説明

発熱を伴う脳卒中を処置する方法および組成物

本発明は、PSD-95へのNDMAR 2Bの結合を阻害するペプチドまたはペプチド模倣体を患者に投与することにより、発熱および/または高血糖によって増悪した脳卒中および関連症状を処置する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれも全ての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる2006年7月11日出願の米国特許出願第60/830,189号および2007年7月26日出願の米国特許出願第60/833572号の非仮出願である。
【0002】
連邦政府資金援助を受けた研究開発の下で達成された発明に対する権利に関する声明
本発明は、NIH助成金番号NS048956の下、政府支援を受けて達成されたものである。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
脳卒中は、米国で年間60万を超える人々に影響を及ぼしていると予測される。1999年の報告書では、167,000を超える人々が、脳卒中が原因で死亡し、全死者数は278,000人である。1998年には、脳卒中の結果として日常生活活動に機能的制限または困難を有すると報告される100万人を超える人々の長期ケアを含めずに、短期入院病院を退院した医療保険受取人に対してだけでも360億が支払われた(Heart and Stroke Statistical update, American Heart Association, 2002)。脳卒中の結果として生じる脳損傷を減らすことが認められている治療法はまだ存在しない。
【0004】
脳卒中は、虚血、脳出血および/または外傷の区域におけるニューロン細胞死を特徴とする。細胞死は、細胞内Ca2+の増大およびnNOS (ニューロン一酸化窒素シンターゼ)の活性の増大による一酸化窒素増大を招く、ニューロンのグルタメート過剰興奮によって誘発される。
【0005】
グルタメートは、中枢神経系(CNS)における主要な興奮性神経伝達物質であり、大部分の興奮性シナプスの間の神経伝達を媒介する。三つのクラスのグルタメートゲート式イオンチャネルレセプタ(N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)およびカイニン酸)がシナプス後シグナルを変換する。これらのうち、NMDAレセプタ(NMDAR)がグルタメートの興奮毒性の有意部分を担う。NMDAレセプタは、NR1サブユニットおよび一つまたは複数のNR2サブユニット(2A、2B、2Cまたは2D)(たとえば、McDain, C. and Caner. M. (1994) Physiol. Rev. 74:723-760を参照)、ならびに、それほど一般的ではないが、NR3サブユニット(Chatterton et al. (2002) Nature 415:793-798)を有する複合体である。NR1サブユニットは、グリシンに結合することがわかっているが、NR2サブユニットはグルタメートに結合する。グリシンおよびグルタメート結合はいずれも、イオンチャネルを開き、カルシウムを細胞に入らせるために必要である。四つのNR2レセプタサブユニットが、NMDAレセプタの薬理および性質を決定するものと思われ、NR1サブユニットの選択的スプライシングからのさらなる寄与がある(Kornau et al. (1995) Science 269:1737-40)。NR1およびNR2Aサブユニットは脳内で広範に発現するが、NR2B発現は前頭に限定され、NR2C発現は小脳に限定され、NR2Dは他のタイプに比較して稀である。
【0006】
興奮毒性応答におけるNMDAレセプタの主要な役割のために、NMDAレセプタは治療薬のための標的とみなされてきた。イオンチャネルを標的化する化合物(ケタミン、フェンシクリジン、PCP、MK801、アマンタジン)、外部チャネルを標的化する化合物(マグネシウム)、NR1サブユニット上のグリシン結合部位を標的化する化合物、NR2サブユニット上のグルタメート結合部位を標的化する化合物およびNR2サブユニット上の特定部位を標的化する化合物(亜鉛-NR2A; Ifenprodil, Traxoprodil-NR2B)が開発されている。これらのうち、NMDAレセプタの非選択的アンタゴニストが、脳卒中の動物モデルにおいてもっとも神経保護性の薬剤であった。しかし、脳卒中および外傷性脳傷害においてこれらの薬物を用いた治験は、重篤な副作用、たとえば幻覚およびさらには昏睡の結果、これまでのところ失敗に終わっている。過去の脳卒中動物実験の他の批判としては、多くの神経保護剤の効能が、軽度の虚血モデル(永久的虚血ではなく虚血再かん流)で、かつ断食条件下でしか判定されておらず、より重篤な人間での状況を十分に模倣することができていないということがある。また、大部分の薬物は虚血前に投与されているが、人間での治験は処置後パラダイムを必要とする(Gladstone et al., 2002; STAIR Committee, 1999)。
【0007】
人間の脳卒中と実験的虚血とのもう一つの重要な違いは、一部の脳卒中被害者が発病前または同時罹患病状の増悪または脳卒中関連の合併症を患うということである。これらのうち顕著なものは、特に糖尿病患者(Paolino, 2005)だけでなく、非糖尿病患者(Alvarez-Sabin., 2003)にも見られる高血糖(Alvarez-Sabin., 2003)である。しかし、高血糖は、脳梗塞を増悪させることが知られているため、実験的脳卒中研究では積極的に避けられており(Li, 1997, 1998, 2000, 2001; Farrokhnia, 2005)、実験動物は、虚血内血糖上昇を最小限にするために慣例的に絶食させられる(Elsersy, 2004; Horiguchi, 2003; Belayev, 2005a)。発熱が、一部の脳卒中被害者を苦しめるもう一つの合併症であり、良好ではない予後の独立した予測因子である(Azzimondi, 1995; Reith, 1996; Boysen, 2001; Ginsberg, 1998)。高体温が広域性および限局性いずれもの実験的虚血傷害を増悪させるということは長らく知られており(Busto, 1987b, 1989a, 1989b; Ginsberg, 1992; Morikawa, 1992; Chen, 1993; Minamisawa, 1990a, 1990b, 1990c; Chen, 1991)、まさにこの理由のため、神経保護薬の研究では強く避けられてきた。
【0008】
本発明者は、シナプス後肥厚部95タンパク質(PSD-95)が、興奮毒性および虚血性脳損傷を媒介する経路にNMDARを結合させるということを報告した(Aarts et al., Science 298, 846-850 (2002))。この結合を、PSD-95/NMDAR相互作用複合体のいずれかの側のモジュラードメインに結合するペプチドをニューロンに形質導入することによって分断した。この処置は、NMDAR活性をブロックすることなく下流のNMDAR信号伝達を減衰させ、培養された皮質ニューロンを興奮毒性傷害から保護し、一過性の限局性脳虚血を起こさせたラットにおける脳梗塞体積を減少させた。この分析は、発熱および高血糖を増悪させることを避けるため、一過性虚血および事前の絶食の条件下で実施されたものである。
【発明の概要】
【0009】
特許請求された発明の概要
本発明は、発熱もしくは高血糖によって増悪した、CNSに対する脳卒中もしくは他の傷害の損傷効果の処置のための医薬の製造のための、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用を提供する。
【0010】
本発明はさらに、NDMARへのPSD-95の結合を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、高体温および/または高血糖によって増悪した虚血を有する動物に化合物を投与する段階、および該化合物が、該化合物で処置されない対照動物に比べて、虚血の結果として生じる梗塞の体積を減少させるかどうかを判定する段階を含む方法を提供する。
【0011】
本発明はさらに、発熱もしくは高血糖によって増悪した、CNSに対する脳卒中または他の傷害を有する患者における脳卒中の損傷効果を減少させる方法であって、T/S-[X]-V/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の有効量を投与して、それにより、脳卒中または他の傷害の損傷効果を減少させる段階を含む方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、発熱もしくは高血糖を有する患者における脳卒中もしくは他のCNS傷害の損傷効果を処置するための医薬の製造における、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用を提供する。
【0013】
本発明はさらに、発熱もしくは高血糖を有する患者における脳卒中もしくは他のCNS傷害の損傷効果の予防的処置のための医薬の製造における、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】核心温(core temperature)に対する虚血モデルの影響。A〜Eの動物に腹腔内遠隔測定温度プローブを埋め込み、指示条件に曝露した。グレーのバーが動物手術の期間を示す。A. 偽処置(n=4)。B. Tat-NR2B9c(SDV)を投与した偽処置(n=6)。C. 軟膜血管閉塞(n=5)。D. ケージ冷却なしの永久的MCAO (n=8)。E.フィードバックシステムを使用するケージ冷却ありの永久的MCAO (n=8)。CT:核心温。ケージ:ケージ温度。A〜Eの記号は、指示数の動物の平均+SEを示す。F. pMCAO後の指示時における側頭筋、核心温および脳温(brain temperature)に対する指示条件の影響。核心-生理食塩水:pMCAOの1時間後、生理食塩水で処置した動物(n=6)。側頭筋-生理食塩水:生理食塩水処置動物からの同時発生的側頭筋温度。核心-SDV:pMCAOの1時間後、Tat-NR2B9c(SDV)で処置した動物(n=6)。脳-SDV:NR2B9c(SDV) 処置動物からの同時発生的直接脳温計測値。
