発振回路及び周波数補正型発振回路
【課題】圧電発振器の周波数変動(温度特性や経時変化)を、精度よく補正することを可
能とする発振回路を提供する。
【解決手段】この発振回路30は、水晶振動子(振動素子)1を含み発振信号8を出力す
る発振器(発振手段)2と、発振信号8の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換器
(F/V変換手段)4と、発振信号8の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶す
るメモリー(記憶手段)6と、をICパッケージ15に一体化したものである。そして、
ICパッケージには、発振出力端子8、周波数偏差電圧出力端子(F/V変換器出力端子
)12、メモリー出力端子9、11及び水晶振動子端子を備える。
能とする発振回路を提供する。
【解決手段】この発振回路30は、水晶振動子(振動素子)1を含み発振信号8を出力す
る発振器(発振手段)2と、発振信号8の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換器
(F/V変換手段)4と、発振信号8の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶す
るメモリー(記憶手段)6と、をICパッケージ15に一体化したものである。そして、
ICパッケージには、発振出力端子8、周波数偏差電圧出力端子(F/V変換器出力端子
)12、メモリー出力端子9、11及び水晶振動子端子を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路、及び周波数補正型発振回路に関し、さらに詳しくは、温度変化に
対してヒステリシス特性を持つ温度特性による精度誤差を改善するための回路構成に関す
るものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子を用いた圧電発振器の周波数は、AT振動子であれば3次カーブの温度特性
を持つが、これを例えば、携帯端末用GPSシステム等のシステム側で補正し、使用する
方法がある。例えば、特許文献1には、圧電発振器を構成するIC内に備えたメモリーに
、圧電発振器の周波数温度特性に関する情報を記憶させ、且つ温度情報を出力する機能を
有する圧電発振器について開示されている。また、特許文献2には、システム側で温度情
報を基に周波数を補正する内容が開示されている。
この様な温度センサー出力付き水晶発振器(TSXO:Temperature Sensing Xtal Osc
illator)は、ある環境温度において、温度検出データおよび発振周波数を出力する機能
があり、内部メモリーに任意の温度における温度検出データ(例えば温度センサー電圧、
温度係数)、および発振周波数を格納する機能も兼ね備えている。この内部メモリーに保
存しているデータは、製造検査工程時に温度を変化させながら複数の温度点で測定した周
波数や温度情報に関するデータである。また、厚みすべり振動を利用したATカット水晶
振動子を使用する場合、発振器の周波数は温度に対して正の3次曲線を描く。
上記システム側(例えば携帯端末用GPSシステム)は、この情報を元に、メモリー内
の情報を用いて温度(温度センサー電圧)と発振周波数の関係を導き出し、通常動作にお
いては、温度出力情報と発振器の出力周波数を検出し、その温度における基準周波数(例
えば25℃の周波数)に対する周波数偏差を予測し、周波数の補正量を決定する。このよ
うにして、どの温度においても周波数が一定となるように周波数補正をかけたり、又はソ
フト的に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−324318公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0071728号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで特許文献1に開示されている様に、発振回路、温度センサー、メモリー等で構成
されるICと、水晶振動子とを接続してなる圧電発振器においては、本来温度(温度セン
サー電圧)に対し、圧電発振器の周波数は1対1という前提でなされているものである。
一例であるが図6は温度センサー電圧の温度特性であり、温度変化に対して温度センサー
電圧が略直線的に変化する特性を有する。この温度は温度センサーを備えている半導体の
温度であり、厳密には水晶振動子の温度との差が生じ、それは発振器の構造によっても影
響される。また、図7に理想的な圧電発振器の周波数温度特性を示すが、実際には昇温時
の特性と降温時の特性が微妙に異なる特性を示す場合がある(これをヒステリシス特性と
呼ぶ)。
即ち、水晶振動子の温度特性には、図8に示すように、昇温時の特性53と降温時の特
性54で特性が異なるヒステリシス特性を持つものがあり、この場合、温度に対し2つの
周波数を持つことになり、これが精度誤差として現れてしまう。言い換えれば、温度セン
サー電圧と圧電発振器の周波数が完全な1対1の関係にない状態と言える。
従って、携帯端末用GPSシステムなど精度が要求されるものには、このヒステリシス
特性の改善が求められるが、これは水晶振動子の構造や、水晶振動子のパッケージへの実
装方法などの検討が必要となり、且つ、その安定した生産性も求められるため、簡単に対
応できるものではなかった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、温度センサー電圧の代わりに、発
振周波数に対応した電圧を発生するF/V変換器を介して周波数偏差に追随した電圧を出
力する。この電圧は発振周波数の変化に対して1対1の関係であり、これにより温度セン
サー電圧の取得を不要とし、発振周波数の変化を電圧情報として得ることが可能となる。
この出力電圧をシステム側に入力することにより、発振周波数の偏差を精度よく補正する
ことを実現した発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、前記発振信号の周波数に
対応した電圧に変換するF/V変換手段と、前記発振信号の周波数を補正するための周波
数補正情報等を記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振器の周
波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を対応付
けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時で温度
