説明

発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを用いた発泡加工紙並びに断熱容器

【課題】加熱によって紙を主体とする基材から放出される水蒸気、揮発ガス等の気体によって、十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層体の製造用原料となるポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを使用した発泡加工紙並びにカップなどの断熱容器が提供される。
【解決手段】少なくとも、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって基材から放出される気体によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)を有する発泡性積層体用のポリエチレン系樹脂材料(X)であって、(a1)、(a2)の特性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50重量%を超え90重量%以下と、高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)の10重量%以上50重量%未満を配合して得られ、かつ(x1)〜(x5)の特性を有することを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料などによって提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを用いた発泡加工紙並びに断熱容器に関し、より詳しくは、加熱によって紙を主体とする基材から放出される水蒸気、揮発ガス等の気体によって、十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層体の原料となるポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを使用した発泡加工紙並びにカップなどの断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性を有する容器としては、合成樹脂製の発泡体が多く使用されている。また、廃棄し易く印刷適性の良い容器として、紙を複数枚使用した断熱紙容器や、紙基材の両面をポリエチレン樹脂層で積層された材料を使用し、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させ断熱性を付与した紙容器がある。
【0003】
紙を基材とした技術としては、紙の少なくとも一面にポリエチレンを押出ラミネートし、他面には蒸気圧保持層を形成させ、加熱により表面に不規則な凹凸模様を有する加工紙を製造する技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、胴部材の片側壁面に熱可塑性樹脂フィルムがラミネートまたはコーティングされ、加熱によりフィルムを発泡させて発泡断熱層を形成させる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、容器胴部材及び底部材からなる紙製容器において、容器胴部材の外壁面の一部に有機溶剤含有インキによる印刷を施し、胴部材外壁面全体を熱可塑性合成樹脂フィルムで被覆されている紙容器を加熱することにより、印刷部分に比較的厚い発泡層を存在させる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。さらに、少なくとも外面側からシングルサイト触媒を用いて重合したエチレン−αオレフィン共重合体またはそれを含む発泡層、紙を主体とする基材層、熱可塑性樹脂層とを備えた積層体からなる発泡加工紙が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。
また、特許文献6においては、紙容器における胴部材原材料シートの紙基材の少なくとも片面に、溶融状態の熱可塑性樹脂をTダイから紙基材に接するまでの時間が0.11〜0.33秒となるように押出ラミネートしてなる紙製容器の胴部材原材料シートが示され、低密度ポリエチレンを2種混合してMFRを調整した組成物が記載されている。こうして得られた発泡層を保有する加工紙は、容器とした際に、発泡層により手とのなじみがよく滑りにくく、断熱性に優れるとともに、紙を複数枚使用した断熱性容器に比較してコストが安いというメリットがある。
【0004】
しかしながら、従来の発泡層を有する積層体や、それを用いた加工紙は、発泡性が十分とは言えず更なる発泡性の改良が望まれていた。また、発泡性を向上させようとしてMFRを高くすると、発泡層の外観が不良となり、押出ラミネート加工時の加工性が不安定となる等の問題があった。
さらに、これらの発泡工程では発泡時の温度を高めに設定する必要があるため、エネルギー効率が悪い傾向にあるだけでなく、胴部材をヒートシールして作成する際の温度を高く設定する必要があるため、ヒートシール性の良い材料が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭48−32283号公報
【特許文献2】特開昭57−110439号公報
【特許文献3】特開平7−232774号公報
【特許文献4】特開平10−128928号公報
【特許文献5】特開2007−168178号公報
【特許文献6】特開2008−105747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、加熱によって紙を主体とする基材から放出される水蒸気、揮発ガス等の気体によって、十分な高さの発泡セル(発泡層)が得られる発泡性積層体の製造用原料となるポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを使用した発泡加工紙並びにカップなどの断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって紙基材(I)から放出される水蒸気等によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(I)を有する積層体の製造用原料として、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体とラジカル重合法ポリエチレン樹脂を特定量配合して、この配合物のCFC溶出成分量と溶出温度を特定値に調整したポリエチレン樹脂材料を用いることにより、低温でのヒートシール性と発泡性に優れた積層体が得られ、これを用いれば、容易に発泡層の外観が良好な発泡加工紙、断熱容器が製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、少なくとも、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって基材から放出される気体によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)を有する発泡性積層体用のポリエチレン系樹脂材料(X)であって、下記(a1)(a2)の特性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50重量%を超え90重量%以下と、高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)の10重量%以上50重量%未満を配合して得られ、かつ下記(X1)〜(X5)の特性を有することを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
(a1)JIS K7210に準拠して測定したMFRが1〜50g/10min、
(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.880〜0.935g/cmである。
(x1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10min、
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が0.880g/cm以上、
(x3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度80℃以上の溶出成分量が10重量%以下、
(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度の最大ピーク温度が70℃以下であり、
(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(1)を満たす。
−0.467×Ln(MFR) +2.75 ≦ ME ・・・式(1)
(式中、Lnは自然対数である。)
【0009】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記エチレン−αオレフィン共重合体(A)が、シングルサイト系触媒を用いて製造された樹脂であることを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
【0010】
本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)が、下記(b1)〜(b2)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂であることを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
(b1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が、1〜30g/10minであり、
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.940g/cmである。
【0011】
本発明の第4の発明によれば、第1〜第3のいずれかの発明において、前記高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)が、下記(b1)〜(b2)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B11)と、下記(b3)〜(b5)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B12)の少なくとも2種以上を混合した高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料が提供される。
