説明

発泡ポリマー

【課題】水、油又は他の化学物質(例:接着剤)の速すぎる進入(ingress)を許さない発泡ポリマーの製造方法、及び、該発泡ポリマー層を備えた衣類、手袋の製造方法を提供する。
【解決手段】ゲル化可能なポリマー(gellable-polymer)の前駆体、水膨潤性ポリマー(water-swellable-polymer)の粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意すること、前記ゲル化可能なポリマーをゲル化して、ゲル化されたポリマー(gelled-polymer)、さらには、固体ポリマー(solid-polymer)を形成することを具備した発泡ポリマーの製造方法、および、ライナーとライナー上に被覆された上記発泡ポリマー層とを具備した衣類、特に手袋の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、発泡ポリマーの製造方法、発泡ポリマーを備えた衣類の製造方法、及び、発泡ポリマー層を有した手袋に関する。
【0002】
発泡剤を用いて、又は、ポリマー中へと気泡を導入することによって発泡ポリマーを生産することは、知られている。
【0003】
しかしながら、発泡剤の使用は、環境問題をもたらし得る。なぜなら、多くの発泡剤は、汚染物質であるためである。
【0004】
従来の導入ガスによるポリマー発泡体(incorporated gas polymer foams)の使用も、特にフォームコーティング(foam coating)において、不都合を有している。なぜなら、多量の導入ガスを有した泡(foam)は、密度が低すぎて、効率的に流すこと又は排出することができないからである。この問題を解決するために、いくつかの試みが為されてきた。
【0005】
例えば、EP−A−1608808は、テキスタイルライナー(textile liner)のフォームディップコーティング(foam dip coating)を伴い、且つ、余剰の泡に流体を注ぐことによって余剰の泡を能動的に除去する工程を含んだ手袋の作製プロセスを記述している。残念ながら、このプロセスは、余分の工程が、生産を遅らせると共に、更なる排出物(結果として環境問題を伴う)の原因となるため、不都合を有している。
【0006】
手袋の製造における泡の不都合を防ぐための他の試みには、WO−A−2004/093580にあるように、ディッピング分散液中へと導入される空気の量を制限すること、又は、US−A−2005/0035493にあるように、泡の使用を避けて、ディップされる化合物に可溶性の塩を添加して、洗浄後に、テクスチャード表面(textured surface)を形成することが含まれる。残念ながら、これらのアプローチもまた、不必要な排出物をもたらす。
【0007】
従来のフォームコーティングの更なる問題、特に手袋などの衣類における問題は、発泡ポリマーの性質が、水、油又は他の化学物質(例:接着剤)の速すぎる進入(ingress)を許すかもしれないことである。
【0008】
本発明の目的は、先行技術の不都合を解消することにある。
【0009】
したがって、本発明は、発泡ポリマーの製造方法であって、
ゲル化可能なポリマー(gellable polymer)の前駆体、水膨潤性ポリマー(water-swellable polymer)の粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
前記ゲル化可能なポリマーをゲル化して、ゲル化されたポリマー(gelled polymer)を形成することと
を具備した方法を提供する。
【0010】
好ましくは、ゲル化可能なポリマーの前駆体は、プラスチゾル又はラテックスである。より好ましいラテックスは、天然ゴム、ホモポリマー又はコポリマーのラテックス、例えば、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステルアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、スチレンブタジエンコポリマー、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリウレタン又はシリコーンのラテックスである。
【0011】
好ましくは、水膨潤性ポリマーは、天然ポリマー、修飾された(modified)天然ポリマー、ポリアクリレート又はポリアミドである。特には、水膨潤性ポリマーは、ゼラチン、加工でんぷん(modified starch)、変性セルロース(modified cellulose)、ナトリウムポリアクリレート、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレン−マレイン酸無水物コポリマー、架橋されたカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋されたポリエチレンオキサイド、又は、でんぷんがグラフトされたポリアクリロニトリルのコポリマーから選択されることが好ましい。
