説明

発泡充填具

【課題】中空部において貫通孔の周囲を閉塞させることの容易な発泡充填具を提供する。
【解決手段】発泡充填具は、加熱されることで発泡体を形成する熱発泡性基体12と、熱発泡性基体を支持する支持体13とを備えている。発泡充填具は、支持体13に対して移動可能に設けられる移動体21と、支持体13と移動体21との間に設けられる弾性部材25とを備えている。熱発泡性基体12は、弾性部材25を弾性変形した状態で支持体13及び移動体21を保持している。発泡充填具は、パネルにより形成される中空部とパネルに穿設される貫通孔を有する中空構造体の中空部に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルにより形成される中空部とパネルに穿設される貫通孔を有する中空構造体の中空部に配置される発泡充填具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の構造部材には、ピラーに代表されるように中空部を有する中空構造体が多用されている。中空構造体の中空部には、強度、剛性、制振性等の向上を目的として発泡充填具を配置させる手法が知られている。この発泡充填具は、一般に、加熱によって発泡及び硬化することで発泡体を形成する熱発泡性基体と、その熱発泡性基体を中空部において金属パネルに支持させる支持部材とから構成されている。
【0003】
中空構造体には、中空部に貫通する孔が形成されることがある。このような貫通孔は、内装材等を締結するために設けられたボルト用、電装部品の配線が挿通される配線用等として利用される。また、貫通孔には、中空構造体が電着塗装される際に、電着液の流路として利用されるものがある。こうした貫通孔が形成されている部位に跨って、上記発泡充填具が配置される場合、支持部材又は発泡体により、上述した孔の利用が妨げられることになる。
【0004】
そこで従来では、金属パネルに形成した孔を覆うように設けられる覆い部を備えた発泡充填具が提案されている(特許文献1参照)。この覆い部は、各々2つの延出部及び切込部が対向するように立設されてなり、覆い部内に各種部材が挿入されるように構成されている。こうした覆い部により、前記隙間や孔内で発泡体が過剰に形成されることが抑制されることで、孔内への各種部材の設置が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の発泡充填具においては、覆い部とパネルとの間に間隙が形成されているため、その間隙から熱発泡性基体が侵入し、覆い部の内側で貫通孔を塞ぐように発泡体が形成されるおそれがある。この点、覆い部とパネルとを密着して配置することにより、覆い部への熱発泡性基体の侵入は抑制されるため、各種部材が挿入される空間はより確実に確保されるようになる。ところが、覆い部とパネルとを密着して配置するには、発泡充填具の寸法精度を高める必要があるため、発泡充填具の製造に手間を要することになる。もっとも、熱発泡性基体の材質を適宜変更して熱発泡性基体の流動を抑制する対策等により、熱発泡性基体が上記間隙に侵入することを抑制することは可能であるものの、こうした対策は材料設計が煩雑となり得る。なお、貫通孔を電着液の流路として利用した後に、中空部において貫通孔の周囲に発泡体を充填する場合であっても、貫通孔への熱発泡性基体の侵入は、中空部の外側に漏出した状態で発泡体が形成されることになる。このような発泡体の漏出は、中空構造体の周囲に内装材等を取り付ける際に、その妨げになるおそれがある。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空部において貫通孔の周囲を閉塞させることの容易な発泡充填具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、加熱されることで発泡体を形成する熱発泡性基体と、前記熱発泡性基体を支持する支持体とを備えてなり、パネルにより形成される中空部と前記パネルに穿設される貫通孔を有する中空構造体の前記中空部に配置されるとともに外部から加熱されることで前記発泡体を前記中空部の所定の位置に充填する発泡充填具であって、前記支持体に対して移動可能に設けられる移動体と、前記支持体と前記移動体との間に設けられる弾性部材とを備え、前記支持体及び前記移動体は、前記加熱により軟化する保持部材によって前記弾性部材が弾性変形された状態となるように保持されていることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、支持体及び移動体は加熱により軟化する保持部材により保持されているため、加熱により熱発泡性基体から発泡体を形成させるに際して、支持体及び移動体の保持が開放される。このとき、弾性部材は弾性変形された状態で保持されていたため、弾性部材の復元力によって移動体は支持体に対して移動される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡充填具において、前記支持体及び前記移動体の少なくとも一方は、加熱された前記熱発泡性基体が前記弾性部材へ流動することを規制する規制壁を有してなることを要旨とする。