(b1)JIS K7210に準拠して測定したMFRが、1〜30g/10min、
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.935/cm
(b3)JIS K7210に準拠して測定したMFRが、0.1〜100g/10min、
(b4)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.940g/cmであり、
(b5)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【0012】
本発明の第5の発明によれば、第1〜第4のいずれかの発明に係り、紙を主体とする基材(I)の一方の面に、前記のポリエチレン系樹脂材料(X)からなるポリエチレン系樹脂層(II)を形成してなる発泡性積層体が提供される。
【0013】
本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、さらに、紙を主体とする基材(I)のもう一方の面に、基材(I)から放出される気体を保持する熱可塑性樹脂(D)からなる熱可塑性樹脂層(III)を形成したことを特徴とする発泡性積層体が提供される。
【0014】
本発明の第7の発明によれば、第5または第6の発明において、発泡性積層体を加熱し、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて得られる発泡加工紙が提供される。
【0015】
本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて形成した発泡セルの高さが、300μm以上であることを特徴とする発泡加工紙が提供される。
【0016】
本発明の第9の発明によれば、第5又は6の発明に係り、発泡性積層体を用いて容器を形成した後、該容器を加熱して、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて得られる断熱容器が提供される。
【0017】
本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、断熱容器が、カップ状容器であることを特徴する断熱容器が提供される。
【0018】
本発明の第11の発明によれば、第1〜第4のいずれかの発明に係り、発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料を用いて、紙を主体とする基材(I)の一方の面にポリエチレン系樹脂層(II)を形成し、必要により紙を主体とする基材(I)のもう一方の面に、基材(I)から放出される気体を保持する熱可塑性樹脂(D)からなる熱可塑性樹脂層(III)を形成して、発泡性積層体を得た後、これを容器に成形し、引き続き、温度100〜200℃に加熱して、紙を主体とする基材(I)から放出される気体によってポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させることを特徴とする断熱容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料は、特定のエチレン−α−オレフィン共重合体とラジカル重合法ポリエチレン樹脂を特定量配合し、特定のCFC溶出成分量と溶出温度を有しているために、低温ヒートシール性が良く、これを用いて得られた積層体の発泡工程で、発泡時の温度を高めに設定する必要がなく、エネルギー効率が改善されるとともに、胴部材をヒートシールして作成する際の温度を高く設定する必要がなくなる。また、この材料を用いることで、発泡層の外観が良好な発泡加工紙、断熱容器を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料を調製する際に、CFCの第1溶出温度での溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合の分子量分布を求める方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料、発泡性積層体、及びそれを用いた発泡加工紙並びに断熱容器について、項目毎に詳細に説明する。
【0022】
1 [発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)]
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料は、少なくとも、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって基材から放出される気体によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)を有する発泡性積層体用のポリエチレン系樹脂材料(X)であって、下記(a1)、(a2)の特性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50を超え90重量%以下と、高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)を10以上50重量%未満配合して得られ、かつ下記(X1)〜(X5)の特性を有することを特徴とする。
(a1)JIS K7210に準拠して測定したMFRが1〜50g/10min、
(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.880〜0.935g/cm
(x1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10min、
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が0.880g/cm以上、
(x3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度80℃以上の溶出成分量が10重量%以下、
(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度の最大ピーク温度が70℃以下であり、
(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(1)を満たす。
−0.467×Ln(MFR) +2.75 ≦ ME ・・・式(1)
(式中、Lnは自然対数である。)
【0023】
(1)[エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、(a1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が、1〜50g/10分、(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.880〜0.935g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0024】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、(a1)JIS K7210に準拠して測定され、1〜50g/10分、好ましくは1.5〜45g/10分、より好ましくは2〜40g/10分の範囲で選択される。MFRが、1g/10分未満では、押出ラミネート加工時の押出負荷が高く、高速加工性が悪化するので好ましくない。また、MFRが50g/10分を超えるものは、押出ラミネートの加工性が不安定となるため好ましくない。
【0025】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の密度は、(a2)0.880〜0.935g/cmであり、好ましくは0.890〜0.933g/cm、より好ましくは0.895〜0.930g/cmである。該密度が0.880g/cm未満では、ラミネート時のロール剥離性が悪化し、0.935g/cmを超える場合には、ポリエチレン系樹脂材料(X)のCFCの溶出温度80℃以上の溶出成分量が10wt%以下という条件を満足しなくなる虞が生じる。
【0026】
上記α−オレフィンとしては、直鎖または分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンを挙げることができる。これら共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等の二元共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ブテン・1−ヘキセン共重合体等の三元共重合体が好適である。
これらα−オレフィンの含有量は、合計で通常30mol%以下、好ましくは3〜20mol%の範囲で選択されることが望ましい。
【0027】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、低、中、高圧で、チーグラー系触媒、フィリップス系触媒、シングルサイト(single−site)系触媒等のイオン重合触媒を用い、スラリー重合法、溶液重合法、気相重合法等で製造され、重合温度、圧力等の重合条件、助触媒等をコントロールすることにより好適に製造可能である。
【0028】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の中でもシングルサイト系触媒で製造された樹脂が好ましく、特に密度0.880〜0.935g/cmの超低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が包含される。
これらシングルサイト系触媒で製造される超低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、従来のチーグラー触媒やフィリップス触媒で製造されるものより低分子量成分が少なく、透明性、耐ブロッキング性がよく、融点も低く、高速シール性もよく、押出ラミネート成形やシーラントフィルム等に好適に使用されている。