【0012】
これらのうち、最も好ましい水膨潤性ポリマーは、架橋されたカルボキシメチルセルロースである。
【0013】
本発明の方法の大きな利点は、発泡ポリマーの製造を可能とする前駆体分散液を調製することができ、発泡ポリマーの使用が、先行技術の不都合を受けることなしに、発泡剤の必要性及びそれらがもたらしうる環境面の不利益を回避することである。更には、水膨潤性ポリマーは、水中で膨潤し、当然に、ゲル化可能なポリマーがゲル化され且つ乾燥されて固体ポリマーを形成した後に収縮するために、本発明は、不必要な追加の排出液の生成をもたらさない。
【0014】
好ましくは、前駆体分散液のpHは、8.5乃至11の範囲内にある。これは、驚くべきことに水膨潤性ポリマー(特には、架橋されたカルボキシメチルセルロース)がアルカリ性のpHにおいてより素早く膨潤するために、有利である。約11よりも高いpHは、前駆体分散液のいくつかの成分の不安定化をもたらすかもしれないため、好ましくない。
【0015】
一般的に、水膨潤性ポリマーは、水の存在下で、非常に著しく膨潤する。架橋されたカルボキシメチルセルロースの場合、この膨潤は、もとのサイズの10倍、20倍又はそれ以上であるかもしれない。ゲル化可能なポリマーの前駆体におけるこの膨潤は、ゲル化されたポリマーがゲル化されたときに、水膨潤性ポリマーを含んだゲル化されたポリマーの乾燥が、粒子の縮小及び固体ポリマー中における空隙の形成をもたらすことを意味している。非常に驚くべきことに、発泡ポリマーを続いて水に浸しても、粒子が元の大きさまで膨潤することも、製造プロセスと同じ速さで膨潤することもない。それゆえ、発泡ポリマーは、発泡剤を使用しなくても、又は、機械的な手段による空気の導入をしなくても、製造され得る。
【0016】
ポリマーの乾燥は、ゲル化されたポリマーを、単に、室温付近における乾燥に供することを含んでいてもよい。或いは、ゲル化されたポリマーは、水で膨潤されたポリマー粒子及び発泡性ポリマーの乾燥をスピードアップするために、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは110℃未満であり、最も好ましくは100℃未満である温度で、加熱されてもよい。
【0017】
水膨潤性ポリマーは、水溶性材料の重量に対して、好ましくは30%未満であり、より好ましくは20%未満であり、最も好ましくは15%未満である量を構成している。これは、水膨潤性材料の量がかなり多いと、前駆体分散液の粘性を増大させ、前駆体分散液の扱い易さに影響を与えるかもしれないためである。
【0018】
一般に、前駆体分散液における水膨潤性ポリマーのうち水で膨潤した粒子の量は、その使用意図に依存する。好ましい一態様では、水膨潤性ポリマーにおける水で膨潤した粒子(即ち、粒子が水の存在下で膨潤した後)は、前駆体分散液の体積の50%未満を形成するであろう。より好ましくは、水で膨潤した粒子は、前駆体分散液の体積に対して、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満を形成するであろう。
【0019】
本発明の方法は、前駆体分散液にガスを導入して泡を形成することを更に含んでいてもよい。このガスは、好ましくは空気である。前駆体分散液中への空気の導入は、好ましくは、前駆体分散液を(勢いよく)かき混ぜることによって行う。
【0020】
前駆体分散液中に空気と水膨潤性粒子との双方を有していることの利点は、前駆体分散液中におけるガス及び/又は水膨潤性粒子の相対量を調節することにより、いったん生じた固体ポリマー中の空隙が変更(modify)され得ることである。このことは、いったん形成された固体ポリマーが、異なったサイズ又は異なったサイズ分布の空隙を有することを可能とし、多数の応用において重要な利点を有している。異なったサイズの空隙は、発泡ポリマーが衣類を被覆するために使用される場合に、特に重要となり得る。なぜなら、異なったサイズの空隙は、発泡ポリマーの表面特性、特には(例えば手袋の場合には)グリップ特性を改善し得るからである。
【0021】
好ましくは30体積%未満、より好ましくは25体積%未満、最も好ましくは20体積%未満のガスが、前駆体分散液中へと導入される。
【0022】
最も好ましい態様では、約15重量%のガスが(好ましくは空気として)前駆体分散液へと導入され、前駆体分散液の約15体積%が水で膨潤した粒子によって形成される。
【0023】
このように、本発明の第2の側面では、発泡ポリマーの製造方法であって、
ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
前記前駆体分散液にガスを添加して泡を形成することと、前記ゲル化可能なポリマーをゲル化して、ゲル化されたポリマーを形成することと
を具備した方法が提供される。
【0024】
本発明の全側面において、ゲル化可能なポリマーは、凝固剤を用いてゲル化可能であることが好ましい。このことは、例えば、前駆体が、天然ゴム、ホモポリマー又はコポリマーのラテックス、例えば、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステルアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、スチレンブタジエンコポリマー、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリウレタン又はシリコーンのラテックスである場合に適用されるであろう。
【0025】
このように、この方法は、好ましくは、前駆体分散液を凝固剤と接触させて、ゲル化可能なポリマーをゲル化することを更に含んでいる。
【0026】
好ましくは、凝固剤は、水溶性のナイトレート若しくはクロライド、アルコール(特にはメタノール)、酢酸、アスコルビン酸、又はクエン酸を含んでいる。最も好ましい態様では、凝固剤は、カルシウム塩を含んでおり、最も好ましくは、カルシウムナイトレートを含んでいる。
【0027】
本発明の一使用法は、発泡ポリマーの層を形成するために、基材をディップコートすることにある。このように、好ましい態様では、本発明は、型を前駆体分散液中へとディップすることと、ゲル化可能なポリマーをゲル化することとを更に含んでいる。型は、ライナーによって、好ましくはテキスタイルライナーによって、少なくとも部分的に被覆されていてもよい。これは、上記方法が衣類を形成するために使用される場合に、特に有用である。
【0028】
(ゲル化可能なポリマーが凝固剤を用いてゲル化され得る場合には、)ディッピングの前に、型が、少なくとも部分的に凝固剤によって被覆されていることが好ましい。これは、凝固剤の分散液又は溶液中へと型をディップすることと、任意に、凝固剤分散液から型を除去した後に凝固剤を乾燥させることとにより達成されてもよい。
【0029】
上記方法が使用される適用対象に依存して、前駆体分散液に型をディップする前又は後に、型は、ポリマーの1つ又は2つ以上の層によって被覆されていてもよい。このようにして、1つの層が発泡ポリマーの層である多層の製品が形成されてもよい。
【0030】
第3の側面では、本発明の方法は、衣類の製造方法であって、
a)型を用意することと、
b)任意に、前記型をライナーで被覆することと、
c)ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
d)前記型を前記前駆体分散液にディップして、前記型上に、前記ゲル化可能なポリマーの前駆体の層を形成することと、
e)前記前駆体分散液から前記型を除去することと、
f)前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することと
を具備した方法を提供する。
【0031】
第4の側面では、本発明は、衣類の製造方法であって、
a)型を用意することと、
b)任意に、前記型をライナーで被覆することと、
c)ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
d)前記前駆体分散液中へとガスを導入して泡を形成することと、
e)前記型を前記前駆体分散液にディップして、前記型上に、前記ゲル化可能なポリマーの前駆体の層を形成することと、
f)前記前駆体分散液から前記型を除去することと、
g)前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することと
を具備した方法を提供する。
【0032】
本発明の第3及び第4側面の衣類は、好ましくは手袋であるが、その代わりに、ソックス又は他の衣類であってもよい。ライナーは、好ましくはテキスタイルライナーである。テキスタイルライナーは、好ましくは、ナイロン、コットン、スパンデックス、ライクラ、ポリエステル、アラミド、dyneema(登録商標)、アクリル、炭素導電性ファイバ、銅導電性ファイバ、thunderon(登録商標)導電性ファイバ、液晶ポリマー由来のマルチフィラメントヤーンスパン(Vectran(登録商標)のブランド名で市販されている)、tacte1、CoolMax(登録商標)、ThermaStat(登録商標)、Thermax(登録商標)及びViafil(登録商標)の1つ又は2つ以上又は2つ以上の混合物を含んでいる。
【0033】
