説明

発泡成形品

【課題】本発明の目的とするところは、発泡成形品を形成する表面のうちパーティングラインを含む表面に形成された凹部又は孔部の周囲の一部と、そのパーティングラインとの間に欠肉部が存在しない発泡成形品を提供することにある
【解決手段】本発明の発泡成形品は、発泡成形型の下型にポリウレタン原料を注入して発泡成形した発泡成形品であり、その表面を表皮材で覆ってパッドとして用いる発泡成形品に係る。前記発泡成形品を形成する表面のうちパーティングラインL1を含む頂面11に形成された孔部14の周囲の一部と、前記パーティングラインL1とを連結する溝部15を形成すると共に、その溝部15内の底面15aに前記パーティングラインL1に連結する突条部16を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン原料を発泡成形型に注入して発泡成形された発泡成形品において、下型を流れ広がるポリウレタン原料の合流部においてエアーポケット等の欠肉部が形成されないようにした発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のシートクッション、シートバック、アームレスト、ヘッドレスト等は、所定形状に成形されたポリウレタン発泡体に天然の皮革材やファブリック材等よりなる表皮材で覆って製造されたものが大半である。
【0003】
そのポリウレタン発泡体は、上型及び下型よりなる発泡成形型のキャビティにおいてポリウレタン原料の発泡により成形される。前記下型の成形面に注入されたポリウレタン原料は、注入個所から周囲に広がると共に粘度が高まり、下型の底部の全面を覆う頃には、発泡反応により膨張してキャビティ全体を満たすようになる。そのように、キャビティ面に沿ってポリウレタン原料が広がっていくとき、キャビティ面にポリウレタン原料の流れの障害となる凸部があれば、ポリウレタン原料はその凸部を回り込み、回りこんだ先で合流して更にキャビティ面を満たしていく。凸部は発泡成形品に凹部を形成するためのものである。
【0004】
また、キャビティ面を広がるポリウレタン原料は、その先端において空気を巻き込むことがあり、また、その表面からガスを発散させることがある。特に、前述の障害物を回り込んだ合流部においては、キャビティ内の空気及びガス(以下、まとめてガスという)を巻き込むことが多い。そのガスによりエアーポケットと呼ばれる比較的大きな泡状の空洞や、表面が陥没した欠肉部ができることがある。そのため、直線的に配置すべきパーティングラインの一部を変化させて、なるべくパーティングラインをその障害物の近くに配置してガスが抜けやすいようにすることも行われている。一般的に、パーティングラインの一部を変化させることは、成形型の型合わせを難しくする。
【0005】
そのようなエアーポケットの発生を防止するために、特許文献1に開示されている乗り物シートに用いるパッドにおいては、凹部内にバイパスを設けることにより、発泡性樹脂液の合流部にエアーポケットが発生しないようにしている。
【0006】
キャビティ面に障害物が突き出てはいないものの、特許文献2に開示されている成形装置においては、ポリウレタン原料が発泡上昇して行き止まりになる下向きのキャビティ面にパーティング面のガス抜き孔と連通するガス抜き溝を設け、そのガス抜き溝からガス抜き孔を通ってガスが逃がされることにより、ボイドの発生を防止している。
【0007】
また、特許文献3には、発泡成形型のパーティング面において発生するバリについて対処した発泡成形製品が開示されている。その発泡成形製品においては、成形品本体が表皮材で被覆される際、表皮材により押し付けられたバリが収容され得る凹所を設けることにより、製品外観にバリの影響がないようにされている。
【特許文献1】特開2002−336089号公報([要約]を参照)
【特許文献2】特開2007−062106号公報([要約][図7]を参照)
【特許文献3】実開平06−042127号公報([要約]を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1における発泡成形品は、その成形後の後加工においてバイパスが除去された後、表皮で覆われてパッドとして完成される。しかし、パッドの意匠面に直接関わらない凹所(明細書における欠肉部分)の内部におけるバイパス除去加工であるから、加工面に加工跡として多少の凹凸が残ることが許されるにしても、加工を行わねばならないこと自体が工数の増大に繋がるものである。
【0009】
同様に、特許文献2における成形装置により発泡成形された成形品においても、ガス抜き孔により形成されるリボン状の突片は除去される必要がある。また、成形型のガス抜き溝により成形された三角リブ状の成形部分が除去されずに残されているが、この三角リブ状の成形部分が残されている部分は、成形品がパッドとして用いられるとき、意匠面の形成に殆ど関わらない部分であり、だからこそ残されているといえる。
【0010】
