説明

発泡成形容器の製造装置および製造方法

【課題】 側壁部に上下方向に貫通する排水孔13、排水孔13と容器収容空間を繋ぐ導水孔15を有する保冷容器の製造装置で用いる孔形成装置Aの構成を簡素する。
【解決手段】 排水孔13形成用の部材を第1部材30と第2部材40に分割する。コア型1に固定する第1部材30の下端位置を、コア型1の水溜まり部形成用凸部70の底面よりも高い位置とする。第1部材30の下端にシリコン樹脂のような可撓性を持つ成形中子50の一端を装着し、他端51を水溜まり部形成用凸部70の底面に当接させる。その姿勢で型閉めして、定法による発泡成形を行う。成形中子の上面側を四フッ化エチレン樹脂のような摩擦抵抗の低い材料とすることは好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡成形容器、特に被収容物と共に氷を収容して使用する保冷容器等として好適に用いられる発泡成形容器の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、予備発泡粒子をコア型とキャビティ型とで形成されるキャビティ空間内で発泡成形して発泡成形容器を製造することは知られており、製造される容器は、軽量かつ所要の強度を備えることから多くの分野で用いられている。中でも、鮮魚、青果物、生鮮食品、薬剤等の被収容物を氷と共に収容して輸送や保存に供する、いわゆる保冷容器としての使用頻度は大きくなっている。
【0003】
保冷容器の場合、被収容物と共に氷を収容する関係上、氷融解水に対する排水孔が設けられることが多い。排水孔は排水には有効に機能するが、多くの保冷容器では、排水孔を介して容器の内側と外側とが直接に連通しており、排水孔から外気が容器内へ侵入する場合がある。外気が侵入すると、容器内温度が上昇し、保冷効果が低下して保冷時間が短くなる。そのような欠点を解消した改良された保冷容器が特許文献1に開示されている。
【0004】
図9は上記特許文献1に記載される保冷容器10であり、容器底部11側に水溜まり部12を形成し、そこに滞留する水(氷融解水)により、排水孔13と容器内部Sの連通を防止すると共に、水溜まり部12の水位Hが容器底部11の最上端より低くなるように設計し、これによって被収容物が水漬かり状態なるのも解消している。詳細には、容器10の側壁14に上下方向の貫通孔を排水孔13として形成し、この排水孔13および前記水溜まり部12に連通する導水孔15を斜め下方に向くようにしてさらに形成する。導水孔15は、水溜まり部12側となる導入口16の最上端16aが、排水孔13側となる導出口17の最下端17aより低くなるよう設計されており、さらに、導出口17の最下端17aの位置は、容器10の底部11のレベルより低くなるように設計されている。それにより、水溜まり部12には導出口17の最下端17aでの水位Hで水が常時滞留するようになり、排水孔13と容器10の内部Sとは水封(水によるシール)される。同時に、容器の内部Sには水位H以上の水が残存することもなく、被収容物が水漬かり状態なるのも解消している。
【0005】
上記特許文献1には、さらに、図9に示す保冷容器を製造するための製造方法と装置も開示されている。図10はそれを説明しており、図中の1はコア型、2はキャビティ型であり、3は両型間のキャビティ空間を示している。4は前記した容器10の側壁14に貫通する排水孔13を形成するためのパイプであって、コア型1とキャビティ型2間に位置するよう装填される。上記パイプ4にはパイプ4の上端から一部をスプリング5の押圧力で常時は突出した状態にある可動ピン6が設けてあり、可動ピン6の下端には導水孔15を形成するための屈曲自在な成形中子7が連結されている。さらに、成形中子7を斜め下方へ案内する案内孔8がパイプ4に形成されている。また、コア型1は水溜まり部12を形成するための凸部70を有しており、成形中子7に対する案内孔8は上記凸部70と対峙している。パイプ4の下端側はセッティング用ナット9によりキャビティ型2に固定される。
【0006】
図10は型を閉めた状態であり、可動ピン6はコア型1によりスプリング5に抗して押し下げられ、それに応じて成形中子7は案内孔8に沿って斜め下方に向けて押し出されていき、その先端が水溜まり部12を形成するための凸部70に当接する。この状態で予備発泡粒子を発泡させ、発泡成形後に、コア型1を移動して型を開くと、スプリング5の押圧力で可動ピン6が元の突出した位置に戻り、成形中子7も形成された導水孔15から抜け出しながらパイプ4内に収容される。キャビティ型2から成形品を取り出すことにより、上記した、側壁14に上下方向に貫通した排水孔13を有し、さらに、排水孔13と水溜まり部12に連通する導水孔15が斜め下方に向くようにして形成された発泡成形容器10が得られる。