また、本発明では、昨今開発の著しいシングルサイト系触媒で製造される長鎖分岐を有する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂や超低密度ポリエチレン樹脂も好ましいものである。これらシングルサイト系触媒で製造される直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンの具体例としては、カーネル(登録商標)、ハーモレックス(登録商標、日本ポリエチレン株式会社製)、エボリュー(登録商標、三井化学株式会社製)、イグザクト(登録商標、エクソンモービル社製)、アフィニティ(登録商標、ダウケミカル社製)等が挙げられる。
【0029】
上記のシングルサイト系触媒で製造されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、一般的にはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、必要により助触媒、有機アルミニウム化合物、担体とを含む触媒の存在下に、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものであり、例えば、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開平03−163088号公報、特開昭61−296008号公報等に開示されるメタロセン系触媒を用いて製造することができる。
【0030】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下、または不存在下で製造される。重合条件は、特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は、低中圧法の場合、通常、常圧〜70kg/cmG、好ましくは常圧〜20kg/cmGであり、高圧法の場合、通常1500kg/cmG以下が望ましい。重合時間は、低中圧法の場合、通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は、一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体は、特に製造触媒、プロセス等に限定されるものではなく、成書『ポリエチレン技術読本』(松浦一雄・三上尚孝編著、工業調査会刊行、2001年)のp.123〜160、p.163〜196等に記載されている方法により製造することが可能である。
【0031】
2 高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)
本発明において高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)とは、高圧ラジカル重合法によって製造されるポリエチレン樹脂であり、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)(以下低密度ポリエチレンと称する)、または2種以上の低密度ポリエチレン樹脂組成物、エチレンとビニルエステルとの共重合体(B2)、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体(B3)、それらの混合物を包含するものである。
【0032】
(B1)低密度ポリエチレン樹脂
本発明において、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)とは、JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10分であり、好ましくは1.5〜28g/10分、より好ましくは2〜25g/10分の範囲で選択される。メルトフローレート(MFR)が1g/10分未満では、押出負荷が高く、高速加工性が悪化する。一方、メルトフローレート(MFR)が30g/10分を超えるものは、押出ラミネート成形加工時の加工安定性が悪化し、好ましくない。
【0033】
また、試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度は、0.910〜0.935g/cmであり、好ましくは0.912〜0.933g/cm、0.915〜0.930g/cmの範囲で選択される。密度が0.910g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪くなり、積層体のハンドリングが悪くなるので、好ましくない。また、密度が0.935g/cmを超えるものは、低温ヒートシールが悪化し、好ましくない。
【0034】
(B2)エチレンとビニルエステルとの共重合体
エチレンとビニルエステル共重合体(B2)は、エチレンを主成分とし、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。
また、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重
合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。さらに、ビニルエステル含有量は3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
【0035】
(B3) エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体
また、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸、その誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸のアルキルエステル共重合体;エチレン・無水マレイン酸・酢酸ビニル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・無水マレイン酸・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル等の二元共重合体又は多元共重合体等が挙げられる。
【0036】
すなわち、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸グリシジル等を挙げることができる。
この中でも特に好ましいものとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0037】
(3)高圧ラジカル重合法
(i)重合条件
本発明に係る高圧ラジカル重合法は、酸素、有機過酸化物などのラジカル開始剤の存在下において、超高圧下、塊状または溶液重合によって製造される。
重合温度は、100〜300℃、好ましくは120〜280℃、より好ましくは150〜250℃の範囲で重合される。重合温度が100℃未満では、収率の低下や安定した製品を製造できなくなるおそれがあり、一方、300℃を超える場合には、反応が安定せずに、分子量の大きい重合体を得ることが難しくなる。
また、重合圧力は、50〜400MPa、好ましくは70〜350MPa、より好ましくは100〜300MPaの条件下であり、重合圧力が50MPa未満では、充分な分子量のものが得られず、加工性や物性の低下が生じ、一方、400MPaを超える場合には、安定的な製造運転が行い難くなる。
【0038】
(ii)重合操作
製造に際しては、基本的には、通常の高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンの製造設備及び技術を利用することができる。反応器の形式としては、攪拌翼付のオートクレーブ型、又はチューブラー型のものを使用することができ、必要に応じて、複数個の反応器を直列又は並列に接続して多段重合をすることもできる。更に、オートクレーブ型反応器の場合には、反応器内部を複数ゾーンに仕切ることにより、温度分布を設けること、より厳密な温度制御をすることも可能である。このような操作によって、メモリーエフェクト等を制御することが可能である。
【0039】
(iii)ラジカル開始剤
ラジカル開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイド、i−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、1,1−ビスt−ブチルパーキシシクロヘキサン、2,2−ビスt−ブチルパーオキシオクタン、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等の有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160〜200℃のものが好ましい。
【0040】
上記ラジカル開始剤の配合量は、特に限定されないが、ポリエチレン100重量部に対し、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部の範囲である。また必要ならば、連鎖移動剤等を用いて、分子量調節などを行ってもよい。
【0041】
(iv) 連鎖移動剤
上記連鎖移動剤としては、水素、プロピレン、ブテン−1、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族炭化水素又はハロゲン置換炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロパラフィン類、クロロホルム、四塩化炭素、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族カルボニル化合物、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、並びに芳香族化合物、例えばトルエン、ジエチルベンゼン及びキシレンのような化合物が挙げられる。
【0042】
本発明において高圧ラジカル法ポリエチレン樹脂(B)は、特に低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、その組成物、またはそれを主体とした組成物がラミネート成形時の成形加工性等がよいことからより好ましい。
具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸グリシジル(EGMA)等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体(E−GMA−VA)、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体等の三元共重合体、2種の低密度ポリエチレン樹脂組成物、低密度ポリエチレン樹脂とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との組成物、低密度ポリエチレン樹脂とエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)との組成物等が挙げられる。
