説明

発振検知回路

【課題】トランジスタ特性のバラツキに影響されることなく、発振回路の発振を安定的に検知することが可能な発振検知回路を提供すること。
【解決手段】電源VDDとグランドVSSとの間に電流源IS11,IS12が直列に接続される。電流源IS11と電流源IS12との接続点P1にはコンデンサC1が接続され、この接続点P1に現れる信号を積分する。電流値の大きな電流源IS11と接続点P1との間にはスイッチSW1が設けられる。シュミットトリガーST1は、積分された信号を入力して2値信号を出力する。この2値信号は論理積回路ANに入力され、検知信号OSCSTPが出力される。ここで、発振回路の出力信号NCKMに基づきスイッチSW1が開閉すると、電流I11が断続的にコンデンサC1に供給される。この結果、接続点P1の信号レベルが上昇し、検知信号OSCSTPがハイレベルとなって発振が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器などの発振回路の発振を検知するための発振検知回路に関し、特に、回路定数のバラツキや変動に起因した誤動作を防止するための回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には発振回路が搭載されており、この発振回路で生成された発振信号は他の回路動作の基準とされる。このため、発振回路の出力信号を入力する回路系の動作を保障する上で、発振回路が発振状態にあるか否かを把握する必要があり、そのための発振検知回路がある。この種の発振検知回路の従来技術として、遅延回路を利用したものがあり、例えば特開平10−190413号公報、特開2000−122749号公報、および特開2002−043906号公報に開示されている。
【0003】
以下、図7を参照して、遅延回路を利用した従来技術に係る発振検知回路の構成と動作を説明する。図7(a)にその構成を示す。同図において、信号INは、図示しない発振回路の出力信号であり、インバータIVおよび遅延回路DLを介して信号INBとして排他的論理和回路EOの一方の入力部に与えられると共に、排他的論理和回路EOの他方の入力部にそのまま与えられる。排他的論理和回路EOの出力部と接地との間にはコンデンサCPが接続され、この排他的論理和回路EOの出力部は比較回路CMの入力部に接続される。比較回路CMは、リファレンス電圧REFと信号Oの信号レベルとを比較するもので、信号Oの信号レベルがリファレンス電圧REFよりも低くなると、出力信号OUTとしてハイレベルを出力する。
【0004】
次に、図7(b)を参照して動作を説明する。発振前の状態では、信号INがハイレベルまたはローレベルに固定される。この場合、信号INがハイレベルおよびローレベルの何れであったとしても、排他的論理和回路EOに入力される信号INおよび信号INBの信号レベルは互いに異なったものになる。このため、排他的論理和回路EOから出力される信号Oはハイレベルに固定され、コンデンサCPが充電状態に維持される。従って、ハイレベルの信号Oを入力する比較回路CMは、出力信号OUTとしてローレベルを出力する。
【0005】
上述の初期状態から発振が開始し、信号INとして発振信号が入力されると、信号INは、インバータIVによって反転されて遅延回路DLによって一定時間だけ遅延され、信号INBとして現れる。この結果、信号INおよび信号INBの信号レベルが一致する区間と、一致しない区間とが交互に出現する。これら信号IN,INBを入力する排他的論理和回路EOは、信号Oとして、信号レベルが一致する区間でローレベルを出力し、一致しない区間でハイレベルを出力する。従って、発振回路が発振状態にある場合にはコンデンサCPに対する充電と放電とが交互に行われることになる。
【0006】
ここで、放電量が充電量を上回れば、コンデンサCPが見かけ上放電状態となり、信号Oの信号レベルが上述の発振前の信号レベルとは異なるローレベルとなるため、この信号レベルから発振を把握することが可能になる。そこで、遅延回路DLの遅延量を調節することにより、発振時に放電量が充電量を上回るように信号IN,INBのタイミング関係を予め設定しておく。比較回路CMは、信号Oの信号レベルとリファレンス電圧REFとを比較し、信号Oの信号レベルがリファレンス電圧REFを下回ると、出力信号OUTとしてハイレベルを出力し、これにより発振が検知される。
【0007】
この後、発振が停止し、信号INが例えばローレベルに固定されると、遅延回路DLから出力される信号INBがハイレベルに固定され、これらの信号レベルが一致しない状態となる。従って、これら信号IB,INBを入力する排他的論理和回路EOはコンデンサCPを充電し、信号Oをハイレベルに駆動する。信号Oの信号レベルがリファレンス電圧REFを上回ると、比較回路CMは出力信号OUTとしてハイレベルを出力し、これにより発振の停止が検知される。上述の従来例では、遅延回路を利用することによりコンデンサを放電状態としているが、例えば特開平11−220330号公報および特開2001−326565号公報に開示されているように、遅延回路を用いることなくコンデンサを放電状態として発振を検知する技術もある。
【0008】
以下、図8を参照して、遅延回路を用いることなく発振を検知する従来技術を説明する。図8(a)に、この種の発振検知回路の構成を示す。この例では、図示しない発振回路から出力された信号INが、インバータIVAと、抵抗RAおよびコンデンサCAからなる積分回路を介し、信号INAとして論理和回路ORの一方の入力部に与えられる。また、信号INは、インバータIVB,IVCからなるバッファと、抵抗RBおよびコンデンサCBからなる積分回路を介し、信号INBとして論理和回路ORの他方の入力部に与えられる。さらに、インバータIVAおよびインバータIVCを構成するトランジスタについては、ローレベルを出力するためのNMOSトランジスタのオン抵抗がハイレベルを出力するためのPMOSトランジスタのオン抵抗よりも小さく設定されている。
