説明

発振装置及び電子機器

【課題】圧電素子を発振源とした発振装置において、大型化を抑制でき、かつ音圧を高くする。
【解決手段】この発振装置は、振動部材10、圧電素子20、支持枠40、第1磁性層22、及び磁性膜(第2磁性層)30を備えている。圧電素子20は、振動部材10上に設けられている。支持枠40は振動部材10の縁を保持している。第1磁性層22は、圧電素子20のうち振動部材10とは逆側の面に設けられており、着磁されている。磁性膜30は着磁されており、磁性層22に対向する位置に、磁性層22と反発しあう向きに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を利用した発振装置は、例えばパラメトリックスピーカや、超音波センサの発振源として使用されている。この発振装置は、磁石を用いて振動板を振動させる動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という利点がある。
【0003】
なお、特許文献1には、圧電体の外周にリング状のフェライトゴムからなるエッジを取り付け、このエッジを上下に稼動できるように枠に取り付けたイヤホンが記載されている。エッジの上方及び下方には、互いに逆極性の磁石が配置されている。そしてフェライトゴムの外周側には電磁石が配置されている。ここで、電磁石への通電を、圧電体への信号入力に同期させると、エッジは圧電体とともに上下に振動する。このため、低音再生時に大きな振幅を得ることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−23758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電素子を利用した発振装置は、大きな音圧を得にくい。特許文献1に記載の技術では、音圧を高くすることはできるが、部品数が多いため、発振装置が大型化してしまう。
【0006】
また、発振装置は、用途によっては機械品質係数が高いほうが好ましい場合がある。
【0007】
本発明の目的は、圧電素子を発振源として利用しており、大型化を抑制でき、かつ音圧を高くすることができる発振装置及び電子機器を提供することにある。また本発明の他の目的は、圧電素子を用いた発振装置において、機械品質係数を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、振動部材と、
前記振動部材上に設けられた圧電素子と、
前記振動部材の縁を保持する支持枠と、
前記圧電素子のうち前記振動部材とは逆側の面に設けられ、着磁された第1磁性層と、
着磁されており、前記第1磁性層に対向する位置に、前記第1磁性層と反発しあう向きに配置された第2磁性層と、
を備える発振装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、振動部材と、
前記振動部材上に設けられた圧電素子と、
音孔を有する支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記音孔とつながっており、前記振動部材及び圧電素子が収容されている中空部と、
前記振動部材のうち前記圧電素子とは逆側の面に設けられた第1磁石と、
前記圧電素子のうち前記振動部材とは逆側の面に設けられた第2磁石と、
前記支持部材の前記中空部に設けられ、前記第1磁石と対向する位置に前記第1磁石と反発しあう向きに設けられた第3磁石と、
前記支持部材の前記中空部に設けられ、前記第2磁石と対向する位置に前記第2磁石と反発しあう向きに設けられた第4磁石と、
を備え、
前記圧電素子及び前記振動部材は、前記第1磁石と前記第3磁石の間の反発力、及び前記第2磁石と前記第4磁石の間の反発力によって、前記中空部内で支持されている発振装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、上記した発振装置を有する電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圧電素子を発振源とした発振装置において、大型化を抑制でき、かつ音圧を高くすることができる。また本発明によれば、圧電素子を用いた発振装置において、機械品質係数を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。
【図3】第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図4】第3の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図5】樹脂部材の構造を示す平面図である。
【図6】第4の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図7】図6に示した発振装置を有する電子機器の機械回路図である。
【図8】第5の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。この発振装置は、振動部材10、圧電素子20、支持枠40、第1磁性層22、及び磁性膜(第2磁性層)30を備えている。圧電素子20は、振動部材10上に設けられている。支持枠40は振動部材10の縁を保持している。第1磁性層22は、圧電素子20のうち振動部材10とは逆側の面に設けられており、着磁されている。磁性膜30は着磁されており、磁性層22に対向する位置に、磁性層22と反発しあう向きに配置されている。以下、詳細に説明する。
【0015】
振動部材10はシート状であり、圧電素子20から発生した振動によって振動する。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材10は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1Gpa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材10の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0016】
圧電素子20は、例えばPZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。圧電素子20の平面形状は、振動部材10の平面形状よりも小さい。なお、圧電素子20は、圧電性を示す樹脂材料により形成されていても良い。
【0017】
磁性膜30は、例えば硬磁性材料(永久磁石など)、または磁歪材料(ニッケル、フェライトなど)により形成されている。磁性膜30の厚さは、例えば50μm以上1mm以下である。本実施形態において、磁性膜30は、支持枠40によって支持されている。