特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、周波数もそれに基づいて変化す
るため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサ
ーの代わりに、周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段を備え、その出力電圧を
周波数偏差電圧とする。これにより、周波数偏差電圧と圧電発振器の周波数を1対1に対
応付けることができる。
【0008】
[適用例2]前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周
した信号を前記F/V変換手段へ出力するように構成したことを特徴とする。
【0009】
発振信号の周波数が高い場合、その周波数に追従できるF/V変換手段を選択する必要
がある。しかし、使用周波数が高いF/V変換手段は、必然的に部品コストが高くなり、
また、周波数が高くなると消費電力も増大する。そこで本発明では、発振信号の周波数を
分周する分周手段を備え、分周手段により分周した信号をF/V変換手段により変換する
。これにより、発振周波数が高い場合でも、安価なF/V変換手段を使用することができ
、且つ発振回路の消費電力を低減することができる。
【0010】
[適用例3]前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを
特徴とする。
【0011】
F/V変換手段は、変換可能な上限周波数が規定されている。従って、発振周波数によ
り分周手段の分周比をいくつに設定するかを決める必要がある。そこで本発明では、分周
手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備える。これにより、発振周波数によ
り最適な分周比を任意に設定することができる。
【0012】
[適用例4]前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周し
た信号の何れか一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
発振周波数の周波数範囲を広く設定できる発振回路の場合、発振周波数によっては周波
数を分周する場合と分周しない場合の2通りがある。この場合、回路的には分周手段を備
えておき、分周手段を使用するか否かを任意に切り替える構成が必要である。そこで本発
明では、F/V変換手段の入力に発振信号又は分周手段により分周した信号の何れか一方
を供給する切替手段を備える。これにより、簡単な操作で広い発振周波数に対応した発振
回路を提供することができる。
【0014】
[適用例5]振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、前記発振信号の周波数に
対応した電圧に変換するF/V変換手段と、前記発振信号の周波数を補正するための周波
数補正情報を記憶する記憶手段と、前記F/V変換手段の出力電圧と前記周波数補正情報
に基づき、前記発振信号の周波数を補正する周波数補正回路と、を備えたことを特徴とす
る。
【0015】
従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振器の周
波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を対応付
けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時で温度
特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、周波数もそれに基づいて変化す
るため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサ
ーの代わりに、周波数に対応する電圧を発生するF/V変換手段を備え、その出力電圧を
周波数偏差電圧として出力して、その電圧と周波数補正情報に基づいて発振信号の周波数
を補正する。これにより、周波数偏差電圧と圧電発振器の周波数を1対1に対応付けて発
振信号の周波数を補正することができる。
【0016】
[適用例6]前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周
した信号を前記F/V変換手段へ出力するように構成したことを特徴とする。
【0017】
適用例2と同様の作用効果を奏する。
【0018】
[適用例7]前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを
特徴とする。
【0019】
適用例3と同様の作用効果を奏する。
【0020】
[適用例8]前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周し
た信号の何れか一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
適用例4と同様の作用効果を奏する。
【0022】
[適用例9]前記周波数補正情報は、前記発振信号の周波数温度特性を補償するための
温度補償情報であることを特徴とする。
【0023】
記憶手段には、ヒステリシス特性の影響を受けて現れた発振信号の2つの周波数温度特
性に囲まれた領域にある周波数温度特性を示す周波数温度情報が記憶されている。従って
、周波数補正型発振回路が受信したF/V変換手段の出力電圧から一義的に周波数を記憶
手段から読み出し、そのデータに基づいて周波数を補正する。これにより、F/V変換手
段の出力電圧(温度センサー出力)に対して補正する発振周波数がダイレクトに決まるの
で、補償を精度よく容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図2】(a)は発振周波数と温度の関係を示す図、(b)は周波数偏差電圧と温度の関係を示す図、(c)は周波数と周波数偏差電圧との関係を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の周波数補正型発振回路の一例を示す図である。
【図6】従来の圧電発振器のセンサー電圧と温度との関係を示す図である。
【図7】理想的な圧電発振器の周波数と温度との関係を示す図である。
【図8】従来のヒステリシス特性を有する圧電発振器の周波数と温度との関係を示す図である。
【図9】従来の圧電発振器の構成を示す図である。
