説明

発泡性充填具

【課題】射出成形のみに依存せずに成形することの容易な発泡性充填具を提供する。
【解決手段】
発泡性充填具11は、加熱されることで発泡及び硬化して発泡体を形成する発泡性部材14を備えている。発泡性部材14は、本体部12とインナパネル51に取り付けられる取付部13とを有している。取付部13は、発泡性部材14に第1切れ込み部15を設けることにより、本体部12と連結された状態で本体部12から突設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体を構成する構成部材に取り付けられ、加熱されることで発泡及び硬化して発泡体を形成する発泡性充填具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のピラー等の中空構造体における中空部に発泡体を充填させる際に、加熱されることで発泡体を形成する発泡性材料を用いる手法が提案されている。こうした発泡性材料を中空部に配置させるには、中空構造体を構成する構成部材に係止させる係止クリップを備えた発泡性充填具が用いられている(特許文献1参照)。特許文献1の発泡性充填具において、係止クリップは、発泡性材料と同質の材料から成形されるとともに発泡性材料と一体に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−048038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような発泡性充填具において、中空構造体を構成する構成部材に取り付ける取付部を発泡性部材と一体に成形することで、部品点数を削減することが可能となる。これにより、発泡性充填具の生産性を高めることができるようになる。特許文献1の発泡性部材は、発泡性材料の射出成形により得ることができるとしている。ここで、取付部を有する発泡性部材を射出成形のみに依存せずに、例えば打抜加工を含む加工により成形することで、例えば射出成形用金型の複雑化を回避することができるようになる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、射出成形のみに依存せずに成形することの容易な発泡性充填具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、加熱されることで発泡及び硬化して発泡体を形成する発泡性部材を備え、中空構造体を構成する構成部材に取り付けられる発泡性充填具であって、前記発泡性部材は、本体部と前記構成部材に取り付けられる取付部とを有してなり、前記取付部は、前記発泡性部材に切れ込み部を設けることにより前記本体部と連結された状態で前記本体部から突設されてなることを要旨とする。
【0007】
この発明では、取付部は、発泡性部材に切れ込み部を設けることにより本体部と連結された状態で本体部から突設される構成である。こうした取付部は、打抜加工により形成することが可能である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡性充填具において、前記本体部は湾曲又は屈曲可能に構成されるとともに、前記切れ込み部としての第1切れ込み部と離間して第2切れ込み部を前記発泡性部材に設けることにより前記本体部から突片を突設させてなることを要旨とする。
【0009】
この発明では、本体部は湾曲又は屈曲可能に構成されているため、本体部を環状に曲成することができる。また、第1切れ込み部と離間した第2切れ込み部により突片が突設される。こうした突片、又は突片を突設させることで貫設される孔は、本体部を曲成した状態に保持する保持部にすることができるようになる。しかも、突片は、第2切れ込み部により突設されるため、発泡性部材の打抜加工により形成することが可能である。すなわち、第2切れ込み部は、上記の第1切れ込み部と同時に打抜加工することで設けることもできるため、生産性を容易に高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発泡性充填具において、前記突片を突設させることで前記本体部に貫設される孔を、前記取付部の挿通孔としてなることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、本体部に貫設される孔を取付部の挿通孔として取付部を挿通するとともに、その取付部を構成部材に取り付けることで、本体部を環状に曲成した状態で保持することができる。ここで、取付部を挿通する挿通孔は、発泡性部材の一部を除去することで貫設することもできるものの、その貫設により不要物が発生することになる。この点、上記挿通孔の形成では、突片が本体部に連結されているため、歩留まりを高めることに貢献できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発泡性充填具において、前記取付部を突設させることで前記本体部に貫設される孔に、前記突片が係止されることを要旨とする。
