率層LLの屈折率は、発光層EMTの屈折率よりも小さい。低屈折率層LLの材料としては、例えば、酸化珪素(SiOx)、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。低屈折率層LLの材料に透明無機材料を使用した場合、例えば、CVD(chemical vapor deposition)により透明無機材料からなる層を形成し、その後、この層に対してCMP(chemical mechanical polishing)などの平坦化プロセスを実施することにより、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。低屈折率層LLの材料に透明樹脂を使用した場合、平坦化プロセスなしで、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。
【0029】
図2の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、高屈折率格子層GHを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図2の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
図3は、図1の装置に採用可能な構造の第2例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0031】
図3の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図3では、図2の高屈折率格子層GH及び反射層REFの代わりに、反射格子層GRを使用している。
【0032】
反射格子層GRは、基板SUB上に形成されている。反射格子層GRとしては、例えば、アルミニウム層及び銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0033】
反射格子層GRの上面には、凸パターンが形成されている。例えば、この凸パターンは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の凸部からなる。
【0034】
反射格子層GRの凸パターンは、例えば、金属材料層を連続膜として形成し、この表面をパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、金属材料層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して金属材料層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0035】
図3の構造を採用した場合も、図2の構造を採用した場合と同様、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、反射格子層GRの上面に凸パターンを形成しない場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図3の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0036】
図4は、図1の装置に採用可能な構造の第3例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0037】
図4の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図4では、高屈折率格子層GH及び低屈折率層LLを、有機EL素子OLEDと反射層REFとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。そして、反射層REFと高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとで反射型回折格子DGRを形成する代わりに、高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとで透過型回折格子DGTを形成している。
【0038】
なお、図4では、高屈折率格子層GHの開口部が低屈折率層LLに相当しており、これら開口部は空気などの気体で満たされているか又は真空である。低屈折率層LLの材料として、例えば、図2を参照しながら説明した材料を使用してもよい。
【0039】
図4の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図4の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0040】
図5は、図1の装置に採用可能な構造の第4例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0041】
図5の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図5の構造では、高屈折率格子層GH及び低屈折率層LLの代わりに、低屈折率格子層GL及び高屈折率層LHをそれぞれ使用している。
【0042】
低屈折率格子層GLは、パターニングされた光透過性層である。例えば、低屈折率格子層GLは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の光透過性部からなる。低屈折率格子層GHの屈折率は、典型的には、発光層EMTの屈折率よりも小さい。低屈折率格子層GHの材料としては、例えば、酸化珪素、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。
【0043】
低屈折率格子層GLは、例えば、反射層REF上に光透過性層を連続膜として形成し、これをパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、連続膜としての光透過性層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して光透過性層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0044】
高屈折率層LHは、反射層REFと低屈折率格子層GLとを被覆している。高屈折率層LHは、連続膜としての光透過性層である。高屈折率層LHは、低屈折率格子層GLと比較して屈折率がより大きい。典型的には、高屈折率層LHの屈折率は、発光層EMTの屈折率と等しいか又はそれよりも大きい。
【0045】
高屈折率層LHの材料としては、例えば、窒化珪素、酸化チタン、ITO、IZO、酸化ジルコニウムなどを使用することができる。高屈折率層LHの材料として、高屈折率微粒子を添加した透明樹脂を使用してもよい。高屈折率微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子及び酸化ジルコニウム微粒子を使用することができる。透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。高屈折率層LHの材料に透明無機材料を使用した場合、例えば、CVDにより透明無機材料からなる層を形成し、その後、この層に対してCMPなどの平坦化プロセスを実施することにより、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。高屈折率層LHの材料に高屈折率微粒子を添加した透明樹脂を使用した場合、平坦化プロセスなしで、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。
【0046】
