説明

発泡を減じる風味付与剤を含む喫食可能な水溶性フィルム

喫食可能な水溶性フィルムを提供する。このフィルムは、少なくとも1種の水溶性ポリマー、及び発泡を減じる風味付与剤を含み、ここで該フィルムは、消泡剤または脱泡剤の添加を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2006年9月20日付で出願された、米国仮特許出願第60/846,064号に対する優先権を主張するものであり、該仮特許出願の内容は参照として本明細書に組み込まれる。
本発明は、喫食可能な水溶性フィルムに関し、またより詳しくは従来の消泡剤または脱泡剤に対する代替品を含有する、喫食可能な水溶性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムは、活性成分、例えば薬物、医薬等を搬送するための、放出系として使用することができる。しかし、歴史的には、フィルム及び該フィルムから薬物放出系を製造する方法は、これらの実用化を阻む多くの好ましからざる特性に悩まされてきた。
【0003】
薬理的に活性な成分を組込むフィルムは、失効したFuchs等に付与された米国特許第4,136,145号("Fuchs")に記載されている。これらのフィルムは、シートに成形され、乾燥され、次いで個々の用量単位に裁断される。該Fuchs特許の開示では、均一なフィルムの製造を主張しており、該フィルムは、水溶性ポリマー、界面活性剤、香料、甘味料、可塑剤及び薬物の組合せを含む。その主張するところによれば、これらの可撓性フィルムは、経口、局所または経腸用途にとって有用なものとして開示されている。Fuchs特許により開示された特定の用途の例は、口腔、直腸、膣、鼻及び耳の領域を含む、身体の粘膜領域への、該フィルムの適用を含んでいる。
【0004】
しかし、Fuchs特許に記載された方法で製造したフィルムを検討すると、このようなフィルムが、粒子を凝集または凝塊化し、即ち自己凝集を起こして、結果的に該フィルムを、本来的に不均一なものとするという欠点を持つことが、明らかとなる。この結果は、Fuchsのプロセスパラメータによるものと考えることができ、該パラメータは、恐らく記載されてはいないが、比較的長い乾燥期間の利用を含み、そのために、分子間引力、対流の作用、気流等により、このような凝集体の形成を容易とする。
【0005】
この凝集物の形成は、該フィルム成分及び共に存在するあらゆる活性成分のランダムな分布をもたらす。大きな用量を含む場合、該フィルムの寸法における僅かな変化が、フィルム当たりの活性成分の量における大きな差をもたらすであろう。このようなフィルムが、低用量で活性成分を含む場合には、該フィルムの一部分が、実質的に如何なる活性成分をも含まなくなる恐れがある。フィルムのシートは、通常単位用量に裁断されるので、結果的に幾つかの投与単位は、推奨される治療に必要とされる量の活性成分を含まないかあるいは不十分な量で該活性成分を含む恐れがある。該裁断されたフィルムにおいて、該活性成分の量に関する高い精度が達成できないことは、患者にとって有害となり得る。そのために、Fuchs特許等の方法によって製造された投与剤形は、政府または取締り機関、例えば米国フェデラルドラッグアドミニストレーション(U.S. Federal Drug Administration)(“FDA”)の、投与剤形における活性成分の変動に関する厳格な基準を、満足するものとは考えられない。一般に、様々な世界的取締り当局によって要求されている通り、投与剤形は、存在する活性成分の量において、10%を越えて変動してはならない。フィルムに基く投与単位に適用する場合、事実上該フィルムにおいて均一性が存在することが、必須である。
【0006】
フィルムの不均一化を導く上記の自己凝集性の問題は、Schmidtの米国特許第4,849,246 号("Schmidt")において扱われた。Schmidtは、Fuchsによって開示された方法が、均一なフィルムを与えないことを具体的に指摘し、また不均一なフィルムの生成が、必然的に正確な薬物投与を阻害し、これは、上で論じたように、医薬の領域においては特に重大であることを認めた。Schmidtは、Fuchsによって記載された如き単層フィルムが、正確な投与剤形を与え得るという考えを捨て、その代りに多層フィルムの形成によってこの問題を解決しようと試みた。更に、彼の方法は、高い経費及び複雑性の問題を付加する、多段法であり、また工業的用途にとって実用的ではない。
【0007】
他の米国特許も、従来のフィルム形成技術において固有の、粒子の自己凝集及び不均一性の問題を直接扱っていた。不均一性を克服するための試みの一つにおいて、Horstmann等による米国特許第5,629,003号及びZerbe等による米国特許第5,948,430号では、該フィルム中の成分の凝集を減じるための試みにおいて、追加の成分、即ち夫々ゲル形成剤及び多価アルコールを配合して、乾燥前に該フィルムの粘度を高めた。これらの方法は、追加のコストを必要とし、製造段階の増大をもたらす、追加の成分を必要とするという、欠点を有する。更に、これら両者の方法は、従来の長い時間を要する乾燥方法、例えばオーブン乾燥機、トンネル乾燥機、真空乾燥機、またはその他のこの種の乾燥機を用いる、高温空気浴等を使用している。この長期に及ぶ乾燥期間は、粘度改良剤を使用したとしても、該活性成分及び他の佐剤の凝集促進を助長する。このような方法は、また該活性成分、即ち薬物、またはビタミンC、もしくは他の成分を、無効にしまたは有害なものとしてしまう恐れさえある、水分及び高温に対して、これら物質を長期に渡り暴露する危険性をも持つ。
【0008】
長期に渡る水分への暴露中の、活性成分の劣化と関連するこれら懸念に加えて、従来の乾燥方法自体は、均一なフィルムを与えることができない。しばしば「熱履歴」と呼ばれる、従来の加工工程中の熱に対する暴露期間の長さ、及びこのような熱が適用される様式は、得られるフィルム製品の生成及び形態に、直接的な影響を及ぼす。薬物活性成分の配合にとって十分に適した、比較的厚みのあるフィルムが望ましい場合には、従来の乾燥法によって均一性を達成することは、とりわけ困難である。厚みのある均一なフィルムを得ることは一層困難である。というのは、該フィルムの表面及び該フィルムの内部部分は、乾燥中に、同時に同一の外部条件を経験しないからである。従って、このような従来の加工法によって作られた比較的厚いフィルムの観察は、対流及び分子間力によって引起される不均一な構造の存在を示し、また可撓性を維持するために10%を越える水分が必要とされる。遊離水分の量は、経時に伴って、しばしば該薬物がその効力を発現するのを妨害し、結果的に最終製品における非-整合性をもたらす恐れがある。
【0009】
従来の乾燥方法は、一般的にオーブン乾燥機、トンネル乾燥機等を利用する、強制高温空気の使用を含む。均一なフィルムの製造を達成する困難さは、レオロジー特性及びフィルム-形成組成物における水の蒸発過程に直接関連している。水性ポリマー溶液の表面が、高温度の空気流と接触している場合には、例えばフィルム-形成組成物が高温エアオーブンを通過する際には、その表面の水は、即座に蒸発して、該表面上にポリマーフィルムまたはスキンを形成する。これは、該表面の下方における、該水性フィルム-形成組成物の残部を封止し、バリアを形成するが、乾燥フィルムを与えるように、残部の水が蒸発するにつれて、これが強制的に該バリアを通過する必要がある。該フィルム外部の温度が上昇し続けると、水蒸気圧が、該フィルムの表面下部で高まり、該フィルム表面を延伸し、また最終的に該フィルム表面を引裂いて開放し、水蒸気の逃散を可能とする。該水蒸気が逃散すると、即座に、該ポリマーフィルム表面が再度形成され、またこの過程は、該フィルムが完全に乾燥されるまで繰り返される。この反復的な該フィルム表面の破壊及び再形成の結果は、「波シワ生成作用」として観測され、これは、平坦でない、従って不均一なフィルムを生成する。しばしば、該ポリマーに依存して、表面があまりに強固に封止され、結果として残部の水は除去困難となり、極めて長期に渡る乾燥期間、より高い温度の使用、及びより高いエネルギーコストの必要性へと導く。
【0010】
他のファクタ、例えば混合技術も、工業化及び取締り機関の承認を得るのに適した、医薬フィルムの製造において、ある役割を演じている。混合過程またはその後のフィルム製造過程中に、空気が該組成物中に取込まれる恐れがあり、そのため、該乾燥段階中に、水分が蒸発するにつれて、該フィルム製品中に空孔が残される可能性がある。該フィルムは、しばしば該空孔の近傍において潰れ、平滑でないフィルム表面をもたらし、また結果として該最終フィルム製品の不均一性をもたらす。気泡によって生じた、該フィルム内の空孔が、潰れないとしても、これらは依然としてフィルムの均一性に影響を与える。この状況は、また均一に分布していない空隙が、本来該フィルム組成物によって占有されるはずの領域を占有している点で、不均一なフィルムを生成する。上記特許の何れも、該フィルムに導入された空気によって引起される上記問題に対する解決策を提示するものでも、また提案するものでもない。
【0011】
放出系として使用するためのフィルムの製造におけるもう一つの目的は、材料またな成分を小型化することである。該フィルムは、しばしば極めて薄いので、該フィルムの均一性を維持しつつ、大量の活性成分を組込むことが、一課題となり得る。
【0012】
フィルムの均一性に影響するもう一つのファクタは、該フィルムへの気泡の侵入を阻止することである。空気、例えば取込み空気の、該フィルム-形成組成物からの除去において役立たせるために、消泡性及び/または脱泡性成分を使用することができる。このような取込み空気は、不均一なフィルムの生成に導く恐れがある。
【0013】
消泡性/脱泡性成分は、典型的に低い親水/親油バランスを持つ。換言すれば、これらは、しばしば油性である。公知の消泡性/脱泡性成分の一例は、シメチコーン(Simethicone)である。シメチコーンは、トリメチルシロキシ末端-遮断単位(blocking units)で安定化されている、ポリジメチルシロキサンの繰返し単位を含む、完全にメチル化された直鎖状シロキサンポリマーと、二酸化ケイ素との混合物である。これは、通常90.5-99%のポリメチルシロキサンと、4-7%の二酸化ケイ素とを含む。この混合物は、水に対して不溶性の、灰色で、半透明な粘稠性流体である。水に分散させた場合には、シメチコーンは、その表面に広がり、低い表面張力を持つ薄いフィルムを形成するであろう。このようにして、シメチコーンは、該溶液中に局在する気泡空気、例えば泡状気泡の表面張力を減じ、該気泡の破壊を引起す。シメチコーンの機能は、水中のオイル及びアルコールの、二重の作用に類似する。例えば、オイル溶液中では、あらゆる取込まれた気泡は、表面に上昇し、またより迅速かつ容易に逃散する。というのは、油状液体は、水溶液と比較して、より低い密度を持つからである。他方、アルコール/水混合物は、水の密度を低下し、しかも水の表面張力を低下することが知られている。従って、この混合溶液内に取込まれたあらゆる気泡も、散逸するであろう。シメチコーンは、該水溶液内に取込まれたあらゆる気泡の表面エネルギーを低下し、同時に該水溶液の表面張力を低下することにより、消泡性/脱泡性成分として作用する。
【0014】
しかし、消泡性/脱泡性成分自体も、しばしば不均一なフィルムの生成に導く。該消泡性/脱泡性成分の特性のために、これらの成分は、製品にまだらを生じる、即ち半透明なフィルム内に透明なスポットを形成する可能性がある。
【0015】
従って、最小数の材料または成分を使用し、実質的に自己凝集性を示さず、しかも該フィルムの領域全体に渡り、均一な不均質性を与える、フィルム製品を製造するための方法並びに組成物に対する需要がある。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、喫食可能な水溶性フィルムが提供される。この喫食可能な水溶性フィルムは、少なくとも1種の水溶性ポリマー、及び発泡を減じる風味付与剤(flavoring agent)を含み、該フィルムは、消泡剤または脱泡剤の添加を全く必要としない。
【0017】
好ましい一態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、該フィルムを基準として、約0.1%〜約20質量%なる範囲の量で該フィルム中に存在する。もう一つの好ましい態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、約0.5%〜約15質量%なる範囲の量で存在する。
【0018】
好ましい一態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、果実または芳香性物質または樹皮を主成分とするものである。もう一つの好ましい態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、メントール、チェリーメントール、シンナミント(cinnamint)、スペアミント、ペパーミント、オレンジ香料、天然ラズベリー、及びこれらの組合せからなる群から選択される。好ましいもう一つの態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、8〜12個の炭素原子、少なくとも一つの末端ジメチル基、及び非-末端OH基を含む。
【0019】
もう一つの好ましい態様において、該水溶性ポリマーは、セルロース材料、ポリエチレンオキシド、多糖、ガム、タンパク質、デンプン、グルカン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。他の態様において、該水溶性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、及びこれらの組合せからなる群から選択される。別の態様において、該水溶性ポリマーは、アラビアガム、ザンタンガム、トラガカンスゴム、アカシアゴム、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギネート、及びこれらの組合せからなる群から選択される。他の態様において、該水溶性ポリマーは、ポリデキストロース、デキストリン、デキストラン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0020】
該フィルムは、また活性成分をも含むことができる。一態様において、該活性成分は、化粧学的薬剤、医薬、生活性薬剤、及びこれらの組合せからなる群から選択される。他の態様において、該活性成分は、該フィルムを基準として、約60質量%までの量で該フィルム内に存在する。
【0021】
該フィルムは、更に風味-隠蔽剤、可塑剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、結合剤、冷却剤、唾液分泌-刺激剤、甘味料、抗-微生物剤及びこれらの組合せからなる群から選択される、一種またはそれ以上の薬剤を含むことができる。
【0022】
本発明のもう一つの局面においては、実質上均一なフィルム組成物を製造するための方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む:
(a) 水溶性ポリマー、発泡を減じる風味付与剤及び極性溶媒を含む、フィルム形成組成物を製造する工程;
(b) 該フィルム形成組成物を減圧下(under vacuum)で混合する工程;
(c) 該フィルム形成組成物を注型する(casting)工程;及び
