説明

発振停止検出回路

【課題】保護継電器や監視制御機器の発振回路が停止したときに、発振停止検出回路を安価に構築する。
【解決手段】本発明の発振停止検出回路は、発振回路がクロックの供給の停止を検出するために、クロック信号の変化を検出する微分回路と、微分回路からの信号を立ち上がりに限定するダイオードと、前記出力信号を整形する、パルス整形回路とインバータ回路と、充放電回路と、充放電回路の出力電圧レベルと所定の基準値を比較して、基準値を超えたときに信号出力をすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンピュータや各種半導体の制御システムにおいて使用される、水晶発信器等の発振回路が正常に動作しているかどうかを監視する発振停止検出回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保護継電器、計測器、監視制御機器などの電子機器において、発振回路が何らかの原因でクロックの供給が停止した場合、このクロックをもとに動作を行っていたマイクロコンピュータ等を使用している各種電子機器は、動作が停止してデッドロック状態となる。このとき、誰かがその場所の近くで作業をしている場合や、その機器を使用している場合には、何らかのシステムの不具合が発生していることがわかるが、電子機器の設置環境によっては、動作が停止していることが、わからないまま運用され続ける可能性がある。この電子機器が何らかの制御を行っている場合は、その制御が全く実施されていないことになる。又、各種データを収集解析している場合、データの収集も行われないというように、本来の機器としての役割を果たせなくなる。
【0003】
そこで、発振回路からクロックの供給が停止した場合、いち早く外部に通知する機能が必要になる。クロックの停止を検出する従来技術としては、予め定めた時間周期内でクロックエッジの有無を監視し、予め定めた時間周期内でクロックエッジが1つも検出されなかった場合にクロックの停止と判断しアラームを出力し、予め定めた時間周期内に1つでもクロックエッジが検出された場合にアラームを解除する方法である。しかしながら、この場合は、別のハードウェアを購入する必要があることから装置の値段があがることにつながる。そこで、特に別のハードウェアを購入するのでなく、廉価な部品でこの機能を実現するために、いくつかの発振停止検出回路が提案されている。
【0004】
特許文献1の水晶発信器の発振停止検出回路は、水晶発振器の出力に積分回路を接続することにより、外部制御回路の発振器の応答待ちの原因となる発振器の異常判定が可能となり、不要な応答待ちを防止できるようになる。
【0005】
しかしながら、上記発振停止検出回路では、発振回路が、前記クロックCLKをハイレベルで発振を停止したときには、発振停止が検出されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−274856号公報
【特許文献2】特開2008−16958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の発振停止回路は、発振回路から入力されたクロックの微分信号を出力する微分回路と、前記微分信号を波形整形してパルス信号を出力するパルス整形回路と、前記パルス信号の周期に基づいて、前記発振回路の発振停止を検出するパルス検出回路とを設けることにより、前記課題を解決している。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2では、電源投入時などのように、発振回路が初動するまでの間、すなわち発振回路が発振出力を初動するまでの間IS信号が“L”を超えるまでの期間、不要な発振停止検出を行う可能性がある。つまり、電源投入直後はIS(d)信号が、“L”よりも低い位置にある。IS(d)とCSに同時に電源が印加され、IS(d)にはC2が接続されている分、CSの方が早く反応し、不要な発信停止検出を行う可能性がある。