この構成によれば、突片を貫通孔に係止させることで、本体部を環状に曲成した状態で保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、射出成形のみに依存せずに成形することの容易な発泡性充填具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態の発泡性充填具を示す斜視図。
【図2】インナパネル及びそれに配置する形状とした発泡性充填具を示す斜視図。
【図3】(a)は車両用ピラーに配置された発泡性充填具を示す部分断面図、(b)は車両用ピラーに充填された発泡体を示す断面図。
【図4】第2の実施形態の発泡性充填具を示す斜視図。
【図5】インナパネル及びそれに配置する形状とした発泡性充填具を示す斜視図。
【図6】車両用ピラーに配置された発泡性充填具を示す部分断面図。
【図7】(a)及び(b)は、取付部及びインナパネルの変更例を示す斜視図。
【図8】インナパネル及びそれに配置する形状とした発泡性充填具の変更例を示す斜視図。
【図9】発泡性充填具の変更例を示す斜視図。
【図10】(a)及び(b)は、車両用ピラーに配置された発泡性充填具を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明を具体化した第1の実施形態について図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示されるように、発泡性充填具11は、本体部12と、車両用ピラーを構成するインナパネル51に本体部12を取り付ける取付部13とを有する発泡性部材14により、車両用ピラーの内部空間において発泡体を充填するものである。こうした発泡性充填具11は、車両用ピラーの内部空間に配置させた状態で加熱されることで、発泡性部材14が発泡及び硬化して発泡体を形成する。
【0016】
本実施形態の発泡性部材14は、長手方向を有するシート状をなすとともに湾曲可能となっている。発泡性部材14において、長手方向における一端縁としての第1端縁14a側に偏倚して第1切れ込み部15が設けられている。取付部13は、第1切れ込み部15により本体部12と連結部16により連結された状態で本体部12から突設される。なお、本体部12には、取付部13の突設に伴って、本体貫通孔が形成される。
【0017】
発泡性部材14において、第1切れ込み部15と離間して第2切れ込み部17が設けられている。本実施形態の第2切れ込み部17は、長手方向における他端縁としての第2端縁14b側に偏倚して設けられている。この第2切れ込み部17により、突片18が本体部12と連結した状態で本体部12から突設される。本体部12には、突片18の突設に伴って、取付部13が挿通可能な取付挿通孔17aが貫設される。
【0018】
図2に示されるように、本体部12を湾曲させることで、環状部19が曲成される。このとき、取付部13は取付挿通孔17aに挿通される。ここで、取付部13は、その弾性変形又は取付挿通孔17aの弾性変形を利用して取付挿通孔17aに挿通されることで、取付挿通孔17aに係止される。これにより、インナパネル51に取り付けられる前の発泡性充填具11においては、本体部12を環状に曲成した状態に保持させることができる。
【0019】
図2及び図3(a)に示されるように、インナパネル51には、取付部13が係止されるパネル貫通孔51aが形成されている。上述した取付部13は、その弾性変形を利用してパネル貫通孔51aに挿通されることでパネル貫通孔51aに係止される。
【0020】
ここで、取付部13は、第1切れ込み部15を利用して突設されている。こうした取付部13は、打抜加工により第1切れ込み部15を形成した後に、その第1切れ込み部15を起立させることで取付部13を突設することができる。すなわち、取付部13は、打抜加工を通じて設けることができるため、発泡性部材14は、射出成形のみに依存せずに成形することができるようになる。なお、第1及び第2切れ込み部15,17を設ける前の発泡性部材14は、特に限定されず、例えば押出成形又はロール成形に打抜加工を組み合わせた方法、射出成形法により成形することができる。例えば発泡性材料の押出成形又はロール成形により得られたシート材を打抜加工することで、発泡性部材14の外形を打ち抜くとともに第1及び第2切れ込み部15,17を設けることができる。この場合、取付部13等を有する発泡性部材14を発泡性材料から成形するに際して、射出成形機を用いることを回避することができる。また、発泡性部材14の外形を打ち抜くとともに第1及び第2切れ込み部15,17を打ち抜く打抜加工を同時に行うことで生産性を高めることができる。