図5の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図5の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0047】
図6は、図1の装置に採用可能な構造の第5例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0048】
図6の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図6の構造では、高屈折率層LHを省略している。
【0049】
低屈折率格子層GLは、凸パターンを形成している。そのため、高屈折率層LHを省略すると、有機EL素子OLEDは、凸パターンが形成された表面上に形成される。それゆえ、凸パターンの開口部は、例えば、有機EL素子OLEDの一部で埋め込まれる。図6では、一例として、凸パターンの開口部は、例えば、陽極ANDと正孔輸送層HTとからなる光透過層LH’で埋め込まれている。図6の構造では、この光透過層LH’が、図5の高屈折率層LHと同様の役割を果たす。
【0050】
なお、図6では、正孔輸送層HTの上面には、低屈折率格子層GLが形成する凸パターンに対応した凸パターンが形成されている。塗布法によって正孔輸送層HTを形成する場合,例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの正孔輸送材料を含んだ塗工液を用いて正孔輸送層HTを形成する場合,には、正孔輸送層HTの上面に凸パターンが生じるのを防止又は抑制できる。また、蒸着法によって正孔輸送層HTを形成する場合,例えばN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)などの正孔輸送材料を蒸着して正孔輸送層HTを形成する場合には、蒸着による成膜の後に、リフロー(或いはアニール)を行うと、正孔輸送層HTの上面に凸パターンが生じるのを防止又は抑制できる。
【0051】
図6の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図6の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0052】
図7は、図1の装置に採用可能な構造の第6例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0053】
図7の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図7では、低屈折率格子層GL及び高屈折率層LHを、有機EL素子OLEDと反射層REFとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。そして、反射層REFと低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとで反射型回折格子DGRを形成する代わりに、低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとで透過型回折格子DGTを形成している。
【0054】
図7の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図7の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0055】
図8は、図1の装置に採用可能な構造の第7例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0056】
図8の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図8では、図2の反射層REFを省略しており、高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとは透過型回折格子DGTを形成している。また、図8の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。なお、この表示装置は下面発光型であるので、陽極ANDは前面電極であり、陰極CTDは背面電極である。
【0057】
図8の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図8の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0058】
図9は、図1の装置に採用可能な構造の第8例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0059】
図9の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図9では、反射型回折格子DGRを基板SUBと有機EL素子OLEDとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。なお、図9の構造では、図4に示す構造と同様に、低屈折率層LLを省略してもよい。
【0060】
図9の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、高屈折率格子層GHを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図9の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0061】
図10は、図1の装置に採用可能な構造の第9例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0062】
図10の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図10では、図5の反射層REFを省略しており、低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとは透過型回折格子DGTを形成している。また、図10の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0063】
図10の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図10の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0064】
図11は、図1の装置に採用可能な構造の第10例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0065】
図11の構造は、以下を除いて図6の構造と同様である。すなわち、図11では、図6の反射層REFを省略しており、低屈折率格子層GLと光透過層LH’とは透過型回折格子DGTを形成している。また、図11の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0066】
図11の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図10の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0067】
図12は、図1の装置に採用可能な構造の第11例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0068】
図12の構造は、以下を除いて図7の構造と同様である。すなわち、図12では、反射層REFを、基板SUBと有機EL素子OLEDとの間に配置する代わりに、高屈折率層LH上に配置している。
【0069】
