説明

発泡スチロールリサイクル方法

【課題】 不燃性液体により発泡スチロールを減容し、スチロールを取り出す。
【解決手段】 不燃ハロゲン化炭化水素又は多価アルコール誘導体に発泡スチロールを溶解し、希釈後ろ過し、次に水又はアルコールを加えてスチロールをゲル化して取り出し、乾燥してスチロールを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡スチロールリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロールのリサイクル方法としては、リモネン、トルエン混液、アセトン、グリコール等の溶媒によりゲル化し、次に溶媒を除去する方法がある〔特開2002−322287〕。しかし、これらの溶媒はいずれも可燃性であり、使用中、保管中に火災爆発の危険があり、実用化に大きな障害となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
火災、爆発の危険性がなく、かつ、毒性も従来のものと同程度の溶媒の溶媒を用いた発泡スチロールリサイクル方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、非極性すなわち水にとけにくい溶媒であって、発泡スチロールを溶解する溶媒(ゲル化させる溶媒は含まない)で、発泡スチロールを溶解させ、次にアルコールを含えて非粘着性のスチロールゲルを得ることを基本原理とするものである。溶媒によっては水を加えて非粘着性ゲルが得られるものがある。これには2価アルコール誘導体の多くがある。また、溶解液に5〜50%のアルコールを加えた液に発泡スチロールを入れると非粘着性のゲルが得られる。これも、本発明に含める。
本発明では毒性がなく、引火しにくい溶解液を見い出したので、それについて説明する。
発明者は、不燃ハロゲン化炭化水素又は多価アルコール誘導体(アルキレングリコールアルキルエーテル又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセタート)等が発泡スチロールを急速に溶解すること、溶解した液にアルコールや水を加えると、ポリスチレンがゲルとなることさらに、このゲルには粘着性がないため付着せず、機械化、自動化が容易であることを見い出した。溶解液としてはこれらの他に、二塩基酸エステルがある。不燃ハロゲン化炭化水素の中で好ましいものとして、ジクロロフルオロエタン(沸点33℃)及びジクロルメタンなどがある。
【0005】
これら溶解液に、アルコールを少量、好ましくは5〜50%加えておき、そこに発泡スチロールを入れて溶解又はゲルとし、次に、水又はアルコールを加えて非粘着性ゲルとして析出させることもできる。
【0006】
上記不燃ハロゲン化炭化水素の他に表面活性剤共存下でジクロロペンタフルオロプロパンも有効となる。さらに発明者は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセタート、ジクロロフルオロエタンとベンジルアルコール混液も発泡スチロールを溶解することを見い出だした。これらジエチレン体の他に物エチレン体、トリエチレン体も溶解する。これらのうち溶解速度が遅いものがあるが、それらは、40℃以上、好ましくは50〜80℃に加温することにより急速に発泡スチロールを溶解できる。同種類の溶解液としては、ジエチレン基をトリエチレン基としたもの、エチルをメチルとしたものなどがある。
【0007】
発泡スチロールのリサイクルにおいて問題になるのは夾雑物である。本発明では、固形の夾雑物は目の細かいメッシュフィルターなどでろ過する。この場合、溶解液をろ過に適するように十分に低い粘度に希釈する必要がある。希釈液は溶解液そのものが好ましいが、それとよく混合し、かつポリスチレンがゲル化しないもので、疎水性のものでもよい。
【0008】
本発明で特に新規な点は、操作の後、アルコール又は水を加えて、溶解しているスチロールを非粘着性ゲルとして析出させる点にある。溶解しているポリスチレンを非粘着性ゲルとして析出させるものとして、本発明は一価のアルコールを見い出した。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの一価アルコール、エチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリンなどの多価アルコールなどである。この中で最も析出力が強いのはメタルールであるが、エタノールに水を少量加えて析出力を強くすることができる。本発明では、主成分がアルコールでそこに水を加えたものもアルコールに含める。