【0009】
図8(b)を参照して動作を説明する。発振前の状態では、信号INの信号レベルに応じて信号INAおよび信号INBの一方がハイレベルに固定され、他方がローレベルに固定される。従って、これら信号INA,INBを入力する論理和回路204は出力信号OUTとしてハイレベルを出力する。この例の場合、発振前の状態では信号INがローレベルにあるので、信号INAおよび信号INBはそれぞれハイレベルおよびローレベルとなる。
【0010】
この状態から発振が開始し、信号INとして発振信号が入力されると、インバータIVAは信号INの反転信号を出力する。この反転信号は、抵抗RAおよびコンデンサCAからなる積分回路により積分されて信号INAとされる。ここで、インバータIVAを構成するトランジスタのうち、ローレベルを駆動するトランジスタのオン抵抗が小さく設定されているので、信号INAの立ち下がりが急峻になり、立ち上がりが緩慢になる。そのため、信号INAの信号レベルは、上昇と降下を繰り返しながらも徐々に低下してローレベルとなる。
【0011】
一方、信号INに応じてインバータIVCが出力する信号は、抵抗RBおよびコンデンサCBからなる積分回路により積分されて信号INBとされる。ここで、インバータIVCを構成するトランジスタのうち、ローレベルを駆動するトランジスタのオン抵抗が小さく設定されているので、同様に信号INBの立ち下がりが急峻になり、立ち上がりが緩慢になる。そのため、信号INBの信号レベルはローレベルを維持する。
【0012】
従って、この従来技術によれば、発振回路が発振状態にある場合、信号INA,INBが共にローレベルとなり、出力信号OUTとしてローレベルが出力される。この後、発振が停止し、信号INが例えばハイレベルに固定されると、信号INAがローレベルに固定され、信号INBがハイレベルに固定される。従って、出力信号OUTとしてハイレベルが出力される。結局、発振状態にある場合に論理和回路ORの出力信号OUTがローレベルとなり、これにより発振が検知されることになる。
【特許文献1】特開平10−190413号公報
【特許文献2】特開2000−122749号公報
【特許文献3】特開2002−043906号公報
【特許文献4】特開平11−220330号公報
【特許文献5】特開2001−326565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述の図7に示す従来技術によれば、遅延回路DLの遅延時間や、信号Oの立ち上がり時間/立ち下がり時間を与える時定数のバラツキを一定範囲内に抑えないと、発振を検知できなくなる場合が生じ、製品としての歩留まりが低下するという問題がある。
【0014】
図9を参照して、この問題を具体的に説明する。図9において、区間TAは、図7に示す信号INと信号INBとの信号レベルが一致する期間を示し、コンデンサCPが放電される期間を示す。また、区間TBは、信号INと信号INBとの信号レベルが一致しない期間を示し、コンデンサCPが充電される期間を示す。図9(a)に示す例では、区間TAと区間TBとが等しく、充電量と放電量が等しくなる。この場合、信号Oの信号レベルの平均値が電源とグランドとの間の中間値に安定して一定となり、信号Oの信号レベルがローレベルにはならず、従って発振の検知が不能となる。また、図9(b)に示す例では、区間TAが区間TBよりも小さく、放電量が充電量よりも小さくなる。この場合、信号Oの信号レベルはハイレベルに維持され、ローレベルにはならない。従って、この場合も発振の検知が不能となる。
【0015】
これに対し、図9(c)に示すように、区間TAが区間TBよりも大きい場合には、放電量が充電量を上回ることになる。このため、発振回路が発振状態になると信号Oの信号レベルが徐々に低下してローレベルとなり、この信号レベルの低下から発振の検知が可能となる。
このように、図7に示す従来技術によれば、コンデンサCPの放電量と充電量との関係は検知動作の良否を決定づけるため、これら放電量および充電量を規定する遅延回路DLの遅延時間と、信号Oの立ち上がり時間/立ち下がり時間を与える時定数を適切に調整する必要がある。
【0016】
しかしながら、遅延回路DLや排他的論理和回路EOを構成するトランジスタのオン抵抗のバラツキよって上述の遅延時間や時定数が大きく変動すると、上述のように放電量が充電量を上回ることができない事態となり、従って発振の検知が不能となって歩留まりが低下することになる。
図8に示す従来技術についても上述の図7に示す従来技術と同様の問題を抱えており、図8に示すインバータIVA〜IVCを構成するトランジスタのオン抵抗にバラツキが存在すると、発振状態において信号INAおよび信号INBが必ずしも共にローレベルにはならず(即ち何れかがハイレベルになる場合が生じ)、発振の検知が不能となる。
【0017】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、トランジスタ特性のバラツキに影響されることなく、発振回路の発振を安定的に検知することが可能な発振検知回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、この発明は以下の構成を有する。
即ち、請求項1に記載された発明に係る発振検知回路は、第1の電源と第2の電源との間に直列接続され、電流値が互いに異なる第1および第2の電流源と、前記第1の電流源と前記第2の電流源との間の接続点に現れる信号を積分する積分器と、前記第1および第2の電流源の一方の電流源と前記接続点との間に介挿され、該電流源が発生する電流を発振回路の出力信号に基づき断続させるスイッチと、前記積分器によって積分された信号の波形を整形して2値信号を得る波形整形器と、を備え、前記積分器は、前記接続点と前記第1または第2の電源の何れかとの間に接続されたコンデンサからなり、前記コンデンサを充電するときに前記第1の電流源と前記第2の電流源との差分電流を割り当て、前記コンデンサを放電するときに前記第1および第2の電流源の他方の電流源を割り当てる。