【0021】
なお、発泡性材料には、基材、発泡剤、及び架橋剤が含有される他に、充填剤、可塑剤等が適宜含有されている。基材としては、合成樹脂、エラストマー及びゴムが挙げられる。合成樹脂としては、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、EVA(エチレン/ビニルアセテートコポリマー)等が挙げられる。エラストマーとしては、RB(ポリブタジエンエラストマー)、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。ゴムとしては、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、UR(ウレタンゴム)、ENR(エポキシ化天然ゴム)、EPM(エチレン/プロピレンゴム)等が挙げられる。発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等、架橋剤としては周知のジメチルウレア、ジシアンジアミド、充填剤としては炭酸カルシウム、硫酸バリウム、フェライト、シリカ等が挙げられる。
【0022】
こうして得られたシート状の発泡性部材14は、弾性を有している。発泡性部材14の厚みは、発泡体を充填する箇所に応じて適宜設定される。車両ピラー等の車両の一部に適用する発泡性充填具11では、発泡性部材14の厚みは、例えば1mm〜5mm程度であり、発泡性部材14の幅は、例えば5mm〜100mm程度に設定されることが好ましい。このように発泡性部材14の厚み及び幅が設定されることで、所定の充填性能が得られやすくなるとともに外部加熱による発泡が円滑に行われやすくなる。
【0023】
次に、発泡性充填具11の使用方法について説明する。
発泡性充填具11を曲成した状態にするには、本体部12の第1端縁14a側を湾曲させるとともに、取付部13を取付挿通孔17aに挿通させることで、取付部13を取付挿通孔17aに係止する。これにより、発泡性充填具11は、図1に示される曲成前の状態から図2に示される曲成された状態とされるとともに、その状態で保持される。
【0024】
発泡性充填具11をインナパネル51に取り付けるには、図2及び図3(a)に示されるように取付部13をパネル貫通孔51aに挿通させるとともに、取付部13をパネル貫通孔51aに係止させる。このように、取付部13がパネル貫通孔51aに係止されることで、取付部13が取付挿通孔17aから抜け出すことを防止することができる。こうして発泡性充填具11は、曲成された状態で維持されるようになる。ここで、図3(a)に示されるように、突片18は本体部12とインナパネル51との間に位置させるように突設されることで、本体部12とインナパネル51との間のスペーサとなっている。
【0025】
発泡性充填具11が取り付けられたインナパネル51には、アウタパネル52が接合されることで、車両用ピラー53が形成される。このように発泡性充填具11が内部空間に配置された状態で、車両用ピラー53には電着塗装が施される。このとき、突片18は、本体部12とインナパネル51との間のスペーサとして機能するため、本体部12とインナパネル51の内壁面との間に電着液が流入しやすくなる。このため、インナパネル51では、パネル貫通孔51aの周囲においても、電着塗装が十分に施されるようになる。
【0026】
続いて、車両用ピラー53は、車両の乾燥工程を通じて、所定の温度で所定の時間加熱される。こうした加熱により、図3(b)に示されるように発泡性部材14が発泡及び硬化することで、車両用ピラー53の内部空間の所定の位置に発泡体61が充填される。このように発泡体61が充填された車両用ピラー53では、その強度、剛性、制振性、遮音性等が高められる。
【0027】
本実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
(1)取付部13は、発泡性部材14に第1切れ込み部15を設けることにより本体部12と連結された状態で本体部12から突設される構成である。こうした取付部13は、打抜加工により形成することが可能である。従って、射出成形のみに依存せずに成形することの容易な発泡性充填具11を提供することができる。
【0028】
これにより、第1切れ込み部15を設ける前の発泡性部材14について、射出成形により成形した場合では、射出成形用金型の複雑化を回避することができるようになるため、射出成形用金型の設計が容易になる。また、第1切れ込み部15を設ける前の発泡性部材14を発泡性材料の押出成形により得る場合では、押出成形及び打抜加工により発泡性部材14を得ることができる。この場合、射出成形機を用いずに、取付部13を有する発泡性部材14を発泡性材料から製造することができるようになる。このため、例えば押出成形機及び打抜加工機を所有している場合や、射出成形機よりも押出成形機及び打抜加工機が入手しやすい状況において、設備費の負担を軽減して製造することが可能である。