【0007】
上記とほぼ同様な構成を備えた発泡成形容器の成形装置は、特許文献2にも記載されている。
【特許文献1】特開2003−40341号公報
【特許文献2】特開2004−209930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10に示す製造装置を用いることにより、図9に示す、側壁部には上下方向に貫通する第1の孔(排水孔13)を有し、さらに、該第1の孔と収容空間Sを繋ぐ第2の孔(導水孔15)を有する発泡成形容器(保冷容器10)を容易に発泡成形することができる。しかし、第1の孔と第2の孔を形成するためにコア型1とキャビティ型2の間に装填される孔形成手段は、可動部分が多く部品数も多くなっており、全体の構造を複雑としている。そのために、装置のメンテナンスが容易でない。
【0009】
また、型閉め時に成形中子7が押し出され、その先端位置が決まる構成であるために、多数回の成形を繰り返すと、成形中子7に変形が生じ、成形中子7の先端とコア型1の凸部70との当たり面に隙間ができる場合がある。このような隙間は、導水孔15の導入口16の周囲にバリを発生させる要因となる。さらに、成形過程で実際の当たり面を目で見ることができないので、当たり面の状態が適切かどうか、あるいは成形中子7が所期どおりに押し出されているかどうか等を視覚的に確認することができず、成形型等の品質管理の面でもなお解決すべき課題がある。
【0010】
前記特許文献2に記載される発泡成形容器の成形装置の場合も、同じような不都合を備えている。
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、側壁部に上下方向に貫通する第1の孔を有し、さらに、該第1の孔と収容空間を繋ぐ第2の孔を有する発泡成形容器の製造装置において、そこに備えられる孔形成装置の構成を簡素化し、メンテナンスを容易とすると共に、安定した発泡成形を連続して行うことができるようにすることを目的とする。本発明の他の目的は、第2の孔を成形する成形中子の発泡成形時での姿勢と位置を、型を開いた状態で視覚的に確定できるようにし、それにより、成形型や成形中子の品質管理を確実に行えるようにした発泡成形容器の製造装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、上記の製造装置を用いて発泡成形容器を製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による発泡成形容器の製造装置は、側壁部と底部で区画される収容空間を持ち、側壁部には上下方向に貫通する第1の孔が形成され、さらに、該第1の孔と収容空間を繋ぐ第2の孔が形成されている発泡成形容器を製造するためのコア型とキャビティ型を備えた製造装置であって、コア型には前記収容空間を形成するための凸部とこの凸部より下方に向けて突出した少なくとも1つの水溜まり部を形成するための水溜まり部形成用凸部とを備え、前記第1の孔を形成するための部材は、コア型に取り付けられる第1部材とキャビティ型に取り付けられる第2部材とからなり、第1部材はその下端面が前記水溜まり部形成用凸部の底面よりも上位に位置し、かつ該下端面には前記第2の孔のための空間を確保するための可撓性を持つ成形中子の一端が着脱可能に装着されており、装着された状態で前記成形中子の他端は前記水溜まり部形成用凸部の底面に当接した姿勢で位置決めされるようになっており、型閉め時に前記第1部材と第2部材はその下端面と上端面とが当接して第1の孔のための空間を確保するようになっており、発泡成形後の型開き時には、前記第1部材は、コア型と共に前記第2部材から離れる方向に移動しながら、前記成形中子を形成された第2の孔と第1の孔から抜き出すことができるようにされていることを特徴とする。
【0013】
この装置では、第2の孔のための可撓性のある成形中子は、その一端をコア型に取り付けた第1部材の下端面に装着したときに、他端側は、コア型に形成した水溜まり部形成用凸部の底面に当接した姿勢となっており、さらに、第1部材はその下端面が水溜まり部形成用凸部の底面よりも上位に位置するように形成されていることから、コア型に装着された成形中子は、その時点で、所要の角度で傾斜した姿勢、すなわち発泡成形時に必要とされる所定の位置と姿勢にセッティングされた状態になる。