【0009】
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートのように水を少量溶解する場合は、アルコール以外に水のみを加えて、溶解したスチレンを非粘着性のゲルとして析出させることができる。
本発明の溶解液のうち多価アルコール誘導体はすべて水を少量溶解する。
【0010】
水をほとんど溶かさない溶解液、例えばジクロロフルオロエタンのようなフルオロカーボン系の溶解液に、アルコールを好ましくは5〜50%加えておいて、それに発泡スチロールを入れると、アルコールが5〜10%では溶解してしまうが、アルコールがより多いと溶解せずに直接非粘着ゲルとなる。
この非粘着ゲルをとり出して、圧縮し、乾燥すればスチロールが得られる。
【0011】
アルコール又は水を加えて混ぜると白いゲルが析出するが、ゲルに含まれている余分な溶媒を風乾、蒸発又は減圧下で除去する。高沸点多価アルコール溶解液の場合、水蒸気蒸留がよい。また、用いた溶解液の沸点が高く蒸発が困難な場合は、低沸点アルコールもしくは、低沸点溶媒をゲルに加えてよくかき混ぜ、これをくり返して置換し、高沸点溶解液を除くとよい。圧力を加えれば液の大半が絞り出されるのでこの併用が好ましい。
【0012】
ゲル化させる前の階段のおいて、発泡スチロールを溶解した液に溶解液を加えて希薄にした後、水又は塩溶液を加えてよく振とうする操作を行ってもよい。これにより、水性の不純物を除去できる。
【0013】
ゲルを分離した後の溶解液とアルコールの混液に、水のみ、もしくは塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩を溶解した液を加えて振ると、溶解液を分離できる。ただし、この他に溶解液とアルコール混液から、蒸留、透過分離法などでアルコールを回収することができる。
【0014】
発泡スチロールをフルオロカーボンに溶かし、そこに、水のみもしくはベンジルアルコールのみを加えてもスチロールは析出しないが、ベンジルアルコールと水を加えるとスチロールゲルが析出した。また、アセトンなどの水溶性溶媒と水との混液を加えてもゲルが析出した。このように、アルコール類と水の併用は有用である。
【0015】
発泡スチロールを本発明の溶解液に溶かし、次に適度の粘度になるまで溶解液で希釈する。そこに水又は塩溶液を加えてよくかき混ぜるか、振とうする。液は2相に分離するが、下層は塩溶液であるので、固形の夾雑物や、色素などの水溶性の不純物などは下層に移行する。次に上層を取り出し、乾燥もしくは、アルコールを加えてスチロールを分離する。
【0016】
塩化メチレン,ジクロロフルオロエタンは沸点が低いので、水道水などで冷却した空間内で以上の操作を行うので好ましい。
【0017】
本発明によると、現溶及びリサイクル工程を自動化することができる。まず、水と混和しない非極性溶解液にアルコール(好ましくは5〜30%)を混合しておき、(Aそれを入れた容器(B)に発泡スチロールを投入する。発泡スチロールは泡を出して非粘着ゲルとなり、液の上方に浮く。ここで、発泡スチロールを投入した別の容器(C)があって、そこにゲル化液(A)をポンプ(D)により流し込むか上方より入れて発砲スチロールをゲル化してもよい。(B)又は(C)には、網かごが入れてあり、それを引き上げると液は(A)に残り、液上方に浮いたゲルをかごの中に取り出せる。
とり出したゲルは、圧縮器(E)により、圧縮して中のゲル化液を放出させるとともに、平らな軟化スチロールを得ることができる。これを風乾又は乾燥させる。かごを使用しない場合は(B)又は(C)の余分なゲル化液をポンプ(D)着ゲルであるため、穴は容易にはゲルで栓がることはない。
【参考例】
【0018】
ジクロロフルオロエタンにエタノールを加えた液に発泡スチロールを入れたところ、エタノール10V/V%、以上の溶液では発泡スチロールは非粘着性ゲルとなったが5V/V%では溶解した。また、エタノールを増加させ、70%ではゲルにもならず溶解もしなかった。メタノールもほぼ同様の割合で、同じ現象となった。
【実施例1】
【0019】