【0029】
(2)本体部12は湾曲可能に構成されているため、本体部12を環状に曲成することができる。ここで、発泡性部材14には、第1切れ込み部15と離間した第2切れ込み部17により突片18が突設されている。こうした突片18を突設させることで形成される取付挿通孔17aは、本体部12を曲成した状態に保持する保持部にすることができるようになる。しかも、突片18は、第2切れ込み部17により突設されるため、その突片18は打抜加工により形成することが可能である。従って、本体部12を曲成した状態に保持することができるとともに、射出成形のみに依存せずに成形することの容易な発泡性充填具11を提供することができる。また、第2切れ込み部17は、上記の第1切れ込み部15と同時に打抜加工することで設けることも可能であるため、生産性を高めることも容易である。
【0030】
(3)本実施形態では、突片18を突設させることで本体部12に形成される孔を、取付部13を挿通させる取付挿通孔17aとしている。こうした取付挿通孔17aに取付部13を挿通するとともに、その取付部13をインナパネル51に取り付けることで、本体部12を環状に曲成した状態で保持することができる。ここで、取付挿通孔17aは、発泡性部材14の一部を除去することで貫設することもできるものの、その貫設により不要物が発生することになる。この点、上記取付挿通孔17aの形成では、突片18が本体部12に連結されているため、歩留まりを高めることに貢献できる。
【0031】
(4)取付部13は、取付挿通孔17aに係止される構成であるため、インナパネル51に取り付けられる前の発泡性充填具11において、本体部12を環状に曲成した状態に保持させることができる。インナパネル51に取り付けられる前に、本体部12を予め曲成した状態とすることができるため、発泡性充填具11をインナパネル51に取り付ける段階では、本体部12を曲成する作業を省略できる。従って、発泡性充填具11をインナパネル51に取り付ける作業を簡素化することができる。
【0032】
(5)突片18は、本体部12とインナパネル51との間に位置させるように突設されている。このように突設された突片18は、発泡性充填具11をインナパネル51に取り付けたとき、本体部12とインナパネル51との間のスペーサとなる。このため、インナパネル51に電着塗装を施す際に本体部12とインナパネル51との間に電着液が流入しやすくなる。従って、発泡性充填具11が取り付けられたインナパネル51において、パネル貫通孔51aの周囲においても、電着塗装が十分に施されるようになる。
【0033】
(第2の実施形態)
本発明を具体化した第2の実施形態について図4及び図5を参照して第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0034】
図4に示されるように、本実施形態の発泡性充填具21は、発泡性部材24において、第1切れ込み部25が第2端縁24b側に設けられる一方で、第2切れ込み部27が第1端縁24a側に設けられている。第1切れ込み部25により突設される取付部23は、本体部22と第1連結部26により連結されている。取付部23の突設に伴って本体部22には係止孔25aが貫設される。第2切れ込み部27により突設される突片28は、係止孔25aに挿通されるとともに同係止孔25aに係止される係止部28aと、同係止部28aを本体部22に連結する第2連結部28bとを有している。なお、本体部22には、突片28の突設に伴って本体貫通孔が形成される。
【0035】
図5に示されるように、本体部22を湾曲させることで、環状部29が曲成される。このとき、係止部28aは係止孔25aに挿通される。ここで、係止部28aはその弾性変形又は係止孔25aの弾性変形を利用して係止孔25aに挿通される構成である。このため、インナパネル51に取り付けられる前の発泡性充填具21においては、係止孔25aに係止部28aが係止されることで、本体部22を環状に曲成した状態に保持させることができる。
【0036】
発泡性充填具21をインナパネル51に取り付けるには、図5及び図6に示されるように取付部23をパネル貫通孔51aに挿通させるとともに、取付部23をパネル貫通孔51aに係止させる。ここで、係止部28aは本体部22とインナパネル51との間に位置させるように突設されることで、本体部22とインナパネル51との間のスペーサとなっている。
【0037】