特許文献3におけるバリは、幅広であっても薄いものであるため、表皮材の張力により容易に倒され変形して、成形品表面の凹所に収容されるので、そのバリの存在を表皮材の表面側から視認できない。しかし、この技術は、発泡成形型の合着面(パーティング面)におけるガス抜きに関わるものであり、パーティング面よりも内方に位置する部分に現れる欠肉部等の原因となるガスのガス抜きに関わるものではない。従って、特許文献3においては、ポリウレタン原料の合流部における欠肉部の形成を防止することはできない。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、発泡成形品を形成する表面の凹部又は孔部の周囲と、パーティングラインとの間に欠肉部が存在しない発泡成形品を提供することにある。更に、その目的とするところは、欠肉部の防止手段により形成された部分の後加工を必要としないものである発泡成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために請求項1に記載の発泡成形品の発明は、発泡成形型の下型にポリウレタン原料を注入することにより、発泡成形型によって成形された発泡成形品であって、その表面を表皮材で覆ってパッドとして用いる発泡成形品において、表面に形成された凹部又は孔部の周囲と、パーティングラインとを連結する溝部が形成されると共に、その溝部内の底面に前記パーティングラインに連結する突条部が形成されたことを特徴とするものである。ここに用いられている「表面」は、平面であるか曲面であるかを問わず、発泡成形品の外形を形作る面を指し、例えば、正面、裏面、側面、頂面、底面等である。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、その発泡成形品を成形する成形型において、発泡成形品に凹部を形成するため、キャビティを形成する成形面に凸部が形成されることになる。その成形面が下型において立ち壁状に形成されている側壁の場合、下型に注入されたポリウレタン原料が発泡膨張して上昇するとき、発泡しつつ流れる原料の成形面に沿う流れは凸部が障害となるため、凸部を迂回することになる。そして、迂回先で合流した原料は、空気やガスを巻き込んで欠肉部を作ることになるが、その合流域に発泡成形品の突条部を形成するための凹条部が成形面に形成されていれば、空気やガスは流れ広がる原料の先端に巻き込まれずに、その凹条部を通ってパーティング面の隙間に逃げることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡成形品において、前記凹部又は孔部の周囲と溝部及び突条部との間に隔壁を形成したことを特徴とするものである。請求項2に記載の発明によれば、凹部又は孔部と溝部とを直接連通させず、隔壁を介して連結するようにした場合、その隔壁を形成するために成形型に形成した空隙部により、ガス抜けが容易に行われるようになる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発泡成形品において、前記突条部は、その断面の形状が三角形又は台形であることを特徴とする。
求項3に記載の発明によれば、突条部の先端が発泡成形品の表面から突き出ていても、所定の張力をもって張り込まれる表皮材によって突条部は溝部内に押し込まれるので、表皮材の表面側から突条部の存在を視認できない。また、断面の形状が三角形又は台形の突条部を形成するために、成形型の成形面に断面の形状が三角形又は台形の凹条部を形成することは容易である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の発泡成形品において、前記突条部の高さは、前記溝部の深さ以下であることを特徴とするものである。請求項4に記載の発明によれば、突条部の先端が発泡成形品の表面から飛び出ることはないので、発泡成形品の表面を覆う表皮材が比較的薄いものであっても、表皮材の表面に凸部を形成することはない。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の発泡成形品において、前記孔部は、自動車のシートバックの頂面に形成されたヘッドレストステイ用の孔部であり、前記溝部及び突条部が、その孔部とその孔部の後方に位置するパーティングラインとを連結していることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、パーティングラインが孔部の直近に配置されていなくても、空気やガスが、成形面に形成された凹条部を通ってパーティング面に抜けることができるので、孔部の周囲に欠肉部が形成されない。そのため、パーティングラインに曲線部等を設けて孔部に近付けガス抜き効果をあげる必要がなく、パーティングラインの配置を直線的に設定できるので、発泡成形型の製造が容易となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の発泡成形品において、前記凹部は、自動車のシートバックの側面に形成された車室内で用いられる機能部材を取り付けるため又は収容するための凹部であり、前記溝部及び突条部が、その凹部とその凹部の後方に位置するパーティングラインとを連結していることを特徴とするものである。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、比較的大きな凹部とパーティングラインとを連結する溝部及び突条部を発泡成形品に形成した。そして、その発泡成形品を成形するため、発泡成形型の成形面に比較的大きな凸部とその凸部に連結した立壁部及び凹条部を形成した。