【0019】
この構成によれば、スイッチが開状態にある場合、第1および第2の電流源の他方の電流源(例えば、図1に示す電流源IS12)により、第1の電流源と第2の電流源との間の接続点が駆動(放電)され、この接続点の電位が第2の電源側に向かって変化する。また、スイッチが閉状態にある場合、第1の電源と第2の電源との電流値の差分により接続点が駆動(充電)され、この接続点の電位が第1の電源の電圧に向かって変化する。さらに、発振回路の出力信号を受けてスイッチが開閉動作を繰り返した場合、第1の電流源と第2の電流源との間の接続点に現れる信号が積分器で積分され、この積分された信号の電圧が、第1の電源と第2の電源との間の或る電圧に向かって変化する。この積分された信号は波形整形器で整形され、発振回路の出力信号に起因するリップル成分が除去され、2値信号に変換される。従って、例えば発振回路が発振状態にない場合にスイッチを開状態とすれば、発振状態にある場合と発振状態にない場合とで積分器により積分された信号レベルが異なったものとなり、これを入力する波形整形器から出力される2値信号の論理値に発振回路の発振状態が反映される。よって、この2値信号の論理値から発振回路が発振状態にあるか否かを把握することが可能になる。
【0020】
請求項2に記載された発明に係る発振検知回路は、第1の電源と第2の電源との間に直列接続され、電流値が互いに異なる第1および第2の電流源と、前記第1の電流源と前記第2の電流源との間の接続点に現れる信号を積分する積分器と、前記第1および第2の電流源の一方の電流源と前記接続点との間に介挿され、該電流源が発生する電流を発振回路の出力信号に基づき断続させるスイッチと、前記積分器によって積分された信号の波形を整形して2値信号を得る波形整形器と、を備え、前記積分器は、前記接続点と前記第1または第2の電源の何れかとの間に接続されたコンデンサからなり、前記コンデンサを放電するときに前記第1の電流源と前記第2の電流源との差分電流を割り当て、前記コンデンサを充電するときに前記第1および第2の電流源の他方の電流源を割り当てる。
【0021】
この構成によれば、スイッチが開状態にある場合、第1および第2の電流源の他方の電流源(例えば、図1に示す電流源IS21)により、第1の電流源と第2の電流源との間の接続点が駆動(充電)され、この接続点の電位が第2の電源側に向かって変化する。また、スイッチが閉状態にある場合、第1の電源と第2の電源との電流値の差分により接続点が駆動(放電)され、この接続点の電位が第1の電源の電圧に向かって変化する。さらに、発振回路の出力信号を受けてスイッチが開閉動作を繰り返した場合、第1の電流源と第2の電流源との間の接続点に現れる信号が積分器で積分され、この積分された信号の電圧が、第1の電源と第2の電源との間の或る電圧に向かって変化する。この積分された信号は波形整形器で整形され、発振回路の出力信号に起因するリップル成分が除去され、2値信号に変換される。従って、例えば発振回路が発振状態にない場合にスイッチを開状態とすれば、発振状態にある場合と発振状態にない場合とで積分器により積分された信号レベルが異なったものとなり、これを入力する波形整形器から出力される2値信号の論理値に発振回路の発振状態が反映される。よって、この2値信号の論理値から発振回路が発振状態にあるか否かを把握することが可能になる。
【0022】
請求項3に記載された発明に係る発振検知回路は、請求項1または2記載の発振検知回路において、前記一方の電流源は、前記第1および第2の電流源の何れか電流値の大きな電流源であり、前記他方の電流源は、前記第1および第2の電流源の何れか電流値の小さな電流源であることを特徴とする。
請求項4に記載された発明に係る発振検知回路は、請求項1ないし3の何れか1項記載の発振検知回路において、前記発振回路の出力信号が、該発振回路が発振状態にない場合に前記第1および第2の電流源の何れか電流値の大きな電流源の電流経路を遮断するような特定の信号レベルに固定される。
【0023】
また、請求項5に記載された発明に係る発振検知回路は、一方の電極端子が第1または第2の電源に接続された第1のコンデンサと、前記第1の電源から前記第1のコンデンサの他方の電極端子に向けて第1の電流を流し込む第1の電流源と、前記第1の電流の経路上に介挿され、発振回路の出力信号に基づき開閉して前記第1の電流を断続させる第1のスイッチと、前記第1のコンデンサの他方の電極端子から前記第2の電源に向けて第2の電流を流し出す第2の電流源と、前記第1のコンデンサの他方の電極端子に現れる電圧信号を整形する第1の波形整形器と、一方の電極端子が第1または第2の電源に接続された第2のコンデンサと、前記第1の電源から前記第2のコンデンサの他方の電極端子に向けて第3の電流を流し込む第3の電流源と、前記第2のコンデンサの他方の電極端子から前記第2の電源に向けて第4の電流を流し出す第4の電流源と、前記第4の電流の経路上に介挿され、前記発振回路の出力信号に基づき前記第1のスイッチに対し相補的に開閉して前記第4の電流を断続させる第2のスイッチと、前記第2のコンデンサの他方の電極端子に現れる電圧信号を整形する第2の波形整形器と、前記第1および第2の波形整形器の各出力信号を入力し、これら出力信号の信号レベルが所定の論理値の組み合わせを示す場合に前記発振回路が発振したことを示す信号を出力する論理回路と、を備え、前記第1のスイッチが閉じたときに、前記第1の電流と前記第2の電流との差分電流を前記第1のコンデンサに流し込み、前記第2のスイッチが閉じたときに、前記第3の電流と前記第4の電流との差分電流を前記第2のコンデンサから流し出すように構成される。