本実施形態の発泡性充填具21によれば、上記(1)及び(2)欄で述べた効果と同様の効果が得られる。また、突片28の有する係止部28aを係止孔25aに係止させることで、本体部22を環状に曲成した状態で保持することができる。こうした係止部28aの係止によれば、インナパネル51に取り付けられる前に、本体部22を予め曲成した状態とすることができるため、発泡性充填具21をインナパネル51に取り付ける段階では、本体部22を曲成する作業を省略できる。従って、発泡性充填具21をインナパネル51に取り付ける作業を簡素化することができる。
【0038】
また、係止部28aは、本体部22とインナパネル51との間に位置させるように突設されている。このように突設された係止部28aは、発泡性充填具21をインナパネル51に取り付けたとき、本体部22とインナパネル51との間のスペーサとなる。このため、インナパネル51に電着塗装を施す際に本体部22とインナパネル51との間に電着液が流入しやすくなる。従って、発泡性充填具21が取り付けられたインナパネル51において、パネル貫通孔51aの周囲においても、電着塗装が十分に施されるようになる。
【0039】
(変更例)
なお、上記第1及び第2の実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・取付部13,23の形状及び数は適宜変更することができる。例えば、図7(a)に示されるように変更した第1切れ込み部31から複数の取付部31a,31bを突設させることができる。
【0040】
また例えば、図7(b)に示されるよう変更した第1切れ込み部32から突設される複数の取付部32a,32bを、それぞれ異なるパネル貫通孔51a,51bに取り付けるように構成することもできる。この場合、インナパネル51に発泡性充填具を安定して係止させることができる。
【0041】
・前記第1の実施形態の発泡性充填具を、図8に示されるように複数の第1切れ込み部15a,15bを離間して設けることで、本体部12から複数の環状部19a,19bが曲成される発泡性充填具41に変更することもできる。こうした複数の環状部19a,19bの曲成によれば、本体部12の位置設定について自由度を高めることができる。また、図8に示される発泡性部材14には、各取付部13a,13bに対応して複数の第2切れ込み部を設けている。これら第2切れ込み部により、複数の突片18a,18bを突設させることで、複数の取付挿通孔が貫設されている。これら取付挿通孔の距離、すなわち第2切れ込み部の距離に応じて各環状部19a,19bの距離を調整することができるため、各環状部19a,19bの位置設定について自由度を高めることができる。なお、図8に示される発泡性充填具41において、第2切れ込み部を一箇所に設けることで、二つの取付部13a,13bが一つの取付挿通孔に挿通されるように変更してもよい。
【0042】
・図8に示される発泡性充填具において、環状部19a,19bを曲成した状態に保持する構成のうち、少なくとも一方の構成について、第2の実施形態のように係止孔に係止部が係止される構成に変更することもできる。
【0043】
・図9に示されるように、第2切れ込み部を設けずに発泡性部材14を構成することもできる。すなわち、本体部12を環状に曲成した状態で保持する保持部を省略してもよい。この場合、図10(a)に示されるように、本体部12を曲成せずに、パネル貫通孔51aに取付部13を係止される。また、図10(b)に示されるように、本体部12を曲成させた状態として用いることもできる。但し、この場合、アウタパネル52を接合する前においては、本体部12は曲成された状態に維持され難くなる。このため、インナパネル51とアウタパネル52との接合作業を容易にする観点から、前記第2切れ込み部17,27を設けることで、取付挿通孔17a又は係止部28aを保持部として設けることは有利である。
【0044】
・前記第1の実施形態では、取付部13は取付挿通孔17aに係止されるように構成されているが、例えば第2切れ込み部17の形状を変更することで、取付部13が取付挿通孔17aに係止されずにパネル貫通孔51aに係止される構成に変更することもできる。この構成であっても、取付挿通孔17aを挿通された取付部13がパネル貫通孔51aに係止されることで、取付挿通孔17aは本体部12を環状に曲成した状態に保持する保持部となる。
【0045】
・前記第2の実施形態の突片28は係止部28a及び第2連結部28bを有している。この構成に限定されず、例えば、突片28を係止孔25aに圧入される寸法に形成することで、その圧入により突片28を係止孔25aに係止させる構成に変更してもよい。この点、第2の実施形態のように、係止部28a及び第2連結部28bを有し、係止部28aが係止孔25aに挿通される構成によれば、係止状態の維持力を高めた形状に設定しやすいという利点がある。