ライナーは、織られていない、織られた、又は、編まれたテキスタイルライナーであってもよく、好ましくは編まれており、より好ましくは横編みされている。
【0034】
第5の側面では、本発明は、ライナーと、前記ライナー上に被覆された少なくとも1つの発泡ポリマー層とを備え、前記発泡ポリマー層は、水膨潤性ポリマーの粒子の水による膨潤及び収縮により形成されたミクロ孔と、前記発泡ポリマー中に導入されたガスにより形成されたメソ孔とを備えた手袋を提供する。
【0035】
第6の側面では、本発明は、少なくとも1つの発泡ポリマー層を備え、前記発泡ポリマー層は、水膨潤性ポリマーの粒子の水による膨潤及び収縮により形成されたミクロ孔と、前記発泡ポリマー中に導入されたガスにより形成されたメソ孔とを備えた、支持体なしの手袋(unsupported glove)を提供する。
【0036】
ライナーを備えた手袋の生産方法は、典型的には、以下の工程を含んでいる:
a)手袋に必要な形状及びサイズの型を用意すること。
【0037】
b)好適な材料のライナー(好ましくはテキスタイルライナー)で、少なくとも部分的に、型を被覆すること。
【0038】
c)型及びライナーを、凝固剤の分散液(最も好ましくは、カルシウムナイトレートの、アルコール/水、好ましくはメタノール/水への分散液)にディップすること。
【0039】
d)凝固剤分散液から型及びライナーを引き出すこと、及び、任意に、型及びライナーを乾燥させること。
【0040】
e)ライナー及び型を、上述した前駆体分散液にディップすること。
【0041】
f)前駆体分散液からライナー及び型を引き出すこと。
【0042】
g)ライナー及び型を排水(drain)処理に供すること。
【0043】
h)上記ライナー及び型を、第2凝固剤分散液(例えば、メタノール/水中のカルシウムナイトレート、又は、メタノール/水中の酢酸であってもよい)にディップすることと、任意に、凝固後に乾燥させること。
【0044】
i)好ましくは、上記手袋を水分散液中で浸出させて、過剰の凝固剤及び/又は界面活性剤などを除去した後、80〜105℃でオーブン加熱すること。
【0045】
一般に、手袋が前駆体分散液から除かれるにつれて、手袋は、ゲル化可能なポリマーによって被覆され、凝固剤が前駆体分散液中でポリマーを凝固させるために機能し、これにより、ライナーの表面上に層を形成する。
【0046】
手袋が乾くにつれて、手袋中の水膨潤性粒子が収縮して凝固したポリマー中に空隙を残し、これにより、ライナー上を被覆した発泡ポリマーを提供する。前駆体分散液中に空気が存在する場合には、完成した手袋は、サイズ分布を備えた空隙を有する傾向があるだろう:即ち、前駆体分散液中における泡としての空気の存在により形成された比較的大きな孔(しばしばメソ孔として知られている)と、収縮後の水膨潤性粒子の空隙により形成された比較的小さな孔(ミクロ孔)とである。
【0047】
支持体なしの手袋の生産プロセスは、典型的には、以下の工程を有している。
【0048】
a)適切な形状の型が凝固剤分散液中にディップされる。
【0049】
b)任意の乾燥の後、上記の型が前駆体分散液中にディップされ、手袋の外表面(グリップ)である層を提供する。
【0050】
c)上記型が上記前駆体分散液から除去されて、上記ポリマーが凝固し始める。
【0051】
d)ディッピング後の凝固剤ディップ(post dipping coagulation dip)の後、上記手袋は、通常はラテックスである更なる分散液にディップされて、上記手袋に、第2層、即ち内層を提供する。
【0052】
e)任意に、上記手袋は、例えばフロックであってもよいライナーによって、更に被覆される。
【0053】
上記プロセス中の種々の段階において、任意の浸出工程及び/又は乾燥工程が存在してもよい。
【0054】
乾燥後、完成した手袋が、型上に最初に堆積された層が手袋の外表面となるように、型から裏返しで外される。
【0055】
支持体ありの手袋では、ディッピング工程は、前駆体分散液がライナーに完全には浸透しないように、制御されてもよい。このようにすると、手袋は、ポリマー材料に晒されていない内表面を有するであろう。これは、皮膚に隣接する天然ゴム又は他のポリマー中の成分にアレルギー反応を有している人もいるため、有利である。ライナーの浸透されていない部分は、手袋の着用者とポリマー材料のコーティングとの間に、障壁を形成するであろう。ライナー中へのポリマー材料の浸透は、前駆体分散液の粘度を変更すること、ディップの時間を制御すること、並びに、ライナー上における凝固剤の量及び濃度を制御することによって、制御されてもよい。加えて、ライナー中へのポリマー材料の浸透は、ライナー上に第1のポリマー層を有することにより制御されてもよい。第1の固体ポリマー層は、衣類が、油及び糊を含む有害物質の存在下で使用される場合に、化学的な進入(chemical ingress)を減少又は停止させる。