【0014】
成形に際しては、このコア型をキャビティ型に合わせ、型間に形成されるキャビティ空間内に予備発泡粒子の充填を行い、型閉め等が行われるが、その過程で、特許文献1あるいは特許文献2に記載した製造装置のように、成形中子を型閉めと共に送り出すような動きは必要としない。成形中子は前記した型を開いた状態でセッティングした当初姿勢をそのまま維持した状態で、予備発泡粒子の充填、型閉め、発泡成形の各工程が行われる。このことから、孔形成のための装置全体は大きく簡素化される。
【0015】
さらに、成形時での成形中子の姿勢を、型を開いた状態で外から目で見ることができるので、何らかの事情により、成形中子と水溜まり部形成用凸部との当接面に隙間が発生しているような場合でも、それを型締めする前に確認することが可能であり、成形型や成形中子等の品質管理が容易となる。結果として、成形品の歩留まりも向上する。成形中子側に不都合が生じた場合には、第1部材から不都合のある成形中子を取り外し、新しいものと交換すればよく、対処もきわめて容易である。
【0016】
型を開くとき、成形中子は第1部材と共に上昇して第2の孔から抜き出され、さらに第1の孔からも抜き出される。抜け出た後、成形中子自分の弾性力によって、容易に元の姿勢、すなわち他端側がコア型に形成した水溜まり部形成用凸部の底面に当接した姿勢に復帰する。そして、次回の成形に備える。
【0017】
本発明の製造装置において、好ましくは、キャビティ型に取り付けられる第2部材は、スプリング部材を介してキャビティ型に対して上下方向に摺動できるようにされる。この構成とすることにより、キャビティ空間内への予備発泡粒子の充填を、コア型とキャビティ型とにわずかな隙間を持った状態で行い、充填後、最終型閉めを行う、いわゆるクラッキング操作も容易に行うことが可能となる。
【0018】
本発明は、上記の製造装置を用いて、側壁部と底部で区画される収容空間を持ち、側壁部には上下方向に貫通する第1の孔が形成され、さらに、該第1の孔と収容空間を繋ぐ第2の孔が形成されている発泡成形容器を製造する方法をも開示する。そこにおいて、最初に、可撓性を備えた成形中子を、その一端を第1部材の下端面に着脱自在に装着し、他端を水溜まり部形成用凸部の底面に当接させた姿勢で位置決めしたコア型を用意する。そのコア型をキャビティ型に合わせ、型間に形成されるキャビティ空間内に予備発泡粒子の充填を行い、型閉めをし、定法に従い発泡成形を行う。発泡成形後の型開き時に、第1部材をコア型と共に第2部材から離れる方向に移動する。それにより、成形中子は形成された第2の孔から抜き出され、さらに成形された第1の孔からも第1部材とともに抜き出される。その後、第2部材をキャビティ型と共に成形された第1の孔から抜き出す。前記したように、コア型において、成形品の第1の孔から抜き出た成形中子は自己の弾性力により当初位置に迅速に復帰するので、そのままで、次の成形に備えることができる。
【0019】
本発明の製造装置および製造方法において、成形中子は、可撓性があることに加えて、発泡成形時の熱に対する耐熱性があること、発泡成形後に型を開くときに発泡成形品に形成された前記第2の孔との間に生じる表面摩擦抵抗に打ち勝って破損することなく抜き出ることができる強度を備えること、を条件に適宜の材料で製造することができる。例として、シリコン樹脂、天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。中でもシリコン系樹脂は、耐熱性、可撓性と復元性ならびに強度の点から好ましい。
【0020】
成形中子が、型内発泡成形された容器との間で大きな表面摩擦抵抗を持つ素材で作られる場合には、成形中子を発泡成形品に形成された前記第2の孔から抜き出るときに、摩擦により発泡成形品側、特に第2の孔の上部近傍に欠けが発生する恐れがある。発泡成形品が発泡ポリスチレン製品であり、成形中子がシリコン樹脂の場合、発泡ポリスチレンに対するシリコン樹脂の表面摩擦抵抗がやや大きな値となることから、このような欠けが起こる可能性がある。欠けによって発生した発泡片(異物)が成形容器内に残っていると、保冷容器として使用したときに、食品などの内容物に混入してしまい好ましくないので、発泡成形後に、成形容器内から異物を除去する作業が必要となる。
【0021】