【図2】永久的軟膜血管閉塞モデルにおけるTat-NR2B9c(SDV)後処置の効果。A. 三つの軟膜血管閉塞部位。B. TTC染色脳に生じた典型的な梗塞。C. 梗塞サイズに対する指示薬および薬物濃度の影響。表1には、1グループあたりの動物の数が提供されている。星印:生理食塩水およびADA対照とは有意に異なる(ANOVA、p<0.05)。ADA:Tat-NR2B9c(ADA)。SDV:Tat-NR2B9c(SDV)。D. 各グループからのTTC染色皮質切片に見られる代表的梗塞。
【図3】PSD-95阻害物質はpMCAO後の高体温応答に影響しない。A〜E:指示量の指示PSD-95阻害物質で処置された動物におけるpMCAO手術の前、最中(グレーのバー)および後の核心温。グループごとにN=8。
【図4】偽手術(A)またはpMCAO (B〜F)に付した24時間後に動物から採取された代表的なTTC染色された冠状脳切片。B〜Fの動物は、pMCAOの1時間後に指示量の指示PSD-95阻害物質で処置した。
【図5】PSD-95阻害物質による後処置によるpMCAO梗塞体積の減少。AiおよびAii:第一の盲検試験における半球(Ai)および皮質(Aii)梗塞体積に対するPSD-95阻害物質の影響。BiおよびBii:第二の盲検試験における半球(Bi)および皮質(Bii)梗塞体積に対するPSD-95阻害物質の影響。動物は、pMCAOの1時間後に指示量のPSD-95阻害物質で処置した。星印:生理食塩水対照とは有意に異なる(ANOVA後、ボンフェローニ修正を使用して多数の比較を実施)。挿入図:試験パラダイム。表2には、1グループあたりの動物の数が提供されている。
【図6】図5の体積が導出された8個の冠状脳切片からの梗塞面積。各記号は、指示条件の場合の所与の定位平面における平均±SE面積を示す。
【図7】A. 指示条件の場合のpMCAOの2および24時間後における複合神経行動スコア。B〜G:異なるPSD-95阻害物質グループにおける永久的MCAO処置の前後における動物ケージ活動のプロット。ゼロはMCAOの時点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
I. 定義
「融合ポリペプチド」とは、複合ポリペプチド、すなわち、通常は一つのアミノ酸配列に融合していない二つ(またはそれ以上)の別々の異種ポリペプチドで構成された一つの連続したアミノ酸配列をいう。
【0016】
用語「PDZドメイン」とは、脳シナプスタンパク質PSD-95、ショウジョウバエ隔膜接合タンパク質Discs-Large (DLG)および上皮密着結合タンパク質ZO1 (ZO1)に対して有意な配列同一性(たとえば少なくとも60%)を特徴とする、約90のアミノ酸のモジュラータンパク質ドメインをいう。PDZドメインはまた、Discs-Largeホモロジーリピート(「DHR」)およびGLGFリピートとしても知られる。PDZドメインは一般に、コアコンセンサス配列を維持すると思われる(Doyle, D. A., 1996, Cell 85: 1067-76)。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/714,537号に開示された例示的なPDZドメイン含有タンパク質およびPDZドメイン配列。
【0017】
用語「PLタンパク質」または「PDZリガンドタンパク質」とは、PDZドメインとで分子複合体を形成する天然タンパク質またはそのカルボキシ末端が、完全長タンパク質とは別に発現したとき(たとえば、3〜25個の残基、たとえば3、4、5、8、10、12、14または16個の残基のペプチド断片として)そのような分子複合体を形成するタンパク質をいう。分子複合体は、米国特許出願第10/714,537号に記載されている「Aアッセイ法」または「Gアッセイ法」を使用してインビトロで、またはインビボで観察することができる。
【0018】
用語「NMDAレセプタ」または「NMDAR」とは、NMDAと相互作用することが知られている膜関連タンパク質をいう。したがって、この用語は、背景技術の項で記載された様々なサブユニット形態を含む。そのようなレセプタは、ヒトまたは非ヒト(たとえばマウス、ラット、ウサギ、サル)であることができる。
【0019】
「PLモチーフ」とは、PLタンパク質のC末端のアミノ酸配列(たとえば、C末端3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、20または25個の隣接する残基)(「C末端PL配列」)またはPDZドメインに結合することが知られている内部配列(「内部PL配列」)をいう。
【0020】
「PLペプチド」は、PDZドメインに特異的に結合するPLモチーフを含む、またはそれからなる、または他のやり方でそれに基づくペプチドである。
【0021】
用語「単離」または「精製」とは、目的種(たとえばペプチド)が、試料、たとえば目的種を含有する天然源から得られた試料中に存在する汚染物質から精製されたものであることをいう。目的種が単離または精製されるならば、それは、試料中に存在する優勢な高分子種(たとえばポリペプチド)であり(すなわち、モルベースで、組成中の他の個々の種よりも豊富に存在する)、好ましくは、目的種は、存在する全高分子種の少なくとも約50% (モルベース)を構成する。一般に、単離された、精製された、または実質的に純粋な組成物は、組成中に存在する全高分子種の80〜90%超を構成する。最も好ましくは、目的種は、本質的均質状態まで精製され(すなわち、従来の検出法によって組成中に汚染物種を検出することができない)、その場合、組成は本質的に一つの高分子種からなる。
【0022】
「ペプチド模倣体」とは、本発明のペプチドと実質的に同じ構造的および/または機能的特徴を有する合成化合物をいう。ペプチド模倣体は、アミノ酸の完全合成、非天然類似体を含有することができるか、または、部分的に天然のペプチドアミノ酸および部分的に非天然のアミノ酸類似体のキメラ分子である。ペプチド模倣体はまた、任意量の天然アミノ酸保存的置換基を、そのような置換基が模倣体の構造および/または阻害もしくは結合活性を実質的に変化させない限り、組み込むことができる。ポリペプチド模倣組成物は、典型的には下記の三つの構造グループからのものである、非天然構造成分の組み合わせを含有することができる:a)天然アミド結合(「ペプチド結合」)リンケージ以外の残基結合基、b)天然アミノ酸残基に代わる非天然残基、またはc)二次的な構造模倣を誘導して、すなわち、二次構造、たとえばβターン、γターン、βシート、αらせんコンホメーション等を誘導または安定化させる残基。
【0023】
用語「特異的結合」とは、ある分子(リガンド)が、他多くの様々な分子の存在中でさえ、もう一つの特定の分子(レセプタ)と会合する能力、すなわち、分子の不均質混合物中の一分子と別の分子との優先的結合を示す能力を特徴とする、2個の分子、たとえばリガンドとレセプタとの結合をいう。レセプタに対するリガンドの特異的結合はまた、過剰な非標識リガンドの存在におけるレセプタに対する検出可能に標識されたリガンドの結合の減少(すなわち、結合競合アッセイ法)によって実証される。
【0024】
統計的に有意とは、<0.05、好ましくは<0.01、もっとも好ましくは<0.001であるp値をいう。
【0025】
II. 総論
本発明は、発熱および/または高血糖によって増悪した脳卒中および他の神経学的症状の損傷効果を減少させるのに有用なペプチドおよびペプチド模倣体を提供する。これらの増悪因子の一つまたは両方に苦しむ患者のサブセットは、これらの因子が存在する患者と比較して有意に劣る予後を有する。本発明は、一部には、ラット永久的虚血モデルで、重篤な高体温(≧39℃)および事前の絶食の欠如にもかかわらず、特定のペプチドが梗塞体積を減少させることを見出した実施例に記載された結果に基づく。驚くことに、脳卒中および発熱または高血糖を有する対象は、そのような同時罹患合併症を起こしていない対象と同じくらい効果的に処置することができる。そのような方法で使用されるペプチドは、NMDAR 2BレセプタのPLモチーフを含む、またはそれに基づくアミノ酸配列を有する(すなわち、PLペプチド)。本発明の実施のために機構の理解は不要であるが、そのようなペプチドは、少なくとも部分的に、NMDARとシナプス後肥厚部95タンパク質との相互作用を阻害することによって作用すると考えられる(すなわちPSD-95阻害物質)。ペプチドはまた、PSD-95とnNOSとの相互作用を阻害することもできる。このようなペプチドは、以前に治験で不合格であったグルタメートアンタゴニストとは異なり、NMDAR機能損失のマイナスの結果をこうむることなく、虚血中に神経毒性シグナル伝達を乱すことができる。
【0026】
III. ペプチドおよびペプチド模倣体
本発明で有用なペプチドおよびペプチド模倣体は、PDZドメインを含有するシナプス後肥厚部95タンパク質(PSD-95 d2)のドメイン2(Stathakism, Genomics 44(1):71-82 (1997))と、PLモチーフを含有するニューロンN-メチル-D-アスパルテートレセプタ(NMDAR)のNR2BサブユニットのC末端(Mandich et al., Genomics 22, 216-8 (1994))との相互作用を阻害する。このようなペプチドは、このサブユニットのC末端からのPLモチーフを含む、またはそれに基づき、[S/T]-X-[V/L]を含むアミノ酸配列(SEQ ID NO.: 1)を有する。この配列は、好ましくは、本発明のペプチドのC末端で起こる。好ましいペプチドは、[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列(SEQ ID NO.: 2)をC末端に有する。例示的なペプチドは、ESDV (SEQ ID NO.: 3)、ESEV (SEQ ID NO.: 4)、ETDV(SEQ ID NO.: 5)、ETEV(SEQ ID NO.: 6)、DTDV (SEQ ID NO.:7)およびDTEV (SEQ ID NO.: 8)を含む。二つの特に好ましいペプチドは、KLSSIESDV (SEQ ID NO.: 9)およびKLSSIETDV(SEQ ID NO.:10)である。
【0027】
本発明のペプチドのいずれも、好ましくはそのN末端で、細胞の形質膜を透過する転座を促進する内在化ペプチドにリンクしていることができる。たとえば、HIV TAT内在化ペプチドYGRKKRRQRRRを使用することができる。アンテナペディアに由来する内在化ペプチドを使用することもできる(Bonfanti, Cancer Res. 57, 1442-6 (1997)を参照)。HIV Tat内在化ペプチドを含む二つの好ましいペプチドは、