【0043】
(4)低密度ポリエチレン樹脂組成物
本発明において低密度ポリエチレン樹脂組成物は、高圧ラジカル重合法ポリエチレン系樹脂(B11)及び(B12)の2種以上を混合した低密度ポリエチレン系樹脂組成物であり、好ましくは特定の高MFRの低密度ポリエチレン樹脂(B11)と特定の低MFRと高メモリーエフェクト(ME)を有する低密度ポリエチレン樹脂(B12)との組成物であって、下記(b1)〜(b2)の要件を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B11)95〜5重量%と、該(B11)樹脂以外の下記(b3)〜(b5)の要件を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B12)95〜5重量%とからなる低密度ポリエチレン樹脂組成物である。
(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b)が1〜30g/10分、
(b2)試験温度23℃、JIS−K7112に準拠した密度が0.910〜0.940g/cmである。
(b3)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b)が0.1〜100g/10分、
(b4)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.910〜0.940g/cm
(b5)JIS K7210で規定されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【0044】
(B11)低密度ポリエチレン樹脂
低密度ポリエチレン樹脂(B11)は、(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFRが1〜30g/10分、(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.905〜0.940g/cm以下を満足する低密度ポリエチレン樹脂である。
【0045】
低密度ポリエチレン樹脂(B11)のMFRは、(b1)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(b2)が1〜30g/10分、好ましくは1.2〜27g/10分、より好ましくは1.5〜25g/10分の範囲である。上記MFRが1g/10分未満では、押出ラミネート加工時の押出負荷が高く、高速加工性等が悪化し好ましくない。また、MFRが30g/10分を超えるものは、押出ラミネート加工性が不安定となる懸念生じるため、好ましくない。
【0046】
また、低密度ポリエチレン樹脂(B11)の密度は、(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定され、0.910〜0.940g/cm、好ましくは0.912〜0.937g/cm、より好ましくは0.915〜0.935g/cmの範囲である。密度が0.910g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪くなり、積層体のハンドリングが悪くなる懸念が生じるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0047】
(B12)低密度ポリエチレン樹脂
低密度ポリエチレン樹脂(B12)は、(b3)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(c)が0.1〜100g/10分、(b4)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.910〜0.940g/cm、(b5)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上を満足する低密度ポリエチレン樹脂である。
【0048】
低密度ポリエチレン樹脂(B12)のMFRについては、(b3)JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定したMFR(c)が0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜80g/10分、より好ましくは1〜70g/10分である。MFR(c)が0.1g/10分未満では、押出ラミネート加工時の押出負荷が高く、高速加工性が悪化するので好ましくない。また、MFRが100g/10分を超えるものは、押出ラミネート加工時の加工安定性が悪化する懸念が生じるので、好ましくない。
【0049】
また、上記低密度ポリエチレン樹脂(B12)の密度については、(b4)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した密度が0.910〜0.940g/cm、好ましくは密度0.912〜0.937g/cm、より好ましくは0.915〜0.935g/cmの範囲である。密度が0.910g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪くなり、積層体のハンドリングが悪くなる懸念が生じるので、好ましくない。また、密度が0.940g/cmを超えるものは、工業的に製造することが難しいものとなる。
【0050】
さらに、低密度ポリエチレン樹脂(B12)のメモリーエフェクトは、(b5)JIS K7210で規定されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上である。メモリーエフェクトが1.5未満では、後述のポリエチレン系樹脂材料(X)を調整する際の調製範囲が限定され、押出ラミネートなど加工時にネックインの過多の原因となり、加工性の不安定要因となるばかりでなく、発泡倍率の向上や、均一な発泡セルが得られなくなる懸念が生じるので、好ましくない。
【0051】
また、上記低密度ポリエチレン樹脂(B1)および低密度ポリエチレン組成物においても、さらにMFR(c)とメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(2)を満足し、好ましくは式(2−1)、より好ましくは式(2−2)を満足することが望ましい。
−0.467×Ln(MFR(c))+2.75 ≦ ME −−−式(2)
(式中Lnは自然対数である)
−0.467×Ln(MFR(c))+2.77 ≦ ME −−−式(2−1)
−0.467×Ln(MFR(c))+2.79 ≦ ME −−−式(2−2)
上記メモリーエフェクト(ME)が、−0.467×Ln(MFR)+2.75未満であると、発泡セルの高さが高くならず、押出ラミネートなど加工時のネックインが大きくなり、加工性も不安定となる虞が生じる。
【0052】
また、本発明の低密度ポリエチレン樹脂組成物の低密度ポリエチレン樹脂(B11)のMFR(b)と低密度ポリエチレン樹脂(B12)のMFR(c)との関係が、下記式(3)、好ましくは式(3−1)を満足することが望ましい。
MFR(b)/MFR(c)>1 −−−−−(3)
MFR(b)/MFR(c)>2 −−−−−(3−1)
【0053】
上記の式(3)を満足することにより、ラミネート成形時の成形性がより円滑となりネックインによるロスも大幅に改良される。また、発泡加工紙や断熱容器を製造する際の発泡性が良好となる。
【0054】
上記高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B11)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B12)の配合割合は、樹脂(B11)5〜95重量%と、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B12)95〜5重量%、好ましくは樹脂(B11)10〜90重量%と樹脂(B12)90〜10重量%、より好ましくは樹脂(B11)15〜85重量%と樹脂(B12)85〜15重量%の範囲である。
ただし、上記低密度ポリエチレン組成物は、上記配合量により高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)の前記物性(b1)、(b2)を満足することが肝要である。
【0055】
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、(a1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が、1〜50g/10min、(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.880〜0.935g/cmを有するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)、及び高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)からなり、(A)の配合比率が50重量%を超え90重量%以下、(B)の配合比率が10重量%以上50重量%未満からなり、かつ下記(x1)〜(x5)の特性を有するものである。
(x1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10min、
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が0.880g/cm以上、
(x3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)の溶出温度80℃以上の溶出成分量が10重量%以下、
(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)の溶出温度の最大ピーク温度が70℃以下、
(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(1)を満たす。
−0.467×Ln(MFR) +2.75 ≦ ME (式1)
(式中、Lnは自然対数である。)
【0056】