そのような事態は、前記成形中子として、製造する発泡成形容器に対する表面摩擦抵抗が異なる材料を積層した構成のものを用い、表面摩擦抵抗が小さい方の材料を前記第1部材側として、第1部材の下端面に当該成形中子の一端が着脱可能に装着することにより、効果的に解消される。表面摩擦抵抗が大きい方の材料と表面摩擦抵抗が小さい方の材料とは、貼着などにより一体化した構成となっていてもよく、屈曲したときに両者間に滑りが生じるように単に積層した構成であってもよい。
【0022】
この構成の成形中子を用いる場合には、成形中子を引き抜くときの発泡成形品との間の表面摩擦抵抗を小さくすることができるので、両者間の摩擦抵抗によって欠けが生じる事態を大きく回避することができる。
【0023】
表面摩擦抵抗の小さい方の材料としては、ポリプロピレン系樹脂、四フッ化エチレン樹脂、あるいはステンレス薄板のような金属材料が、表面摩擦抵抗が小さいことに加えて、引っ張りおよび引き裂き強度が大きく、抜き出すときに加わる抵抗によって破損することがないことから好ましい。中でも、四フッ化エチレン樹脂は、加工が容易であり、曲げ強度が強いことから好ましく、0.1〜3mm程度に薄板化することで、成形中子として利用可能な柔軟性(可撓性)も備えることができる。0.1mmよりも薄い場合には、引き抜くときの抵抗で破損する恐れがあり、3.0mmよりも厚い場合には、十分な可撓性が得られずに、引き抜くときの抵抗が逆に増大してしまう。
【0024】
この場合、表面摩擦抵抗が大きい方の材料としては、シリコン樹脂を用いることが好ましい。断面がそれ単独で第2の孔の断面積を確保できる大きさであっても、シリコン樹脂は十分な可撓性を備えており、成形中子の本体部分を構成する材料として好適である。しかし、シリコン樹脂は引き裂き強度が十分でなく、繰り返しの使用によりシリコン樹脂に破損が生じる恐れがある。シリコン樹脂の表面側(抜き出し方向側)に薄板状の四フッ化エチレン樹脂シートを積層しておくことにより、成形中子の本体部分であるシリコン樹脂の寿命を長期化することが可能となり、同時に、四フッ化エチレン樹脂の摩擦抵抗が小さいことから、発泡成形品の発泡片が発生するのも回避できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、側壁部に上下方向に貫通する排水孔として機能する第1の孔を有し、さらに、該第1の孔と収容空間を繋ぐ導水孔として機能する第2の孔を有する発泡成形容器の製造装置において、そこに備えられる孔形成装置をより簡素化したものとすることができる。また、第2の孔を成形する成形中子の発泡成形時の姿勢と位置を、型を開いた状態で、すなわち、外から見える状態で確定できるので、成形型や成形中子の品質管理を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、前記図9に示したと同様な形状の保冷容器を製造する場合を例として行う。従って、コア型およびキャビティ型も、孔形成装置の部分を除いて実質的に図10に示したものとの同じであり、同じ機能を奏する部材には、図9、図10で使用した符号と同じ符号を付している。もちろん、製造する容器や成形型がこれに限るものではない。添付の図において、図1は本発明で用いる孔形成装置を成形後の保冷容器と共に示す図であり、図2,図3,図4は、成形型を用いた成形手順を順に示している。図5は成形された保冷容器の要部を示す断面図である。
【0027】
本発明において、孔形成装置Aは、第1の孔である排水孔13を形成するための第1部材30と第2部材40、および、第2の孔である導水孔15を形成するための成形中子50とからなる。第1部材30と第2部材40はこの例では円柱状であり、第1部材30はコア型1に取り付けられ、第2部材40はキャビティ型2に取り付けられる。
【0028】
第1部材30の上端部にはコア型1にねじ止めするための内ネジ31が形成され、下端面32には成形中子50を装着するための凹溝33が形成される。凹溝33の底面にはネジ穴34が切られており、成形中子50の一端がネジ35により着脱自在に装着される。なお、ネジ35の位置は、図2〜図4に示したようにキャビティ型側に偏った位置に設けることで、成形中子50の離型(抜き出し)をより容易にすることができる。第1部材30の長さは、後記するようにコア型1の上フランジ61に取り付けたときに、その下端面32が、保冷容器10の水溜まり部12を形成するためにコア型1に形成した水溜まり部形成用凸部70の底面レベルよりも上位となる長さとされる(図2等参照)。