および

である。
【0028】
内在化ペプチドなしの本発明のペプチドは、普通、3〜25個のアミノ酸を有し、5〜10個のアミノ酸、特に9個のアミノ酸のペプチド長(同じく内在化ペプチドなし)が好ましい。
【0029】
望むならば、実施例に記載する動物モデルを使用してペプチドまたはペプチド模倣体の適切な薬理活性を確認することができる。任意で、たとえば参照により本明細書に組み入れられるUS 20050059597に記載されたアッセイ法を使用して、PSD-95とNDMAR 2Bとの相互作用を阻害する能力に関してペプチドまたはペプチド模倣体をスクリーニングすることができる。有用なペプチドは典型的には、そのようなアッセイ法で50uM、25μM、10uM、0.1μMまたは0.01μM未満のIC50値を有する。好ましいペプチドは典型的には、0.001〜1μM、より好ましくは0.05〜0.5または0.05〜0.1μMのIC50値を有する。
【0030】
前記のようなペプチドを、任意で、誘導体化(たとえばアセチル化、リン酸化および/またはグリコシル化)して、阻害物質の結合親和力を改善し、阻害物質が細胞膜を通して運ばれる能力を改善し、または安定性を改善することもできる。具体例として、C末端からの第三の残基がSまたはTである阻害物質の場合、ペプチドの使用の前にこの残基をリン酸化することができる。
【0031】
任意で内在化ドメインに融合した本発明のペプチドは、固相合成または組み換え法によって合成することができる。ペプチド模倣体は、科学文献および特許文献、たとえばOrganic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223;Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119;Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27;Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234に記載されている多様な手法および方法を使用して合成することができる。
【0032】
IV. 脳卒中および関連症状
脳卒中は、原因を問わず、CNS中の血流障害から生じる症状である。潜在的な原因としては、塞栓形成、出血および血栓がある。一部のニューロン細胞は血流障害の結果としてただちに死滅する。これらの細胞は、グルタメートを含む成分分子を放出し、それが他方でNMDAレセプタを活性化し、それが細胞内カルシウムレベルおよび細胞内酵素レベルを高めてさらなるニューロン細胞死を招く(興奮毒性カスケード)。CNS組織の死が梗塞と呼ばれる。梗塞体積(すなわち、脳卒中の結果として死滅したニューロン細胞の体積)を、脳卒中の結果として生じる病理的損傷の程度の指標として使用することができる。症候効果は、梗塞の体積および梗塞が脳内のどこにあるのかのいずれにも依存する。障害指数、たとえばランキン脳卒中予後スケール(Rankin, Scott Med J;2:200-15 (1957)) およびバーセル指数を症候損傷の尺度として使用することができる。ランキンスケールは、患者の広域的病状を以下のように直接評価することに基づく。
【0033】
0 全く症候なし
1 症候があるが、有意な障害なし;通常の作業および活動をすべて実施することができる。
2 わずかな障害あり;以前の活動をすべては実施することができないが、支援なしで身の回りの世話をすることができる。
3 いくらかの支援を要する中程度の障害があるが、支援なしで歩くことができる。
4 中程度ないし重度の障害があり;支援なしで歩くことができず、かつ支援なしでは自らの身体的必要性をまかなうことができない。
5 重度の障害があり;寝たきりであり、自制がきかず、絶えず介護および注意を要する。
【0034】
バーセル指数は、日常生活の10種の基本活動を実行する患者の能力に関する一連の質問に基づいて0〜100のスコアを出す。低いスコアほど、より強い障害を示す(Mahoney et al., Maryland State Medical Journal 14:56-61 (1965))。
【0035】
虚血性脳卒中とは、より具体的には、脳への血流の遮断によって引き起こされるタイプの脳卒中をいう。このタイプの遮断の基礎にある症状は、もっとも一般的には、血管壁をライニングする脂肪付着の増大である。この症状はアテローム硬化症と呼ばれる。これらの脂肪付着物は二つのタイプの閉塞を生じさせることができる。脳血栓とは、血管の詰まり部で発生する血栓(血餅)をいう。「脳塞栓形成」とは、一般に、循環系の別の場所、通常は心臓ならびに胸上部および頚部の大動脈で形成する血餅をいう。その後、血餅の一部が剥がれ、血流に入り、脳の血管中を移動したのち、通過できないほど細い血管に達する。閉塞形成の第二の重大な原因は、動脈細動として知られる不規則な心拍である。これは、血餅が心臓内で形成し、剥がれ、脳に移動する条件を作り出す。虚血性脳卒中のさらなる潜在的原因は、出血、血栓、動脈または静脈の切開、心停止、出血をはじめとする何らかの原因のショックおよび医原性原因、たとえば脳血管もしくは脳に通じる血管に対する直接的な手術傷害または心臓手術である。虚血性脳卒中はすべての脳卒中症例の約83%を占める。
【0036】
一過性虚血発作(TIA)は、小さい、または警告的な脳卒中である。TIAでは、虚血性脳卒中を示唆する条件が存在し、典型的な脳卒中警告徴候が出る。しかし、閉塞(血餅)は短時間しか送らず、正常な機構を経て自ら回復する傾向にある。
【0037】
出血性脳卒中は脳卒中症例の約17%を占める。脆弱化した血管が破裂し、周囲の脳に血液が流れ込む結果として生じる。血液は蓄積し、周囲の脳組織を圧迫する。二つの一般的なタイプの出血性脳卒中は脳内出血およびくも膜下出血である。出血性脳卒中は、脆弱化した血管の破裂から生じる。脆弱化した血管の破裂の潜在的な原因としては、高血圧が血管の破裂を生じさせる高血圧性出血または脆弱化した血管のもう一つの基礎的原因、たとえば動脈瘤、動静脈奇形(AVM)または空洞性奇形をはじめとする破裂した脳血管奇形がある。出血性脳卒中はまた、梗塞中の血管を脆弱化させる虚血性脳卒中の出血性悪性転換または異常に弱い血管を含むCNS中の原発腫瘍もしくは転移腫瘍からの出血から生じることができる。出血性脳卒中はまた、医原性原因、たとえば脳血管に対する直接的手術傷害から生じることもある。動脈瘤とは、血管の脆弱化領域の膨張である。処置されずに放置されると、動脈瘤は脆弱化し続け、最後に破裂し、脳中に出血する。動静脈奇形(AVM)は、異常に形成された血管の集団である。空洞性奇形は、脆弱化静脈構造からの出血を生じさせることができる静脈異常である。これらの血管のいずれかが破裂し、同じく脳中への出血を生じさせるおそれがある。出血性脳卒中は物理的外傷の結果として生じることができる。脳の一部分における出血性脳卒中は、出血性脳卒中で失われる血液の不足により、別の部分の虚血性脳卒中を招くおそれがある。
【0038】
また、いくつか他の神経学的病状がNDMAR媒介興奮毒性による神経学的死滅を生じさせることがある。これらの病状としては、てんかん、低酸素症、脳卒中に関連しないCNSへの外傷、たとえば外傷性脳外傷および脊髄外傷、アルツハイマー病およびパーキンソン病がある。
【0039】
V.脳卒中を増悪させる病状
脳卒中患者のサブセットは、本発明による処置の非存在で患者をすべての脳卒中患者、特にそのような増悪性同時罹患を欠く脳卒中患者に当てはまるよりも悪い予後に陥らせる同時罹患症状である、増悪性発熱および/または高血糖を有する。
【0040】
発熱(熱としても知られる)とは、平熱(37℃、華氏98.6度)を少なくとも0.5℃超えるレベルまでの内部体温の上昇をいう。一部の患者においては、発熱は少なくとも38、39または40℃である。発熱は、体の正常な体温調節設定点を超える体温上昇(過度な熱生成または不十分な温度調節または変化した体温調節設定点またはそれらの任意の組み合わせによる)の結果として生じる急性症状である高体温に関連する。発熱は、梗塞形成を促進することによって脳卒中を増悪させる。
【0041】
発熱は、脳卒中との増悪性同時罹患病状として、いくつかの状況の結果として生じることができる。一部の患者は、脳卒中を起こす前に感染を有し、その結果、脳卒中時、処置時(通常は脳卒中後1〜6時間)に発熱を生じさせ、それが通常、処置後少なくとも24時間持続する。他の患者は、脳卒中発症時には発熱を起こしていないが、脳卒中が、患者の体温を調節する脳区域に影響を及ぼすため、発熱を起こす。このような発熱は、脳卒中の発症と処置の開始との間に起こることができ、処置後も少なくとも24時間持続することができる。このような発熱はまた、処置を開始したのち発症し、処置の開始後の少なくとも24時間持続することができる。このタイプの自発性発熱はヒトにおける大きな脳卒中と関連づけられている(Azzimondi et al., 1995;Reith et al., 1996;Ginsberg and Busto, 1998; Boysen and Christensen, 2001)。他の患者は、脳卒中の発症時に高温に曝露された結果として発熱を起こす。そのような発熱は典型的には、患者の処置の開始にかけて持続するが、その後、軽減することもある。
【0042】
高血糖とは、過剰量のグルコースが血漿中を循環する病状である。血糖値は、1デシリットルあたりのミリグラム(mg/dL)または1リットルあたりのミリモル(mmol/L)のいずれかで計測することができる。一般に、正常な空腹時血糖値は、約80〜120mg/dLまたは4〜7mmol/Lの範囲である。約126mg/dLまたは7mmol/Lを超える空腹時血糖値は高血糖である。高血糖が脳卒中を増悪させる機構は議論の的であるが、一つの機構は、組織アシドーシスの促進(低下したpH)および/または活性化多くの細胞内応答、たとえばタンパク質キナーゼの活性およびタンパク質リン酸化、細胞内カルシウム代謝および糖質コルチコイドを含むホルモン代謝である。
【0043】
増悪性同時罹患としての高血糖はまた、いくつかの状況の結果として生じることができる。一つの状況はI型およびII型糖尿病の同時発生的存在である。血糖値はインスリンの投与によってある程度は制御することができるが、糖尿病患者は、血糖値のスイングに対して特に脆弱である。高血糖はまた、脳卒中発症の前に多量の食事、特に炭水化物を多く含む食事を取った結果であることもある。
【0044】
VI. 処置方法
上記ペプチドまたはペプチド模倣体は、上記のように発熱および/または高血糖によって増悪した脳卒中の患者を処置するために使用される。処置は通常、脳卒中の発症後できるだけ速やかに開始される。場合によっては、危険性が高いことがわかっている患者では、脳卒中の発症時またはその前に処置を開始することもできる。危険因子としては、高血圧、糖尿病、家族歴、喫煙、既往歴および実行中の手術がある。通常、処置は、まず、脳卒中の発症後1〜6時間以内に施される。任意で、処置を始める前に、発熱および/または高血糖の有無を判定するため、患者の体温および/または患者の血糖値を計測する。糖尿病または患者を高血糖に至らしめる他の代謝障害の存在を判定することもできる。任意で、処置を受けさせたのち、患者の体温および血糖値をいくつかの間隔または少なくとも1日1回はモニタリングする。多くの場合、本発明のペプチドまたはペプチド模倣体は一回の投与で十分である。しかし、6〜24時間の間隔で複数回の投与を施すこともできる。
【0045】
処置前および処置後の様々な時点で梗塞体積を測定することにより、処置に対する患者の応答をモニタリングすることができる。早期の虚血は、MRI拡散イメージングを使用して検出可能である。かん流イメージングを含むMRIプロトコルの組み合わせを使用すると、危険な状態にある組織を決定し、梗塞体積を予測することができる。方法は、好ましくは、本発明の方法による処置を受けない匹敵しうる患者集団の平均梗塞体積に比べて少なくとも10、15、20、25、30、35、40または50%の梗塞体積の減少を達成する。患者の応答はまた、処置開始後1日〜1週間で決定される障害指数から計測することもできる。患者は、好ましくは、本発明の方法による処置を受けない匹敵しうる患者集団の平均障害指数に比べて少なくとも4、10、15、20、25、30、35、40または50%の障害指数の改善(すなわち、より低い障害)を示す。患者は、好ましくは、ランキン脳卒中指数で0または1のスコアまたはバーセル指数で75を超えるスコアを示す。