(x1)メルトフローレート(MFR)
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)のMFRは、(x1)JIS K7210に準拠して測定され、1〜30g/10minであり、好ましくは1.2〜27g/10min、より好ましくは1.5〜25g/10minである。MFRが1g/10分未満では、押出負荷が高く、高速加工性が悪化する。一方、MFRが30g/10分を超えるものは、押出ラミネート成形加工時の加工安定性が悪化し、好ましくない。
本発明のMFRは、特に断りがない限りJIS−K7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0057】
(x2)密度
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料の密度は、(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠した測定され、0.880g/cm以上であり、好ましくは0.890〜0.935g/cm、より好ましくは0.900〜0.930g/cmの範囲で選択される。密度が0.880g/cm未満では、ラミネート成形時のすべりが悪くなり、積層体のハンドリングが悪くなるので、好ましくない。また、密度が0.935g/cmを超えるものは、押出ラミネート成形加工時の加工安定性が悪化する虞が生じる。
【0058】
(x3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)溶出量
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料のクロス分別クロマトグラフ(CFC)は、後述の試験法で測定され、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
【0059】
上記(x3)CFCの測定による溶出温度80℃以上の溶出成分量は、10重量%以下である。CFCの溶出温度80℃以上の溶出成分量が10重量%を超える場合には、低温ヒートシール性が改善されず、かつ低温での発泡セル高さ、均一性が得られない虞が生じる。
【0060】
(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)の溶出温度の最大ピーク温度
また、本発明では、(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)の溶出温度の最大ピーク温度が70℃以下であることが肝要である。該CFCの溶出温度の最大ピーク温度が70℃を超える場合においては、低温ヒートシール性が改善されず、かつ低温での接着強度や目的とする発泡セル高さ、均一性が得られない虞が生じる。
上記溶出成分量や最大ピーク温度は、主にエチレン−α−オレフィン共重合体の密度、重合時のコモノマーの分布等によって調整することができ、これらの制御方法は一般的なもので周知である。
【0061】
(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)の関係
本発明では、(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(1)満たすことが肝要であり、好ましくは、式(1−1)、より好ましくは式(1−2)を満足することが望ましい。
−0.467×Ln(MFR) +2.75 ≦ ME −−−−(1)
(式中、Lnは自然対数である。)
好ましくは、
−0.467×Ln(MFR) +2.77 ≦ ME −−−−(1−1)
より好ましくは、
−0.467×Ln(MFR) +2.79 ≦ ME −−−−(1−2)
上記メモリーエフェクト(ME)が、−0.467×Ln(MFR) +2.75未満であると、発泡セルの高さが高くならず、押出ラミネートなど加工時のネックインが大きくなり、加工性も不安定となるので好ましくない。
【0062】
本発明においてメモリーエフェクト(ME)は、特に断りがない限りJIS K7210で使用されるメルトインデクサー(三鈴エリー(株)製半自動ME計)を使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、以下のようにして測定される。
装置に2.095mmΦのMFR測定用ノズルをセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS−3033)を用いて測定する。測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD0(2.095mm)として次式によりMEが求められる。
ME=D/D0
【0063】
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、高圧ラジカル法ポリエチレン系樹脂(B)との配合割合は、(A)90〜50重量%と(B)10〜50重量%であり、好ましくは(A)85〜55重量%/(B)15〜45重量%、より好ましくは(A)80〜60重量%/(B)20〜40重量%の範囲である。
該樹脂(A)が90重量%を超え、樹脂(B)が10重量%未満、または樹脂(A)が50重量%未満、樹脂(B)50重量%を超える場合は、発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)の諸物性が調整できない等の不都合が生じ、ひいては、押出ラミネート加工時のネックインが大きく、加工時の安定性が悪くなり、低温発泡等の目的が達成されない不都合が生じるため好ましくない。
【0064】
発泡性積層体用ポリエチレン樹脂材料には、本発明の目的を損ねない範囲で、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、金属石鹸等の中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、分散剤、顔料、染料等の着色剤、防曇剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤などの添加剤を配合してもよい。また、本発明の目的を損ねない範囲で、直鎖状低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のポリオレフィン系樹脂等を配合しても構わない。
【0065】
2 [発泡性積層体]
本発明の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)は、特にラミネートによる積層体を製造する際のラミネート性能(高速成形加性、ドローダウン性、低ネックイン等)に優れるばかりでなく、紙カップ等の断熱性材料を製造する時の発泡特性にも優れている。また、紙を主体とする基材を使用した発泡加工紙、断熱容器等を製造する際に、特異な効果を発揮するものである。
【0066】
本発明の積層体は、発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)と紙を主体とする基材(I)から得られ、紙を主体とした基材の一方の面に、発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)を用いて形成されたポリエチレン系樹脂層(II)を設けている。一般の加工紙として使用でき、しかも該積層体を加熱することにより、主に紙を主体とする基材に包含する水分を蒸発させて、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させることができるもの(以下発泡性樹脂層(II)とも称す)である。
【0067】
本明細書中において発泡性とは、加熱により発泡する性質を指す。発泡性がよいとは、主に高い発泡倍率を得ることができる状態を指し、紙基材が包含する主に水分が加熱されることよって発生する水蒸気で、積層体の厚さ方向に発泡セルが生長する際の発泡セルの高さが尺度になる。また、発泡セル高さの均一性も尺度に取り入れられる。
【0068】
(1)紙を主体とする基材(I)
本発明において、紙を主体とする基材(I)は、基材に含まれた水分等の水蒸気、揮発ガス等の気体によって、表面のポリエチレン樹脂層を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。紙を主体とする基材(I)とは、(i)紙、あるいは(ii)予め紙に加熱により揮発性ガスを発生する物質をコーティングした基材、ラミネート成形過程で紙とポリエチレン樹脂層(I)間に加熱により、揮発性ガスを発生する物質をコーティングしたもの、(iii)紙を主体とする基材中へ、加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合した基材を意味する。
【0069】
本発明においては、主に紙に含まれる水分が加熱によって発生される水蒸気の作用によって、基材表面のポリエチレン樹脂層(II)を発泡させるものであるが、加熱分解によって発生する揮発ガスによって、基材表面のポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させることができるものでも良く、特に限定されるものではない。
【0070】
上記(i)紙としては、上質紙、クラフト紙、アート紙、カップ原紙、再生紙、合成紙、樹脂とゼオライト、炭酸カルシウム等の無機物含有するシート等が挙げられる。紙の坪量は、100〜400g/m、特に150〜350g/mが好ましい。また、紙の含水率は、3〜15%、好ましくは4〜13%、より好ましくは4〜12%程度のものが例示される。
【0071】
また、(ii)熱により揮発性ガスを発生する物質をコーティングした基材としては、紙に、溶剤系インキや水溶性のインキ、塗料、接着剤をコーティングした基材等が挙げられ、例えば、特開2000−238225号公報等にみられるように、基材とポリエチレン樹脂層(I)間に、発泡性物質を添加した接着剤層を設け、加熱によって発生する発泡性物質から発生する揮発性ガスによって、基材表面のポリエチレン系樹脂層(II)の発泡を促進させることが可能である。
【0072】
また、(iii)加熱により揮発性ガスを発生する物質を配合した基材に使用される揮発性ガスを発生する物質としては、無機または有機の発泡剤、含水ポリマー、発泡剤内包のマイクロカプセル等が挙げられ、例えば、特開2002−145239号公報等にみられるように、抄紙工程において熱発泡性の発泡剤を添加して抄紙した紙、あるいは紙に発泡剤を内包するマイクロカプセル、含水させた吸水性ポリマー等を配合した基材等などが挙げられる。
