説明

発光装置

【課題】光取出し効率を向上させる。
【解決手段】透明基板4dと発光層4bを備えた発光素子4を有する発光装置10が開示されている。発光装置10では、透明基板4dと発光層4bの側面4eとが、発光層4bおよび透明基板4dの側面か4e,4gから出た光を上面6aから出射させる光取出し層6で被覆され、光取出し層6の屈折率が発光層4bの屈折率より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光装置に関し、特に光取出し効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子などの発光素子を有する発光装置の開発が盛んにおこなわれており、次世代ディスプレイ分野や次世代照明分野の技術躍進がめざましい発展を遂げている。このような発光装置では光取出し効率の向上が最も重要な課題となっている。すなわち、発光素子中で発光した光は他の媒質との界面で反射して、発光素子の側面から透光したり、発光素子の側面でさらに反射して素子内部に閉じ込められたりし、発光素子の正面から光を取り出そうとしてもその効率がなかなか向上しないという課題がある。
【0003】
光取出し効率を向上させる技術が、たとえば、特許文献1に開示されている。
特許文献1の技術では、有機EL素子(有機EL層101)同士を分離するための素子分離層(104)に周期構造(300)を形成し、その周期構造による光の回折現象を利用して光の伝播方向を曲げ、光取出し効率の向上をはかっている(段落0020〜0024,図1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−44117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、素子分離層の表面に周期構造を形成するといった複雑な構成を必要とするとともに、周期構造により取り出された光は発光素子の正面ではなく発光素子から離れる方向に向かう光となってしまう。
したがって、本発明の主な目的は、発光素子の側面内面で光が反射するのを抑制するとともに側面から出た光を正面側より取り出すことで、光取出し効率を向上させることができる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明によれば、
透明基板と発光層を備えた発光素子を有する発光装置において、
前記透明基板と前記発光層の側面とが、前記発光層および前記透明基板の側面から出た光を上面から出射させる光取出し層で被覆され、
前記光取出し層の屈折率が前記発光層の屈折率より低いことを特徴とする発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、発光素子(発光層)の側面が、発光層より屈折率の低い光取出し層で被覆されているから、発光素子の側面から透光したりその側面で反射したりするのが抑制され、光取出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発光装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の発光装置において光取出し層がない場合の光の概略的な伝播を説明するための図面である。
【図3】図1の発光装置において光取出し層を形成した場合の光の概略的な伝播を説明するための図面である。
【図4】図1の変形例を示す断面図である。
【図5】図1および図4のような各発光装置を設計した場合に、光取出し効率を概略的にシミュレーションした結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すとおり、本発明の好ましい実施形態で使用される発光装置10は、支持基板2上に発光素子4が形成され、発光素子4が光取出し層6で被覆された構成を有している。
【0011】
発光素子4はいわゆる有機EL素子であり、金属製陰極4a(仕事関数の小さいMg,Ca,Alおよびこれらの化合物など)、発光層4bおよび透明電極4c(ITO)を有し、これら部材が透明基板4d上に形成された構成を有している。
発光素子4では、発光層4bが金属製陰極4aと透明電極4cとの間に挟まれている。発光層4bに用いられる材料として、たとえば特開平8−311442号公報に記載のナフタセンまたはペンタセン誘導体を発光層に添加した赤色発光素子が挙げられる。また、発光材料としてトリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が、青色から赤色までの可視領域の発光材料として挙げられ、特に青色発光材料としてフェニルアントラセン誘導体を用いた素子が開示されている。更に特開2001−160489号にはアザフルオランテ化合物を黄色から緑色発光層に用いることが開示されている。白色発光材料としては、スチリルアミン系発光材料,アントラセン系ドーパミント(青色)、或いはスチリルアミン系発光材料,ルブレン系ドーパミント(黄色)が用いられる。
透明基板4dはガラスなどで構成されており、透明基板4dの屈折率(n2)は発光層4bの屈折率(n1)より低くなっている。
【0012】
なお、発光素子4は有機EL素子以外の公知の発光素子から構成されてもよく、たとえば、いわゆるLED素子から構成されてもよい。
【0013】
光取出し層6は透明な樹脂やガラスなどで構成された薄膜であり、発光層4bの側面4eと透明基板4dの上面4fおよび側面4gとを被覆している。光取出し層6の厚さは各部において均一となっている。
【0014】
発光素子4の発光層4bと透明基板4dとの各厚さを足し合わせた厚さを「D」と、光取出し層6の厚さを「d」とした場合に、これら厚さD,dの間には式(1)の条件が成立している。
0.03≦d/D≦0.5 … (1)
式(1)の条件を満足することで、光取出し効率を向上させることができる。
さらに、発光素子4の発光層4bの屈折率をn1と、発光素子4の透明基板4dの屈折率をn2と、光取出し層6の屈折率をn3とした場合に、これら屈折率n1,n2,n3の間には、式(2)および式(3)の両条件が成立している。
n3<n2<n1 … (2)
1.45<n3<1.8 … (3)
式(2)、(3)の条件を満足することで、発光層4bから光取出し層6の外部に光を効率良く取り出すことが出来る。
【0015】
以上の発光装置10によれば、発光素子4の発光層4bで発光した光が発光層4bの側面4eや透明基板4dの側面4gで反射するのが抑制され、光取出し効率を向上させることができる。