【0046】
VII. 薬学的組成物、用量および投与経路
本発明のペプチドおよびペプチド模倣体は、薬学的組成物の形態で投与することができる。薬学的組成物はGMP条件下で製造される。薬学的組成物は、先に示した用量のいずれかを含有する単位剤形(すなわち、1回の投与のための用量)で提供することができる。薬学的組成物は、従来の混合、溶解、顆粒化、糖剤製造、研和、乳化、カプセル化、包括または凍結乾燥法によって製造することができる。特に、本発明の凍結乾燥ペプチドまたはペプチド模倣体は、以下に記す製剤および組成物として使用することができる。
【0047】
薬学的組成物は、薬学的に使用することができる製剤へのペプチドまたはペプチド模倣体の加工を容易にする一つまたは複数の生理学的に許容しうるキャリヤ、希釈剤、賦形剤または助剤を使用して、従来のやり方で製剤化することができる。適当な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0048】
投与は、非経口的、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、脊髄内、腹腔内、局所、鼻内または筋内投与であることができる。静脈内投与が好ましい。
【0049】
非経口投与のための薬学的組成物は、好ましくは無菌であり、実質的に等張性である。注射の場合、ペプチドまたはペプチド模倣体は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液、たとえばハンクス液、リンゲル液または生理食塩水もしくは酢酸緩衝液に調合することができる(注射部位の不快感を減らすため)。溶液は、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような調合剤を含有することができる。
【0050】
または、ペプチドまたはペプチド模倣体は、使用前に適当な溶媒、たとえばパイロジェンフリーの無菌水で構成されるための粉末形態にあることもできる。
【0051】
経粘膜投与の場合、透過させるバリヤに適した浸透剤が調合に使用される。この投与経路は、化合物を鼻腔に送達するために、または舌下投与の場合に使用することができる。
【0052】
経口投与の場合、化合物は、ペプチドまたはペプチド模倣体を薬学的に許容しうるキャリヤと合わせることにより、処置される患者によって経口摂取される錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等として製剤化することができる。経口固形製剤、たとえば散剤、カプセル剤および錠剤の場合、適当な賦形剤としては、充填剤、たとえば糖、たとえばラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール、セルロース剤、たとえばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)、顆粒化剤ならびに結合剤がある。望むならば、崩壊剤、たとえば架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩、たとえばアルギン酸ナトリウムを加えることができる。望むならば、固形剤形を、標準的技術を使用して糖衣錠化または腸溶剤化することができる。経口液状製剤、たとえば懸濁剤、エリキシル剤および液剤の場合、適当なキャリヤ、賦形剤または希釈剤としては、水、グリコール、油、アルコールがある。さらには、香料、保存剤、着色剤等を加えることができる。
【0053】
上記製剤に加えて、化合物はまた、デポー剤として製剤化することもできる。このような長時間作用剤は、埋め込み(たとえば皮下または筋内)または筋注射によって投与することができる。したがって、たとえば、化合物は、適当なポリマーまたは疎水性材料(たとえば許容しうる油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂とで製剤化することもできるし、難溶性誘導体、たとえば難溶性塩として製剤化することもできる。
【0054】
または、他の薬学的送達システムを使用することもできる。リポソームおよびエマルションを使用して、ペプチドおよびペプチド模倣体を送達することができる。また、特定の有機溶媒、たとえばジメチルスルホキシドは、通常、より高い毒性の犠牲を払うなら使用することができる。さらには、化合物は、徐放系、たとえば治療剤を含有する固形ポリマーの半透過性マトリックスを使用して送達することもできる。
【0055】
徐放性カプセル剤は、その化学的性質に依存して、ペプチドまたはペプチド模倣体を数週から100日を超える期間かけて放出することができる。治療剤の化学的性質および生物学的安定性に依存して、さらなるタンパク質安定化戦略を使用することができる。
【0056】
本発明のペプチドまたはペプチド模倣体は、帯電した側鎖または末端を含むことができるため、遊離酸もしくは塩基または薬学的に許容しうる塩として上記製剤のいずれかに含めることができる。薬学的に許容しうる塩とは、遊離塩基の生物学的活性を実質的に保持し、無機酸との反応によって調製される塩である。薬学的塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性および他のプロトン性溶媒に可溶性である傾向を示す。
【0057】
本発明のペプチドまたはペプチド模倣体は、所期の目的(たとえば、損傷性の脳卒中および関連症状の損傷効果の減少)を達成するのに有効な量で使用される。治療有効量とは、本発明のペプチドまたはペプチド模倣体で処置されない脳卒中患者(または動物モデル)の対照集団における損傷に比べて、本発明のペプチドまたはペプチド模倣体で処置される患者(または動物モデル)の集団における脳卒中から生じる損傷を有意に減らすのに十分なペプチドまたはペプチド模倣体の量をいう。量はまた、処置される個々の患者が、本発明の方法によって処置されない匹敵しうる患者の対照集団における平均予後よりも好ましい予後を達成するならば(梗塞体積または障害指数によって判定)、治療的に有効とみなされる。量はまた、処置される個々の患者が、ランキンスケールで2またはそれ以下およびバーセルスケールで75またはそれ以上の障害を示すならば、治療的に有効とみなされる。用量はまた、処置される患者集団が、障害スケールで、匹敵しうる非処置集団よりも有意に改善されたスコア分布(すなわち、より低い障害)を示すならば、治療的に有効とみなされる。たとえば、Leesら、N Engl J Med 2006;354:588-600Aを参照。治療有効投薬計画とは、先に記した所期の目的を達成するために必要な治療有効量と投与頻度との組み合わせをいう。通常、一回の投与で十分である。
【0058】
好ましい用量範囲は、脳卒中から6時間以内で、患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体0.001〜20μmol、任意で患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体0.03〜3μmol、患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体μmolまでを含む。方法によっては、6時間以内に患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体0.1〜20μmolを投与する。方法によっては、6時間以内に患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体0.1〜10μmol、より好ましくは6時間以内に患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体約0.3μmolを投与する。他の場合には、用量範囲は、患者体重1kgあたりペプチドまたはペプチド模倣体0.005〜0.5μmolである。体重1kgあたりの用量は、異なる表面積対質量比を補正するために6.2で割ることにより、ラットからヒトに換算することができる。用量は、ペプチドのモル重量で乗じることにより、モル単位からグラム単位に換算することができる。ヒトに使用する場合に適当なペプチドまたはペプチド模倣体の用量は、0.001〜5mg/患者体重kgまたはより好ましくは0.005〜1mg/患者体重kgまたは0.05〜1mg/kgまたは0.09〜0.9mg/kgを含む。75kgの患者の場合の絶対重量では、これらの用量は、0.075〜375mg、0.375〜75mgまたは3.75mg〜75mgまたは6.7〜67mgに換算される。たとえば患者体重の変動を考慮して丸めると、用量は通常、0.05〜500mg、好ましくは0.1〜100mg、0.5〜50mgまたは1〜20mgの範囲である。
【0059】
ペプチドまたはペプチド模倣体の投与量は、処置される対象、対象の体重、病気の重篤さ、投与方法および処方医師の判断に依存する。治療は、症候が検出可能である間または検出可能ではない間でも、断続的に繰り返すことができる。治療は、単独で提供することもできるし、他の薬と組み合わせて提供することもできる。
【0060】
本ペプチドまたはペプチド模倣体の治療有効量は、実質的な毒性を生じさせることなく治療の恩恵を提供することができる。ペプチドまたはペプチド模倣体の毒性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手法によって、たとえばLD50 (集団の50%にとっての致死量)またはLD100 (集団の100%にとっての致死量)を測定することによって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数である。高い治療指数を示すペプチドまたはペプチド模倣体が好ましい(たとえば、Fingl et al., 1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1を参照すること)。
【0061】
VIII. スクリーニング法
本発明はさらに、脳卒中の損傷効果を減少させるのに有用な活性に関してペプチド、ペプチド模倣体および他の化合物をスクリーニングする方法を提供する。方法は、PSD-95とNMDRA 2Bとの相互作用を阻害することが知られる化合物をスクリーニングするのに特に有用である。化合物は、化合物投与時に動物が発熱および/または高血糖を有する脳卒中の動物モデルに投与される。発熱は虚血性事象によって誘発されることができる。たとえば、実施例に記載される永久的限局性虚血に付されたラットは、おそらくは温度調節を制御する脳に影響する脳の区域に影響する虚血のため、自発的に発熱を起こす[実験動物はまた、発熱を起こさせるパイロジェン性物質、たとえばバクテリア産物(内毒素)の導入により、または、加熱ランプ、加熱ブランケットまたは他の加熱装置を使用して周囲温度を動物が通常の生理学的機構、たとえば発汗または血管拡張によって体温調節する能力を超える程度まで上昇させることにより、発熱させることができる。動物は、虚血開始の6〜12時間内に餌を与えるだけで、高血糖に付すことができる。化合物を動物に投与したのち、梗塞体積および/または障害指数を決定する。梗塞体積は、通常、処置の24時間後に測定されるが、より遅い時点、たとえば3、7、14または60日後に測定することもできる。障害指数は、時間をかけて、たとえば処置の2時間後、24時間後、1週間後および1ヶ月後にモニタリングすることができる。化合物で処置されない対照動物に比べて梗塞体積および/または障害指数の統計的に有意な減少を示す化合物が、本発明の方法を実施するのに有用な活性を有するものと同定される。
【0062】
方法でスクリーニングするのに適した化合物としては、PSD-95とNDMAR 2Bとの相互作用を阻害することが知られているペプチド、ペプチド模倣体および小分子(すなわち、500Da未満)がある。また、表Aに示す、NDMARおよびPDZドメインタンパク質の他の対の間の相互作用を阻害することが知られている他のペプチド、ペプチド模倣体および小分子をスクリーニングすることもできる。
【0063】
(表A)PL配列を有するNMDAレセプタ