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、第1の電源と第2の電源との間に第1および第2の電流源を直列接続し、前記第1および第2の電流源の何れか大きな電流源の電流を、発振回路の出力信号に基づき開閉するスイッチにより断続させ、前記第1の電流源と前記第2の電流源との間の接続点に現れる信号を積分し、その波形を整形して2値信号を得るようにしたので、トランジスタ特性のバラツキや変動に影響されることなく、発振回路の発振を安定的に検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1に、この発明の実施の形態1に係る発振検知回路100の構成を示す。この発振検知回路100は、図示しない発振回路の発振を検知するためのものであって、大きな電流源の電流を発振信号に基づき断続させてコンデンサを充電/放電すると共に、小さな電流源により上記コンデンサを放電/充電させることにより発振を検知するものである。
【0026】
図1に示すように、電源VDDとグランドVSSとの間には、電流源IS11および電流源IS12がこの順に直列に接続される。電流源IS11と電流源IS12の電流値は互いに異なり、電流源IS11の電流値が電流源IS12の電流値よりも大きく設定されている。しかも、そのような大小関係を満足しながら、電流源IS11が供給する電流値と、電流源IS12が供給する電流値との比率が所定値に設定される。例えば、電流源IS11の電流値は18マイクロアンペア程度に設定され、電流源IS12の電流値は3マイクロアンペア程度に設定される。また、コンデンサC1の一方の電極はグランドVSSに接続され、他方の電極は電流源IS11と電流源IS12との間の接続点P1に接続される。このコンデンサC1は積分器として機能する。なお、コンデンサC1は接続点P1と電源VDDとの間に接続してもよい。つまり、コンデンサC1の一方の電極は電源VDDまたはグランドVSSの何れに接続してもよい。
【0027】
電流源IS11と接続点P1との間にはスイッチSW1が介挿される。このスイッチSW1は、図示しない発振回路の出力信号NCKMに基づき開閉するものであって、発振回路が発振状態にある場合に、この発振回路の出力信号NCKM(発振信号)に基づき電流源IS11の電流I11を断続させる。さらに、接続点P1には、波形整形器として機能するシュミットトリガーST1の入力部が接続され、これによりコンデンサC1によって積分された信号が波形整形されて2値信号とされる。
【0028】
上述の電流源IS11,IS12、コンデンサC1、スイッチSW1、シュミットトリガーST1からなる回路系に対して相補的に動作する回路系として、電流源IS21,IS22、コンデンサC2、スイッチSW2、シュミットトリガーST2が設けられている。具体的には、電源VDDとグランドVSSとの間には、電流源IS21および電流源IS22がこの順に直列接続され、積分器として機能するコンデンサC2の一方の電極はグランドVSSに接続され、その他方の電極は電流源IS21と電流源IS22との間の接続点P2に接続される。電流源IS21と電流源IS22の電流値は互いに異なり、電流源IS22の電流値が電流源IS21の電流値よりも十分に大きく設定されている。例えば、電流源IS22の電流値は18マイクロアンペア程度に設定され、電流源IS21の電流値は3マイクロアンペア程度に設定される。
【0029】
また、電流源IS22と接続点P2との間(即ち電流源IS22の電流経路上)にはスイッチSW2が介挿される。このスイッチSW2は、上述の発振回路の出力信号NCKMに基づきスイッチSW1に対し相補的に開閉するものである。この実施の形態1では、出力信号NCKMがローレベルのとき、スイッチSW1が閉状態となり、スイッチSW2が開状態となる。また、出力信号NCKMがハイレベルのときには逆にスイッチSW1が開状態となり、スイッチSW2が閉状態となる。さらに、接続点P2には、波形整形器として機能するシュミットトリガーST2の入力部が接続される。ただし、このシュミットトリガーST2はインバータ機能を有する。
【0030】
上述のシュミットトリガーST1,ST2の各出力信号は論理積回路ANに入力され、この論理積回路ANの出力信号は、発振を検知したことを示す検知信号OSCSTPとされる。
なお、この実施の形態では、検知信号OSCSTPは、発振を検知したことを示すものとするが、逆に言えば、発振の停止を検知したことを示すものでもある。この検知信号OSCSTPに何れの意味を持たせるかについては、この検知信号OSCSTPの用途に応じて適切に取り決めればよい。
【0031】
以下、図2を参照して、この実施の形態1の動作を説明する。
まず、図示しない発振回路が発振状態にない場合を説明する。この場合、発振回路の出力信号NCKMがローレベルに固定されていれば、スイッチSW1が閉状態とされる。これにより、電源VDDとコンデンサC1との間の電流経路が形成され、電流源IS11が電源VDDからコンデンサC1の他方の電極端子に向けて電流I11を流し込み、コンデンサC1を充電する。この充電動作と並行して、電流源IS12がコンデンサC1の他方の電極端子からグランドVSSに向けて電流I12を流し出し、コンデンサC1を放電する。
【0032】
即ちこの場合、コンデンサC1は、電流I11から電流I12を差し引いて得られる差分電流により見かけ上充電される。ここで、電流源IS11の電流値は電流源IS12の電流値よりも十分に大きいから、コンデンサC1の他方の電極端子に現れる信号TRIUの信号レベルは、電源VDDの電圧の近くまで上昇し、シュミットトリガーST1のハイレベルに対する入力論理閾値を越える。従って、この信号TRIUを入力するシュミットトリガーST1は、2値信号としてハイレベルを出力する。
【0033】
