説明

発泡シース被覆ケーブル及びその製造方法

【課題】ケーブルに用いる発泡シースについて、シースが発泡している分、電線とシースの接触面積が少なくなり、長手方向にずれてしまうという問題を解決する発泡シース被覆ケーブル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁電線1上に発泡シースを被覆するケーブルにおいて、発泡シース2の表層厚みの中央部から前記絶縁電線に向かってシースの発泡率を小さくしたケーブル。その手段として、絶縁電線の絶縁層1bを冷却してから前記発泡シースを被覆することにより、前記絶縁電線から前記発泡シースの厚さ方向に向かって、前記絶縁電線側の前記発泡シースの発泡の成長を抑制するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の絶縁層とシースのずれが少ないケーブルと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ケーブルは、図4に示すように、導体1aの周りに絶縁体1bを設け、これをさらにシース2で被覆する。これを断面図で示すと図5のようになる。図4、5に示したものは3心平型であるが、電線の本数やシースで被覆した形などは、用途に応じ、様々である。
シースは、軽量化、柔軟性の付与、原料の使用量低減のほか、電線との間の剥離が容易になるなどの効果を得るために、発泡させたものを用いる技術が提案されてきた。
例えば、特許文献1に記載のケーブルは、図3に示すように、電線の被覆層の周りに発泡させたシースが被覆されている。このケーブルの場合、表皮部2aよりも深層部2cのほうが発泡率が高いことが特徴であり、これにより耐外傷性に優れ、表面光沢を有し見た目がよいケーブルとなると記載されている。
【特許文献1】特許第3963633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されたケーブルでは、電線との接触部位でシースが大きく発泡している分、電線とシースの接触面積が少なくなり、密着強度が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、発泡シースの、電線の絶縁層に対する厚み方向において発泡率をコントロールすることで、電線との密着性を改良し、さらにケーブルの柔軟性や使用材料の低減なども維持できることを見出し、本発明をなすに至った。
上記課題は、以下の発明により解決された。
(1)絶縁電線上に発泡シースを被覆するケーブルにおいて、該発泡シースの表層厚みの中間部から厚さ方向に該絶縁電線に向かって該発泡シースの発泡率を小さくしたことを特徴とするケーブル。
(2)前記発泡シースの発泡率が、前記絶縁電線側からシースの厚さ方向に向かって0.1〜0.2mmまでの間で8%以下であることを特徴とする(1)に記載のケーブル。
(3)前記絶縁電線の絶縁層を冷却してから前記発泡シースを被覆することにより、前記絶縁電線から前記発泡シースの厚さ方向に向かって、前記絶縁電線側の前記発泡シースの発泡の成長を抑制することを特徴とする(1)又は(2)に記載のケーブルの製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、電線の絶縁層とシースの密着度を向上させ、かつ、シースの柔軟性や軽量化などの効果は従来のまま維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明のケーブルの一例の、一部を断面図で示した説明図である。導体1aと絶縁層1bからなる電線は、発泡シース2により被覆されている。シースの表皮部2aは発泡率が低い。一方、中間部2bは発泡率が高く、深層部2cは発泡率が低い。これによりシース2が絶縁電線1と接触する面積を上げ、電線1とシース2が長手方向にずれるという課題を解決した。
【0007】
図2に、本発明のケーブルの、各部位におけるシースの発泡率の一例を模式的なグラフで示した。均一な発泡ではなく、シースの厚み方向で中央部(中間部)に発泡のピークを設け、表皮層及び絶縁電線との接触部(深層部)は発泡が少ない。この構成により、シース全体では柔軟性や軽量性などの特性を維持したまま、シースと絶縁電線をより密着させることができる。
なお、ここでいう「厚み」とは、図5の矢印Aで示した長さをいう。
【0008】
本発明において、絶縁層、シースの素材は、ビニル化合物など、通常用いられているものを用いることができ、特に制限はないが、具体的には例えば塩化ビニル樹脂を用いることができる。シースの厚さも通常に実施されている厚さでよいが、好ましくは1.4〜1.5mmである。電線の導体についても特に制限はなく、一般的に使用されている銅線、アルミニウムなどを用いることができる。