【0064】
スクリーニングされる化合物は、天然および合成、有機および無機、ポリマー(たとえばオリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド)、小分子、抗体、糖、脂肪酸、ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体、天然構造の類似体(たとえばペプチド模倣体、核酸類似体等)ならびに他の数多くの化合物であることができる。化合物は、多様性ライブラリ、たとえばランダムまたはコンビナトリアルペプチドまたは非ペプチドライブラリから調製することができる。ライブラリとしては、化学合成ライブラリ、組み換えライブラリ(たとえばファージディスプレイライブラリ)およびインビトロ翻訳ベースのライブラリがある。化学合成ライブラリの例は、Fodor et al., 1991, Science 251:767-773; Houghten et al., 1991, Nature 354:84-86; Lam et al., 1991, Nature 354:82-84; Medynski, 1994, Bio/Technology 12:709-710; Gallop et al., 1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251; Ohlmeyer et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926; Erb et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422-11426; Houghten et al., 1992, Biotechniques 13:412; Jayawickreme et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614-1618; Salmon et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11708-11712; WO 93/20242; およびBrenner and Lerner, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383に記載されている。ファージディスプレイライブラリの例は、Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin et al., 1990, Science, 249:404-406; Christian, R.B., et al., 1992, J. Mol. Biol. 227:711-718); Lenstra, 1992, J. Immunol. Meth. 152:149-157; Kay et al., 1993, Gene 128:59-65; 1994年8月18日付けのWO94/18318に記載されている。インビトロ翻訳ベースのライブラリとしては、WO91/05058; およびMattheakis et al., 1994, Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:9022-9026に記載されているライブラリがある。非ペプチドライブラリの例として、ベンゾジアゼピンライブラリ(たとえば、Bunin et al., 1994, Proc. Natl Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照)を、使用に適合させることができる。ペプトイドドライブラリ(Simon et al., 1992, Proc. Natl Acad. Sci. USA 89:9367-9371)を使用することもできる。ペプチド中のアミド官能基が過メチル化されて化学的に変形されたコンビナトリアルライブラリを生成している、使用することができるライブラリのもう一つの例が、Ostreshら(1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142)に記載されている。
【0065】
実施例
材料および方法
PSD-95阻害物質
合成ペプチド(Advanced Protein Technology Centre, Hospital for Sick Kids, Toronto, OntarioまたはBACHEM California)を、NMDARと膜直下足場タンパク質PSD-95との相互作用を阻害するものと指定した。PSD-95は、その第二のPDZドメイン(PDZ2; Hung, 2002で考察)を介してNMDAR NR2サブユニットおよびnNOSに結合し、それにより、nNOSをNMDARと機能的に密接に会合した状態に維持する(Brenman, 1996; Brenman, 1997)。NMDAR NR2BサブユニットとPSD-95のPDZ2ドメインとの相互作用は、NR2Bの保存されたC末端T/SXVモチーフに依存する(Kornau, 1995)。この相互作用は、NR2BのSXV PDZドメイン結合モチーフを含有する9残基ペプチド配列(KLSSIESDV(SEQ ID NO.: 9); NR2B9c(SDV)と呼ぶ)を含有する外来性タンパク質の細胞内導入によって乱すことができる(Aarts, 2002)。ここで、同じくPSD-95のPDZ2ドメインと相互作用するTXVモチーフを含有するさらなる配列(KLSSIETDV(SEQ ID NO.: 10); NR2B9c(TDV)と呼ぶ)を合成した(Kornau, 1995)。これらのペプチドは、タイプI PDZドメイン相互作用を介してPSD-95と会合する(Aarts, 2004で考察)。また、C末端T/SXVモチーフの0および-2位置の残基がアラニンに突然変異して、PSD-95との結合を不可能にした対照ペプチド(KLSSIEADA(SEQ ID NO.: X)、NR2B(ADA)と呼ぶ)を合成した(Kornau, 1995; Aarts, 2002)。
【0066】
NR2B9c(SDV)、NR2B9c(TDV)またはNR2B(ADA)は、それら自体では、細胞に入ることができるとは考えられず、したがって、各ペプチドを、HIV-1-Tatタンパク質(YGRKKRRQRRR(SEQ ID NO.: 21);Tat)の対応する細胞膜タンパク質形質導入ドメイン(PTD)に融合させて、アミノ酸20個のペプチドTat-NR2B9c(SDV)、Tat-NR2B9c(TDV)およびTat-NR2B(ADA)を得た。Tat PTDは、速やかな用量依存的やり方で細胞膜を形質導入する(Schwarze, 1999)。この手法は、以前、インビトロおよびインビボで小さなペプチドおよび融合タンパク質をCNSニューロンに導入するために使用されて成功したものであり(Aarts., 2002; Arundine, 2004)、これまで、他にも多くの研究者が、脳卒中の最中および後で、タンパク質形質導入を使用して全身投与されたタンパク質を脳に送達することができることを証明している(Asoh, 2002; Borsello, 2003; Cao, 2002; Denicourt, 2003; Dietz, 2002; Eum, 2004; Kilic, 2002, 2003; Kim, 2005)。
【0067】
ペプチドは、毎日、凍結乾燥粉末を生理食塩水に溶解して所望の最終濃度にすることによって調製した。これらのペプチドを、処置グループを知らされていない個人が、ゆっくりと(4〜5分)注射によって静脈内投与した。
【0068】
実験は、体重250〜30Ogのオス成体SDラット(Charles River Laboratory, Canada)で実施した。すべての処置は、Canadian Council on Animal Careによって設けられたガイドラインに準じ、University Health Network動物管理委員会の承認を受けたものであった。すべての動物を1〜2匹のグループでケージに収容し、食物および水を自由に与えながら、20±1℃の周囲温度および12:12時間の光/暗サイクルの部屋に入れた。
【0069】
手術標本
各動物を計量したのち、麻酔を導入した。永久的軟膜血管閉塞モデルの場合、ラットを、ケタミン(100mg/kg)、アセプロマジン(2mg/kg)およびキシラジン(50mg/kg)で、必要に応じて初期量の1/3を補充しながら麻酔処理した。二つの永久的中大脳動脈閉塞(pMCAO)実験の場合、麻酔を、一酸化窒素と酸素との混合物(容量比2:1)中3.5%ハロタンで導入し、混合物中0.8%ハロタンで維持した。ラットに気管内挿管を施し、機械的に呼吸させた(毎分60回、1回呼吸量30〜35ml)。直腸温度プローブを挿入した。血圧記録、血液サンプリングおよび薬物注入のためにポリエチレンカテーテル(PE-50)を左大腿動脈および静脈に導入した。圧力変換器に接続された大腿動脈留置カテーテルを使用して平均動脈血圧を計測し、連続的に記録した。動脈血液ガス、pHおよび血糖値の連続計測を実施した。
【0070】
核心温、脳温および側頭温度計測および温度制御
虚血を起こす前日に、核心温(CT)および活動モニタリングを可能にする腹腔内送信器(E-Mitter; Mini Mitter/Respironics, Oregon, USA)を動物に埋め込んだ。モニタリングをpMCAOの20時間前から24時間後まで連続的に実施した(Mini-Mitter VitalView遠隔測定モニタリングソフトウェア; Mini Mitter/Respironics, Oregon, USA)。動物の手術中は、動物を遠隔計測受信器から引き離して、CTが直腸プローブで計測され、加熱ランプまたは恒温ブランケットを使用して36.5℃〜37.5℃に維持されるようにした。pMCAO後の脳温を計測するために、右頭蓋骨を露呈させ、ブレグマからAP 3.3mm、ML 4.0mm、DV 3.0mmの定位座標で直径1mmの穴を穿孔した。平滑末端19ゲージ金属カニューレ(長さ10mm)を深さ5mmまで挿入し、デンタルグルーで定位置に固定した。金属カニューレに挿入した小さな熱電対プローブを使用して、0、1、2、4および24時間で脳温を記録した。18ゲージ針を介して側頭筋に挿入した同じ熱電対プローブで側頭筋温度を計測した。外部温度プローブおよびデジタルオシロスコープ上で稼働するソフトウェア(Tektronix WaveStarソフトウェア;Tektronix, Texas, USA)および別個のコンピュータを使用してケージ温度を絶えず記録した。一部の実験では、ペルチェベースの冷却装置(Igloo KoolMate 18;Texas, USA)を駆動するカスタムメイドのフィードバック制御装置を使用して、ケージ温度を動物のCTに基づいて絶えず調節した。冷却装置は、動物のCTが37.1℃のしきい値を超えるたびに自動的に起動させた。
【0071】
永久的遠位中大脳動脈軟膜血管閉塞
これは、他で記載されているようにして実施した(Forder, 2005)。簡潔にいうと、右ECAにPE10ポリエチレン管をカニューレ挿入した。正中線切開によって頭蓋骨を露呈させ、右体性感覚皮質の上方(ブレグマに対して2mm尾側かつ5mm外側)に6〜8mmの頭蓋開口部を設けた。生理食塩水中のバイタル染料パテントブルーバイオレット(10mMol/L; Sigma)の小さなボーラス(10〜20μL)をECAに注入することによって軟膜動脈を視覚化した(図2A)。同じ三つの軟膜細動脈MCA枝を電気的に焼灼し、染料注入を繰り返して焼灼した細動脈中の流れの遮断を保証した。その後、切開部を閉じ、動物をそのケージに戻し、食物および水を自由に与えた。この永久的虚血モデルは、凝固した末端軟膜動脈の下にある皮質に限定される、非常に再現精度の高い(Forder, 2005)小さな梗塞を作り出す(図2A、B)。
【0072】
永久的中大脳動脈閉塞
Longa (1989)によって記載されている腔内縫合法によって左中大脳動脈を閉塞させた。簡潔にいうと、正中線頚部切開によって左総頚動脈(CCA)を露呈させ、周辺の神経および筋膜から、頭蓋骨の底部へのその分枝から切り離した。次いで、外頚動脈(ECA)の後頭動脈枝を分離させ、それらの枝を切り離し、凝固させた。ECAをさらに遠位まで切り離し、末端舌側および顎動脈枝とともに凝固させたのち、それらを分割した。内頚動脈(ICA)を分離し、隣接する迷走神経から注意深く切り離し、翼突口蓋動脈をその起始の近くに結紮した。長さ4cmの3-0モノフィラメントナイロン縫合糸(Harvard Apparatus)の先端を焼却によって丸めて、0.33〜0.36mmの先端径および0.5〜0.6mmの先端長さを達成し、ポリ-L-リシンでコートした(Belayev et al., 1996)。縫合糸をCCAに通し、ICAの中に進め、そこからウィリス輪(頚動脈分岐から約18〜20mm)に入れ、中大脳動脈を効果的に閉塞した。CCAの周囲の絹縫合糸を腔内ナイロン縫合糸の周囲に締めてそれを固定し、中大脳動脈を永久的に閉塞させた。偽手術を施した動物にも、CCAの永久結紮を含め、同一の処置を実施したが、MCAを閉塞するための縫合糸挿入は実施しなかった。pMCAOの2時間後で動物の神経行動スコア(下記)が10を超えた場合、そのpMCAO処置が適切であたとみなした。動物を室温で麻酔から回復させた。
【0073】
神経行動評価
pMCAOの2時間後およびさらに24時間後、行動スコア付けを実施した。一連の試験は、神経学的機能の様々な局面を評価するために以前に使用された(Aarts, 2002)二つの試験、すなわち、体位反射試験(Bederson, 1986b)および前肢踏み直り試験(De Ryck, 1989)からなるものであった。神経学的機能を0〜12のスケールで等級付けした(通常スコア0、最大スコア12)。
【0074】
梗塞体積評価