【0011】
ここで、加熱された熱発泡性基体が弾性部材へ向かって流動すると、弾性部材の復元が妨げられるおそれがある。上記構成では、加熱された熱発泡性基体が弾性部材へ流動することは、規制壁によって規制されるため、熱発泡性基体が弾性部材の復元を妨げることは抑制されるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具において、前記支持体及び前記移動体の少なくとも一方は、前記移動体の移動を案内する案内面を有してなることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、移動体の移動は案内面により案内されるため、移動体の移動する方向は安定するようになる。このため、発泡充填具を貫通孔に対して所定の位置になるように中空部に配置させることで、移動体は貫通孔に向かって移動されるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記保持部材は、前記熱発泡性基体により構成されることを要旨とする。
このように熱発泡性基体を利用して保持部材を構成することで、発泡充填具の構成を簡略化することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発泡充填具において、前記熱発泡性基体は、前記支持体及び前記移動体に係止する係止突起を有してなり、前記係止突起の係止により前記支持体及び前記移動体を保持してなることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、熱発泡性基体において、係止突起をそれ以外の熱発泡性基体の部位よりも体積当たりの表面積を大きく設定することが容易であるため、熱発泡性基体において係止突起をそれ以外の部分よりも優先して軟化させることができるようになる。このため、熱発泡性基体が発泡することで貫通孔に到達するよりも優先して移動体が所定の位置まで移動させることが容易となる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記移動体は、その移動により前記貫通孔の周囲に当接するフランジ部と前記貫通孔に連通する筒状部とを有してなることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、貫通孔の周囲に沿って筒状部内へ熱発泡性基体が侵入することは、フランジ部により抑制される。このため、中空部の所定の位置に発泡体を充填した後に、貫通孔を通じて各種挿入部材を筒状部内へ挿入して配置させることが容易である。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記貫通孔は、パネルに形成される第1貫通孔と第2貫通孔とを含み、前記支持体は、前記第1貫通孔の周囲に当接する第1フランジ部を有してなるとともに、前記移動体は、その移動により前記第2貫通孔の周囲に当接する第2フランジ部を有してなり、前記支持体及び前記移動体には、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を連通する筒状部が形成されていることを要旨とする。
【0020】
この構成によれば、発泡充填具の加熱に際して、筒状部内への熱発泡性基体の侵入は、各フランジ部により抑制される。このため、中空部の所定の位置に発泡体を充填した後に、第1又は第2貫通孔を通じて各種挿入部材を筒状部内へ配置させることが容易である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具において、前記移動体は、その移動により前記貫通孔を閉塞する板状の閉塞部を有してなることを要旨とする。
【0022】
パネルに穿設される貫通孔は、例えば電着液の流路等として設けられる場合がある。こうした貫通孔は、中空部に発泡体を充填した後においては不要となるうえ、発泡体を充填した後の中空構造体の使用に際して何らかの不具合を生じるおそれがあるため、できる限り閉塞することが望ましい。上記構成によれば、移動体は、その移動により貫通孔を閉塞する板状の閉塞部を有して構成されているため、移動体を利用して貫通孔を閉塞させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、中空部において貫通孔の周囲を閉塞させることの容易な発泡充填具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態の発泡充填具を中空構造体に取着した状態を示す断面図。
【図2】発泡充填具の分解断面図。
【図3】発泡体が充填された中空構造体を示す断面図。
【図4】第2の実施形態の発泡充填具を中空構造体に取着した状態を示す断面図。
