説明

発泡化粧材

【課題】高倍率に発泡させても優れた圧縮回復性を有し、生産工程中や施工後にかかる圧力による潰れに対して回復可能な発泡化粧材を提供する。
【解決手段】基材1上に、少なくとも水性エマルジョン系樹脂21および天然ゴムラテックスのような高弾性物質22を含有する樹脂組成物からなる発泡樹脂層2を少なくとも具備することを特徴とする発泡化粧材。 必要に応じて発泡樹脂層2に絵柄模様3を印刷することができる。また、発泡樹脂層2の表面に凹凸模様4を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡化粧材に関する。特に、高倍率に発泡させても優れた圧縮回復性を有し、保存時の製品自体の自重、施工時ローラー押さえによるへこみ、あるいは施工後の置き跡による潰れに対して回復可能であり、かつ耐熱性に優れた発泡化粧材に関するものである。本発明の発泡化粧材は、建築物の内装材等として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン・ビニルエステル系共重合体含有水性エマルジョン、熱膨張性中空球体及び無機フィラーからなる発泡化粧材用樹脂組成物が特許文献1に開示されている。
しかしながら、本発明者らが、上記公開公報に記載の技術を使用し、6.5〜8.5倍の高発泡倍率化粧材について検討したところ、圧縮回復性が十分ではないという問題が明らかになった。圧縮回復性とは、例えば壁紙として使用した場合、保存時の壁紙製品自体の自重、施工時ローラー押さえによるへこみ、あるいは施工後の置き跡による潰れの回復性のことを表す。
【特許文献1】特開2003−13396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、高倍率に発泡させた時の圧縮回復性に優れており、保存時の製品自体の自重、施工時ローラー押さえによるへこみ、あるいは施工後の置き跡による潰れに対して回復可能であり、かつ耐熱性に優れた発泡化粧材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、基材上に、少なくとも水性エマルジョン系樹脂および高弾性物質を含有する樹脂組成物からなる発泡樹脂層を少なくとも具備する発泡化粧材であって、前記高弾性物質が、天然ゴムラテックスであることを特徴とする発泡化粧材である。
請求項2に記載の発明は、前記樹脂組成物が、水性エマルジョン系樹脂100重量部に対して、前記天然ゴムラテックスを2〜20重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡化粧材である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の発泡化粧材は、高倍率に発泡させても優れた圧縮回復性を有する。よって、保存時の製品自体の自重、施工時ローラー押さえによるへこみ、あるいは施工後の置き跡による潰れが一定時間が経過すると回復し、元の形状を保持したまま使用可能となる。また、高弾性物質を使用しているにも関わらず耐熱性も有していることから、生産工程中の加熱による熱変色も発生せず好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の化粧材の一例について説明する。図1は、本発明の発泡化粧材の一実施形態の模式断面図である。図1の発泡化粧材は、支持体となる基材1上に、少なくとも基質樹脂21(水性エマルジョン系樹脂)および高弾性物質22を含有する樹脂組成物からなる発泡樹脂層2を少なくとも具備する。なお符号23は発泡剤による発泡である。また、上記発泡樹脂層2は必要に応じて2層以上の多層から構成されていてもよい。
【0007】
基材1は、本発明の化粧材の基材となるものであって、材質は特に限定されず、例えば紙、織布、不織布等、透湿性で好ましくは可撓性のシート状態であれば何であっても良い。壁紙の場合には、いわゆる壁紙用裏打紙を好適に使用することができる。
【0008】
発泡樹脂層2は、前記基材1上に設けられ、基質樹脂21中に高弾性物質22及び発泡剤による発泡23が混合分散されて構成されるものである。基質樹脂21としては、水性エマルジョン系樹脂に充填剤を加えたものであることができる。必要に応じて、着色剤、分散剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、艶消剤、滑剤、減摩剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤等の種々の添加剤を加えてもよい。このとき、層によって樹脂組成物の配合を変更してもよい。
【0009】
発泡樹脂層2に添加される高弾性物質22としては、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスとしてイソプレンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレンブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス等のゴムラテックス等を挙げることができ、これらの2種以上の混合物を有効成分として含有していてもよい。圧縮回復性の面からは、天然ゴムラテックスの方が合成ゴムラテックスよりも好ましい。