【0046】
・第1の実施形態において、例えば第1切れ込み部15の形状を変更することで、連結部16を取付挿通孔17aに係止される形状に変更してもよい。この場合であっても、取付挿通孔17aは、本体部12を曲成した状態に保持する保持部となるため、上記(2)欄で述べた効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・本体部12,22に例えば凹条等の屈曲部を形成することで、本体部12,22を屈曲可能とし、その屈曲を利用して所定の形状に曲成されるように構成してもよい。例えば、厚みを増した本体部の場合では、屈曲部を形成することで、所定の形状に曲成することが容易となる。
【0048】
・第1切れ込み部15,25及び第2切れ込み部17,27の打抜加工は、同時に行ってもよいし、複数段階に分けて行ってもよい。なお、第1切れ込み部15,25及び第2切れ込み部17,27の打抜加工を同時に行うことで、発泡性部材14,24の生産性を高めることができる。
【0049】
・発泡性充填具11,21の取り付け箇所は、インナパネル51に限らず、例えばアウタパネル、リンフォースパネル等であってもよい。中空構造体は、車両用ピラー53に限らず、例えば車両のドア、バンパ等を構成する車両用中空構造体であってもよい。また、鉄道用、船舶用、航空機用、建築用等に適用される中空構造体に適用してもよい。
【0050】
・発泡性部材14,24の形状は特に限定されず、例えば中空構造体の内部形状、発泡体を充填させる領域等に応じて適宜変更することができる。なお、中空構造体の内周に沿って配置させることで、中空構造体の断面を閉塞するという観点から、発泡性部材14,24は長手方向を有する形状であることが好適である。
【0051】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記発泡性部材は、長手方向を有する形状をなし、前記発泡性部材の長手方向における一端縁である第1端縁側に偏倚して前記第1切れ込み部を設けるとともに、前記発泡性部材の長手方向における他端縁である第2端縁側に偏倚して前記第2切れ込み部を設けてなる発泡性充填具。
【0052】
(ロ)前記発泡性充填具の製造方法であって、押出成形を通じて得られた発泡性部材に前記切れ込み部を打抜加工する工程を含む発泡性充填具の製造方法。
【符号の説明】
【0053】
11,21,41…発泡性充填具、12,22…本体部、13,13a,13b,23,31a,31b,32a,32b…取付部、14,24…発泡性部材、14a,24a…第1端縁、14b,24b…第2端縁、15,15a,15b,25,31,32…第1切れ込み部、16…連結部、17,27…第2切れ込み部、17a…取付挿通孔、18,18a,18b,28…突片、19,19a,19b,29…環状部、25a…係止孔、26…第1連結部、28a…係止部、28b…第2連結部、51…インナパネル、51a,51b…パネル貫通孔、52…アウタパネル、53…車両用ピラー、61…発泡体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることで発泡及び硬化して発泡体を形成する発泡性部材を備え、中空構造体を構成する構成部材に取り付けられる発泡性充填具であって、
前記発泡性部材は、本体部と前記構成部材に取り付けられる取付部とを有してなり、前記取付部は、前記発泡性部材に切れ込み部を設けることにより前記本体部と連結された状態で前記本体部から突設されてなることを特徴とする発泡性充填具。
【請求項2】
前記本体部は湾曲又は屈曲可能に構成されるとともに、
前記切れ込み部としての第1切れ込み部と離間して第2切れ込み部を前記発泡性部材に設けることにより前記本体部から突片を突設させてなることを特徴とする請求項1に記載の発泡性充填具。
【請求項3】
前記突片を突設させることで前記本体部に貫設される孔を、前記取付部の挿通孔としてなることを特徴とする請求項2に記載の発泡性充填具。
【請求項4】
前記取付部を突設させることで前記本体部に貫設される孔に、前記突片が係止されることを特徴とする請求項2に記載の発泡性充填具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−161642(P2011−161642A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23232(P2010−23232)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000101905)イイダ産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】