【0029】
成形中子50は断面矩形状をなす部材であり、可撓性のある材料、例えばシリコン樹脂のような材料で作られる。成形中子50の長さは、凹溝33に取り付けた状態で、先端51が前記コア型1に形成した水溜まり部形成用凸部70の底面に入り込みうる長さとされる。なお、成形中子50の形状が断面矩形状であることは必須でなく、断面円形や楕円形などであってもよい。その場合に、第1部材30の下端部32に形成する凹溝33の断面形状は、当該成形中子50の形状に応じて、それが密着した状態で収容され得る形状に変更される。図1に示すように、成形中子50は、第1部材30の下端部32に取り付けた状態で特に外力が加わらない限り、第1部材30の軸線にほぼ90°の角度を保つようにされている。
【0030】
第2部材40は、その上端面41が第1部材30の下端面32と密着状態で当接できる面とされている。下端面側には縦穴42が形成され、後記するように縦穴42内にスプリング43を介装した状態で、キャビティ型2に形成した取り付け孔45内に上下方向に摺動できるようにしてネジ44で取り付けられる。
【0031】
成形に当たり、コア型1に第1部材30を、キャビティ型2に第2部材40を取り付ける。図2に示すように、このコア型1は、保冷容器10の収容空間Sを形成するための凸部60と、この凸部60より下方に向けて突出した少なくとも1つの水溜まり部を形成するための水溜まり部形成用凸部70とを持つ。また、コア型1は、コア型1とキャビティ型2で形成されるキャビティ空間3を閉鎖する上フランジ61を備え、該上フランジ61の裏面に第1部材30の上端がネジ62により固定されている。なお、その際に、第1部材30の下端面32に取り付けた成形中子50の先端51側が水溜まり部形成用凸部70の方向を向くようにして取り付ける。第1部材30の下端面32の位置と成形中子50の長さは前記のように設定されており、第1部材30をコア型1に取り付けた状態では、図2に示すように、成形中子50は全体が下方に向けて傾斜した姿勢となり、かつその自由端側(先端51)は水溜まり部形成用凸部70の底面に入り込んだ姿勢となる。
【0032】
図6は、水溜まり部形成用凸部70の部分を拡大して示している。この例において、前記凸部70は底面に凹陥部71を備えており、そこに中空中子50の自由端(先端51)が入り込むことにより、成形中子50の姿勢は安定的に保持される。また、成形中子50の自由端が凹陥部71に入り込むのを容易にするために、凹陥部71の少なくとも左右の側壁に外広がり状のテーパを付けておくことも望ましい。なお、水溜まり部形成用凸部70の底面部分に成形中子50の先端51が安定的に保持されることを条件に、このような凹陥部71は省略してもよく、左右の側壁を省略した形状の凹陥部71であってもよい。図示の例において、水溜まり部形成用凸部70の内側には三角形をなす翼片72が一体形成されているが、この翼片72は、保冷容器10の水溜まり部12に水(氷融解水)が入れ込む流路12a(図1参照)を形成するものであり、このような幅の狭い流路12aを形成することにより、例えば水溜まり部12に魚の鱗が入り込んで、第2の孔である導水孔15を塞いでしまうようなことを効果的に阻止することができる。
【0033】
前記したように、第2部材40は、キャビティ型2に形成した取り付け孔45の中に摺動自在に取り付けられる。すなわち、取り付け孔45と第2部材40の下端面側に形成した縦穴42の間にはスプリング43が配置され、ネジあるいはピン44によってキャビティ型2に連接されている。
【0034】
コア型1に上記のようにして下端面に成形中子50を取り付けた第1部材30を取り付け、キャビティ型2に上記のようにして第2部材30を取り付けた状態で、コア型1とキャビティ型2とを型合わせし、定法により、型間に形成されるキャビティ空間3に予備発泡粒子Pの充填を行い、型閉めをし、発泡成形を行う。図3は発泡成形時の状態を示している。なお、上記の成形型では、第2部材40がスプリング43を介して上下に摺動可能となっており、過充填していわゆるクラッキング操作を行うこともできる。図示のように、排水孔13(第1の孔)となるべき領域には、第1部材30と第2部材40とが上下方向に一体となって位置しており、導水孔15(第2の孔)となるべき位置には下方に傾斜した状態の成形中子50が位置している。
【0035】