【図10】(a)は従来の圧電発振器の周波数と温度の関係を示す図、(b)は温度センサー出力と温度の関係を示す図、(c)はヒステリシス特性を有する従来の圧電発振器の周波数と温度の関係を示す図、(d)は温度センサー出力と温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0026】
図1は本発明の第1の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
0は、水晶振動子(振動素子)1を含み発振信号2aを出力する発振器(発振手段)2と
、発振信号2aの周波数に対応した電圧に変換するF/V変換器(F/V変換手段)4と
、発振信号2aの周波数を補正するための周波数補正情報を記憶するメモリー(記憶手段
)6と、をICパッケージ15に一体化したものである。そして、ICパッケージ15に
は、発振出力端子8、周波数偏差電圧出力端子(F/V変換器出力端子)12、メモリー
出力端子9、11及び水晶振動子端子を備える。
即ち、図9に示す従来の発振器40では、温度情報を得るための温度センサー43を設
けていたが、本実施形態では、温度センサー43の代わりに、発振信号2aをF/V変換
してダイレクトに周波数偏差を電圧換算して出力して利用するというものである。発振器
2の周波数温度特性は、水晶振動子のもつ温度特性が発振周波数として表れるため、温度
に対して周波数が変化する。従来はこの発振周波数の温度変化を、温度情報から予測しよ
うとしたもので、その温度情報を別に設けた温度センサーの電圧から得ていた。このため
温度、電圧、周波数という3つの異なるパラメーターが必要であった。
図9に示す従来の発振器40では、発振器42と温度センサー43は別回路で構成され
ていたため、構造に起因する熱伝導や、水晶振動子41のヒステリシスの問題により、発
振周波数と温度センサー43の特性が1対1の関係に完全にはならなかった。
【0027】
しかし、本実施形態では、温度センサー43を不要とし、温度と言うパラメーターを除
外することができる。従来3つのパラメーターが必要であったのに対し、本形態では電圧
と周波数の2つのパラメーターのみとなる。図1に示すように水晶振動子1の周波数を、
F/V変換することで周波数偏差を電圧として得ることができる。F/V変換された周波
数偏差電圧と発振周波数には相関関係がある。図2に示すように発振器30の温度特性(
図2(a))と同様に、温度に対して3次の温特を持つ(図2(b))。しかし、周波数
偏差電圧と発振周波数Δf/fは1対1の関係であるため、周波数偏差電圧に対して、補
正する発振周波数がダイレクトに決まり、補償を精度良く容易に行う事ができる。
【0028】
次に、温度センサー電圧と発振周波数の関係を比較してみると、従来は図10に示すよ
うに、昇温時は図10(a)に示すように3次の温度特性53を示し、各点A、B、Cに
対応するセンサー電圧Vfが図10(b)のa、b、cとなり、降温時は図10(c)に
示すように3次の温度特性54を示し、各点A’、B’、C’に対応するセンサー電圧V
fが図10(d)のa’、b’、c’となる。従来の場合、異なる温度A、B、C点にお
いて発振周波数は同一である。それに対し温度センサー電圧は全て異なる関係にあること
がわかる。この関係を結びつけるために、双方に共通する温度というパラメーター(条件
)を用いて、温度との関係式を算出し、お互いの関係を結びつける必要があった。即ち、
Vfの測定→温度を計算(予測)→発振周波数を予測→システムで補正という関係であっ
た。
それに対し図2は、温度をパラメーターにする必要がなく、図2(c)に示すとおり、
周波数偏差電圧Vfに対し発振周波数Δf/fが1対1でリニアな関係が得られるため、
温度の概念をなくすことができる。即ち、周波数偏差電圧Vfの測定→発振周波数を予測
→システムで補正となる。これによって、補正精度の向上や補正システムの簡素化を図る
事が可能となる。
これはメモリーに格納する情報量を減らす効果につながり、メモリーを小型化にでき、
それによりICチップの小型化を図ることもできる。
【0029】
以上の通り、従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧Vf
と圧電発振器の周波数Δf/fが理想的な1対1の関係にない状態であった。そのため、
温度センサー電圧Vfと周波数Δf/fを対応付けるための演算が必要であった。また、
水晶振動子1の温度特性には、昇温時と降温時で温度特性が異なる所謂、ヒステリシス特
性を持つものがあり、温度特性もそれに基づいて変化するため、昇温時と降温時で誤差が
生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサー43の代わりに、周波数に対応
する電圧を発生するF/V変換器4を備え、その出力電圧を周波数偏差電圧Vfとする。
これにより、周波数偏差電圧Vfと圧電発振器の周波数Δf/fを1対1に対応付けるこ
とができる。
【0030】
図3は本発明の第2の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
1は、図1の構成に加えて、発振信号2aの周波数を分周する分周器(分周手段)16を
備え、分周器16により分周した信号をF/V変換器4へ出力するように構成した。また
、F/V変換器4の入力に発振信号2a又は分周器16により分周した信号の何れか一方
を供給するスイッチ(切替手段)17を備えた。また、図示は省略するが、分周器16の
分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えた。
即ち、発振信号2aの周波数が高い場合、その周波数に追従できるF/V変換器を選択
する必要がある。しかし、使用周波数が高いF/V変換器は、必然的に部品コストが高く
なり、また、周波数が高くなると消費電力も増大する。そこで本実施形態では、発振信号
2aの周波数を分周する分周器16を備え、分周器16により分周した信号をF/V変換
器4により変換する。これにより、発振周波数が高い場合でも、安価なF/V変換器4を
使用することができ、且つ発振回路の消費電力を低減することができる。
【0031】
また、発振周波数の可変範囲を大きく設定できる発振回路の場合、発振周波数によって
は周波数を分周する場合と分周しない場合の2通りがある。この場合、回路的には分周器
16を備えておき、分周器16を使用するか否かを切り替える構成が必要である。そこで
本実施形態では、F/V変換器4の入力に発振信号2a又は分周器16により分周した信
号の何れか一方を供給するスイッチ17を備える。これにより、簡単な操作で広い発振周
波数に対応した発振回路を提供することができる。
また、F/V変換器4は、変換可能な上限周波数が規定されている。従って、発振周波
