説明

発泡壁紙

【課題】表面強度に優れた発泡壁紙を提供する。
【解決手段】紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(3)非発泡樹脂層Aが、メルトフローレート値が10〜60g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)であるエチレン−メタクリル酸共重合体により形成された層である、
ことを特徴とする発泡壁紙に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙として、紙質基材(裏打紙)に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。近年では、環境に配慮し、発泡樹脂層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等のハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(特許文献1〜3等)。
【0003】
例えば、アクリル樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂とを含むエマルションに、マイクロカプセル型発泡剤を添加した塗料を、紙質基材に塗工・乾燥後、表面に絵柄模様を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に熱分解型発泡剤を添加した樹脂組成物からなる未発泡樹脂層を、Tダイ押出し機を用いて紙質基材上に形成後、表面に絵柄模様層を印刷し、次いで加熱発泡させ、エンボス版により凹凸模様を形成してなる発泡壁紙が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のオレフィン系の壁紙では、表面強度が弱いため、その補強が必要となる。その方法として、例えば1)発泡樹脂層の発泡倍率を低めに抑える方法、2)発泡樹脂層上にフィルム層や厚い塗工膜を設ける方法等が提案されている。
【0006】
しかしながら、前記1)の方法では、壁紙施工時に下地の不陸を隠蔽することができない。また、前記2)の方法では、壁紙自体が硬くなるため、折れシワやカールが発生しやすいという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、これらの欠点が改善され、表面強度に優れた発泡壁紙を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の発泡樹脂層を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の発泡壁紙に係る。
1. 紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(3)非発泡樹脂層Aが、メルトフローレート値が10〜60g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)であるエチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層である、
ことを特徴とする発泡壁紙。
2. 前記非発泡樹脂層Aに含まれるエチレン−メタクリル酸共重合体が、メルトフローレート値10〜35g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)である、上記項1に記載の発泡壁紙。
3. 前記発泡剤含有樹脂層に含まれるエチレン−メタクリル酸共重合体が、メルトフローレート値60〜200g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)である、上記項1又は2に記載の発泡壁紙。
4. 前記発泡剤含有樹脂層が、電子線照射により架橋されている、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
5. 前記発泡剤含有樹脂層が、石油樹脂を含まない、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
6. 紙質基材と発泡樹脂層との間にさらに非発泡樹脂層Bが形成されている、上記項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
7. 紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成されている発泡壁紙の製造方法であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(3)非発泡樹脂層Aが、メルトフローレート値が10〜60g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)であるエチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(4)少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを紙質基材上に形成後、次いで発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する、
ことを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
8. 少なくとも前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを同時押出しにより形成する、上記項7に記載の製造方法。
9. シート最表面層の上からエンボス加工を行う、上記項7又は8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発泡壁紙は、特定の樹脂組成物により発泡樹脂層が形成されていることから、従来のオレフィン系の発泡壁紙で生ずる問題を軽減ないしは解消することができる。すなわち、本発明の発泡壁紙によれば、優れた表面強度を達成できるとともに、良好な発泡状態を形成することができる。特に、発泡剤含有樹脂を構成する樹脂成分が高いメルトフローレートを有している場合であっても、ガス抜けのない発泡を達成できる結果、緻密な発泡セルを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発泡壁紙>
本発明の発泡壁紙は、紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層が形成されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を含む樹脂組成物により形成された層である、
(3)発泡剤含有樹脂層が、電子線照射により架橋されている、
ことを特徴とする。
【0012】
紙質基材