すなわち、図2に示すとおり、光取出し層6を形成しない場合には、発光素子4の発光層4bで発光した光の一部は、発光層4bや透明基板4dの内部で全反射して側面の方に導光し、発光層4bの側面4eや透明基板4dの側面4gで全反射され発光層4bやガラス基板4dの内部に閉じ込められる。これに対し、図3に示すとおり、発光素子4bの側面4eと透明基板4dとを、特殊な光取出し層6(発光層4bより屈折率が低い光取出し層6であって、特に式(1)〜(3)の条件を満たす光取出し層6)で被覆した場合には、発光層4bや透明基板4dと光取出し層6との界面で全反射しにくくなるため、発光素子4の発光層4bで発光して発光層4bやガラス基板4dの内部に閉じ込められていた光の一部は、光取出し層6に侵入して側面6bで1回全反射され、光取出し層6中を伝播して上面6a(光取出し面)から出射される。
このように光取出し層6の側面6bで全反射した光のうち再び発光層4bまたは透明基板4dに戻ることなしに上面6aから出射する光や発光層4bから光取出し層6に侵入して直接上面6aに到達して上面6aから出射する光を多くすることで発光素子4の上面6aから取り出せる光の量を多くすることができる。このためには、光取出し層6は、発光層4bの側面4eから出た光を側面6bで1回全反射した光のうち少なくとも一部の光を直接光取出し層6の上面6aに導くことができる厚みを有する必要がある。光取出し層6の厚さdは、光取出し層6の厚さdと、発光層4bと透明基板4dの合計の厚さDとの比をd/Dとしたとき、d/Dが0.03よりも大きくなるような厚さとすることが望ましい。このようにすることで、発光層4bの側面4eから出た光を側面6bで1回全反射した光のうち少なくとも一部の光を直接光取出し層6の上面6aに導くことができるようになり発光素子4の上面6aから取り出せる光の量を多くすることができる。
以上から、発光装置10によれば、光取出し効率を向上させることができる。
【0016】
なお、発光装置10では、図4に示すとおり、光取出し層6の上面6aと側面6bとが交差する稜線部には、円柱状の突出部6cが形成されてもよい。
この場合、突出部6cは、光取出し層6を平面視したときに、4つの稜線部すべて(4辺すべて)に形成される。図4では、2つの突出部6cは紙面の表側から裏側に向けて(または裏側から表側に向けて)延在している。
突出部6cを断面視した場合の半径rは、好ましくは光取出し層6の厚さdの2倍である。
【実施例】
【0017】
図1(および図4)と同様の構成を有する発光装置を設計し、当該発光装置における光取出し効率を算出(シミュレーション)した。
発光層として、上方から見た形状(平面形状)が正方形で一辺が1mmのサイズの発光素子を想定した。発光素子中の発光層の厚さは1μmと、発光素子中の透明基板の厚さは0.1mmとした。発光素子中の発光層の屈折率(n1)、発光素子中の透明基板の屈折率(n2)およびこれらを被覆する光取出し層の屈折率(n3)をそれぞれ、n1=1.75,n2=1.52,n3=1.46とした。
併せて、図4と同様の構成を有する発光装置も設計した。当該発光装置では、発光素子を被覆する光取出し層の稜線部に対し円柱状の突起部を形成し、その半径を光取出し層の膜厚の2倍とした(これ以外の条件は上記と同様とした。)。
【0018】
シミュレーション結果を図5に示す。図5中、横軸は光取出し層の厚さ「d」と発光層と透明基板との各厚さを足し合わせた厚さ「D」との比「d/D」を、縦軸は光取出し層が設けられていないLED素子からの出射光量を1とし、光取り出し層を設けた場合の出射光量(光取出し量)を、それぞれ示している。
図5からわかるように、光取出し層の膜厚が大きくなるほど、光取出し効率が高くなっている。一般的に出射光量が5%向上すれば、光取出し効率が十分に高いと言える。図5のシミュレーション結果によれば、出射光量が5%向上するときd/Dは約0.03である。ただし、光取出し層の膜厚が過大であると当該光取出し層にクラックや割れが発生しやすいため、光取出し層の膜厚dとDの比d/Dは0.5以下であることが望ましい。したがって、光取出し層の膜厚dとDの比は望ましくはd/D=0.03〜0.5である。
【0019】
以上から、上記の条件を満たす場合に、出射光量が5%向上して光取出し効率が向上することがわかる。
さらに、光取出し層の稜線部に対し突出部を形成した場合に、出射光量が飛躍的に向上していることから、光取出し効率を向上させる上では、上記の条件に加えて突出部を形成することも有用であることがわかる。
【符号の説明】
【0020】
2 支持基板
4 発光素子
4a 金属製陰極
4b 発光層
4c 透明電極
4d 透明基板
4e 側面
4f 上面
4g 側面
6 光取出し層
6a 上面(光取出し面)
6b 側面
6c 突出部
10 発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と発光層を備えた発光素子を有する発光装置において、
前記透明基板と前記発光層の側面とが、前記発光層および前記透明基板の側面から出た光を上面から出射させる光取出し層で被覆され、
前記光取出し層の屈折率が前記発光層の屈折率より低いことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記透明基板は前記発光層の上面側に位置し、
前記光取出し層は、前記発光層の側面から出た光が前記光取出し層の側面で1回全反射した光の少なくとも一部の光を直接光取出し層の上面に導く厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記透明基板は前記発光層の上面側に位置するとともに、
前記光取出し層は、前記透明基板の上面および側面と前記発光層の側面とを被覆し、
前記透明基板と前記発光層との各厚さを足し合わせた厚さをDと、前記光取出し層の厚さをdとした場合に、式(1)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
0.03≦d/D≦0.5 … (1)
【請求項4】
前記発光層の屈折率をn1と、前記透明基板の屈折率をn2と、前記光取出し層の屈折率をn3とした場合に、式(2)および式(3)の両条件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置。
n3<n2<n1 … (2)
1.45<n3<1.8 … (3)
【請求項5】
前記光取出し層の光取出し面と側面とが交差する稜線部には円柱状の突出部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−119191(P2012−119191A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268640(P2010−268640)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】