さらに、紙を主体とする基材には、パルプ紙や合成紙等の紙にインクなどで絵や文字、模様などを印刷することもできる。
【0073】
(2)ポリエチレン系樹脂層(II)
本発明に係るポリエチレン系樹脂層(II)は、紙を主体とする基材の少なくとも片面に、通例のラミネート方法で、ポリエチレン系樹脂材料(X)を積層して形成し、紙を主体とする基材に包含される主に水分を、加熱によって蒸発、発泡させるものであって、発泡倍率が高く、均一な発泡セルを形成させるためには、発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)の融点が80〜120℃の範囲、好ましくは90〜110℃程度の融点範囲内で選択することにより達成することができる。
【0074】
上記発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料(X)で形成されるポリエチレン系樹脂層(II)の厚みは、特に限定されないが、20〜100μmであり、発泡層厚みを高くするという点で、30〜100μmが好ましい。ポリエチレン系樹脂層(II)の厚みが、20μm未満では発泡時に破裂する惧れがあり、100μmを超えると発泡セルの高さを十分に高くすることができない虞が生じる。
また、本発明に用いるポリエチレン系樹脂層(II)には、必要に応じて印刷等を施しても良い。印刷は、部分的に着色インキで印刷しても、全面的に印刷してもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0075】
(3)熱可塑性樹脂層(III)
本発明の発泡性積層体に用いる熱可塑性樹脂層(III)は、基材から放出される気体を保持する役割を有するものである。
ここで基材から放出される気体等を保持するとは、基材から放出される水蒸気、揮発性ガス等の気体をポリエチレン系樹脂層(II)側に拡散させ、発泡性ポリエチレン系樹脂層(II)を優先的に発泡させるように、水蒸気や揮発性ガス等の気体をバリアすることを指す。
熱可塑性樹脂層(III)は、熱可塑性樹脂(D)で構成され、上記ポリエチレン系樹脂層(II)を形成するポリエチレン樹脂よりも融点が高いか、もしくは融解しない樹脂であればよく、特に限定はされない。ただし、ポリエチレン系樹脂層(II)を優先的に発泡させ、均一にかつ高いセル厚を容易に得るためには、加熱によって基材から放出される水蒸気等によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)と、基材から放出される水蒸気等を保持する熱可塑性樹脂層(III)との融点差が、次の式(4)を満足することが望ましい。
Tm(D)−Tm(X) ≧ 10 −−−−−式(4)
(ただし、Tm(X):層(II)のポリエチレン系樹脂の融点(℃)、Tm(D):層(III)の熱可塑性樹脂の融点(℃)である)
【0076】
本発明において使用される熱可塑性樹脂(D)は、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチル−ペンテンー1樹脂等の炭素数2〜10のα−オレフィン単独重合体、またはそれらの相互共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、あるいはこれらとの混合物等が挙げられる。これらの中でも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0077】
熱可塑性樹脂(D)として、ポリオレフィン系樹脂を採用する場合、MFRが0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.3〜80g/10分、より好ましくは0.5〜60g/10分、密度が0.920〜0.970g/cm、好ましくは0.925〜0.960g/cm、より好ましくは、0.930〜0.950g/cm程度のものが好ましい。
また、上記ポリオレフィン樹脂層(II)を考慮すると、融点Tm(III)は、100℃以上、好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜140℃、さらに好ましくは115〜140℃の範囲で選択されることが望ましい。ここで、融点Tm(III)は、DSCによって測定されるセカンドスキャンの融点で最高ピーク高さの融点である。
融点が100℃より低い場合は、耐熱性が不足し熱可塑性樹脂層が発泡してしまう惧れがあり、また140℃を超えると、低温ヒートシール性が不良となる惧れがある。
【0078】
また、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂等のように紙基材と接着性の乏しい樹脂を使用する場合においては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−不飽和カルボン酸との共重合体等の通例の接着性樹脂等を介して積層体としても良い。
【0079】
熱可塑性樹脂層(III)の厚みは、特に限定されないが、発泡層厚みを高くすることができるという点で、通例では10〜300μm、特に10〜200μm、より好ましくは10〜150μmの範囲で選択されることが好ましい。熱可塑性樹脂層(III)の厚みが、10μm未満では、基材から放出される蒸気等を十分に保持することができず、発泡層厚みを十分に高くすることができない虞が生じる。また300μmを超える場合には、それ以上の効果の向上が期待されず、経済的デメリットが大きくなる虞が生じる。
【0080】
(4)発泡性積層体の層構成
本発明の発泡性積層体においては、本発明の目的を損なわない範囲において、該層間、あるいはその内層及び/又は外層等に他の層を設けてもよい。例えば、外側から、{ポリエチレンフィルム層/発泡性樹脂層(II)/基材(I)/熱可塑性樹脂層(III)}、{ポリエチレンフィルム層/バリア層/接着層/発泡性樹脂層(II)/基材(I)/熱可塑性樹脂層(III)}、{発泡性樹脂層(II)/基材(I)/バリア層/熱可塑性樹脂層(III)}、{発泡性樹脂層(II)/基材(I)/熱可塑性樹脂層(III)/バリア層/熱可塑性樹脂層(III)}のように基材(I)と発泡性樹脂層(II)または、さらに熱可塑性樹脂層(III)を設けた積層体の内層及び/又は外層、あるいは該層間に一層または複数層のフィルム層、装飾層、補強層、接着剤層、バリア層等を設けてもよい。
また、必要に応じて印刷等を施しても良い。印刷は、部分的または全面的に着色インキで印刷してもよい。また、必要に応じて発泡性インキを使用して、部分的または全面的に発泡部位を設けてもよい。印刷の位置、印刷面積の大小、印刷の方法、使用されるインキなどは、従来公知の技術を適宜選択して用いることができる。
【0081】
上記装飾層としては、印刷された紙、フィルム、不織布、織布等が挙げられる。
また補強層とは、基材に積層されたポリオレフィン系樹脂層(A)が加熱によって発泡されるときに発泡層が破裂しないように、ポリオレフィン系樹脂層(A)の外層にポリエチレン樹脂フィルムなどを積層して発泡層の過度の発泡による破裂防止や、不ぞろいの発泡セルを均一に矯正する、あるいはフィルム、不織布等を積層して、機械的強度を持たせるなどの役割を果たすものである。樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等でよい。
また、接着剤層を形成する樹脂としては、エチレンと不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸等をグラフトした変性ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等ホットメルト、通常の接着剤等が挙げられる。
またバリア層を形成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着等の金属蒸着フィルム、金属箔等が挙げられる。
【0082】
本発明の発泡性積層体を製造するには、紙を主体とする基材の両面へポリオレフィン系樹脂層(II)、熱可塑性樹脂層(III)を積層できる方法であれば採用でき、特に制約はないが、溶融樹脂をダイレクトに積層する押出ラミネート加工、共押出ラミネート法、事前にフィルムとしたものを積層するサンドラミネート加工、ドライラミネート加工する方法等が挙げられる。
【0083】
押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を、基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、ドライラミネート加工は、紙と積層するフィルムを貼合する接着剤および/または接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤および/または接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる紙を主体とする基材の熱可塑性樹脂層(B)が形成される側で、基材と熱可塑性樹脂層(B)との間に、バリア性を向上させるため、アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルム等を積層させることが容易である。
【0084】
3 [発泡加工紙]
本発明の発泡加工紙は、上記の発泡性積層体を加熱し、発泡性樹脂層(A)を発泡させて得られるものである。発泡加工紙の発泡セルの高さは、300μm以上、好ましくは350μm以上とすることが望ましい。発泡セルの高さが300μm未満であると、十分な断熱性が得られない虞が生じる。
【0085】
加熱方法は、特に制限されないが、熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等が挙げられる。加熱温度には特に制約はないが、紙中の水分を蒸発させ、発泡性樹脂が溶融する温度でなければならず、例えば、100〜200℃、好ましくは100〜160℃、より好ましくは100〜140℃が好ましい。加熱時間は10秒間〜5分間が好ましい。加熱温度が100℃未満、加熱時間が10秒未満であると、十分な発泡セル高さが得られない場合がある。加熱温度が200℃を超え、あるいは加熱時間が5分間を超えるような加熱過多の場合には、発泡セルのへたりや均一性が損なわれる虞が生じる。