本発明において、発泡シースの表層厚みの中間部から厚さ方向に絶縁電線へ向かって該発泡シースの発泡率を小さくしたことは、ケーブルの断面および比重により確認できる。
本発明では、絶縁層接触部からその厚さ方向に0.1〜0.2mmまでの発泡率を8%以下にすることが好ましく、1.0〜6.0%がさらに好ましい。
なお、本発明における発泡率とは、シースを厚み方向に表層部、中間部、深層部に分けたときの各部位における、該層全体の体積中の、気泡の体積の割合(%)である。表層部はシース表面から、シース厚み全体の10〜30%を占めることが好ましく、15〜25%がさらに好ましい。また、深層部は電線接触部から、シース厚み全体の10〜30%を占めることが好ましく、15〜25%がさらに好ましい。上記両層の間に中間層が存在する。
図2に示したグラフの発泡率のピークは、15〜30%が好ましい。
【0009】
本発明において発泡率の上記のような制御は、例えば導体を被覆している絶縁層を十分冷却してから発泡シースを被覆することで行える。シース中央に比べ絶縁層との接触部位の方が冷却されるため、シースの発泡率が一様ではなくなる。このときの冷却温度は15〜25℃が好ましい。
本発明の絶縁電線の数は特に制限はなく、1本または複数本でも良い。
【実施例】
【0010】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
実施例1
3芯の絶縁電線をコア製造時に、70mm単軸押出機(三葉製作所製)のホッパーに塩化ビニル樹脂を入れ、絶縁層として押出し成形した。この際、温度設定はシリンダ(供給部-圧縮部-計量部)温度を150〜180℃にし、ダイを160℃にした。ダイから被覆後、冷却水槽で水冷した。この際、水槽の冷却温度は18℃にし、冷却後の絶縁層表面温度がおよそ20〜25℃になる様冷却を行った。次工程にて前記絶縁層に発泡シース押出を実施し絶縁層に近接する発泡率をおよそ3%になるように調整した。
【0012】
実施例2
水槽の冷却温度を約25℃にし、絶縁層に近接する発泡率を5%になるように調整した。それ以外の条件は実施例1と同様とした。
【0013】
比較例1
水槽の冷却温度を35℃にし、絶縁層に近接する発泡率を9.0%になるように調整した。それ以外の条件は実施例1と同様とした。
【0014】
1)試験方法
ア)発泡率
スライサーで対象部を薄くスライスして試料を採取し、JIS K 7112−5.1に準拠し、水中置換法により比重測定した。無発泡(充実)材料と対象発泡材料についての比重差により発泡率を計算した。
イ)密着力
シース絶縁体長を200mmに調整し、インストロン型引っ張り試験機で200mm/分で密着力を測定
【0015】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のケーブルの一例を、一部断面図で示した説明図である。
【図2】本発明におけるシースの発泡率の一例を模式的に示したグラフである。
【図3】従来のケーブルの一例を、一部断面図で示した説明図である。
【図4】3心平型ケーブルの形状を示す斜視図である。
【図5】3心平型ケーブルの形状を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1a 導体
1b 絶縁層
1 電線
2a 表皮部
2b 中間部
2c 深層部
2 発泡シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁電線上に発泡シースを被覆するケーブルにおいて、該発泡シースの表層厚みの中間部から厚さ方向に該絶縁電線へ向かって該発泡シースの発泡率を小さくしたことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
前記発泡シースの発泡率が、前記絶縁電線側からシースの厚さ方向に向かって0.1〜0.2mmまでの間で8%以下であることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記絶縁電線の絶縁層を冷却してから前記発泡シースを被覆することにより、前記絶縁電線から前記発泡シースの厚さ方向に向かって、前記絶縁電線側の前記発泡シースの発泡の成長を抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−113835(P2010−113835A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283228(P2008−283228)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】