【0018】
支持枠40は、上記したように、振動部材10の縁を支持している。支持枠40は、樹脂により形成されていても良いし、剛性の高い金属により形成されていても良い。
【0019】
制御部50は、圧電素子20に発振信号を入力する。制御部50は、例えば外部から入力された音声データを変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて発振信号を生成して圧電素子20に入力する。この発振信号の周波数は、振動部材10及び圧電素子20のn次の共振周波数であるが、基本共振周波数であるのが好ましい。
【0020】
図2は、図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。発振装置は、支持枠40の端面が、筐体60の内壁に取り付けられる。本図に示す例において、振動部材10が筐体60の内壁に対向している。ただし磁性膜30に音孔が形成されている場合、発振装置は、磁性膜30が筐体60に対向する向きに固定されてもよい。
【0021】
筐体60には、音孔62が設けられている。そして支持枠40は、平面視で音孔62を内側に含んでいる。このため、音孔62は振動部材10と対向し、振動部材10が発振した音波は、音孔62を介して筐体60の外部に放射される。
【0022】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1磁性層22は圧電素子20のうち振動部材10とは逆側の面に形成されている。そして第1磁性層22は磁性膜30に対向している。第1磁性層22と磁性膜30は、いずれも着磁されており、互いに反発しあう方向を向いている。このため、振動部材10及び圧電素子20が変位して第1磁性層22が磁性膜30に近づくと、第1磁性層22は、磁性膜30から、元に戻る方向の反発力を受ける。すなわち、振動部材10及び圧電素子20は、磁性膜30から離れる方向については、磁性膜30をもうけない場合と比較して振幅が大きくなる。従って、発振装置が出す音波の音圧を高くすることができる。また、第1磁性層22及び磁性膜30を設けるのみでよいため、発振装置が大型化することを抑制できる。
【0023】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。この発振装置は、振動部材10が樹脂膜70を介して支持枠40に取り付けられている点を除いて、第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0024】
樹脂膜70は、振動部材10よりも弾性率の低い材料により形成されている。そして樹脂膜70は平面視で中空部を有しており、この中空部を塞ぐように振動部材10が配置されている。
【0025】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、振動部材10は、樹脂膜70を介して支持枠40に固定されている。このため、振動部材10は、樹脂膜70を設けない場合と比較して上下に変位しやすくなる。従って、発振装置が出す音波の音圧をさらに高くすることができる。
【0026】
また、樹脂膜70は振動部材10よりも内部損失が高いため、樹脂膜70を設けることにより、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子の機械品質係数Qを低くすることができる。また、振動部材10を樹脂膜70を介して支持枠40に取り付けているため、発振装置の耐衝撃性を高くすることができる。
【0027】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。この発振装置は、以下の点を除いて、第2の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0028】
まず、振動部材10には、両面に圧電素子20が設けられている。そしていずれの圧電素子20にも、制御部50から発振信号が入力される。すなわち本実施形態に係る発信装置は、バイモルフ型である。ただし、磁性膜30に対向しない圧電素子20には、第1磁性層22が設けられていない。
【0029】
また、磁性膜30は、シート状の樹脂部材72を介して支持枠40に取り付けられている。樹脂部材72は、弾性を有する材料、例えば樹脂膜70と同様の材料により形成されている。そして樹脂部材72は平面視で中空部を有しており、この中空部を塞ぐように磁性膜30が配置されている。
【0030】
図5は、樹脂部材72の構造を示す平面図である。樹脂部材72は、開口74を有している。開口74は、振動部材10及び圧電素子20が出す音波を、外部に放出するために設けられている。本実施形態では樹脂部材72は複数の梁を、支持枠40の中心で交差する方向に延伸させた構成を有している。そして各梁の一端は支持枠40に固定されており、他端は磁性膜30に固定されている。
【0031】
本実施形態によっても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、振動部材10及び圧電素子20をバイモルフ型にしたため、発振装置が出す音波の音圧をさらに高くすることができる。
【0032】
また、磁性膜30は、樹脂部材72を介して支持枠40に取り付けられている。このため、振動部材10及び圧電素子20が磁性膜30に近づく方向に変位すると、磁性膜30は、第1磁性層22から受ける反発力により、振動部材10および圧電素子20と同じ方向に変位する。その後、振動部材10及び圧電素子20が逆方向に変位すると、樹脂部材72の復元力及び慣性力により、磁性膜30は、振動部材10および圧電素子20と同じ方向に変位する。このため、磁性膜30及び樹脂部材72の基本共振周波数を調節することにより、振動部材10及び圧電素子20の振幅を大きくすることができる。この場合、発振装置が出す音波の音圧をさらに高くすることができる。
【0033】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。本実施形態に係る発振装置は、以下の点を除いて第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0034】
まず、支持枠40は、筒の両端を塞いだ形状を有している。すなわち支持枠40は、内側に中空部44を有している。振動部材10及び圧電素子20は、中空部44内に配置されている。支持枠40の一方の端面には音孔46が形成されているが、中空部44は音孔46に繋がっている。そして振動部材10及び圧電素子20は、音孔46に面している。なお中空部44のうち振動部材10及び圧電素子20の端面に面している面は、振動部材10のガイド面として機能する。なお、支持枠40の他方の端面にも、開口42が形成されている。なお、支持枠40は一体型である必要はなく、振動部材10及び圧電素子20を内部に挿入しやすくするために、複数の部品に分割されていても良い。