数により分周器16の分周比をいくつに設定するかを決める必要がある。そこで本実施形
態では、分周器16の分周比を所定値に設定する分周比設定手段(図示せず)を備える。
これにより、発振周波数により最適な分周比を任意に設定することができる。
【0032】
図4は本発明の第3の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
2は、図3のF/V変換器4の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18を備
えたものである。図4の例では、F/V変換器4の出力信号を端子12に出力し、A/D
変換器18の出力を端子19に出力する構成にしたが、端子19だけでも構わない。また
、図1の実施形態についても同様に、F/V変換器4の出力信号をデジタル信号に変換す
るA/D変換器18を備えても構わない。これによりシステム側が周波数偏差電圧Vfを
A/D変換する必要がなくなり、システム側の負荷を軽減することができる。
【0033】
図5は本発明の周波数補正型発振回路の構成を示す図である。本実施形態に係る周波数
補正型発振回路100は、周波数温度特性にヒステリシス特性を有する圧電振動子1と、
圧電振動子1を発振させて発振信号33を出力する発振回路2と、記億回路6と、を有し
、記憶回路6には、ヒステリシス特性の影響を受けて表れた発振信号の2つの周波数温度
特性に囲まれた領域にある周波数温度特性を示す周波数温度情報13が記億されたもので
ある。ここで、2つの周波数温度特性とは、圧電振動子1の温度上昇時の周波数温度特性
と温度下降時の周波数温度特性とを言い、基準温度を中心として2つの特性曲線に囲まれ
た領域が現れる。また周波数補正型発振回路100は動作時には温度補償回路20に接続
される。
よって、本実施形態にかかる周波数補正型発振回路100をより詳細に説明すると、周
波数温度特性にヒステリシス特性を有する圧電振動子1と、圧電振動子1を発振させて発
振信号33を出力し、圧電振動子1の発振周波数の温度特性を示す周波数温度情報34と
、発振信号33の発振時の圧電振動子1の温度情報とを用いて温度補償量26を算出可能
な温度補償回路20に発振信号33を出力する発振回路2と、圧電振動子1の周囲温度を
上昇させた場合に生成される圧電振動子1の昇温周波数温度情報53と、周囲温度を下降
させた場合に生成される圧電振動子1の降温周波数温度清報54と、の中間値を周波数温
度情報13として記憶し温度補償回路20に周波数温度情報13を出カする記憶回路6と
、を有するものである。
【0034】
さらに、周波数偏差を電圧に変換し検出電圧36として出力するF/V変換器4が設け
られるとともに、周波数温度情報34は、検出電圧36の関数として表された昇温周波数
温度情報53及び降温周波数温度清報54に基づいて算出して記憶回路6に記憶され、発
振回路2は、周波数温度情報13と検出電圧36を用いて温度補償量26を算出する温度
補償回路20に発振信号33を出力し、温度検出手段は、温度補償回路20に検出電圧3
6を出力するものである。
即ち、従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振
器の周波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を
対応付けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時
で温度特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、温度センサー電圧もそれ
に基づいて変化するため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本実施
形態では、温度センサーの代わりに、周波数に対応する電圧を発生するF/V変換器4を
備え、その出力電圧を温度センサー電圧36として検出して、その電圧と周波数補正情報
34に基づいて発振信号の周波数を補正する。これにより、温度センサー電圧と圧電発振
器の周波数を1対1に対応付けて発振信号の周波数を補正することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 水晶振動子(振動素子)、2 発振器、3 シリアルインターフェイス、4 F/V
変換器、5 バッファ、6 メモリー、7 Vdd端子、8 発振出力端子、9 端子、
10 端子、11 メモリー出力端子、12 周波数偏差電圧出力端子、13 周波数温
度情報、14 GND端子、15 ICパッケージ、30〜32 発振回路、100 周
波数補正型発振回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路、及び周波数補正型発振回路に関し、さらに詳しくは、温度変化に
対してヒステリシス特性を持つ温度特性による精度誤差を改善するための回路構成に関す
るものである。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子を用いた圧電発振器の周波数は、AT振動子であれば3次カーブの温度特性
を持つが、これを例えば、携帯端末用GPSシステム等のシステム側で補正し、使用する
方法がある。例えば、特許文献1には、圧電発振器を構成するIC内に備えたメモリーに
、圧電発振器の周波数温度特性に関する情報を記憶させ、且つ温度情報を出力する機能を
有する圧電発振器について開示されている。また、特許文献2には、システム側で温度情
報を基に周波数を補正する内容が開示されている。
この様な温度センサー出力付き水晶発振器(TSXO:Temperature Sensing Xtal Osc
illator)は、ある環境温度において、温度検出データおよび発振周波数を出力する機能
があり、内部メモリーに任意の温度における温度検出データ(例えば温度センサー電圧、
温度係数)、および発振周波数を格納する機能も兼ね備えている。この内部メモリーに保
存しているデータは、製造検査工程時に温度を変化させながら複数の温度点で測定した周
波数や温度情報に関するデータである。また、厚みすべり振動を利用したATカット水晶
振動子を使用する場合、発振器の周波数は温度に対して正の3次曲線を描く。
上記システム側(例えば携帯端末用GPSシステム)は、この情報を元に、メモリー内
の情報を用いて温度(温度センサー電圧)と発振周波数の関係を導き出し、通常動作にお
いては、温度出力情報と発振器の出力周波数を検出し、その温度における基準周波数(例
えば25℃の周波数)に対する周波数偏差を予測し、周波数の補正量を決定する。このよ
うにして、どの温度においても周波数が一定となるように周波数補正をかけたり、又はソ