本発明の目的は、電源立ち上げ時等に不要な発振停止信号の出力を行わない発振停止検出回路を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電源投入時などの発振回路が発振出力を初動するまでの間も不要な発振検出を行うことがないように、本発明に係わる発振停止検出回路は、発振回路から、入力されたクロックの信号を微分する微分回路と、微分回路からの微分信号を整えるパルス整形回路と、パルス整形回路からの第1パルス信号を、論理反転して、第2パルス信号を出力するインバータ回路と、第2のパルスに基づき充電を行う積分回路と、第2のパルス信号に基づき積分回路に充電された電荷を、充電時間よりも早く放電する放電回路と、前記積分回路の出力が所定の検出レベルを超えると、検出信号を出力するレベル検出回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の発振停止回路は、発振回路から、入力されたクロックの信号を微分する微分回路と、微分回路からの微分信号を整えるパルス整形回路と、パルス整形回路からの第1パルス信号を、論理反転して、第2パルス信号を出力するインバータ回路と、前記第2のパルス信号に基づき充電を行う積分回路と、前記微分信号に基づき積分回路に充電された電荷を、充電時間よりも早く放電する放電回路と、前記積分回路の出力が所定の検出レベルを超えると、検出信号を出力するレベル検出回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源投入時などの発振回路が発振出力を初動するまでの間、不要な発振停止検出を行うことがなく、ハイレベルやローレベルで発振停止した場合でも、確実に発信停止を検出して、外部に通知することのできるので、システムの信頼性を向上させることができる。さらに本発明によれば、基板上に別の検出用ハードウェアが不要となることから、コストおよび基板実装面積を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、今回発明の第1の実施例の構成図
【図2】図2は、今回発明の第1の実施例の波形図
【図3】図3は、今回発明の第2の実施例の構成図
【図4】図4は、今回発明の第2の実施例の波形図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
図1、図2、を用いて本発明の発振停止回路の第1の実施例を説明する。水晶発振器等の発振回路より出力するクロック(CLK)は、入力バッファを介して、微分回路に入力される。微分回路は、本実施例ではコンデンサC1と抵抗R1を用いるCR回路で構成している。クロック(CLK)信号は、微分回路で微分され、図2に示される微分信号Aを出力する。微分回路の出力はダイオードD1のカソード側に接続され、ダイオードD1のアノード側は接地されている。このダイオードD1の機能により、微分波形の立ち上がり側だけを検出した、図2に示される微分信号Bの出力が得られる。微分信号Bは、次にパルス整形回路に入力されて、図2に示されるような第1のパルス信号Cを出力する。第1のパルス信号Cは、インバータ回路に入力され、第2のパルス信号Dが出力される。パルス整形回路や、インバータ回路は、例えば、CMOS回路で構成することができる(図示せず)。
【0014】
第2のパルス信号Dは、充放電回路に入力される。充放電回路は、第2のパルス信号Dがハイレベル“H”出力時には、コンデンサC2に充電し、第2のパルス信号Dがローレベル“L”のとき、放電を行う。つまり、図2に示すような、充放電を繰り返す電圧Eが出力される。充電回路は、抵抗R2とコンデンサC2による積分回路で構成され、放電回路は、抵抗R3とダイオードD2で構成している。このように、放電回路を構成することにより、構成されてない場合と比較して、放電時間が短くでき、発振停止の検出時間を調整することができるようにしている。
【0015】
レベル検出回路には、コンデンサに充放電される電圧Eを入力する。レベル検出回路は、図2に、S地点に示すように、CLKの立ち上がりがなくなった場合は、E点でのコンデンサの電荷が充電される。すなわち電圧Eの値が徐々に上昇していく。この電圧Eを所定の検出レベルと比較して、電圧Eが所定レベルを超えた場合に、CLKが停止したと判断し、検出信号Fを外部に出力する。逆にCLKの立下りがなくなった場合は、微分回路のRC時定数によりA点の電圧が徐々に低下する。即ちA点は、“L”レベルとなり、B点、C点も同様に“L”レベルになりD点では、“H”レベルとなり、E点でのコンデンサの電荷が充電される。すなわち電圧Eの値が徐々に上昇していく。この電圧Eを所定の検出レベルと比較して、電圧Eが所定レベルを超えた場合に、CLKが停止したと判断し、検出信号Fを外部に出力する。また、電源投入時などの、発振回路がCLKを初動するまでの間は、コンデンサに充放電された電圧Eの初期状態が、所定の検出レベルより低いため、不要な発振停止検出を行うことはない。
【0016】