その凹条部は、前記凸部周辺のガスが巻き込まれ易い部分に形成されている。すると、ガスはその凹条部を通ってパーティング面に逃げて発泡成形品に欠肉部を形成しない。そのため、乗員が着座するなどして表皮材に大きな張力が作用しても、表面材の一部が凹んで見えることもないので、シートバックとしての意匠が損なわれることがない。また、乗員が当該部分に触れても違和感を覚えない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発泡成形品に対して後加工をする必要がなく、発泡成形品の表面の凹部又は孔部の周囲と、パーティングラインとの間に欠肉部が存在しない発泡成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した発泡成形品の実施形態を図1〜3を用いて説明する。
図1に示す本実施形態の発泡成形品1であるシートバック2は、表皮材で覆われる前の状態である。このシートバック2は公知の形状をしており、略H字状のホグリング用溝13が正面10に配置されており、ホグリング用溝13は更に延長されて頂面11にも配置されている。頂面11にはヘッドレストステイ用の一対の孔部14が形成され、それぞれの孔部14に連結して溝部15及び突条部16が形成されている。
【0023】
また、シートバック2の側面12には、機能部材である可倒式アームレストの回動支持部を装置するため、又はシートベルトの受具を収容するため等の凹部17が形成され、その凹部17に連結して溝部18及び突条部19が形成されている。この凹部17は、シートバック2の左右のいずれか一方に形成されるのが一般的であり、シートバック2が車両の右側に配置される場合は、シートバック2の左側(図1においては右側)の側面12に形成される。
【0024】
図2を用いて、頂面11の孔部14に連結して形成された溝部15及び突条部16について詳細に説明する。なお、ここに示す溝部15及び突条部16は、理解しやすいように相対的に大きめにデフォルメして描かれている。本実施形態において孔部14は、頂面11に形成された台座部14aの中心部を貫通して形成されている。その孔部14と孔部14の後方に位置するパーティングラインL1とを連結するように、台座部14a及び頂面11に溝部15が形成されている。なお、ここでいう後方とは、発泡成形品1であるシートバック2を車両に設置した時、車両の後方を向く方向を指す。本実施形態では、溝部15の幅が孔部14の直径に略等しくなっているが、溝部15の幅は孔部14の直径以下の適宜寸法を選択しうる。また、溝部15はパーティングラインL1に一致する位置に形成された立壁15bにより端部を形成している。
【0025】
溝部15の底面15aの中央には断面形状が略台形の突条部16が、溝部15の深さと等しい高さに形成されている。この突条部16の高さは、必ずしも溝部15の深さ以下にする必要はないが、頂面11から飛び出す高さにするときは、突条部16の断面形状を底辺に比べ高さの高い台形にするか、三角形にする等して撓み易い形状にすることが望ましい。そうすることで、発泡成形品1が表皮材で覆われるとき、突条部16が表皮材の押圧力で容易に変形して溝部15内に収容されるので、表皮材の表面側に突条部16に起因する隆起等の変化が現れることを防止できる。
【0026】
更に、図3を用いて、凹部17に連結して形成された溝部18及び突条部19の詳細について説明する。なお、ここに示す溝部18及び突条部19は、理解しやすいように相対的に大きめにデフォルメして描かれている。凹部17のパーティングラインL2側の内壁17aの一部を切り欠くように溝部18が形成され、この溝部18は凹部17と凹部17の後方に位置するパーティングラインL2とを連結している。溝部18の底面18aの中央付近には断面形状が略台形の突条部19が形成されている。この突条部19の高さは溝部18の深さと同一にされている。溝部18を形成する斜面である側壁18cと底面18aとは曲面18dで連結されている。
【0027】
(成形型の構造)
図4を用いて、シートバック2を成形する成形型において、側面12の凹部17及び凹部17に連結する溝部18及び突条部19を成形する部分の構造を説明する。なお、シートバック2等の発泡成形品1を成形する成形型においては、一般的に発泡成形品1の比較的面積が広い面を下向きにし、その姿勢の形状に対応するキャビティを下型に形成する。また、その広い面に表裏がある場合は、意匠的に重要な面を下向きとする。従って、シートバック2を成形する下型の場合、図4に示すように、シートバック2の側面12を成形する成形面20は立壁状となる。また、シートバック2の頂面11の孔部14及び孔部14に連結する溝部15及び突条部16を成形する部分の下型の構造についても、後述する凹部17を形成するための凸部27を、孔部14を形成するための棒状体とに置き換えればよく、その説明を省くものとする。
【0028】
凹部17を形成するための凸部27が成形面20に形成され、その凸部27のパーティングラインL22に対向する側壁27aとパーティングラインL22との間には、成形面20から隆起する立壁部28が一対形成されている。立壁部28の一方の端部は側壁27aと一体になっており、他の端部はパーティング面21と同一面として形成され、図示しない上型のパーティング面と合着する面となる。
【0029】