(d) 制御された乾燥プロセス(a controlled drying process)を通して該極性溶媒を除去する工程。
【0023】
本発明の喫食可能な水溶性フィルムは、実質的に自己-凝集性を示さない、該フィルムの領域全体に渡り、均一な不均質性を与える。従来の発泡低下剤の代わりに、発泡を減じる風味付与剤を使用することによって、本発明のフィルムは、マダラ模様の形成なしに、均一な外観を持つ。また、従来の発泡低下剤の添加を回避することによって、本発明のフィルムは、添加された活性成分を収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の単位用量フィルムを含む包装体の側面図である。
【図2】引裂可能なミシン目によって分離されている、本発明の個々の単位用量剤形を含む、隣接する2つの結合された包装品の平面図である。
【図3】重ねられた構成で配置された、図2の隣接状態で結合された包装品の側面図である。
【図4】該包装された単位用量剤形を分配するためのディスペンサーを示す斜視図であり、このディスペンサーは、重ねられた構成の、該包装された単位用量剤形を含む。
【図5】一巻きの本発明の結合された単位用量包装品の、模式的な図である。
【図6】プレミックスを製造し、活性成分を添加し、またその後フィルムを製造するのに適した装置の、模式的な図である。
【図7】本発明のフィルムを乾燥するのに適した装置の、模式的な図である。
【図8】本発明の乾燥プロセスを、逐次的に示す図である。
【図9】本発明による、連続的に結合された、ゾーン乾燥装置の模式図である。
【図10】本発明による、セパレート式ゾーン乾燥装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、喫食可能な水溶性フィルムを提供する。このフィルムは、少なくとも1種の可溶性ポリマーを含む。更に、従来のフィルムとは違って、本発明のフィルムは、消泡剤または脱泡剤を添加する必要がない。その代りに、本発明は、発泡を減じる風味付与剤を使用して、自己-凝集性を示さない均一なフィルムを提供する。
【0026】
本発明の目的にとって、上記用語「自己-凝集性を示さない均一な不均質性」とは、該フィルムは極性溶媒に加えて、1種またはそれ以上の成分から製造された、本発明のフィルムの、該フィルム内での成分の凝集または塊状化が実質的に減じられた、即ち凝集または塊状化を殆どまたは全く示さない能力を意味し、ここで該凝集または塊状化は、フィルムを、従来の乾燥法、例えばオーブン乾燥機、トンネル乾燥機、真空乾燥機、またはその他のこの種の乾燥機を使用する、高温空気浴等によって製造した場合に、通常経験することである。本発明において使用する該用語「不均質性」とは、単一の成分、例えばポリマー、並びに複数の成分の組合せ、例えばポリマーと活性成分を配合するフィルムを意味する。均一な不均質性とは、フィルムを製造するのに使用する、従来の混合並びに加熱乾燥法において一般的な、凝集または塊状化を実質上示さないことを意味する。
【0027】
更に、本発明のフィルムは、実質上均一な厚みを持ち、この均一な厚みも、水性のポリマー系を乾燥するために使用される、従来の乾燥法の使用によっては達成されない。厚みが均一でないことは、与えられたフィルムの領域全体に渡る、成分分布の均一性に有害な影響を及ぼす。
【0028】
本発明のフィルム製品は、場合により活性成分及び他の従来公知のフィラーを含む、適切に選択されたポリマー及び極性溶媒の組合せにより造られる。これらのフィルムは、選択された注型または堆積法及び制御された乾燥プロセスを利用することによって、該フィルム内部における該成分の、自己-凝集性を示さない均一な不均質性をもたらす。制御された乾燥プロセスの例は、Magoonに付与された米国特許第4,631,837号("Magoon")(この特許を、参考としてここに組入れる)に記載された装置の使用、並びに底部基板及び底部加熱プレートを横切る、高温空気による衝撃の利用を含むがこれらに限定されない。本発明のフィルムを得るためのもう一つの乾燥技術は、制御されていない空気流の不在下での、制御された輻射乾燥、例えば赤外線、及び高周波輻射(即ち、マイクロ波)乾燥である。
【0029】
この乾燥プロセスの目的は、従来の乾燥法に関連し、また初めに該フィルムの上部表面を乾燥して、水分をその内部に閉じ込める、上で言及した「波シワ生成」作用等の煩雑さを回避する、該フィルムの乾燥法を提供することにある。従来のオーブン乾燥法においては、フィルム内部に取込まれた水分が、引続き蒸発するにつれて、該フィルムは引裂により開放され、次いで再形成されることによって、その上部表面が変更される。
【0030】
これらの煩雑さは、本発明によって回避され、また、該フィルムの底部表面を最初に乾燥し、あるいはまた該フィルムの深部を乾燥する前に、該フィルムの上部表面上でのポリマーフィルムの生成(スキン)を防止することによって、均一なフィルムが得られる。これは、実質的に上部空気流を存在させることなく、該フィルムの底部表面に熱を適用することにより、あるいはまた同様に実質的に上部空気流を存在させることなく、該フィルム内の水分または他の極性溶媒を蒸発させるために、制御されたマイクロ波を導入することによって、達成することができる。
【0031】
更にまた、乾燥は、バランスのとれた流体流、例えばバランスのとれた空気の流れを使用することにより達成することができ、ここで該底部及び上部空気流は、均一なフィルムを与えるように制御されている。このような場合において、該フィルムの上部に導かれる該空気流は、該気流によって発生する力によって、該湿潤フィルム中に存在する粒子が運動を生じるような状態を生成してはならない。
【0032】
更に、該フィルムの底部に導かれる該空気流は、望ましくは、該空気の力によって該フィルムが持ち上げられないように制御すべきである。該フィルム上方または下方の、制御されていない空気流は、最終的なフィルム製品に不均一性をもたらす恐れがある。また、該フィルムの上部表面を取巻く領域の湿度のレベルを、適切に調節して、該ポリマー表面の早期の閉塞またはスキン形成を回避することができる。
【0033】
該フィルムのこの乾燥法は、幾つかの利点をもたらす。中でも特に、迅速な乾燥期間及び該フィルムのより均一な表面形成、並びに該フィルムの任意の与えられた領域内の、成分の均一分布性を挙げることができる。更に、該迅速乾燥期間は、該フィルム内で迅速に粘度を上げることを可能とし、更に最終的なフィルム製品内の、成分の均一分布及び成分の凝集低減を助長する。望ましくは、該フィルムの乾燥は、約10分またはそれ以下、あるいは更に望ましくは約5分以内またはそれ以下で起るであろう。
【0034】
本発明は、該組成物成分の凝集を減じるように注意を払った場合には、例外的に均一なフィルム製品を生成する。上記混合工程における過剰な空気の導入を回避及び排除し、ポリマー及び溶媒を、制御可能な粘度を与えるように選択し、かつ該フィルムをその底部から上部へと迅速に乾燥することによって、上記の如きフィルムが得られる。
【0035】
本発明の製品及び方法は、該フィルムの様々な製造段階間の相互作用に拠っており、それによって、該フィルム内のその成分の自己-凝集を実質的に減じるフィルムが提供される。具体的には、これらの段階は、該フィルムを製造するのに使用される特定の方法、即ち、気泡の混入を回避するように、該組成物の混合物を製造する工程、該フィルム形成組成物の粘度を調製する工程を含む方法、及び該フィルムの乾燥方法を含む。より詳しくは、該活性成分が選択された該極性溶媒に対して不溶性である場合には、該活性成分の沈降を防止するために、該混合物中の成分の粘度をより高めることは、特に有用である。しかし、この粘度は、選択された注型法の実施を妨害または阻害しないように、高過ぎてはならない。該注型法は、望ましくは、実質的に一定の厚みを持つフィルムを製造できることから、リバースロール塗布を含む。
【0036】
該フィルムまたはフィルム-形成成分またはマトリックスの粘度に加えて、望ましいフィルム均一性を達成するために、本発明において考慮すべき他の事項がある。例えば、非-コロイド的用途において、固体(例えば、薬物粒子)の沈降を回避する、安定な懸濁液が得られる。本発明が提示する一つの方法は、該粒状物(ρp)及び該液相(ρl)の密度を釣合わせ、また該液相の粘度(μ)を高めることである。孤立粒子に関して、ストークスの法則は、粘性流体中で、半径(r)の剛性球体終端沈降速度(V0)を、以下のように関連付けた:
Vo = (2grr)(ρp - ρl)/9μ
【0037】
しかし、高い粒子濃度においては、局所的な粒子濃度が、局所的な粘度及び密度に影響するであろう。この懸濁液の粘度は、固体の体積分率の強関数であり、また粒子-粒子及び粒子-液体相互作用は、更に沈降速度を妨害するであろう。
【0038】
ストークス分析は、第三の相、分散された空気または窒素の配合が、例えば懸濁液の安定性を高めることを示した。更に、粒子数の増大は、該固体の体積分率に基く、阻害された沈降作用へと導く。希薄な粒子懸濁液においては、沈降速度(v)は、以下のように表すことができる:
v/Vo = 1/(1 + κψ)
ここで、κ=定数、またψは、該分散相の体積分率である。該液相中により多くの粒子が懸濁している場合には、粘度の低下をもたらす。粒子の幾何形状も、重要なファクタである。というのは、該粒子の寸法が、粒子-粒子流動相互作用に影響するはずであるからである。
【0039】
同様に、該懸濁液の粘度は、分散された固体の体積分率に依存する。非-相互作用性球形粒子の希薄な懸濁液に関して、該懸濁液の粘度は、以下のように表すことができる:
μ/μo = 1 + 2.5φ
ここで、μoは該懸濁液の連続相の粘度であり、またφは該固体の体積分率である。より高い体積分率において、該分散液の粘度は、以下のように表すことができる:
μ/μo = 1 + 2.5ψ + C1ψ2 + C2ψ3 +.. ...
ここでCは定数である。
【0040】
該液相の粘度は重大であり、該液体組成物を、低い降伏応力を持つ粘弾性非-ニュートン流体に一般化することによって、変更することが望ましい。このことは、静止している高粘性の連続相を生成することに等しい。粘弾性のまたは高度に構造性をもつ液相の形成は、粒子の沈降に対する付随的な抵抗力をもたらす。更に、フロキュレーションまたは凝集は、粒子-粒子間相互作用を最小化することにより制御することができる。その正味の効果は、均一な分散相の保存であろう。
【0041】
該懸濁液の水性相に対するヒドロコロイドの添加は、粘度を高め、粘弾性を発生することができ、また該ヒドロコロイドの型、その濃度及び該粒子の組成、幾何形状、サイズ及び体積分率に依存して、安定性を付与することができる。該分散相の粒度分布は、該高粘性の媒体中で、最小の実際的な粒径、即ち<500μmを選択することにより、制御する必要がある。僅かな降伏応力の存在または低剪断速度下にある弾性体の存在も、見掛けの粘度とは無関係に、永続的な安定性を誘発することができる。該臨界的な粒径は、該降伏応力値から算出できる。孤立した球形粒子の場合には、与えられた粘度を持つ媒体を通して沈降する際に発生する最大の剪断応力は、以下の式で与えることができる:
τmax = 3Vμ/2r
疑似塑性流体については、この剪断応力の状況下における粘度は、ニュートン性プラトーにおいては、ゼロ剪断速度下での粘度であり得る。
【0042】
安定な懸濁液は、フィルム注型装置に供給すべき、プレミックス組成物製造のために、並びに十分に乾燥されて、均一性が保持されるように、十分に堅牢な状態にて、該粒子及びマトリックスを固定するまで、該フィルムの湿潤段階における、その安定性を維持するために、重要な特性の一つである。粘弾性流体系に関して、長期間、例えば24時間に及び安定な懸濁液を生成するレオロジーは、高速フィルム注型操作に係る要件と、釣合いを取らせる必要がある。該フィルムにとって望ましい一つの特性は、剪断減粘性または疑似塑性であり、これによりその粘度は、剪断速度の増大に伴って減少する。時間に依存する剪断作用、例えばチキソトロピーも有利である。構造性の回復及び剪断減粘性挙動は、該フィルムが、その生成の際に自己-平坦化する能力同様に、重要な特性である。
【0043】
本発明の組成物及びフィルムに関連するレオロジー要件は、極めて厳密である。これは、広い剪断速度範囲全体に渡り、許容される粘度値を持つ粘弾性流体マトリックスにおいて、例えば30-60質量%の粒子の安定な懸濁液を製造する必要があることによる。混合、ポンプ輸送及びフィルムの注型中に、10-105sec-1なる範囲の剪断速度を経験し、また疑似可塑性は、好ましい態様である。
【0044】
フィルムの注型または塗布において、レオロジーは、また所定の均一性を持つフィルムを形成する能力に関連して、決定的なファクタである。剪断粘度、伸張粘度、粘弾性、構造性回復は、該フィルムの性能に影響するであろう。一例示として、剪断減粘性疑似可塑性流体の平坦化は、以下の式で表される:
α(n-1/n) = αo(n-1/n) - ((n-1)/(2n-1))(τ/K)1/n (2π/λ)(3+n)/nh(2n+1)/nt
ここで、αは、表面波の振幅であり、αoは、その初期振幅であり、λは、表面粗さの波長であり、またn及びK両者は、粘度冪乗則指数である。この例において、平坦化挙動は、粘度に関連しており、nの減少に伴って増大し、かつKの増大に伴って減少する。
【0045】
望ましくは、本発明のフィルムまたはフィルム-形成組成物は、極めて迅速な構造回復性を有し、即ち処理中に該フィルムが形成される際に、該フィルムがばらばらになることはなく、あるいはその構造及び組成の均一性において不連続になることはない。このような極めて迅速な構造の回復性は、粒子の沈降及び沈積を遅らせる。その上、本発明のフィルムまたはフィルム-形成組成物は、望ましくは剪断減粘性の疑似可塑性流体である。粘度及び弾性等の諸特性を考慮したこのような流体は、薄膜形成及び均一性の達成を補助する。
【0046】
従って、成分の該混合物中での均一性は、多くの変数に依存する。ここに記載するように、該成分の粘度、混合技術及び得られる混合組成物及び湿潤注型フィルムのレオロジー特性は、本発明の重要な局面である。付随的に、粒径及び粒子形状の調節を、更に考察する。望ましくは、微粒子のサイズは、150μmまたはそれ以下、例えば100μmまたはそれ以下であり得る。更に、このような粒子は、球形、実質上球形、または非-球形、例えば不規則な形状の粒子または楕円形状の粒子であり得る。該フィルム形成マトリックス内で均一性を維持する能力のために、楕円形状の粒子または楕円形が好ましい。というのは、これら形状が、球形粒子に比して、沈降し難い傾向を持つからである。
【0047】
以下において更に論じるように、発泡を減じる風味付与剤の添加に加えて、上記混合段階において幾つかの技術を利用して、該最終的なフィルムにおける気泡の混入を阻止することができる。該最終的なフィルム製品における気泡形成を実質的に伴わない配合混合物を提供するために、該配合物中に空気を引込むような該混合物のキャビテーションを防止すべく、該混合の速度を調整することが望ましい。最後に、気泡の低減は、更に該フィルムを乾燥する前に気泡が逃散するのに十分な期間、該配合物を放置することによっても、達成することができる。望ましくは、本発明の方法は、先ず薬物粒子等の活性成分の添加なしに、フィルム-形成成分のマスターバッチを製造する。該活性成分は、注型直前の該マスターバッチのより小さな配合物に添加される。従って、該マスターバッチプレミックスは、薬物または他の成分における不安定性とは無関係に、長期間に渡り放置することができる。