ジクロロフルオロエタン100mlに発泡スチロール断片を加えて溶解した。溶解は50gが限度で、水あめのような粘性物となった。次に、再びジクロロフルオロメタン200mlを加え、よくかき混ぜて低粘性の溶解液を得た。次に、塩化カルシウム30重量%水溶液100mlを加えてよく振とうし、静置すると2相に分離した。下層を捨て、上層約300mlにメチルアルコール50mlを加えて混ぜると白いゲル状のスチロールが得られた。ゲルを取り出し、乾燥してスチロールを得た。アルコールと、ジクロロフルオルエタンの混合液については、塩カルシウム30重量%液100mlを加えてよく振ると上層にジクロロフルオロメタンがくるのでこれを再利用する。下層は、水/メタロールと分離器でメタノールを回収する。
【実施例2】
【0020】
ジエチルレングリコールモノエチルエーテルアセテート100mlを50℃に加温し発泡スチロールの断片10gを加えて溶解した。次にエタノール50mlを加えて混ぜると白いゲルが析出した。ゲルを取り出し、エタノールで洗浄し、次に強い圧力をゲルに加えて、液を十分に絞り出した。最後に風乾し、固形のスチロールを得た。エタノールと溶解液との混液は、両者の沸点が大きく異なるため蒸留により容易に分離できる。
【実施例3】
【0021】
タンクにジクロロフルオロエタンに30%のエタノールを加えた液を入れ、そこに発泡スチロール断片を入れると、非粘着性ゲルが得られた。タンク内の液を吸引してとり出し、残った非粘着性ゲルを外にとり出し、圧縮して平板状とし風乾してスチロール板を得た。
【実施例4】
【0022】
ジエチレングリコールモノエチルエーテルに、発泡スチロールを入れてかきまぜながら溶解させた。次に、水を加えてかきまぜると非粘着性ゲルが析出した
【実行例5】
【0023】
実行例3において、エタノールの代わりに10%メタノールにより全く同じ結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡スチロールを非極性溶解液に溶解し、それにアルコール又は水を加えてスチロールのゲルを得そのまま、もしくは夾雑物をろ過し、次に、含まれる溶媒を除去させてスチロールを得る発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項2】
発泡スチロールを溶解する非極性溶解液にアルコールを混合し、その液で発泡スチロールを非粘着性ゲルとし、次にゲルに含まれる溶媒を除去させてスチロールを得る発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項3】
前記溶解液が、ハロゲン化炭化水素、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセタート又は二塩基酸エステルである請求項1又は2記載の発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項4】
前記溶解液が、1,1−ジクロロ1−フルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートのいずれかである請求項3記載の発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項5】
請求項1ないし4において、得られたゲルに圧力を加えて溶媒を絞り出した後、残った溶媒を蒸発させてスチロールを得る発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項6】
残った、溶解液とアルコール混の残液に、水又は塩溶液を加えて溶解液を分離回収する請求項1ないし5記載の発泡スチロールリサイクル方法
【請求項7】
前記溶解液を40℃以上100℃以下に加温して発泡スチロールを溶解する請求項1又は6記載の発泡スチロールリサイクル方法。
【請求項8】
発泡スチロールを溶解する非極性溶解液にアルコールを混合した非粘着ゲル化液(A)を入れた容器(B)と、もしくは(B)とは別の発泡スチロール投入容器(C)と、液注入吸引ポンプ(D)と、圧縮器(E)とからなり、(B)に発泡スチロールを投入するかもしくは、発泡スチロールを投入した容器(B)にゲル化液(A)をポンプ(D)を用いて注入してゲル化し、液上方に浮いたゲルを網ですくい上げるか、(B)又は(C)のゲル化液を流し出すか、もしくは吸引して廃出し、(B)又は(C)の底に残存したゲルをそのままもしくはとり出し、圧縮器(E)により圧縮して含まれるゲル化液を再廃出し、得られた軟化スチロールを固化させる自動化発泡スチロール減容機。