【0035】
そして圧電素子20のうち振動部材10とは逆側の面には磁石94が設けられており、中空部44の内面のうち磁石94と対向する位置には、磁石92が設けられている。磁石92は、磁石94と反発しあう向きに設けられている。
【0036】
また、振動部材10のうち圧電素子20とは逆側の面には磁石96が設けられており、中空部44の内面のうち磁石96と対向する位置には、磁石98が設けられている。磁石98は、磁石96と反発しあう向きに設けられている。
【0037】
そして、振動部材10及び圧電素子20は、磁石92と磁石94の間の反発力、及び磁石96と磁石98の間の反発力によって、中空部44内で支持されている。磁石92と磁石94は複数組設けられているのが好ましく、また、磁石96と磁石98も複数組設けられているのが好ましい。磁石92,94,96,98の配置及び数は、振動部材10及び圧電素子20を安定に支持できるように、適宜選択される。
【0038】
磁石92,94,96,98は、永久磁石であるのが好ましい。磁石92,94,96,98は、これら磁石内に生じる渦電流によるエネルギー損失を抑制するために、高抵抗材料、例えばフェライトにより形成されているのが好ましい。
【0039】
次に、本実施形態の作用及び効果について、図7を用いて説明する。図7は、図6に示した発振装置を有する電子機器の機械回路図である。この図において、発振装置の支持枠40は、例えば第1の実施形態において図2に示したように、電子機器の筐体60の内面に取り付けられている。筐体60、支持枠40、並びに振動部材10及び圧電素子20は、それぞれ質量m、バネ定数k、及び機械損失係数C有しており、また損失を起こしつつ振動を伝達する。一方、磁石92,94,96,98で生じるエネルギーの損失としては、渦電流が発生することによる損失が考えられるが、渦電流の量はわずかであるため、実質的に無視することができる。この傾向は、磁石92,94,96,98が高抵抗な磁性材料により形成されている場合、特に顕著になる。
【0040】
一方、振動部材10を機械的に支持枠40に取り付けた場合、この取り付け部分によって損失が発生する。
【0041】
従って、本実施形態によれば、振動による損失を低くすることができるため、発振装置の機械品質係数Qを高くすることができる。従って、発振装置をパラメトリックスピーカの発振源として使用する場合、その出力を大きくすることができる。
【0042】
(第5の実施形態)
図8は、第5の実施形態に係る発振装置の構成を示す断面図である。この発振装置は、以下の点を除いて、第4の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0043】
まず、中空部44の内部には、支持板100が設けられている。支持板100は、端部が支持枠40に埋め込まれており、かつ振動部材10に対向している。そして磁石98は、支持板100のうち振動部材10に対向している面の上に形成されている。支持板100は、例えばステンレスや真鍮などの金属により形成されている。
【0044】
また、支持枠40は、筒の一方の端面のみを塞いだ形状を有しており、この底面には開口42が形成されている。また支持枠40の他方の端面には、ガイド部材110がはめ込まれている。ガイド部材110は、筒の一面を塞ぎ、かつこの面に音孔46を設けた形状である。すなわち本実施形態では、ガイド部材110及び支持枠40によって、第4の実施形態における支持枠40と同様の形状が形成されている。
【0045】
振動部材10及び圧電素子20は、ガイド部材110の内側に配置されている。ガイド部材110の内側面は、振動部材10のガイド面として機能する。そして磁石92は、ガイド部材110に設けられている。
【0046】
本実施形態によっても、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10 振動部材
20 圧電素子
22 磁性層
30 磁性膜
40 支持枠
42 開口
44 中空部
46 音孔
50 制御部
60 筐体
62 音孔
70 樹脂膜
72 樹脂部材
74 開口
92 磁石
94 磁石
96 磁石
98 磁石
100 支持板
110 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材と、
前記振動部材上に設けられた圧電素子と、
前記振動部材の縁を保持する支持枠と、
前記圧電素子のうち前記振動部材とは逆側の面に設けられ、着磁された第1磁性層と、
着磁されており、前記第1磁性層に対向する位置に、前記第1磁性層と反発しあう向きに配置された第2磁性層と、
を備える発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記第2磁性層は、前記支持枠によって支持されている発振装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発振装置において、
前記第2磁性層は、弾性を有する保持部材を介して前記支持枠に取り付けられている発振装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発振装置において、
前記保持部材は樹脂部材である発振装置。
【請求項5】
振動部材と、
前記振動部材上に設けられた圧電素子と、
音孔を有する支持部材と、
前記支持部材に設けられ、前記音孔とつながっており、前記振動部材及び圧電素子が収容されている中空部と、
前記振動部材のうち前記圧電素子とは逆側の面に設けられた第1磁石と、
前記圧電素子のうち前記振動部材とは逆側の面に設けられた第2磁石と、
前記支持部材の前記中空部に設けられ、前記第1磁石と対向する位置に前記第1磁石と反発しあう向きに設けられた第3磁石と、
前記支持部材の前記中空部に設けられ、前記第2磁石と対向する位置に前記第2磁石と反発しあう向きに設けられた第4磁石と、
を備え、
前記圧電素子及び前記振動部材は、前記第1磁石と前記第3磁石の間の反発力、及び前記第2磁石と前記第4磁石の間の反発力によって、前記中空部内で支持されている発振装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発振装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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