【0048】
あらゆる添加剤及び該活性成分に加えて、該フィルム-形成ポリマー及び極性溶媒を含有する、該マトリックスを製造する場合、これらの添加は、多数の段階において行うことができる。例えば、該成分は全て、一緒に添加することができ、あるいはプレミックスを製造することができる。プレミックスの利点は、該活性成分以外の全成分を前もって併合し、該活性成分を、該フィルム製造の直前に添加することができる点にある。これは、水、空気または他の極性溶媒に対して長期間に渡り暴露した際に分解する恐れのある活性成分にとって、特に重要である。
【0049】
図6は、プレミックスの調製、活性成分の添加及びその後のフィルムの製造に適した装置20を示すものである。該フィルム-形成ポリマー、極性溶媒、及び薬物活性成分を除くあらゆる他の添加物を含む、該プレミックスまたはマスターバッチ22は、マスターバッチ供給タンク24に投入される。該プレミックスまたはマスターバッチ22の成分は、望ましくは該マスターバッチ供給タンク24に投入される前に、ミキサー(図示せず)中で製造される。次いで、予め決められた量のマスターバッチを、第一の計量ポンプ26及び制御バルブ28を介して、第一及び第二ミキサー30、30'の何れかまたはその両者に、制御しつつ供給する。しかし、本発明は、2基のミキサー30、30'の使用に限定されるのではなく、また任意の数のミキサーを、適宜使用することができる。更に、本発明は、ミキサー30、30'の任意の特定の配列、例えば図6に示した如き並列での配置に限定されるのではなく、ミキサーの他の順序または配列、例えば直列または並列と直列との組合せを、適宜使用することができる。該薬物または香料等の他の成分の必要量を、該ミキサー30、30'各々の開口32、32'を介して該所定のミキサーに投入する。望ましくは、該ミキサー30、30'における該プレミックスまたはマスターバッチ22の滞留時間を最小にする。該プレミックスまたはマスターバッチ22内で該薬物を完全に分散させることが望ましいが、過度に長い滞留時間は、特に可溶性の薬物の場合には、該薬物の浸出または溶解をもたらす恐れがある。従って、該ミキサー30、30'は、しばしば該プレミックスまたはマスターバッチ22の製造に使用する第一のミキサー(図示せず)に比して、小さく、即ち滞留時間のより短いものである。均一なマトリックスを得るのに十分な時間、該薬物を、該マスターバッチプレミックスと混合した後、引続き該均一なマトリックスの特定の量を、第二の計量ポンプ34、34'を介してパン36に供給する。計量ロール38は、フィルム42の厚みを決定し、また該フィルムをアプリケータロールに適用する。該フィルム42は、最終的に基板44上に形成され、また支持ロール46を介して搬送される。
【0050】
混合物における適度な粘度の均一性、及び粒子の安定な懸濁液、及び注型方法は、該組成物及びフィルム製造の初期段階において、均一性の達成を補助するために重要であるが、湿潤フィルムの乾燥方法も重要である。これらパラメータ及び諸特性は、初期の均一性の達成を補助するが、制御された迅速乾燥プロセスは、該フィルムが乾燥するまで、この均一性の維持を保証する。
【0051】
次いで、望ましくは本明細書に記載した通り、該フィルム48の上部(露出)表面上に、外部の空気流または熱のない状態で、制御された下部乾燥または制御されたマイクロ波乾燥を利用して、該湿潤フィルムを乾燥する。有利なことに、制御された下部乾燥または制御されたマイクロ波乾燥は、従来技術の欠点を示すことなしに、該フィルムからの蒸気の放出を可能とする。従来の上部からの対流式乾燥は使用しない。というのは、この方法は該フィルム上部の最も上方から乾燥を開始し、結果として流体流、例えば蒸発する蒸気、及び熱の流れ、例えば乾燥のための熱エネルギーに対するバリアを形成するからである。このような乾燥された上方部分は、下方部分の乾燥に伴う、更なる蒸気の放出に対するバリアとして作用し、その結果不均一なフィルムを与える。前に述べた幾分かの上部の空気流は、本発明のフィルムの乾燥を補助するために利用できるが、これは、何れも不均一性をもたらす、粒子の移動または波シワ生成作用を、該フィルム内に発生する条件を生成するものであってはならない。上部空気流を使用する場合には、該下部からの風乾と釣合いを持たせて、不均一性の発生を回避し、かつ搬送ベルト上での該フィルムの浮上りを防止する。釣合のとれた上部及び下部空気流は、該下部空気流が主な乾燥源として機能し、かつ該上部空気流が低級の乾燥源である場合に適している。幾分かの上部空気流使用の利点は、存在する蒸気を、該フィルムから追い出して、全体としての乾燥プロセスを補助する点にある。しかし、任意の上部空気流または上部乾燥の利用は、該組成物のレオロジー特性、該処理の機械的な局面を含むが、これらに限定されない幾つかのファクタと釣合いを持たせる必要がある。空気等の任意の上部流体流は、また該フィルム-形成組成物の固有の粘度を凌駕するものであってはならない。換言すれば、該上部空気流は、該組成物の表面を破壊し、変形させ、あるいはまた物理的に歪めるものであってはならない。その上、空気の速度は、該フィルムの降伏値以下、即ち該フィルム-形成組成物中の液体を運動させ得る、任意の力のレベル以下であることが望ましい。薄いまたは低粘度の組成物に対しては、低い空気速度を使用すべきである。厚みのあるまたは高い粘度を持つ組成物に対しては、より高い空気速度を使用することができる。更に、空気速度は、該組成物から形成される該フィルムの如何なる浮上りまたはその他の運動をも回避するように、低くすることが望ましい。
【0052】
更に、本発明のフィルムは、温度に対して敏感な粒子、例えば揮発性であり得る香料、または低い分解温度を持つ可能性のある薬物を含むことができる。このような場合、該乾燥温度を下げ、一方で乾燥時間を増大して、本発明の均一なフィルムを十分に乾燥することができる。更に、下部乾燥法は、上部乾燥法に比して、低いフィルム内部温度をもたらす傾向にある。下部乾燥法において、蒸発する蒸気は、上部乾燥法に比して、より迅速に該フィルムから熱を運び去り、これはフィルムの内部温度を低下する。このようなフィルム内部温度の低下は、しばしば、薬物分解の程度を下げ、しかも香料等の幾つかの揮発性物質の損失量を低下する。
【0053】
フィルムを製造する際に、高温度でのフィルムの乾燥は望ましいことであり得る。高温乾燥は、均一なフィルムを生成し、またフィルムの製造における高い効率をもたらす。しかし、高い感受性を持つ活性成分を含むフィルムは、高温における分解の問題に直面する恐れがある。分解とは、「十分に規定された中間生成物の生成を示す、…化合物の分解」である。ザアメリカンヘリテージディクショナリーオブザイングリッシュランゲージ(The American Heritage Dictionary of English Language)(第4版、2000)。活性成分の分解は、不安定性、不活性化、及び/または該活性成分の効能低下を引起すので、典型的には望ましくない。例えば、該活性成分が、薬物または生活性物質である場合、その分解は、最終的な薬剤製品の安全性または効力に悪影響を及ぼす可能性がある。付随的に、高度に揮発性の物質は、これを従来の乾燥法で処理した場合には、このフィルムから迅速に放出される傾向を示すであろう。
【0054】
活性成分の分解は、特定の活性成分に依存して、加水分解、酸化、及び光劣化等の様々な過程を通して起こる可能性がある。更に、温度は、このような反応の速度に著しい影響を及ぼす。該分解速度は、典型的に、温度が10℃増加する毎に、二倍になる。従って、活性成分の高温に対する暴露は、望ましからぬ分解反応を開始し及び/または促進するであろうことが、一般的に理解されている。
【0055】
タンパク質は、長期間に渡り高温に暴露された際に、分解し、変性し、あるいはまた不活性化される恐れのある、有用な活性薬剤の一部類に入る。タンパク質は、身体内で、様々な機能、例えば酵素、構造要素、ホルモン及び免疫グロブリンとしての機能を果たしている。タンパク質の例は、酵素、例えばパンクレアチン、トリプシン、パンクレリパーゼ、キモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、スチレインズ(sutilains)、ストレプトキナーゼ(streptokinaw)、ウロキナーゼ、アルチプラーゼ(altiplase)、パパイン、ブロメラインジアスターゼ、構造要素、例えばコラーゲン、エラスチン及びアルブミン、ホルモン、例えばチロリベリン、ゴナドリベリン、アドレノコルチコトロピン、コルチコトロピン、コシントロピン、ソマトレム(sometrem)、ソマトロピン(somatropion)、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、ソマトスタチン、バソプレシン、フェリプレシン、リプレシン、インシュリン、グルカゴン、ガストリン、ペンタガストリン、セクレチン、コレシストキニン-パンクレオザイミン、及び糖タンパク質に加えて多糖を含むことができる免疫調節剤(これは、悪性細胞増殖、例えば腫瘍の成長等の阻害及び予防にとって有用なサイトカインを含む)を包含する。幾つかの有用な糖タンパク質の、適当な製造方法は、Cannon-Carlsonの米国特許第6,281,337号に記載されている。この特許の内容全体を、ここに組入れる。
【0056】
ペプチドは、長期間に渡り高温に暴露された際に、不活性化される恐れのある、有用な活性薬剤のもう一つの部類に入る。
【0057】
100℃近傍の温度は、一般にタンパク質、幾つかのペプチド、並びに核酸の分解を生じるであろう。例えば、幾つかの糖タンパク質は、70℃の温度に30分間暴露された場合に分解するであろう。ウシ抽出液由来のタンパク質も、このような低温で分解することが知られている。DNAもこの温度にて変性を開始する。
【0058】
しかし、本出願人は、本発明のフィルム製造並びに形成工程を採用したために、分解、活性喪失、または過度の蒸発の心配なしに、上記乾燥プロセス中に、本発明のフィルムを、高温に暴露することができることを見出した。特に、該フィルムは、このような問題を引起すことなしに、典型的には該活性成分の分解、変性または不活性化に導く恐れのある温度に暴露することができる。本発明によれば、該乾燥方法は、該活性成分が有害な温度レベルに達することを回避するように、調節することができる。
【0059】
本明細書において論じたように、該流動性混合物は、本発明の教示に従って、含有物において均一となるように調製される。均一性は、該流動性の素材がフィルムに成形され、かつ乾燥される際に、維持されなければならない。本発明の乾燥プロセス中に、幾つかのファクタが該フィルム内の均一性をもたらし、一方で該活性成分を安全な温度、即ちその分解温度以下に維持する。第一に、本発明のフィルムは、極めて短期間の、通常は僅かに数分程度の熱履歴を有し、結果として全温度暴露期間を、可能な程度に最小化する。該フィルムを、制御可能に乾燥して、その内部における成分の凝集及び移動、並びに熱の蓄積を回避する。望ましくは、該フィルムはその底部から乾燥させる。ここに記載するような、制御された下部乾燥は、該フィルムの上部表面上でのポリマーフィルム、またはスキンの形成を防止する。熱は該フィルムの底部から上方に伝わるので、液体担体、例えば水は、フィルム表面まで上昇する。表面にスキンが存在しないことは、温度の上昇に伴う、該液体担体の迅速な蒸発を可能とし、結果として同時に該フィルムの蒸発による冷却をも可能とする。この短期間の熱に対する暴露及び蒸発による冷却のために、フィルム成分、例えば薬物または揮発性の活性成分は、高温による影響を受けない状態に保たれる。対照的に、該上部表面のスキン形成は、該フィルム内に高いエネルギーを持つ液体担体分子を取り込み、結果として該フィルム内の温度を高め、また活性成分を、有害である可能性のある高い温度に暴露してしまう。
【0060】
第二に、底部の加熱及び表面スキンの存在しないことから、該フィルム内で熱的混合が起る。熱的混合は、該フィルム内の対流による流れを介して起る。該フィルムの底部には熱が適用されているので、該底部近傍の該液体は、その温度を高め、膨張し、またより低密度となる。故に、この温度のより高い液体は上昇し、かつ温度のより低い液体が、これに取って代る。上昇するが、該より高温の液体は該より低温の液体と混合され、これと熱エネルギーを分け合い、即ち熱の伝達を行う。このサイクルが繰り返されると、熱エネルギーは、該フィルム全体に拡散される。
【0061】
本発明の制御された乾燥プロセスによって達成される強力な熱的混合は、該フィルム全体に渡る均一な熱拡散をもたらす。このような熱的混合がない場合、「ホットスポット」が発生する恐れがある。該フィルムにおける熱ポケット(内熱)は、該フィルム内での、粒子凝集物の形成またはその危険のある領域の生成をもたらし、後の不均一性の発生を結果する。このような凝集物または凝塊の形成は、該活性成分がランダムに分配される恐れのある、不均一なフィルムに導くことから、望ましからぬことである。このような不均一な分布は、フィルム当たりの活性成分の量における大きな差に導く恐れがあり、このことは、安全性及び効力の観点から問題である。
【0062】
その上、熱混合は、該フィルム内部の下部における全体としての温度を維持するのを助ける。該フィルムの表面は、該活性成分が分解する温度以上の温度に暴露されているが、該フィルムの内部は、この温度に達しないはずである。この温度差のために、該活性成分は分解することがない。
【0063】
例えば、本発明のフィルムは、望ましくは10分以下の期間乾燥される。80℃にて10分間の該フィルムの乾燥は、約5℃なる温度差をもたらす。このことは、10分間の乾燥後に、該フィルム内部の温度が、その外側の暴露温度よりも5℃低いことを意味する。しかし、多くの場合において、10分未満、例えば4〜6分間なる乾燥期間で十分である。4分間の乾燥は、約30℃なる温度差を伴う可能性があり、また6分間の乾燥は約25℃なる温度差を伴う可能性がある。このような大きな温度差のために、熱感受性の活性成分の分解を伴うことなしに、効率的な高温度にて、該フィルムを乾燥することができる。
【0064】
図8は、本発明の乾燥プロセスの連続的な表示である。機械的な混合後、該フィルムは、該乾燥プロセス中の連続する熱的混合のための、コンベア上に配置することができる。区画Aに示した該乾燥プロセスの初期において、該フィルム1は、好ましくはコンベア(図示せず)を介して移動する際に、底部10から加熱される。熱は、加熱メカニズム、例えば図7に示された乾燥機(これに限定されない)によって、該フィルムに供給することができる。該フィルムが加熱されるにつれて、該液体担体または揮発性物質(V)が、上向きの矢印50によって示されているように蒸発し始める。熱的混合は、また矢印30で示されているより高温の液体が上昇し、かつ矢印40で示されているより低温の液体がこれに取って代るように、開始する。区画Bに示されているように、フィルム1の上部表面20上にはスキンが形成されないので、該揮発性液体は、継続的に蒸発50され、かつ熱的混合30/40が、該フィルム全体に熱エネルギーを分配し続ける。一旦、十分な量の該揮発性液体が蒸発されると、熱的混合は、該フィルム1全体に渡り、均一な熱の拡散をもたらす。得られる乾燥フィルム1は、区画Cに示されているように、粘弾性固体である。該成分は、望ましくは該フィルム1全体に渡り、均一分配状態で固定される。少量の液体担体、即ち水は、該粘弾性体の形成後に残される可能性があるが、該フィルムは、必要ならば、該粒子を移動させることなしに、更に乾燥することができる。