フト的に補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−324318公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0071728号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで特許文献1に開示されている様に、発振回路、温度センサー、メモリー等で構成
されるICと、水晶振動子とを接続してなる圧電発振器においては、本来温度(温度セン
サー電圧)に対し、圧電発振器の周波数は1対1という前提でなされているものである。
一例であるが図6は温度センサー電圧の温度特性であり、温度変化に対して温度センサー
電圧が略直線的に変化する特性を有する。この温度は温度センサーを備えている半導体の
温度であり、厳密には水晶振動子の温度との差が生じ、それは発振器の構造によっても影
響される。また、図7に理想的な圧電発振器の周波数温度特性を示すが、実際には昇温時
の特性と降温時の特性が微妙に異なる特性を示す場合がある(これをヒステリシス特性と
呼ぶ)。
即ち、水晶振動子の温度特性には、図8に示すように、昇温時の特性53と降温時の特
性54で特性が異なるヒステリシス特性を持つものがあり、この場合、温度に対し2つの
周波数を持つことになり、これが精度誤差として現れてしまう。言い換えれば、温度セン
サー電圧と圧電発振器の周波数が完全な1対1の関係にない状態と言える。
従って、携帯端末用GPSシステムなど精度が要求されるものには、このヒステリシス
特性の改善が求められるが、これは水晶振動子の構造や、水晶振動子のパッケージへの実
装方法などの検討が必要となり、且つ、その安定した生産性も求められるため、簡単に対
応できるものではなかった。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、温度センサー電圧の代わりに、発
振周波数に対応した電圧を発生するF/V変換器を介して周波数偏差に追随した電圧を出
力する。この電圧は発振周波数の変化に対して1対1の関係であり、これにより温度セン
サー電圧の取得を不要とし、発振周波数の変化を電圧情報として得ることが可能となる。
この出力電圧をシステム側に入力することにより、発振周波数の偏差を精度よく補正する
ことを実現した発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形
態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、前記発振信号の周波数に
対応した電圧に変換するF/V変換手段と、前記発振信号の周波数を補正するための周波
数補正情報等を記憶する記憶手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振器の周
波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を対応付
けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時で温度
特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、周波数もそれに基づいて変化す
るため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサ
ーの代わりに、周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段を備え、その出力電圧を
周波数偏差電圧とする。これにより、周波数偏差電圧と圧電発振器の周波数を1対1に対
応付けることができる。
【0008】
[適用例2]前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周
した信号を前記F/V変換手段へ出力するように構成したことを特徴とする。
【0009】
発振信号の周波数が高い場合、その周波数に追従できるF/V変換手段を選択する必要
がある。しかし、使用周波数が高いF/V変換手段は、必然的に部品コストが高くなり、
また、周波数が高くなると消費電力も増大する。そこで本発明では、発振信号の周波数を
分周する分周手段を備え、分周手段により分周した信号をF/V変換手段により変換する
。これにより、発振周波数が高い場合でも、安価なF/V変換手段を使用することができ
、且つ発振回路の消費電力を低減することができる。
【0010】
[適用例3]前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを
特徴とする。
【0011】
F/V変換手段は、変換可能な上限周波数が規定されている。従って、発振周波数によ
り分周手段の分周比をいくつに設定するかを決める必要がある。そこで本発明では、分周
手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備える。これにより、発振周波数によ
り最適な分周比を任意に設定することができる。
【0012】
[適用例4]前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周し
た信号の何れか一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
発振周波数の周波数範囲を広く設定できる発振回路の場合、発振周波数によっては周波
数を分周する場合と分周しない場合の2通りがある。この場合、回路的には分周手段を備
えておき、分周手段を使用するか否かを任意に切り替える構成が必要である。そこで本発
明では、F/V変換手段の入力に発振信号又は分周手段により分周した信号の何れか一方
を供給する切替手段を備える。これにより、簡単な操作で広い発振周波数に対応した発振
回路を提供することができる。
【0014】
[適用例5]振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、前記発振信号の周波数に
対応した電圧に変換するF/V変換手段と、前記発振信号の周波数を補正するための周波
数補正情報を記憶する記憶手段と、前記F/V変換手段の出力電圧と前記周波数補正情報
に基づき、前記発振信号の周波数を補正する周波数補正回路と、を備えたことを特徴とす
る。
【0015】
従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振器の周
波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を対応付
けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時で温度
特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、周波数もそれに基づいて変化す
るため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサ
ーの代わりに、周波数に対応する電圧を発生するF/V変換手段を備え、その出力電圧を
周波数偏差電圧として出力して、その電圧と周波数補正情報に基づいて発振信号の周波数
を補正する。これにより、周波数偏差電圧と圧電発振器の周波数を1対1に対応付けて発
振信号の周波数を補正することができる。
【0016】
[適用例6]前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周
した信号を前記F/V変換手段へ出力するように構成したことを特徴とする。
【0017】
適用例2と同様の作用効果を奏する。
【0018】
[適用例7]前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを
特徴とする。
【0019】
適用例3と同様の作用効果を奏する。
【0020】
[適用例8]前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周し
た信号の何れか一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
適用例4と同様の作用効果を奏する。
【0022】
[適用例9]前記周波数補正情報は、前記発振信号の周波数温度特性を補償するための
温度補償情報であることを特徴とする。
【0023】
記憶手段には、ヒステリシス特性の影響を受けて現れた発振信号の2つの周波数温度特
性に囲まれた領域にある周波数温度特性を示す周波数温度情報が記憶されている。従って
、周波数補正型発振回路が受信したF/V変換手段の出力電圧から一義的に周波数を記憶
手段から読み出し、そのデータに基づいて周波数を補正する。これにより、F/V変換手
段の出力電圧(温度センサー出力)に対して補正する発振周波数がダイレクトに決まるの
で、補償を精度よく容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図2】(a)は発振周波数と温度の関係を示す図、(b)は周波数偏差電圧と温度の関係を示す図、(c)は周波数と周波数偏差電圧との関係を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の周波数補正型発振回路の一例を示す図である。
【図6】従来の圧電発振器のセンサー電圧と温度との関係を示す図である。
【図7】理想的な圧電発振器の周波数と温度との関係を示す図である。
【図8】従来のヒステリシス特性を有する圧電発振器の周波数と温度との関係を示す図である。
【図9】従来の圧電発振器の構成を示す図である。
【図10】(a)は従来の圧電発振器の周波数と温度の関係を示す図、(b)は温度センサー出力と温度の関係を示す図、(c)はヒステリシス特性を有する従来の圧電発振器の周波数と温度の関係を示す図、(d)は温度センサー出力と温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0026】
図1は本発明の第1の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
0は、水晶振動子(振動素子)1を含み発振信号2aを出力する発振器(発振手段)2と
、発振信号2aの周波数に対応した電圧に変換するF/V変換器(F/V変換手段)4と
、発振信号2aの周波数を補正するための周波数補正情報を記憶するメモリー(記憶手段
)6と、をICパッケージ15に一体化したものである。そして、ICパッケージ15に
は、発振出力端子8、周波数偏差電圧出力端子(F/V変換器出力端子)12、メモリー
出力端子9、11及び水晶振動子端子を備える。
即ち、図9に示す従来の発振器40では、温度情報を得るための温度センサー43を設
けていたが、本実施形態では、温度センサー43の代わりに、発振信号2aをF/V変換
してダイレクトに周波数偏差を電圧換算して出力して利用するというものである。発振器
2の周波数温度特性は、水晶振動子のもつ温度特性が発振周波数として表れるため、温度
に対して周波数が変化する。従来はこの発振周波数の温度変化を、温度情報から予測しよ
うとしたもので、その温度情報を別に設けた温度センサーの電圧から得ていた。このため
温度、電圧、周波数という3つの異なるパラメーターが必要であった。
図9に示す従来の発振器40では、発振器42と温度センサー43は別回路で構成され
ていたため、構造に起因する熱伝導や、水晶振動子41のヒステリシスの問題により、発
振周波数と温度センサー43の特性が1対1の関係に完全にはならなかった。
【0027】
しかし、本実施形態では、温度センサー43を不要とし、温度と言うパラメーターを除
外することができる。従来3つのパラメーターが必要であったのに対し、本形態では電圧
と周波数の2つのパラメーターのみとなる。図1に示すように水晶振動子1の周波数を、
F/V変換することで周波数偏差を電圧として得ることができる。F/V変換された周波
数偏差電圧と発振周波数には相関関係がある。図2に示すように発振器30の温度特性(
図2(a))と同様に、温度に対して3次の温特を持つ(図2(b))。しかし、周波数
偏差電圧と発振周波数Δf/fは1対1の関係であるため、周波数偏差電圧に対して、補
正する発振周波数がダイレクトに決まり、補償を精度良く容易に行う事ができる。
【0028】
次に、温度センサー電圧と発振周波数の関係を比較してみると、従来は図10に示すよ
うに、昇温時は図10(a)に示すように3次の温度特性53を示し、各点A、B、Cに
対応するセンサー電圧Vfが図10(b)のa、b、cとなり、降温時は図10(c)に
示すように3次の温度特性54を示し、各点A’、B’、C’に対応するセンサー電圧V
fが図10(d)のa’、b’、c’となる。従来の場合、異なる温度A、B、C点にお
いて発振周波数は同一である。それに対し温度センサー電圧は全て異なる関係にあること
がわかる。この関係を結びつけるために、双方に共通する温度というパラメーター(条件
)を用いて、温度との関係式を算出し、お互いの関係を結びつける必要があった。即ち、
Vfの測定→温度を計算(予測)→発振周波数を予測→システムで補正という関係であっ
た。
それに対し図2は、温度をパラメーターにする必要がなく、図2(c)に示すとおり、
周波数偏差電圧Vfに対し発振周波数Δf/fが1対1でリニアな関係が得られるため、
温度の概念をなくすことができる。即ち、周波数偏差電圧Vfの測定→発振周波数を予測
→システムで補正となる。これによって、補正精度の向上や補正システムの簡素化を図る
事が可能となる。
これはメモリーに格納する情報量を減らす効果につながり、メモリーを小型化にでき、
それによりICチップの小型化を図ることもできる。
【0029】
以上の通り、従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧Vf
と圧電発振器の周波数Δf/fが理想的な1対1の関係にない状態であった。そのため、
温度センサー電圧Vfと周波数Δf/fを対応付けるための演算が必要であった。また、
水晶振動子1の温度特性には、昇温時と降温時で温度特性が異なる所謂、ヒステリシス特
性を持つものがあり、温度特性もそれに基づいて変化するため、昇温時と降温時で誤差が
生じる可能性があった。そこで本発明では、温度センサー43の代わりに、周波数に対応
する電圧を発生するF/V変換器4を備え、その出力電圧を周波数偏差電圧Vfとする。
これにより、周波数偏差電圧Vfと圧電発振器の周波数Δf/fを1対1に対応付けるこ
とができる。
【0030】
図3は本発明の第2の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
1は、図1の構成に加えて、発振信号2aの周波数を分周する分周器(分周手段)16を
備え、分周器16により分周した信号をF/V変換器4へ出力するように構成した。また
、F/V変換器4の入力に発振信号2a又は分周器16により分周した信号の何れか一方
を供給するスイッチ(切替手段)17を備えた。また、図示は省略するが、分周器16の
分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えた。
即ち、発振信号2aの周波数が高い場合、その周波数に追従できるF/V変換器を選択
する必要がある。しかし、使用周波数が高いF/V変換器は、必然的に部品コストが高く
なり、また、周波数が高くなると消費電力も増大する。そこで本実施形態では、発振信号
2aの周波数を分周する分周器16を備え、分周器16により分周した信号をF/V変換
器4により変換する。これにより、発振周波数が高い場合でも、安価なF/V変換器4を
使用することができ、且つ発振回路の消費電力を低減することができる。
【0031】
また、発振周波数の可変範囲を大きく設定できる発振回路の場合、発振周波数によって
は周波数を分周する場合と分周しない場合の2通りがある。この場合、回路的には分周器
16を備えておき、分周器16を使用するか否かを切り替える構成が必要である。そこで
本実施形態では、F/V変換器4の入力に発振信号2a又は分周器16により分周した信
号の何れか一方を供給するスイッチ17を備える。これにより、簡単な操作で広い発振周
波数に対応した発振回路を提供することができる。
また、F/V変換器4は、変換可能な上限周波数が規定されている。従って、発振周波
数により分周器16の分周比をいくつに設定するかを決める必要がある。そこで本実施形
態では、分周器16の分周比を所定値に設定する分周比設定手段(図示せず)を備える。
これにより、発振周波数により最適な分周比を任意に設定することができる。
【0032】
図4は本発明の第3の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。この発振回路3
2は、図3のF/V変換器4の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器18を備
えたものである。図4の例では、F/V変換器4の出力信号を端子12に出力し、A/D
変換器18の出力を端子19に出力する構成にしたが、端子19だけでも構わない。また
、図1の実施形態についても同様に、F/V変換器4の出力信号をデジタル信号に変換す
るA/D変換器18を備えても構わない。これによりシステム側が周波数偏差電圧Vfを
A/D変換する必要がなくなり、システム側の負荷を軽減することができる。
【0033】
図5は本発明の周波数補正型発振回路の構成を示す図である。本実施形態に係る周波数
補正型発振回路100は、周波数温度特性にヒステリシス特性を有する圧電振動子1と、
圧電振動子1を発振させて発振信号33を出力する発振回路2と、記億回路6と、を有し
、記憶回路6には、ヒステリシス特性の影響を受けて表れた発振信号の2つの周波数温度
特性に囲まれた領域にある周波数温度特性を示す周波数温度情報13が記億されたもので
ある。ここで、2つの周波数温度特性とは、圧電振動子1の温度上昇時の周波数温度特性
と温度下降時の周波数温度特性とを言い、基準温度を中心として2つの特性曲線に囲まれ
た領域が現れる。また周波数補正型発振回路100は動作時には温度補償回路20に接続
される。
よって、本実施形態にかかる周波数補正型発振回路100をより詳細に説明すると、周
波数温度特性にヒステリシス特性を有する圧電振動子1と、圧電振動子1を発振させて発
振信号33を出力し、圧電振動子1の発振周波数の温度特性を示す周波数温度情報34と
、発振信号33の発振時の圧電振動子1の温度情報とを用いて温度補償量26を算出可能
な温度補償回路20に発振信号33を出力する発振回路2と、圧電振動子1の周囲温度を
上昇させた場合に生成される圧電振動子1の昇温周波数温度情報53と、周囲温度を下降
させた場合に生成される圧電振動子1の降温周波数温度清報54と、の中間値を周波数温
度情報13として記憶し温度補償回路20に周波数温度情報13を出カする記憶回路6と
、を有するものである。
【0034】
さらに、周波数偏差を電圧に変換し検出電圧36として出力するF/V変換器4が設け
られるとともに、周波数温度情報34は、検出電圧36の関数として表された昇温周波数
温度情報53及び降温周波数温度清報54に基づいて算出して記憶回路6に記憶され、発
振回路2は、周波数温度情報13と検出電圧36を用いて温度補償量26を算出する温度
補償回路20に発振信号33を出力し、温度検出手段は、温度補償回路20に検出電圧3
6を出力するものである。
即ち、従来の温度センサーにより周波数を補正する場合、温度センサー電圧と圧電発振
器の周波数が1対1の関係にない状態であった。そのため、温度センサー電圧と周波数を
対応付けるための演算が必要であった。また、振動素子の温度特性には、昇温時と降温時
で温度特性が異なる所謂、ヒステリシス特性を持つものがあり、温度センサー電圧もそれ
に基づいて変化するため、昇温時と降温時で誤差が生じる可能性があった。そこで本実施
形態では、温度センサーの代わりに、周波数に対応する電圧を発生するF/V変換器4を
備え、その出力電圧を温度センサー電圧36として検出して、その電圧と周波数補正情報
34に基づいて発振信号の周波数を補正する。これにより、温度センサー電圧と圧電発振
器の周波数を1対1に対応付けて発振信号の周波数を補正することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 水晶振動子(振動素子)、2 発振器、3 シリアルインターフェイス、4 F/V
変換器、5 バッファ、6 メモリー、7 Vdd端子、8 発振出力端子、9 端子、
10 端子、11 メモリー出力端子、12 周波数偏差電圧出力端子、13 周波数温
度情報、14 GND端子、15 ICパッケージ、30〜32 発振回路、100 周
波数補正型発振回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、
前記発振信号の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段と、
前記発振信号の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周した信号を前
記F/V変換手段に入力するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路
。
【請求項3】
前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを特徴とする請
求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周した信号の何れ
か一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載
の発振回路。
【請求項5】
振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、
前記発振信号の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段と、
前記発振信号の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶する記憶手段と、
前記F/V変換手段の出力電圧と前記周波数補正情報に基づき、前記発振信号の周波数
を補正する周波数補正回路と、
を備えたことを特徴とする周波数補正型発振回路。
【請求項6】
前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周した信号を前
記F/V変換手段に入力するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の周波数補
正型発振回路。
【請求項7】
前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを特徴とする請
求項6に記載の周波数補正型発振回路。
【請求項8】
前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周した信号の何れ
か一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載
の周波数補正型発振回路。
【請求項9】
前記周波数補正情報は、前記発振信号の周波数温度特性を補償するための温度補償情報
であることを特徴とする請求項5に記載の周波数補正型発振回路。
【請求項1】
振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、
前記発振信号の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段と、
前記発振信号の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶する記憶手段と、
を備えたことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周した信号を前
記F/V変換手段に入力するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の発振回路
。
【請求項3】
前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを特徴とする請
求項2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周した信号の何れ
か一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載
の発振回路。
【請求項5】
振動素子を含み発振信号を出力する発振手段と、
前記発振信号の周波数に対応した電圧に変換するF/V変換手段と、
前記発振信号の周波数を補正するための周波数補正情報を記憶する記憶手段と、
前記F/V変換手段の出力電圧と前記周波数補正情報に基づき、前記発振信号の周波数
を補正する周波数補正回路と、
を備えたことを特徴とする周波数補正型発振回路。
【請求項6】
前記発振信号の周波数を分周する分周手段を備え、該分周手段により分周した信号を前
記F/V変換手段に入力するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の周波数補
正型発振回路。
【請求項7】
前記分周手段の分周比を所定値に設定する分周比設定手段を備えたことを特徴とする請
求項6に記載の周波数補正型発振回路。
【請求項8】
前記F/V変換手段の入力に前記発振信号又は前記分周手段により分周した信号の何れ
か一方を供給する切替手段を備えたことを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載
の周波数補正型発振回路。
【請求項9】
前記周波数補正情報は、前記発振信号の周波数温度特性を補償するための温度補償情報
であることを特徴とする請求項5に記載の周波数補正型発振回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−182154(P2011−182154A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43833(P2010−43833)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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