一対の立壁部28の内壁と成形面20とにより断面形状が略逆台形の凹条部29が形成されている。また、その凹条部29とは反対側の側壁部28bは溝部18の側壁18cを形成するための斜面となっており、その側壁部28bと頂部28aとは曲面18dを形成する曲面で連結されている。このように側壁部28bが斜面であることと側壁部28bと頂部28aとを連結する部分が曲面であることにより、後述する発泡成形の際、発泡しつつ流れるポリウレタン原料の先端部が立壁部28を容易に乗り越える。
【0030】
(発泡成形)
図5を用いて、シートバック2を成形するときの、ポリウレタン原料の流れの状況を説明する。特に、図4に示した成形面20における凸部27、立壁部28及び凹条部29の周辺を中心に、ポリウレタン原料の流れの状況を説明する。なお、図4に示したパーティング面21に合着する上型については、図5において図示を省略している。
【0031】
図5(a)は、ポリウレタン原料の発泡膨張に伴い上昇する発泡体30の先端部31が凸部27の中ほどを覆い、間もなく上部側に位置する側壁27aに至る状況を示している。このとき、キャビティ内のガスは、前記先端部31により押されパーティング面21の隙間を通って外部へ放出されるのみで、先端部31に巻き込まれて欠肉部を形成することはない。
【0032】
図5(b)に示すように、発泡体30の先端部31が側壁27aの大部分を覆い、立壁部28及び凹条部29に迫る状況になれば、ガスは矢印で示すような流れとなり、一部のガスは凹条部29内を通ってパーティング面21の隙間に流れ出るようになる。
【0033】
図5(c)に示す段階では、発泡体30の先端部31は立壁部28及び凹条部29の略全体を覆うようになり、ガスは欠肉部を形成することなく凹条部29を伝ってパーティング面21の隙間に流れ出るようになる。
【0034】
従って、上記実施形態の発泡成形品によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、発泡成形品1の凹部17又は孔部14の周囲の一部と、パーティングラインL2又はパーティングラインL1とを連結する溝部18又は溝部15を形成すると共に、その溝部18、15内の底面18a、15aに前記パーティングラインL2、L1に連結する突条部19、16を形成するようにした。そのため、凹部17又は孔部14の周囲に、ガスの巻き込みによる意図しない欠肉部の形成が防止された発泡成形品1を提供できる。
【0035】
(2)上記実施形態では、突条部16、19の断面形状を三角形又は台形としたので、突条部16、19の先端が発泡成形品1の表面から突き出たとしても、その先端部分は表皮材によって、溝部15、18内に押し込まれることになる。そのため、発泡成形品1を表皮材で覆ったとき、表皮材下に突条部16、19が存在しても表皮材の表面の意匠性が保たれる発泡成形品1を提供できる。
【0036】
(3)上記実施形態では、突条部16、19の高さを、その先端が頂面11又は側面12から飛び出ないようにした。そのため、発泡成形品1を表皮材で覆ったとき、表皮材の表面の意匠性が保たれる発泡成形品1を提供できる。
【0037】
(4)上記実施形態では、シートバック2の頂面11に突条部16を形成するための凹条部(図4における凹条部29と同様)が発泡成形型に形成されているので、発泡成形に伴う空気やガスがその凹条部を通ってパーティング面の隙間に抜け出ることが可能となる。従って、パーティングラインの一部をガス抜きの為に曲げて配置する従来技術と異なり、パーティングラインを直線的に配置しても、孔部14の周囲において意図しない欠肉部の形成が防止された発泡成形品1を提供できる。
【0038】
(5)上記実施形態では、突条部19を形成するための凹条部29が発泡成形型に形成されているので、前記と同様に発泡成形に伴うガスがその凹条部29を通ってパーティング面21の隙間に抜け出ることが可能となる。従って、パーティングラインL22の一部をガス抜きの為に曲げて配置することなく直線的に配置しても、凹部17の周囲において意図しない欠肉部の形成が防止された発泡成形品1を提供できる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した発泡成形品3の第2の実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図6を用いて説明する。
【0040】
図6に示す本実施形態の発泡成形品3は、図3に示す第1実施形態の側面12の凹部17に関わる構成とは、隔壁17bが存在する点が異なるだけで、その他の部分は同一である。図6に示すように発泡成形品3の側面12に形成された溝部18は、凹部17の周囲の一部を形成する隔壁17bにより端部を形成し、その端部と反対側は立壁18bが端部となっている。
【0041】
なお、本実施形態の発泡成形品3の頂面11の孔部14に関わる構成は、図示しないが、図2に示す孔部14と溝部15との間に上記隔壁17bと同様の隔壁を設けることのみが異なり、その他の部分は同一となる。
【0042】
(成形型の構造)