【0065】
更に、粒子または粒状物は、該フィルム-形成組成物またはマトリックスを注型して、フィルムとした後に、該組成物またはマトリックスに添加することができる。例えば、粒子は、該フィルム42の乾燥前に、該フィルム42に添加することができる。粒子は、制御可能に該フィルムに計量、投入することができ、また適当な技術、例えばドクターブレード(図示せず)の使用によって、該フィルム上に配置することができ、ここで該ドクターブレードは、該フィルムの表面と、その境界域で接触またはやさしく接触し、制御可能に該粒子を該フィルム上に配置するデバイスである。他の適当な技術は、該粒子を該フィルム表面上に配置するための追加のロールの使用、該粒子を該フィルム表面上に散布する技術等を含むが、これらに限定されない。該粒子は、対向する該フィルム表面の一方または両者、即ち上部及び/または下部フィルム表面に配置することができる。望ましくは、該粒子を、該フィルムに確実に配置、例えば該フィルム内に包埋させる。更に、このような粒子は、望ましくは該フィルム内に完全に包み込まれず、あるいは完全に埋設されることはないが、例えば該粒子が、部分的に埋設または部分的に包まれている場合には、該フィルムの表面に露出した状態を維持する。
【0066】
該粒子は、任意の有用な感覚刺激反応剤、化粧学的薬剤、医薬、またはこれらの組合せであり得る。望ましくは、該医薬は、風味-隠蔽または制御放出型の薬剤である。有用な感覚刺激反応剤は、香料及び甘味料を含む。有用な化粧学的薬剤は、呼気清涼化剤、または充血除去剤を含む。
【0067】
本発明の方法は、上記の望ましい乾燥のための如何なる特定の装置の使用にも制限されないが、有用な乾燥装置50の一特定例を、図7に示す。乾燥装置50は、高温流体、例えば高温空気を含むがこれに制限されない高温流体を、基板44上に配置されたフィルム42の底部に案内するためのノズル集成装置である。高温空気は、該乾燥装置の入口端部52を通して入り、ベクトル54によって示されるように垂直に上方に、空気反らせ板56に向かって移動する。該空気反らせ板56は、該フィルム42に及ぼされる上向きの力を最小化するように、該空気の運動の方向を変える。図7に示したように、該空気が該空気反らせ板56を通過する際に、ベクトル60及び60'で示されるように、該空気は接線方向に導かれ、該乾燥装置50のチャンバー位置58及び58'を介して流入し、移動する。該高温空気流を、該フィルム42に対して実質的に接線方向に向けた場合、その結果として、乾燥に伴う該フィルムの持ち上がりは最小化される。該空気反らせ板56はローラーとして描写されているが、空気または高温流体を反らせるための他のデバイス及び幾何形状を、適宜使用することができる。更に、該乾燥装置50の出口端部62及び62'には、下向きのフレアが施されている。このような下向きのフレア構成は、ベクトル64及び64'によって示されているように、下向きの力または下向きの速度ベクトルを与え、これは、該フィルム42を引上げまたは引きずる効果をもたらして、該フィルム42の持ち上がりを防止する傾向がある。該フィルム42の持上げは、該フィルムにおける不均一性をもたらすばかりでなく、該フィルム42及び/または基板44がこの処理装置から持上げられるにつれて、該フィルム42の制御不能な処理をももたらす。
【0068】
また、該フィルム厚みの追跡及び調節は、均一な厚みを持つフィルムを与えることによって、均一なフィルムの製造に寄与する。該フィルムの厚みは、ベータゲージ(Beta Gauges)等のゲージを使用して追跡することができる。一つのゲージを該乾燥装置、即ちオーブン乾燥機またはトンネル乾燥機の端部において、もう一つのゲージと結合して、フィードバックループを介して連絡させ、塗布装置における開口を制御し、調節して、均一なフィルムの厚みを得るべく制御することができる。
【0069】
これらのフィルム製品は、一般に適切に選択されたポリマー及び極性溶媒並びに上記のような任意の活性成分またはフィラーを併合することにより製造される。望ましくは、この組み合わせの溶媒含有率は、該組合せ全体の少なくとも約30質量%である。この組み合わせにより生成されるマトリックスは、望ましくはロール塗布によって、フィルムに成形され、次いで望ましくは該フィルムの均一性、より具体的には自己-凝集性を示さない均一な不均質性を維持するために、迅速かつ制御された乾燥プロセスにより乾燥される。得られるこのフィルムは、望ましくは約10質量%未満の溶媒、より望ましくは約8質量%未満の溶媒、より一層望ましくは約6質量%未満の溶媒、及び最も望ましくは約2質量%未満の溶媒を含むであろう。該溶媒は、水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、塩化メチレン等を含むがこれらに制限されない極性有機溶媒、またはこれらの任意の組合せであり得る。
【0070】
上で論じたパラメータ、例えばレオロジー特性、粘度、混合方法、注型法及び乾燥法を含むが、これらに限定されないパラメータの考察も、本発明の種々の成分に関する材料の選択に影響を与える。更に、適当な材料の選択に関するこのような考察は、単位面積当たりの医薬及び/または化粧学的活性成分の量における10%を越えない変動を示す、医薬及び/または化粧学的投与剤形またはフィルム製品を包含する、本発明の組成物を提供する。換言すれば、本発明の均一性は、該マトリックス全体に渡る、10質量%を越えない医薬及び/または化粧学的活性成分の量における変動の存在によって決定される。望ましくは、該変動は、5質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、または0.5質量%未満である。
フィルム-形成ポリマー
【0071】
本発明のフィルム製品は、水溶性ポリマー組成物を含む。該フィルムは、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含み、また他の親水性物質を含むこともできる。これらのフィルムは、また所望により水膨潤性または水-不溶性ポリマーを含んでいてもよい。
【0072】
幾つかの態様において、該水溶性ポリマー組成物は、以下に列挙するものから選択される親水性物質を含む:糖類を主成分とするポリマー、糖類以外を主成分とするポリマー、糖アルコール及びこれらの組合せ。
【0073】
幾つかの態様において、自立性フィルムは、水溶性の、糖類を主成分とするポリマーを含む。例えば、該糖類を主成分とするポリマーは、セルロースまたはセルロース誘導体であり得る。有用な糖類を主成分とする水溶性ポリマーの具体的な例は、ポリデキストロース、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム(sodium aginate)、ザンタンガム、トラガカンスゴム、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0074】
好ましい幾つかの態様において、該糖類を主成分とするポリマーは、少なくとも1種のセルロースポリマー、ポリデキストロース、またはこれらの組合せであり得る。
【0075】
該フィルムは、また糖類以外を主成分とする、水溶性または水-不溶性のポリマーを含むこともできる。糖類以外を主成分とする、水溶性ポリマーの例は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、及びこれらの組合せを含む。
【0076】
幾つかの態様において、該水溶性ポリマー組成物は、糖アルコールを含む。該糖アルコールは、以下に列挙するが、これらに限定されないものから選択される1種であり得る:エリスリトール、ソルビトール及びキシリトール。
【0077】
有用な水-不溶性ポリマーの具体的な例は、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。幾つかの態様において、上記水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシド単独またはこれと他の親水性物質との組合せを含む。
【0078】
幾つかの態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとポリビニルピロリドンとの組合せを含む。他の態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとポリビニルアルコールとの組合せを含む。
【0079】
他の幾つかの態様において、該水溶性ポリマー組成物は、セルロース系ポリマーと組合せたポリエチレンオキシドを含む。例えば、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとカルボキシメチルセルロースとの組合せを含むことができる。更なる態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルセルロースとの組合せを含む。更なる他の態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組合せを含む。
【0080】
その他の態様において、該水溶性ポリマー組成物は、糖または糖アルコールとの組合せとしてのポリエチレンオキシドを含む。例えば、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとポリデキストロースとの組合せを含むことができる。別の態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとエリスリトールとの組合せを含む。更なる態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとソルビトールとの組合せを含む。別の態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシドとキシリトールとの組合せを含む。
【0081】
更なる態様において、該水溶性ポリマー組成物は、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリデキストロースの組合せを含む。
【0082】
ここで使用する用語「水溶性ポリマー」及びその変形は、ある流体、例えば水に対して、少なくとも部分的に可溶性であり、また望ましくは該流体に対して完全にまたは支配的に可溶性の、あるいは該流体を吸収するポリマーを意味する。幾つかの態様において、本発明のフィルム製品は、流体に暴露した際に、実質的に溶解性である。
【0083】
水を吸収するポリマーは、しばしば水膨潤性ポリマーと呼ばれる。本発明に関連して有用なこれら物質は、室温及びその他の温度、例えば室温を越える温度において水溶性または水膨潤性であり得る。更に、これら物質は、大気圧に満たない圧力下において、水溶性または水膨潤性であり得る。望ましくは、該水溶性ポリマーは、水溶性または少なくとも20質量%の水の取込み量を持つ、水膨潤性ポリマーであり得る。25質量%またはそれ以上の水の取込み量を持つ、水膨潤性ポリマーも有用である。このような水溶性ポリマーから作成した、本発明のフィルムまたは投与剤形は、望ましくは流体と接触した際に溶解性であるのに十分に水溶性である。
【0084】
本発明のフィルムに配合するのに有用な他のポリマーは、生分解性ポリマー、コポリマー、ブロックポリマー及びこれらの組合せを含む。公知の有用なポリマーまたは上記の基準を満たす類のポリマーとしては、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサノン(polydioxanoes)、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、及びこれらの混合物及びコポリマーが含まれる。追加の有用なポリマーは、L-及びD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸及びセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、ポリウレタンとポリ(乳酸)とのコポリマー、α-アミノ酸のコポリマー、α-アミノ酸とカプロン酸とのコポリマー、α-ベンジルグルタメートとポリエチレングリコールとのコポリマー、サクシネートとポリ(グリコール)とのコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ-アルカノエート、及びこれらの組合せを含む。本発明においては、二成分及び三成分系をも意図している。
【0085】
具体的な他の有用なポリマーは、メディソーブ(Medisorb)及びバイオデル(Biodel)なる商標の下に市販されているものを含む。該メディソーブ材料は、デラウエア州、ウイルミントンのデュポン社(Dupont Company;Wilmington, Delaware)によって市販されており、また総称的には、「プロパン酸、2-ヒドロキシ-ポリマー、ヒドロキシ-ポリマー、ヒドロキシ酢酸」を含む「ラクチド/グリコライドコポリマー」として同定されている。4種のこのようなポリマーは、170°-175℃(338°-347°F)なる範囲内の融点を持つ100%ラクチドであると考えられている、ラクチド/グリコライド100L;225°-235℃(437°-455°F)なる範囲内の融点を持つ100%グリコライドであると考えられている、ラクチド/グリコライド100L;170°-175℃(338°-347°F)なる範囲内の融点を持つ、85%ラクチド及び15%グリコライドであると考えられている、ラクチド/グリコライド85/15;及び170°-175℃(338°-347°F)なる範囲内の融点を持つ、50%ラクチド及び50%グリコライドであると考えられている、ラクチド/グリコライド50/50を含む。
【0086】
該バイオデル材料は、化学的に異なっている、一群の様々なポリ無水物を表す。
【0087】
様々な異なるポリマーを使用することができるが、乾燥前に該混合物の所定の粘度を与えるように、ポリマーを選択することが望ましい。例えば、該活性薬剤またはその他の成分が、選択された溶媒に対して可溶性でない場合、より高い粘度を与えるポリマーは、均一性を維持する上で役立つものであることが望まれる。他方、該成分が該溶媒に対して可溶性である場合、より低い粘度を与えるポリマーが、好ましいものであり得る。
【0088】
該ポリマーは、該フィルムの粘度に与える影響において、重要な役割を果たしている。粘度は、エマルション、コロイドまたは懸濁液における該活性成分の安定性を調節する、液体の一特性である。一般に、該マトリックスの粘度は、約400cps〜約100,000cpsなる範囲、好ましくは約800cps〜約60,000cpsなる範囲、及び最も好ましくは約1,000cps〜約40,000cpsなる範囲で変動する。望ましくは、該フィルム-形成マトリックスの粘度は、上記乾燥プロセスの開始時点において、急速に増大する。
【0089】