紙質基材の材質は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0013】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0014】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜80g/m程度がより好ましい。
【0015】
非発泡樹脂層B
本発明では、必要に応じて紙質基材と発泡樹脂層との間に非発泡樹脂層(非発泡樹脂層B)が形成されていても良い。特に、非発泡樹脂層Bが接着剤層として形成される場合は、優れた密着性を得ることができる。非発泡樹脂層Bとしては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等を好適に用いることができる。
【0016】
発泡樹脂層
発泡樹脂層は、発泡剤含有樹脂層が発泡することにより形成された層である。
【0017】
発泡剤含有樹脂層が、電子線照射により架橋されている。これにより、優れた表面強度等を達成することができる。本発明では、少なくとも発泡剤含有樹脂層が架橋されていれば良いが、他の層(電子線照射により架橋され得る層)も架橋されていても良い。また、架橋する場合は、後記に示すように、必要に応じて発泡剤含有樹脂層に架橋助剤を含有させることもできる。
【0018】
発泡剤含有樹脂層は、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層である。
【0019】
アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体(本発明重合体)としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種をモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。この中でも、特に低温で加工する場合には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を用いるのが好ましい。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0020】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜20重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。
【0021】
また、樹脂成分のメルトフローレート値(JIS K7210:190℃,2.16kg)は、用いる重合体の種類等によるが、通常は60〜200g/10分とすることが好ましい。本発明では、特に、100〜200g/10分という高い範囲でも、良好な発泡状態を維持できるという点で有利である。
【0022】
本発明重合体の樹脂組成物中の含有量は限定的ではないが、通常80〜100重量%(特に80〜95重量%)の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0023】
前記樹脂組成物としては、例えばエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、発泡剤、無機充填剤、顔料及びセル調整剤を含む樹脂組成物を好適に用いることができる。その他にも、安定剤、滑剤、石油樹脂等を添加剤として用いることができる。
【0024】
発泡剤は、熱分解型発泡剤を好適に用いることができる。熱分解型発泡剤としては公知の発泡剤から選択することができる。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100重量部に対して、1〜20重量部程度とすることが好ましい。
【0025】
セル調整剤は、例えばステアリン酸亜鉛等の金属石鹸等を使用することができる。セル調整剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、0.3〜10重量部程度が好ましく、1〜5重量部程度がより好ましい。
【0026】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して0〜100重量部程度が好ましく、20〜70重量部程度がより好ましい。
【0027】
顔料については、例えば酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等の無機顔料;例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等の有機顔料が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100重量部に対して10〜50重量部程度が好ましく、15〜30重量部程度がより好ましい。
【0028】
また、本発明では、石油樹脂を含んでいても良い。石油樹脂としては特に制限されないが、水素化石油樹脂を好適に用いることができる。水素化石油樹脂としては、例えば芳香族系石油樹脂を水素化することにより得られる脂環族飽和炭化水素樹脂を用いることが好ましい。かかる樹脂は、公知又は市販のものを使用することができる。本発明では、発泡剤含有樹脂層(発泡樹脂層)が石油樹脂を含まない態様も包含する。
【0029】
発泡剤含有樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0030】
発泡樹脂層の発泡状態(例えば、発泡セルの大きさ、発泡セル密度等)は限定されず、発泡壁紙の種類、用途等に応じて適宜設計することができる。発泡剤含有樹脂層を発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すれば良い。
【0031】
非発泡樹脂層
本発明では、発泡樹脂層上に(紙質基材と反対側に)必要に応じて非発泡樹脂層(非発泡樹脂層A)を設けることもできる。非発泡樹脂層Aは、特に発泡樹脂層を保護する等の効果がある。従って、非発泡樹脂層の形成には、発泡樹脂層を保護するために用いられている公知の樹脂組成物を採用することができる。
【0032】
特に、本発明では、前記の発泡樹脂層で使用される樹脂組成物と同様の樹脂組成物を用いて非発泡樹脂層Aを形成することが望ましい。すなわち、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物により形成された層を非発泡樹脂層とすることが好ましい。
前記樹脂成分としては、例えばアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種をモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体を樹脂成分として好適に用いることができる。より具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。
【0033】