なお、図示の例では、第1部材30の下端面と第2部材40の上端面とは水平方向をなす衝接面となっているが、互いの衝接面を導水孔15(第2の孔)となるべき位置に向けて斜めに傾斜する面とすることもできる。それにより、成形中子50をより無理のない状態で下方に傾斜した姿勢とすることができる。
【0036】
成形処理終了後に、コア型1を移動して型を開く。コア型1の移動と共に第1部材30は上昇し、第1部材30と共に成形中子50も上昇する。その過程で、成形中子50はそれ自身変形しながら導水孔15から次第に抜き出され、さらに、図4に示すように、第1部材30が上昇することにより形成された排水孔13としての空間内を第1部材30と共に移動しながら抜き出される。さらにコア型1が上昇することにより、第1部材30と成形中子50のすべてが排水孔13の空間から抜き出た状態となり、その後、キャビティ型2と共に第2部材40を成形された排水孔13から抜き出すことにより、図5に要部を断面で示す保冷容器10が得られる。
【0037】
図7は、第2の形態の成形中子50Aを、前記した第1の孔である排水孔13を形成するための第1部材30と共に示している。成形中子50Aの全体形状は前記した成形中子50と同じであるが、第1の可撓部材52とその上に積層した第2の可撓部材53との積層体として成形中子50Aが構成されている点で異なっている。第1の可撓部材52は、この例ではシリコン樹脂で作られており、保冷容器10に形成する前記した導水孔15(第2の孔)の断面とほぼ同じ大きさの断面を有していて、成形中子50Aの本体部分を構成する。第2の可撓部材53は、第1の可撓部材52(この場合には、シリコン樹脂)よりも保冷容器10に対する表面摩擦抵抗が小さい材料である四フッ化エチレン樹脂シート作られており、第1の可撓部材52と比較して薄く、0.1〜3.0mm程度の厚さである。
【0038】
この成形中子50Aの第1部材30に対する取り付け態様は、成形中子50と同様であり、第2の可撓部材53を上面側として、第1部材30の下端面32に、成形中子50Aの一端がネジ35により着脱自在に装着される。
【0039】
成形中子50Aを用いた場合の、保冷容器10の製造プロセスは、上記した成形中子50と同じであり、詳細な説明は省略する。図8は、上記した図4に相当する図であり、成形処理終了後に、コア型1の移動と共に第1部材30が上昇し、第1部材31が上昇することにより形成された排水孔13としての空間内を、成形中子50Aが第1部材30と共に移動しながら抜き出される。図8に示す位置に成形中子50Aが来る前に、成形中子50Aはそれ自身変形しながら導水孔15(第2の孔)から次第に抜き出されるが、その過程で、導水孔15の排水孔13側となる導出口17の上端縁との間で、特に強く接触する。しかし、成形中子50Aは、上面側に表面摩擦抵抗が小さい四フッ化エチレン樹脂シートからなる第2の可撓部材53を積層しており、接触摩擦抵抗によってその部分の発泡樹脂が欠けて飛散するような事態が生じるのを効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による発泡成形容器の製造装置で用いる孔形成装置を成形後の保冷容器と共に示す図。
【図2】本発明による発泡成形容器の製造装置を用いて容器を製造する手順を説明する図であり、予備発泡粒子を充填する前の状態を示す。
【図3】図2に続く図であり、型閉め後の状態を示す。
【図4】図3に続く図であり、成形後に型を開く状態を示す。
【図5】成形された容器の要部を示す断面図。
【図6】キャビティ型における水溜まり部形成用凸部の部分を拡大して示す図。
【図7】第2の形態の成形中子を説明するための図。
【図8】第2の形態の成形中子を用いて容器を製造する過程を説明するための図4に相当する図。
【図9】従来の保冷容器の一例を説明する図。
【図10】図9に示す保冷容器を製造するための装置を説明する図。
【符号の説明】
【0041】
A…孔形成装置、1…コア型、2…キャビティ型、3…キャビティ空間、10…容器、11…底面、12…水溜まり部、13…排水孔(第1の孔)、15…導水孔(第2の孔)、30……第1の孔を形成するための第1部材、40…第2の孔を形成するための第2部材、50…成形中子、50A…第2の形態の成形中子、51…成形中子の先端、52…第2の形態の成形中子を構成する表面摩擦抵抗が大きい第1の可撓部材、53…第2の形態の成形中子を構成する表面摩擦抵抗が小さい第2の可撓部材、60…収容空間を形成するための凸部、70…水溜まり部形成用凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部と底部で区画される収容空間を持ち、側壁部には上下方向に貫通する第1の孔が形成され、さらに、該第1の孔と前記収容空間を繋ぐ第2の孔が形成されている発泡成形容器を製造するためのコア型とキャビティ型を備えた製造装置であって、