該粘度は、該マトリックス中の他の成分に依存して、該選択された活性薬剤成分に基いて調節することができる。例えば、該成分が、該選択された溶媒に対して不溶性である場合、得られるフィルムの均一性に悪影響を及ぼすであろう、該成分の沈降を防止するために、適切な粘度を選択することができる。この粘度は、様々な方法で調節することができる。該フィルムマトリックスの粘度を高めるためには、該ポリマーとしては、より高い分子量を持つ該ポリマーを選択することができ、あるいは架橋剤、例えばカルシウム、ナトリウム及びカリウムの塩を添加することができる。該粘度は、また温度を調節することによって、あるいは増粘性成分を添加することにより調節することができる。該粘度を高める、あるいは該エマルション/懸濁液を安定化する成分は、高分子量のポリマー及び多糖類及びガムを含み、これらは、制限なしに、アルギネート、カラギーナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム、グアーガム、ザンタンガム、デキストラン、アラビアゴム、ジェランゴム、及びこれらの組合せを含む。
【0090】
単独で使用した場合に、可撓性フィルムを得るためには、通常可塑剤の使用を必要とする、幾つかのポリマーを、可塑剤の使用なしに組合せることができ、しかも可溶性フィルムを与えることができることも観測されている。例えば、HPMC及びHPCは、組合せで使用した場合に、製造並びに保存のために適した可塑性と弾性とを備えた、可撓性で高強度のフィルムを与える。可撓性を得るためには、何ら追加の可塑剤またはポリアルコールを必要としない。
【0091】
更に、ポリエチレンオキシド(PEO)は、単独であるいは親水性セルロース系ポリマー及び/またはポリデキストロースとの組合せで使用した場合、可撓性で高強度のフィルムを与える。追加の可塑剤またはポリアルコールは、可撓性を得る上で必要とされない。PEOと組合せるのに適した、セルロース系ポリマーの非-限定的な例は、HPC及びHPMCを含む。PEO及びHPCは、本質的にゲル化温度を持たず、一方HPMCは、58-64℃(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手できる、メトセル(Methocel)EF)なる範囲のゲル化温度を持つ。更に、これらのフィルムは、有機溶媒を実質的に含まない場合においても、十分に可撓性であり、ここで該有機溶媒は、フィルムの諸特性を低下することなしに、除去することができる。故に、溶媒がまったく存在しない場合、結果として該フィルム中に可塑剤は存在しない。PEOを主成分とするフィルムも、裂けに対する良好な抵抗性を示し、カールを全くまたは殆ど示さず、また該ポリマー成分が適度な濃度にてPEOを含む場合に、迅速な溶解速度を示す。
【0092】
所定のフィルム特性を達成するために、該ポリマー成分中のPEOの濃度及び/または分子量を、変えることができる。該PEOの含有率の変更は、引裂抵抗、溶解速度、及び接着傾向等の諸特性に影響を及ぼす。従って、フィルム特性を調節する一方法は、該PEO含有率を変えることである。例えば、幾つかの態様においては、迅速に溶解するフィルムが望ましい。該ポリマー成分の含有率を変更することにより、所定の溶解特性を達成することができる。
【0093】
本発明によれば、PEOは望ましくは、該ポリマー成分において、約20〜100質量%なる範囲にある。幾つかの態様において、PEOの量は、望ましくは約1mg〜約200mgなる範囲にある。該親水性セルロース系ポリマー及び/またはポリデキストロースは、該PEOに関連して、約0%〜約80質量%なる範囲、あるいは約4:1までの比率、及び望ましくは約1:1なる比率にある。
【0094】
幾つかの態様において、幾つかのフィルム特性を高めるために、該PEOの濃度を変更することが望ましい場合がある。高い引裂抵抗性及び迅速溶解性を持つフィルムを得るためには、該ポリマー成分中のPEOの濃度は、約50%またはそれ以上であることが望ましい。接着防止性を達成するためには、即ち該フィルムが口内の上顎に接着するのを防止するためには、約20%〜75%なる範囲のPEO濃度が望ましい。しかし、幾つかの態様においては、例えば動物または子供に投与するためには、口内の上顎への接着が望ましい場合がある。このような場合には、より高濃度のPEOを使用することができる。より具体的には、該フィルムの構造上の保全性及び溶解性を調節して、意図した用途に応じて、該フィルムを粘膜に接着させ、かつ容易に剥離させ、あるいはより強固に接着させ、しかも除去困難なものとすることができる。
【0095】
該PEOの分子量も、変えることができる。高分子量PEO,例えば分子量約4,000,000のPEOが、該フィルムの粘膜接着性を高める上で望ましいことであり得る。より望ましくは、該分子量は、約100,000〜900,000なる範囲、より望ましくは約100,000〜600,000なる範囲、及び最も好ましくは100,000〜300,000なる範囲であり得る。幾つかの態様において、該ポリマー成分において、高分子量(600,000〜900,000なる範囲)と低分子量(100,000〜300,000なる範囲)のPEOを組み合わせることが望ましい場合がある。
【0096】
例えば、幾つかのフィルム特性、例えば迅速溶解速度及び高い引裂抵抗性は、少量の高分子量PEOと大量の低分子量PEOとを組み合わせることにより得ることができる。望ましくは、このような組成物は、該PEO-配合ポリマー成分において、約60%またはそれ以上の濃度で低分子量PEOを含む。
【0097】
接着防止性、迅速溶解速度、及び良好な引裂抵抗性という諸特性を釣合わせるためには、望ましいフィルム組成物は、場合により少量の高分子量PEOと組み合わせた、約50%〜75%なる範囲の低分子量PEOと、残部の、親水性セルロース系ポリマー(HPCまたはHPMC)及び/またはポリデキストロースを含有するポリマー成分を含むことができる。
【0098】
制御放出フィルム
「制御放出」なる用語は、予め選択されたまたは所定の速度で、活性成分を放出することを意味する。この速度は、用途に応じて変動するであろう。望ましい速度は、迅速または急速放出プロフィール、並びに遅延、持続または周期的放出を包含する。放出パターンの組合せ、例えば活性成分の初期のスパイク波的放出と、これに伴う低レベルの持続放出が、本発明において意図されている。パルス状の薬物放出も、本発明において意図されている。
【0099】
本発明のフィルムに対して選択されたポリマーを、また該活性成分崩壊の制御を可能とするように選択することができる。これは、経時で該フィルムから放出される活性成分を配合する、実質的に水-不溶性のフィルムを提供することにより達成できる。これは、様々な異なる可溶性または不溶性のポリマーを配合することにより達成でき、また組合せとして、生分解性ポリマーを含むこともできる。あるいはまた、被覆された、制御放出性活性粒子を、易溶性のフィルムマトリックスに配合して、消費の際に、消化系内での、該活性成分の制御放出特性を達成することができる。
【0100】
該活性成分の制御放出をもたらすフィルムは、口内、歯肉、舌下及び膣への適用にとって、特に有用である。本発明のフィルムは、容易に湿潤し、またこれら領域に接着する能力のために、粘膜または粘液が存在する場合に特に有用である。
【0101】
一定の間隔で多数回の単一用量を投与するのに対して、長期間に渡り制御された様式で活性成分を放出する、薬物の単一用量の投与の便利さは、当製薬分野において長い間に渡り認識されていた。患者及び臨床医にとって、長期間に渡り、薬物の一定かつ均一な血中濃度を得ることの利点も、同様に認識されている。様々な持続放出型の投与剤形の利点は、周知である。しかし、活性成分の制御放出をもたらすフィルムの製造は、制御放出性錠剤に対して周知の利点に加えて、幾つかの利点を持つ。例えば、薄いフィルムは、不注意によるその吸引は困難であり、また高い患者のコンプライアンスをもたらす。というのは、これらは錠剤の場合とは違って、嚥下する必要がないからである。更に、本発明のフィルムの幾つかの態様は、制御可能に該フィルムが溶解する、口腔及び舌と接着するように設計されている。更に、薄いフィルムは、オキシコンチン(Oxycontin)等の薬物の誤用に導くという問題を生じる、制御放出型の錠剤とは異なり、圧潰することはできない。
【0102】
本発明で使用する該活性成分は、制御放出形式で、本発明のフィルム組成物中に配合することができる。例えば、薬物粒子を、夫々アクアコート(Aquacoat) ECD及びユードラジット(Eudragit) E-100等の商品名の下に市販されている、エチルセルロースまたはポリメタクリレート等のポリマーで被覆することができる。薬物の溶液も、このようなポリマー材料に吸収させ、本発明のフィルム組成物に配合することができる。脂肪及びワックス、並びに甘味料及び/または香料等の他の成分も、このような制御放出型組成物において使用できる。
【0103】
該活性成分は、風味-隠蔽組成物を配合した、迅速溶解性投与剤形のための均一なフィルム(Uniform Films For Rapid Dissolve Dosage Form Incorporating Taste-Masking Compositions)と題する、継続中のPCT特許出願:WO/2003/030883に示されているように、該フィルム組成物に配合する前に、風味-隠蔽処理することができる。この特許出願の開示事項を、参考としてここに組入れる。
【0104】
活性成分:
活性成分を、該フィルムに配合する場合、単位面積当たりの活性成分の量は、該フィルムの均一分布性によって決定される。例えば、該フィルムを個々の投与剤形に裁断する場合、該投与剤形における該活性成分の量は、高い精度で知ることができる。このことは、与えられた面積内の該活性成分の量が、該フィルムの他の部分の同一の寸法をもつ面積内の、活性成分の量と実質的に等しいことから、達成される。用量における精度は、該活性成分が、医薬、即ち薬物である場合に、特に有利である。
【0105】
本発明のフィルムに配合できる該活性成分は、制限なしに、薬理的及び化粧学的活性成分、薬物、医薬、抗原またはアレルゲン、例えばブタクサの花粉、胞子、細菌を含む微生物、種子、口内洗剤成分、例えばクロレートまたはクロライト、香料、芳香剤、酵素、保存剤、甘味剤、着色剤、香辛料、ビタミン及びこれらの組合せを包含する。
【0106】
様々な医薬、生活性物質及び薬理組成物を、本発明の投与剤形に含めることができる。有用な薬物の例は、ACE-阻害剤、抗-狭心症薬、抗-不整脈薬、抗-喘息薬、抗-コレステロール血症薬、鎮痛薬、麻酔薬、抗-痙攣薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、下痢止め製剤、解毒薬、抗-ヒスタミン剤、抗-高血圧症薬、抗炎症剤、抗-高脂血症薬、抗-躁病薬、制吐約、抗-卒中薬、抗-甲状腺薬、抗-腫瘍剤、抗-ウイルス剤、アクネ治療薬、アルカロイド、アミノ酸製剤、咳止め剤、抗-尿酸血症薬、抗-ウイルス薬、同化作用性製剤、全身性及び非-全身性抗-感染薬、抗-新生物剤、抗-パーキンソン病薬、抗-リューマチ剤、食欲増進剤、生物学的応答調節剤、血液改善剤、骨代謝調節剤、心臓血管作用薬、中枢神経系刺激薬、コリンエステラーゼ阻害剤、避妊薬、鬱血除去薬、食物サプリメント、ドーパミンレセプタアゴニスト、エンドメトリオーシス管理薬、酵素、勃起不全治療薬、排卵誘発薬、整胃腸管薬、ホメオパシー治療薬、ホルモン、高カルシウム血症及び低カルシウム血症管理薬、免疫調節剤、免疫抑制剤、片頭痛用製剤、乗物酔い治療薬、筋肉弛緩剤、肥満管理薬、骨粗鬆症用製剤、分娩促進剤、副交感神経遮断薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神療法薬、呼吸器系作用薬剤、鎮静薬、禁煙補助薬、例えばブロモクリプチン及びニコチン、交感神経遮断薬、震顫治療製剤、尿管作用薬、血管拡張剤、緩下薬、制酸薬、イオン交換樹脂、解熱薬、食欲抑制剤、去痰薬、抗-不安剤、抗潰瘍剤、抗-炎症性物質、冠動脈拡張剤、大脳血管拡張剤、末梢血管拡張剤、精神作用薬、刺激剤、抗-高血圧剤、血管収縮剤、片頭痛治療薬、抗生物質、トランキライザー、抗-精神病薬、抗-腫瘍性薬物、抗-凝固剤、抗-血栓症薬、催眠剤、制吐薬、鎮吐剤、抗-痙攣薬、神経筋作用薬、高血糖及び低血糖症治療薬、甲状腺及び非-甲状腺作用製剤、利尿薬、鎮痙薬、子宮弛緩剤(terine relaxants)、抗-肥満薬、赤血球生成促進薬、抗-喘息薬、咳止め剤、ムコ多糖加水分解酵素、DNA及び遺伝子改善(genetic modifying)薬、及びこれらの組合せを含む。
【0107】
本発明において使用することが意図されている、薬物療法用活性成分の例は、制酸剤、H2-アンタゴニスト、及び鎮痛薬を含む。例えば、制酸剤の調剤は、成分である、炭酸カルシウム単独またはこれと水酸化マグネシウム及び/または水酸化アルミニウムとの組合せを用いて調製できる。更に、制酸剤は、H2-アンタゴニストとの組合せとして使用することができる。
【0108】
鎮痛薬は、アヘンまたはアヘン誘導体、例えばオキシコドン(オキシコンチン(OxycontinTM)として入手できる)、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、及びこれらの組合せ(場合によりカフェインを含む)を含有する。
【0109】
本発明において使用するための他の好ましい活性成分として好ましい他の薬物は、下痢止め薬、例えばイモジウム(immodium)AD、抗-ヒスタミン剤、咳止め剤、鬱血除去薬、ビタミン類及び呼気清涼化剤を含む。本発明において使用を意図する適当なビタミンは、任意の従来公知のビタミン類、例えばビタミンA、B、C、及びEを含むが、これらに限定されない。風邪、痛み、熱、咳、鬱血、鼻水、及びアレルギーに対して、単独でまたは組合せで使用される普通薬、例えばアセタミノフェン、クロルフェニラミンマレエート、デキストロメトルファン、シュードエフェドリンHCl及びジフェンヒドラミンを、本発明の該フィルム組成物に含めることができる。
【0110】
同様に、本発明において使用することが意図されているものは、不安緩解剤、例えばアルプラゾラム(ザナックス(XanaxTM)として入手できる);抗-精神病薬、例えばクロゾピン(クロザリル(ClozarilTM)として入手できる)及びハロペリドール(ハルドール(HaldolTM)として入手できる);非-ステロイド系抗炎症剤(NSAID's)、例えばジシクロフェナック(dicyclofenacs)(ボルタレン(VoltarenTM)として入手できる)及びエトドラク(ロジン(LodineTM)として入手できる)、抗-ヒスタミン剤、例えばロラタジン(クラリチン(ClaritinTM)として入手できる)、アステミゾール(ヒスマナール(HismanalTM)として入手できる)、ナブメトン(レラフェン(RelafenTM)として入手できる)、及びクレマスチン(タビスト(TavistTM)として入手できる);制吐薬、例えばグラニセトロン塩酸塩(キトリル(KytrilTM)として入手できる)及びナビロン(セサメット(CesametTM)として入手できる);気管支拡張薬、例えばベントリン(BentolinTM)、アルブテロール硫酸塩(プロベンチル(ProventilTM)として入手できる);抗-鬱薬、例えばフルオキセチン塩酸塩(プロザック(ProzacTM)として入手できる)、セルトラリン塩酸塩(ゾロフト(ZoloftTM)として入手できる)、及びパロキセチン(paroxtine)塩酸塩(パキシル(PaxilTM)として入手できる);抗-片頭痛薬、例えばイミグラ(ImigraTM)、ACE-阻害剤、例えばエナラプリラト(バソテック(VasotecTM)として入手できる)、カプトプリル(カポテン(CapotenTM)として入手できる)及びリジノプリル(ゼストリル(ZestrilTM)として入手できる);抗-アルツハイマー薬、例えばニセルゴリン;及びCaH-アンタゴニスト、例えばニフェジピン(プロカルジア(ProcardiaTM)及びアダラット(AdalatTM)として入手できる)、及びベラパミル塩酸塩(カラン(CalanTM)として入手できる)である。