【0010】
高弾性物質22として天然ゴムラテックスを用いる場合、樹脂組成物に含まれる水性エマルジョン系樹脂不揮発分を100重量部として、該樹脂組成物に含まれる天然ゴムラテックスが不揮発分で2〜20重量部の範囲であることが好ましい。2重量部未満であると、十分な圧縮回復性能を得ることが困難であり、一方、20重量部を越えると、発泡倍率の低下や耐熱性能の低下を引き起こす可能性があるからである。
【0011】
また、高弾性物質22として天然ゴムラテックスを用いる場合、天然ゴムラテックスのpHは、7〜11の範囲であることが好ましい。7未満であると、細菌の作用などによって自然凝固しやすくなるなどの点で好ましくなく、11を越えると樹脂組成物の経時安定性が悪化しやすくなるためである。
【0012】
水性エマルジョン系樹脂には、熱可塑性合成樹脂であるものを使用することが望ましい。熱可塑性合成樹脂として具体的には、例えば、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−ビニルエステル系共重合体、アクリル系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合体等を挙げることができ、これらの2種以上の共重合体又は混合物を有効成分として含有していてもよい。
【0013】
発泡剤23としては、例えば炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤や、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤、熱可塑性樹脂からなる殻の内部に低沸点液体を封入した熱膨張性中空微小球体(マイクロカプセル発泡剤)等を、それぞれ単独又は適宜組み合わせて使用することが出来る。このとき、透気度の高い水性エマルジョン系樹脂に対する発泡効果の高い熱膨張性中空微小球体が最も好ましく使用できる。
【0014】
熱膨張性中空微小球体とは、加熱により膨張、発泡させることができる微小球体からなる発泡剤であり、例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合体などからなる殻部分の内部にイソブタン、イソペンタン等の低沸点炭化水素を含有する粒径1〜50μm程度、好ましくは2〜30μm程度の球体などが挙げられる。
本発明において、発泡樹脂層2の発泡倍率は、6.5〜8.5倍であることができる。
【0015】
充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化第一鉄、塩基性炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛、珪砂、クレー、タルク、シリカ類、二酸化チタン、珪酸マグネシウム等が挙げられる。中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好適である。
【0016】
以下、本発明の発泡化粧材製造方法の一例について説明する。
【0017】
まず、発泡樹脂層2を構成する樹脂組成物を配合する。このとき、高弾性物質22として天然ゴムラテックスを用いる場合、樹脂組成物に含まれる水性エマルジョン系樹脂不揮発分を100重量部として、該樹脂組成物に含まれる天然ゴムラテックスが不揮発分で2〜20重量部の範囲であることが好ましい。
【0018】
次に、配合した樹脂組成物を基材1上に塗工し、発泡樹脂層2を形成する。樹脂組成物の塗工方法としては、例えばナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法、リバースロールコート法等の塗工方法を挙げられる。
【0019】
発泡樹脂層2を構成する層は、2層以上の多層から構成される場合、下層から上層へ向かって1層ずつ順次塗工形成しても良いし、多層塗工装置を用いて全層を同時に塗工形成しても良い。前者の場合には、より下側の層を乾燥固化した後により上側の層を塗工形成しても良いが、より下側の層を乾燥させずに湿潤状態においてより上側の層を塗工形成すると、各層間が相溶して層間密着性に優れる。
【0020】
発泡樹脂層2を構成する各層の厚さは特に限定されず、目的とする用途や要求特性に応じて適宜決定すればよい。例えば、壁紙として使用する場合、発泡樹脂層2の乾燥後の塗布量は50〜300g/m、更に好ましくは100〜250g/m程度とすることが好ましい。
【0021】
次に、基材1に塗工した発泡樹脂層2の乾燥を行う。発泡性樹脂組成物の塗布後の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥法、赤外線照射乾燥法、真空乾燥法等の、従来公知の各種の乾燥方法から選ばれる1種の単独又は2種以上を組み合わせた方法を用いることができる。
【0022】
乾燥温度は、発泡性樹脂組成物の発泡開始温度を越えない範囲であることが必要である。樹脂組成物が水性エマルジョン系樹脂を主成分とする場合には、水の沸点を越えない90〜95℃の範囲が最も好ましい。このとき、発泡樹脂層2はゲル状となることもある。