前記共重合体におけるアクリル酸又はメタクリル酸の含有量は4〜20重量%程度であることが好ましい。このような樹脂も市販品を使用することができる。前記樹脂組成物には、公知の添加剤を配合することもできる。
【0034】
非発泡樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜50μm程度が好ましく、特に10〜20μm程度がより好ましい。
【0035】
また、前記樹脂成分の樹脂組成物中の含有量は限定的ではないが、通常70〜100重量%の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0036】
前記樹脂成分のメルトフローレート値は、用いる樹脂成分の種類等によるが、通常は10〜60g/10分とすることが好ましい。非発泡樹脂層のMFR値が高い場合は、発泡樹脂層表面の発泡ガスが非発泡樹脂層へと進入するため、特に10〜35g/10分の範囲にあることが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。
【0037】
絵柄模様層
本発明の発泡壁紙は、非発泡樹脂層Aのおもて面に、必要に応じて絵柄模様層を有しても良い。
【0038】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0039】
絵柄模様層は、例えば、基材シートのおもて面に絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成しても良い。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用しても良い。
【0040】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0041】
ビヒクルは、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0042】
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0043】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0044】
エンボス
本発明シートは、発泡エンボス模様に加えて、適宜エンボス模様を付しても良い。この場合、シート最表面層(紙質基材と反対側)の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版等の公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が非発泡樹脂層Bである場合は、そのおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0045】
<発泡壁紙の製造方法>
本発明の発泡壁紙の製造方法は特に限定されない。特に、2層以上の層構成とする場合は、例えばTダイ押出し機による同時押出しが好適である。例えば、紙質基材から順に発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aを積層する場合、2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層を形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すれば良い。この方法では、同時押出し積層体は、紙質基材上に同時積層(成膜)する。紙質基材上に押出しと同時に積層された樹脂層は、熱溶融により接着性を有するため紙質基材と接着される。
【0046】
なお、予め2種2層を同時成膜した積層体用意して、それを紙質基材上に載せて、熱ラミネートすることにより紙質基材と接着しても良い。
【0047】
紙質基材上に同時積層後は、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0048】
本発明では、前記加熱処理の前に、各樹脂層に電子線照射を行っても良い。これにより、各層に含まれる樹脂成分を架橋できるため、発泡壁紙の表面強度、発泡程度等を制御することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0049】
電子線照射を行う場合には、前記組成物中に架橋助剤を含有しても良い。架橋助剤としては、電子線照射による架橋を促進するものであれば良い。例えば、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性モノマー、オリゴマーなどが挙げられる。架橋助剤は、樹脂成分100重量部に対して0〜10重量部程度とすることが好ましく、特に1〜4重量部とすることがより好ましい。
【0050】
絵柄模様層を有する発泡壁紙を製造する場合には、上記加熱処理前に非発泡樹脂層の表面に絵柄模様層を形成することが好ましい。絵柄模様層の形成方法は、前記の通りとすれば良い。
【実施例】
【0051】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0052】
実施例1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、i)非発泡樹脂層/ii)発泡剤含有
樹脂層/iii)非発泡樹脂層の順に厚み10μm/100μm/10μmになるように製膜し、前記iii)層の面に裏打紙を積層した。このときの押し出し条件は、前記i)層の樹脂はシリンダー温度140℃とし、前記ii)層の樹脂はシリンダー温度110℃とし、前記iii)層の樹脂はシリンダー温度100℃とした。いずれも、ダイス温度は120℃とした。
次に、前記i)層上から電子線(175KV,70kGy)を照射して、前記ii)層を樹脂
架橋させた後、i)層上にコロナ放電処理を行った。さらにグラビア印刷機によりプライマー処理としてEVA系水性エマルジョンを2g/mコートし、その上に絵柄印刷として
水性インキ「ハイドリック(大日精化工業製)」を用いて布目絵柄を印刷した。次に、ギアオーブンにて加熱(240℃×35秒)し、発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させた。さらに、その発泡体に対して布目パターンの凹凸エンボスを施し、所望の壁紙を得た。
【0053】
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
【0054】
非発泡樹脂層i)は、エチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1525(MFR=25,MA=15%):三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
【0055】
発泡樹脂層ii)は、エチレン−メタクリル酸共重合体「ニュクレルN1110(MFR