【0111】
勃起不全療法薬は、陰茎に対する血流を容易にするための薬物、及び自律神経の活性に作用する薬物、例えば副交感神経系活性(コリン作用性)を高める及び交感神経(アドレナリン作用性)活性を下げる薬物を含むが、これらに限定されない。有用な非-限定的薬物は、シルデナフィル(sildenafils)、例えばバイアグラ(ViagraTM), タダラフィル(tadalafils)、例えばシアリス(CialisTM)、バルデナフィル(vardenafils)、アポモルフィン(apomorphines)、例えばアプリマ(UprimaTM)、ヨヒンビン塩酸塩、例えばアフロジン(AphrodyneTM)、及びアルプロスタジル(alprostadils)、例えばカバージェクト(CaverjectTM)を包含する。
【0112】
本発明における使用を意図する大衆的なH2-アンタゴニストは、シメチジン、ラニチジン塩酸塩、ファモチジン、ニザチジン(nizatidien)、エブロチジン、ミフェンチジン、ロキサチジン、ピサチジン(pisatidine)、及びアセロキサチジンを包含する。
【0113】
活性制酸性成分は、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:
水酸化アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、アミノ酢酸、リン酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウム炭酸ナトリウム、重炭酸塩、アルミン酸ビスマス、炭酸ビスマス、亜炭酸ビスマス、ビスマスサブガレート(subgallate)、亜硝酸ビスマス、ビスマスサブシリシレート(subsilysilate)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸イオン(酸または塩)、アミノ酢酸、アルミン酸硫酸マグネシウム水和物、マガルドレート、アルミノ珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウムグリシネート、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムトリシリケート、ミルク固形分、アルミニウム一塩基又は二塩基(mono-ordibasic)リン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、重炭酸カリウム、酒石酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アルミノ珪酸マグネシウム、酒石酸及び塩。
【0114】
本発明において使用する薬理的活性薬剤は、アレルゲンまたは抗原、例えば草本、木本、またはブタクサ由来の植物の花粉;猫及び他の毛皮で覆われた動物の皮膚及び体毛から剥離した小さな鱗片である、動物の鱗屑;昆虫、例えばハウスホコリダニ、ミツバチ及びスズメバチ;及び薬物、例えばペニシリン等を含むことができるが、これらに限定されない。
【0115】
植物物質、薬草及び無機物も、本発明のフィルムに添加することができる。植物の例は、制限なしに、根、樹皮、葉、茎、花、果実、タバコ、ヒマワリの種子、コカイン、及びこれらの組合せを含む。
【0116】
酸化防止剤も、特に活性成分が感光性である場合には、該活性成分の劣化を防止するために、該フィルムに添加することができる。
【0117】
本発明において使用する該生物活性を持つ活性物質は、有益なバクテリアを含むことができる。より詳しくは、幾つかのバクテリアは、通常舌の表面上及び咽喉部の背後に存在する。このようなバクテリアは、食物中に見られるタンパク質を分解することにより、該食物の消化を助ける。従って、これらのバクテリアを、本発明の経口投与用のフィルムに配合することが望ましい場合がある。
【0118】
また、口臭及び関連する口腔手当状態を処置するための活性成分、例えば微生物を抑制するのに効果的な活性成分を含めることが望ましい場合がある。口臭は、揮発性の硫黄含有化合物を発生する、口腔内の嫌気性バクテリアの存在によって起される可能性があるので、このような微生物を抑制する成分が望ましいものであり得る。このような成分の例は、特に抗-微生物剤、例えばトリクロサン、二酸化塩素、クロレート、及びクロライトを含む。口腔手当組成物、例えば口内洗浄液及び練歯磨きにおける、クロライト、特に亜塩素酸ナトリウムの使用が、米国特許第6,251,372号、同第6,132,702号、同第6,077,502号及び同第6,696,047号に教示されている。これら米国特許全てを、参考としてここに組入れる。このような成分は、悪臭及び関連する口内状態を処置するのに効果的な量で配合される。
【0119】
化粧学的に活性な薬剤は、メントール、他の香料または芳香剤等の呼気清涼化化合物、特に口腔衛生のために使用されるもの、並びに歯科及び口腔清浄化において使用される活性成分、例えば四級アンモニウム塩基を含むことができる。該香料の効果は、酒石酸、クエン酸、バニリン等の香味増強剤を使用することによって高めることができる。
【0120】
また、該フィルムを製造する際に、着色添加剤を使用することができる。このような着色添加剤は、食品、薬物、及び化粧学的着色剤(FD&C)、薬物及び化粧学的着色剤(D&C)、または外用薬物及び化粧学的着色剤(Ext. D&C)を包含する。これらの着色剤は、染料、その対応するレーキ、及び幾つかの天然及び合成着色剤である。レーキは、水酸化アルミニウム上に吸収された染料である。
【0121】
着色剤の他の例は、公知のアゾ染料、有機または無機顔料、または天然起源の着色剤を含む。無機顔料が好ましく、その例は、鉄またはチタンの酸化物であり、これらの酸化物は、上記成分全ての質量を基準として、約0.001〜約10質量%なる範囲、及び好ましくは約0.5〜約3質量%なる範囲の濃度で添加される。
【0122】
香料は、天然並びに合成の調味液体から選択することができる。このような薬剤の例示的なリストは、揮発性オイル、合成調味オイル、調味芳香剤、植物、葉、花、果実、茎を由来とするオイル、液体、オレオレジン、または抽出液、及びこれらの組合せを包含する。
【0123】
香味料を含む該フィルムは、辛いまたは涼感を与える調味飲料またはスープを得る目的で添加することができる。これらの香味料は、制限されるものではないが、茶及びスープ風味、例えばビーフ及びチキン風味含む。
【0124】
他の有用な香味料は、アルデヒド及びエステル、例えばベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド)、シトラール、即ちアルファシトラール(レモン、ライム)、ネラール、即ちベータシトラール(レモン、ライム)、デカナール(オレンジ、レモン)、アルデヒドC-8(シトラス、フルーツ)、アルデヒドC-9(シトラス、フルーツ)、アルデヒドC-12(シトラス、フルーツ)、トリルアルデヒド(チェリー、アーモンド)、2,6-ジメチルオクタノール(未熟な果実)、及び2-ドデセナール(シトラス、マンダリン)、これらの組合せ等を含む。
【0125】
甘味料は、以下の非-限定的なリストから選択することができる:グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びこれらの組合せ;サッカリン及びその様々な塩、例えばナトリウム塩;ジペプチド甘味料、例えばアスパルテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビアレボジアナ(Stevia Rebaudiana)[ステビオシド(Stevioside)];スクロースのクロロ-誘導体、例えばスクラロース;糖アルコール、例えばソルビトール、マニトール、キシリトール等。同様に意図されているものは、水添デンプン水解物、及び合成甘味料である3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシド、特にそのカリウム塩(アセスルファーム-K)、及びそのナトリウム及びカルシウム塩、及び天然の強力な甘味料、例えばローハンクー(Lo Han Kuo)。他の甘味料を使用することも可能である。
【0126】
該活性成分と、溶媒中のポリマーとを組み合わせる場合、生成されるマトリックスの型は、該活性成分及び該ポリマーの溶解度に依存する。該活性成分及び/または該ポリマーが、選択された溶媒に対して溶解性である場合には、該マトリックスは溶液を生成する。しかし、これらの成分が不溶性である場合には、該マトリックスは、エマルション、コロイド、または懸濁液として分類することができる。
【0127】
適用量:
本発明のフィルム製品は、該活性成分の広範囲に及ぶ量を収容することができる。該フィルムは、必要とされる用量が高いか、あるいは極端に低いかに拘らず、正確な用量(フィルムのサイズ及び元のポリマー/水の組合せにおける該活性成分の濃度により決定される)を提供することができる。従って、該フィルムに配合される活性成分または薬理組成物の型に依存して、該活性成分の量は、約300mg程度、望ましくは約150mgまで、あるいはμg範囲の低い値であり得、あるいはこれらの間の任意の量であり得る。
【0128】
本発明のフィルム製品及び方法は、高い効能、低い用量の薬物に対して十分に適したものである。これは、本発明のフィルムの高度の均一性を通して達成される。従って、低用量の薬物、特に活性成分のより高効力のラセミ混合物が望ましい。
【0129】
発泡を減じる風味付与剤
本発明のフィルムは、また少なくとも1種の発泡を減じる風味付与剤をも含む。本明細書に記載する発泡を減じる風味付与剤は、該フィルムに風味付けし、かつ空気、例えば取込まれた空気を、該フィルム-形成組成物から除去し、及び/または該組成物へのその混入を阻止するという、両者の機能を果たす成分である。
【0130】
該発泡を減じる風味付与剤は、伝統的な消泡剤または脱泡剤の代わりに添加される。従って、本発明のフィルムは、消泡剤または脱泡剤の添加を全く必要としない。
【0131】
該用語「脱泡剤」とは、典型的には、既に形成された後の泡を減じる薬剤を記載するために使用される。該用語「消泡剤」とは、典型的には、加工中に泡の形成を阻止する薬剤を記載するのに使用される。本特許出願の目的にとって、これらの用語は、互換的に使用される。
【0132】
従来の脱泡剤/消泡剤は、当分野において周知である。例えば、マッカチョンズ機能性材料(McCutcheon's Functional Materials), ノースアメリカンエディション/インターナショナルエディション(North American Edition/International Edition), 2005 アニュアルボリュム(Annuals Volume) 2, ザ・マニュファクチャリング・コンフェクショナー・パブリッシング社(The Manufacturing Confectioner Publishing Co.), 「脱泡剤(Defoamers)」pp. 103-126 (2005)を参照のこと。これを、参考としてここに組入れる。多くの消泡/脱泡剤は、シリコーンまたはオイルを主成分とするものである。シメチコーンが、周知の消泡/脱泡剤の一つである。
【0133】
本発明のフィルム内での気泡の形成を防止するために、その混合段階を減圧下で行うことができる。しかし、該混合段階が完了するや否や、また該フィルム形成溶液が、常圧条件に戻されるや否や、空気は、該混合物内に再度導入されるか、あるいはこれと接触するであろう。多くの場合において、小さな気泡は、この粘稠なポリマー溶液内部に、再度取込まれるであろう。発泡を減じる風味付与剤の該フィルム-形成組成物への配合は、気泡の生成を実質的に減じるか、あるいは排除する。
【0134】
風味付与剤は、典型的には、混合後に添加される。というのは、減圧下での混合は、幾つかの香料の効果における低下をもたらす恐れがあるからである。しかし、該発泡を減じる風味付与剤は、該フィルムに風味を付与するばかりでなく、発泡をも減じるものであるから、該発泡を減じる風味付与剤は、該フィルム-形成溶液に他の成分を混合する前に添加することが好ましい。このように、該発泡を減じる風味付与剤は、泡の生成を阻止すると共に、生成されるあらゆる泡の排除を助ける、即ち消泡剤及び脱泡剤両者として作用し得る。
【0135】
好ましい一態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、果実、または芳香性物質または樹皮を主成分とするものである。例えば、該発泡を減じる風味付与剤は、ミント-型の香料であり得る。適当なミント-型の香料は、メントール、シンナミント、スペアミント、ペパーミント、及びこれらの組合せを含む。天然のラズベリー及びオレンジ香料、例えばノビル(Noville)社によるオレンジバースト(Orange Burst)香料AN24334582も、適当な発泡を減じる風味付与剤である。該発泡を減じる風味付与剤自体が、風味を付与することができる。例えば、メントールの代わりに、該発泡を減じる風味付与剤が、チェリー様のメントールであり得る。他の変形も可能である。
【0136】
好ましい一態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、8〜12個の炭素原子、より好ましくは10個の炭素原子を持つ。他の好ましい一態様において、該発泡を減じる風味付与剤は、少なくとも一つの末端ジメチル基及び非-末端性のOH基を含む。何ら理論に拘泥するつもりはないが、これらの化学的基を持つ該発泡を減じる風味付与剤は、気泡との相互作用において、また内部に取込まれた空気の放出において、ある効果を持つことができる。
【0137】
発泡を減じる風味付与剤は、一般的に、該フィルムを製造する際に、該薬剤が、該フィルムに風味を付与し、かつ生成する泡の量を減じるのに効果的な任意の量で存在する。例えば、発泡を減じる風味付与剤は、該フィルムを基準として、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも約0.15質量%、より好ましくは少なくとも約0.5質量%、最も好ましくは少なくとも約1.0質量%なる量で存在し得る。更に、該発泡を減じる風味付与剤は、例えば該フィルムを基準として、多くとも20質量%、好ましくは多くとも15質量%、より好ましくは多くとも10質量%、最も好ましくは多くとも5質量%なる量にて存在し得る。
【0138】
随意成分
様々な他の成分及びフィラーをも、本発明のフィルムに添加することができる。これら添加剤は、何ら限定されるものではないが、界面活性剤;該混合物内の該成分との相溶化において役立つ可塑剤;ポリアルコール;及び成分の分散性維持に役立つ、熱硬化性ゲル、例えばペクチン、カラギーナン、及びゼラチンを含むことができる。幾つかの界面活性剤は、これらが低い親水-親油バランス(HLB)、即ち5未満のHLBを持つ場合には、消泡/脱泡剤としても機能することができる。従って、本発明のフィルムに添加できる該界面活性剤は、消泡/脱泡の目的を意図していない界面活性剤、即ち5を越えるHLBを持つ界面活性剤である。従って、ここで定義する「界面活性剤」とは、消泡/脱泡剤として適していない界面活性剤を意味するものとする。
【0139】