【図5】第3の実施形態の発泡充填具を中空構造体に取着した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明を具体化した第1の実施形態について図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、発泡充填具11は、円環状をなし、加熱されることで発泡体を形成する熱発泡性基体12と、熱発泡性基体12を支持する支持体13とを備えて構成されている。図1に示すように、筒状の中空部52を有する中空構造体51に発泡充填具11が取着されることで、中空構造体51の中空部52には、熱発泡性基体12が配置される。中空部52の所定位置には、図3に示すように熱発泡性基体12から形成した発泡体26が充填される。このように発泡体26が充填された中空構造体51では、その強度、剛性、制振性等が高められる。
【0026】
本実施形態の中空構造体51は、アウタパネルとリインフォースパネルとから構成された車両用ピラーの一部である。この中空構造体51では、第1貫通孔53aが穿設された第1パネル53と第2貫通孔54aの穿設された第2パネル54とから中空部52が形成されている。
【0027】
以下、本実施形態では、各部材の相対的な位置を説明するために、本明細書における上下方向は図1〜図3の上下方向を基準に説明する。
熱発泡性基体12は、中空部52に配置された後、加熱により発泡及び硬化することで発泡体26を形成する。熱発泡性基体12を構成する熱発泡性材料は、基材、発泡剤、及び架橋剤を含有する他に、充填剤、可塑剤等を適宜含有して構成されている。基材としては、合成樹脂、エラストマー及びゴムが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしては、RB(ポリブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。ゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、UR(ウレタンゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。熱発泡性基体12は、押出成形、プレス成形、射出成形等の周知の成形法により成形することができる。
【0028】
図1及び図2に示すように、支持体13の底壁は円環状をなすフランジ部14として構成され、その第1フランジ部14は第1貫通孔53aの周囲に当接するように構成されている。第1フランジ部14の外周縁には、円環状の外周壁15が立設されてなり、外周壁15が環状の熱発泡性基体12に挿入されることで、外周壁15に沿って熱発泡性基体12が配置される。第1フランジ部14の内周縁には、第1筒状部16が立設されている。こうした支持体13は、上記熱発泡性基体12から発泡体26が形成される温度に対して耐熱性を有する樹脂材料(例えば、ポリアミド系樹脂)から一体成形されている。
【0029】
発泡充填具11は、支持体13に対して移動可能に設けられる移動体21が備えられている。移動体21は、第2筒状部22と、円環状をなすとともに第2筒状部22の外周縁から延設される上壁とを備えている。上壁は、第2貫通孔54aの周囲に当接する第2フランジ部23として構成されている。
【0030】
第2筒状部22は、第1筒状部16に挿入されるとともに第1筒状部16に対して移動可能に設けられる。こうした移動体21が支持体13に対して上方に移動するに際して、第2筒状部22は、第1筒状部16の内周面16aに案内されるように構成されている。なお、本実施形態では、第2筒状部22の外周面22aは、第1筒状部16の内周面16aに対して面接触するとともに摺動されることで、第1筒状部16の内周面16aに案内されるように構成されている。こうした移動体21は、上記熱発泡性基体12から発泡体26が形成される温度に対して耐熱性を有する樹脂材料(例えば、ポリアミド系樹脂)から一体成形されている。
【0031】
第1フランジ部14と第2フランジ部23との間には、弾性部材25が配置されている。本実施形態では、弾性部材25として圧縮コイルばねを採用しており、図1に示されるように圧縮変形した状態で第1フランジ部14と第2フランジ部23との間に介装されている。すなわち、弾性部材25は、第1フランジ部14に対して第2フランジ部23を離間させる方向に付勢するように弾性変形した状態で設けられている。
【0032】
このように弾性部材25を弾性変形した状態で、支持体13及び移動体21は熱発泡性基体12により保持されている。この保持構造について以下に説明する。
熱発泡性基体12の上面には、上方に向かって突出してなる係止突起12aが設けられている。支持体13の外周壁15には、板状の第1保持部17が突設されるとともに、第1保持部17には第1保持孔17aが上下方向に沿って貫設されている。移動体21の第2フランジ部23には、板状の第2保持部24が突設されるとともに、第2保持部24には第2保持孔24aが上下方向に沿って貫設されている。そして、係止突起12aは、第1保持孔17a及び第2保持孔24aに挿入されるとともに第2保持部24の上面に係止される。このように係止突起12aが係止されることで、支持体13及び移動体21は熱発泡性基体12により保持される。