【0056】
固体(即ち、発泡性でない)ポリマー層は、実質的に同様の理由により、支持体なしの手袋においても有利である。但し、固体ポリマー層は、支持体なしの手袋の場合には、支持体なしの手袋が製造される仕方に起因して、発泡ポリマー層の後に、型上に堆積されるであろう。
【0057】
発泡ポリマー層の堆積の後、加熱されたパターンモールドを用いて、パターンが形成されてもよい。これは、特に手袋に対して、有利であるだろう。なぜなら、手袋のグリップ面(gripping surface)のグリップを改善するかもしれないからである。
【0058】
本発明に係るプロセスにより製造された手袋は、発泡ポリマー層の表面上に、ミクロ孔を有していることが望ましい。典型的には5及び50孔/mm2の間の、より好ましくは10及び40孔/mm2の間の、最も好ましくは15及び25孔/mm2の間の孔が存在している。孔のサイズ及び頻度の制御は、水膨潤性粒子の粒子サイズと、分散液中の水膨潤性粒子の量とに起因する。
【0059】
本発明の方法による発泡ポリマーは、典型的には、クローズドセルではなく、オープンセルである。このことは、発泡ポリマーが通気性である(例えば、発泡性ポリマーが手袋を製造するために使用されるときに特に有利である)だけでなく、空隙のミクロ孔性により、発泡ポリマー層の油及び糊の浸透を抑制するかもしれないために、有利である。組み合わせると、ミクロ孔表面、及び、発泡ポリマー中への油及び糊の相対的な抑制は、手袋に使用された場合に、オイル及びウェットグリップ(oil and wet grip)を向上させる。更に改善されたオイル及びウェットグリップは、前駆体分散液中へとガスが導入されることにより、発泡ポリマー層上にミクロ孔及びメソ孔の双方をもたらすことによって、提供される。
【0060】
ここで、発明の態様を、以下の実施例を参照しながら説明しよう。
【0061】
例1
この例では、ライナーと、ライナー上の発泡ポリマーコーティングとを有した手袋が製造された。この発泡ポリマーコーティングは、水膨潤性粒子を用いて形成されたミクロ孔を有している。
【0062】
手袋は、以下の方法により製造された。
1.手の形をした適切なサイズの型が、室温で保持された。
2.上記型上に、15ゲージのニットナイロン(15 gauge knitted nylon)のテキスタイルライナーが装填された。
【0063】
3.2.5%のカルシウムナイトレートと水中のメタノールとの凝固剤分散液が調製された。
【0064】
4.ライナーを備えた型が、凝固前の凝固剤分散液(precoagulating agent dispersion)へとディップされ、除かれた。
【0065】
5.型の下位置(down position)で70秒間、次いで、型の上位置(up position)で70秒間の空気乾燥をした後、型及びライナーを、2〜3秒間の浸漬時間で、ゆっくりとしたディッピング速度で、前駆体分散液中にディップさせた。
【0066】
6.前駆体分散液からゆっくりとした速度で型を除いた後、型が、下方位置(downward position)で10秒間の、及び、上方位置(upward position)で10秒間の排水(drain)に供された。
【0067】
7.第2の、凝固後の処理が、15%カルシウムナイトレート分散液中に型を素早くディップすることによって、実行された。
【0068】
8.ポリマー層は、下方位置において、室温で15分間に亘って、ゲル化に供された。
【0069】
9.この後、手袋は、30℃で15分間に亘って、水中で、事前浸出された(pre-leached)。
【0070】
10.最後に、型及び手袋が、80〜110℃で60分間に亘って、オーブン乾燥された。
【0071】
この例で使用された前駆体分散液は、表1に挙げられている通りの成分から構成されていた。
【0072】
この分散液の粘度は、280〜320cPであった。前駆体分散液中には、気泡は導入されなかった。全固形分量は、23乃至25質量%の範囲内であった。分散液のpHは8.5〜9.0であった。ディッピングの前に、前駆体分散液は、12時間に亘って熟成(mature)された。
【0073】
この例で使用された膨潤性粒子は、FMC Corporationから得られた、水溶性材料の量が1.0〜10.0重量%である架橋カルボキシメチルセルロースであった。これより際立って多くの水溶性材料は、非架橋カルボキシルメチルセルロースの増粘剤としての使用により示されているように、前駆体分散液の粘度に悪影響を与え得る。水溶性材料の量が30%未満であることが好ましく、好ましくは20%未満であり、最も好ましくは15%未満である。
【0074】
この例にしたがって製造された手袋は、表2に示されているグリップ性能並びに油及び水透過性能を有している。