図7に示すように、図6に示す発泡成形品3の側面12の部分を成形するための成形型は、図4に示す成形型において凸部27の側壁27aと立壁部28とが連結している構成であることと異なり、側壁27aと立壁部38との間には空隙部40が形成され、側壁27aと立壁部38とは連結していない。この空隙部40は隔壁17bを形成するためのものであるが、この空隙部40があることにより、図5を用いて説明した発泡体30の流れのうち、成形面20に沿って流れてきた先端部31付近の空気やガスが、空隙部40を通り抜けて凹条部39に速やかに移動できる。
【0043】
そして、この第2実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(6)上記実施形態では、発泡成形品3に隔壁17bを形成するため、成形型に空隙部40を形成するようにしたため、発泡成形の際、空気やガスがその空隙部40を通り抜けて凹条部39を通ってパーティング面21の隙間に速やかに放出されるようになる。従って、凹部17の周囲において意図しない欠肉部の形成が防止された発泡成形品3を提供できる。
【0044】
(変更例)
なお、上記両実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、溝部15、18の底面15a、18aに突条部16、19を一本形成したが、突条部16、19を複数本形成するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について、それらの効果と共に以下に記載する。
○前記溝部内の底面には複数の突条部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の発泡成形品。このように、複数の突条部を形成した場合、発泡成形品にその複数の突条部を形成するために、成形型に形成した複数の凹条部によりガス抜けが容易に行われるようになる。
【0046】
○前記表面は、パーティングラインを含む表面であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形品。このように、パーティングラインを含む表面に凹部又は孔部が形成され、それらの周囲と前記パーティングラインとを連結する溝部及び突条部が形成されれば、前期凹部又は孔部の周辺に空洞部や欠肉部が形成されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態の発泡成形品を示す斜視図。
【図2】図1におけるA部詳細図。
【図3】図1におけるB部詳細図。
【図4】第1実施形態の発泡成形品を成形する成形型において、発泡成形品のB部を形成する部分を示す斜視図。
【図5】図4に示す成形型を用いて発泡成形する際のウレタン原料の挙動を(a)(b)(c)の順に模式的に示す斜視図。
【図6】本発明の第2実施形態の発泡成形品の凹部付近を示す斜視図。
【図7】第2実施形態の発泡成形品を成形する成形型において、発泡成形品の凹部付近を形成する部分を示す斜視図。
【符号の説明】
【0048】
L1,L2,L22…パーティングライン、1,3…発泡成形品、2…シートバック、11…頂面、12…側面、14…孔部、15,18…溝部、15a,18a…底面、16,19…突条部、17…凹部、17b…隔壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形型の下型にポリウレタン原料を注入することにより、発泡成形型によって成形された発泡成形品であって、その表面を表皮材で覆ってパッドとして用いる発泡成形品において、表面に形成された凹部又は孔部の周囲と、パーティングラインとを連結する溝部が形成されると共に、その溝部内の底面に前記パーティングラインに連結する突条部が形成されたことを特徴とする発泡成形品。
【請求項2】
前記凹部又は孔部の周囲と溝部及び突条部との間に隔壁を形成したことを特徴とする請求項1に記載の発泡成形品。
【請求項3】
前記突条部は、その断面の形状が三角形又は台形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡成形品。
【請求項4】
前記突条部の高さは、前記溝部の深さ以下であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の発泡成形品。
【請求項5】
前記孔部は、自動車のシートバックの頂面に形成されたヘッドレストステイ用の孔部であり、前記溝部及び突条部が、その孔部とその孔部の後方に位置するパーティングラインとを連結していることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の発泡成形品。
【請求項6】
前記凹部は、自動車のシートバックの側面に形成された機能部材を取り付けるため又は収容するための凹部であり、前記溝部及び突条部が、その凹部とその凹部の後方に位置するパーティングラインとを連結していることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の発泡成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220359(P2009−220359A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66420(P2008−66420)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】