一方、発振回路の出力信号NCKMがローレベルの場合、スイッチSW2が開状態となるため、コンデンサC2と電流源IS22(を介してグランドVSS)との間の電流経路は遮断される。従ってこの場合、電流源IS21がコンデンサC2に電流I21を流し込み、このコンデンサC2を電源VDDの電圧にまで充電する。これにより、コンデンサC2の電極端子に現れる信号TRIDの信号レベルはシュミットトリガーST2のハイレベルに対する入力論理閾値VIHを越え、シュミットトリガーST2は2値信号としてローレベルを出力する。
結局のところ、発振回路が発振状態になく、その出力信号NCKMがローレベルに固定されている場合、シュミットトリガーST1がハイレベルを出力し、シュミットトリガーST2がローレベルを出力するため、これらを入力する論理積回路ANは、検知信号OSCSTPとしてローレベルを出力する。
【0034】
なお、発振回路の出力信号NCKMがハイレベルに固定されているとした場合には、シュミットトリガーST1,ST2がそれぞれ出力する信号レベルが逆になるが、論理積回路ANから出力される検知信号OSCSTPの信号レベルは同様にローレベルとされる。従って、発振回路が発振状態にない場合には、検知信号OSCSTPとしてローレベルが固定的に出力される。
【0035】
次に、図2を参照して発振回路が発振状態に移行した場合の動作を説明する。
発振回路が発振すると、その出力信号NCKMとして発振信号がスイッチSW1,SW2に与えられ、スイッチSW1,SW2が相補的に開閉する。ここで、スイッチSW2が開閉する過程において、発振回路の出力信号NCKMがハイレベルの区間でスイッチSW2が閉じ、電流源IS22の電流I22から電流源IS21の電流I21を差し引いた差分電流によりコンデンサC2が急速に放電される。従ってこの区間では、信号TRIDの信号レベルが急激に低下する。
【0036】
この後、発振回路の出力信号NCKMがローレベルになると、スイッチSW2が開き、コンデンサC2が電流源IS21の電流I21により充電される。このとき、電流I21は小さく設定されているため、信号TRIDの信号レベルが緩やかに上昇する。このため、信号TRIDの信号レベルが当初の信号レベルにまで上昇する前に、スイッチSW2が再び閉状態となって、信号TRIDの信号レベルがさらに低下する。従って、発振回路が発振状態にある場合、信号TRIGDの信号レベルは徐々に低下し、時刻t1でシュミットトリガーST2のローレベルに対する入力論理閾値VILを下回る。これを受けてシュミットトリガーST2は2値信号としてハイレベルを出力する。
【0037】
一方、発振回路の出力信号NCKMに基づきスイッチSW1が開閉する過程において、この出力信号NCKMがローレベルの区間でスイッチSW1が閉じ、電流源IS11の電流I11から電流源IS12の電流I12を差し引いた差分電流によりコンデンサC1が急速に充電される。従ってこの区間では、信号TRIUの信号レベルが急激に上昇する。
【0038】
続いて、発振回路の出力信号NCKMがハイレベルになると、スイッチSW1が開き、コンデンサC1が電流源IS12の電流I12により放電される。このとき、電流I12が小さく設定されているので、信号TRIUの信号レベルが緩やかに降下する。このため、信号TRIUの信号レベルが当初の信号レベルにまで低下する前に、スイッチSW1が再び閉状態となって、信号TRIUの信号レベルがさらに上昇する。従って、発振回路が発振状態にある場合、信号TRIUの信号レベルは徐々に上昇し、時刻t2でシュミットトリガーST1のハイレベルに対する入力論理閾値VIHを上回り、シュミットトリガーST1は2値信号としてハイレベルを出力する。従って、論理積回路ANは、シュミットトリガーST1,ST2の何れからもハイレベルの2値信号を入力し、検知信号OSCSTPとしてハイレベルを出力する。これにより発振回路の発振が検知される。
以上で実施の形態1を説明した。
【0039】
(実施の形態2)
以下、この発明の実施の形態2を説明する。
この実施の形態2は、上述の実施の形態1が抱える不都合を解消するものであって、実施の形態2を説明する前に、実施の形態1が抱える不都合な点について説明しておく。上述の実施の形態1によれば、接続点P1,P2に現れる信号TRIU,TRIDには、スイッチSW1,SW2の開閉動作に伴ってリップルが発生する。通常であれば、このリップルは、シュミットトリガーST1,ST2のヒステリシス特性により除去され、検知信号OSCSTPにはリップルの影響は表れない。
【0040】
しかしながら、シュミットトリガーST1,ST2のヒステリシス特性では吸収できない程に信号TRIU,TRIDのリップルが顕著になると、検知信号OSCSTPにグリッジが発生する場合がある。例えば、スイッチSW2が閉じて信号TRIDがシュミットトリガーST2のローレベルに対する入力論理閾値VILを下回り、これを受けて検知信号OSCSTPがハイレベルになった直後にスイッチSW2が開くと、電流源IS21によりコンデンサC2が緩やかに充電されて信号TRIDの信号レベルが上昇する。
【0041】
この結果、一旦ハイレベルになった検知信号OSCSTPがローレベルに引き戻され、検知信号OSCSTPにグリッジが発生することになる。同様に、信号TRIUがシュミットトリガーST1のハイレベルに対する入力論理閾値VIHを上回った直後にスイッチSW1が開くと、電流源IS12によりコンデンサC1が緩やかに放電されて信号TRIUの信号レベルが降下し、検知信号OSCSTPにグリッジが発生することになる。この実施の形態2では、こうしたグリッジの発生を防止する発振検知回路を提案する。
【0042】
図3に、この実施の形態2に係る発振検知回路200の構成を示す。この発振検知回路200は、上述の実施の形態1に係る図1に示す構成において、論理積回路ANから出力された信号を受けて電流源IS12の電流I12および電流源IS21の電流I21を一時的に遮断するための電流遮断回路(符号なし)をさらに備える。