上記発泡加工紙は、下記のカップ等断熱容器用の断熱・保温材料としてはもちろんのこと、緩衝材料、遮音材料、発泡紙等としても用いられ、スリーブ材、紙皿、トレー、滑り止め材、果物の包装材、発泡紙等の農業用、産業用、生活用資材等として活用される。
【0086】
4 [断熱容器]
本発明の断熱容器は、上記発泡性積層体を用いて容器を形成した後、該容器を加熱し、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて得られたものである。
断熱容器でも、上記発泡加工紙と同様に、発泡セルの高さは、300μm以上、好ましくは350μm以上とすることが望ましい。発泡セルの高さが300μm未満であると、十分な断熱性が得られない虞が生じる。
これにより得られた断熱容器は、トレー及びカップなどとして使用される。用途としては、ホット飲料容器、カップスープ容器、カップ味噌汁容器、カップ麺容器、納豆容器、弁当容器、コーヒーカップ容器、電子レンジ対応容器等が例示できる。
【0087】
5 [断熱容器の製造方法]
上記断熱容器、特にカップの製造方法は、少なくとも、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって基材から放出される水蒸気等によって発泡されるポリエチレン系樹脂材料(X)を用いて、厚さ20〜100μmのポリエチレン系樹脂層(II)を形成し、基材の他面に、熱可塑性樹脂(D)を用いて、基材から放出される水蒸気等を保持する、厚さ10〜300μmの熱可塑性樹脂層(III)が形成された発泡性積層体を形成し、ついで容器に成形後、加熱温度100〜200℃で加熱して、基材から放出される水蒸気等によってポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させる。
断熱容器の製造方法においても、上記発泡加工紙の製造方法と基本的には同様である。上記基材(I)にラミネートするには、通例のラミネート方法が適用される。押出ラミネートにおいては、ダイス直下の樹脂温度200〜350℃、好ましくは260〜350℃、より好ましくは270〜350℃の範囲で行われる。また、成形速度は、10〜400m/分、好ましくは10〜350m/分位で行われ、必要に応じて、基材とポリエチレン樹脂との接着性を向上させるためにコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、フレーム処理等を行っても良い。また、必要に応じて、アンカーコート剤を塗布しても良い。
このようにして製造された発泡積層体を、ロール巻き原反もしくは連続的に繰り出して、該発泡積層体から胴部材用ブランクと底板部材用ブランクを打ち抜きし、常用のカップ成型機で胴部材と底板部材を接合させてカップ状等に成型した後、回分式あるいは転送するベルトコンベヤーに輸送されて熱風、マイクロ波、高周波、赤外線、遠赤外線等が具備する加熱炉、オーブントンネル等で加熱発泡されて断熱性容器が成形される。
特に連続的に製造するためには、好ましくは、加熱によって基材から放出される水蒸気等によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)と、基材から放出される水蒸気等を保持する熱可塑性樹脂層(III)との融点差が、次の式(4)の関係を満足させるようにすることが望ましい。
Tm(D)−Tm(X) ≧ 10 −−−−−式(4)
(ただし、Tm(X):層(II)のポリエチレン系樹脂の融点Tm(℃)、Tm(D):基材中の蒸気等を保持する層(III)の熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)である)
これにより、押出ラミネート等の高速成形性もよく、連続的に、発泡倍率が高く、均一な発泡セルを有する発泡層を形成することが可能になり、外観性が良く、印刷性、生産性が向上する。また、加熱時間は10秒間〜5分間が好ましい。加熱温度が100℃未満、加熱時間が10秒未満であると、十分な発泡セル高さが得られない場合がある。また、加熱温度が200℃を超え、および/または加熱時間が5分間を超える場合には、生成した発泡セルが加熱過多になって発泡セルに、へたり等が生じ製品のばらつきの原因となる虞が生じる。
このように本発明の製造方法においては、特定のポリエチレン系樹脂材料(X)を用いることにより、押出ラミネート加工時の成形性と、ロスが少なく、かつ、発泡倍率が高く、均一な発泡セルが形成された発泡層となり、断熱性、外観の良好性等に優れた断熱性容器を容易に得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において製造されるポリエチレン系樹脂材料(X)、その物性、得られた発泡性積層体等の試験方法は、以下の通りである。
【0089】
1.試験方法
(1)MFR:JIS K7210に準拠(190℃、21.18N荷重)して測定した。
(2)密度:ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃、湿度50%の条件において16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、タテ×ヨコ2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃でJIS−K7112に準拠して測定した。
【0090】
(3)クロス分別クロマトグラフ(CFC):
ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
<測定条件>
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
HPLDPE:高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン
0,10,20,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,100,120,140
<データ解析>
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS K=1.38×10−4、α=0.7
PE K=3.92×10−4、α=0.733
PP K=1.03×10−4、α=0.78
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
【0091】
(4)メモリーエフェクト(ME):三鈴エリー(株)製半自動ME計を用いて測定した。JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件にて、次のように実施した。
装置に2.095mmΦのMFR測定用ノズルをセットし、樹脂を炉へ充填する。ピストンを乗せ、0.09g/分の定速押出で5分間保持し、その後3g/分の定速押出とし6分30秒までエアー抜きを行う。6分30秒経過後、3g/分を維持したままストランドをカットし、オリフィス下端からのストランド長さが20mmとなった時点でのストランドの径を、オリフィス下端から15mmの位置でKEYENCE製レーザー寸法測定器(LS−3033)を用いて測定する。測定したストランドの直径をD、ダイスのオリフィス径をD(2.095mm)として次式によりMEを求めた。
ME=D/D
【0092】
(5)融点:ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いてサンプルとした。測定は、下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、第二昇温の最高ピーク高さの温度を融点とした。
装置:セイコーインスツルメンツ製DSC220
昇降温条件 :第一昇温 30℃から200℃までを40℃/分
降温 200℃から20℃までを10℃/分
第二昇温 20℃から200℃までを10℃/分
温度保持時間:第一昇温後 5分間、降温後 5分
サンプル量:5mg
リファレンス:アルミニウム
【0093】
(6)加工性:ポリエチレン樹脂(X)を押出ラミネートする際、加工が安定的に行えるかを目視にて評価した。
○:溶融膜が安定して、加工できる。
×:溶融膜が不安定で、均一な厚みのサンプル採取が不能。
【0094】
(7)低温ヒートシール性
発泡積層体のポリオレフィン系樹脂材料層(I)面と熱可塑性樹脂層(D)面を合わせて、ヒートシーラー(上部のみヒートシールバーで、下部は30℃設定のラバー)にて85℃から5℃刻みで温度を上昇させ、各温度において2kg/cm圧力で2秒間圧力をかけ、ヒートシールを実施した。
得られたヒートシール積層体を引張試験機にてT字に500mm/minの速度で引張り、ヒートシール強度を測定した。得られたヒートシール強度カーブから、ヒートシール強度が2N/15mmとなる温度を求めた。
【0095】
(8)発泡性:発泡積層体の断面を顕微鏡で50倍に拡大観察し、発泡層の厚さを測定し、発泡セル高さとした。
【0096】
(9)発泡セルの均一性:発泡積層体表面を目視にて観察し、部分的な過剰発泡の有無と均一性を評価した。
○:良好、△:セル高さが不均一、×:セルの破裂が発生。
【0097】
[原料樹脂]
1.エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の製造
(エチレン−α−オレフィン共重合体(A1)の製造)
[製造例1]
錯体であるエチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストウファー製メチルアルミノキサンを上記錯体に対して1000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。この触媒溶液を内容積1.5リットルの攪拌式オートクレーブ型連続反応器内に入れ、更にこの反応器内にエチレンとプロピレンと1−ヘキセンとの混合物をエチレン/プロピレン/1−ヘキセン=70/21/9(重量%)となるように供給し、反応器内の圧力を800kg/cmに保ち、220℃で反応を行った。反応終了後、MFRが30g/10分、密度が0.907g/cm、Mw/Mnが2.1、プロピレンのモル分率が5.3モル%、1−ヘキセンのモル分率が1.9モル%、プロピレンのモル分率(Mp)と1−ヘキセンのモル分率(Mh)との比Mp/Mhが2.8であるエチレン・プロピレン・1−ヘキセン三元共重合体(A1)を得た。得られた重合体の性状を表1に示した。
【0098】
(エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)の製造)
[製造例2]
製造例1において、プロピレンを供給せずエチレン/1−ヘキセンの供給量比を変化させたこと、及び反応温度、反応圧力を調整したこと以外は、製造例1と同様な条件で重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(A2)を得た。得られた重合体の性状を表1に示した。
【0099】
(エチレン−α−オレフィン共重合体(A3)の製造)
[製造例3]
製造例1において、プロピレンを供給せずエチレン/1−ヘキセンの供給量比を変化させたこと、及び反応温度、反応圧力を調整したこと以外は製造例1と同様な条件で重合を行い、エチレン・1−ヘキセン共重合体(A3)を得た。得られた重合体の性状を表1に示した。
【0100】
(メタロセン触媒によるエチレン−α−オレフィン共重合体(A4))
MFR 11g/10分、密度 0.921g/cm、ME 1.2 Tm122℃
【0101】
【表1】

【0102】
2.高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)
B1:MFR8g/10分、密度 0.918g/cm、ME 2.1 Tm106℃
【0103】
3.熱可塑性樹脂(D)
中密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、商品名:HC170)
MFR10g/10分、密度0.936g/cm、Tm(D)129℃
【0104】
(実施例1)
坪量157g/m、含水率7%の紙基材の片面にコロナ処理(30W・min/m)を施し、40Φ押出機、ダイス有効幅360mmの押出ラミネーターを用い、熱可塑性樹脂層(D)を構成する材料として、上記中密度ポリエチレン樹脂を樹脂温度320℃、加工速度20m/min、20μm厚にて押出ラミネート加工し、熱可塑性樹脂層(III)と紙基材との積層体を得た。
次に、上記積層体の熱可塑性樹脂層(III)と反対面の紙基材面にコロナ処理(30W・min/m)を施し、40Φ押出機、ダイス有効幅360mmの押出ラミネーターを用い樹脂温度320℃、加工速度20m/min、40μm厚にてポリオレフィン系樹脂材料層(II)を構成する材料として、上記で得られたポリエチレン樹脂材料(X1)を押出ラミネート加工し、ポリオレフィン系樹脂材料層(II)と紙基材と熱可塑性樹脂層(III)からなる発泡性積層体を得た。
得られた発泡性積層体を113℃のオーブン中に2分間放置後、オーブンから取り出し、常温にて放冷して発泡加工紙を得た。結果を表1に示す。この発泡加工紙の発泡セル高さは380μmであった。その結果を表2に示した。
【0105】
(実施例2〜3)
上記実施例1のポリエチレン樹脂材料(X1)に代えて、ポリエチレン樹脂材料(X2)、または(X3)を用いた以外は実施例1と同様に行い、発泡性積層体、発泡加工紙を得た。その結果を表2に示した。
【0106】
(比較例1)
実施例1のポリエチレン樹脂材料(X1)に代えて、エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)を単独で使用した以外は実施例1と同様にして行った。その結果、エチレン−α−オレフィン共重合体(A2)は、本発明の式(1)を充足せず、成形性が悪く、ラミネートができず、サンプルを作成できなかった。評価結果を表2に示した。
【0107】
(比較例2)
実施例1のポリエチレン樹脂材料(X1)に代えて、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂(B1)を単独で使用した以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、低温ヒートシール性、発泡セルが十分でなかった。評価結果を表2に示した。
【0108】
(比較例3)
実施例1のポリエチレン樹脂材料(X1)に代えて、ポリエチレン樹脂材料(X4)を使用した以外は実施例1と同様にして行った。その結果、低温ヒートシール性が悪く、発泡セルも十分でなかった。評価結果を表2に示した。
【0109】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、紙を主体とする基材(I)と、その紙を主体とする基材の一方の面に、加熱によって基材から放出される気体によって発泡されるポリエチレン系樹脂層(II)を有する発泡性積層体用のポリエチレン系樹脂材料(X)であって、
下記(a1)、(a2)の特性を有するエチレン−α−オレフィン共重合体(A)50重量%を超え90重量%以下と、高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)の10重量%以上50重量%未満を配合して得られ、かつ下記(x1)〜(x5)の特性を有することを特徴とする発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料。
(a1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10min、
(a2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.880〜0.935g/cmである。
(x1)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10min、
(x2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が0.880g/cm以上、
(x3)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度80℃以上の溶出成分量が10重量%以下、
(x4)クロス分別クロマトグラフ(CFC)による溶出温度の最大ピーク温度が70℃以下であり、
(x5)MFRとメモリーエフェクト(ME)とが下記の式(1)を満たす。
−0.467×Ln(MFR) +2.75 ≦ ME ・・・式(1)
(式中、Lnは自然対数である。)
【請求項2】
前記エチレン−αオレフィン共重合体(A)が、シングルサイト系触媒を用いて製造された樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料。
【請求項3】
前記高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)が、下記(b1)〜(b2)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性積層体用ポリエチレン系樹脂材料。
(b1)JIS K7210に準拠して測定したMFRが1〜30g/10minであり、
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.940g/cmである。
【請求項4】
前記高圧ラジカル重合法ポリエチレン樹脂(B)が、下記(b1)〜(b2)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B11)と、下記(b3)〜(b5)の性状を満足する低密度ポリエチレン樹脂(B12)の少なくとも2種以上を混合した高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料。
(b1)JIS K7210に準拠して測定したMFRが、1〜30g/10min、
(b2)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.935/cm
(b3)JIS K7210に準拠して測定したMFRが、0.1〜100g/10min、
(b4)試験温度23℃、JIS K7112に準拠して測定した密度が、0.910〜0.940g/cmであり、
(b5)JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分の条件で測定したメモリーエフェクト(ME)が1.5以上である。
【請求項5】
紙を主体とする基材(I)の一方の面に、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂材料(X)からなるポリエチレン系樹脂層(II)を形成してなる発泡性積層体。
【請求項6】
さらに、紙を主体とする基材(I)のもう一方の面に、基材(I)から放出される気体を保持する熱可塑性樹脂(D)からなる熱可塑性樹脂層(III)を形成したことを特徴とする請求項5に記載の発泡性積層体。
【請求項7】
請求項5または6に記載の発泡性積層体を加熱し、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて得られる発泡加工紙。
【請求項8】
ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡して形成した発泡セルの高さが、300μm以上であることを特徴とする請求項7に記載の発泡加工紙。
【請求項9】
請求項5または6に記載の発泡性積層体を用いて容器を形成した後、該容器を加熱して、ポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させて得られる断熱容器。
【請求項10】
断熱容器が、カップ状容器であることを特徴する請求項9に記載の断熱容器。
【請求項11】
請求項1〜4に記載の発泡性積層用ポリエチレン系樹脂材料を用いて、紙を主体とする基材(I)の一方の面にポリエチレン系樹脂層(II)を形成し、必要により紙を主体とする基材(I)のもう一方の面に、基材(I)から放出される気体を保持する熱可塑性樹脂(D)からなる熱可塑性樹脂層(III)を形成して、発泡性積層体を得た後、これを容器に成形し、引き続き、温度100〜200℃に加熱して、紙を主体とする基材(I)から放出される気体によってポリエチレン系樹脂層(II)を発泡させることを特徴とする断熱容器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−214720(P2010−214720A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63100(P2009−63100)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】