【0023】
次に、必要に応じて発泡樹脂層2に絵柄模様3を印刷する。発泡樹脂層2の表面に水性インキを使用して、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等にて適宜の絵柄模様3を印刷形成してもよい。
【0024】
発泡樹脂層2の発泡のための加熱方法としては、熱風加熱法若しくは赤外線加熱法、又はその併用などを用いることができる。加熱温度や加熱時間は、発泡樹脂層2を構成する樹脂組成物の主体となる水性エマルジョン系樹脂の溶融粘度特性と、樹脂組成物に添加された発泡剤の発泡温度特性とによって決定される。例えば、水性エマルジョン系樹脂に熱膨張性中空微小球体を添加した樹脂組成物を使用する場合の一般的な条件は、加熱温度140〜200℃、加熱時間20〜80秒の範囲である。
【0025】
また、発泡樹脂層2の表面に凹凸模様4を形成してもよい。形成法としては、加熱発泡後、発泡した発泡樹脂層2の表面にエンボス版を押圧するメカニカルエンボス法が挙げられる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の実施例、比較例および参考例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0027】
<実施例1〜3>
坪量100g/mの一般紙基材上に、下記表1で示される各成分の配合割合を有する樹脂組成物を、目付量(乾燥後の塗布量)150g/mに塗工して、発泡樹脂層2を形成した。続いて、乾燥炉にて乾燥温度を90℃、時間1分にて乾燥を行った。さらに、この発泡樹脂層2上に水性インキを用いてグラビア印刷にて絵柄模様3を印刷した。最後に、発泡炉にて加熱温度を180℃、時間40秒にて発泡し、メカニカルエンボス法にてエンボスを行い、凹凸模様4を形成した。以上より発泡化粧材を得ることが出来た。なお発泡剤としては、熱膨張性中空微小球体を用いた。
【0028】
<比較例1〜4><参考例1〜2>
上記実施例において、水性エマルジョン系樹脂組成物を、表1に記載の通り変更して各々の発泡化粧材を作製した。
【0029】
<評価>
実施例1〜3、比較例1〜6、参考例1〜2で得られた発泡化粧材について、後記する方法で圧縮回復性能及び耐熱性能について評価した。その結果を表1に示す。
【0030】
(圧縮回復性試験方法)
試料を2cm×2cmの大きさに裁断し、圧縮前の試験片の厚み(a)を測定し、これを初期値とした。次に、1000gの分銅を試験片の上に乗せ250g/cmの圧力で圧縮した。24時間放置した後、分銅を除いて解圧し、さらに24時間放置した後、試験片の厚み(b)を測定し、(b)×100/(a)を圧縮回復率として算出した。圧縮回復率が96%以上であると圧縮回復性に優れており、へこみや潰れに対して回復可能である。
【0031】
(耐熱性試験方法)
発泡前の試料を20cm×30cmの大きさに裁断し、180℃のオーブン中に40秒間放置した後の表面焼け具合を観察した。評価の基準を以下に示した。
○:色焼けしない
△:やや色焼けする
×:色焼けする
【0032】
【表1】

【0033】
以上詳細に説明した様に、本発明の発泡化粧材は、高弾性物質を含有することにより、加圧状態が長期間にわたり継続しても、解圧後に元の厚みに戻ることができるので、施工後の長期的な使用に優れると共に、高弾性物質に特有の熱変色が発生しないので、生産工程中の加熱により熱変色することなく生産することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の発泡化粧材は、壁紙等の建築物の内装材等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の発泡化粧材の一実施形態の模式断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…基材
2…発泡樹脂層
21…基質樹脂
22…高弾性物質
23…発泡剤による発泡
3…絵柄印刷層
4…エンボス凹凸模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも水性エマルジョン系樹脂および高弾性物質を含有する樹脂組成物からなる発泡樹脂層を少なくとも具備する発泡化粧材であって、前記高弾性物質が、天然ゴムラテックスであることを特徴とする発泡化粧材。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、水性エマルジョン系樹脂100重量部に対して、前記天然ゴムラテックスを2〜20重量部含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡化粧材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45829(P2009−45829A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213823(P2007−213823)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】