本発明の組成物に配合することのできるこれら種々の添加剤は、様々な異なる機能を与えることができる。添加剤群の例は、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、安定化剤、発泡剤、顔料、着色剤、フィラー、増量剤、甘味料、香味料、芳香剤、放出性改良剤、佐剤、可塑剤、流動促進剤、離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、バインダ、バッファー、吸収剤、グリダント(glidants)、接着剤、接着防止剤、酸味付与剤、柔軟剤、樹脂、保護薬、溶剤、界面活性剤、乳化剤、エスラトマー及びこれらの混合物を含む。このような添加物は、当分野において公知である(ここでも、界面活性剤と同様に、これら添加剤の何れも、小胞/脱泡剤として機能する添加剤を含むものではない)。これら添加剤は、上記の活性成分と共に添加することができる。
【0140】
本発明のフィルムの製造:
本発明のフィルムは、乾燥する前に、シート状に成形する必要がある。所定の成分を組み合わせて、上記ポリマー、水及び所望により活性成分または他の成分を含む、多成分マトリックスを作成した後、この成分の組合せを、当分野において公知の任意の方法、例えば該多成分マトリックスを押出、塗布、噴霧、注型または圧伸成形により、シートまたはフィルムに成形する。多層フィルムが必要な場合には、その製造は、同一または異なる組成を持つことができる2種以上の成分の組合せを、同時押出することによって得ることができる。また、多層フィルムは、既に形成されたフィルム層上に、塗布、噴霧、または流込み成形することによっても得ることができる。
【0141】
様々な異なるフィルム-形成技術を利用することができるが、可撓性フィルムを与える方法、例えばリバースロール塗布法を選択することが望ましい。該フィルムの可撓性は、保存のために、あるいは個々の投与剤形に裁断する前に、該フィルムのシートを巻取り、かつ搬送することを可能とする。望ましくは、該フィルムは、また自立性のものであり、あるいは換言すれば、別途支持体のない状態において、その保全性及び構造を維持できるものである。更に、本発明のフィルムは、喫食可能なまたは摂取可能な物質から選択することができる。
【0142】
塗布または流込み成形法は、本発明のフィルム製造の目的にとって特に有用である。具体的な例は、特に多層フィルムが望ましい場合には、リバースロール塗布法、グラビア塗布法、浸漬塗布または漬け塗り法、計量ロッドまたはメイヤーバー塗布法、スロットダイまたは押出塗布法、ギャップまたはナイフオーバーロール塗布法、カーテン塗布法、またはこれらの組合せを含む。
【0143】
ロール塗布、より具体的にはリバースロール塗布法は、本発明に従ってフィルムを作成する際に、特に望ましい方法である。この手法は、本発明において望ましい、生成するフィルムの優れた制御性及び均一性を与える。この手法において、上部の計量ローラーと、その下方のアプリケータローラーとの間のギャップを、正確に設定することによって、該塗布材料を、該アプリケータローラー上に計取る。該塗膜は、該アプリケータローラーから、該アプリケータローラーに隣接する支持体の周りを通過する際に、該基板に移される。3本ロール及び4本ロール法両者が、一般的である。
【0144】
上記のグラビア塗布法は、塗布液浴内を走行する彫刻ロールに依拠するものであり、該浴において、該ロールの該彫刻ドットまたはラインは、該塗布物質で満たされる。該ロール上の過剰量の塗布液は、ドクターブレードにより掻取られ、次いで該塗膜は、これが該彫刻ロールと加圧ロールとの間を通過する際に、該基板上に置かれる。
【0145】
オフセットグラビア塗布法が一般的であり、ここでは、該塗膜は、該基板に転写される前に、中間ロール上に置かれる。
【0146】
該簡単な浸漬塗布法または漬け塗布法では、該基板を該塗布液の浴中に浸漬させるが、該塗布液は、通常、該基板を漬けた際に、該液が該浴内に戻れるように、低粘性のものである。
【0147】
上記計量ロッド塗布法においては、過剰量の該塗布液が、該基板が該浴のロール上を通過する際に、その上に堆積される。しばしばメイヤーバー(Meyer Bar)として知られる、ワイヤ巻き計量ロッドは、所定量の該塗布液が、該基板上に残留することを可能とする。その量は、該ロッド上で使用した該ワイヤの径によって決定される。
【0148】
上記スロットダイ塗布法においては、該塗布液は、重力またはスロットを介する加圧下で、該基板上に絞り出される。該塗布物が100%固体である場合には、この方法は「押出」と呼ばれ、またこの場合には、線速度は、しばしば該押出速度よりも著しく高い。このことは、塗膜を、該スロットの幅よりも著しく薄くすることを可能とする。
【0149】
PEOポリマー成分を含有するフィルム形成組成物を製造するためには、押出法を利用することが特に望ましい可能性がある。これらの組成物は、該ポリマー成分中にPEOまたはPEOブレンドを含み、また該組成物は、本質的に可塑剤及び/または界面活性剤、及びポリアルコールが添加されていないものであり得る。該組成物を、約90℃未満の加工温度にて押出して、シートとすることができる。押出は、均一なマトリックスを得るために、ローラーまたはダイを介して該フィルム-形成組成物を絞り出すことにより進めることができる。次いで、押出されたこのフィルムを、当業者には公知の任意のメカニズムを利用して、冷却する。例えば、冷却ロール、空冷ベッド、または水冷ベッドを使用することができる。この冷却段階は、PEOが熱を保持する傾向を持つので、これらのフィルム-形成組成物にとって、特に望ましい。
【0150】
上記ギャップまたはナイフオーバーロール法は、塗布液が、該基板に適用され、次いで該基板が、「ナイフ」及び支持ロール間のギャップに通されることに依拠している。該塗布液及び基板が通過する際に、過剰量は掻取られる。
【0151】
エアーナイフ塗布法では、該塗布液は該基板上に適用され、またその過剰量は、該エアーナイフからの強力なジェットによって「吹飛ばされる」。この手法は、水性塗布液に対して有用である。
【0152】
上記カーテン塗布法において、底面にスロットを備えた浴が、該塗布液の連続するカーテンを、2つのコンベア間のギャップ内に落下させる。塗布すべき該対象は、制御された速度にて該コンベアに沿って通過、移動し、また結果としてその上部表面に、該塗布液を受取る。
【0153】
該フィルムの乾燥:
この乾燥段階も、該フィルム組成物の均一性維持に関る寄与因子である。粘度増加組成物の存在しない、または粘度が、例えば上記ポリマーの選択によって調節されている組成物の存在しない条件下で、該フィルム内の成分が、強い凝集または凝塊形成傾向を示す可能性がある場合には、制御乾燥プロセスは、特に重要である。このような制御乾燥法を必要としない、正確な用量を持つフィルムを形成する別の方法は、予め定められたウエル上で、該フィルムを流込み成型することであろう。この方法によれば、該フィルム成分が凝集する恐れがあるが、この凝集は、活性成分を、隣接する投与剤形に移動させることはない。というのは、各ウエルが、該投与単位自体を画成しているからである。
【0154】
制御されたまたは迅速な乾燥法が望ましい場合には、これは、様々な方法によって実施できる。熱の適用を必要とする方法を含む、様々な方法を利用することができる。該液体担体は、湿潤フィルムにおいて得られる均一性、より具体的には自己-凝集性を示さない均一な不均質性が維持されるように、該フィルムから除去することができる。
【0155】
望ましくは、該フィルムを、その底部からその上部に向かって乾燥する。望ましくは、該乾燥の初期設定期間中に、該フィルムの上部を横断する、空気流は実質的に存在せず、その間に、中実の粘弾性構造が形成される。これは、初めの数分間、例えば該乾燥プロセスの初めの約0.5〜約4.0分間で起こり得る。該乾燥をこのように調節すると、従来の乾燥方法に起因する、該フィルムの上部表面の破壊及び再形成が回避される。この回避は、該フィルムを生成し、上部及び底部側を持つ表面の上部側にこれを配置することによって達成される。次いで、先ず熱を該フィルムの底部側に適用して、該液体担体を蒸発させ、あるいはまた除去するのに要するエネルギーを与える。このようにして乾燥される該フィルムは、風乾されたフィルム、あるいは従来の乾燥手段によって乾燥されたフィルムと比較して、より迅速かつ均等に乾燥される。まず上部及び端部において乾燥される、風乾されたフィルムとは対照的に、底部に熱を適用することにより乾燥される該フィルムは、その中心部並びに端部において同時に乾燥される。これは、また従来の手段によって乾燥されたフィルムについて起こる、成分の沈降をも回避する。
【0156】
該フィルムを乾燥する温度は、約100℃またはそれ以下、望ましくは約90℃またはそれ以下、及び最も好ましくは約80℃またはそれ以下である。
【0157】
幾つかの態様において、該極性溶媒の質量は、乾燥前の該フィルムの、少なくとも約30%である。幾つかの他の態様において、該フィルムの乾燥は、該極性溶媒の割合(質量%)を、約10%またはそれ以下に低下する。好ましくは、該乾燥は、約10分またはそれ以下の期間内に起こる。
【0158】
単独でまたは上記のような他の制御方法との組合せで使用することのできる、該乾燥プロセスを調節するもう一つの方法は、該フィルムを乾燥している該乾燥装置内の水分を調節及び変更する工程を含む。このようにして、該フィルム上部表面の、早期の段階における乾燥を回避する。
【0159】
更に、該乾燥期間の長さは、適切に調節することができ、即ち該成分、及び特に芳香性オイル及び薬物の熱に対する感受性及び揮発性と釣合いを持たせることができる。該エネルギーの量、温度及び該コンベアの長さ及びその速度を相互に釣合わせて、このような活性成分を収容し、また最終的なフィルムにおけるその喪失、分解または効力の無力化を最小化することができる。
【0160】
適当な乾燥方法の具体的な例は、マグーン(Magoon)によって記載されたものである。マグーンの方法は、特にフルーツパルプの乾燥方法を目的としている。しかし、本発明者等は、この方法を、薄いフィルムを調製するために採用している。
【0161】
マグーンの方法並びに装置は、水の興味深い特性に基くものである。水は、その内部及びその周辺両者に対して伝導及び対流によってエネルギーを伝達するが、水はその内部及び水に対してのみエネルギーを放射する。従って、マグーンの装置は、該フルーツパルプが、配置されている表面を含み、該表面は赤外線に対して透明である。該表面の下側は、温度制御された水浴と接触している。この水浴の温度は、水の沸点よりも僅かに低い温度に制御されていることが望ましい。該湿潤フルーツパルプが、該装置の表面上に置かれている場合に、「リフラクタンス(refractance)ウインドウ」を形成する。このことは、赤外線エネルギーが、単に該フルーツパルプによって占有されている表面上の領域において、しかも単に該フルーツパルプが乾燥されるまで、該表面を透過可能となることを意味する。該マグーンの装置は、本発明のフィルム成分の凝集する過程を減じる、効果的な乾燥期間にて、本発明のフィルムを与える。
【0162】
該乾燥プロセスを制御するもう一つの方法は、ゾーン乾燥手順を含む。ゾーン乾燥装置は、その内部に配置された1またはそれ以上の乾燥ゾーンを備えた、連続ベルト式トンネル乾燥機を含むことができる。各乾燥ゾーンの状態は変更することができ、例えば温度及び湿度を選択的に選ぶことができる。段階的に高くなる乾燥効果を与えるように、周期的にこれらゾーンを規制することが望ましいことであり得る。
【0163】
該ゾーン乾燥コンベアの速度は、連続的であることが望ましい。あるいはまた、該速度を、該乾燥手順の特定の段階で変更して、該所定のゾーンの条件に、該フィルムを暴露する期間を延長または短縮することが可能である。連続式であれ、変更式であれ、該ゾーン乾燥は、表面のスキン形成を伴うことなしに、該フィルムを乾燥する。
【0164】
図9に示されている該ゾーン乾燥装置100の一態様によれば、該フィルム110は、連続ベルト120上に供給され、該ベルトは、様々な乾燥ゾーンを介して該フィルムを搬送する。該フィルムが移動する第一の乾燥ゾーン101は、温暖かつ湿潤ゾーンであり得る。第二のゾーン102は、より高温かつより乾燥した状態であり得、また第三のゾーン103も、高温かつ乾燥状態にあるものであり得る。これら種々のゾーンは、連続式であり得、あるいはまたこれらは、図10のゾーン乾燥装置200によって示されているように、分離されていてもよく、ここには、第一の乾燥ゾーン201、第二の乾燥ゾーン202及び第三の乾燥ゾーン203が図示されている。本発明による該ゾーン乾燥装置は、3つの乾燥ゾーンに限定されるものではない。該フィルムは、所望により、本発明の制御された乾燥効果を得るために、変動する温度及び湿度レベルを持つ、より低位のまたは追加の乾燥ゾーンに通すことができる。
【0165】
更に温度及び湿度を調節するために、該乾燥ゾーンは、追加の雰囲気条件、例えば不活性ガス雰囲気条件を含むことができる。このゾーン乾燥装置は、更に、本発明の制御乾燥が維持される限りにおいて、該ゾーン乾燥手順中に、追加の工程、例えば噴霧及び積層工程を含むように改造できる。
【0166】
該フィルムは、最初に約500μm〜約1,500μmなる範囲、即ち約20ミル〜約60ミルなる範囲の厚みを持つことができ、また乾燥した場合には、約3μm〜約250μmなる範囲、即ち約0.1ミル〜約10ミルなる範囲の厚みを持つことができる。幾つかの態様において、該フィルム製品は、約3μm(約0.1ミル)を越える厚みを持つことができる。幾つかの他の態様においては、該フィルム製品は、約250μm(約10ミル)またはそれ以下の厚みを持つ。幾つかの更なる態様において、該フィルム製品は、約13μm〜約125μm(約0.5ミル〜約5ミル)なる範囲の厚みを持つ。望ましくは、該乾燥フィルムは、約50μm〜約200μm(約2ミル〜約8ミル)なる範囲、及びより望ましくは約75μm〜約150μm(約3ミル〜約6ミル)なる範囲の厚みを持つであろう。
【0167】
フィルムの均一性に関するテスト:
本発明のフィルムを、該フィルム製造工程における化学的及び物理的な均一性につきテストすることが望ましい。特に、該フィルムのサンプルを取出し、様々なサンプル間のフィルム成分における均一性をテストすることができる。フィルムの厚み及び全体としての外観を、均一性に関してチェックすることもできる。特に、安全性及び効力の理由から、薬理的に活性な成分を含むフィルムについては、均一なフィルムが望ましい。
【0168】
本発明による均一性に関するテスト法は、製造工程を通してフィルムを搬送することを含む。この工程は、特に該フィルムを乾燥プロセスに掛け、該フィルムを個々の投与単位に裁断し、及び/または該投与単位を包装することを含む。該フィルムを、製造工程を通して、例えばコンベアベルト装置上を搬送しつつ、少なくとも1つの部分に、幅方向に裁断する。該少なくとも1つの部分は、他のあらゆるフィルム部分と離されている、対向する端部を持つ。例えば、該フィルムがロールに巻回されている場合には、該フィルムは、別々の小ロールに裁断することができる。該フィルムの裁断は、様々な方法、例えばナイフ、レザー、または任意の他の適当なフィルム細断手段を使用する方法によって行うことができる。
【0169】