【0033】
次に、発泡充填具11を用いた発泡体26の充填方法について説明する。図1に示すように、発泡充填具11は、第1貫通孔53aの周囲に第1フランジ部14を配置するようにして、支持体13を第1パネル53に固定する。支持体13の固定は、粘着層又は接着層を支持体13と第1パネル53との間に設けることで、粘着又は接着で固定してもよいし、支持体13に別途係止部を設けるとともに第1パネル53に形成した孔に係止させることで固定してもよい。
【0034】
このように発泡充填具11が中空部52に取着された中空構造体51では、移動体21と第2パネル54との間に間隙が形成されている。こうした間隙を設けた状態での発泡充填具11の取着は、発泡充填具11に対する高い寸法精度の要求を回避することができる。また、前記間隙は、例えば中空構造体51が電着塗装される際に、電着液の流路として利用することもできる。
【0035】
次に、中空構造体51は、例えば電着塗装の乾燥工程等により所定の温度まで加熱される。こうした中空構造体51の加熱とともに発泡充填具11が加熱される。このとき、加熱された熱発泡性基体12の軟化が開始することで、係止突起12aの係止力が徐々に低下することになり、その結果、支持体13及び移動体21の保持が開放される。
【0036】
このとき、弾性部材25は弾性変形した状態で保持されていたため、弾性部材25の復元力により、移動体21は押し上げられる。これにより、図3に示されるように、弾性部材25によって付勢された移動体21は、支持体13から離間する方向へ移動される。そして移動体21は、第2フランジ部23が第2貫通孔54aの周囲に当接するまで上方に移動した後に、その状態で停止する。このように第2フランジ部23は第2貫通孔54aの周囲に当接したとき、弾性部材25の復元力により、第2フランジ部23は第2貫通孔54aに押圧された状態となっている。なお、移動体21が移動した後においても、第2筒状部22の下端部位は、第1筒状部16に挿入された状態であり、第1筒状部16及び第2筒状部22は、第1貫通孔53aと第2貫通孔54aとを連通した筒状部を構成している。
【0037】
こうした移動体21の移動に際して、第2筒状部22の外周面22aは、第1筒状部16の内周面16aに案内されるため、移動体21の移動する方向は安定するようになる。このため、発泡充填具11を第1貫通孔53aに合わせて配置させることで、移動体21は第2貫通孔54aに向かって移動されるようになる。
【0038】
ここで、加熱された熱発泡性基体12が弾性部材25へ向かって流動すると、熱発泡性基体12によって上述した弾性部材25の復元が妨げられるおそれがある。この点、弾性部材25と熱発泡性基体12との間には、支持体13の外周壁15が介在されている。こうした外周壁15は、熱発泡性基体12の弾性部材25への流動を規制する。このように熱発泡性基体12の流動が規制されることで、熱発泡性基体12が弾性部材25の復元を妨げるという不具合は抑制されるようになる。
【0039】
そして、熱発泡性基体12の発泡及び硬化すると、図3に示されるように中空部52の所定の位置は発泡体26で充填される。このとき、支持体13の第1フランジ部14は、第1貫通孔53aの周囲に当接されているため、第1筒状部16内への熱発泡性基体12の侵入、ひいては第1貫通孔53a内への熱発泡性基体12の侵入は抑制される。また、移動体21の第2フランジ部23は、第2貫通孔54aの周囲に当接されているため、第2筒状部22内への熱発泡性基体12の侵入、ひいては第2貫通孔54a内への熱発泡性基体12の侵入は抑制又は防止される。このため、各筒状部16,22内及び各貫通孔53a,54a内に漏出した状態で発泡体26が形成される不具合が抑制又は防止されるようになる。
【0040】
続いて、第1筒状部16及び第2筒状部22の内部には、第1貫通孔53a又は第2貫通孔54aを通じて各種部材が挿入される。このとき、各貫通孔53a,54a内への発泡体26の侵入は抑制又は防止されているため、発泡体26が障害となることが軽減又は防止される。またこのとき、各筒状部16,22内における発泡体26の形成が抑制又は防止されているため、各筒状部16,22の内部空間が十分に確保されるようになる。従って、各種部材を各筒状部16,22内に配置するに際して、発泡体26が障害となることが軽減又は防止される。
【0041】
そして、本実施形態の第1筒状部16及び第2筒状部22は、第1貫通孔53a及び第2貫通孔54aを連通する構成であるため、例えば各種配線を中空構造体51に貫通させるに際して有効に利用することができる。
【0042】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)支持体13及び移動体21は、熱発泡性基体12により保持されているため、発泡充填具11が加熱されることで熱発泡性基体12の軟化が開始されると、支持体13及び移動体21の保持が開放される。このとき、弾性部材25は弾性変形された状態で保持されていたため、弾性部材25の復元力によって移動体21は支持体13に対して移動される。発泡充填具11は、その加熱により移動を開始する移動体21を有しているため、中空部52において第2パネル54から離間した状態で取着しても、第2貫通孔54aの周囲を移動体21により容易に閉塞することができる。