【0075】
例2
例2では、ライナーを有し、メソ孔とミクロ孔とが混合した発泡剤手袋(foam glove)が、前駆体分散液中に空気を導入することにより製造された。ディッピング工程は、表3の手順にしたがって実行された。空気は、前駆体分散液を空気中でかき混ぜることにより導入された。
【0076】
前駆体分散液の処方は、表1に示されている通りであった。
【0077】
このプロセスにより製造された手袋の油及び水のグリップ及び透過性能は、表2に示されている通りである。
【表1】

【表2】

【表3】

【0078】
表2の結果に示されているように、本発明にしたがって製造された発泡ポリマー層を有した手袋は、従来の発泡ポリマーが被覆された手袋より、水及び油の進入(ingress)が極めて遅かった。例1及び(特に)例2の双方共に、非常に優れたグリップ性能を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
前記ゲル化可能なポリマーをゲル化して、ゲル化されたポリマーを形成することと
を具備した発泡ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記ゲル化可能なポリマーの前駆体は、プラスチゾル又はラテックスである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラテックスは、天然ゴム、ホモポリマー又はコポリマーのラテックスであり、例えば、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステルアクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、スチレンブタジエンコポリマー、ブチルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリウレタン又はシリコーンのラテックスである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水膨潤性ポリマーは、天然ポリマー、修飾された天然ポリマー、ポリアクリレート又はポリアミドである請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水膨潤性ポリマーは、ゼラチン、加工でんぷん、修飾セルロース、ナトリウムポリアクリレート、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレンマレイン酸無水物コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、又は、でんぷんがグラフトされたポリアクリロニトリルのコポリマーから選択される請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水膨潤性ポリマーは架橋されたカルボキシルメチルセルロースである請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水膨潤性ポリマーは、水溶性材料の30重量%未満を構成している請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
水により膨潤した前記水膨潤性ポリマーの粒子は、前記前駆体分散液の30体積%未満を形成している請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記前駆体分散液中へとガスを導入して泡を形成することを更に具備した請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
30体積%未満のガスが前記前駆体分散液中へと導入される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
前記前駆体分散液にガスを添加して泡を形成することと、
前記ゲル化可能なポリマーをゲル化して、ゲル化されたポリマーを形成することと
を具備した発泡ポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記前駆体分散液を凝固剤と接触させて、前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することを更に具備した請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記凝固剤は、水溶性ナイトレート若しくはクロライド、酢酸、アルコール、アスコルビン酸又はクエン酸を含んでいる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記凝固剤は、カルシウム塩、好ましくはカルシウムナイトレートを含んでいる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