次いで、該裁断したフィルムを、該部分の中央部分を崩壊させることなしに、該部分の対向する端部各々から、小片を取出すことによってサンプリングすることができる。該中央部分を完全なままに維持することにより、該フィルムの主要部分が、その一貫性を中断することなく、また該フィルム内にサンプリングに起因するギャップを生成することなしに、該製造工程に従って進行することを可能とする。従って、用量喪失の問題は、該フィルムがさらに加工、例えば包装されるので、軽減される。更に、該工程全体に渡る裁断部分または小ロールの完全性の維持は、問題となる制御結果による、更なるフィルムの加工または包装の中断、例えばフィルム片の喪失の認知に基く警告による停止の可能性を下げる助けとなるであろう。
【0170】
該フィルム部分から該末端部分またはサンプリング部分を取出した後、これらを、サンプル間の成分の含有率における均一性につきテストする。該フィルム片を検査及びテストするための任意の公知の手段を使用することができ、その例は、肉眼による検査、分析装置の使用、及び当業者には公知の任意の適当な他の手段の使用を含む。該テスト結果が、フィルムサンプル間に不均一性の存在を示した場合には、該製造工程を変更することができる。これにより、全製造操作の完了前に、該工程を変更できるので、時間及び経費を節減し得る。例えば、乾燥条件、混合条件、組成上の成分及び/またはフィルムの粘度を変更することができる。該乾燥条件の変更は、特に温度、乾燥期間、湿度レベル、及び乾燥機の配置位置を含むことができる。
【0171】
その上、該製造工程全体に渡り、該サンプリング及びテスト段階を繰返すことが望ましい可能性がある。多くの間隔でのテストにより、均一なフィルム用量の継続的製造を、確実なものとすることができる。該工程の代替法を任意の段階で実施して、サンプル間の不均一性を最小化することができる。
【0172】
薄いフィルム(薄膜)の利用
本発明の薄膜は、多くの用途に対して十分に適したものである。該フィルム成分の高度の均一性は、該フィルムを、医薬配合のために特に適したものとしている。更に、該フィルムの製造において使用した該ポリマーは、該フィルムに一定の範囲の崩壊時間を与えることができるように選択することができる。フィルム崩壊期間の変更及び延長は、該活性成分の放出期間の調節を可能とし、持続放出型の放出系の製造を可能とする。更に、該フィルムは、幾つかの体表面の何れかに、特に口腔、肛門部、膣、眼科学的なもの等の粘膜を含む表面、皮膚表面または身体内の何れかの、例えば外科手術の際の創傷表面、及び同様な表面への、活性成分の投与のために使用することができる。
【0173】
該フィルムは、活性成分を経口投与するために使用できる。これは、該フィルムを上記のように作成し、これらを哺乳動物の口腔に導入することによって行う。このフィルムは、製造し、使用前に、即ち口腔に導入する前に除去される、第二のまたは支持体層に接着することができる。接着剤を使用して、当分野において公知の任意のものであり得る、該支持体または裏材料に、該フィルムを接着することができ、また該接着剤は、好ましくは水溶性ではない。接着剤を使用する場合、これは、摂取可能であり、しかも該活性成分の諸特性を変更することのない、食品等級の接着剤であることが望ましい。粘膜接着性組成物が、特に有用である。多くの場合において、該フィルム組成物は、それ自体粘膜接着剤として機能する。
【0174】
該フィルムは、哺乳動物の舌に、あるいはその下方に適用できる。このような適用が望ましい場合には、該舌の形状に対応する特定のフィルム形状が好ましい。従って、該フィルムは、該舌の裏側に対応する該フィルムの側が、該舌の前面に相当する側よりも長くなるような形状に、裁断することができる。具体的には、該所定の形状は、三角形または台形であり得る。望ましくは、該フィルムは、口腔から排出されるのを防止し、かつ該フィルムが溶解するにつれて、該活性成分の大部分を、該口腔内に導入できるように、該口腔に接着させる。
【0175】
本発明のフィルムのもう一つの用途は、液体に導入した際に、迅速に溶解するという、該フィルムの傾向を利用する。本発明に従ってフィルムを製造し、これを液体中に導入し、溶解させることによって、活性成分を液体中に導入することができる。これは、活性成分の液体投与剤形を製造するか、あるいは飲料に風味付けするために利用できる。
【0176】
本発明のフィルムは、望ましくは封止された、空気及び水分に対して抵抗性の包装体内に包装され、該活性成分が酸化、加水分解、揮発されること、及び環境との相互作用から保護する。図1を参照すると、包装された薬理的投薬単位10は、各々袋に包まれ、またはホイル及び/またはプラスチック積層シート14間に挟まれた、各フィルム12を含んでいる。図2に示されているように、該袋10、10'は、引裂可能な、またはミシン目の入れられた接合部16によって一緒に結合することができる。該袋10、10'は、図5に示されているように、ロール状に包装され、あるいは図3に示されているように重ね合わされ、図4に示されているようにディスペンサー18に収容されて販売される。該ディスペンサーは、典型的には意図された治療に対して処方された、医薬の全供給量を含むことができるが、該フィルム及び包装が薄いことから、錠剤、カプセル及び液剤に対して使用される伝統的なボトルよりも小さく、またより便宜的なものである。更に、本発明のフィルムは、唾液または粘膜領域と接触した際に即座に溶解し、水で洗い流す必要を排除する。
【0177】
望ましくは、一連のこのような単位投与量を、処方された養生または治療に従って、例えば特定の療法に依存して、10-90日分を一緒に包装する。個々の該フィルムは、支持体上に包装し、使用に際して剥ぎ取ることができる。
【実施例】
【0178】
本発明の特徴及び利点は、より一層完全に、以下の実施例により示され、該実施例は、例示の目的で与えられるものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例1:
水溶性フィルム組成物を、以下の表1に記載した成分を使用して製造した。該水溶性フィルム組成物における脱気剤としての、香味料の低レベルでの使用を、評価した。
【0179】
【表1】

【0180】
成分8及び9は、デグッサ(Degussa)1300ボールに入れた。次に、これらの成分を、デグッサデンタルマルチバックコンパクト(Degussa Dental Multivac Compact)を用いて、以下に記載するように処理した。
【0181】
【表2】

【0182】
得られた溶液は、泡状であった。20gのこの泡状溶液を、次に8個の、56.7g(2オンス)広口マウスジャー各々に投入した。0.27gのグリセロールモノオレエート、即ち公知の脱泡剤、及び以下に示すような様々な香味化合物を、これらボトルに添加した。(0.27gは、フィルム固形分において、約4%に相当する)。
1. グリセロールモノオレエート(アルド(Aldo)Mo KFGとして市販品として入手できる);
2. スージングミスト(Soothing Mist)AN143567[ノービル(Noville)];
3. オレンジバースト(Orange Burst) AN143482[ノービル(Noville)];
4. ブラックチェリー(Black Cherry) SN486305(IFF);
5. ストロベリー(Strawberry) SN279913 (IFF);
6. 天然ラズベリー(Natural Raspberry) 188a10[アベレー(Abelei)];
7. シンナミント(Cinnamint) AN144390[ノービル(Noville)];
8. ペパーミントビターマスク(Peppermint Bittermask) RDW2-193A[アームトッド社(Armtodd Co.)]。
【0183】
次に、発泡性のレベルを、該広口マウスジャー内の泡の高さにおける減少量の関数として測定した。泡の高さにおける降下を、該グリセロールモノオレエートジャーについて測定した。この高さを、該消泡剤の有効性の尺度として用い、100%として設定した。スージングミントAN143567、ラズベリー188a10、シンナミントAN144390、及びペパーミントビターマスクRDW2-193Aは、グリセロールモノオレエートと等価な、泡のレベルにおける減少を与えた。オレンジバーストAN143482は、該泡レベルを下げる上で、グリセロールモノオレエートの有効性の僅かに約25%であった。ブラックチェリーSN486305及びストロベリーSN279913は、該泡レベルにおける有意な低下を示さなかった。
【0184】
実施例2:
水溶性フィルム組成物を、以下の表2に記載した成分を使用して製造した。発泡を減じる風味付与剤の効力を、従来の脱泡剤と比較した。
【0185】
【表3】

【0186】
成分8及び9はボールに入れ、これらの成分を、デグッサデンタルマルチバックコンパクト(Degussa Dental Multivac Compact)を用いて、以下に記載するように処理した。
【0187】
【表4】

【0188】
得られた溶液は、泡状であった。20gのこの泡状溶液を、次に9個の、56.7g(2オンス)広口マウスジャー各々に投入した。0.27gの以下に示すような様々な香味化合物を、これらボトルに添加し、観測した。
1. グリセロール(Gycerol)モノオレエート(アルド(Aldo)Mo KFGとして市販品として入手できる);
2. ミグリオール(MiglyolTM)840;
3. ミグリオール(MiglyolTM)810;
4. ミグリオール(MiglyolTM)829;
5. ミグリオール(MiglyolTM)812;
6. ミグリオール(MiglyolTM)818;
7. ベジタブル(Vegetable)(ウエッソンカノーラ(WessonTM Canola))オイル;
8. イソプロピルアルコール;
9. ビックス(VicksTM)コフドロップチェリータイプ(Cough Drop Cherry Type) F1. AN145163。
ミグリオール(MiglyolTM)(コンデアケミー(Condea Chemie) GmbH)サンプルは、透明な中性脂肪酸エステルである。
【0189】
泡高さにおける降下を、該グリセロールモノオレエートジャーについて測定した。この高さを、該消泡剤の有効性の尺度として用い、100%として設定した。他の全てのジャーを、この高さに対する割合(%)として測定した。泡のレベルにおける有意な低下を示した唯一の化合物は、該チェリー香料であった。チェリー香料の添加量を最初に添加した量の約25%、即ち0.0675gとしたもう一つのサンプルもテストした。このサンプルも、泡のレベルにおける有意な低下を与えた。
【0190】
実施例3:
デキストロメトルファンHBr(Dx)を活性成分として含有する、喫食可能な水溶性フィルムを、脱泡剤として1%のチェリー香料を使用して製造した、(92.3mgのストリップは、約15mg Dxを含む)(35%の固形分)。このフィルムを製造するのに使用した成分を以下の表3に示す。
【0191】
【表5】

【0192】
成分12、13、14及び15は、デグッサ1100ボールに添加した。次いでこの溶液を、デグッサマルチバックコンパクトを使用して、以下に記載のように処理した:
【0193】
【表6】

【0194】
該溶液を、55#ps/1/s「IN」剥離紙(グリフ(Griff))上に、530μmに設定されたμm単位で調節可能なウエッジバーを備えた、K-コントロールコーターを用いて、フィルムに注型した。このフィルムを、エアーオーブンで、80℃にて17分間乾燥した。空気中の水分は、湿度分析器(HR73、メトラートレド(Mettler Toledo)社)で測定した値として、3.87%であった。このフィルムを、重さ約86-98mgの、23mm×33.9mmなるサイズのストリップに裁断した。

このフィルムは、マダラ模様の形成を示さず、良好な風味を有し、また苦味を全く示さなかった。該1%のチェリー香料は、脱泡剤として十分に機能した。
【0195】
このように、現時点において好ましいものと考えられる本発明の態様を説明してきたが、当業者は、本発明の精神から逸脱することなしに、上記態様に変更並びに改良を施すことが可能であり、また本発明の真の範囲に入る、このような変更並びに改良全てを特許請求するものである。
【符号の説明】
【0196】
1、42、48、110・・フィルム
10・・薬理的投薬単位(10、10’・・袋)
14・・積層シート
16・・接合部
18・・ディスペンサー
20・・装置
22・・マスターバッチ
24・・マスターバッチ供給タンク
26・・第一の計量ポンプ
28・・制御バルブ
30、30’・・第一及び第二ミキサー
32、32’・・開口
34、34’・・第二の計量ポンプ
36・・パン
38・・計量ロール
44・・基板
46・・支持ロール
50・・乾燥装置
54、60、60’、64、64’・・ベクトル
56・・空気反らせ板
58、58’・・チャンバー位置
62、62’・・出口端部
100、200・・ゾーン乾燥装置
101、201・・第一の乾燥ゾーン
102、202・・第二の乾燥ゾーン
103、203・・第三の乾燥ゾーン
120・・連続ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に均一なフィルム組成物の製造方法であって、以下の工程:
(a) 水溶性ポリマー、発泡を減じる風味付与剤及び極性溶媒を含む、フィルム形成組成物を製造する工程;
(b) 該フィルム形成組成物を減圧下で混合する工程;
(c) 該フィルム形成組成物を注型する工程;及び
(d) 制御された乾燥プロセスを通して該極性溶媒を除去する工程、
を含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記発泡を減じる風味付与剤が、前記フィルムを基準として、約0.1〜約20質量%なる範囲の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発泡を減じる風味付与剤が、前記フィルムを基準として、約0.5〜約15質量%なる範囲の量で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記発泡を減じる風味付与剤が果実、芳香性物質または樹皮を主成分とするものである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記発泡を減じる風味付与剤がメントール、チェリーメントール、シンナミント、スペアミント、ペパーミント、オレンジ香料、天然ラズベリー及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記発泡を減じる風味付与剤が、8〜12個の炭素原子、少なくとも一つの末端ジメチル基及び非-末端OH基を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記実質的に均一なフィルム組成物が更に活性成分をも含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−509905(P2010−509905A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529218(P2009−529218)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020271
【国際公開番号】WO2008/036299
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(507026110)モノソル アールエックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (15)
【Fターム(参考)】