図12の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図12の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0070】
以上、表示装置に図1の構造を採用したが、表示装置には他の構造を採用してもよい。例えば、図1の表示装置には、画素PXに映像信号として電流信号を書き込む構造を採用しているが、画素PXに映像信号として電圧信号を書き込む構造を採用してもよい。また、本態様では、発光装置を表示装置に適用したが、発光装置を照明装置などの他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
AND…陽極、C…キャパシタ、CTD…陰極、DGR…反射型回折格子、DGT…透過型回折格子、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DR…駆動トランジスタ、EMT…発光層、ET…電子輸送層、GH…高屈折率格子層、GL…低屈折率格子層、HT…正孔輸送層、L1…第1層、L2…第2層、LH…高屈折率層、LH’…光透過層、LL…低屈折率層、ND1…電源端子、ND2…電源端子、OLED…有機EL素子、ORG…有機物層、PSL…電源線、PX…画素、REF…反射層、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SUB…絶縁基板、SWa…出力制御スイッチ、SWb…選択用スイッチ、SWc…ダイオード接続スイッチ、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に係り、特には有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を含んだ発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子の輝度は、これに流す電流の大きさに応じて増加する。しかしながら、電流密度を高めると、消費電力が大きくなるのに加え、有機EL素子の寿命が著しく短くなる。したがって、高輝度、低消費電力、長寿命を同時に実現するには、発光層が放出する光を装置の外部へとより効率的に取り出すこと,すなわち光の取り出し効率を向上させること,が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−63840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光の取り出し効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、基板と、前記基板上に配置され、前面電極と背面電極とそれらの間に介在すると共に発光層を含んだ有機物層とを備えた有機EL素子と、前記基板と前記有機EL素子との間又は前記有機EL素子上に配置された回折格子とを具備したことを特徴とする発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様に係る発光装置を概略的に示す平面図。
【図2】図1の装置に採用可能な構造の第1例を概略的に示す断面図。
【図3】図1の装置に採用可能な構造の第2例を概略的に示す断面図。
【図4】図1の装置に採用可能な構造の第3例を概略的に示す断面図。
【図5】図1の装置に採用可能な構造の第4例を概略的に示す断面図。
【図6】図1の装置に採用可能な構造の第5例を概略的に示す断面図。
【図7】図1の装置に採用可能な構造の第6例を概略的に示す断面図。
【図8】図1の装置に採用可能な構造の第7例を概略的に示す断面図。
【図9】図1の装置に採用可能な構造の第8例を概略的に示す断面図。
【図10】図1の装置に採用可能な構造の第9例を概略的に示す断面図。
【図11】図1の装置に採用可能な構造の第10例を概略的に示す断面図。
【図12】図1の装置に採用可能な構造の第11例を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、本発明の一態様に係る発光装置を概略的に示す平面図である。なお、図1では、一例として、発光装置を表示装置に適用している。
【0010】
図1の表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した有機EL表示装置である。この表示装置は、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。
【0011】
表示パネルDPは、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。基板SUB上では、複数の画素PXがマトリクス状に配列している。
【0012】
基板SUB上には、走査信号線SL1及びSL2と、映像信号線DLとが配置されている。走査信号線SL1及びSL2は、画素PXの行に沿ったX方向に延びており、画素PXの列に沿ったY方向に交互に配列している。映像信号線DLは、Y方向に延びており、X方向に配列している。走査信号線SL1及びSL2は、走査信号線ドライバYDRに接続されている。映像信号線DLは、映像信号線ドライバXDRに接続されている。
【0013】
基板SUB上には、電源線PSLがさらに配置されている。電源線PSLは、例えば、走査信号線ドライバYDR又は映像信号線ドライバXDRに接続する。
【0014】
各画素PXは、有機EL素子OLEDと、駆動トランジスタDRと、出力制御スイッチSWaと、選択用スイッチSWbと、ダイオード接続スイッチSWcと、キャパシタCとを含んでいる。図1では、一例として、駆動トランジスタDR及びスイッチSWa乃至SWcにpチャネル薄膜トランジスタを使用している。
【0015】
駆動トランジスタDRとスイッチSWaと有機EL素子OLEDとは、電源線PSL上の第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。スイッチSWaのゲートは、走査信号線SL1に接続されている。なお、図1の例では、電源端子ND1は、電源端子ND2と比較してより高い電位に設定する。
【0016】
スイッチSWbは、駆動トランジスタDRのドレインと映像信号線DLとの間に接続されている。スイッチSWcは、駆動トランジスタDRのドレインとゲートとの間に接続されている。スイッチSWb及びSWcのゲートは、走査信号線SL2に接続されている。
【0017】
キャパシタCは、駆動トランジスタDRのゲートと定電位端子との間に接続されている。図1では、一例として、この定電位端子として電源端子ND1を利用している。
【0018】
図2は、図1の装置に採用可能な構造の第1例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0019】
図2では、有機EL素子OLEDは、陽極ANDと、陰極CTDと、それらの間に介在した有機物層ORGとを含んでいる。
【0020】
陽極ANDは、光透過性の背面電極である。陽極ANDの材料としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などの透明導電性酸化物を使用することができる。陽極ANDは、図1に示すスイッチSWaのドレインに接続される。
【0021】
陰極CTDは、光透過性の前面電極である。図2では、一例として、陰極CTDは第1層L1及び第2層L2を含んでいる。第1層L1の材料としては、例えば、マグネシウムと銀との合金などの金属材料を使用することができる。第2層L2の材料としては、例えば、ITOなどの透明導電性酸化物を使用することができる。陰極CTDは、図1に示す電源端子ND2に接続される