型を前記前駆体分散液中へとディップすることと、前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することとを更に具備した請求項1乃至14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記型は、ライナー、好ましくはテキスタイルライナーによって、少なくとも部分的に被覆されている請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記型は、ディッピングの前に、前記凝固剤によって少なくとも部分的に被覆される請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記型を前記前駆体分散液中にディップする前又は後に、前記型が1つ又は2つ以上のポリマー層で被覆される請求項15乃至17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
a)型を用意することと、
b)任意に、前記型をライナーで被覆することと、
c)ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
d)前記型を前記前駆体分散液中にディップして、前記型上に、前記ゲル化可能なポリマーの前駆体の層を形成することと、
e)前記前駆体分散液から前記型を除去することと、
f)前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することと
を具備した衣類の製造方法。
【請求項20】
a)型を用意することと、
b)任意に、前記型をライナーで被覆することと、
c)ゲル化可能なポリマーの前駆体、水膨潤性ポリマーの粒子、及び水を備えた前駆体分散液を用意することと、
d)前記前駆体分散液中へとガスを導入して泡を形成することと、
e)前記型を前記前駆体分散液中にディップして、前記型上に、前記ゲル化可能なポリマーの前駆体の層を形成することと、
f)前記前駆体分散液から前記型を除去することと、
g)前記ゲル化可能なポリマーをゲル化することと
を具備した衣類の製造方法。
【請求項21】
前記衣類は手袋である請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記ライナーはテキスタイルライナーである請求項19乃至21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記テキスタイルライナーは、ナイロン、コットン、スパンデックス、ライクラ、ポリエステル、アラミド、dyneema(登録商標)、アクリル、炭素導電性ファイバ、銅導電性ファイバ、thunderon(登録商標)導電性ファイバ、液晶ポリマー由来のマルチフィラメントヤーンスパン(Vectran(登録商標)のブランド名で市販されている)、tacte1、CoolMax(登録商標)、ThermaStat(登録商標)、Thermax(登録商標)及びViafil(登録商標)の1つ、又は、これらの2つ以上の混合物を含んでいる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ライナーは、織られていない、織られた、又は、編まれたテキスタイルライナーであり、好ましくは横編みされたテキスタイルライナーである請求項19乃至23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
ライナーと、前記ライナー上に被覆された少なくとも1つの発泡ポリマー層とを具備し、前記発泡ポリマー層は、水膨潤性ポリマーの粒子の水による膨張及び収縮により形成されたミクロ孔と、前記発泡ポリマー中に導入されたガスによって形成されたメソ孔とを備えている手袋。
【請求項26】
少なくとも1つの発泡ポリマー層を具備し、前記発泡ポリマー層は、水膨潤性ポリマーの粒子の水による膨張及び収縮により形成されたミクロ孔と、前記発泡ポリマー中に組み込まれたガスによって形成されたメソ孔とを備えている、支持体なしの手袋。

【公開番号】特開2010−285599(P2010−285599A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−96711(P2010−96711)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(510110415)マイダス・セイフティー,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】