コア型には前記収容空間を形成するための凸部とこの凸部より下方に向けて突出した少なくとも1つの水溜まり部を形成するための水溜まり部形成用凸部とを備え、
前記第1の孔を形成するための部材は、コア型に取り付けられる第1部材とキャビティ型に取り付けられる第2部材とからなり、
第1部材はその下端面が前記水溜まり部形成用凸部の底面よりも上位に位置し、かつ該下端面には前記第2の孔のための空間を確保するための可撓性を持つ成形中子の一端が着脱可能に装着されており、
装着された状態で前記成形中子の他端は前記水溜まり部形成用凸部の底面に当接した姿勢で位置決めされるようになっており、
型閉め時に前記第1部材と第2部材はその下端面と上端面とが当接して第1の孔のための空間を確保するようになっており、
発泡成形後の型開き時には、前記第1部材は、コア型と共に前記第2部材から離れる方向に移動しながら、前記成形中子を形成された第2の孔と第1の孔から抜き出すことができるようにされていることを特徴とする発泡成形容器の製造装置。
【請求項2】
キャビティ型に取り付けられる第2部材は、スプリング部材を介してキャビティ型に対して上下方向に摺動できるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形容器の製造装置。
【請求項3】
前記成形中子として、製造する発泡成形容器に対する表面摩擦抵抗が異なる材料を積層した構成のものが用いられ、表面摩擦抵抗が小さい方の材料を前記第1部材側として、第1部材の下端面に当該成形中子の一端が着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡成形容器の製造装置。
【請求項4】
前記成形中子を構成する材料のうち、前記摩擦抵抗の小さい方の材料が、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂または金属材料のいずれかである成形中子を用いることを特徴とする請求項3に記載の発泡成形容器の製造装置。
【請求項5】
摩擦抵抗の大きい方の材料がシリコン樹脂であり、前記摩擦抵抗の小さい方の材料が厚さが約0.1〜3.0mmの範囲の四フッ化エチレン樹脂である成形中子を用いることを特徴とする請求項4に記載の発泡成形容器の製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の発泡成形容器の製造装置を用いて、側壁部と底部で区画される収容空間を持ち、側壁部には上下方向に貫通する第1の孔が形成され、さらに、該第1の孔と収容空間を繋ぐ第2の孔が形成されている発泡成形容器を製造する方法であって、
可撓性を備えた成形中子の一端を第1部材の下端面に着脱自在に装着し、他端を水溜まり部形成用凸部の底面に当接させた姿勢で位置決めしたコア型を用意し、コア型とキャビティ型との型間に形成されるキャビティ空間内に予備発泡粒子の充填を行い、型閉めをし、発泡成形を行い、発泡成形後の型開き時に、第1部材をコア型と共に第2部材から離れる方向に移動して成形中子を形成された第2の孔から抜き出し、さらに成形された第1の孔から第1部材と成形中子とを抜き出し、第2部材をキャビティ型と共に成形された第1の孔から抜き出すことを有することを特徴とする発泡成形容器の製造方法。
【請求項7】
製造する発泡成形容器に対する表面摩擦抵抗が異なる材料を積層した構成の成形中子を、表面摩擦抵抗が小さい方の材料が成形された第1および第2の孔からの抜き出し側となるようにして用いることを特徴とする請求項6に記載の発泡成形容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−82544(P2006−82544A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214777(P2005−214777)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000198813)株式会社セキホー関西 (1)
【出願人】(395010635)有限会社三宝金型製作所 (2)
【Fターム(参考)】