有機物層ORGは、発光層EMTを含んでいる。図2では、一例として、有機物層ORGは正孔輸送層HT及び電子輸送層ETをさらに含んでいる。発光層EMTは、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。正孔注入層HTは、発光層EMTと陽極ANDとの間に介在している。電子輸送層ETは、発光層EMTと陰極CTDとの間に介在している。
【0022】
発光層EMTと正孔輸送層HTとの間には、電子ブロッキング層を挿入してもよい。発光層EMTと電子輸送層ETとの間には、正孔ブロッキング層を挿入してもよい。
【0023】
また、正孔輸送層HTと陽極ANDとの間には、正孔注入層として、例えば銅フタロシアニン(CuPc)層又はアモルファスカーボン(α−C)層を挿入してもよい。電子輸送層ETと陰極CTDとの間には、電子注入層として、例えば弗化リチウム(LiF)層又は弗化セシウム(CsF)層と弗化リチウム層との積層体を挿入してもよい。
【0024】
有機EL素子OLEDと基板SUBとの間には、反射型回折格子DGRが介在している。反射型回折格子DGRは、反射層REFと、高屈折率格子層GHと、低屈折率層LLとを含んでいる。
【0025】
反射層REFは、基板SUB上に形成されている。反射層REFとしては、例えば、アルミニウム層及び銀層などの金属材料層を使用することができる。反射層REFとして、屈折率が異なる誘電体膜を重ねてなる多層膜を使用してもよい。
【0026】
高屈折率格子層GHは、パターニングされた光透過性層である。例えば、高屈折率格子層GHは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の光透過性部からなる。高屈折率格子層GHの屈折率は、典型的には、発光層EMTの屈折率と等しいか又はそれよりも大きい。高屈折率格子層GHの材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)、酸化チタン(TiO2)、ITO、IZO(indium zinc oxide)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などを使用することができる。
【0027】
高屈折率格子層GHは、例えば、反射層REF上に光透過性層を連続膜として形成し、これをパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、連続膜としての光透過性層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して光透過性層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0028】
低屈折率層LLは、反射層REFと高屈折率格子層GHとを被覆している。低屈折率層LLは、連続膜としての光透過性層である。低屈折率層LLは、高屈折率格子層GHと比較して屈折率がより小さい。典型的には、低屈折率層LLの屈折率は、発光層EMTの屈折率よりも小さい。低屈折率層LLの材料としては、例えば、酸化珪素(SiOx)、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。低屈折率層LLの材料に透明無機材料を使用した場合、例えば、CVD(chemical vapor deposition)により透明無機材料からなる層を形成し、その後、この層に対してCMP(chemical mechanical polishing)などの平坦化プロセスを実施することにより、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。低屈折率層LLの材料に透明樹脂を使用した場合、平坦化プロセスなしで、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。
【0029】
図2の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、高屈折率格子層GHを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図2の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
図3は、図1の装置に採用可能な構造の第2例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0031】
図3の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図3では、図2の高屈折率格子層GH及び反射層REFの代わりに、反射格子層GRを使用している。
【0032】
反射格子層GRは、基板SUB上に形成されている。反射格子層GRとしては、例えば、アルミニウム層及び銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0033】
反射格子層GRの上面には、凸パターンが形成されている。例えば、この凸パターンは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の凸部からなる。
【0034】
反射格子層GRの凸パターンは、例えば、金属材料層を連続膜として形成し、この表面をパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、金属材料層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して金属材料層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0035】
図3の構造を採用した場合も、図2の構造を採用した場合と同様、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、反射格子層GRの上面に凸パターンを形成しない場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図3の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0036】
図4は、図1の装置に採用可能な構造の第3例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0037】
図4の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図4では、高屈折率格子層GH及び低屈折率層LLを、有機EL素子OLEDと反射層REFとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。そして、反射層REFと高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとで反射型回折格子DGRを形成する代わりに、高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとで透過型回折格子DGTを形成している。
【0038】
なお、図4では、高屈折率格子層GHの開口部が低屈折率層LLに相当しており、これら開口部は空気などの気体で満たされているか又は真空である。低屈折率層LLの材料として、例えば、図2を参照しながら説明した材料を使用してもよい。
【0039】
図4の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図4の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0040】
図5は、図1の装置に採用可能な構造の第4例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0041】