【0043】
(2)本実施形態の支持体13は、外周壁15を有して構成されているため、加熱された熱発泡性基体12が弾性部材25へ流動することは、その外周壁15によって規制される。従って、熱発泡性基体12が弾性部材25の復元を妨げることは抑制されるようになる。その結果、移動体21を円滑に移動させることができる。
【0044】
(3)支持体13に対して移動体21が移動するに際して、第2筒状部22は、第1筒状部16の内周面16aに案内されるため、移動体21の移動する方向は安定するようになる。よって、発泡充填具11を第2貫通孔54aに対して所定の位置になるように中空部52に取着すれば、移動体21は第2貫通孔54aに向かって移動されるようになる。このように移動体21の移動する方向が安定するため、第2貫通孔54aに対して所定の位置になるように移動体21を移動させることができるようになる。
【0045】
(4)熱発泡性基体12によって支持体13及び移動体21を保持することで、その保持のための保持部材を別途設ける場合よりも、発泡充填具11の構成を簡略化することができる。
【0046】
(5)熱発泡性基体12は、支持体13及び移動体21に係止する係止突起12aを有し、係止突起12aの係止により支持体13及び移動体21を保持している。この構成によれば、熱発泡性基体12において、係止突起12aはそれ以外の熱発泡性基体12の部位よりも体積当たりの表面積を大きく設定することが容易であるため、熱発泡性基体12において、係止突起12aをそれ以外の部分よりも優先して軟化させることができるようになる。このため、熱発泡性基体12が発泡することで第2貫通孔54aに到達するよりも優先して、移動体21を所定の位置まで移動させることが容易となる。従って、第2貫通孔54aと熱発泡性基体12との距離がより近い場合であっても、第2貫通孔54aの周囲を移動体21により閉塞させることが容易となる。
【0047】
(6)支持体13は、第1貫通孔53aの周囲に当接する第1フランジ部14を有しているとともに第1筒状部16を有している。また、移動体21は、その移動により第2貫通孔54aの周囲に当接する第2フランジ部23を有しているとともに、第2筒状部22を有している。従って、中空部52の所定の位置に発泡体26を充填した後に、第1貫通孔53a又は第2貫通孔54aを通じて各種挿入部材を各筒状部16,22内へ配置させることができるようになる。また、各筒状部16,22内へ熱発泡性基体12が流動する際の流路は、各フランジ部14,23により長く形成されているため、熱発泡性基体12が各筒状部16,22内に到達する不具合は好適に抑制される。
【0048】
(第2の実施形態)
本発明を具体化した第2の実施形態について図4に基づいて説明する。本実施形態では、支持体及び中空構造体の構成が第1の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。
【0049】
図4に示すように、本実施形態の発泡充填具31における支持体33では、第1筒状部16の下端における開口が底壁34により閉塞されている。
図4に示すように、この中空構造体61では、第1パネル63には貫通孔は形成されずに、第2パネル64のみに第2貫通孔64aが形成されている。本実施形態の発泡充填具31では、支持体33が底壁34を有しているため、第1パネル63に接着又は粘着させる面積を広く確保することができるため、第1パネル63に対して安定して取着することができる。また例えば底壁34に取着用の係止部を設けることもできるようになる。
【0050】
発泡充填具31が加熱されると、移動体21は、図4に二点鎖線で示されるように移動される。このとき、第2貫通孔54aの周囲に沿って第2筒状部22内へ熱発泡性基体12が侵入することは、移動体21の移動及び第2フランジ部23により抑制又は防止される。このため、発泡体26の充填後において、第2貫通孔64aを通じて各種部材を第2筒状部22内に配置するに際して、発泡体が障害となることが軽減又は防止される。このように配置される各種部材としては、例えば位置決め用のピン、ボルト、配線等が挙げられる。
【0051】
上述した本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(4)欄に記載した作用効果が得られる。また、中空部62の所定の位置に発泡体を充填した後に、第2貫通孔54aを通じて各種挿入部材を第2筒状部22内へ配置させることができるようになる。
【0052】
(第3の実施形態)
本発明を具体化した第3の実施形態について図5に基づいて説明する。本実施形態では、移動体及び中空構造体の構成が第1の実施形態と異なるため、その構成を中心に説明する。
【0053】
図5に示すように、本実施形態の発泡充填具41における移動体42は、第2筒状部22の上端における開口が板状の閉塞部43により閉塞されている。