=100,MA=11%):三井・デュポン ポリケミカル製」100重量部、二酸化チタン「R−108:デュポン製」25重量部、発泡剤「ビニホールAC#3:永和化成工業製」5重量部及び安定剤「アデカスタブOF−102:旭電化工業製」5重量部を含む樹脂組成物により形成した。
【0056】
非発泡樹脂層iii)は、EVA樹脂「エバテートCV5053(MFR=70,VA=20%):住友化学製」により形成した。
【0057】
比較例1
発泡樹脂層ii)として、エチレン−メタクリル酸共重合体に代えてエチレン−酢酸ビニ
ル共重合体「エバテートD4010(MFR=10):住友化学製」を用いたほかは、実施例1と同様にして発泡壁紙を作製した。
【0058】
試験例1
実施例及び比較例で得られたシートについて、耐スクラッチ性等について調べた。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1中の各物性は、以下の方法により測定・評価した。
(1)コインスクラッチ
「水平な面に試験片を置き、10円硬貨を用い、45°の角度で試験片上を荷重2kgで引き掻き、表面を観察する。」という測定方法により測定した。試験表面に傷がない場合は「◎」、表面が僅かに傷付いた場合は「○」、発泡層まで傷が達した場合は「△」、大きく傷付いた場合は「×」と評価した。
(2)テーバー摩耗試験
JIS K6902の耐摩耗試験に規定された摩耗試験機を用い、軟質摩耗輪:CS−
17 荷重:1kg 回転数:200回転の条件で試験後の試験片の表面を観察した。摩耗が発泡層まで達しない場合は「◎」、発泡層まで達するが表面のケバ立ちのない場合は「○」、表面が僅かにケバ立つ場合は「△」、表面が大きくケバ立つ場合は「×」と評価した。
(3)耐スクラッチ試験
日本ビニル工業会ビニル建装部会制定の「表面強化壁紙性能規定」に準拠して行った。すなわち、学振摩耗試験機(JISL0849 摩耗試験機II型)に試験片を取り付け、その試験機の摩擦子に同部会指定の金属製爪を用い、金属爪先端に200g荷重をかけ、試験片上を5往復させて、試験片の試験後の表面状態を観察し、表面の傷付き具合で判断した。上記規定によれば、1級〜5級の5段階で評価され、5級:変化なし、 4級:表面に少し変化あり、 3級:表面が破けて見える 2級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm未満)、 1級:表面が破けて紙等の裏打材が見える(長さ1cm以上)とされている。本評価においては、それを◎、○、△、×で示し、◎:5級 ○:4級
△:3級 ×:2〜1級とした。
【0061】
試験例2
実施例1で得られた発泡壁紙を用い、発泡セルのガス抜けの程度を調べた。比較のため、前記ii)層の樹脂架橋を実施しなかったほかは、実施例1と同様にして得られた発泡壁
紙(参考例)を作製した。その結果、実施例1で得られた発泡壁紙は、参考例に比べてガス抜けが非常に少なく、より緻密な発泡セルが形成されていることを確認した。すなわち、発泡剤含有樹脂層が、高いメルトフローレートを有する樹脂成分により形成されていても、良好な発泡状態が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成されている発泡壁紙であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(3)非発泡樹脂層Aが、メルトフローレート値が10〜60g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)であるエチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層である、
ことを特徴とする発泡壁紙。
【請求項2】
前記非発泡樹脂層Aに含まれるエチレン−メタクリル酸共重合体が、メルトフローレート値10〜35g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)である、請求項1に記載の発泡壁紙。
【請求項3】
前記発泡剤含有樹脂層に含まれるエチレン−メタクリル酸共重合体が、メルトフローレート値60〜200g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)である、請求項1又は2に記載の発泡壁紙。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層が、電子線照射により架橋されている、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項5】
前記発泡剤含有樹脂層が、石油樹脂を含まない、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項6】
紙質基材と発泡樹脂層との間にさらに非発泡樹脂層Bが形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の発泡壁紙。
【請求項7】
紙質基材上に少なくとも発泡樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成されている発泡壁紙の製造方法であって、
(1)発泡樹脂層が、発泡剤含有樹脂層を発泡させて形成した層であり、
(2)発泡剤含有樹脂層が、エチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(3)非発泡樹脂層Aが、メルトフローレート値が10〜60g/10分(JIS K7210:190℃,2.16kg)であるエチレン−メタクリル酸共重合体を含む樹脂組成物により形成された層であり、
(4)少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを紙質基材上に形成後、次いで発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する、
ことを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
【請求項8】
少なくとも前記発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを同時押出しにより形成する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
シート最表面層の上からエンボス加工を行う、請求項7又は8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−179161(P2011−179161A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102704(P2011−102704)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2008−35976(P2008−35976)の分割
【原出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】