図5の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図5の構造では、高屈折率格子層GH及び低屈折率層LLの代わりに、低屈折率格子層GL及び高屈折率層LHをそれぞれ使用している。
【0042】
低屈折率格子層GLは、パターニングされた光透過性層である。例えば、低屈折率格子層GLは、格子,例えば正方格子又は三角格子,の格子点に対応して配列した複数の光透過性部からなる。低屈折率格子層GHの屈折率は、典型的には、発光層EMTの屈折率よりも小さい。低屈折率格子層GHの材料としては、例えば、酸化珪素、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。
【0043】
低屈折率格子層GLは、例えば、反射層REF上に光透過性層を連続膜として形成し、これをパターニングすることにより得られる。このパターニングは、例えば、連続膜としての光透過性層上にマスクパターンを形成し、このマスクパターンをエッチングマスクとして利用して光透過性層をエッチングすることにより行う。マスクパターンは、例えば、フォトリソグラフィ又はナノインプリントを利用して形成することができる。
【0044】
高屈折率層LHは、反射層REFと低屈折率格子層GLとを被覆している。高屈折率層LHは、連続膜としての光透過性層である。高屈折率層LHは、低屈折率格子層GLと比較して屈折率がより大きい。典型的には、高屈折率層LHの屈折率は、発光層EMTの屈折率と等しいか又はそれよりも大きい。
【0045】
高屈折率層LHの材料としては、例えば、窒化珪素、酸化チタン、ITO、IZO、酸化ジルコニウムなどを使用することができる。高屈折率層LHの材料として、高屈折率微粒子を添加した透明樹脂を使用してもよい。高屈折率微粒子としては、例えば、酸化チタン微粒子及び酸化ジルコニウム微粒子を使用することができる。透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂などを使用することができる。高屈折率層LHの材料に透明無機材料を使用した場合、例えば、CVDにより透明無機材料からなる層を形成し、その後、この層に対してCMPなどの平坦化プロセスを実施することにより、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。高屈折率層LHの材料に高屈折率微粒子を添加した透明樹脂を使用した場合、平坦化プロセスなしで、反射型回折格子DGRの上面を平坦化することができる。
【0046】
図5の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図5の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0047】
図6は、図1の装置に採用可能な構造の第5例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0048】
図6の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図6の構造では、高屈折率層LHを省略している。
【0049】
低屈折率格子層GLは、凸パターンを形成している。そのため、高屈折率層LHを省略すると、有機EL素子OLEDは、凸パターンが形成された表面上に形成される。それゆえ、凸パターンの開口部は、例えば、有機EL素子OLEDの一部で埋め込まれる。図6では、一例として、凸パターンの開口部は、例えば、陽極ANDと正孔輸送層HTとからなる光透過層LH’で埋め込まれている。図6の構造では、この光透過層LH’が、図5の高屈折率層LHと同様の役割を果たす。
【0050】
なお、図6では、正孔輸送層HTの上面には、低屈折率格子層GLが形成する凸パターンに対応した凸パターンが形成されている。塗布法によって正孔輸送層HTを形成する場合,例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの正孔輸送材料を含んだ塗工液を用いて正孔輸送層HTを形成する場合,には、正孔輸送層HTの上面に凸パターンが生じるのを防止又は抑制できる。また、蒸着法によって正孔輸送層HTを形成する場合,例えばN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)又はN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)などの正孔輸送材料を蒸着して正孔輸送層HTを形成する場合には、蒸着による成膜の後に、リフロー(或いはアニール)を行うと、正孔輸送層HTの上面に凸パターンが生じるのを防止又は抑制できる。
【0051】
図6の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図6の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0052】
図7は、図1の装置に採用可能な構造の第6例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が上面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0053】
図7の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図7では、低屈折率格子層GL及び高屈折率層LHを、有機EL素子OLEDと反射層REFとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。そして、反射層REFと低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとで反射型回折格子DGRを形成する代わりに、低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとで透過型回折格子DGTを形成している。
【0054】
図7の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図7の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0055】
図8は、図1の装置に採用可能な構造の第7例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0056】
図8の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図8では、図2の反射層REFを省略しており、高屈折率格子層GHと低屈折率層LLとは透過型回折格子DGTを形成している。また、図8の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。なお、この表示装置は下面発光型であるので、陽極ANDは前面電極であり、陰極CTDは背面電極である。
【0057】
図8の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図8の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0058】
図9は、図1の装置に採用可能な構造の第8例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0059】
図9の構造は、以下を除いて図2の構造と同様である。すなわち、図9では、反射型回折格子DGRを基板SUBと有機EL素子OLEDとの間に配置する代わりに、有機EL素子OLED上に配置している。なお、図9の構造では、図4に示す構造と同様に、低屈折率層LLを省略してもよい。