図5に示すように、この中空構造体61では、第1パネル63に貫通孔は形成されずに、第2パネル64のみに第2貫通孔64aが形成されている。
【0054】
発泡充填具41が加熱されると、移動体42は、図4に二点鎖線で示されるように移動される。ここで、本実施形態の第2貫通孔64aは、例えば電着液の流路等として設けられている。こうした第2貫通孔64aは、中空部62に発泡体26を充填した後においては不要となるうえ、発泡体26を充填した後の中空構造体61の使用に際して何らかの不具合を生じるおそれがあるため、できる限り閉塞することが望ましい。本実施形態の発泡充填具41では、移動体42は、その移動により第2貫通孔64aを閉塞する板状の閉塞部43を有して構成されているため、発泡充填具41の加熱に伴って、第2貫通孔64aは閉塞部43により閉塞されるようになる。
【0055】
上述した本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(4)欄に記載した作用効果が得られる。また、板状をなす閉塞部43により、第2貫通孔64aが閉塞されるため、例えば、第2貫通孔64aに開放する中空部62に空気が巻き込まれることで異音を発生するといった不具合を抑制することができる。
【0056】
(変形例)
前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・各実施形態の係止突起12aを省略するとともに、第1保持部17及び第2保持部24を省略することもできる。例えば、弾性部材25を弾性変形した状態となるように支持体13及び移動体21を配置した後、支持体13,33及び移動体21,42に熱発泡性材料が密着するように同材料を射出成形することで熱発泡性基体12を形成してもよい。このように熱発泡性基体12を形成することで、支持体13,33及び移動体21,42を、熱発泡性基体12により保持させることができる。なお、熱発泡性材料を射出成形することで熱発泡性基体12を形成する場合、弾性部材25は外周壁15によって射出圧から保護されるため、射出成形時に弾性部材25の変形が防止される。
【0057】
・前記係止突起12aの個数及び位置は、適宜変更してもよい。また、前記係止突起12aの先端は爪状に形成されている。こうした係止突起12aの形状は特に限定されず、例えば支持体13,33又は移動体21,42に突起を設けるとともに、係止突起12aを突状の係止突起に変更し、支持体13,33又は移動体21,42の突起に係止するように構成してもよい。
【0058】
・熱発泡性基体12の形状及び個数は特に限定されず、円環状の他に、四角環状等の形状に変更してもよい。また、前記熱発泡性基体12を複数の部材に分割して構成することもできる。例えば、前記熱発泡性基体12を、係止突起12aを有する部位と、その他の部位とに分割して構成してもよい。
【0059】
・熱発泡性基体12のうち、係止突起12aを有する部位を、熱発泡性基体12の発泡させる加熱により軟化する材料により形成した保持部材に変更してもよい。こうした保持部材を形成する材料としては、例えば熱発泡性基体12の加熱温度と同等の軟化点又は前記加熱温度よりも低い軟化点を有する材料であれば、特に限定されず、例えば合成樹脂、天然樹脂、ロウ等が挙げられる。
【0060】
・各実施形態では、第2筒状部22の外周面22aは、第1筒状部16の内周面16aに対して摺動されることで第1筒状部16の内周面16aに案内されるように構成されている。例えば、第2筒状部22の外周面22aに突起を設けることで、その突起が第1筒状部16の内周面16aに対して摺動されることで案内されるように構成することもできる。また例えば、第1筒状部16の内周面16aに突起を設けることで、その突起が第2筒状部22の外周面22aに摺動されることで案内されるように構成してもよい。このように、上記案内される面は、支持体13,33に形成してもよいし、移動体21,42に形成してもよい。
【0061】
・各実施形態では、第2筒状部22の外周面22aは、第1筒状部16の内周面16aに対して摺動されることで第1筒状部16の内周面16aに案内されるように構成されているが、このように案内される構成を省略してもよい。例えば第1実施形態において、第2筒状部22の外周面22aと第1筒状部16の内周面16aとが離間するように構成してもよい。
【0062】
・各実施形態では、外周壁15は支持体13,33に形成されているが、こうした外周壁15を移動体21,42に形成することで、加熱された熱発泡性基体12が弾性部材25へ流動することを規制する規制壁として構成してもよい。但し、軟化した熱発泡性基体12により移動体21,42の移動が妨げられるおそれがあることから、外周壁15は支持体13,33に形成することが好ましい。
【0063】
・各実施形態では、第1フランジ部14には円環状の外周壁15が設けられているが、その外周壁15の代わりに、第1フランジ部14の外周縁の一部に側壁を立設してもよい。この場合、例えば図2に示される第1保持部17を設ける箇所のみに側壁を設けてもよい。このような側壁であっても、弾性部材25と熱発泡性基体12との間に介装されることで、加熱された熱発泡性基体12が弾性部材25へ流動することを規制する規制壁として機能するようになる。