pMCAOの24時間後、ハロタン吸入を用いて動物に深い麻酔を施し、脳を速やかに取り出し、8個の標準冠状切片にスライスし、生理食塩水中2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC; Sigma, St. Louis, USA)中、37℃で30分間温置した。この標準技術(Hatfield., 1991; Bederson, 1986a、Joshi, 2004)は、梗塞区域を脳切片の淡い非染色部分として顕在化させる。各切片をデジタル写真撮影したのち、梗塞を、8個の標準冠状切片を表すテンプレート上にトレースした。テンプレートの使用が、梗塞によって生じた任意の脳浮腫分を修正して、梗塞体積のより正確な測定を可能にする。そして、各梗塞区域をテンプレートからデジタル式にトレースし(MCID Version 6.0, Imaging Research Inc., St. Catharines, Ontario, Canada)、脳一つ当たり8個の梗塞区域を積算して体積を出した。
【0075】
データ分析
薬物注入を含むすべての動物手術、行動評価および梗塞体積測定は、処置グループを知らされていない個人が実施した。pMCAOデータの分析(結果の項)からの動物の除外は、処置グループを知らされていない個人によって予見的に適用される、事前に設けられた基準に基づくものであった。事前に設けられた除外基準は、殺処分前の全死亡、pMCAO前およびMCAO後10分間、CTを37.0±1.0℃で維持できない場合、pCO2を35〜45mmHgに維持することができない場合または手術中の平均動脈血圧(MABP)が100mmHgを超える場合、pMCAOの2時間後で神経行動スコアが10を超えることができない場合、手術の技術的複雑さならびに形態的評価における任意の基底核梗塞の欠如であった。データは、平均±S.E.M.で表した。ANOVAを使用したのち、ボンフェローニ修正を使用して多数の比較を実施することにより、グループ間の差を分析した。
【0076】
結果
血糖値に対する終夜絶食の影響
動物の絶食は、実験的脳卒中研究における一般的な実施であり(たとえば、Belayev, 2005b; Aronowski, 2003; Nakashima, 1995; Kuge, 1995)、主に、神経保護化合物の効能に対する高血糖の悪影響に対して実施することができる。血糖値に対する終夜絶食の影響を計測するため、SDラットを、水だけにアクセスさせるか(絶食期間16時間; n=8; 体重278.38±14.86g)、または食物および水の両方にアクセスさせるか(非絶食; n=12; 体重276.50g±13.69g)のいずれかにした。朝、血糖値を測定した。食物および水の両方に終夜の自由なアクセスを許された動物は、水には終夜自由にアクセスできたが食物にはアクセスできなかった動物よりも有意に高い血糖値を示した(それぞれ5.50±0.08mMol/1対3.71±0.21mMol/l; t18=9.134; p<0.001)。
【0077】
核心温に対するPSD-95阻害物質の影響
以前の実験が、一部の抗虚血剤の神経保護効果が少なくとも部分に薬物誘発低体温に関連する可能性があることを証明している(たとえばMK-801; Corbett, 1990)。逆に、薬物が高体温を誘発するならば、その保護効果が減少するかもしれない(Noor, 2005; Memezawa, 1995)。PSD-95阻害が核心温(CT)に影響するかどうかを判定するために、遠隔測定腹腔内温度モニタを埋め込んだラット(n=6)で計測を実施した。本実験で使用したPSD-95阻害物質の最高用量である3nモル/gのTat-NR2B9c(SDV)の1回の静脈注射の20時間前から24時間後までCTを計測した。CTの変化を、生理食塩水注入(溶媒、n=4)を用いる偽手術(方法)を受けた動物の変化に比較した。両グループの動物は、麻酔停止後、CTの軽い上昇(約0.5℃)を示したが、10〜15時間でベースラインに戻った。しかし、偽(溶媒)注入動物とペプチド注入動物との間でどの時点にもCTの差はない(図1A、B)。CTの一過性上昇は、全身麻酔後の齧歯類で認められており(Hansen et al., 2002; Weinandy et al,, 2005)、麻酔ストレスが原因であるとされている。
【0078】
核心温に対するpMCAOの影響
自発的な持続性の高体温は、おそらくは視床下部損傷(Zhao, 1994)または視床下部の温度調節中枢の早期ミクログリア活性化(Abraham., 2003)による、MCAO後の重篤な虚血の認識された結果である(Roberts-Lewis., 1993; Zhao., 1994; Reglodi., 2000; Legos, 2002; Abraham, 2002, 2003)。pMCAO後の一貫した持続性の高体温を達成するために、MCA閉塞に使用したフィラメントを、虚血後高体温の程度および大脳梗塞の大きさが閉塞フィラメントのサイズに関連することを実証したAbraham(Abraham, 2002)にしたがって改造した。先端径0.33〜0.36mmのフィラメントを使用してpMCAOを誘発した(方法)。これが、pMCAO後に動物の温度を急上昇させて、pMCAOの約2時間後で約39.5℃のピークに到達させ、24時間の観察期間にわたり39℃以上の高い状態を維持させた(図1D)。
【0079】
次に、自発的な高体温が、動物が体温調節能力の欠損をこうむった結果であるのかどうかを判定した。フィードバック制御ケージ温度調節装置を使用して(方法)、CTが37.1℃のしきい値を超えるたびにケージを冷却することにより、虚血動物(n=8)における適温の誘発を試みた(図1E)。動物を、pMCAOを受けたが、ケージを室温に維持しておいたコホート群(n=8)と比較した(図1D)。pMCAOに対する高体温応答は、周囲温度低下による冷却に対して耐性であり、ケージ温度が約8℃に低下した場合でも動物は≧39℃のCTを維持した(図1E)。以前の実験が、この高体温応答の鈍化には、毛の大部分を刈り取り、動物を4℃に置き、局所的に70%アルコールを塗布することからなる極端な手段を要することを示唆している(Reglodi, 2000)。したがって、pMCAO後のロバストで持続性の高体温は、動物の体温調節能力欠如によるものではなく、動物の温度設定点の変化(発熱)によるものであると結論づけられた。
【0080】
核心温に対する軟膜血管閉塞の影響
pMCAOモデルが高体温を生じさせたため、PSD-95阻害物質を使用する神経保護を、pMCAOによって生じる高体温とは独立して評価することができるよう、CTを変化させない永久的虚血モデルを求めた。このために、CTに影響を加えないために、小さな梗塞(図2A、B)を生じさせる軟膜血管閉塞モデル(方法)を使用した。この虚血傷害に付された動物(n=5)は、偽手術動物と比較してCTの有意な変化を示さなかった(図1A、C)。
【0081】
pMCAOにおける核心温と脳温との関係
脳温は虚血性損傷の程度と非常に直接的に相関することができるが(Busto, 1987a, 1987c, 1989b; Dietrich, 1992; Minamisawa, 1990a; Morikawa, 1992)、任意の全身投与された薬物が核心温から独立して脳温に影響を及ぼすという可能性は低い。この実験で核心温計測値が脳温を反映するかどうかを判定するために、核心温モニタリングしながらpMCAOを受けた一部の動物に対し、脳から直接の温度計測および、一部の実験では、脳温の代替尺度として、側頭筋からの温度計測を実施した。生理食塩水(n=6、図1F)または3nモル/gのTat-NR2B9c(SDV)(n=6、図1F)のいずれかを与えられた動物では、核心温計測値は脳温および側頭筋温度とで0.5℃以内に相関した。したがって、実験の残りではCT計測値を使用した。
【0082】
データ分析からの除外
除外基準(方法)は、処置グループを知らされていない個人によって適用された。軟膜血管閉塞からのすべての除外が表1に詳述されている。PSD-95阻害物質の投与後に除外された動物はなかった。二つのpMCAO実験の分析からの除外が表2にリストされている。簡潔にいうと、手術中の死亡が、動物を分析から除外した主な理由であった。第一および第二の独立したpMCAO実験それぞれにおけるラットの全死亡率は8.7%および16.4%であり、薬物注入またはアイデンティティへの明らかな関係は見られなかった。剖検により、死亡率が主に、pMCAOフィラメントによる動脈穿孔によって誘発されたくも膜下出血および/または脳出血に関連することが明らかになった。
【0083】
梗塞体積に対するPSD-95阻害物質の影響
脳卒中発症後の処置がおそらくはもっとも臨床的な妥当性を有するため、すべての実験で、虚血発症の1時間後にPSD-95阻害物質を投与した。
【0084】
まず、軟膜血管閉塞モデルにおけるTat-NR2B9c(SDV)の効果(図2A)を評価した。血管閉塞の1時間後、動物を、溶媒(生理食塩水)、低用量(0.3nモル/g)または高用量(3nモル/g)のPSD-95阻害物質で処置した。このスクリーニング実験におけるさらなる対照として、PSD-95に結合することができず(Kornau, 1995; 方法)、興奮毒性脆弱性(Aarts, 2002; Arundine et al., 2004)または梗塞サイズ(Aarts, 2002)に影響しないペプチドであるTat-NR2B9c(ADA)を使用した。溶媒またはTat-NR2B9c(ADA)のいずれかによる動物の処置は、軟膜血管閉塞の下方にある皮質に限局化された、半球体積の約9〜10%を占める梗塞を生じさせた(図2B)。Tat-NR2B9c(SDV)(3nモル/g)による動物の処置は梗塞を約60%縮小させた(図2C、D)。
【0085】
次に、pMCAOにおいてPSD-95阻害物質を使用した。pMCAOを受けたすべての動物は同程度の高体温を示し、CTは最初の8時間で39.5℃を超え、その後も約39℃のままであった(図3A〜E)。処置グループの間でピークまたは平均温度上昇のいずれにも有意な差がなかったため(ANOVA、それぞれp>0.15)、PSD-95阻害物質の注入は、pMCAO後の高体温応答に対して影響を及ぼさなかった。
【0086】
処置されずにpMCAOを受けた動物は、24時間で皮質表面および深部構造の大部分を占有した大きな半球梗塞をこうむった(図4B)。しかし、pMCAOの1時間後、PSD-95阻害物質Tat-NR2B9c(SDV)による治療(0.3〜3.0nM/g)が、全梗塞体積(たとえば図4C、D)を最大で40%減少させ(図5Ai)、その効果は梗塞の皮質部分で非常に顕著であった(約45%の皮質梗塞減、図5Aii)。組織梗塞の減少は、梗塞体積を定量するための使用されたすべての定位面で認めることができた(図4C、D、6Ai、Aii)。
【0087】
Tat-NR2B9c(SDV)ペプチドによる神経保護は、以前、本発明者らにより、インビトロ(Aarts, 2002; Arundine., 2004)および一過性の可逆性MCAOモデルを使用するインビボ(Aarts, 2002)で報告されている。-0および-2位置の末端アミノ酸が重要であり、一つの残基の突然変異さえ、NR2B C末端とPSD-95との会合を阻止または低下させる(Bassand, 1999)。しかし、C末端TDVコンセンサス配列で終端するペプチドもまた、PSD-95をはじめとする同様なタンパク質標的に結合すると予測される(Kornau, 1995, 1997; Niethammer, 1996; Bassand, 1999)。そうならば、それらもまた、類似した神経保護効果を示すことができる。しかし、これは任意の疾病モデルで判定されたことはない。この仮説を試験するため、同じ実験で、Tat-NR2B9c(SDV)の場合と同じ条件下、Tat-NR2B9c(TDV)を0.3mM/gおよび3.0nM/gで使用した。図4E、F、5Ai、Aiiおよび6Ai、Aiiに示すように、このペプチドもまた、半球梗塞体積を約35%減少させ、皮質梗塞を40〜45%減少させた。
【0088】
次に、第一の実験から得られた新規な発見の再現性を評価した。第一の実験と同様にして、第二の確認実験を実施した。この確認実験は、より低濃度のTat-NR2B9c(SDV)ペプチドの効果およびTat-NR2B9c(TDV)ペプチドの効果を複製することに重点を置くものであった。手術法が動物脳卒中モデルにおける主要な変数であるため、二つの独立した実験における手術は、異なる外科医によって盲検的に実施された。第一の実験と同様に、pMCAOの1時間後にすべてのペプチドを投与した。確認実験を実施するチームは、第一の実験の結果を知らされなかった。
【0089】
確認実験は、第一の実験と同様な結果を出し、Tat-NR2B9c(SDV)およびTat-NR2B9c(TDV)ペプチドはいずれも、半球および皮質梗塞体積の減少に対して同様な効果を有するものであった(図5Bi、Bii、6Bi、Bii)。
【0090】
ケージ活動および神経行動スコアに対するPSD-95阻害物質の影響
高体温と組み合わせた非絶食動物におけるpMCAO腔内縫合糸閉塞モデルの欠点は、実験動物が、重篤な神経学的欠損を生じさせる広範な脳傷害を患うということである(非処置動物における複合神経学的スコア>11、図7A)。このスコアが24時間までに自発的に改善する一過性MCAOの場合とは異なり(Belayev., 2001; Aarts, 2002)、この一連の実験における非処置動物は、深く損傷を受けたままであった(24時間複合神経学的スコア約11)。PSD-95阻害物質で処置された動物は、pMCAOの24時間後には神経学的スコアが改善に向かう傾向を示したが、これらの結果は統計学的有意には至らなかった(対応スチューデントt検定、P>0.05; 図7A)。しかし、ケージ活動の遠隔測定モニタリング(Colbourne, 1999、Barber, 2004)は、24時間までに、PSD-95阻害物質で処置された動物は、偽(図7B)およびMCAO前レベル(図7D〜G)と比較して同様なレベルのケージ活動を示すが、非処置動物における活動は低下するということを明らかにした(図7C)。この深いタイプの虚血性傷害後の神経学的回復を完全に評価するためには、より長いpMCAO後回復時間が必要になるかもしれない。しかし、これは、非処置動物の長期生存率に関する問題のために、本実験では追求していない。
【0091】
参考文献