なお、図3において、図1に示す要素と共通する要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
具体的に構成を説明する。図3に示す発振検知回路200は、上述の実施の形態1に係る発振検知回路100の構成要素に加え、上述の電流遮断回路として、インバータIV1,IV2,IV3、電流源IS3、スイッチSW31,SW32、コンデンサC3、否定的論理積回路NA、およびスイッチSW12,SW21からなる回路系を備える。ここで、電流源IS12とグランドVSSとの間、即ち電流源IS12の電流経路上には、後述する信号HLDNに基づき開閉するスイッチSW12が介挿される。また、電源VDDと電流源IS21との間、即ち電流源IS21の電流経路上には、後述する信号HLDPに基づき開閉するスイッチSW21が介挿される。スイッチSW12は信号HLDNがハイレベルのときに閉状態となり、スイッチSW21は信号HLDPがローレベルのときに閉状態となる。
【0044】
論理積回路ANの出力部にはインバータIV1の入力部が接続され、検知信号OSCSTPを反転させて後述するスイッチSW31,SW32に与える。電源VDDとグランドVSSとの間には、電流源IS3、スイッチSW31,SW32がこの順に接続される。スイッチSW31,SW32は、上述のインバータIV1の出力信号に基づき相補的に開閉するものである。スイッチSW31とスイッチSW32との間の接続点P3にはインバータIV2の入力部が接続され、接続点P3とグランドVSSとの間にはコンデンサC3が接続される。これらインバータIV1、電流源IS3、スイッチSW31,SW32、コンデンサC3、およびインバータIV2は、検知信号OSCSTPを遅延させる遅延回路(符号なし)を構成し、インバータIN2の出力信号が遅延信号OSCDLYNとされる。
【0045】
上述の論理積回路ANから出力される検知信号OSCSTPと、インバータIV2から出力される遅延信号OSCDLYNとは、否定的論理積回路NAの入力部に与えられ、この否定的論理積回路NAの出力部はインバータIV3の入力部に接続される。否定的論理積回路NAの出力部に現れる信号は、信号HLDNとしてスイッチSW12に与えられ、このスイッチの開閉を制御する。また、インバータIV3の出力部に現れる信号は、信号HLDPとしてスイッチSW21に与えられ、このスイッチの開閉を制御する。これら否定的論理積回路NAおよびインバータIV3と上述の遅延回路は、パルス発生回路を構成し、検知信号OSCSTPを受けて所定のパルス幅を有するパルス信号を信号HLDN,HLDPとして発生する。
【0046】
以下、図4に示すタイミングチャートを参照して、この実施の形態2に係る発振検知回路200の動作を説明する。
この実施の形態2に係る発振検知回路の動作上の特徴は、図示しない発振回路の発振が検知されて検知信号OSCSTPがハイレベルになった後に、電流源IS12,IS21の電流を一時的に遮断することにある。発振回路が発振してから検知信号OSCSTPが出力されるまでの動作については、上述の実施の形態1と同様であるから、以下では、検知信号OSCSTPがハイレベルに遷移した後の動作を中心に説明する。
【0047】
まず、図3において、発振が検知されない場合、即ち検知信号OSCSTPがローレベルにある場合、これを入力するインバータIV1がハイレベルを出力し、スイッチSW31が開状態とされ、スイッチSW32が閉状態とされる。このため、コンデンサC3が放電され、接続点P3に現れる信号OSCDLYがローレベルとなり、これを入力するインバータIV2が遅延信号OSCDLYNとしてハイレベルを出力する。これら検知信号OSCSTPおよび遅延信号OSCDLYNを入力する否定的論理積回路NAは、信号HLDNとしてハイレベルを出力し、これを入力するインバータIV3は、信号HLDPとしてローレベルを出力する。従って、スイッチSW12,SW21は共に閉状態とされ、コンデンサC1,C2の充放電に着目すれば、上述の図1に示す構成と等価になる。
【0048】
上述の状態から、図4に示す時刻t11で検知信号OSCSTPがハイレベルに遷移すると、これを入力するインバータIV1がローレベルを出力する。これを受けて、スイッチSW31が閉状態となり、スイッチSW32が開状態となる。このため、コンデンサC3が電流源IS3の電流I3で充電され、接続点P3に現れる信号OSCDLYの信号レベルが徐々に上昇する。この信号OSCDLYの信号レベルが、時刻t12でインバータIV2の入力論理閾値VITを越えると、インバータIV2は遅延信号OSCDLYNとしてローレベルを出力する。即ち、検知信号OSCSTPは、概ねコンデンサC3の充電に要する一定時間TCだけ遅延され、遅延信号OSCDLYNとして反転されてインバータIV2から出力される。
【0049】
検知信号OSCSTPおよび遅延信号OSCDLYNを入力する否定的論理積回路NAは、検知信号OSCSTPおよび遅延信号OSCDLYNが共にハイレベルとなる時刻t11から時刻t12にかけて、信号HLDNとしてローレベルのパルス信号を出力し、これを入力するインバータIV3が信号HLDPとしてハイレベルのパルス信号を出力する。これを受けてスイッチSW12,SW21が一定時間にわたって共に開状態となり、電流源IS12,IS21の電流I12,I21が一時的に遮断される。
【0050】
ここで、電流I12,I21が遮断されると、スイッチSW1,SW2が開状態となっても、接続点P1,P2にそれぞれ現れる信号TRIU,TRIDの信号レベルが保持される。即ち、スイッチSW12が開状態になると、接続点P1に現れる信号TRIUは、それまでスイッチSW1が閉状態にあったときの信号レベルに維持される。同様に、スイッチSW21が開状態になると、接続点P2に現れる信号TRIDは、それまでスイッチSW2が閉状態にあったときの信号レベルに維持される。