【0064】
・各実施形態では、第1筒状部16及び第2筒状部22は、円筒状の他に、多角筒状等の形状に変更することができる。
・第1の実施形態において、第1貫通孔53aと第2貫通孔54aとの位置関係は適宜変更されてもよい。この場合、各筒状部16,22を屈曲した管状に形成することで、それら貫通孔53a,54aを連通するように形成することができる。
【0065】
・第2の実施形態において、第2筒状部22に底壁を設けることで下端の開口部を閉塞してもよい。こうした第2筒状部22の底壁は、支持体33の外周壁15を部分的に設けた場合に、第2筒状部22の下端の開口から熱発泡性基体12が侵入することを防止することができる。なお、第1筒状部16の底壁34を省略することもできる。
【0066】
・弾性部材25は、圧縮コイルばねに限定されず、例えば板ばね、皿ばね等に変更してもよい。
・前記各実施形態では、発泡充填具11,31,41を車両用ピラーに適用しているが、例えば車両のドア、バンパ等を構成する車両用中空構造体に適用してもよい。また、鉄道用、船舶用、航空機用、建築用等に適用される中空構造体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
11,31,41…発泡充填具、12…熱発泡性基体、12a…係止突起、13,33…支持体、14…第1フランジ部、15…規制壁としての外周壁、16…筒状部としての第1筒状部、16a…案内面としての内周面、17…第1保持部、17a…第1保持孔、21,42…移動体、22…筒状部としての第2筒状部、22a…案内面としての外周面、23…第2フランジ部、24…第2保持部、24a…第2保持孔、25…弾性部材、26…発泡体、34…底壁、43…閉塞部、51,61…中空構造体、52,62…中空部、53,63…第1パネル、53a…第1貫通孔、54,64…第2パネル、54a,64a…第2貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることで発泡体を形成する熱発泡性基体と、前記熱発泡性基体を支持する支持体とを備えてなり、パネルにより形成される中空部と前記パネルに穿設される貫通孔を有する中空構造体の前記中空部に配置されるとともに外部から加熱されることで前記発泡体を前記中空部の所定の位置に充填する発泡充填具であって、
前記支持体に対して移動可能に設けられる移動体と、前記支持体と前記移動体との間に設けられる弾性部材とを備え、
前記支持体及び前記移動体は、前記加熱により軟化する保持部材によって前記弾性部材が弾性変形された状態となるように保持されていることを特徴とする発泡充填具。
【請求項2】
前記支持体及び前記移動体の少なくとも一方は、加熱された前記熱発泡性基体が前記弾性部材へ流動することを規制する規制壁を有してなることを特徴とする請求項1に記載の発泡充填具。
【請求項3】
前記支持体及び前記移動体の少なくとも一方は、前記移動体の移動を案内する案内面を有してなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡充填具。
【請求項4】
前記保持部材は、前記熱発泡性基体により構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発泡充填具。
【請求項5】
前記熱発泡性基体は、前記支持体及び前記移動体に係止する係止突起を有してなり、前記係止突起の係止により前記支持体及び前記移動体を保持してなることを特徴とする請求項4に記載の発泡充填具。
【請求項6】
前記移動体は、その移動により前記貫通孔の周囲に当接するフランジ部と前記貫通孔に連通する筒状部とを有してなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具。
【請求項7】
前記貫通孔は、パネルに形成される第1貫通孔と第2貫通孔とを含み、前記支持体は、前記第1貫通孔の周囲に当接する第1フランジ部を有してなるとともに、前記移動体は、その移動により前記第2貫通孔の周囲に当接する第2フランジ部を有してなり、前記支持体及び前記移動体には、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔を連通する筒状部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具。
【請求項8】
前記移動体は、その移動により前記貫通孔を閉塞する板状の閉塞部を有してなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発泡充填具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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