図3、図4、を用いて本発明の発振停止回路の第2の実施例を説明する。水晶発振器等の発振回路より出力するクロック(CLK)は、入力バッファを介して、微分回路に入力される。微分回路は、本実施例ではコンデンサC1と抵抗R1を用いるCR回路で構成している。クロック(CLK)信号は、微分回路で微分され、図4に示される微分信号Aを出力する。微分回路の出力はダイオードD1のカソード側に接続され、ダイオードD1のアノード側は接地されている。このダイオードD1の機能により、微分波形の立ち上がり側だけを検出した、図4に示される微分信号Bの出力が得られる。微分信号Bは、次にパルス整形回路に入力されて、図4に示されるような第1のパルス信号Cを出力する。第1のパルス信号Cは、インバータ回路に入力され、第2のパルス信号Dが出力される。パルス整形回路や、インバータ回路は、例えば、CMOS回路で構成することができる。また、パルス整形回路と、インバータ回路は直列に接続されている。
【0017】
第2のパルス信号Dは、充放電回路に入力される。充放電回路の充電回路は、本実施例では、抵抗R2とコンデンサC2による積分回路で構成され、放電回路は、NPNトランジスタで構成し、微分回路の出力をベースに接続し、エミッタを接地し、パルス整形回路とインバータ回路の直列接続の出力、すなわち積分回路の入力をコレクタに接続することにより放電回路を構成している。このように、放電回路を構成することにより、構成されてない場合と比較して、放電時間が短くでき、発振停止の検出時間を調整することができるようにしている。
【0018】
充放電回路は、第2のパルス信号Dがハイレベル“H”出力時には、コンデンサC2に充電し、微分回路の出力があるときは、放電を行う。CLKの立ち上がりがない場合は、コンデンサC2に充電が続くので、電圧Eのレベルが上昇する。この電圧Eを所定の検出レベルと比較して、所定レベルを超えた場合に、CLKが停止したと判断し、検出信号Fを外部に出力する。逆にCLKの立下りがなくなった場合は、微分回路のRC時定数によりA点の電圧が徐々に低下する。即ちA点は、“L”レベルとなり、B点、C点も同様に“L”レベルになり、D点では、“H”レベルとなるので、E点でのコンデンサの電荷が充電される。すなわち電圧Eの値が徐々に上昇していく。この電圧Eを所定の検出レベルと比較して、電圧Eが所定レベルを超えた場合に、CLKが停止したと判断し、検出信号Fを外部に出力する。電源投入時などの、発振回路がCLKを初動するまでの間は、コンデンサに充放電された電圧Eの初期状態が、所定の検出レベルより低いため、不要な発振停止検出を行うことはない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、たとえば、保護継電器や監視制御装置などの、電子機器の発振停止検出回路に適応できる。
【符号の説明】
【0020】
1 入力バッファ
2 微分回路
3 パルス整形回路
4 インバータ回路
5 充放電回路
6 レベル検出回路
C1,C2 コンデンサ
R1,R2,R3 抵抗
D1,D2 ダイオード
Tr トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信器からのクロックパルスを微分して微分信号を出力する微分回路と、前記微分回路の出力段にカソード側をアースに、アノード側を接続したダイオードと、前記微分信号をパルス整形して第1のパルス信号を出力するパルス整形回路と、前記第1のパルス信号を反転して第2のパルス信号を出力するインバータ回路と、前記第2のパルス信号がハイレベルのときに充電を行い、前記第2のパルス信号がローレベルのときに放電を行う充放電回路と、前記充放電回路からの出力信号が所定の検出レベルを超えたときに、発振停止の検出信号を出力するレベル検出回路を備えたことを特徴とする発振停止検出回路。
【請求項2】
発信器からのクロックパルスを微分して微分信号を出力する微分回路と、前記微分回路の出力段にカソード側をアースに、アノード側を接続したダイオードと、前記微分信号をパルス整形して第1のパルス信号を出力するパルス整形回路と、前記第1のパルス信号を反転して第2のパルス信号を出力するインバータ回路と、前記第2のパルス信号がハイレベルのときに充電を行い、前記微分信号に基づき放電を行う充放電回路と、前記充放電回路からの出力信号が所定の検出レベルを超えたときに、発振停止の検出信号を出力するレベル検出回路を備えたことを特徴とする発振停止検出回路。
【請求項3】
前記充放電回路は、前記第2のパルスに基づき充電される充電回路と、前記第2のパルス信号に基づき充電された電荷を、充電時間よりも早く放電する放電回路を備えることを特徴とする請求項1または、請求項2記載の発振停止検出回路

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate