説明

発振回路

【課題】電流ノイズを削減しつつ低電圧で動作可能な発振回路を提供する。
【解決手段】発振回路100Aは、固定電圧Vrefを出力する固定電圧源10と、容量素子20と、容量素子20の一方の端子N1に接続され、出力信号Doutがハイレベルの場合に第1電流を容量素子20に流し込み、出力信号Doutがローレベルの場合に第2電流を容量素子20から引き抜く電流供給部30と、容量素子20の他方の端子N2に接続され、出力信号Doutがハイレベルの場合に第1電圧V1を出力し、出力信号Doutがローレベルの場合に第2電圧V2を出力する電圧発生部40と、容量素子20の一方の端子の電圧Vxと固定電圧Vrefとを比較して、出力信号Doutを生成するコンパレータ50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
自走式の発振回路として、コンデンサに所定の時定数で電荷を充電し、コンデンサの端子電圧と基準電圧とを比較して出力信号を生成する回路が知られている(特許文献1参照)。この発振回路では、コンパレータで基準電圧と端子電圧とを比較し、基準電圧が端子電圧を上回ると出力信号のレベルを反転させる。そして、出力信号のレベルが反転するタイミングで、コンデンサに並列に設けられたスイッチをオン状態にして、そこに充電された電荷を放電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−204516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発振回路は、スイッチをオン状態にすると、コンデンサから電流が一時に流れ出ることから、電流ノイズが発生するといった問題がある。
また、電流ノイズを防止するために、コンデンサに定電流で充電・放電し、出力信号のレベルが反転すると充電・放電を切り替えることが考えられる。この場合は、充電・放電の切り換えに同期して、基準電圧を切り替える必要がある。
しかしながら、発振回路を低電圧で動作させる場合、コンパレータの入力電圧の範囲が狭くなる。このため、所定範囲を超えて基準電圧を切り替えるとコンパレータの動作が不安定になるといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低電圧でも正常に動作し、且つ電流ノイズを発生させない発振回路を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る発振回路は、2値化された一定周波数の出力信号を出力するものであって、固定電圧を出力する定電圧源と、容量素子と、前記容量素子の一方の端子に接続され、前記出力信号が第1論理値の場合に第1電流を前記容量素子に流し込み、前記出力信号が第2論理値の場合に第2電流を前記容量素子から引き抜く電流供給部と、前記容量素子の他方の端子に接続され、前記出力信号が前記第1論理値の場合に第1電圧を出力し、前記出力信号が前記第2論理値の場合に第2電圧を出力する電圧発生部と、前記容量素子の一方の端子の電圧と前記固定電圧とを比較して、前記出力信号を生成するコンパレータとを、備える。
【0007】
この発明によれば、コンパレータの一方の入力端子には、固定電圧が供給されるので、発振回路を低電圧で動作させることができ、しかも、出力信号が第1論理値の場合は容量素子に対して第1電流で充電し、出力信号が第2論理値の場合は容量素子に対して第2電流で放電させるので、電流ノイズの発生を大幅に抑圧することができる。
【0008】
上述した発振回路において、前記電流供給部は、高電位電源が供給される第1電源端子と、低電位電源が供給される第2電源端子と、前記第1電源端子と前記容量素子の一方の端子との間に設けられ、前記出力信号が前記第1論理値の場合にオン状態となり、前記出力信号が前記第2論理値の場合にオフ状態となる第1スイッチ、及び一定の前記第1電流を前記容量素子の一方の端子に流し込む第1定電流源と、前記第2電源端子と前記容量素子の一方の端子との間に設けられ、前記出力信号が前記第2論理値の場合にオン状態となり、前記出力信号が前記第1論理値の場合にオフ状態となる第2スイッチ、及び一定の前記第2電流を前記容量素子の一方の端子から引き抜く第2定電流源とを備えることが好ましい。
この発明によれば、第1スイッチと第2スイッチとは排他的に動作し、第1電流と第2電流とは定電流で与えられるので、一時に大電流が流れることがなく、電流ノイズをより一層抑圧できる。
【0009】
上述した発振回路において、前記電圧発生部は、前記容量素子の一方の端子の電圧が前記固定電圧を中心に振れるように、前記第1電圧と前記第2電圧とを発生し、 前記電流供給部は、前記第1電流と前記第2電流とが等しくなるように設定する、ことが好ましい。この場合には、コンパレータの他方の入力端子に供給する容量素子の一方の端子の電圧の入力範囲の中心を、一方の入力端子に供給する固定電圧に一致させることができる。この結果、発振回路をより一層低電圧で動作させることが可能となる。
なお、第2電圧を固定電圧と一致させてもよい。この場合には、第2電圧源の替わりに固定電圧源を用いることが、構成を簡素化する観点より好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る発振回路の構成を示すブロック図である。
【図2】発振回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】第2実施形態に係る発振回路の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発振回路の電気的構成を示すブロック図である。この発振回路100Aは、固定電圧Vrefを出力する固定電圧源10と、容量素子20と、容量素子20の一方の端子N1に電流を供給する電流供給部30と、第1電圧V1又は第2電圧V2の一方を選択して容量素子20の他方の端子N2に出力する電圧発生部40と、2値化された出力信号Doutを生成するコンパレータ50と、バッファ51及び52とを備える。
【0012】
電流供給部30は、高電位電源Vddが供給される第1電源端子P1と、低電位電源Vssが供給される第2電源端子P2とを備える。また、第1電源端子P1と容量素子20の一方の端子N1との間には、第1スイッチSW1及び第1定電流源31が直列に接続され、容量素子20の一方の端子N1と第2電源端子P2との間には、第2定電流源32及び第2スイッチSW2が直列に接続されている。
【0013】
第1スイッチSW1は、出力信号Doutがハイレベルの場合にオン状態となり、ローレベルの場合にオフ状態となる。一方、第2スイッチSW2は出力信号Doutがハイレベルの場合にオフ状態となり、ローレベルの場合にオン状態となる。よって、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2は出力信号Doutの論理レベルに応じて排他的にオン状態となる。
【0014】
第1定電流源31は、一定の電流を容量素子20の一方の端子N1に流し込み、第2定電流源32は、一定の電流を容量素子20の一方の端子N1から引き抜く。第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2の動作を考慮すると、電流供給部30は、出力信号Doutがハイレベルの場合に一定の電流を容量素子20に流し込み、出力信号Doutがローレベルの場合に一定の電流を容量素子20から引き抜く。ここで、容量素子20に流し込む電流の大きさと容量素子20から引き抜く電流の大きさは、必ずしも一致する必要はないが、この例では、両者を一致させている。
【0015】
また、この例では、第1電源端子P1と第1スイッチSW1とが接続され、第1定電流源31と容量素子20の一方の端子N1とが接続されたが、第1スイッチSW1と第1定電流源31とを入れ替えてもよい。同様に、第2スイッチSW2と第2定電流源32とを入れ替えてもよい。
【0016】
次に、電圧発生部40は、第1電圧V1を出力する第1電圧源41と、第2電圧V2を出力する第2電圧源42と、第1電圧源41と容量素子20の他方の端子N2との間に設けられた第3スイッチ43と、第2電圧源42と容量素子20の他方の端子N2との間に設けられた第4スイッチ44とを備える。第3スイッチ43は、出力信号Doutがハイレベルの場合にオン状態となり、ローレベルの場合にオフ状態となる。一方、第4スイッチ44は出力信号Doutがハイレベルの場合にオフ状態となり、ローレベルの場合にオン状態となる。よって、第3スイッチ43及び第4スイッチ44は出力信号Doutの論理レベルに応じて排他的にオン状態となる。
【0017】
次に、発振回路100Aの動作について、図2を参照して説明する。この例では、時刻t0において容量素子20に電荷が蓄積されていないものとする。時刻t0から時刻t1までの期間T1において、出力信号Doutはハイレベルとなるから、第1スイッチSW1及び第3スイッチ43がオン状態となる一方、第2スイッチSW2及び第4スイッチ44はオフ状態となる。
【0018】
このとき、容量素子20の他方の端子N2には第1電圧V1が供給される。時刻t0では容量素子20に電荷が蓄積されていないので、容量素子20の一方の端子N1の電圧Vxは第1電圧V1と一致する。期間T1において、容量素子20に一定電流が流れ込むので、電圧Vxは直線的に上昇する。そして、時刻t1において電圧Vxが固定電圧Vrefを上回ると、出力信号Doutがハイレベルからローレベルに変化する。
【0019】
出力信号Doutがローレベルとなると、第1スイッチSW1及び第3スイッチ43がオフ状態となる一方、第2スイッチSW2及び第4スイッチ44はオン状態となる。この結果、容量素子20の他方の端子N2には第2電圧V2が供給される。ここで、第2電圧V2は、固定電圧Vrefと一致するように設定されている。この場合、時刻t1において電圧Vxは「Vref」から「2Vref−V1」へスッテプ状に変化する。
【0020】
時刻t1から時刻t2までの期間T2において、電流供給部30は一定電流を容量素子20から引き向くので、電圧Vxは直線的に下降する。そして、時刻t2において電圧Vxが固定電圧Vrefを下回ると、出力信号Doutがローレベルからハイレベルに変化する。以下、期間T1及び期間T2の動作を繰り返すことにより、一定周波数の出力信号Doutが得られる。
【0021】
このように本実施形態によれば、コンパレータ50の一方の入力端子に供給する電圧を固定電圧Vrefとするので、コンパレータ50の動作点を固定にでき、発振回路100Aを低電圧で動作させることができる。また、容量素子20への充電・放電を一時に行うのではなく、緩やかに行うので電流ノイズを大幅に抑圧することができる。
【0022】
さらに、発振回路100Aは、第2電圧V2を固定電圧Vrefと一致させたので、電圧Vxが固定電圧Vrefを中心に±ΔV(=Vref−V1)だけ振れることになる。このため、コンパレータ50の他方の入力端子に供給する電圧Vxの入力範囲の中心を、一方の入力端子に供給する固定電圧Vrefに一致させることができる。この結果、発振回路100Aをより一層低電圧で動作させることが可能となる。
【0023】
<2.第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る発振回路の電気的構成を示すブロック図である。この発振回路100Bは、第2電圧源42の替わりに固定電圧源10を用いる点、容量素子20と並列に第5スイッチ45を設けた点を除いて、図1に示す第1実施形態の発振回路100Aと同様に構成されている。
【0024】
発振回路100Bでは、第2電圧V2として固定電圧Vrefを用いるので、第2電圧源42を削除した。これにより、構成を簡素化することができる。
また、第5スイッチ45は、リセット信号RESがハイレベルでオン状態となりローレベルでオフ状態となる。リセット信号RESは、発振回路100Bの電源投入時にハイレベルとなる。第5スイッチ45は、容量素子20に蓄積された電荷を放電して初期化する。これにより、発振回路100Bの誤動作を防止できる。
【0025】
<3.変形例>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる変形が可能である。
(1)上述した各実施形態では、定電流で容量素子20を充放電したが、本発明はこれに限定されるものではなく、RCの時定数に従って充放電が実行されるものであってもよい。要は、容量素子20に急激に電流を流し込んだり、電流を引き抜いたりしなければよい。即ち、出力信号Doutが一方の論理値である場合に、継続して容量素子20に電流を流し込み、出力信号Doutが他方の論理値である場合に、継続して容量素子20から電流を引き抜くものであればよい。
【0026】
(2)上述した各実施形態では、第2電圧V2と固定電圧Vrefとを一致させたが、本発明はこれに限定されるものではない。但し、電圧発生部40は、容量素子20の一方の端子の電圧Vxが固定電圧Vrefを中心に振れるように、第1電圧V1と第2電圧V2とを発生することが、低電圧動作の観点から好ましい。
【符号の説明】
【0027】
100A,100B…発振回路、10…固定電圧源、20…容量素子、30…電流供給部、40…電圧発生部、50…コンパレータ、51,52…バッファ、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、31…第1定電流源、32…第2定電流源、41…第1電圧源、42…第2電圧源、Vref…固定電圧、Dout…出力信号。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2値化された一定周波数の出力信号を出力する発振回路であって、
固定電圧を出力する定電圧源と、
容量素子と、
前記容量素子の一方の端子に接続され、前記出力信号が第1論理値の場合に第1電流を前記容量素子に流し込み、前記出力信号が第2論理値の場合に第2電流を前記容量素子から引き抜く電流供給部と、
前記容量素子の他方の端子に接続され、前記出力信号が前記第1論理値の場合に第1電圧を出力し、前記出力信号が前記第2論理値の場合に第2電圧を出力する電圧発生部と、
前記容量素子の一方の端子の電圧と前記固定電圧とを比較して、前記出力信号を生成するコンパレータとを、
備える発振回路。
【請求項2】
前記電流供給部は、
高電位電源が供給される第1電源端子と、
低電位電源が供給される第2電源端子と、
前記第1電源端子と前記容量素子の一方の端子との間に設けられ、前記出力信号が前記第1論理値の場合にオン状態となり、前記出力信号が前記第2論理値の場合にオフ状態となる第1スイッチ、及び一定の前記第1電流を前記容量素子の一方の端子に流し込む第1定電流源と、
前記第2電源端子と前記容量素子の一方の端子との間に設けられ、前記出力信号が前記第2論理値の場合にオン状態となり、前記出力信号が前記第1論理値の場合にオフ状態となる第2スイッチ、及び一定の前記第2電流を前記容量素子の一方の端子から引き抜く第2定電流源とを備える、
請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記電圧発生部は、前記容量素子の一方の端子の電圧が前記固定電圧を中心に振れるように、前記第1電圧と前記第2電圧とを発生し、
前記電流供給部は、前記第1電流と前記第2電流とが等しくなるように設定する、
請求項1又は2に記載の発振回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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