【0051】
従って、信号TRIDがシュミットトリガーST2のローレベルの入力論理閾値VILを下回った直後に、電流源IS21により信号TRIDの信号レベルが上昇することがなくなり、同様に信号TRIUがシュミットトリガーST1のハイレベルの入力論理閾値VIHを上回った直後に、電流源IS12により信号TRIUの信号レベルが降下することがなくなる。従って、検知信号OSCSTPがハイレベルになった後、この検知信号OSCSTPにグリッジが発生することがなくなる。以上で実施の形態2を説明した。
【0052】
上述した実施の形態1および実施の形態2によれば、電流値が異なり、かつその比率が所定値に設定された電流源を用いることにより、信号TRIU,TRIDの時定数を決定している。このため、製造、温度、電源電圧等に起因したトランジスタ特性(オン抵抗など)のバラツキによる影響がなく、安定的に発振回路の発振を検知することが可能になり、製品(LSI)としての歩留まりを改善することが可能になる。
【0053】
即ち、LSI等の場合、各トランジスタのレイアウトパターンの向きを合わせておけば、製造条件、温度条件、電源電圧等に対して各トランジスタの特性が同じ方向に変動するという性質がある。即ち、個々のデバイスの特性値の絶対値を改善することは容易ではないが、各デバイスの特性値の比率(相対値)を揃えることは比較的容易である。本発明はこの性質に着目したものであって、例えば電流源IS11,IS12を構成する各素子(トランジスタや抵抗など)の特性の変動方向が一致するように各素子を形成しておけば、素子特性が変動したとしても電流値IS11,IS12の比率は一定に保たれる。従って、電流源を構成するトランジスタのオン抵抗にバラツキが生じたとしても、コンデンサの充放電(積分動作)を正常に行うこができ、発振検知動作を安定化させることができる。
【0054】
参考までに、上述の発振検知回路の応用例を説明する。図5に、上述の実施の形態に係る発振検知回路の第1の応用例として、他励発振型のD級増幅器300への応用例を示す。この第1の応用例は、発振回路の発振が停止した場合、D級増幅器内部の変調回路305から駆動回路307に伝達される信号を遮断し、スピーカから音漏れが生じないように対策するものである。即ち、図5において、発振回路301には、水晶振動子XTが外付けされており、この発振回路301の出力信号と外部からのクロック信号CKINの何れかがセレクタ302により選択され、発振検知回路303と変調回路305に与えられる。
【0055】
変調回路305は、セレクタ302により選択された発振信号またはクロック信号をキャリア信号とし、入力段304を介して入力された楽音信号SIGに基づきPWM変調されたパルス信号を生成するものである。このパルス信号は論理積回路306を介して駆動回路307に与えられ、パワーMOSトランジスタ308,309が相補的に導通制御される。これにより出力端子TOには楽音信号SIGにがパルス幅に反映されたパルス信号が出力される。出力端子TOにはローパスフィルタを介してスピーカの入力端子が接続され、このローパスフィルタによりパルス信号からキャリア信号が除去され、アナログ量の信号がスピーカに供給される。
【0056】
ここで、この他励発振型のD級増幅器の場合、内部の発振回路301から出力される発振信号または外部のクロックCKINに基づいて回路が動作する。この時、発振検知回路303は、セレクタ302から変調回路305に供給される発振信号(またはクロック信号)を検知して検知信号OSCSTPを論理積回路306に出力する。これにより、発振が停止している時またはクロック信号が入力されていない時に、論理積回路306の出力信号がローレベルに固定され、入力段304に入力された信号SIGが無制御な状態で駆動回路に伝達されることを禁止し、スピーカが無秩序な信号により駆動されることを防止する。
【0057】
図6に、上述の実施の形態に係る発振検知回路の第2の応用例として、CPU(Central Processing Unit)403への応用例を示す。図6において、発振回路401、発振検知回路402、および論理積回路群404は、上述の図5に示す発振回路301、発振検知回路303、および論理積回路306に対応する。この例では、発振検知回路402が発振回路401の発振の停止を検出した場合、この発振検知回路が出力する検知信号OSCSTPを受けて、論理積回路群404の出力信号がローレベルに固定される。これによりCPU403の出力バスが全てローレベルに固定され、この出力バスに制御不能に信号が出力されなくなる。
【0058】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば上述の図1に示す例では、電流源IS11,IS12、スイッチSW1、コンデンサC1、シュミットトリガーST1からなる第1の回路系と、電流源IS21,IS22、スイッチSW2、コンデンサC2、およびシュミットトリガーST2からなる第2の回路系との2系統を備えるものとしたが、発振状態にない場合の発振回路の出力信号NCKMの信号レベルが一義的に固定されるのであれば、上述の2系統の回路の何れかのみを備えるものとすればよい。具体的には、発振状態にない場合に発振回路の出力信号NCKMがローレベルに固定されるのであれば、上述の第2の回路系のみを備えるものとすればよく、また出力信号NCKMがハイレベルに固定されるのであれば、上述の第1の回路系のみを備えるものとすればよい。この場合、論理積回路ANは不要となり、シュミットトリガーST1,ST2の出力信号を検知信号OSCSTPとして用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態1に係る発振検知回路の構成を示す回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る発振検知回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る発振検知回路の構成を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る発振検知回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施の形態に係る発振検知回路の第1の応用例(D級増幅器に対する応用例)を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態に係る発振検知回路の第2の応用例(CPUに対する応用例)を示すブロック図である。