【0060】
図9の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、高屈折率格子層GHを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図9の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0061】
図10は、図1の装置に採用可能な構造の第9例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0062】
図10の構造は、以下を除いて図5の構造と同様である。すなわち、図10では、図5の反射層REFを省略しており、低屈折率格子層GLと高屈折率層LHとは透過型回折格子DGTを形成している。また、図10の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0063】
図10の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図10の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0064】
図11は、図1の装置に採用可能な構造の第10例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0065】
図11の構造は、以下を除いて図6の構造と同様である。すなわち、図11では、図6の反射層REFを省略しており、低屈折率格子層GLと光透過層LH’とは透過型回折格子DGTを形成している。また、図11の構造において、陰極CTDは光反射性である。陰極CTDとしては、例えば、アルミニウム層や銀層などの金属材料層を使用することができる。
【0066】
図11の構造を採用した場合、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、透過型回折格子DGTによって回折する。それゆえ、透過型回折格子DGTを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図10の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0067】
図12は、図1の装置に採用可能な構造の第11例を概略的に示す断面図である。この構造は、図1の表示装置が下面発光型である場合に採用可能な構造である。
【0068】
図12の構造は、以下を除いて図7の構造と同様である。すなわち、図12では、反射層REFを、基板SUBと有機EL素子OLEDとの間に配置する代わりに、高屈折率層LH上に配置している。
【0069】
図12の構造を採用すると、発光層EMTが放出する光のうち、有機EL素子OLED内で繰り返し反射干渉しながら面内方向に伝播する光成分の一部は、反射型回折格子DGRによって回折する。それゆえ、低屈折率格子層GLを省略した場合と比較して、より多くの光成分を有機EL素子OLEDの前面側に放出させることができる。すなわち、図12の構造を採用すると、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0070】
以上、表示装置に図1の構造を採用したが、表示装置には他の構造を採用してもよい。例えば、図1の表示装置には、画素PXに映像信号として電流信号を書き込む構造を採用しているが、画素PXに映像信号として電圧信号を書き込む構造を採用してもよい。また、本態様では、発光装置を表示装置に適用したが、発光装置を照明装置などの他の装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
AND…陽極、C…キャパシタ、CTD…陰極、DGR…反射型回折格子、DGT…透過型回折格子、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DR…駆動トランジスタ、EMT…発光層、ET…電子輸送層、GH…高屈折率格子層、GL…低屈折率格子層、HT…正孔輸送層、L1…第1層、L2…第2層、LH…高屈折率層、LH’…光透過層、LL…低屈折率層、ND1…電源端子、ND2…電源端子、OLED…有機EL素子、ORG…有機物層、PSL…電源線、PX…画素、REF…反射層、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SUB…絶縁基板、SWa…出力制御スイッチ、SWb…選択用スイッチ、SWc…ダイオード接続スイッチ、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に位置し、前面電極と背面電極とそれらの間に介在すると共に発光層を含んだ有機物層とを備えた有機EL素子と、
前記有機EL素子を間に挟んで前記基板と向き合い、格子の格子点に対応して配列した複数の光透過性部を含んだ格子層と、前記格子層を被覆して前記複数の光透過性部間の隙間を埋め込んだ光透過性層とを備えた回折格子とを具備したことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記格子層は前記光透過性層と比較して屈折率がより高いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記格子層は前記光透過性層と比較して屈折率がより低いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記回折格子は、前記格子層及び前記光透過性層を間に挟んで前記有機EL素子と向き合った反射層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に位置し、前面電極と背面電極とそれらの間に介在すると共に発光層を含んだ有機物層とを備えた有機EL素子と、
前記有機EL素子を間に挟んで前記基板と向き合い、格子の格子点に対応して配列した複数の光透過性部を含んだ格子層と、前記格子層を被覆して前記複数の光透過性部間の隙間を埋め込んだ光透過性層とを備えた回折格子とを具備したことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記格子層は前記光透過性層と比較して屈折率がより高いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記格子層は前記光透過性層と比較して屈折率がより低いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記回折格子は、前記格子層及び前記光透過性層を間に挟んで前記有機EL素子と向き合った反射層を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−109262(P2012−109262A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17071(P2012−17071)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2006−84073(P2006−84073)の分割
【原出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2006−84073(P2006−84073)の分割
【原出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】
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