【0092】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、各個別の刊行物または特許が具体的かつ個別に参照により組み入れられることが指示されているかのように、参照により本明細書に組み入れられる。さらには、ポリペプチド配列、ポリヌクレオチド配列またはそれらの注釈が参照により本明細書に組み入れられる。刊行物の引用は、出願日よりも前のその開示に関する引用であり、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利がないと認めるものと解釈されるべきではない。
【0093】
具体的な態様を参照しながら本発明を説明したが、本発明の本質および範囲を逸することなく、様々な変更を加え、等価物を代用することができる。加えて、特定の状況、材料、組成物、方法、工程、本発明の目的、本質および範囲に適合するように多くの改変を加えることができる。そのような改変はすべて請求の範囲に入るものと解釈される。
【0094】
(表1)軟膜血管閉塞実験からの死亡率および除外

【0095】
手術死*または手術法の困難さ**(清浄な軟膜焼灼を得る困難さ)のために除外された動物は、すべて薬物注入の前に除外した。投与後の除外はなかった。
【0096】
(表2)pMCAO実験からの死亡率および除外
医師#(1/2)

各枠内の二つの数字(X/Y)は、pMCAO実験#1および#2それぞれからの医師のための動物の数を表す。
* MCAOの前、動脈カテーテル処置中に死亡。
** 剖検により、おそらくはMCAOフィラメント挿入のために生じた脳出血/くも膜下出血を確認。
*** pMCAO手術の5時間後、呼吸障害のため1匹を安楽死処分。剖検により、挿管に関連する気管傷害を確認。
【0097】
(表3−1)第一の実験からの全グループの生理学的パラメータ

BW-体重;NS-神経行動スコア
平均±SEM
【0098】
(表3−2)第二の実験からの全グループの生理学的パラメータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱もしくは高血糖によって増悪した、CNSに対する脳卒中もしくは他の傷害の損傷効果の処置のための医薬の製造のための、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用。
【請求項2】
ペプチドが、[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ペプチドが、ESDV、ESEV、ETDV、ETEV、DTDV、DTEVからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の使用。
【請求項4】
発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項1記載の使用。
【請求項5】
請求項1記載のKLSSIETDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項6】
アミノ酸配列が

を含む、請求項5記載の使用。
【請求項7】
アミノ酸配列が

からなる、請求項6記載の使用。
【請求項8】
請求項1記載のKLSSIESDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項9】
アミノ酸配列が

を含む、請求項8記載の使用。
【請求項10】
アミノ酸配列が

からなる、請求項9記載の使用。
【請求項11】
処置開始時に少なくとも37.5度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項1記載の使用。
【請求項12】
処置開始前の時点または処置開始後24時間までに少なくとも37.5度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項1記載の使用。
【請求項13】
発熱が、処置開始からその6時間後までの期間にわたり少なくとも37.5度である、請求項1記載の使用。
【請求項14】
発熱が、処置開始からその24時間後までの期間にわたり少なくとも37.5度である、請求項1記載の使用。
【請求項15】
処置開始時に少なくとも39度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項1記載の使用。
【請求項16】
処置開始前の時点または処置開始後24時間までに少なくとも39度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項1記載の使用。
【請求項17】
発熱が、処置開始からその6時間後までの期間にわたり少なくとも39度である、請求項1記載の使用。
【請求項18】
発熱が、処置開始からその24時間後までの期間にわたり少なくとも39度である、請求項1記載の使用。
【請求項19】
発熱が同時発生的感染によるものである、請求項1記載の使用。
【請求項20】
発熱が、温度調節または設定点に影響する脳領域中の脳卒中の場所によるものである、請求項1記載の使用。
【請求項21】
発熱が患者の熱曝露によるものである、請求項1記載の使用。
【請求項22】
高血糖が同時発生的糖尿病によるものである、請求項1記載の使用。
【請求項23】
脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項1記載の使用。
【請求項24】
処置が梗塞体積を少なくとも10%減少させる、請求項1記載の使用。
【請求項25】
処置が梗塞体積を少なくとも20%減少させる、請求項1記載の使用。
【請求項26】
NDMARへのPSD-95の結合を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
高体温および/または高血糖によって増悪した虚血を有する動物に化合物を投与する段階;および
該化合物が、該化合物で処置されない対照動物と比べて、該虚血の結果として生じる梗塞の体積を減少させるかどうかを判定する段階
を含む、方法。
【請求項27】
虚血が永久的虚血である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
化合物を投与する前、動物が高血糖を有する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
動物が感染症を有する、請求項27記載の方法。
【請求項30】
動物が糖尿病を有する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
動物が化合物投与前の12時間未満に摂食する、請求項20記載の方法。
【請求項32】
発熱もしくは高血糖によって増悪した、CNSに対する脳卒中または他の傷害を有する患者における脳卒中の損傷効果を減少させる方法であって、
T/S-[X]-V/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の有効量を投与して、それにより、脳卒中または他の傷害の損傷効果を減少させる段階を含む方法。
【請求項33】
E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ESDV、ESEV、ETDV、ETEV、DTDVまたはDTEVを含むアミノ酸配列を有するペプチド、請求項32記載の方法。
【請求項35】
投与時に、患者が、少なくとも37.5℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項36】
KLSSIETDVを含むアミノ酸配列を有するペプチド、請求項32記載の方法。
【請求項37】

を含むアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項36記載の方法。
【請求項38】

からなるアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項36記載の方法。
【請求項39】
KLSSIESDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項32記載の方法。
【請求項40】

を含むアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項32記載の方法。
【請求項41】

を含むアミノ酸配列を有するペプチドを投与する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
患者が、脳卒中の発症後少なくとも6〜24時間以内の期間にわたり少なくとも37.5℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項43】
患者が、脳卒中の発症後6〜24時間以内の期間にわたり少なくとも39℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項44】
患者が、ペプチドまたはペプチド模倣体の投与開始から投与開始の少なくとも6時間後までの期間にわたり少なくとも37.5℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項45】
患者が、ペプチドまたはペプチド模倣体の投与開始から投与開始の少なくとも24時間後までの期間にわたり少なくとも37.5℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項46】
患者が、脳卒中の発症後少なくとも6〜24時間の期間にわたり少なくとも40℃の発熱によって増悪した脳卒中を有する、請求項32記載の方法。
【請求項47】
発熱が同時発生的感染によるものである、請求項32記載の方法。
【請求項48】
発熱が、体温調節または設定点に影響する脳領域中の脳卒中の場所によるものである、請求項32記載の方法。
【請求項49】
対象がまた、脳卒中の発症と実質的に同時発生的な高血糖を患っている、請求項32記載の方法。
【請求項50】
高血糖が糖尿病によるものである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項32記載の方法。
【請求項52】
脳卒中の結果として生じる梗塞の体積を少なくとも15%減少させる、請求項32記載の方法。
【請求項53】
発熱もしくは高血糖を有する患者における脳卒中もしくは他のCNS傷害の損傷効果を処置するための医薬の製造における、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用。
【請求項54】
ペプチドが、[E/D/N/Q][S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列を有する、請求項53記載の使用。
【請求項55】
ペプチドが、ESDV、ESEV、ETDV、ETEV、DTDV、DTEVからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項53記載の使用。
【請求項56】
発熱によって増悪する脳卒中を処置するための、請求項53記載の使用。
【請求項57】
請求項53記載のKLSSIETDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項58】
アミノ酸配列が

を含む、請求項57記載の使用。
【請求項59】
アミノ酸配列が

からなる、請求項58記載の使用。
【請求項60】
請求項53記載のKLSSIESDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項61】
アミノ酸配列が

を含む、請求項60記載の使用。
【請求項62】
アミノ酸配列が

からなる、請求項61記載の使用。
【請求項63】
処置開始時に少なくとも37.5度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項53〜62のいずれか一項記載の使用。
【請求項64】
処置開始時に少なくとも39度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項53〜62のいずれか一項記載の使用。
【請求項65】
発熱が同時発生的感染によるものである、請求項53〜64のいずれか一項記載の使用。
【請求項66】
発熱が、温度調節または設定点に影響する脳領域中の脳卒中の場所によるものである、請求項53〜64のいずれか一項記載の使用。
【請求項67】
発熱が患者の熱曝露によるものである、請求項53〜64のいずれか一項記載の使用。
【請求項68】
高血糖が同時発生的糖尿病によるものである、請求項53記載の使用。
【請求項69】
脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項53記載の使用。
【請求項70】
処置が梗塞体積を少なくとも10%減少させる、請求項53記載の使用。
【請求項71】
処置が梗塞体積を少なくとも20%減少させる、請求項53記載の使用。
【請求項72】
医薬が、単位剤形であり、ペプチドまたはペプチド模倣体0.05〜500mg、任意で0.1〜100mg、0.5〜50mgまたは1〜20mgを含有する、請求項53〜71のいずれか一項記載の使用。
【請求項73】
発熱もしくは高血糖の患者における脳卒中もしくは他のCNS傷害の損傷効果の予防的処置のための医薬の製造における、T/SXV/Lを含むアミノ酸配列を有するペプチドまたはそのペプチド模倣体の使用。
【請求項74】
ペプチドが、[E/D/N/Q][S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L]を含むアミノ酸配列を有する、請求項73記載の使用。
【請求項75】
ペプチドが、ESDV、ESEV、ETDV、ETEV、DTDV、DTEVからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項73記載の使用。
【請求項76】
発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項73記載の使用。
【請求項77】
請求項73記載のKLSSIETDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項78】
アミノ酸配列が

を含む、請求項77記載の使用。
【請求項79】
アミノ酸配列が

からなる、請求項78記載の使用。
【請求項80】
請求項73記載のKLSSIESDVを含むアミノ酸配列を有するペプチドの使用。
【請求項81】
アミノ酸配列が

を含む、請求項80記載の使用。
【請求項82】
アミノ酸配列が

からなる、請求項81記載の使用。
【請求項83】
処置開始時に少なくとも37.5度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項73〜82のいずれか一項記載の使用。
【請求項84】
処置開始時に少なくとも39度の発熱によって増悪した脳卒中を処置するための、請求項73〜82のいずれか一項記載の使用。
【請求項85】
発熱が同時発生的感染によるものである、請求項73〜84のいずれか一項記載の使用。
【請求項86】
発熱が、温度調節または設定点に影響する脳領域中の脳卒中の場所によるものである、請求項73〜84のいずれか一項記載の使用。
【請求項87】
発熱が患者の熱曝露によるものである、請求項73〜84のいずれか一項記載の使用。
【請求項88】
高血糖が同時発生的糖尿病によるものである、請求項73記載の使用。
【請求項89】
脳卒中が虚血性脳卒中である、請求項73記載の使用。
【請求項90】
処置が梗塞体積を少なくとも10%減少させる、請求項73記載の使用。
【請求項91】
処置が梗塞体積を少なくとも20%減少させる、請求項73記載の使用。
【請求項92】
医薬が、単位剤形であり、ペプチドまたはペプチド模倣体0.05〜500mg、任意で0.1〜100mg、0.5〜50mgまたは1〜20mgを含有する、請求項73〜91のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−544585(P2009−544585A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519493(P2009−519493)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/015747
【国際公開番号】WO2008/008348
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【出願人】(509011178)ノノ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】