【図7】従来技術に係る発振検知回路を説明するための図である。
【図8】従来技術に係る他の発振検知回路を説明するための図である。
【図9】従来技術に係る発振検知回路に内在する課題を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
IS11,IS12,IS21,IS22,IS3;電流源、SW1,SW2,SW12,SW21,SW31,SW32;スイッチ、C1,C2,C3;コンデンサ、ST1,ST2;シュミットトリガー、AN;論理積回路、IV1,IV2,IV3;インバータ、NA;否定的論理積回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源と第2の電源との間に直列接続され、電流値が互いに異なる第1および第2の電流源と、
前記第1の電流源と前記第2の電流源との間の接続点に現れる信号を積分する積分器と、
前記第1および第2の電流源の一方の電流源と前記接続点との間に介挿され、該電流源が発生する電流を発振回路の出力信号に基づき断続させるスイッチと、
前記積分器によって積分された信号の波形を整形して2値信号を得る波形整形器と、
を備え、
前記積分器は、前記接続点と前記第1または第2の電源の何れかとの間に接続されたコンデンサからなり、前記コンデンサを充電するときに前記第1の電流源と前記第2の電流源との差分電流を割り当て、前記コンデンサを放電するときに前記第1および第2の電流源の他方の電流源を割り当てる発振検知回路。
【請求項2】
第1の電源と第2の電源との間に直列接続され、電流値が互いに異なる第1および第2の電流源と、
前記第1の電流源と前記第2の電流源との間の接続点に現れる信号を積分する積分器と、
前記第1および第2の電流源の一方の電流源と前記接続点との間に介挿され、該電流源が発生する電流を発振回路の出力信号に基づき断続させるスイッチと、
前記積分器によって積分された信号の波形を整形して2値信号を得る波形整形器と、
を備え、
前記積分器は、前記接続点と前記第1または第2の電源の何れかとの間に接続されたコンデンサからなり、前記コンデンサを放電するときに前記第1の電流源と前記第2の電流源との差分電流を割り当て、前記コンデンサを充電するときに前記第1および第2の電流源の他方の電流源を割り当てる発振検知回路。
【請求項3】
前記一方の電流源は、前記第1および第2の電流源の何れか電流値の大きな電流源であり、前記他方の電流源は、前記第1および第2の電流源の何れか電流値の小さな電流源であることを特徴とする請求項1または2記載の発振検知回路。
【請求項4】
前記発振回路の出力信号は、該発振回路が発振状態にない場合に前記第1および第2の電流源の何れか電流値の大きな電流源の電流経路を遮断するような特定の信号レベルに固定されることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項記載の発振検知回路。
【請求項5】
一方の電極端子が第1または第2の電源に接続された第1のコンデンサと、
前記第1の電源から前記第1のコンデンサの他方の電極端子に向けて第1の電流を流し込む第1の電流源と、
前記第1の電流の経路上に介挿され、発振回路の出力信号に基づき開閉して前記第1の電流を断続させる第1のスイッチと、
前記第1のコンデンサの他方の電極端子から前記第2の電源に向けて第2の電流を流し出す第2の電流源と、
前記第1のコンデンサの他方の電極端子に現れる電圧信号を整形する第1の波形整形器と、
一方の電極端子が第1または第2の電源に接続された第2のコンデンサと、
前記第1の電源から前記第2のコンデンサの他方の電極端子に向けて第3の電流を流し込む第3の電流源と、
前記第2のコンデンサの他方の電極端子から前記第2の電源に向けて第4の電流を流し出す第4の電流源と、
前記第4の電流の経路上に介挿され、前記発振回路の出力信号に基づき前記第1のスイッチに対し相補的に開閉して前記第4の電流を断続させる第2のスイッチと、
前記第2のコンデンサの他方の電極端子に現れる電圧信号を整形する第2の波形整形器と、
前記第1および第2の波形整形器の各出力信号を入力し、これら出力信号の信号レベルが所定の論理値の組み合わせを示す場合に前記発振回路が発振したことを示す信号を出力する論理回路と、
を備え、
前記第1のスイッチが閉じたときに、前記第1の電流と前記第2の電流との差分電流を前記第1のコンデンサに流し込み、前記第2のスイッチが閉じたときに、前記第3の電流と前記第4の電流との差分電流を前記第2のコンデンサから流し出すように構成された発振検知回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−189719(P2007−189719A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32682(P2007−32682)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【分割の表示】特願2002−89332(P2002−89332)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】